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特許異議申立

2023-700534

熱可塑性樹脂組成物

審判番号
2023-700534
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-061666
登録番号
7186653
請求日
2023年05月23日
審決日
2023年09月21日
公報発行日
2023年10月27日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】日本エイアンドエル株式会社
  • 【異議申立人】菊間 靖郎
審判長/審判官
  • 審判長 藤原 浩子
  • 審判官 ▲吉▼澤 英一
  • 審判官 藤井 勲
分類
P1651.121-Y (C08L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7186653号発明「熱可塑性樹脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7186653号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7186653号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成31年3月27日の出願であって、令和4年12月1日にその特許権の設定登録(請求項の数4)がされ、同年同月9日に特許掲載公報が発行され、その後、本件特許に対し、令和5年5月23日に特許異議申立人 菊間 靖郎(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし4)がされたものである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1ないし4に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明4」という。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 ジエン系ゴム質重合体(a)、及び芳香族ビニル系単量体を含む単量体がグラフト重合したグラフト共重合体(A)、 アクリル系ゴム質重合体(b)、及び芳香族ビニル系単量体を含む単量体がグラフト重合したグラフト共重合体(B)、 芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体を含む単量体が重合した共重合体(C)、 を含む樹脂組成物100質量部に対して、耐候剤(D)を0.1~2質量部含有し、下記(1)~(5)を満足する熱可塑性樹脂組成物。 (1)樹脂組成物100質量%に対して、ジエン系ゴム質重合体(a)とアクリル系ゴム質重合体(b)の合計が10~25質量% (2)ジエン系ゴム質重合体(a)とアクリル系ゴム質重合体(b)の合計100質量%に対して、アクリル系ゴム質重合体(b)が50~85質量% (3)ジエン系ゴム質重合体(a)の重量平均粒子径が、50~1000nm。 (4)共重合体(C)100質量%に対して、シアン化ビニル系単量体(c-1)が30~40質量% (5)熱可塑性樹脂組成物100質量%に対して、オリゴマー成分の含有量が1.5質量%以下 【請求項2】 アクリル系ゴム質重合体(b)の重量平均粒子径が50~200nmである、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。 【請求項3】 樹脂組成物100質量部に対して、着色剤(E)を0.5~5質量部含有する、請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。 【請求項4】 車両外装用である、請求項1~3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。」 第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 令和5年5月23日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 1 申立理由(甲第1号証ないし甲第3号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 証拠方法 ・甲第1号証:特開2004-346189号公報 ・甲第2号証:特開2018-2989号公報 ・甲第3号証:特開2004-107400号公報 以下、「甲第1号証」ないし「甲第3号証」を、「甲1」ないし「甲3」という。 第4 当審の判断 1 主な証拠の記載事項等 (1)甲1に記載された事項等 ア 甲1に記載された事項 甲1には、「振動溶着用樹脂組成物、並びにそれを用いた成形品、自動車用ランプ」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【請求項1】 ポリオルガノシロキサンおよび(メタ)アクリル酸エステル系重合体からなる複合ゴム状重合体(G)に、1種以上の単量体単位から構成されるビニル系重合体がグラフトした第1のグラフト共重合体(A)1質量部~99質量部と、 質量平均粒子径が50nm~250nm、ゲル分が70質量%~99質量%のジエン系ゴム状重合体(b)に、1種以上の単量体単位から構成されるビニル系重合体がグラフトした第2のグラフト共重合体(B)1質量部~99質量部と、 その他の熱可塑性樹脂(C)0~80質量部((A)と(B)と(C)の合計は100質量部)とを含有することを特徴とする振動溶着用樹脂組成物。」 ・「【0005】 ところで、自動車部品や各種電気機器筐体用の熱可塑性樹脂成形品においては、意匠性やその他の機能性を高めるために、その表面に金属化処理を施すことがある。金属化処理としては、例えば、成形品表面をメッキ処理して銅やクロム、ニッケル等の金属層を形成させる方法、真空蒸着法やスパッタリング法等によってアルミニウムやクロム等の金属層(厚み数十~数百nm)を形成させる方法などが挙げられる。 従来、熱可塑性樹脂樹脂成形品の表面に金属化処理する際には、金属化処理前に、金属化処理後の光輝性を高めることを目的として、成形品表面の凹凸が小さくなるように塗装やプラズマ重合処理によりアンダーコート処理層を形成させる必要があった。また、通常では、金属化処理後に、金属層保護の目的でシリコン系等のトップコート層を形成させることがあった。そのため、熱可塑性樹脂成形品の金属化処理においては、多くの工程を有する上に、専用装置、高価な処理剤を必要としていた。 ・・・ 【0008】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、ダイレクト蒸着法によっても成形品の光輝性が高くなるような熱可塑性樹脂組成物が求められているものの、従来の熱可塑性樹脂組成物では、その要求を十分に満たすことができなかった。