特許異議申立
2023-700295
フェノールフォーム製造用樹脂組成物並びにフェノールフォーム及びその製造方法
- 審判番号
- 2023-700295
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-122727
- 登録番号
- 7141983
- 請求日
- 2023年03月17日
- 審決日
- 2023年06月05日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】旭有機材株式会社
- 【権利者代理人】中島 三千雄
- 【権利者代理人】中島 正博
- 【異議申立人】小松 一枝
- 【異議申立人】前田 知子
- 審判長/審判官
- 審判長 平塚 政宏
- 審判官 三上 晶子
- 審判官 植前 充司
- 分類
- P1651.113-Y (C08J) / P1651.121-Y (C08J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7141983号発明「フェノールフォーム製造用樹脂組成物並びにフェノールフォーム及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7141983号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7141983号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし11に係る特許についての出願は、令和1年7月1日を出願日とする特許出願であって、令和4年9月14日にその特許権の設定登録(請求項の数11)がされ、同年同月26日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許に対して、令和5年3月17日に特許異議申立人 小松 一枝及び前田 知子(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし11)がされた。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし11に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
レゾール型フェノール樹脂及び酸硬化剤と共に、発泡剤として、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含有するフェノールフォーム製造用樹脂組成物。
【請求項2】
前記発泡剤が(Z)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンである請求項1に記載のフェノールフォーム製造用樹脂組成物。
【請求項3】
前記酸硬化剤がパラトルエンスルホン酸及び/又はキシレンスルホン酸である請求項1又は請求項2に記載のフェノールフォーム製造用樹脂組成物。
【請求項4】
前記酸硬化剤としてパラトルエンスルホン酸及びキシレンスルホン酸を含有し、質量基準において、該パラトルエンスルホン酸の含有量が該キシレンスルホン酸の含有量より多い請求項1又は請求項2に記載のフェノールフォーム製造用樹脂組成物。
【請求項5】
ひまし油エチレンオキサイド付加物を更に含有する請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のフェノールフォーム製造用樹脂組成物。
【請求項6】
尿素を更に含有する請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のフェノールフォーム製造用樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載のフェノールフォーム製造用樹脂組成物の発泡硬化物よりなるフェノールフォーム。
【請求項8】
独立気泡率が90%以上である請求項7に記載のフェノールフォーム。
【請求項9】
圧縮強さが17.5N/cm2 以上である請求項7又は請求項8に記載のフェノールフォーム。
【請求項10】
初期熱伝導率が0.0170w/m・k以下である請求項7乃至請求項9の何れか1項に記載のフェノールフォーム。
【請求項11】
請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載のフェノールフォーム製造用樹脂組成物を、面材上で発泡及び硬化させる工程を含むフェノールフォームの製造方法。」
第3 特許異議の申立ての理由の概要
令和5年3月17日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要は以下のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであって、本件特許の請求項3ないし11に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由2(甲第2号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1及び3ないし11に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び3ないし11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
