特許異議申立
2023-700332
遊技機
- 審判番号
- 2023-700332
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-034254
- 登録番号
- 7156978
- 請求日
- 2023年03月31日
- 審決日
- 2023年06月20日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社三共
- 【権利者代理人】弁理士法人深見特許事務所
- 【異議申立人】日本電動式遊技機特許 株式会社
- 【異議申立人代理人】弁理士法人平木国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 長井 真一
- 審判官 澤田 真治
- 審判官 太田 恒明
- 分類
- P1651.1 -Y (A63F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項、特許法第2条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特許第7156978号発明「遊技機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7156978号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7156978号の請求項1に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成31年2月27日に出願した特願2019-34254号であって、令和4年10月11日にその特許権の設定登録がされ、同月19日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許に対し、令和5年3月31日に特許異議申立人日本電動式遊技機特許株式会社(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、前記特許掲載公報の発行の日から6月が経過する前の同年4月5日に申立人により前記申立てに係る特許異議申立書について補正がされた。
第2 特許異議の申立てについて
1 本件特許発明
本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(なお、A~Dの符号は、当審にて分説するために付した。分説された本件特許発明の発明特定事項を、符号に基づき「特定事項A」等という。以下同様。)。
「【請求項1】
A 遊技を行う遊技機であって、
B 特典の付与を示唆する特定演出を実行する特定演出実行手段を備え、
C 前記特定演出実行手段は、
C-1 前記特定演出において文字表示を行うことが可能であり、
C-2 前記特定演出において前記特典の付与を遊技者に期待させる期待表示を行うことが可能であり、
C-3 前記特典が付与されるときは、前記特典が付与されないときよりも高い割合で前記期待表示を行い、
C-4 前記期待表示を行っている期間に前記文字表示を行う場合、当該期待表示を行っていない期間に行う前記文字表示の色とは異なる期待色で当該文字表示を行い、
C-5 前記特定演出において、
C-6 前記特典が付与されるときには当該特典の付与に対応する特定表示を特定タイミングから行う一方で、当該特典が付与されないときには当該特定表示とは異なる非特定表示を当該特定タイミングから行い、
C-7 前記特定タイミングよりも前に前記文字表示を行う場合、前記特典が付与される割合に応じて、当該文字表示の色を異ならせ、
C-8 前記特定表示を行っている間に前記文字表示を行う場合、当該文字表示の色を異ならせることなく当該文字表示を予め定められた色で行う、
D 遊技機。」
2 特許異議申立ての理由の概要
申立人は、令和5年4月5日に補正された特許異議申立書(以下「異議申立書」という。)において、証拠方法として甲第1号証~甲第4号証を提出し、本件特許に対し次の理由を申し立てている。
本件特許発明は、自然法則を利用していないもの、技術的思想でないものであるから、特許法第2条第1項に規定する「発明」に該当するものではなく、本件特許は、同法第29条第1項柱書の規定に違反してなされたものである。
よって、本件特許は、同法第113条第2号の規定に該当し、同法第114条第2項の規定により取り消されるべきである。
<証拠方法>
甲第1号証:特開2019-17508号公報
甲第2号証:特開2018-196541号公報
甲第3号証:特開2018-115025号公報
甲第4号証:特開2018-75181号公報
第3 当審の判断
1 特許法第29条第1項柱書にいう「発明」の該当性について
