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特許異議申立

2020-700214

球状アルミナ粉末及びそれを用いた樹脂組成物

審判番号
2020-700214
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-538364
登録番号
特許第6585594号(P6585594)
請求日
2020年03月26日
審決日
2021年03月23日
公報発行日
2021年07月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】デンカ株式会社
  • 【権利者代理人】アクシス国際特許業務法人
  • 【異議申立人】本多 眞治
  • 【異議申立人】椎名 一男
審判長/審判官
  • 審判長 宮澤 尚之
  • 審判官 後藤 政博
  • 審判官 村岡 一磨
分類
P1651.113-YAA(C01F) / P1651.121-YAA(C01F) / P1651.536-YAA(C01F) / P1651.537-YAA(C01F) / P1651.851-YAA(C01F) / P1651.857-YAA(C01F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6585594号発明「球状アルミナ粉末及びそれを用いた樹脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6585594号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。 特許第6585594号の請求項2~5に係る特許を維持する。 特許第6585594号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6585594号の請求項1~5に係る特許についての出願は、2 015年(平成27年)7月28日(優先権主張 平成26年7月28日( JP)日本国)を国際出願日として出願され、令和1年9月13日にその特 許権の設定登録がされ、令和1年10月2日に特許掲載公報が発行された。 その後、その請求項1~5に係る特許について、特許異議申立人本多眞治( 以下、「申立人1」という。)及び特許異議申立人椎名一男(以下、「申立 人2」という。)により、それぞれ特許異議の申立てがされたものであり、 その手続の経緯は以下のとおりである。 令和 2年 3月26日   申立人1による特許異議の申立て 令和 2年 4月 2日   申立人2による特許異議の申立て 令和 2年 9月24日付け 取消理由通知 令和 2年11月25日   訂正の請求、意見書の提出 なお、令和2年11月25日付けの訂正の請求に対して、各申立人に期間 を指定して意見書を提出する機会を与えたが、指定期間内に意見書は提出さ れなかった。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和2年11月25日に特許権者より請求された訂正(以下、「本件訂正 」という。)の内容は、次のとおりである。 (1)訂正事項1 本件明細書の段落【0014】において、 「例えば、化学式(1)のうち炭素数10(n=9)でXがメトキシ基のデ シルトリメトキシシランの場合、ピーク強度比{I(CH3)/I(CH2 )}は0.2であり、これに対して、デシルトリメトキシシランに対して化 学式(2)のXがメトキシ基のトリメチルメトキシシランを添加した系のピ ーク強度比{I(CH3)/I(CH2)}は、トリメトキシシランの添加 によりCH3のピーク強度が増す。このため、例えばデシルトリメトキシシ ランに対して、トリメチルメトキシシランが等モル量、表面に存在する場合 は、ピーク強度比{I(CH3)/I(CH2)}は0.4と大きくなる。 」 と記載されているのを削除する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項2に、 「平均粒子径が0.1~100μm、平均球形度が0.85以上であること を特徴とする請求項1に記載の球状アルミナ粉末。」 と記載されているのを、 「シラン化合物に由来するアルキル基を表面に有する球状アルミナ粉末であ って、赤外分光分析測定によって得られた同一スペクトルデータ内のシラン 化合物のアルキル基中のCH3の非対称振動に伴うピーク(2960±5c m-1)とCH2の非対称振動に伴うピーク(2925±5cm-1)の強度 比{I(CH3)/I(CH2)}が0.2以上2.0未満であり、 平均粒子径が0.1~100μm、平均球形度が0.85以上であり、 前記アルキル基が化学式(1)のシラン化合物と化学式(2)のシラン化 合物の両者に由来することを特徴とする球状アルミナ粉末。 CH3(CH2)nSiX3  化学式(1) X=メトキシ基またはエトキシ基、n=5~15の整数 (CH3)3SiX      化学式(2) X=メトキシ基またはエトキシ基」 に訂正する(下線部は、訂正箇所を示す。以下、同じである。)。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項3に、 「前記アルキル基が化学式(1)のシラン化合物と化学式(2)のシラン化 合物の両者に由来することを特徴とする請求項1又は2に記載の球状アルミ ナ粉末。 CH3(CH2)nSiX3  化学式(1) X=メトキシ基またはエトキシ基、n=5~15の整数 (CH3)3SiX      化学式(2) X=メトキシ基またはエトキシ基」 と記載されているのを、 「シラン化合物に由来するアルキル基を表面に有する球状アルミナ粉末であ って、赤外分光分析測定によって得られた同一スペクトルデータ内のシラン 化合物のアルキル基中のCH3の非対称振動に伴うピーク(2960±5c m-1)とCH2の非対称振動に伴うピーク(2925±5cm-1)の強度 比{I(CH3)/I(CH2)}が0.2以上2.0未満であり、 前記アルキル基が化学式(1)のシラン化合物と化学式(2)のシラン化 合物の両者に由来することを特徴とする球状アルミナ粉末。 CH3(CH2)nSiX3  化学式(1) X=メトキシ基またはエトキシ基、n=5~15の整数 (CH3)3SiX      化学式(2) X=メトキシ基またはエトキシ基」 に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項4に、 「全炭素量が0.05~0.9質量%である請求項1~3のいずれか一項に 記載の球状アルミナ粉末。」 と記載されているのを、 「全炭素量が0.05~0.9質量%である請求項2又は3に記載の球状ア ルミナ粉末。」 に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項5に、 「請求項1~4のいずれか一項に記載の球状アルミナ粉末を含有してなるこ とを特徴とする樹脂組成物。」 と記載されているのを、 「請求項2~4のいずれか一項に記載の球状アルミナ粉末を含有してなるこ とを特徴とする樹脂組成物。」 に訂正する。 