3 証拠方法
(1) 甲第1号証:国際公開第2019/036049号
(2) 甲第1号証の2:特表2020-531633号公報
(3) 甲第2号証:国際公開第2016/152154号
(4) 甲第3号証:特開2015-105340号公報
(5) 甲第4号証:特開2016-17131号公報
(6) 甲第5号証:国際公開第2016/152988号
(7) 甲第6号証:特開2018-95869号公報
(8) 甲第7号証:国際公開第2013/021982号
(9) 甲第8号証:国際公開第2015/099086号
(10) 甲第9号証:稲冨茂樹「フェノール樹脂の最近の進歩」『ネットワークポリマー』Vol.34 No.1(2013)、p.45-53
(11) 甲第10号証:南雲健「成形材料(27)-フェノール樹脂-」『成形加工』第15巻 第6号(2003)、p.396-403
(12) 甲第11号証:「2018 Assessment Report」、国連環境計画(United Nations Environment Programme)のオゾン事務局(Ozone Secretariat)、(March 2019)
(13) 甲第12号証:「AMOLEA○R(合議体注:○の中にRの記号を示す)1224yd」、AGC旭硝子、(2017年12月)
(14) 甲第13号証:「Study on environmental and health effects of HFO refrigerants (Publication number: M-917|2017)」、Norwegian Environment Agency、(22 December 2017)
(以下、順に「甲1」のようにいう。)
証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。
第4 当審の判断
当審は、以下に述べるように、上記申立理由1及び2にはいずれも理由がないと判断する。
1 主な証拠に記載された事項等
(1)甲1に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項
甲1には、Z-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エンの組成物及び使用に関し、おおむね次の事項が記載されている。なお、甲1は外国語文献のため、甲1の2に基づいて訳文のみを摘記する。
・「化合物Z-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エンと、HFO、HCFO、HFC、HFE、HCFC、CFC、CO2、オレフィン、ヒドロクロロオレフィン、塩素化炭化水素、有機酸、アルコール、炭化水素、エーテル、アルデヒド、ケトン、水、並びにその他、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸、トランス-1,2-ジクロロエチレン(DCE)、二酸化炭素、3,3,3-トリフルオロプロピン、シス-HFO-1234ze+HFO-1225yez、これらと水の混合物;これらとCO2の混合物、これらとトランス-1,2-ジクロロエチレンの混合物;これらとギ酸メチルの混合物;シス-HFO-1234ze+CO2との混合物、シス-HFO-1234ze+HFO-1225yez+CO2との混合物、及びシス-HFO-1234ze+HFC-245faとの混合物からなる群から選択される1種以上の化合物と、を含む、組成物。」(請求の範囲 第1項)
・「HFCは、成層圏オゾンの破壊には寄与しないが、「温室効果」に寄与、すなわち地球温暖化に寄与するので懸念されている。その結果、HFCは監視下に入り、その広範囲に及ぶ使用も将来的には制限される恐れがある。したがって、成層圏オゾンの破壊に寄与することなく、地球温暖化係数(GWP)も低い組成物が必要とされている。」(第1頁第23-28行)
・「ヒドロクロロフルオロオレフィンは、地球温暖化係数が低く、成層圏オゾンの破壊に寄与しないと考えられる。1種のこのようなヒドロクロロフルオロオレフィンは、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エンである。1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エンは、2種の異なる立体異性体として存在し、そのそれぞれが異なる沸点を有するため、異なる用途において異なる機能を発揮し得る。
ヒドロクロロフルオロオレフィン1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロプロパ-1-エン(CF3CF=CHCl、HCFO-1224yd)を含む組成物、具体的には、Z異性体Z-HCFO-1224ydを含む組成物が本明細書で提供される。」(第4頁第2-10行)
・「発泡性組成物
