特許異議申立
2023-700482
塗料組成物及び塗膜
- 審判番号
- 2023-700482
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-091500
- 登録番号
- 7178059
- 請求日
- 2023年05月09日
- 審決日
- 2024年11月14日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日本ペイントコーポレートソリューションズ株式会社
- 【権利者代理人】山尾 憲人
- 【権利者代理人】山本 宗雄
- 【権利者代理人】齋藤 明子
- 【権利者】国立大学法人 東京大学
- 【権利者代理人】山尾 憲人
- 【権利者代理人】山本 宗雄
- 【権利者代理人】齋藤 明子
- 【異議申立人】長谷川 愛理
- 審判長/審判官
- 審判長 門前 浩一
- 審判官 長谷川 真一
- 審判官 光本 美奈子
- 分類
- P1652.113-YAA(C09D) / P1652.121-YAA(C09D) / P1652.536-YAA(C09D) / P1652.537-YAA(C09D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第6項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7178059号発明「塗料組成物及び塗膜」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7178059号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~16〕について訂正することを認める。
特許第7178059号の請求項1~4、9~16に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7178059号の請求項1~16に係る特許についての出願は、令和3年5月31日に出願され、令和4年11月16日に特許権の設定登録(請求項の数16)がされ、同年同月25日に特許掲載公報が発行された。その後、令和5年5月10日に特許異議申立人である長谷川 愛理(以下「申立人」という。)により、請求項1~4、9~16に係る特許について特許異議の申立てがなされ、当審は、令和6年1月9日付けで取消理由を通知し、特許権者は、同年3月7日に意見書を提出し、当審は、同年4月30日付けで取消理由(決定の予告)を通知し、同年6月12日に特許権者との面接を行い、特許権者は、同年6月26日に意見書の提出及び訂正の請求(以下この請求による訂正を「本件訂正」という。)を行い、当審は、特許権者から訂正の請求があったこと及び意見書が提出されたことを、同年7月3日付け(発送は、同年同月8日)で申立人に通知し、申立人は、同年8月6日に意見書を提出したものである。
第2 本件訂正についての判断
1 請求の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、「特許第7178059号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~16について訂正することを求める。」というものである。
2 訂正事項
本件訂正は次の訂正事項からなる。下線は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「該有機顔料の含有率は、前記顔料(B1)の総量中、3質量%以上であることを特徴とする、近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗料組成物。」と記載されているのを、「該有機顔料の含有率は、前記顔料(B1)の総量中、3質量%以上であることを特徴とし、
走行路、道路構造物、鉄道構造物、防護柵、各種築構造物の内部設備、各建築構造物の内装、歩行者着用物及び電柱から選ばれる1種又はそれ以上に用いられる、近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗料組成物。」に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~4、9、11~16も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項5に、「形成される塗膜の明度をL*0としたとき、L*0と前記白色系顔料、有機赤色系顔料、無機赤色系顔料、有機黄色系顔料、無機黄色系顔料、青色系顔料、有機黒色系顔料および無機黒色系顔料の顔料質量濃度との関係が、以下の式(1)
L*0=0.7(W)-0.6(IR)-5.5(OR)+0.4(IY)-3.2(OY)-5.7(OB)-0.2(IBL)-0.3(OBL)+48.5 …式(1)
[式(1)中、
(W)は白色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OR)は有機赤色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(IR)は無機赤色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OY)は有機黄色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(Iy)は無機黄色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OB)は青色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OBL)は有機黒色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(IBL)は無機黒色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表す。]
で表される、請求項4に記載の近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗料組成物。」とあるうち、請求項4を引用するものについて、独立形式に改め、「塗膜形成樹脂(A)及び着色顔料(B)を含む近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗料組成物であって、
前記着色顔料(B)は、近赤外線を反射しうる顔料(B1)を含み、
800~2,500nmの波長域における反射率を近赤外線反射率としたとき、前記顔料(B1)は、近赤外線反射率が60%以上である白色系顔料、近赤外線反射率が50%以上である有彩色顔料、及び、近赤外線反射率が30%以上である黒色系顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものであって、且つ、近赤外線反射率が60%以上である白色系顔料及び近赤外線反射率が50%以上である有彩色顔料から選ばれる1種を含み、
前記顔料(B1)は、有機顔料を含み、該有機顔料の含有率は、前記顔料(B1)の総量中、3質量%以上であり、
前記着色顔料(B)は、波長905nm及び/又は1,550nmにおける分光反射率が70%以上である白色系顔料、
前記波長における分光反射率が50%以上である有機赤色系顔料、
前記波長における分光反射率が20%以上である無機赤色系顔料、
前記波長における分光反射率が60%以上である有機黄色系顔料、
前記波長における分光反射率が20%以上である無機黄色系顔料、
前記波長における分光反射率が40%以上である青色系顔料、
前記波長における分光反射率が30%以上である有機黒色系顔料
及び前記波長における分光反射率が15%以上である無機黒色系顔料
からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、
形成される塗膜の明度をL*0としたとき、L*0と前記白色系顔料、有機赤色系顔料、無機赤色系顔料、有機黄色系顔料、無機黄色系顔料、青色系顔料、有機黒色系顔料および無機黒色系顔料の顔料質量濃度との関係が、以下の式(1):
L*0=0.7(W)-0.6(IR)-5.5(OR)+0.4(IY)-3.2(OY)-5.7(OB)-0.2(IBL)-0.3(OBL)+48.5 …式(1)
[式(1)中、
(W)は白色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OR)は有機赤色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(IR)は無機赤色系顔料の顔料質量浪度(質量%)を表し、
(OY)は有機黄色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(IY)は無機黄色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OB)は青色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OBL)は有機黒色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(IBL)は無機黒色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表す。]
で表される、近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗料組成物。」に訂正する(請求項5の記載を直接又は間接的に引用する請求項9、11~16も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6に、「形成される塗膜の近赤外線反射率をX0(%)としたとき、X0と前記白色系顔料、有機赤色系顔料、無機赤色系顔料、有機黄色系顔料、無機黄色系顔料、青色系顔料、有機黒色系顔料および無機黒色系顔料の顔料質量濃度との関係が、以下の式(2):
X0=0.5(W)-1.4(IR)+0.1(OR)-0.6(IY)-1.8(OY)-3.1(OB)-0.2(IBL)-13.2(OBL)+61.0 …式(2)
[式(2)中、
(W)は白色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OR)は有機赤色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(IR)は無機赤色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OY)は有機黄色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(IY)は無機黄色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OB)は青色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OBL)は有機黒色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(IBL)は無機黒色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表す。]
で表される、請求項4または5に記載の近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗料組成物。」とあるうち、請求項4を引用するものについて、独立形式に改め、「塗膜形成樹脂(A)及び着色顔料(B)を含む近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗料組成物であって、
前記着色顔料(B)は、近赤外線を反射しうる顔料(B1)を含み、
800~2,500nmの波長域における反射率を近赤外線反射率としたとき、前記顔料(B1)は、近赤外線反射率が60%以上である白色系顔料及び近赤外線反射率が50%以上である有彩色顔釈、及び、近赤外線反射率が30%以上である黒色系顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものであって、且つ、近赤外線反射率が60%以上である白色系顔料及び近赤外線反射率が50%以上である有彩色顔料から選ばれる1種を含み、
前記顔料(B1)は、有機顔料を含み、該有機顔料の含有率は、前記顔料(B1)の総量中、3質量%以上であり、
前記着色顔料(B)は、波長905nm及び/又は1,550nmにおける分光反射率が70%以上である白色系顔料、
前記波長における分光反射率が50%以上である有機赤色系顔料、
前記波長における分光反射率が20%以上である無機赤色系顔料、
前記波長における分光反射率が60%以上である有機黄色系顔料、
前記波長における分光反射率が20%以上である無機黄色系顔料、
前記波長における分光反射率が40%以上である青色系顔料、
前記波長における分光反射率が30%以上である有機黒色系顔料
及び前記波長における光反射率が15%以上である無機黒色系顔料
からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、
形成される塗膜の近赤外線反射率をX0(%)としたとき、X0と前記白色系顔料、有機赤色系顔料、無機赤色系顔料、有機黄色系顔料、無機黄色系顔料、青色系顔料、有機黒色系顔料および無機黒色系顔料の顔料質量濃度との関係が、以下の式(2)
X0=0.5(W)-1.4(IR)+0.1(OR)-0.6(IY)-1.8(OY)-3.1(OB)-0.2(IBL)-13.2(OBL)+61.0 …式(2)
[式(2)中、
(W)は白色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OR)は有機赤色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(IR)は無機赤色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OY)は有機黄色系顔料の顔料質量狼度(質量%)を表し、
(IY)は無機黄色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OB)は青色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OBL)は有機黒色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(IBL)は無機黒色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表す。]
で表される、近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗料組成物。」に訂正する(請求項6の記載を直接又は間接的に引用する請求項9、11~16も同様に訂正する。)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7に、「形成される塗膜の波長905nmにおける分光反射率をY0(%)としたとき、Y0(%)と前記白色系顔料、有機赤色系顔料、無機赤色系顔料、有機黄色系顔料、無機黄色系顔料、青色系顔料、有機黒色系顔料および無機黒色系顔料の顔料質量濃度との関係が、以下の式(3):
Y0=0.6(W)-2.9(IR)+3.5(OR)-1.2(IY)-0.9(OY)-3.0(OB)-0.8(IBL)-1.2(OBL)+68.0 …式(3)
[式(3)中、
(W)は白色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OR)は有機赤色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(IR)は無機赤色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OY)は有機黄色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(IY)は無機黄色系顔料の顔料質量漑度(質量%)を表し、
(OB)は青色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OBL)は有機黒色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(IBL)は無機黒色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表す。]
で表される、請求項4~6のいずれか1項に記載の近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗料組成物。」とあるうち、請求項4を引用するものについて、独立形式に改め、「塗膜形成樹脂(A)及び着色顔料(B)を含む近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗料組成物であって、
前記着色顔料(B)は、近赤外線を反射しうる顔料(B1)を含み、
800~2,500nmの波長域における反射率を近赤外線反射率としたとき、前記顔料(B1)は、近赤外線反射率が60%以上である白色系顔料、近赤外線反射率が50%以上である有彩色顔料、及び、近赤外線反射率が30%以上である黒色系顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものであって、且つ、近赤外線反射率が60%以上である白色系顔料及び近赤外線反射率が50%以上である有彩色顔料から選ばれる1種を含み、
前記顔料(B1)は、有機顔料を含み、該有機顔料の含有率は、前記顔料(B1)の総量中、3質量%以上であり、
前記着色顔料(B)は、波長905nm及び/又は1,550nmにおける分光反射率が70%以上である白色系顔料、
前記波長における分光反射率が50%以上である有機赤色系顔料、
前記波長における分光反射率が20%以上である無機赤色系顔料、
前記波長における分光反射率が60%以上である有機黄色系顔料、
前記波長における分光反射率が20%以上である無機黄色系顔料、
前記波長における分光反射率が40%以上である青色系顔料、
前記波長における分光反射率が30%以上である有機黒色系顔料
及び前記波長における分光反射率が15%以上である無機黒色系顔料
からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、
形成される塗膜の波長905nmにおける分光反射率をY0(%)としたとき、Y0(%)と前記白色系顔料、有機赤色系顔料、無機赤色系顔料、有機黄色系顔料、無機黄色系顔料、青色系顔料、有機黒色系顔料および無機黒色系顔料の顔料質量濃度との関係が、以下の式(3):
Y0=0.6(W)-2.9(IR)+3.5(OR)-1.2(IY)-0.9(OY)-3.0(OB)-0.8(IBL)-1.2(OBL)+68.0 …式(3)
[式(3)中、
