特許異議申立
2017-700133
化粧建築板の製造方法
- 審判番号
- 2017-700133
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2012-071252
- 登録番号
- 特許第5969788号(P5969788)
- 請求日
- 2017年02月10日
- 審決日
- 2017年09月27日
- 公報発行日
- 2017年12月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ケイミュー株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人北斗特許事務所
- 【権利者代理人】西川 惠清
- 【権利者代理人】水尻 勝久
- 【権利者代理人】竹尾 由重
- 【権利者代理人】坂口 武
- 【権利者代理人】北出 英敏
- 【権利者代理人】仲石 晴樹
- 【権利者代理人】時岡 恭平
- 【権利者代理人】木村 豊
- 【異議申立人】中村 慎伺
- 審判長/審判官
- 審判長 小野 忠悦
- 審判官 井上 博之
- 審判官 藤田 都志行
- 分類
- P1651.121-YAA(E04F) / P1651.16 -YAA(E04F) / P1651.537-YAA(E04F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条の2、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5969788号発明「化粧建築板の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5969788号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-2〕について訂正することを認める。
特許第5969788号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5969788号の請求項1、2に係る特許についての出願は、平成28年7月15日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人中村慎伺(以下「申立人」という。)より請求項1、2に対して特許異議の申立てがされ、平成29年4月13日付けで取消理由が通知され(発送日:同年4月18日)、同年6月19日に意見書の提出及び訂正請求がされ、同年8月4日に申立人から意見書が提出されたものである。
第2 訂正請求について
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下の(1)~(10)のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
請求項1、2に係る「前記基材の表面の単位面積当たりのインク塗布量を印刷濃度とし、」を「前記基材の前記インク受理層の表面の単位面積当たりのインク塗布量を印刷濃度とし、」に訂正する。
(2)訂正事項2
請求項1、2に係る「前記基材の表面温度を測定し、」を「前記基材の前記インク受理層の表面温度を測定し、」に訂正する。
(3)訂正事項3
請求項1、2に係る「前記表面温度が高いほど前記印刷濃度を高くして塗装する」を「前記表面温度が高いほど前記印刷濃度を高くして前記インク受理層の表面に水性インクを塗装してインク層を形成し、前記インク層の表面に、疎水性成分を含有する水性クリアーを塗装してクリアー層を形成する」に訂正する。
(4)訂正事項4
請求項2に係る「イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックのインクを用い、」を「前記水性インクとして、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックのインクを用い、」に訂正する。
(5)訂正事項5
本件明細書の段落【0006】の「前記基材の表面の単位面積当たりのインク塗布量を印刷濃度とし、前記基材の表面温度を測定し、前記表面温度が高いほど前記印刷濃度を高くして塗装する」を「前記基材の前記インク受理層の表面の単位面積当たりのインク塗布量を印刷濃度とし、前記基材の前記インク受理層の表面温度を測定し、前記表面温度が高いほど前記印刷濃度を高くして前記インク受理層の表面に水性インクを塗装してインク層を形成し、前記インク層の表面に、疎水性成分を含有する水性クリアーを塗装してクリアー層を形成する」に訂正する。
(6)訂正事項6
本件明細書の段落【0008】の「前記化粧建築板の製造方法において、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックのインクを用い、」を「前記化粧建築板の製造方法において、前記水性インクとして、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックのインクを用い、」に訂正する。
(7)訂正事項7
本件明細書の段落【0040】の「インク層3を形成するためのインクとしては、」を「インク層4を形成するためのインクとしては、」に訂正する。
(8)訂正事項8
本件明細書の段落【0041】の「厚み20μmのクリアー層を形成することによって、」を「厚み20μmのクリアー層5を形成することによって、」に訂正する。
(9)訂正事項9
本件明細書の段落【0050】の「インク層3を形成するためのインクとしては、」を「インク層4を形成するためのインクとしては、」に訂正する。
(10)訂正事項10