発泡性組成物が本明細書に提供される。当業者に既知であるように、発泡性組成物は、一般に、発泡体を形成することができる1種以上の成分を含む。本明細書で使用するとき、用語「発泡体起泡剤」は、発泡体構造、例えば、概ね気泡性発泡体構造を形成することができる成分又は成分の組み合わせを指すために使用される。本明細書で提供される発泡性組成物は、このような成分及び発泡剤化合物を含む。いくつかの実施形態では、発泡剤化合物は、Z-HCFO-1224ydである。
・・・(略)・・・
いくつかの実施形態では、発泡体を形成することができる1種以上の成分は、発泡体及び/又は発泡性組成物を形成することができる熱硬化性組成物を含む。熱硬化性組成物の例としては、ポリウレタン及びポリイソシアヌレート発泡体組成物、並びにフェノール発泡体組成物も挙げられる。いくつかの実施形態では、この反応及び起泡プロセスは、触媒、並びに気泡サイズを制御及び調整し、形成中に発泡体構造を安定化させる機能を有する界面活性剤材料などの、様々な添加剤を使用することによって強化される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の発泡剤組成物に関して上述した追加成分のうちの任意の1種以上が、本明細書に記載の発泡性組成物に組み込まれる。このような熱硬化性発泡体の実施形態では、本組成物のうちの1種以上が、発泡性組成物中に発泡剤若しくはその一部として、又は2つ以上の部分の発泡性組成物の一部として含まれ、当該組成物は、適切な条件下で反応及び/又は発泡して発泡体又は気泡構造体を形成することができる成分のうちの1種以上を含み得る。」(第17頁第15行-第19頁第7行)
・「本発明による発泡体、例えば、ポリウレタン発泡体などの熱硬化性発泡体の1つの利点は、優れた熱性能を達成する能力である。いくつかの実施形態では、熱性能は、例えば低温条件下でK係数又はラムダによって測定される。本明細書で提供される熱硬化性発泡体などの本明細書で提供される発泡体は、多種多様な用途で使用することができる。いくつかの実施形態では、発泡体としては、冷蔵庫発泡体、冷凍庫発泡体、冷凍庫/冷凍庫発泡体、パネル発泡体、及び他の低温又は極低温製造用途を含む、電化製品用発泡体が挙げられる。
いくつかの実施形態では、発泡体は、全て本明細書に記載の発泡剤の多くに関連する低オゾン破壊係数及び低地球温暖化係数に加えて、断熱効率(特に、熱硬化性発泡体の場合)、寸法安定性、圧縮強度、断熱性の経時変化を含む、1つ以上の優れた特長、特徴、及び/又は特性を提供する。いくつかの実施形態では、発泡体物品に成形されたこのような発泡体を含む熱硬化性発泡体が提供され、それを、同じ発泡剤(又はHFC-245faなどの一般的に使用される発泡剤)を同量使用したが、Z-HCFO-1224ydを使用せずに作製された発泡体と比べると、改善された熱伝導率を示す。」(第50頁第21行-第51頁第6行)
・「実施例15:HCFO-1224yd及びHFO-1336mzz-Eブレンドにより強化された、経時劣化R値
手動混合方法を使用して、8”×8”×2.5”の成形型で発泡体サンプルを作製した。発泡体を一晩硬化させ、6”×6”×1.5”に切断し、較正された熱流量計で分析を実施した。サンプルの分析を実施し、各設定点においての値をベースラインk係数値と見なした。例示的な手動混合方法は、B側に適切な量のHCFO又はHFO及び水(一般的なポリウレタンB側混合物)を添加する工程と、混合する工程と、からなっていた。次いで、高速Arroadミキサーを用いて4000rpmで1.5秒間、適切な量のA側(一般的なポリウレタンA側混合物)を混合し、混合物を成形型に注いだ。発泡体を調製するために使用した各発泡剤成分の重量パーセントを表19に提示し(組み合わせた、A側及びB側の合計量に基づく重量百分率)、100:123の比のB側:A側を使用してサンプルを作製した。熱分析実験の結果を表20~表24及び図8~図11に示す。
[図:0001399414000001.jpg]
[図:0001399414000002.jpg]
NA=データ該当なし
K係数はBtu・in/ft2・h・°Fで示す
[図:0001399414000003.jpg]
NA=データ該当なし
K係数はBtu・in/ft2・h・°Fで示す
[図:0001399414000004.jpg]
NA=データ該当なし
K係数はBtu・in/ft2・h・°Fで示す
[図:0001399414000005.jpg]
NA=データ該当なし
K係数はBtu・in/ft2・h・°Fで示す
[図:0001399414000006.jpg]
NA=データ該当なし
K係数はBtu・in/ft2・h・°Fで示す
[図:0001399414000007.jpg]
NA=データ該当なし
K係数はBtu・in/ft2・h・°Fで示す
表20~表25のデータに示すとおり、HFO-1336mzz-EをHCFO-1224ydと組み合わせることで相乗的な組み合わせが形成され、これは、広範な温度にわたって改善された断熱性能をもたらした。更に、効果が長続きし、改善された断熱を提供し続けた。より高温では、HFO-1336mzz-ZとHCFO-1224ydとの組み合わせも、対照及びHCFO-1233zdとHCFO-1224ydとのブレンドと比較して良好な結果を示した。」(第99頁第4行-第101頁第7行)
