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特許異議申立

2023-701301

可撓管

審判番号
2023-701301
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-170286
登録番号
7289575
請求日
2023年12月11日
審決日
2025年10月06日
公報発行日
2026年01月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社トヨックス
  • 【権利者代理人】弁理士法人コスモ国際特許事務所
  • 【異議申立人】小野 誠
審判長/審判官
  • 審判長 平瀬 知明
  • 審判官 正木 裕也
  • 審判官 大山 健
分類
P1651.113-YAA(F16L) / P1651.121-YAA(F16L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第7項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

結論

結 論 特許第7289575号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。 特許第7289575号の請求項1、2、4に係る特許を維持する。 特許第7289575号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7289575号の請求項1~4に係る特許は、令和4年10月25日の出願であって、令和5年6月2日にその特許権の設定登録がされ、同年6月12日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和5年12月11日 :特許異議申立人 小野 誠(以下「申立人」という。)による請求項1~4に係る特許に対する特許異議の申立て 令和6年 2月13日 :申立人による手続補正書の提出 同年 4月12日付け:取消理由通知 同年 6月17日 :特許権者による意見書、訂正請求書の提出 同年 7月23日 :特許権者による手続補正書の提出 同年 9月12日 :申立人による意見書の提出 同年12月12日付け:訂正拒絶理由通知 令和7年 1月15日 :特許権者による意見書の提出 同年 1月31日 :特許権者による手続補正書の提出 同年 5月26日付け:取消理由通知<決定の予告>(以下「決定の予告」という。) 同年 7月 4日 :特許権者による意見書、訂正請求書の提出 同年 7月22日 :特許権者による手続補正書の提出 同年 9月 8日 :申立人による意見書の提出 なお、令和6年7月23日に手続補正された同年6月17日にした訂正の請求は、令和7年7月4日提出の訂正請求書による訂正の請求がされたので、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 第2 本件訂正の適否 1.訂正の内容 令和7年7月22日に提出の手続補正書により補正された同月4日にした訂正の請求(以下「本件訂正」という。)は、「特許第7289575号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項1~4について訂正することを求める」ものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「接着性官能基が付与されたフッ素樹脂である接着性ETFEからなる厚みが0.05~0.5mm且つ可撓管全体の厚みに対して1~16%である第一樹脂層と、前記第一樹脂層の外側に設けられ、前記第一樹脂層と異なる熱可塑性樹脂からなる第二樹脂層とを少なくとも含む可撓管において、前記接着性ETFEは、ASTM D790で測定された曲げ弾性率が500~1200MPaであり、且つ、FTIR測定で得られた波数1400~1500cm-1のC-H結合に対応するピーク面積(A)と波数1000~1100cm-1のC-F結合に対応するピーク面積(B)の比(A)/(B)が0.2~4.0である。」と記載されているのを、 「接着性官能基が付与されたフッ素樹脂である接着性ETFEからなる厚みが0.05~0.5mm且つ可撓管全体の厚みに対して1~16%である第一樹脂層と、前記第一樹脂層の外側に設けられ、前記第一樹脂層と異なる熱可塑性樹脂からなる第二樹脂層と、前記第二樹脂層の外側に設けられ、熱可塑性樹脂からなる層の厚みが1.6mmの第三樹脂層とを少なくとも含む可撓管において、前記接着性ETFEは、ASTM D790で測定された曲げ弾性率が500~1200MPaであり、且つ、FTIR測定で得られた波数1400~1500cm-1のC-H結合に対応するピーク面積(A)と波数1000~1100cm-1のC-F結合に対応するピーク面積(B)の比(A)/(B)が0.2~4.0であり、可撓管の内径(C)と可撓管全体の厚み(D)の比(E)=(D)/(C)が0.4以下、第一樹脂層の厚み(F)と第三樹脂層の厚み(G)の比(H)=(G)/(F)が4.0以上、且つ前記比(E)と(H)の積(E)×(H)が0.8~1.7を満たし、可撓管全体の厚み(D)と第一樹脂層の厚み(F)の比=(F)/(D)が0.057を満たす。」