特許異議申立
2023-700524
化粧料用ジェル状組成物
- 審判番号
- 2023-700524
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-111590
- 登録番号
- 7175556
- 請求日
- 2023年05月19日
- 審決日
- 2024年08月19日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社ファンケル
- 【権利者代理人】山田 泰之
- 【権利者代理人】長谷部 善太郎
- 【権利者代理人】中村 理弘
- 【権利者代理人】太田 千香子
- 【異議申立人】梅山 和顕
- 審判長/審判官
- 審判長 木村 敏康
- 審判官 野田 定文
- 審判官 冨永 保
- 分類
- P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7175556号発明「化粧料用ジェル状組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7175556号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。
特許第7175556号の請求項1~3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7175556号の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成30年6月12日に出願され、令和4年11月11日にその特許権の設定登録がされ、同年同月21日に特許掲載公報が発行された。
その後、その請求項1~3に係る発明の特許に対して、令和5年5月19日に梅山和顕(以下「申立人」という。)により特許異議がされ、その後の手続の経緯は次のとおりである。
令和5年 7月24日付け: 取消理由通知
同年 9月25日 : 意見書及び訂正請求書の提出(特許権者)
同年10月 2日付け: 訂正の請求があった旨の通知
同年 同月31日 : 意見書の提出(申立人)
同年11月20日付け: 訂正拒絶理由通知
同年 同月25日 : 意見書及び手続補正書の提出(特許権者)
令和6年 1月18日 : 手続補正書(自発)の提出(特許権者)
同年 2月 2日付け: 取消理由通知(決定の予告)
同年 4月 8日 : 意見書及び訂正請求書の提出(特許権者)
同年 同月19日付け: 手続補正指令(方式)
同年 5月24日 : 手続補正書(方式)の提出(特許権者)
同年 6月10日付け: 訂正の請求があった旨の通知
同年 7月 5日 : 意見書の提出(申立人)
なお、令和5年9月25日提出の訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否についての判断
1 請求の趣旨及び訂正の内容
令和6年4月8日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の請求の趣旨は、「特許第7175556号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~3について訂正することを求める。」というものであり、その内容は、令和6年4月19日付けの手続補正指令(方式)に対し、同年5月24日付けで手続補正(方式)がなされたところ、以下の訂正事項1のとおりである。
(1) 訂正事項1
本件訂正前の請求項1に、
「(ただし、1.(a)水溶性保温剤0.5~20重量%;(b)親水性ゲル化剤0.1~20重量%;及び(c)i)ジメチコノール、フルオロシリコーン及びジメチコン又はそれらの混合物からなる群より選択される200,000~540,000の分子量を有するシリコーンゴム;及びii)0.65~100cpsの粘度を有するシリコーンベースキャリアから本質的になるシリコーン成分1.0~10重量%(i)対ii)の比率は10:90~20:80である;上記成分は500~10,000cpsの最終粘度を有する);を含む実質上オイルフリーで水性ゲル形のスキンケア組成物、を除く)」
と記載されているのを、
「(ただし、1.(a)水溶性保温剤0.5~20重量%;(b)親水性ゲル化剤0.1~20重量%;及び(c)i)ジメチコノール、フルオロシリコーン及びジメチコン又はそれらの混合物からなる群より選択される200,000~540,000の分子量を有するシリコーンゴム;及びii)0.65~100cpsの粘度を有するシリコーンベースキャリアから本質的になるシリコーン成分1.0~10重量%(i)対ii)の比率は10:90~20:80である;上記成分は500~10,000cpsの最終粘度を有する);を含む実質上オイルフリーで水性ゲル形のスキンケア組成物、を除き、さらに、高級アルコールを含むものを除く)」(下線は訂正による変更箇所を示す。)
と訂正する。(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2及び3も同様に訂正する。)
