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特許異議申立

2023-700258

セルロース繊維と非セルロース粉粒物を含む再分散可能な組成物

審判番号
2023-700258
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-245990
登録番号
7134862
請求日
2023年03月09日
審決日
2024年02月26日
公報発行日
2024年06月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】第一工業製薬株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人蔦田特許事務所
  • 【異議申立人】前田 健一
審判長/審判官
  • 審判長 近野 光知
  • 審判官 細井 龍史
  • 審判官 小出 直也
分類
P1651.113-YAA(C08L) / P1651.121-YAA(C08L) / P1651.536-YAA(C08L) / P1651.537-YAA(C08L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7134862号発明「セルロース繊維と非セルロース粉粒物を含む再分散可能な組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7134862号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔6、7、9、10〕、8について訂正することを認める。 特許第7134862号の請求項1ないし7及び10に係る特許を維持する。 特許第7134862号の請求項8及び9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7134862号の請求項1ないし10に係る特許についての出願は、平成30年12月27日(優先日 平成30年4月10日)に出願した特願2018-245990号であって、令和4年9月2日にその特許権の設定登録(請求項の数10)がされ、同年同月12日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和5年3月9日に特許異議申立人 前田 健一(以下、「申立人」という。)は、特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~10)を行った。 その後、令和5年8月31日付けで取消理由通知が通知された後、その指定期間内である同年10月20日付けで特許権者である第一工業製薬株式会社(以下、「特許権者」という。)により訂正請求がされるとともに意見書が提出され、その後、同年同月30日付けで特許法第120条の5第5項の通知を行ったが、申立人より何ら応答がなかった。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和5年10月20日付けの訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の(1)ないし(5)のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項6に「請求項1ないし5のいずれか1項に記載の組成物を極性溶媒に再分散させた再分散体。」と記載されているのを、「請求項2ないし5のいずれか1項に記載の組成物を極性溶媒に再分散させた再分散体。」に訂正する。(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7および10も同様に訂正する)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項7に「請求項1ないし5のいずれか1項に記載の組成物または請求項6に記載の再分散体を用いた電極塗料組成物。」と記載されているのを、「請求項2ないし5のいずれか1項に記載の組成物または請求項6に記載の再分散体を用いた電極塗料組成物。」に訂正する。(請求項7の記載を引用する請求項10も同様に訂正する)。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項8を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項9を削除する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項10に「請求項7または9に記載の電極塗料組成物を用いて作製された電極。」と記載されているのを、「請求項7に記載の電極塗料組成物を用いて作製された電極。」に訂正する。 2 一群の請求項について 訂正前の請求項6、7及び10について、請求項7及び10は、請求項6を直接又は間接的に引用するものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項6に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項6、7及び10に対応する訂正後の請求項6、7及び10は一群の請求項である。 また、訂正前の請求項9及び10について、請求項10は、請求項9を直接引用するものであり、訂正事項4によって記載が訂正される請求項9に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項9及び10に対応する訂正後の請求項9及び10は一群の請求項である。 そして、両一群の請求項は、請求項10を共通とするものであるから、組み合わされて、請求項6、7、9及び10が一つの一群の請求項となる。 よって、訂正前の請求項6、7、9及び10に対応する訂正後の請求項6、7、9及び10は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1及び2による訂正について 訂正事項1及び訂正事項2は、それぞれ訂正前の請求項6及び請求項7において引用する請求項1を削除するもので、引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないため、同法同条第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものであり、さらに願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であるから、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 (2)訂正事項3及び4による訂正について 訂正事項3及び4による請求項8及び9についての訂正は、訂正前の請求項8及び9を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないため、同法同条第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものであり、さらに願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であるから、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 (3)訂正事項5による訂正について 訂正事項5は、訂正前の請求項10において引用する請求項9を削除するもので、引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないため、同法同条第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものであり、さらに願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であるから、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 4 本件訂正後の独立特許要件について 特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし10に対してされているので、当該請求項における訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 5 むすび 以上のとおり、請求項6ないし10についての訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。 したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔6、7、9、10〕、8について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2で示したとおり、本件訂正は認められたため、本件特許の請求項1ないし10に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、本件特許発明1ないし10を総称して「本件特許発明」ともいう。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。 「【請求項1】 (A1)短幅の方の数平均幅が2nm以上1000nm以下のセルロース繊維と、(B)非セルロース粉粒物と、(C)水を少なくとも含有する組成物であって、 前記(B)非セルロース粉粒物の含有量は、前記組成物の全質量に対して14.0質量%以上98.4質量%以下であり、 前記(C)水の含有量は、前記組成物の全質量に対して0.6質量%以上72.0質量%以下であり、 前記(A1)セルロース繊維の含有量と前記(B)非セルロース粉粒物の含有量との質量比率(A1)/(B)が1.0/99.0以上50.0/50.0以下であり、 前記(B)非セルロース粉粒物が炭素から構成される粒子である、 ことを特徴とする再分散可能な組成物。 