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特許異議申立

2023-700240

キャップ

審判番号
2023-700240
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-043920
登録番号
7138815
請求日
2023年03月01日
審決日
2024年02月21日
公報発行日
2024年05月31日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】日本山村硝子株式会社
  • 【権利者代理人】藤本 英夫
  • 【権利者代理人】西村 幸城
  • 【異議申立人】青山 裕樹
審判長/審判官
  • 審判長 井上 茂夫
  • 審判官 ▲高▼橋 杏子
  • 審判官 山崎 勝司
分類
P1651.113-YAA(B65D) / P1651.121-YAA(B65D) / P1651.536-YAA(B65D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7138815号発明「キャップ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7138815号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。 特許第7138815号の請求項1~4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7138815号の請求項1~4に係る特許についての出願は、令和4年3月18日に出願され、令和4年9月8日にその特許権の設定登録がされ、令和4年9月16日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和5年3月1日 : 特許異議申立人青山裕樹(以下「申立人」という。)による請求項1~4に係る特許に対する特許異議の申立て 令和5年5月30日付け: 取消理由通知書 令和5年7月25日 : 特許権者による意見書の提出 令和5年9月29日付け: 取消理由通知書(決定の予告) 令和5年11月30日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和6年1月23日 : 申立人による意見書の提出 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和5年11月30日提出の訂正請求書による訂正の請求(以下、訂正自体を「本件訂正」という。)の趣旨は、「特許第7138815号の明細書、特許請求の範囲を本件請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、以下のとおりのものである。なお、下線は、訂正箇所を示すものである。 (1)訂正事項1 訂正前の特許請求の範囲の請求項1に 「前記特定ねじ片は、最もねじ切り始め側にあるねじ片を含まないキャップ。」とあるのを、 「前記特定ねじ片は、最もねじ切り始め側にあるねじ片を含まず、 前記フックの上面から前記特定ねじ片までの上下方向の距離を、前記雌ねじのねじピッチの2倍以上としてあるキャップ。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、4も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 訂正前の特許請求の範囲の請求項3に 「前記フックの上面から前記特定ねじ片までの上下方向の距離を、前記雌ねじのねじピッチの2倍以上としてある請求項1または2に記載のキャップ。」とあるのを、 「容器口部に形成された雄ねじに螺合する雌ねじが設けられた側壁と、該側壁の下側に弱化部を介して連結され、前記容器口部に形成された環状突起にその下方から係止可能なフックが設けられたタンパーエビデンスバンドとを具備したキャップであって、 前記雌ねじは周方向に間隔をおいて並ぶ複数のねじ片によって構成され、 キャッピング時に前記フックが前記環状突起を下向きに乗り越えようとする際、前記雄ねじを上向きに乗り越え易い位置にあるねじ片である特定ねじ片を、前記雄ねじを上向きに乗り越え難い位置にあるねじ片である非特定ねじ片よりも周方向に長くしてあり、 前記特定ねじ片は、最もねじ切り始め側にあるねじ片を含まず、 前記フックの上面から前記特定ねじ片までの上下方向の距離を、前記雌ねじのねじピッチの2倍以上としてあり、前記フックの上面からねじ切り始め側基準点までの上下方向の距離は、前記ねじピッチの1倍以上2倍未満であるキャップ。」に訂正する。 (3)訂正事項3 訂正前の特許請求の範囲の請求項4に「請求項1~3の何れか一項に記載のキャップ。」とあるのを、「請求項1又は2に記載のキャップ。」に訂正する。 (4)訂正事項4 訂正前の本件特許明細書の【0012】に 「前記特定ねじ片は、最もねじ切り始め側にあるねじ片を含まない(請求項1)。」