特許法第29条第1項柱書(以下「同法29条1項柱書」と略す。)は「産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。」と定め、その前提となる「発明」については同法第2条第1項(以下「同法2条1項」と略す。)が「この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」と定めている。
そうすると、本件特許発明が、(1)産業上利用できる発明ではない場合、(2)自然法則を利用した発明でない場合、(3)技術的思想の創作となる発明でない場合、(4)技術的思想の創作のうち高度なものでない場合、のいずれかに該当するときは、同法29条1項柱書にいう「発明」に該当しないことになるところ、上記第2の2によれば、申立人は、前記(2)又は(3)の場合に該当することを理由に、本件特許発明は、同法29条1項柱書にいう「発明」に該当しないという旨申し立てているから、以下、この点について検討する。
ここで、本件特許発明は、特典を付与し、特典の付与を示唆する演出において台詞に係る文字表示を行う遊技機に関するものであるところ、どのような表示態様で台詞を表示するかを決めること自体や一定の内容を有する台詞を単に表示すること自体は、人為的な取決め又は情報の単なる提示に過ぎないものとして、自然法則を利用した技術的思想の創作とはいえないのではないかが一応問題となる。
請求項に記載された特許を受けようとする発明が、同法2条1項に規定する「発明」といえるか否かは、それが、特許請求の範囲の記載や願書に添付した明細書の記載及び図面に開示された、「特許を受けようとする発明」が前提とする技術的課題、その課題を解決するための技術的手段の構成及びその構成から導かれる効果等の技術的意義に照らし、全体として「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するか否かによって判断すべきものである(知財高裁令和2年6月18日判決、令和元年(行ケ)第10110号参照)。
そして、本件特許発明が、特典を付与し、特典の付与を示唆する演出において台詞に係る文字表示を行う遊技機に関するものであることからみて、そこにおいて生じる一定の技術的課題を解決しようとしたものであり、それが全体として一定の技術的意義を有するのであれば、同発明は自然法則を利用した発明であり、かつ技術的思想の創作となる発明であると解することができる(知財高裁平成21年6月16日判決、平成20年(行ケ)第10279号参照)。
そこで、以下において、本件特許発明の技術的課題及び技術的意義の観点から、本件特許発明の発明該当性について検討する。
2 本件特許発明の技術的課題について
本件特許発明が解決しようとする技術的課題は、本件特許の明細書に以下のとおり記載されている。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技を行う遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
遊技機として、各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を備え、可変表示部を変動表示した後、可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、該表示結果に応じて入賞が発生可能なスロットマシンがある。さらに、遊技機として、遊技媒体である遊技球を発射装置によって遊技領域に発射し、遊技領域に設けられた入賞口などの入賞領域に遊技球が入賞すると、遊技用価値を遊技者に付与するパチンコ遊技機がある。
【0003】
このような遊技機として、可変表示装置の表示領域に一連の動画像を再生表示するとともに、再生表示に合わせて台詞表示エリアに台詞を表示する遊技機があった(たとえば、特許文献1)。」(下線部は当審において付した。以下同様。)
(2)「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した遊技機においては、動画像を再生表示する演出において、台詞の表示のような文字表示を行うにあたり改良の余地があった。
【0006】
この発明は、かかる実情に鑑み考え出されたものであり、文字表示に関する遊技の興趣を向上させることができる遊技機を提供することである。」
(3)「【0024】
(特定演出)
サブ制御部91は、複数種類の特定演出を実行可能である。特定演出は、特典の付与を示唆する演出である。複数種類の特定演出には、バトル演出とプレミア演出とが含まれる。バトル演出には、バトル演出Aとバトル演出Bとが含まれる。
・・・
【0031】
バトル演出において、特定タイミングから、特定表示および非特定表示のうちのいずれかが行われる。特定表示は、特典の付与に対応する表示である。非特定表示は、特定表示とは異なる表示である。特典が付与されるときには特定表示が行われ、特典が付与されないときには非特定表示が行われる。
・・・
【0037】