2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~3において、請求項2及び3は、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してされたものである。
3 訂正の目的の適否
訂正事項1は、請求項1に係る「ジェル状組成物」について、「高級アルコールを含むもの」を除外し、「ジェル状組成物」の範囲を更に限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
4 新規事項の追加の有無
訂正事項1は、請求項1に係る「ジェル状組成物」について、「高級アルコールを含むもの」を除外するものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
5 実質上特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
訂正事項1は、上記3で検討したとおり、特許請求の範囲を減縮したものであり、発明の対象やカテゴリーを変更するものでもないので、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。
6 訂正の請求に関する申立人の主張について
申立人は、令和6年7月5日提出の意見書において、訂正事項1が、新規事項の追加に該当し、かつ、訂正後の特許請求の範囲の記載が、「高級アルコール」の点で技術的に明確とはいえないから、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものとはいえない旨の主張をしている。
しかしながら、「ジェル状組成物」から「高級アルコールを含むもの」を除外することによって、新たな技術的事項が導入されたとすべき理由は見当たらないので、訂正事項1が新規事項の追加に該当するとはいえない。
そして、甲第1号証(特開2011-148716号公報)の段落0017の「バチルアルコール等の常温で固体の高級脂肪族アルコールが例示される。」との記載や、甲第3号証(特開2003-95985号公報)の段落0019の「低級アルコールとしては、・・・各種変性アルコール・・・炭素数が1~4のアルコールが特に好ましい」との記載や、参考例A(化学大辞典編集委員会編,化学大辞典1縮刷版,共立出版株式会社,昭和46年2月5日第11刷,p.396)の「低級の飽和一価アルコールは特有の味と香気のある液体で水によく溶ける.高級になるほど溶解度が減り,C5以上になるとほとんど水に溶けない.」との記載や、
参考例B(https://www.kaken-tech.co.jp/trouble/alcohol_ethanol-1/)の「
[図:0001416445000001.jpg]
」との記載からみて、炭素数5~6以上の各種アルコールが、除外対象の「高級アルコール」に該当すると解されるから、訂正後の特許請求の範囲が技術的に不明確であるとはいえない。
7 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付の訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正により訂正された請求項1~3に係る発明(以下、各請求項に係る発明を請求項の番号順に「本件発明1」等といい、まとめて、「本件発明」ともいう。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~3(以下、請求項の番号順に「本件請求項1」等という。)に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「 【請求項1】
次の(A)~(C)を含有するジェル状組成物であって、さらに水をジェル状組成物あたり40~98質量%含有するジェル状組成物。
(A)カルボキシビニルポリマーを、ジェル状組成物あたり0.1~0.7質量%
(B)クエン酸及び/又はその塩を、ジェル状組成物あたりクエン酸として0.005~0.03質量%
(C)グルコース、ラフィノース、トレハロース、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール及びグリセリンから選択される1以上の物質を、ジェル状組成物あたり1~10質量%
(ただし、1.(a)水溶性保温剤0.5~20重量%;(b)親水性ゲル化剤0.1~20重量%;及び(c)i)ジメチコノール、フルオロシリコーン及びジメチコン又はそれらの混合物からなる群より選択される200,000~540,000の分子量を有するシリコーンゴム;及びii)0.65~100cpsの粘度を有するシリコーンベースキャリアから本質的になるシリコーン成分1.0~10重量%(i)対ii)の比率は10:90~20:80である;上記成分は500~10,000cpsの最終粘度を有する);を含む実質上オイルフリーで水性ゲル形のスキンケア組成物、を除き、さらに、高級アルコールを含むものを除く)
【請求項2】
