特許異議申立
2022-701078
情報処理方法
- 審判番号
- 2022-701078
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-109720
- 登録番号
- 7075530
- 請求日
- 2022年11月02日
- 審決日
- 2023年03月07日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】JFE条鋼株式会社
- 【権利者代理人】杉村 憲司
- 【権利者代理人】杉村 光嗣
- 【権利者代理人】川原 敬祐
- 【権利者代理人】石井 裕充
- 【異議申立人】神田 紀子
- 【異議申立人】中川 賢治
- 審判長/審判官
- 審判長 佐藤 智康
- 審判官 高瀬 勤
- 審判官 梶尾 誠哉
- 分類
- P1651.536-Y (G06Q) / P1651.537-Y (G06Q) / P1651.55 -Y (G06Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7075530号発明「情報処理方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7075530号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7075530号の請求項1に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和3年6月30日に出願され、令和4年2月16日に提出された手続補正書により補正がされ、同年5月17日にその特許権の設定登録がされ、同年5月25日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、同年11月2日に異議申立人 神田紀子(以下「申立人1」という。)が特許異議の申立て(以下「異議申立1」という。)を行い、同年11月25日に異議申立人 中川賢治(以下「申立人2」という。)が特許異議の申立て(以下「異議申立2」という。)を行った。
第2 本件発明
特許第7075530号の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
なお、A、B、C等の記号は、当審が便宜上付与したものである。
「【請求項1】
A 情報処理装置による情報処理方法であって、
A1 前記情報処理装置は、制御部と通信部と記憶部とを含み、前記通信部を介してネットワークと通信可能に接続され、
A2 前記制御部によって、
B 購入された電力の発電プロセスが再生可能エネルギーと再生可能エネルギー以外のエネルギーとを複合的に利用したプロセスである場合、前記電力のうち再生可能エネルギー由来の電力を特定することと、
C 特定された前記電力が再生可能エネルギー由来の電力であることを証明する証明情報を、鋼材製品の製造ロットについてのミルシート情報に関連付けて前記記憶部に記憶することと、
を含み、
B 前記特定することは、
B1 前記鋼材製品が製造された電気炉の電力使用量実績から、鋼トン当たりの電力使用量を算出することと、
B2 1回に溶解される溶鋼量に、再生可能エネルギー比率を掛けることで、再生可能エネルギー由来の電力から製造された溶鋼量を算出することと、
B3 前記鋼トン当たりの電力使用量と、前記再生可能エネルギー由来の電力から製造された溶鋼量とから、前記鋼材製品を製造するために使用された再生可能エネルギー由来の電力の量を算出することと、
A3 によって実行される、情報処理方法。」
第3 申立理由の概要
1 異議申立1の申立理由
(1)本件発明において、「前記鋼材製品を製造するために使用された再生可能エネルギー由来の電力の量を算出すること」はできず、また、「再生可能エネルギー由来の電力量の算出」は、明細書に記載されておらず、用語の意味内容を理解できないから、本件発明は明確でない。よって、本件特許は特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(以下「理由1-1」という。)
(2)本件発明の「再生可能エネルギー由来の電力量の算出」は発明の詳細な説明に記載したものではないから、本件特許は特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(以下「理由1-2」という。)
(3)本件の明細書の発明の詳細な説明には「再生可能エネルギー由来の電力量の算出」について記載がない。よって、本件の明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、本件特許は特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(以下「理由1-3」という。)
(4)令和4年2月16日に提出された手続補正書でした補正は、「再生可能エネルギー由来の電力量の算出」という新たな技術的事項を導入するものである。よって、当該補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、本件特許は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしいていない補正をした特許出願に対してされたものである。(以下「理由1-4」という。)
2 異議申立2の申立理由
(1)本件発明の「特定された前記電力が再生可能エネルギー由来の電力であることを証明する証明情報」に、どのような情報が含まれるのか明確ではない。
また、請求項1の「特定された前記電力が再生可能エネルギー由来の電力であることを証明する証明情報」に、どのような情報が含まれるのか明細書の発明の詳細な説明に記載されていないので、本件発明は明細書の発明の詳細な説明に記載したものではない。
よって、本件特許は特許法36条6項1号及び同2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(以下「理由2-1」という。)
(2)本件発明の「証明情報を、鋼材製品の製造ロットについてのミルシート情報に関連付けて」において、「証明情報」と関連付けられる「鋼材製品の製造ロット」がどのようなものであるか明確ではない。