とあるのを、 「前記特定ねじ片は、最もねじ切り始め側にあるねじ片を含まず、前記フックの上面から前記特定ねじ片までの上下方向の距離を、前記雌ねじのねじピッチの2倍以上としてある(請求項1)。」に訂正する。 (5)訂正事項5 訂正前の本件特許明細書の【0014】に 「上記キャップにおいて、前記フックの上面から前記特定ねじ片までの上下方向の距離を、前記雌ねじのねじピッチの2倍以上としてあってもよい(請求項3)。」とあるのを、 「本発明に係るキャップを、容器口部に形成された雄ねじに螺合する雌ねじが設けられた側壁と、該側壁の下側に弱化部を介して連結され、前記容器口部に形成された環状突起にその下方から係止可能なフックが設けられたタンパーエビデンスバンドとを具備したキャップであって、前記雌ねじは周方向に間隔をおいて並ぶ複数のねじ片によって構成され、キャッピング時に前記フックが前記環状突起を下向きに乗り越えようとする際、前記雄ねじを上向きに乗り越え易い位置にあるねじ片である特定ねじ片を、前記雄ねじを上向きに乗り越え難い位置にあるねじ片である非特定ねじ片よりも周方向に長くしてあり、前記特定ねじ片は、最もねじ切り始め側にあるねじ片を含まず、前記フックの上面から前記特定ねじ片までの上下方向の距離を、前記雌ねじのねじピッチの2倍以上としてあり、前記フックの上面からねじ切り始め側基準点までの上下方向の距離は、前記ねじピッチの1倍以上2倍未満であるものとしてもよい(請求項3)。」に訂正する。 (6)訂正事項6 本件特許明細書の【0020】に 「周方向に長い特定ねじ片がフックの近くにあると成形時の無理抜きによる離型性が低下するが、請求項3に係る発明のキャップでは、フックの上面から特定ねじ片までの上下方向の距離を確保することにより、離型性の向上を図ることができる。」とあるのを、 「周方向に長い特定ねじ片がフックの近くにあると成形時の無理抜きによる離型性が低下するが、本願の各請求項に係る発明のキャップでは、フックの上面から特定ねじ片までの上下方向の距離を確保することにより、離型性の向上を図ることができる。」に訂正する。 (7)一群の請求項について 本件訂正の請求は、一群の請求項〔1~4〕に対して請求されたものである。また、明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1~4〕について請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に対して、「前記フックの上面から前記特定ねじ片までの上下方向の距離を、前記雌ねじのねじピッチの2倍以上としてある」とさらに特定するものであるから、特許請求の範囲を減縮を目的とするものである。 訂正事項1は、本件訂正前の請求項3の「前記フックの上面から前記特定ねじ片までの上下方向の距離を、前記雌ねじのねじピッチの2倍以上としてある請求項1または2に記載のキャップ。」、及び、本件特許明細書の【0037】の「図3(B)の例では、雌ねじ5のねじピッチが3.25mmであるのに対し、フック11の上面から特定ねじ片12Tまでの上下方向の距離(最小距離)を8mm程度としてあり、このように、前記距離を上記ねじピッチの2倍以上として、フック11の上面から特定ねじ片12Tまでの上下方向の距離を確保することにより、離型性の向上を図ることができる。」との記載に基づくものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2 訂正事項2は、本件訂正前の請求項3が請求項1を引用していたところ、独立形式へ改めて、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とし、また、「前記フックの上面からねじ切り始め側基準点までの上下方向の距離は、前記ねじピッチの1倍以上2倍未満である」とさらに特定して、特許請求の範囲を減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項2は、本件特許明細書の【0037】の「なお、図3(B)の例では、フック11の上面からねじ切り始め側基準点P1までの上下方向の距離は、前記ねじピッチの1倍以上2倍未満である。」との記載に基づくものである。 