特許異議申立
2023-700512
情報処理方法
- 審判番号
- 2023-700512
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-091789
- 登録番号
- 7174189
- 請求日
- 2023年05月17日
- 審決日
- 2023年08月28日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】JFE条鋼株式会社
- 【権利者代理人】杉村 憲司
- 【権利者代理人】杉村 光嗣
- 【権利者代理人】川原 敬祐
- 【権利者代理人】石井 裕充
- 【異議申立人】中川 賢治
- 審判長/審判官
- 審判長 伏本 正典
- 審判官 梶尾 誠哉
- 審判官 松尾 俊介
- 分類
- P1651.121-Y (G06Q) / P1651.536-Y (G06Q) / P1651.537-Y (G06Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7174189号発明「情報処理方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7174189号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7174189号の請求項1~4に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、令和4年2月25日に出願した特願2022-28525号の一部を同年6月6日に新たな特許出願としたものであって、同年11月8日にその特許権の設定登録がされ、同年11月17日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対し、令和5年5月17日に特許異議申立人 中川賢治(以下「異議申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明4」といい、合わせて「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
情報処理装置による情報処理方法であって、
前記情報処理装置は、制御部と通信部と記憶部とを含み、前記通信部を介してネットワークと通信可能に接続され、
前記制御部によって、
購入された電力の発電プロセスが再生可能エネルギーと再生可能エネルギー以外のエネルギーとを複合的に利用したプロセスである場合、前記電力のうち再生可能エネルギー由来の電力を特定することと、
特定された前記電力が再生可能エネルギー由来の電力であることを証明する証明情報を、製品についての製品伝票情報に関連付けて前記記憶部に記憶することと、
を含み、
前記特定することは、
前記製品の製造における電力使用量実績と、再生可能エネルギー比率とから、前記製品を製造するために使用された再生可能エネルギー由来の電力の量を算出することによって実行される、情報処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理方法において、前記再生可能エネルギー比率は、電力会社によって公開される値である、情報処理方法。
【請求項3】
請求項1に記載の情報処理方法において、
前記特定することは、
前記製品の製造における前記電力使用量実績から、前記製品の1単位重量当たりの電力使用量を算出することと、
前記製品の1単位重量当たりの電力使用量に、前記再生可能エネルギー比率を掛けることで、再生可能エネルギー由来の電力量を算出することと、
前記電力量に、前記製品伝票情報に含まれる製品重量の情報を掛けることで、前記製品を製造するために使用された再生可能エネルギー由来の電力の量を算出することと、
によって実行される、情報処理方法。
【請求項4】
請求項1に記載の情報処理方法において、前記製品は電気炉で製造される、情報処理方法。」
第3 申立理由の概要
1 異議申立人の提出した証拠
異議申立人は、次の甲第1号証~甲第3号証(以下、それぞれ、「甲1」~「甲3」という。)を証拠として提出している。
甲第1号証(甲1):特開2006-311675号公報
甲第2号証(甲2):“鉄鋼スラグ製品の管理に関するガイドライン”、鐵鋼スラグ協会、2019年3月1日改正、p.1~20、<URL:https://www.slg.jp/pdf/guideline20190301.pdf >
甲第3号証(甲3):“2020年度電源構成と非化石証書の使用状況について”、[online]、東京電力エナジーパートナー株式会社、2021年9月15日掲載、[令和5年5月12日検索]、<URL:https://www.tepco.co.jp/ep/notice/news/2021/1641475_8909.html >、<URL:https://www.tepco.co.jp/ep/power_supply/2020.html >
2 特許異議の申立理由
異議申立人の主張する特許異議の申立理由の概要は以下のとおりである。
(1) 理由1(進歩性)
本件発明は、甲1に記載された発明、甲2及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
(2) 理由2(サポート要件)
本件発明は、製品が電気炉を使用して製造されるスラグであるとの限定がされておらず、本件明細書に記載したものではないから、本件特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(3) 理由3(明確性、サポート要件)