2 訂正要件の判断 (1)訂正事項1について 訂正前の本件明細書の段落【0014】の「例えば、化学式(1)のうち 炭素数10(n=9)でXがメトキシ基のデシルトリメトキシシランの場合 、ピーク強度比{I(CH3)/I(CH2)}は0.2であり、これに対 して、デシルトリメトキシシランに対して化学式(2)のXがメトキシ基の トリメチルメトキシシランを添加した系のピーク強度比{I(CH3)/I (CH2)}は、トリメトキシシランの添加によりCH3のピーク強度が増 す。このため、例えばデシルトリメトキシシランに対して、トリメチルメト キシシランが等モル量、表面に存在する場合は、ピーク強度比{I(CH3 )/I(CH2)}は0.4と大きくなる。」という記載は、誤記が含まれ ており、実施例の表4(段落【0032】)の実測値の値と整合していない ため、不明瞭となっていた。そこで、訂正事項1は、訂正前の本件明細書段 落【0014】の当該不明瞭な記載を削除するものであるから、「明瞭でな い記載の釈明」を目的とするものである。 そして、訂正事項1は、上記のとおり、単に明細書中の不明瞭な記載を削 除するものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載さ れた事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を 拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、請求項1を削除するものであるから、「特許請求の範囲の 減縮」を目的とするものである。 そして、訂正事項2は、請求項1を削除するものであるから、願書に添付 した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内においてしたもの であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない 。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用する記載であっ たところ、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用しないことで独立 形式請求項へ改める訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項 の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする ものである。 また、訂正事項3は、訂正前の請求項3に記載されていた事項を加入する ことで、球状アルミナ粉末が表面に有するアルキル基の由来となるシラン化 合物をより具体的に限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を 目的とするものである。 そして、訂正事項3は、訂正前の請求項1及び請求項3の記載に基づくも のであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項 の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、 又は変更するものではない。 (4)訂正事項4について 訂正事項4は、訂正前の請求項3において請求項1又は2の記載を引用す る記載であったところ、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関 係を解消して、独立形式請求項へ改める訂正であるから、「特許請求の範囲 の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項 の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。 そして、訂正事項4は、訂正前の請求項1の記載に基づくものであるから 、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内にお いてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する ものではない。 (5)訂正事項5、6について 訂正前の請求項4が請求項1~3のいずれか一項を引用する記載であり、 訂正前の請求項5が請求項1~4のいずれか一項を引用する記載であったと ころ、訂正事項5、6は、各請求項において請求項1を引用しないものとす るための訂正であるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであ る。 そして、訂正事項5、6は、訂正前の請求項4、5において、単に請求項 1を引用しないものとする訂正であるから、願書に添付した明細書又は特許 請求の範囲に記載された事項の範囲内においてしたものであり、また、実質 上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (6)一群の請求項について 訂正前の請求項2~5は、訂正前の請求項1を引用し、これら請求項1~ 5は一群の請求項を構成するところ、訂正事項2~6の特許請求の範囲の訂 正は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、この一群の請求項1~5 を訂正の単位として請求されたものである。 また、訂正事項1の明細書の訂正は、特許法第120条の5第9項で準用 する同法第126条第4号の規定に従い、この一群の請求項の全てを訂正の 単位として請求されたものである。 (7)独立特許要件について 本件特許の請求項1~5の全ての請求項について特許異議の申立てがされ たものであるから、本件訂正において、訂正後の請求項1~5に係る発明に ついて、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条 第7項の独立特許要件についての規定は適用されない。 3 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし 書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、 同条第9項において準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合す るので、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正を認める。 第3 特許異議申立について 1 本件発明 本件訂正後の請求項2~5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明2~5 」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)は、訂正特許請求の 範囲の請求項2~5に記載された事項により特定される次のとおりのもので あると認める(なお、請求項1は、本件訂正により削除された。)。 「【請求項2】 シラン化合物に由来するアルキル基を表面に有する球状アルミナ粉末であ って、赤外分光分析測定によって得られた同一スペクトルデータ内のシラン 化合物のアルキル基中のCH3の非対称振動に伴うピーク(2960±5c m-1)とCH2の非対称振動に伴うピーク(2925±5cm-1)の強度 比{I(CH3)/I(CH2)}が0.2以上2.0未満であり、 平均粒子径が0.1~100μm、平均球形度が0.85以上であり、 前記アルキル基が化学式(1)のシラン化合物と化学式(2)のシラン化 合物の両者に由来することを特徴とする球状アルミナ粉末。 