(下線部は訂正した箇所を示す。訂正事項3についても同様。)に訂正する。(請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2、4についても同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4に、「請求項3に記載の可撓管」と記載されているのを、「請求項2に記載の可撓管」に訂正する。 (4)一群の請求項 訂正事項1に係る訂正前の請求項1~4について、請求項2~4は、それぞれ請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~4に対応する訂正後の請求項〔1~4〕は、一群の請求項であって、本件訂正は、一群の請求項ごとに請求されたものである。 2.訂正の適否について (1)独立特許要件 訂正前の全ての請求項である請求項1~4に係る特許に対して特許異議の申立てがされているから、訂正前の請求項1~4に対応する訂正後の請求項〔1~4〕に係る発明については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる「独立特許要件」)は課されない。 (2)訂正事項1について ア 訂正の目的 訂正事項1は、「可撓管」が、「前記第二樹脂層の外側に設けられ、熱可塑性樹脂からなる層の厚みが1.6mmの第三樹脂層」を含むことを限定するとともに、「可撓管の内径(C)と可撓管全体の厚み(D)の比(E)=(D)/(C)が0.4以下、第一樹脂層の厚み(F)と第三樹脂層の厚み(G)の比(H)=(G)/(F)が4.0以上、且つ前記比(E)と(H)の積(E)×(H)が0.8~1.7を満たし、可撓管全体の厚み(D)と第一樹脂層の厚み(F)の比=(F)/(D)が0.057を満たす。」ことを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無 訂正事項1に関連して、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「特許明細書等」という。)には、以下の記載がある。 (ア)訂正事項1の「可撓管」が、「前記第二樹脂層の外側に設けられ、熱可塑性樹脂からなる層の厚みが1.6mmの第三樹脂層」を含むことについては、訂正前の請求項3に「前記第二樹脂層の外側に熱可塑性樹脂からなる第三樹脂層を積層し」と記載され、下記表2の実施例12~20に第三樹脂層の材質が「P-880」(「ショアA硬度83、反発弾性45%のカーボネート系ポリウレタンエラストマー」(段落【0038】を参照。))であり、厚みが「1.6mm」である実施例が示されている。 (イ)訂正事項1の「可撓管」が、「可撓管の内径(C)と可撓管全体の厚み(D)の比(E)=(D)/(C)が0.4以下、第一樹脂層の厚み(F)と第三樹脂層の厚み(G)の比(H)=(G)/(F)が4.0以上、且つ前記比(E)と(H)の積(E)×(H)が0.8~1.7を満た」すことについては、訂正前の請求項3に「前記第二樹脂層の外側に熱可塑性樹脂からなる第三樹脂層を積層し、可撓管の内径(C)と可撓管全体の厚み(D)の比(E)=(D)/(C)が0.4以下、第一樹脂層の厚み(F)と第三樹脂層の厚み(G)の比(H)=(G)/(F)が4.0以上、且つ前記比(E)と(H)の積(E)×(H)が0.8~1.7を満たす」と記載されている。 (ウ)訂正事項1の「可撓管」が、「可撓管全体の厚み(D)と第一樹脂層の厚み(F)の比=(F)/(D)が0.057を満たす。」ことについては、下記表2の実施例12~20に「第一樹脂層」について「F厚/全厚%」が「5.7%」である実施例が示されている。 (エ)【表2】(段落【0039】) 「 [図:0001431092000001.jpg] [図:0001431092000002.jpg] [図:0001431092000003.jpg] [図:0001431092000004.jpg] 」 (オ)以上(ア)~(エ)から、訂正事項1は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 訂正事項1に係る訂正は、上記ア及びイで述べたとおり、「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正であり、特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 (3)訂正事項2について 訂正事項2に係る訂正は、請求項3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。また、新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (4)訂正事項3について 訂正事項3は、訂正事項2の訂正事項に伴って、引用する請求項を整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 3.