バトル演出において、有利表示を行っている間に字幕表示を行う場合、当該字幕表示の色を異ならせることなく字幕表示を予め定められた色(以下、「特定色」とも称する)で行う。たとえば、特定色は虹色である。つまり、バトル演出において、有利表示を行っている間に字幕表示を行う場合、常に虹色で字幕表示を行うことになる。字幕表示を虹色で表示する場合、虹のように7色で字幕画像を表示する。本実施の形態においては、単色ではない虹色も特定色に含まれる。バトル演出において、特定タイミングよりも前に字幕表示を行う場合、字幕表示を特定色とは異なる色(以下、「所定色」とも称する)で行う。たとえば、所定色は白色である。
【0038】
たとえば、有利表示であることを示す動画を再生しているような場合に、遊技に慣れていない遊技者は、当該動画が有利表示であるのか否かが判別できないような場合もある。特定タイミング以降で有利表示を行っている間に字幕表示を行う場合、虹色に変化させて字幕表示を行うことで、字幕表示の色によっても有利表示が行われていることが分かりやすくなる。このため、遊技者は有利表示が行われていることをその他の表示と区別して認識することができる。また、字幕表示は文字による表示であるため、字幕表示に対して遊技者の注目を集めやすくなる。これにより、字幕表示に関する遊技の興趣を向上させることができる。
【0039】
サブ制御部91は、有利表示を行っている間に字幕表示を行う場合、実行中のバトル演出がバトル演出Aおよびバトル演出Bのいずれであるかに応じて、字幕表示を異ならせる一方で、実行中のバトル演出がバトル演出Aおよびバトル演出Bのいずれであるかに関わらず、字幕表示を特定色で行う。
【0040】
たとえば、有利表示を行っている間に字幕表示を行う場合、実行中のバトル演出がバトル演出Aである場合には字幕画像「チャンス!」により字幕表示を行い(たとえば、図7(a3))、実行中のバトル演出がバトル演出Bである場合には字幕画像「いくぞ!」により字幕表示を行う(たとえば、図7(b3))。一方で、実行中のバトル演出がバトル演出Aおよびバトル演出Bのいずれであるかに関わらず、字幕表示を虹色で行う。
【0041】
たとえば、バトル演出Aにおいて再生される動画とバトル演出Bにおいて再生される動画とが異なることがある。このような場合、遊技に慣れていない遊技者は、再生されている動画が有利表示であるのか否かが判別できないような場合もある。実行中のバトル演出がバトル演出Aおよびバトル演出Bのいずれであるかに関わらず、有利表示中の字幕表示を虹色で行うことで、字幕表示の色によって有利表示が行われていることが分かりやすくなる。また、字幕表示は文字による表示であるため、字幕表示に対して遊技者の注目を集めやすくなる。このため、遊技者は有利表示が行われていることをその他の表示と区別して認識することができる。これにより、字幕表示に関する遊技の興趣を向上させることができる。
【0042】
サブ制御部91は、有利表示を行っている間に字幕表示を行う場合、実行中のバトル演出が複数種類のバトル演出のいずれであるかに応じて、字幕表示の態様を異ならせる一方で、実行中のバトル演出が複数種類のバトル演出のいずれであるかに関わらず、字幕表示を特定色で行う。これに対して、サブ制御部91は、非有利表示を行っている間に字幕表示を行う場合、実行中のバトル演出が複数種類のバトル演出のいずれであるかに応じて、字幕表示の態様を異ならせる一方で、実行中のバトル演出が複数種類のバトル演出のいずれであるかに関わらず、字幕表示を特定色とは異なる色(たとえば、所定色)で行う。
・・・
【0045】
また、サブ制御部91は、特定タイミングよりも前に字幕表示を行う場合、特典が付与される割合に応じて、字幕表示の色を異ならせる。これに対して、サブ制御部91は、有利表示を行っている間に字幕表示を行う場合、当該字幕表示の色を異ならせることなく当該字幕表示を予め定められた色(たとえば、特定色)で行い、非有利表示を行っている間に字幕表示を行う場合、字幕表示を特定色とは異なる色(たとえば、所定色)で行っている。
【0046】
たとえば、特定タイミングよりも前に字幕表示を行う場合、特典が付与される割合に応じて、字幕表示の色を白色と青色とで異ならせる。これに対して、有利表示を行っている間に字幕表示を行う場合、当該字幕表示の色を異ならせることなく当該字幕表示を虹色で行い(たとえば、図2(f)、(h))、非有利表示を行っている間に字幕表示を行う場合、字幕表示を白色で行うようにしている(たとえば、図2(m))。具体的には、図6(d1)、(d2)を用いて後述する。以下、本実施の形態においては、図6(d1)、(d2)を用いた説明を除き、所定色として白色が決定されたものとして説明する。
【0047】
また、サブ制御部91は、特定演出の実行中において、チャンスアップ表示を行うことが可能である。チャンスアップ表示は、バトル演出において特典の付与を遊技者に期待させる表示である。本実施の形態においては、チャンスアップ表示を行う場合、チャンスアップ表示を行わない場合に表示されているバトル演出画像の一部の領域の色を期待色に変更することで行われる。たとえば、期待色は赤色である。
