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特許異議申立

2023-700464

エアゾール型染毛剤または脱色剤組成物

審判番号
2023-700464
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-026369
登録番号
7164876
請求日
2023年05月02日
審決日
2023年07月28日
公報発行日
2023年09月29日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社ダリヤ
  • 【異議申立人】犬塚 直樹
審判長/審判官
  • 審判長 井上 典之
  • 審判官 赤澤 高之
  • 審判官 関 美祝
分類
P1651.121-Y (A61K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7164876号発明「エアゾール型染毛剤または脱色剤組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7164876号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7164876号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願(特願2019-26369)は、平成31年2月18日の出願であって、令和4年10月25日にその特許権の設定登録がされ、同年11月2日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許の全請求項に対し、令和5年5月2日付けで特許異議申立人 犬塚 直樹(以下「申立人」という。)より、特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~5に係る発明は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 以下、本件特許の請求項1~5(以下、それぞれ請求項順に「本件請求項1」などという。)に係る発明を、それぞれ請求項順に「本件発明1」などといい、これらをまとめて「本件発明」ともいう。 「【請求項1】 エアゾール型クリーム状染毛剤または脱色剤組成物であって、 第1剤および第2剤ともに (A)グリセリン、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコールおよびジグリセリンから選ばれる少なくとも1種以上、 (B)炭素数16~22の高級アルコール、 (C)非イオン性界面活性剤、 を含有し、 第1剤における前記(A)成分の含有量が1~10質量%であり、前記(B)成分の含有量が2~7質量%であり、前記(C)成分の含有量が0.6~6質量%であり、 第2剤における前記(A)成分の含有量が1~7質量%であり、前記(B)成分の含有量が4~12質量%であり、前記(C)成分の含有量が2.5~5.4質量%であり、 第1剤における前記(C)成分は、HLB16未満とHLB16以上の非イオン性界面活性剤を含有し、 第2剤における前記(C)成分は、HLB15未満とHLB15以上の非イオン性界面活性剤を含有し、 さらに、第1剤および第2剤ともに前記(B)成分に対する前記(C)成分および(D)カチオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種以上との質量比(B)/((C)+(D))が0.5~7であり、第1剤における前記(D)成分の含有量が0.5~4質量%であることを特徴とするエアゾール型クリーム状染毛剤または脱色剤組成物。 【請求項2】 前記(B)成分がセチルアルコール、ステアリルアルコールおよびオクチルドデカノールから選ばれる少なくとも1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のエアゾール型クリーム状染毛剤または脱色剤組成物。 【請求項3】 前記(C)成分がポリオキシエチレンセチルエーテルであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエアゾール型クリーム状染毛剤または脱色剤組成物。 【請求項4】 前記(D)成分が塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のエアゾール型クリーム状染毛剤または脱色剤組成物。 【請求項5】 2剤式エアゾール型染毛または脱色剤組成物をブラシに塗布して使用することを特徴とする請求項1に記載のエアゾール型クリーム状染毛剤または脱色剤組成物。」 第3 申立理由の概要 申立人は、証拠方法として、下記2に示す甲第1号証~甲第3号証を提出し、下記1の申立理由を主張している。 なお、以下では、甲第1号証~甲第3号証を、それぞれ順に、「甲1」、「甲2」及び「甲3」ともいう。 