小括 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 第2で説示したとおり、本件訂正は、認められるから、本件特許の請求項1、2、4に記載された発明は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、2、4に記載された事項により特定される下記のとおりのものと認める(以下、「本件発明1」などといい、これらを総称して「本件発明」ということがある。また、請求項3については本件訂正により削除された。)。 「 【請求項1】 接着性官能基が付与されたフッ素樹脂である接着性ETFEからなる厚みが0.05~0.5mm且つ可撓管全体の厚みに対して1~16%である第一樹脂層と、前記第一樹脂層の外側に設けられ、前記第一樹脂層と異なる熱可塑性樹脂からなる第二樹脂層と、前記第二樹脂層の外側に設けられ、熱可塑性樹脂からなる層の厚みが1.6mmの第三樹脂層とを少なくとも含む可撓管において、前記接着性ETFEは、ASTM D790で測定された曲げ弾性率が500~1200MPaであり、且つ、FTIR測定で得られた波数1400~1500cm-1のC-H結合に対応するピーク面積(A)と波数1000~1100cm-1のC-F結合に対応するピーク面積(B)の比(A)/(B)が0.2~4.0であり、可撓管の内径(C)と可撓管全体の厚み(D)の比(E)=(D)/(C)が0.4以下、第一樹脂層の厚み(F)と第三樹脂層の厚み(G)の比(H)=(G)/(F)が4.0以上、且つ前記比(E)と(H)の積(E)×(H)が0.8~1.7を満たし、可撓管全体の厚み(D)と第一樹脂層の厚み(F)の比=(F)/(D)が0.057を満たす。 【請求項2】 前記第二樹脂層の熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂であり、前記第二樹脂層の厚みが0.05~0.4mmであることを特徴とする請求項1に記載の可撓管。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 隣接する層の間に、繊維、モノフィラ、ワイヤー、スプリングからなる補強材を少なくとも一つ含む請求項2に記載の可撓管。」 第4 決定の予告の概要 1.当審が決定の予告に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。 理由1(新規性) 本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 理由2(進歩性) 本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 記 (証拠の方法) (1)特開2010-133502号公報(甲第1号証であって、以下「甲1」という。) (2)ダイキン工業株式会社,“接着性フッ素樹脂 ネオフロンTM EFEP”カタログ(甲第2号証であって、以下「甲2」という。) (3)中埜高明,甲第2号証の裏表紙右下の記載についてのダイキンエ業株式会社からの回答(甲第3号証であって、以下「甲3」という。) (4)一般財団法人材料科学技術振興財団,2023年10月20日付け“分析結果報告書”,樹脂ペレットのFT-IR分析2(甲第4号証であって、以下「甲4」という。) (5)一般財団法人材料科学技術振興財団分析評価部,2023年11月15日付け“分析結果報告書”,樹脂ペレットのFT-IR分析3(甲第5号証であって、以下「甲5」という。) (6)株式会社ブリヂストン,“エコるーぷ〈複層フッ素樹脂ホース〉”カタログ(甲第8号証であって、以下「甲8」という。) (7)中埜高明,ネオフロンEFEP RP―5000の特性についての株式会社ダイキンエ業株式会社からの回答(甲第10号証であって、以下「甲10」という。) 理由1及び2 請求項1、2:甲1~5、甲10 理由2 請求項3、4:甲1~5、甲8、甲10 2.申立人が提出したその他の証拠 また、申立人は、上記1.の甲1~5、甲8、甲10のほかに、以下の証拠を提出した。 [特許異議申立書の提出時] (1)特開2004-203038号公報(甲第6号証であって、以下「甲6」という。) (2)特開2009-228753号公報(甲第7号証であって、以下「甲7」という。) (3)ポリプラ・エポニック株式会社のホームページにおけるプレスリリース(甲第9号証であって、以下「甲9」という。) [令和6年9月12日及び令和7年9月8日の意見書の提出時] (1)特開2011-240513号公報(甲第11号証であって、以下「甲11」という。) (2)株式会社トヨックス社製トヨフッソホースシリーズのカタログ(甲第12号証であって、以下「甲12」という。) (3)株式会社トヨックス社製工業用ホースシリーズ総合カタログ(甲第13号証であって、以下「甲13」という。) 第5 甲号証に記載された発明、事項等 1.甲1について (1)本件特許の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1には、次の記載がある。なお、下線は当審で付したものである(以下同様。)