【0048】
また、特典が付与されるときは、特典が付与されないときよりも高い割合でチャンスアップ表示を行う。チャンスアップ表示を行っている期間に字幕表示を行う場合、チャンスアップ表示を行っていない期間に行う字幕表示の色とは異なる期待色(赤色)で字幕表示を行う。チャンスアップ表示の詳細については、図8を用いて後述する。
【0049】
このように、特典の付与を遊技者に期待させるチャンスアップ表示を行っている期間に字幕表示を行う場合、チャンスアップ表示を行っていない期間に行う字幕表示の色とは異なる赤で字幕表示を行うため、チャンスアップ表示が行われていることが遊技者に分かりやすくなる。これにより、字幕表示に関する遊技の興趣を向上させることができる。」
上記(1)~(3)を勘案すると、本件特許発明は、遊技機において「可変表示装置の表示領域に一連の動画像を再生表示するとともに、再生表示に合わせて台詞表示エリアに台詞を表示する」(【0003】)という背景技術を前提として、「台詞の表示のような文字表示を行うにあたり改良の余地があった」(【0005】)ことから「文字表示に関する遊技の興趣を向上させる」(【0006】)という課題、より詳細には、「有利表示であることを示す動画を再生しているような場合に、遊技に慣れていない遊技者は、当該動画が有利表示であるのか否かが判別できないような場合もある」(【0038】)という技術的課題、「バトル演出Aにおいて再生される動画とバトル演出Bにおいて再生される動画とが異なることがあ」り「このような場合、遊技に慣れていない遊技者は、再生されている動画が有利表示であるのか否かが判別できないような場合もある」(【0041】)という技術的課題、「遊技に慣れていない遊技者は、チャンスアップ表示が行われているか否かが判別できないような場合もある」(【0048】、【0049】から認定)という技術的課題を解決しようとするものであるといえる。
3 本件特許発明の技術的意義について
本件特許の明細書において、上記2の技術的課題を解決するための特定事項が【0007】に記載され、その技術的意義については【0038】、【0041】、【0049】を含め、次のように記載されている。
(1)「【0007】
遊技を行う遊技機(たとえば、スロットマシンやパチンコ遊技機で例示される遊技機1)であって、
特典(たとえば、特典A,B)の付与を示唆する特定演出(たとえば、バトル演出A,B)を実行する特定演出実行手段(たとえば、サブ制御部91が特定演出を行う処理)を備え、
前記特定演出実行手段は、
前記特定演出において文字表示(たとえば、字幕表示)を行うことが可能であり、
前記特定演出において前記特典の付与を遊技者に期待させる期待表示(たとえば、チャンスアップ表示)を行うことが可能であり、
前記特典が付与されるときは、前記特典が付与されないときよりも高い割合で前記期待表示を行い(たとえば、図8)、
前記期待表示を行っている期間に前記文字表示を行う場合、当該期待表示を行っていない期間に行う前記文字表示の色とは異なる期待色(たとえば、赤)で当該文字表示を行い(図8(a2),(a3)に示すように、チャンスアップ表示を行っている期間に字幕表示を行う場合、チャンスアップ表示を行っていない期間に行う字幕表示の色とは異なる赤で字幕表示を行う)、
前記特定演出において、
前記特典が付与されるときには当該特典の付与に対応する特定表示(たとえば、図2(f)~(j)、有利表示)を特定タイミング(たとえば、図2(f),図6(b2))から行う一方で、当該特典が付与されないときには当該特定表示とは異なる非特定表示(たとえば、図2(k)~(o)、非有利表示)を当該特定タイミングから行い、
前記特定タイミングよりも前に前記文字表示を行う場合、前記特典が付与される割合に応じて、当該文字表示の色を異ならせ(たとえば、図6(d1),(d2)に示すように、特定タイミングよりも前に字幕表示を行う場合、特典が付与される割合に応じて、字幕表示の色を白色と青色とで異ならせる)、
前記特定表示を行っている間に前記文字表示を行う場合、当該文字表示の色を異ならせることなく当該文字表示を予め定められた色で行う(たとえば、図2(f),(h)に示すように、有利表示を行っている間に字幕表示を行う場合、文字表示の色を異ならせることなく字幕表示を特定色である虹色で行う)。
・・・
【0010】
[遊技機1の構成]
図1(A)は、本実施形態に係る遊技機の主な内部構成の一例を示す図であり、図1(B)は、本実施形態に係る遊技機の正面図である。遊技機1は、たとえば、スロットマシンやパチンコ遊技機である。
【0011】
図1(A)に示すように、遊技機1は、遊技の進行を制御するメイン制御部41と、演出を制御するサブ制御部91とを備える。メイン制御部41は、遊技の進行に係る各種データを記憶するRAM41cを備える。メイン制御部41は、RAM41cの所定の記憶領域に、遊技用価値を記憶する。また、メイン制御部41には、操作部7が接続されている。