CH3(CH2)nSiX3  化学式(1) X=メトキシ基またはエトキシ基、n=5~15の整数 (CH3)3SiX      化学式(2) X=メトキシ基またはエトキシ基 【請求項3】 シラン化合物に由来するアルキル基を表面に有する球状アルミナ粉末であ って、赤外分光分析測定によって得られた同一スペクトルデータ内のシラン 化合物のアルキル基中のCH3の非対称振動に伴うピーク(2960±5c m-1)とCH2の非対称振動に伴うピーク(2925±5cm-1)の強度 比{I(CH3)/I(CH2)}が0.2以上2.0未満であり、 前記アルキル基が化学式(1)のシラン化合物と化学式(2)のシラン化 合物の両者に由来することを特徴とする球状アルミナ粉末。 CH3(CH2)nSiX3  化学式(1) X=メトキシ基またはエトキシ基、n=5~15の整数 (CH3)3SiX      化学式(2) X=メトキシ基またはエトキシ基 【請求項4】 全炭素量が0.05~0.9質量%である請求項2又は3に記載の球状ア ルミナ粉末。 【請求項5】 請求項2~4のいずれか一項に記載の球状アルミナ粉末を含有してなるこ とを特徴とする樹脂組成物。」 2 取消理由及び特許異議申立理由の概要 (1)取消理由の概要について 訂正前の請求項1~5に係る特許に対して、令和2年9月24日付けで特 許権者に通知した取消理由の要旨は次のとおりである。 ア 取消理由1(引用例1を主たる証拠とした新規性欠如及び進歩性欠如) 訂正前の請求項1、5に係る発明は、引用例2、5の記載を踏まえると、 引用例1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し 、あるいは、引用例1に記載された発明及び引用例2、5に記載された技術 事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本 件特許の請求項1、5に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規 定に違反してされたものである。 イ 取消理由2(引用例3を主たる証拠とした新規性欠如及び進歩性欠如) 訂正前の請求項1、2、4、5に係る発明は、引用例4の記載を踏まえる と、引用例3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該 当し、あるいは、引用例3に記載された発明及び引用例4に記載された技術 事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本 件特許の請求項1、2、4、5に係る特許は、特許法第29条第1項又は第 2項の規定に違反してされたものである。 (引用文献) 引用例1:国際公開第2013/057945号 引用例2:CIKナノテック株式会社、製品紹介、NanoTek、 [online ]、 ( https://cik-nanotek.co.jp/product/nanotek_nanoxide) 引用例3:国際公開第2009/136508号 引用例4:株式会社アドマテックス、製品紹介、製品一覧/アルミナ AO -502、[online ]、 (https://www.admatechs.co.jp/product-admafine-alumina.html) 引用例5:インターネット講座 -分子の世界を覗いてみよう- [online ]、 (http://www.sci.osaka-cu.ac.jp/~bunshi06/4/4-2.html) (なお、引用例1、2は、申立人1、2がそれぞれ提出した甲第1、2号証 、引用例3、4は、申立人1が提出した甲第3、4号証、引用例5は、申立 人2が提出した甲第4号証である。) ウ 取消理由3(サポート要件違反) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第3 6条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされた ものである。 記 訂正前の請求項1、2、4、5 本件明細書の記載によると、「球状アルミナ粉末と樹脂との親和性を高め ることにより、樹脂に高充填した際、低粘度であり、かつ、表面処理後の球 状アルミナ粉末の経時に伴う、樹脂組成物の粘度上昇が少ない球状アルミナ 粉末を提供する」(段落【0006】)ことを発明が解決しようとする課題 とするものと認められる。 これに対して、発明の詳細な説明の実施例の記載からみて、本件発明の課 題が解決できることを当業者が認識できるのは、アルキルトリアルコキシシ ラン及びトリメチルメトキシシランを用いて、強度比I(CH3)/I(C H2)を調整した球状アルミナ粉末について、強度比I(CH3)/I(C H2)が0.2~2.0の範囲である場合のみである。 そうすると、発明の詳細な説明の記載から、単にアルキル基を有する「シ ラン化合物」全般が特定された訂正前の請求項1、2、4、5に係る発明は 、発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。 エ 取消理由4(実施可能要件違反) 本件特許は,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていな い特許出願についてされたものである。 記 本件明細書の段落【0014】で例示された値「0.2」は、同一のシラ ン化合物を用いる「比較例2」のピーク強度比と整合していない。 また、段落【0014】では、デシルトリメトキシシランに対して、トリ メトキシシランが等モル量、アルミナ粉末の表面に存在する場合には、ピー ク強度比{I(CH3)/I(CH2)}は0.4となることが記載されて いるのに対して、実施例1では、加水分解液中にデシルトリメトキシシラン とトリメチルメトキシシランをそれぞれ30重量%となるように等重量で混 合した場合に、ピーク強度比{I(CH3)/I(CH2)}が0.4とな っている。 そうすると、これらの記載が整合していないから、訂正前の発明1~5で 特定するIR強度比{I(CH3)/I(CH2)}が0.2以上2.0未 満に調整することができるのか発明の詳細な説明の記載から理解することが できない。 (2)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の要旨は次のとお りである。 ア 申立人1による申立理由 (ア)申立理由1-1(甲第1号証を主たる証拠とした新規性欠如及び進歩 性欠如) 訂正前の請求項2~4に係る発明は、甲第2号証の記載を踏まえると、甲 第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当す るか、又は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をす ることができたものであるか、あるいは、訂正前の請求項4に係る発明は、 甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された技術事項に基いて 当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの特許は、 特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。 (イ)申立理由1-2(甲第3号証を主たる証拠とした進歩性欠如) 訂正前の請求項4に係る発明は、甲第3号証に記載された発明及び甲第1 号証に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができた ものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされ たものである。 (ウ)申立理由1-3(実施可能要件違反、明確性要件違反) 訂正前の請求項3~5に係る発明において、球状アルミナ粉末の表面のア ルキル基は、化学式(1)及び(2)のシラン化合物の両者に由来すること を特定しているが、球状アルミナ粉末の表面の1つのアルキル基が両者のシ ラン化合物から由来することはありえないから、当該発明は不明確であり、 また、当業者がその実施をすることができず、その技術的意味を理解するこ ともできない。 よって、本件特許は、特許法第36条第4項第1号及び第6項第2号に規 定する要件を満たしていない特許出願についてされたものである。 (証拠方法) 甲第1号証:国際公開第2013/057945号(引用例1) 甲第2号証:CIKナノテック株式会社、製品紹介、NanoTek (引用例2) 甲第3号証:国際公開第2009/136508号(引用例3) 甲第4号証:株式会社アドマテックス、製品紹介、製品一覧/アルミナ A O-502、[online ]、 (https://www.admatechs.co.jp/product-admafine-alumina.html) (引用例4) イ 申立人2による申立理由 申立理由2-1(甲第1号証を主たる証拠とした新規性欠如及び進歩性欠 如) 訂正前の請求項1、2に係る発明は、甲第2~4号証の記載を踏まえると 、甲第1号証に記載された発明であり、訂正前の請求項3~5に係る発明は 、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることがで きたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して されたものである。 (証拠方法) 甲第1号証:国際公開第2013/057945号(引用例1) 甲第2号証:CIKナノテック株式会社、製品紹介、NanoTek (引用例2) 甲第3号証:泉美治ら、「機器分析のてびき(データ集)」増補改訂版 第4刷、1988年、表紙、4頁、奥付 甲第4号証:インターネット講座 -分子の世界を覗いてみよう- [online ]、 (http://www.sci.osaka-cu.ac.jp/~bunshi06/4/4-2.html) (引用例5) 3 引用例の記載事項 (1)引用例1の記載事項 1a「[0001]本発明は、フィラー等として有用な表面被覆処理した無機粉 体に関する。特に、有機ケイ素化合物由来の単分子膜により表面被覆処理し た無機粉体に関する。」 1b「[0008]すなわち本発明は、 式(I) [0009][化1] [0010](式中、R1は置換基を有していてもよい炭素数1~30のアル キル基を表し、X1及びX2は、それぞれ独立して、水酸基、OR2又はO -Si結合のいずれかを表し、・は無機粉体側の原子との結合位置を示す。 )で表される少なくとも一種の構成単位により形成された単分子膜で被覆さ れた無機粉体であって、該単分子膜の少なくとも一部が結晶性を有する無機 粉体、及び (2)R1がオクタデシル基であることを特徴とする上記(1)に記載の 無機粉体に関する。 [0011]また、本発明は、 (3)(A)式(II) R1Si(OH)nX33-n  (II) (式中、R1は置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基を 表し、X3は加水分解性基を表し、nは1~3のいずれかの整数を表す。 )で表される少なくとも一種の化合物 (B)10ppm~飽和濃度の水、及び (C)有機溶媒 を含有する有機薄膜形成溶液に、無機粉体を接触させることを特徴とする、 少なくとも一部が結晶性の単分子膜で被覆された無機粉体の製造方法、 ・・・ 」 1c「[0070](4)有機薄膜形成用溶液の調製方法 本発明の有機薄膜形成用溶液は、例えば以下の方法で作製することができる 。 1)製法1 製法1は、有機溶媒中で、式(IV) R2SiX83   (IV) (式中、R2は上記式(II)におけるR1と同じ置換基を表し、X8は 水酸基又は加水分解性基を表す)で表される有機ケイ素化合物とシラノール 縮合触媒とを混合して得られた有機薄膜形成用溶液を基板と接触させること により、前記基板表面に有機薄膜を形成する有機薄膜形成方法である。 ・・・ [0071]式(IV)で表される有機ケイ素化合物の具体例としては、以下の ものが挙げられる。 (R2が無置換アルキル基、かつ、X8が加水分解性基である化合物の例) CH3Si(OCH3)3、 ・・・ CH3(CH2)5Si(OCH3)3、 CH3(CH2)7Si(OCH3)3、 CH3(CH2)9Si(OCH3)3、 CH3(CH2)11Si(OCH3)3、 CH3(CH2)13Si(OCH3)3、 CH3(CH2)15Si(OCH3)3、 CH3(CH2)17Si(OCH3)3、 CH3(CH2)19Si(OCH3)3、 CH3(CH2)21Si(OCH3)3、 CH3(CH2)9Si(OCH2CH3)3 ・・・  」 1d「[0108](1)有機薄膜形成用溶液の調製 1)有機薄膜形成用溶液(1)の調製 200mlの四つ口フラスコに、室温でオクタデシルトリメトキシシラン (Gelest社製:純度95%)16.1g(43.0mmol)を仕込み、テ トライソプロポキシチタン(日本曹達製)4.6g(16.4mmol)を 加え、トルエン77.6gを加えた。 この溶液に蒸留水1.7gを加え、室温で24時間反応させ、溶液Aを得 た。 次いで、1000mlの四つ口フラスコに、室温でオクタデシルトリメト キシシラン(以下、ODSとも言う)78.9g(200mmol)を仕込 み、前記溶液Aを0.16g加え、トルエンを419g加えて希釈した。 この溶液に蒸留水3.7gを加え、室温で10日間反応させて溶液Bを得 た。この溶液BをGPC分析した結果、単量体:58.6%、2量体:3. 7%、3量体:3.3%、4量体:34.4%(相対面積比)であった。 その後、1000mLの四つ口フラスコに、室温で前記溶液Bを20g仕 込み、トルエン480g加えて希釈し、有機薄膜形成溶液(1)を得た。H PLC分析した結果、単量体の加水分解物(式(II)に相当)は、有機薄 膜形成溶液中0.07%であった。」 1e「[0115]2-4)2000mLの四つ口フラスコに、前記有機薄膜形 成用溶液(1)1000gを仕込み、平均粒径31nmのアルミナ(CIK ナノテック社製、NanoTek Al2O3、比表面積51.9(m2 /g))を10g加えて、24時間撹拌した。 その後、遠心分離機で固形分を分離し、分離した固形分をトルエンで再分 散して洗浄、遠心分離での固形分分離を行った。この洗浄操作を数回行った 。 洗浄して分離した固形分は、50-100℃、真空ポンプ減圧下(1kP a以下)、約7時間で減圧乾燥し、表面被覆処理粉体E-8を得た。」 