例えば、特許文献1~特許文献3には、ダイレクト蒸着法によっても光輝性が高くなるような手法については何ら言及されておらず、特許文献1~3に開示されている実施例の熱可塑性樹脂組成物は、ダイレクト蒸着後の光輝性は不十分であった。また、特許文献4および特許文献5に記載された熱可塑性樹脂組成物においても、近年の光輝性の高い要求レベルを十分満足してはいなかった。さらに、特許文献4,5には、自動車用ランプのハウジング等の用途において重要である成形品の耐候性や振動溶着性について何ら言及されておらず、特許文献4,5に開示されている実施例の熱可塑性樹脂組成物は、耐候性あるいは振動溶着性は十分なレベルではなかった。 【0009】 本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、ダイレクト蒸着後に美麗な光輝外観が得られ、しかも、高いレベルの耐衝撃性と耐候性とを有し、PMMA樹脂やPC樹脂などの透明樹脂との振動溶着接合部分の外観にも優れた振動溶着用樹脂組成物を提供することを目的とする。さらには、この振動溶着用樹脂組成物を用いた成形品、自動車用ランプを提供することを目的とする。」 ・「【0050】 <成形品> 本発明の成形品は、上記振動溶着用樹脂組成物を、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、圧縮成形法、カレンダー成形法、インフレーション成形法等の各種成形方法によって成形したものである。 この成形品の工業的用途例としては、例えば、自動車用部品、特にヘッドランプやテールランプのハウジング、照明機器ハウジング等の家電部品、OA機器ハウジング、インテリア部材等が挙げられる。」 ・「【0053】 【実施例】 ・・・ 【0054】 [製造例1]ポリオルガノシロキサン(L-1)ラテックスの製造 オクタメチルシクロテトラシロキサン98部とγ-メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン2部とを混合してシロキサン系混合物100部を得た。これに、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.67部と脱イオン水300部からなる水溶液を添加し、ホモミキサーで10000回転/分で2分間撹拌した後、ホモジナイザーに20MPaの圧力で1回通し、安定な予備混合オルガノシロキサンラテックスを得た。 一方、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、ドデシルベンゼンスルホン酸10部、脱イオン水90部を投入し、10%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液を調製した。このドデシルベンゼンスルホン酸水溶液を85℃に加熱した状態で、予備混合したオルガノシロキサンラテックスを4時間にわたって滴下し、滴下終了後1時間その温度を維持してから、40℃以下に冷却した。次いで、この反応物を苛性ソーダ水溶液でpH7に中和して重合を完結してポリオルガノシロキサン(L-1)を得た。 ・・・ 【0056】 [製造例2]ポリオルガノシロキサン(L-2)ラテックスの製造 オクタメチルシクロテトラシロキサン95.5部、γ-メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン0.5部、テトラエトキシシラン4部を混合してシロキサン系混合物100部を得た。これに、ドデシルベンゼンスルホン酸1部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部、脱イオン水200部からなる水溶液を添加し、ホモミキサーで10000回転/分で2分間撹拌した後、ホモジナイザーに20MPaの圧力で1回通し、安定な予備混合オルガノシロキサンラテックスを得た。 この予備混合オルガノシロキサンラテックスを、冷却管、ジャケット加熱器および攪拌装置を備えた反応器内に入れ、攪拌混合しながら80℃で5時間加熱した後、約20℃に冷却し、そのまま48時間放置した。次いで、この反応物を苛性ソーダ水溶液でpH7.0に中和して重合を完結してポリオルガノシロキサン(L-2)ラテックスを得た。 ・・・ 【0058】 [製造例3]グラフト重合体(A-1)の製造 試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、製造例1で製造したポリオルガノシロキサンラテックス(L-1)8部(固形分)、エマールNC-35(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート;花王(株)製)0.2部、脱イオン水148.5部を仕込み、混合した。次いで、表1に示すアクリレート混合物を添加した。 この反応器に窒素気流を通じることによって雰囲気の窒素置換し、次いで、内温を60℃まで昇温した。60℃に達した時点で、表1に示すレドックス水溶液を添加し、ラジカル重合を開始させた。重合開始後、アクリレート成分の重合熱により、液温は78℃まで上昇した。1時間この状態を維持し、アクリレート成分の重合を完結させてポリオルガノシロキサン(L-1)とアクリル酸-n-ブチルゴムとの複合ゴム状重合体のラテックスを得た。 この複合ゴム状重合体の質量平均粒子径は120nmであり、また、この複合ゴム状重合体(固形分)100質量%中の、粒子径500nm以上のゴム状重合体の割合はほぼ0%であった。 【0059】 【表1】 [図:0001402799000001.jpg] 【0060】 さらに、反応器内部の液温が70℃に低下した後、この複合ゴムラテックスに、ロンガリット0.25部と脱イオン水10部からなる水溶液を添加し、次いで一段目として、表2に示す第1の単量体混合物を2時間にわたって滴下し、重合した。第1の単量体混合物の滴下が終了した後、温度60℃の状態を1時間保持した後、表2に示すレドックス水溶液を添加し、続いて、二段目として、表2に示す単量体混合物を2時間にわたって滴下し、重合した。第2の単量体混合物の滴下が終了した後、温度60℃の状態を0.5時間保持し、次いで、クメンヒドロパーオキシド0.05部を添加し、さらに温度60℃の状態を0.5時間保持してから冷却して、ポリオルガノシロキサン(L-1)とアクリル酸ブチルゴムとからなる複合ゴム状重合体に、アクリロニトリル、スチレンをグラフト重合させたグラフト重合体(A-1)ラテックスを得た。 次いで、1%酢酸カルシウム水溶液150部を60℃に加熱し、この中へグラフト重合体(A-1)ラテックス100部を徐々に滴下して凝固した。そして、得られた析出物を脱水、洗浄、乾燥してポリオルガノシロキサン/アクリル酸エステル複合ゴム系グラフト重合体(A-1)を得た。 【0061】 【表2】 [図:0001402799000002.jpg] 【0062】 [製造例4]ポリオルガノシロキサン/アクリル酸エステル複合ゴム系グラフト重合体(A-2)の製造 製造例3において、第1の単量体混合物および第2の単量体混合物を表3に示すようにした以外は製造例3と同様にして、ポリオルガノシロキサン(L-1)とアクリル酸ブチルゴムとからなる複合ゴム状重合体に、一段目にアクリロニトリルとスチレン、二段目にメタクリル酸メチルとアクリル酸メチルをグラフト重合させたポリオルガノシロキサン/アクリル酸エステル複合ゴム系グラフト重合体(A-2)を得た。 