・「【図8】
[図:0001399414000008.jpg]
【図9】
[図:0001399414000009.jpg]
【図10】
[図:0001399414000010.jpg]
【図11】
[図:0001399414000011.jpg]
」
イ 甲1に記載された発明
甲1に記載された事項を、実施例15の表19のDのHCFO-1224yd及びHFO-1336mzz-Eブレンドに関して整理すると、甲1には次の発明が記載されていると認める。
<甲1-1発明>
「発泡剤成分としてHCFO-1224yd及びHFO-1336mzz-E及び水を熱硬化性組成物と混合してなる、発泡性組成物。」
<甲1-2発明>
「甲1-1発明を成形型に注いで硬化させる、発泡体の製造方法。」
なお、特許異議申立人は、甲1に記載の「熱硬化性組成物」を「フェノール発泡体組成物」に特定して、甲1に記載された発明を認定している(特許異議申立書の第7頁)が、甲1の第17頁第15行-第19頁第7行に記載されている「フェノール発泡体組成物」は、他の熱硬化性組成物であるポリウレタン及びポリイソシアヌレート発泡体組成物と共に例示されているだけであるから、「熱硬化性組成物」を「フェノール発泡体組成物」に特定して、甲1に記載された発明を認定することはできない。
(2)甲2に記載された事項等
ア 甲2に記載された事項
甲2には、フェノール樹脂発泡体及びその製造方法に関し、おおむね次の事項が記載されている。
・「[請求項1] 塩素化ハイドロフルオロオレフィン、非塩素化ハイドロフルオロオレフィン及びハロゲン化炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種を含有し、
密度が20kg/m3以上100kg/m3以下であり、
独立気泡率が80%以上99%以下であり、
10%圧縮強さと前記密度とが下記式の関係を満たすことを特徴とするフェノール樹脂発泡体。
C≧0.5X-7
(式中、Cは10%圧縮強さ(N/cm2)を表し、Xは密度(kg/m3)を表す)
[請求項2] 前記塩素化ハイドロフルオロオレフィン及び前記非塩素化ハイドロフルオロオレフィンからなる群より選択される少なくとも1種と、前記ハロゲン化炭化水素とを含有する、請求項1に記載のフェノール樹脂発泡体。
[請求項3] 前記塩素化ハイドロフルオロオレフィン及び前記非塩素化ハイドロフルオロオレフィンからなる群より選択される少なくとも1種が、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン、2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン及び1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のフェノール樹脂発泡体。
[請求項4] 前記ハロゲン化炭化水素がイソプロピルクロリドである、請求項1から3の何れか1項に記載のフェノール樹脂発泡体。
[請求項5] 炭素数6以下の炭化水素をさらに含む、請求項1から4の何れか1項に記載のフェノール樹脂発泡体。
[請求項6] 塩素化ハイドロフルオロオレフィン、非塩素化ハイドロフルオロオレフィン及びハロゲン化炭化水素からなる群より選択される前記少なくとも1種の含有量が、前記塩素化ハイドロフルオロオレフィン、前記非塩素化ハイドロフルオロオレフィン、前記ハロゲン化炭化水素及び前記炭素数6以下の炭化水素の合計量に対して、30質量%以上である、請求項5に記載のフェノール樹脂発泡体。
[請求項7] 含窒素化合物をさらに含む、請求項1から6の何れか1項に記載のフェノール樹脂発泡体。
[請求項8] 前記含窒素化合物が、尿素、メラミン、ヌクリジン、ピリジン、ヘキサメチレンテトラミン及びこれらの混合物からなる群より選択される化合物である、請求項7に記載のフェノール樹脂発泡体。
[請求項9] 乾湿繰り返し3サイクル後の寸法変化量の絶対値が、2.0mm以下である、請求項1から8の何れか1項に記載のフェノール樹脂発泡体。
[請求項10] JIS A 9511(2003)5.1.4に準拠して求められる脆性が50%以下である、請求項1から9の何れか1項に記載のフェノール樹脂発泡体。
[請求項11] 請求項1から10の何れか1項に記載のフェノール樹脂発泡体の第1の面上及び第2の面上に面材を有するフェノール樹脂発泡体積層板であって、
前記面材が何れもガス透過性を有することを特徴とするフェノール樹脂発泡体積層板。
[請求項12] 面材上で、フェノール樹脂、界面活性剤、硬化触媒、並びに塩素化ハイドロフルオロオレフィン、非塩素化ハイドロフルオロオレフィン及びハロゲン化炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種を含有する発泡性フェノール樹脂組成物を発泡及び硬化させるフェノール樹脂発泡体の製造方法であって、
ゲル浸透クロマトグラフィーによって求められる前記フェノール樹脂の重量平均分子量Mwが400以上3000以下であり、
前記フェノール樹脂の40℃における粘度が1000mPa・s以上100000mPa・s以下であり、
前記フェノール樹脂の粘度上昇速度定数が0.05(1/分)以上0.5(1/分)以下であることを特徴とする請求項1に記載のフェノール樹脂発泡体の製造方法。