B型粘度計(25℃、4号ローターまたは3号ローター、12回転、30秒)で測定したときの粘度が5000~100000mPa・sであるジェル状組成物であって、該ジェル状組成物に対して、キセノンランプを用いて放射照度40W/m2(照度測定波長域300~400nm)、ブラックパネル温度40℃の条件で光照射し、光照射時間24時間後の組成物の粘度を25℃で測定したとき、粘度維持率〔{(光照射後の粘度)/(光照射前の粘度)}×100〕が55%を超える請求項1に記載のジェル状組成物。
【請求項3】
化粧料用である請求項1又は2に記載のジェル状組成物。」
第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要
1 特許異議申立理由の概要
申立人が特許異議申立書に記載した申立理由の概要及び添付した証拠方法は、以下に示すとおりである。以下、下記(3)に示す甲号証を、それぞれ番号順に「甲1」等という。)
(1) 申立理由1(特許法第29条第1項第3号:新規性)
請求項1~3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、請求項1~3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2) 申立理由2(特許法第29条第2項:進歩性)
(2-1) 申立理由2-1
請求項1~3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1及び甲2~8に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に本件特許の発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1~3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2-2) 申立理由2-2
請求項1~3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2並びに甲1及び3~8に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に本件特許の発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1~3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2-3) 申立理由2-3
請求項1~3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3並びに甲1、2及び4~8に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に本件特許の発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1~3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2-4) 申立理由2-4
請求項1~3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲8及び甲1~7に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に本件特許の発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1~3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3) 甲号証等一覧
甲第1号証:特開2011-148716号公報
甲第2号証:特開2010-116392号公報
甲第3号証:特開2003-95985号公報
甲第4号証:高分子,1997,46巻,6月号,p.398-401
甲第5号証:日本食品工業学会誌,1974,21巻,4号,p.131-135
甲第6号証:社団法人有機合成化学協会編,有機化合物辞典,株式会社講談社,1993年8月20日第3刷,p.240-243
甲第7号証:J. Soc. Cosmet. Chem. Japan, 2005, Vol.39, No.4, p.282-289
甲第8号証:色材,1993,Vol.66,No.7,p.434-444 (42[7]-52[7])
2 令和6年2月2日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要
本件訂正前の特許について、当審において令和6年2月2日付けで通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
取消理由1(新規性)
請求項1~3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された引用文献1の刊行物に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
取消理由2(進歩性)