【0063】 【表3】 [図:0001402799000003.jpg] 【0064】 [製造例5]ポリオルガノシロキサン/アクリル酸エステル複合ゴム系グラフト重合体(A-3)の製造 試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、製造例1で製造したポリオルガノシロキサンラテックス(L-1)2部(固形分)、エマールNC-35(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート;花王(株)製)0.2部、脱イオン水148.5部を仕込み、混合した。次いで、表4に示すアクリレート混合物を添加した。 この反応器に窒素気流を通じることによって雰囲気の窒素置換し、次いで、内温を60℃まで昇温した。60℃に達した時点で、表4に示すレドックス水溶液を添加し、ラジカル重合を開始させた。重合開始後、アクリレート成分の重合熱により、液温は78℃まで上昇した。1時間この状態を維持し、アクリレート成分の重合を完結させてポリオルガノシロキサン(L-1)とアクリル酸-n-ブチルゴムとの複合ゴム状重合体のラテックスを得た。 この複合ゴム状重合体の質量平均粒子径は145nmであり、また、この複合ゴム状重合体(固形分)100質量%中の、粒子径500nm以上のゴム状重合体の割合はほぼ0%であった。 そして、得られた上記複合ゴムを用いた以外は製造例3と同様にしてグラフト重合ならびにラテックスからの回収を行って、ポリオルガノシロキサン(L-1)とアクリル酸-n-ブチルゴムとからなる複合ゴム状重合体に、アクリロニトリル、スチレンをグラフト重合させたグラフト重合体(A-3)を得た。 【0065】 【表4】 [図:0001402799000004.jpg] 【0066】 [製造例6]グラフト共重合体(A-4)の製造 製造例3において、ポリオルガノシロキサン(L-1)をポリオルガノシロキサン(L-2)に変更し、適宜脱イオン水の量を調節した以外は製造例3と同様にして、グラフト共重合体(A-4)を得た。 この例における複合ゴム状重合体の質量平均粒子径は190nmであり、また、この複合ゴム状重合体(固形分)100質量%中の、粒子径500nm以上のゴム状重合体の割合は3%であった。 ・・・ 【0068】 [製造例8]ジエン系グラフト重合体(B-1)の製造 試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、ポリブタジエンラテックス(質量平均粒子径160nm、粒子径500nm以上の粒子の割合が0%、ゲル分94%)50部(固形分)を室温で仕込み、次いで、表5に示すレドックス水溶液を添加し、次いで、攪拌しながら窒素置換した後、50℃に昇温した。これに、表5に示す単量体混合物を180分かけて滴下するとともに、その間内温が65℃を越えないようにコントロールした。単量体混合物の滴下が終了した後、クメンヒドロパーオキシド0.12部を添加し、さらに1時間保持して冷却してジエン系グラフト共重合体(B-1)ラテックスを得た。 次いで、得られたラテックスに、老化防止剤(川口化学工業(株)製、アンテージW-400)1部を添加した。次いで、このグラフト重合体ラテックスを、該ラテックスと同量の1.2%硫酸水溶液(水温:70℃)中に投入して凝固し、さらに90℃に昇温して5分間保持した後、脱水、洗浄、乾燥して乳白色粉末のジエン系グラフト重合体(B-1)を得た。 【0069】 【表5】 [図:0001402799000005.jpg] ・・・ 【0072】 [製造例11]その他の熱可塑性樹脂(C-1)の製造 アクリロニトリル29部およびスチレン71部からなり、N,N-ジメチルホルムアミド溶液の25℃での還元粘度が0.60dl/gであるアクリロニトリル-スチレン共重合体(C-1)を公知の懸濁重合により製造した。【0073】 [製造例12]その他の熱可塑性樹脂(C-2)の製造 アクリロニトリル19部、スチレン53部、N-フェニルマレイミド28部からなり、N,N-ジメチルホルムアミド溶液の25℃での還元粘度が0.65dl/gであるアクリロニトリル-スチレン-N-フェニルマレイミド三元共重合体(C-2)を公知の連続溶液重合により製造した。 【0074】 [製造例13]その他の熱可塑性樹脂(C-3)の製造 アクリロニトリル25部およびαメチルスチレン75部からなり、N,N-ジメチルホルムアミド溶液の25℃での還元粘度が0.50dl/gであるアクリロニトリル-αメチルスチレン共重合体(C-3)を公知の連続溶液重合により製造した。」 ・「【0076】 [実施例1~13および比較例1~9] グラフト重合体(A-1)~(A-5)、グラフト共重合体(B-1)~(B-3)、その他の熱可塑性樹脂(C-1)~(C-4)を表6(実施例)または表7(比較例)に示すように配合し(表中の数値は質量部)、さらに、エチレンビスステアリルアミドをこれらの樹脂成分100部に対して0.4部、光安定剤として旭電化工業(株)「LA-63P」0.45部を添加した。そして、ヘンシェルミキサーを用いて混合し、この混合物をバレル温度230℃または260℃に加熱した脱気式押出機(日本製鋼所(株)製TEX-30)に供給し、混練してペレットを得た。 【0077】 【表6】 [図:0001402799000006.jpg] 【0079】 得られた熱可塑性樹脂組成物のアイゾット衝撃強度、耐候性、ダイレクト蒸着後の光輝性、振動溶着性を以下のように評価した。結果を表6、表7に示す。 ・・・ (2)耐候性 100mm×100mm×3mmの黒着色板を、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機(株)製)を用い、ブラックパネル温度63℃、サイクル条件60分(降雨:12分)の条件にて500時間処理した。そして、処理前後の試験片の光沢を測定し、以下の式(1)から光沢保持率(%)を求めて、これにより耐候性を評価した。 光沢保持率(%)=100×(暴露試験後試片の光沢)/(暴露試験前試片の光沢) ・・・式(1) 【0080】 (3)ダイレクト蒸着後の光輝性 東芝機械(株)製射出成形機「IS80FP」を用い、シリンダー設定温度230℃、金型温度70℃、インジェクションスピード99%の条件で、100mm×100mm×3mm板を成形した。次いで、その板上に、真空蒸着法により、真空到達度1×10-6Torr、電流値400mA、膜形成速度1.5nm/秒で膜厚約50nmのアルミニウム蒸着膜を形成した。そして、このアルミニウム蒸着膜上に、SiO2のトップコート層を真空蒸着した。 このようにしてダイレクト蒸着を行った成形品について、反射率計((株)村上色彩技術研究所「HR-100」)を用いて正反射率(%)および拡散反射率(%)を測定し、光輝性の評価を行った。」 イ 甲1に記載された発明 甲1には、実施例1について着目すると、以下の発明が記載されていると認める。 