[請求項13] 前記フェノール樹脂の40℃における損失正接tanδが0.5以上40.0以下であり、且つ60℃における損失正接tanδが2.0以上90.0以下である、請求項12に記載のフェノール樹脂発泡体の製造方法。」
・「発明が解決しようとする課題
・・・(略)・・・
[0008] 従って、本発明は、環境への負荷が低く(オゾン破壊係数及び温暖化係数が低く)、圧縮強さが高く、且つ施工時のハンドリング性と固定時にかかるコストに優れるフェノール樹脂発泡体及びその製造方法を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0009] 本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、特定の化合物を用い、密度、独立気泡率、及び10%圧縮強さを特定の範囲とすることにより、環境への負荷が低く、圧縮強さが高く、且つ施工時のハンドリング性と固定時にかかるコストに優れるフェノール樹脂発泡体が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。」
・「実施例
・・・(略)・・・
[0072](評価)
実施例及び比較例中のフェノール樹脂、フェノール樹脂発泡体について、以下の項目の測定及び評価を行った。
・・・(略)・・・
[0076](4)10%圧縮強さ
実施例及び比較例で得られたフェノール樹脂発泡体積層板から、長さ100mm、幅100mmの試験片を切り出し、面材を取り除いて試験片を得た。得た試験片を、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で、24時間間隔で行う2回の秤量値の差が0.1%以下になるまで養生した。養生後の試験片をJIS K 7220に準拠して10%圧縮強さを求めた。
・・・(略)・・・
[0083]<フェノール樹脂Aの合成>
反応器に52質量%ホルムアルデヒド水溶液3500kgと99質量%フェノール2743kgを仕込み、プロペラ回転式の攪拌機により攪拌し、温調機により反応器内部液温度を40℃に調整した。次いで50質量%水酸化ナトリウム水溶液を反応液のpHが8.7になるまで加えた。反応液を1.5時間かけて85℃まで昇温し、その後オストワルド粘度が73センチストークス(=73×10-6m2/s、25℃における測定値)に到達した段階で、反応液を冷却し、尿素を400kg添加した。その後、反応液を30℃まで冷却し、パラトルエンスルホン酸一水和物の50質量%水溶液を、pHが6.4になるまで添加した。得られた反応液を薄膜蒸発機によってフェノール樹脂中の水分率が7.4質量%となるまで濃縮処理した結果、40℃における粘度は22000mPa・sであった。
[0084] 表1に示す52質量%のホルムアルデヒド水溶液の仕込み量、99質量%フェノールの仕込み量、オストワルド粘度、尿素の添加量、薄膜蒸発機を用いてフェノール樹脂中の水分率を調整して40℃における粘度を変更した以外はフェノール樹脂Aと同様にしてフェノール樹脂B~Lを得た。
[0085]
[表1]
[図:0001399414000012.jpg]
[0086](実施例1)
フェノール樹脂A100質量部に対して、界面活性剤としてエチレンオキサイド-プロピレンオキサイドのブロック共重合体及びポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテルを質量比率でそれぞれ50質量%、50質量%で含有する混合物を2.0質量部の割合で混合した。上記界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して、表2に示す化合物Aを11質量部、硬化触媒としてキシレンスルホン酸80質量%とジエチレングリコール20質量%との混合物14質量部を添加し、25℃に温調したミキシングヘッドで混合し、発泡性フェノール樹脂組成物を得た。
得られた発泡性フェノール樹脂組成物を、移動する面材(下面材)上に供給した。面材上に供給した発泡性フェノール樹脂組成物は、面材と接触する面とは反対側の面が、他の面材(上面材)で被覆されると同時に、二枚の面材で挟み込まれるようにして、85℃に加熱されたスラット型ダブルコンベアを有する第1のオーブンに導入された。発泡性フェノール樹脂組成物は、15分の滞留時間で硬化させた後、110℃のオーブンで2時間キュアしてフェノール樹脂発泡体とし、面材上にフェノール樹脂発泡体が積層したフェノール樹脂発泡体積層板を得た。
なお、上面材及び下面材はガラス繊維不織布(商品名「Dura Glass Type DH70(坪量70g/m2)」、ジョーンズマンビル社製)を使用した。
[0087]
[表2]
[図:0001399414000013.jpg]
」
イ 甲2に記載された発明
甲2に記載された事項を、請求の範囲及び実施例1の記載に関して整理すると、甲2には次の発明が記載されていると認める。
<甲2-1発明>