【請求項2】 (A1)短幅の方の数平均幅が2nm以上1000nm以下のセルロース繊維と、(A2)カルボキシメチルセルロース塩と、(B)非セルロース粉粒物と、(C)水を少なくとも含有する組成物であって、 前記(B)非セルロース粉粒物の含有量は、前記組成物の全質量に対して14.0質量%以上98.4質量%以下であり、 前記(C)水の含有量は、前記組成物の全質量に対して0.6質量%以上72.0質量%以下であり、 前記(A1)セルロース繊維の含有量と前記(A2)カルボキシメチルセルロース塩の含有量の合計量と、前記(B)非セルロース粉粒物の含有量との質量比率((A1)+(A2))/(B)が1.0/99.0以上50.0/50.0以下である ことを特徴とする再分散可能な組成物。 【請求項3】 前記(A1)セルロース繊維の含有量と前記(A2)カルボキシメチルセルロース塩の含有量との質量比率(A1)/(A2)が20.0/80.0以上99.0/1.0以下である、請求項2に記載の組成物。 【請求項4】 前記(A2)カルボキシメチルセルロース塩の1質量%水溶液粘度(25℃)が500mPa・s以下である、請求項2または3に記載の組成物。 【請求項5】 前記(B)非セルロース粉粒物が炭素から構成される粒子である、請求項2ないし4のいずれか1項に記載の組成物。 【請求項6】 請求項2ないし5のいずれか1項に記載の組成物を極性溶媒に再分散させた再分散体。 【請求項7】 請求項2ないし5のいずれか1項に記載の組成物または請求項6に記載の再分散体を用いた電極塗料組成物。 【請求項8】 (削除) 【請求項9】 (削除) 【請求項10】 請求項7に記載の電極塗料組成物を用いて作製された電極。」 第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由、証拠方法及び取消理由の概要 1 申立人が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 令和5年3月9日に申立人が提出した特許異議申立書(以下、「申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は、次のとおりである。 (1)申立理由1(甲第1号証を主引用例とする進歩性欠如) 本件特許発明1ないし10は、甲第1号証に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (2)申立理由2(明確性要件違反) 本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 具体的理由は以下のとおり。 理由ア 本件特許の課題は、セルロース繊維と非セルロース粉粒物とを含有する組成物において、水等の極性溶媒への再分散性に優れることであり (【0009】)、これを参照すれば、請求項1の「再分散可能な」とは、組成物を「(C)」以外の水や水以外の極性溶媒へ、優れた分散性で分散させることが可能であることを意味すると理解できる。そうすると、請求項1の「再分散可能な」とは、単に本件発明の課題や効果と一致するに過ぎず、どの程度の分散性をもって「優れた分散性」と判断するかが理解できない以上、何ら「組成物」の機能等を特定するものではなく、発明を特定する事項とは認められない。 理由イ 請求項1の「再分散可能な」について、明確な定義は本件特許明細書上で確認できないものの、文言上何らか「組成物」の機能等を特定するように記載されている以上、上述した特許法第29条第2項における議論とは区別して、一の請求項から発明が明確に把握できるように、特許請求の範囲が記載したものについて、権利を付与する趣旨から、請求項1の「再分散可能な」を、発明を特定する事項とする場合についても検討する必要がある。 請求項1の「再分散可能な組成物」は、その文言で検討すると、その成分である(C)水へ再分散可能であるのか、(C)水以外の極性溶媒へ再分散可能であるのかを区別できない。 理由ウ 本件特許の実施例では、「再分散性」の評価として、組成物に対して、1.0質量%になるよう水((C)水以外の水)を加え、再分散体を調製した(【0135】)とある。ここから、請求項1の「再分散可能な」は、組成物が(C)水以外の極性溶媒へ再分散可能であることを仮に意味するとして、さらに検討する。 しかしながら、請求項1の「再分散可能な」は、組成物が(C)水以外の極性溶媒へ再分散可能であることを意味するとしても、請求項1の「再分散可能な組成物」は、極性溶媒へ再分散させるものであるため、当然極性溶媒である(C)水へも分散可能であるため、(C)水へ分散している状態も包含する。そうすると、請求項1の「再分散可能な」とは、さらに(C)水以外の極性溶媒へ再分散させる場合に、どのような分散状態に変わることを意味するのかも理解することができない。例えば、本件特許実施例では、凝集物の有無やその数をもって再分散性を評価しているが、そもそも(C)水へ分散している状態 にある組成物が、「再分散」するという文言がどのような意味を示すのかが理解できない。 よって、請求項1の「再分散可能な」は、組成物が(C)水以外の極性溶媒へ再分散可能であることを意味するとしても、組成物が凝集物を含むもののみであるのか、凝集物を含まないものも含むのかを理解できない。 (3)申立理由3(サポート要件違反) 本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 具体的理由は以下のとおり。 「再分散可能な組成物」は、極性溶媒へ再分散させるものであるため、当然極性溶媒である(C)水へも分散可能であるため、(C)水へ分散している状態も包含する。 しかしながら、本件特許明細書では、請求項1の「再分散可能な」について、明確な定義は発見できず、「再分散可能な組成物」が、(C)水へ分散している状態にある場合に、どのように「再分散」するのか記載も示唆もない。 したがって、「再分散可能な組成物」が、(C)水へ分散している状態にある場合の実施の形態に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 (4)申立理由4(実施可能要件違反) 本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 具体的理由は以下のとおり。 本件特許の詳細な説明には、当業者が出願時の技術常識を考慮しても、「再分散可能な組成物」が、(C)水へ分散している状態にある場合に、本件発明1ないし10を実施できる程度に明確かつ十分に説明されているとはいえない。 2 証拠方法 申立書に添付されて提出された証拠方法は、以下のとおりである。 甲第1号証:国際公開第2013/042652号 甲第2号証:特開2018-48218号公報 以下、甲第1号証等を、順に「甲1」のようにいう。 3 取消理由の概要 令和5年8月31日付けで通知した取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は次のとおりである。 (1)取消理由1(甲1に基づく新規性欠如) 本件特許の請求項6、8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)取消理由2(甲1を主引用例とする進歩性欠如) 本件特許の請求項6ないし10に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 第5 当審の判断 本件特許の請求項8及び9に係る特許について 上記第2に示したとおり、請求項が削除されたことにより申立ての対象が存在しなくなったため、本件特許の請求項8及び9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 1 取消理由通知書に記載した取消理由について 取消理由1(甲1に基づく新規性欠如)、取消理由2(甲1を主引用例とする進歩性欠如)、申立理由1(甲1を主引用例とする進歩性欠如)について 申立理由1(甲1を主引用例とする進歩性欠如)は、取消理由1(甲1に基づく新規性欠如)、取消理由2(甲1を主引用例とする進歩性欠如)と主引用文献を同じくするものであるから、取消理由1および取消理由2と併せて検討する。 (1)証拠に記載された事項 ア 甲1について (ア)甲1に記載された発明 甲1には、その請求項4の実施態様である実施例1に着目すると以下の発明が記載されているといえる。 「TEMPO酸化処理によりカルボキシル基を付与したセルロース(カルボキシル基量1.8mmol/g)を調製し、全体としてセルロースの固形分濃度1%となるようにイオン交換水を添加しながら1N水酸化ナトリウムを用いてpH10に調整し、これらをミキサー(大阪ケミカル、アブソルートミル、14,000rpm)を用いて1時間処理し、セルロース繊維(得られたセルロース繊維は繊維幅3nm、繊維長1.6μmであった。)を含む調製液を調製し、その調製液5mlとカーボンブラック50mgとイオン交換水15mlとを混合し、卓上スターラーにて攪拌し、調製した分散液。」(以下、「甲1発明」という。) (イ)甲2について 甲2には以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 セルロースナノファイバー水性分散体への添加により当該水性分散体に曇点又は熱ゲル化点を持たせることができる濃縮助剤(A)の存在下、1)セルロースナノファイバー水性分散体を曇点又は熱ゲル化点以上の温度に昇温してセルロースナノファイバーを含む凝集体を生じさせる工程と、2)得られた凝集体を含む液を曇点又は熱ゲル化点以上の温度でろ過する工程と、を含むセルロースナノファイバー濃縮物の製造方法。 ・・・ 【請求項7】 請求項1~6のいずれかに記載の方法により得られたセルロースナノファイバー濃縮物を、水、有機溶剤、及び樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種の分散媒に再分散させる、セルロースナノファイバーの再分散方法。」 「【背景技術】 【0002】 近年、セルロース繊維、特に木材由来のセルロース繊維(パルプ)を種々の方法で微細化したセルロースナノファイバーが、その優れた特性とリサイクル性から注目を集めている。セルロースナノファイバーは低固形分の水性分散体の状態で製造されるが、歩留まり、ろ水性が不十分であり、且つ、その製品形態が低固形分の水分散体である場合には流通コストが高くなるという問題がある。