「グラフト重合体(A-1)20質量部、グラフト共重合体(B-1)20質量部、アクリロニトリル29部及びスチレン71部からなるアクリロニトリル-スチレン共重合体(C-1)60質量部を配合し、さらに、エチレンビスステアリルアミドをこれらの樹脂成分100部に対して0.4質量部、光安定剤として旭電化工業(株)「LA-63P」0.45質量部を添加し、ヘンシェルミキサーを用いて混合し、この混合物をバレル温度230℃又は260℃に加熱した脱気式押出機(日本製鋼所(株)製TEX-30)に供給し、混練して得たペレット。 ここで、 グラフト共重合体(A-1)は、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機及び攪拌装置を備えた反応器内に、ポリオルガノシロキサンラテックス(L-1)8部(固形分)、エマールNC-35(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート;花王(株)製)0.2部、脱イオン水148.5部を仕込み、混合し、次いで、アクリル酸n-ブチル41.2部、メタクリル酸アリル0.6部、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート0.2部であるアクリレート混合物を添加し、この反応器に窒素気流を通じることによって雰囲気の窒素置換し、次いで、内温を60℃まで昇温し、60℃に達した時点で、レドックス水溶液を添加し、ラジカル重合を開始させ、重合開始後、アクリレート成分の重合熱により、液温は78℃まで上昇し、1時間この状態を維持し、アクリレート成分の重合を完結させてポリオルガノシロキサン(L-1)とアクリル酸-n-ブチルゴムとの複合ゴム状重合体のラテックスを得、さらに、反応器内部の液温が70℃に低下した後、この複合ゴムラテックスに、ロンガリット0.25部と脱イオン水10部からなる水溶液を添加し、次いで一段目として、アクリロニトリル2.5部、スチレン7.5部の単量体混合物を2時間にわたって滴下し、重合し、前記単量体混合物の滴下が終了した後、温度60℃の状態を1時間保持した後、レドックス水溶液を添加し、続いて、二段目として、アクリロニトリル10部、スチレン30部の単量体混合物を2時間にわたって滴下し、重合し、前記単量体混合物の滴下が終了した後、温度60℃の状態を0.5時間保持し、次いで、クメンヒドロパーオキシド0.05部を添加し、さらに温度60℃の状態を0.5時間保持してから冷却して、ポリオルガノシロキサン(L-1)とアクリル酸ブチルゴムとからなる複合ゴム状重合体に、アクリロニトリル、スチレンをグラフト重合させたグラフト重合体(A-1)ラテックスを得、次いで、1%酢酸カルシウム水溶液150部を60℃に加熱し、この中へグラフト重合体(A-1)ラテックス100部を徐々に滴下して凝固して、得られた析出物を脱水、洗浄、乾燥して得られたものであり、 グラフト共重合体(B-1)は、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、ポリブタジエンラテックス(質量平均粒子径160nm、粒子径500nm以上の粒子の割合が0%、ゲル分94%)50部(固形分)を室温で仕込み、次いで、レドックス水溶液を添加し、次いで、攪拌しながら窒素置換した後、50℃に昇温し、これに、アクリロニトリル15部、スチレン35部の単量体混合物を180分かけて滴下するとともに、その間内温が65℃を越えないようにコントロールし、単量体混合物の滴下が終了した後、クメンヒドロパーオキシド0.12部を添加し、さらに1時間保持して冷却してジエン系グラフト共重合体(B-1)ラテックスを得、次いで、得られたラテックスに、老化防止剤(川口化学工業(株)製、アンテージW-400)1部を添加し、次いで、このグラフト重合体ラテックスを、該ラテックスと同量の1.2%硫酸水溶液(水温:70℃)中に投入して凝固し、さらに90℃に昇温して5分間保持した後、脱水、洗浄、乾燥して得られたものであり、 ポリオルガノシロキサンラテックス(L-1)は、オクタメチルシクロテトラシロキサン98部とγ-メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン2部とを混合してシロキサン系混合物100部を得、これに、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.67部と脱イオン水300部からなる水溶液を添加し、ホモミキサーで10000回転/分で2分間撹拌した後、ホモジナイザーに20MPaの圧力で1回通し、安定な予備混合オルガノシロキサンラテックスを得、一方、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機及び攪拌装置を備えた反応器内に、ドデシルベンゼンスルホン酸10部、脱イオン水90部を投入し、10%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液を調製し、このドデシルベンゼンスルホン酸水溶液を85℃に加熱した状態で、予備混合したオルガノシロキサンラテックスを4時間にわたって滴下し、滴下終了後1時間その温度を維持してから、40℃以下に冷却し、次いで、この反応物を苛性ソーダ水溶液でpH7に中和して重合を完結して得られたものである。」(以下、「甲1発明1」という。) また、甲1に記載された事項を、実施例2ないし9について、実施例1と同様に整理した「ペレット」を、それぞれ「甲1発明2」ないし「甲1発明9」という。 (2)甲2に記載された事項 甲2には、「めっき用樹脂組成物及びめっき成形品」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【請求項1】 ポリカーボネート樹脂(A)、グラフト共重合体(B)、及び共重合体(C)を含有する樹脂組成物であって、下記条件(1)~(5)を満足するめっき用樹脂組成物。 (1)ポリカーボネート樹脂(A)の含有量が、(A)、(B)及び(C)の合計100質量%に対して、20~60質量%。 (2)グラフト共重合体(B)が、ゴム質重合体と、芳香族ビニル系単量体を含む単量体成分とがグラフト重合して成るグラフト共重合体。 (3)共重合体(C)が、芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体を含む単量体成分を重合して成る共重合体。 (4)ゴム質重合体の含有量が、樹脂組成物に対して7~20質量%。 (5)オリゴマー成分の含有量が、樹脂組成物に対して1質量%未満。 ・・・ 【請求項4】 共重合体(C)を構成するシアン化ビニル系単量体の含有量が、共重合体(C)に対して、30~40質量%であることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載のめっき用樹脂組成物。」 ・「【0010】 本発明は、耐衝撃性、流動性に優れ、かつ、めっき密着強度、めっき析出性及び冷熱サイクル性のバランスに優れるめっき用樹脂組成物及びめっき成形品を提供することを目的とする。」 ・「【0036】 共重合体(C)を構成する単量体の組成比率に特に制限はないが、芳香族ビニル系単量体50~90重量%、シアン化ビニル系単量体10~50重量%及び共重合可能な他の単量体0~40重量%の組成比率、芳香族ビニル系単量体20~70重量%、シアン化ビニル系単量体10~60重量%、(メタ)アクリル酸エステル系単量体20~70重量%及び共重合可能な他の単量体0~50重量%の組成比率が挙げられる。中でも、共重合体(C)を構成するシアン化ビニル系単量体の含有量が30~40質量%であることがめっき析出性の点で好ましい。」 ・「【0043】 本発明のめっき用樹脂組成物は、オリゴマー成分の含有量が、該樹脂組成物に対して1質量%未満である必要があり、0.8質量%未満であることが好ましい。上記範囲となるように調整することによりめっき析出性を向上させることができる。 ここで、オリゴマー成分とは、樹脂組成物中に含まれる重合に用いた単量体の2量体及び3量体であり、具体的にはスチレンの2量体、アクリロ二トリルとスチレンの2量体、スチレンの3量体及びアクリロ二トリルとスチレンの3量体などが挙げられる」。 ・「【実施例】 ・・・ 【0057】 ポリカーボネート樹脂(A) ポリカーボネート樹脂(A):ホスゲンとビスフェノールAからなる粘度平均分子量20,500のポリカーボネート樹脂。 【0058】 グラフト共重合体(B)の製造 ガラスリアクターに、凝集肥大化スチレン-ブタジエンゴムラテックス(重量平均粒子径0.25μm)を固形分換算で50重量部仕込み、撹拌を開始させ、窒素置換を行った。窒素置換後、槽内を昇温し65℃に到達したところで、ラクトース0.2重量部、無水ピロリン酸ナトリウム0.1重量部及び硫酸第1鉄0.005重量部を脱イオン水10重量部に溶解した水溶液を添加した後に、70℃に昇温した。その後、アクリロニトリル15重量部、スチレン35重量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.05部、クメンハイドロパーオキサイド0.3重量部の混合液及びオレイン酸カリウム1.0重量部を脱イオン水20重量部に溶解した乳化剤水溶液を4時間かけて連続的に滴下した。滴下後、3時間保持してグラフト共重合体ラテックスを得た。その後、塩析、脱水、乾燥し、グラフト共重合体(B)のパウダーを得た。得られたグラフト共重合体(B)のグラフト率は37.0%、アセトン可溶部の還元粘度は0.39dl/gであった。 ・・・ 【0059】 共重合体(C-1)の製造 アクリロニトリルを33部、スチレンを67部、溶媒としてエチルベンゼンを15部、開始剤として1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロへキサン(10時間半減期温度90.7℃)を0.021部、連鎖移動剤としてt-ドデシルメルカプタンを0.15部用いた混合溶液を調整し、5℃以下に冷却保存した。調整した混合溶液を反応温度127℃に保たれた容積20Lのダブルヘリカルリボン翼付きの反応器に1.44kg/hrで連続的に供給し重合を行った。共重合体を含む混合溶液を供給速度と同じ速度でポンプにより連続的に抜き出し、289℃、45torrに保たれた気液分離装置に送液することで、共重合体と未反応溶液に分離した。分離した共重合体をペレット化することで共重合体(C-1)を得た。重合が安定した時の重合率は51%であり、その重合率になったときの共重合体を物性等の評価に用いた。 ・・・ 【0061】 共重合体(C-3)の製造 アクリロニトリルを29部、スチレンを71部、溶媒としてエチルベンゼンを16部、開始剤としてt-ブチルクミルペルオキシド(10時間半減期温度119.5℃)を0.025部、連鎖移動剤としてt-ドデシルメルカプタンを0.39部用いた混合溶液を調整し、5℃以下に冷却保存した。調整した混合溶液を反応温度155℃に保たれた容積20Lのダブルヘリカルリボン翼付きの反応器に1.32kg/hrで連続的に供給し重合を行った。共重合体を含む混合溶液を供給速度と同じ速度でポンプにより連続的に抜き出し、260℃、45torrに保たれた気液分離装置に送液することで、共重合体と未反応溶液に分離した。分離した共重合体をペレット化することで共重合体(C-3)を得た。重合が安定した時の重合率は56%であり、その重合率になったときの共重合体を物性等の評価に用いた。 【0062】 実施例1~8及び比較例1~5 ポリカーボネート樹脂(A)、グラフト共重合体(B)、共重合体(C)を表1記載の配合割合で混合した後、シリンダー温度250℃に設定したφ35mmの2軸押出機にて主スクリュー回転数300rpm、吐出量15kg/hrの条件で溶融混練し、ペレット化した。得られたペレットを用いて、オリゴマー成分の含有量の測定を行った。また、このペレットを用いて射出成形機(シリンダー温度250℃、金型温度60℃)にて物性測定用試験片及びめっき用平板を成形した。次いで、その試験片及び平板を用いて物性ならびにめっき密着強度、めっき析出性、冷熱サイクル性を測定した。結果を表1に示す。 【0063】 【表1】 [図:0001402799000007.jpg] 【0064】 ・・・ 比較例4は、オリゴマー含有量が本願で規定する上限を超えることから、めっき析出性、冷熱サイクル性に劣るものであった。」 (3)甲3に記載された事項 甲3には、「熱可塑性樹脂組成物」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【請求項1】 下記成分〔A〕5~80質量%、成分〔B〕10~80質量%、成分〔C〕2~50質量%、及び成分〔D〕0~83質量%からなり(但し、〔A〕、〔B〕、〔C〕及び〔D〕の合計を100質量%とする。)、該〔A〕、〔B〕及び〔C〕に由来するゴム成分の含有量の合計が5~40質量%であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。 成分〔A〕は、アクリル系ゴム質重合体(a1)5~70質量%の存在下に、ビニル系単量体(a2)30~95質量%を重合して〔但し、(a1)及び(a2)の合計を100質量%とする。〕得られ、グラフト率が5~150質量%であるアクリル系ゴム強化樹脂である。 成分〔B〕は、下記の成分(B-1)及び/又は成分(B-2)からなり、該成分(B-1)は、エチレン・α-オレフィン系ゴム(b1)5~70質量%の存在下に、ビニル系単量体(b2)30~95質量%を重合して〔但し、(b1)及び(b2)の合計を100質量%とする。〕得られ、グラフト率が5~150質量%であるゴム強化樹脂であり、該成分(B-2)は、ジエン系ゴム質重合体の水素添加物である水素添加ゴム(b3)5~70質量%の存在下に、ビニル系単量体(b4)30~95質量%を重合して〔但し、(b3)及び(b4)の合計を100質量%とする。〕得られ、グラフト率が5~150質量%である水素添加ゴム強化樹脂である。 成分〔C〕は、ジエン系ゴム質重合体(c1)5~70質量%の存在下に、ビニル系単量体(c2)30~95質量%を重合して〔但し、(c1)及び(c2)の合計を100質量%とする。