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特許異議申立

2023-700298

低温配管用特殊貫通ピース

審判番号
2023-700298
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-212019
登録番号
7144503
請求日
2023年03月17日
審決日
2023年07月06日
公報発行日
2023年08月25日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社新来島どっく
  • 【権利者代理人】大滝 均
  • 【異議申立人】笹井 栄治
審判長/審判官
  • 審判長 間中 耕治
  • 審判官 岩▲崎▼ 則昌
  • 審判官 竹下 和志
分類
P1651.121-Y (F16L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7144503号発明「低温配管用特殊貫通ピース」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7144503号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の概要 特許第7144503号の請求項1~2に係る特許についての出願は、令和2年12月22日の出願であって、令和4年9月20日にその特許権の設定登録がされ、同月29日に特許掲載公報が発行され、その後、請求項1~2に係る特許に対し、令和5年3月17日に特許異議申立人 笹井栄治(以下「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1~2に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」、「本件特許発明2」という。)は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 LNG燃料船のLNG低温配管の船殻部材貫通部及びタイト壁貫通部に使用する低温配管用特殊貫通ピースであって、 通しフランジ にのみ接合される低温配管と、 貫通する壁面の貫通開孔に接合される壁側フランジと、壁側フランジと接合される呼び出し管型貫通ピースと、呼び出し管型貫通ピースと接合される配管側中フランジと、 呼び出し管型貫通ピースの配管側中フランジと通しフランジとの間にPTFE製断熱パッキンシートと、を有することを特徴とする低温配管用特殊貫通ピース。 【請求項2】 呼び出し管型貫通ピースが熱伝搬が少ない低温適合鋼材のSUS316L材質であることを特徴とする請求項1に記載の低温配管用特殊貫通ピース。」 第3 特許異議申立ての概要 1 特許異議申立人による申立理由の概要 特許異議申立人は、証拠方法として、甲第1号証~甲第8号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲8」という。)を提出し、概略、以下の取消理由を主張している。 <甲号証一覧> 甲1:「第8基準研究部会 LNG運搬船の安全基準に関する調査研究報告書(そのIII)L-5 タンク検査試験 L-6 安全設備」,社団法人日本造船研究協会,昭和51年3月,p.81~82 甲2:特表2015-515582号公報 甲3:特開2013-87828号公報 甲4:特開昭61-92399号公報 甲5:特開平6-257464号公報 甲6:特開2017-3014号公報 甲7:特開2006-170221号公報 甲8:特開平7-98079号公報 (1) 取消理由1(特許法第29条第2項) ・請求項1 本件特許発明1は、甲1、周知技術(甲2~甲5、甲8)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ・請求項2 本件特許発明2は、甲1、周知技術(甲2~甲8)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、本件特許発明1~2は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 第4 甲1~甲8について 1 甲1について 甲1には、「タンク貫通ピース」に関して、以下の記載がある。(下線は、当審によるものである。以下同様。) (1) 甲1の記載事項 ア 「 [図:0001400502000001.jpg] 」(第81ページ) イ 「 [図:0001400502000002.jpg] 」(第82ページ 図L6.4.4-1(H)) (2) 看取事項・認定事項 ア 甲1のタイトルが「LNG運搬船の安全基準に関する調査研究報告書」であるから、上記(1)アに記載された「LNGタンクドーム」は、LNG運搬船に設けられるものであり、上記(1)イの図L6.4.4-1(H)のタンクは、LNGタンクドームであり、上記(1)イの図L6.4.4-1(H)のタンクを貫通する管は、LNG液及びベーパ配管であると認められる。 