特許異議申立
2022-700956
水中油型乳化化粧料
- 審判番号
- 2022-700956
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-223215
- 登録番号
- 7043803
- 請求日
- 2022年09月30日
- 審決日
- 2024年01月22日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】花王株式会社
- 【権利者代理人】佐々木 渉
- 【異議申立人】郡司 理
- 審判長/審判官
- 審判長 木村 敏康
- 審判官 井上 典之
- 審判官 齊藤 真由美
- 分類
- P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7043803号発明「水中油型乳化化粧料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7043803号の特許請求の範囲を、令和5年11月28日付け手続補正書により補正された同年5月26日付け訂正請求書に添付した上記手続補正書により補正された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
特許第7043803号の請求項1~6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7043803号(以下「本件特許」という。)に係る出願(特願2017-223215号)は、平成29年11月20日に出願され、令和4年3月22日に特許権の設定の登録がされ(請求項の数:6)、同年同月30日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和4年9月30日に特許異議申立人である 郡司 理 (以下「申立人」という。)により、本件特許の請求項1~6に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。
その後の本件特許異議申立事件の主な手続の経緯は、次のとおりである。
令和5年 3月22日付け 取消理由通知
同年 5月26日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年 6月 5日付け 訂正請求があった旨の通知
同年 7月 7日 意見書の提出(申立人)
同年10月27日付け 訂正拒絶理由通知
同年11月20日 面接
同年 同月28日 手続補正書及び意見書の提出(特許権者)
同年12月 5日 上申書の提出(特許権者)
令和6年 1月 5日 上申書の提出(申立人)
なお、令和6年1月5日付け上申書において、申立人は、「訂正請求について、訂正拒絶理由が存在しておりましたので、訂正拒絶理由通知、特許権者が提出した意見書、訂正請求書の補正書及びこれに添付された訂正明細書等の副本等は、異議申立人に送付され、意見書の提出機会が与えられるものと理解しております。」と主張しているが、申立人には、取消理由を記載した書面並びに訂正請求書及びこれに添付された訂正特許請求の範囲の副本が送付され、訂正請求に対する意見書の提出の機会が与えられているから、改めて申立人に意見書を提出する機会を与える必要があるとは認められない。
第2 訂正請求について
1 訂正請求書の補正及びその適否
令和5年11月28日付け手続補正書による補正は、「訂正事項4を削除する内容に変更する補正を求める」という減縮的変更のみを内容とするものであるから、訂正請求書の要旨を変更しないものとして、当該補正を許可する。
2 訂正の請求の趣旨及び訂正の内容
令和5年11月28日付け手続補正書による補正後の同年5月26日付け訂正請求書(以下、当該補正後の当該訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、当該補正後の訂正特許請求の範囲を「補正された訂正特許請求の範囲」という。)による訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)の趣旨は、
「特許第7043803号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求める。」
というものであり、その訂正の内容は、以下の訂正事項1~3からなるものである。なお、下線は訂正による記載の変更箇所を示す。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1における
「(A)成分を化粧料総量中に3質量%以上30質量%以下含有し、(C)成分の(A)成分に対する含有質量比(C/A)が0.71以上1.0以下であり、」
との記載を、
「(A)成分を化粧料総量中に10質量%以上20質量%以下含有し、(C)成分の(A)成分に対する含有質量比(C/A)が0.71以上1.0以下であり、
(B)成分を化粧料総量中に0.5質量%以上2.5質量以下含有し、(C)成分を化粧料総量中に8質量%以上12質量%以下含有し、
(A)成分中に含まれる油溶性有機紫外線吸収剤が、25℃で固体状の有機紫外線吸収剤のみであるか、又は、25℃で固体状の有機紫外線吸収剤及び液状の有機紫外線吸収剤であり、前記液状の有機紫外線吸収剤の(A)成分に対する含有量が50質量%以下であり、
前記固体状の有機紫外線吸収剤が、2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸へキシルエステル、2,4-ビス{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、及び2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジンからなる群から選択される1種以上であり、
前記液状の有機紫外線吸収剤が、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシルであり、
(A)成分中に含まれる前記油溶性有機紫外線吸収剤以外の液状油剤として、エステル油を含有し、」
に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2~6も同様に訂正する。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2における
「前記(A)成分中にIOB値が0.10以上0.60以下の成分を40質量%以上含有する、」
との記載を、
「前記(A)成分中にIOB値が0.10以上0.60以下の成分を65質量%以上含有する、」
に訂正する。
請求項2の記載を引用する請求項3~6も同様に訂正する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3における
「前記(A)成分中に含まれる油溶性有機紫外線吸収剤として、2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸へキシルエステル、2,4-ビス{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、及びジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシルからなる群から選択される1種以上の25℃で固体状の有機紫外線吸収剤を含有する、」
との記載を、
「前記固体状の有機紫外線吸収剤が、2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸へキシルエステル、2,4-ビス{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、及び2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジンである、」
に訂正する。
請求項3の記載を引用する請求項4~6も同様に訂正する。
3 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~6について、請求項2~6は、請求項1の記載を直接的に又は間接的に引用するものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるから、訂正前の請求項1~6に対応する訂正後の請求項1~6は、特許法第120条の5第4項に規定する関係を有する「一群の請求項」である。
4 訂正事項についての訂正要件の判断
(1) 訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
(ア)
訂正事項1は、細分すると次の5つの訂正事項からなるものと認められ、いずれの訂正事項も請求項1の記載を引用する請求項2~6も同様に訂正するものである。なお、下線は訂正による記載の変更箇所を示す。
a 請求項1に記載の「(A)成分」の化粧料総量中の含有量について、「3質量%以上30質量%以下」とされているのを、「10質量%以上20質量%以下」とする訂正事項(以下「訂正事項1a」という。)。
b 請求項1に記載の「(B)成分」について、「化粧料総量中に0.5質量%以上2.5質量以下含有」することを追加する訂正事項(以下「訂正事項1b」という。)。
c 請求項1に記載の「(C)成分」について、「化粧料総量中に8質量%以上12質量以下含有」することを追加する訂正事項(以下「訂正事項1c」という。)。
d 請求項1に記載の「(A)成分」中に含まれる「油溶性有機紫外線吸収剤」について、
「25℃で固体状の有機紫外線吸収剤のみであるか、又は、25℃で固体状の有機紫外線吸収剤及び液状の有機紫外線吸収剤」であるとし、
「前記液状の有機紫外線吸収剤の(A)成分に対する含有量が50質量%以下」であるとし、
「前記固体状の有機紫外線吸収剤が、2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸へキシルエステル、2,4-ビス{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、及び2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジンからなる群から選択される1種以上」であるとし、
「前記液状の有機紫外線吸収剤が、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」であるとすること、
を追加する訂正事項(以下「訂正事項1d」という。)。
e 請求項1に記載の「(A)成分」について、「(A)成分中に含まれる前記油溶性有機紫外線吸収剤以外の液状油剤として、エステル油を含有」することを追加する訂正事項(以下「訂正事項1e」という。)。
(イ)
訂正事項1aは、「(A)成分」の化粧料総量中の含有量について、訂正前の「3質量%以上30質量%以下」の範囲内において、「10質量%以上20質量%以下」に特定し限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(ウ)
訂正事項1bは、訂正前は特定されていない「(B)成分」の含有量について、「化粧料総量中に0.5質量%以上2.5質量以下含有」することを特定し限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(エ)
訂正事項1cは、訂正前は特定されていない「(C)成分」の含有量について、「化粧料総量中に8質量%以上12質量以下含有」することを特定し限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(オ)
訂正事項1dは、訂正前は特定されていない「(A)成分」中に含まれる「油溶性有機紫外線吸収剤」を構成する成分及びその組成について、具体的に特定し限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(カ)
訂正事項1eは、「(A)成分」のうち訂正前は特定されていない油溶性有機紫外線吸収剤以外の液状油剤が含む成分種別について、「エステル油」を含有することを特定し限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
(ア)
訂正事項1aの「(A)成分」の化粧料総量中の含有量について、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の【0020】には、
「前記(A)成分の化粧料総量に対する含有量は、・・・、3質量%以上30質量%以下である。また、(A)成分の含有量は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、・・・、また25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。具体的には、3~30質量%であり、・・・、10~20質量%がより好ましく、・・・。」
(下線は当審合議体が付したものであり、「・・・」は摘記の省略を示す。以下同様。)と記載されており、訂正事項1aに係る下限値「10質量%」及び上限値「20質量%」が好ましい旨が明記されている。
なお、下線は当審合議体が便宜のために付した。以下同様。
(イ)
訂正事項1bの「(B)成分」の化粧料総量中の含有量について、本件明細書の【0029】には、
「(B)成分の含有量は、本発明の化粧料総量に対して、・・・、0.5質量%以上がより好ましく、・・・。また、・・・、2.5質量%以下がさらに好ましい。具体的な含有量は・・・、0.5~4質量%がより好ましく、・・・、0.8~2.5質量%がさらに好ましい、・・・。」
と記載されており、訂正事項1bに係る下限値「0.5質量%」及び上限値「2.5質量」が好ましい旨が明記されている。
(ウ)
訂正事項1cの「(C)成分」の化粧料総量中の含有量について、本件明細書の【0046】には、
「本発明で用いる(C)疎水化処理微粒子金属酸化物の含有量は、化粧料総量に対して、8質量%以上が好ましく、・・・、また・・・、20質量%以下がさらに好ましい。・・・。」
と記載されており、また、同【0072】【表1-1】の実施例1及び2、並びに、同【0073】【表1-2】の実施例9では、水中油型乳化化粧料において、「(C)成分」に該当する成分の化粧料総量中の含有量が「12(質量%)」であることが記載されているから、訂正事項1cに係る下限値「8質量%」が好ましい旨が明記されており、当該上限値「12質量%」である水中油型乳化化粧料の実施例が記載されている。
(エ)
訂正事項1dの「(A)成分」中に含まれる「油溶性有機紫外線吸収剤」を構成する成分及びその組成について、本件明細書の【0012】には、
「油溶性有機紫外線吸収剤としては、液状の有機紫外線吸収剤、及び固体状の有機紫外線吸収剤から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。・・・、前記(A)成分中に、液状の有機紫外線吸収剤、及び固体状の有機紫外線吸収剤を含有することが好ましい。」
と記載されており、同【0011】には、
「「液状」とは、1気圧下、25℃の環境下において、流動性を有している状態をいい、・・・。また、「固体状」とは、1気圧下、25℃の環境下において、流動性を有してない状態をいい、・・・。」
と記載されていることから、「油溶性有機紫外線吸収剤」が、「25℃で固体状の有機紫外線吸収剤のみであるか、又は、25℃で固体状の有機紫外線吸収剤及び液状の有機紫外線吸収剤」であることは、これらの記載事項から自明であるといえる。
また、同【0022】には、
「液状の有機紫外線吸収剤の(A)成分に対する含有量は、・・・、50質量%以下がさらに好ましい。」
と記載され、同【0014】には、
「固体状の有機紫外線吸収剤は、単独又は2種以上を適宜組み合わせて含有させることができる。
これらのうち、・・・より好ましくは、2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸へキシルエステル、2,4-ビス{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、及び2,4,6-トリス〔4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ〕-1,3,5-トリアジンである。」
と記載され、上記ア(ア)dに示した訂正後の3種の「固体状の有機紫外線吸収剤」が好ましいものとされており、同【0013】には
「液状の有機紫外線吸収剤としては、・・・、さらに好ましくはパラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシルである。」
と記載されている。
そうすると、訂正事項1dに係る「(A)成分」中に含まれる「油溶性有機紫外線吸収剤」を構成する成分及びその組成は、本件明細書に記載された事項から自明であるといえる。
(オ)
訂正事項1eの「(A)成分」の特定事項について、本件明細書の【0016】には、
「前記(A)成分中に含まれる前記有機紫外線吸収剤以外の油剤としては、1気圧下、25℃の環境下において液状であれば特に限定されず、通常の化粧料に用いられる油剤が挙げられる。具体的には、・・・、パルミチン酸イソプロピル、・・・、ミリスチン酸オクチルドデシル、・・・、トリエチルヘキサノイン、イソノナン酸イソノニル、セバシン酸ジイソプロピル、・・・、安息香酸アルキル等のエステル油;・・・;ジメチルポリシロキサンなどを挙げることができる。」
と記載されている。
(カ)
上記(ア)~(オ)によれば、訂正事項1a~1eからなる訂正事項1による訂正は、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「本件明細書等」という。)の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項1による訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1による訂正は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であって、「(A)成分」、「(B)成分」及び「(C)成分」のそれぞれの化粧料総量中の含有量、「(A)成分」中に含まれる「油溶性有機紫外線吸収剤」の成分及び組成、並びに、「(A)成分」中に含まれる「油溶性有機紫外線吸収剤以外の液状油剤」の成分種別について、追加限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
エ 訂正事項1についてのまとめ
上記ア~ウのとおり、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(2) 訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項2による訂正は、請求項2に記載の「(A)成分」中の「IOB値が0.10以上0.60以下の成分」の含有量を、訂正前の「40質量%以上」の範囲内において、「65質量%以上」に特定し限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項2における「(A)成分」中の「IOB値が0.10以上0.60以下の成分」の含有量について、本件明細書の【0019】には、
「前記(A)成分中に含まれるIOB値が0.10以上0.60以下の成分の含有割合は、好ましくは40質量%以上、・・・、さらに好ましくは65質量%以上であり、・・・。」
と記載されているから、訂正事項2による訂正は、本件明細書等の記載を総合することによって導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項2による訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2による訂正は、上記アのとおり特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
エ 訂正事項2についてのまとめ
上記ア~ウのとおり、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(3) 訂正事項3について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項3による訂正は、請求項3において、訂正前は、同項が引用する請求項1の記載を前提に、「前記(A)成分中に含まれる油溶性有機紫外線吸収剤」として、
・「2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸へキシルエステル」
(以下、便宜のため「固体状紫外線吸収剤a」と略記することがある。)、
・「2,4-ビス{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン」
(以下、便宜のため「固体状紫外線吸収剤b」と略記することがある。)、
・「2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン」
(以下、便宜のため「固体状紫外線吸収剤c」と略記することがある。)、
・「4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン」
(以下、便宜のため「固体状紫外線吸収剤d」と略記することがある。)、
及び
・「ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル」
(以下、便宜のため「固体状紫外線吸収剤e」と略記することがある。)、
の5種からなる群から選択される「1種以上の25℃で固体状の有機紫外線吸収剤」を含有するとされているのを、訂正後は、当該特定事項を限定して(選択肢から「固体状紫外線吸収剤d」及び「固体状紫外線吸収剤e」を削除して)、これを訂正事項1dとして請求項1において規定することに伴い生じる、請求項1の記載と同項の記載を引用する請求項3の記載の間の表記の不整合を解消させるとともに、
「前記固体状の有機紫外線吸収剤」「が」、
・「2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸へキシルエステル」(「固体状紫外線吸収剤a」)、
・「2,4-ビス{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン」(「固体状紫外線吸収剤b」)、
「及び」
・「2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン」(「固体状紫外線吸収剤c」)
の3種「である」と特定し限定するものである。
したがって、訂正事項3による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、かつ、同ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項3における「固体状の有機紫外線吸収剤」について、本件明細書の【0014】には、
「固体状の有機紫外線吸収剤は、単独又は2種以上を適宜組み合わせて含有させることができる。
これらのうち、・・・より好ましくは、2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸へキシルエステル、2,4-ビス{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、及び2,4,6-トリス〔4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ〕-1,3,5-トリアジンである。」
と記載され、上記アに示した訂正後の3種の「固体状の有機紫外線吸収剤」が好ましいものとされており、同【0072】【表1-1】の実施例1及び2、並びに、同【0073】【表1-2】の実施例9においては、水中油型乳化化粧料が含有する「固体状の有機紫外線吸収剤」に該当する成分が、
・「ユビナール Aplus」、即ち、「2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸へキシルエステル」(「固体状紫外線吸収剤a」)、
・「Tinosorb S」、即ち、「2,4-ビス{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン」(「固体状紫外線吸収剤b」)、及び