本件発明は、証明情報について、明確であるとはいえず、本件明細書に記載したものでもないから、本件特許は、特許法36条6項1号及び同条同項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(4) 理由4(明確性、サポート要件)
本件発明は、再生可能エネルギー比率の定義について、明確であるとはいえず、本件明細書に記載したものでもないから、本件特許は、特許法36条6項1号及び同条同項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
第4 異議申立人の提出した証拠の記載
1 甲1について
(1) 甲1の記載
甲1には、以下の記載がある(下線加筆、以下同じ。)。
「【0008】
この発明の一の局面による電力源特定システムでは、上記のように、製品を製造する際に用いた電力源別の電力量を保存する記憶手段と、電力源別の電力量を記憶手段から読み出すとともに通知する通知手段とを設けることによって、製造業者およびその製品を購入する消費者に、製品を製造する際に実際に消費した電力源別の電力量を通知することができるので、製造業者およびその製品を購入する消費者は、製品を製造する際に実際に消費した電力源別の電力量を特定することができる。これにより、製造業者は、たとえば、自然エネルギーによる電力を多く用いた製品を製造することができるので、環境に貢献することができる。また、製品を購入する消費者は、たとえば、自然エネルギーによる電力を多く用いて製造した製品を購入することにより、環境に貢献することができる。」
「【0019】
本実施形態による電力源特定システム1は、図1に示すように、電力を計測するための電力計測装置2、3および4と、発電電力データベース5と、購入電力データベース6と、製造使用電力データベース7と、製品別希望電力源データベース8と、電気料金データベース9と、使用部品データベース10と、部品電力量データベース11と、電力源別使用電力量データベース12と、データ入力部13と、演算制御部14と、組立部15a、検査部15bおよびラベル貼付部15cを含む製造ライン15とを備えている。なお、電力源別使用電力量データベース12は、本発明の「記憶手段」の一例であり、ラベル貼付部15cは、本発明の「通知手段」の一例である。
【0020】
また、電力計測装置2および3は、電力会社20の太陽光発電システム21(電力源)および風力発電システム22(電力源)により供給される電力をそれぞれ約1分毎に計測するとともに、計測した電力データを以下の表1に示すようなデータ構成を有する発電電力データベース5に格納する機能を有する。
【0021】
【表1】
・・・
【0022】
また、電力計測装置4は、電力会社30の原子力発電システム31(電力源)および火力発電システム32(電力源)により供給される電力を約1分毎に計測するとともに、計測した電力データを以下の表2に示すようなデータ構成を有する購入電力データベース6に格納する機能を有する。
【0023】
【表2】
・・・
【0024】
また、製造使用電力データベース7には、以下の表3に示すように、部品から製品を製造する際に用いた約1分毎の電力データが製品別に格納されるように構成されている。
【0025】
【表3】
・・・
【0031】
また、使用部品データベース10には、以下の表6に示すように、製品を構成する部品名および数量などの部品データが、データ入力部13を用いて入力されることにより製品別に予め格納されている。
【0032】
【表6】
・・・
【0033】
また、部品電力量データベース11には、以下の表7に示すように、部品の製造時に消費した電力量データが、データ入力部13を用いて入力されることにより電力源別に予め格納されている。
【0034】
【表7】
・・・」
「【0035】
また、電力源別使用電力量データベース12には、以下の表8に示すように、製造使用電力データベース7、使用部品データベース10および部品電力量データベース11に基づいて、部品および製品の製造時に消費した電力量データが、演算制御部14により製品別および電力源別に格納されるように構成されている。
【0036】
【表8】
[図:0001401709000001.jpg]
」
「【0046】
次に、図1、表3、表6~表8を参照して、演算制御部14が、部品および製品の製造時に消費した電力量データを電力源別使用電力量データベース12に格納する方法について説明する。
【0047】
表3に示すように、製品Aが、たとえば、時刻12:00から製造されて時刻12:04に完成したとすると、図1に示した演算制御部14により、部品から製品Aを製造する際に用いた電力量と、部品を製造する際に用いた電力量とが算出される。そして、それらの値が電力源別に合計されて電力源別使用電力量データベース12に格納される。
【0048】
具体的には、製造使用電力データベース7(表3参照)に基づいて、演算制御部14により、1個の部品から製品Aを製造する際に用いた電力量(0.05kWh(=(1.1+1+0.9)kW×(1/60)h))が算出される。また、製品Aが1個の部品αおよび2個の部品βにより構成されているとすると、使用部品データベース10(表6参照)および部品電力量データベース11(表7参照)に基づいて、演算制御部14により、1個の部品αを製造する際に用いた太陽光発電システム21からの電力量(0.021kWh)と、2個の部品βを製造する際に用いた風力発電システム22からの電力量(0.02kWh(=0.01kWh×2))とが導かれる。そして、太陽光発電システム21により発電された電力量(0.071kWh(=0.05kWh+0.021kWh)と、風力発電システム22により発電された電力量(0.02kWh)とが、電力源別使用電力量データベース12(表8参照)に格納される。なお、製品Aを構成する部品α、βおよび製品Aを製造する際には、電力会社30からの電力を用いないので、電力源別使用電力量データベース12の電力会社30の欄には、0kWhが格納される。