(W)は白色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OR)は有機赤色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(IR)は無機赤色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OY)は有機黄色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(IY)は無機黄色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OB)は青色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OBL)は有機黒色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(IBL)は無機黒色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表す。]
で表される、近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗料組成物。」に訂正する(請求項7の記載を直接又は間接的に引用する請求項9、11~16も同様に訂正する。)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項8に、「形成される塗膜の波長1,550nmにおける分光反射率をZ0(%)としたとき、Z0(%)と前記白色系顔料、有機赤色系顔料、無機赤色系顔料、有機黄色系顔料、無機黄色系顔料、青色系顔料、有機黒色系顔料および無機黒色系顔料の顔料質量濃度との関係が、以下の式(4):
Z0=0.3(W)-0.2(IR)-2.4(OR)-0.2(IY)-1.4(OY)-2.0(OB)+0.1(IBL)-8.5(OBL)+68.0 …式(4)
[式(4)中、
(W)は白色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OR)は有機赤色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(IR)は無機赤色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OY)は有機黄色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(IY)は無機黄色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OB)は青色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OBL)は有機黒色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(IBL)は無機黒色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表す。]
で表される、請求項4~7のいずれか1項に記載の近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗料組成物。」とあるうち、請求項4を引用するものについて、独立形式に改め、「塗膜形成樹脂(A)及び着色顔料(B)を含む近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗料組成物であって、
前記着色顔料(B)は、近赤外線を反射しうる顔料(B1)を含み、
800~2,500nmの波長域における反射率を近赤外線反射率としたとき、前記顔料(B1)は、近赤外線反射率が60%以上である白色系顔料、近赤外線反射率が50%以上である有彩色顔料、及び、近赤外線反射率が30%以上である黒色系顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものであって、且つ、近赤外線反射率が60%以上である白色系顔料及び近赤外線反射率が50%以上である有彩色顔料から選ばれる1種を含み、
前記顔料(B1)は、有機顔料を含み、該有機顔料の含有率は、前記顔料(B1)の総量中、3質量%以上であり、
前記着色顔料(B)は、波長905nm及び/又は1,550nmにおける分光反射率が70%以上である白色系顔料、
前記波長における分光反射率が50%以上である有機赤色系顔料、
前記波長における分光反射率が20%以上である無機赤色系顔料、
前記波長における分光反射率が60%以上である有機黄色系顔料、
前記波長における分光反射率が20%以上である無機黄色系顔料、
前記波長における分光反射率が40%以上である青色系顔料、
前記波長における分光反射率が30%以上である有機黒色系顔料
及び前記波長における分光反射率が15%以上である無機黒色系顔料
からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、
形成される塗膜の波長1,550nmにおける分光反射率をZ0(%)としたとき、Z0(%)と前記白色系顔料、有機赤色系顔料、無機赤色系顔料、有機黄色系顔料、無機黄色系顔料、青色系顔料、有機黒色系顔料および無機黒色系顔料の顔料質量濃度との関係が、以下の式(4):
Z0=0.3(W)-0.2(IR)-2.4(OR)-0.2(IY)-1.4(OY)-2.0(OB)+0.1(IBL)-8.5(OBL)+68.0 …式(4)
[式(4)中、
(W)は白色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OR)は有機赤色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(IR)は無機赤色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OY)は有機黄色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(IY)は無機黄色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OB)は青色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OBL)は有機黒色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(IBL)は無機黒色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表す。]
で表される、近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗料組成物。」に訂正する(請求項8の記載を直接又は間接的に引用する請求項9、11~16も同様に訂正する。)。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項10に「800~2,500nmの波長域における近赤外線反射率が15%以上であることを特徴とする、近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗膜。」と記載されているのを、「800~2,500nmの波長域における近赤外線反射率が15%以上であることを特徴とし、
走行路、道路構造物、鉄道構造物、防護柵、各種建築構造物の内部設備、各建築構造物の内装、歩行者着用物及び電柱から選ばれる1種又はそれ以上に用いられる、近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗膜。」に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項13に、「波長905nm及び/又は1,550nmにおける分光反射率が、20%以上であることを特徴とする、請求項10~12のいずれか1項に記載の近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗膜。」とあるうち、請求項10を引用するものについて、引用関係を解除し、「波長90nm及び/又は1,550nmにおける分光反射率が、20%以上であることを特徴とする、請求項11又は12に記載の近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗膜。」に訂正する。
3 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~16について、請求項2~9、11~16は、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項であって、請求項1の訂正に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項2~9、11~16は、特許法第120条の5第4項に規定される「一群の請求項」である。
また、本件訂正前の請求項13は、請求項10を引用する請求項であるから、本件訂正前の請求項10及び13は、特許法第120条の5第4項に規定される「一群の請求項」である。
そして、上記2つの「一群の請求項」は、請求項13を共通して有しているから、組み合わされて、一つの「一群の請求項」となる。
したがって、本件訂正前の請求項1~16は、特許法第120条の5第4項に規定される「一群の請求項」である。
4 訂正の適否についての当審の判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1における「近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗料組成物」の用途を「走行路、道路構造物、鉄道構造物、防護柵、各種築構造物の内部設備、各建築構造物の内装、歩行者着用物及び電柱から選ばれる1種又はそれ以上」に限定するものであるから、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 実質上の拡張・変更の有無
上記アで検討したように、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものであって、単に用途を特定したものであるから、特許請求の範囲を実質的に拡張・変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 新規事項の追加の有無
訂正事項1の「近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗料組成物」の用途を限定する訂正は、本件明細書の段落【0144】の「前記被塗物の具体例としては、自動車の自動運転の際に障害となり得る構造物、物品等が挙げられる。例えば、販売される各種商品、走行路、道路構造物(例えば、舗装、路面標示、歩道、横断歩道、排水施設、平面交差構造、橋梁、土工、トンネル、待避所、交通安全施設(例えば、立体横断施設、ガードレール、ガードポール、防護柵、照明施設、視線誘導標、道路反射鏡等)、交通島、停留所、駐車帯、駐車場等)、各種建築構造物及びその内部設備、鉄道構造物、各種防護施設、各種車両及びその付属物、歩行者着用物、電柱、各建築構造物の内壁等が挙げられる。」に基づくものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、本件訂正前の請求項1~3のいずれか1項を引用する請求項4を引用する請求項5を、引用請求項を請求項1及び請求項4に削減した上で、独立形式に改めるものであるから、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び4に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ 実質上の拡張・変更及び新規事項の追加の有無
上記アで検討したように、訂正事項2は、請求項5の引用請求項を削減した上で、独立形式に改めるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正事項3は、本件訂正前の請求項1~3のいずれか1項を引用する請求項4、又は、それを引用する請求項5を引用する請求項6を、引用請求項を請求項1及び請求項4に削減した上で、独立形式に改めるものであるから、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び4に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ 実質上の拡張・変更及び新規事項の追加の有無
上記アで検討したように、訂正事項3は、請求項6の引用請求項を削減した上で、独立形式に改めるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的
訂正事項4は、本件訂正前の請求項1~3のいずれか1項を引用する請求項4、若しくは、それを引用する請求項5又は6を引用する請求項7を、引用請求項を請求項1及び請求項4に削減した上で、独立形式に改めるものであるから、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び4に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ 実質上の拡張・変更及び新規事項の追加の有無
上記アで検討したように、訂正事項4は、請求項7の引用請求項を削減した上で、独立形式に改めるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的
訂正事項5は、本件訂正前の請求項1~3のいずれか1項を引用する請求項4、又は、それを引用する請求項5~7のいずれか1項を引用する請求項8を、引用請求項を請求項1及び請求項4に削減した上で、独立形式に改めたものであるから、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び4に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ 実質上の拡張・変更及び新規事項の追加の有無
上記アで検討したように、訂正事項5は、請求項8の引用請求項を削減した上で、独立形式に改めるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(6)訂正事項6について
ア 訂正の目的
訂正事項6は、本件訂正前の請求項10における「近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗膜」の用途を「走行路、道路構造物、鉄道構造物、防護柵、各種築構造物の内部設備、各建築構造物の内装、歩行者着用物及び電柱から選ばれる1種又はそれ以上」に限定するものであるから、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 実質上の拡張・変更の有無
上記アで検討したように、訂正事項6は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものであって、単に用途を特定したものであるから、特許請求の範囲を実質的に拡張・変更するものではない。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 新規事項の追加の有無
訂正事項6の「近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗膜」の用途を限定する訂正は、本件明細書の段落【0144】の「前記被塗物の具体例としては、自動車の自動運転の際に障害となり得る構造物、物品等が挙げられる。例えば、販売される各種商品、走行路、道路構造物(例えば、舗装、路面標示、歩道、横断歩道、排水施設、平面交差構造、橋梁、土工、トンネル、待避所、交通安全施設(例えば、立体横断施設、ガードレール、ガードポール、防護柵、照明施設、視線誘導標、道路反射鏡等)、交通島、停留所、駐車帯、駐車場等)、各種建築構造物及びその内部設備、鉄道構造物、各種防護施設、各種車両及びその付属物、歩行者着用物、電柱、各建築構造物の内壁等が挙げられる。」に基づくものである。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(7)訂正事項7について
ア 訂正の目的
訂正事項7は、本件訂正前の請求項10~12のいずれか1項を引用する請求項13を、引用請求項を請求項11又は12に削減するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 実質上の拡張・変更及び新規事項の追加の有無
上記アで検討したように、訂正事項7は、引用請求項数を単に削減するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。
したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
5 独立特許要件について
本件訂正前の請求項1~4、9~16は、特許異議の申立てがされた請求項であるから、これらの請求項に対する訂正事項については、いわゆる独立特許要件は課されない。
一方、本件訂正前の請求項5~8は、特許異議の申立てがされていない請求項であって、かつ、これらの請求項に係る訂正事項2~5は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を含むものであるから、いわゆる独立特許要件についての検討を要する。
そこで、本件訂正後の請求項5~8に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(独立特許要件を満たすか)について検討する。
(1)本件訂正後の請求項5~8に係る発明
本件訂正後の請求項5~8に係る発明は、本件訂正における訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
「【請求項5】
塗膜形成樹脂(A)及び着色顔料(B)を含む近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗料組成物であって、
前記着色顔料(B)は、近赤外線を反射しうる顔料(B1)を含み、
800~2,500nmの波長域における反射率を近赤外線反射率としたとき、前記顔料(B1)は、近赤外線反射率が60%以上である白色系顔料、近赤外線反射率が50%以上である有彩色顔料、及び、近赤外線反射率が30%以上である黒色系顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものであって、且つ、近赤外線反射率が60%以上である白色系顔料及び近赤外線反射率が50%以上である有彩色顔料から選ばれる1種を含み、
前記顔料(B1)は、有機顔料を含み、該有機顔料の含有率は、前記顔料(B1)の総量中、3質量%以上であり、
前記着色顔料(B)は、波長905nm及び/又は1,550nmにおける分光反射率が70%以上である白色系顔料、
前記波長における分光反射率が50%以上である有機赤色系顔料、
前記波長における分光反射率が20%以上である無機赤色系顔料、
前記波長における分光反射率が60%以上である有機黄色系顔料、
前記波長における分光反射率が20%以上である無機黄色系顔料、
前記波長における分光反射率が40%以上である青色系顔料、
前記波長における分光反射率が30%以上である有機黒色系顔料
及び前記波長における分光反射率が15%以上である無機黒色系顔料
からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、
形成される塗膜の明度をL*0としたとき、L*0と前記白色系顔料、有機赤色系顔料、無機赤色系顔料、有機黄色系顔料、無機黄色系顔料、青色系顔料、有機黒色系顔料および無機黒色系顔料の顔料質量濃度との関係が、以下の式(1):