イ 上記(1)ア及びイの図L6.4.4-1(H)の図示から、LNGタンクドームを貫通するLNG液及びベーパ配管は、フランジにのみ接合されていることが看取できる。 ウ 上記(1)ア及びイの図L6.4.4-1(H)の図示から、LNGタンクドームの貫通孔に貫通ピースが接合されており、貫通ピースにおけるLNGタンクドームと反対側の端部にフランジが設けられていることが看取できる。 エ 上記(1)ア及びイの図L6.4.4-1(H)の図示から、LNG液及びベーパ配管に接合されたフランジと、貫通ピースにおけるLNGタンクドームと反対側の端部に設けられたフランジとが接合されていることが看取できる。 (3) 甲1発明 上記(1)の記載事項及び上記(2)の看取事項・認定事項から、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。 <甲1発明> 「LNG運搬船のLNGタンクドームを貫通するLNG液及びベーパ配管の貫通ピースであって、 LNG液及びベーパ配管は、フランジにのみ接合されており、 LNGタンクドームの貫通孔に貫通ピースが接合されており、貫通ピースにおけるLNGタンクドームと反対側の端部に別のフランジが設けられ、 LNG液及びベーパ配管に接合されたフランジと、貫通ピースにおけるLNGタンクドームと反対側の端部に設けられたフランジとが接合されている貫通ピース。」 2 甲2について 甲2には、「LNGタンク」に関して、以下の記載がある。 (1) 甲2の記載事項 ア 「【0020】 他端においては、共通のパイプの外側壁9には、溶接によりベローズが接合される第1連結フランジ11が設けられている。ベローズ10は他端においてタンク1の内側シェル2に溶接されている。内側パイプ8はタンク1の内側シェル2に直接溶接されている。タンクの外側シェル3には、パイプのためのフィードスルー開口が設けられ、その開口の周囲に沿って、外側シェル3から外方に延びる第2連結フランジ12が設けられる。第1及び第2連結フランジは整列され、連結されるとき、例えば、ボルト(図示せず)により、それらの間に隔離部材及び/又はシーリング部材13が設けられる。ベローズ10,内側パイプ8及び外側壁9は耐寒材料、好ましくはステンレススチール製とされるが、タンク1の外側シェル3の材料は、タンク内部へ貫通接続されるパイプの周囲のステンレススチール製の保護ベローズの使用により、カーボンスチールとすることができる。外側シェルにカーボンスチールを使用することは実質的に製造コストを低減する。」 イ 「【図2】 [図:0001400502000003.jpg] 」 3 甲3について 甲3には、「壁孔への管材設置方法および管保持具」に関して、以下の記載がある。 (1) 甲3の記載事項 ア 「【0024】 図中符号1は管保持具であり、壁孔に貫通配管されるエアコンのドレン管や空調パイプ、配線・配管材保護管等の管材を保持して管材を壁孔に設置するものである。この管保持具1は、前記管材が挿通される挿通孔4を備えた管保持部3と、前記管保持部3から外方に向かって延設された平板状のフランジ部2と、を備えている。さらに、前記フランジ部2の一方の面側に設けられた、建物の壁や当て木等の構造物に貼着可能な貼着部5と、前記管保持部3に挿通される管材を取り囲むように環状に形成された前記貼着部に剥離可能に貼着された剥離シート6と、を備えている。」 イ 「【0030】 まず、前記管保持具1の管保持部3に壁孔を貫通配管させるドレン管を端部から挿通して、前記フランジ部2の他方の面から壁を貫通できる程度に突出した状態とし、前記管材と管保持部とを接着して一体化する。その後、前記フランジ部2の他方の面を壁に向けるとともに、ドレン管の端部を壁孔に挿入する。そして、壁にけがかれた壁孔の中心を示すラインに前記指標部2aを合致させて、図4に示すように、ドレン管P1をその外面と壁孔Dbの内面が当接しない位置に定め、前記固定部に固着具Gを打ち込んで壁裏に固定する。この状態でドレン管P1の周囲にコーキング材の充填空間Hが形成される。次いで、図5に示すように、前記壁孔Dbの内面とドレン管P1の外面との間にドレン管外面の周方向に沿って間断なく形成されたコーキング材の充填空間Hに壁表側からコーキング材Cを充填する。フランジ部は壁孔Dbの全体を覆っており、充填したコーキング材がだれ落ちてしまうのを防止している。」 ウ 「【図4】 [図:0001400502000004.jpg] 」 4 甲4について 甲4には、「コンクリート製二重殻低温貯槽」に関して、以下の記載がある。 (1) 甲4の記載事項 ア 「[内蓋の取り付け方法] 上記構造の内蓋3を使って開口部12を閉塞するには、補強筒32を下方に向けて開口部12内に挿入する。 