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特許異議申立

2023-700450

医薬用錠剤

審判番号
2023-700450
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-246926外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
7231198
請求日
2023年04月28日
審決日
2023年12月28日
公報発行日
2024年02月22日
結論
維持
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-Y (A61K) / P1651.537-Y (A61K) / P1651.536-Y (A61K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7231198号発明「医薬用錠剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7231198号の請求項1に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許7231198号(以下「本件特許」という。)の請求項1に係る特許についての出願(特願2018-246926号)は、平成30年12月28日に出願され、令和5年2月20日にその特許権が設定登録され、同年3月1日に特許掲載公報が発行された。 その後、請求項1に係る特許について、令和5年4月28日に、特許異議申立人である中嶋美奈子(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立がされた。 第2 本件発明 本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、設定登録時の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 イブプロフェンと、アセトアミノフェンと、アミノ酸としてグリシンまたはアスパラギン酸と、を含む医薬用錠剤であって、 前記イブプロフェンの配合比をA、前記アセトアミノフェンの配合比をB、前記アミノ酸の配合比をCとしたとき、 A:B:C=100:30~50:30~200 である医薬用錠剤。」 第3 申立理由の概要及び証拠 申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、以下の申立理由1-3を主張し、甲第1号証-甲第6号証(以下、号証の番号にしたがい「甲1」-「甲6」という。)を提出した。 1 申立理由の概要 (1)申立理由1(進歩性) 本件発明は、甲1に記載の発明及び周知技術(甲2~6)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本件発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 (2)申立理由2(サポート要件) 本件特許は、特許請求の範囲が、本件明細書の発明の詳細な説明に記載される発明を記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさない。 したがって、本件発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 (3)申立理由3(実施可能要件) 本件特許の発明の詳細な説明には、本件発明が、当業者が実施できるように記載されていないから、該発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 したがって、本件発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 2 申立人が提出した証拠(証拠方法) 甲1:「要指導・一般用医薬品製造販売承認基準・申請実務の手引き」, 一般社団法人レギュラトリーサイエンス学会監修, 2017年, pp.1-8, 51-64 甲2:特開平5-294829号公報 甲3:特開2007-145829号公報 甲4:特開平8-34728号公報 甲5:特開平8-208520号公報 甲6:「ムヒ(R)のこども解熱鎮痛顆粒」添付文書, 2011年 (当審注:「(R)」は○の中にRが入った登録商標を意味する記号の上付文字を表す。) 第4 各甲号証の記載事項 1 甲1の記載事項 甲1には以下の事項が記載されている。 (甲1ア) 「(2) 解熱鎮痛薬製造販売承認基準 [1] 解熱鎮痛薬の範囲 この解熱鎮痛薬製造販売承認基準(以下,「基準」という)が適用される解熱鎮痛薬の範囲は,鎮痛又は解熱に関する効能又は効果をうたう内服用の薬剤であって,アセトアミノフェン,アスピリン等の解熱鎮痛成分を含有するもので,漢方処方に基づく製剤,生薬のみよりなる製剤及びかぜ薬を除いた全てのものである。 一方,かぜ薬の中には他の効能とともに解熱,鎮痛の効能をうたい,内服用で解熱鎮痛成分を含むという解熱鎮痛薬としての条件に合致するものもあるが,この製剤については,この基準とは別にかぜ薬の承認基準が適用されるので,この基準の範囲からは除外されている。 [2] 基 準 解熱鎖痛薬の基準は次のとおりとする。なお,この基準に適合しないものにあっては,有効性,安全性及び配合理由についての資料の提出を求め,それに基づき審査する。 a) 有効成分の種類 i) 配合できる有効成分の種類は第2-2表のとおりである。 ii) 有効成分に関する配合のルールは次のとおりである。 ア 第2-2表のI欄1項,2項又は3項に掲げる有効成分のいずれか1種類以上は配合しなければならない。 イ 第2-2表の各欄に掲げる有効成分は,別に定める場合を除き,相互に配合することができる。 ウ 第2-2表のI欄1項又は2項に掲げる有効成分の配合は3種までである。 エ 第2-2表のI欄3項に掲げる有効成分を配合する場合は,同欄に掲げる有効成分と同時に配合してはならない。