・「ユビナール T-150」、即ち、「2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン」(「固体状紫外線吸収剤c」)
の3種を併用したものであることが記載されている(表中において製品名で記載された成分の詳細については、【0075】を参照。)。
そうすると、訂正事項3による訂正は、本件明細書等の記載を総合することによって導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項3による訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3による訂正は、上記アのとおり特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項3による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
エ 訂正事項3についてのまとめ
上記ア~ウのとおり、訂正事項3による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(4) 独立特許要件について
訂正事項1~3による訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を訂正の目的として含むものではあるが、本件特許異議申立事件においては、訂正前の全ての請求項である請求項1~6に係る特許に対して特許異議の申立てがされているから、訂正後の請求項1~6に係る発明については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる「独立特許要件」)は課されない。
5 訂正請求についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
よって、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された補正された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正後の本件特許に係る発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正後の請求項1~6(以下、請求項の番号順に「本件訂正請求項1」等ということがある。)の記載は、本件訂正請求書に添付された補正後の訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された以下のとおりのものである(下線は、本件訂正による記載の変更箇所を示す。)。
そして、本件訂正請求項1~6に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~6に記載された以下の事項により特定されるとおりのものであると認める(以下、請求項の番号順に「本件訂正発明1」等といい、これらを総称して「本件訂正発明」ということがある。)。
「【請求項1】
下記の(A)~(C)成分を含有する、水中油型乳化化粧料であって、
(A)油溶性有機紫外線吸収剤を含む液状油剤
(B)耐塩性水溶性高分子
(C)疎水化処理微粒子金属酸化物粉末
(A)成分中にIOB値が0.10以上の成分を40質量%以上含有し、(A)成分を化粧料総量中に10質量%以上20質量%以下含有し、(C)成分の(A)成分に対する含有質量比(C/A)が0.71以上1.0以下であり、
(B)成分を化粧料総量中に0.5質量%以上2.5質量以下含有し、(C)成分を化粧料総量中に8質量%以上12質量%以下含有し、
(A)成分中に含まれる油溶性有機紫外線吸収剤が、25℃で固体状の有機紫外線吸収剤のみであるか、又は、25℃で固体状の有機紫外線吸収剤及び液状の有機紫外線吸収剤であり、前記液状の有機紫外線吸収剤の(A)成分に対する含有量が50質量%以下であり、
前記固体状の有機紫外線吸収剤が、2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸へキシルエステル、2,4-ビス{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、及び2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジンからなる群から選択される1種以上であり、
前記液状の有機紫外線吸収剤が、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシルであり、
(A)成分中に含まれる前記油溶性有機紫外線吸収剤以外の液状油剤として、エステル油を含有し、
(B)成分が、アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウムコポリマーである、水中油型乳化化粧料。
【請求項2】
前記(A)成分中にIOB値が0.10以上0.60以下の成分を65質量%以上含有する、請求項1に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項3】
前記固体状の有機紫外線吸収剤が、2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸へキシルエステル、2,4-ビス{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、及び2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジンである、請求項1又は2に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項4】
固体状の有機紫外線吸収剤の(A)成分に対する含有量が10質量%以上35質量%以下である、請求項3に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項5】
前記(C)成分の疎水化処理がメチルハイドロジェンポリシロキサンを用いた表面処理及びシラン化合物又はシラザン化合物を用いた表面処理からなる群から選択される1種以上の表面処理である、請求項1~4のいずれかに記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項6】
日焼け止め用途に用いる請求項1~5のいずれかに記載の水中油型乳化化粧料。」
第4 当審において通知した取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~6に係る発明の特許について、当審において令和5年3月22日付けの取消理由通知書により特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
なお、ここでいう「請求項1」等の表記は、本件訂正前の本件特許の請求項1等を意味するものであり、「本件発明1」等の表記は、本件訂正前の本件特許の請求項1に係る発明等を意味するものである。
[取消理由1](新規性欠如)
本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、下記の頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許の下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
[取消理由2](進歩性欠如)
本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、下記の頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
[取消理由3](サポート要件違反)
本件特許の下記の請求項に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
記 (引用文献等については<引用文献等一覧>を参照)
<引用文献等一覧>
甲1:特開2015-44879号公報
甲2:特開2014-114274号公報
甲3:特開2017-122075号公報
(当審注:平成29年7月13日公開)
甲4:特開2012-102061号公報
甲5:特開2004-345985号公報
甲6:特開2014-172853号公報
(当審注:甲1~甲6は、申立人が提出した甲第1~6号証である。)
1 取消理由1(新規性欠如)及び取消理由2(進歩性欠如)について
(1) 甲1を主引例とした場合について
・請求項1~6
・甲1(、甲4~甲6)
本件発明1~6は、甲1に記載された発明であり、また、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2) 甲2を主引例とした場合について
・請求項1~2、5~6
・甲2
本件発明1~2、5~6は、甲2に記載された発明であり、また、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1~2、5~6に係る特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(3) 甲3を主引例とした場合について
・請求項1~6
・甲3(、甲5~甲6)
本件発明1~4、6は、甲3に記載された発明であり、また、本件発明1~6は、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1~4、6に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、本件特許の請求項1~6に係る特許は、同法同条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
2 取消理由3(サポート要件違反)について
・請求項1~6
本件発明1の水中油型乳化化粧料は、(A)成分中の「油溶性有機紫外線吸収剤」も有機紫外線吸収剤以外の「液状油剤」も具体的に特定されておらず、(B)成分の含有量も特定されていないところ、「IOB値が0.10以上」であること以外は構造も性質も共通しない不特定な成分の(A)成分中の含有量が「40質量%以上」であったとしても、また、そのような組成が不特定な(A)成分の化粧料総量中の含有量が、下限値である3質量%の付近や上限値である30質量%の付近であっても、さらに、(B)成分の「アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウムコポリマー」が、化粧料総量中で如何なる含有量であっても、実施例1~3、9及び16の5つの特定の組成の水中油型乳化化粧料と同様に、「優れた紫外線防御効果を有し、経時安定性、及び耐水性が良好で、かつ優れた耐摩擦性を有する水中油型乳化化粧料を提供すること」という、本件発明の課題を解決し得ると、当業者が認識できるとはいえず、そのような技術常識が本件特許の出願時に存在したとも認められない。
この点については、本件特許の請求項1の記載を直接的に又は間接的に引用しており、(A)成分中の「油溶性有機紫外線吸収剤」及び/又は有機紫外線吸収剤以外の「液状油剤」の成分組成、並びに、(B)成分の含有量について、十分に特定をしていない、本件特許の請求項2~6に記載の水中油型乳化化粧料についても同様である。
したがって、本件発明1~6は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものでなく、本件特許の請求項1~6に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
第5 取消理由についての当審の判断
当審合議体は、本件訂正請求項1~6に係る特許は、上記取消理由通知書に記載した取消理由及び証拠によっては、取り消すことはできないものと判断する。その理由の詳細は以下のとおりである。
1 引用文献及びそれらの記載事項
取消理由1及び2の判断において引用する文献(甲1~甲6)は、上記第4の<引用文献等一覧>に示したとおりである。
(1) 甲1の記載事項
甲1には、次の事項が記載されている。
なお、摘記中の下線は当審合議体が付したものであり、「・・・」は摘記の省略を示し、列記された事項の参照の便宜のために当審合議体が改行等を追加した箇所がある。以下、他の文献の摘記についても同様である。
・摘記甲1a
「【請求項1】
下記の(A)~(E)成分を含有し、次の(i)及び(ii)の条件を満たすことを特徴とする水中油型乳化化粧料。
〔成分〕
(A)
2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸へキシルエステル、
2,4-ビス{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン
及び
ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル
からなる群から選択される1種以上
(B)液状油 8質量%以上20質量%以下
(C)ポリアクリルアミド化合物
(D)疎水化処理微粒子金属酸化物粉末
(E)炭素数1~3の飽和1価アルコール 8質量%以上22質量%以下
〔条件〕
(i)化粧料総量に対する、(A)成分及び(D)成分の合計量((A)+(D))の含有量が10質量%以上
(ii)液状油総量に対する、(A)成分及び(D)成分の合計量((A)+(D))の含有質量比が0.6以上2以下
・・・
【請求項7】
日焼け止め用途に用いる請求項1~6のいずれか1項に記載の水中油型乳化化粧料。」
・摘記甲1b
「【発明が解決しようとする課題】
・・・
【0007】
従って本発明は、有機紫外線吸収剤と疎水化処理微粒子金属酸化物粉末とを併用することにより優れた紫外線防御効果を有し、経時安定性が良好で、かつ使用感の良好な水中油型乳化化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
・・・
【0009】
・・・
そして、固形状の有機紫外線吸収剤と疎水化処理微粒子金属酸化物粉末を併用した場合、液状油の配合量が少ないと、一般的には経時安定性が悪くなる傾向があったが、ポリアクリルアミド化合物と共に、特定の固形状の有機紫外線吸収剤と疎水化処理微粒子金属酸化物粉末とを一定量以上用い、それらの液状油に対する含有質量比を高めた場合に、高い経時安定性が得られるともに、紫外線防御能に優れ、その耐水・耐汗性も極めて良好である水中油型乳化化粧料が得られることを見出した。さらに、かかる水中油型乳化化粧料は、のびが良く、べたつき感を抑えた良好な使用感であることを見出し、本発明を完成した。
・・・
【発明の効果】
【0011】
本発明の水中油型乳化化粧料は、経時安定性に優れ、高い紫外線防御効果が得られる。更に、塗布時には肌へののびが良く、べたつき感を抑えた良好な使用感を有し、耐水・耐汗性が極めて良好であり、実使用においても高い紫外線防御効果が期待される。」
・摘記甲1c
「【0015】
本発明で用いられる(A)成分は、固体状の有機紫外線吸収剤であって、
2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸へキシルエステル、
2,4-ビス{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン及び
2,4,6-トリス〔4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ〕-1,3,5-トリアジン、
ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル
からなる群から選択される1種以上である。
これらの成分は市販されており、
UVINUL A PLUS(2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸へキシルエステル;BASF社製)、
TINOSORB S(2,4-ビス{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン;BASF社製)、
UVINUL T-150(2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン;BASF社製)、
ソフトシェードDH(ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル;味の素社製)
等が挙げられる。
【0016】
(A)成分の化粧料総量に対する含有量は、0.5質量%以上が好ましく、・・・、1質量%以上がさらに好ましく、また8質量%以下が好ましく、・・・、5質量%以下がさらに好ましい。具体的には、0.5~8質量%が好ましく、・・・、1~5質量%がさらに好ましい。当該範囲内であれば、良好な紫外線防御効果が得られるとともに、安定性及び使用感も良好である。」
・摘記甲1d
「【0017】
本発明で用いられる(B)液状油は、前記のように1気圧下、25℃で流動性を有する油剤であり、これには、液状の有機紫外線吸収剤、及び通常の化粧料に用いられる油剤が含まれる。・・・。
液状の有機紫外線吸収剤としては、・・・。・・・、乳化状態及び経時安定性を改善できる点から、より好ましくはパラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、オクトクリレン、ジメチコジエチルベンザルマロネートであり、さらに好ましくはパラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシルである。
【0018】
液状油中に含まれる前記有機紫外線吸収剤以外の油剤としては、1気圧下、25℃の環境下において液状であれば特に限定されない。具体的には、α-オレフィンオリゴマー、流動イソパラフィン、流動パラフィン、スクワラン等の炭化水素油;・・・;・・・、パルミチン酸イソプロピル、・・・、ミリスチン酸オクチルドデシル、・・・、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、イソノナン酸イソノニル、セバシン酸ジイソプロピル、イソステアリン酸プロピレングリコール等のエステル油;・・・;ジメチルポリシロキサンなどを挙げることができる。これらのうち、好ましくはミリスチン酸オクチルドデシル、・・・、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、イソノナン酸イソノニル、セバシン酸ジイソプロピル、イソステアリン酸プロピレングリコール、イソヘキサデカン、スクワラン、水添ポリイソブテンである。
【0019】
(B)成分の化粧料総量に対する含有量は、べたつき感を抑え、かつ、紫外線防御効果を保持する点から、8質量%以上20質量%以下とするのが適当である。・・・。
【0020】
また、液状油含有量を低減しつつ、紫外線防御効果を高めるため、液状の有機紫外線吸収剤の液状油中の質量含有比は、0.5以上であることが好ましく、より好ましくは0.6以上、さらに好ましくは0.7以上である。」
・摘記甲1e
「【0021】
本発明で用いられる(C)ポリアクリルアミド化合物としては、ポリアクリルアミド、アクリルアミドコポリマーが含まれ、アクリルアミドコポリマーとしては、アクリルアミド及び/又はアクリロイルジメチルタウリンを構成単位として含むコポリマーが挙げられる。
【0022】
アクリルアミド及び/又はアクリロイルジメチルタウリンを構成単位として含むコポリマーとしては、アクリル酸ヒドロキシエチルとアクリロイルジメチルタウリン塩との共重合体、アクリル酸塩とアクリロイルジメチルタウリン塩との共重合体、アクリルアミドとアクリル酸塩との共重合体、・・・等を挙げることができる。
【0023】
これらの成分は市販されており、・・・;アクリル酸塩とアクリロイルジメチルタウリン塩との共重合体としては、SIMULGEL EG((アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、イソヘキサデカン、ポリソルベート 80、水);・・・が挙げられる。
【0024】
これらのうち好ましくは、アクリル酸塩とアクリロイルジメチルタウリン塩との共重合体が挙げられ、特に好ましくは、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーが挙げられる。」
・摘記甲1f
「【0026】
本発明で用いられる(D)疎水化処理微粒子金属酸化物粉末としては、紫外線を散乱する効果が高い点から、酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化セリウムから選択される1種又は2種以上の金属酸化物粉体を用いることが好ましい。・・・。
・・・
【0028】
本発明に用いる微粒子金属酸化物粉末の平均粒子径は、粉末凝集防止の点から0.01μm以上が好ましく、・・・、0.015μm以上がさらに好ましい。また、製剤の不透明化防止の点から、1μm以下が好ましく、・・・、0.4μm以下がさらに好ましい。具体的な平均粒子径は、0.01~1μmの範囲が好ましく、・・・、さらに好適には0.015~0.4μmである。・・・。
【0029】
本発明で用いる微粒子金属酸化物粉末の形状としては、球状、薄片状、棒状、紡錘状、針状、不定形状等が挙げられるが、平均粒子径が前記範囲にあれば任意の形状のものを使用することができる。
【0030】
前記微粒子金属酸化物粉末への疎水化処理としては、特に限定されず、種々の表面処理、例えば、フッ素化合物処理、シリコーン処理、シリコーン樹脂処理、・・・、シラン化合物又はシラザン化合物等によって事前に表面処理を行うことができる。
【0031】
例えば、シリコーン又はシリコーン樹脂を用いた表面処理、メチルハイドロジェンポリシロキサン又は下記式(1)のメチルハイドロジェンポリシロキサン・ジメチルポリシロキサン共重合体の表面処理剤を用いた処理、シラン化合物又はシラザン化合物の表面処理剤を用いた処理が好ましく挙げられる。特に好ましくはシリコーン又はシリコーン樹脂を用いた表面処理、メチルハイドロジェンポリシロキサンを用いた表面処理である。
・・・
【0040】
具体的なシラン化合物としては、・・・。これらのうち特に好ましくはオクチルトリエトキシシラン、・・・である。・・・。当該シラン化合物又はシラザン化合物は処理が均一にできやすく、かつ供給が容易でコスト的に安価である特徴があり、さらにこれらの化合物で表面処理した(D)微粒子金属酸化物粉末を配合した化粧料は分散性等の特性が優れているので好ましい。
・・・
【0044】
本発明で用いる(D)疎水化処理微粒子金属酸化物の含有量は、化粧料総量に対して、8質量%以上が好ましく、・・・、10質量%以上がさらに好ましく、また25質量%以下が好ましく、・・・、20質量%以下がさらに好ましい。具体的な含有量としては、8~25質量%が好ましく、・・・、10~20質量%がさらに好ましい。当該範囲内であれば、粉末の分散性が良好で、製剤の粘度上昇が大きくなるという問題も生じない。」
・摘記甲1g
「【0055】
本発明の水中油型乳化化粧料は、シャンプー、リンス、コンディショナーなどの毛髪化粧料、洗顔料、クレンジング化粧料、日焼け止め化粧料、パック、マッサージ化粧料などの皮膚化粧料として好適に利用できる。これらのうち、特に日焼け止め化粧料(化粧水、クリーム、乳液、美容液等)、サンタン、化粧下地化粧料、紫外線防御能を有するファンデーション等に適用するのが好ましい。
・・・
【実施例】
【0059】
以下、実施例及び比較例にて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
実施例1~21、比較例1~17
表1~4に示した処方に従い水中油型乳化化粧料を常法により調製した。これらを用いて、下記に示した(1)UV防御能耐久性試験、(2)乳化状態試験、(3)経時安定性試験、(4)使用感試験を実施した。結果を表1~4に併せて示す。
【0061】
(1)UV防御能(耐久性)
・・・。
【0062】
〔UV防御効果の耐久性評価〕
UV防御能(耐久性)(%)=(試料塗布した石英ガラス板を水浴後に測定したSPF値)/(試料塗布した石英ガラス板を水浴に浸す前に測定したSPF値)×100
【0063】
〔UV防御能(耐久性)評価基準〕
A:80%以上
B:70%以上80%未満
C:50%以上70%未満
D:50%未満
【0064】
(2)乳化状態
・・・
【0065】
〔結晶化状態判定基準〕
A:内相(油相)で結晶化が見られない