・・・
【0013】
サブ制御部91には、画像を表示する液晶表示器51、および音を出力するスピーカ53が接続されている。演出は、液晶表示器51およびスピーカ53を用いて行われる。
・・・
【0019】
パチンコ遊技機においては、遊技球が始動入賞口へ入賞すると、抽選により大当りを発生させるか否かが決定される。始動入賞口への遊技球の入賞に基づき、液晶表示器51では演出図柄の変動表示が行われる。大当りになったときは、変動表示の結果として大当り図柄が導出表示される。大当りになった後には、大当り遊技状態に制御される。
【0020】
メイン制御部41は、所定条件が成立したときに、遊技者にとって有利な特典を付与するか否かを決定するための抽選を実行する。たとえば、スロットマシンにおいて、所定条件は、スタートスイッチの操作が行われた際に実行される内部抽選において、所定役(例えば、チェリー)に当選することで成立する。パチンコ遊技機において、所定条件は、遊技球が始動入賞口へ入賞することで成立する。
【0021】
スロットマシンにおいて、特典は、ボーナス当選や、AT当選(ATゲーム数の付与)や、AT中にATゲーム数に上乗せしてATゲーム数を付与する上乗せ当選である。ボーナスは、払出枚数の異なるRB(レギュラーボーナス)とBB(ビッグボーナス)とを含む。パチンコ遊技機において、特典は、大当りの発生である。大当りには、通常大当りと、大当り遊技状態の終了後に大当りとなる確率が通常状態よりも高くなる確変大当りとが含まれる。また、大当りには、ラウンド遊技の実行回数が2回である大当りと、ラウンド遊技の実行回数が16回である大当りとが含まれる。
【0022】
通常状態または有利状態においては、通常状態または有利状態の演出として、遊技画像が液晶表示器51に表示される。遊技画像は、遊技者が遊技を行っていることが外部から認識可能な画像である。通常状態においては、後述する特定演出が実行可能である。特定演出が実行されていない通常状態においては、通常表示が行われる。この場合、通常表示として、通常状態を示す街の背景画像とともにキャラクタが歩いていることを示す遊技画像が表示される。通常状態において特定演出が実行される場合には、遊技画像として特定演出画像が表示される。有利状態においては、遊技画像として有利状態画像が表示される。
【0023】
[各種演出の概要]
まず、本実施の形態に係る遊技機1において、サブ制御部91によって実行される各種演出について説明する。サブ制御部91は、メイン制御部41からのコマンドに基づき遊技の状態を把握し、RAM91cに記憶された演出データを用いて各種演出を実行する。
【0024】
(特定演出)
サブ制御部91は、複数種類の特定演出を実行可能である。特定演出は、特典の付与を示唆する演出である。複数種類の特定演出には、バトル演出とプレミア演出とが含まれる。バトル演出には、バトル演出Aとバトル演出Bとが含まれる。
・・・
【0031】
バトル演出において、特定タイミングから、特定表示および非特定表示のうちのいずれかが行われる。特定表示は、特典の付与に対応する表示である。非特定表示は、特定表示とは異なる表示である。特典が付与されるときには特定表示が行われ、特典が付与されないときには非特定表示が行われる。
・・・
【0038】
・・・特定タイミング以降で有利表示を行っている間に字幕表示を行う場合、虹色に変化させて字幕表示を行うことで、字幕表示の色によっても有利表示が行われていることが分かりやすくなる。このため、遊技者は有利表示が行われていることをその他の表示と区別して認識することができる。また、字幕表示は文字による表示であるため、字幕表示に対して遊技者の注目を集めやすくなる。これにより、字幕表示に関する遊技の興趣を向上させることができる。」
(2)「【0041】
・・・実行中のバトル演出がバトル演出Aおよびバトル演出Bのいずれであるかに関わらず、有利表示中の字幕表示を虹色で行うことで、字幕表示の色によって有利表示が行われていることが分かりやすくなる。また、字幕表示は文字による表示であるため、字幕表示に対して遊技者の注目を集めやすくなる。このため、遊技者は有利表示が行われていることをその他の表示と区別して認識することができる。これにより、字幕表示に関する遊技の興趣を向上させることができる。」
(3)「【0049】
このように、特典の付与を遊技者に期待させるチャンスアップ表示を行っている期間に字幕表示を行う場合、チャンスアップ表示を行っていない期間に行う字幕表示の色とは異なる赤で字幕表示を行うため、チャンスアップ表示が行われていることが遊技者に分かりやすくなる。これにより、字幕表示に関する遊技の興趣を向上させることができる。」
(4)「【0107】
[特定演出に用いられる画像の生成および特定演出において表示される字幕]
図5は、特定演出に用いられる画像の生成および特定演出において表示される字幕について説明するための図である。
【0108】