。 ア 「【0001】 本発明は、成形が容易で、且つ、適度な柔軟性を有する給水・給湯用のホースに関し、特には、ヒートポンプ式給湯器や、家庭用コージェネレーションシステムの熱交換ユニットと貯湯槽との間の配管として好適に使用できるホースに関する。」 イ 「【0005】 ここで、本発明の給水・給湯用ホースは、前記ウレタン樹脂の23℃における硬度が90~100であり、前記外層の厚みが0.8~1.5mmであることが好ましい。外層に用いるウレタン樹脂の硬度が100より高い場合には、ホースの柔軟性を確保することが難しく、一方、硬度が90より低い場合には、3層共押出しが困難だからである。また、外層の厚みが0.8mmより薄い場合には、成形性が悪くなり、1.5mmより厚い場合には、ホースの柔軟性確保という目的達成が困難だからである。なお、硬度とは、JIS K7215に基づき測定した値をいう。」 ウ 「【0009】 本発明の給水・給湯用ホース10は、図1に示す如く、フッ素樹脂からなる内層1と、内層1の外側に配置されたポリアミド樹脂製の中間層2と、中間層2の外側に配置されたウレタン樹脂製の外層3と、補強材を巻回した補強層4と、補強層4の外側に配置された最外層5とを備え、内層1と、中間層2と、外層3とを3層共押出しにより同時に成形したものである。 【0010】 <内層> 内層1のフッ素樹脂としては、成形温度が190~280℃の任意のフッ素樹脂を用いることができるが、特に、高い機械的強度及び高いガスバリア性能を有して、厚生労働省告示の食品衛生規格に適合する無臭無害なエチレン-四フッ化エチレン共重合体(以下ETFEという)を使用することが好ましい。ここで、内層1は、コスト削減および柔軟性の確保の観点から、厚さが0.05~0.30mmであることが好ましく、0.05~0.20mmであることが更に好ましい。厚さを0.05mmより薄くするのは製造上困難である一方、厚さを0.30mmより厚くすると、ホースの柔軟性が確保し難くなると共にコストが増大してしまうからである。 【0011】 なお、ETFEとしては、EFEP(ダイキン工業株式会社製「ネオフロン(商標)EFEP RP-5000又はRP-4000系」等)を用いることが好ましい。EFEPは、優れた耐薬品性、非粘着性、電気絶縁性、耐候性を有し、また、ポリアミド系樹脂からなる中間層2との接着性が良いと共に、融点が200℃以下と低いために低温環境で共押出し成形が可能だからである。 【0012】 <中間層> 中間層2のポリアミド樹脂としては、成形温度が190~230℃のものであれば、ナイロンエラストマーなど既知のポリアミド樹脂を用いることができるが、内層1がETFEである場合には、ナイロンが望ましく、特にヒドロキシ安息香酸アルキル系可塑剤を添加した変性ナイロン12(ダイセル・エボニック株式会社製の「ダイアミド(商品名):ポリアミド12樹脂」等)が好ましい。ETFEとナイロンとは接着性が良好だからである。ここで、中間層2の厚みは、0.05~0.30mmであることが好ましい。ホースの柔軟性を確保するためには、中間層2の厚みが薄い方が良いからである。 【0013】 <外層> 外層3のウレタン樹脂としては、成形温度が190℃~230℃のものであれば、ポリウレタン系エラストマーなどの任意のウレタン樹脂を用いることができるが、特に、耐熱性に優れたポリ炭酸エステル系か又はカプロ系、或いは、エーテル系のポリウレタン系エラストマー等を選択することが好ましい。ここで、成形性の観点から、外層3のウレタン樹脂は硬度が90~100であることが好ましく、外層3の厚みは0.8~1.0mmであることが好ましい。 【0014】 <補強層> 補強層4の補強材としては、ポリエステルやナイロンやアラミドなどの合成樹脂製補強糸または補強繊維またはモノフィラメント(単繊維)か、或いは、ステンレスなどの金属製補強線を用いることができる。そして、補強層4は、通常用いられる方法を用いて、上記補強材を外層3の外周面に例えばブレード構造またはスパイラル構造に編上げてなる。ここで、補強材は、表面の凹凸が少なくキンク性能が高いホースを得るためにはブレード構造で編上げることが好ましく、柔軟なホースを得るためにはスパイラル構造で編上げることが好ましい。」 エ 「【0019】 (実施例1~3) 表1に示す材料を用いて、内層、中間層および外層を3層押出し機(プラ技研製)で一体成形した後、編組機(KARG、WARD、プラ技研製)を用いてスパイラル構造で補強層を形成し、更に最外層を熱融圧着することにより、各層が表1に示す厚みを有する給水・給湯用ホースを作製した。作製した給水・給湯用ホースにつき、接着性、成形性、キンク半径、爪のチャック力を下記の方法で測定・評価した。結果を表1に示す。なお、表1中における樹脂の硬度はJIS K7215に基づき測定した値である。」 オ 「【0025】 【表1】 [図:0001431092000005.jpg] 【0026】 なお、素材として使用した商品は、下記の通り市販されているものである。 ・ネオフロン EFEP:ダイキン工業(株)製 ・VESTAMID:ダイセル・エボニック(株)製 ・パンデックス:ディーアイシーバイエルポリマー(株)製 ・エラストラン:BASFジャパン(株)製 ・レザミン:大日精化工業(株)製 」 (2)上記(1)から認められること 上記(1)の段落【0025】の表1から、実施例1ないし実施例3における給水・給湯用ホース全体の厚みは、内層と中間層と外層と補強層と最外層との厚みを合わせたものであるから、それぞれ、2.4mm、2.4mm、2.6mmであると把握される。そして、実施例1ないし実施例3における内層は0.2mmであるから、内層の厚みは、給水・給湯用ホース全体の厚みに対して7.7%又は8.3%であるといえる。また、甲1の段落【0009】、段落【0013】及び段落【0025】の表1(実施例1及び実施例2)には、中間層の外側に外層を設け、外層が、ディーアイシーバイエルポリマー(株)製のパンデックスまたはBASFジャパン(株)製のエラストランからなり、外層の厚みは1.0mmであり、給水・給湯用ホース全体の厚みは2.4mmである点が記載されている。そうすると、内層の厚み(0.2mm)と外層の厚み(1.0mm)の比は5.0であるといえる。 (3)甲1発明 上記(1)及び(2)を総合すると、甲1には、次の事項からなる発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 〔甲1発明〕 「ダイキン工業(株)製のネオフロンEFEP RP-5000からなる厚みが0.2mmかつ柔軟性を有する給水・給湯用ホース全体の厚みに対して7.7%又は8.3%である内層と、内層の外側に配置され、ダイセル・エボニック(株)製のVESTAMID ZL1105、ZL1107からなる中間層と、前記中間層の外側に設けられ、ディーアイシーバイエルポリマー(株)製のパンデックス T-8195又はBASFジャパン(株)製のエラストラン 1195A50STRからなる層の厚みが1.0mmの外層とを備え、内層の厚み(0.2mm)と外層の厚み(1.0mm)の比は5.0である柔軟性を有する給水・給湯用のホース。」 2.甲2について (1)甲2の記載 甲2には、次の記載がある。 ア「 [図:0001431092000006.jpg] 」(表紙) イ「 [図:0001431092000007.jpg] 」(第1ページ) ウ「 [図:0001431092000008.jpg] 」(第3ページ) エ「 [図:0001431092000009.jpg] 」(第5ページ) オ「 [図:0001431092000010.jpg] 」(裏表紙) (2)上記(1)から認められること ア 上記(1)エより、裏表紙の右下には、May.2003と記載されている。 イ 上記(1)イ、ウから「ネオフロンEFEP RP-5000」は、「反応性基を導入し、融点以上の温度で接着性が現れる特性をプラス」したフッ素樹脂であることが理解できる。 ウ 上記(1)から「ネオフロンEFEP RP-5000」は、「曲げ弾性率」が「1000MPa」であることが理解できる。 3.甲3について (1)甲3の記載 甲3は、甲2の裏表紙右下の記載についてのダイキン工業株式会社の回答であり、以下の回答が記載されている。 ア「 [図:0001431092000011.jpg] 」(第2ページ) イ「 [図:0001431092000012.jpg] 」(第3ページ) ウ「 [図:0001431092000013.jpg] 」(第4ページ) (2)上記(1)から認められること 上記(1)アないしウより、ダイキン工業株式会社の“接着性フッ素樹脂 ネオフロンTM EFEP”カタログの裏表紙の右下に記載された「May.2003」は、2003年5月に発行されたことを表示していると理解できる。 4.甲4について (1)甲4の記載 甲4は、「ネオフロン RP-5000」という試料について分析した分析結果報告書(2023年10月20日、一般財団法人材料科学技術振興財団作成)であり、以下の分析結果が記載されている。 ア「 [図:0001431092000014.jpg] 」 イ「 [図:0001431092000015.jpg] [図:0001431092000016.jpg] 」 ウ「 [図:0001431092000017.jpg] 」 (2)甲4分析結果 上記(1)を総合すると、甲4には、次の分析結果(以下「甲4分析結果」という。)が記載されていると認める。 〔甲4分析結果〕 「「ネオフロン RP-5000」の任意の3粒の樹脂ペレットにおいて、FTIR測定で得られた波数1400~1500cm -1のC-H結合に対応するピーク面積(A)と波数1000~1100cm -1のC-F結合に対応するピーク面積(B)の比(A)/(B)が、それぞれ0.5709、0.4275、0.4715であること。」 5.甲5について (1)甲5の記載 甲5は、「ネオフロン RP-5000」という試料について分析した分析結果報告書(2023年11月15日、一般財団法人材料科学技術振興財団作成)であり、以下の分析結果が記載されている。 ア「 [図:0001431092000018.jpg] 」 イ「 [図:0001431092000019.jpg] [図:0001431092000020.jpg] 」 ウ「 [図:0001431092000021.jpg] 」 (2)甲5分析結果 上記(1)を総合すると、甲5には、次の分析結果(以下「甲5分析結果」という。)