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特許異議申立

2023-700134

水処理方法および水処理装置

審判番号
2023-700134
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-015087
登録番号
7116691
請求日
2023年02月08日
審決日
2023年04月24日
公報発行日
2023年05月26日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】オルガノ株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人YKI国際特許事務所
  • 【異議申立人】菊間 靖郎
審判長/審判官
  • 審判長 三崎 仁
  • 審判官 金 公彦
  • 審判官 松井 裕典
分類
P1651.121-Y (C02F) / P1651.537-Y (C02F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7116691号発明「水処理方法および水処理装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7116691号の請求項1~10に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7116691号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、平成31年1月31日の出願であって、令和4年8月2日にその特許権の設定登録がされ、同年同月10日に特許掲載公報が発行され、その後、令和5年2月8日に、請求項1~10に係る特許について、特許異議申立人 菊間 靖郎(以下、「申立人」という。)により、甲第1~9号証を証拠方法として特許異議の申立てがなされたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~10に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明10」といい、これらを総称して「本件発明」ということがある。)は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 Fイオン、Alイオン、Naイオンを含む被処理水を逆浸透膜に通水して濃縮水と透過水とを得る逆浸透膜処理工程を含み、 前記濃縮水におけるFイオン、Alイオン、Naイオンのイオン濃度がそれぞれ0.1mg/L以上かつ、前記イオン濃度の総量が418mg/L以上であり、 前記逆浸透膜処理工程における流量(m3/d)、圧力(MPa)、水温(℃)の値から算出される標準化透過水量(m/d/MPa at 25℃)と、予め設定された初期標準化透過水量(m/d/MPa at 25℃)との比率が規定値となったときに、前記被処理水の通水を、濃縮水におけるFイオン、Alイオン、Naイオンのイオン濃度の総量が418mg/L未満である洗浄水の通水に切り替えることを特徴とする水処理方法。 【請求項2】 請求項1に記載の水処理方法であって、 前記比率の規定値として、50%から90%の範囲の値を設定することを特徴とする水処理方法。 【請求項3】 請求項1または2に記載の水処理方法であって、 前記洗浄水として電気伝導率20μS/cm以下の水を用いることを特徴とする水処理方法。 【請求項4】 請求項1~3のいずれか1項に記載の水処理方法であって、 前記逆浸透膜処理工程の前段に前段逆浸透膜処理工程を含み、前記被処理水が、前記前段逆浸透膜処理工程で得られる濃縮水であることを特徴とする水処理方法。 【請求項5】 請求項1~4のいずれか1項に記載の水処理方法であって、 前記洗浄水として前記前段逆浸透膜処理工程で得られる透過水を用いることを特徴とする水処理方法。 【請求項6】 Fイオン、Alイオン、Naイオンを含む被処理水を逆浸透膜に通水して濃縮水と透過水とを得る逆浸透膜処理手段を備え、 前記濃縮水におけるFイオン、Alイオン、Naイオンのイオン濃度がそれぞれ0.1mg/L以上かつ、前記イオン濃度の総量が418mg/L以上であり、 前記逆浸透膜処理手段における流量(m3/d)、圧力(MPa)、水温(℃)の値から算出される標準化透過水量(m/d/MPa at 25℃)と、予め設定された初期標準化透過水量(m/d/MPa at 25℃)との比率が規定値となったときに、前記被処理水の通水を、濃縮水におけるFイオン、Alイオン、Naイオンのイオン濃度の総量が418mg/L未満である洗浄水の通水に切り替えることを特徴とする水処理装置。 【請求項7】 請求項6に記載の水処理装置であって、 前記比率の規定値として、50%から90%の範囲の値を設定することを特徴とする水処理装置。 【請求項8】 請求項6または7に記載の水処理装置であって、 前記洗浄水として電気伝導率20μS/cm以下の水を用いることを特徴とする水処理装置。 【請求項9】 請求項6~8のいずれか1項に記載の水処理装置であって、 前記逆浸透膜処理手段の前段に前段逆浸透膜処理手段を備え、前記被処理水が、前記前段逆浸透膜処理手段で得られる濃縮水であることを特徴とする水処理装置。 【請求項10】 請求項6~9のいずれか1項に記載の水処理装置であって、 前記洗浄水として前記前段逆浸透膜処理手段で得られる透過水を用いることを特徴とする水処理装置。」 第3 特許異議申立理由の概要 1 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)について 本件発明1、3、6及び8は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~4号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 本件発明2及び7は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~5号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 本件発明4、5、9及び10は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~7号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、本件発明1~10に係る特許は、特許法第29条第2項所定の規定に違反してされたものである。 2 特許法第36条第6項第1号及び第2号所定の規定違反(サポート要件違反、明確性要件違反)について (1)本件発明1においては、「濃縮水」における「イオン濃度の総量」の上限値が特定されておらず、装置を運転できない超高濃度の条件も含まれるから、本件発明1は明確でなく、本件発明6についても事情は同じであるので、特許請求の範囲の記載は明確性要件を満たさない。 (2)本件発明5において引用される特許請求の範囲の請求項1~3には、本件発明5に記載された「前段逆浸透膜処理工程」が記載されていないから、本件発明5において前記請求項1~3を引用したとき、本件発明5の「前記前段逆浸透膜処理工程」の意味が不明確である。 また、本件発明10の「前記前段逆浸透膜処理手段」について検討しても事情は同じであるから、本件特許請求の範囲の記載は明確性要件を満たさない。 (3)本件発明1において特定された数値範囲は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例に記載された数値範囲と比較して著しく広いから、本件発明1は発明の詳細な説明に記載されていないものを包含する。 また、本件発明6について検討しても事情は同じであるから、本件特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たさない。 3 証拠方法 甲第1号証:松本 幹治 監修,「ユーザーのための実用膜分離技術」,初版1刷,1996年4月30日,日刊工業新聞社,目次,p.242-243,248-249,256-259,354-355 甲第2号証:特開2008-155112号公報 甲第3号証:特開2014-233714号公報 甲第4号証:特開2014-213264号公報 甲第5号証:特開平8-132038号公報 甲第6号証:特開2018-171563号公報 甲第7号証:特開2000-279957号公報 甲第8号証:特開2005-324137号公報 甲第9号証:特開昭59-80387号公報 第4 特許異議申立理由についての当審の判断 1 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)について (1)甲各号証の記載事項等 ア 甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明 (ア)甲第1号証には、以下のa~dの記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。 a「(4) 薬品洗浄 先に述べた(1)~(3)の方法によりファウリングを抑制したとしても,これらの方法だけでファウリングを完全に防止することは困難である.膜の分離性能が設定値以下になった場合には運転を停止し,周辺機器を含めて膜モジュールの薬品洗浄によるファウリング物質の除去および必要に応じてプラント全体の殺菌を行うことになる.多くのプラントではCIP(cleaning in place)洗浄・殺菌が行われるが,膜の場合はステンレス鋼などの材料と異なり特に高分子膜は薬品による膜材質の劣化を受けやすいため膜の洗浄と殺菌に特別な配慮を必要とする.膜の洗浄が不十分であれば洗浄後のファウリングも起きやすく,膜の殺菌も十分にできず微生物汚染を招きやすい.」(242ページ16行~25行) b「3.2.3 膜の再生手順 膜の再生が比較的厳密にされているものは生菌やパイロジェンの汚染が問題となるバイオプロセスにおいて使用される膜モジュールである.したがって,バイオプロセスにおける膜の再生は以下の手順で行われるが,この再生手順はある意味で他の膜分離プロセスの再生法のモデルとなるのでその内容を簡単に述べる24). (1)水洗 水洗(すすぎ,flushing)は原液処理後あるいは洗浄処理後に系内に残っている残留液を洗い出すために行う.水洗は一般に一過性(one pass)で行われ,膜モジュールおよび系内の機器のすべてに洗浄が行き渡る必要がある.主要な操作条件は流速,圧力および液温である.水洗溶液としては純水や緩衝液の温水が用いられる. (2)洗浄 洗浄(cleanig)は膜モジュールおよび系内に付着残留している汚染物質を除去する操作で,膜性能を回復させる.洗浄剤の選定と洗浄条件の設定は汚染物質の性状と膜の耐薬品性(chemical compatibility)による.洗浄剤使用における主要な因子は濃度,温度,洗浄時間である.表3.5にバイオ関係において用いられる代表的な洗浄剤と使用条件を示す.洗浄液は系内をくまなく循環し,貯槽容器壁はスプレー洗浄される.洗浄効果は洗浄前後の純水透過流束や阻止率の回復率で評価される.」(248ページ4行~249ページ8行) c「(iv)洗浄操作 膜の洗浄は汚染物質と洗浄剤の化学反応と拡散により行われるので,洗浄効果を高めるためには洗浄時に3.2.2項で述べた膜性能の物理的維持法を併用するのが良い.この場合,膜間差圧は反応物質や汚染物質により細孔閉塞や圧密を防止するために洗浄液が膜を透過し,膜内を洗浄できる程度の小さな差圧にする. 汚染物質と洗浄剤の組合せによっては液の粘度が上昇し,中空糸膜では流路閉塞を起こす危険性が生じる.たとえばみかん果汁の濃縮では汚染物質としてペクチンが形成され,酸性溶液下では増粘して洗浄を困難にする.このような場合には酸洗浄よりもアルカリ洗浄を先にする必要がある. 洗浄前および異なる洗浄剤や殺菌剤を使用する前には必ず水洗(すすぎ)をする.また同一洗浄剤を用いる場合でも,洗浄剤のコストと時間の制約がなければ洗浄液を一定時間循環させ排出した後短時間水洗する.そしてまた,洗浄液を調整して汚れの負荷量に応じてこの操作を繰り返すと洗浄効果が上がる.」(257ページ7行~258ページ1行) d「 [図:0001397247000001.jpg] 」(354ページ) (イ)前記(ア)dの記載によれば、甲第1号証には、「ボイラ給水処理装置フローシート」が記載されており、当該「ボイラ給水処理装置フローシート」は、かん水を、原水槽、凝集沈殿装置、自動サイフォンフィルタ、ろ過水槽、ポリシングろ過器、熱交換器、ミクロンフィルタ、加圧ポンプ、中圧RO装置、脱炭酸塔、透過水槽、混床塔、シリカポリシャ及び純水槽等により処理すると共に、海水を、原水槽、凝集ろ過器、ポリシングろ過器、ミクロンフィルタ、加圧ポンプ、高圧RO装置等により処理して、前記ろ過水槽に供給するものである。 また、甲第1号証には、前記(ア)aの記載によれば、薬品洗浄において、膜の分離性能が設定値以下になった場合に運転を停止し、周辺機器を含めて膜モジュールの薬品洗浄によるファウリング物質の除去および必要に応じてプラント全体の殺菌を行うことが記載され、前記(ア)bの記載によれば、膜の再生手順における水洗(すすぎ,flushing)は、原液処理後あるいは洗浄処理後に系内に残っている残留液を洗い出すために行うものであり、水洗溶液としては純水や緩衝液の温水が用いられるものであり、洗浄(cleanig)は、膜モジュールおよび系内に付着残留している汚染物質を除去する操作であり、膜性能を回復させるものであり、洗浄剤の選定と洗浄条件の設定は汚染物質の性状と膜の耐薬品性(chemical compatibility)によることが記載され、前記(ア)cの記載によれば、洗浄操作において、洗浄前および異なる洗浄剤や殺菌剤を使用する前には必ず水洗(すすぎ)をするものであり、同一洗浄剤を用いる場合でも、洗浄剤のコストと時間の制約がなければ洗浄液を一定時間循環させ排出した後短時間水洗することが記載されている。 (ウ)前記(イ)によれば、甲第1号証には、 「かん水を、原水槽、凝集沈殿装置、自動サイフォンフィルタ、ろ過水槽、ポリシングろ過器、熱交換器、ミクロンフィルタ、加圧ポンプ、中圧RO装置、脱炭酸塔、透過水槽、混床塔、シリカポリシャ及び純水槽等により処理すると共に、海水を、原水槽、凝集ろ過器、ポリシングろ過器、ミクロンフィルタ、加圧ポンプ、高圧RO装置等により処理して、前記ろ過水槽に供給する、ボイラ給水処理装置フローシートであって、 薬品洗浄において、膜の分離性能が設定値以下になった場合に運転を停止し、周辺機器を含めて膜モジュールの薬品洗浄によるファウリング物質の除去および必要に応じてプラント全体の殺菌を行うものであり、 膜の再生手順における水洗(すすぎ,flushing)は、原液処理後あるいは洗浄処理後に系内に残っている残留液を洗い出すために行うものであり、水洗溶液としては純水や緩衝液の温水が用いられるものであり、 洗浄(cleanig)は、膜モジュールおよび系内に付着残留している汚染物質を除去する操作であり、膜性能を回復させるものであり、洗浄剤の選定と洗浄条件の設定は汚染物質の性状と膜の耐薬品性(chemical compatibility)によるものであり、 洗浄操作において、洗浄前および異なる洗浄剤や殺菌剤を使用する前には必ず水洗(すすぎ)をするものであり、同一洗浄剤を用いる場合でも、洗浄剤のコストと時間の制約がなければ洗浄液を一定時間循環させ排出した後短時間水洗するものである、ボイラ給水処理装置フローシート。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 イ 甲第2号証の記載事項 甲第2号証には、以下の(ア)~(イ)の記載がある。 (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 ジルコニウム化成処理水洗排水から、ジルコニウムフッ素錯イオン及び水洗水を回収するジルコニウム化成処理水洗排水回収方法であって、 前記ジルコニウム化成処理水洗排水を逆浸透膜処理により濃縮液及び透過液に分離する分離工程、 前記分離工程で得られた濃縮液を陽イオン交換樹脂により処理する陽イオン交換工程、 前記陽イオン交換樹脂により処理された液を化成処理槽へ送水する濃縮液送水工程、並びに、 前記分離工程で得られた透過液を最終水洗槽へ送水する透過液送水工程を有する ことを特徴とする閉鎖循環型ジルコニウム化成処理水洗排水回収方法。」 (イ)「【0042】 (実施例) ジルコニウム化成処理水洗排水を1000L採取した。これをまず、市販の三菱レイヨン社製、中空糸膜モジュール小容量濾過機(FEX-400)を用いて、圧力0.5kg/cm2、流量2.0L/分にて濾過を行った。次いで、得られた溶液を、市販のLF10膜モジュールを用いたメンブレンマスターRUW-5A(Na阻害率99.5%、日東電工社製)を用いて、処理温度25~30℃、圧力2.0~2.5MPa、濃縮液循環流量5.9~6.1L/分、透過液流量1.0~3.0L/分の処理条件で逆浸透膜処理に供し、濃縮液100L/透過液900Lを得た。表1に濃縮液及び透過液の分析結果を示す。 上記で得られた濃縮液を、市販のNDミニクロパックCR-40G塔(日本電工社製)に通液速度SV5(3L/h)で通液し、陽イオン交換処理後液を得た。得られた陽イオン交換処理後の液の分析結果を表1に示す。 【0043】 なお、フッ素イオンと硝酸イオンのイオン濃度については、イオンクロマトグラフ SERIES 4000(DIONEX社製)を用いて測定した。ジルコニウム濃度については、プラズマ発光分光分析装置CIROS 120 ICP(リガク社製)を用いて測定した。その他のイオンについては、原子吸光ATOMIC ABSOPTION SPECTROMETER 3300(PERKIN ELMER社製)を用いて測定した。 【0044】 【表1】 [図:0001397247000002.jpg] 【0045】 表1より、実施例においては、化成処理液として再利用可能なジルコニウムフッ素錯イオンを含む処理液、すなわち、ジルコニウムフッ素錯イオンを適度な濃度で含有し、不要な鉄イオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオンが管理値以下である液を得ることができた。また、同時に、水洗水として再利用可能な透過液(フッ素イオン、硝酸イオン及びナトリウムイオンがそれぞれ100ppm以下)を得ることができた。」 ウ 甲第3号証の記載事項 甲第3号証には、以下の(ア)~(イ)の記載がある。 (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 pHが5以下のフッ素含有排水にアルミニウム剤を添加する工程と、 アルミニウム剤の添加された前記排水を逆浸透膜によってろ過する工程と を有することを特徴とする排水処理方法。 【請求項2】 前記アルミニウム剤は、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム及びポリ塩化アルミニウムから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1記載の排水処理方法。 【請求項3】 前記アルミニウム剤の量は、前記排水中のフッ素モル量1に対してアルミニウムモル量が0.1~3.5となる量であることを特徴とする請求項1又は2記載の排水処理方法。 【請求項4】 前記逆浸透膜は、第1段目の逆浸透膜と前記第1段目の逆浸透膜でろ過した前記排水をろ過する第2段目の逆浸透膜とからなり、 アルミニウム剤の添加された前記排水を前記第1段目の逆浸透膜でろ過した後さらに前記第2段目の逆浸透膜でろ過することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の排水処理方法。 【請求項5】 前記逆浸透膜は、第1段目の逆浸透膜と前記第1段目の逆浸透膜でろ過した前記排水をろ過する第2段目の逆浸透膜とからなり、 前記アルミニウム剤は、前記第1段目の逆浸透膜でろ過した前記排水のみに添加することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の排水処理方法。 【請求項6】 前記排水のフッ素濃度が0.6~50mg/Lであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の排水処理方法。 【請求項7】 フッ素含有排水を供給する排水供給部と、 前記排水にアルミニウム剤を添加するアルミニウム剤添加装置と、 アルミニウム剤の添加された前記排水をろ過する逆浸透膜装置と を有することを特徴とする排水処理装置。」 (イ)「【0016】 (第1の実施形態) 図1は、本実施形態の超純水製造システムの構成を示すブロック図である。図1に示す超純水製造システム1は、原水を処理する前処理装置10と、排水を処理する排水処理装置20とを備えている。排水処理装置20は、逆浸透膜装置(RO)21と、逆浸透膜装置21の被処理水にアルミニウム剤を供給するアルミニウム剤供給装置22を備えている。アルミニウム剤供給装置22は例えば逆浸透膜装置20の被処理水の供給管に分岐して設けられた分岐管上に備えられている。 