本件明細書の段落【0051】の「厚み20μmのクリアー層を形成することによって、」を「厚み20μmのクリアー層5を形成することによって、」に訂正する。
2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項1は、基材の表面について、どの層におけるものであるかを限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項1は基材の表面について限定したものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項1に関して、明細書には「【0018】・・・この場合の印刷濃度は、各インクについて、例えば図2に示すように、基材2のインク受理層3の表面の単位面積当たりのインク塗布量として定義することができる。」と記載されており、訂正事項1は明細書に記載されているものと認められる。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項2は、基材の表面温度について、どの層におけるものであるかを限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項2は、基材の表面温度について限定したものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項2に関して、明細書には「【0016】次に、基材2の表面温度(インク受理層3を形成している場合にはインク受理層3の表面温度)を測定し、この表面温度に応じた印刷濃度でインクジェット印刷により塗装することによって、ドット状のインク層4を所望のドットパターンで基材2(又はインク受理層3)の表面に形成する。」と記載されており、訂正事項2は明細書に記載されているものと認められる。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項3は、塗装について、材料及び層構成を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項3は、塗装について限定したものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項3に関して、明細書には「【0012】・・・この化粧建築板1は、基材2の表面にインク受理層3、インク層4及びクリアー層5をこの順に積層して形成されている。」、「【0020】イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のインクとしては、例えば、水性インク又はUV硬化インク等を用いることができる。」、「【0033】・・・必要に応じてインク層4を乾燥させてから、このインク層4の表面にクリアー層5を形成することによって、図5に示すような化粧建築板1を得ることができる。」、「【0034】ここで、クリアー層5を形成するクリアー塗料としては、例えば、水性クリアー・・・を用いることができる。・・・また水性クリアーは、テキサノール等の疎水性成分を含有していることが好ましい。」と記載されており、訂正事項3は明細書に記載されているものと認められる。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項4は、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックのインクについて、材料を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項4は、インクについて限定したものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項4に関して、明細書には「【0020】イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のインクとしては、例えば、水性インク又はUV硬化インク等を用いることができる。」と記載されており、訂正事項4は明細書に記載されているものと認められる。
(5)訂正事項5、6について
訂正事項5、6は、上記訂正事項1~4の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項5、6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。
(6)訂正事項7~10について
訂正事項7~10は、誤記の訂正を目的とするものであり、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。
また、訂正前の請求項1、2は、請求項2が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。したがって、訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。
3 小括
したがって、上記訂正請求による訂正事項1~10は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号から第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項1、2について訂正を認める。
第3 当審の判断
1 訂正後の請求項1、2に係る発明
上記訂正請求により訂正された請求項1、2に係る発明(以下「本件訂正発明1」等という。)は、以下のとおりのものである。(下線は訂正箇所を示す。)
本件訂正発明1
「【請求項1】
表面にインク受理層が形成された基材の表面をインクジェット印刷により塗装することによって化粧建築板を製造する方法であって、