L*0=0.7(W)-0.6(IR)-5.5(OR)+0.4(IY)-3.2(OY)-5.7(OB)-0.2(IBL)-0.3(OBL)+48.5 …式(1)
[式(1)中、
(W)は白色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OR)は有機赤色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(IR)は無機赤色系顔料の顔料質量浪度(質量%)を表し、
(OY)は有機黄色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(IY)は無機黄色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OB)は青色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OBL)は有機黒色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(IBL)は無機黒色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表す。]
で表される、近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗料組成物。
【請求項6】
塗膜形成樹脂(A)及び着色顔料(B)を含む近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗料組成物であって、
前記着色顔料(B)は、近赤外線を反射しうる顔料(B1)を含み、
800~2,500nmの波長域における反射率を近赤外線反射率としたとき、前記顔料(B1)は、近赤外線反射率が60%以上である白色系顔料及び近赤外線反射率が50%以上である有彩色顔釈、及び、近赤外線反射率が30%以上である黒色系顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものであって、且つ、近赤外線反射率が60%以上である白色系顔料及び近赤外線反射率が50%以上である有彩色顔料から選ばれる1種を含み、
前記顔料(B1)は、有機顔料を含み、該有機顔料の含有率は、前記顔料(B1)の総量中、3質量%以上であり、
前記着色顔料(B)は、波長905nm及び/又は1,550nmにおける分光反射率が70%以上である白色系顔料、
前記波長における分光反射率が50%以上である有機赤色系顔料、
前記波長における分光反射率が20%以上である無機赤色系顔料、
前記波長における分光反射率が60%以上である有機黄色系顔料、
前記波長における分光反射率が20%以上である無機黄色系顔料、
前記波長における分光反射率が40%以上である青色系顔料、
前記波長における分光反射率が30%以上である有機黒色系顔料
及び前記波長における光反射率が15%以上である無機黒色系顔料
からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、
形成される塗膜の近赤外線反射率をX0(%)としたとき、X0と前記白色系顔料、有機赤色系顔料、無機赤色系顔料、有機黄色系顔料、無機黄色系顔料、青色系顔料、有機黒色系顔料および無機黒色系顔料の顔料質量濃度との関係が、以下の式(2)
X0=0.5(W)-1.4(IR)+0.1(OR)-0.6(IY)-1.8(OY)-3.1(OB)-0.2(IBL)-13.2(OBL)+61.0 …式(2)
[式(2)中、
(W)は白色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OR)は有機赤色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(IR)は無機赤色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OY)は有機黄色系顔料の顔料質量狼度(質量%)を表し、
(IY)は無機黄色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OB)は青色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OBL)は有機黒色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(IBL)は無機黒色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表す。]
で表される、近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗料組成物。
【請求項7】
塗膜形成樹脂(A)及び着色顔料(B)を含む近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗料組成物であって、
前記着色顔料(B)は、近赤外線を反射しうる顔料(B1)を含み、
800~2,500nmの波長域における反射率を近赤外線反射率としたとき、前記顔料(B1)は、近赤外線反射率が60%以上である白色系顔料、近赤外線反射率が50%以上である有彩色顔料、及び、近赤外線反射率が30%以上である黒色系顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものであって、且つ、近赤外線反射率が60%以上である白色系顔料及び近赤外線反射率が50%以上である有彩色顔料から選ばれる1種を含み、
前記顔料(B1)は、有機顔料を含み、該有機顔料の含有率は、前記顔料(B1)の総量中、3質量%以上であり、
前記着色顔料(B)は、波長905nm及び/又は1,550nmにおける分光反射率が70%以上である白色系顔料、
前記波長における分光反射率が50%以上である有機赤色系顔料、
前記波長における分光反射率が20%以上である無機赤色系顔料、
前記波長における分光反射率が60%以上である有機黄色系顔料、
前記波長における分光反射率が20%以上である無機黄色系顔料、
前記波長における分光反射率が40%以上である青色系顔料、
前記波長における分光反射率が30%以上である有機黒色系顔料
及び前記波長における分光反射率が15%以上である無機黒色系顔料
からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、
形成される塗膜の波長905nmにおける分光反射率をY0(%)としたとき、Y0(%)と前記白色系顔料、有機赤色系顔料、無機赤色系顔料、有機黄色系顔料、無機黄色系顔料、青色系顔料、有機黒色系顔料および無機黒色系顔料の顔料質量濃度との関係が、以下の式(3):
Y0=0.6(W)-2.9(IR)+3.5(OR)-1.2(IY)-0.9(OY)-3.0(OB)-0.8(IBL)-1.2(OBL)+68.0 …式(3)
[式(3)中、
(W)は白色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OR)は有機赤色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(IR)は無機赤色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OY)は有機黄色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(IY)は無機黄色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OB)は青色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OBL)は有機黒色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(IBL)は無機黒色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表す。]
で表される、近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗料組成物。
【請求項8】
塗膜形成樹脂(A)及び着色顔料(B)を含む近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗料組成物であって、
前記着色顔料(B)は、近赤外線を反射しうる顔料(B1)を含み、
800~2,500nmの波長域における反射率を近赤外線反射率としたとき、前記顔料(B1)は、近赤外線反射率が60%以上である白色系顔料、近赤外線反射率が50%以上である有彩色顔料、及び、近赤外線反射率が30%以上である黒色系顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものであって、且つ、近赤外線反射率が60%以上である白色系顔料及び近赤外線反射率が50%以上である有彩色顔料から選ばれる1種を含み、
前記顔料(B1)は、有機顔料を含み、該有機顔料の含有率は、前記顔料(B1)の総量中、3質量%以上であり、
前記着色顔料(B)は、波長905nm及び/又は1,550nmにおける分光反射率が70%以上である白色系顔料、
前記波長における分光反射率が50%以上である有機赤色系顔料、
前記波長における分光反射率が20%以上である無機赤色系顔料、
前記波長における分光反射率が60%以上である有機黄色系顔料、
前記波長における分光反射率が20%以上である無機黄色系顔料、
前記波長における分光反射率が40%以上である青色系顔料、
前記波長における分光反射率が30%以上である有機黒色系顔料
及び前記波長における分光反射率が15%以上である無機黒色系顔料
からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、
形成される塗膜の波長1,550nmにおける分光反射率をZ0(%)としたとき、Z0(%)と前記白色系顔料、有機赤色系顔料、無機赤色系顔料、有機黄色系顔料、無機黄色系顔料、青色系顔料、有機黒色系顔料および無機黒色系顔料の顔料質量濃度との関係が、以下の式(4):
Z0=0.3(W)-0.2(IR)-2.4(OR)-0.2(IY)-1.4(OY)-2.0(OB)+0.1(IBL)-8.5(OBL)+68.0 …式(4)
[式(4)中、
(W)は白色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OR)は有機赤色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(IR)は無機赤色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OY)は有機黄色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(IY)は無機黄色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OB)は青色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(OBL)は有機黒色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表し、
(IBL)は無機黒色系顔料の顔料質量濃度(質量%)を表す。]
で表される、近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗料組成物。」
(2)独立特許要件を満たすか否かの判断
ア 新規性、進歩性について
後記第6の1(1)及び(2)ア(ア)、2(2)ア、並びに、2(3)ア及びイ(ア)(a)のとおり、甲1には、有機黒色系顔料、有機赤色系顔料、無機白色系顔料、無機黄色系顔料を含むグレー色系遮熱性カラー塗料に係る発明が記載されており、甲5には、自動車のボディに用いる塗料に係る技術が記載されており、甲7には、黒色TiO2粒子を含むLiDAR反射暗色塗料に係る発明が記載されている。
しかしながら、これらの発明は、形成される塗膜の「明度L*0」、「近赤外線反射率をX0(%)」、「波長905nmにおける分光反射率をY0(%)」又は「波長1,550nmにおける分光反射率をZ0(%)」と、白色系顔料、有機赤色系顔料、無機赤色系顔料、有機黄色系顔料、無機黄色系顔料、青色系顔料、有機黒色系顔料及び無機黒色系顔料の顔料質量濃度とが、上記(1)の「式(1)」、「式(2)」、「式(3)」、「式(4)」の関係を満さない点で、本件訂正後の請求項5~8と、少なくとも相違する。
そして、甲1、甲4、甲5、甲6-2~甲10には、「明度L*0」、「近赤外線反射率をX0(%)」、「波長905nmにおける分光反射率をY0(%)」又は「波長1,550nmにおける分光反射率をZ0(%)」と、上記各顔料濃度とを、「式(1)」、「式(2)」、「式(3)」、「式(4)」の関係を満たすようにすることについての記載も示唆ないから、甲1、甲5又は甲7に記載された発明において、上記所定の物性と顔料濃度を「式(1)」、「式(2)」、「式(3)」、「式(4)」の関係を満たすようにすることは当業者といえども容易に想到し得たこととはいえない。
よって、本件訂正後の請求項5~8に係る発明は、甲1、甲5又は甲7に記載された発明ではないし、甲1、甲5又は甲7、並びに、甲1、甲4、甲5、甲6-2~甲10に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものでもない。
イ サポート要件及び実施可能要件について
後記第6の2(4)アのとおり、本件訂正後の請求項1、4に係る発明(本件発明1、4)は、LiDAR技術における近赤外線の検出精度を高めることが可能な塗料組成物を提供するという発明の課題を解決できるものであるから、サポート要件を満たしている。
また、後記第6の2(4)イのとおり、本件明細書の記載は、当業者が本件訂正後の請求項1、4に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであり、実施可能要件を満たしている。
そして、本件訂正後の請求項5~8に係る発明は、走行路、道路構造物等に用いることについての限定がないことを除き、本件訂正後の請求項1、4に係る発明を包含し、さらに特定事項を追加したものであるから、後記第6の2(4)で検討したのと同様の理由で、LiDAR技術における近赤外線の検出精度を高めることが可能な塗料組成物を提供するという発明の課題を解決できるものであり、また、本件明細書の記載は、それらの発明を当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
ウ その他の理由について
上記ア、イで検討した理由の他に、特許を受けることができないとすべき理由は見当たらない。
(3)独立特許要件についてのまとめ
以上より、本件訂正後の請求項5~8に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができたものであるから、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項の規定に適合するものである。
6 小括
以上のとおりであるから、本件特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~16〕について訂正することを認める。
第3 本件発明及び本件明細書の記載
1 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められたから、本件特許の請求項1~16のうち、特許異議の申立ての対象である請求項1~4、9~16に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明4」、「本件発明9」~「本件発明16」ともいう。)は、本件訂正における訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】
塗膜形成樹脂(A)及び着色顔料(B)を含む近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗料組成物であって、
前記着色顔料(B)は、近赤外線を反射しうる顔料(B1)を含み、
800~2,500nmの波長域における反射率を近赤外線反射率としたとき、前記顔料(B1)は、近赤外線反射率が60%以上である白色系顔料、近赤外線反射率が50%以上である有彩色顔料、及び、近赤外線反射率が30%以上である黒色系顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものであって、且つ、近赤外線反射率が60%以上である白色系顔料及び近赤外線反射率が50%以上である有彩色顔料から選ばれる1種を含み、
前記顔料(B1)は、有機顔料を含み、該有機顔料の含有率は、前記顔料(B1)の総量中、3質量%以上であることを特徴とし、
走行路、道路構造物、鉄道構造物、防護柵、各種建築構造物の内部設備、各建築構造物の内装、歩行者着用物及び電柱から選ばれる1種又はそれ以上に用いられる、近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗料組成物。
【請求項2】
前記有彩色顔料が赤色系顔料、黄色系顔料及び青色系顔料からなる群より選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項1に記載の近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗料組成物。
【請求項3】
前記赤色系顔料及び黄色系顔料が、それぞれ有機顔料及び/又は無機顔料を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗料組成物。
【請求項4】
前記着色顔料(B)は、波長905nm及び/又は1,550nmにおける分光反射率が70%以上である白色系顔料、
前記波長における分光反射率が50%以上である有機赤色系顔料、
前記波長における分光反射率が20%以上である無機赤色系顔料、
前記波長における分光反射率が60%以上である有機黄色系顔料、
前記波長における分光反射率が20%以上である無機黄色系顔料、
前記波長における分光反射率が40%以上である青色系顔料、
前記波長における分光反射率が30%以上である有機黒色系顔料
及び前記波長における分光反射率が15%以上である無機黒色系顔料
からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗料組成物。
・・・
【請求項9】
形成される塗膜の明度が、80以下であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗料組成物。
【請求項10】
顔料(B)を含む塗膜であって、
前記着色顔料(B)は、近赤外線を反射しうる顔料(B1)を含み、
800~2,500nmの波長域における反射率を近赤外線反射率としたとき、前記顔料(B1)は、近赤外線反射率が60%以上である白色系顔料、近赤外線反射率が50%以上である有彩色顔料、及び、近赤外線反射率が30%以上である黒色系顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものであって、且つ、近赤外線反射率が60%以上である白色系顔料及び近赤外線反射率が50%以上である有彩色顔料から選ばれる1種を含み、
前記顔料(B1)は、有機顔料を含み、該有機顔料の含有率は、前記顔料(B1)の総量中、3質量%以上であり、