が記載されていると認める。 〔甲5分析結果〕 「「ネオフロン RP-5000」の任意の3粒の樹脂ペレットにおいて、FTIR測定で得られた波数1400~1500cm -1のC-H結合に対応するピーク面積(A)と波数1000~1100cm -1のC-F結合に対応するピーク面積(B)の比(A)/(B)が、それぞれ0.3072、0.4389、0.5905であること。」 6.甲8について (1)甲8の記載 甲8には、次の記載がある。 ア「 [図:0001431092000022.jpg] 」(表紙) イ「 [図:0001431092000023.jpg] 」(第1ページ) ウ「 [図:0001431092000024.jpg] 」(第2ページ) エ「 [図:0001431092000025.jpg] 」(第2ページ) オ「 [図:0001431092000026.jpg] 」 (2)上記(1)から認められること ア 上記(1)イ及びウより、ホースの内径が10mmであり、外径が14.6mmであることから、ホース全体の厚みは2.3mmであることが把握される。 イ 上記(1)アより、甲8に示されるカタログの表紙には、2022.2と記載されており、2022.2は、2022年2月を意味するとともに、遅くとも当該カタログが2022年2月末には公衆に利用可能となったと認められる。そうすると、当該カタログは、本件特許の出願日である2022年10月25日よりも前の2022年3月までに作成され、公衆に利用可能となったと認められる。 (3)甲8記載事項 上記(1)、(2)を総合すると、甲8には、次の事項(以下「甲8記載事項」という。)が記載されていると認める。 〔甲8記載事項〕 「エコるーぷは、エコキュート(自然冷媒電気式ヒートポンプ給湯機)・ヒートポンプ配管用のホースであって、内管は、フッ素樹脂からなる接水層と特殊接着樹脂からなる樹脂層1と熱可塑性樹脂からなる樹脂層2とから構成され、内管の外側に、補強層と外被とを有し、内径が10mmであり、外径が14.6mmであり、ホース全体の厚みが2.3mmであること。」 7.甲10について (1)甲10の記載 「 [図:0001431092000027.jpg] 」 (2)上記(1)から認められること 上記(1)より、甲2のダイキン工業株式会社の“接着性フッ素樹脂 ネオフロンTM EFEP”に関して、「RP-5000の物性値は、2003年のカタログに記載されている物性値から2023年まで変更していないこと。」が理解できる。 第6 当審の判断 1.本件発明1について (1)対比 本件発明1と甲1発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 ア 甲1発明の「柔軟性を有する給水・給湯用ホース」は、本件発明1の「可撓管」に相当し、甲1発明の「内層」は、本件発明1の「第一樹脂層」に相当する。 また、「ネオフロンEFEP RP-5000」について、「曲げ弾性率」が「1000MPa」であることを示す甲2のカタログは、甲3を参酌すると、2003年5月に発行されたものであると認められるから、当該カタログは、本件特許の出願日である2022年10月25日よりも前の2003年5月に発行され、公衆に利用可能となったと認められる。さらに、甲10から、甲2に示されるカタログのRP-5000の物性値は2023年まで変更していないことが認められる。 そうすると、甲2、甲3及び甲10の記載を参酌すると、甲1発明の「ダイキン工業(株)製のネオフロンEFEP RP-5000」は、接着性官能基を有する接着性ETFEであって、曲げ弾性率が1000MPaであるといえるから、甲1発明の「ダイキン工業(株)製のネオフロンEFEP RP-5000からなる厚みが0.2mmかつ給水・給湯用ホース全体の厚みに対して約8%である内層」は、本件発明1の「接着性官能基が付与されたフッ素樹脂である接着性ETFEからなる厚みが0.05~0.5mm且つ可撓管全体の厚みに対して1~16%である第一樹脂層」であり、「前記接着性ETFEは、ASTM D790で測定された曲げ弾性率が500~1200MPaであ」ることに相当する。 イ 甲1発明の「配置され」は、本件発明1の「設けられ」に相当し、甲1発明の「中間層」は、本件発明1の「第二樹脂層」に相当する。甲1発明の「ダイセル・エボニック(株)製のVESTAMID ZL1105、ZL1107」は、本件発明1の「ダイキン工業(株)製のネオフロンEFEP」とは異なる熱可塑性の樹脂であることが明らかであるから、甲1発明の「内層の外側に配置され、ダイセル・エボニック(株)製のVESTAMID ZL1105、ZL1107からなる中間層」は、本件発明1の「前記第一樹脂層の外側に設けられ、前記第一樹脂層と異なる熱可塑性樹脂からなる第二樹脂層」に相当する。 ウ 甲1発明の「外層」は、本件発明1の「第三樹脂層」に相当し、「ディーアイシーバイエルポリマー(株)製のパンデックス T-8195又はBASFジャパン(株)製のエラストラン 1195A50STR」は「熱可塑性樹脂」に相当する。 