また、その製品形態がゲル状である場合には製品移送で不具合を生じる場合や取り扱う際のハンドリング性が悪いという問題がある。これらの問題はセルロースナノファイバーを今後より汎用的なものとし、広範な分野で用途開発を行う上では解決すべき大きな課題である。 【0003】 これら問題を解決する手段として、セルロースナノファイバーをより高固形分で製造するか、あるいは、低固形分で製造後、濃縮して高固形分化を図るための技術検討がなされているが、簡便、且つ、低コストで商業的に利用できる技術は限られている。また、セルロースナノファイバー濃縮物を再分散して利用する技術も限られている。 【0004】 特許文献1には、セルロースナノファイバー水性分散体を濃縮するために、HLB8~18のポリオキシアルキレン化合物の存在下、低濃度のセルロースナノファイバー水性分散体を濃縮して高濃度のセルロースナノファイバー水性分散体を得ることが開示されている。しかしながら、濃縮物の再分散性という点で問題がある。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0005】 【特許文献1】特開2015-117340号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明の実施形態は、セルロースナノファイバーを容易に高固形分化、即ち濃縮することができる、セルロースナノファイバー濃縮物の製造方法を提供することを目的とする。」 (2)検討 ア 本件特許発明1について (ア)本件特許発明1の技術的意義 a 本件特許明細書の記載 本件特許明細書には、以下の記載がされている。なお、下線は当審で付与した。 ・「【0005】 微細繊維状セルロースの水性懸濁液又は分散液は、通常、微細繊維状セルロースに対して数倍~数百倍の質量の水が含まれている。水に分散している状態(湿潤状態)の微細繊維状セルロースを乾燥させた固形物は、微細なセルロース繊維間に水素結合が形成されるため、この乾燥固形物に水を加えても乾燥前(湿潤状態)の溶解性、分散性、沈降度、及び粘度などの諸特性が復元しない。このため、微細繊維状セルロースを含む分散スラリーは、通常、水に分散している状態(湿潤状態)で製造され、乾燥させずに湿潤状態のままで各種ユーザーに運搬される。しかし、このような分散スラリーをそのままの状態で扱うことは、保存スペースの増大、保存及び輸送コストの増大、加えて高濃度使用用途に不向きといった問題点がある。 ・「【0006】 従来、微細繊維状セルロースを分散剤として用いて、機能性粒子などの非セルロース粉粒物を水に分散させる技術が知られており、非特許文献1および特許文献1には、微細繊維状セルロースと非セルロース粉粒物(カーボンナノチューブ)と水を含有する組成物が記載されている。しかしながら、これらの文献に記載の技術では、組成物中における非セルロース粉粒物の配合比率が少なく、水等の極性溶媒に再分散されるものではない。従って、非セルロース粉粒物をより高濃度で含有し、水等の極性溶媒に再分散させることができる組成物を提供することが望まれる。」 ・「【0009】 本発明の実施形態は、セルロース繊維と非セルロース粉粒物とを含有する組成物において、水等の極性溶媒への再分散性に優れた組成物を提供することを目的とする。」 ・「【0013】 本発明の実施形態に係る組成物であると、非セルロース粉粒物を高濃度で含有し、水等の極性溶媒への再分散性に優れる。そのため、保存スペースの増大や保存及び輸送コストの増大を抑えて運搬性を向上することができ、また、高濃度使用用途への適用が容易である。」 ・「【0016】 [(A1)セルロース繊維] (A1)セルロース繊維としては、短幅の方の数平均幅が2nm以上1000nm以下であるものが用いられる。短幅の方の数平均幅がこの範囲内であることにより、非セルロース粉粒物に対する分散剤としての機能を発揮することができ、再分散性の向上効果を高めることができる。短幅の方の数平均幅は、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下である。」 ・「【0059】 (B)非セルロース粉粒物の含有量は、粉粒物含有組成物の全質量に対して14.0質量%以上98.4質量%以下である。このように非セルロース粉粒物の含有量が高いことにより、再分散後における非セルロース粉粒物の濃度を確保することができる。 【0060】 [(C)水] 本実施形態に係る粉粒物含有組成物は水を含有する。水の含有量は、粉粒物含有組成物の全質量に対して0.6質量%以上72.0質量%以下である。粉粒物含有組成物は、その固形分濃度が高いほど再分散後における(B)非セルロース粉粒物の濃度を確保することができ、例えば塗料に用いる場合に高濃度塗料の作製が容易となる。また、長期保存における経時変化を抑えることができる。」 ・「【0063】 [粉粒物含有組成物] 第1の実施形態に係る粉粒物含有組成物において、(A1)セルロース繊維の含有量と(B)非セルロース粉粒物の含有量との質量比率(即ち、成分(B)に対する成分(A1)の質量比)(A1)/(B)は1.0/99.0以上50.0/50.0以下である。このような範囲内に設定することにより、粉粒物含有組成物の再分散性を向上することができる。また、再分散体の粘度上昇を抑えることができ、例えば塗料に用いた場合の塗工性を向上することができる。」 ・「【0073】 本実施形態に係る粉粒物含有組成物は、水などの極性溶媒に再分散可能な再分散性組成物であり、そのため、水などの極性溶媒に再分散させて用いられることが好ましい。再分散とは、粉粒物含有組成物に水等の極性溶媒を加えて、(A1)セルロース繊維と(B)非セルロース粉粒物を極性溶媒(この極性溶媒には、再分散に際して加えた極性溶媒だけでなく、粉粒物含有組成物に含まれていた(C)水などの極性溶媒も含まれる。)中に分散させることである。また、再分散可能とは、このように再分散させたときに、(A1)セルロース繊維と(B)非セルロース粉粒物を均一に分散させることができることをいい、例えば、後述する実施例における再分散性の評価で3以上のものは再分散可能であり、かつ再分散性に優れるといえる。」 ・「【0076】 [作用効果] 本実施形態によれば、機能性粒子などの非セルロース粉粒物を高濃度で含有し、かつ、水等の極性溶媒への再分散性に優れる粉粒物含有組成物が得られる。そのため、保存スペースの増大や保存及び輸送コストの増大を抑えて運搬性を向上することができる。 【0077】 また、本実施形態に係る粉粒物含有組成物は、様々な塗料組成物への応用が可能であり、その際、機能性粒子などの非セルロース粉粒物を高濃度で含むことから、塗料組成物に添加する場合にも固形分濃度の低下を抑えることができ、高濃度塗料の作製を簡便に行うことができる。また、濃度の急激な変化による塗料組成物の凝集を抑制する効果も期待できる。本実施形態に係る粉粒物含有組成物は、再分散性に優れているので、例えば、粉粒物含有組成物を再分散により予め適切な固形分濃度に調整した上で作製中の塗料組成物に添加してもよく、あるいは粉粒物含有組成物を極性溶媒とともに加えて再分散させながら塗料組成物を作製してもよく、いずれにしても良好な塗工性を有する塗料組成物を作製することができる。 【0078】 本実施形態に係る粉粒物含有組成物であると、更に、長期間の保存でも経時変化が起こりにくく、保存安定性に優れる。また、含水量が30質量%以下の場合、粉粒体含有組成物は粉体状ないし固形状の固体材料として扱うことができ、運搬性、流動性の面で特に優れているため、取り扱いの点でさらに好ましい。また、含水量が10質量%以上の場合、乾燥条件によってブロック状に固形化した場合でも小さな力で容易に粉体に解砕することができるため、取り扱いの面でより好ましい。」 ・「【実施例】 【0089】 以下、実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、以下、「%」とあるのは、特に限定しない限り質量基準を意味する。 ・・・ 【0091】 [セルロース繊維A1-2(実施例用)の製造] 針葉樹パルプ2gに、水150ml、臭化ナトリウム0.25g、TEMPO0.025gを加え、充分撹拌して分散させた後、13%次亜塩素酸ナトリウム水溶液(共酸化剤)を、上記パルプ1.0gに対して次亜塩素酸ナトリウム量が6.5mmol/gとなるように加え、反応を開始した。反応中は温度を10℃に保持した。反応の進行に伴いpHが低下するため、pHを10~11に保持するように0.5N水酸化ナトリウム水溶液を滴下しながら、pHの変化が見られなくなるまで反応させた(反応時間:120分)。反応終了後、0.1N塩酸を添加してpHを2以下に調整した後、ろ過と水洗を繰り返して精製した。これに純水を加えて固形分濃度2%に調整した。 【0092】 その後、24%NaOH水溶液にてスラリーのpHを10に調整した。スラリーの温度を30℃として水素化ホウ素ナトリウムをセルロース繊維に対して0.2mmol/g加え、2時間反応させることで還元処理した。反応後、0.1N塩酸を添加してpHを2以下に調整した後、ろ過と水洗を繰り返して精製した。これに純水を加え、終濃度がセルロース繊維2%、残分が水となるように調製した。ここに24%水酸化ナトリウム水溶液を添加し、pHを7に調整した。これを高圧ホモジナイザー(三和エンジニアリング製、H11)を用いて圧力100MPaで3回処理することにより、セルロース繊維A1-2を得た。セルロース繊維A1-2は、アニオン性官能基としてカルボキシル基を有するセルロースナノファイバーである。 【0093】 [セルロース繊維A1-3(実施例用)の製造] 反応中の反応液の温度を40℃、pHを11とし、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の添加量を上記パルプ1gに対して4.0mmol/gとした以外は、セルロース繊維A1-2の製造に準じてセルロース繊維A1-3を製造した。セルロース繊維A1-3は、アニオン性官能基としてカルボキシル基を有するセルロースナノファイバーである。 