請求項1~3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された引用文献1の刊行物に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
引用文献1:特開2011-148716号公報(甲1)
第5 当審合議体における判断
本件請求項1~3に係る特許は、以下で述べるように、当審において通知された上記第4の2の取消理由1及び2、並びに、申立人による上記第4の1の申立理由1及び2によっては、取り消すことができないと判断する。その理由は次のとおりである。
1 取消理由についての判断
取消理由1及び2について
(1) 引用文献1に記載された発明
引用文献1には、「クリーム状の乳化皮膚外用剤」に関する発明が記載され(請求項1、【0001】、【0046】参照)、その具体的な例として、処方例2が記載されていること(【0041】参照)から、以下に示す引用発明1が記載されているといえる。
<引用発明1>
グリセリン10質量%、ジプロピレングリコール5質量%、1,3-ブチレングリコール5質量%、シカクマメエキス(乾燥質量)0.001質量%、カルボキシビニルポリマー0.15質量%、ポリビニルアルコール0.4質量%、POE(20)ベヘニルエーテル0.7質量%、モノステアリン酸グリセリン0.5質量%、セチルアルコール2質量%、ステアリルアルコール2質量%、白色ワセリン2質量%、マイクロクリスタリンワックス1質量%、トリイソオクタン酸グリセリン10質量%、トコフェロール酢酸エステル0.05質量%、流動パラフィン5質量%、ジメチルポリシロキサン2質量%、水酸化カリウム0.1質量%、クエン酸水和物0.02質量%、パラオキシ安息香酸メチル0.2質量%、及び精製水(残余)を含有する、クリーム状の乳化皮膚外用剤。
(2) 対比・判断
ア 本件発明1について
(ア) 本件発明1と引用発明1との対比
引用発明1の「グリセリン」、「カルボキシビニルポリマー」、「クエン酸水和物」及び「精製水」は、それぞれ、本件発明1の「(C)グルコース、ラフィノース、トレハロース、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール及びグリセリンから選択される1以上の物質」、「(A)カルボキシビニルポリマー」、「(B)クエン酸及び/又はその塩」及び「水」に相当し、引用発明1の「皮膚外用剤」は種々の材料を含んだ混合物であるから、「組成物」といえる。
また、引用発明1において、「精製水」以外の材料の総和(質量%)は、46.1質量%であって、残余量は53.9質量%であることから、精製水を53.9質量%含有することが把握され、クエン酸の分子量(192)とクエン酸水和物(クエン酸の一水和物)の分子量(210)から、引用発明1が含有するクエン酸量を計算すると、0.018%(≒0.02×192/210)となる。
よって、引用発明1は、「グリセリン」、「カルボキシビニルポリマー」、「クエン酸水和物」及び「精製水」を、それぞれ、10質量%、0.15質量%、0.018質量%、及び53.9質量%含有するものであって、いずれも、本件発明1の組成物あたりの含有量の要件を満たすものといえる。
そして、引用発明1は、シリコーン成分を含有しないことから、本件発明1から除かれている事項である「1.(a)水溶性保温剤0.5~20重量%;(b)親水性ゲル化剤0.1~20重量%;及び(c)i)ジメチコノール、フルオロシリコーン及びジメチコン又はそれらの混合物からなる群より選択される200,000~540,000の分子量を有するシリコーンゴム;及びii)0.65~100cpsの粘度を有するシリコーンベースキャリアから本質的になるシリコーン成分1.0~10重量%(i)対ii)の比率は10:90~20:80である;上記成分は500~10,000cpsの最終粘度を有する);を含む実質上オイルフリーで水性ゲル形のスキンケア組成物」に該当しない。
一方、引用発明1の「セチルアルコール」及び「ステアリルアルコール」は、炭素数が5~6以上のアルコールであるから、いずれも本件発明1の「高級アルコール」に相当する。
そうすると、本件発明1と引用発明1とは、
「次の(A)~(C)を含有する組成物であって、さらに水を組成物あたり40~98質量%含有する組成物。
(A)カルボキシビニルポリマーを、組成物あたり0.1~0.7質量%
(B)クエン酸及び/又はその塩を、組成物あたりクエン酸として0.005~0.03質量%
(C)グルコース、ラフィノース、トレハロース、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール及びグリセリンから選択される1以上の物質を、組成物あたり1~10質量%
(ただし、1.(a)水溶性保温剤0.5~20重量%;(b)親水性ゲル化剤0.1~20重量%;及び(c)i)ジメチコノール、フルオロシリコーン及びジメチコン又はそれらの混合物からなる群より選択される200,000~540,000の分子量を有するシリコーンゴム;及びii)0.65~100cpsの粘度を有するシリコーンベースキャリアから本質的になるシリコーン成分1.0~10重量%(i)対ii)の比率は10:90~20:80である;上記成分は500~10,000cpsの最終粘度を有する);を含む実質上オイルフリーで水性ゲル形のスキンケア組成物、を除く)」