【0049】
本実施形態では、上記のように、製品を製造する際に用いた電力源別の電力量を保存する電力源別使用電力量データベース12と、電力源別の電力量を電力源別使用電力量データベース12から読み出すとともに、読み出した電力量を表示するためのラベルを製品に貼付するラベル貼付部15cとを設けることによって、製造業者およびその製品を購入する消費者に、製品を製造する際に実際に消費した電力源別の電力量を通知することができるので、製造業者およびその製品を購入する消費者は、製品を製造する際に実際に消費した電力源別の電力量を特定することができる。これにより、製造業者は、太陽光発電システム21による電力のみを用いた製品Aを製造することができるので、環境に貢献することができる。また、製品を購入する消費者は、太陽光発電システム21による電力のみを用いて製造した製品Aを購入することにより、環境に貢献することができる。」
(2) 甲1発明
上記(1)の【表8】によれば、電力源別使用電力量データベース12には、製品Bを製造する際に用いた電力量として、太陽光発電システム21により発電された電力量と、風力発電システム22により発電された電力量と、電力会社30により供給される電力量が格納されていることが理解できる。
そうすると、上記(1)によれば、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
[甲1発明]
電力会社20の太陽光発電システム21(電力源)及び風力発電システム22(電力源)により供給される電力をそれぞれ約1分毎に計測するとともに、計測した電力データを格納する発電電力データベース5と、電力会社30の原子力発電システム31(電力源)及び火力発電システム32(電力源)により供給される電力を約1分毎に計測するとともに、計測した電力データを格納する購入電力データベース6と、部品から製品を製造する際に用いた約1分毎の電力データが製品別に格納される製造使用電力データベース7と、製品を構成する部品名および数量などの部品データが製品別に予め格納されている使用部品データベース10と、部品の製造時に消費した電力量データが電力源別に予め格納されている部品電力量データベース11と、上記製造使用電力データベース7、上記使用部品データベース10及び上記部品電力量データベース11に基づいて、部品及び製品の製造時に消費した電力量データが、製品別及び電力源別に格納される電力源別使用電力量データベース12と、演算制御部14と、ラベル貼付部15cなどを含む製造ライン15とを備え、
製品を製造する際に用いた電力源別の電力量を保存する上記電力源別使用電力量データベース12と、電力源別の電力量を上記電力源別使用電力量データベース12から読み出すとともに、読み出した電力量を表示するためのラベルを製品に貼付する上記ラベル貼付部15cとを設けることによって、製造業者及びその製品を購入する消費者に、製品を製造する際に実際に消費した電力源別の電力量を通知することができる電力源特定システム1において、
演算制御部14が、部品及び製品の製造時に消費した電力量データを電力源別使用電力量データベース12に格納する方法であって、
上記製造使用電力データベース7に基づいて、(a)1個の部品から製品Aを製造する際に用いた電力量が算出され、製品Aが1個の部品α及び2個の部品βにより構成されているとすると、上記使用部品データベース10及び上記部品電力量データベース11に基づいて、1個の部品αを製造する際に用いた太陽光発電システム21からの電力量と、2個の部品βを製造する際に用いた風力発電システム22からの電力量とが導かれ、上記太陽光発電システム21により発電された電力量と、上記風力発電システム22により発電された電力量とが、上記電力源別使用電力量データベース12に格納され、また、(b)製品Bを製造する際に用いた電力量として、太陽光発電システム21により発電された電力量と、風力発電システム22により発電された電力量と、電力会社30により供給される電力量が、上記電力源別使用電力量データベース12に格納されるものである、方法。
2 甲2について
甲2には、以下の記載がある。
「鉄鋼スラグ製品の管理に関するガイドライン
1.目的
鐵鋼スラグ協会各会員(以下「各会員」という。)が鉄鋼スラグ製品を販売するにあたり、取引を円滑に行うとともに、需要家(ここで需要家とは、各会員が行う鉄鋼スラグ製品の販売先のみではなく、鉄鋼スラグ製品の使用方法や施工方法を実質的に決定する者(例えば施主、施工業者、設計コンサルタントなど)を含むものとする。また、ここで各会員の販売先とは、売買契約によって鉄鋼スラグ製品を購入する者をいう。)での利用に際しその特性を活かし適切な使用がなされるために、製造・販売者として遵守すべき事項を本ガイドラインで定める。
2.適用範囲
2-1.鉄鋼スラグ製品
本ガイドラインは、各会員が販売する全ての鉄鋼スラグ製品に適用する。
(1)各会員が自ら鉄鋼スラグのみで製品を製造する場合
各会員が自ら鉄鋼スラグのみで鉄鋼スラグ製品を製造する場合には、その製品を本ガイドラインにおける鉄鋼スラグ製品とする。」(1頁上段)
「5-3.鉄鋼スラグ製品の運送
鉄鋼スラグ製品の運送に際しては、各会員は、代金受領、運搬伝票等で鉄鋼スラグ製品が確実に需要家に届けられたこと確認しなければならない。また、需要家が製造元及び販売元を確認できるように、納入伝票等には、製造元及び販売元の各会員名称を記載しなければならない。」(5頁上段)
3 甲3について
甲3には、以下の記載がある。
「2020年度電源構成と非化石証書の使用状況について