ただし,同欄1項のアセトアミノフェン,2項のエテンザミド又は4項に掲げる有効成分のいずれか1種と同時に配合する場合は,この限りではない。 オ 第2-2表のI欄3項に掲げる有効成分を配合する場合,又は同欄1項のアセトアミノフェン,2項のエテンザミドのいずれか1種と同時に配合する場合は,II欄,III欄,IV欄,V欄,VI欄,VIII欄及びIX欄に掲げる有効成分を配合することができる。ただし,第2-2表のI欄3項に掲げる有効成分を1回最大分量配合する場合は,他のいずれの成分も配合してはならない。 カ 第2-2表の1欄4項に掲げる有効成分を配合する場合は,同欄1項のアセトアミノフェン,2項のエテンザミド又は3項に掲げる有効成分のいずれか1種と同時に配合しなければならず,その他の同欄1項及び2項に掲げる有効成分とは同時に配合してはならない。 キ 第2-2表の1欄4項に掲げる有効成分を同欄1項のアセトアミノフェン,2項のエテンザミド若しくは同欄3項の有効成分のいずれか1種と同時に配合する場合は,II欄,IV欄,V欄,VI欄,VIII欄及びIX欄に掲げる有効成分を配合することができる。 ク 第2-2表のII欄又はIV欄に掲げる有効成分を配合する場合は,同一欄内において1種に限られる。」(52-53頁「(2)解熱鎮痛薬製造販売承認基準」の項) (当審注:「[1]」は○の中に1の丸付き数字を表す。他の番号も同様。) (甲1イ) 「 [図:0001406707000001.jpg] 」(54頁第2-2表) (甲1ウ) 「b) 有効成分の分量 i) 各有効成分の1回及び1日最大分量は,第2-2表に掲げる量とする。 ii) 第2-2表のI欄1項又は2項に掲げる有効成分を1種配合する場合の1回量の下限は,1回最大分量の1/2とする。また,I欄1項又は2項に掲げる有効成分を2種以上配合する場合の1日量の下限は,1日最大分量の1/5又は1回最大分量の1/2のうちいずれか低い方とする。 iii) 第2-2表のII欄又はIV欄に掲げる有効成分の1日量の下限は,1日最大分量の1/5又は1回最大分量の1/2のうちいずれか低い方とする。 iv) 第2-2表のVI欄に掲げる有効成分の1日量の下限は,1日最大分量の1/5とする。ただし,1日2回までの用法を有するものについては1回量の下限は,1日最大分量の1/15とする。 v) 第2-2表のI欄1項又は2項に掲げる有効成分を2種以上配合する場合には,当該有効成分ごとに配合する分量をそれぞれの1日最大分量で除して得た数値の和が第2-3表の配合係数表で示す係数を超えてはならず,かつ係数の1/2以上である必要がある。なお,アセトアミノフェンを配合する場合は,配合係数計算の際の1日最大分量として第2-2表の1日最大分量欄の( )内の数値を用いることとされている。 これを式で示せば次のようになる。 [図:0001406707000002.jpg] vi) 第2-2表のI欄1項又は2項に掲げる有効成分を同一項内で2種以上配合する場合は,当該有効成分ごとに配合する分量をそれぞれの1日最大分量で除して得た数値の和が1を超えてはならない。これを式で示せば次のようになる。 [図:0001406707000003.jpg] vii) 第2-2表のI欄1項又は2項に掲げる有効成分とジリュウを配合する場合は,[2]のb)のv)を適用する。 viii) 第2-2表のVII欄,VIII欄又はIX欄に掲げる有効成分の1日量の下限は1日最大分量の1/10とする。 ix) 第2-2表のI欄3項に掲げる有効成分のみを配合する場合の1回量は,200mg又は150mgのいずれかとする。なお,1回量200mgを配合する場合の1日最大分量は400mgとする。 x) 第2-2表のI欄3項に掲げる有効成分を,同欄1項のアセトアミノフェン又は同欄2項のエテンザミドと同時に配合する場合の配合量の組合せは,第2-4表に示すものに限られる。 [図:0001406707000004.jpg] xi) 第2-2表のI欄4項に掲げる有効成分を,同欄1項のアセトアミノフェン,同欄2項のエテンザミド又は同欄3項に掲げる有効成分と同時に配合する場合の配合量の組合せは第2-5表に示すものに限られる。 [図:0001406707000005.jpg] xii) 通常有効成分としても用いる成分を有効成分以外の成分として用いる場合は,原則として,有効成分としての最低常用量の1/5を超えないこととする。」(54頁下から2行-56頁最下行) 2 甲2の記載事項 甲2には以下の事項が記載されている。 (甲2ア)特許請求の範囲 「【請求項1】 イブプロフェンを主体とする層と制酸剤を主体とする層の間に両者を含まない層を少なくとも一層有するイブプロフェン含有積層製剤であって、制酸剤を主体とする層以外の層にアセトアミノフェンを含む事を特徴とするイブプロフェン含有製剤。」(請求項1) (甲2イ) 「【0004】 【課題を解決するための手段】本発明のイブプロフェン含有製剤は、イブプロフェンを主体とする層と制酸剤を主体とする層の間に両者を含まない層を少なくとも一層有するイブプロフェン含有積層製剤であつて、制酸剤を主体とする層以外の層にアセトアミノフェンを含む事を特徴とする。」(【0004】) (甲2ウ) 「【0006】本発明に用いる制酸剤は、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、アミノ酢酸、ジヒドロキシアルミニウム・アミノ酢酸塩(アルミニウムグリシネート)、水酸化アルミニウムゲル(乾燥水酸化アルミニウムゲルとして)、乾燥水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウムの共沈生成物(クムライト:協和化学工業社製)、ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム混合乾燥ゲル、水酸化アルミニウム・炭酸カルシウム・炭酸マグネシウムの共沈生成物、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、水酸化マグネシウム・硫酸アルミニウムカリウムの共沈生成物が挙げられる。