まず、特定演出に用いられる画像を生成する方法について説明する。液晶表示器51は、特定演出において、特定演出に応じた画像Cを表示する。特定演出に応じた画像Cは、画像A(特定演出画像)と、字幕表示に応じた画像B(字幕画像および字幕背景画像)とで構成される。
【0109】
遊技機1が備えるROM91bには、各種演出で用いられる画像データが記憶されている。ROM91bは、画像Aの表示に用いられる画像データAと、画像Bの表示に用いられる画像データBとを記憶している。
・・・
【0115】
サブ制御部91は、ROM91bに記憶された画像データを取得し、取得した画像データを加工して液晶表示器51に表示するための画像を生成する。生成された画像は、液晶表示器51の表示領域で表示される。本実施の形態では、液晶表示器51の表示領域とは、図1(B)に示す液晶表示器51の全ての表示領域を指す。
・・・
【0119】
前述のように、サブ制御部91は、字幕表示を行う場合には、字幕表示とともに字幕表示に対応した字幕背景表示を行う。字幕背景表示は、字幕背景画像を表示することで行われる。字幕背景画像は、たとえば、図5(b)に示されるような、横長の長方形の画像である。」
以上によれば、本件特許発明は、その特定事項C-6、C-8において、「前記特典が付与されるときには当該特典の付与に対応する特定表示を特定タイミングから行う一方で、当該特典が付与されないときには当該特定表示とは異なる非特定表示を当該特定タイミングから行い、」「前記特定表示を行っている間に前記文字表示を行う場合、当該文字表示の色を異ならせることなく当該文字表示を予め定められた色で行う」という技術的手段を採用し、上記【0038】、【0041】に記載の「遊技者は有利表示が行われていることをその他の表示と区別して認識することができる」という効果が得られるという技術的意義を有するといえる。
また、本件特許発明は、その特定事項C-4において、「前記期待表示を行っている期間に前記文字表示を行う場合、当該期待表示を行っていない期間に行う前記文字表示の色とは異なる期待色で当該文字表示を行」うという技術的手段を採用し、上記【0049】に記載の「チャンスアップ表示が行われていることが遊技者に分かりやすくなる」という効果が得られるという技術的意義を有するといえる。
よって、本件特許発明は、パチンコ機やスロットマシン等の遊技機という機器において、「有利表示であることを示す動画を再生しているような場合に、遊技に慣れていない遊技者は、当該動画が有利表示であるのか否かが判別できないような場合もある」、「バトル演出Aにおいて再生される動画とバトル演出Bにおいて再生される動画とが異なることがあ」り「このような場合、遊技に慣れていない遊技者は、再生されている動画が有利表示であるのか否かが判別できないような場合もある」、「遊技に慣れていない遊技者は、チャンスアップ表示が行われいるか否かが判別できないような場合もある」という技術的課題を解決しようとするものであり、特に特定事項C-6、C-8、特定事項C-4に係る技術的手段を採用することで、全体として、「字幕表示の色によっても有利表示が行われていることが分かりやすくな」り「遊技者は有利表示が行われていることをその他の表示と区別して認識することができる」、「字幕表示の色によって有利表示が行われていることが分かりやすくな」り「字幕表示に対して遊技者の注目を集めやすくな」って「遊技者は有利表示が行われていることをその他の表示と区別して認識することができる」、「チャンスアップ表示が行われていることが遊技者に分かりやすくなる」という効果が得られるという技術的意義を有するものであるといえる。
4 本件特許発明の「発明」該当性について
上記2及び3のとおり、本件特許発明は「遊技機」という機器に関する発明であり、特典の付与、上記文字表示を機器により実行するもの(例えば、実施例から、遊技の進行を制御するメイン制御部41と、演出を制御するサブ制御部91とを備え、サブ制御部91には、画像を表示する液晶表示器51、および音を出力するスピーカ53が接続され、パチンコ遊技機においては、遊技球が始動入賞口へ入賞すると、抽選により大当りを発生させるか否かが決定され、スロットマシンにおいて、所定条件は、スタートスイッチの操作が行われた際に実行される内部抽選において、所定役(例えば、チェリー)に当選することで成立し、スロットマシンにおいて、特典は、ボーナス当選や、AT当選(ATゲーム数の付与)や、AT中にATゲーム数に上乗せしてATゲーム数を付与する上乗せ当選であり、パチンコ遊技機において、特典は、大当りの発生であり、通常状態においては、特定演出が実行可能であるもの)である。