800~2,500nmの波長域における近赤外線反射率が15%以上であることを特徴とし、
走行路、道路構造物、鉄道構造物、防護柵、各種建築構造の内部設備、各建築構造物の内装、歩行者着用物及び電柱から選ばれる1種又はそれ以上に用いられる、近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗膜。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載の塗料組成物から形成される、近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗膜。
【請求項12】
800~2,500nmの波長域における近赤外線反射率が15%以上であることを特徴とする、請求項11に記載の近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗膜。
【請求項13】
波長905nm及び/又は1,550nmにおける分光反射率が、20%以上であることを特徴とする、請求項11又は12に記載の近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗膜。
【請求項14】
請求項1~9のいずれか1項に記載のセンシングの検出対象物用塗料組成物を用いて形成された塗膜を有する検出対象物。
【請求項15】
走行する車両から特定波長の近赤外線を照射して、検出対象物にそれが反射し、その反射光を検出して、反射に掛かる時間に基づいて車両から検出対象物までの距離を算出する、車両と検出対象物との距離を測定するセンシング方法において、前記塗装物が請求項1~9のいずれか1項に記載の塗料組成物を塗装することにより得られるものであることを特徴とする、センシング方法。
【請求項16】
走行する車両から特定波長の近赤外線を照射して、検出対象物にそれが反射し、その反射光を検出して、照射光と反射光との周波数差により、車両から検出対象物までの距離を算出する、車両と検出対象物との距離を測定するセンシング方法において、前記塗装物が請求項1~9のいずれか1項に記載の塗料組成物を塗装することにより得られるものであることを特徴とする、センシング方法。」
2 本件明細書の記載
本件明細書には次の記載がある。
「【0007】
本発明は、LiDAR技術における近赤外線の検出精度を高めることが可能な塗料組成物及び塗膜の提供を課題とする。更に、本発明は、好ましくは、低明度でありながら、LiDAR技術における近赤外線の検出精度を高めることが可能な塗料組成物及び塗膜の提供を課題とする。」
「【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の発明を含む。
[1] 塗膜形成樹脂(A)及び着色顔料(B)を含む近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗料組成物であって、
前記着色顔料(B)は、800~2,500nmの波長域における反射率を近赤外線反射率としたとき、近赤外線反射率が60%以上である白色系顔料、近赤外線反射率が50%以上である有彩色顔料、及び、近赤外線反射率が30%以上である黒色系顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする、近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗料組成物。
・・・」
「【発明の効果】
【0009】
本発明の塗料組成物及び塗膜は、LiDAR技術における近赤外線の検出精度を高めることが可能であり、好ましくは、低明度でありながら、LiDAR技術における近赤外線の検出精度を高めることが可能である。」
「【0042】
[有機顔料(B)]
前記着色顔料(B)は、有彩色、無彩色等の色を有する顔料であり、近赤外線を反射しうる顔料(B1)を含む。前記顔料(B1)の近赤外線反射率は、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上であり、100%以下、90%以下、80%以下であることも許容される。前記顔料(B1)を含むことで、近赤外線を照射した場合に、照射光が高強度で反射及び/又は散乱され、LiDAR技術における検出精度の向上に寄与することができる。」
「【0043】
本明細書において、近赤外線反射率は、800~2,500nmの波長域において、JIS K 5602:2008に準拠し測定した分光反射率の算術平均値を意味する。前記分光反射率は、分光光度計を用いて測定することができる。
【0044】
本明細書において、顔料の近赤外線反射率は、該顔料を含む塗膜を形成し、該塗膜の反射率として測定することができる。詳細には、後述する顔料の近赤外線反射率及び分光反射率の測定例1に記載する顔料、樹脂及び溶媒を、以下の式に示す顔料質量濃度(PWCともいう)が3~50質量%となるように混合し、回転数1,800rpmで60分間、分散機を用いて分散し分散体とした後、下地として白黒隠ぺい率試験紙(日本テストパネル社製)を使用し、8milのドクターブレードを用いて、乾燥後の厚さが約50μmとなるように塗布し、60℃で20分間乾燥させて乾燥塗膜とする。JIS K 5602:2008に準拠し、分光光度計を用いて、前記乾燥塗膜の下地が白色の部分の分光反射率を800~2,500nmの波長域で測定し、その算術平均値を前記顔料の近赤外線反射率とする。また、後述する波長905nm及び1,550nmにおける分光反射率も、前記の分光反射率を測定する方法に準拠して測定することができる。前記分光光度計としては、例えば、分光光度計(島津製作所製、SHIMADZU-UV3600等)を用いて測定することができる。
顔料質量濃度(PWC:質量%)=(顔料の固形分量)/(顔料の固形分量+樹脂の固形分量)×100
・・・
【0046】
また、近赤外反射率及び分光反射率の測定の際、前記各顔料の顔料質量濃度は、前記白黒隠ぺい率試験紙に乾燥塗膜を形成させたとき、下地の白色及び黒色が透けて見えない状態となる濃度以上とする。本明細書中において、前記各顔料の顔料質量濃度は、有機赤色系顔料については25質量%、無機赤色系顔料については30質量%、有機黄色系顔料については25質量%、無機黄色系顔料については30質量%、青色系顔料については20質量%、白色系顔料については45質量%、有機黒色系顔料については3質量%、無機黒色系顔料については50質量%とする。」
「【0048】
また、前記顔料(B1)としては、有機顔料及び/又は無機顔料を用いることができる。前記有機顔料は、高い彩度や高い近赤外線反射率を有する傾向があり、無機顔料は、高い耐候性を有する傾向がある。
前記顔料(B1)中、有機顔料の含有率は、0質量%以上であってよく、0.5質量%以上であってよく、3質量%以上であってよい。また、100質量%以下であってよく、70質量%以下であってよく、20質量%以下であってよく、10質量%以下であってよく、8質量%以下であってよい。
前記顔料(B1)中、無機顔料の含有率は、0質量%以上であってよく、5質量%以上であってよく、10質量%以上であってよい。また、100質量%以下であってよく、99質量%以下であってよく、50質量%以下であってよく、40質量%以下であってよく、20質量%以下であってよい。」
「【実施例】
【0151】
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0152】
<顔料の近赤外線反射率及び分光反射率の測定例1>
無機赤色系顔料の近赤外線反射率、波長905nm及び/又は1,550nmにおける分光反射率の測定例
塗膜形成樹脂として(A-1)アロセット5534-SB60 21質量部、溶媒として(D2-1)T-SOL 100(エクソン化学社製)6質量部、無機赤色系顔料として(B21-1)トダカラー 120ED 22質量部を混合後、SGミル(媒体:ガラスビーズ)を用いて、顔料の分散粒度が10μm以下になるまで分散した。次に、(A-1)を51質量部加え、ディスパーを用いてかくはんしながら混合し、主剤を得た。
【0153】
架橋剤として(C-1)デュラネートTSA-100 62質量部及び溶媒(D2-1)としてT-SOL 100(エクソン化学社製)38質量部を、ディスパーでかくはんしながら混合し、硬化剤を得た。
【0154】
前記で得られた主剤及び硬化剤を、質量比9:1で混合し、塗料組成物を得た(顔料質量濃度:30質量%)。得られた塗料組成物を白黒隠ぺい率試験紙(日本テストパネル社製)上に、8milドクターブレードを用いて、乾燥膜厚が50μmとなるように塗装し、60℃で20分乾燥後、常温で1日静置し、塗膜を得た。
【0155】
得られた塗膜について、下地が白色の部分について、分光光度計(島津製作所製、SHIMADZU-UV3600)を用いて、JIS K-5602に準拠した方法で800~2,500nmの波長域における反射率を波長2nm毎に測定した。得られた各波長における反射率の算術平均値を無機赤色顔料の近赤外線反射率とした。また、905及び1,550nmの近赤外反射率は、各波長におけるそれぞれの分光反射率の値である。
【0156】
その他の顔料の近赤外線反射率は、各顔料の種類及び顔料質量濃度を表1に記載の量とした以外は、前記顔料の近赤外線反射率及び分光反射率の測定例1と同様にして、各顔料の近赤外線反射率及び分光反射率を測定した。
【0157】
【表1】
[図:0001419307000001.jpg]
【0158】
<製造例1>
白色系顔料ペーストの製造例
塗膜形成樹脂として(A-1)アロセット5534-SB60 22質量部と、溶媒として(D2-1)T-SOL 100(エクソン化学社製) 7質量部、白色系顔料として(B1-1)TIPAQUE CR-97 34質量部を混合後、SGミル(媒体:ガラスビーズ)を用いて、顔料の分散粒度が10μm以下になるまで分散した。次に、(A-1)を37質量部加え、ディスパーを用いてかくはんしながら混合し、白色系顔料ペースト(W-1)を得た。
【0159】
<製造例2~9>
用いる塗膜形成樹脂、溶媒及び顔料の種類及び量を表2に記載のように変更したこと以外は、前記製造例1と同様にして、各顔料の顔料ペーストを得た。
【0160】
【表2】
[図:0001419307000002.jpg]
【0161】
<PWC調整用クリヤーの製造例>
塗膜形成樹脂として(A-1)アロセット5534-SB60 83質量部と、溶媒として(D2-1)T-SOL 100(エクソン化学社製) 17質量部を、ディスパーを用いてかくはんしながら混合し、PWC調整用クリヤーを得た。
【0162】
<実施例1>
前記白色系顔料ペースト(W-1)126.1質量部、前記PWC調整用クリヤー23.8質量部を、ディスパーでかくはんしながら混合し、主剤(S-1)を得た。
【0163】
架橋剤としてデュラネートTSA-100(C-1) 62質量部にT-SOL 100(エクソン化学社製) 38質量部を、ディスパーでかくはんしながら混合し、硬化剤(K-1)を得た。
【0164】
<塗膜(試験片)の製造例1>
前記で得られた主剤(S-1)149.9質量部及び硬化剤(K-1)16.7質量部をディスパーでかくはんしながら混合し、塗料組成物1を得た(顔料質量濃度:42質量%)。得られた塗料組成物1を、白黒隠ぺい率試験紙(日本テストパネル社製)上に、乾燥膜厚が100μmとなるように塗装し、60℃で20分乾燥後、常温で1日静置し、試験片1を得た。なお、主剤(S-1)及び硬化剤(K-1)は、質量比で9:1となるようにした。
【0165】
用いる顔料ペースト、PWC調整用クリヤー、架橋剤及び溶剤の種類及び量を表3に記載のように示す通りに変更したこと以外は、前記塗膜(試験片)の製造例1と同様にして、各塗膜(試験片)を得た。
なお、塗料組成物としてその他の材料を含む場合、その他の材料は、前記主剤を製造する際に、各種顔料ペースト及びPWC調整用クリヤーと共に混合し、主剤を調製した。
【0166】
実施例、比較例に用いた下記表中に示される各成分の詳細は以下のとおりである。
塗膜形成樹脂(A)
(A-1)アロセット5534-SB60(アクリルポリオール樹脂、日本触媒社製):重量平均分子量:50,000、酸価:10mgKOH/g、水酸基価:38mgKOH/g、固形分濃度:60質量%
架橋剤(C)(C-1)デュラネートTSA-100(HDIイソシアヌレート型ポリイソシアネート、旭化成社製);NCO含有量:20.6%、固形分濃度:100質量%
溶媒(D)
(D2-1)T-SOL 100(芳香族炭化水素系溶剤、エクソン化学社製)
その他の材料:
充填剤:ガシルHP395(非晶質シリカ、PQコーポレーション社製);平均粒子径:14.5μm
【0167】
各成分の種類及び量を、表に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にして、主剤及び硬化剤をそれぞれ調整し、試験片を得た。
【0168】
<評価方法>
1)塗膜明度
実施例及び比較例で得られた試験片の塗膜表面の明度(L*値)を、JIS K 5600-4-4の3.2及びJIS K 5600-4-5に準拠し、色彩色差計CM-500(コニカミノルタ社製)を用いて測定した。
【0169】
2)近赤外反射率及び分光反射率
実施例及び比較例で得られた試験片について、分光光度計(島津製作所製、SHIMADZU-UV3600)を用いて、JIS K-5602に準拠した方法で800~2,500nmの波長域における反射率を波長2nm毎に測定した。得られた各波長における反射率の算術平均値を塗膜の近赤外線反射率とした。また、905及び1,550nmの近赤外反射率は、各波長におけるそれぞれの分光反射率の値である。
【0170】
3)表面粗さ
実施例及び比較例で得られた試験片の塗膜表面の算術平均高さ(Sa:μm)及び二乗平均平方根高さ(Sq:μm)を、JIS B 0601に準拠し、レーザー顕微鏡VK-X200(キーエンス社製)を用いて測定した。
【0171】
4)LiDAR視認性
実施例及び比較例で得られた試験片を、3m離れた地点からLiDAR Mid-40(Livox社製、波長:905nm)を用いて観察した。イメージング画像で得られる試験片の状態を目視で観察するとともに、試験片全体から任意に選択した10か所の反射率を測定した。その算術平均値を試験片のLiDAR反射率とし、以下の基準により評価した。評点3以上を合格とした。
5:試験片のLiDAR反射率が100以上
4:試験片のLiDAR反射率が50以上100未満
3:試験片のLiDAR反射率が30以上50未満
2:試験片のLiDAR反射率が10以上30未満
1:試験片のLiDAR反射率が10未満
【0172】
【表3】
[図:0001419307000003.jpg]
【0173】
実施例1~11は、本発明の実施例であり、LiDAR技術における検出精度が高く、特に、明度(L*値)が低い場合でも、LiDAR技術における検出精度が高かった。
【0174】
比較例1、2は、顔料として、近赤外線反射率が60%以上である白色系顔料、近赤外線反射率が50%以上である有彩色顔料、及び、近赤外線反射率が30%以上である黒色系顔料のいずれも含まない例であり、明度を低くすることは可能であったものの、LiDAR技術における検出精度が十分に満足できるものではなかった。」
第4 特許異議の申立ての理由及び取消理由の概要等
1 申立人は、特許異議の申立てにおいて、後記4の甲第1号証~甲第7号証(以下「甲1」~「甲7」ともいう。)を提出し、後記2(1)~(5)の特許異議の申立理由を主張した。
また、申立人は、令和6年8月6日の意見書とともに、後記4(2)の甲8~甲10(以下「甲8」~「甲10」ともいう。)を提出した。
2 申立理由
(1)申立理由1(甲1を主たる引用例とした新規性欠如)
本件発明1~4、9~16は、本件特許に係る出願(以下「本件出願」ともいう。)前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、後記4の甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件発明1~4、9~16に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(甲1を主たる引用例とした進歩性欠如)
本件発明1~4、9~16は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、後記4の甲1に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1~4、9~16に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)申立理由3(甲5を主たる引用例とした進歩性欠如)
本件発明1~4、9~16は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、後記4の甲5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1~4、9~16に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(4)申立理由4(甲7を主たる引用例とした進歩性欠如)
本件発明1~4、9~16は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、後記4の甲7に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1~4、9~16に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(5)申立理由5(サポート要件違反及び実施可能要件違反)
本件発明1~4、9~16には、顔料(B1)の含有量に関し、本件発明の課題を解決できない態様が含まれるから、本件発明1~4、9~16についての特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1~4、9~16について、実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、それらの発明に係る特許は、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
3 当審が通知した取消理由の概要
令和6年4月30日付けの取消理由通知(決定の予告)の概要は次のとおりである。
取消理由(甲1を主たる引用例とした進歩性欠如)
本件発明1~4、9~16は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、後記4の甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1~4、9~16に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
4 証拠方法
(1)特許異議申立書に添付されたもの
甲1:特開2002-12825号公報
甲2:SpecialChem The material selection platform, Fastogen Blue RSのインターネットページ,https://coatings.specialchem.com/product/p-dic-corporation-fastogen-blue-rs
甲3:特開平10-10314号公報
甲4:大井ニュース,Vol.151,p.6(2020年1月20日発行)
甲5:モーターファンテック ニュース 2018/10/24の記事