本発明においては、これら制酸剤の1種をイブプロフェンと併用するようにしてもよく、2種以上をイブプロフェンと併用するようにしてもよい。これらの制酸剤の配合量は、イブプロフェンとアセトアミノフェンとの合計量1重量部に対して0.05~100重量部を、好ましくは、0.1~50重量部配合することができる。 【0007】本発明において用いられるアセトアミノフェン(N-(4-hydroxyphenyl)acetamide)は、イブプロフェン1重量部に対し0.01~30重量部配合することができ、好ましくは0.1~20重量部を配合することができる。」(【0006】-【0007】) (甲2エ)実施例1 「【0015】 【表1】 [図:0001406707000006.jpg] 【0016】 【表2】 [図:0001406707000007.jpg] 」(【0015】、【0016】) 3 甲3の記載事項 甲3には以下の事項が記載されている。 (甲3ア)特許請求の範囲 「【請求項1】 イブプロフェン1重量部に対して、アミノ酢酸1.5乃至8重量部及びカフェイン類0.01乃至2重量部を含有することを特徴とする医薬組成物。 【請求項2】 イブプロフェン1重量部に対して、アミノ酢酸2乃至4重量部及びカフェイン類0.05乃至1重量部含有することを特徴とする医薬組成物。 … 【請求項4】 イブプロフェンによる胃粘膜障害を軽減するための請求項1乃至請求項3から選ばれるいずれか1項に記載の医薬組成物。」(請求項1、2、4) (甲3イ) 「【0002】 …一般にNSAIDは、プロスタグランジンの生成を抑制するという作用機序により、投与量や投与日数が増加するにつれて、胃部不快感や胃痛等の胃粘膜障害を惹起しやすいということが知られている。 【0003】 本発明の組成物に関連したものとして、これまでに、 1)イブプロフェンとアミノ酢酸とを併用することにより、イブプロフェンの薬効が向上するとともに、胃腸障害も軽減できること(特許文献1参照)、 2)上記特許文献1の実施例1には、イブプロフェン、アミノ酢酸及び無水カフェインを含有する経口組成物が開示されている。…」(【0002】、【0003】) (甲3ウ) 「【0007】 そこで本発明者は、イブプロフェンにアミノ酢酸及びカフェイン類を組み合わせた場合、いかなる条件下でイブプロフェンの薬効が増強され、かつ胃粘膜障害軽減作用が発現するのかを見出すために、さらに鋭意研究を実施し、イブプロフェン1重量部に対してアミノ酢酸を1.5重量部以上含有させた場合に限り3剤配合の有利な効果が発現することを初めて見出し、本発明を完成するに至った。」(【0007】) (甲3エ)実施例1 「【0027】 (実施例1)錠剤 (1)成分 (表1) 9錠中(mg) (1a)(1b) (1c) (1d) ------------------------------------------------------------------ イブプロフェン 450 450 450 450 アミノ酢酸(グリシン) 900 900 1800 1800 カフェイン又は無水カフェイン 45 150 45 150 ヒドロキシプロピルセルロース 40 40 60 60 ステアリン酸マグネシウム 適量 適量 適量 適量 ------------------------------------------------------------------。 【0028】 (2)製法 上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「錠剤」の項に準じて錠剤を製造する。」(【0027】-【0028】) 4 甲4の記載事項 甲4には以下の事項が記載されている。 (甲4ア)特許請求の範囲 「【請求項1】 イブプロフェンにイブプロフェンの解熱鎮痛作用を高める量のアミノ酢酸を配合したことを特徴とするイブプロフェン製剤。 【請求項2】 イブプロフェン10重量部に対してアミノ酢酸が1~100重量部配合されてなる請求項1の製剤。」(請求項1、2) (甲4イ) 「【0003】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、イブプロフェンの解熱鎮痛効果が増強され、かつイブプロフェンの胃腸障害作用が軽減された安全性の高いイブプロフェン製剤を提供することにある。 【0004】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに制酸剤として公知のアミノ酢酸をイブプロフェンに配合することにより、イブプロフェンの有する解熱鎮痛作用が一層向上することを見い出した。これは同一の解熱鎮痛効果を得るのに必要なイブプロフェンの量が一層少なくて済むという予想外の効果をもたらすものである。」(【0003】、【0004】) (甲4ウ)実験例1 「【0009】実験例1(鎮痛作用) 18時間絶食させた雄性マウス(体重23~28g)に3%アラビアゴム水溶液に懸濁した薬物〔1)イブプロフェン30mg/kg、2)イブプロフェン30mg/kgとアミノ酢酸3mg/kg、3)イブプロフェン30mg/kgとアミノ酢酸10mg/kg、4)イブプロフェン30mg/kgとアミノ酢酸30mg/kg、5)イブプロフェン30mg/kgとアミノ酢酸60mg/kg、6)イブプロフェン30mg/kgとアミノ酢酸100mg/kg、7)イブプロフェン30mg/kgとアミノ酢酸300mg/kg〕を強制経口投与した。30分後に0.6%酢酸水溶液を腹腔内投与し、その5分後から15分間のライジング発生回数を計測した。対照として3%アラビアゴムを投与し、そのライジング数に対する薬物群のライジング抑制率を以下の式に従って算出し、結果を図1に示した。 【数1】 [図:0001406707000008.jpg] 図1から明らかな様に、イブプロフェンにアミノ酢酸を配合することにより、イブプロフェン単独に比べて鎮痛作用が増強されることがわかる。」 (甲4エ)図1 「【図1】 [図:0001406707000009.jpg] 」(図1) (甲4オ)実施例1 「【0011】実施例1 錠剤(1錠中) イブプロフェン 150mg アミノ酢酸 75mg 無水カフェイン 50mg 結晶セルロース 50mg ヒドロキシプロピルセルロース 10mg ステアリン酸マグネシウム 5mg 上記成分を常法により打錠する。」(【0011】) 5 甲5の記載事項 甲5には以下の事項が記載されている。 (甲5ア)特許請求の範囲 「【請求項1】少なくとも1種の活性成分、少なくとも1種の錠剤分解成分並びに少なくとも1種の通常の薬剤補助成分を含有してなる固形の経口薬剤構成物において、 当該構成物が更に、口中又は液体中での当該構成物の分解を促進する少なくとも1種の内容成分を含有し、その際、当該内容成分が水溶性アミノ酸、水溶性アミノ酸誘導体及び/又はアミノ酸の水溶性塩であることを特徴とする薬剤構成物。 【請求項2】前記内容成分がグリシン、グリシン誘導体及び/又はグリシン塩であることを特徴とする請求項1に記載の薬剤構成物。」(請求項1、2) (甲5イ) 「【0002】 【従来の技術】…固形の経口薬剤構成物は、長い間公知であり、市販されている。…上記公知構成物は、…タブレット、顆粒物又は粉状物として用いられている。したがって一般に、患者は噛み砕かずに対応するタブレット又は顆粒物を飲み込む必要があるか、大きなタブレットでそれが難しい場合には、患者は飲み込む前に当該タブレット乃至顆粒物を噛み砕く必要があり、これによってしばしば上記タブレット及び/又は顆粒物の構成要素が口中の歯及び/又は口蓋の範囲にはりつくことになる。くっついた構成要素を取り除くことは問題を引き起こし、更に時間が経つにつれて活性成分を解放し、結局、非常に不快な味が口にもたらされる。 【0003】…口中で又は対応する液体中で比較的早く必然的に分解するように特に製造されたタブレットが知られ…、…口中での噛み砕きが省略されうる。しかしながら、…もろく且つ不適当に損傷する不具合を有し…、…使用も対応して制限されている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、一方で特に高い安定性を示し他方で投与の際に非常に早く分解するような固形の経口構成物を提供することにある。」(【0002】-【0004】) (甲5ウ) 「【0007】驚くべきことに、上記構成物は、上で指摘した少なくとも1種の内容成分(水溶性アミノ酸、水溶性アミノ酸誘導体及び/又はアミノ酸の水溶性塩)によって引き起こされる非常に高い分解率を示すことが認められ…る。これによって更に、上記発明に係る構成物が噛み砕くことなく口中で非常に早く分解(崩壊)する。 … 【0009】口中及び/又は液体中での前記発明に係る構成物の分解を促進する上に指摘された内容成分が、有毒でなく、そして少なくとも1種の活性成分との相互作用を示さないことが保証されるならば、基本的に、発明に係る構成物は、各水溶性アミノ酸、各水溶性アミノ酸誘導体及び/又はアミノ酸の各水溶性塩を含有しうる。発明に係る構成物が当該構成物の分解を促進する内容成分としてグリシン、グリシン誘導体及び/又はグリシンの塩を含有するならば、特に好適である。」(【0007】-【0009】) (甲5エ)例2 「【0034】(例2) 活性成分イブプロフェンを有するタブレットの製造 水及び 400g イブプロフェン (Ibuprofen) 20g ゼラチン (Gelatine) を含有した混合物を粒状化し、乾燥した。乾燥した顆粒物を1mmのメッシュサイズの篩で篩いにかけた後、次の成分を加えた: 405g グリシン 40g ポリプラスドンXL 20g 芳香剤 3g シリカ 1g 塩化ナトリウム 2g 甘味料 9g テアリン酸マグネシウム 均質化された混合物を200mg重量のタブレットに固めた。このように製造されたタブレットをタブレット2と称した。」(【0034】) (当審注:「テアリン酸マグネシウム」は、甲5の他の例からみて、ステアリン酸マグネシウムの脱字と認められる。) 6 甲6の記載事項 甲6には以下の事項が記載されている。 (甲6ア) 「 [図:0001406707000010.jpg] 」(2頁目「成分とそのはたらき」の項) 第5 本件明細書の発明の詳細な説明の記載 本件明細書の発明の詳細な説明には以下の事項が記載されている。 (1)【技術分野】・【背景技術】・【発明が解決しようとする課題】 「【0002】 …イブプロフェンを含有する製剤は、…他の有効成分を配合したいわゆる配合剤として用いられることが多い。しかし、イブプロフェンに他の有効成分を配合すると、各種成分の相互作用によって融点降下を招き、錠剤への打錠時において臼や杵に付着しやすくなる。その結果、イブプロフェンの配合剤は、深刻な打錠障害を招くという問題がある…。 … 【0004】 …イブプロフェンは、特有の苦みや芳香を有するという特徴がある。そのため、配合剤は、この特有の苦みや芳香を改善するための添加物が必要となる。添加物を添加すると、…錠剤の大型化などにともなう服用性の低下を招くという問題がある。 … 【0006】 そこで、服用性が高く、生産性の低下を招くことなく打錠性が向上するイブプロフェンを含有する医薬用錠剤を提供することを目的とする。」 (2)【課題を解決するための手段】 「【0007】 … 本件発明者らは、イブプロフェンに、矯味剤であるアミノ酸類を適量添加することにより、イブプロフェン特有の苦みや芳香が緩和されるだけでなく、打錠時における臼や杵への付着性が低下することを見出した。 …本実施形態では、このイブプロフェンとアセトアミノフェンとの混合物にアミノ酸類を添加することにより、粉体の付着性を低下させている。これにより、アミノ酸類は、それに期待される矯味剤としての効果を発揮するだけでなく、付着性を抑え、打錠性の改善に寄与する。…すなわち、アミノ酸類の添加によって、アミノ酸類の本来の矯味剤として効能と打錠性の改善とが両立される。…したがって、服用性を高めることができ、生産性の低下を招くことなく打錠性を向上することができる。」 (3)【発明を実施するための形態】 「【0009】 … 医薬用錠剤は、イブプロフェン、アセトアミノフェンおよびアミノ酸類をその主成分として含んでいる。