・・・
当社がお客さまにお届けした電気の電源構成と非化石証書の使用状況について公表いたします。
公表内容についてはこちらをご覧ください。」(1/1頁上段)
(1/2頁)
[図:0001401709000002.jpg]
第5 当審の判断
1 理由1(進歩性)について
(1) 本件発明1について
ア 対比
(ア) 甲1発明の「演算制御部14」及び「電力源別使用電力量データベース12」は、本件発明1の「制御部」及び「記憶部」に相当する。
また、甲1発明の「電力源特定システム1」の「演算制御部14」は、「上記製造使用電力データベース7に基づいて、(a)1個の部品から製品Aを製造する際に用いた電力量が算出され、製品Aが1個の部品α及び2個の部品βにより構成されているとすると、上記使用部品データベース10及び上記部品電力量データベース11に基づいて、1個の部品αを製造する際に用いた太陽光発電システム21からの電力量と、2個の部品βを製造する際に用いた風力発電システム22からの電力量とが導かれ、上記太陽光発電システム21により発電された電力量と、上記風力発電システム22により発電された電力量とが、上記電力源別使用電力量データベース12に格納され、また、(b)製品Bを製造する際に用いた電力量として、太陽光発電システム21により発電された電力量と、風力発電システム22により発電された電力量と、電力会社30により供給される電力量が、上記電力源別使用電力量データベース12に格納される」ように構成されているところ、各データベースに格納されているデータ(情報)を処理することによって、電力量が電力源別使用電力量データベース12に格納されているから、甲1発明の「電力源特定システム1」は、本件発明1と同様の「情報処理装置」であるということができる。
(イ) 甲1発明における「電力会社20の太陽光発電システム21(電力源)及び風力発電システム22(電力源)により供給される電力」及び「電力会社30の原子力発電システム31(電力源)及び火力発電システム32(電力源)により供給される電力」は、それぞれ、「再生可能エネルギー」及び「再生可能エネルギー以外のエネルギー」であるといえ、電力会社20や電力会社30から製造業者に「供給される電力」は、製造業者からみると「購入された電力」であるといえる。
そして、甲1発明では、「太陽光発電システム21により発電された電力量と、風力発電システム22により発電された電力量と、電力会社30により供給される電力量が、上記電力源別使用電力量データベース12に格納されるもの」であるから、区別して格納するためには、上記各電力量に係る電力が、「再生可能エネルギー」由来の発電プロセスによる電力であるのか、あるいは、「再生可能エネルギー以外のエネルギー」由来の発電プロセスによる電力であるのかを特定しているといえる。
そうすると、甲1発明の「演算制御部14」は、「購入された電力の発電プロセスが再生可能エネルギーと再生可能エネルギー以外のエネルギーとを利用したプロセスである場合、前記電力のうち再生可能エネルギー由来の電力を特定すること」の処理を行っているということができる。
したがって、甲1発明の「演算制御部14」は、本件発明1の「制御部」が「購入された電力の発電プロセスが再生可能エネルギーと再生可能エネルギー以外のエネルギーとを複合的に利用したプロセスである場合、前記電力のうち再生可能エネルギー由来の電力を特定すること」と、「購入された電力の発電プロセスが再生可能エネルギーと再生可能エネルギー以外のエネルギーを利用したプロセスである場合、前記電力のうち再生可能エネルギー由来の電力を特定すること」の点で共通する。
(ウ)a 甲1発明の「電力源特定システム1」は、「電力源別の電力量を上記電力源別使用電力量データベース12から読み出すとともに、読み出した電力量を表示するためのラベルを製品に貼付する上記ラベル貼付部15cとを設ける」ものであるところ、「ラベル」に表示された電力量は、製品ごとに表示される情報であるから、製品情報の一種であるということができる。そして、電力量をラベルに表示するためには、「電力源別使用電力量データベース12」において、「演算制御部14」により「ラベル」に表示された電力量(製品情報)に関連付けて、電力源別の電力量が記憶されているものといえる。
そうすると、甲1発明の「演算制御部14」により「電力源別使用電力量データベース12」において、「ラベル」に表示された電力量(製品情報)に関連付けて、電力源別の電力量を記憶することと、本件発明1の「制御部」により「特定された前記電力が再生可能エネルギー由来の電力であることを証明する証明情報を、製品についての製品伝票情報に関連付けて前記記憶部に記憶すること」は、「特定された前記電力を、製品についての製品情報に関連付けて前記記憶部に記憶すること」の点で共通する。
b なお、この点に関し、異議申立人は、本件発明1の「証明情報」は、「使用された再生可能エネルギー由来の電力量」そのものが含まれることが、本件明細書の【0025】、【0026】及び【0054】(なお、特許異議申立書では【0055】と記載されているが、【0054】の誤記と認められる。)の記載から理解できるから、甲1に記載された発明の「電力源別使用電力量データベース12」に記憶される自然エネルギーの使用電力量の情報は、本件発明の「証明情報」に相当する旨主張する(特許異議申立書12頁)。
そこで検討するに、本件明細書の【0025】、【0026】及び【0054】には、以下の記載がある(下線は、当該段落において、異議申立人が主張する箇所である。)。
「【0025】