甲6-1:日本塗料工業会,高日射反射率塗料のインターネットページ,https://www.toryo.or.jp/jp/anzen/reflect/index.html
甲6-2:高日射反射率塗料に関する補足資料(2011年7月),https://www.toryo.or.jp/jp/anzen/reflect/reflect-info2.pdf
甲7:特開2021-75454号公報
(2)令和6年8月6日の申立人の意見書に添付されたもの
甲8:東芝レビュー,Vo1.73,No.6(2018年11月),p.8~12,https://www.global.toshiba/content/dam/toshiba/migration/corp/techReviewAssets/tech/review/2018/06/73_06pdf/a03.pdf
甲9:特表2019-513198号公報
甲10:特表2020-532731号公報
第5 甲号証の記載
甲1、甲4、甲5、甲6-2、甲7~甲10の記載は次のとおりである。また、甲2、甲3、甲6-1の摘記は省略した。
1 甲1の記載
甲1には、次の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 780~2100nmの波長域における日射反射率が50%以上である白色塗料、780~2100nmの波長域における日射反射率が20%以上である青色塗料、780~2100nmの波長域における日射反射率が30%以上である赤色塗料、780~2100nmの波長域における日射反射率が20%以上である緑色塗料、780~2100nmの波長域における日射反射率が40%以上である黄色塗料、及び、780~2100nmの波長域における日射反射率が8%以上である黒色塗料からなる群から選択される2種以上の原色塗料を組み合わせることにより遮熱性カラー塗料を調製する方法。
・・・
【請求項3】 請求項1又は2記載の遮熱性カラー塗料を調製する方法により得られることを特徴とする遮熱性カラー塗料。」
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、工場、住宅等の建築物の屋根や外壁、コンテナ、冷凍車等の運搬車両の屋根や外板、船舶、プラント、物置、畜舎等の屋根や外壁等に適用することにより、日光に起因する内部温度の上昇を抑制することができ、しかもデザインや美観をも向上させることができる遮熱性カラー塗料に関する。
・・・
【0008】「日射反射率」の用語の意義は、JIS A 5759に記載されており、そこでは350~2100mmの波長域であるが、本明細書における「日射反射率」は、太陽光の780~2100nmの波長域における各波長ごとの強度によりウエイト付けした反射率を意味するものとする。」
「【0016】上記原色塗料に用いられる原色顔料としては、下記の顔料等を挙げることができる。白色塗料用の顔料としては、酸化チタンであるチタンCR97(石原チタン工業社製)等を挙げることができる。黒色塗料用の顔料としては、ダイピロキサイドカラーブラック9590、ダイピロキサイドカラーブラウン9290(大日精化工業社製)、FastogenSuper Black MX(大日本インキ化学工業社製)、パリオゲン Schwarz S0084(BASF社製)、パリオトールブラック L0080(BASF社製)等を挙げることができ、更に、Symuler FastYellow 4192(大日本インキ化学工業社製)と、ファーストゲンレッド7100Y(大日本インキ化学工業社製)と、リオノールブルー FG7980(大日精化工業社製)とを混合したもの等を挙げることができる。
【0017】青色塗料用の顔料としては、ダイピロキサイドカラーブルー9453(大日精化工業社製)、Fastogen Blue 5485(大日本インキ化学工業社製)、Fastogen Blue RS(大日本インキ化学工業社製)、シアニンブルー5240KB(大日精化工業社製)等を挙げることができる。
【0018】赤色塗料用の顔料としては、トダカラー120ED(戸田工業社製)、Fastogen Super Magenta RH(大日本インキ化学工業社製)、Fastogen Red 7100Y(大日本インキ化学工業社製)、ルビクロンレッド400RG(大日本インキ化学工業社製)等を挙げることができる。
【0019】黄色塗料用の顔料としては、Symuler Fast Yellow 4192(大日本インキ化学工業社製)、シコパールイエロー L-1110(BASF社製)等を挙げることができる。緑色塗料用の顔料としては、ダイピロキサイドカラーグリーン9310(大日精化工業社製)、ファーストゲングリーン2YK(大日本インキ化学工業社製)、リオノールグリーン6YKP-N(東洋インキ製造社製)等を挙げることができる。」
「【0036】
【実施例】以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
(原色塗料の調製)
1.赤色塗料
ルビクロンレッド400RG(大日本インキ化学工業社製)35重量部、水道水20重量部、湿潤剤として10%ヨネリン(米山化学社製)52.5重量部、分散剤としてBYK-191(ビッグケミー・ジャパン社製)を5.25重量部を、分散機(SGミル)で粒度5μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得た。フッ素樹脂エマルションとしてゼッフルSE310(ダイキン工業社製)100重量部、上記で得た顔料分散ペースト25重量部、アジピン酸ジエチル7.5重量部、プロピレングリコール7.5重量部を加えて、赤色塗料を得た。
【0037】2.黄色塗料
シコパールイエローL-1110(BASF社製)72重量部、水道水24重量部、湿潤剤として10%ヨネリン(米山化学社製)36重量部、分散剤としてBYK-191(ビッグケミー・ジャパン社製)を3.6重量部を、分散機(SGミル)で粒度5μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得た。フッ素樹脂エマルションとしてゼッフルSE310(ダイキン工業社製)100重量部、上記で得た顔料分散ペースト13重量部、アジピン酸ジエチル7.5重量部、プロピレングリコール7.5重量部を加えて、黄色塗料を得た。
【0038】3.青色塗料
Fastogen Blue RS(大日本インキ化学工業社製)66重量部、水道水56.5重量部、湿潤剤として10%ヨネリン(米山化学社製)33重量部、分散剤としてBYK-191(ビッグケミー・ジャパン社製)を6.7重量部、消泡剤としてSN-777(サンノプコ社製)を2.8重量部を、分散機(SGミル)で粒度5μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得た。フッ素樹脂エマルションとしてゼッフルSE310(ダイキン工業社製)100重量部、上記で得た顔料分散ペースト7重量部、アジピン酸ジエチル7.5重量部、プロピレングリコール7.5重量部を加えて、青色塗料を得た。
【0039】4.緑色塗料
リオノールグリーン6YKP-N(東洋インキ製造社製)60重量部、水道水25重量部、湿潤剤として10%ヨネリン(米山化学社製)30重量部、分散剤としてBYK-191(ビッグケミー・ジャパン社製)を6.4重量部を、分散機(SGミル)で粒度5μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得た。フッ素樹脂エマルションとしてゼッフルSE310(ダイキン工業社製)100重量部、上記で得た顔料分散ペースト4重量部、アジピン酸ジエチル7.5重量部、プロピレングリコール7.5重量部を加えて、緑色塗料を得た。
【0040】5.黒色塗料
Fastogen Super Black MX(大日本インキ化学工業社製)39重量部、水道水47重量部、分散剤としてSMA-1440H(エルファトケム社製)を13重量部、消泡剤としてSN-777(サンノプコ社製)の1重量部を、分散機(SGミル)で粒度5μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得た。フッ素樹脂エマルションとしてゼッフルSE310(ダイキン工業社製)100重量部、上記で得た顔料分散ペースト5重量部、アジピン酸ジエチル7.5重量部、プロピレングリコール7.5重量部を加えて、黒色塗料を得た。
【0041】6.白色塗料
チタンCR97(石原チタン工業社製)68重量部、水道水29重量部、分散剤としてSMA-1440H(エルファトケム社製)を3重量部、消泡剤としてSN-777(サンノプコ社製)の1重量部を、分散機(SGミル)で粒度5μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得た。フッ素樹脂エマルションとしてゼッフルSE310(ダイキン工業社製)100重量部、上記で得た顔料分散ペースト40重量部、アジピン酸ジエチル7.5重量部、プロピレングリコール7.5重量部を加えて、白色塗料を得た。
【0042】(日射反射率の測定)以上のようにして得た原色塗料のそれぞれについて分光反射スペクトルを測定した。各塗料を基材として厚さ0.8mmのSPCダル鋼板にドクターミル10ミルにより塗布し、30分間、60℃で乾燥して塗膜(膜厚80~120μm)を作成した。これについて、分光光度計(日立製作所社製、U-3500スペクトロフォトメーター)を用いて測定した。780~2100μmの波長域における反射率をもとに、JIS A 5759に記載の方法に従って、日射反射率を算出した。結果を表1に示した。
(当審注:当審では、「780~2100μm」は、甲1の段落【0008】の記載から「780~2100nm」の誤記と解釈した。)
【0043】
【表1】
[図:0001419307000004.jpg]
」
「【0045】
(遮熱性カラー塗料の調製)表1に示した本発明の原色塗料を、T.K.ホモディスパーを用いて、下記の割合で混合することにより、上記の従来品カラー塗料1、2、3と同じ色相を有するように調色して、遮熱性カラー塗料を得た。
グレー色系遮熱性カラー塗料1
白色塗料を100重量部
黒色塗料を50重量部
黄色塗料を16重量部
赤色塗料を3重量部
【0046】ブルー色系遮熱性カラー塗料2
白色塗料を12重量部
青色塗料を106重量部
黒色塗料を30重量部
赤色塗料を30重量部
【0047】グリーン色系遮熱性カラー塗料3
白色塗料を22重量部
青色塗料を18重量部
黒色塗料を73重量部
黄色塗料を68重量部
【0048】上記遮熱性カラー塗料1、2、3のそれぞれに、ガラスビーズとしてCEL-STAR(旭ガラス社製)を上記各遮熱性カラー塗料全体に対して5重量%添加し、ホモディスパーを用いて混合して、ガラスビーズ入り遮熱性カラー塗料1、2、3とした。それぞれのカラー塗料の色相を、表2に示した。
【0049】(試験片の作製)以上のようにして得られた各カラー塗料を、厚さ0.8mmのSPCダル鋼板基材の上に、ドクターミル10ミルにより塗布し、30分間、60℃で乾燥し、80~120μmの試験片を作製した。
(遮熱性の測定)試験片について、図1に示す試験装置8を用いて遮熱性を評価した。図1に示すように、試験片1を発泡スチロール箱6の上面に、塗膜が上になるようにしてはめ込み、試験片1の上方に設けた白熱灯2により試験片1を照射し、試験片1の裏面に設置した温度センサー3により温度を測定し、記録計4で測定温度を記録した。また、白熱灯2は、電源5により点灯させた。
【0050】試験片としては、寸法が300mm×100mmのものを用いた。試験箱6としては、厚さが30mmで、寸法が350mm×250mm×250mmの発泡スチロール箱を用いた。また、試験片1と白熱灯2との距離7を150mmとした。
【0051】記録計4としては、サーモレコーダーRT-10(タバイエスペック社製)を用い、白熱灯2としては、東芝レフランプRF110V200W(東芝社製)を用いた。また、試験は20℃の恒温室で無風の状態で実施した。結果を表2に示した。
【0052】
【表2】
[図:0001419307000005.jpg]
【0053】本発明の遮熱性カラー塗料1、2、3及びガラスビーズ入り遮熱性カラー塗料1、2、3は、従来品カラー塗料1、2、3とそれぞれ同様の色相を有していて、美観上は同じ効果を与えるものである。しかしながら、従来品カラー塗料1、2、3ではかなりの温度上昇がみられ、遮熱性が期待できないのに対して、本発明の遮熱性カラー塗料1、2、3は、温度上昇がほとんどみられず、遮熱性が優れており、本発明のガラスビーズ入り遮熱性カラー塗料1、2、3は、温度上昇が更に小さく、遮熱性がより優れていた。
【0054】
【発明の効果】本発明の遮熱性カラー塗料は、上述の構成を有しているので、従来品のカラー塗料に比較して格段に優れた遮熱性を有し、しかも従来品と同様の調色が容易に可能である。」
2 甲4の記載
甲4には、次の記載がある。
「
[図:0001419307000006.jpg]
」
3 甲5の記載
甲5には、次の記載がある。
(1)「
[図:0001419307000007.jpg]
」
(2)「
[図:0001419307000008.jpg]
」
(3)「
[図:0001419307000009.jpg]
」
(4)「
[図:0001419307000010.jpg]
」
4 甲6-2の記載
甲6-2には、次の記載がある。
(1)「
[図:0001419307000011.jpg]
(2)「
[図:0001419307000012.jpg]
[図:0001419307000013.jpg]
[図:0001419307000014.jpg]
[図:0001419307000015.jpg]
」
(3)「
[図:0001419307000016.jpg]
」
5 甲7の記載
甲7には、次の記載がある。
「【請求項16】
塗料バインダ、及び
黒色二酸化チタン、
を含有している塗料であって、
前記黒色二酸化チタンは、結晶質二酸化チタンコア、及び前記結晶質二酸化チタンコアを内包している非晶質二酸化チタンシェルを含有しており、
前記黒色二酸化チタンは、可視スペクトル内の電磁放射線に対する15%以下の反射率、及び近赤外電磁放射線及びLiDAR電磁放射線に対する10%以上の反射率を有しており、
前記LiDAR反射暗色塗料は、CIELAB色空間における明度が40以下である、塗料。
・・・
【請求項19】
LiDAR反射暗色塗料でコートされているボディパネルを有しており、
前記LiDAR反射暗色塗料は、
塗料バインダ、及び
黒色二酸化チタン
を含有しており、
前記黒色二酸化チタンは、
結晶質二酸化チタンコア、及び前記結晶質二酸化チタンコアを内包している非晶質二酸化チタンシェル
を含有しており、
前記黒色二酸化チタンは、可視スペクトルにおける電磁放射線に対する15%以下の反射率、及び近赤外電磁放射線及びLiDAR電磁放射線に対する10%以上の反射率を有しており、
前記LiDAR反射暗色塗料は、CIELAB色空間における明度が40以下である、
乗物。」
「【技術分野】
【0001】
本明細書は、概して、黒色二酸化チタン(TiO2)粒子に関し、より具体的には、近赤外電磁放射線を反射する黒色TiO2粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
波長905ナノメートルのパルスレーザ電磁放射線を用いたLiDARシステムが提案されており、自動運転乗物の障害物検出及び回避システムのために試験されてきた。しかしながら、暗色の車両を提供するために自動車塗料に使用される暗色(例えば、黒色)の顔料は、可視電磁放射線を吸収して暗色を提供するだけでなく、LiDAR電磁放射線を含む905ナノメートルの波長を有する近赤外電磁放射線も吸収する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、可視スペクトル内の電磁放射線を吸収するが、約905ナノメートルの波長を有する近赤外電磁放射線を反射する、代替の暗色の顔料が必要とされている。」
「【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書に記載される1つ以上の実施形態によれば、黒色二酸化チタンは、結晶質二酸化チタンコア、及び結晶質二酸化チタンコアを内包する非晶質二酸化チタンシェルを含有しており、黒色二酸化チタンは、可視スペクトルにおける電磁放射線に対する15%以下の反射率、及び近赤外電磁放射線及びLiDAR電磁放射線に対する10%以上の反射率を有している。したがって、本明細書に開示され記載されたLiDAR反射黒色TiO2粒子は、暗色を示し、かつ850nm及び1550nm、並びにそれらの間の波長を有するLiDARを含む近赤外電磁波を反射する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示され記載された黒色TiO2粒子は、塗料系に含有されて、LiDAR反射暗色塗料を形成することができ、これは、例えば乗物の一部分等の物体に塗布することができ、それによって、LiDARシステムがLiDAR反射暗色塗料でコートされた物体を検出することができる。
【0028】
本明細書で用いる「近赤外電磁放射線」という用語は、750nm及び950nm、並びにそれらの間の波長の電磁放射線を指し、LiDARは、905nm及び1550nm、並びにそれらの間の波長の電磁放射線を指す。
【0029】
本明細書で使用される「可視スペクトル」という用語は、350nm及び750nm、並びにそれらの間の波長を有する電磁放射線を指す。」
【0030】
LiDAR反射暗色塗料を表面に配置して、LiDAR反射暗色表面を提供してもよい。非限定的な例は、乗物ドアパネル及び乗物クォータパネル等の乗物ボディパネルの表面を含む。LiDAR反射黒色TiO2粒子の利用は、暗色の乗物をLiDARシステムで検出することを可能にする。LiDAR反射黒色TiO2の様々な実施形態及びその使用方法を、添付の図面を具体的に参照して本明細書で更に詳細に説明する。」
「【0058】
一つの実施形態において、実施形態に係る黒色TiO2は、3.0以上:1.0~4.5以下:1.0であるTiO2対NaBH4の比率、250℃以上300℃以下の温度、1時間以上14時間以下の継続時間、かつ常圧で、白色TiO2をNaBH4に暴露することによって形成される。
【0059】
ここで図4を参照すると、本明細書に開示され記載された実施形態に係る、複数の黒色TiO2粒子10を有するLiDAR反射暗色層12(例えば、塗料層)の実施形態が示されている。具体的には、LiDAR反射暗色層12は、バインダ150(例えば、塗料バインダ)中に配置された、本明細書に開示され記載された実施形態に係る複数の黒色TiO2粒子10を含む。非限定的なバインダの例は、エナメル塗料バインダ、ウレタン塗料バインダ、及びエナメル-ウレタン混合塗料バインダを含む。LiDAR反射暗色層12は、LiDAR反射暗色層12を見ている観察者に暗色として見え、かつ例えば905nm又は1550nmの波長を有する近赤外電磁放射線及びLiDAR電磁放射線を反射する。すなわち、太陽光に曝され、観察者によって観察されるLiDAR反射暗色層12は、CIELAB色空間における明度が20以下の色を有し、905nm又は1550nmの波長を有する近赤外電磁放射線及びLiDAR電磁放射線の平均20%以上を反射する。実施形態において、太陽光に暴露されたLiDAR反射暗色層12は、可視スペクトルにおける電磁放射線の平均10%未満を反射し、CIELAB色空間における明度が15以下である。そのような実施形態において、太陽光に曝露されたLiDAR反射暗色層12は、CIELAB色空間において10以下の明度を有していることができる。本明細書で使用される、「平均」という用語は、本明細書に記載の暗色顔料又はLiDAR反射暗色層について、特定の反射スペクトルに沿って等しく離れた10個の反射率値の平均を指す。また、本明細書で使用される、「より多く反射する」及び「より少なく反射する」という用語は、別段の記載がない限り、それぞれ「平均でより多く反射する」及び「平均でより少なく反射する」ということを指す。