そうすると、訂正事項2は、願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3 訂正事項3は、本件訂正前の請求項4が引用していた請求項3を引用しないようにするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項4~6 訂正事項4~6は、訂正事項1~3と整合をとるために本件特許明細書の【0012】、【0014】、【0020】を訂正するものであるから、当該訂正事項4~6に係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項4~6は、訂正事項1~3について検討したのと同様に、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 3 小括 以上のとおり、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の特許請求の範囲の記載 本件訂正請求により訂正された請求項1~4に係る発明(以下、順に「本件発明1」~「本件発明4」といい、まとめて「本件発明」ということもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 容器口部に形成された雄ねじに螺合する雌ねじが設けられた側壁と、該側壁の下側に弱化部を介して連結され、前記容器口部に形成された環状突起にその下方から係止可能なフックが設けられたタンパーエビデンスバンドとを具備したキャップであって、 前記雌ねじは周方向に間隔をおいて並ぶ複数のねじ片によって構成され、 キャッピング時に前記フックが前記環状突起を下向きに乗り越えようとする際、前記雄ねじを上向きに乗り越え易い位置にあるねじ片である特定ねじ片を、前記雄ねじを上向きに乗り越え難い位置にあるねじ片である非特定ねじ片よりも周方向に長くしてあり、 前記特定ねじ片は、最もねじ切り始め側にあるねじ片を含まず、 前記フックの上面から前記特定ねじ片までの上下方向の距離を、前記雌ねじのねじピッチの2倍以上としてあるキャップ。 【請求項2】 前記特定ねじ片が周方向に100°以上延びている請求項1に記載のキャップ。 【請求項3】 容器口部に形成された雄ねじに螺合する雌ねじが設けられた側壁と、該側壁の下側に弱化部を介して連結され、前記容器口部に形成された環状突起にその下方から係止可能なフックが設けられたタンパーエビデンスバンドとを具備したキャップであって、 前記雌ねじは周方向に間隔をおいて並ぶ複数のねじ片によって構成され、 キャッピング時に前記フックが前記環状突起を下向きに乗り越えようとする際、前記雄ねじを上向きに乗り越え易い位置にあるねじ片である特定ねじ片を、前記雄ねじを上向きに乗り越え難い位置にあるねじ片である非特定ねじ片よりも周方向に長くしてあり、 前記特定ねじ片は、最もねじ切り始め側にあるねじ片を含まず、 前記フックの上面から前記特定ねじ片までの上下方向の距離を、前記雌ねじのねじピッチの2倍以上としてあり、 前記フックの上面からねじ切り始め側基準点までの上下方向の距離は、前記ねじピッチの1倍以上2倍未満であるキャップ。 【請求項4】 前記雌ねじは、前記非特定ねじ片として、前記特定ねじ片から前記雌ねじのねじ切り始め側に向かって並ぶ複数の第1ねじ片と、前記特定ねじ片から前記雌ねじのねじ切り終わり側に向かって並ぶ複数の第2ねじ片とを有し、 周方向に隣接する前記第1ねじ片間の隙間の真上に、前記第2ねじ片が位置せず、 前記第2ねじ片を前記第1ねじ片より周方向に短くしてある請求項1又は2に記載のキャップ。」 第4 令和5年9月29日付け取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由について 当審が特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 (1)請求項1~3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消すべきものである。 (2)請求項1~4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消すべきものである。 <申立人が提出した証拠方法> 甲第1号証:特開2017-36081号公報 甲第2号証:国際公開第2019/077767号 (以下、甲第1号証及び甲第2号証を、それぞれ「甲1」及び「甲2」という。) 第5 当審の判断 1 甲各号証に記載された事項、発明 (1)甲1 ア 甲1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様である。)。 「【0013】 以下、本発明に係る合成樹脂製キャップの一例について、図面を参照して説明する。 図2は、本発明の合成樹脂製キャップの第1実施形態を用いた閉止装置の一例を示すもので、ここに示す閉止装置は、容器20と、その口元部21に装着される合成樹脂製キャップ1(以下、単にキャップ1という)とから構成されている。 図2は、キャップ1が容器20の口元部21に巻締められた状態(閉栓状態)を示している。符号C1はキャップ1の中心軸を示す。」 「【0017】 図2および図4に示すように、キャップ1は、天板部2と、その周縁から垂下した筒部3とを備えている。 天板部2には、容器20の口元部21に嵌入して口元部21の内面21aに当接する内側シール突起4と、外面21cまたは開口端面21bに当接する外側シール突起5と、開口端面21bに接する開口端シール突起13とが形成されている。 【0018】 図2および図3に示すように、筒部3は、スコア6(弱化部)によって、主部8と、ブリッジ7(図4参照)によって主部8に連結されたタンパーエビデンス リング部(TEリング部)9とに区画されている。