前記基材の前記インク受理層の表面の単位面積当たりのインク塗布量を印刷濃度とし、
前記基材の前記インク受理層の表面温度を測定し、前記表面温度が高いほど前記印刷濃度を高くして前記インク受理層の表面に水性インクを塗装してインク層を形成し、
前記インク層の表面に、疎水性成分を含有する水性クリアーを塗装してクリアー層を形成することを特徴とする
化粧建築板の製造方法。」
本件訂正発明2
「【請求項2】
前記水性インクとして、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックのインクを用い、前記各インクについて前記化粧建築板が所定の印刷外観を備えるための、表面温度と印刷濃度との関係を示す検量線を作成し、前記測定した表面温度を前記検量線にあてはめて前記測定した表面温度に応じた印刷濃度で塗装することを特徴とする
請求項1に記載の化粧建築板の製造方法。」
2 刊行物の記載
(1)取消理由通知において引用した甲第1号証(特開2013-91263号(特願2011-235133号))には、申立人の主張を踏まえると(平成29年8月4日付け意見書(以下「申立人意見書」という。)6頁23行~7頁3行)、以下の発明(以下「甲1先願発明」という。)が記載されている。
甲1先願発明
「記録媒体102の表面をインクジェット印刷により塗装することによって印刷済みの記録媒体102を製造する方法であって、
記録媒体102の表面の単位面積当たりのインクのドット径(インク吐出量)を印刷濃度とし、
記録媒体102の表面温度を測定し、
表面温度が高いほど印刷濃度を高くして、インク層を形成する
印刷済みの記録媒体102の製造方法。」
(2)取消理由通知において引用した甲第2号証(特開2007-292605号公報)には、申立人が主張するとおり、以下の発明及び技術事項(以下、それぞれ「甲2発明」、「甲2技術」という。)が記載されている(申立書14頁3行~8行、申立人意見書19頁19行~22行)。
甲2発明
「表面にインク受理層2が形成された基材1の表面をインクジェット印刷により塗装することによって塗装板Aを製造する方法であって、
基材1の表面温度を測定し、
表面温度の分布を閾値と比較することににより塗布抜けを判定して再塗布する
塗装板Aの製造方法。」
甲2技術
「表面にインク受理層2が形成された基材1の表面をインクジェット印刷により塗装することによって塗装板Aを製造する方法
インクジェットプリンターにより着色化粧層3を塗装し、着色化粧層3の上に透明なクリアー層4を塗装する」
(3)取消理由通知において引用した甲第3号証(特開平8-290561号公報)には、申立人が主張するとおり、以下の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されている(申立人意見書18頁12行~20行)。
甲3発明
「記録媒体(記録紙107)の表面をインクジェット記録装置によりインクを吐出することによってインク像が形成された記録媒体(記録紙107)を製造する方法であって、
記録媒体(記録紙107)の表面の単位面積当たりのインク塗布量を濃度値とし、
記録媒体(記録紙107)の表面温度を測定し、
表面温度が高いほど濃度値を高くして記録媒体(記録紙107)の表面に水性インクを塗装する
インク像が形成された記録媒体(記録紙107)の製造方法。」
3 取消理由通知に記載した取消理由1(特許法29条の2)について
(1)対比・判断
ア 本件訂正発明1について
(ア)本件訂正発明1と甲1先願発明の対比
本件訂正発明1と、甲1先願発明を対比すると、以下の一致点で一致し、相違点1~3で相違する。
<一致点>
「基材の表面をインクジェット印刷により塗装することによって板を製造する方法であって、
前記基材の単位面積当たりのインク塗布量を印刷濃度とし、
前記基材の表面温度を測定し、前記表面温度が高いほど前記印刷濃度を高くしてインク層を形成する
板の製造方法。」
<相違点1>
本件訂正発明1が「表面にインク受理層」を形成し、「インク受理層」の表面温度を測定し、印刷濃度を設定しているのに対し、甲1先願発明がそのような特定がなされていない点。
<相違点2>
本件訂正発明1が「化粧建築板」を製造するのに対し、甲1先願発明が「記録媒体」を製造する点。
<相違点3>
本件訂正発明1が「水性インク」を用いて「インク層」を形成し、「前記インク層の表面に、疎水性成分を含有する水性クリアーを塗装してクリアー層を形成」しているのに対し、甲1先願発明がそのような特定がなされていない点。
(イ)判断
相違点1について検討するに、甲1先願発明には、インク受理層が形成されること、及びインク受理層の表面温度を測定することは開示されていない。また、甲第1号証においては、「インク受容層のない記録媒体」(【0034】参照)が事例としてあげられていることからも、インク受理層を形成することが前提となっているとは言い難く、記載されているに等しい事項であるともいえない。
申立人は、「特に、段落0034では・・・との記載から、記録媒体にインク受容層があってもよいことが示唆されている。」(申立人意見書5頁21行~23行)と主張するが、【0034】では、事例として、「インク受容層のない記録媒体」があげられているだけであり、反対の意味を持つインク受容層を有する記録媒体を暗示的に含むものではなく、記録媒体にインク受容層があってもよいことが示唆されているとまではいえない。また、仮に甲1先願発明がインク受容層を有する態様を含みうるとしても、さらに、インク受容層の表面温度を測定するとまでは解することができない。
よって、甲1先願発明は、相違点1に係る構成を有しておらず、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は甲1先願発明と同一ではない。