【0060】
図5及び図6を参照すると、LiDAR反射暗色塗料で塗装された車両「V」の実施形態が示されている。特に、図5は、LiDAR反射暗色塗料50でコーティングされたサイドパネル「S」を有する乗物Vを示し、図6は、LiDAR反射暗色塗料50を有するサイドパネルSのうちの1つの断面を示す。LiDAR反射暗色塗料50は、表面保護及び所望の色を提供する複数の層を含むことができる。例えば、LiDAR反射暗色塗料50は、リン酸塩層122、電着層124、プライマー層126、カラー層112又はカラー層114(ベースコート又はベースコート層としても知られる)及びクリアコート層128を含むことができる。リン酸塩層の非限定的な例は、リン酸マンガン層、リン酸鉄層、リン酸亜鉛層、及びそれらの併用を含む。電着層の非限定的な例は、陽極電着層及び陰極電着層を含む。プライマー層の非限定的な例は、エポキシプライマー層及びウレタンプライマー層を含む。クリアコート層の非限定的な例は、ウレタンクリアコート層及びアクリルラッカークリアコート層を含む。LiDAR反射暗色塗料50は、LiDAR反射暗色塗料を見ている観察者に暗色として見え、905nm又は1550nmの波長の近赤外電磁放射線及びLiDAR電磁放射線を反射することが理解されるべきである。すなわち、太陽光に曝され、観察者によって観察されたLiDAR反射暗色塗料は、CIELAB色空間における20以下の明度の色を有し、905nm又は1550nmの波長を有する近赤外電磁放射線又はLiDAR電磁放射線の40%超を反射する。いくつかの実施形態において、太陽光に暴露されたLiDAR反射暗色塗料50は、可視スペクトル中の電磁放射線の平均10%未満を反射し、CIELAB色空間における明度が15以下である。そのような実施形態において、太陽光に暴露されたLiDAR反射暗色塗料50は、CIELAB色空間における10以下の明度を有することができる。
【0061】
上述のように、本明細書に開示され、記載された実施形態に係るLiDAR反射黒色TiO2粒子は、905nm又は1550nm等の近赤外電磁放射線又はLiDAR電磁放射線を使用するLiDARシステムによって検出することができる、LiDAR反射暗色物品を提供するための塗料に使用することができる。すなわち、自動車、オートバイ、自転車等の、LiDARシステムによって検出されることが望まれる物品は、本明細書に記載されるLiDAR反射暗色塗料で塗装されてもよく、それによって、暗色の物品に所望のアーク色を提供し、更に、905nm又は1550nmの波長等の近赤外電磁放射線を使用するLiDARシステムによって検出可能である。」
「【実施例】
【0062】
以下の実施例により、実施形態を更に明確にする。
【0063】
実施例1
3つの試料を、以下のように調製した。試料1は、市販の白色のTiO2であった。試料2は、TiO2対NaBH4を4.0:1.0として、市販の白色のTiO2を、NaBH4に曝露することにより調製した。TiO2を、NaBH4に375℃、及び大気圧下で1時間曝露した。試料3は、市販のTiO2を、250℃、及び20バールの圧力で水素雰囲気に5日間暴露して調製した。
【0064】
図7Aは、結晶質TiO2である白色TiO2粒子を示す試料1の走査型電子顕微鏡(SEM)像である。図7Aの差し込み図は、近赤外電磁放射線に対する試料1の反射率である。画像から分かるように、コアシェル構造は形成されておらず、試料1は、近赤外電磁放射線の良好な反射体である。図8Aは、試料1が非常に明るい白色を有することを示す。
【0065】
図7Bは、試料2のSEM像であり、TiO2粒子が完全に非晶質化していることを示している。図7Bの差し込み図は、近赤外電磁放射線に対する試料2の反射率である。画像から分かるように、コアシェル構造は形成されておらず、試料2は、近赤外電磁放射線を反射しない。図8Bは、試料2が非常に黒色を有することを示す。
【0066】
図7Cは、試料3のSEM像であり、TiO2粒子が、結晶質TiO2のコアを内包している無秩序なシェルを形成したことを示す。図7Cの挿入図は、近赤外電磁放射線に対する試料3の反射率である。試料3は、近赤外電磁放射線の良好な反射体である。図8Bは、サンプル3が、灰色がかった色を有することを示す。
【0067】
実施例2
例1の市販の白いTiO2を、TiO2対NaBH4を4.0:1.0として、常圧、275℃の温度で、12時間にわたってNaBH4に曝露することにより、試料を調製した。図9に示すように、この試料は、わずかに青色の良好な黒色を有していた。図10は、近赤外反射率を検出することができるカメラを用いた写真であり、試料が近赤外電磁放射線を反射するのに良好であることを示す。」
「【図4】
[図:0001419307000017.jpg]
」
「【図9】
[図:0001419307000018.jpg]
」
「【図10】
[図:0001419307000019.jpg]
」
6 甲8の記載
甲8には、次の記載がある。
(1)「
[図:0001419307000020.jpg]
」
(2)「
[図:0001419307000021.jpg]
」
(3)「
[図:0001419307000022.jpg]
」
(4)「
[図:0001419307000023.jpg]
」
7 甲9の記載
甲9には、次の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらのアプリではさらなる走行安全対策を提供するが、車道その他の道路をより安全にするための取り組みはほとんどなされていない。オランダは、「スマートハイウェイ」のコンセプトを発表しており、このコンセプトは、ヨーロッパの道路安全性を改善するための発光車線ラインを特色とする。別の発明、高摩擦表面処理は、降雨時の舗道を滑りにくくして安全性を向上させる。中央線のランブルストリップは運転者に車線はみ出しを警告する。同様のイノベーションを通じて、道路設計は最終的にはそれに値する注目を集めている。多くの都市イノベーション企業が、よりスマートな移動性に向けて努力を傾注している。しかし、これまで、走行アプリ、道路工学、環境的に持続可能な道路設計その他の構想が提供したのは、走行安全性の最小限の改善にすぎない。この必然的な将来により、自動車と歩行者の両方の人々の相互利益のために自動車エコシステムの変化をインテリジェントに活用する機会が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、屋内環境と屋外環境の両方において車道、歩道および他の舗装面上の選択された塗装を感知することによって、車両および歩行者がその位置を決定するシステムおよび方法を提供する。本発明は、コネクテッドビークルおよび歩行者がどんな環境においてもその位置を正確に決定するための費用効果的な技術を提供する。例えば、本発明のシステムは、ジオロケーションを確実かつ適時に決定するために、車両に搭載されたセンサの下の材料または視覚障害者が使用する「白」杖の下の材料を認識する。本発明の材料およびシステムは、車道塗料/標示(透明、着色、不透明などの)に組み込まれ、重要な位置(例えば、停止線、マイルストーンなど)を標示するために路面に位置する。加えて、車両は、標準の公道塗料/標示および運転者情報をサポートし、アプリケーションを制御する特殊なメッセージ内容を有する標識を認識する。本発明の材料は、可視波長もしくは赤外波長に(または可視波長もしくは赤外波長に)変換しながら光を吸収する結晶希土類蛍光体を組み込んでいる。この変換された光はその場合、材料を認識するために車両に搭載されたセンサによって読み取られる。センサは、変換された光を、位置および運動特性を含む車両の動作特性を決定し、運動および速度(加速、減速、制動、停止など)および位置(右左折、前進、後退など)を含む、車両の運転動作を提供するのに使用される処理信号に変換する。インテリジェントシステムは、身体に障害のある歩行者(視覚障害、認知障害、その他の身体的障害など)に対して、歩道、交差点、バス停、トイレなどを規定する正確なジオロケーションを可能にし、状況認識の改善をもたらす。
【0008】
本発明は、「インテリジェント塗料」を利用して、歩行者および自動車運転者を等しく識別し、誘導し、保護する「インテリジェントネットワーク」を確立する。本発明は、交通安全および交通効率を改善するマルチモード路車協調通信に関連したインテリジェント交通を提供する。同様に、本発明は、航空機、バス、トラム、芝刈り機などの飛行場車両に対する正確なリアルタイムの飛行場交通管制を提供する飛行場標示を含む。本発明のシステムはまた、作業場の自動化および安全のための倉庫交通制御も提供する。同様に、本発明のシステムおよび方法は、空中および陸上のドローンおよび他のロボット工学のための誘導も提供する。
【0009】
運転者情報および車両制御を提供するアプリケーションをサポートする車道と車両システムとの間の協調の価値は、高まり続けている。本発明は、塗料もしくは他の塗装と混合され、または路面もしくは他の標示に貼付される、他のプリフォーム交通標示に存在する結晶希土類蛍光体を組み込み、これらは、車両システムが、車両の走行を特徴付けるデータ(例えば、速度、方向など)、車道を特徴付けるデータ(例えば、道路公道上のレーンディバイダ、右左折車線、路肩など)データを受け取るように、車両に搭載されたセンサによって認識される。するとシステムは受け取られたデータを使用して車両を増強し、または自律的に操作する。他の用途には、交差点における停止線の位置の識別や、車両のGPSまたは他の位置検出システムによって提供される位置データなどの他の位置データを確認および/または訂正するための車道上の特定の位置の高信頼識別が含まれる。
【0010】
本発明の協調誘導システムは、樹脂と希土類結晶蛍光体とを含むインテリジェント塗料塗装組成物を含む。本発明はまた、熱可塑性樹脂と希土類結晶蛍光体とを含む舗道標示材料も含むことができる。本発明の協調誘導システムはまた、少なくとも1つの結晶希土類蛍光体を有するインテリジェント塗料組成物で塗装された公道面も含む。公道面は、車両が走行する車道、車両が走行する飛行場とすることができる。公道面はまた、速度制限標識、停止標識、優先標識、公道名称標識などの公道標識とすることもできる。
【0011】
インテリジェント塗料は光を吸収し、吸収された光を電磁エネルギーに変換する。電磁エネルギーは、可視光スペクトル、赤外スペクトル、および無線周波数スペクトルのエネルギーとすることができる。」
「[実施例2:車両位置決定および誘導]
【0065】
本システムは、上記の実施例1で使用したシステムと同様に物理的に構成した。本システムでは、標示から光情報を読み取るために結晶希土類蛍光体のアップコンバージョン特性を利用した。イットリウムガリウムガーネット(YGG:Cr)およびLa2SO2:Yb,Ndと混合したY2O3:Er,Ybを、透明フィルムバインダを用いて混合し、様々な位置で道路上に敷設した。検出器は、安価なテレコムレーザで結晶希土類蛍光体を励起し、その結果をシリコン検出器で読み取るように設計した。予想される検出範囲内の周波数を通過させ、他の周波数の信号と識別するために、バンド・パス・フィルタをさらに使用することができる。
【0066】
本システムでは、ピーク波長1565nm、0.35W CW、シングルモード、TO-9トールキャップ、レンズコリメート<10mradおよび800nm高出力LEDの円形アレイを有する2つの異なる励起源(Seminex Corporation部品番号TO9-105114)と、センサとしてのシリコン検出器(Laser Components Corporation部品番号SRS00、シリコン・アバランシェ・フォトダイオード波長範囲<1100nm、90Snmでの感度50A/W)とを試験した。
【0067】
レーザで励起されたインテリジェント塗料中の結晶希土類蛍光体から1.55赤外光が発せられ、この光を、シリコン検出器が結晶希土類蛍光体の立上り時間および減衰時間を有用な情報に変換する、近赤外領域にアップコンバートした。読取り値を毎秒200,000回サンプリングした。車両が50mphで移動している間に、薄い3インチの柄(stipes)を読み取った。この特定の事例では、シリコン検出器(センサ)の吸収が約1100nmでカットオフされるため、レーザのフィルタリングは不要であった。センサが感知する唯一のパルスIR光は、結晶希土類蛍光体から来るIR光だけである。自然界には特異なIRパルスは発生しない。本システムのこれらの能力は、先行技術のシステムでは類を見ない精度と再現性を提供する。これらの結晶希土類蛍光体は、単に「光る」だけの材料とは異なり、線、車両、停止標識、およびナビゲーションを決定するのに使用される他の重要な標示を区別できる特異な情報ビットを提供する。
【0068】
さらに、希土類結晶希土類蛍光体から情報を推定することにより、車両は低コストのセンサで情報を受け取ることができる。加えて、希土類結晶希土類蛍光体は、現在のLIDAR装置と共に使用するもできる。市販のLIDARシステムは、905nmレーザおよび1.55レーザ(Veladyne HDL-64E)を使用して環境をスキャンする。La2SO2:YbNdおよびY2O3:ErYB結晶希土類蛍光体は、上述したように、LIDAR波長で励起され、検出できる変換特性を有する。YGG:ZnCr材料は、可視光を赤外スペクトルに変換し、一定時間にわたって「残光」する。フィルタシステムを備えた市販のCCDカメラは、この光を通常の白色塗料と区別することができる。本発明のインテリジェント塗料は、IR領域の白色塗料からの発光を通常塗料と区別するために増強し、他のシステムでは不可能な安全対策を提供する。
[実施例3:インテリジェント車道標示の例]
【0069】
本発明のインテリジェント塗料は、周囲環境に関連した膨大な数の情報をもたらす固有の識別可能な光学的サインを有する。インテリジェント塗料からの情報は、車両およびユーザに環境および状況の認識を提供する。
【0070】
例えば、本発明のインテリジェント塗料は、車両および運転者に正確な状況環境を通知する様々な環境フィードバック信号を提供する。例えば、図7に示すように、インテリジェント塗料は、停止標識713、優先標識714、速度制限標識715、およびバス停止標識716を含む、二重黄色線710、白破線711、白車線指定線712、交差点標示773、および標識などの現在の車道標示と共に使用するための光学的識別を提供する。車載センサ(例えば、前方視センサ)は、これらの車道標示および標識を検出することができる。インテリジェント塗料は、歩行者横断歩道771を識別するために、速度、制動力、および他の衝突回避メトリックを確立するために車両717、718にGPS較正および速度測定を提供する透明な線772として施すことができる。赤外線を放射するインテリジェント材料を含む可視または透明の熱可塑性標示を、GPSデバイスによって空間分解能および測位を改善するために使用される正確な地球測位座標を提供するために、様々な路面および歩道面に別々にまたは組み合わせて施すこともできる。インテリジェント材料を有する可視または透明の標示は、バス停749、縁石線746、接近する交差点の角747などの位置を指定する歩道および歩行者用通路の路面に施すこともでき、北東、南東、南西、北西を含むジオロケーション748を指示することもできる。加えて、インテリジェント塗料は、逆光や、直射日光、霧、雪など、標準的なコンピュータ・ビジョン・システムに影響を与えるその他の環境条件における車道および車線の可視性を高めるために特定の標示775に施される。本システムでは、ネットワーク799を介してすべてのユーザの間で車道および車両情報を共有する。」
8 甲10の記載
甲10には、次の記載がある。
「【0020】
II.例示的なシステムおよびデバイス
図1Aは、例示的な実施形態による、アパーチャを含むシステム100の説明図である。図示されるように、システム100は、光検出器のアレイ110(検出器112および114によって例示される)、不透明材料120内に画定されたアパーチャ122、およびレンズ130を含む。システム100は、シーン内のオブジェクト198によって反射または散乱された光102を測定し得る。いくつかの場合には、光102はまた、バックグラウンド光源(図示せず)からレンズ130に向かって直接伝播する光を含み得る。いくつかの例では、システム100は、光検出および測距(LIDAR)デバイスに含まれ得る。例えば、LIDARデバイスは、自律車両のナビゲーションに使用されてもよい。さらに、いくつかの実施形態では、システム100またはシステム100の部分は、レンズ130を通す以外に外光にさらされない領域内に包含され得る。これにより、アレイ110の検出器に到達する周囲光の量(測定に影響を与える可能性がある)を低減し得る。
・・・
【0031】
オブジェクト198は、システム100を取り巻くシーン内に配置された任意のオブジェクトであり得る。システム100がLIDARデバイスに含まれる実装形態では、オブジェクト198は、光(光の一部分は光102として戻り得る)を放出するLIDAR送光器によって照明され得る。LIDARデバイスが自律車両でナビゲーションに使用される例示的な実施形態では、オブジェクト198は、とりわけ、歩行者、他の車両、障害物(例えば、樹木、がれきなど)、または道路標識であり得るか、またはこれらを含み得る。」
「【図1】
[図:0001419307000024.jpg]
」
第6 当審の判断
1 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由(甲1を主たる引用例とした進歩性欠如)について
(1)甲1号証に記載された発明
甲1の段落【0041】には、チタンCR97(石原チタン工業製)68重量部、水道水29重量部、分散剤としてSMA-1440H(エルファトケム社製)3重量部、消泡剤としてSN-777(サンノプコ社製)1重量部を、分散機(SGミル)で粒度5μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得ること、フッ素樹脂エマルションとしてゼッフルSE310(ダイキン工業社製)100重量部、上記で得た顔料ペースト40重量部、アジピン酸ジエチル7.5重量部、プロピレングリコール7.5重量部を加えて、白色塗料を得ることが記載されている。
また、同段落【0040】には、Fastogen Super Black MX(大日本インキ化学工業社製)39重量部、水道水47重量部、分散剤としてSMA-1440H(エルファトケム社製)を13重量部、消泡剤としてSN-777(サンノプコ社製)の1重量部を、分散機(SGミル)で粒度5μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得ること、フッ素樹脂エマルションとしてゼッフルSE310(ダイキン工業社製)100重量部、上記で得た顔料分散ペースト5重量部、アジピン酸ジエチル7.5重量部、プロピレングリコール7.5重量部を加えて、黒色塗料を得ることが記載されている。