…アセトアミノフェンは、イブプロフェンと異なり抗炎症作用を有しておらず、イブプロフェンとは異なる作用をもたらす鎮痛、解熱薬として用いられる。… … 【0011】 一実施形態の医薬用錠剤は、アミノ酸類として、グリシンおよびアスパラギン酸のうちいずれか1種以上を用いることが好ましく、グリシンを用いることがより好ましい。グリシンは、胃粘膜の保護作用も有している。イブプロフェンは、服用によって胃粘膜に影響を与えることが知られている。そのため、特に医薬用錠剤においてアミノ酸類としてグリシンを用いる場合、上述のような矯味性および打錠性の向上だけでなく、胃粘膜保護作用も期待することができる。 【0012】 医薬用錠剤は、イブプロフェンの配合比をAとし、アセトアミノフェンの配合比をBとし、アミノ酸類の配合比をCとしたとき、質量比で次のような比率となっている。すなわち、A:B:C=100:30~50:30~200である。 【0013】 本実施形態の医薬用錠剤は、上記に加え、必要に応じて適量の賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤および香料などのいずれか一種以上を添加してもよい。 …」 (4)実施例 「【0017】 以下、実施例および比較例を用いて、本実施形態の医薬用錠剤の製造方法および効果を具体的に説明する。 実施例の試料は、図1に示す各成分の総量が300gとなるように秤量する。このとき、実施例を構成する各成分の配合比は、図1に示す通りである。秤量した各成分は、混合機で混合する。なお、各成分のうちステアリン酸マグネシウムは、この段階では混合しない。混合された混合物は、造粒溶媒を加えて撹拌混合機で練り合わせる。この場合、造粒溶媒は、例えばエタノールと水との混合物など、本実施形態の医薬用錠剤の効果を損なわない物質であれば任意に選択することができる。 【0018】 造粒溶媒を加えて生成された造粒物は、乾燥機で乾燥される。乾燥した造粒物にステアリン酸マグネシウムが加えられ、打錠末を生成する。生成した打錠末は、ロータリー打錠機を用いて打錠する。この場合、杵形状は、曲面または平面を有するものを用いる。打錠される錠剤の質量は200mg~300mgであり、直径を8mmとする杵が用いられる。ロータリー打錠機の回転数は、30rpm程度とする。 【0019】 比較例1および比較例3~7は、図1に示す各成分の総量が300gとなるように秤量する。このとき、各成分の配合比は、図1に示す通りである。比較例1および比較例3~7におけるその他の製造方法は、上述の実施例と同様である。 一方、比較例2は、イブプロフェン:アセトアミノフェン:乳糖:結晶セルロース:カルメロースカルシウム:ヒドロキシプロピルセルロース:軽質無水ケイ酸=100:43:55:21:10:3:14の配合比で総量が300gとなるように秤量し、実施例と同様に造粒および乾燥した後、顆粒(1)を調製する。次に、結晶セルロース:軽質無水ケイ酸:合成ケイ酸アルミニウム・ヒドロキシプロピルスターチ・結晶セルロース=100:25:125の配合比で総量が300gとなるように秤量し、均一に混合した混合末(2)を調製する。そして、顆粒(1):混合末(2):ステアリン酸マグネシウム=82:23:1の配合比で混合し、打錠する。 【0020】 得られた実施例および比較例の錠剤は、服用感および打錠障害の観点から評価した。服用感は、「刺激性(口に含んで20秒後の刺激)の有無」の観点から評価し、図1における評価において「○」はほとんど刺激を感じない、「×」は強い刺激を感じることを示している。また、打錠障害は、「杵表面への付着」および「杵臼のきしみ」の観点から評価した。図1における評価において、「○」は、問題が生じていない、すなわち付着または杵臼のきしみが生じていないことを示している。一方、図1における評価において、「×」は、生産性に大きな問題を生じる付着またはきしみが認められていることを示している。また、「△」は、直ちに生産性に大きな問題を生じていないものの、軽度の付着またはきしみが認められることを示している。図1における配合比とは、1錠の錠剤に含まれるイブプロフェンを100としたときにおける、各成分の質量比である。また、実施例および比較例では、1錠の錠剤は、イブプロフェンを20質量%以上、50mg以上含んでいる。 【0021】 実施例1~実施例4では、イブプロフェンにアミノ酸としてグリシンを加えることにより、いずれも打錠機の杵表面への付着および杵臼のきしみといった打錠障害に関する問題は生じないことが分かる。同様に、実施例5では、イブプロフェンにアミノ酸類としてアスパラギン酸を加えることにより、打錠障害に関する問題は生じないことが分かる。また、実施例1~実施例5では、刺激性に関する問題も生じていないことが分かる。このように、実施例1~実施例5では、アミノ酸類によって、イブプロフェンに特有の刺激性の問題が改善されるだけでなく、アセトアミノフェンの添加に起因する融点降下による付着性が生じても、打錠性に与える影響が低減されることが分かる。 【0022】 一方、アミノ酸類を加えない比較例1~比較例7は、打錠性の改善が図られない。このことからも、実施例1~実施例5と比較例1~比較例7とを比較すると、打錠性の改善にはアミノ酸類であるグリシンまたはアスパラギン酸が貢献していることが明らかである。また、アセトアミノフェンを添加していない比較例7を参照すると、イブプロフェンはアセトアミノフェンの添加によって打錠性が低下することが分かる。そして、矯味剤として比較例3のようにクエン酸、比較例4のように酒石酸、比較例5のようにキシリトール、比較例6のようにアスパルテームを添加することにより、刺激性は改善される。しかし、これらの矯味剤を低下しても、打錠性の改善はみられない。このことからも、アミノ酸類は、イブプロフェンとアセトアミノフェンとの混合物に対する打錠性の改善に寄与していることが明らかである。 【0023】 以上説明したように、本実施形態の医薬用錠剤は、イブプロフェンと、アセトアミノフェンと、アミノ酸類と、を含む。 