また、本件発明の「証明情報を、鋼材製品の製造ロットについてのミルシート情報に関連付けて」において、「証明情報」と関連付けられる「鋼材製品の製造ロット」がどのようなものであるか明細書の発明の詳細な説明に記載されていないので、本件発明は明細書の発明の詳細な説明に記載したものではない。
よって、本件特許は特許法36条6項1号及び同2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(以下「理由2-2」という。)
(3)本件発明の「再生可能エネルギー比率」の定義が明確ではない。
また、本件発明の「再生可能エネルギー比率」の定義は明細書に記載されていないので、本件発明は明細書の発明の詳細な説明に記載したものではない。
よって、本件特許は特許法36条6項1号及び同2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(以下「理由2-3」という。)
(4)本件発明は、鋼材製品の主原料の限定はなく、また、鋼材製品の製造時に使用されるエネルギーの大部分が電炉の電力であるとの限定はされていないので、本件発明は、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない場合に該当し、サポート要件に違反する。
よって、本件特許は特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(以下「理由2-4」という。)
第4 当審の判断
1 理由1-1について
(1)ア 本件発明において、「前記鋼材製品を製造するために使用された再生可能エネルギー由来の電力の量を算出」の意味は、特許請求の範囲の記載されたとおりの意味であり、不明確な点はない。
申立人1の主張する「前記鋼材製品を製造するために使用された再生可能エネルギー由来の電力の量を算出」することができない、発明の詳細な説明には、「溶綱量の算出」の方法は記載されているが、「電力量の算出」の方法は記載されていないという理由は、それぞれ、実施可能要件(特許法36条4項1号)、サポート要件(特許法36条6項1号)を理由とする主張であり、明確性要件の主張ではないから、申立人1の主張する理由1-1には理由がない。
なお、実施可能要件については「3 理由1-3について」、サポート要件については「2 理由1-2について」で後述するとおりである。
2 理由1-2について
本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0052】には、「製造ロット番号の鋼材製品が製造された電気炉EFの1ヒート分に相当する工場電力使用量実績から、鋼トン当たりの電力使用量が算出される」、「1回に溶解される溶鋼量に、電力会社等によって公開される再生可能エネルギー比率を掛けることで、再生可能エネルギー由来の電力から製造された溶鋼量が算出される」と記載されているから、本件発明の構成B1と構成B2について記載されている。
そして、本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0041】には、「鋼トン当たりの電力使用量に、対象となるミルシートに記載された製品重量を掛けることで、対象となる鋼材製品を製造するために使用された実績電力使用量が算出される。」と記載されているから、構成B1の「綱トン当たりの電力使用量」と構成B2の「再生可能エネルギー由来の電力から製造された溶鋼量」を掛ければ、構成B3の鋼材製品を製造するのに使用された「再生可能エネルギー由来の電力の量」を算出できることは明らかである。
よって、本件発明は発明の詳細な説明に記載したものであるから、申立人1の主張する理由1-2には理由がない。
3 理由1-3について
本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0052】には、「製造ロット番号の鋼材製品が製造された電気炉EFの1ヒート分に相当する工場電力使用量実績から、鋼トン当たりの電力使用量が算出される」、「1回に溶解される溶鋼量に、電力会社等によって公開される再生可能エネルギー比率を掛けることで、再生可能エネルギー由来の電力から製造された溶鋼量が算出される」と記載されているから、本件発明の構成B1と構成B2について記載されている。
そして、本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0041】には、「鋼トン当たりの電力使用量に、対象となるミルシートに記載された製品重量を掛けることで、対象となる鋼材製品を製造するために使用された実績電力使用量が算出される。」と記載されているから、構成B1の「綱トン当たりの電力使用量」と構成B2の「再生可能エネルギー由来の電力から製造された溶鋼量」を掛ければ、構成B3の鋼材製品を製造するのに使用された「再生可能エネルギー由来の電力の量」を算出できることを当業者は理解できるから、本件明細書の発明の詳細な記載は、当業者が本件発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものである。
よって、申立人1の主張する理由1-3には理由がない。
4 理由1-4について
令和4年2月16日に提出された手続補正書でした補正により、特許請求の範囲の請求項1にB1、B2、B3の構成が追加された。
本件の当初明細書の段落【0052】には、「製造ロット番号の鋼材製品が製造された電気炉EFの1ヒート分に相当する工場電力使用量実績から、鋼トン当たりの電力使用量が算出される」、「1回に溶解される溶鋼量に、電力会社等によって公開される再生可能エネルギー比率を掛けることで、再生可能エネルギー由来の電力から製造された溶鋼量が算出される」と記載されているから、本件発明の構成B1と構成B2について記載されている。