そして、上記2で説示したとおり、本件特許発明は、遊技機で「可変表示装置の表示領域に一連の動画像を再生表示するとともに、再生表示に合わせて台詞表示エリアに台詞を表示する」という背景技術を前提として、上記のとおり、「有利表示であることを示す動画を再生しているような場合に、遊技に慣れていない遊技者は、当該動画が有利表示であるのか否かが判別できないような場合もある」、「バトル演出Aにおいて再生される動画とバトル演出Bにおいて再生される動画とが異なることがあ」り「このような場合、遊技に慣れていない遊技者は、再生されている動画が有利表示であるのか否かが判別できないような場合もある」、「遊技に慣れていない遊技者は、チャンスアップ表示が行われているか否かが判別できないような場合もある」という技術的課題を解決しようとするものであって、上記3で説示したとおり、特に特定事項C-6、C-8、特定事項C-4に係る技術的手段を採用することで、遊技者は有利表示が行われていることをその他の表示と区別して認識することができるようになり、字幕表示の色によって有利表示が行われていることが分かりやすくなり、チャンスアップ表示が行われていることが遊技者に分かりやすくなるという効果が得られ、全体として、字幕表示は文字による表示であるため、字幕表示に対して遊技者の注目を集めやすくなり、字幕表示に関する遊技の興趣を向上させることができるという技術的意義を有するものである。
したがって、本件特許発明は特許法第2条第1項でいう「発明」に該当し、本件特許は同法第29条第1項柱書に違反してなされたものとはいえない。
5 申立人の主張
(1)申立人は、異議申立書の「(4-2)発明該当性について(自然法則利用要件及び技術的思想要件)ア)自然法則を利用したものであるか否かについて(自然法則利用要件)」において、「・・・「A)遊技を行う遊技機であって、B)特典の付与を示唆する特定演出を実行する特定演出実行手段を備えた、D)遊技機。」という構成を備えている遊技機は、本件特許発明の基礎をなすものであり、その創作の前提をなす先行技術であることは明らかである。
・・・
そこで、・・・本件特許発明の構成を点検すると、その構成は、前記先行技術の特定演出実行手段の機能に関して、次のとおりの限定を付したものとなる。
「 C-1) 前記特定演出において文字表示を行うことが可能であり、
C-2) 前記特定演出において前記特典の付与を遊技者に期待させる期待表示を行うことが可能であり、
C-3) 前記特典が付与されるときは、前記特典が付与されないときよりも高い割合で前記期待表示を行い、
C-4) 前記期待表示を行っている期間に前記文字表示を行う場合、当該期待表示を行っていない期間に行う前記文字表示の色とは異なる期待色で当該文字表示を行い、
C-5) 前記特定演出において、
C-6) 前記特典が付与されるときには当該特典の付与に対応する特定表示を特定タイミングから行う一方で、当該特典が付与されないときには当該特定表示とは異なる非特定表示を当該特定タイミングから行い、
C-7) 前記特定タイミングよりも前に前記文字表示を行う場合、前記特典が付与される割合に応じて、当該文字表示の色を異ならせ、
C-8) 前記特定表示を行っている間に前記文字表示を行う場合、当該文字表示の色を異ならせることなく当該文字表示を予め定められた色で行う、」
そして、これらの構成によってのみ先行技術との差別化が可能となり、新規性及び進歩性を備える発明であるか否かが問われることとなる。
ここで、前記した本件特許発明の解決しようとする技術的課題は、前記限定された構成により解決されるものであるから、かかる構成が本件特許発明の本質であり、まずは、その構成において、自然法則を利用しているか否かが問われることとなる。」と主張する。
しかしながら、特許法第2条第1項が「「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」と定め、同法第29条第1項柱書において、「産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。」とした上で、「次に掲げる発明」として、1~3号に公知発明等を挙げている。このような特許法の規定の仕方からすると、特許法は、特許を受けようとする発明が自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものであり、かつ産業上利用することができるものであるかをまず検討した上で、これらの要件を満たす発明であっても公知発明等に当たる場合には特許を受けることができないものと定めていると解すべきである。そうすると、特許法第29条第1項柱書該当性の判断に当たっては、特許法第29条第1項及び第2項のように、2つの発明を対比することにより特許要件の有無を判断する場合とは異なり、特許請求の範囲によって特定された発明全体が自然法則を利用した技術的思想の創作に当たるかどうかを全体的に検討すべきであって、公知発明等に当たらない新規な部分だけを取り出して判断すべきではない(知財高裁平成21年6月16日判決、平成20年(行ケ)第10279号参照)。
したがって、申立人の主張は採用することができない。