C:内相の一部において結晶化が見られる
【0066】
(3)経時安定性試験
・・・。
〔粘度変化判定基準〕
A:変化なし又は若干の粘度変化が見られる
B:明らかな粘度変化が見られる
C:分離している
【0067】
(3)使用感試験 (当審注:項目番号は「(4)」の誤記と解される。)
上記(3)経時安定性試験(45℃、3月間)後の表1~4に示した水中油型乳化化粧料を専門パネラー10名に使用してもらった。塗布時の使用感として、「塗布時のきしみ感のなさ」、「塗布後のべたつき感のなさ」、「撥水性の強さ」に関して、以下の評価基準及び判定基準に基づき、評価と判定を行った。・・・。
(評価基準)
5:非常に好ましい
4:やや好ましい
3:どちらともいえない
2:やや好ましくない
1:非常に好ましくない
(判定基準)
A:平均点が4.0以上
B:平均点が2.0以上4.0未満
C:平均点が2.0未満
【0068】
【表1】
[図:0001409073000001.jpg]
・・・
【0070】
【表3】
[図:0001409073000002.jpg]
【0071】
【表4】
[図:0001409073000003.jpg]
」
(当審注:表の記載の摘記は、必要な箇所のみを抜粋した。)
・摘記甲1h
「【0072】
本実施例、比較例及び処方例で用いた疎水化処理粉末は下記のものを用いた。
【0073】
(製造例1 シリコーン表面処理微粒子酸化亜鉛粉末の製造)
微粒子酸化亜鉛粉末(略球状、平均一次粒子径が0.016μm)88質量部とジメチルポリシロキサン(20cSt、信越化学工業社製)12質量部をトルエン中に投入しよく撹拌した後、トルエンを減圧下に加熱して除去した。得られた粉体をアトマイザーを用いて粉砕した。次いで高温加熱炉を用いて空気中で、800℃で2時間焼成処理を行い、シリコーン表面処理微粒子酸化亜鉛粉末を得た。
【0074】
(製造例2 メチルハイドロジェンポリシロキサン表面処理微粒子酸化亜鉛粉末の製造)
微粒子酸化亜鉛粉末(略球状、平均粒子径0.02μm)93質量部とメチルハイドロジェンポリシロキサン(KF-99P、信越化学工業社製)7質量部とイソプロピルアルコールからなるスラリーを作成し、よく攪拌・粉砕した後、溶媒を減圧下に加熱留去し、空気中150℃で4時間加熱処理を行い、メチルハイドロジェンポリシロキサン表面処理微粒子酸化亜鉛粉末を得た。
【0075】
(製造例3 メチルハイドロジェンポリシロキサン表面処理微粒子酸化チタン粉末の製造)
微粒子酸化チタン粉末(略球状、平均粒子径0.017μm)95質量部とメチルハイドロジェンポリシロキサン(KF-99P、信越化学工業社製)5質量部とイソプロピルアルコールからなるスラリーを作成し、よく攪拌・粉砕した後、溶媒を減圧下に加熱留去し、空気中160℃で4時間加熱処理を行い、メチルハイドロジェンポリシロキサン表面処理微粒子酸化チタン粉末を得た。
【0076】
(製造例4 オクチルトリエトキシシラン表面処理微粒子酸化亜鉛粉末の製造)
微粒子酸化亜鉛粉末(略球状、平均粒子径0.02μm)93質量部とオクチルトリエトキシシラン7質量部と、トルエンからなるスラリーを作成し、ビーズミル(シンマルエンタープライゼス社製ダイノミル)を用いて粉砕・解砕を行った。次いで、トルエンを減圧下に加熱留去した後、送風気流型乾燥機を用いて150℃にて4時間加熱処理し、オクチルトリエトキシシラン表面処理微粒子酸化亜鉛粉末を得た。
【0077】
(製造例5 オクチルトリエトキシシラン表面処理薄片状酸化亜鉛粉末の製造)
薄片状酸化亜鉛粉末(平均粒子径0.3μm、平均粒子厚さ0.032μm、板状比9、鉄元素含有量0.01mol%)93質量部とオクチルトリエトキシシラン7質量部と、トルエンからなるスラリーを作成し、ビーズミル(シンマルエンタープライゼス社製ダイノミル)を用いて粉砕・解砕を行った。次いで、トルエンを減圧下に加熱留去した後、送風気流型乾燥機を用いて150℃にて4時間加熱処理し、オクチルトリエトキシシラン表面処理薄片状酸化亜鉛粉末を得た。
【0078】
表1~4の結果から、本発明の化粧料は、比較例と比べて、UV防御能、経時安定性に優れ、更に使用感にも優れるものであることは明らかである。」
・摘記甲1i
「【0079】
以下に本発明の水中油型乳化化粧料の処方例を挙げる。
【0080】
処方例1~3 (化粧下地)
下記組成の水中油型乳化化粧料(化粧下地)を作製し評価したところ、紫外線防御効果、使用感、保存安定性の全ての点において優れていた。
[図:0001409073000004.jpg]
」
(2) 甲2の記載事項
甲2には、以下の事項が記載されている。
・摘記甲2a
「【請求項1】
下記の(A)~(C)成分を含有する水中油型乳化組成物。
(A)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が20以上24以下で、エチレンオキサイドの平均付加モル数が1.5以上4以下であるポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル
(B)液状油
(C)疎水化処理微粒子金属酸化物粉末
・・・
【請求項5】
前記微粒子金属酸化物粉末への疎水化処理が、シリコーン又はシリコーン樹脂を用いた表面処理及びメチルハイドロジェンポリシロキサンを用いた表面処理から選ばれる1種以上の表面処理である請求項1~4のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
【請求項6】
(B)成分が、液状の有機紫外線吸収剤及び化粧料用油剤を含むものである請求項1~5のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
【請求項7】
液状の有機紫外線吸収剤が、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、・・・、オクトクリレン及び・・・から選ばれる1種以上である請求項6記載の水中油型乳化組成物。
【請求項8】
(B)成分の組成物全量に対する含有量が、0.5質量%以上30質量%以下である請求項1~7のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
【請求項9】
さらに(D)水溶性高分子を含有する請求項1~8のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
【請求項10】
(D)成分が、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリルアミド、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、及びヒアルロン酸又はそのアルカリ金属塩から選択される1種又は2種以上である請求項9記載の水中油型乳化組成物。
・・・
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載の水中油型乳化組成物の日焼け止め用皮膚外用剤としての使用。」
・摘記甲2b
「【発明が解決しようとする課題】
・・・
【0007】
・・・、本発明は、金属酸化物粉末の安定配合性に優れ、さらに均一塗布性に優れ、皮膚へのおさまりが良く、のび、つきが良く、ベタツキ感、きしみ感が抑えられ使用性が良好で、経時安定性に優れ、保湿効果の高い水中油型乳化組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
・・・。そこで、本発明者は、油相中での上記ポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)の挙動を詳細に検討した結果、上記ポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)が、水相と油相の界面に存在し、構造体を形成していることを見出した。さらに、疎水化処理微粒子金属酸化物粉末を含有する水中油型乳化組成物では、油相中に疎水化処理金属酸化物粉末を包含するため、乳化粒径が大きく、不均一になりやすく、経時安定性を保ちにくいという課題があったが、この油相中にポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)を含有させることにより、乳化粒子が微細化され、凝集、沈降が抑えられ、安定性が顕著に向上し、さらに均一塗布性に優れ、皮膚へのおさまりが良く、のび、つきが良く、べたつき感、きしみ感が抑えられ、塗布後の保湿効果に優れた水中油型乳化組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水中油型乳化組成物は、乳化粒子が微細で均一であり、経時安定性に優れ、均一塗布性に優れ、皮膚へのおさまりが良く、のび、つきが良好でベタツキ感やきしみ感が抑えられ、かつ保湿効果(皮膚からの水分蒸散を抑えることによる保湿効果)に優れる。本発明の水中油型乳化組成物は日焼け止め用途として好適に用いることができる。」
・摘記甲2c
「【0013】
本発明の水中油型乳化組成物(実施例1)を、下記条件にて透過型電子顕微鏡により、観察を行ったところ、図1に示すような直径約5μmの乳化粒子表面(油相界面)に層状の構造体が確認された。従って、本発明でいう構造体とは、油相界面に局所的に存在する層状構造体を表すものとする。また、この層状構造体は、X線解析から、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)により形成されたマルチラメラベシクルである。
・・・
【0017】
本発明のポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)としては、・・・等が挙げられ、好ましくはポリオキシエチレン(2)ベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン(3)ベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン(4)ベヘニルエーテルが挙げられる。・・・。」
・摘記甲2d
「【0019】
本発明に用いる(B)25℃で液状の油剤としては、1気圧下、25℃にて流動性を有する状態の油剤であり、ペースト状の油剤を含むものである。これには、液状の有機紫外線吸収剤、及び通常の化粧料に用いられる油剤(化粧料用油剤)が含まれる。本発明においては、紫外線防御効果を高めるため、液状の有機紫外線吸収剤を含有することが好ましい。
【0020】
液状の有機紫外線吸収剤としては、・・・等が挙げられる。
・・・、乳化状態及び経時安定性を改善できる点から、より好ましくはパラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、オクトクリレン、ジメチルジエチルベンザルマロネートであり、・・・。
【0021】
液状油中に含まれる前記有機紫外線吸収剤以外の化粧料用油剤としては、1気圧下、25℃の環境下において液状であれば特に限定されない。・・・を挙げることができる。
・・・、(C)成分のきしみを改善できる点から、より好ましくはセバシン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジメチルポリシロキサンであり、さらに好ましくはジメチルポリシロキサンである。
【0022】
本発明の水中油型乳化組成物中の(B)成分の含有量は、化粧料全量に対し、べたつき感やきしみ抑え、かつ、紫外線防御効果を保持する点から、0.5質量%以上が好ましく、・・・、3質量%以上がさらに好ましく、また30質量%以下が好ましく、・・・、さらに20質量%以下が好ましい。具体的には、0.5~30質量%が好ましく、・・・、3~20質量%がさらに好ましい。また、液状油含有量を低減しつつ、紫外線防御効果を高めるため、液状の有機紫外線吸収剤の液状油中の質量含有比は、0.5以上であることが好ましく、・・・、さらに好ましくは0.7以上である。」
・摘記甲2e
「【0024】
本発明で用いられる(C)疎水化処理微粒子金属酸化物粉末に用いる金属酸化物粉末としては、・・・。日焼け止め用途に用いる場合には、紫外線散乱効果の高い、酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化セリウムから選択される1種又は2種以上の金属酸化物粉体を用いることが好ましい。・・・。
・・・
【0026】
本発明に用いる微粒子金属酸化物粉末は、平均粒子径0.01μm以上が好ましく、・・・、0.015μm以上がさらに好ましく、また1μm以下が好ましく、・・・、0.5μm以下がさらに好ましい。具体的な平均粒子径としては、0.01~1μmの範囲が好ましく、・・・、さらに好適には0.015~0.5μmである。平均粒子径が、この範囲にあると、凝集性が抑制でき、安定であり、製剤の透明性が確保され好ましい。・・・。
【0027】
本発明で用いる微粒子金属酸化物粉末の形状としては、球状、棒状、紡錘状、針状、不定形状等が挙げられるが、平均粒子径が前記範囲にあれば任意の形状のものを使用することができる。
【0028】
前記微粒子金属酸化物粉末への疎水化処理としては、特に限定されず、種々の表面処理、例えば、フッ素化合物処理、シリコーン処理、シリコーン樹脂処理、・・・、シラン化合物又はシラザン化合物等によって事前に表面処理を行うことができる。
【0029】
例えば、シリコーン又はシリコーン樹脂を用いた表面処理、メチルハイドロジェンポリシロキサン又は下記式(1)のメチルハイドロジェンポリシロキサン・ジメチルポリシロキサン共重合体の表面処理剤を用いた処理、シラン化合物又はシラザン化合物の表面処理剤を用いた処理が好ましく挙げられる。特に好ましくはシリコーン又はシリコーン樹脂を用いた表面処理、メチルハイドロジェンポリシロキサンを用いた表面処理である。
・・・
【0037】
具体的なシラン化合物としては、・・・。これらのうち特に好ましくはオクチルトリエトキシシラン、・・・である。・・・。当該シラン化合物又はシラザン化合物は処理が均一にできやすく、かつ供給が容易でコスト的に安価である特徴があり、さらにこれらの化合物で表面処理した(C)微粒子金属酸化物粉末を製品に配合した際に化粧料は分散性等の特性が優れているので好ましい。
・・・
【0041】
(C)疎水化処理微粒子金属酸化物の含有量は、・・・。具体的な範囲としては、0.1~30質量%が好ましく、・・・、さらに好ましくは1~20質量%である。当該範囲内であれば、粉末の分散性が良好で、製剤の粘度上昇が大きくなるという問題も生じない。」
・摘記甲2f
「【0045】
本発明では油相の分散安定性を高めるため、さらに(D)水溶性高分子を用いることが好ましい。本発明で用いる水溶性高分子としては、水溶性のカチオン性高分子、アニオン性高分子、非イオン性高分子、及び、両性高分子又は双極性高分子等が挙げられる。
【0046】
・・・。
アニオン性高分子としては、具体的には、・・・、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、・・・が挙げられる。
・・・。
【0047】
・・・。様々な剤形への応用のしやすさから、・・・、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、・・・が好ましく挙げられる。・・・。
【0048】
これらの成分は市販されており、・・・・、SIMULGEL EG((アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、イソヘキサデカン、ポリソルベート80、水)、・・・が挙げられる(括弧内は、含有成分)。」
・摘記甲2g
「【0056】
・・・。本発明の乳化組成物は、・・・、日焼け止め用途が好ましく、特にサンスクリーン、サンタン、化粧下地化粧料、紫外線防御能を有するファンデーション等に適用するのが好ましい。
・・・
【実施例】
【0064】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0065】
説明にあたり、以下の実施例、比較例で用いた耐水性試験及び官能評価の方法について述べる。
【0066】
(1)乳化状態評価
・・・
〔顕微鏡観察による乳化状態判定基準〕
3:内相(油相)に粉体が入り込み、略球形のきれいな乳化粒子が形成されている
2:内相に粉体が入り込んでいるが、乳化粒子形状・大きさが不均一となっている
1:粉体が外相(水相)に漏れ出している
【0067】
(2)閉塞性試験
・・・。セルに純水5gを入れ、前記試料乾燥膜フィルターにより蓋をし、湿度30%、温度30℃下での重量変化を測定した。その結果を最小二乗法により算出される(nX+m;Xは時間h)のnを水分蒸散速度(単位:mg/h)とし、絶対値としてプロットした各試料計3回の平均値を求めた。・・・。
【0068】
(3)均一塗布評価
・・・。8箇所の透過率の最大値と最小値の差(最大値-最小値)を計算し、より値が小さい程、均一塗布性が高いとして評価した。
【0069】
(4)UV防御能試験
・・・。
【0070】
UV防御能向上率(%)=(試料の平均SPF値)/(参考例1の平均SPF値)×100
【0071】
〔UV防御能向上率の評価基準〕
4:110%超
3:90%以上110%未満
2:70%以上90%未満
1:70%未満
【0072】
(5)官能評価
専門パネラー10名により、表2に示す試料を実際に使用した時の、のび・つきの良さ(均一に伸びてむらにならない)、保湿感、べたつき感、きしみ感の有無の各使用特性を次の評価基準に従って評価してもらい、その平均点を示した。
(評価基準)
【0073】
(a)のび・つきの良さ
5点:のび・つきが非常に良い
4点:のび・つきが良い
3点:のび・つきが普通
2点:のび・つきが悪い
1点:のび・つきが非常に悪い
(b)保湿感
5点:肌のうるおい感が非常に高い
4点:肌のうるおい感が高い
3点:普通
2点:肌のうるおい感が少ない
1点:肌のうるおい感が非常に少ない
(c)べたつき感
5点:べたつき感が非常に少ない
4点:べたつき感が少ない
3点:普通
2点:べたつき感が多い
1点:べたつき感が非常に多い
(d)きしみ感
5点:きしみ感が非常に弱い
4点:きしみ感が弱い
3点:普通
2点:きしみ感が強い
1点:きしみ感が非常に強い」
・摘記甲2h
「【0074】
以下、本発明で用いた疎水化処理微粒子金属酸化物粉末について説明する。
【0075】
(製造例1:オクチルトリエトキシシラン表面処理薄片状酸化亜鉛粉末の製造)
薄片状酸化亜鉛粉末(平均粒子径0.3μm、平均粒子厚さ0.032μm、板状比9、鉄元素含有量0.01mol%)93質量部とオクチルトリエトキシシラン7質量部と、トルエンからなるスラリーを作成し、ビーズミル(シンマルエンタープライゼス社製ダイノミル)を用いて粉砕・解砕を行った。次いで、トルエンを減圧下に加熱留去した後、送風気流型乾燥機を用いて150℃にて4時間加熱処理し、オクチルトリエトキシシラン処理薄片状酸化亜鉛粉末を得た。
【0076】
(製造例2:メチルハイドロジェンポリシロキサン表面処理微粒子酸化亜鉛粉末の製造)
微粒子酸化亜鉛粉末(略球状、平均粒子径20nm)95質量部とメチルハイドロジェンポリシロキサン(KF-99P、信越化学工業社製)5質量部とイソプロピルアルコールからなるスラリーを作成し、よく攪拌・粉砕した後、溶媒を減圧下に加熱留去し、空気中150℃で4時間加熱処理を行い、メチルハイドロジェンポリシロキサン表面処理酸化亜鉛粉末を得た。
【0077】
(製造例3:オクチルトリエトキシシラン表面処理酸化チタン粉末の製造)
微粒子酸化チタン粉末(略球状、平均粒子径0.017μm)93質量部とオクチルトリエトキシシラン7質量部と、トルエンからなるスラリーを作成し、ビーズミル(シンマルエンタープライゼス社製ダイノミル)を用いて粉砕・解砕を行った。次いで、トルエンを減圧下に加熱留去した後、送風気流型乾燥機を用いて150℃にて4時間加熱処理し、オクチルトリエトキシシラン処理酸化チタン粉末を得た。
【0078】
(製造例4:メチルハイドロジェンポリシロキサン表面処理微粒子酸化チタン粉末の製造)
微粒子酸化チタン粉末(略球状、平均粒子径0.017μm)95質量部とメチルハイドロジェンポリシロキサン(KF-99P、信越化学工業社製)5質量部とイソプロピルアルコールからなるスラリーを作成し、よく攪拌・粉砕した後、溶媒を減圧下に加熱留去し、空気中160℃で4時間加熱処理を行い、メチルハイドロジェンポリシロキサン表面処理酸化チタン粉末を得た。」
・摘記甲2i
「【0079】
〔ポリオキシエチレンアルキルエーテルの種類の検討〕
実施例1、比較例1~4
表1に示す処方に従い、水中油型サンスクリーンを調製した。これらを用い、前記の試験を実施した。試験結果を表1に合わせて示す。
【0080】
【表1】
[図:0001409073000005.jpg]
・・・
【0083】
〔配合量比の検討〕
実施例2~16、参考例1
【0084】
【表2】
[図:0001409073000006.jpg]
・・・
【0086】
実施例2~16の試料においては、のび・つき、保湿感、べたつき感のなさ、きしみ感のなさのいずれの評価においても、優れた評価が得られた。・・・。」
(当審注:表の記載の摘記は、必要な箇所のみを抜粋した。)
(3) 甲3の記載事項
甲3には、以下の事項が記載されている。
・摘記甲3a
「【請求項1】
以下の成分(A)~(D):
(A)個数平均粒子径1.6~4μmの蛍光性酸化亜鉛 1~20質量%
(B)紫外線吸収剤 1~15質量%
(C)前記成分(B)以外の、25℃で液体状である不揮発性油 1質量%以上20質量%未満
(D)水溶性高分子 0.1~2質量%
を含む水中油型皮膚化粧料であって、
前記水中油型皮膚化粧料中、前記成分(A)の含有量に対する前記成分(B)および(C)の含有量の合計の質量比(((B)+(C))/(A))が、1~10である、水中油型皮膚化粧料。
・・・
【請求項4】
前記成分(B)以外の、25℃で液体状である揮発性油をさらに含む、請求項1~3いずれか1項に記載の水中油型皮膚化粧料。」
・摘記甲3b
「【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが検討した結果、特定の大きさの蛍光性酸化亜鉛、紫外線吸収剤、25℃で液体状である不揮発性油および水溶性高分子を用いるとともに、上記蛍光性酸化亜鉛、紫外線吸収剤および25℃で液体状である不揮発性油を特定の割合で用いることにより、化粧料の保存安定性に優れるとともに、紫外線防御効果と、使用環境にかかわらず、自然な肌の明るさを得る効果とがバランスよく発現され、たとえば、太陽光を浴びた後およびすすを吹きかけた後の自然な肌の明るさ等の耐環境性に優れる水中油型皮膚化粧料が得られることを見いだした。」
・摘記甲3c
「【0019】
(成分(B))
成分(B)は、紫外線吸収剤である。
成分(B)としては、公知のものが使用でき、たとえば、・・・;
パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル(たとえば、ユビナールMC80;BASF製)、・・・、
2,4,6-トリス[4-(2-エチルへキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン(以下、「エチルヘキシルトリアゾン」とも呼ぶ。たとえば、ユビナールT150;BASF製)、・・・;
・・・が挙げられ、これらから選ばれる1種または2種以上を化粧料中に含むことができる。
【0020】
これらのうち、化粧料の紫外線吸収効果を向上させる観点から、
パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル(たとえば、ユビナールMC80;BASF製)、
2,4,6-トリス[4-(2-エチルへキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン(たとえば、ユビナールT150;BASF製)、
4-tert-ブチル-4'-メトキシジベンゾイルメタン(たとえば、パラソール1789;DSMニュートリションジャパン社製)、
オクトクリレン(たとえば、パラソール340;DSMニュートリションジャパン社製)、
ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル(たとえば、ソフトシェードDH;味の素社製)、