本実施形態では、イブプロフェンとアセトアミノフェンとの混合物にアミノ酸類を添加することにより、融点降下にともなう粉体の付着性を低下させている。これにより、アミノ酸類に期待される矯味剤としての効果を発揮すると同時に、付着性を抑え、打錠性の改善が図られる。このアミノ酸類を加えることにより滑沢剤や賦形剤など添加物の添加量の低減が図られる。すなわち、アミノ酸類の添加によって、アミノ酸類の本来の矯味剤としての効能と打錠性の改善とが両立される。その結果、必要な処方量に対して錠剤の大型化および服用錠数の増加を招かない。したがって、服用性を高めることができ、生産性の低下を招くことなく打錠性を向上することができる。 …」 (5)図1 「 [図:0001406707000011.jpg] 」 第6 当審の判断 1 申立理由1(進歩性欠如)について (1)甲1に記載された発明 (甲1ウ)の第2-4表の「I欄3項」との記載は、(甲1イ)の第2-2表の同項にイブプロフェンのみが記載されることからみて、イブプロフェンを意味すると認められるから、第2-4表には、イブプロフェン450mg及びアセトアミノフェン195mgを配合することが記載されていると認められる。 そして、第2-4表の直前のx)に「第2-2表のI欄3項に掲げる有効成分を,同欄1項のアセトアミノフェン又は同欄2項のエテンザミドと同時に配合する場合の配合量の組合せは,第2-4表に示すものに限られる。」と記載されていることからみても、上述の配合は許容されていると認められる。 そうすると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という)が記載されていると認められる。 <甲1発明> 「イブプロフェン450mg及びアセトアミノフェン195mgを含む医薬組成物。」 (2)本件発明と甲1発明との対比 甲1発明の「イブプロフェン」及び「アセトアミノフェン」は、本件発明の「イブプロフェン」及び「アセトアミノフェン」に相当する。 甲1発明の「イブプロフェン450mg及びアセトアミノフェン195mgを含む」は、195mgが450mgの約43%(=195mg÷450mg×100))に相当することから、イブプロフェン及びアセトアミノフェンの配合比が、450mg:195mg=100:43となるから、本件発明の、「イブプロフェンの配合比をA、」「アセトアミノフェンの配合比をB」「としたとき、A:B」「=100:30~50」であることに相当すると認められる。 甲1発明の「医薬」は本件発明の「医薬用」に相当する。 甲1発明の「組成物」は、本件発明の「錠剤」と、組成物である点に限り一致する。 したがって、本件発明と甲1発明の間の一致点及び相違点は以下のとおりである。 <一致点> 「イブプロフェンと、アセトアミノフェンと、を含む医薬用組成物であって、 前記イブプロフェンの配合比をA、前記アセトアミノフェンの配合比をBとしたとき、 A:B=100:30~50 である医薬用組成物。」 <相違点1> 本件発明は、アミノ酸としてグリシン又はアスパラギン酸を、イブプロフェンの配合比をA、前記アミノ酸の配合比をCとしたとき、A:C=100:30~200となるよう、さらに含むことを特定する一方、甲1発明にそのような特定はない点。 <相違点2> 本件発明は医薬用錠剤である一方、甲1発明にそのような特定はない点。 (3)判断 ア 相違点1について (甲1ア)の[2]のオには、「第2-2表のI欄3項に掲げる有効成分を配合する場合,又は同欄1項のアセトアミノフェン,2項のエテンザミドのいずれか1種と同時に配合する場合は,II欄,III欄,IV欄,V欄,VI欄,VIII欄及びIX欄に掲げる有効成分を配合することができる。ただし,第2-2表のI欄3項に掲げる有効成分を1回最大分量配合する場合は,他のいずれの成分も配合してはならない。」と記載されている。 ここで、「I欄3項に掲げる有効成分」はイブプロフェンであり、引用発明におけるイブプロフェンの配合量である450mgは、1日最大量であって1回最大量ではない(1日2回以上の投与もありうる)から、上のオの規則によると、引用発明の組成物に、さらにVI欄の成分を配合することは許容されていると認められる。 しかしながら、(甲1ア)には「I欄3項に掲げる有効成分」であるイブプロフェンと同時に、II欄、IV欄、V欄、VI欄、VIII欄及びIX欄に掲げる有効成分を配合してもよいことが記載されているうえ、II欄、IV欄、V欄、VI欄、VIII欄及びIX欄に掲げる有効成分の中から、あえて、VI欄に掲げる有効成分を選択し、さらに、その中でもグリシンを選択する動機付けがあるとは認められず、VI欄の中からグリシンを選択することが容易であるとはいえない。 また、甲3-5には、イブプロフェン含有錠にグリシンが制酸剤や作用増強剤として配合されることが記載され((甲3エ)実施例1、(甲4ウ)実験例1、(甲4エ)図1、(甲5エ)例2)、甲6には、アセトアミノフェンにグリシンを配合した製品が記載される一方((甲6ア))、甲2に、イブプロフェン及びアセトアミノフェン含有錠に、制酸剤として酸化マグネシウムや炭酸マグネシウムを配合することが記載されているから((甲2エ)等)、甲2-6の記載を参酌しても、イブプロフェン含有錠において、制酸剤等の目的に、グリシンも無機化合物もともに有用であることが把握されるに過ぎず、既に述べたとおり、II欄、IV欄、V欄、VI欄、VIII欄及びIX欄に掲げる有効成分の中から、あえて、VI欄に掲げる有効成分を選択したうえで、さらに、その中でも、グリシンを選択する動機付けがあるとは認められない。 加えて、仮に、(甲1ウ)のiv)にしたがい、VI欄の成分の配合量が設定され得るとしても、グリシンを選択すること自体が容易であるとはいえないことは、既に説示したとおりであり、上記判断を左右するものではない。 イ 効果について 第5(5)の図1の実施例1-5には、イブプロフェン、アセトアミノフェン、グリシン又はアスパラギン酸、乳糖、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、カルメロースカルシウム、軽質無水ケイ酸及びステアリン酸マグネシウムを含む錠剤において、刺激性及び打錠性いずれも「○」であることが記載されている。 