1 申立理由(進歩性) 本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内において、頒布された甲第1号証~甲第3号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから取り消すべきものである。 2 証拠方法 甲1:特開2006-182685号公報 甲2:特開2007-217293号公報 甲3:特開2014-237621号公報 第4 判断 当審合議体は、本件請求項1~5に係る特許は、上記第3に示した申立理由及び証拠によっては、取り消すことはできないと判断する。その理由は以下のとおりである。 なお、以下の下線は、当審合議体で追加した。また、証拠の記載はすべて全角で表記する。 1 甲各号証の記載事項 (1)甲1の記載事項 (甲1a)「【請求項1】 アルカリ剤を含有する第1剤と、過酸化水素を含有する第2剤とを混合して用いる染毛剤組成物であって、該第2剤が次の成分(A)~(E) (A) 過酸化水素:0.1~12重量% (B) アンモニアの中和塩:アンモニア(NH3)換算量として0.1~4重量% (C) 高級アルコール:0.1~20重量% (D) 界面活性剤:0.01~16重量% (E) 水 を含有し、成分(C)と成分(D)の重量比が0.1≦(D)/(C)≦0.9であり、pHが2~5の水中油型乳化物である、染毛剤組成物。」 (甲1b)「【0003】 従来、一般にアルカリ剤としては、アンモニアが使用されている。アンモニアは良好な染毛力や脱色力を得るのに優れたアルカリ剤であるが、強い刺激臭を有しており、施術時にかなりの不快感を伴うという欠点を有する。また、使用される迄の保管が長期の場合また高温下の場合などでは、第1剤中のアンモニアの揮散による染毛性能の低下という問題も生じる。 【0004】 使用時のアンモニアの揮散を抑制した二剤式染毛剤組成物として、アンモニア量をアルカリ剤全量の30重量%以下とし、通常アルカリ剤の一種として第1剤に配合されるアンモニウム塩(アンモニアの中和塩)を第2剤に含有させ、第1剤と第2剤の混合時に第1剤中のアルカリ剤との反応によってアンモニアを徐々に発生させる二剤式泡状染毛剤組成物が提案されている(・・・)。 【0005】 しかしながら、第2剤が乳化物である場合には、アンモニア中和塩を含有させると、その乳化安定性が低下して保存安定性や第1剤との混合性が低下するという問題が生ずる。これに対し上記技術は、泡状のエアゾール製品のみを対象とする技術であり、第2剤を乳化物とした場合の安定な乳化条件を開示するものではなかった。 ・・・ 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 そこで、本発明は、良好な染色力・脱色力を有し、使用時の刺激臭が少なく、かつ第2剤が保存安定性と第1剤との混合性に優れる乳化物である二剤式染毛剤組成物を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明者は、通常第1剤に配合されるアンモニアを中和塩として第2剤に配合し、かつ第2剤中に高級アルコールと界面活性剤を特定の比率で含有させ、水中油型の乳化物とすれば、第2剤中にアンモニアの中和塩を安定に含有させることができ、その乳化安定性が顕著に向上して上記課題が解決されることを見出した。 ・・・ 【0009】 なお、本発明における「染毛剤組成物」には、染料を含有しない毛髪用脱色剤(ブリーチ剤)も含むものとする。」 (甲1c)「【0011】 《第2剤》 〔成分(A):過酸化水素〕 ・・・ 【0012】 〔成分(B):アンモニアの中和塩〕 ・・・ 【0014】 〔成分(C):高級アルコール〕 成分(C)の高級アルコールとしては、炭素数12~24、特に16~22の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の脂肪族アルコールが挙げられ、具体的には、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、2-ヘキシルデカノール、2-オクチルドデカノール等、及びこれらの混合物が挙げられる。これらのうち、飽和の高級アルコール、具体的にはセチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、2-オクチルドデカノールが好ましい。 【0015】 高級アルコールは2種以上を併用することが好ましく、特にステアリルアルコールとベヘニルアルコールをベヘニルアルコール:ステアリルアルコール(重量比)=1:2~1:50、特に1:10~1:30で併用すると乳化安定性が向上し、好ましい。第2剤中の成分(C)の含有量は、第2剤の安定性の点から、0.01~20重量%とするが、好ましくは0.1~15重量%、特に0.5~10重量%である。 【0016】 〔成分(D):界面活性剤〕 成分(D)の界面活性剤は、第2剤を水中油型乳化組成物とするために含有される。