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(たとえば、ユビナールAplus;BASF製)、
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン(たとえば、チノソーブS;BASF製)、
・・・
から選ばれる1種または2種以上が好ましく、・・・。
【0021】
化粧料中の成分(B)の含有量は、化粧料の紫外線防御効果を向上させる観点、および、自然な肌の明るさを向上させる観点から、化粧料全体に対して1質量%以上であり、・・・、さらにより好ましくは5質量%以上であり、また、15質量%以下であり、・・・、さらに好ましくは10質量%以下である。」
・摘記甲3d
「【0022】
(成分(C))
成分(C)は、成分(B)以外の、25℃で液体状である不揮発性油である。・・・
【0024】
成分(C)の具体例としては、・・・、エステル油、シリコーン油、炭化水素油、炭素数12~22の高級脂肪酸、炭素数12~22の高級アルコールが挙げられる。
・・・
【0026】
また、成分(C)としてのエステル油として、・・・化粧料中に含まれて紫外線防御効果および自然な肌の明るさを向上させる観点から、・・・、安息香酸アルキル(C12~C15)(たとえば、フィンソルブTN;Innospec Active Chemicals LLC製)等が好ましく、・・・、上記観点に加えて、化粧料中の紫外線吸収剤との相溶性を高め、紫外線防御効果を向上させる観点から、・・・安息香酸アルキル(C12~C15)・・・がより好ましい。
・・・
【0028】
成分(C)としての炭化水素油としては、・・・、より好ましくはイソヘキサデカン、水添ポリイソブテン等の分岐脂肪族炭化水素油から選ばれる1種以上である。
・・・
【0032】
化粧料中の成分(C)の含有量は、化粧料の紫外線防御効果を向上させる観点から、化粧料全体に対して1質量%以上であり、・・・、より好ましくは5質量%以上であり、また、20質量%未満であり、・・・、より好ましくは15質量%以下である。
また、自然な肌の明るさを向上させる観点から、化粧料中の成分(C)の含有量は、化粧料全体に対して1質量%以上であり、・・・、より好ましくは7質量%以上であり、また、20質量%未満であり、・・・、より好ましくは10質量%以下である。
【0033】
また、化粧料中の成分(B)および(C)の含有量の合計((B)+(C))は、化粧料の紫外線防御効果を向上させる観点から、化粧料全体に対して好ましくは5質量%以上であり、・・・、さらに好ましくは12質量%以上であり、また、好ましくは25質量%以下であり、・・・、さらに好ましくは17質量%以下である。」
・摘記甲3e
「【0035】
(成分(D))
成分(D)は、水溶性高分子である。
成分(D)としては水溶性であれば限定されるものではなく、公知のものが使用できる。
たとえば、・・・;
・・・、少なくともアクリル酸塩またはアクリル酸ヒドロキシアルキルとアクリロイルジメチルタウリン塩とを共重合して得られる共重合体等のアクリル酸系高分子やポリビニルアルコール;
・・・。
また、少なくともアクリル酸塩またはアクリル酸ヒドロキシアルキルとアクリロイルジメチルタウリン塩とを共重合して得られる共重合体としては、アクリル酸塩とアクリロイルジメチルタウリン塩との共重合体、・・・が挙げられる。
・・・。
【0037】
・・・
アクリル酸塩とアクリロイルジメチルタウリン塩との共重合体としては、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーが挙げられ、具体的には、SIMULGEL EG(SEPPIC社製)等が挙げられ;
・・・。」
・摘記甲3f
「【0045】
また、化粧料の保存安定性を向上させる観点、紫外線防御効果と、使用環境にかかわらず自然な肌の明るさを得る効果とのバランスを向上させる観点、および化粧料が適用された部位のさらさら感を高める観点から、化粧料が成分(F)として成分(B)以外の25℃で液体状である揮発性油をさらに含むことが好ましい。
成分(F)は、好ましくは揮発性シリコーン油であり、より好ましくは直鎖状または環状オルガノポリシロキサンのうち、25℃で液体状であり揮発性のものである。
・・・。
【0048】
揮発性シリコーン油の市販品の具体例として、揮発性シリコーンとしては、・・・、TSF405A(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、デカメチルシクロペンタシロキサン)が挙げられる。」
・摘記甲3g
「【0050】
また、本実施形態の化粧料には、前述した成分以外の成分、たとえば、紫外線散乱剤、・・・を含有させることもできる。・・・。
【0051】
たとえば、本実施形態において、化粧料の紫外線防御効果をさらに高める観点から、紫外線散乱剤を含有してもよく、好ましくは無機粉体により構成される紫外線散乱剤を含有してもよい。・・・。
紫外線散乱剤の材料としては、酸化チタン、成分(A)以外の酸化亜鉛、・・・等が挙げられる。また、紫外線散乱剤としてこれらの材料を微粒子化したものや、複合化したものが挙げられる。・・・。
【0052】
紫外線散乱剤として用いられる酸化チタンおよび酸化亜鉛は、化粧料に通常用いられている酸化チタンおよび酸化亜鉛であってよい。好ましくはより分散性に優れたもの、たとえば必要に応じて公知の方法で表面を表面処理、具体的には疎水化処理したものを化粧料中に含有することができる。
【0053】
表面処理の方法としては、メチルハイドロゲンポリシロキサン、メチルポリシロキサン等のシリコーン処理;・・・;オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン処理;・・・等が挙げられる。なかでも、表面をシリコーン処理した酸化亜鉛が好ましく用いられる。
【0054】
表面処理に用いられるシリコーンは制限されないが、たとえばメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロゲンポリシロキサン、・・・等の各種シリコーン油を挙げることができる。好ましくは、メチルハイドロゲンポリシロキサンやメチルポリシロキサンである。
・・・
【0057】
また、酸化チタンまたは酸化亜鉛が粒子状であるとき、その大きさについては、個数平均粒子径がたとえば1nm以上であり、・・・、さらに好ましくは10nm以上であり、また、たとえば500nm以下であり、・・・、さらに好ましくは60nm以下である。
・・・
【0059】
化粧料中の酸化チタン、成分(A)およびその他の酸化亜鉛の含有量の合計は、化粧料の保存安定性を向上させる観点、肌が白くなりすぎることを抑制する観点、および化粧料の油っぽさを低減させる観点から、化粧料全体に対して好ましくは30質量%以下であり、・・・、さらにより好ましくは18質量%以下である。
また、化粧料の紫外線防御効果を向上させる観点から、化粧料中の酸化チタン、成分(A)およびその他の酸化亜鉛の含有量の合計は、化粧料全体に対して好ましくは5質量%以上であり、・・・、より好ましくは15質量%以下である。
・・・。」
・摘記甲3h
「【0064】
本実施形態における化粧料は、通常の水中油型乳化化粧料の製造方法に従って製造することができる。
・・・
【0065】
また、本実施形態により得られる化粧料としては、化粧下地、サンスクリーンクリーム等の日焼け止め化粧料等が含まれる。・・・。
・・・
【実施例】
・・・
【0070】
(実施例1~6および比較例1~7)
表1および表2に示す組成の水中油型皮膚化粧料を後述する方法にて製造し、後述する方法で、紫外線防御効果、耐環境性試験として太陽光を1時間浴びた後の肌の見え方、すすを吹きかけた後の肌の見え方、および、化粧料の保存安定性を評価した。結果を表1および表2に併せて示す。
・・・
【0072】
(評価方法)
(紫外線防御効果)
・・・。
5:平均透過率1%未満
4:平均透過率1%以上、10%未満
3:平均透過率10%以上、30%未満
2:平均透過率30%以上、50%未満
1:平均透過率50%以上
【0073】
(耐環境性試験:太陽光を1時間浴びた後の肌の見え方)
・・・。その後、太陽光に1時間腕を曝した後の肌の見え方を、肌色が非常に明るく見える場合を5、肌色が非常に暗く見える場合を1として5段階で評価した。・・・。
【0074】
(耐環境性試験:すすを吹きかけた後の、自然な肌の見え方)
・・・。その後、密閉されたダートチャンバー内に人工皮革を設置し、ろ紙の燃焼によりすすを吹きかけた後の人工皮革の見た目を、専門パネラー5名により以下の基準で評価した。・・・。
3:すすを吹きかける前後で、変化がない
2:すすを吹きかけた後に、やや暗く見える
1:すすを吹きかけた後に、非常に暗く見える
【0075】
(化粧料の保存安定性)
各例で得られた化粧料50gをガラス瓶(広口規格びん、PS-No.6、東京硝子社製)に入れ、密閉して50℃にて1ヶ月保存した。保存後、専門パネラー1名の目視により、まず、分離と粘度についてそれぞれ以下の基準で評価を行った。
(分離)
3:透明の液体層ないし、かたまりが観察されない
2:上部に5mm未満の透明の液体層ないし、かたまりが観察される
1:上部に5mm以上の透明の液体層ないし、かたまりが観察される
(粘度)
化粧料中にスパチュラー(長さ18cm、幅0.5cm)を深さ1cm要れ、水平方向に1cm動かし、そのときにスパチュラーにかかる力を、常温(25℃)で保存していた化粧料の場合と比較して、以下の基準で評価した。
3:常温保存品と同じ力がかかる
2:常温保存品よりやや強い力がかかるが実使用可能
1:常温保存品より明らかに強い力がかかり、化粧料としては使用不可
【0076】
そして、化粧料の保存安定性評価は、上述した分離および粘度の2つの観点から、以下の基準でおこなった。
3:分離および粘度の評点がいずれも3
2:分離および粘度の評点が3および2を含む
1:分離および粘度のいずれかの評点に1を含む
【0077】
【表1】
[図:0001409073000007.jpg]
・・・
【0079】
表1および表2に記載の成分の詳細を以下に示す。
*1 シリコーン処理蛍光性酸化亜鉛:堺化学工業社製(個数平均粒子径2.5μm)
*2 パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル:BASF製、ユビナール MC80
*3 安息香酸アルキル(C12~15):Innospec Active Chemicals LLC製、フィンソルブ TN
*4 アクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体:SEPPIC社製、SIMULGEL EGの有効分(有効分37.5質量%)
・・・
*7 シリコーン処理酸化亜鉛:テイカ社製、MZ-504R3M(個数平均粒子径25nm)
【0080】
表1および表2より、各実施例の化粧料は、成分(A)~(D)を特定量含み、また、質量比(((B)+(C))/(A))が特定の範囲にあるため、50℃での保存安定性および紫外線防御効果に優れており、また、太陽光を1時間浴びた後およびすすを吹きかけた後の自然な肌の明るさ等の耐環境性に優れており、各比較例のものに比べて各効果のバランスに優れていた。
【0081】
(処方例1~3)
水中油型皮膚化粧料の処方例を表3に示す。
【0082】
【表3】
[図:0001409073000008.jpg]
【0083】
表3に記載の成分のうち、上述したもの以外のものについて詳細を以下に示す。
*8 ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル:BASF製、ユビナール A Plus
*9 エチルヘキシルトリアゾン:BASF製、ユビナール T-150
*10 ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン:BASF製、チノソーブ S
・・・
*16 デカメチルシクロペンタシロキサン:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製、シリコーン TSF405A
・・・」
(4) 甲4の記載事項
甲4には、以下の事項が記載されている。
・摘記甲4a
「【0010】
本発明に用いる(b)25℃で液体であるIOB値0.1以下の低極性油剤及び/又は非極性油剤としては、ステアリン酸ステアリル(IOB=0.08)、ミリスチン酸オクチルドデシル(IOB=0.09)等のエステル油;・・・等が挙げられるが、・・・。
尚、IOB値とは、Inorganic/Organic Balance(無機性/有機性比)の略であって、無機性値の有機性値に対する比率を表す値であり、有機化合物の極性の度合いを示す指標となるものである。IOB値は、具体的には、IOB値=無機性値/有機性値として表される。「無機性値」、「有機性値」のそれぞれについては、例えば、分子中の炭素原子1個について「有機性値」が20、同水酸基1個について「無機性値」が100といったように、各種原子又は官能基に応じた「無機性値」、「有機性値」が設定されており、有機化合物中の全ての原子及び官能基の「無機性値」、「有機性値」を積算することによって、当該有機化合物のIOB値を算出することができる(・・・)。」
(5) 甲5の記載事項
甲5には、以下の事項が記載されている。
・摘記甲5a
「【0024】
成分(E)の液体油としては、IOBが0.6以下のものが好ましい。ここでいうIOB(InorganicOrganic Ba1ance)とは、藤田穆の有機概念図(・・・)によるもので、IOB=その油分の無機性値/その油分の有機性値で表される。「有機性値」は油分の分子中の炭素原子1個につき20とし、「無機性値」は水酸基1個につき100とし、これを基準として決定された他の置換基の無機性値を用いて算出される。IOBは油分の極性の指標となるものであり、この値が高くなるほどその油分の極性は高いことになる。
・・・
【0026】
液体油としては、特に炭化水素油から選ばれる1種以上の液体油を用いることが、油保持性、保型性に優れたゲルを得るために好ましい。特に、流動パラフィン(IOB=0)、流動イソパラフィン(IOB=0)、スクワラン(IOB=0)を用いるのが好ましい。」
(6) 甲6の記載事項
甲6には、以下の事項が記載されている。
・摘記甲6a
「【0027】
本発明における非極性炭化水素油は、一般に非極性油又は低極性油として知られた炭化水素油を使用することができる。非極性炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、イソヘキサデカン、・・・等が挙げられる。
【0028】
一方、(D)油分に含まれる非極性炭化水素油以外の油分としては、・・・等から選ばれる任意の成分を配合することができ、・・・。
【0029】
特に、本発明では極性油を配合することができる。・・・
【0030】
極性油としては、IOB値0.05~0.80である油分であり・・・」
2 取消理由1(新規性欠如)及び取消理由2(進歩性欠如)について
(1) 甲1を主引例とした場合について
ア 甲1に記載された発明
上記1(1)の摘記甲1a~摘記甲1iの記載によれば、甲1には、実施例16として、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる(特に、摘記甲1gの【0060】及び【0070】【表3】を参照。なお、同【表3】における「メチルハイドロジェンポリシロキサン表面処理酸化チタン粉末(製造例3)」との記載は、摘記甲1h【0075】の「(製造例3 メチルハイドロジェンポリシロキサン表面処理微粒子酸化チタン粉末の製造)」との記載からみて、「ジメチルハイドロジェンポリシロキサン表面処理微粒子酸化チタン粉末(製造例3)」の誤記と認める。)。
≪甲1発明≫
「以下の成分を含有する水中油型乳化化粧料。
・2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)
安息香酸へキシルエステル 2質量%
・パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル 10質量%
・ミリスチン酸オクチルドデシル 3質量%
・イソヘキサデカン 0.45質量%
・(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)
コポリマー 0.75質量%
・シリコーン表面処理微粒子酸化亜鉛粉末(製造例1) 10質量%
・メチルハイドロジェンポリシロキサン表面処理微粒子
酸化チタン粉末(製造例3) 5質量%
・エタノール 15質量%
・モノオレイン酸POE(20)ソルビタン 0.15質量%
・オレイン酸ソルビタン 0.05質量%
・精製水 残量」
イ 本件訂正発明1について
(ア) 対比
本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。
a.
甲1発明における「2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸へキシルエステル」は、「固体状の有機紫外線吸収剤」であり(摘記甲1c【0015】)、本件訂正発明1における「(A)油溶性有機紫外線吸収剤を含む液状油剤」中に含まれる「25℃で固体状の有機紫外線吸収剤」の選択肢の1つである「2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸へキシルエステル」(「固体状紫外線吸収剤a」)に相当し、また、本件明細書の【0018】において、「IOB値=0.68」である「IOB値が0.10以上である成分」の1つとして例示されているものであるから、本件訂正発明1における「IOB値が0.10以上である成分」にも該当する。
甲1発明における「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」は、「液状の有機紫外線吸収剤」であり(摘記甲1d【0017】)、本件訂正発明1における「(A)油溶性有機紫外線吸収剤を含む液状油剤」中に含まれる「25℃で液状の有機紫外線吸収剤」である「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」(以下、便宜のために「液状紫外線吸収剤f」と略記することがある。)に相当し、また、本件明細書の【0018】において「IOB値=0.28」である「IOB値が0.10以上である成分」の1つとして例示されているものであるから、本件訂正発明1における「IOB値が0.10以上である成分」にも該当する。
b.
甲1発明における「ミリスチン酸オクチルドデシル」は、甲1において、「液状油」中に含まれる「有機紫外線吸収剤以外の油剤」である「エステル油」として記載されており(摘記甲1d【0018】)、本件明細書の【0016】においても、「(A)成分」中に含まれる「有機紫外線吸収剤以外の油剤」のうち「エステル油」として例示されているから、本件訂正発明1における「(A)油溶性有機紫外線吸収剤を含む液状油剤」の「液状油剤」である「エステル油」に相当し、また、摘記甲4aによれば「IOB=0.09」であるから、本件訂正発明1における「IOB値が0.10以上である成分」には該当しないものである。
甲1発明における「イソヘキサデカン」は、甲1に「液状油」中に含まれる「有機紫外線吸収剤以外の油剤」として記載されているから(摘記甲1d【0018】)、本件訂正発明1における「(A)油溶性有機紫外線吸収剤を含む液状油剤」の「液状油剤」に相当し、また、摘記甲5aによれば、油分はIOB値が高いほどその極性が高く、摘記甲6aによれば、「イソヘキサデカン」は非極性炭化水素油であり、極性油はIOB値0.05~0.80である油分とされているから、「イソヘキサデカン」は、そのIOB値が0.05より低いものといえるので、本件訂正発明1における「IOB値が0.10以上である成分」には該当しないものである。
c.
甲1発明における「(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー」は、本件訂正発明1における「(B)耐塩性水溶性高分子」である「アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウムコポリマー」に相当する。
d.
甲1発明における「シリコーン表面処理微粒子酸化亜鉛粉末(製造例1)」及び「メチルハイドロジェンポリシロキサン表面処理微粒子酸化チタン粉末(製造例3)」は、甲1において「疎水化処理微粒子金属酸化物粉末」の具体例として記載された成分であるから(摘記甲1f及び摘記甲1h)、本件訂正発明1における「(C)疎水化処理微粒子金属酸化物粉末」に相当する。
e.
甲1発明における「エタノール」は、本件明細書の【0050】~【0051】において、水中油型乳化化粧料が含有し得る「(E)炭素数1~3の飽和1価アルコール」として記載されている成分に該当し、甲1発明における「モノオレイン酸POE(20)ソルビタン」及び「オレイン酸ソルビタン」は、本件明細書の【0054】~【0056】において、水中油型乳化化粧料が含有し得る「非イオン性界面活性剤」として記載されている成分に該当するところ、本件訂正発明1の水中油型乳化化粧料は、これらの成分を含有することを排除していない。
f.
甲1発明の水中油型乳化化粧料は、上記a.及びb.で認定した、本件訂正発明1における「(A)油溶性有機紫外線吸収剤を含む液状油剤」に該当する4つの成分のうち、「IOB値が0.10以上である成分」に該当する「2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸へキシルエステル」(「固体状紫外線吸収剤a」)及び「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」(「液状紫外線吸収剤f」)の合計量の、当該4つの成分の合計量に対する割合が、「77.77質量%」(≒(2+10)/(2+10+3+0.45)×100)であるから、本件訂正発明1における「(A)成分中にIOB値が0.10以上の成分を40質量%以上含有」するとの条件を満たす。
g.
甲1発明の水中油型乳化化粧料は、本件訂正発明1における「(A)油溶性有機紫外線吸収剤を含む液状油剤」に該当する上記4つの成分の合計量の化粧料総量に対する割合が「15.45質量%」(=2+10+3+0.45)であるから、本件訂正発明1における「(A)成分を化粧料総量中に10質量%以上20質量%以下含有」するとの条件を満たす。
h.
甲1発明の水中油型乳化化粧料は、本件訂正発明1における「(A)油溶性有機紫外線吸収剤を含む液状油剤」に該当する上記4つの成分の合計量に対する、上記d.で認定した本件訂正発明1における「(C)疎水化処理微粒子金属酸化物粉末」に相当する2つの成分の合計量の質量比が、「0.97」(≒(5+10)/(2+10+3+0.45))であるから、本件訂正発明1における「(C)成分の(A)成分に対する含有質量比(C/A)が0.71以上1.0以下」であるとの条件を満たす。
i.
甲1発明の水中油型乳化化粧料は、上記c.で認定した本件訂正発明1における「(B)成分」に該当する「(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー」の化粧料総量に対する割合が「0.75質量%」であるから、本件訂正発明1における「(B)成分を化粧料総量中に0.5質量%以上2.5質量以下含有」するとの条件を満たす。
j.
甲1発明の水中油型乳化化粧料は、上記d.で認定した本件訂正発明1における「(C)成分」に該当する2つの成分の合計量の化粧料総量に対する割合が「15質量%」(=10+5)であるから、本件訂正発明1における「(C)成分を化粧料総量中に8質量%以上12質量%以下含有」するとの条件を満たさない。
k.
甲1発明の水中油型乳化化粧料は、上記a.及びb.で認定した本件訂正発明1における「(A)油溶性有機紫外線吸収剤を含む液状油剤」に該当する上記4つの成分の合計量に対する、本件訂正発明1における「25℃で液状の有機紫外線吸収剤」に該当する「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」(「液状紫外線吸収剤f」)の含有量が、「64.72質量%」(≒10/(2+10+3+0.45)×100)であるから、本件訂正発明1における「液状の有機紫外線吸収剤の(A)成分に対する含有量が50質量%以下」であるとの条件を満たさない。
l.