「52質量%ホルムアルデヒド水溶液3500kg、99質量%フェノール2743kg、50質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを8.7とした反応液を1.5時間かけて85℃まで昇温し、その後オストワルド粘度が73センチストークス(=73×10-6m2/s、25℃における測定値)に到達した段階で、反応液を冷却し、尿素を400kg添加し、その後、反応液を30℃まで冷却し、パラトルエンスルホン酸一水和物の50質量%水溶液を、pHが6.4になるまで添加し、得られた反応液を薄膜蒸発機によってフェノール樹脂中の水分率が7.4質量%となるまで濃縮処理した結果得られるフェノール樹脂A100質量部に対して、界面活性剤2.0質量部、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン11質量部、硬化触媒としてキシレンスルホン酸80質量%とジエチルグリコール20質量%との混合物14質量部を添加し、混合して得られる、発泡性フェノール樹脂組成物。」
<甲2-2発明>
「甲2-1発明を面材上に供給し、発泡及び硬化させる、フェノール樹脂発泡体の製造方法。」
2 申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1-1発明とを対比する。
甲1-1発明は「発泡剤成分」として「HCFO-1224yd」を含むものであるから、本件特許発明1の「発泡剤として、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含有する」との特定事項を満たす。
甲1-1発明の「発泡性組成物」は、本件特許発明1の「フェノールフォーム製造用樹脂組成物」と、「樹脂組成物」である限りにおいて一致する。
してみると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「発泡剤として、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含有する樹脂組成物。」
そして、両者は、次の点で相違する。
<相違点1-1>
フォーム製造用樹脂組成物に関し、本件特許発明1は「レゾール型フェノール樹脂」を含有する旨特定するのに対し、甲1-1発明はこのような特定がない点。
<相違点1-2>
フォーム製造用樹脂組成物に関し、本件特許発明1は「酸硬化剤」を含有すると特定されているのに対し、甲1-1発明はこのような特定がない点。
<相違点1-3>
樹脂組成物が、本件特許発明1は「フェノールフォーム製造用」と特定されているのに対し、甲1-1発明はこのような特定がない点。
イ 判断
上記相違点1-1について検討する。
甲1には、甲1-1発明が相違点1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を有すると認められるような記載はないし、甲1及び他の証拠をみても、甲1-1発明が該発明特定事項を有する蓋然性が高いともいえない。
してみると、相違点1-1は実質的な相違点である。
したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1-1発明であるとはいえない。
なお、本件特許発明1に対し、甲1に基づく特許法第29条第2項の理由は申立てされておらず検討を要しないところ、請求項1を直接又は間接的に引用して特定する本件特許発明3ないし10に対して甲1に基づく特許法第29条第2項の理由が申立てられているので、ここであわせて検討する。
相違点1-1について検討すると、甲1及び他の証拠には、甲1-1発明において熱硬化性組成物としてレゾール型フェノール樹脂を積極的に採用することの動機付けとなる記載はない。
してみると、甲1-1発明において、相違点1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許の発明の詳細な説明の記載の【0020】の記載からみて、本件特許発明1は、レゾール型フェノール樹脂において発泡剤として1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを用いることで、得られるフェノールフォームが、製造直後から中長期的に優れた断熱性能を発揮し、更には優れた圧縮強さをも発揮するという効果を奏するものであり、該効果は、甲1-1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項からみて、顕著なものである。
したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1-1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件特許発明2について
本件特許発明2は、請求項1を引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
したがって、本件特許発明2は、本件特許発明1と同様に、甲1-1発明であるとはいえない。
(3)本件特許発明3ないし10について
本件特許発明3ないし10は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
したがって、本件特許発明3ないし10は、本件特許発明1と同様に、甲1-1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件特許発明11について