1f「[0129]2) (2)で得られた表面被覆処理粉体E-8~E10に ついて、以下の測定を行った。 2-1)熱分析測定 熱重量測定・示差熱分析計(リガク社 TG8120 測定重量:約10 mg)を使用した。 使用容器:アルミナ容器、流量:Air500ml/分、 測定条件:観察温度範囲RT~1000℃、昇温速:10℃/分 スペクトル処理:示差熱分析によって検出されるODS由来の分解ピーク の発生開始温度からピークが消滅する温度までの重量減少率を、熱重量測定 計で測定した。その結果を表2に示した。 [0130][表2] 」 1g「[0133]3)表面被覆処理粉体のIR測定 (2)で得られた表面被覆処理粉体のうち、E-7(平均粒径1000nm )、E-8(平均粒径31nm)、E-9(平均粒径109nm)について 下記の条件で、IRスペクトルの測定を行った。未処理品との差スペクトル を図3に示した。 フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR) 測定手法:拡散反射法 測定装置:Thermo Fisher Scientific社製Magna 550型FT-IR アタッチメント:Harrick社製The Seagull 試料前処理:各粉末を試料カップに入れ,表面を平らにならした状態に調 整した。 測定条件:非偏光、入射角60度 スペクトル処理:得られたデータを、規定に従いKM変換を実施した。 どのスペクトルにおいても、2918cm-1、2850cm-1に、 CH2のオールトランスでジグザグ構造を示す、非対称伸縮振動と対称伸 縮振動のピークがあり、ODSのアルキル基が非常に規則的に配列しており 、結晶性であることが示されている。1468cm-1のピークも、単分 子膜が結晶性であることを示している。 また、2960cm-1にODSのアルキル基の末端のCH3基の伸縮 振動が観察されているので、本発明で無機粒子表面に形成された膜は、最表 面にCH3基が規則的に並んだ単分子膜であることが推察される。」 1h「[0134]・・・・・ 本発明の表面被覆処理無機粉体は、切削・裁断加工用品、陶器・磁器、医 療・医薬品、顔料・化粧品、車両部品、電気・電子素子部品、光学・光学素 子部品、建材、樹脂製品、繊維、摺動・潤滑剤、火薬、水質や土壌の浄化・ 改質助剤、触媒、吸着剤などの分野で有用である。特に、ディスプレイ用電 極材用ペースト、積層セラミックコンデンサー用電極材用ペースト、半導体 用封止剤用無機フィラー、アンダーフィル用無機フィラー、実装基板用放熱 剤用無機フィラー、放熱用充填剤用無機フィラー、放熱材料用フィラー、蛍 光体粉末、太陽電池用インク用無機粉末、トナー用微粒子、各種添加剤用フ ィラー、クロマトグラム用粉体などのペーストやインク、粉体として有用で ある。」 1i「 」 (2)引用例2の記載事項 2a「 」 2b「 」 (3)引用例3の記載事項 3a「[0001] 本発明は、電子部品等の熱伝導部品等に使用される熱伝導 性樹脂組成物に関するものである。詳しくは、高い熱伝導性を有するポリマ ーベースのゴム,ゲル,パテ等の放熱材料組成物を提供し、またそれら放熱 材料の製造に有用な組成物に関する。」 3b「[0011] 小粒径熱伝導性無機粉体はR(CH3)aSi(OR’ )3-a(Rは炭素数6~20の非置換または置換有機基、R’は炭素数 1~4のアルキル基、aは0もしくは1)のシラン、もしくはその部分加水 分解物で表面処理される。R(CH3)aSi(OR’)3-a(Rは炭 素数6~20の非置換または置換有機基、R’は炭素数1~4のアルキル基 、aは0もしくは1)で示されるシラン化合物(以下単に「シラン」という 。)は、一例としてヘキシルトリメトキシラン,ヘキシルトリエトキシシラ ン,オクチルトリメトキシシラン,オクチルトリエトキシラン,デシルトリ メトキシシラン,デシルトリエトキシシラン,ドデシルトリメトキシシラン ,ドデシルトリエトキシシラン,ヘキサドデシルトリメトキシシラン,ヘキ サドデシルトリエトキシシシラン,オクタデシルトリメトキシシラン,オク タデシルトリエトキシシシラン等がある。前記シラン化合物は、一種又は二 種以上混合して使用することができる。 [0012] 前記成分の小粒径熱伝導性無機粉体は、R(CH3)aSi( OR’)3-a(Rは炭素数6~20の非置換または置換有機基、R’は 炭素数1~4のアルキル基、aは0もしくは1)のシランは一種又は二種以 上の混合物で表面処理する。ここでいう表面処理とは共有結合のほか吸着な ども含む。」 3c「[0036] ・・・・・ (5)シラン シランとしてヘキシルトリエトキシシランKBE3063(製品名、信越 化学工業株式会社製)を使用した。KBE3063の必要量=熱伝導性無機 粉体の量(g)×熱伝導性無機粉体の比表面積(m2/g)/シランの最小 被覆面積(m2/g)で算出した。KBE3063の最小被覆面積は31 5m2/gであることから1000g×3.2m2/g/315m2/g =10.2gとした。 (6)無機粉体のシラン処理1 小粒径熱伝導性無機粉体は以下の処理をおこなった。 ・・・・・ (乾式法2) ブレンダーにAL43Lを1kg投入し撹拌しながらKBE3063、1 0.2g、イソプロパノール20g、水1gの割合で混合した薬剤を少しず つ添加し、15分撹拌し、1日放置後、100℃で2時間乾燥した。 ・・・・・ 」 3d「[0110] (実施例43~44、比較例50~52) 次にシリコーン成分としてミラブル型シリコーンゴムを用いて検討した。 [0111] ミラブル型シリコーンゴムとしてはTSE201(製品名、モメ ンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)及びSH8311CVU( 製品名、東レ・ダウコーニング社製)を使用した。 [0112] 小粒径熱伝導性無機粉体としてアルミナA0502(製品名、株 式会社アドマファイン社製、比表面積7.5m2/g)、大粒径熱伝導性 無機粉体としてアルミナAS20(製品名、昭和電工株式会社製、比表面積 0.8m2/g)、シランとしてヘキシルトリメトキシシラン、KBE3 063(製品名、信越化学工業株式会社製)をおのおのの処理に使用した。 [0113] 小粒径熱伝導性無機粉体を処理するのに必要な量は、「“KBE 3063”の必要量=熱伝導性無機粉体の量(g)×熱伝導性無機粉体の比 表面積(m2/g)/シランの最小被覆面積(m2/g)」で算出した。 “KBE3063”の最小被覆面積は315m2/gであることから、1 000g×7.5m2/g/315m2/g=23.8gとした。 [0114] 小粒径熱伝導性無機粉体AL43Lは、実施例の冒頭部分の材料 成分(6)の処理をおこなった。 [0115] 大粒径熱伝導性無機粉体AS20(比表面積:0.8m2/g )も用意した。この場合KBE3063の必要量は2.5gである。大粒径 熱伝導性無機粉体は以下の処理をおこなった。 白金触媒はTC-25A(製品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリ アルズ社製)を使用した。 架橋剤はTC-25B(製品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリア ルズ社製)を使用した。 [0116] AS20の場合:ブレンダーにAS20を1kg投入し撹拌しな がら、KBE3063、2.5g、イソプロパノール10g、水0.5gの 割合で混合し薬剤を少しずつ添加し15分撹拌し1日放置後、100℃で2 時間乾燥した。 (シート成形方法) フッ素離型処理をしたポリエステルフィルムに厚さ2mmの金枠を置きコ ンパウンドを流し込みもう一枚のフッ素離型処理をしたポリエステルフィル ムを載せた。これを5MPaの圧力で170℃、10分硬化した。さらに2 00℃、4時間オーブンで熱処理をした。 [0117] 表14に実施例43~44、比較例50~52の条件と結果を示 す。 [0118][表14] 」 (4)引用例4の記載事項 4a「 AO-502 」 (5)引用例5の記載事項 5a「赤外吸収スペクトル(IR spectrum) 分子の振動や回転は電子レンジでお馴染みの赤外領域の電磁波を吸収する ことによって励起されます。官能基はそれぞれ特徴的な吸収し、この吸収は 官能基ないで局所的に起こり、他の部分に及ぶことはないので、赤外吸収ス ペクトルでは、特定の官能基の検出に用いられます。 赤外吸収スペクトルの利用 赤外吸収スペクトルは、いろいろな分子の官能基を、吸収位置と吸収の強 度、形で判断します。化合物データベースにはこれらの情報が収録されてい るので、それらを参考に化合物の特性吸収帯から化合物内に含まれる官能基 と構造を特定していきます。以下にその一部を表に示します。」 5b「 」 4 判断 (1)引用例1を主たる証拠とした新規性欠如及び進歩性欠如について 引用例1は、申立人1及び2がそれぞれ提出した甲第1号証であるから、 取消理由1、申立理由1-1、及び、申立理由2-1を纏めて検討する。 ア 引用例1に記載された発明 記載事項1a~1eによると、引用例1には、オクタデシルトリメトキシ シランを用いて調製した有機薄膜形成溶液(1)によりアルミナを処理して 表面被覆処理粉体E-8を得ることが記載されている。 また、記載事項1g、1iによると、上記表面被覆処理粉体E-8は、I Rスペクトルの測定により、2960cm-1にアルキル基の末端のCH 3基の伸縮振動のピークが、2919cm-1にCH2基の伸縮振動のピ ークがそれぞれ観察される。 これらの記載事項を、本件発明2の記載に即して整理すると、引用例1に は、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認めら れる。 「オクタデシルトリメトキシシランに由来するアルキル基を表面に有するア ルミナ粉体であって、IRスペクトルの測定によって得られたデータのオク タデシルトリメトキシシランのアルキル基の末端のCH3の伸縮振動のピ ーク(2960cm-1)とCH2基の伸縮振動のピーク(2919cm -1)を有するアルミナ粉体。」 イ 本件発明2について 本件発明2と引用発明1とを対比する。 引用発明1の「オクタデシルトリメトキシシラン」、「IRスペクトルの 測定によって得られたデータ」、「アルミナ粉体」は、本件発明2の「CH 3(CH2)nSiX3 化学式(1) X=メトキシ基またはエトキシ基、n =5~15の整数」の「シラン化合物」、「赤外分光分析測定によって得ら れた同一スペクトルデータ内」、「アルミナ粉末」にそれぞれ相当する。 また、引用発明1の「アルキル基の末端のCH3の伸縮振動のピーク( 2960cm-1)」は、本件発明2の「アルキル基中のCH3の非対称 振動に伴うピーク(2960±5cm-1)」に、引用発明1の「CH2 基の伸縮振動のピーク」は、本件発明2の「CH2の非対称振動に伴うピー ク」にそれぞれ相当する。 そうすると、本件発明2と引用発明1とは、 「シラン化合物に由来するアルキル基を表面に有するアルミナ粉末であって 、赤外分光分析測定によって得られた同一スペクトルデータ内のシラン化合 物のアルキル基中のCH3の非対称振動に伴うピーク(2960±5cm -1)とCH2の非対称振動に伴うピークとを有し、 前記アルキル基が化学式(1)のシラン化合物に由来するアルミナ粉末。 CH3(CH2)nSiX3  化学式(1) X=メトキシ基またはエトキシ基、n=5~15の整数」 の点で一致し、以下の点で相違している。 相違点1:本件発明2は、アルミナ粉末が球状であって、平均粒子径が0. 1~100μm、平均球形度が0.85以上であることが特定されているの に対して、引用発明1のアルミナ粉体は球状であることは規定されていない 点。 相違点2:本件発明2は、シラン化合物のアルキル基中のCH3の非対称振 動に伴うピーク(2960±5cm-1)とCH2の非対称振動に伴うピ ーク(2925±5cm-1)の強度比{I(CH3)/I(CH2)} が0.2以上2.0未満であることが特定されているのに対して、引用発明 1は、オクタデシルトリメトキシシランのアルキル基の末端のCH3の伸縮 振動のピークとCH2基の伸縮振動のピークとの比は規定されておらず、ま た、前記CH2の伸縮振動のピークは、2919cm-1にある点。 相違点3:シラン化合物に由来するアルキル基について、本件発明2では、 さらに、「(CH3)3SiX 化学式(2) X=メトキシ基またはエト キシ基」のシラン化合物に由来するアルキル基を有しているのに対して、引 用発明1では、その点が明らかでない点。 事案に鑑み、上記相違点3について検討する。 引用発明1は、記載事項1b~1eによると、オクタデシルトリメトキシ シラン(CH3(CH2)17Si(OCH3)3)に替えて、炭素数1 ~30のアルキル基R2を含む「R2SiX83 (IV)」で表せられ るシラン化合物を用いてもよいことが記載されているものの、当該シラン化 合物に加えて、本件発明2の「(CH3)3SiX 化学式(2) X=メ トキシ基またはエトキシ基」のシラン化合物を用いることは何ら記載されて いないし、このようなことが自明な事項ともいえないため、相違点3は、本 件発明2と引用発明1との実質的な相違点であるといえる。 次に、相違点3に係る本件発明2の構成の容易想到性を検討すると、引用 例2は、甲1の記載事項1eのCIKナノテック社製の「アルミナ」につい て、引用例5は、赤外吸収スペクトルにおけるメチレン基などのバンド(特 性吸収)(cm-1)について、それぞれ記載されているにすぎない。 そうすると、引用例1、2、5によっては、本件発明2のように、化学式 (1)のシラン化合物に加えて、化学式(2)のシラン化合物に由来するア ルキル基をアルミナ粉末の表面に有するように構成することは、何ら導出で きるものではない。 加えて、引用例3は、記載事項3bによると、アルミナ粉体をR(CH 3)aSi(OR’)3-a(Rは炭素数6~20の非置換または置換有 機基、R’は炭素数1~4のアルキル基、aは0もしくは1)で示されるシ ラン化合物で処理することが記載されているにすぎず、本件発明2の化学式 (2)のシラン化合物を用いることは想定していない。また、引用例4は、 「アルミナAO-502」について記載されているにすぎない。さらに、取 消理由通知で引用してない、申立人2が提出した甲第3号証(以下、「甲第 3号証」という。)は、引用例5と同様に、2925±5cm-1のメチ レン基に対するメチル基のピーク強度比を示すものにすぎない。