そうすると、本件訂正発明1と甲1発明との間には、次の一致点及び相違点があるものと認められる。
<一致点>
「下記の(A)~(C)成分を含有する、水中油型乳化化粧料であって、
(A)油溶性有機紫外線吸収剤を含む液状油剤
(B)耐塩性水溶性高分子
(C)疎水化処理微粒子金属酸化物粉末
(A)成分中にIOB値が0.10以上の成分を40質量%以上含有し、(A)成分を化粧料総量中に10質量%以上20質量%以下含有し、(C)成分の(A)成分に対する含有質量比(C/A)が0.71以上1.0以下であり、
(B)成分を化粧料総量中に0.5質量%以上2.5質量以下含有し、
(A)成分中に含まれる油溶性有機紫外線吸収剤が、25℃で固体状の有機紫外線吸収剤のみであるか、又は、25℃で固体状の有機紫外線吸収剤及び液状の有機紫外線吸収剤であり、
前記固体状の有機紫外線吸収剤が、2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸へキシルエステル、2,4-ビス{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、及び2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジンからなる群から選択される1種以上であり、
前記液状の有機紫外線吸収剤が、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシルであり、
(A)成分中に含まれる前記油溶性有機紫外線吸収剤以外の液状油剤として、エステル油を含有し、
(B)成分が、アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウムコポリマーである、
水中油型乳化化粧料。」
<相違点1-1>
「(C)成分」の化粧料総量中の含有量が、本件訂正発明1では「8質量%以上12質量%以下」と特定されているのに対し、甲1発明では当該範囲の上限値を超える「15質量%」である点。
<相違点1-2>
液状の有機紫外線吸収剤の(A)成分に対する含有量が、本件訂正発明1では「50質量%以下」と特定されているのに対し、甲1発明では当該範囲の上限値を超える「64.72質量%」である点。
(イ) 相違点の判断
a 新規性について
上記(ア)l.のとおり、本件訂正発明1と甲1発明とは、相違点1-1及び相違点1-2で相違しており、これらの相違点は、いずれも乳化化粧料の具体的な組成の特定に係る事項であるから、実質的な相違点である。
よって、本件訂正発明1は甲1に記載された発明であるとはいえない。
b 進歩性について
事案に鑑み、まず相違点1-2について検討する。
甲1には、
「液状油含有量を低減しつつ、紫外線防御効果を高めるため、液状の有機紫外線吸収剤の液状油中の質量含有比は、・・・、さらに好ましくは0.7以上である。」(摘記甲1d【0020】)
と記載されており、当該「液状油」とは、甲1の摘記甲1a【請求項1】、摘記甲1c【0015】及び摘記甲1d【0017】~【0018】の記載からみて、「(B)成分」とされているものであり、本件訂正発明1における「固体状の有機紫外線吸収剤」に該当する成分(「(A)成分」として区別されている。)を含むものではなく、甲1発明における「液状の有機紫外線吸収剤」に該当する「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」(「液状紫外線吸収剤f」)(10質量%)の、当該「液状油」(他には「ミリスチン酸オクチルドデシル」(3質量%)及び「イソヘキサデカン」(0.45質量%)を含む。)中の質量含有比は、「0.74」(≒10/(10+3+0.45))であり、上記のさらに好ましいとされる「0.7以上」の下限値を僅かに上回るものであるから、甲1発明において、当該質量含有比が当該下限値の「0.7」よりも低くなるように、「液状紫外線吸収剤f」の含有量を減ずること、又は、「液状紫外線吸収剤f」以外の「液状油」に含まれる成分の含有量を増加させることは、当業者において動機付けられるとはいえない。
また、甲1には、
「(A)成分の化粧料総量に対する含有量は、0.5質量%以上が好ましく、・・・、1質量%以上がさらに好ましく、また8質量%以下が好ましく、・・・、5質量%以下がさらに好ましい。具体的には、0.5~8質量%が好ましく、・・・、1~5質量%がさらに好ましい。」(摘記甲1c【0016】)
と記載されており、甲1にいう「(A)成分」は、摘記甲1a【請求項1】及び摘記甲1c【0015】の記載からみて、本件訂正発明1における「固体状の有機紫外線吸収剤」に該当し、甲1発明における当該「(A)成分」に該当する「2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸へキシルエステル」(「固体状紫外線吸収剤a」)の含有量である「2質量%」は、上記の「(A)成分」のさらに好ましいとされる含有量「1~5質量%」の範囲内であるから、甲1発明において、「固体状紫外線吸収剤a」の含有量を、当該範囲の上限値である「5質量%」を超えるものとすることは、当業者において動機付けられるとはいえない。
そして、仮に、甲1発明において、他の成分の含有量は変えずに「固体状紫外線吸収剤a」の含有量のみを、さらに好ましいとされる範囲内の上限値「5質量%」に変更したとしても、本件訂正発明1にいう「液状の有機紫外線吸収剤の(A)成分に対する含有量」は「54.20質量%」(≒10/(5+10+3+0.45)×100)となるから、本件訂正発明1で規定する「50質量%以下」との条件を満たすものにはならない。
したがって、甲1の記載全体(特に【0015】~【0020】の記載)を考慮したとしても、甲1発明の成分組成を変更して、相違点1-2に係る構成を満たすものとすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、相違点1-1について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(ウ) 甲1に記載された他の実施例等について
令和5年3月22日付け取消理由通知書の第3の2(1)イ(ア)jにおいて指摘したように、甲1には、甲1発明の認定の根拠とした実施例16の他にも、本件訂正前の本件発明1と構成上の差違がない水中油型乳化化粧料が、実施例5、6、9、10、14、15、18~21、比較例16及び処方例1として記載されている。
しかしながら、これらはいずれも本件訂正発明1の特定事項を全て満たすものでなく、上記(イ)bで説示したのと同様の理由により、これらの化粧料の成分組成を変更して本件訂正発明1の特定事項の全てを満たすものとすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
(エ) 申立人の主張について
申立人は、令和5年7月7日付け意見書において、
「甲1の実施例16等においては、固体状の有機紫外線吸収剤が2質量%であるところ、甲1の【0016】には、(A)成分(特定の固体状の有機紫外線吸収剤)の含有量は8質量%以下であることが好ましいことが記載され、当該範囲内であれば、安定性及び使用感が良好であることが記載されていることから、甲1の実施例16等においては、固体状の有機紫外線吸収剤を8質量%とすることは容易想到である。そして、甲1の実施例16等においては、固体状の有機紫外線吸収剤が8質量%である場合、液状の有機紫外線吸収剤の(A)成分に対する含有量は46質量%(液状油21.45質量%、液状の有機紫外線吸収剤10質量%)となる。」(上記意見書7頁)
と主張している(下線は当審合議体が付した。)。
しかしながら、上記(イ)bで説示したとおり、甲1の【0016】には、(A)成分の含有量は「5質量%以下」がさらに好ましいことが記載されているから、(A)成分(「固体状紫外線吸収剤a」)の含有量が当該条件を満たす「2質量%」である甲1発明において、当該成分の含有量を、上記のさらに好ましいとされる範囲の上限値である「5質量%」を超える「8質量%」に増加させることは、当業者において動機付けられるとはいえない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(オ) 小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件訂正発明2~6について
本件訂正発明2は、本件訂正発明1において、「(A)成分中にIOB値が0.10以上0.60以下の成分を65質量%以上含有する」ことを特定するものである。
本件訂正発明3は、本件訂正発明1又は2において、固体状の有機紫外線吸収剤が、
・「2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸へキシルエステル」(「固体状紫外線吸収剤a」)、
・「2,4-ビス{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン」(「固体状紫外線吸収剤b」)、
「及び」
・「2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン」(「固体状紫外線吸収剤c」)
「である」ことを特定するものである。
本件訂正発明4は、本件訂正発明3において、「固体状の有機紫外線吸収剤の(A)成分に対する含有量が10質量%以上35質量%以下」であることを特定するものである。
本件訂正発明5は、本件訂正発明1~4のいずれかにおいて、「(C)成分の疎水化処理がメチルハイドロジェンポリシロキサンを用いた表面処理及びシラン化合物又はシラザン化合物を用いた表面処理からなる群から選択される1種以上の表面処理」であることを特定するものである。
本件訂正発明6は、本件訂正発明1~5のいずれかについて「日焼け止め用途に用いる」ことを特定するものである。
そして、上記イで説示したとおり、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件訂正発明1を更に特定した本件訂正発明2~6も、甲1に記載された発明であるとはいえず、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 甲1を主引例とした場合の取消理由1及び2のまとめ
以上のとおり、本件訂正発明1~6は、甲1に記載された発明であるとはいえず、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件訂正請求項1~6に係る特許は、甲1を主引例とした場合に、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、取り消すことはできない。
(2) 甲2を主引例とした場合について
ア 甲2に記載された発明
上記1(2)の摘記甲2a~摘記甲2iの記載によれば、甲2には、実施例1として、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる(摘記甲2iの【0079】~【0080】【表1】を参照。なお、同【表1】中の「メチルハイドロジェンポリシロキサン表面処理酸化亜鉛粉末(製造例2)」との記載は、摘記甲2h【0076】の「(製造例2 メチルハイドロジェンポリシロキサン表面処理微粒子酸化亜鉛粉末の製造)」との記載からみて、「ジメチルハイドロジェンポリシロキサン表面処理微粒子酸化亜鉛粉末(製造例2)」の誤記と認める。)。
≪甲2発明≫
「下記の成分を含有する水中油型サンスクリーン。
・ポリオキシエチレン(2)ベヘニルエーテル 1質量%
・ジメチコン(動粘度(25℃)6mm2/s) 5.5質量%
・パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル 7.5質量%
・オクトクリレン 0.2質量%
・オクチルトリエトキシシラン表面処理薄片状
酸化亜鉛粉末(製造例1) 4質量%
・メチルハイドロジェンポリシロキサン表面処理
微粒子酸化チタン粉末(製造例3) 6質量%
・グリセリン 2質量%
・エタノール 5質量%
・(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)
コポリマー 1.5質量%
・キサンタンガム 0.1質量%
・エデト酸2ナトリウム 0.02質量%
・純水 残量」
イ 本件訂正発明1について
(ア) 対比
本件訂正発明1と甲2発明とを対比する。
a.
甲2発明における「水中油型サンスクリーン」は、本件訂正発明1における「水中油型乳化化粧料」に相当する。
b.
甲2発明における「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」及び「オクトクリレン」は、「液状の有機紫外線吸収剤」であり(摘記甲2a【請求項7】及び摘記甲2d【0020】)、これらは本件明細書の【0012】~【0013】においても「油溶性有機紫外線吸収剤」であり「液状の有機紫外線吸収剤」として例示されているから、本件訂正発明1における「(A)油溶性有機紫外線吸収剤を含む液状油剤」の「油溶性有機紫外線吸収剤」であり「液状の有機紫外線吸収剤」に相当する。そして、「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」(「液状紫外線吸収剤f」)は、本件明細書の【0018】において、「IOB値=0.28」であり「IOB値が0.10以上である成分」の1つとして例示されているものであるから、本件訂正発明1における「IOB値が0.10以上である成分」にも該当する。
c.
甲2発明における「ジメチコン(動粘度(25℃)6mm2/s)」は、「ジメチコン」が「ジメチルポリシロキサン」の別称であり、甲2において「液状の油剤」中に含まれる「有機紫外線吸収剤以外の化粧料用油剤」として記載され(摘記甲2d【0021】)、本件明細書の【0016】にも、「(A)成分」中に含まれる「有機紫外線吸収剤以外の油剤」として例示されていることから、本件訂正発明1における「(A)油溶性有機紫外線吸収剤を含む液状油剤」の「液状油剤」に相当し、また、本件明細書の【0072】【表1-1】~【0074】【表1-3】において、「ジメチルポリシロキサン6cs(IOB値:0)」と記載されていることから、本件訂正発明1における「IOB値が0.10以上である成分」には該当しないものである。
d.
甲2発明における「(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー」は、本件訂正発明1における「(B)耐塩性水溶性高分子」である「アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウムコポリマー」に相当する。
e.
甲2発明における「オクチルトリエトキシシラン表面処理薄片状酸化亜鉛粉末(製造例1)」及び「メチルハイドロジェンポリシロキサン表面処理微粒子酸化チタン粉末(製造例3)」は、甲2において「疎水化処理微粒子金属酸化物粉末」の具体例として記載された成分であるから(摘記甲2e及び摘記甲2h)、本件訂正発明1における「(C)疎水化処理微粒子金属酸化物粉末」に相当する。
f.
甲2発明の水中油型サンスクリーンが含有する、その他の成分である「ポリオキシエチレン(2)ベヘニルエーテル」、「グリセリン」、「エタノール」、「キサンタンガム」及び「エデト酸2ナトリウム」は、いずれも本件訂正発明1における「(A)成分」~「(C)成分」に該当しないものであるが、本件訂正発明1の水中油型乳化化粧料は、これらの成分を含有することを排除していない。
g.
上記b.及びc.で認定した、甲2発明の水中油型サンスクリーンが含有する、本件訂正発明1における「(A)油溶性有機紫外線吸収剤を含む液状油剤」に該当する3つの成分のうち、「オクトクリレン」はIOB値が不明であるが、その値が仮に0.10以上でなくても、「IOB値が0.10以上である成分」に該当する「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」の含有量の、当該3つの成分の合計量に対する割合は、「56.82質量%」(≒7.5/(5.5+7.5+0.2)×100)であるから、甲2発明は本件訂正発明1における「(A)成分中にIOB値が0.10以上の成分を40質量%以上含有」するとの条件を満たすことになる。
h.
甲2発明の水中油型サンスクリーンは、本件訂正発明1における「(A)油溶性有機紫外線吸収剤を含む液状油剤」に該当する上記3つの成分の合計量の化粧料総量に対する割合が「13.2質量%」(=7.5+0.2+5.5)であるから、甲2発明は本件訂正発明1における「(A)成分を化粧料総量中に10質量%以上20質量%以下含有」するとの条件を満たす。
i.
甲2発明の水中油型サンスクリーンは、本件訂正発明1における「(A)油溶性有機紫外線吸収剤を含む液状油剤」に該当する上記3つの成分の合計量に対する、上記e.で認定した本件訂正発明1における「(C)疎水化処理微粒子金属酸化物粉末」に相当する2つの成分の合計量の質量比が、「0.76」(≒(4+6)/(5.5+7.5+0.2))であるから、甲2発明は本件訂正発明1における「(C)成分の(A)成分に対する含有質量比(C/A)が0.71以上1.0以下」であるとの条件を満たす。
j.
甲2発明の水中油型サンスクリーンは、上記d.で認定した本件訂正発明1における「(B)成分」に該当する「(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー」の化粧料総量に対する割合が「1.5質量%」であるから、甲2発明は本件訂正発明1における「(B)成分を化粧料総量中に0.5質量%以上2.5質量以下含有」するとの条件を満たす。
k.
甲2発明の水中油型サンスクリーンは、上記e.で認定した本件訂正発明1における「(C)成分」に該当する2つの成分の合計量の化粧料総量に対する割合が「10質量%」(=4+6)であるから、本件訂正発明1における「(C)成分を化粧料総量中に8質量%以上12質量%以下含有」するとの条件を満たす。
l.
甲2発明の水中油型サンスクリーンは、上記b.及びc.で認定した、本件訂正発明1における「(A)油溶性有機紫外線吸収剤を含む液状油剤」に該当する上記3つの成分の合計量に対する、本件訂正発明1における「25℃で液状の有機紫外線吸収剤」に該当する「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」(「液状紫外線吸収剤f」)及び「オクトクリレン」の合計の含有量が、「58.33質量%」(≒7.5+0.2)/(7.5+0.2+5.5)×100)であるから、本件訂正発明1における「液状の有機紫外線吸収剤の(A)成分に対する含有量が50質量%以下」であるとの条件を満たさない。
m.
そうすると、本件訂正発明1と甲2発明との間には、次の一致点及び相違点があるものと認められる。
<一致点>
「下記の(A)~(C)成分を含有する、水中油型乳化化粧料であって、
(A)油溶性有機紫外線吸収剤を含む液状油剤
(B)耐塩性水溶性高分子
(C)疎水化処理微粒子金属酸化物粉末
(A)成分中にIOB値が0.10以上の成分を40質量%以上含有し、(A)成分を化粧料総量中に10質量%以上20質量%以下含有し、(C)成分の(A)成分に対する含有質量比(C/A)が0.71以上1.0以下であり、
(B)成分を化粧料総量中に0.5質量%以上2.5質量以下含有し、(C)成分を化粧料総量中に8質量%以上12質量%以下含有し、
(A)成分中に含まれる油溶性有機紫外線吸収剤が、液状の有機紫外線吸収剤を含み、
前記液状の有機紫外線収剤が、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシルであり、
(B)成分が、アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウムコポリマーである、
水中油型乳化化粧料。」
<相違点2-1>
本件訂正発明1は、
「(A)成分中に含まれる油溶性有機紫外線吸収剤が、25℃で固体状の有機紫外線吸収剤のみであるか、又は、25℃で固体状の有機紫外線吸収剤及び液状の有機紫外線吸収剤」
であること、及び、
「前記固体状の有機紫外線吸収剤が、2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸へキシルエステル、2,4-ビス{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、及び2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジンからなる群から選択される1種以上」
であることを特定しているのに対し、甲2発明は、「25℃で固体状の有機紫外線吸収剤」を含むものではない点。
<相違点2-2>
液状の有機紫外線吸収剤の(A)成分に対する含有量が、本件訂正発明1では「50質量%以下」と特定されているのに対し、甲2発明では当該範囲の上限値を超える「58.33質量%」である点。
<相違点2-3>
(A)成分中に含まれる油溶性有機紫外線吸収剤以外の液状油剤として、本件訂正発明1は「エステル油を含有」することを特定しているのに対し、甲2発明は、当該液状油剤として「ジメチコン(動粘度(25℃)6mm2/s)」のみを含有し、「エステル油」を含有していない点。
(イ) 相違点の判断
a 新規性について
上記(ア)m.のとおり、本件訂正発明1と甲2発明とは、相違点2-1~相違点2-3で相違しており、これらの相違点は、いずれも乳化化粧料の具体的な組成の特定に係る事項であるから、実質的な相違点である。
よって、本件訂正発明1は甲2に記載された発明であるとはいえない。
b 進歩性について
事案に鑑み、まず相違点2-1について検討する。
甲2には「本発明においては、紫外線防御効果を高めるため、液状の有機紫外線吸収剤を含有することが好ましい。」(摘記甲2d【0019】)と記載されているが、「25℃で固体状の有機紫外線吸収剤」に該当する成分を含有するものとすることについては、一般的な説明や例示、実施例・処方例等も含めて、甲2には何らの記載も示唆もされていない。
そうすると、甲2発明において、更に「25℃で固体状の有機紫外線吸収剤」に該当する成分を含有するものとすること、ましてや、
・「2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸へキシルエステル」(「固体状紫外線吸収剤a」)、
・「2,4-ビス{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン」(「固体状紫外線吸収剤b」)、又は
・「2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン」(「固体状紫外線吸収剤c」)
という特定の固体状紫外線吸収剤を選択し採用することは、当業者において動機付けられるとはいえない。
したがって、甲2発明において、相違点2-1に係る構成を満たすものとすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、相違点2-2及び相違点2-3について検討をするまでもなく、本件訂正発明1は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(ウ) 甲2に記載された他の実施例等について
令和5年3月22日付け取消理由通知書の第3の2(2)イ(ア)kにおいて指摘したように、甲2には、上記甲2発明の認定の根拠とした実施例1の他にも、本件訂正前の本件発明1とは構成上の差違がない水中油型乳化化粧料が、比較例1~4、実施例7、14及び参考例1として記載されている。
しかしながら、これらはいずれも本件訂正発明1の特定事項を全て満たすものでなく、上記(イ)bで説示したのと同様の理由により、これらの化粧料について上記特定の固体状紫外線吸収剤を更に含有するものとすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
(エ) 小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえないし、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件訂正発明2、5~6について
上記イで説示したとおり、本件訂正発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえず、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件訂正発明1を更に特定した本件訂正発明2、5~6も、甲2に記載された発明であるとはいえず、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 甲2を主引例とした場合の取消理由1及び2のまとめ
以上のとおり、本件訂正発明1~2、5~6は、甲2に記載された発明であるとはいえず、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件訂正請求項1~2、5~6に係る特許は、甲2を主引例とした場合に、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、取り消すことはできない。
(3) 甲3を主引例とした場合について
ア 甲3に記載された発明
上記1(3)の摘記甲3a~摘記甲3hの記載によれば、甲3には、処方例1として、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる(特に、摘記甲3hの【0081】、【0082】【表3】、【0083】を参照。)。
≪甲3発明≫
「下記の成分を含有する水中油型皮膚化粧料。
・シリコーン処理蛍光性酸化亜鉛 3質量%
・パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル 7質量%
・ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸へキシル 2質量%
・エチルへキシルトリアゾン 1質量%
・安息香酸アルキル(C12~15) 0.55質量%
・イソヘキサデカン 0.45質量%
・アクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリン酸
ナトリウム共重合体 0.75質量%
・モノステアリン酸ソルビタン 1質量%
・モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン 0.5質量%
・モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン 0.15質量%
・オレイン酸ソルビタン 0.05質量%
・シリコーン処理酸化亜鉛 10質量%
・デカメチルシクロペンタシロキサン 1質量%
・ステアリルアルコール 1質量%
・1,3-ブチレングリコール 1質量%
・エタノール 8質量%
・精製水 バランス」
イ 本件訂正発明1について
(ア) 対比
本件訂正発明1と甲3発明とを対比する。
a.