(ウ)小括
したがって、本件訂正発明1は、上記甲1先願発明と同一ではなく、特許法第29条の2の規定に違反してされたものではない。
イ 本件訂正発明2について
本件訂正発明2は、本件訂正発明1に従属し、本件訂正発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件訂正発明1と同様の理由(上記ア(イ)参照)により、上記甲1先願発明と同一ではなく、特許法第29条の2の規定に違反してされたものではない。
(2)まとめ
したがって、本件訂正発明1、2は、上記先願発明1と同一ではなく、特許法第29条の2の規定に違反してされたものではない。
4 取消理由通知に記載した取消理由2(特許法第29条第2項)について
(1)対比、判断
ア 本件訂正発明1について
(ア)本件訂正発明1と甲3発明の対比
本件訂正発明1と、甲3発明を対比すると、以下の一致点で一致し、相違点1~3で相違する。
<一致点>
「基材の表面をインクジェット印刷により塗装することによって板を製造する方法であって、
前記基材の表面の単位面積当たりのインク塗布量を印刷濃度とし、
前記基材の表面温度を測定し、前記表面温度が高いほど前記印刷濃度を高くして水性インクを塗装してインク層を形成する、
板の製造方法。」
<相違点1>
本件訂正発明1が「表面にインク受理層」を形成し、「インク受理層」の表面温度を測定し、印刷濃度を設定しているのに対し、甲3発明がそのような特定がなされていない点。
<相違点2>
本件訂正発明1が「化粧建築板」を製造するのに対し、甲3発明が「記録媒体」を製造する点。
<相違点3>
本件訂正発明1が、「前記インク層の表面に、疎水性成分を含有する水性クリアーを塗装してクリアー層を形成」しているのに対し、甲3発明がそのような特定がなされていない点。
(イ)判断
相違点1について検討するに、甲2技術及び申立人意見書に添付された参考資料1~3(特開2007-154434号公報、特開2007-154430号公報、特開2007-152595号公報)には、塗装板、化粧建築板にインク受理層を形成することが開示されており、当該事項は周知事項であるといえる。
ここで、甲3発明は記録媒体(記録紙)に塗装(記録)するものであり、一方、上記周知事項は建築板への塗装に関するものであり、両者は適用する媒体が異なるとともに、求められる機能及び作用効果についても相違するから、上記周知事項を甲3発明に適用する動機付けはないというべきである。
仮に、上記周知事項が甲3発明に適用できたとしても、さらに、インク受理層の表面温度を測定するようにすることは、当業者であっても容易に想到し得ない。
よって、甲3発明において、他の相違点について検討するまでもなく、相違点1、2に係る本件訂正発明1の構成にすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。
(ウ)補足
申立人が、当初、申立書で主張したように甲2発明、あるいは甲第2号証に記載されたものを主引例としたとしても、甲第2号証に記載されたものは、塗装直後(つまり、インク受理層上に塗装した後)の塗装面の温度を測定するものであって(甲第2号証の【0023】【0025】参照)、インク受理層の表面温度を測定するものではないので、甲2発明、あるいは甲第2号証に記載されたものにおいて、相違点1に係る本件訂正発明1の構成にすることは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。
(エ)小括
したがって、本件訂正発明1は、甲3発明、甲2発明、あるいは甲第2号証に記載されたもの、及び周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件訂正発明2について
本件訂正発明2は、本件訂正発明1に従属し、本件訂正発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件訂正発明1と同様の理由(上記ア(イ)参照)により、甲3発明、甲2発明、あるいは甲第2号証に記載されたもの、及び周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)まとめ
したがって、本件訂正発明1、2は、甲3発明、甲2発明、あるいは甲第2号証に記載されたもの、及び周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について(特許法第36条第6項第2号)
申立人より、本件請求項1において、「基材」について下塗り層が形成されているのか、あるいは、下塗り層が形成されていないのか特定されておらず、基材の意味が不明であるとの主張がなされたが、上記訂正事項1、2によって、「基材の前記インク受理層」との訂正がなされたことにより、基材が、下塗り層に相当するインク受理層を有していることが明らかとなった。
したがって、本件特許請求の範囲は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。
よって、本件特許は、特許法第36第6項第2号の規定に違反してされたものではない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、平成29年4月13日付け取消理由通知及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由、証拠によっては、本件請求項1ないし2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2017-700133