さらに、同段落【0037】には、シコパールイエローL-1110(BASF社製)72重量部、水道水24重量部、湿潤剤として10%ヨネリン(米山化学社製)36重量部、分散剤としてBYK-191(ビッグケミー・ジャパン社製)3.6重量部を、分散機(SGミル)で粒度5μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得ること、フッ素樹脂エマルションとしてゼッフルSE310(ダイキン工業社製)100重量部、上記で得た顔料分散ペースト13重量部、アジピン酸ジエチル7.5重量部、プロピレングリコール7.5重量部を加えて、黄色塗料を得ることが記載されている。
加えて、同段落【0036】には、ルビクロンレッド400RG(大日本インキ化学工業社製)35重量部、水道水20重量部、湿潤剤として10%ヨネリン(米山化学社製)52.5重量部、分散剤としてBYK-191(ビッグケミー・ジャパン社製)5.25重量部を、分散機(SGミル)で粒度5μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得ること、フッ素樹脂エマルションとしてゼッフルSE310(ダイキン工業社製)100重量部、上記で得た顔料分散ペースト25重量部、アジピン酸ジエチル7.5重量部、プロピレングリコール7.5重量部を加えて、赤色塗料を得ることが記載されている。
そして、同段落【0042】~【0043】、表1には、上記塗料の780~2100nmの波長域における日射反射率について、白色塗料78%、黒色塗料40%、黄色塗料74%、赤色塗料49%であることが記載され、同段落【0045】には、上記塗料を混合したグレー系遮熱性カラー塗料1として、白色塗料100重量部、黒色塗料50重量部、黄色塗料16重量部、赤色塗料3重量部の割合で混合したものが記載され、同段落【0048】には、上記塗料1をSPCダル鋼板基材の上に塗布して、塗膜を作製することが記載されている。
以上のことから、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲1発明)
「白色塗料100重量部、黒色塗料50重量部、黄色塗料16重量部、赤色塗料3重量部の割合で混合されたグレー色系遮熱性カラー塗料であって、
白色塗料が、チタンCR97(石原チタン工業製)68重量部、水道水29重量部、分散剤3重量部、消泡剤1重量部からなる顔料分散ペースト40重量部と、フッ素樹脂エマルション100重量部と、アジピン酸ジエチル7.5重量部と、プロピレングリコール7.5重量部とからなる780~2100nmの波長域における日射反射率が78%の塗料であり、
黒色塗料が、Fastogen Super Black MX(大日本インキ化学工業社製)39重量部、水道水47重量部、分散剤13重量部、消泡剤1重量部からなる顔料分散ペースト5重量部と、フッ素樹脂エマルション100重量部と、アジピン酸ジエチル7.5重量部と、プロピレングリコール7.5重量部とからなる780~2100nmの波長域における日射反射率が40%の塗料であり、
黄色塗料が、シコパールイエローL-1110(BASF社製)72重量部、水道水24重量部、湿潤剤36重量部、分散剤3.6重量部からなる顔料分散ペースト13重量部と、フッ素樹脂エマルション100重量部と、アジピン酸ジエチル7.5重量部と、プロピレングリコール7.5重量部とからなる780~2100nmの波長域における日射反射率が74%の塗料であり、
赤色塗料が、ルビクロンレッド400RG(大日本インキ化学工業社製)35重量部、水道水20重量部、湿潤剤52.5重量部、分散剤5.25重量部からなる顔料分散ペースト25重量部と、フッ素樹脂エマルション100重量部と、アジピン酸ジエチル7.5重量部と、プロピレングリコール7.5重量部とからなる780~2100nmの波長域における日射反射率が49%の塗料である、
グレー色系遮熱性カラー塗料。」
(2)対比・判断
ア 本件発明1
(ア)対比
本件発明1と甲1発明を対比すると、甲1発明の「フッ素樹脂エマルション」の「フッ素樹脂」は、本件発明1の「塗膜形成樹脂(A)」に相当し、甲1発明の「チタンCR97(石原チタン工業社製)」、「Fastogen Super Black MX(大日本インキ化学工業社製)」、「シコパールイエローL-1110(BASF社製)」、「ルビクロンレッド400RG(大日本インキ化学工業社製)」は、本件発明1の「着色顔料(B)」及び「近赤外線を反射しうる顔料(B1)」に相当し、甲1発明の「グレー色系遮熱性カラー塗料」は、本件発明1の「塗料組成物」に相当する。
また、甲1発明の「チタンCR97(石原チタン工業製)」は、本件明細書の段落【0072】、【0158】に記載された「酸化チタンであるTIPAQUE CR97」(石原産業社製)、「(B1-1)TIPAQUE CR-97」と同一のものと認められ、本件明細書の表1には、(B1-1)TIPAQUE CR-97の800~2,500nmの波長域の反射率(近赤外線反射率)が75%であることが記載されているから、本件発明1の「近赤外線反射率が60%以上である白色系顔料」に相当する。
さらに、甲1発明の「シコパールイエローL-1110(BASF社製)」は、本件明細書の表1に記載された、(B31-1)シコパールイエロー L-1110と同一のものと認められ、表1には、その800~2,500nmの波長域の反射率(近赤外線反射率)が55%であることが記載されているから、本件発明1の「近赤外線反射率が50%以上である有彩色顔料」に相当する。
加えて、甲1発明の「チタンCR97(石原チタン工業社製)」は、酸化チタンであるから、無機顔料であり、「シコパールイエローL-1110(BASF社製)」は、本件明細書の段落【0066】の記載から無機顔料と認められる。
また、甲1発明の「Fastogen Super Black MX(大日本インキ化学工業社製)」及び「ルビクロンレッド400RG(大日本インキ化学工業社製)」は、本件明細書の段落【0055】、【0082】の記載から、有機顔料と認められる。
そして、甲1発明の白色塗料、黒色塗料、黄色塗料、赤色塗料に含まれる顔料濃度を計算すると、白色塗料:17.37重量%、黒色塗料:1.63重量%、黄色塗料:5.39重量%、赤色塗料5.54:重量%であり、これらに基づいて、甲1発明の各塗料を混合したグレー色系カラー塗料の各顔料の重量比を算出すると、「Fastogen Super Black MX(大日本インキ化学工業社製)」(有機黒色系顔料):0.815重量部、「ルビクロンレッド400RG(大日本インキ化学工業社製)」(有機赤色系顔料):0.166重量部、「チタンCR97(石原チタン工業社製)」(無機白色系顔料):17.37重量部、「シコパールイエローL-1110(BASF社製)」(無機黄色系顔料):0.862重量部となり、顔料の総量に対して、有機顔料の含有量は、5.11重量%となるから、甲1発明の有機顔料の含有量は、本件発明1の「有機顔料の含有率は、前記顔料(B1)の総量中、3質量%以上」の数値範囲を充足する。
してみると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「塗膜形成樹脂(A)及び着色顔料(B)を含む近赤外光を用いた塗料組成物であって、前記着色顔料(B)は、近赤外線を反射しうる顔料(B1)を含み、800~2,500nmの波長域における反射率を近赤外線反射率としたとき、前記顔料(B1)は、近赤外線反射率が60%以上である白色系顔料、近赤外線反射率が50%以上である有彩色顔料、及び、近赤外線反射率が30%以上である黒色系顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものであって、且つ、近赤外線反射率が60%以上である白色系顔料及び近赤外線反射率が50%以上である有彩色顔料から選ばれる1種を含み、前記顔料(B1)は、有機顔料を含み、該有機顔料の含有率は、前記顔料(B1)の総量中、3質量%以上である、塗料組成物。」
<相違点1>
塗料組成物の用途について、本件発明1においては、走行路、道路構造物、鉄道構造物、防護柵、各種築構造物の内部設備、各建築構造物の内装、歩行者着用物及び電柱から選ばれる1種又はそれ以上に用いられる、近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用であることが特定されているのに対し、甲1発明においては遮熱性(遮熱の用途に用いる)カラー塗料である点。
(イ)判断
甲1発明のグレー色系遮熱性カラー塗料は、780~2100nmの波長域の日射反射率が高い各色の塗料、すなわち、反射率78%の白色塗料と、反射率40%の黒色塗料と、反射率74%の黄色塗料と、反射率49%の赤色塗料とが混合されたものであり、甲1の段落【0053】、表2には、その遮熱性が高いことが記載されている。
そして、甲6-2の「高日射反射率塗料とは、太陽光に含まれる近赤外領域の光を高いレベルで反射することにより、塗膜ならびに被塗物の温度上昇を抑えることができる機能性塗料の一つです。一般的には遮熱塗料と呼ばれることもあります。」との記載(前記第5の摘記4(1)を参照)、及び、「可視光線領域の反射スペクトルは、その塗膜の色相により定まります。上の例の場合一般塗料、高日射反射率塗料ともに可視光線領域では同様の反射スペクトルを示しており、同じ色相であることがわかります。それに対して、近赤外線領域では高日射反射率塗料が圧倒的に高い反射率を示しています。この近赤外線領域での反射率の差が、塗膜としての日射反射率※の差となり、遮熱効果を生み出して表面温度の上昇を抑制することが可能になります。」(前記第5の摘記4(2)を参照)との記載を参酌すると、遮熱性の塗料とは、近赤外領域の光を高いレベルで反射するようにして、遮熱性を向上した塗料であると認められる。
そうすると、甲1発明のグレー色系遮熱性カラー塗料は、近赤外線の反射率が高い塗料であると当業者であれば理解できる。
また、甲1の段落【0001】には、甲1に記載の塗料について、「工場、住宅等の建築物の屋根や外壁、コンテナ、冷凍車等の運搬車両の屋根や外板、船舶、プラント、物置、畜舎等の屋根や外壁等に適用することにより、日光に起因する内部温度の上昇を抑制することができ」ることが記載されている。
そうすると、甲1発明のグレー系遮熱性カラー塗料は、日光に起因する内部温度の上昇を抑制するために、外壁に用いられるものであることが理解できる。
ここで、甲1発明のグレー系遮熱性カラー塗料を、「走行路、道路構造物、鉄道構造物、防護柵、各種築構造物の内部設備、各建築構造物の内装、歩行者着用物及び電柱から選ばれる1種又はそれ以上に用いられる、近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用」とすることが容易想到といえるか否かについて検討する。
甲4には、「アクサルタ、世界のボデーカラーの傾向を発表」、「自動運転車や環境規制を見据えた塗装技術も披露」という見出しが付された記事において、「黒色に関しては赤外線やレーダー波を吸収するため、レーザースキャナーによって車両周辺を検知するLiDARの作動を妨げることが危惧されているが、日射反射率が向上すればそうした危険性も回避できる」と記載されている(前記第5の摘記2を参照)。
また、甲5には、LiDARにより、車両を検知する技術に関して、ボディカラーがソリッドの白の車両は、正面でも斜め前方にいてもLiDARの光を検知しやすいが、黒の車両は光を吸収するため反射光が弱くなり、LiDARが検知しにくい傾向にあること、LiDARが用いる900~1600nmの範囲では、白は70%以上の反射率であるが、黒は10%未満の反射率に留まること、LiDARが全世界に普及しても車両のボディカラーの選択範囲を狭めないためにLiDAR反射塗料の開発が行われており、LiDARが発する光の反射率の改善についての取り組みが行われていることが記載されている(前記第5の摘記3(1)~(4)を参照)。
さらに、甲7の段落【0002】~【0003】には、波長905ナノメートルのパルスレーザ電磁放射線を用いたLiDARシステムにおいて、暗色の車両を提供するために自動車塗料に使用される暗色(例えば、黒色)の顔料は、可視電磁放射線を吸収して暗色を提供するだけでなく、LiDAR電磁放射線を含む905ナノメートルの波長を有する近赤外電磁放射線も吸収してしまうため、可視スペクトル内の電磁放射線を吸収するが、約905ナノメートルの波長を有する近赤外電磁放射線を反射する、代替の暗色の顔料が必要とされていることが記載されている。
そうすると、甲4、甲5及び甲7には、LiDARによる車両の検知において、黒などの暗色系の顔料を含む暗色系の塗料が車体に用いられる場合、LiDARで用いる900~1600nmの範囲の光の反射率、すなわち、近赤外線の反射率が低くなってしまうため、その波長域の反射率を向上した暗色系の顔料や暗色系の車体用の塗料又は日射反射率が向上した黒色の車体用の塗料を提供することが課題であることが記載されているといえる。
しかしながら、甲4、甲5及び甲7には、走行路や道路構造物等をLiDARにより検知するために、走行路や道路構造物等に対して遮熱性塗料を用いることについては記載も示唆もされていない。
また、甲8には、自動車の安全運転を可能にするセンシング技術として、LiDAR技術が記載されており、その検出対象物として、横断歩道、停止線、交通標識、車両、歩行者等が例示されている(前記第5の摘記6(1)~(4)を参照)。
さらに、甲9の段落【0065】~【0068】には、LIDAR波長で励起されインテリジェント塗料中の結晶希土類蛍光体を検知して、車両位置決定および誘導を行うシステムが記載されており、同段落【0069】~【0070】には、そのようなインテリジェント塗料は、歩行者横断歩道を識別するために、透明な線として施すことができること等が例示されている。
加えて、甲10の段落【0020】、【0031】には、LIDARデバイスが自律車両でナビゲーションに使用される形態において、LIDAR送光器によって照明され得るオブジェクトには、歩行者、他の車両、道路標識等が含まれ得ることが記載されている。
そうすると、甲8~甲10の記載から、自動運転のためのLiDARによる検出対象物には、走行路や道路構造物等が含まれることが理解できる。
しかしながら、甲8~甲10には、LiDARにより走行路や道路構造物等を検知するために、遮熱性塗料を走行路や道路構造物等に対して用いることについては記載も示唆もされていない。
してみれば、甲1発明のグレー色系遮熱性カラー塗料は、近赤外線の反射率の高い塗料であることは認められたとしても、遮熱性塗料が、日光に起因する内部温度の上昇を抑制するために、外壁に用いられるものであることを考慮すれば、甲4、甲5、甲7~甲10において、LiDARの検知のために、走行路や道路構造物等に遮熱性塗料を用いることが記載も示唆もされていない以上、遮熱性塗料が通常用いられる対象ではない走行路や道路構造物等に、甲1発明の遮熱性カラー塗料を用いる動機付けはない。
よって、甲1発明、及び、甲4、甲5、甲6-2~甲10に記載された事項に基づいて、相違点1の構成を導くことは、当業者といえども容易に想到し得たことではない。
(ウ)申立人の主張について
申立人は令和6年8月6日付けの意見書において、甲8~甲10に記載されているように、LiDARシステムの検出対象物として、「走行路」や「道路構造物」など、様々なものが知られていることからすれば、甲1発明の塗料を、LiDARシステムの検出対象物として公知のものに適用することは当業者には容易になし得ることである旨主張する。
しかしながら、甲1発明は、遮熱性カラー塗料であるところ、前記(イ)で検討したとおり、遮熱性塗料が、日光に起因する内部温度の上昇を抑制するために、外壁に用いられるものであることを考慮すれば、甲4、甲5、甲7~甲10において、LiDARの検知のために、走行路や道路構造物等に遮熱性塗料を用いることが記載も示唆もされていない以上、遮熱性塗料が通常用いられる対象ではない走行路や道路構造物等に、甲1発明の遮熱性カラー塗料を用いる動機付けはない。
よって、上記申立人の主張は採用できない。
(エ)本件発明1についてのまとめ
以上より、本件発明1は、甲1に記載された発明、及び、甲4、甲5、甲6-2~甲10に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2~4、9、11~16
本件発明2~4、9、11~16は、本件発明1を包含し、さらに特定事項を追加したものであるから、前記アで検討したのと同様の理由により、甲1に記載された発明、及び、甲4、甲5、甲6-2~甲10に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
ウ 本件発明10
本件発明10は、「800~2,500nmの波長域における近赤外線反射率が15%以上」である「塗膜」であるのに対して、本件発明1は「塗料組成物」である点を除けば、本件発明10は、本件発明1の発明特定事項を実質的に全て含んでいる。
そうすると、本件発明10は、甲1発明に対して、少なくとも、前記ア(ア)で示した「相違点」と同様の相違点を有しているから、前記ア(イ)で検討したのと同様の理由により、甲1に記載された発明、及び、甲4、甲5、甲6-2~甲10に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
(3)小括
以上のとおり、本件発明1~4、9~16は、甲1に記載された発明、及び、甲4、甲5、甲6-2~甲10に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
2 取消理由通知(決定の予告)に採用しなかった申立理由1、3~5について
(1)甲1を主たる引用例とした新規性欠如について(上記申立理由1に対応)
ア 本件発明1
前記1(2)ア(ア)で検討したとおり、甲1発明は、本件発明1に対して、「走行路、道路構造物、鉄道構造物、防護柵、各種築構造物の内部設備、各建築構造物の内装、歩行者着用物及び電柱から選ばれる1種又はそれ以上に用いられる、近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用」という用途の点で相違し、この点は実質的な相違点といえる。
そうすると、本件発明1は、甲1に記載された発明ではない。
イ 本件発明2~4、9~16
本件発明2~4、9、11~16は、本件発明1を包含し、さらに特定事項を追加したものであるから、前記アで検討したのと同様の理由から、甲1に記載された発明ではない。
また、本件発明10は、前記1(2)ウで検討したとおり、本件発明1の発明特定事項を実質的に全て含んでいるから、前記アで検討したのと同様の理由から、甲1に記載された発明ではない。
ウ 小括
以上のとおり、本件発明1~4、9~16は、甲1に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号の発明に該当せず、特許を受けることができないものではない。
(2)甲5を主たる引用例とした進歩性欠如について(上記申立理由3に対応)
ア 本件発明1
甲5は、LiDARで車両を検知するときの自動車のボディに用いる塗料についての文献であり、少なくとも、自動車のボディに用いること以外の用途である「走行路、道路構造物、鉄道構造物、防評柵、各種建築構造物の内部設備、各建築構造物の内装、歩行者着用物及び電柱から選ばれる1種又はそれ以上に用い」ることについては何ら言及されていない。
また、甲1、甲4、甲6-2~甲10にも、自動車のボディに用いる塗料を、走行路、道路構造物、鉄道構造物、防評柵、各種建築構造物の内部設備、各建築構造物の内装、歩行者着用物及び電柱から選ばれる1種又はそれ以上に用いることについての記載も示唆もない。