そのため、 本件発明2のように、化学式(1)のシラン化合物、及び、化学式(2)の シラン化合物の両者に由来するアルキル基をアルミナ粉末の表面に設けるこ とが公知技術であるといえない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、引用例 1に記載された発明とはいえず、また、引用例1に記載された発明、並びに 、引用例2~5及び甲第3号証に記載された技術事項に基いて当業者が容易 に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 本件発明3について 本件発明3と引用発明1とを対比する。 引用発明1の「オクタデシルトリメトキシシラン」、「IRスペクトルの 測定によって得られたデータ」、「アルミナ粉体」は、本件発明3の「CH 3(CH2)nSiX3 化学式(1) X=メトキシ基またはエトキシ基、n =5~15の整数」の「シラン化合物」、「赤外分光分析測定によって得ら れた同一スペクトルデータ内」、「アルミナ粉末」にそれぞれ相当する。 また、引用発明1の「アルキル基の末端のCH3の伸縮振動のピーク( 2960cm-1)」は、本件発明2の「アルキル基中のCH3の非対称 振動に伴うピーク(2960±5cm-1)」に、引用発明1の「CH2 基の伸縮振動のピーク」は、本件発明2の「CH2の非対称振動に伴うピー ク」にそれぞれ相当する。 そうすると、本件発明3と引用発明1とは、 「シラン化合物に由来するアルキル基を表面に有するアルミナ粉末であって 、赤外分光分析測定によって得られた同一スペクトルデータ内のシラン化合 物のアルキル基中のCH3の非対称振動に伴うピーク(2960±5cm -1)とCH2の非対称振動に伴うピークとを有し、 前記アルキル基が化学式(1)のシラン化合物に由来するアルミナ粉末。 CH3(CH2)nSiX3  化学式(1) X=メトキシ基またはエトキシ基、n=5~15の整数」 の点で一致し、以下の点で相違している。 相違点4:本件発明3は、シラン化合物のアルキル基中のCH3の非対称振 動に伴うピーク(2960±5cm-1)とCH2の非対称振動に伴うピ ーク(2925±5cm-1)の強度比{I(CH3)/I(CH2)} が0.2以上2.0未満であることが特定されているのに対して、引用発明 1は、オクタデシルトリメトキシシランのアルキル基の末端のCH3の伸縮 振動のピークとCH2基の伸縮振動のピークとの比は規定されておらず、ま た、前記CH2の伸縮振動のピークは、2919cm-1にある点。 相違点5:シラン化合物に由来するアルキル基について、本件発明3では、 さらに、「(CH3)3SiX 化学式(2) X=メトキシ基またはエト キシ基」のシラン化合物に由来するアルキル基を有しているのに対して、引 用発明1では、その点が明らかでない点。 事案に鑑み、上記相違点5について検討すると、相違点5は、上記イにお いて検討した相違点3と同じ事項であるから、当該相違点3と同様に、相違 点5は、本件発明3と引用発明1との実質的な相違点であるといえるし、ま た、相違点5に係る本件発明3の構成は、容易想到なことであるといえない 。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、引用例 1に記載された発明とはいえず、また、引用例1に記載された発明、並びに 引用例2~5及び甲第3号証に記載された技術事項に基いて当業者が容易に 発明をすることができたものであるとはいえない。 エ 本件発明4、5について 本件発明4、5は、本件発明2又は3の特定事項をさらに減縮したもので あるから、上記イ又はウと同様の理由により、引用例1に記載された発明と はいえず、また、引用例1に記載された発明、並びに、引用例2~5及び甲 第3号証に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることがで きたものであるとはいえない。 オ 小括 以上のとおりであるから、取消理由1、申立理由1-1、及び、申立理由 2-1は、いずれも理由がない。 (2)引用例3を主たる証拠とした新規性欠如及び進歩性欠如について 引用例3は、申立人1が提出した甲第3号証であるから、取消理由2、及 び、申立理由1-2を纏めて検討する。 ア 引用例3に記載された発明 記載事項3c、3dによると、小粒径熱伝導性無機粉体としてアルミナA 0502(比表面積7.5m2/g)を、ヘキシルトリエトキシシランK BE3063により表面処理して得られたアルミナ粉体が記載されていると いえる(なお、記載事項3cの[0112]に記載の「シランとしてヘキシ ルトリメトキシシラン、KBE3063」は、「シランとしてヘキシルトリ エトキシシラン、KBE3063」の誤記と認められる)。 このことから、本件発明2の記載に即して整理すると、引用例3には、次 の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。 「ヘキシルトリエトキシシランにより表面処理されたアルミナ粉体。」 イ 本件発明2について 本件発明2と引用発明3とを対比する。 引用発明3の「ヘキシルトリエトキシシラン」、「アルミナ粉体」は、本 件発明2の「CH3(CH2)nSiX3 化学式(1) X=メトキシ基また はエトキシ基、n=5~15の整数」の「シラン化合物」、「アルミナ粉末 」に相当する。また、引用発明3において、アルミナ粉体をヘキシルトリエ トキシシランにより表面処理することにより、アルミナ粉体の表面にヘキシ ルトリエトキシシラン由来のアルキル基がアルミナ粉末の表面に結合するこ とは、引用例3の記載及び技術常識からして明らかである。 そうすると、本件発明2と引用発明3とは、 「シラン化合物に由来するアルキル基を表面に有するアルミナ粉末であって、 前記アルキル基が化学式(1)のシラン化合物に由来するアルミナ粉末。 CH3(CH2)nSiX3  化学式(1) X=メトキシ基またはエトキシ基、n=5~15の整数」 の点で一致し、以下の点で相違している。 相違点6:本件発明2は、アルミナ粉末が球状であって、平均粒子径が0. 1~100μm、平均球形度が0.85以上であることが特定されているの に対して、引用発明3のアルミナ粉体は球状であることは規定されていない 点。 相違点7:本件発明2は、赤外分光分析測定によって得られた同一スペクト ルデータ内のシラン化合物のアルキル基中のCH3の非対称振動に伴うピー ク(2960±5cm-1)とCH2の非対称振動に伴うピーク(2925 ±5cm-1)の強度比{I(CH3)/I(CH2)}が0.2以上2. 0未満であることが特定されているのに対して、引用発明3は、このような 規定がされていない点。 相違点8:シラン化合物に由来するアルキル基について、本件発明2では、 さらに、「(CH3)3SiX 化学式(2) X=メトキシ基またはエト キシ基」のシラン化合物に由来するアルキル基を有しているのに対して、引 用発明3は、その点が明らかでない。 事案に鑑み、相違点8について検討する。 引用例3の記載事項3bによると、引用例3には、引用発明3のヘキシル トリエトキシシランを含むR(CH3)aSi(OR’)3-a(Rは炭 素数6~20の非置換または置換有機基、R’は炭素数1~4のアルキル基 、aは0もしくは1)により、アルミナ粉体を処理することが記載されてい るものの、当該シラン化合物に加えて、本件発明2で特定した「(CH3) 3SiX 化学式(2) X=メトキシ基またはエトキシ基」のシラン化合 物を用いて表面処理することは何ら記載されていないし、このようなことが 自明な事項ともいえないため、相違点8は、本件発明2と引用発明3との実 質的な相違点であるといえる。 