【0017】 前処理装置10及び排水処理装置20は処理水ピットT1に接続されており、処理水ピットT1の下流には、前処理水及び排水処理装置20で得られる排水処理水から一次純水を製造する一次純水装置30、一次純水を貯留する一次純水タンクT2及び一次純水から二次純水を製造する二次純水装置40が接続され、二次純水装置40は、ユースポイント(POU)50に接続されている。 【0018】 排水処理装置20は、半導体製造工場等(ユースポイント)で使用された排水を回収して処理する。排水としては、例えば、半導体洗浄工程における洗浄排水等の使用済み超純水が用いられる。この排水はフッ素を含有し、かつpHが5以下、好ましくはpHが1.5~4である。また、排水のフッ素濃度は好ましくは0.6~50mg/L、より好ましくは1~20mg/Lである。排水は、フッ素の他に、半導体製造工程で用いられた薬剤、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、アンモニア、水酸化ナトリウム、過酸化水素、イソプロピルアルコールや界面活性剤などの有機物及び剥離したレジスト等の有機物を含むことがある。 【0019】 アルミニウム剤供給装置22は逆浸透膜装置20の被処理水にアルミニウム剤を供給する。アルミニウム剤としては硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム(PAC)及び塩化アルミニウムのうち少なくとも1種を用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。アルミニウム剤供給装置22が逆浸透膜装置20の被処理水にアルミニウム剤を供給すると、排水中のフッ素とアルミニウムイオンが水可溶性の3価の陰イオンであるヘキサフルオロアルミニウム錯イオンを形成する。このとき、排水のpHが5以下であることで、ヘキサフルオロアルミニウム錯イオンの生成反応を促進し、フッ素のほとんどをヘキサフルオロアルミニウム錯イオンとして排水中に溶解させることができる。 【0020】 アルミニウム剤の供給量は、排水中のフッ素のモル量1に対してアルミニウムのモル量が好ましくは0.1~3.5、より好ましくは0.2~2となる量とする。フッ素のモル量1に対してアルミニウムのモル量が0.1未満であるとフッ素の除去率が十分でなく、3.5を超えると排水中のフッ素の量に対するアルミニウム剤の添加量が多すぎて無駄である。アルミニウム剤の供給量は、排水中のフッ素濃度を測定して当該測定値に基いて決定することが好ましい。具体的には、排水中のフッ素濃度を測定してこの測定値に基いてアルミニウム剤供給装置のアルミニウム剤の供給量を制御する制御装置を設置することで、アルミニウム剤の供給量を調節することができる。当該制御装置は、排水中のフッ素濃度をあらかじめ測定し、当該測定値に基いてアルミニウム供給量を所定の一定量としてもよく、排水中のフッ素濃度を所定の時間間隔で、自動で測定するとともに、当該測定値に基いてアルミニウム剤の供給量を調節してもよい。なお、アルミニウム剤を供給する際に、排水のpHが上記した好ましい値となるように、少量の酸を添加してもよい。 【0021】 逆浸透膜装置21はアルミニウム剤の添加された排水をろ過する。このとき、逆浸透膜装置21が排水中のヘキサフルオロアルミニウム錯イオンを除去する。逆浸透膜装置21の被処理水のpHは、好ましくは5以下、より好ましくは4.7以下、さらに好ましくは4以下である。ここで、被処理水のpHが5より低下していくと、フッ化水素は解離せずに電荷を持たないフッ化水素のまま被処理水中に溶存するようになり、これを逆浸透膜処理する場合のフッ素の除去率が低下していく。特に被処理水のpHが3以下ではフッ素のほとんどがフッ化水素として溶存するため、これを逆浸透膜処理した場合のフッ素の除去率が極めて低くなる。一方、本実施形態の逆浸透膜装置21の被処理水中では、排水中のフッ素のほとんどが上記したようにヘキサフルオロアルミニウム錯イオンとして溶存しているため、逆浸透膜装置21でのフッ素の除去率が向上する。さらに、一般的に逆浸透膜ではイオン成分の除去率はその価数が大きいほど高くなり、例えば除去率はフッ化水素、フッ素イオン、ヘキサフルオロアルミニウム錯イオンの順に大きくなるので、本実施形態では逆浸透膜装置21が3価のイオンであるヘキサフルオロアルミニウム錯イオンを高除去率で除去し、フッ素の除去率を飛躍的に向上させる。なお、逆浸透膜装置21はこれ以外にも排水中の塩類やイオン性の有機物、コロイド性の有機物を除去することができる。逆浸透膜装置21の透過水は下流に送られてさらに処理され、濃縮水は系外に排出されて含まれる薬剤の種類に応じて適切に排液処理される。 ・・・ 【0028】 このように、排水処理装置20は、排水を処理して、フッ素濃度が好ましくは0.1~0.5mg/L程度、より好ましくは0.2~0.4mg/L程度であり、pHが好ましくは4~6程度、より好ましくは4.5~6程度の排水処理水とする。なお、排水処理装置20は、排水中の硫酸や塩酸を除去することで排水処理水のpHを排水のpH以上とする。」 エ 甲第4号証の記載事項 甲第4号証には、以下の(ア)~(イ)の記載がある。 (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 フッ化物含有水に、該フッ化物含有水中のカルシウム濃度が該フッ化物含有水中のフッ化物の反応当量よりもカルシウムとして5~200mg/L不足となるようにカルシウム化合物を添加して反応させる第一工程と、 該第一工程の反応液を固液分離して、前記フッ化物含有水よりもフッ化物濃度の低い分離水を得る第二工程と、 該分離水を逆浸透膜処理して透過水と濃縮水とに分離する第三工程とを含む、フッ化物含有水の処理方法。」 (イ)「【実施例】 【0045】 以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。 なお、以下において、原水としては、下記水質のものを用いた。この原水中のフッ化物の反応当量となるカルシウム濃度は594.7mg-Ca/Lであり、原水中のカルシウム濃度17.3mg-Ca/Lを差し引くと、原水中のフッ化物の反応当量となるためのカルシウム化合物の添加量は、577mg-Ca/Lとなる。 <原水水質> 【表1】 [図:0001397247000003.jpg] 【0046】 また、カルシウム化合物としては消石灰(Ca(OH)2、Mg/Ca(重量比)=0.008)を用い、pH調整用の酸としては塩酸(HCl)、アルカリとしては水酸化ナトリウム(NaOH)を用いた。また、鉄化合物としては塩化第二鉄(38%FeCl3)を用いた。また、高分子凝集剤としては、栗田工業(株)製アニオン系高分子凝集剤「クリフロックPA331」を用い、スケール防止剤としてはエチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩(EDTA)を用いた。 【0047】 [実施例1~3] 表1に示す水質の原水を図2に示す水処理装置で処理する運転を約3週間行った。