界面活性剤としては、乳化安定性の観点より、非イオン界面活性剤、例えば炭素数12~24の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するアルコキシ化(例えばエトキシ化又はプロポキシ化)高級アルコール、具体的には、ポリオキシエチレン(2~40モル)アルキルエーテル等が好ましいものとして挙げられる。また、感触面を考慮すれば、更にモノ長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジ長鎖アルキルジメチルアンモニウム塩等のカチオン界面活性剤を併用することが好ましい。ここで、モノ長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩としては、感触、乳化性能の面から、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムが好ましい。 ・・・ 【0019】 〔成分(E):水〕 第2剤の媒体としては、成分(E)の水が使用される。また、必要により有機溶剤が使用される。有機溶剤としては、エタノール、2-プロパノール等の低級アルカノール類、ベンジルアルコール、2-ベンジルオキシエタノール等の芳香族アルコール類、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、グリセリン等のポリオール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、エチルカルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類が挙げられる。」 (甲1d)「【0024】 《第1剤》 〔染料〕 本発明の組成物が、脱色剤組成物である場合には、染料は含有せず、染毛剤組成物である場合には、第1剤に酸化染料中間体又は直接染料を含有する。 ・・・ 【0030】 〔アルカリ剤〕 ・・・ 【0032】 〔その他任意成分〕 本発明の組成物には、上記成分のほかに通常化粧品原料として用いられる他の成分を加えることができる。このような任意成分としては、第2剤の成分として記載したような高級アルコール、界面活性剤、炭化水素類、シリコーン類、媒体のほか、動植物性油脂、高級脂肪酸類、天然又は合成の高分子、エーテル類、蛋白誘導体、加水分解蛋白、アミノ酸類、防腐剤、キレート剤、安定化剤、酸化防止剤、動植物性抽出物、生薬抽出物、ビタミン類、香料、紫外線吸収剤が挙げられる。」 (甲1e)「【0034】 《その他》 〔剤型〕 本発明の染毛剤組成物における第2剤は水中油型乳化組成物であるが、第1剤も水中油型乳化物とすることが好ましい。これらの第1剤及び第2剤は、例えば、乳液状、クリーム状等とすることができ、チューブ容器、ボトル容器やエアゾール二重容器に入れた剤型とすることができる。」 (甲1f)「【実施例】 【0036】 実施例1及び比較例1 表1に示す第1剤及び表2に示す2種の第2剤を調製し、この第2剤の経時安定性及び第1剤との混合性について、下記方法に従って、評価した。 【0037】 〈評価方法〉 ・経時安定性 第2剤を40℃で1ヵ月保存したときの外観の変化を肉眼で観察し、下記基準に従って判定した。 ○:乳化状態が保たれている ×:乳化状態が保たれていない(分離等が観察される) 【0038】 ・第1剤との混合性 第1剤と第2剤をそれぞれ20グラムずつトレーに出し、刷毛で15秒間混合操作を行ったときの外観を観察し、下記基準に従って判定した。 ○:均一に混合されている ×:不均一な部分が見られる(混合されていない粒状塊が観察される) 【0039】 【表1】 [図:0001401703000001.jpg] 【0040】 【表2】 [図:0001401703000002.jpg] 」 (2)甲2の記載事項 (甲2a)「【請求項1】 アルカリ剤を含有する第1剤組成物と混合して使用する乳化組成物としての染毛用又は毛髪脱色用第2剤組成物であって、次の成分(a)~(c) (a) 界面活性剤:2~18重量% (b) 油性成分:10~50重量% (c) 酸化剤:過酸化水素換算量で0.1~12重量% を含有し、成分(a)として少なくともHLBが12~17である非イオン界面活性剤(a1)を第2剤中の1.5~9.5重量%含有し、(b)/(a)の重量比が1~10であり、乳化粒子の体積平均粒子径が50μm以下である染毛用又は毛髪脱色用第2剤組成物。」 (甲2b)「【0005】 そこで、本発明は、乳化安定性と第1剤との混合性に優れ、混合後の毛髪への適用時にべたつかず伸展性に優れ毛髪へのなじみが良く、かつ脱色力に優れる染毛用又は毛髪脱色用第2剤組成物を提供することを目的とする。」 (甲2c)「【0028】 ・第1剤 上記第1剤が染料を含有する場合には二剤型の染毛剤組成物となり、第1剤が染料を含有しない場合には、二剤型の毛髪用脱色剤となる。染料としては、・・・。また、アルカリ剤としては、・・・。その他、第1剤には、第2剤について挙げたのと同様の通常化粧品原料として用いられる成分を含有させることができる。」 (甲2d)「【実施例】 【0031】 実施例1~5及び比較例1~6 表1に示す第2剤を調製し、その「乳化粒子径」を測定すると共に、「乳化安定性」、並びに、下記処方の第1剤と混合して用いたときの「第1剤との混合性」、「塗布し易さ」、「明色性」及び「染色性」について評価した。 【0032】 第1剤 (重量%) トルエン-2,5-ジアミン 0.40 p-アミノフェノール 0.60 m-アミノフェノール 0.30 塩化ステアリルトリメチルアンモニウム(28重量%) 3.00 ポリオキシエチレン(2)セチルエーテル 0.50 ポリオキシエチレン(40)セチルエーテル 2.00 ステアリルアルコール 6.00 オレイルアルコール 1.00 プロピレングリコール 3.00 アスコルビン酸 0.50 強アンモニア水(28重量%) 6.00 精製水 残量」 (3)甲3の記載事項 (甲3a)「【請求項1】 第一剤と第二剤とを同時に吐出する機構を有するエアゾール容器に充填した染毛剤において、第一剤と第二剤との粘度が共に50,000mPa・s以下であり、第一剤と第二剤との粘度の比率が、第一剤/第二剤=0.8~1.2であることを特徴とする二剤同時吐出型染毛剤。」 (甲3b)「【0004】 又、従来のクリームタイプの染毛剤は、第一剤と第二剤とが所定の混合比率になるようトレイ等に出し、コームやブラシできちんと混ぜた後に頭髪に塗布するが、第一剤と第二剤とを所定の吐出量の比率にて同時に吐出させて使用する二剤同時吐出型染毛剤を頭髪に塗布する際、吐出後に直接頭髪に塗布するか、もしくはブラシに出してから頭髪に塗布し、第一剤と第二剤とを頭髪上で混ぜる行為を行うため、第一剤と第二剤とが所定の吐出量の比率にて同時に吐出されていないとムラ染めを引き起こすことがあった。」 2 申立理由(進歩性)について (1)甲1に記載された発明 甲1は、アルカリ剤を含有する第1剤と、過酸化水素を含有する第2剤とを混合して用いる染毛剤組成物に関する技術的事項を開示するものである(上記1(1)(甲1a)。以下、上記1の甲各号証の記載事項の記載箇所を示す場合には、単に(甲1a)などと示す。)。 そして、当該染毛剤組成物の第1剤と第2剤の具体例を示した実施例1の記載(甲1f)からみて、甲1には、次の「甲1発明」が記載されていると認める。 甲1発明: 「次の組成の第1剤と第2剤とを混合して用いる、染毛剤組成物。 第1剤(重量%) トルエン-2,5-ジアミン 0.5 レゾルシン 0.3 m-アミノフェノール 0.2 エデト酸四ナトリウム二水塩 0.2 無水亜硫酸ナトリウム 0.5 アスコルビン酸 0.5 プロピレングリコール 6.0 セチルアルコール 7.0 ポリオキシエチレン(40)セチルエーテル 2.0 ポリオキシエチレン(2)セチルエーテル 1.0 塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 0.8 アミノ変性シリコーン 1.0 ジメチルポリシロキサン(数平均重合度3800) 1.5 ジメチルポリシロキサン(数平均重合度550) 4.0 塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸共重合体液 (マーコート280(オンデオナルコ社)) 2.0 塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体液 (マーコート550(オンデオナルコ社)) 2.0 オクチルドデカノール 1.0 流動パラフィン 1.0 強アンモニア水(28重量%) 1.0 モノエタノールアミン 5.0 炭酸水素アンモニウム 0.3 精製水 残量 第2剤(重量%) 過酸化水素水(35重量%) 16.0 8-キノリノール硫酸塩 0.04 セチルアルコール 7.0 ポリオキシエチレン(40)セチルエーテル 2.0 ポリオキシエチレン(2)セチルエーテル 1.0 グリセリン 2.0 リン酸水素二アンモニウム 3.0 75重量%リン酸 pH3に調整 精製水 残量」 (2)本件発明1について ア 本件発明1の第1剤及び第2剤について 本件発明1は、第1剤及び第2剤ともに、少なくとも(A)成分~(C)成分を含有することが特定されたエアゾール型クリーム状染毛剤又は脱色剤組成物に関する。 ここで、一般的に、第1剤及び第2剤からなる2剤式染毛剤又は脱色剤組成物は、一方の剤にアルカリ剤や染料を含有し、他方の剤に酸化剤を含有することが技術常識であるところ、本件発明1においては、第1剤及び第2剤からなる染毛剤又は脱色剤組成物であるものの、第1剤及び第2剤に、アルカリ剤や染料か酸化剤を含有する2剤式染毛剤又は脱色剤組成物であることは特定されていない。 そこで、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の記載を参照すると、【0033】~【0036】に「本発明のエアゾール型染毛剤または脱色剤組成物の第1剤には、アルカリ剤が含有される。