次に、相違点8に係る本件発明2の構成の容易想到性を検討すると、上記 (1)イで検討したとおり、引用例1、2、4、5、及び、甲第3号証の いずれにも、本件発明2のように、化学式(1)のシラン化合物、及び、化 学式(2)のシラン化合物の両者に由来するアルキル基をアルミナ粉末の表 面に設けることは記載も示唆もされてない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、引用例 3に記載された発明とはいえず、また、引用例3に記載された発明、並びに 、引用例1、2、4、5及び甲第3号証に記載された技術事項に基いて当業 者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 本件発明3について 本件発明3と引用発明3とを対比する。 引用発明3の「ヘキシルトリエトキシシラン」、「アルミナ粉体」は、本 件発明3の「CH3(CH2)nSiX3 化学式(1) X=メトキシ基また はエトキシ基、n=5~15の整数」の「シラン化合物」、「アルミナ粉末 」に相当する。また、引用発明3において、アルミナ粉体をヘキシルトリエ トキシシランにより表面処理することにより、アルミナ粉体の表面にヘキシ ルトリエトキシシラン由来のアルキル基がアルミナ粉末の表面に結合するこ とは、引用例3の記載及び技術常識からして明らかである。 そうすると、本件発明3と引用発明3とは、 「シラン化合物に由来するアルキル基を表面に有するアルミナ粉末であって 、 前記アルキル基が化学式(1)のシラン化合物に由来するアルミナ粉末。 CH3(CH2)nSiX3  化学式(1) X=メトキシ基またはエトキシ基、n=5~15の整数」 の点で一致し、以下の点で相違している。 相違点9:本件発明3は、赤外分光分析測定によって得られた同一スペクト ルデータ内のシラン化合物のアルキル基中のCH3の非対称振動に伴うピー ク(2960±5cm-1)とCH2の非対称振動に伴うピーク(2925 ±5cm-1)の強度比{I(CH3)/I(CH2)}が0.2以上2. 0未満であることが特定されているのに対して、引用発明3は、このような 規定がされていない点。 相違点10:シラン化合物に由来するアルキル基について、本件発明3では 、さらに、「(CH3)3SiX 化学式(2) X=メトキシ基またはエ トキシ基」のシラン化合物に由来するアルキル基を有しているのに対して、 引用発明3はその点が明らかでない点。 事案に鑑み、上記相違点10について検討すると、相違点10は、上記イ において検討した相違点8と同じ事項であるから、当該相違点8と同様に、 相違点10は、本件発明3と引用発明3との実質的な相違点であるといえる し、また、相違点10に係る本件発明3の構成は、容易想到なことであると いえない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、引用例 3に記載された発明とはいえず、また、引用例3に記載された発明、並びに 引用例1、2、4、5及び甲第3号証に記載された技術事項に基いて当業者 が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 エ 本件発明4、5について 本件発明4、5は、本件発明2又は3の特定事項をさらに減縮したもので あるから、上記イ又はウと同様の理由により、引用例3に記載された発明と はいえず、また、引用例3に記載された発明、並びに、引用例1、2、4 、5及び甲第3号証に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をす ることができたものであるとはいえない。 オ 小括 以上のとおりであるから、取消理由2、及び、申立理由1-2は、いずれ も理由がない。 (3)取消理由3(サポート要件違反)について 取消理由3は、上記2(1)ウに記載したように、本件発明の課題は、ア ルキルトリアルコキシシラン及びトリメチルメトキシシランのシラン化合物 を用いて強度比I(CH3)/I(CH2)を0.2~2.0の範囲にした ことにより解決できると認められることを指摘したところ、本件訂正により 、本件発明において、球状アルミナ粉末の表面のアルキル基は、「CH3( CH2)nSiX3 化学式(1) X=メトキシ基またはエトキシ基、n= 5~15の整数」のシラン化合物と「(CH3)3SiX 化学式(2) X=メトキシ基またはエトキシ基」のシラン化合物の両者に由来することが 特定された。 したがって、本件発明は、本件発明の課題を解決できると認識できる範囲 のものとなった。 よって、取消理由3は、理由がない。 (4)取消理由4(実施可能要件違反)について 取消理由4は、上記2(1)エに記載したように、明細書の段落【001 4】の記載が、実施例の記載と整合しない不明瞭な記載であることを指摘し たところ、当該記載は、本件訂正により削除された。これにより、本件明細 書の記載は明瞭なものとなり、実施例を含む本件明細書の発明の詳細な説明 は、当業者が本件発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載 したものであるといえる。 よって、取消理由4は、理由がない。 (5)申立理由1-3(実施可能要件違反、明確性要件違反)について 申立人1は、訂正前の請求項1で特定する「シラン化合物に由来するアル キル基」が、化学式(1)及び(2)の両者に由来することは不明確である ことを主張している。 しかし、化学式(1)及び(2)のシラン化合物によりアルミナ粉末を処 理した場合、それぞれのシラン化合物に由来する多数のアルキル基がアルミ ナ粉末の表面を覆うことは技術常識からして明らかであり、本件発明におい て「アルキル基が化学式(1)のシラン化合物と化学式(2)のシラン化合 物の両者に由来する」との記載は、不明確であるといえないから、申立人1 の主張は採用できるものでない。 よって、申立理由1-3は、理由がない。 第4 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議 申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件請求項2~5に係る 特許を取り消すことはできない。 そして、他に本件請求項2~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しな い。 また、請求項1は、本件訂正により削除されたため、本件請求項1に係る 特許に対する特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない ものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条 の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2020-700214

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