この際、閉塞板31下面とフランジ13の間にはパッキン材P1を介在させ、かつ、閉塞板31の上面とフランジ13の外周間を連絡するシール材4を介して内蓋3をフランジ13にボルト等で取り付ける。 内蓋3をフランジ13に取り付ける際には、例えば内蓋3に長穴を開設する等して水平方向のスライドを許容して取り付ける。 また補強筒32の外周と間口部12内の小径面16の間には公知素材からなる緩衝材5を配置する。 緩衝材5は補強筒32側かあるいは間口部12側のいずれか一方に取り付けておく。 以上のようにして内蓋3を開口部12に取り付けて内槽1を閉塞し、完全密封体を形成する。 また第4図に示すように、内蓋3に突出する垂直板33のスライド而を直接フランジ13の頂面に載置する構造を採用する事も可能である。」(第2ページ右下欄第1行~第3ページ左上欄第2行) イ 「 [図:0001400502000005.jpg] 」(第3図) 5 甲5について 甲5には、「液化天然ガスを燃料として用いるガスタービンの運転方法およびガスタービン機構」に関して、以下の記載がある。 (1) 甲5の記載事項 ア 「【0049】そこで、まず氷結による蓄冷熱ついて詳細に説明する。図7は伝熱管12の基端側に断熱処理が施され、上記断熱部2が形成された伝熱管12の一例を示す一部切欠き平面図である。この図に示すように、上記断熱部2は、伝熱管12の外周面に被覆されたポリテトラフルオロエチレンによる皮膜(PTFE層2a)によって形成されている。 【0050】そして、本実施例における伝熱管12の具体的な仕様は、内径25.4mm、肉厚2mmのステンレス製であり、全長は170mである。この長尺の伝熱管12が図2に示すようにLNG気化装置1内で31回折り返され、蛇行しつつ上昇した状態で設定されている。なお、図5に示す例では、上記折り返しは29回にになっている。そして、この伝熱管12の基端側から36mの長さに亘ってPTFE層2aが形成されている。このPTFE層2aの厚さは5mmとされている。なお、本実施例では、断熱部2の断熱処理としてPTFE層2aを形成させたが、本発明はPTFE層2aに限定されるものではなく、その他の適宜選択される断熱材で被覆してもよい。このような仕様の伝熱管12に対して、LNG1aの流量は伝熱管12の一本当り390kg/hrとされ、熱媒体1bとしての水の流量は25t/hrに設定されている。」 イ 「【図7】 [図:0001400502000006.jpg] 」 6 甲6について 甲6には、「二重封止型ターミナルヘッダ」に関して、以下の記載がある。 (1) 甲6の記載事項 ア 「【0014】 さらに、二重封止型ターミナルヘッダTHの各部構成要素について、図1を参照して詳説する。 隔壁フランジ1は、次のように構成されている。すなわち、前記隔壁フランジ1は、例えばSUS316Lからなる所定厚み(La+Lb)の板体で構成されており、この板体には透孔10が穿設されている。前記隔壁フランジ1に穿設された透孔10は、大径孔部11と、小径孔部12とから構成されている。」 7 甲7について 甲7には、「貯蔵容器」に関して、以下の記載がある。 (1) 甲7の記載事項 ア 「【0035】 なお、インナータンク3は、容器11の中心軸線を含む平面を分割面として上下2つのパーツを溶接により接合して製造され、上下2つのパーツはそれぞれプレス加工により形成されている。インナータンク3を構成する材料としては、例えばSUS316Lを挙げられるが、使用温度条件や、圧力条件、加工性などの条件を満たせば他の材料を使用しても構わない。」 8 甲8について 甲8には、「低温タンクの配管用貫通ピース」に関して、以下の記載がある。 (1) 甲8の記載事項 ア 「【0002】 【従来の技術】一般にデッキ,壁板等をパイプが貫通する部分に使用される貫通ピースには、扱う対象流体の種類,圧力,温度等に応じてスリーブ型,中フランジ型等種々の構造の貫通ピースが採用されている。例えば、LNGタンクでは、図6に示すように、そのドームをパイプが貫通するので、この部分に図7(A)に示すように、スリーブ型貫通ピースを使用することがある。この場合、パイプはスリーブの両端で隅肉溶接されているだけであるから、両者はパイプの両端以外では固着されていない。このような貫通ピースでも、パイプに加わるモーメント等の機械的な外力による発生応力は緩和できるのであるが、パイプに低温流体を流すと、同図(B)に示すように、パイプの収縮とスリーブの変形が一致しないので、両者は一体的変形をすることができず、スリーブ両端の溶接部に大きな応力が発生するから不具合である。これに対し、中フランジ型貫通ピースは図8に示すように、ウオール又はデッキにあけた孔よりも大径の円板を重ね合わせて溶接する構造である。この種の中フランジ型貫通ピースで、低温流体を流すと、パイプと円板との接合部の収縮による応力が大きくなり、実質的にパイプとウオールとを直接接合した構造と同一になる。その結果、円板とウオールとの重ね合わせ部の隅肉溶接部DやA部での応力が大きくなり、継手としての信頼性が低下する。