甲3発明における「水中油型皮膚化粧料」は、本件訂正発明1における「水中油型乳化化粧料」に相当する。
b.
甲3発明における「ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸へキシル」は、「ユビナールAplus」という製品名の紫外線吸収剤であり(摘記甲3c【0020】)、本件明細書の【0015】に「UVINULAPLUS」という市販品名が示されている「2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸へキシルエステル」に相当するものと認められ、本件明細書の【0012】及び【0014】において「油溶性有機紫外線吸収剤」であり「固体状の有機紫外線吸収剤」として記載されているものであるから、本件訂正発明1における「(A)油溶性有機紫外線吸収剤を含む液状油剤」に含まれる「油溶性有機紫外線吸収剤」の1つである「2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸へキシルエステル」(「固体状紫外線吸収剤a」)に相当し、また、本件明細書の【0018】において、「IOB値=0.68」であり「IOB値が0.10以上である成分」の1つとして例示されているから、本件訂正発明1における「IOB値が0.10以上である成分」にも該当する。
甲3発明における「エチルへキシルトリアゾン」は、紫外線吸収剤である「2,4,6-トリス[4-(2-エチルへキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン」の別名称であって(摘記甲3c【0019】)、本件明細書の【0012】及び【0014】において「油溶性有機紫外線吸収剤」であり「固体状の有機紫外線吸収剤」とされているものであるから、本件訂正発明1における「(A)油溶性有機紫外線吸収剤を含む液状油剤」に含まれる「油溶性有機紫外線吸収剤」の1つである「2,4,6-トリス[4-(2-エチルへキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン」(「固体状紫外線吸収剤c」)に相当し、また、本件明細書の【0018】において、「IOB値=0.55」であり「IOB値が0.10以上である成分」の1つとして例示されているから、本件訂正発明1における「IOB値が0.10以上である成分」にも該当する。
甲3発明における「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」は、紫外線吸収剤であり(摘記甲3c【0020】)、本件明細書の【0012】~【0013】においても「油溶性有機紫外線吸収剤」である「液状の有機紫外線吸収剤」として例示されているから、本件訂正発明1における「(A)油溶性有機紫外線吸収剤を含む液状油剤」に含まれる「油溶性有機紫外線吸収剤」の1つである「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」(「液状紫外線吸収剤f」)に相当し、また、本件明細書の【0018】において、「IOB値=0.28」であり「IOB値が0.10以上である成分」の1つとして例示されているから、本件訂正発明1における「IOB値が0.10以上である成分」にも該当する。
c.
甲3発明における「安息香酸アルキル(C12~15)」は、甲3において、紫外線吸収剤である成分(B)以外の「25℃で液体状である不揮発性油」として記載されており(摘記甲3d【0022】及び【0026】)、本件明細書の【0016】においても、「(A)成分」中に含まれる「有機紫外線吸収剤以外の油剤」である「エステル油」の1つとして例示されているから、本件訂正発明1における「(A)油溶性有機紫外線吸収剤を含む液状油剤」である「液状油剤」としての「エステル油」に相当し、また、本件明細書の【0018】において、「IOB値=0.184」であり「IOB値が0.10以上である成分」の1つとして例示されているから、本件訂正発明1における「IOB値が0.10以上である成分」にも該当する。
甲3発明における「イソヘキサデカン」は、甲3において、紫外線吸収剤である成分(B)以外の「25℃で液体状である不揮発性油」として記載されているから(摘記甲3d【0022】及び【0028】)、本件発明1における「(A)油溶性有機紫外線吸収剤を含む液状油剤」の「液状油剤」に相当する。また、上記(1)イ(ア)b.で述べたように、摘記甲5a及び摘記甲6aを参照すれば、「イソヘキサデカン」は、そのIOB値が0.05よりも低いものであるといえるので、本件訂正発明1における「IOB値が0.10以上である成分」には該当しないものである。
甲3発明における「デカメチルシクロペンタシロキサン」は、甲3において紫外線吸収剤である成分(B)以外の「25℃で液体状である揮発性油」として記載されているから(摘記甲3f【0045】及び【0048】)、本件訂正発明1における「(A)油溶性有機紫外線吸収剤を含む液状油剤」の「液状油剤」に相当し、また、その構造から「シクロペンタシロキサン」とも略記されるところ、本件明細書の【0072】【表1-1】~【0074】【表1-3】に「シクロペンタシロキサン(IOB値:0)」と記載されていることから、本件訂正発明1における「IOB値が0.10以上である成分」には該当しないものである。
d.
甲3発明における「アクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体」は、本件訂正発明1における「(B)耐塩性水溶性高分子」である「アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウムコポリマー」に相当する。
e.
甲3発明における「シリコーン処理酸化亜鉛」は、甲3において、疎水化処理された紫外線散乱剤である微粒子化された酸化亜鉛の具体例として記載されている成分であるから(摘記甲3g【0050】~【0054】及び摘記甲3h【0079】)、本件訂正発明1における「(C)疎水化処理微粒子金属酸化物粉末」に相当する。
f.
甲3発明の水中油型皮膚化粧料が含有するその他の成分である「シリコーン処理蛍光性酸化亜鉛」、「モノステアリン酸ソルビタン」、「モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン」、「モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン」、「オレイン酸ソルビタン」、「ステアリルアルコール」及び「エタノール」は、いずれも本件訂正発明1における「(A)成分」~「(C)成分」に該当しないものと認められるが、本件訂正発明1の水中油型乳化化粧料は、これらの成分を含有することを排除していない。
g.
上記b.及びc.において認定した、甲3発明の水中油型皮膚化粧料が含有する本件訂正発明1における「(A)油溶性有機紫外線吸収剤を含む液状油剤」に該当する6つの成分のうち、「IOB値が0.10以上である成分」に該当する「ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸へキシル」、「エチルへキシルトリアゾン」、「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」及び「安息香酸アルキル(C12~15)」の合計量の、当該6つの成分の合計量に対する割合は、「87.9質量%」(≒(2+1+7+0.55)/(2+1+7+0.55+0.45+1)×100)であるから、甲3発明は本件訂正発明1における「(A)成分中にIOB値が0.10以上の成分を40質量%以上含有」するとの条件を満たす。
h.
甲3発明の水中油型皮膚化粧料において、本件訂正発明1における「(A)油溶性有機紫外線吸収剤を含む液状油剤」に該当する上記6つの成分の合計量の化粧料総量に対する割合は、「12.0質量%」(=2+1+7+0.55+0.45+1)であるから、甲3発明は本件訂正発明1における「(A)成分を化粧料総量中に10質量%以上20質量%以下含有」するとの条件を満たす。
i.
甲3発明の水中油型皮膚化粧料において、本件訂正発明1における「(A)油溶性有機紫外線吸収剤を含む液状油剤」に該当する上記6つの成分の合計量に対する、上記e.で認定した本件発明1における「(C)疎水化処理微粒子金属酸化物粉末」に相当する成分の含有量の質量比は、「0.83」(≒10/(2+1+7+0.55+0.45+1))であるから、甲3発明は本件訂正発明1における「(C)成分の(A)成分に対する含有質量比(C/A)が0.71以上1.0以下」であるとの条件を満たす。
j.
甲3発明の水中油型皮膚化粧料は、上記d.で認定した本件訂正発明1における「(B)成分」に該当する「アクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体」の化粧料総量に対する割合が「0.75質量%」であるから、甲3発明は本件訂正発明1における「(B)成分を化粧料総量中に0.5質量%以上2.5質量以下含有」するとの条件を満たす。
k.
甲3発明の水中油型皮膚化粧料は、上記e.で認定した本件訂正発明1における「(C)成分」に該当する「シリコーン処理酸化亜鉛」の化粧料総量に対する割合が「10質量%」であるから、本件訂正発明1における「(C)成分を化粧料総量中に8質量%以上12質量%以下含有」するとの条件を満たす。
l.
甲3発明の水中油型皮膚化粧料は、上記b.及びc.で認定した本件訂正発明1における「(A)油溶性有機紫外線吸収剤を含む液状油剤」に該当する上記6つの成分の合計量に対する、本件訂正発明1における「25℃で液状の有機紫外線吸収剤」に該当する「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」(「液状紫外線吸収剤f」)の含有量が、「58.33質量%」(≒7/(2+1+7+0.55+0.45+1)×100)であるから、本件訂正発明1における「液状の有機紫外線吸収剤の(A)成分に対する含有量が50質量%以下」であるとの条件を満たさない。
m.
そうすると、本件訂正発明1と甲3発明との間には、次の一致点及び相違点があるものと認められる。
<一致点>
「下記の(A)~(C)成分を含有する、水中油型乳化化粧料であって、
(A)油溶性有機紫外線吸収剤を含む液状油剤
(B)耐塩性水溶性高分子
(C)疎水化処理微粒子金属酸化物粉末
(A)成分中にIOB値が0.10以上の成分を40質量%以上含有し、(A)成分を化粧料総量中に10質量%以上20質量%以下含有し、(C)成分の(A)成分に対する含有質量比(C/A)が0.71以上1.0以下であり、
(B)成分を化粧料総量中に0.5質量%以上2.5質量以下含有し、(C)成分を化粧料総量中に8質量%以上12質量%以下含有し、
(A)成分中に含まれる油溶性有機紫外線吸収剤が、25℃で固体状の有機紫外線吸収剤のみであるか、又は、25℃で固体状の有機紫外線吸収剤及び液状の有機紫外線吸収剤であり、
前記固体状の有機紫外線吸収剤が、2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸へキシルエステル、2,4-ビス{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、及び2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジンからなる群から選択される1種以上であり、
前記液状の有機紫外線吸収剤が、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシルであり、
(A)成分中に含まれる前記油溶性有機紫外線吸収剤以外の液状油剤として、エステル油を含有し、
(B)成分が、アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウムコポリマーである、
水中油型乳化化粧料。」
<相違点3-1>
液状の有機紫外線吸収剤の(A)成分に対する含有量が、本件訂正発明1では「50質量%以下」と特定されているのに対し、甲3発明では当該範囲の上限値を超える「58.33質量%」である点。
(イ) 相違点の判断
a 新規性について
上記(ア)m.のとおり、本件訂正発明1と甲3発明とは、相違点3-1で相違しており、この相違点は乳化化粧料の具体的な組成の特定に係る事項であるから、実質的な相違点である。
よって、本件訂正発明1は甲3に記載された発明であるとはいえない。
b 進歩性について
(a) 相違点3-1に係る構成の技術的意義について
本件明細書(特に、【0006】)の記載からみて、本件訂正発明1は、
「優れた紫外線防御効果を有し、経時安定性、及び耐水性が良好で、かつ優れた耐摩擦性を有する水中油型乳化化粧料を提供すること」
を解決すべき課題とするものと認められ、当該課題を解決するための手段として、本件訂正請求項1に記載の各特定事項が採用されており、その一部として、他の特定事項と組み合わせて、上記相違点3-1に係る
「液状の有機紫外線吸収剤の(A)成分に対する含有量が50質量%以下」
という構成を備えたものであると認められる。
そして、当該構成の技術的意義について、本件明細書の【0022】に、
「液状の有機紫外線吸収剤の(A)成分に対する含有量は、15質量%以上が好ましく、・・・、35質量%以上がさらに好ましく、また60質量%以下が好ましく、・・・、50質量%以下がさらに好ましい。具体的には、15~60質量%が好ましく、・・・、35~50質量%がさらに好ましい。当該範囲内であれば、良好な紫外線防御効果が得られるとともに、経時安定性及び使用感も良好である。」
という説明が記載されている。
また、本件明細書に記載された「実施例」の具体的な水中油型乳化化粧料のうち、本件訂正発明1の特定事項を全て満たすのは、実施例1、2及び9であるところ(【0072】【表1-1】、【0073】【表1-2】)、そのうち実施例1及び2については、液状の有機紫外線吸収剤の(A)成分に対する含有量が「43.63質量%」(≒7.2/(2+2+1.3+7.2+1+1+2)×100)であり、(C)成分の化粧料総量中の含有量が「12質量%」であり、「UV防御能」、「耐水性」、「経時安定性」、「使用感」及び「耐摩擦性」の全ての項目の評価結果について、5段階評価で最高の「A」であるとされている。
一方、実施例3については、(C)成分の化粧料総量中の含有量が「15質量%」であり、当該含有量を「8質量%以上12質量%以下」と規定する本件訂正発明1の要件を満たさないこと以外は、液状の有機紫外線吸収剤の(A)成分に対する含有量が「43.63質量%」である点を含め、実施例1及び2と成分組成が同一であるが、「UV防御能」、「経時安定性」及び「使用感」の評価結果については、「B」になっている。
このような実施例1及び2と実施例3との間における、成分組成の違いに基づく、「UV防御能」、「経時安定性」及び「使用感」の評価結果の優劣の対応関係からみて、本件訂正発明1における「液状の有機紫外線吸収剤の(A)成分に対する含有量が50質量%以下」という構成は、他の特定事項(特に、「(C)成分を化粧料総量中に8質量%以上12質量%以下含有」するとの要件)との組み合わせにより、上記【0022】に記載された説明とも整合して、より優れた効果の発揮に寄与していることが理解できる。
(b) 甲3における課題の解決と紫外線吸収剤との関係について
これに対して、甲3は、摘記甲3b【課題を解決するための手段】【0008】の記載によれば、
「化粧料の保存安定性に優れるとともに、紫外線防御効果と、使用環境にかかわらず、自然な肌の明るさを得る効果とがバランスよく発現され、・・・自然な肌の明るさ等の耐環境性に優れる水中油型皮膚化粧料・・・」
に関するものであり、その解決すべき課題は、「保存安定性」及び「紫外線防御効果」という観点では、本件訂正発明1の課題と部分的に重複するが、「自然な肌の明るさを得る効果」との「バランス」という本件訂正発明1と異なる観点の課題を前提とするものであり、当該課題を解決するための手段の一部として、甲3発明では、特定の「紫外線吸収剤」等の成分とともに、「特定の大きさの蛍光性酸化亜鉛」(「シリコーン処理蛍光性酸化亜鉛」)を用いるものである。
そして、甲3には、摘記甲3c【0019】~【0020】に、「紫外線吸収剤」である「成分(B)」として、多数のものが例示列記されており、それらの中には、
「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」(「液状紫外線吸収剤f」)及び「オクトクリレン」等の液状の有機紫外線吸収剤と、
「2,4,6-トリス[4-(2-エチルへキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン」(「固体状紫外線吸収剤c」)、「ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル」(「固体状紫外線吸収剤a」)及び「ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン」(「固体状紫外線吸収剤b」)等の固体状の有機紫外線吸収剤が、
それらの性状を区別することなく並列して記載されており、それに続く摘記甲3c【0021】には、
「化粧料中の成分(B)の含有量は、化粧料の紫外線防御効果を向上させる観点、および、自然な肌の明るさを向上させる観点から、化粧料全体に対して1質量%以上であり、・・・、さらにより好ましくは5質量%以上であり、また、15質量%以下であり、・・・、さらに好ましくは10質量%以下である。」
と記載され、「紫外線吸収剤」である「成分(B)」の化粧料中の含有量については、液状であるか固体状であるかを区別しないで、全体として、より好ましい範囲の下限値が「5質量%」である旨が示されているに過ぎない。
(c) 甲3発明における相違点3-1に係る構成の採用について
上記(a)及び(b)で検討した点を踏まえると、甲3において、「自然な肌の明るさを向上させる」という、本件訂正発明1とは異なる観点も含めて、液状か固体状かを区別することなく、単に有機紫外線吸収剤の全体としての好ましい含有量の下限値として「5質量%」が示されているからといって、本件訂正発明1における、「(C)成分を化粧料総量中に8質量%以上12質量%以下含有」すること等の特定事項との組み合わせによって、「液状の有機紫外線吸収剤の(A)成分に対する含有量が50質量%以下」であるという構成に基づく、より優れた効果の発揮への寄与について、何ら開示するところのない甲3の記載からは、甲3発明の水中油型乳化化粧料において、「液状の有機紫外線吸収剤の(A)成分に対する含有量が50質量%以下」との条件を満たすように、敢えて一部の成分組成のみを変更して、相違点3-1に係る構成を備えたものとすることは、当業者において動機付けられるとはいえない。
(d) 甲3発明に基づく進歩性の判断のまとめ
したがって、甲3の記載全体を考慮したとしても、甲3発明の一部の成分組成のみを変更して、相違点3-1に係る構成を満たすものとすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、本件訂正発明1は、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(ウ) 甲3に記載された他の実施例について
令和5年3月22日付け取消理由通知書の第3の2(3)イ(ア)kにおいて指摘したように、甲3には、甲3発明の認定の根拠とした処方例1の他に、本件訂正前の本件発明1と構成上の差違がない水中油型皮膚化粧料が、実施例4として記載されている。
しかしながら、当該化粧料は、本件訂正発明1の特定事項の全てを満たすものではなく、特に、「固体状の有機紫外線吸収剤」に該当する成分を全く含有しないものであるところ、当該化粧料の成分組成を変更して、本件訂正発明1の特定事項の全てを満たすものとすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
(エ) 申立人の主張について
a 申立人の主張の概要
申立人は、令和5年7月7日付け意見書において、甲3に基づく本件訂正発明1の進歩性欠如について、概略、次のように主張している。
(a) 相違点3-1に係る構成に基づく効果について
本件訂正発明1の、甲3発明との相違点は、「液状の有機紫外線吸収剤の(A)成分に対する含有量が50質量%以下である」ことのみであるから、当該相違点により奏する効果が進歩性の肯定に寄与するか否かを論ずるべきであり、本件明細書を参酌しても、「液状の有機紫外線吸収剤の(A)成分に対する含有量が50質量%以下である」ことの効果は把握されない。
(上記意見書10頁)
(b) 甲3発明における液状の有機紫外線吸収剤の含有量の変更について
甲3発明における「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」の(A)成分中の含有量は、7/(7+2+1+0.55+0.45+1)=58%であり、甲3発明において「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」の含有量を「7質量%」から「6質量%」に変更すれば、「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」の(A)成分中の含有量は「50質量%」以下となる。
甲3には、【0021】に、紫外線吸収剤である成分(B)について、
「化粧料中の成分(B)の含有量は、化粧料の紫外線防御効果を向上させる観点、および、自然な肌の明るさを向上させる観点から、化粧料全体に対して1質量%以上であり、・・・、さらにより好ましくは5質量%以上であり、また、15質量%以下であり、・・・、さらに好ましくは10質量%以下である。」
とあり、「5~10質量%」であることが特に好ましいこと、甲3の処方例2には、「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」を「5質量%」配合することが開示されていることから、甲3発明において「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」の含有量を「7質量%」から「6質量%」に変更することは、「各成分の含有量を近接範囲で変更する」ことに相当し、当業者が容易になし得ることである。
(上記意見書11頁)
(c) 甲3の処方例2に基づく進歩性欠如について
甲3の「処方例2」(【0082】【表3】)には、以下の記載がある。
「下記の成分を含有する水中油型皮膚化粧料。
・シリコーン処理蛍光性酸化亜鉛 2質量%
・パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル 5質量%
・ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニル
トリアジン 2質量%