そうすると、甲1発明の「前記中間層の外側に設けられ、ディーアイシーバイエルポリマー(株)製のパンデックス T-8195又はBASFジャパン(株)製のエラストラン 1195A50STRからなる層の厚みが1.0mmの外層とを備え」ることは、本件発明1の「前記第二樹脂層の外側に設けられ、熱可塑性樹脂からなる層の厚みが1.6mmの第三樹脂層とを少なくとも含む」ことと、「前記第二樹脂層の外側に設けられ、熱可塑性樹脂からなる第三樹脂層とを少なくとも含む」ことである限りにおいて一致する。 さらに、甲1発明の「内層の厚み(0.2mm)と外層の厚み(1.0mm)の比は5.0である」ことは、本件発明1の「第一樹脂層の厚み(F)と第三樹脂層の厚み(G)の比(H)=(G)/(F)が4.0以上」「を満たす」ことに相当する。 エ 以上のことから、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「接着性官能基が付与されたフッ素樹脂である接着性ETFEからなる厚みが0.05~0.5mm且つ可撓管全体の厚みに対して1~16%である第一樹脂層と、前記第一樹脂層の外側に設けられ、前記第一樹脂層と異なる熱可塑性樹脂からなる第二樹脂層と、前記第二樹脂層の外側に設けられ、熱可塑性樹脂からなる第三樹脂層とを少なくとも含む可撓管において、接着性ETFEは、ASTM D790で測定された曲げ弾性率が500~1200MPaであり、第一樹脂層の厚み(F)と第三樹脂層の厚み(G)の比(H)=(G)/(F)が4.0以上を満たす。」 [相違点1] 本件発明1は、「前記接着性ETFEは、FTIR測定で得られた波数1400~1500cm -1のC-H結合に対応するピーク面積(A)と波数1000~1100cm -1のC-F結合に対応するピーク面積(B)の比(A)/(B)が0.2~4.0である」のに対して、甲1発明は、ダイキン工業(株)製のネオフロンEFEP RP-5000である点。 [相違点2] 本件発明1は、第三樹脂層の厚みが「1.6mm」であり「可撓管の内径(C)と可撓管全体の厚み(D)の比(E)=(D)/(C)が0.4以下、且つ前記比(E)と第一樹脂層の厚み(F)と第三樹脂層の厚み(G)の比(H)の積(E)×(H)が0.8~1.7を満たし、可撓管全体の厚み(D)と第一樹脂層の厚み(F)の比=(F)/(D)が0.057を満たす」のに対して、甲1発明は、外層の厚みが1.0mmであり、上記数式にかかる事項を備えていない点。 (2) 判断 ア 上記相違点1について検討する。 甲1発明の「ネオフロンEFEP RP-5000」は、甲4分析結果及び甲5分析結果から「ネオフロン RP-5000」の任意の樹脂ペレットにおいて、FTIR測定で得られた波数1400~1500cm -1のC-H結合に対応するピーク面積(A)と波数1000~1100cm -1のC-F結合に対応するピーク面積(B)の比(A)/(B)が、それぞれ0.5709、0.4275、0.4715、0.3072、0.4389、0.5905であることが実証されている。 してみると、甲1発明の「ネオフロンEFEP RP-5000」は、本件発明1の「FTIR測定で得られた波数1400~1500cm -1のC-H結合に対応するピーク面積(A)と波数1000~1100cm -1のC-F結合に対応するピーク面積(B)の比(A)/(B)が0.2~4.0である」という物性を、備えていると解することができる。 そうすると、甲1発明の「ネオフロンEFEP RP-5000」は、上記相違点1に記載の物性を有するものであるから、相違点1に係る本件発明1の構成は実質的な相違点でない。 また、実質的な相違点であるとしても、甲4や甲5で示されたような分析実験を行い、甲1発明の「ネオフロンEFEP RP-5000」が有する物性についての発明特定事項を付加することは、当業者であれば容易になし得ることであって、当該相違点1は、甲1発明に基いて当業者が容易に想到し得るものである。 イ 続いて、相違点2について検討する。 上記第5の6.(3)に示したとおり、甲8には、「エコるーぷは、エコキュート(自然冷媒電気式ヒートポンプ給湯機)・ヒートポンプ配管用のホースであって、内管は、フッ素樹脂からなる接水層と特殊接着樹脂からなる樹脂層1と熱可塑性樹脂からなる樹脂層2とから構成され、内管の外側に、補強層と外被とを有し、内径が10mmであり、外径が14.6mmであり、ホース全体の厚みが2.3mmであること。」との記載事項が記載されている。 しかしながら、甲1発明に甲8記載事項を適用しても、相違点2に係る本件発明1の構成のうち、第三樹脂層の厚みが「1.6mm」であり「可撓管全体の厚み(D)と第一樹脂層の厚み(F)の比=(F)/(D)が0.057を満たす」ことが当業者にとって容易になし得たということはできない。また、申立人から提出されたその他の証拠(甲6、7、9、11~13)にも、相違点2に係る本件発明1の構成は示されていない。 また、甲1発明を設計変更することにより、相違点2に係る本件発明1の構成とすることが容易になし得たか検討する。 