である点で一致し、以下の相違点1及び相違点2で相違する。
<相違点1>
本件発明1は、組成物が「ジェル状」であるのに対して、引用発明1は、組成物が「低温~高温の幅広い温度域において長期保存安定性に優れるクリーム状」の乳化物である点
<相違点2>
本件発明1は、「高級アルコールを含むもの」が除かれているのに対して、引用発明1は、「セチルアルコール及びステアリルアルコール」という炭素数が16及び18の「高級アルコール」を含むものである点
(イ) 相違点についての検討
まず、相違点2について検討すると、引用発明1は、「セチルアルコール及びステアリルアルコール」という「高級アルコール」を含んでおり、組成及び材料として明らかに相違するものである。
したがって、本件発明1は、相違点1について検討するまでもなく、引用文献1に記載された発明ではない。
つぎに、相違点2に係る本件発明1の構成が、引用文献1の記載に基いて、当業者が容易に想到する事項であるかどうかを検討する。
引用文献1には、その請求項1において「(b)高級脂肪族アルコール」が必須成分として記載され、その段落0018には、「(b)成分の総配合量は、ハリ感、ふっくら感向上等の点から、本発明皮膚外用剤中に1~20質量%が好ましく」と記載されている。
そうすると、引用発明1において、炭素数5~6以上の高級アルコールの一種に含まれる「高級脂肪族アルコール」という必須成分を含まない構成にすることには、動機付けがあるとはいえず、むしろ阻害事由があるといわざるを得ない。
したがって、引用発明1において、相違点2に係る本件発明1の構成を採用することは、当業者が容易に想到することではない。
よって、本件発明1は、相違点1について検討するまでもなく、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易になし得たものではない。
イ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、本件発明1を更に限定するものであるから、本件発明2及び3は、上記アと同様の理由により、引用文献1に記載された発明ではなく、また、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易になし得たものでもない。
(3) まとめ
したがって、取消理由通知に記載した取消理由1及び2によっては、本件請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての判断
(1) 申立理由1について
申立理由1については、上記第4の2の取消理由1(新規性)において採用されているから、取消理由において採用しなかった特許異議申立理由に該当しない。
(2) 申立理由2-1について
上記1(1)で述べたとおり、甲1には、引用発明1が記載され、上記1(2)で述べたとおり、相違点1及び相違点2で相違するところ、引用発明1において、相違点2に係る本件発明1の構成を採用することについて、動機付けがなく、また、阻害事由があることは、甲2~8を参照しても変わりがないから、本件発明1は、甲1及び甲2~8に記載された発明に基いて、当業者が容易になし得たものではない。
また、本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、本件発明1を更に限定するものであるから、本件発明2及び3も、同様の理由により、甲1及び甲2~8に記載された発明に基いて、当業者が容易になし得たものでもない。
(3) 申立理由2-2について
ア 甲2に記載された発明
甲2には、その請求項1に記載の発明の具体例である実施例7(【0033】~【0039】参照)として、以下に示す甲2発明が記載されているといえる。
<甲2発明>
水残余、トラネキサム酸メチルアミド塩酸塩4質量%、キサンタンガム0.02質量%、カルボキシビニルポリマー0.1質量%、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル0.2質量%、グリセリン1質量%、ジプロピレングリコール8質量%、エチルアルコール3質量%、メチルパラベン適量、エデト酸塩適量、クエン酸適量、クエン酸ナトリウム適量、苛性カリ適量、及び、香料適量で、合計100質量%とし、30℃における粘度250mPa・sの液状皮膚外用剤組成物。
イ 対比・判断
(ア) 本件発明1について
a 本件発明1と甲2発明との対比
甲2発明の「グリセリン」、「カルボキシビニルポリマー」及び「皮膚外用剤組成物」は、それぞれ、本件発明1の「(C)グルコース、ラフィノース、トレハロース、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール及びグリセリンから選択される1以上の物質」、「(A)カルボキシビニルポリマー」及び「組成物」に相当し、甲2発明の「クエン酸」及び「クエン酸ナトリウム」は、いずれも、本件発明1の「(B)クエン酸及び/又はその塩」に相当する。