図2において、図1におけると同一機能を奏する処理部には同一符号を付してある。各処理部の仕様及び各処理部の流量等の処理条件は以下の通りとした。 【0048】 <第1反応槽1> pH:10.5 HRT:20min 消石灰添加量:カルシウム換算添加量として表2に示す通り <第1凝集槽2> PA331添加量:1mg/L HRT:5min <第1沈殿槽3A> LV:4m/h 汚泥返送比:20 <第2凝集槽5> 38%FeCl3添加量:15mg/L pH:6.5 HRT:10min <砂濾過塔6A> LV=10m/h <軟化塔(イオン交換樹脂塔)7A> 樹脂:三菱化学社製 強酸性陽イオン交換樹脂「SK-1B」 SV:30h-1 <pH調整槽8> pH:10.5 EDTA添加量:0.0025mmol/L <第1RO膜分離装置9> RO膜:日東電工社製 低圧芳香族ポリアミド膜「ES-20」 供給水量:100L/h 回収率:80% <第2RO膜分離装置10> RO膜:日東電工社製 低圧芳香族ポリアミド膜「ES-20」 供給水量:80L/h 回収率:90% pH:7.5 ・・・ 【0053】 以上の実施例1~3及び比較例1,2における砂濾過処理水、第1RO膜分離装置及び第2RO膜分離装置の透過水の水質、第1RO膜分離装置の膜フラックスの低下率(運転開始時の膜フラックスに対する低下率)、並びに原水流量当たりの発生汚泥量を表2に示す。ただし、ここでは、RO膜分離装置の濃縮水のフッ素をカルシウムで処理した場合に生成する汚泥も考慮した発生汚泥量とした。 【0054】 【表2】 [図:0001397247000004.jpg] 」 (2)対比・判断 ア 本件発明1~5について (ア)本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「かん水」及び「海水」は、本件発明1における「被処理水」に相当し、甲1発明における「中圧RO装置」及び「高圧RO装置」による工程は、本件発明1における「被処理水を逆浸透膜に通水して濃縮水と透過水とを得る逆浸透膜処理工程」に相当し、甲1発明における「ボイラ給水処理装置フローシート」による工程は、本件発明1における「水処理方法」に相当する。 すると、本件発明1と甲1発明とは、 「被処理水を逆浸透膜に通水して濃縮水と透過水とを得る逆浸透膜処理工程を含む、水処理方法。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点1:本件発明1は、「被処理水」が「Fイオン、Alイオン、Naイオンを含」み、「前記濃縮水におけるFイオン、Alイオン、Naイオンのイオン濃度がそれぞれ0.1mg/L以上かつ、前記イオン濃度の総量が418mg/L以上」である、との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明は、「かん水」及び「海水」が「Fイオン、Alイオン、Naイオンを含」むか否かが明らかでなく、「中圧RO装置」及び「高圧RO装置」による「濃縮水におけるFイオン、Alイオン、Naイオンのイオン濃度」及び「前記イオン濃度の総量」も明らかでない点。 ・相違点2:本件発明1は、逆浸透膜の再生について、「前記逆浸透膜処理工程における流量(m3/d)、圧力(MPa)、水温(℃)の値から算出される標準化透過水量(m/d/MPa at 25℃)と、予め設定された初期標準化透過水量(m/d/MPa at 25℃)との比率が規定値となったときに、前記被処理水の通水を、濃縮水におけるFイオン、Alイオン、Naイオンのイオン濃度の総量が418mg/L未満である洗浄水の通水に切り替える」、との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明は、「中圧RO装置」及び「高圧RO装置」における「膜の再生」について、「薬品洗浄において、膜の分離性能が設定値以下になった場合に運転を停止し、周辺機器を含めて膜モジュールの薬品洗浄によるファウリング物質の除去および必要に応じてプラント全体の殺菌を行うものであり、膜の再生手順における水洗(すすぎ,flushing)は、原液処理後あるいは洗浄処理後に系内に残っている残留液を洗い出すために行うものであり、水洗溶液としては純水や緩衝液の温水が用いられるものであり、洗浄(cleanig)は、膜モジュールおよび系内に付着残留している汚染物質を除去する操作であり、膜性能を回復させるものであり、洗浄剤の選定と洗浄条件の設定は汚染物質の性状と膜の耐薬品性(chemical compatibility)によるものであり、洗浄操作において、洗浄前および異なる洗浄剤や殺菌剤を使用する前には必ず水洗(すすぎ)をするものであり、同一洗浄剤を用いる場合でも、洗浄剤のコストと時間の制約がなければ洗浄液を一定時間循環させ排出した後短時間水洗するものである」、との発明特定事項を有する点。 (イ)事案に鑑み、まず、前記(ア)の相違点2が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、前記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項、すなわち、逆浸透膜の再生について、本件特許明細書には、以下の記載がある。 「【0020】 図1の水処理装置1は、Fイオン(すなわち、フッ化物イオン)、Alイオン(すなわち、アルミニウムイオン)、Naイオン(すなわち、ナトリウムイオン)を含む被処理水を逆浸透膜に通水して濃縮水と透過水とを得る逆浸透膜処理手段として逆浸透膜処理装置10を備える。 ・・・ 【0023】 図1の水処理装置1において、バルブ20が開状態、バルブ22が閉状態とされ、Fイオン、Alイオン、Naイオンを含む被処理水は、被処理水配管12を通して逆浸透膜処理装置10へ送液され、逆浸透膜処理装置10において逆浸透膜に通水されて濃縮水と透過水とが得られる(逆浸透膜処理工程)。逆浸透膜処理で得られた濃縮水は、濃縮水配管16を通して排出され、透過水は、透過水配管18を通して排出される。 【0024】 ここで、イオン濃度測定装置により測定された、濃縮水におけるFイオン、Alイオン、Naイオンのイオン濃度がそれぞれ0.1mg/L以上であり、かつ、Fイオン、Alイオン、Naイオンのイオン濃度の総量が418mg/L以上となり、例えば流量計により測定された透過水の流量(m3/d)、圧力計により測定された透過水の圧力(MPa)、水温計により測定された透過水の水温(℃)の値から算出される標準化透過水量(m/d/MPa at 25℃)と、予め設定された初期標準化透過水量(m/d/MPa at 25℃)との比率が規定値となったときに、バルブ20が閉状態、バルブ22が開状態とされ、被処理水の通水を、濃縮水におけるFイオン、Alイオン、Naイオンのイオン濃度の総量が418mg/L未満である洗浄水の通水に切り替え、逆浸透膜処理装置10の逆浸透膜の洗浄が行われる(洗浄工程)。ここで、標準化透過水量は、JIS K3802 1096にて定義されている補正フラックスと同義であり、単位時間あたり、単位膜面積あたり、単位圧力あたりの、25℃における透過水量のことである。