本件発明1は、次亜塩素酸ナトリウム水溶液や苛性ソーダ水溶液などの酸・アルカリ性流体ヘの耐性(耐薬品性)に優れた柔軟な可撓管を提供すること(段落【0007】)との課題の下で、第三樹脂層の厚みを「1.6mm」、「可撓管全体の厚み(D)と第一樹脂層の厚み(F)の比=(F)/(D)が0.057」としたものである(段落【0039】及び【0044】を参照。)。 一方、甲1発明は、「適度な柔軟性を有する給水・給湯用のホースに関する」(甲1の段落【0001】)ものであり、本件発明1の課題とは異なる。また、そのような甲1発明に、耐薬品性に優れた柔軟な可撓管を提供することが、内在する課題であるとも認められないから、実験等を通じて甲1発明の各種寸法を適宜設計変更しても、相違点2に係る本件発明1の構成とすることが当業者にとって容易になし得たということはできない。 さらに、本件発明1の作用効果について検討してみても、特許明細書等の段落【0039】の表2の実施例12~20において、「耐薬品性」及び「柔軟性」の項目が「◎+」であることが示されており、「耐薬品性」及び「柔軟性」が最も優れているという、有利な効果を奏すると認められる。 したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲8記載事項並びにその他の証拠に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3) まとめ よって、本件発明1に係る特許は、決定の予告で通知した取消理由(理由1、2)によっては取り消すことはできない。 2.本件発明2、4について 本件発明2、4は、請求項1を直接又は間接的に引用するものである。 したがって、同様の理由により、本件発明2、4は、甲1発明及び甲8記載事項並びにその他の証拠に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 よって、本件発明2、4に係る特許は、決定の予告で通知した取消理由(理由1、2)によっては取り消すことはできない。 3.申立人の意見について 申立人は、令和7年9月8日提出の意見書において、 (1)甲1には、外層について、「外層の厚みが0.8~1.5mmであることが好ましい」ことが記載され(段落【0005】、請求項2)、「1.5mm」は本件発明1の第三樹脂層の厚み1.6mmと非常に近い値であること、甲11に外層の厚みは0.4~4mm程度が好ましいことが記載されていること(段落【0033】)、及び本件発明1において「第3樹脂層の厚みが1.6mmであること」による格別顕著な効果はないことを主張するとともに、 (2)ホースは、使用形態や用途などに応じて様々な内径と外径、全体厚みに適宜調整し得るものであり(例えば、甲12、甲13の規格表などを参照。)、甲1発明(実施例1-3)において、内層の厚み0.2mm、中間層の厚み0.2mm、外層の厚み1.6mm、補強層の厚み0.5mm、最外層の厚みを1.0mm、のホースとすることは当業者が容易に想到し得ることであること、甲12及び甲13には、内径が19mm、外径が26mmでありホース全体厚みは3.5mmであることが記載されており、内層の厚み0.2mm、中間層の厚み0.2mm、外層の厚み1.6mm、補強層の厚み0.5mm、最外層の厚み1.0mmとした甲1発明のホースの内径を19mmに調整することは当業者が容易になし得ることであることから、甲1発明において、相違点2に係る構成を得ることは容易になし得た旨を主張する。 しかしながら、甲1の実施例1-3における外層の厚みは「1.0mm」又は「1.2mm」であって、本件発明1の「1.6mm」ではないし、内層の厚み0.2mm、中間層の厚み0.2mm、外層の厚み1.6mm、補強層の厚み0.5mm、最外層の厚み1.0mmであり、内径が19mmであるホースは甲1~13のいずれにも記載されておらず、さらにそのような寸法とすることが設計事項であるともいえない。また、本件発明1は、耐薬品性及び柔軟性の両方に優れる(表2で実施例12~20について、「耐薬品性」及び「柔軟性」の両方の項目が「◎+」である。)という、有利な効果を奏するものであり、仮にホースの各層及び内径の寸法がいずれかの証拠に記載されている又は公知であるとしても、それらを耐薬品性及び柔軟性の両方に優れるように寄せ集めて本件発明1とすることが当業者にとって容易になし得たとはいえない。 したがって、申立人の主張は採用できない。 第7 まとめ 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1、2、4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1、2、4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、請求項3に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項3に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701301

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