また、甲2発明において、「水」と適量添加する材料以外の材料の総和(質量%)は、16.32質量%であって、残余量は83.68質量%であることから、水を83.68質量%未満で含有するといえるところ、水が40質量%未満となるほど、適量添加する材料の総和の量が多いとすることは、技術常識からして妥当とはいえない。
よって、甲2発明は、「グリセリン」、「カルボキシビニルポリマー」及び「水」を、それぞれ、1質量%、0.1質量%、及び40~83.68質量%含有するものであって、いずれも、本件発明1の含有量の要件を満たすものといえる。
そして、甲2発明の「ジプロピレングリコール」は、参考例C(https://www.cosmetic-info.jp/jcln/detail.php?id=963)の「
[図:0001416445000002.jpg]
」との記載にある化学式で表される二価アルコールに該当する。
そうすると、本件発明1と甲2発明とは、甲2発明の「ジプロピレングリコール」が炭素数5~6以上の各種アルコールである「高級アルコール」に該当するか否かはさておき、少なくとも以下の相違点3及び相違点4で相違する。
<相違点3>
本件発明1は、組成物が「ジェル状」であるのに対して、甲2発明は、組成物が「粘度250mPa・sの液状」である点
<相違点4>
本件発明1は、組成物あたりクエン酸として0.005~0.03質量%含有するのに対して、甲2発明は、組成物あたりクエン酸及びクエン酸ナトリウムの含有量がともに「適量」であって、不明である点
b 相違点についての検討
まず、相違点4について検討する。
甲2には、実施例における「クエン酸」及び「クエン酸ナトリウム」について、その添加目的は記載されておらず、実施例以外の一般的な記載においても、これらの化合物に関する直接的な記載はないところ、段落【0032】の「他の成分」として記載の「緩衝剤」、「防腐剤」(甲3の【0060】)又は「酸化防止剤」(甲6)が該当し得る成分と考えられる程度である。
ここで、甲2には、「緩衝剤」、「防腐剤」及び「酸化防止剤」の添加量に関する記載も示唆もなく、甲1及び3~8のいずれにも、「クエン酸」及び「クエン酸ナトリウム」を「緩衝剤」、「防腐剤」又は「酸化防止剤」として液状皮膚外用剤組成物に添加する際に、0.005~0.03質量%とすることが優れている旨の示唆もなく、当該範囲は当業者が当然に選択する含有量の範囲とも認められない。
さらに、本件明細書【0015】に記載されているとおり、相違点4に係る本件発明1の構成とすることは、「ジェル状組成物の粘度低下を防止」及び「べとつき」の抑制という効果を奏するものである。
そうすると、甲2発明において、相違点4に係る本件発明1の構成とすることは、動機付けがなく、また、その効果も予測できないから、当業者が容易に想到するものとはいえない。
したがって、本件発明1は、相違点3について検討するまでもなく、甲2並びに甲1及び3~8に記載された発明に基いて、当業者が容易になし得たものではない。
c 申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書の29ページにおいて、
「カルボキシビニルポリマーの光照射による粘度低下を抑制するために、抗酸化力や金属イオン封鎖作用のあるクエン酸又はその塩に着目し、さらに、カルボキシビニルポリマーのpHと粘度の関係も踏まえて、pH調整できる酸性物質のクエン酸の含有量を微量にしつつ上限値を設定することや甲第1発明のクエン酸0.02質量%を基点に調整し好適な含有量0.005~0.03質量%に設定することは、当業者の通常の創作行為に過ぎない。」
と主張している。
しかしながら、上記bで述べたとおり、甲2には、甲2発明の「クエン酸」及び「クエン酸ナトリウム」について、「金属イオン封鎖作用」や「pH調整」を目的として添加されることが記載されておらず、さらに、本件発明1におけるクエン酸の含有量とすることは、当業者の通常の創作行為であるとする理由はなく、また、その効果も予測できるものとはいえないから、申立人の主張は採用できない。
(イ) 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、本件発明1を更に限定するものであるから、本件発明2及び3は、上記(ア)と同様の理由により、甲2並びに甲1及び3~8に記載された発明に基いて、当業者が容易になし得たものでもない。
(4) 申立理由2-3について
ア 甲3に記載された発明
甲3には、その請求項1に記載の発明の具体例である実施例18(【0085】参照)として、以下に示す甲3発明が記載されているといえる。なお、単位が「g/100g」であることから、「質量%」として表す。
<甲3発明>