一方、比較例1及び2の錠剤は、刺激性及び打錠性いずれも「×」であること、比較例3-6の錠剤は刺激性が「○」であるものの、打錠性は「×」であること、及び、比較例7の錠剤は「刺激性」が「×」である一方、打錠性は「△」であることが記載されている。 ここで、比較例7の組成の乳糖の一部をアセトアミノフェンに換えたものが比較例1の組成に相当し、さらに、比較例1の乳糖をグリシン又はアスパラギン酸に換えた組成が、実施例2又は5に相当するから、イブプロフェン含有錠にアセトアミノフェンを配合することにより、打錠障害がより深刻となった一方、乳糖をグリシン又はアスパラギン酸に換えることにより、刺激性及び打錠性がいずれも改善したことが示されていると認められ、この点、【0020】-【0022】の記載とも整合する。 そして、上述した、グリシン又はアスパラギン酸の配合による刺激性及び打錠性の改善なる効果は、甲1-6のいずれにも記載も示唆もされず、甲1-6の記載から予測し得たものであるとはいえない。 したがって、本件発明の効果は、甲1-6号証の記載から予測し得るものではなく、格別な効果でないとはいえない。 (4)申立人の主張及びそれに対する判断について ア 申立人の主張について 申立人は申立書において以下のとおり主張する。 (主張ア) 「(ウ-5)前記のように、甲第1号証には、 「(a)イブプロフェンと、アセトアミノフェンと、グリシン含む胃粘膜保護成分とを含む解熱鎮痛薬であって、 (b)前記イブプロフェンの配合比をA、前記アセトアミノフェンの配合比をB、前記グリシンの配合比をCとしたとき、A:B:C=100:43:40~200である (c)医薬用錠剤」 が記載されている。」(申立書12-13頁(ウ-5)) (主張イ) 「本件特許発明は「医薬用錠剤」であるところ、解熱鎮痛薬用錠剤を製造しようとした当業者は、本件特許発明の課題とは無関係に、甲第1号証記載の発明において、甲第1号証記載の第2-2表中のVI欄から胃粘膜保護成分としてグリシンを選択することにより、本件特許発明の医薬用錠剤に到達してしまうのであるから、本件特許発明が、甲第1号証記載の発明及び周知技術(甲第2~6号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであることは明らかである。」(申立書13頁下から4行-14頁2行) イ 各主張に対する判断について (ア)主張アについて 甲1に、イブプロフェン及びアセトアミノフェンに加え、グリシンをも配合する組成物が記載されているとはいえないことは、(1)における甲1発明の認定及び(3)アにおける判断にて説示したとおりである。 (イ)主張イについて 甲1発明において、甲1第2-2表第VI欄からグリシンを選択することが容易であるとはいえないことも、(3)アにて説示したとおりである。 ウ 小括 したがって、申立人の主張はいずれも採用することができない。 (5)まとめ よって、本件発明は、甲1発明及び甲1-6号証の記載に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない発明ではない。 2 申立理由2(サポート要件)について (1)サポート要件について 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と本願明細書の発明の詳細な説明(以下「発明の詳細な説明」という。)の記載を対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、発明の詳細な説明の記載や示唆がなくとも、当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。 (2)本件発明の課題について 第5(1)の【0002】、【0004】、【0006】の記載から、本件発明が解決しようとする課題は、イブプロフェンに他の有効成分を配合した、服用性が高く、生産性の低下を招くことなく打錠性が向上した医薬用錠剤を提供することであると認められる。 (3)本件明細書の発明の詳細な説明の記載 第5(4)の【0021】-【0022】には、実施例1-5は、イブプロフェンに特有の刺激性の問題が改善されるだけでなく、アセトアミノフェンの添加に起因する融点降下による付着性が生じても、打錠性に与える影響が低減されることが分かること、及び、比較例1-7との比較から、打錠性の改善にアミノ酸類であるグリシンまたはアスパラギン酸が貢献していることが明らかであることが記載されている。 一方、第5(5)の図1には、比較例7として、イブプロフェン、乳糖、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、カルメロースカルシウム、軽質無水ケイ酸及びステアリン酸マグネシウムを含む打錠末を錠剤に製したこと、該錠剤の刺激性は「×」であること、及び、該打錠末の打錠性、すなわち、打錠障害の有無は、杵表面への付着及び杵臼のきしみともに「△」であることが記載されている。 また、同じく図1には、比較例1及び2として製造された錠剤の、刺激性及び打錠性いずれも「×」であることが記載されている。 さらに、図1には、比較例3-6として製造された錠剤の刺激性は「○」であるものの、打錠性は「×」のままであることが記載されている。 加えて、図1には、実施例1-5の錠剤は、刺激性及び打錠性のいずれも「○」であることが記載されている。 (4)判断 比較例1の組成は、比較例7の組成のうち、乳糖の一部をアセトアミノフェンに換えたものに等しいから、アセトアミノフェンの配合により、錠剤の打錠性がより悪化し打錠障害がより深刻になったと認められる。 一方、比較例1の組成のうちの乳糖をグリシン又はアスパラギン酸に換えたものに相当する実施例2や5において、打錠性が「○」であることから、グリシン又はアスパラギン酸の添加により、「×」であった打錠性が改善したと認められる。 また、実施例2のグリシンの量を増減させた実施例1、3、4も、打錠性は「○」であり、各実施例に記載の配合量の範囲であれば同様の改善効果が奏されると認められる。 