〕得られ、グラフト率が5~150質量%であるジエン系ゴム強化樹脂である。 成分〔D〕は、ビニル系単量体の(共)重合体である。」 ・「【0006】 【発明が解決しようとする課題】 本発明の目的は、ASA樹脂とAES樹脂及び/又は水素添加ゴム強化樹脂と、ABS樹脂と、を特定の範囲で配合することにより耐候性、耐衝撃性、ウェルド部の外観性、該ウェルド部の色分かれの不良現象及び漆黒性の品質バランスが高水準にある成形品を与える熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。」 ・「【0035】 成分〔A〕、〔B〕、〔C〕及び〔D〕を形成する際に、ビニル系単量体を2種以上組み合わせて用いる場合、配合される単量体の合計を100質量%としたとき、その配合量は、好ましくは芳香族ビニル単量体(イ)5~60質量%、(メタ)アクリル酸アルキル単量体(ハ)0~55質量%、マレイミド系単量体(ニ)0~65質量%、シアン化ビニル単量体(ロ)0~40質量%、共重合可能な他のビニル系単量体(ホ)0~45質量%、より好ましくは(イ)15~50質量%、(ハ)0~45質量%、(ニ)0~60質量%、(ロ)0~35質量%及び(ホ)0~25質量%である。尚、例えば、無水マレイン酸を共重合させて、イミド化した場合には、イミド化の後のマレイミド系単量体単位の含有量が上記の範囲に入ればよい。 尚、上記ビニル系単量体は、上記例示した単量体を2種以上組み合わせて用いる場合、配合される単量体の合計を100質量%としたとき、各単量体の下限配合量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。配合量が少ないと、各単量体が有する性能を十分発揮できないことがある。」 ・「【0041】 本発明の熱可塑性樹脂組成物には、更に、無機充填剤、金属粉末、補強剤、可塑剤、相容化剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、帯電防止剤、滑剤、難燃剤等の添加剤を、適宜添加することができる。 ・・・ 【0043】 本発明の熱可塑性樹脂組成物は、射出成形法、シート押出成形法、真空成形法、異形押出成形法、圧縮成形法、中空成形法、差圧成形法、ブロー成形法、発泡成形法、ガス注入成形法等、公知の各種成形法によって所定形状の成形品とされ、耐衝撃性、耐候性、良好な表面外観の要求されるOA・家電製品、電気・電子分野、雑貨分野、サニタリー分野、車両用途等の各種パーツ、シャーシ、ハウジング材等に使用することができる。特に、屋外で使用される車両等の大気に晒される成形品の成形材料として、好適に使用することができる。」 ・「【実施例】 ・・・ 【0049】 2.アクリル系ゴム強化樹脂〔A〕の製造 2-1.アクリル系ゴム質重合体を含むラテックスの製造 製造例1(a1-1)アクリル酸n-ブチル(以下、BAと略記する。)99部、アリルメタクリレート1部(以下、AMAと略記する。)を混合して、単量体混合物(I)を調製した。攪拌装置、原料及び助剤添加装置、温度計、加熱装置等を備えた、容量5Lのガラス製反応器に水150部、乳化剤として不均化ロジン酸カリウム1部、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩を1.5部、電解質として炭酸水素ナトリウム1部を仕込み、攪拌しつつ、窒素気流下で、内温を60℃まで昇温した。60℃に達した時点で、単量体混合物(I)10.1部を反応器に仕込み、更に75℃まで昇温した。ついで、75℃に達した時点で、2.0部の水に過硫酸カリウム(以下、KPSと略記する。)0.025部を溶解した水溶液を反応器に仕込み、同温度で重合を開始した。重合開始から1時間後に、12部の水に高級脂肪酸ナトリウム石鹸0.5部をおよそ60℃に温めながら溶解した水溶液と、80部の水にKPS0.15部を溶解した水溶液と反応器に仕込んだ。その直後に単量体混合物(I)89.9部を、2時間にわたって連続添加した。単量体混合物(I)の連続添加終了直後、5.0部の水にKPS0.06部を溶解した水溶液を反応器に仕込み、反応器の内温を75℃から80℃に昇温した。80℃に昇温後、更に1時間30分の間、80℃に反応器の内温を保持し、重合反応を終了し、アクリル系ゴム質重合体a1-1を含むラテックスを得た。このときの重合転化率は97%であった。得られたアクリル系ゴムの重量平均粒子径は284nm、350nm未満のアクリル系ゴム質重合体粒子の重量平均粒子径が127nm、割合が77%、350nm以上のアクリル系ゴム質重合体粒子の重量平均粒子径が806nm、割合が23%であった。また、粒子径300~400nmのアクリル系ゴム質重合体粒子の含有量は5%であった。 【0050】 製造例2及び3(a1-2及びa1-3) 表1に示した配合で、上記製造例1と同様にして、アクリル系ゴム質重合体a1-2及びa1-3をそれぞれ含むラテックスを得た。 重合転化率、アクリル系ゴム質重合体粒子の粒子径及び割合(%)の結果は表1に併記した。 【0051】 【表1】 [図:0001402799000008.jpg] 【0052】 2-2.アクリル系ゴム強化樹脂の製造 製造例4(A-1)スチレン(以下、Stと略記する。)73部、及びアクリロニトリル(以下、ANと略記する。)27部を混合して、単量体混合物(II)を調製した。製造例1で使用したガラス製反応器に、製造例1で得られたラテックス(アクリル系ゴム質重合体a1-1を固形分換算で100部含有する)と水110部を仕込み、攪拌しつつ、窒素気流下、40℃に昇温した。40℃に達した時点で、20部の水に、ブドウ糖0.3部とピロリン酸ナトリウム1.2部、硫酸第一鉄0.01部を溶解した水溶液(以下、RED水溶液と略記する。)のうち、86%分、及び、30部の水にt-ブチルハイドロパーオキサイド(以下、BHPと略記する。)0.4部、不均化ロジン酸カリウム2.4部を溶解した水溶液(以下、CAT水溶液と略記する。)のうち、30%分を反応器に仕込み、その直後に単量体混合物(II)/CAT水溶液を、それぞれ3時間/3時間30分にわたって連続添加し、重合を開始した。重合開始から75℃まで昇温し、その後、75℃で保持した。重合を開始して180分後にRED水溶液の残14%分を反応器に仕込み、60分間、同温度で保持した後に重合を終了した。この共重合ラテックスを凝固、水洗、乾燥し、粉末状のアクリル系ゴム強化樹脂A-1を得た。グラフト率は79%、ゴム成分の含有量は50%であった。 【0053】 製造例5及び6(アクリル系ゴム強化樹脂A-2及びA-3) 表2に示した配合で、上記製造例4と同様にして、共重合ラテックスを得た。これらの共重合体ラテックスを凝固、水洗、乾燥し、粉末状のアクリル系ゴム強化樹脂A-2及びA-3を得た。 重合転化率、グラフト率の結果を表2に示す。 【0054】 【表2】 [図:0001402799000009.jpg] 【0055】 3.成分〔B〕の製造 3-1.エチレン・α-オレフィン系共重合体ゴムを用いたゴム強化樹脂の製造 製造例7(B-1) ・・・ 【0056】 3-2.