そして、本件の当初明細書の段落【0041】には、「鋼トン当たりの電力使用量に、対象となるミルシートに記載された製品重量を掛けることで、対象となる鋼材製品を製造するために使用された実績電力使用量が算出される。」と記載されているから、構成B1の「綱トン当たりの電力使用量」と構成B2の「再生可能エネルギー由来の電力から製造された溶鋼量」を掛ければ、構成B3の鋼材製品を製造するのに使用された「再生可能エネルギー由来の電力の量」を算出できることは明らかである。
したがって、令和4年2月16日に提出された手続補正書でした補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、当該補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
よって、申立人の主張する理由1-4には理由がない。
5 理由2-1について
本件発明の構成B、構成Cより、「証明情報」は、「鋼材製品の製造ロットを製造するために利用した電力のうち、再生可能エネルギー由来の電力を特定し、特定された電力が再生可能エネルギー由来の電力であることを証明する証明情報」であると理解できるから、本件発明は明確である。
また、本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0026】には、製造される鋼材製品には、ミルシートが添付され、ミルシートには、証明情報39(ここでは一例としてグリーン電力証書のシリアルナンバー)が含まれることが記載されているから、「特定された電力が再生可能エネルギー由来の電力であることを証明する証明情報」は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
申立人2は、本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0041】の記載から、「証明情報」は「特定された再生可能エネルギー由来の電力量」と解釈できると主張するが、段落【0041】に、「電気炉EFで使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを実現するには、まず、・・・綱トン当たりの電力使用量が算出される。・・・次いで、・・・対象となる鋼材製品を製造するために使用された実績電力使用量が算出される。この実績電力使用量の電力を電気炉EFで使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを実現及び証明することができる。」と記載されているように、段落【0041】の記載は、証明する前に、「再生可能エネルギー由来の電力」を実現し、証明情報は、その電力が再生可能エネルギー由来であることを証明するものであると理解できるから、申立人2の主張する理由2-1には理由がない。
6 理由2-2について
本件発明の構成B、構成Cにおいて、「購入された電力の発電プロセスが再生可能エネルギーと再生可能エネルギー以外のエネルギーとを複合的に利用したプロセスである場合、前記電力のうち再生可能エネルギー由来の電力を特定することと、特定された前記電力が再生可能エネルギー由来の電力であることを証明する証明情報を、鋼材製品の製造ロットについてのミルシート情報に関連付けて前記記憶部に記憶する」と特定されているから、「証明情報」が関連付けられる「製造ロット」は、「再生可能エネルギー由来の電力」と特定された電力により製造された鋼材製品の「製造ロット」であることは明らかである。
また、「製造ロット」は、本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0052】に「1ヒートとは、電気炉EFにおいて1回に溶解される溶鋼である。溶解された溶鋼から、鋼材製品がロット別に製造される。」と記載されているから、発明の詳細な説明に記載されたものである。
申立人2は、本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0058】の「発電プロセスにおいて再生可能エネルギー以外のエネルギーが使用された場合であってもの、鋼材製品が部分的にカーボンニュートラルであることを証明することができる。」という記載から、「購入された電力により製造されるすべての鋼材製品の製造ロット」を指しているとも解釈できると主張するが、当該記載は、「電力のうち再生可能エネルギー由来の電力」と特定されたものに対して証明情報を関連付け、特定されなかったものに対しては証明情報を関連付けないという意味であると理解できるから、申立人2の主張する理由2-2には理由がない。
7 理由2-3について
本件発明の「再生可能エネルギー比率」は、明細書の発明の詳細な説明の段落【0052】に記載されているとおりの「電力会社等によって公開される再生可能エネルギー比率」のことであり、申立人2の主張する「電気炉で使用されるエネルギーの再生可能エネルギー比率」と解釈することはできない。
よって、本件発明の「再生可能エネルギー比率」は明確であり、また、明細書の発明の詳細な説明に記載されたものである。
よって、申立人2の主張する理由2-3には理由がない。
8 理由2-4について
本件発明では「鋼材製品が製造された電気炉」という特定がなされているから、本件発明の鋼材製品は「電気炉」で製造されたものである。
そして、「電気炉」で鋼材製品を製造する場合、原材料は鉄スクラップであり、鉄鉱石を原材料とする高炉による炭素含有還元鉄を含まないことは明らかであり、また、「電気炉」において、使用されるエネルギーの大部分が電力であることは技術常識である。
したがって、本件発明は、「電気炉」以外の鋼材製品を含まず、「電気炉」で使用される電力についての「再生可能エネルギー」を特定していることは明らかであるから、サポート要件を満たすものである。
よって、申立人2の主張する理由2-3には理由がない。
第5 むすび
以上のとおり、異議申立1及び異議申立2の理由は、いずれも理由がなく、特許第7075530号の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に特許第7075530号の請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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