上記で例示された手段(1)乃至(5)のそれぞれにつき、電気炉EFで使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明する証書等の情報は、唯一無二の証明情報として証明書発行事業者又は認証機関等から取得される。上記の手段(1)乃至(5)は一例であり、電気炉EFで使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明する他の任意の手段によって代替可能である。」
「【0026】
本発明において、電気炉EFで使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることの証明方法には、上記(1)乃至(5)のいずれかによって証明情報を入手して証明する方法、もしくは証明情報を入手できない場合は、電力会社等によって公開される任意の証明情報(例えば二酸化炭素排出係数(残渣))を利用して再生可能エネルギー由来の電力についてのみ特定する方法(詳細は後述する)がある。」
「【0054】
発電プロセスが、再生可能エネルギーと再生可能エネルギー以外のエネルギーとを複合的に利用したプロセスである場合、購入及び使用された電力のうち再生可能エネルギー由来の電力についてのみ特定する方法は、以下の方法により得ることができる。電気炉EFで使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを実現するには、まず、対象となる電気炉EFの1ヒート分に相当する工場電力使用量が操業実績から、算出される。算出は、制御部11(例えばプロセスコンピュータ)によって行われてよいし、手動で行われてよい(以下同じ)。1ヒートとは、電気炉EFにおいて1回に溶解される溶鋼である。次いで、1ヒートに使用される電力量に、電力会社等によって公開される再生可能エネルギー比率を掛けることで、再生可能エネルギー由来の電力量が算出される。そして、対象となるスラグ伝票に記載されるスラグが製造された電気炉EFでの工場電力使用量実績から、スラグ1トン当たりの電力使用量が算出される。次いで、スラグ1トン当たりの電力使用量に、対象となるスラグ伝票に記載されたスラグ重量を掛けることで、対象となるスラグを製造するために使用された実績電力使用量が算出される。この実績電力使用量の電力を再生可能エネルギー電力とみなすことで、電気炉EFで使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを実現及び証明することができる。制御部11は、再生可能エネルギー由来の電力から製造されたスラグのスラグ伝票情報へ、使用された再生可能エネルギー由来の電力量を関連付けて一体化する。」
しかしながら、これらの記載を参酌しても、「証明情報」について、「使用された再生可能エネルギー由来の電力量」そのものが含まれることは直接的には記載されていないし、これらの記載から、そのことが示唆されているともいえない。
むしろ、「電気炉EFで使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明する証書等の情報は、唯一無二の証明情報として証明書発行事業者又は認証機関等から取得される」(【0025】)、「電気炉EFで使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることの証明方法には、・・・電力会社等によって公開される任意の証明情報(例えば二酸化炭素排出係数(残渣))を利用して再生可能エネルギー由来の電力についてのみ特定する方法」(【0026】)等の記載によれば、「証明情報」は、非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明する情報であるから、単なる「電力量」そのものの情報(kWh)であるとはいえず、かえって排除されているというべきである。
したがって、異議申立人の主張は採用できない。
以上によれば、本件発明と甲1発明は、以下の一致点、相違点を有する。
[一致点]
情報処理装置による情報処理方法であって、
前記情報処理装置は、制御部と記憶部とを含み、
前記制御部によって、
購入された電力の発電プロセスが再生可能エネルギーと再生可能エネルギー以外のエネルギーとを利用したプロセスである場合、前記電力のうち再生可能エネルギー由来の電力を特定することと、
特定された前記電力を、製品についての製品情報に関連付けて前記記憶部に記憶することと、
を含む、
情報処理方法。
[相違点]
[相違点1]
「情報処理装置」について、本件発明1は、「通信部」を含み、「前記通信部を介してネットワークと通信可能に接続され」ているのに対し、甲1発明は、「通信部」を含んでいるのか不明であり、「前記通信部を介してネットワークと通信可能に接続され」ているのかも不明である点。
[相違点2]
「特定すること」について、本件発明1は、「購入された電力の発電プロセスが再生可能エネルギーと再生可能エネルギー以外のエネルギーとを複合的に利用したプロセスである場合、前記電力のうち再生可能エネルギー由来の電力を特定」するものであり、「前記製品の製造における電力使用量実績と、再生可能エネルギー比率とから、前記製品を製造するために使用された再生可能エネルギー由来の電力の量を算出することによって実行される」のに対し、甲1発明は、「前記電力のうち再生可能エネルギー由来の電力を特定」するものの、「購入された電力の発電プロセスが再生可能エネルギーと再生可能エネルギー以外のエネルギーとを複合的に利用したプロセスである場合」に特定するものではなく、「前記製品の製造における電力使用量実績と、再生可能エネルギー比率とから、前記製品を製造するために使用された再生可能エネルギー由来の電力の量を算出することによって実行される」ものでもない点。
[相違点3]