エラグ酸0.5質量%、ニコチン酸ベンジル0.2質量%、クレチアニン0.1質量%、スクワラン3.0質量%、グリセリン5.0質量%、ジプロピレングリコール3.0質量%、PEG1500 0.5質量%、プロピルパラベン3.0質量%、メチルパラベン0.2質量%、キサンタンガム0.1質量%、カルボキシビニルポリマー0.2質量%、ヒドロキシプロピルセルロース(Hercules社製HPC-HXF)0.1質量%、酢酸トコフェロール0.2質量%、グリコール酸アンモニウム0.2質量%、ピロクトオラミン0.25質量%、クエン酸微量、クエン酸ナトリウム微量、エタノール5.0質量%、ローズ油微量、及び精製水を残部量、で含有する美白ジェルである血行促進組成物。
イ 対比・判断
(ア) 本件発明1について
a 本件発明1と甲3発明との対比
甲3発明の「グリセリン」、「カルボキシビニルポリマー」、「精製水」及び「美白ジェルである血行促進組成物」は、それぞれ、本件発明1の「(C)グルコース、ラフィノース、トレハロース、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール及びグリセリンから選択される1以上の物質」、「(A)カルボキシビニルポリマー」、「水」及び「ジェル状組成物」に相当し、甲3発明の「クエン酸」及び「クエン酸ナトリウム」は、いずれも、本件発明1の「(B)クエン酸及び/又はその塩」に相当する。
また、甲3発明において、「水」と微量添加する材料以外の材料の総和(質量%)は、21.55質量%であって、残余量は78.45質量%であることから、水を78.45質量%未満で含有するといえるところ、水が40質量%未満となるほど、微量添加する材料の総和の量が多いとすることは、微量という記載上妥当ではない。
よって、甲3発明は、「グリセリン」、「カルボキシビニルポリマー」及び「水」を、それぞれ、5質量%、0.2質量%、及び40~78.45質量%含有するものであって、いずれも、本件発明1の含有量の要件を満たすものといえる。
そうすると、本件発明1と甲3発明とは、甲3発明の「ジプロピレングリコール」や「ヒドロキシプロピルセルロース」が炭素数5~6以上の各種アルコールである「高級アルコール」に該当するか否かはさておき、少なくとも以下の相違点5で相違する。
<相違点5>
本件発明1は、組成物あたりクエン酸として0.005~0.03質量%含有するのに対して、甲3発明は、組成物あたりクエン酸及びクエン酸ナトリウムの含有量がともに「微量」であって、不明である点
b 相違点についての検討
甲3には、実施例における「クエン酸」及び「クエン酸ナトリウム」について、その添加目的は記載されていないが、一般的な説明として、「pH調整剤」(【0056】)及び「防腐剤」(【0060】)の一例として示されているが、「pH調整剤」の含有量に関する記載はなく、「防腐剤」の含有量としては、「前記防腐剤の、前記血行促進組成物における含有量としては、0.01~50質量%が好ましく、0.02~30質量%がより好ましく、0.05~10質量%が更に好ましい。」(【0061】)と記載されているものの、特に、「クエン酸及びクエン酸ナトリウム」を防腐剤とした場合の含有量として示唆するものとは必ずしもいえない。そして、甲3発明は、「防腐剤」(【0060】)である「メチルパラベン0.2質量%」を含有するものでもある。
そうすると、甲3発明における「クエン酸」及び「クエン酸ナトリウム」が、「pH調整剤」又は「防腐剤」のいずれかであったとしても、当業者が、甲3発明において、組成物あたりクエン酸として、特に0.005~0.03質量%含有させる動機付けの記載はないといえる。また、甲1、2及び4~8のいずれにも、「クエン酸」及び「クエン酸ナトリウム」を「pH調整剤」又は「防腐剤」として、血行促進組成物に添加する際に、0.005~0.03質量%とすることが優れている旨の示唆もなく、当該範囲は当業者が当然に選択する含有量の範囲とも認められない。
さらに、本件明細書【0015】に記載されているとおり、相違点5に係る本件発明1の構成とすることは、「ジェル状組成物の粘度低下を防止」及び「べとつき」の抑制という効果を奏するものである。
そうすると、甲3発明において、相違点5に係る本件発明1の構成とすることは、動機付けがなく、また、その効果も予測できないから、当業者が容易に想到するものとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲3並びに甲1、2及び4~8に記載された発明に基いて、当業者が容易になし得たものではない。
c 申立人の主張について
申立人は、甲3についても、甲2と同様の主張(上記(3)イ(ア)c)をしているが、甲3発明の「クエン酸」及び「クエン酸ナトリウム」が「pH調整」を目的として添加されていたとしても、上記bで示したとおりであるから、申立人の主張は採用できない。
(イ) 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、本件発明1を更に限定するものであるから、本件発明2及び3は、上記(ア)と同様の理由により、甲3並びに甲1、2及び4~8に記載された発明に基いて、当業者が容易になし得たものでもない。
(5) 申立理由2-4について
ア 甲8に記載された発明