具体的には、透過水量(m3/d)を、逆浸透膜エレメントの膜面積(m2)と操作圧力(MPa)で割り、水温(℃)による補正係数を乗じることで求められる。標準化透過水量と初期標準化透過水量との比率(%)は、(標準化透過水量/初期標準化透過水量)×100により求められる。・・・ 【0025】 本発明者らは、例えば半導体工場の排水等のFイオン、Alイオン、Naイオンを含む排水を逆浸透膜処理するときに、主にヘキサフルオロアルミン酸三ナトリウム(Na3AlF6)によるスケーリングが発生することを見出した。Na3AlF6の水に対する溶解度(25℃)は418mg/Lと高く、Na3AlF6は一般的にはスケーリングがほとんど発生しない物質であると考えられる。しかし、Fイオン、Alイオン、Naイオンの3種のイオンがそれぞれ少なくとも0.1mg/L以上存在し、それらのイオン濃度の総量がNa3AlF6の溶解度である418mg/Lを超える水では、Na3AlF6が析出する可能性が考えられ、特に逆浸透膜を用いた水処理では濃度分極の効果も相まってNa3AlF6を主成分とするスケールの発生が促進されると考えられる。 【0026】 また、本発明者らは、さらに、このNa3AlF6を主成分とするスケールが、純水等の清澄な水で容易に洗浄されることも見出した。したがって、スケーリングを抑制するために、回収率を下げる、または薬品洗浄を実施する等の対応を行わなくてもよい。 【0027】 洗浄水としては、Fイオン、Alイオン、Naイオンの濃度が低いことが第一に考えられ、濃縮水におけるFイオン、Alイオン、Naイオンのイオン濃度の総量が418mg/L未満である洗浄水を用いればよい。・・・洗浄水としては、有機物等他の汚染物質が含まれていないことが好ましく、例えば、逆浸透膜の前処理膜(MF膜、UF膜)の処理水、逆浸透膜の透過水、純水、超純水等が挙げられる。 【0028】 洗浄工程のタイミングは、運転初期の透過水量を把握しておき、それがある規定値まで低減した時点で洗浄する手法が考えられる。また、このとき透過水量の算出には、圧力(MPa)、水温(℃)の測定データを用いて、圧力補正、温度補正を行うことで標準化透過水量を算出することによって、正確な判断が可能となる。すなわち、逆浸透膜処理工程における流量(m3/d)、圧力(MPa)、水温(℃)の値から算出される標準化透過水量(m/d/MPa at 25℃)と、予め設定された初期標準化透過水量(m/d/MPa at 25℃)との比率が規定値となったときに、被処理水の通水を、濃縮水におけるFイオン、Alイオン、Naイオンのイオン濃度の総量が418mg/L未満である洗浄水の通水に切り替えればよい。」 (ウ)前記(イ)の本件特許明細書の記載によれば、本件発明においては、被処理水を逆浸透膜に通水して濃縮水と透過水とを得る逆浸透膜処理において、前記濃縮水におけるFイオン、Alイオン、Naイオンのイオン濃度がそれぞれ0.1mg/L以上であり、かつ、Fイオン、Alイオン、Naイオンのイオン濃度の総量が418mg/L以上となり、透過水の流量(m3/d)、透過水の圧力(MPa)、透過水の水温(℃)の値から算出される標準化透過水量(m/d/MPa at 25℃)と、予め設定された初期標準化透過水量(m/d/MPa at 25℃)との比率が規定値となったときに、被処理水の通水を、濃縮水におけるFイオン、Alイオン、Naイオンのイオン濃度の総量が418mg/L未満である洗浄水の通水に切り替えて、逆浸透膜の洗浄が行われることで、Na3AlF6を主成分として発生したスケールが、清澄な水で容易に洗浄されて抑制されることから、回収率を下げる、または薬品洗浄を実施する等の対応を行わなくてもよくなるものである。 すると、本件特許明細書の記載に接した当業者は、前記相違点2に係る、逆浸透膜の再生についての本件発明1の発明特定事項は、Fイオン、Alイオン、Naイオンを含む排水を逆浸透膜処理するときに発生する、Na3AlF6を主成分とするスケールを、「濃縮水におけるFイオン、Alイオン、Naイオンのイオン濃度の総量が418mg/L未満である洗浄水」により洗浄することで抑制するものであることを理解できる。 (エ)一方、甲1発明の「中圧RO装置」及び「高圧RO装置」における「膜の再生」の「水洗(すすぎ,flushing)」は、「純水」等が用いられるものであるが、「原液処理後あるいは洗浄処理後に系内に残っている残留液を洗い出す」ものにとどまり、Na3AlF6を主成分とするスケールを洗浄することで抑制するものではない。 また、「洗浄(cleanig)」は、「洗浄剤の選定と洗浄条件の設定は汚染物質の性状と膜の耐薬品性(chemical compatibility)による」ものであって、「洗浄剤」によるものであり、「純水」等が用いられるものとはいえないから、これも、Na3AlF6を主成分とするスケールを、「濃縮水におけるFイオン、Alイオン、Naイオンのイオン濃度の総量が418mg/L未満である洗浄水」で洗浄して抑制するものとはいえない。 更に、「薬品洗浄において、膜の分離性能が設定値以下になった場合に運転を停止し、周辺機器を含めて膜モジュールの薬品洗浄によるファウリング物質の除去および必要に応じてプラント全体の殺菌を行う」ことも、「洗浄操作において、洗浄前および異なる洗浄剤や殺菌剤を使用する前には必ず水洗(すすぎ)をするものであり、同一洗浄剤を用いる場合でも、洗浄剤のコストと時間の制約がなければ洗浄液を一定時間循環させ排出した後短時間水洗する」ことも、Na3AlF6を主成分とするスケールを、「濃縮水におけるFイオン、Alイオン、Naイオンのイオン濃度の総量が418mg/L未満である洗浄水」で洗浄して抑制するものとはいえない。 (オ)前記(エ)によれば、甲1発明における「中圧RO装置」及び「高圧RO装置」における「膜の再生」についての発明特定事項は、前記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項に相当するものではないので、前記相違点2は実質的な相違点である。 そして、甲第2~4号証に、前記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項が記載も示唆もされるものでもないから、甲1発明において、前記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとするには至らないので、前記(ア)の相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲第2~4号証に記載された事項に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないのであり、更に甲第5~7号証に記載された事項を参酌して本件発明2~5について検討しても、事情は同じである。 イ 本件発明6~10について 本件発明6は、本件発明1と同様に、前記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項と同じ発明特定事項を有するものである。 