「記憶部に記憶すること」について、本件発明1は、「特定された前記電力が再生可能エネルギー由来の電力であることを証明する証明情報を、製品についての製品伝票情報に関連付けて」記憶するのに対し、甲1発明は、「特定された前記電力を、製品についての製品情報に関連付けて」記憶するものの、「特定された前記電力が再生可能エネルギー由来の電力であることを証明する証明情報を、製品についての製品伝票情報に関連付けて」記憶するものではない点。
イ 判断
事案に鑑みて、まず相違点3について検討する。
上記ア(ウ)bのとおり、本件発明1の「証明情報」は、非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明する情報であって、単なる「電力量」そのものの情報(kWh)であるとはいえないから、相違点3に係る構成のうち、「特定された前記電力が再生可能エネルギー由来の電力であることを証明する証明情報」を記憶する構成は、実質的な相違点である。
そして、異議申立人が主張する甲2及び甲3には、「特定された前記電力が再生可能エネルギー由来の電力であることを証明する証明情報」を記憶する構成は記載されておらず、ほかに「製品についての製品伝票情報に関連付けて」記憶する構成を含め、相違点3に係る構成が周知技術であるということもできない。
そうすると、甲1発明において、相違点3に係る構成を採用することは、当業者であっても容易に想到し得るものではない。
したがって、本件発明1は、相違点1及び相違点2について検討するまでもなく、甲1発明、甲2及び甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2) 本件発明2~4について
本件発明2~4は、本件発明1を限定した発明であるから、甲1発明と対比すると、少なくとも、上記(1)アの[相違点]を有するところ、本件発明1が上記(1)イのとおり、甲1発明、甲2及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件発明2~4も甲1発明、甲2及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3) 理由1(進歩性)のまとめ
以上によれば、本件特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものではない。
したがって、異議申立人の主張する理由1は理由がない。
2 理由2(サポート要件)について
異議申立人は、本件明細書には、電気炉を使用して製造されるスラグ鋼材製品における課題解決手段しか開示されていないから、製品が電気炉を使用して製造されるスラグであるとの限定がされていない本件発明は、出願時の技術常識に照らしても、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できる範囲を超えている旨主張するので(特許異議申立書16頁)、以下、検討する。
(1) 本件明細書の発明の詳細な説明の記載
本件明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある(下線加筆、以下同じ。)。
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気炉を使用してスラグを製造する場合、使用されるエネルギーの大部分が電力である。電力を火力発電等により発電する場合、発電時に二酸化酸素が排出される。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、スラグのカーボンニュートラルの実現性を高めるための製造方法、スラグ及び情報処理方法を提供することにある。」
「【0011】
本実施形態では、電気炉によりスラグが製造される。具体的には図1に示されるように、電気炉EFは、電極ELに高電圧をかけて電気アークEAを発生させる。電気炉EFは、電気アークEAによる熱エネルギーで電気炉EF内のスラグ原料を高温で溶解及び無害化処理する。アーク温度は約4,000℃である。スラグ原料は約1,300℃乃至1,600℃で溶融される。スラグ原料は次のうち少なくとも1つを含む。
・鉄原料F1
・造滓材原料F2
・造滓材廃棄物F3
・・・
【0015】
生成されたスラグSGは溶鋼MSよりも上に浮かび、保温効果を有する。本実施形態におけるスラグSGは、例えば次のうち少なくとも1つに利用されるが、代替例として他の用途に利用されてもよい。
・アスファルト混合物用骨材
・コンクリート用骨材
・道路用路盤材
・地盤改良材
・土工用材
・セメント原料
・土壌改良材の原料
【0016】
生成されたスラグSGの成分範囲は一例として次の通りであるが、これに限られない。
・CaO:10%から60%までの間
・SiO2:10%から30%までの間
・FeO:0.1%から50%までの間
本実施形態のスラグ製品に限定は無く、一般的なものである。」
「【0032】
情報処理装置1は、制御部11と通信部12と記憶部13とを含む。情報処理装置1の各構成要素は、例えば専用線を介して互いに通信可能に接続される。
・・・
【0034】
通信部12は、ネットワークNWに接続するための、1つ以上の有線又は無線LAN(Local Area Network)規格に対応する通信モジュールを含む。・・・」
「【0051】
[変形例]
上記実施形態では、スラグ伝票情報と証明情報とが関連付けて記憶部13に記憶される。しかし、制御部11がグリーン電力証書等の証明情報を入手できない場合がある。そこで制御部11は、電力需要者によって購入された電力の発電プロセスが、再生可能エネルギーと再生可能エネルギー以外のエネルギーとを複合的に利用したプロセスである場合、購入及び使用された電力のうち再生可能エネルギー由来の電力についてのみ特定することができる。そのような特定は、電力会社等によって公開される任意の証明情報(例えば二酸化炭素排出係数(残渣))を利用して行うことができる。制御部11は、証明情報を、スラグ伝票情報に関連付けて記憶してよい。