水素添加ゴム強化樹脂の製造 製造例8(B-2) ・・・ 【0057】 4.ジエン系ゴム強化樹脂〔C〕の製造 製造例9(C-1). 平均粒子径が350nmであるポリブタジエン粒子を固形分換算で45部を含有するラテックスに、乳化剤としてロジン酸カリウム、重合開始剤としてクメンハイドロパーオキサイドを投入し、含糖ピロリン酸処方を用いて、St40部及びAN15部を重合して、共重合ラテックスを得た。重合後、製造例4と同様の処理を行い、ジエン系ゴム強化樹脂C-1を得た。グラフト率は75%、ゴム成分の含有量は45%であった。 【0058】 5.(共)重合体〔D〕の製造 St75部及びAN25部からなる共重合体D-1を得た。 【0059】 6.実施例1~5、比較例1~5 上記で得られた成分〔A〕、〔B〕、〔C〕、〔D〕及びカーボンブラックを表3に示した配合で混合し、単軸押出機によって混練して樹脂ペレットとした。得られた樹脂ペレットから、射出成形機にて物性評価用の試験片及び、外観評価用試験片を作製し、上記方法により評価した。その結果を表3に示す。 【0060】 【表3】 [図:0001402799000010.jpg] 」 2 申立理由(甲1ないし甲3に基づく進歩性)について (1)本件発明1について ア 甲1発明1との対比・判断 本件発明1と甲1発明1を対比する。 (ア)甲1発明1の「ポリブタジエンラテックス」及び「アクリロニトリル15部、スチレン35部の単量体混合物」は、本件発明1の「ジエン系ゴム質重合体(a)」及び「芳香族ビニル系単量体を含む単量体」に相当する。 そして、甲1発明1の「グラフト共重合体(B-1)」は、「ポリブタジエンラテックス(質量平均粒子径160nm、粒子径500nm以上の粒子の割合が0%、ゲル分94%)」に、「アクリロニトリル15部、スチレン35部の単量体混合物」を反応させて得られるグラフト共重合体であることから、本件発明1の「ジエン系ゴム質重合体(a)、及び芳香族ビニル系単量体を含む単量体がグラフト重合したグラフト共重合体(A)」に相当する。 (イ)甲1発明1の「ポリオルガノシロキサン(L-1)とアクリル酸-n-ブチルゴムとの複合ゴム状重合体」は、本件発明1の「アクリル系ゴム質重合体(b)」に相当し、甲1発明1の「アクリロニトリル2.5部、スチレン7.5部の単量体混合物」及び「アクリロニトリル10部、スチレン30部の単量体混合物」は、本件発明1の「芳香族ビニル系単量体を含む単量体」に相当する。 そして、甲1発明1の「グラフト共重合体(A-1)」は、「ポリオルガノシロキサン(L-1)とアクリル酸-n-ブチルゴムとの複合ゴム状重合体」に「アクリロニトリル2.5部、スチレン7.5部の単量体混合物」及び「アクリロニトリル10部、スチレン30部の単量体混合物」を反応させて得られるグラフト共重合体であることから、本件発明1の「アクリル系ゴム質重合体(b)、及び芳香族ビニル系単量体を含む単量体がグラフト重合したグラフト共重合体(B)」に相当する。 (ウ)甲1発明1の「アクリロニトリル-スチレン共重合体(C-1)」は、本件発明1の「芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体を含む単量体が重合した共重合体(C)」に相当する。 (エ)甲1発明1の「グラフト重合体(A-1)20質量部、グラフト共重合体(B-1)20質量部、アクリロニトリル29部およびスチレン71部からなるアクリロニトリル-スチレン共重合体(C-1)60質量部を配合し」た混合物は、本件発明1の「樹脂組成物」に相当する。 (オ)甲1発明1の「ペレット」は、甲1の【0079】に「得られた熱可塑性樹脂組成物」と記載されていることから、本件発明1の「熱可塑性樹脂組成物」に相当する。 (カ)甲1発明1の「旭電化工業(株)「LA-63P」」は、光安定剤であるから、本件発明1の「耐候剤(D)」に相当し、「グラフト重合体(A-1)20質量部、グラフト共重合体(B-1)20質量部、アクリロニトリル29部およびスチレン71部からなるアクリロニトリル-スチレン共重合体(C-1)60質量部」の合計100質量部に対して「0.45質量部」配合していることから、本件発明1の「樹脂組成物100質量部に対して、耐候剤(D)を0.1~2質量部含有」するとの特定事項を満足する。 (キ)甲1発明1の「グラフト共重合体(B-1)20質量部」は、「ポリブタジエンラテックス」50部に、「アクリロニトリル15部、スチレン35部の単量体混合物」を反応させて得られていることから、ポリブタジエンラテックスの含有量は10質量部(=20×50/100)であり、甲1発明1の「グラフト重合体(A-1)20質量部」は、「ポリオルガノシロキサンラテックス(L-1)」8部に、「アクリル酸n-ブチル41.2部、メタクリル酸アリル0.6部、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート0.2部であるアクリレート混合物」を反応させて得られる「ポリオルガノシロキサン(L-1)とアクリル酸-n-ブチルゴムとの複合ゴム状重合体」に、「アクリロニトリル2.5部、スチレン7.5部の単量体混合物」及び「アクリロニトリル10部、スチレン30部の単量体混合物」を反応させて得られていることから、ポリオルガノシロキサン(L-1)とアクリル酸-n-ブチルゴムとの複合ゴム状重合体の含有量は10質量部(=20×(8+41.2+0.6+0.2)/(8+41.2+0.6+0.2+2.5+7.5+10+30))である。 そうすると、「ポリブタジエンラテックス」と「ポリオルガノシロキサン(L-1)とアクリル酸-n-ブチルゴムとの複合ゴム状重合体」の含有量の合計は20質量部であり、樹脂組成物の合計は上記(エ)のとおり100質量部であるから、本件発明1の「(1)樹脂組成物100質量%に対して、ジエン系ゴム質重合体(a)とアクリル系ゴム質重合体(b)の合計が10~25質量%」との特定事項を満足する。 (ク)上記(キ)のとおり、甲1発明1において、「ポリオルガノシロキサン(L-1)とアクリル酸-n-ブチルゴムとの複合ゴム状重合体」の含有量は10質量部であり、「ポリブタジエンラテックス」と「ポリオルガノシロキサン(L-1)とアクリル酸-n-ブチルゴムとの複合ゴム状重合体」の含有量はそれぞれ10質量部であり、それらの合計は20質量部であるから、本件発明1の「(2)ジエン系ゴム質重合体(a)とアクリル系ゴム質重合体(b)の合計100質量%に対して、アクリル系ゴム質重合体(b)が50~85質量%」との特定事項を満足する。 (ケ)甲1発明1の「ポリブタジエンラテックス」は、「質量平均粒子径160nm」であるから、本件発明1の「(3)ジエン系ゴム質重合体(a)の重量平均粒子径が、50~1000nm。」との特定事項を満足する。 そうすると、両者は次の点で一致する。 「ジエン系ゴム質重合体(a)、及び芳香族ビニル系単量体を含む単量体がグラフト重合したグラフト共重合体(A)、 アクリル系ゴム質重合体(b)、及び芳香族ビニル系単量体を含む単量体がグラフト重合したグラフト共重合体(B)、 芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体を含む単量体が重合した共重合体(C)、 を含む樹脂組成物100質量部に対して、耐候剤(D)を0.1~2質量部含有し、下記(1)~(3)を満足する熱可塑性樹脂組成物。 (1)樹脂組成物100質量%に対して、ジエン系ゴム質重合体(a)とアクリル系ゴム質重合体(b)の合計が10~25質量% (2)ジエン系ゴム質重合体(a)とアクリル系ゴム質重合体(b)の合計100質量%に対して、アクリル系ゴム質重合体(b)が50~85質量% (3)ジエン系ゴム質重合体(a)の重量平均粒子径が、50~1000nm。」 そして、両者は次の点で相違する。 ・相違点1 本件発明1は、「(4)共重合体(C)100質量%に対して、シアン化ビニル系単量体(c-1)が30~40質量%」と特定されているのに対し、甲1発明1は、アクリロニトリル-スチレン共重合体(C-1)100質量%に対してアクリロニトリルが29質量%である点。 ・相違点2 本件発明1は、「(5)熱可塑性樹脂組成物100質量%に対して、オリゴマー成分の含有量が1.5質量%以下」であるのに対し、甲1発明1は、そのような特定がない点。 そこで、相違点1及び2について検討する。 甲2には、「耐衝撃性、流動性に優れ、かつ、めっき密着強度、めっき析出性及び冷熱サイクル性のバランスに優れるめっき用樹脂組成物及びめっき成形品を提供することを目的とする」(【0010】)ことが記載されているとともに、「共重合体(C)が、芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体を含む単量体成分を重合して成る共重合体」(請求項1)であり、「共重合体(C)を構成するシアン化ビニル系単量体の含有量が30~40質量%であることがめっき析出性の点で好ましい」(【0036】)こと、「オリゴマー成分の含有量が、該樹脂組成物に対して1質量%未満である必要があり、0.8質量%未満であることが好ましい。上記範囲となるように調整することによりめっき析出性を向上させることができる」(【0043】)こと、共重合体(C)としてアクリロニトリルを29部及びスチレン71部を反応させて得られる共重合体(C-3)を用い、オリゴマー含有量が1.6%である比較例4が、めっき析出性及び冷熱サイクル性に劣るものであること、が記載されている。 そうすると、甲2の記載からは、めっき析出性及び冷熱サイクル性を考慮して、めっき用樹脂組成物において、成分として含有する「共重合体(C)を構成するシアン化ビニル系単量体の含有量が30~40質量%であること」及び「オリゴマー成分の含有量が、該樹脂組成物に対して1質量%未満である」こと、が示唆されているといえる。 しかしながら、甲1には、「金属化処理としては、例えば、成形品表面をメッキ処理して銅やクロム、ニッケル等の金属層を形成させる方法・・・」(【0005】)と記載されているものの、発明が解決しようとする課題は「ダイレクト蒸着後に美麗な光輝外観が得られ、しかも、高いレベルの耐衝撃性と耐候性とを有し、PMMA樹脂やPC樹脂などの透明樹脂との振動溶着接合部分の外観にも優れた振動溶着用樹脂組成物を提供すること」(【0009】)であり、【0079】及び【0080】には、熱可塑性樹脂組成物のアイゾット衝撃強度、耐候性、ダイレクト蒸着後の光輝性、振動溶着性の評価について記載されているが、当該評価では金属層の形成をダイレクト蒸着法、すなわち乾式めっきで行う場合しか記載されておらず、めっき液を用いる湿式めっきにより金属層を形成することについては何ら記載されていない。 さらに、ダイレクト蒸着法において、湿式めっきに特有のめっき析出性及び冷熱サイクル性という課題が想起し得ないことは、当業者に自明の事項である。 そうすると、甲1には、甲1発明1において、めっき析出性及び冷熱サイクル性を考慮する動機付けとなる記載はないことから、めっき析出性及び冷熱サイクル性を考慮する甲2に記載された事項を甲1に適用することは、当業者といえども想到できない。 また、甲3にも、甲1発明1において、相違点1及び2に係る本件発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 したがって、甲1発明1において、相違点1及び2に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 そして、本件発明1の奏する「車両外装用部品として必要な機械的強度、成形加工性を有し、かつ耐候性、意匠性に優れる熱可塑性樹脂組成物を提供することができる」という効果は、甲1発明1及び甲1ないし3に記載された事項からみて、本件発明1の構成から当業者が予測できる範囲の効果を超える顕著なものである。 なお、特許異議申立人は、特許異議申立書において、「(タ) 本件特許権者は、甲第1号証に記載された発明に対して、甲第2号証の記載を適用する動機付けがない旨反論するかもしれない。 しかしながら、甲第1号証の【0005】段落には、甲第1号証に記載された発明における「意匠性」について、「メッキ処理」についての記載があることから、めっき析出性の向上のために、「めっき用樹脂組成物」に関する甲第2号証に記載された発明の好適態様を採用しようとすることは、当業者が容易になし得る設計事項にすぎない。」(特許異議申立書27ページ14~19行)と主張しているが、甲1発明1に、甲2に記載された事項を適用する動機付けがないことは、上述したとおりであるため、当該主張は採用することができない。 イ 甲1発明2ないし9との対比・判断 本件発明1と甲1発明2ないし9を対比すると、少なくとも上記アの相違点1及び2と同様の相違点があり、その判断も上記アのとおりである。 よって、本件発明1は、甲1発明2ないし9に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ まとめ したがって、本件発明1は、甲1発明1ないし9及び甲1ないし甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)本件発明2ないし4について 本件発明2ないし4は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て有するものである。 そして、上記(1)ア及びイで検討したとおり、本件発明1は、甲1発明1ないし9に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1の特定事項を全て含む発明である本件発明2ないし4は、甲1発明1ないし9に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3)申立理由についてのむすび したがって、申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。 第5 結語 上記第4のとおり、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700534

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