・ジカプリン酸ネオペンチルグリコール 3.5質量%
・ジメチルポリシロキサン 0.5質量%
・イソヘキサデカン 0.3質量%
・アクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリン酸
ナトリウム共重合体 0.5質量%
・モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン 1質量%
・モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン 0.1質量%
・オレイン酸ソルビタン 0.03質量%
・シリコーン処理酸化亜鉛 8質量%
・シリコーン処理酸化チタン 4質量%
・ステアリルアルコール 1質量%
・シリコーン処理酸化鉄(SI-ベンガラ 七宝) 0.25質量%
・シリコーン処理酸化鉄(SI-イエロー) 0.5質量%
・シリコーン処理酸化鉄(SI-ブラック) 0.02質量%
・シリカ 1質量%
・精製水 バランス」
上記「処方例2」は、本件訂正発明1における、
(A)成分に該当する:
・パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル(IOB値0.28)、
・ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン
(IOB値0.43)、
・ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(IOB値0.25)、
・ジメチルポリシロキサン(IOB値0)、
・イソヘキサデカン(IOB値0.1未満)、
(B)成分に該当する:
・アクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム
共重合体、
(C)成分に該当する:
・シリコーン処理酸化亜鉛、
・シリコーン処理酸化チタン
を含む。
ここで、「ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン」は、BASF社製の「チノソーブS」であり(【0083】)、本件明細書の【0075】にあるように、「2,4-ビス{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン」(当審注:「固体状紫外線吸収剤b」)に相当する。
(A)成分の含有量は、5質量%+2質量%+3.5質量%+0.5質量%+0.3質量%=11.3質量%であり、
(B)成分の含有量は、0.5質量%であり、
(C)成分の含有量は、8質量%+4質量%=12質量%である。
また、(A)成分中の「液状の有機紫外線吸収剤」の量は、5/11.3×100=44質量%である。
さらに、(A)成分中のIOB値が0.10以上の成分を、(5質量%+2質量%+3.5質量%)/11.3質量%×100=93質量%含む。
ここで、ジカプリン酸ネオペンチルグリコールのIOB値は、甲4の【0013】に記載のとおり、0.25である。
したがって、本件訂正発明1と、甲3の処方例2とでは、本件訂正発明1における(C/A)が「0.71以上1.0以下」であるのに対し、甲3の処方例2では、(C/A)が12/11.3=「1.06」である点が相違する。
しかしながら、上記処方例2において、(A)成分である液状油をわずか0.7質量%増加させるだけで、(C/A)=「1.0」となる。そして、甲3の【0032】において、化粧料中の紫外線吸収剤以外の液体状の不揮発性油の含有量については、
「化粧料の紫外線防御効果を向上させる観点から、化粧料全体に対して1質量%以上であり、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、また、20質量%未満であり、好ましくは18質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。」
とあることから、紫外線防御効果を向上させる観点から、甲3の処方例2の成分(C)紫外線吸収剤以外の液体状の不揮発性油の添加量を4.3質量%から3.6質量%に変更し、(C/A)=「1.0」とすることは当業者が容易に行いうる。
また、本件明細書を参酌しても、C/Aが「1.0」を超える範囲については、比較例が示されていないため、C/Aを「1.0」以下とすることの効果は参酌されない。
(上記意見書11~13頁)
b 申立人の主張についての判断
当審合議体は、上記aに示した申立人の主張(a)~(c)は、いずれも採用できないと判断する。その理由は以下のとおりである。
(a) 申立人の主張(a)について
上記(イ)bで説示したとおり、本件明細書に記載された実施例1及び2と実施例3との比較により、本件訂正発明1における「液状の有機紫外線吸収剤の(A)成分に対する含有量が50質量%以下」という構成は、他の特定事項(特に、「(C)成分を化粧料総量中に8質量%以上12質量%以下含有」するとの要件)との組み合わせにより、特に、「UV防御能」、「経時安定性」及び「使用感」の点において、本件明細書の【0022】に記載の説明とも整合する、より優れた効果の発揮に寄与することが理解できる。
したがって、申立人の上記主張(a)は採用できない。
(b) 申立人の主張(b)について
上記(イ)bで説示したとおり、甲3において、本件訂正発明1とは異なる観点の課題の解決も含めて、液状か固体状かを区別することなく、単に有機紫外線吸収剤の全体としての好ましい含有量の下限値として「5質量%」が示されているからといって、本件訂正発明1における、「(C)成分を化粧料総量中に8質量%以上12質量%以下含有」すること等の特定事項との組み合わせによって、「液状の有機紫外線吸収剤の(A)成分に対する含有量が50質量%以下」であるという構成に基づく、より優れた効果の発揮への寄与について何ら開示するところのない甲3の記載から、甲3発明の化粧料において、「液状の有機紫外線吸収剤の(A)成分に対する含有量が50質量%以下」との条件を満たすように、敢えて一部の成分組成のみを変更し、相違点3-1に係る構成を備えたものとすることは、当業者において動機付けられるとはいえない。
また、甲3発明の認定の根拠とした「処方例1」とは、成分組成が多くの点で相違する「処方例2」の水中油型皮膚化粧料において、「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」が「5質量%」配合されていても、そのことによって上記判断は何ら左右されるものではない。
したがって、申立人の上記主張(b)は採用できない。
(c) 申立人の主張(c)について
申立人の上記主張(c)における
「処方例2の成分(C)紫外線吸収剤以外の液体状の不揮発性油の添加量を4.3質量%から3.6質量%に変更し、・・・」
との部分(上記意見書13頁)については、その前後の内容からみて、
「処方例2の成分(C)紫外線吸収剤以外の液体状の不揮発性油の添加量を4.3質量%から5.0質量%に変更し、・・・」
とすべきところを誤記したものであると推定されるが、そのように解したとしても、特定の成分組成を有する「処方例2」の化粧料において、その他の成分の含有量は維持したまま、敢えて不揮発性油の添加量のみを増加させて特定の値とする動機付けがあるとはいえない。
したがって、申立人の上記主張(c)は採用できない。
(オ) 小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲3に記載された発明であるとはいえないし、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件訂正発明2~6について
上記イで説示したとおり、本件訂正発明1は、甲3に記載された発明であるとはいえず、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件訂正発明1を更に特定した本件訂正発明2~6も、甲3に記載された発明であるとはいえず、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 甲3を主引例とした場合の取消理由1及び2のまとめ
以上のとおり、本件訂正発明1~6は、甲3に記載された発明であるとはいえず、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件訂正請求項1~6に係る特許は、甲3を主引例とした場合に、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、取り消すことはできない。
3 取消理由3(サポート要件違反)について
(1) 本件発明が解決すべき課題について
本件明細書(特に、【0002】~【0006】)の記載によれば、従来の水中油型乳化型の日焼け止め化粧料においては、紫外線防御効果を高めるために、紫外線吸収剤及び酸化亜鉛や酸化チタン等の金属酸化物粉末が用いられているが、金属酸化物粉末を多く配合すると、経時で粉末の凝集、沈降等が生じるばかりでなく、粘度低下、乳化分離、析出等の経時安定性の低下が起こるという問題があり、これらの問題を改善するため、(アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリン)コポリマー等の水溶性高分子を用いた水中油型乳化化粧料等が提案されているところ、これらの水中油型乳化組成物では、水中油型乳化組成物の経時安定性は改善されているが、十分な紫外線防御効果が得られないという問題があり、この問題に対して、有機紫外線吸収剤や金属酸化物粉末を溶解・分散し得る液状油を高配合することで十分な紫外線防御能力を発揮することができると考えられるものの、液状油の高配合により、耐水、耐汗性が悪くなり、実使用における紫外線防御効果(耐久性)が低下してしまう、塗膜が摩擦によって変形、崩壊しやすい、という問題が生じることが判明した、とされている。
そして、上記のような背景技術を前提として、本件訂正発明1~6が解決すべき課題は、いずれも共通して、
「優れた紫外線防御効果を有し、経時安定性、及び耐水性が良好で、かつ優れた耐摩擦性を有する水中油型乳化化粧料を提供すること」
であると認められる。
(2) 特許請求の範囲の記載と課題解決の対応関係について
ア 本件訂正請求項1について
(ア) 本件訂正発明1の特定事項
上記第3に摘記した本件訂正請求項1の記載によれば、本件訂正発明1の「水中油型乳化化粧料」は、
(A)成分として「油溶性有機紫外線吸収剤」を含む「液状油剤」、
(B)成分として「耐塩性水溶性高分子」、及び、
(C)成分として「疎水化処理微粒子金属酸化物粉末」
を含有するものであり、
(A)成分の化粧料総量中の含有量が「10質量%以上20質量%以下」であり、
(B)成分の化粧料総量中の含有量が「0.5質量%以上2.5質量以下」であり、
(C)成分の化粧料総量中の含有量が「8質量%以上12質量%以下」であり、
(A)成分中の「IOB値が0.10以上の成分」の含有量が「40質量%以上」であり、
(C)成分の(A)成分に対する含有質量比(C/A)が「0.71以上1.0以下」であり、
(A)成分中に含まれる「油溶性有機紫外線吸収剤」が、「25℃で固体状の有機紫外線吸収剤のみ」であるか、又は、「25℃で固体状の有機紫外線吸収剤」及び「液状の有機紫外線吸収剤」であり、
「液状の有機紫外線吸収剤」の(A)成分に対する含有量が「50質量%以下」であり、
「固体状の有機紫外線吸収剤」が、
・「2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸へキシルエステル」(「固体状紫外線吸収剤a」)、
・「2,4-ビス{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン」(「固体状紫外線吸収剤b」)、及び、
・「2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン」(「固体状紫外線吸収剤c」)
からなる群から選択される1種以上であり、
「液状の有機紫外線吸収剤」が、「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」(「液状紫外線吸収剤f」)であり、
(A)成分中に含まれる「油溶性有機紫外線吸収剤」以外の「液状油剤」として、「エステル油」を含有し、
(B)成分が「アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウムコポリマー」である、
ことが特定されている。
(イ) 課題の解決と本件訂正発明1の対応関係
a 実施例の組成物による課題の解決と本件訂正発明1の対応関係
(a) 本件訂正発明1の範囲内の実施例について
本件明細書の発明の詳細な説明において具体的に記載された「実施例」の水中油型乳化化粧料のうち、本件訂正発明1で規定する特定事項を全て満たしているのは、実施例1、2及び9の3つの組成物である。
なお、実施例4~8、10~15の組成物は、審査段階の手続補正により請求項1が減縮されたため、本件訂正前の本件発明1の範囲外となり、実施例3及び16の組成物は、本件訂正により請求項1が更に減縮されたため、本件訂正発明1の範囲外となった。
これらの本件訂正発明1の範囲内である実施例1、2及び9の3つの水中油型乳化化粧料は、いずれも、(A)成分中の「油溶性有機紫外線吸収剤」として、
・「2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸へキシルエステル」(ユビナールAplus、IOB値=0.68)(「固体状紫外線吸収剤a」)、
・「2,4-ビス{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン」(TinosorbS、IOB値=0.43)(「固体状紫外線吸収剤b」)、及び、
・「2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン」(ユビナールT150、IOB値=0.55)(「固体状紫外線吸収剤c」)
の3種の「固体状の有機紫外線吸収剤」が併用され、さらに、「液状の有機紫外線吸収剤」である
・「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」(ユビナールMC80、IOB値=0.28)(「液状紫外線吸収剤f」)
を組み合わせたものとされており、
当該「液状の有機紫外線吸収剤」の(A)成分に対する含有量が、43.63質量%(実施1、2)又は17.65質量%(実施例9)であり、
(A)成分中の「有機紫外線吸収剤」以外の「液状油剤」として、少なくとも、「イソノナン酸イソノニル」(IOB値=0.12)、「パルミチン酸イソプロピル」(IOB値=0.16)及び「トリエチルヘキサノイン」(IOB値=0.35)、の3種の「エステル油」が併用されており、
(A)成分の化粧料総量中の含有量は、16.5質量%(実施例1、2)又は17.0質量%(実施例9)であり、
(B)成分は、実施例1、2及び9いずれも、「アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウムコポリマー」(シマルゲルEG)が用いられ、その化粧料総量中の含有量は、いずれも2.3質量%であり、
(C)成分は、実施例1では、「オクチルトリエトキシシラン表面処理微粒子酸化亜鉛粉末(製造例2)」が用いられ、実施例2及び9では、「メチルハイドロジェンポリシロキサン表面処理微粒子酸化亜鉛粉末(製造例3)」が用いられており、それらの化粧料総量中の含有量は、いずれも12質量%であり、
(A)成分中の「IOB値が0.10以上の成分」の含有量は、100.0質量%(実施例1、2)又は76,5質量%(実施例9)であり、
(C)成分の(A)成分に対する含有質量比(C/A)は、0.73(実施例1、2)又は0.71(実施例9)である。
これら3つの実施例の水中油型乳化化粧料の効果に関し、実施例1及び2は、「UV防御能」、「耐水性」、「経時安定性」、「使用感」及び「耐摩擦性」の5つ全ての項目の評価結果が、5段階評価で最高の「A」であり、実施例9は、「UV防御能」及び「経時安定性」の評価結果は「B」であるものの、残りの3つの項目の評価結果は「A」である。
そうすると、上記実施例1、2及び9の水中油型乳化化粧料については、上記(1)で認定した、
「優れた紫外線防御効果を有し、経時安定性、及び耐水性が良好で、かつ優れた耐摩擦性を有する水中油型乳化化粧料を提供すること」
という課題を解決することができると、当業者が認識し得るといえる。
(b) 本件訂正発明1の範囲外の実施例について
上記(a)で述べたとおり、本件明細書に記載された実施例3~8、10~16の水中油型乳化化粧料は、本件訂正発明1の範囲外の組成物であるが、特に、実施例3及び16は、(C)成分の含有量が「15質量%」又は「13質量%」であり、上限値の「12質量%」を超えており、実施例4、5及び15は、(C)/(A)質量含有比が「0.66」又は「0.65」であり、下限値の「0.71」を下回っており、実施例6~8は、(B)成分として異なる物質が用いられており、実施例12は、(C)/(A)質量含有比が「0.40」であり、下限値の「0.71」を下回っている。
しかしながら、このような本件訂正発明1に規定する要件を僅かに外れる実施例であっても、「UV防御能」、「耐水性」、「経時安定性」、「使用感」及び「耐摩擦性」の5つの評価項目についてみると、全てが「A」評価である実施例1及び2に比べれば劣るものの、実施例3~6は、1項目又は3項目が「B」評価であるが、残りの項目は全て「A」評価であり、実施例7、8及び12は、1項目のみ「C」評価であるが、残りの項目は「B」又は「A」評価であり、1項目以上は「A」評価であり、実施例15及び16は、5項目全ての点において優れていたとされているから、これらの実施例についても、上記(1)で認定した、
「優れた紫外線防御効果を有し、経時安定性、及び耐水性が良好で、かつ優れた耐摩擦性を有する水中油型乳化化粧料を提供すること」
という課題を解決することができると、当業者が認識し得るといえる。
b 実施例以外の組成物による課題の解決と本件訂正発明1の対応関係
(a) 本件訂正発明1の範囲について
本件訂正発明1の水中油型乳化化粧料は、上記実施例1、2及び9の水中油型乳化化粧料と比較すると、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の化粧料総量中の含有量が、それぞれ、実施例1、2及び9における各含有量を包含しているが、それらに限定されない範囲とされており、(A)成分中に含まれる油溶性有機紫外線吸収剤以外の「液状油剤」として「エステル油」を含有すること、(A)成分中に「IOB値が0.10以上の成分」を40質量%以上含有すること、を規定しているが、当該「液状油剤」としては、「イソノナン酸イソノニル」(IOB値=0.12)、「パルミチン酸イソプロピル」(IOB値=0.16)及び「トリエチルヘキサノイン」(IOB値=0.35)以外のものも含有し得るとされており、実施例1、2及び9は、いずれも「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」(IOB値=0.28)(「液状紫外線吸収剤f」)を含有するところ、本件訂正発明1では、「液状の有機紫外線吸収剤の(A)成分に対する含有量が50質量%以下」であることを規定する一方で、「(A)成分中に含まれる油溶性有機紫外線吸収剤が、25℃で固体状の有機紫外線吸収剤のみ」である場合をも許容している。
(b) 本件明細書に記載された課題を解決する手段の一般的な説明
本件明細書の【0007】には、上記(1)で認定した課題を解決するための手段に関し、
「IOB値が特定の範囲にある特定量の液状油剤、耐塩性水溶性高分子、及び疎水化処理微粒子金属酸化物粉末を用い、かつ疎水化処理微粒子金属酸化物粉末の液状油剤に対する含有質量比が特定範囲にある場合に、高い経時安定性が得られるともに、紫外線防御能に優れ、その耐水性及び耐摩擦性も極めて良好である水中油型乳化化粧料が得られる」
と記載されており、【0008】~【0009】には、
「下記の(A)~(C)成分を含有する、水中油型乳化化粧料であって、
(A)油溶性有機紫外線吸収剤を含む液状油剤
(B)耐塩性水溶性高分子
(C)疎水化処理微粒子金属酸化物粉末
(A)成分中にIOB値が0.10以上の成分を40質量%以上含有し、
(A)成分を化粧料総量中に3質量%以上30質量%以下含有し、
(C)成分の(A)成分に対する含有質量比(C/A)が0.4以上1.0以下である、
水中油型乳化化粧料」
が、
「優れた紫外線防御効果を有し、経時安定性、及び耐水性が良好で、かつ優れた耐摩擦性を有する」
ことが記載されている。
(c) (A)成分について
本件明細書の【0012】~【0024】には、「(A)成分:油溶性有機紫外線吸収剤を含む液状油剤」についての説明が記載されており、【0012】には、紫外線防御効果をより高める観点から、(A)成分中に「液状の有機紫外線吸収剤」及び「固体状の有機紫外線吸収剤」を含有することが好ましいことが記載されているが、「液状の有機紫外線吸収剤」を含有することが必須であるとはされておらず、【0013】には、「液状の有機紫外線吸収剤」について、「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」(「液状紫外線吸収剤f」)がさらに好ましいこと、液状油としても(A)成分中に含有されうること、が記載されている。
本件明細書の【0014】には、「固体状の有機紫外線吸収剤」は「単独又は2種以上を適宜組み合わせて含有させることができる」ことが記載されており、
・「2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸へキシルエステル」(「固体状紫外線吸収剤a」)、
・「2,4-ビス{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン」(「固体状紫外線吸収剤b」)、及び
・「2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン」(「固体状紫外線吸収剤c」)
の3種がより好ましいとされ、「固体状の有機紫外線吸収剤は、化粧料中では液状で存在していると考えられる」ことが記載されている。
本件明細書の【0016】には、(A)成分中に含まれる有機紫外線吸収剤以外の「液状油剤」の具体例として、「イソノナン酸イソノニル」、「パルミチン酸イソプロピル」及び「トリエチルヘキサノイン」を含め、複数の油剤が列記されている。
本件明細書の【0017】には、(A)成分中に、「IOB値が0.10以上の成分」を「40質量%以上」含有することによって、油性感を調整しつつ、固体状の有機紫外線吸収剤の液状油剤への溶解性を向上させることが可能であり、紫外線防御効果を高めることができることが記載されており、【0018】に「IOB値が0.10以上である成分」の具体的な例が多数列記されている。