・・・
【0054】
発電プロセスが、再生可能エネルギーと再生可能エネルギー以外のエネルギーとを複合的に利用したプロセスである場合、購入及び使用された電力のうち再生可能エネルギー由来の電力についてのみ特定する方法は、以下の方法により得ることができる。電気炉EFで使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを実現するには、まず、対象となる電気炉EFの1ヒート分に相当する工場電力使用量が操業実績から、算出される。算出は、制御部11(例えばプロセスコンピュータ)によって行われてよいし、手動で行われてよい(以下同じ)。1ヒートとは、電気炉EFにおいて1回に溶解される溶鋼である。次いで、1ヒートに使用される電力量に、電力会社等によって公開される再生可能エネルギー比率を掛けることで、再生可能エネルギー由来の電力量が算出される。そして、対象となるスラグ伝票に記載されるスラグが製造された電気炉EFでの工場電力使用量実績から、スラグ1トン当たりの電力使用量が算出される。次いで、スラグ1トン当たりの電力使用量に、対象となるスラグ伝票に記載されたスラグ重量を掛けることで、対象となるスラグを製造するために使用された実績電力使用量が算出される。この実績電力使用量の電力を再生可能エネルギー電力とみなすことで、電気炉EFで使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを実現及び証明することができる。制御部11は、再生可能エネルギー由来の電力から製造されたスラグのスラグ伝票情報へ、使用された再生可能エネルギー由来の電力量を関連付けて一体化する。」
「【0055】
[効果]
以上述べたように本実施形態によれば、スラグは、非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力を使用した電気炉で製造される。ここで、電気炉で使用されるエネルギーの大部分(例えば80%以上)は電力である。このため、非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力(例えばグリーン電力)を調達して電気炉で使用することによって、製造工程で使用されるコークス等から排出される二酸化炭素を相殺することができる。すなわち、相殺とは、コークス等のエネルギーに相当する非化石電力使用量を算出して、算出された非化石電力使用量を追加的にスラグ伝票に記載し、スラグの製造で使用した非化石電力としてスラグと関連付けを行うことで行われる。もってカーボンニュートラルなスラグを製造することができる。更に、本実施形態によれば、二酸化炭素の排出を削減すると共に、自然砕石等の天然資源の使用を削減することができる。
【0056】
対照的に、高炉一貫製鉄所スラグ(転炉スラグ)は、コークス(石炭)、天然ガス等のエネルギーを使用して製造される。この場合、カーボンニュートラルを実現するためにはLCA評価を元にした複雑な計算が必要であるものの、計算を行っても完全なカーボンニュートラルを実現することは不可能である。」
(2) 判断
上記(1)の記載によれば、電気炉を使用してスラグを製造する場合の電力を火力発電等により発電すると、発電時に二酸化酸素が排出されるという問題があることが理解できる(【0004】)。しかしながら、このような問題は、電気炉を使用してスラグを製造する場合にのみ発生する問題ではなく、電気炉を使用するか否か、あるいは、製造する製品がスラグであるか否かにかかわらず、電力を使用して製品を製造する際に、原油や石炭などを用いた火力発電等による電力を使用すれば生じる一般的な問題であって、本件発明の技術分野における技術常識であると認められる。
また、上記(1)の記載によれば、本件明細書の発明の詳細な説明には、スラグ原料を高温で溶解及び無害化処理することにより(【0011】)、スラグSGが生成され、生成されたスラグSGは、アスファルト混合物用骨材やコンクリート用骨材などに利用されることが理解できるところ(【0015】)、スラグSGの成分を含む製品がスラグ製品であることが記載されており(【0016】)、本件明細書の記載から、スラグは製品の一種であると把握される。なお、異議申立人が提出した甲2の1頁にも、「鉄鋼スラグ製品の管理に関するガイドライン」、「各会員が自ら鉄鋼スラグのみで鉄鋼スラグ製品を製造する場合には、その製品を本ガイドラインにおける鉄鋼スラグ製品とする。」と記載されていることからすると、スラグを製品の一種と理解することも、本件発明の技術分野における技術常識であると認められる。
そうすると、本件明細書に、電気炉を使用してスラグを製造する手段しか記載されていないとしても、上述のとおり、スラグは製品の一種であることが技術常識であり、電力を使用して製品を製造する際に、原油や石炭などを用いた火力発電等による電力を使用すれば、発電時に二酸化酸素が排出されるという問題があることも技術常識であるから、本件発明の出願時の技術常識に照らすと、特許請求の範囲に記載された本件発明が、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できる範囲を超えているということはできない(もっとも、本件明細書には、「ここで、電気炉で使用されるエネルギーの大部分(例えば80%以上)は電力である。」(【0055】)、「対照的に、高炉一貫製鉄所スラグ(転炉スラグ)は、コークス(石炭)、天然ガス等のエネルギーを使用して製造される。この場合、カーボンニュートラルを実現するためにはLCA評価を元にした複雑な計算が必要であるものの、計算を行っても完全なカーボンニュートラルを実現することは不可能である。」(【0056】)と記載されているように、本件発明の「製品」は、主に電力をエネルギーとして使用して製造される製品を対象としており、高炉一貫製鉄所スラグ(転炉スラグ)などのコークス(石炭)、天然ガス等のエネルギーを使用して製造される製品を対象とするものではない。)。