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】そこで、従来は、図9に示すような外筒付き貫通ピースを採用している。しかしながら、特殊断面を有するこの種の貫通ピースによれば、低温流体の通過時に発生する熱応力は吸収されるのであるが、形状が複雑となり、工作や検査の面で多大のコストがかかる。」 第5 当審の判断 1 申立理由1(特許法第29条第2項)について (1) 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲1発明とを対比する。 LNGが低温であることは、例示するまでもない技術常識であるから、甲1発明の「LNG液及びベーパ配管」は、本件特許発明1の「LNG低温配管」に相当し、甲1発明の「貫通ピース」は、本件特許発明1の「低温配管用特殊貫通ピース」に相当する。 甲1発明の「LNGタンクドーム」は、その内部にLNGを密封するものであるから、本件特許発明1の「タイト壁」に相当し、甲1発明の「貫通ピース」が「LNGタンクドームを貫通する」ことは、本件特許発明1の「低温配管用特殊貫通ピース」を「タイト壁貫通部に使用する」ことに相当する。 そうすると、甲1発明の「LNG運搬船のLNGタンクドームを貫通するLNG液及びベーパ配管の貫通ピース」と、本件特許発明1の「LNG燃料船のLNG低温配管の船殻部材貫通部及びタイト壁貫通部に使用する低温配管用特殊貫通ピース」とは、「LNG」「船のLNG低温配管の」「タイト壁貫通部に使用する低温配管用特殊貫通ピース」である限りにおいて一致する。 甲1発明の「フランジ」は、本件特許発明1の「通しフランジ」に相当し、甲1発明の「LNG液及びベーパ配管」は、本件特許発明1の「低温配管」に相当するから、甲1発明の「LNG液及びベーパ配管は、フランジにのみ接合されて」いることは、本件特許発明1の「通しフランジにのみ接合される低温配管」を有することに相当する。 甲1発明の「LNGタンクドームの貫通孔」は、本件特許発明1の「貫通する壁面の貫通開孔」に相当し、甲1発明の「貫通ピース」は、本件特許発明1の「呼び出し管型貫通ピース」に相当し、甲1発明の「別のフランジ」は、本件特許発明1の「配管側中フランジ」に相当する。 そうすると、甲1発明の「LNGタンクドームの貫通孔に貫通ピースが接合されており、貫通ピースにおけるLNGタンクドームと反対側の端部に別のフランジが設けられ」ることと、本件特許発明1の「貫通する壁面の貫通開孔に接合される壁側フランジと 、壁側フランジと接合される呼び出し管型貫通ピースと、呼び出し管型貫通ピースと接合される配管側中フランジと」を有することとは、「貫通する壁面の貫通開孔」と、「呼び出し管型貫通ピースと、呼び出し管型貫通ピース」に設けられる「配管側中フランジと」を有することの限りにおいて一致する。 以上のことから、本件特許発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「LNG船のLNG低温配管のタイト壁貫通部に使用する低温配管用特殊貫通ピースであって、 通しフランジにのみ接合される低温配管と、 貫通する壁面の貫通開孔と、呼び出し管型貫通ピースと、呼び出し管型貫通ピースに設けられる配管側中フランジと、を有する低温配管用特殊貫通ピース。」 <相違点1> 「低温配管用特殊貫通ピース」の用途に関して、本件特許発明1は、「LNG燃料船のLNG低温配管の船殻部材貫通部及びタイト壁貫通部に使用する」ものであるのに対して、甲1発明は、「LNG運搬船のLNGタンクドームを貫通するLNG液及びベーパ配管」に用いられるものであって、貫通ピースを「船殻部材貫通部」に使用することを特定していない点。 <相違点2> 「低温配管用特殊貫通ピース」の構成に関して、本件特許発明1は、「貫通する壁面の貫通開孔に接合される壁側フランジと、壁側フランジと接合される呼び出し管型貫通ピースと、呼び出し管型貫通ピースと接合される配管側中フランジと」を有するものであるのに対して、甲1発明は、「貫通ピースにおけるLNGタンクドームと反対側の端部に別のフランジが設けられ」るのみである点。 <相違点3> 本件特許発明1は、「呼び出し管型貫通ピースの配管側中フランジと通しフランジとの間にPTFE製断熱パッキンシート」を有するものであるのに対して、甲1発明は、「LNG液及びベーパ配管に接合されたフランジと、貫通ピースにおけるLNGタンクドームと反対側の端部に設けられたフランジとが接合され」ているが、当該「PTFE製断熱パッキンシート」を有することを特定していない点。 以下、事案に鑑み、まず、上記相違点3について検討する。 甲1~甲8には、「PTFE製断熱パッキンシート」が記載されていない。また、甲1~甲8には、「呼び出し管型貫通ピースの配管側中フランジと通しフランジとの間に」部材を設けることが記載も示唆もされていない。 