そうすると、前記ア(オ)に記載したのと同様の理由により、そのほかの相違点について検討するまでもなく、甲1発明及び甲第2~4号証に記載された事項に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないのであり、更に甲第5~7号証に記載された事項を参酌して本件発明7~10について検討しても、事情は同じである。 (3)申立人の主張について ア 前記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項(以下、特許異議申立書2~3ページの申立人による分節にのっとって、「発明特定事項C」という。)についての特許異議申立書における申立人の主張は、概略、以下のとおりである。 甲第1号証の242ページ「(4)薬品洗浄」の項(前記(1)ア(ア)a)の記載は、発明特定事項Cを示すものである。 発明特定事項Cの「標準化透過水量」は、JISに記載される膜分離性能の指標であり、膜の分離性能として「標準化透過流束」を採用することは、本件特許の出願日当時の周知技術である。 発明特定事項Cの洗浄水の各イオン濃度については、甲第1号証の248ページ「3.2.3 膜の再生手順」「(1)水洗」の項(前記(1)ア(ア)b)に、水洗溶液として純水が記載されており、純水のFイオン、Alイオン、Naイオン濃度の総量が418mg/L未満であることは、本件特許の出願日当時の周知技術であるから、甲第1号証に記載ないし開示されているといえる(26ページ1行~15行)。 イ そこで、前記アの主張について検討すると、前記(2)ア(オ)に記載したのと同様の理由により、甲第1号証の242ページ「(4)薬品洗浄」の項(前記(1)ア(ア)a)の記載も、同248ページ「3.2.3 膜の再生手順」「(1)水洗」の項(前記(1)ア(ア)b)の記載も、発明特定事項Cを開示したものとはいえない。 してみれば、「標準化透過水量」がJISに記載される膜分離性能の指標であり、また、膜の分離性能として「標準化透過流束」を採用することや、純水のFイオン、Alイオン、Naイオン濃度の総量が418mg/L未満であることが、本件特許の出願日当時の周知技術であるとしても、甲第1号証に発明特定事項Cが記載も示唆もされているとはいえないから、申立人の前記アの主張はいずれも採用できない。 (4)小括 よって、本件発明1~10は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~7号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、前記第3の1の特許異議申立理由はいずれも理由がない。 2 特許法第36条第6項第1号及び第2号所定の規定違反(サポート要件違反、明確性要件違反)について (1)明確性要件違反について ア 明確性要件の判断手法 請求項に係る発明が明確性要件に適合するか否かは、当該請求項の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、当該請求項の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断すべきであるから、以下、この観点に立って検討する。 イ 「濃縮水」における「イオン濃度の総量」の上限値について (ア)始めに、前記第3の2(1)の特許異議申立理由について検討すると、前記1(2)ア(イ)の本件特許明細書の記載(段落【0025】~【0026】)からみれば、本件発明は、「被処理水」の「濃縮水」の「イオン濃度の総量」が、Na3AlF6の水に対する溶解度(25℃)である418mg/L以上となったときに、Na3AlF6によるスケーリングが発生するが、前記スケーリングは、「濃縮水」の「イオン濃度の総量」が418mg/L未満の「洗浄水」により容易に洗浄される、という技術思想に基づくものである。 そして、前記技術思想からみれば、本件発明は、Na3AlF6の水に対する溶解度(25℃)である418mg/Lを、「被処理水」の「濃縮水」の「イオン濃度の総量」の下限値とすることに技術的意義を有するものといえ、その上限値には特段の技術的意義を有しないから、前記上限値は、当業者が通常採用する、運転を継続することが可能な範囲内のものと解するのが妥当であるので、本件発明1に、装置を運転できない超高濃度の条件も含まれるとはいえない。 (イ)また、本件特許明細書には、更に以下の記載がある。 「【0030】 上記洗浄工程を行う場合の被処理水は、濃縮水におけるFイオン、Alイオン、Naイオンのイオン濃度がそれぞれ0.1mg/L以上であり、かつ、Fイオン、Alイオン、Naイオンのイオン濃度の総量が418mg/L以上となる水であるが、カチオンとアニオンとのバランス、Alイオンが多量に含まれることはほとんどないという点から、例えば、Fイオン、Naイオンのイオン濃度は、それぞれ100~300mg/L程度、好ましくは130~230mg/L程度であり、Alイオンのイオン濃度は、0.1~20mg/L程度、好ましくは1~3mg/L程度である。 【0031】 本実施形態に係る水処理方法および水処理装置の処理対象となる被処理水は、Fイオン、Alイオン、Naイオンを含み、逆浸透膜処理の濃縮水におけるFイオン、Alイオン、Naイオンのイオン濃度がそれぞれ0.1mg/L以上かつ、Fイオン、Alイオン、Naイオンのイオン濃度の総量が418mg/L以上となる水であればよく、特に制限はない。・・・処理対象となる被処理水としては、例えば、半導体工場の排水、ガラス加工工場の排水等が挙げられる。」 前記記載によれば、本件発明における「被処理水」の「濃縮水」は、例えば、Fイオン、Naイオンのイオン濃度が、それぞれ100~300mg/L程度、好ましくは130~230mg/L程度であり、Alイオンのイオン濃度が、0.1~20mg/L程度、好ましくは1~3mg/L程度であるものであって、処理対象となる「被処理水」として、半導体工場の排水、ガラス加工工場の排水等が挙げられるものである。 すると、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明における「被処理水」は、半導体工場の排水、ガラス加工工場の排水等であって、その「濃縮水」は、Fイオン、Naイオンのイオン濃度が、それぞれ100~300mg/L程度、好ましくは130~230mg/L程度であり、Alイオンのイオン濃度が、0.1~20mg/L程度、好ましくは1~3mg/L程度であること、すなわち、運転を継続することができない超高濃度の条件を含むものではなく、運転を継続することが可能な範囲内のものであることを理解することができる。 してみれば、前記(ア)の事項は、本件特許明細書の記載からも裏付けられるものである。 (ウ)以上のとおり、本件発明1において「被処理水」の「濃縮水」における「イオン濃度の総量」の上限値が特定されていないとしても、本件発明1に、装置を運転できない超高濃度の条件も含まれるとはいえないから、本件特許請求の範囲の請求項1の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 そして、このことを前記アの判断手法に当てはめれば、本件特許請求の範囲の請求項1の記載は明確性要件に適合するといえ、同請求項6について検討しても事情は同じであるから、前記第3の2(1)の特許異議申立理由は理由がない。 