本発明のエアゾール型染毛剤または脱色剤組成物の第1剤に含有されるアルカリ剤としては、特に限定されないが、例えば、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミンなどのアルカノールアミン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウムなどの無機アルカリ、アルギニン、リジンなどの塩基性アミノ酸およびそれらの塩等が挙げられ1種以上を含有することができる。・・・本発明のエアゾール型染毛剤または脱色剤組成物の第1剤には、染料として酸化染料が含有される。」と記載され、【0056】~【0057】に「本発明のエアゾール型染毛剤または脱色剤組成物の第2剤には、酸化剤が含有される。本発明のエアゾール型染毛剤または脱色剤組成物の第2剤に含有される酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、過酸化水素、過炭酸ナトリウム、臭素酸ナトリウム等が挙げられ1種以上を含有することができる。」と記載され、実施例においても、第1剤にアルカリ剤や染料を含有し、第2剤に酸化剤(過酸化水素水)を含有している。 そうすると、本件発明1のエアゾール型クリーム状染毛剤又は脱色剤組成物は、技術常識及び本件明細書の記載から、2剤式のエアゾール型クリーム状染毛剤又は脱色剤組成物であって、第1剤はアルカリ剤や染料を含有し、第2剤は酸化剤を含有するものであるといえる。 イ 対比 (ア)甲1発明の第1剤は、アルカリ剤として強アンモニア水(28重量%)、モノエタノールアミン及び炭酸水素アンモニウムを含有するから、本件発明1の第1剤に相当し、甲1発明の第2剤は、酸化剤である過酸化水素水(35重量%)を含有するから、本件発明1の第2剤に相当する。 (イ)甲1発明の第1剤及び第2剤がともに含有する「セチルアルコール」及び「オクチルドデカノール」は、それぞれ、炭素数16の高級アルコール及び炭素数20の高級アルコールであるから、いずれも本件発明1の「(B)炭素数16~22の高級アルコール」に該当し、第2剤の「セチルアルコール 7.0(重量%)」は、本件発明1の「第2剤における・・・前記(B)成分の含有量が4~12質量%」であることと一致する。 (ウ)甲1発明の第1剤及び第2剤がともに含有する「ポリオキシエチレン(2)セチルエーテル 1.0(重量%)」及び「ポリオキシエチレン(40)セチルエーテル 2.0(重量%)」は、いずれも本件発明1の「(C)非イオン性界面活性剤」に該当し、その合計量は3.0重量%であるから、本件発明1の「第1剤における・・・前記(C)成分の含有量が0.6~6質量%」であることと、「第2剤における・・・前記(C)成分の含有量が2.5~5.4質量%」であることの、いずれとも一致する。 そして、甲1発明の「ポリオキシエチレン(2)セチルエーテル」及び「ポリオキシエチレン(40)セチルエーテル」は、それぞれ、本件明細書の【0024】及び【0048】に記載される「ポリオキシエチレンセチルエーテル(2E.O.)「HLB=5.3」」及び「ポリオキシエチレンセチルエーテル(40E.O.)「HLB=17.6」」に該当するから、これらのHLB値は、順に5.3及び17.6であり、本件発明1の「第1剤における前記(C)成分は、HLB16未満とHLB16以上の非イオン性界面活性剤を含有」することと、「第2剤における前記(C)成分は、HLB15未満とHLB15以上の非イオン性界面活性剤を含有」することの、いずれとも一致する。 (エ)甲1発明の第1剤の「塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 0.8(重量%)」は、本件発明1の「(D)カチオン性界面活性剤」に該当し、「第1剤における前記(D)成分の含有量が0.5~4質量%」であることと一致する。 (オ)甲1発明の第1剤の「セチルアルコール 7.0(重量%)」及び「オクチルドデカノール 1.0(重量%)」に対する「ポリオキシエチレン(40)セチルエーテル 2.0(重量%)」、「ポリオキシエチレン(2)セチルエーテル 1.0(重量%)」及び「塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 0.8(重量%)」との質量比を算出すると、(7.0+1.0)/(2.0+1.0+0.8)から約2.11であり、甲1発明の第2剤の「セチルアルコール 7.0(重量%)」に対する「ポリオキシエチレン(40)セチルエーテル 2.0(重量%)」及び「ポリオキシエチレン(2)セチルエーテル 1.0(重量%)」との質量比を算出すると、7.0/(2.0+1.0)から約2.33であるから、本件発明1の「第1剤および第2剤ともに前記(B)成分に対する前記(C)成分および(D)カチオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種以上との質量比(B)/((C)+(D))が0.5~7」であることと一致する。 (カ)甲1発明の「染毛剤組成物」は、本件発明1の「エアゾール型クリーム状染毛剤または脱色剤組成物」と、「染毛剤組成物」である点で共通する。 (キ)甲1発明の第1剤及び第2剤は、さらに酸化染料中間体や通常化粧品原料として用いられる他の成分を含有するが、本件明細書の【0040】及び【0059】には、酸化防止剤や油剤などを含有してもよいことが記載されているから、この点は本件発明1との対比における相違点とはならない。 (ク)よって、両発明は、次の一致点及び相違点1~3を有する。 一致点: 「染毛剤組成物であって、 第1剤および第2剤ともに (B)炭素数16~22の高級アルコール、 (C)非イオン性界面活性剤、 を含有し、 第1剤における前記(C)成分の含有量が0.6~6質量%であり、 第2剤における前記(B)成分の含有量が4~12質量%であり、前記(C)成分の含有量が2.5~5.4質量%であり、 第1剤における前記(C)成分は、HLB16未満とHLB16以上の非イオン性界面活性剤を含有し、 第2剤における前記(C)成分は、HLB15未満とHLB15以上の非イオン性界面活性剤を含有し、 さらに、第1剤および第2剤ともに前記(B)成分に対する前記(C)成分および(D)カチオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種以上との質量比(B)/((C)+(D))が0.5~7であり、第1剤における前記(D)成分の含有量が0.5~4質量%である染毛剤組成物。」 である点。 相違点1: 本件発明1は、「エアゾール型クリーム状染毛剤または脱色剤組成物」であるのに対し、 甲1発明は、「染毛剤組成物」である点。 相違点2: 本件発明1は、「第1剤および第2剤ともに(A)グリセリン、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコールおよびジグリセリンから選ばれる少なくとも1種以上」を含有し、「第1剤における前記(A)成分の含有量が1~10質量%」であり、「第2剤における前記(A)成分の含有量が1~7質量%」であるのに対し、 甲1発明は、第2剤にのみ「グリセリン 2.0(重量%)」を含有する点。 相違点3: 本件発明1は、「第1剤における」「前記(B)成分の含有量が2~7質量%」であるのに対し、 甲1発明は、第1剤の「セチルアルコール 7.0(重量%)」及び「オクチルドデカノール 1.0(重量%)」の含有量が合計で8.0重量%である点。 ウ 相違点についての判断 事案に鑑み、まず相違点2について検討する。 (ア)甲1発明は、第2剤に「グリセリン 2.0(重量%)」を含有しているので、本件発明1の「(A)グリセリン、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコールおよびジグリセリンから選ばれる少なくとも1種以上」を含有し、「第2剤における前記(A)成分の含有量が1~7質量%」である限りにおいては一致しているといえる。 しかしながら、甲1発明は、第1剤にグリセリン、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール及びジグリセリンのいずれも含有しないので、本件発明1で特定する「第1剤および第2剤ともに(A)グリセリン、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコールおよびジグリセリンから選ばれる少なくとも1種以上」を含有するものではない。 そして、第1剤及び第2剤からなるエアゾール型クリーム状染毛剤又は脱色剤組成物において、第1剤及び第2剤ともにグリセリン、ポリエチレングリコール、ジブロピレングリコール及びジグリセリンから選ばれる少なくとも1種以上を含有させるという技術常識が、本件特許出願前に存在していたとも認められない。 したがって、甲1全体の記載及び技術常識を参酌しても、エアゾール型クリーム状染毛剤又は脱色剤組成物において、第1剤及び第2剤ともにグリセリン、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール及びジグリセリンから選ばれる少なくとも1種以上を含有させる動機付けがあるとはいえない。 (イ)甲1発明は、第1剤に「プロピレングリコール 6.0(重量%)」を含有するところ、甲1には、第1剤に配合される成分について、(甲1d)に「本発明の組成物には、上記成分のほかに通常化粧品原料として用いられる他の成分を加えることができる。このような任意成分としては、第2剤の成分として記載したような・・・媒体・・・が挙げられる。」と記載され、第2剤の媒体について、(甲1c)に「第2剤の媒体としては、成分(E)の水が使用される。また、必要により有機溶剤が使用される。有機溶剤としては、・・・プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、グリセリン等のポリオール類・・・が挙げられる。」と記載されている。 しかしながら、甲1は、一般にアルカリ剤として使用されるアンモニアは刺激臭などがあるため、通常アルカリ剤の一種として第1剤に配合されるアンモニウム塩を、乳化物である第2剤に含有させる際に生じる、第2剤の保存安定性や第1剤との混合性に関する課題を解決することを目的として(甲1b)、第2剤の組成を特定したものであって((甲1a)、(甲1c))、第1剤については、一般的な記載がされているにすぎない(甲1d))。 