したがって、異議申立人の主張は採用できない。
(3) 理由2(サポート要件)のまとめ
以上によれば、本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものであって、本件特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。
したがって、異議申立人の主張する理由2は理由がない。
3 理由3(明確性、サポート要件)について
異議申立人は、本件発明の「特定された前記電力が再生可能エネルギー由来の電力であることを証明する証明情報」について、本件明細書の【0019】~【0024】で例示された手段(1)~(5)の証書等の情報以外に、どのような情報が含まれるのか明確ではなく、明細書にも説明されていない旨主張する(特許異議申立書17~19頁)。
しかしながら、「証明情報」について、本件発明では、上記第2のとおり、「特定された前記電力が再生可能エネルギー由来の電力であることを証明する証明情報」であると特定されており、文言上、どのような情報であるのかを明確に理解できるから、特許請求の範囲に記載された本件発明が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
そして、発明の詳細な説明にも、「電気炉EFで使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明する証書等の情報は、唯一無二の証明情報として証明書発行事業者又は認証機関等から取得される。」(【0025】)、「証明情報を入手できない場合は、電力会社等によって公開される任意の証明情報(例えば二酸化炭素排出係数(残渣))」(【0026】)と記載されているから、特許請求の範囲に記載された本件発明の「証明情報」は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
以上によれば、本件発明は、明確であり、発明の詳細な説明に記載されたものであるから、本件特許は、特許法36条6項1号及び同条同項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。
したがって、異議申立人の主張する理由3は理由がない。
4 理由4(明確性、サポート要件)について
異議申立人は、本件発明の「再生可能エネルギー比率」について、定義が明確でなく、明細書にも記載されていない旨主張する(特許異議申立書19~21頁)。
しかしながら、「再生可能エネルギー比率」について、本件発明では、それ以外の特定はないものの、「再生可能エネルギー比率」を用いて算出することによって実行される「特定すること」は、本件発明において、「購入された電力の発電プロセスが再生可能エネルギーと再生可能エネルギー以外のエネルギーとを複合的に利用したプロセスである場合、前記電力のうち再生可能エネルギー由来の電力を特定すること」と特定されている。
そうすると、「再生可能エネルギー比率」とは、「再生可能エネルギー」及び「再生可能エネルギー以外のエネルギー」の和のうち、「再生可能エネルギー」の割合であることが明確に理解できるから、特許請求の範囲に記載された本件発明が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
そして、特許請求の範囲における「再生可能エネルギー比率」について、発明の詳細な説明にも、「そこで制御部11は、電力需要者によって購入された電力の発電プロセスが、再生可能エネルギーと再生可能エネルギー以外のエネルギーとを複合的に利用したプロセスである場合、購入及び使用された電力のうち再生可能エネルギー由来の電力についてのみ特定することができる。」(【0051】)、「発電プロセスが、再生可能エネルギーと再生可能エネルギー以外のエネルギーとを複合的に利用したプロセスである場合、購入及び使用された電力のうち再生可能エネルギー由来の電力についてのみ特定する方法は、以下の方法により得ることができる。・・・1ヒートに使用される電力量に、電力会社等によって公開される再生可能エネルギー比率を掛けることで、再生可能エネルギー由来の電力量が算出される。」(【0054】)と記載されているように(上記2(1)参照。)、「再生可能エネルギー比率」とは、「再生可能エネルギー」及び「再生可能エネルギー以外のエネルギー」の和のうち、「再生可能エネルギー」の割合であることが記載されており、「電力会社等によって公開される」ものであることも記載されているから、特許請求の範囲に記載された本件発明は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
以上によれば、本件発明は、明確であり、発明の詳細な説明に記載されたものであるから、本件特許は、特許法36条6項1号及び同条同項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。
したがって、異議申立人の主張する理由4は理由がない。
第6 むすび
以上の次第であるから、特許異議の申立ての理由及び異議申立人の提出した証拠によっては、本件特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700512