そうすると、甲1、甲4、甲5、甲6-2~甲10に接した当業者が、甲5に記載された塗料を「走行路、道路構造物、鉄道構造物、防評柵、各種建築構造物の内部設備、各建築構造物の内装、歩行者着用物及び電柱から選ばれる1種又はそれ以上に用い」ることを動機付けられるとはいえない。
よって、本件発明1は、甲5に記載された発明、及び、甲1、甲4、甲5、甲6-2~甲10に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2~4、9~16
本件発明2~4、9、11~16は、本件発明1を包含し、さらに特定事項を追加したものであるから、前記アで検討したのと同様の理由から、甲5に記載された発明、及び、甲1、甲4、甲5、甲6-2~甲10に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明10は、前記1(2)ウで検討したとおり、本件発明1の発明特定事項を実質的に全て含んでいるから、前記アで検討したのと同様の理由により、甲5に記載された発明、及び、甲1、甲4、甲5、甲6-2~甲10に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 小括
以上のとおり、本件発明1~4、9~16は、甲5に記載された発明、及び、甲1、甲4、甲5、甲6-2~甲10に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
(3)甲7を主たる引用例とした進歩性欠如について(上記申立理由4に対応)
ア 甲7に記載された発明
甲7の段落【0027】には、「本明細書に開示され記載された黒色TiO2粒子は、塗料系に含有されて、LiDAR反射暗色塗料を形成することができ、これは、例えば乗物の一部分等の物体に塗布することができ、それによって、LiDARシステムがLiDAR反射暗色塗料でコートされた物体を検出することができる。」と記載されている。
また、同段落【0059】には、「複数の黒色TiO2粒子10を有するLiDAR反射暗色層12(例えば、塗料層)」が記載され、「LiDAR反射暗色層12は、バインダ150(例えば、塗料バインダ)中に配置された本明細書に開示され記載された実施形態に係る複数の黒色TiO2粒子10を含む」こと、「LiDAR反射暗色層12は、CIELAB色空間における明度が20以下の色を有し、905nm又は1550nmの波長を有する近赤外電磁放射線及びLiDAR電磁放射線の平均20%以上を反射する」ことが記載されている。
さらに、同段落【0062】、【0063】、【0067】には、実施形態を更に明確にしたものである実施例2として、市販の白いTiO2を、TiO2対NaBH4を4.0:1.0として、常圧、275℃の温度で、12時間にわたってNaBH4に曝露することにより調製された、わずかに青色の良好な黒色を有する近赤外電磁放射線を反射するのに良好であるTiO2粒子が記載されている。
そして、上記LiDAR反射暗色層12は、「塗料」の層といえるから、甲7には、黒色TiO2粒子10と、バインダ150を含む、LiDAR反射暗色層を形成するLiDAR反射暗色塗料についても記載されているといえる。
以上のことから、甲7には、次の発明(以下「甲7発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲7発明)
「黒色TiO2粒子と、塗料バインダとを含み、
黒色TiO2粒子が、市販の白いTiO2を、TiO2対NaBH4を4.0:1.0として、常圧、275℃の温度で、12時間にわたってNaBH4に曝露することにより調製された、わずかに青色の良好な黒色を有する、近赤外電磁放射線を反射するのに良好であるTiO2粒子であり、
LiDAR反射暗色層は、CIELAB色空間における明度が20以下の色を有し、905nm又は1550nmの波長を有する近赤外電磁放射線及びLiDAR電磁放射線の平均20%以上を反射する、
LiDAR反射暗色層を形成するLiDAR反射暗色塗料。」
イ 対比・判断
(ア)本件発明1
(a)対比
本件発明1と甲7発明を対比すると、甲7の段落【0059】には、バインダとして、「エナメル塗料バインダ、ウレタン塗料バインダ、及びエナメル-ウレタン混合塗料バインダ」が例示されているから、甲7発明の「塗料バインダ」は、本件発明1の「塗膜形成樹脂(A)」に相当する。
また、甲1発明の「黒色TiO2粒子」は、黒色であり、近赤外電磁放射線を良好に反射しうるものであるから、本件発明1の「着色顔料(B)」、「近赤外線を反射しうる顔料(B1)」、「黒色系顔料」のいずれにも相当する。
さらに、甲7発明の「LiDAR反射暗色層を形成するLiDAR反射暗色塗料」は、本件発明1の「近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗料組成物」に相当する。
してみると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「塗膜形成樹脂(A)及び着色顔料(B)を含む近赤外光を用いた塗料組成物であって、前記着色顔料(B)は、近赤外線を反射しうる黒色系顔料(B1)を含む、近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗料組成物。」
<相違点7-1>
黒色系顔料について、本件発明1は、800~2,500nmの波長域における反射率を近赤外線反射率としたとき、近赤外線反射率が30%以上であるのに対して、甲7発明では、それが特定されていない点。
<相違点7-2>
本件発明1は、黒色系顔料含まれる場合に、さらに、近赤外線反射率が60%以上である白色系顔料及び近赤外線反射率が50%以上である有彩色顔料から選ばれる1種が含まれるのに対して、甲7発明では、それが特定されていない点。
<相違点7-3>
本件発明1は、顔料(B1)は、有機顔料を含み、該有機顔料の含有率は、前記顔料(B1)の総量中、3質量%以上であるのに対して、甲7発明では、それが特定されていない点。
<相違点7-4>
塗料組成物の用途について、本件発明1においては、走行路、道路構造物、鉄道構造物、防護柵、各種築構造物の内部設備、各建築構造物の内装、歩行者着用物及び電柱から選ばれる1種又はそれ以上に用いられる、近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用であることが特定されているのに対し、甲7発明では、それが特定されていない点。
(b)判断
事案に鑑み、相違点7-3について、まず検討する。
甲1には、前記1でも検討したとおり、遮熱性塗料についての技術が記載され、有機顔料を3質量%以上含有した日射反射率が高い塗料についての具体例が記載されている。
しかしながら、甲1には、有機顔料の機能や有機顔料を含有させることの効果については何ら言及されていない。
また、甲7の請求項16、段落【0001】~【0003】の記載を参酌すると、甲7に記載された技術の課題は、「約905ナノメートルの波長を有する近赤外電磁放射線を反射する、黒色二酸化チタン粒子からなる代替の暗色の顔料」とそれを用いた塗料を提供することと認められる。
しかしながら、甲7には、二酸化チタン粒子そのものを改良することは実施例等に具体的に記載されているものの、暗色塗料に黒色二酸化チタン以外の顔料を含有させることや、黒色二酸化チタン粒子を用いることに加えて、暗色塗料の近赤外電磁放射線の反射をさらに向上させる必要があることについては何ら記載されていない。
そうすると、甲1において、有機顔料を3質量%以上含有した日射反射率が高い遮熱性塗料が開示されていたとしても、甲1に記載された遮熱性カラー塗料の一部の成分のみを取り出して、甲7発明に、さらに、有機顔料を添加する動機付けはないといえる。
また、甲7発明は、黒色チタン粒子を含むLiDAR反射暗色塗料の発明であるところ、その成分組成を、甲1に記載された遮熱性カラー塗料のものに全て置き換える動機付けはないといえる。
また、甲6-2の図6には、多くの高日射反射率塗料について、横軸を明度、縦軸を日射反射率とした場合の明度と日射反射率との関係を示したグラフが記載されており(上記第5の摘記4(3)を参照のこと)、当該グラフからは、高日射反射率塗料の中には、日射反射率が80%以上等の高い高日射反射率のものがあることは理解できる。
しかしながら、甲6-2には、当該グラフに記載された各高日射反射率塗料がどのような成分組成なのかは何ら記載されていない。
加えて、甲4、甲5、甲8~甲10にも、塗料中に、近赤外線を反射しうる顔料の総量中、有機顔料を3質量%以上含有させることは記載も示唆もされていない。
そうすると、甲4、甲5、甲6-2、甲8~甲10の記載に接した当業者が、甲7発明において、有機顔料を添加することを動機付けられるとはいえない。
よって、本件発明1は、相違点7-1、相違点7-2、相違点7-4について検討するまでもなく、甲7に記載された発明、及び、甲1、甲4、甲5、甲6-2~甲10に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件発明2~4、9~16
本件発明2~4、9、11~16は、本件発明1を包含し、さらに特定事項を追加したものであるから、前記アで検討したのと同様の理由から、甲7に記載された発明、及び、甲1、甲4、甲5、甲6-2~甲10に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明10は、前記1(2)ウで検討したとおり、本件発明1の発明特定事項を実質的に全て含んでいるから、前記アで検討したのと同様の理由から、甲7に記載された発明、及び、甲1、甲4、甲5、甲6-2~甲10に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)申立人の主張について
申立人は特許異議申立書において、次のとおり主張する。
甲7には、「約905ナノメートルの波長を有する近赤外電磁放射線を反射する、代替の暗色の顔料の提供」の課題が記載されているところ、甲1には、高い近赤外線反射率を有する顔料を含み、有機顔料の含有率が3質量%以上である遮熱性カラー塗料が記載されており、甲6-2には、61種類の高日射反射率塗料が記載されている。
よって、甲7発明において、高い近赤外線反射率を期待して、甲1に記載された遮熱性カラー塗料を組み合せてみることは容易にすることができたことである。
また、甲7発明において、高い近赤外線反射率を期待して、甲6-2に記載された61種類の高日射反射率塗料を順次、組み合せてその効果を確かめて、本件発明1を見出すことは容易にすることができたことである。
以下、上記主張ついて検討する。
前記(b)でも検討したとおり、甲7には、塗料において、近赤外線を反射しうる顔料の総量中、有機顔料を3質量%以上含有させることはもとより、黒色二酸化チタン粒子以外にどのような顔料を含有させるかについては記載も示唆もされていない。
また、甲1、甲6-2には、遮熱性カラー塗料や高日射反射率塗料をLiDARによる検知の被対象物に用いることについては記載も示唆もされておらず、甲6-2には、高日射反射率塗料の具体的な成分組成は何ら記載されていない。
そして、遮熱用塗料という用途からみて、遮熱の必要のない走行路などの設備に対して、遮熱用塗料を用いることには、阻害事由があるといえ、LiDAR技術に転用できることは、事後分析的に言いうることである。
よって、甲7発明において、甲1及び甲6-2に記載された技術を適用して、本件発明1の構成を導くことは当業者が容易に想到し得たことではないから、上記申立人の主張は採用できない。
ウ 小括
以上のとおり、本件発明1~4、9~16は、相違点7-1、相違点7-2、相違点7-4について検討するまでもなく、甲7に記載された発明、及び、甲1、甲4、甲5、甲6-2~甲10に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
(4)サポート要件違反及び実施可能要件違反について(上記申立理由5に対応)
ア サポート要件
本件発明が解決しようとする課題は、本件明細書の段落【0007】の記載から、「LiDAR技術における近赤外線の検出精度を高めることが可能な塗料組成物及び塗膜の提供」であると認められる。
そして、本件明細書の段落【0042】には、「着色顔料(B)は、有彩色、無彩色等の色を有する顔料であり、近赤外線を反射しうる顔料(B1)を含む。前記顔料(B1)の近赤外線反射率は、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上であり、100%以下、90%以下、80%以下であることも許容される。前記顔料(B1)を含むことで、近赤外線を照射した場合に、照射光が高強度で反射及び/又は散乱され、LiDAR技術における検出精度の向上に寄与することができる。」との記載があり、当該記載からは、(B1)として、近赤外線反射率の高い着色顔料が含まれると、そうでない場合と比較して、近赤外線を照射した場合に、照射光が高強度で反射及び/又は散乱され、LiDAR技術における検出精度の向上に寄与することが理解できる。
また、本件明細書の段落【0048】には、「前記顔料(B1)としては、有機顔料及び/又は無機顔料を用いることができる。前記有機顔料は、高い彩度や高い近赤外線反射率を有する傾向があり・・・前記顔料(B1)中、有機顔料の含有率は・・・3質量%以上であってよい。」との記載があり、当該記載からは、(B1)として、有機顔料が含まれると、そうでない場合と比較して、高い彩度や高い近赤外線反射率を有する傾向となることが理解できる。
そうすると、本件発明は、近赤外線を反射しうる顔料(B1)として、「近赤外線反射率が60%以上である白色系顔料、近赤外線反射率が50%以上である有彩色顔料、及び、近赤外線反射率が30%以上である黒色系顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む」こと、及び、「有機顔料を含み、該有機顔料の含有率は、前記顔料(B1)の総量中、3質量%以上であること」を発明特定事項として含んでいるから、それらを含まない場合に比べて、LiDAR技術における近赤外線の検出精度を高められること、すなわち、上記発明の課題を解決できることが理解できる。
さらに、本件明細書の【表3】の実施例9には、上記発明特定事項を全て含む塗料として、近赤外線反射率が55%である無機黄色系顔料(近赤外線反射率が50%以上である有彩色顔料と)を含み、近赤外線反射率が75%である白色系顔料(近赤外線反射率が60%以上である白色系顔料)を含み、近赤外線反射率が45%である有機黒色系顔料(近赤外線反射率が30%以上である黒色系顔料、かつ、有機顔料)を5.1(≒0.13/(0.13+12.90+0.70)×100)質量%含む塗料組成物について、塗料の近赤外線反射率が50%であり、LiDAR視認性が良好であることが具体的に示されている。
してみれば、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認められる。
イ 実施可能要件
本件発明は、顔料の近赤外線反射率が発明特定事項として含まれているところ、本件明細書の段落【0043】~【0046】には、顔料の近赤外線反射率の定義やその具体的な測定方法について記載されている。
また、本件明細書の【0151】~【0174】には、どのような顔料を用い、どのように塗料を調製するのかについて具体的に記載されている。
そうすると、当業者であれば、上記本件明細書の記載を参考に、本件発明の塗料組成物を実際に作ることができると認められる。
さらに、本件明細書の段落【0009】には、「本発明の塗料組成物及び塗膜は、LiDAR技術における近赤外線の検出精度を高めることが可能であ」るとの記載があるように、LiDAR技術における近赤外線の検出精度を高める目的で、本件発明を使用できることは明らかである。
してみれば、本件明細書の記載は、当業者が本件発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
ウ 申立人の主張について
申立人は特許異議申立書において、次のとおり主張する。
本件発明1は、塗料組成物中の着色顔料(B)の含有量も、着色顔料(B)中の顔料(B1)の含有量も規定されていないから、一般の公知の顔料(B)を含む塗料組成物に、ほんの僅かな量の顔料(B1)を添加した塗料組成物も、本件発明1に含まれるところ、このようなものは、顔料(B1)の含有量がほんの僅かな量であるため、一般の公知の塗料組成物と変わりがなく、本件特許発明の課題「LiDAR技術における近赤外線の検出精度を高めることが可能な塗料組成物及び塗膜の提供」を解決しないと考えられるから、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、発明の詳細な説明の記載が当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないため、サポート要件及び実施可能要件を満たさない。
また、本件発明2~4、9~16も、同様に、サポート要件及び実施可能要件を満たさない。
以下、上記主張について検討する。
本件発明1は、「近赤外光を用いたセンシングの検出対象物用塗料組成物」に係るものであり、着色顔料(B)や顔料(B1)の含有量が規定されていないとしても、近赤外光を用いたセンシングに用いるものであることを考慮すれば、近赤外光の反射率がセンシングすることが不可能なほど極端に低いものは含まないと解される。
そして、前記アでも検討したとおり、そのような塗料に対して、「近赤外線反射率が60%以上である白色系顔料」、「近赤外線反射率が50%以上である有彩色顔料」、「近赤外線反射率が30%以上である黒色系顔料」といった、近赤外線反射率の高い顔料を添加すれば、そうでない場合と比較して、LiDAR技術における近赤外線の検出精度を高めることが可能となると解される。
加えて、本件発明1には、顔料(B1)であり、高い彩度や高い近赤外線反射率を有する傾向がある「有機顔料」についても、3質量%以上含まれることが規定されており、このような顔料を含むものは、そうでないものと比較して、LiDAR技術における近赤外線の検出精度を高めることが可能となると解される。
そうすると、本件発明1は、上記発明の課題を解決できるものといえるから、本件発明1に係る特許請求の範囲の記載は、サポート要件を満たしている。
また、前記イで検討したとおり、本件明細書の記載を参酌することにより、本件発明1を実際に作ることができ、使用できるものといえるから、本件明細書の記載は、本件発明1についての実施可能要件を満たしている。
また、本件発明2~4、9~16についても同様のことがいえる。
よって、上記申立人の主張は採用できない。
エ 小括
以上のとおり、本件発明1~4、9~16は、発明の詳細な説明及び技術常識に基づいて、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。
また、本件明細書の記載は、当業者が本件発明1~4、9~16の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるから、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものである。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立ての理由によっては、本件訂正後の請求項1~4、9~16に係る特許を取り消すことはできない。
また、他にこれらの特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700482