(2)また、申立人は異議申立書の「(4-2)発明該当性について(自然法則利用要件及び技術的思想要件)ア)自然法則を利用したものであるか否かについて(自然法則利用要件)」において、「しかも、本件特許発明の解決しようとする技術的課題は、明細書によれば、文字表示に関する遊技の興趣を向上させる、ところにあり、それ自体、人である遊技者の五感を通じて、遊技の興趣という精神活動への作用を期待するものであるから、解決しようとすべき技術的課題及びその解決手段並びにその効果は、いずれも自然法則を利用したものではない。
よって、本件特許発明は、その本質において、自然法則を利用したものではないといえる。」と主張している。
しかし、上記4で検討したとおり、本件特許発明は、特典の付与、台詞に係る文字表示を機器により実行するものであるところ、そこにおいて生じる一定の技術的課題を解決するものであり、その課題を解決するための技術的手段の構成及びその構成から導かれる効果等の技術的意義に照らすと、全体として一定の技術的意義を有するものといえるから、単に人である遊技者の五感を通じて遊技の興趣という精神活動への作用を期待するものということはできず、本件特許発明は自然法則を利用した発明であり、かつ技術的思想の創作となる発明であるといえる。
したがって、申立人の主張は採用することができない。
(3)また、申立人は異議申立書の「(4-2)発明該当性について(自然法則利用要件及び技術的思想要件)ア)自然法則を利用したものであるか否かについて(自然法則利用要件)」において、「他方、他の構成要件の存在により、発明特定事項に自然法則を利用していない部分があっても、請求項に係る発明が、全体として自然法則を利用していると判断される場合は、その発明は、自然法則を利用しているともいい得ることが存在し得るので、以下、その観点からさらに検討を進める。
・・・
したがって、本件特許発明は、その本質が専ら人為的ルールそのものに向けられているものであり、自然界の現象や秩序について成立している科学的法則を利用するものではないから、全体として「自然法則を利用した」技術的思想の創作には該当しない。」と主張している。
しかし、上記4で検討したとおり、本件特許発明は、特典の付与、台詞に係る文字表示を機器により実行するものであるところ、そこにおいて生じる一定の技術的課題を解決するものであり、その課題を解決するための技術的手段の構成及びその構成から導かれる効果等の技術的意義に照らすと、全体として一定の技術的意義を有するものといえるから、専ら人為的ルールそのものに向けられているものということはできず、本件特許発明は自然法則を利用した発明であり、かつ技術的思想の創作となる発明であるといえる。
したがって、申立人の主張は採用することができない。
(4)また、申立人は、異議申立書の「(4-2)発明該当性について(自然法則利用要件及び技術的思想要件)ア)自然法則を利用したものであるか否かについて(自然法則利用要件)」及び「イ)技術的思想であるか否かについて(技術的思想要件)」において、裁判例を参考として説明し、「かかる裁判例は、本件特許発明が、特定演出実行手段を備えた遊技機について技術的特徴をなんら備えておらず、具体的な構成も見当たらないから、発明を全体として考察した結果、発明の本質が自然法則を利用したものといえない点で、本件異議申立の事例と共通する事案に係るものである。
・・・
そして、本件特許発明は、その表示の態様によって提示される情報の内容のみによって先行技術と差別化されているものであり、かつそれを、技術的課題を解決するための本質となるもの(そのような情報の内容を人である遊技者に伝達すること)としているから、表示情報の単なる提示でしかなく、技術的思想の体を為していない。
・・・
よって、本件特許発明の本質をみても、また、その全体をみても、技術的思想とはいえないから、本件特許発明は、法29条1項柱書きにおいていう「発明」、すなわち法2条1項においていう「発明」の要件である「技術的思想」であるとの要件を充足しない。」と主張している。
しかし、上記4で検討したとおり、本件特許発明は、特典の付与、台詞に係る文字表示を機器により実行するものであるところ、そこにおいて生じる一定の技術的課題を解決するものであり、その課題を解決するための技術的手段の構成及びその構成から導かれる効果等の技術的意義に照らすと、全体として一定の技術的意義を有するものといえるから、単なる情報の提示ということはできず、本件特許発明は自然法則を利用した発明であり、かつ技術的思想の創作となる発明であるといえる。
したがって、申立人の主張は採用することができない。
6 小括
以上により、本件特許発明は、特許法第29条第1項柱書に違反してなされたものではないから同法第113条第2号の規定には該当せず、同法第114条第2項の規定により取り消されるべきものではない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した理由及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700332