甲8には、増粘剤に関し、図-8として、カルボキシビニルポリマー水溶液の増粘性の特性が記載されており、以下に示す甲8発明が記載されているといえる。
<甲8発明>
以下の図で示す濃度-粘度の関係を示す、増粘剤のカルボキシビニルポリマーであるハイビスワコー103、104又は105を含有する水溶液組成物。
[図:0001416445000003.jpg]
イ 対比・判断
(ア) 本件発明1について
a 本件発明1と甲8発明との対比
甲8発明の「増粘剤のカルボキシビニルポリマーであるハイビスワコー103、104又は105」は、いずれも本件発明1の「(A)カルボキシビニルポリマー」に相当する。そして、甲8発明の「増粘剤のカルボキシビニルポリマーであるハイビスワコー103、104又は105」の濃度には、本件発明1の「0.1~0.7質量%」の範囲に含まれる場合もある。
また、甲8発明において、図で表示される「カルボキシビニルポリマー」の濃度は1%未満であるから、甲8発明の「水溶液組成物」の「水」の含有量は、本件発明1の「40~98質量%」の範囲に含まれるものではない。
そして、甲8発明は、シリコーン成分及び高級アルコールを含有しないことから、本件発明1から除かれている事項である「1.(a)水溶性保温剤0.5~20重量%;(b)親水性ゲル化剤0.1~20重量%;及び(c)i)ジメチコノール、フルオロシリコーン及びジメチコン又はそれらの混合物からなる群より選択される200,000~540,000の分子量を有するシリコーンゴム;及びii)0.65~100cpsの粘度を有するシリコーンベースキャリアから本質的になるシリコーン成分1.0~10重量%(i)対ii)の比率は10:90~20:80である;上記成分は500~10,000cpsの最終粘度を有する);を含む実質上オイルフリーで水性ゲル形のスキンケア組成物」及び「高級アルコールを含むもの」に該当しない。
そうすると、本件発明1と甲8発明とは、少なくとも以下の相違点6~相違点8で相違する。
<相違点6>
本件発明1は、組成物が「ジェル状」であるのに対して、甲8発明は、組成物が「水溶液」である点
<相違点7>
本件発明1は、水を組成物あたり40~98質量%含有するのに対して、甲8発明は、水を組成物あたり組成物が少なくとも99質量%以上含有する点
<相違点8>
本件発明1は、(B)クエン酸及び/又はその塩を、組成物あたりクエン酸として0.005~0.03質量%、並びに、(C)グルコース、ラフィノース、トレハロース、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール及びグリセリンから選択される1以上の物質を、組成物あたり1~10質量%含有するのに対して、甲8発明は、クエン酸及び/又はその塩、並びに、C)グルコース、ラフィノース、トレハロース、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール及びグリセリンから選択される1以上の物質を含有していない点
b 相違点についての検討
まず、相違点8について検討する。
甲8には、「(B)クエン酸及び/又はその塩」及び「(C)グルコース、ラフィノース、トレハロース、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール及びグリセリンから選択される1以上の物質」を、甲8発明の水溶液組成物に対して、添加することの記載も示唆もなく、甲1~7には、「(B)クエン酸及び/又はその塩を、組成物あたりクエン酸として0.005~0.03質量%、並びに、(C)グルコース、ラフィノース、トレハロース、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール及びグリセリンから選択される1以上の物質を、組成物あたり1~10質量%」含有させることで、甲8に記載の用途(434ページ左欄12~14行)に特に優れる旨の記載はない。
さらに、本件明細書【0015】、【0017】並びに実施例及び比較例の対比から理解されるとおり、相違点8に係る本件発明1の構成とすることは、優れた効果を奏するものである。
そうすると、甲8発明において、相違点8に係る本件発明1の構成とすることは、動機付けがなく、また、その効果も予測できないから、当業者が容易に想到するものとはいえない。
したがって、本件発明1は、相違点6及び相違点7について検討するまでもなく、甲8及び甲1~7に記載された発明に基いて、当業者が容易になし得たものではない。
(イ) 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、本件発明1を更に限定するものであるから、本件発明2及び3は、上記(ア)と同様の理由により、甲8及び甲1~7に記載された発明に基いて、当業者が容易になし得たものでもない。
(6) 小括
したがって、申立理由2によっては、本件請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに本件請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700524