【0094】 [セルロース繊維A1-4(実施例用)の製造] 次亜塩素酸ナトリウム水溶液の添加量を上記パルプ1gに対して6.0mmol/gとした以外は、セルロース繊維A1-3の製造に準じてセルロース繊維A1-4を製造した。セルロース繊維A1-4は、アニオン性官能基としてカルボキシル基を有するセルロースナノファイバーである。 ・・・ 【0109】 【表1】 [図:0001411274000001.jpg] 【0110】 [実施例1] セルロース繊維A1-1と粉粒物B-1との質量比率が2.6/97.4となるように両者を加え、かつ水の含有割合が72%となるように水を加え、プラネタリーミキサー(プライミクス株式会社製 ハイビスミックス2P-1型)で40rpm×60分間攪拌した。得られたペースト又は粘土状の組成物を90℃で24時間、送風乾燥機中(ADVANTEC製、DRM620DB)で乾燥させることにより粉体~固形状の粉粒物含有組成物を得た。 【0111】 [実施例2~6] セルロース繊維A1-1に代えて、セルロース繊維A1-2、A1-3、A1-4、A1-5、A1-6を用いた以外は、実施例1と同様の手法で粉体~固形状の粉粒物含有組成物を調製した。 ・・・ 【0132】 上記の実施例及び比較例で使用したセルロース繊維及び粉粒物の詳細は以下の通りである。なお、表2及び表3におけるセルロース繊維の含有量は固形分としての質量比率である。 (セルロース繊維) ・A1-1:セルロース繊維A1-1の1質量%水分散体 ・A1-2:セルロース繊維A1-2の2質量%水分散体 ・A1-3:セルロース繊維A1-3の2質量%水分散体 ・A1-4:セルロース繊維A1-4の2質量%水分散体 ・A1-5:セルロース繊維A1-5の5質量%水分散体 ・A1-6:セルロース繊維A1-6の2質量%水分散体 ・A’-1:セルロース繊維A’-1の2質量%水分散体 ・A’-2:セルロース繊維A’-2の1質量%水分散体 (粉粒物) ・B-1:アセチレンブラック(デンカ株式会社製、HS-100、BET表面積:39m2/g) ・B-2:ケッチェンブラック(ライオン株式会社製、EC600JD、BET表面積:1270m2/g) ・B-3:カーボンブラック(イメリス社製、Super-P、BET表面積:60m2/g) ・B-4:活性炭(関東化学株式会社製、平均粒子径:20μm) ・B-5:多層カーボンナノチューブ(シグマアルドリッチ製、BET表面積:220m2/g) ・B-6:TiO2(日本アエロジル製、AEROXIDE TiO2 P25、BET表面積:50m2/g) ・B-7:シリコン粒子(エルケム社製、Silgrain e-Si、平均粒子径:3μm) ・B-8:カーボンファイバー(昭和電工製、VGCF-H、BET表面積:13m2/g) 【0133】 粉粒物含有組成物の含水量の測定方法は、以下の通りである。 5g以上の粉粒物含有組成物Xgを、加熱乾燥式水分計(株式会社エー・アンド・デイ製MX-50)の試料皿にのせ、サンプルを140℃で加熱し、重量変化速度が0.05%/分以下となった重量Yを測定し、下式により含水量を算出する。 組成物の含水量(%)=〔(X-Y)/X〕×100 【0134】 [粉粒物含有組成物の評価] 上記により得られた実施例1~24、および比較例1~10の粉粒物含有組成物について、下記の基準に従って各特性の評価を行なった。その結果を下記表2,3に示した。 【0135】 [粉粒物含有組成物の再分散性] 調製した粉粒物含有組成物を一部取り、全固形分が1.0質量%になるよう水を加え、ホモディスパー(プライミクス株式会社製、2.5型)で1,600rpm×15分間撹拌することによって、粉粒物含有組成物の再分散体を調製した。得られた再分散体を用いてプレパラートを作製し、光学顕微鏡(倍率200倍)で観察することにより、粉粒物含有組成物の再分散性を以下の6段階で評価し、3以上を合格とした。 5:凝集物が見られない 4:1画像中に1~7個の凝集物が見られる 3:1画像中に8~15個の凝集物が見られる 2:1画像中に16~25個の凝集物が見られる 1:1画像中に26個以上の凝集物が見られる 0:1画像中に納まらないほどの大きい凝集物が見られる 【0136】 [粉粒物含有組成物再分散体の塗工性] 調製した粉粒物含有組成物を一部取り、全固形分が13.0質量%になるよう水を加え、ホモディスパー(プライミクス株式会社製)で1,600rpm×15分間撹拌することによって、粉粒物含有組成物の再分散体を調製した。得られた再分散体を、アルミ箔上にベーカー式フィルムアプリケーター((株)安田精機製作所製 No.510)と卓上コーター(三井電気精機(株)製 TC-3型)を用いて塗工した。塗工速度は10mm/秒、塗工厚みは50μm。その際の塗布状態を目視で観察し、以下の5段階で評価し、3以上を合格とした。 5:スジやムラ、凝集物がなく、均一な塗工が可能である 4:部分的にスジやムラ、凝集物などはみられるが、8割方均一な塗工が可能である 3:塗工面積の50%以上の部分にスジやムラ、凝集物に加え、気泡などが確認される 2:塗工面積の80%以上の部分にスジやムラ、凝集物に加え、気泡などが確認され、均一な塗工が難しい 1:塗料がアプリケーター上で転がり、塗工することができない 【0137】 [粉粒物含有組成物の保存安定性] 調製した粉粒物含有組成物の保存安定性を評価するため、経時変化評価を行った。50mLの密閉容器の50体積%を粉粒物含有組成物で満たしたサンプルを準備し、1ヶ月間室温下で放置後、粉粒物含有組成物を容器上部と下部から各2g採取し、水分/揮発分測定装置((株)アクタック製 マーク3)にて粉粒物含有組成物の揮発分測定を行い、固形分濃度の差を以下の6段階で評価し、2以上を合格とした。 5:組成物中における固形分の濃度差が1質量%以下である 4:組成物中における固形分の濃度差が1質量%より大きく2質量%以下である 3:組成物中における固形分の濃度差が2質量%より大きく3質量%以下である 2:組成物中における固形分の濃度差が3質量%より大きく5質量%以下である 1:組成物中における固形分の濃度差が5質量%より大きいが、目視では判断できない 0:目視で確認できる程度に内容物が分離している 【0138】 【表2】 [図:0001411274000002.jpg] 【0139】 【表3】 [図:0001411274000003.jpg] 【0140】 結果は表2,3に示す通りである。実施例についてはいずれも十分な再分散性を示しており、セルロース繊維が短く、細いほど良好な再分散性を示した。また、セルロース繊維が増えるほど再分散時に増粘するため、塗工性を考慮すると粉粒物とセルロース繊維の割合にも最適値があると判明した。 【0141】 比較例1に関しては、結晶構造を有していないセルロース繊維であり、再分散させると大きな保護コロイドを生成することから、再分散性は低い傾向にあった。比較例2に関しては、セルロース繊維の短幅の方の繊維幅が大きく、繊維長が長いため繊維同士の絡まりから再分散性は低い結果であった。比較例3に関しては、含水量が多いことから、セルロース繊維と粉粒物との接触が不十分となったためか、セルロース繊維による粉粒物の分散効果に劣り、再分散性が低い結果であった。また、保存安定性にも劣っていた。 【0142】 比較例4に関しては、セルロース繊維/粉粒物の比が小さく、セルロース繊維の含有量が少ないために、再分散性はほとんど有していなかった。比較例5に関しては、セルロース繊維/粉粒物の比が大きく、セルロース繊維の含有量が多いために、再分散性は良好であったものの、再分散時の粘度が高く、塗工段階で空回りする結果となった。比較例6に関しては、セルロース繊維/粉粒物の比が小さく、また粉粒物の含有量が多すぎたため、再分散性はほとんど有していなかった。 【0143】 比較例7に関しては、セルロース繊維/粉粒物の比が大きく、粉粒物の含有量が少ないために、過剰のセルロース繊維同士が凝集し、再分散が難しい結果であった。比較例8に関しては、セルロース繊維/粉粒物の比が大きいため、再分散性は良好であったものの、再分散時の粘度が高く、塗工段階で空回りする結果となった。 【0144】 表2,3の結果より、本実施形態に係る粉粒物含有組成物は良好な再分散性と再分散後塗工性、保存安定性の点で良好な性能を示すことがわかる。 【0145】 [実施例25~28,比較例11] (A1)セルロース繊維、(A2)カルボキシメチルセルロース塩、(B)粉粒物、および(C)水の含有量を表4に記載の通りに変更した以外は、実施例8と同様の手法により、粉体~固形状の粉粒物含有組成物を得た。 【0146】 実施例25~28及び比較例11で使用したセルロース繊維、カルボキシメチルセルロース塩及び粉粒物の詳細は以下の通りである。なお、表4におけるセルロース繊維の含有量は固形分としての質量比率である。 ・A1-2:セルロース繊維A1-2の2質量%水分散体 ・カルボキシメチルセルロース塩:カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(第一工業製薬(株)製、セロゲンPR、1質量%水溶液粘度(25℃):35mPa・s) ・B-1:アセチレンブラック(デンカ株式会社製、HS-100、BET表面積:39m2/g) 【0147】 上記により得られた実施例25~28及び比較例11の粉粒物含有組成物について、再分散性、塗工性、保存安定性及び導電性の評価を行なった。その結果を下記表4に示した。再分散性、塗工性及び保存安定性の評価方法は上記の通りであり、導電性の評価方法は以下の通りである。 【0148】 [粉粒物含有組成物の導電性] 作製した粉粒物含有組成物を一部取り、乳鉢で十分に粉砕した後、直径12mmのペレット作製のプレス用金型に0.3gの粉粒物含有組成物を挿入し、圧縮装置(理研精機株式会社製、SMP-3,S1-100)で40MPa×30秒間圧縮することによって、粉粒物含有組成物のペレットを調製した。得られたペレットについて、抵抗率計(株式会社三菱化学アナリテック製、ロレスタGP)を用いて導電率を測定し、比較例11の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど導電性が高いことを示す。 