さらに、実施例1-5の錠剤はいずれも、刺激性も「○」となり、「×」であった比較例1や2に比して改善したと認められる。 そうすると、各比較例及び各実施例の結果の比較から、当業者は、イブプロフェン及びアセトアミノフェン含有錠において、グリシン又はアスパラギン酸を所定量配合することにより、刺激性や打錠性が改善されることを理解するといえ、この点は、【0021】-【0022】の記載とも整合する。 したがって、発明の詳細な説明には、本件発明に特定される医薬用錠剤が(2)にて説示した課題を解決できると当業者が認識できる程度の記載があると解することができるから、本件発明が、該課題を解決できることを、当業者は認識できるといえる。 (5)申立人の主張及びそれに対する判断について ア 申立人の主張について 申立人は申立書において以下のとおり主張する。 「(エ-3)本件特許発明の課題は、「服用性が高く、生産性の低下を招くことなく打錠性が向上するイブプロフェンを含有する医薬用錠剤を提供すること」にある。 しかし、イブプロフェンの錠剤中の含有量が極めて少ない場合には、このような課題が生じないことは明確である。 そうすると、本件特許発明は、そもそも課題が生じない場合を含むから、本願はサポート要件を満たさない。」(申立書14頁(エ-3)) イ 主張に対する判断について 本件発明が医薬用錠剤に係るものである以上、医薬として用いることが前提であるから、イブプロフェンやアセトアミノフェンを、所定の薬効を奏するに十分な量を配合する必要があることは明らかである。 この点、例えば、(甲2エ)の、イブプロフェン及びアセトアミノフェンがともに65mgずつ配合された錠剤が製造された旨の記載や、(甲3エ)の、9錠当たり450mg(1錠当たり50mgに相当)のイブプロフェンを含む錠剤が製造された旨の記載からみても首肯できるといえる。 そうすると、仮に、本件発明が配合比しか特定していないとしても、医薬用錠剤に係る本件発明が、申立人が主張する「極めて少ない場合」に相当する態様を包含しているとはいえない。 一方、発明の詳細な説明に、本件発明が(2)に説示した課題を解決できることが記載されていることは、(4)までに述べたとおりである。 ウ 小括 したがって、申立人の主張は採用することができない。 (6)まとめ よって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明である。 3 申立理由3(実施可能要件)について (1)発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を満たすか否かについて 本件発明について、発明の詳細な説明が実施可能要件を満たすには、本件発明に特定される組成を有する医薬用錠剤が、製造することができ、かつ、医薬用錠剤として使用することができることを要する。 (2)発明の詳細な説明の記載 2(3)にて述べた事項に加え、第5(4)の【0017】-【0019】には医薬用錠剤の製造工程が記載され、【0020】には製造された錠剤の評価方法が記載されている。 (3)判断 第5(4)(5)の、【0017】-【0022】及び図1の記載から、発明の詳細な説明には、実施例1-5として挙げられる、イブプロフェン100部、アセトアミノフェン30~50部及びグリシン又はアスパラギン酸30~200部を配合した錠剤が、特段の打錠障害なく製造されたこと、及び、該錠剤が特段の刺激性なく服用可能であることが記載されていると認められる。 また、イブプロフェン及びアセトアミノフェンを配合した医薬用錠剤である以上、これらの有効成分が所定の薬効を奏するに十分な量が配合される必要があることは当然といえるから、仮に、本件発明において配合比しか特定されていないとしても、医薬用錠剤、すなわち、錠剤である医薬として使用することができることは明らかといえる。 したがって、発明の詳細な説明には、本件発明に特定される組成を有する医薬用錠剤を製造することができること、及び、該錠剤を医薬として使用することができることが示されていると認められる。 (4)申立人の主張及びそれに対する判断について ア 申立人の主張について 申立人は申立書において以下のとおり主張する。 「(エ-2)請求項1には、イブプロフェンとアセトアミノフェンとグリシン又はアスパラギン酸との配合比が特定されているだけであり、各成分の含有量の上限も下限も記載されていない。 また、実施例においても各成分の配合比は記載されているが、実際の含有量は記載されていない。 そうすると、例えばイブプロフェンの含有量は、解熱鎮痛作用を示さない量の場合及び毒性を示してしまう場合も含まれることになり、医薬用錠剤として使用できない発明を含むので、本願は実施可能要件を満たさない。」(申立書14頁(エ-2)) イ 主張に対する判断について 本件発明は医薬用錠剤に係るものであるから、イブプロフェンやアセトアミノフェンが所定の薬効を奏するに十分な量が配合されることを要することは、(3)にて説示したとおりである。 また、同様に、医薬用錠剤である以上、毒性を生じないようにしなければならないことも明らかであるから、仮に、本件発明が、各成分の配合比を特定するのみであり、配合量を特定していないとしても、申立人が主張する「解熱鎮痛作用を示さない量の場合及び毒性を示してしまう場合」をも包含しているとはいえない。 ウ 小括 よって、申立人の主張は採用することができない。 (5)まとめ よって、発明の詳細な説明の記載は、本件発明について、実施可能要件を満たしている。 第7 むすび 以上より、申立書に記載されるいずれの申立理由によっても、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。 また、本件発明に係る特許を取り消すべき他の理由も発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700450

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