本件特許発明11と甲1-2発明とを対比すると、少なくとも上記相違点1-1と同様の相違点があって、該相違点については上記(1)イと同様に判断されるから、本件特許発明11は甲1-2発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)申立理由1についてのまとめ
上記のとおりであるから、申立理由1は、その理由がない。
3 申立理由2(甲2に基づく新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲2-1発明とを対比する。
甲2-1発明の「フェノール樹脂A」は、「52質量%ホルムアルデヒド水溶液3500kg、99質量%フェノール2743kg、50質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを8.7とした反応液」から得られるものであり、当該反応液において、フェノールよりもホルムアルデヒドのモル数が多く、かつ、「50質量%水酸化ナトリウム水溶液」であるアルカリ性の反応触媒が存在する。そうすると、甲2-1発明の「フェノール樹脂A」は、本件特許の発明の詳細な説明の【0021】の記載からみて、レゾール型フェノール樹脂であるといえるから、甲2-1発明は、本件特許発明1の「レゾール型フェノール樹脂」「を含有する」との特定事項を満たす。
甲2-1発明は「パラトルエンスルホン酸一水和物」及び「硬化触媒としてキシレンスルホン酸」を含むものであるから、本件特許発明1の「酸硬化剤」「を含有する」との特定事項を満たす。
甲2-1発明は「1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン」を含有するものであり、本件特許発明1の「発泡剤として、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含有する」とは、「発泡剤を含有する」との限りにおいて一致する。
甲2-1発明の「発泡性フェノール樹脂組成物」は、発泡及び硬化されてフェノール樹脂発泡体となるものであり、本件特許発明1の「フェノールフォーム製造用樹脂組成物」に相当する。
してみると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「レゾール型フェノール樹脂及び酸硬化剤と共に、発泡剤を含有するフェノールフォーム製造用樹脂組成物。」
そして、両者は、次の点で相違する。
<相違点2>
発泡剤に関し、本件特許発明1は「1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン」と特定されているのに対し、甲2-1発明は発泡剤が「1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン」である点。
イ 判断
上記相違点2について検討する。
甲2及び他の証拠には、甲2-1発明において、発泡剤として1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを採用することの動機付けとなる記載はない。
してみると、甲2-1発明において、相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許の発明の詳細な説明の記載の【0020】の記載からみて、本件特許発明1は、レゾール型フェノール樹脂において発泡剤として1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを用いることで、得られるフェノールフォームが、製造直後から中長期的に優れた断熱性能を発揮し、更には優れた圧縮強さをも発揮するという効果を奏するものであり、該効果は、甲2-1発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項からみて、顕著なものである。
したがって、本件特許発明1は、甲2-1発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件特許発明3ないし10について
本件特許発明3ないし10は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
したがって、本件特許発明3ないし10は、本件特許発明1と同様に、甲2-1発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明11について
本件特許発明11と甲2-2発明とを対比すると、少なくとも上記相違点2と同様の相違点があって、該相違点については上記(1)イと同様に判断されるから、本件特許発明11は甲2-2発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)申立理由2についてのまとめ
上記のとおりであるから、申立理由2は、その理由がない。
第5 むすび
したがって、特許異議申立人の主張する申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700295