【0149】 【表4】 [図:0001411274000004.jpg] 【0150】 結果は表4に示す通りであり、セルロース繊維とともにカルボキシメチルセルロース塩を併用することで導電性を向上できることが分かる。」 b 「再分散可能」の技術的意味 本件特許明細書の段落【0073】から、「再分散可能」とは、粉粒物含有組成物に水等の極性溶媒を加えて再分散させたときに、(A1)セルロース繊維と(B)非セルロース粉粒物を均一に分散させることができることをいい、例えば、実施例における再分散性の評価で3(1画像中に8~15個の凝集物が見られる)以上のもの、であることが理解できる。 c 本件特許発明1の技術的意義 本件特許発明の課題は、本件特許明細書の段落【0006】【0009】からすると、非セルロース粉粒物をより高濃度で含有し、水等の極性溶媒に再分散させることができる組成物を提供することであると認められる。 そして、上記本件特許明細書の記載によると、 (A1)セルロース繊維と、(B)非セルロース粉粒物と、(C)水を少なくとも含有する組成物において、 「(A1)セルロース繊維としては、短幅の方の数平均幅が2nm以上1000nm以下であること」(以下、「要件1」という。)により、非セルロース粉粒物に対する分散剤としての機能を発揮することができ、再分散性の向上効果を高めることができること(段落【0016】)、 「(A1)セルロース繊維の含有量と(B)非セルロース粉粒物の含有量との質量比率(即ち、成分(B)に対する成分(A1)の質量比)(A1)/(B)は1.0/99.0以上50.0/50.0以下に設定すること」(以下、「要件2」という。)より、粉粒物含有組成物の再分散性を向上することができ、また、再分散体の粘度上昇を抑えることができ、例えば塗料に用いた場合の塗工性を向上することができること(段落【0063】)、 「(B)非セルロース粉粒物の含有量が、粉粒物含有組成物の全質量に対して14.0質量%以上98.4質量%以下」(以下、「要件3」という。)と、非セルロース粉粒物の含有量が高いことにより、再分散後における非セルロース粉粒物の濃度を確保することができること(段落【0059】)、 「(C)水の含有量を、粉粒物含有組成物の全質量に対して0.6質量%以上72.0質量%以下とすること」(以下、「要件4」という。)により、再分散後における(B)非セルロース粉粒物の濃度を確保することができ、例えば塗料に用いる場合に高濃度塗料の作製が容易となり、また、長期保存における経時変化を抑えることができること(段落【0060】)が記載されている。 すなわち、本件特許発明1は、上記要件1ないし要件4を同時に満足することにより、粉粒物含有組成物に水等の極性溶媒を加えて再分散させたときに、再分散後における非セルロース粉粒物の濃度を確保することができると共に、(A1)セルロース繊維と(B)非セルロース粉粒物を均一に分散させることのできる、という技術的意義を有するものである。 そして、本件特許発明1の上記要件2ないし4の要件は、例えば、(B)非セルロース粉粒物の含有量を変更すると連動して値が変化するものであるし、上記本件特許発明1の技術的意義を考慮すると、引用発明との対比判断を行う際に、各要件を各々独立に判断するのではなく、一体的に判断するのが相当である。 (イ)対比・判断 本件特許発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「セルロース繊維」は、繊維幅3nm、繊維長1.6μmであるため、短幅の方の幅は3nmである。当該繊維幅は、本件特許優先日の技術常識を勘案すると、数平均による値を意図すると解するのが相当である。 よって、甲1発明の「セルロース繊維(得られたセルロース繊維は繊維幅3nm、繊維長1.6μmであった。)」は、本件特許発明1の「(A1)短幅の方の数平均幅が2nm以上1000nm以下のセルロース繊維」に相当し、甲1発明は、本件特許発明1の上記要件1を満たす。 甲1発明の「カーボンブラック」は、本件特許発明1の「(B)非セルロース粉粒物」であって、「前記(B)非セルロース粉粒物が炭素から構成される粒子」に相当する。 甲1発明の「イオン交換水」及び「分散液」は、それぞれ本件特許発明1の「水」及び「組成物」に相当する。 セルロース繊維を含む調製液5ml中のセルロースの含有量は、セルロースの固形分濃度は1%であることから、1mg/ml/100×1000mg×5ml=50mgとなる。そうすると、甲1発明のセルロース繊維の含有量とカーボンブラックの含有量との質量比率は、50/50となり、甲1発明は、本件特許発明1の上記要件2を満たす。 c 甲1発明のイオン交換水15mlを質量に換算すると、15ml×1g/ml×1000mg/g=15000mgとなる。甲1発明の調整液5mlには、水全量が5ml×1g/ml×1000mg/g=5000mgで、そのうちカーボンブラック50mgの分を減算すると、少なくとも4950mgの水が含有されている。 そうすると、甲1発明の「分散液」中、水19950mg(=15000+4950)、カーボンブラック50mg、セルロース繊維50mgが含有されているから、カーボンブラック及び水の含有量は、「分散液」の全質量に対して、それぞれ「0.25質量%」、「99.5質量%」となっている。 してみると、両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。 <一致点> 「(A1)短幅の方の数平均幅が2nm以上1000nm以下のセルロース繊維と、(B)非セルロース粉粒物と、(C)水を少なくとも含有する組成物であって、 前記(B)非セルロース粉粒物が炭素から構成される粒子である、組成物。」 <相違点1> 組成物が、本件特許発明1は、要件2ないし要件4の3つの要件を備えると共に、「再分散可能な」と特定されているのに対し、甲1発明は、要件2を満たすものの、カーボンブラック及び水の含有量は、「分散液」の全質量に対して、それぞれ「0.25質量%」、「99.5質量%」と要件3及び要件4を満たさないと共に「再分散可能な」と特定されていない点 そこで、上記相違点1について検討する。 甲1は、「カーボン粒子が簡便に分散され、再凝集や沈殿が生じることのない分散安定性の良好な分散液を提供すること」を目的とするものである。 そして、甲1発明に係る「分散液」についての分散性、分散安定性、成膜性、導電性を評価していることから、当該「分散液」自体を最終製品として、そのまま使用することが意図されているものと解するのが相当である。そのため、甲1には、当該「分散液」に対し、さらに、水等の極性溶媒を加えて再分散させることは意図していないといえる。 一方、甲1の段落[0040]には、「なお、本発明の分散液を製造する際、カーボン粒子と、カルボキシル基を有する繊維状多糖類と、分散媒との割合は、カーボン粒子の重量を1としたとき、カルボキシル基を有する繊維状多糖類は0.1~100、分散媒は1~100000の範囲であるのが好ましい。」と、分散液を製造する際の各成分の含有割合について記載されている。 しかしながら、本件特許発明1は、上記(ア)cで説示したように、要件1ないし要件4の4つの要件を同時に満足することにより、粉粒物含有組成物に水等の極性溶媒を加えて再分散させたときに、再分散後における非セルロース粉粒物の濃度を確保することができると共に、(A1)セルロース繊維と(B)非セルロース粉粒物を均一に分散させることができる、という技術的意義を有するものである。 そうすると、甲1発明において、たとえ「分散液」を製造する際の各成分の含有割合が記載されているとしても、その分散液を水等の極性溶媒を加えた際に、上記本件特許発明1の技術的意義について記載も示唆もされていない以上、上記相違点に係る要件2及び3の要件を同時に満たすようにすることは当業者が容易に想到し得るものではない。 また、甲2には、「セルロースナノファイバー濃縮物の製造方法」及び当該方法により得られた「セルロースナノファイバー濃縮物を、水、有機溶剤、及び樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種の分散媒に再分散させる、セルロースナノファイバーの再分散方法」について記載されているものの、上記要件1ないし要件4を同時に満足することにより、粉粒物含有組成物に水等の極性溶媒を加えて再分散させたときに、再分散後における非セルロース粉粒物の濃度を確保することができると共に、「(A1)セルロース繊維と(B)非セルロース粉粒物」を均一に分散させることは記載も示唆もされていない。 よって、甲1発明において、甲1及び甲2に記載された事項を参酌しても、相違点1に係る事項を当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 ついで、本件特許発明1が奏する効果について検討する。 本件特許発明1は、機能性粒子などの非セルロース粉粒物を高濃度で含有し、かつ、水等の極性溶媒への再分散性に優れる粉粒物含有組成物が得られ、そのため、保存スペースの増大や保存及び輸送コストの増大を抑えて運搬性を向上することができるという効果を奏するものである(段落【0013】【0076】)。 一方、甲1及び甲2には、分散液に、水等の極性溶媒を加えて再分散させることや、分散液に、水等の極性溶媒を加えた際にも、再分散後における非セルロース粉粒物の濃度を確保することができると共に、セルロース繊維とカーボンブラックとを均一に分散できることについては記載も示唆もされていないのであるから、本件特許発明1の上記効果は当業者が容易に予測し得るものではない。 したがって、本件特許発明1は、甲1発明及び甲1及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。 (ウ)申立人の主張の検討 申立人は、申立書において、以下の主張をしている。 ・(B)非セルロース粉粒物の含有量について 「ここで、本件発明1に係る下限値「14.0質量%」とすることの技術的意義は、単に「組成物」の容積を減少させて保存等の問題に対応するものに過ぎず、いわゆる臨界的意義を含むものではない。