ウ 「前記前段逆浸透膜処理工程」について 次に、前記第3の2(2)の特許異議申立理由について検討すると、本件発明5において引用される特許請求の範囲の請求項1~3には、本件発明5に記載された「前段逆浸透膜処理工程」が記載されておらず、前記「前段逆浸透膜処理工程」が記載されているのは同請求項4であることからみれば、当業者は、本件発明5が前記請求項4を引用するものであることを、特段の困難なく理解することができるから、本件特許請求の範囲の請求項5の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 そして、このことを前記アの判断手法に当てはめれば、本件特許請求の範囲の請求項5の記載は明確性要件に適合するといえ、同請求項10について検討しても事情は同じであるから、前記第3の2(2)の特許異議申立理由も理由がない。 (2)サポート要件違反について ア サポート要件の判断手法 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が本件特許の出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであるから、以下、この観点に立って検討する。 イ 本件発明の課題 本件特許明細書には、更に、以下の記載がある。 「【0002】 近年、純水製造や水回収等において、逆浸透膜が用いられる機会が増加している。水中の不溶解成分等が逆浸透膜の膜面、配管および装置等に付着、堆積するスケーリングは、逆浸透膜の運転管理の中でも重要な項目の一つである。スケールの要因となることが多く注目されるものとしては、炭酸カルシウムを始めとした硬度系スケール、またはシリカ系のスケールが挙げられる。そのようなスケールには、例えばポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ホスホン酸等の分散剤を添加して対策している。そのような対策をしてもスケーリングが避けられない場合には、回収率を下げる、または薬品洗浄を実施する等の対応が必要となる。 【0003】 例えば半導体工場の排水等のFイオン(フッ化物イオン)、Alイオン(アルミニウムイオン)、Naイオン(ナトリウムイオン)を含む排水を逆浸透膜処理するときにスケーリングが発生する場合があり、対策が求められている。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本発明の目的は、Fイオン、Alイオン、Naイオンを含む被処理水を逆浸透膜処理するときに発生するスケールを簡易な方法で除去することができる水処理方法および水処理装置を提供することにある。」 前記記載によれば、近年、純水製造や水回収等において、逆浸透膜が用いられる機会が増加しており、水中の不溶解成分等が逆浸透膜の膜面、配管および装置等に付着、堆積するスケーリングは、逆浸透膜の運転管理の中でも重要な項目の一つなのであるが、例えば半導体工場の排水等のFイオン(フッ化物イオン)、Alイオン(アルミニウムイオン)、Naイオン(ナトリウムイオン)を含む排水を逆浸透膜処理するときにスケーリングが発生する場合があり、対策が求められていることから、本件発明は、Fイオン、Alイオン、Naイオンを含む被処理水を逆浸透膜処理するときに発生するスケールを簡易な方法で除去することができる水処理方法および水処理装置を提供することを課題(以下、「本件課題」という。)とするものである。 ウ 判断 (ア)前記1(2)ア(ウ)に記載したのと同様の理由により、本件特許明細書の記載に接した当業者は、被処理水を逆浸透膜に通水して濃縮水と透過水とを得る逆浸透膜処理において、濃縮水におけるFイオン、Alイオン、Naイオンのイオン濃度がそれぞれ0.1mg/L以上であり、かつ、Fイオン、Alイオン、Naイオンのイオン濃度の総量が418mg/L以上となり、透過水の流量(m3/d)、透過水の圧力(MPa)、透過水の水温(℃)の値から算出される標準化透過水量(m/d/MPa at 25℃)と、予め設定された初期標準化透過水量(m/d/MPa at 25℃)との比率が規定値となったときに、被処理水の通水を、濃縮水におけるFイオン、Alイオン、Naイオンのイオン濃度の総量が418mg/L未満である洗浄水の通水に切り替えて、逆浸透膜の洗浄が行われることで、Fイオン、Alイオン、Naイオンを含む被処理水を逆浸透膜処理するときに発生するスケールを簡易な方法で除去することができ、本件課題を解決できることを理解することができるものである。 そして、被処理水を逆浸透膜に通水して濃縮水と透過水とを得る逆浸透膜処理において、濃縮水におけるFイオン、Alイオン、Naイオンのイオン濃度がそれぞれ0.1mg/L以上であり、かつ、Fイオン、Alイオン、Naイオンのイオン濃度の総量が418mg/L以上となり、透過水の流量(m3/d)、透過水の圧力(MPa)、透過水の水温(℃)の値から算出される標準化透過水量(m/d/MPa at 25℃)と、予め設定された初期標準化透過水量(m/d/MPa at 25℃)との比率が規定値となったときに、被処理水の通水を、濃縮水におけるFイオン、Alイオン、Naイオンのイオン濃度の総量が418mg/L未満である洗浄水の通水に切り替えることは、本件発明1の発明特定事項にほかならない。 (イ)前記(ア)によれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明1の発明特定事項により本件課題を解決できることを理解することができるから、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 そして、このことを前記アの判断手法に当てはめれば、本件特許請求の範囲の請求項1の記載はサポート要件に適合するといえ、同請求項6について検討しても事情は同じである。 (ウ)そして、本件発明1及び6において特定された数値範囲が本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例に記載された数値範囲と比較して広いとしても、前記(イ)の事情に変わりはないから、前記第3の2(3)の特許異議申立理由も理由がない。 (3)小括 よって、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号及び第2号所定の規定に適合するから、前記第3の2の特許異議申立理由はいずれも理由がない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、申立人の特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1~10に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700134

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