また、甲1発明において、別のフランジ(本件特許発明1の「呼び出し管型貫通ピースの配管側中フランジ」に相当)とフランジ(本件特許発明1の「通しフランジ」に相当)との間に「PTFE製断熱パッキンシート」を設けるという着想に至る動機付けも、甲1~甲8のいずれの記載からも認められない。 したがって、当業者であっても、甲1発明及び甲2~甲8の記載事項から、上記相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項を容易に想到することはできない。 よって、上記相違点1、2について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明と、甲2~甲8の記載事項とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2) 本件特許発明2について 本件特許の請求項2の記載は、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく本件特許の請求項1を直接的に引用してされたものであるから、本件特許発明2は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含むものであって、甲1発明との対比において、上記相違点3を含むものである。 したがって、本件特許発明2は、甲1発明と、甲2~甲8の記載事項とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3) 特許異議申立人の主張 上記相違点3に関して、特許異議申立人は、特許異議申立書の3(4)イ(イ)○1-2 相違点の容易想到性 ・構成要件Fの容易想到性(なお、「○1」は、「○」の中に「1」が記載されたものである。)において、以下のとおり主張する。 「甲1発明の構成fは、「貫通ピースのフランジと通しフランジとが接合される」構成であるが、「貫通ピース」等に大きな熱応力が発生しないようにすべきことは周知の技術課題(甲第8号証(特開平7-98079号公報)の【0002】~【0003】参照)であり、また、気密性を高めるために接合部にパッキン材を挟むことは周知慣用であるから(例えば甲第4号証(特開昭61-92399号公報)の第2ページ右下欄第1行―第3ページ左上欄第2行及び第3図には、LNG貯槽の内槽1のフランジ13と内蓋3の間にパッキン材P1を設ける点が記載されている。)、「低温配管」が接合される「通しフランジ」と「貫通ピースのフランジ」との間を断熱材として周知のPTFE層(甲第5号証(特開平6-257464号公報)の段落0049-0050参照)を用いて断熱し、構成要件F「呼び出し管型貫通ピースの配管側中フランジと通しフランジとの間にPTFE製断熱パッキンシートと、を有すること」にすることは、容易想到である。」 しかしながら、甲4に記載されたパッキン材P1について検討すると、その材料が記載されていないため、「PTFE製」か否か不明であり、「断熱」性を有するか否か不明である。また、パッキン材P1が設けられる位置は、閉塞板31下面とフランジ13との間であり、本件特許発明1においてPTFE製断熱パッキンシートが設けられる「呼び出し管型貫通ピースの配管側中フランジと通しフランジとの間」ではない。 また、甲5に記載されたPTFE層2aについて検討すると、当該PTFE層2aは、「PTFE製」かつ「断熱」性を有するとしても、「パッキンシート」ではない。 仮に、甲1発明に対して甲5の記載事項を組み合わせても、甲1発明のうち断熱性を要求される部位にポリテトラフルオロエチレンによる皮膜を施すことにとどまり、当該皮膜を甲1~甲8に記載されていない「PTFE製断熱パッキンシート」に変更し、更に当該パッキンシートを甲1~甲8に記載されていない「呼び出し管型貫通ピースの配管側中フランジと通しフランジとの間」という特定の位置に設けることまで、当業者が容易に想到し得るとは認められない。 さらに、本件特許発明1の「PTFE製断熱パッキンシート」は、本件明細書の【0008】、【0014】に記載されるとおり、「呼び出し管型貫通ピースの配管側中フランジと通しフランジとの間」に設けられることで、低温配管からの熱伝播を阻害しようとするものであるが、甲1~8のいずれの記載からも、「呼び出し管型貫通ピースの配管側中フランジと通しフランジとの間」に「PTFE製断熱パッキンシート」を設けることで、低温配管からの熱伝播を阻害するという作用効果を予測することができない。 したがって、特許異議申立人の主張は、採用することができない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した申立理由及び証拠によっては、本件請求項1~2に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700298

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