すなわち、相違点1について、甲1発明の1b「カーボン粒子の含有量は、0.001~47.6質量%」を基に、分散液を乾燥させて水の含有量を低減させ、その下限値を14.0質量%以上程度に調整することは、通常の創作能力を発揮する当業者であれば、設計事項に過ぎない。」(申立書第26ページ第30~38行) ・(C)水の含有量について 「ここで、本件発明1に係る範囲「0.6質量%以上72.0質量%以下」を検討するに、本件発明1の1B「(B)非セルロース粉粒物の含有量」について既に検討したことと同様に、本件発明1の「(C)水の含有量」は、本件発明の目的である「再分散性」の向上に何ら寄与するものではなく、単に「組成物」の容積を減少させて保存等の問題に対応するために調整しているに過ぎず、いわゆる臨界的意義を含むものではない。すなわち、相違点1-2について、甲1発明の1c「水の含有量は、0.001~99.9質量%」を基に、分散液の容積を減少させて保存等の問題に対応するために、乾燥させて水の含有量を低減させ、その範囲を0.6質量%以上72.0質量%以下に調整することは、通常の創作能力を発揮する当業者であれば、設計事項に過ぎない。」(申立書第28ページ第12~28行) ・前記(A1)セルロース繊維の含有量と前記(B)非セルロース粉粒物の含有量との質量比率(A1)/(B)について 「ここで、本件発明1に係る上限値「50.0/50.0」を検討するに、本件発明1の(A1)セルロース繊維は、 (B)非セルロース粉粒物の(C)水に対する分散剤として機能するものであり(【0016】)、このような機能を発揮するために、本件発明1に係る上限値「50.0/50.0」を設定し、一定割合以上の(A1)セルロース繊維を含むことを特定しているものと解する。一方、甲1発明のセルロース繊維も、カーボン粒子の分散性及び分散安定性に寄与するために用いられている([0024])。・・・ よって、相違点1-3において、本件発明1に係る上限値「50.0/50.0」とすることの技術的意義は、単に分散剤である(A1)セルロース繊維を一定割合以上含有することを特定しているに過ぎず、甲第1号証で記載するように、セルロース繊維がカーボン粒子の分散性及び分散安定性に寄与することが公知である以上、いわゆる臨界的意義を含むものではない。すなわち、相違点1-3について、甲1発 明の1d「セルロース繊維の含有量とカーボン粒子の含有量との質量比率(セルロース繊維/カーボン粒子)は、0.1/1~100/1」及び甲第1号証の実施例を基に、セルロース繊維の割合をより多くすることで、カーボン粒子の分散性及び分散安定性をより向上するよう調整することは、通常の創作能力を発揮する当業者であれば、設計事項に過ぎない。」(申立書第29ページ第3~30行) そこで、申立人の上記主張について検討する。 まず、上記(ア)cで説示したように、本件特許発明1は、要件1ないし要件4を同時に満足することにより、粉粒物含有組成物に水等の極性溶媒を加えて再分散させたときに、再分散後における非セルロース粉粒物の濃度を確保することができると共に、(A1)セルロース繊維と(B)非セルロース粉粒物を均一に分散させることのできる、という技術的意義を有するものであって、申立人の主張するように、単に「組成物」の容積を減少させて保存等の問題に対応するために調整しているわけではない。 そして、(A1)セルロース繊維として、セルロース繊維A1-4の2質量%水分散体、(B)非セルロース粉粒物として、B-1:アセチレンブラック(デンカ株式会社製、HS-100、BET表面積:39m2/g)を使用し、(A1)セルロース繊維の含有量と(B)非セルロース粉粒物の含有量との質量比率(A1)/(B)(以下、「(A1)/(B)」という。)が本件特許発明1の数値範囲内にある「2.6/97.4」である実施例4、7、8と比較例3を対比すると、実施例4、7、8は、再分散性の評価が「5(凝集物が見られない)」と優れたものとなっている。一方、(B)非セルロース粉粒物の含有量が「13.59質量%」、(C)水の含有量が「86.05質量%」と本件特許発明1の要件を満足しない比較例3は再分散性の評価が「2(1画像中に16~25個の凝集物が見られる)」と劣る結果となっている。 また、(A1)セルロース繊維として、セルロース繊維A1-4の2質量%水分散体、(B)非セルロース粉粒物として、B-1:アセチレンブラック(デンカ株式会社製、HS-100、BET表面積:39m2/g)を使用し、(B)非セルロース粉粒物の含有量と(C)水の含有量が似通っている実施例4と比較例4(実施例4(B)「69.49質量%」、(C)「29.68質量%」、比較例4(B)「70.22質量%」、(C)「29.49質量%」)を対比すると、(A1)/(B)が「2.6/97.4」と本件特許発明1の数値範囲内にある実施例4は、再分散性の評価が「5(凝集物が見られない)」と優れたものとなっている。一方、(A1)/(B)が「0.7/99.3」(当審注:計算し直すと、実際には「0.4/99.6」)と本件特許発明1の数値範囲外にある比較例4は、再分散性の評価が「1:1画像中に26個以上の凝集物が見られる」と劣るものとなっている。 同様に、(A1)セルロース繊維として、セルロース繊維A1-4の2質量%水分散体、(B)非セルロース粉粒物として、B-1:アセチレンブラック(デンカ株式会社製、HS-100、BET表面積:39m2/g)を使用し、(B)非セルロース粉粒物の含有量と(C)水の含有量が似通っている実施例15と比較例8(実施例15:(B)「48.54質量%」、(C)「2.91質量%」、比較例8:(B)「46.22質量%」、(C)「2.93質量%」)を対比してみると、(A1)/(B)が「50.0/50.0」と本件特許発明1の数値範囲内にある実施例15は、再分散性の評価が「4(1画像中に1~7個の凝集物が見られる)」と優れると共に、塗工性が「3(塗工面積の50%以上の部分にスジやムラ、凝集物に加え、気泡などが確認される」とある程度満足できるものであるのに対し、(A1)/(B)が「52.4/47.6」と本件特許発明1の数値範囲外にある比較例8は、再分散性の評価が「3(1画像中に8~15個の凝集物が見られる)」と「再分散」はされているものの、塗工性が「1:塗料がアプリケーター上で転がり、塗工することができない」と劣るものとなっている。 上記した実施例・比較例の対比から、本件特許発明1に特定される「前記(B)非セルロース粉粒物の含有量は、前記組成物の全質量に対して14.0質量%以上98.4質量%以下」である数値範囲、「前記(C)水の含有量は、前記組成物の全質量に対して0.6質量%以上72.0質量%以下」である数値範囲、及び「前記(A1)セルロース繊維の含有量と前記(B)非セルロース粉粒物の含有量との質量比率(A1)/(B)が1.0/99.0以上50.0/50.0以下」である数値範囲に臨界的意義を認めることができる。 そうすると、本件特許発明1は、(B)非セルロース粉粒物の含有量、(C)水の含有量、及び前記(A1)セルロース繊維の含有量と前記(B)非セルロース粉粒物の含有量との質量比率の3つの要件の数値範囲に臨界的意義を有しており、もって技術的意義をも有しているといえる。 よって、申立人の上記主張を首肯することができない。 イ 本件特許発明2について (ア)本件特許発明2の技術的意義 上記(ア)aの本件特許明細書の記載によると、 (A1)短幅の方の数平均幅が2nm以上1000nm以下のセルロース繊維と、(A2)カルボキシメチルセルロース塩と、(B)非セルロース粉粒物と、(C)水を少なくとも含有する組成物において、 「(A1)セルロース繊維としては、短幅の方の数平均幅が2nm以上1000nm以下であること」(以下、「要件1」という。)により、非セルロース粉粒物に対する分散剤としての機能を発揮することができ、再分散性の向上効果を高めることができること(段落【0016】)、 「前記(A1)セルロース繊維の含有量と前記(A2)カルボキシメチルセルロース塩の含有量の合計量と、前記(B)非セルロース粉粒物の含有量との質量比率((A1)+(A2))/(B)が1.0/99.0以上50.0/50.0以下に設定すること」(以下、「要件2’」という。)により、粉粒物含有組成物の再分散性を向上することができ、また、再分散体の粘度上昇を抑えることができ、例えば塗料に用いた場合の塗工性を向上することができること(段落【0064】)、 「(B)非セルロース粉粒物の含有量が、粉粒物含有組成物の全質量に対して14.0質量%以上98.4質量%以下」(以下、「要件3」という。)と、非セルロース粉粒物の含有量が高いことにより、再分散後における非セルロース粉粒物の濃度を確保することができること(段落【0059】)、 「(C)水の含有量を、粉粒物含有組成物の全質量に対して0.6質量%以上72.0質量%以下とすること」(以下、「要件4」という。)により、再分散後における(B)非セルロース粉粒物の濃度を確保することができ、例えば塗料に用いる場合に高濃度塗料の作製が容易となり、また、長期保存における経時変化を抑えることができること(段落【0060】)が記載されている。 すなわち、本件特許発明2は、上記要件1ないし要件4を同時に満足することにより、粉粒物含有組成物に水等の極性溶媒を加えて再分散させたときに、再分散後における非セルロース粉粒物の濃度を確保することができると共に、(A1)セルロース繊維と(B)非セルロース粉粒物を均一に分散させることができる、という技術的意義を有するものである。 そして、本件特許発明1の上記要件2’ないし4の要件は、例えば、(B)非セルロース粉粒物の含有量を変更すると、連動して値が変化するものであるし、上記本件特許発明1の技術的意義を考慮すると、引用発明との対比判断を行う際に、各要件を各々独立に判断するのではなく、一体的に判断するのが相当である。 (イ)対比・判断 本件特許発明2と甲1発明とを対比すると、上記ア(イ)で示したのと同様、両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。 <一致点> 「(A1)短幅の方の数平均幅が2nm以上1000nm以下のセルロース繊維と、(B)非セルロース粉粒物と、(C)水を少なくとも含有する組成物であって、 前記(B)非セルロース粉粒物が炭素から構成される粒子である、組成物。」 <相違点2> 組成物が、本件特許発明2は、「(A2)カルボキシメチルセルロース塩」を「含有」し、要件2’ないし要件4の3つの要件を備えると共に、「再分散可能な」と特定されているのに対し、甲1発明は、「(A2)カルボキシメチルセルロース塩」を含有しておらず、それゆえ要件2’が特定されておらず、カーボンブラック及び水の含有量が、「分散液」の全質量に対して、それぞれ「0.25質量%」、「99.5質量%」と、要件3及び要件4を満たさないと共に「再分散可能な」と特定されていない点 そこで、上記相違点2について検討する。 上記ア(イ)で説示したように、甲1には、「分散液」に対し、さらに、水等の極性溶媒を加えて再分散させることは意図していない。 一方、本件特許発明2は、上記(ア)で説示したように、要件1ないし要件4の要件を同時に満足することにより、粉粒物含有組成物に水等の極性溶媒を加えて再分散させたときに、(A1)セルロース繊維と(B)非セルロース粉粒物を均一に分散させることのできるという技術的意義を有するものである。 そうすると、甲1発明において、たとえ「分散液」を製造する際に、カーボン粒子と、カルボキシル基を有する繊維状多糖類と、分散媒との割合が記載されているとしても、そもそも甲1発明はカルボキシメチルセルロース塩を含有しないものであるし、「分散液」を水等の極性溶媒を加えて「再分散」した際に、均一に分散できることについて記載も示唆もされていない以上、上記相違点に係る3つの要件を同時に満たすようにすることは当業者が容易に想到し得るものではない。 また、甲2には、「セルロースナノファイバー濃縮物の製造方法」及び当該方法により得られた「セルロースナノファイバー濃縮物を、水、有機溶剤、及び樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種の分散媒に再分散させる、セルロースナノファイバーの再分散方法」について記載されているものの、上記要件1ないし要件4の要件を同時に満足することにより、粉粒物含有組成物に水等の極性溶媒を加えて再分散させたときに、再分散後における非セルロース粉粒物の濃度を確保することができると共に、「(A1)セルロース繊維と(B)非セルロース粉粒物」を均一に分散させることは記載も示唆もされていない。 そうすると、甲1発明において、甲1及び甲2に記載された事項を参酌しても、相違点2に係る事項を当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 ついで、本件特許発明2が奏する効果について検討する。 本件特許発明2は、機能性粒子などの非セルロース粉粒物を高濃度で含有し、かつ、水等の極性溶媒への再分散性に優れる粉粒物含有組成物が得られ、そのため、保存スペースの増大や保存及び輸送コストの増大を抑えて運搬性を向上することができるという効果を奏するものである(段落【0013】【0076】)。 一方、甲1及び甲2には、分散液に、水等の極性溶媒を加えて再分散させることや、分散液に、水等の極性溶媒を加えた際にも、再分散後における非セルロース粉粒物の濃度を確保することができると共に、セルロース繊維とカーボンブラックとを均一に分散できることについては記載も示唆もされていないのであるから、本件特許発明2の上記効果は当業者が容易に予測し得るものではない。 よって、本件特許発明2は、甲1発明及び甲1及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。 (ウ)申立人の主張の検討 申立人は、申立書において、以下の主張をしている。 ・(B)非セルロース粉粒物の含有量について 「・・・本件発明2に係る下限値「14.0質量%」とすることの技術的意義は、単に「組成物」の容積を減少させて保存等の問題に対応するものに過ぎず、いわゆる臨界的意義を含むものではない。すなわち、相違点2-2について、甲1発明の1b「カーボン粒子の含有量は、0.001~47.6質量%」を基に、分散液を乾燥させて水の含有量を低減させ、その下限値を14.0質量%以上程度に調整することは、通常の創作能力を発揮する当業者であれば、設計事項に過ぎない。」(申立書第33ページ第6~14行) ・(C)水の含有量について 「・・・甲2発明の2c(当審注:「甲1発明の1c」の誤記と解される。)「水の含有量は、0.001~99.9質量%」を基に、分散液の容積を減少させて保存等の問題に対応するために、乾燥させて水の含有量を低減させ、その範囲を0.6質量%以上72.0質量%以下に調整することは、通常の創作能力を発揮する当業者であれば、設計事項に過ぎない。」(申立書第33ページ第20~25行) ・((A1)+(A2))/(B)について 「・・・前記(A1)セルロース繊維の含有量と前記(A2)カルボキシメチルセルロース塩の含有量の合計量と、前記(B)非セルロース粉粒物の含有量との質量比率((A1)+(A2))/(B)について、本件特許発明2は「1.0/99.0以上50.0/50.0以下であ」ることの技術的意義は、単に分散剤である(A1)セルロース繊維ないし(A2)カルボキシメチルセルロース塩を一定割合以上含有することを特定しているに過ぎず、甲第1号証で記載するように、セルロース繊維がカーボン粒子の分散性及び分散安定性に寄与することが公知である以上、いわゆる臨界的意義を含むものではない。すなわち、相違点2-3について、甲1発明の2d「セルロース繊維の含有量とカーボン粒子の含有量との質量比率(セルロース繊維/カーボン粒子)は、0.1/1~100/1」及び甲第1号証の実施例を基に、添加物のカルボキシメチルセルロースと併せたセルロース繊維の割合をより多くすることで、カーボン粒子の分散性及び分散安定性をより向上するよう調整することは、通常の創作能力を発揮する当業者であれば、設計事項に過ぎない。」(申立書第34ページ下から第9行~第35ページ第7行) そこで、上記申立人の主張について検討する。 まず、上記(ア)で説示したように、本件特許発明2は、要件1ないし要件4を同時に満足することにより、粉粒物含有組成物に水等の極性溶媒を加えて再分散させたときに、(A1)セルロース繊維と(B)非セルロース粉粒物を均一に分散させることのできる、という技術的意義を有するもので、申立人の主張するように、単に「組成物」の容積を減少させて保存等の問題に対応するために調整しているわけではない。 そして、本件特許明細書には、上記ア(ウ)で示した実施例・比較例との対比と共に、カルボキシメチルセルロース塩を用いた実施例25~26において良好な再分散性のものが得られている。 そうすると、本件特許発明2に特定される「前記(B)非セルロース粉粒物の含有量は、前記組成物の全質量に対して14.0質量%以上98.4質量%以下」である数値範囲、「前記(C)水の含有量は、前記組成物の全質量に対して0.6質量%以上72.0質量%以下」である数値範囲、及び「前記(A1)セルロース繊維の含有量と前記(A2)カルボキシメチルセルロース塩の含有量の合計量と、前記(B)非セルロース粉粒物の含有量との質量比率((A1)+(A2))/(B)が1.0/99.0以上50.0/50.0以下」である数値範囲に臨界的意義を認めることができる。 そうすると、本件特許発明2は、(B)非セルロース粉粒物の含有量、(C)水の含有量、及び(A1)+(A2))/(B)の質量比率の3つの要件の数値範囲に臨界的意義を有しており、もって技術的意義をも有しているといえる。 よって、申立人の上記主張を首肯することができない。 ウ 本件特許発明3ないし5について 本件特許発明3ないし5は、請求項2を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明2の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明2と同様の理由で、本件特許発明3ないし5は、甲1発明及び甲1及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。 エ 本件特許発明6について 本件特許発明6と甲1発明とを対比する。 まず、本件特許発明6は、請求項1を引用しないものとなった。 よって、本件特許発明6は、甲1に記載された発明ではなく、新規性を有するものである。 ついで、本件特許発明6の進歩性について検討する。 本件特許発明6は本件特許発明2を引用するため、本件特許発明2と甲1発明との相当関係は、本件特許発明6と甲1発明との相当関係にも当てはめることができる。 ところで、「物」に係る発明において、請求項中に製造方法によって生産物を特定しようとする記載がある場合は、その記載を、最終的に得られた生産物自体を意味しているものと解釈すべきである(審査基準第III 部第2章第4節5を参照)。 そして、本件特許発明6は、「組成物を極性溶媒に再分散させた」製造方法によって生産物を特定しているものの、最終的に得られた生産物は、「再分散体」である。 そのため、本件特許発明6の「再分散体」を、最終的に得られた生産物として捉え直すと 、「(A1)セルロース繊維と(B)非セルロース粉粒物が水を含む極性溶媒中に均一に分散された状態」の物であり、本件特許明細書の段落【0075】を参酌すると、「全固形分の濃度が0.5~20.0質量%程度」の物を意図している。そして、甲1発明は、水の含有量が「99.5質量%」であるから、「全固形分の濃度が0.5質量%」となり、先に示した「全固形分の濃度が0.5~20.0質量%」の範囲のものとなる。そして、甲1の表1の結果において、分散性、分散安定性と共に、「○(分散液の静置1日後にカーボン粒子の沈殿が目視確認できなかったものを意味)」となっていることから、「セルロース繊維」と「カーボンブラック」とが、極性溶媒である「水」中に均一に分散された状態となっている。このため、甲1発明の「分散液」は、結局のところ、本件特許発明6の「組成物を極性溶媒に再分散させた再分散体」に相当するといえる。 そうすると、両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。 <一致点> 「(A1)短幅の方の数平均幅が2nm以上1000nm以下のセルロース繊維と、(B)非セルロース粉粒物と、(C)水を少なくとも含有する組成物を極性溶媒に再分散させた再分散体。」 <相違点6> 組成物が、本件特許発明6は、「(A2)カルボキシメチルセルロース塩」を「含有」し、要件2’ないし要件4の3つの要件を備えると共に、「再分散可能な」と特定されているのに対し、甲1発明は、「(A2)カルボキシメチルセルロース塩」を含有しておらず、それゆえ要件2’が特定されておらず、カーボンブラック及び水の含有量が、「分散液」の全質量に対して、それぞれ「0.25質量%」、「99.5質量%」と、要件3及び要件4を満たさないと共に「再分散可能な」と特定されていない点 そこで、上記相違点6について検討する。 上記相違点6は、上記イ(イ)の相違点2と実質同じであるから、上記イ(イ)で検討したのと同様に、相違点6に係る事項とする動機付けはないといえる。 一方、甲1の段落[0027]には、「なお、凝集や沈殿が生成しない範囲においては、より繊維同士の静電反発を増大させる目的や分散液の粘度を制御する目的、あるいは塗工性やぬれ性など機能性付与などの為に、水溶性多糖類を含む各種添加物、各種樹脂を含んでもよい。例えば、カルボキシメチルセルロースなどに代表される化学修飾したセルロース・・・を用いることができる。」と記載されている。 しかしながら、甲1発明のセルロース繊維の含有量とカーボンブラック(非セルロース粒状物)の含有量との質量比率は50/50であり、かかる甲1発明の分散液にカルボキシメチルセルロース塩を添加すると、セルロース繊維の含有量とカルボキシメチルセルロース塩の含有量の合計量と、カーボンブラック(非セルロース粒状物)の含有量との質量比は50/50よりも大きくなり、要件2’の「((A1)+(A2))/(B)が1.0/99.0以上50.0/50.0以下」であるとの事項を充足しないこととなる。 よって、甲1発明において、上記相違点6に係る事項とする動機付けはないといえる。 したがって、本件特許発明6は、甲1発明及び甲1及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。 オ 本件特許発明7及び10について 本件特許発明7及び10は、請求項6を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明6の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明6と同様の理由で、本件特許発明7及び10は、甲1発明及び甲1及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。 (3)取消理由1(甲1に基づく新規性欠如)、取消理由2(甲1を主引用文献とする進歩性欠如)、申立理由1(甲1を主引用例とする進歩性欠如)についてのむすび したがって、本件特許発明6は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、本件特許発明1ないし7及び10は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし7及び10に係る特許は、取消理由1、取消理由2及び申立理由1によっては取り消すことはできない。 2 取消理由として採用しなかった申立理由について 取消理由として採用しなかった申立理由は、申立理由2(明確性要件違反)、申立理由3(サポート要件違反)、申立理由4(実施可能要件違反)であるから、これらについて以下検討する。 (1)申立理由2(明確性要件違反)について ア 明確性要件の判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきものである。 そこで、上記判断基準に従って、以下検討する。 イ 検討 「再分散可能な」の技術的意味について、上記1(2)ア(ア)bで示したように、本件特許明細書の段落【0073】から、「再分散可能」とは、粉粒物含有組成物に水等の極性溶媒を加えて再分散させたときに、(A1)セルロース繊維と(B)非セルロース粉粒物を均一に分散させることができることをいい、例えば、後述する実施例における再分散性の評価で3(1画像中に8~15個の凝集物が見られる)以上のもの、であることが理解できる。 そうすると、本件特許発明1及び本件特許発明2は、本件特許明細書を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確とはいえない。 また、本件特許発明2を直接又は間接的に引用する本件特許発明3ないし7及び10も同様に明確である。 ウ 申立人の主張の検討 申立人は、「再分散可能」な事項について、以下の主旨の主張をしている。 ・主張ア:請求項1の「再分散可能」とは、単に本件発明の課題や効果と一致するに過ぎず、どの程度の分散性をもって「優れた分散性」と判断するかが理解できない以上、何ら「組成物」の機能等を特定するものではなく、発明を特定する事項とは認められない。 ・主張イ:請求項1の「再分散可能な組成物」は、その文言で検討すると、その成分である(C)水へ再分散可能であるのか、(C)水以外の極性溶媒へ再分散可能であるのかを区別できない。 ・主張ウ:請求項1の「再分散可能な」は、組成物が(C)水以外の極性溶媒へ再分散可能であることを意味するとしても、組成物が凝集物を含むもののみであるのか、凝集物を含まないものも含むのかを理解できない。 そこで、上記主張について、以下検討する。 (ア)主張アについて 上記イで説示したように、本件特許明細書には、「再分散可能」とは、粉粒物含有組成物に水等の極性溶媒を加えて再分散させたときに、(A1)セルロース繊維と(B)非セルロース粉粒物を均一に分散させることができることをいい、例えば、後述する実施例における再分散性の評価で「3(1画像中に8~15個の凝集物が見られる)」以上のものをいうことが記載されているのであるから、当業者は、本件特許明細書の記載をもって、どの程度の分散性を「優れた分散性」と判断するかが理解できるものである。 したがって、「再分散可能」の意味は明確である。 よって、申立人の上記主張アは首肯できない。 (イ)主張イについて 上記イで説示したように、「再分散可能」とは、本件特許明細書の段落【0073】から「粉粒物含有組成物に水等の極性溶媒を加えて再分散させたときに、(A1)セルロース繊維と(B)非セルロース粉粒物を均一に分散させることができることをいい」と記載されているのであるから、成分である「(C)水」と共に「(C)水以外の極性溶媒」へ再分散可能であることを意味することを当業者は理解するものである。 よって、申立人の上記主張イは首肯できない。 (ウ)主張ウについて 上記イで説示したように、本件特許明細書には、「再分散可能」とは、粉粒物含有組成物に水等の極性溶媒を加えて再分散させたときに、(A1)セルロース繊維と(B)非セルロース粉粒物を均一に分散させることができることをいうのであって、再分散を行う「以前」の組成物が、凝集物を含むもののみであるのか、凝集物を含まないものも含むかどうかは、本件特許発明の明確性の判断に何ら影響を及ぼするものではない。 よって、申立人の上記主張ウは首肯できない。 エ 申立理由2についてのむすび したがって、本件特許の請求項1ないし7及び10に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由2によっては取り消すことはできない。 (2)申立理由3(サポート要件違反)及び申立理由4(実施可能要件違反)について ア 検討 申立人は、申立理由3及び申立理由4について、以下の主旨の主張をしている。 「再分散可能な組成物」は、極性溶媒へ再分散させるものであるため、当然極性溶媒である(C)水へも分散可能であるため、(C)水へ分散している状態も包含する。 しかしながら、本件特許明細書では、請求項1の「再分散可能な」について、明確な定義は発見できず、「再分散可能な組成物」が、(C)水へ分散している状態にある場合に、どのように「再分散」するのか記載も示唆もない。 したがって、「再分散可能な組成物」が、(C)水へ分散している状態にある場合の実施の形態に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 また、本件特許の詳細な説明には、当業者が出願時の技術常識を考慮しても、「再分散可能な組成物」が、(C)水へ分散している状態にある場合に、本件発明1ないし10を実施できる程度に明確かつ十分に説明されているとはいえない。 しかしながら、上記(1)ウ(イ)でも説示したように、「再分散可能」とは、本件特許明細書の段落【0073】から「粉粒物含有組成物に水等の極性溶媒を加えて再分散させたときに、(A1)セルロース繊維と(B)非セルロース粉粒物を均一に分散させることができることをいい」と記載されているのであるから、「再分散可能な組成物」が、(C)水へ分散している状態にある場合にも、成分である「(C)水」と共に「(C)水以外の極性溶媒」へ再分散可能であることを当業者は理解するものである。 したがって、申立人の主張によって、本件特許のサポート要件及び実施可能要件が否定されるものではない よって、申立人の上記主張は首肯できない。 イ 申立理由3及び申立理由4についてのむすび したがって、本件特許の請求項1ないし7及び10に係る特許は、特許法第36条第6項第1号及び同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由3及び申立理由4によっては取り消すことはできない。 第6 むすび 上記第5のとおり、本件特許の請求項1ないし7及び10に係る特許は、当審が通知した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。 さらに、他に本件特許の請求項1ないし7及び10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、本件特許の請求項8及び9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700258

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