したがって、甲1発明において、第1剤の成分のうちの「プロピレングリコール 6.0(重量%)」に着目し、第2剤の成分として記載されている媒体の一例であると認識した上で、必要により使用される有機溶剤として、上記ポリオール類とともに列挙されている、低級アルカノール類、芳香族アルコール類、セロソルブ類及びカルビトール類の中から、ジエチレングリコール又はグリセリンを選択して、プロピレングリコールに代えて配合する動機付けがあるとはいえない。 (ウ)甲2は、アルカリ剤を含有する第1剤組成物と混合して使用する乳化組成物としての染毛用又は毛髪脱色用第2剤組成物に関する技術的事項を開示するものであり(甲2a)、甲1と同様に、乳化安定性や第1剤との混合性に優れる染毛用又は毛髪脱色用第2剤組成物を提供するものであるが(甲2b)、第1剤と第2剤ともにグリセリン、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール及びジグリセリンから選ばれる少なくとも1種以上を含有することを開示するものではなく、実施例の第1剤も、甲1発明と同様にプロピレングリコールを含有するにすぎない(甲2c)。 また、甲3は、第1剤と第2剤とを同時に吐出する機構を有するエアゾール容器に充填した2剤同時吐出型染毛剤に関し(甲3a)、従来から2剤同時吐出型染毛剤を頭髪に塗布する際、ブラシに出してから頭髪に塗布し、第1剤と第2剤とを頭髪上で混ぜることが知られていることが記載されているにすぎない(甲3b)。 (エ)したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明並びに甲2及び甲3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2~5について 本件発明2~5は、それぞれ本件発明1を直接又は間接的に引用してさらに限定するものである。 そうすると、本件発明1のすべての発明特定事項を含む本件発明2~5についても、上記(2)ウで検討したのと同様の理由により、甲1発明並びに甲2及び甲3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)申立人の主張について ア 甲1発明の認定について 申立人は、特許異議申立書10ページ2行~11ページ2行において、甲1の実施例1の第1剤及び第2剤それぞれの組成から、本件特許発明1に対応する成分のみを抜き出して、甲1に記載された発明を認定しているが、甲1には、申立人が認定した発明のようなまとまりのある技術的思想は示されていないため、申立人の主張する甲1に記載された発明の認定を採用することはできない。 したがって、上記(1)のとおり、甲1に記載された事項に基づき、甲1発明を認定した。 イ 申立人の認定した相違点1-2について 申立人は、特許異議申立書13ページ下から3行~14ページ下から5行において、上記アのとおりの甲1に記載された発明を認定した上で、本件発明1との相違点1-2として、「甲1発明おいて第1剤中にプロピレングリコール6.0重量含有し、「(A)グリセリン、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコールおよびジグリセリンから選ばれる少なくとも1種以上」が「第1剤における前記(A)成分の含有量が1~10質量%」配合されていない点」であると主張している。 申立人の主張する相違点1-2に係る構成については、上記(2)ウ(イ)で検討したのと同様の理由により、当業者が容易に想到し得たことではないが、念のためさらに進んで検討する。 仮に、甲1発明の第1剤中のプロピレングリコールを、第2剤の媒体としてプロピレングリコールと併記されているジエチレングリコールやグリセリンに代えることが動機付けられるとしても、本件明細書には、比較例1として、第1剤の(A)成分が、グリセリン、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール又はジグリセリンではなく、プロピレングリコールである場合には、高温条件下における安定性に劣ることが示されている。 したがって、本件発明は、プロピレングリコールとジエチレングリコール又はグリセリンを区別することなく併記する甲1からは、予測し得ない顕著な効果を奏するものである。 よって、申立人の上記主張は採用できない。 (5)まとめ 以上のとおりであるから、申立理由(進歩性)は理由がない。 第5 むすび したがって、申立人による特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1~5に係る発明の特許を取り消すことはできない。 また、ほかに本件請求項1~5に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700464

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