本件明細書の【0020】には、(A)成分の化粧料総量に対する含有量は、耐水性及び耐摩擦性に優れ、かつ、紫外線防御効果を保持する点から、3質量%以上30質量%以下であり、10~20質量%がより好ましいことが記載されている。
本件明細書の【0022】には、液状の有機紫外線吸収剤の(A)成分に対する含有量は、15質量%以上が好ましく、35質量%以上がさらに好ましく、また60質量%以下が好ましく、50質量%以下がさらに好ましく、当該範囲内であれば、良好な紫外線防御効果が得られるとともに、経時安定性及び使用感も良好である旨が記載されている。
(d) (B)成分について
本件明細書の【0025】~【0029】には、「(B)成分:耐塩性水溶性高分子」の説明が記載されており、【0025】に、「水溶性高分子」とは、水と混合することで膨潤し増粘効果を発揮するものを意味すること、「耐塩性」とは、化粧料に配合される範囲で塩や金属酸化物を添加しても、極端に粘弾性が低下しにくい性質をいうこと、が記載されており、【0028】には、より好ましくは「(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー」が挙げられることが記載され、【0029】には、(B)成分の含有量は、本発明の化粧料総量に対して、塗布時の伸ばしやすさの点で、0.5質量%以上がより好ましく、2.5質量%以下がさらに好ましいことが記載されている。
(e) (C)成分について
本件明細書の【0030】~【0047】には、「(C)成分:疎水化処理微粒子金属酸化物粉末」についての説明が記載されており、【0030】には、紫外線を散乱する効果が高い点から、酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化セリウムから選択される1種又は2種以上の金属酸化物粉体を用いることが好ましいことが記載され、【0034】~【0035】には、疎水化処理として、より好ましくは、メチルハイドロジェンポリシロキサンを用いた表面処理、シラン化合物又はシラザン化合物を用いた表面処理であることが記載され、【0042】には、具体的なシラン化合物として、特に好ましくは、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシランであることが記載され、【0046】には、(C)成分の含有量は、化粧料総量に対して、8質量%以上が好ましく、また25質量%以下が好ましく、20質量%以下がさらに好ましく、当該範囲内であれば、粉末の分散性が良好で、製剤の粘度上昇が大きくなるという問題も生じないことが記載されている。
(f) 含有質量比(C/A)について
本件明細書の【0048】には、(A)成分に対する(C)成分の「含有質量比(C/A)」について、耐摩擦性を向上させ、良好な経時安定性を得るために、0.4以上1.0以下とすることが必要であることが記載されている。
c 課題解決の認識と本件訂正発明1の対応関係の判断
上記a及びbで説示したような本件明細書の記載に接した当業者ならば、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の化粧料総量中の含有量が、実施例1、2及び9における各含有量とは若干異なる場合や、「イソノナン酸イソノニル」、「パルミチン酸イソプロピル」及び「トリエチルヘキサノイン」とは異なる「液状油剤」を用いる場合、及び、(A)成分中に含まれる油溶性有機紫外線吸収剤として、「液状の有機紫外線吸収剤」である「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」(「液状紫外線吸収剤f」)を用いず、「25℃で固体状の有機紫外線吸収剤のみ」を用いた場合においても、実施例の記載を参考にしつつ、本件訂正請求項1で特定する範囲内で、水中油型乳化化粧料を調製することにより、上記(1)で認定した、
「優れた紫外線防御効果を有し、経時安定性、及び耐水性が良好で、かつ優れた耐摩擦性を有する水中油型乳化化粧料を提供すること」
という課題を解決することができると認識し得るといえる。
なお、特許権者が令和5年5月26日付け意見書で提示した追加実験(実験例1~3)は、本件明細書に記載の実施例1と同様に、下記の「表A」に示した処方に従い水中油型乳化化粧料を調製し、これらを用いて本件明細書の【0065】~【0071】に記載の「紫外線防御能」、「耐水性」、「経時安定性」、「使用感」及び「耐摩擦性」を評価した結果を本件明細書に記載の実施例1~3、9及び比較例1~4とともに下記の「表A」に示したものであって、各成分の詳細は【0075】に記載のものと同じであるところ、実験例1及び2では、(A)成分中に含まれる油溶性有機紫外線吸収剤が「25℃で固体状の有機紫外線吸収剤のみ」であり、「液状の有機紫外線吸収剤」(「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」(ユビナールMC80、IOB値=0.28)(「液状紫外線吸収剤f」))を含まないが、実施例1、2及び9と概ね同等の特性が得られたことが確認できることも、上記の判断と矛盾するものではない。
[図:0001409073000009.jpg]
(ウ) 小括
したがって、本件訂正発明1は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載又はその示唆により、その課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものである。
したがって、本件訂正請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合するものである。
イ 本件訂正請求項2~6について
本件訂正発明2~6は、上記2(1)ウで説示したように、本件訂正発明1を更に特定したものであって、それらの特定事項のいずれも、実施例1、2及び9の水中油型乳化化粧料が全て満たしていることから、本件訂正発明1と同様に、本件明細書の発明の詳細な説明の記載又はその示唆により、当業者がその課題を解決できると認識できる範囲のものである。
したがって、本件訂正請求項2~6の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合するものである。
(3) 申立人の主張について
申立人は、令和5年7月7日付け意見書において、概略、次のとおり主張している。
本件明細書において、本件訂正発明1の要件を満たす実施例は、実施例1~2(及び譲るとして実施例9)であり、これらの実施例は、いずれも油溶性有機紫外線吸収剤として「液状の有機紫外線吸収剤」を含むものである。また、本件明細書を参酌しても、「(A)成分中に含まれる油溶性有機紫外線吸収剤が、25℃で固体状の有機紫外線吸収剤のみである」ことで、本件訂正発明の課題である、「優れた紫外線防御効果を有し、経時安定性、及び耐水性が良好で、かつ優れた耐摩擦性を有する水中油型乳化化粧料を提供」できることは把握されない。よって、本件訂正請求項1の記載は、本件明細書の発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているので、特許法第第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。(上記意見書5~6頁)
しかしながら、(A)成分中に含まれる油溶性有機紫外線吸収剤として、「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」(「液状紫外線吸収剤f」)を用いず、「25℃で固体状の有機紫外線吸収剤のみ」を用いた場合でも、実施例の記載を参考にしつつ、本件訂正請求項1で特定する範囲内で、水中油型乳化化粧料を調製することにより、上記(1)で認定した本件訂正発明の課題を解決することができると、当業者が認識し得るといえることは、上記(2)ア(イ)cで説示したとおりである。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(4) 取消理由3のまとめ
以上のとおり、本件訂正発明1~6は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により、その発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものであるから、本件訂正請求項1~6の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものであり、上記取消理由3として指摘した不備はない。
したがって、本件訂正請求項1~6に係る特許は、特許法第36条第6項第1項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、取り消すことはできない。
第6 特許異議の申立ての理由について
1 特許異議の申立ての理由の概要
申立人は、特許異議申立書において、以下に概要を示す特許異議の申立ての理由(以下「申立理由」という。)を主張するとともに、証拠方法として上記第4の<引用文献等一覧>に示した甲1~甲6を提出した。
なお、ここでいう「請求項1」等の表記は、本件訂正前の本件特許の請求項1等を意味するものであり、「本件発明1」等の表記は、本件訂正前の本件特許の請求項1に係る発明等を意味するものである。
[申立理由1](新規性欠如)
本件特許の請求項1~6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、下記の頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1~甲3のいずれかに記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許の下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
[申立理由2](進歩性欠如)
本件特許の請求項1~6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、下記の頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1~甲3のいずれかに記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
[申立理由3](サポート要件違反)
本件特許の請求項1~6に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
[申立理由4](明確性要件違反)
本件特許の請求項1~6に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
2 取消理由通知において採用しなかった申立理由について
上記申立理由1~3は、上記第4に示した当審において令和5年3月22日付けの取消理由通知書により特許権者に通知した取消理由1~3に対応するものであるところ、上記第5で説示したとおり、本件訂正請求項1~6に係る特許は、これらの理由によっては取り消すことができないものである。
他方、上記申立理由4は、上記取消理由通知において採用しなかった理由であるが、当審合議体は、本件訂正請求項1~6に係る特許は、当該理由によっても取り消すことはできないものと判断する。その理由の詳細は、以下のとおりである。
(1) 申立理由4(明確性要件違反)の内容
申立人は、異議申立書において、申立理由4(明確性要件違反)について具体的には次のとおり主張している。
「本件特許明細書には、微粒子金属酸化物粉末の平均粒子径の好ましい範囲は記載されている(段落「0032」)が、本件特許発明1における疎水化処理「微粒子」金属酸化物粉末がいかなる平均粒子径の微粒子を含むものであるか、不明である。」
(異議申立書46頁)
(2) 申立理由4(明確性要件違反)についての判断
本件訂正請求項1には、「(C)疎水化処理微粒子金属酸化物粉末」との記載があり、本件訂正請求項5には、「前記(C)成分の疎水化処理がメチルハイドロジェンポリシロキサンを用いた表面処理及びシラン化合物又はシラザン化合物を用いた表面処理からなる群から選択される1種以上の表面処理である」と記載されているが、当該「(C)疎水化処理微粒子金属酸化物粉末」の平均粒子径については、本件訂正請求項1~6のいずれにおいても特定されていない。
しかしながら、本件明細書の【0030】~【0047】の[(C)成分:疎水化処理微粒子金属酸化物粉末]の項目には、当該成分について詳細な説明が記載されており、【0030】には、
「(C)疎水化処理微粒子金属酸化物粉末」として、紫外線を散乱する効果が高い点から、酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化セリウムから選択される1種又は2種以上の金属酸化物粉体を用いることが好ましいことが記載されており、【0031】には、
「微粒子酸化亜鉛粉末としては、例えばFINEX-25、FINEX-50、FINEX-75(堺化学工業株式会社製)、MZ500シリーズ、MZ700シリーズ(テイカ株式会社製)、ZnO-350(住友大阪セメント株式会社製)などが市販され、・・・。微粒子酸化チタン粉末としては、TTO-55シリーズ、TTO-51シリーズ(石原産業株式会社製)、JRシリーズ、JAシリーズ(テイカ株式会社製)などが市販されている。・・・。」
との記載があり、具体的な市販製品が例示されている。
また、【0032】には、
「本発明に用いる微粒子金属酸化物粉末の平均粒子径は、粉末凝集防止の点から0.01μm以上が好ましく、・・・、0.015μm以上がさらに好ましい。また、製剤の不透明化防止の点から、1μm以下が好ましく、・・・、0.4μm以下がさらに好ましい。具体的な平均粒子径は、好ましくは0.01~1μm、・・・、さらに好ましくは0.015~0.4μmである。なお、平均粒子径は、レーザー回折/散乱法により測定される。」
と記載され、平均粒子径について、作用・機能に基づいた好ましい範囲及び測定方法について具体的な説明が記載されている。
そして、本件訂正発明1~6の水中油型乳化化粧料に該当する実施例1、2及び9の組成物で用いられた「オクチルトリエトキシシラン表面処理微粒子酸化亜鉛粉末(製造例2)」及び「メチルハイドロジェンポリシロキサン表面処理微粒子酸化亜鉛粉末(製造例3)」について、【0078】~【0079】に具体的な製造例が記載され、両製造例の原料とされた微粒子酸化亜鉛粉末は、いずれも平均粒子径が0.02μmであったことが記載されている。
このような本件明細書の記載も参照すれば、本件訂正発明1~6で用いる「(C)疎水化処理微粒子金属酸化物粉末」については、その平均粒子径が本件訂正請求項において特定されていなくても、本件訂正発明で用いるのに適した範囲を当業者は理解することができるから、本件訂正請求項1~6の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
(3) 申立理由4(明確性要件違反)についてのまとめ
したがって、本件訂正請求項1~6の記載は、特許を受けようとする発明が明確であり、特許法第36条第6項第2号に適合するものであるから、上記申立理由4の不備はない。
したがって、本件訂正請求項1~6に係る特許は、特許法第36条第6項第2項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、取り消すことはできない。
3 訂正請求により生じた明確性要件違反等について
申立人は、令和5年7月7日付け意見書において、同年5月26日付け訂正請求書による訂正により、訂正後の本件特許の請求項1の記載に、新たな明確性要件違反が生じたこと等を主張している。
なお、令和5年11月28日付け手続補正書による補正後の同年5月26日付け訂正請求書による訂正における訂正事項1による本件特許の請求項1~6の訂正の内容は、当該補正前の当該訂正請求書による訂正における訂正事項1による訂正の内容と同じである。
(1) 申立人の主張の概要
上記意見書における申立人の主張の概要は、以下のとおりである。なお、下線は申立人が付したとおりである。
ア (A)成分の含有量の技術的欠陥について
訂正により、本件発明1において、「(A)成分を化粧料総量中に10質量%以上20質量%以下含有」すること、「(C)成分を化粧料総量中に8質量%以上12質量%以下含有」することが規定された。
一方、訂正後の請求項1においては、(C)成分の(A)成分に対する含有質量比(C/A)が0.7以上1.0以下であることが規定されている。
ここで、(C)成分の含有量が化粧料総量中に8質量%以上12質量%以下である場合、(C)成分の(A)成分に対する含有質量比(C/A)が0.71以上1.0以下であるから、(A)成分の化粧料総量中の含有量は、最大で、(C)成分の含有量が12質量%で(C/A)が0.71の場合の16.9質量%(≒12/0.71)である。
したがって、(A)成分の含有量において、16.9質量%を超え、20質量%以下である部分については、発明特定事項の内容に技術的な欠陥があるため、発明が不明確となっており、特許法第第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(上記意見書4~5頁)
イ 実施例9の記載との不整合について
含有質量比(C/A)の下限である「0.71」は、令和3年12月20日付けの手続補正書による補正によって導入された。「0.71」の根拠は出願時の明細書【0073】の実施例9であるとされる(令和3年12月20日の意見書)。ここで、実施例9においては、(A)成分が17.0質量%、(C)成分が12質量%である。
一方、訂正後の請求項1によれば、(C)成分が12質量%、かつ(C/A)が0.71であることも包含され、この場合、(A)成分の含有量が上限値となり、これは、上記アで計算したとおり、「16.9(0)質量%」となる。
このため、本件明細書の実施例9のように(A)成分が17.0質量%である場合、上記(A)成分の含有量の範囲(16.9質量%以下)には入らないことになるが、上記補正において実施例9を根拠としていたことと整合性がとれないことになる。
したがって、訂正後の請求項1に記載の発明は、発明が不明確となっており、特許法第第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(上記意見書5頁)
(2) 当審合議体の判断
ア 申立人の主張イについて
事案に鑑み、申立人の主張イから先に検討する。
本件訂正請求項1に記載の
「(C)成分の(A)成分に対する含有質量比(C/A)が0.71以上1.0以下であり、・・・」(下線は当審合議体が付した。以下同じ。)
という特定事項は、申立人の主張のとおり、令和3年12月20日付け手続補正書による補正によって導入されたもので、当該補正前の請求項1には
「(C)成分の(A)成分に対する含有質量比(C/A)が0.4以上1.0以下」である、・・・」
と記載されていたのを、実施例9の記載を根拠として補正されたものである(審査段階の令和3年12月20日付け意見書の「2.2-1.(1)」を参照)。
そして、本件明細書の【0073】【表1-2】の記載によれば、当該実施例9の水中油型乳化化粧料においては、「液状油剤(A)の合計量」が「17.0(質量%)」とされ、「(C)成分」に該当する成分は「メチルハイドロジェンポリシロキサン表面処理微粒子酸化亜鉛粉末(製造例3)」のみであり、その含有量は「12(質量%)」とされ、「(C)/(A)異質量含有比」は「0.71」とされている。この「0.71」との数値は、「12」を「17.0」で除した場合の循環小数を含む商:「0.70588235294117647058823529411764・・・」を、小数第3位で四捨五入した概数であると解される。
上記補正により、請求項1において、当該概数「0.71」が「含有質量比(C/A)」の下限値として規定され、当該規定は本件訂正請求項1でも引き継がれているところ、本件発明1において、「含有質量比(C/A)」が当該下限値の「0.71」であって、「(C)成分」の含有量が上限値の「12質量%」である場合、「(A)成分」の含有量の上限値は「16.90140・・・質量%」(=12/0.71)となることから、一見、上記補正の根拠とされた実施例9の「液状油剤(A)の合計量」として記載されている数値「17.0(質量%)」に満たないようにもみえる。
しかしながら、このような数値の差違は、除算における割り切れない商を概数としたことに起因するものであって、上記の「16.90140・・・質量%」(=12/0.71)の計算値は、小数第1位で四捨五入すると、「17質量%」になるところ、上記の補正の経緯も考慮すれば、「液状油剤(A)の合計量」が「17.0(質量%)」と記載されている、実施例9の水中油型乳化化粧料も、本件訂正発明1に該当するものと解するのが自然であるから、本件訂正請求項1の記載と実施例9の記載とが、一見すると整合しないことは、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
したがって、申立人の上記主張イは採用できない。
イ 申立人の主張アについて
本件訂正請求項1の記載から、本件訂正発明1の水中油型乳化化粧料は、「(A)成分を化粧料総量中に10質量%以上20質量%以下含有」するとの要件、「(C)成分を化粧料総量中に8質量%以上12質量%以下含有」するとの要件、及び、「(C)成分の(A)成分に対する含有質量比(C/A)が0.71以上1.0以下」であるとの要件を、いずれも満たす必要があることは明らかであるため、(A)成分の化粧料総量中の含有量は、上記アで説示したとおり、最大でも「16.90140・・・質量%」(=12/0.71)となり、当該数値を超えて20質量%までの部分については、本件訂正発明1には該当しないものであることを、当業者は明確に理解することができるといえる。
したがって、当該部分については、申立人が指摘するような発明特定事項の内容の技術的な欠陥があるとはいえないから、申立人の上記主張アは採用できない。
第7 むすび
以上のとおり、本件訂正請求は適法なものであるから、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された補正された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
そして、取消理由通知書に記載した取消理由及び証拠、並びに、申立人による特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件訂正請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。
また、その他に本件訂正請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700956