主部8の内面8aには、容器20の雄ネジ22に螺合するネジ部10が形成されている。 【0019】 図5に示すように、ネジ部10は、1条または複数条のネジ部とすることができる。 ネジ部10が1条ネジである場合には、上端部10aから下端部10bまでの周方向形成角度は、例えば600~720°とすることができる。この図の例では、ネジ部10の長さは2周回分よりやや短い程度(周方向形成角度は約710°)とされている。 【0020】 ネジ部10は、ネジ分割部18において長手方向に複数の分割ネジ部19に分割して形成することができる。これにより、キャップ1を成形する際の離型を容易にすることができる。また、キャップ1を再栓した後に内容液の発酵などにより容器内圧が高くなった場合に、開栓時において容器内のガスを容易に排出することができる。」 「【0022】 ネジ分割部18は、中心軸C1に垂直な面内において、筒部3の中心(図5ではC1に一致)の周りにm回対称(mは2以上の整数)となる回転対称位置にあることが好ましい。ネジ分割部18を回転対称形とすることによって、筒部3の強度を周方向に均等化することができる。 mが偶数であると、ネジ分割部18とニブ分割部16の周方向の位置が一致するのを回避しやすくなる。 図5の例では、ネジ分割部18は、筒部3の中心の周りに6回対称となる回転対称位置にあり、概ね周方向に約60度ごとに形成されている。なお、ネジ分割部18は、4回対称、8回対称等となる位置にあってもよい。 【0023】 分割ネジ部19のうち、最も天板部2に近い位置(最も高い位置)にある分割ネジ部19aの下方に隣接する分割ネジ部19bと、最も天板部2から遠い位置(最も低い位置)にある分割ネジ部19cの上方に隣接する分割ネジ部19dとは、周方向に連続して一体形成された1つの分割ネジ部19eとすることができる。」 「【0025】 TEリング部9は、円筒状体であって、内面9aは軸方向に沿って形成されていることが望ましい。TEリング部9の内面9aには、開栓時に容器20の係止段部23に係止してTEリング部9の移動を阻止する係止突起であるニブ11が形成されている。 ニブ11は、TEリング部9の内面9aから径方向内方に突出して形成され、その内径は係止段部23の外径より小さい。」 「【図2】 [図:0001410195000001.jpg] 【図2】より、合成樹脂製キャップ1は、筒部3を備えることが看取できる。 」 「【図5】 [図:0001410195000002.jpg] 」 イ 甲1に記載された発明 上記(1)アの記載を総合すると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。 「容器20の口元部21に装着される合成樹脂製キャップ1であって、合成樹脂製キャップ1は、筒部3を備え、筒部3は、スコア6によって、主部8と、ブリッジ7によって主部8に連結されたタンパーエビデンスリング部(TEリング部)9とに区画されており、主部8の内面8aには、容器20の雄ネジ22に螺合するネジ部10が形成されており、TEリング部9の内面9aには、開栓時に容器20の係止段部23に下方から係止してTEリング部9の移動を阻止する係止突起であるニブ11が形成され、 ネジ部10は、ネジ分割部18において長手方向に複数の分割ネジ部19に分割して形成され、分割ネジ部19のうち、最も天板部2に近い位置にある分割ネジ部19aの下方に隣接する分割ネジ部19bと、最も天板部2から遠い位置にある分割ネジ部19cの上方に隣接する分割ネジ部19dとは、周方向に連続して一体形成された1つの分割ネジ部19eとすることができる、合成樹脂製キャップ1。」 (2)甲2 ア 甲2には、次の事項が記載されている。 「[0026] そして、図3に示すように、本例のスカート壁3の雌ねじ5は、ねじ山16と、ねじ無し部分17とが交互に並ぶ断続ねじであり、各ねじ無し部分17をスカート壁3の軸方向(図3では下方向)に延長した先に、周方向に隣り合うフック11間に設けられる隙間18が位置しないように構成してある(図5、図6参照)。換言すれば、各ねじ無し部分17と各隙間18の位置を周方向にずらしてある。 [0027] 詳述すると、上述のようにフック11は5個設けられているのに対し、雌ねじ5はスカート壁3内を螺旋状に二周するように延び、ねじ山16は一周当たり10個設けられている(図6参照)。そして、本例では、各隙間18をバンド9の軸方向に延長した先に、何れかのねじ山16の中央(ねじが延びる方向における中央)が位置するように構成されている。」 「[図3] [図:0001410195000003.jpg] 」 「[図6] [図:0001410195000004.jpg] 」 イ 甲2記載技術事項 上記(2)アの記載を総合すると、甲2には、次の技術的事項が記載されていると認められる(以下、「甲2記載技術事項」という。)。 「雌ねじ5は、ねじ山16と、ねじ無し部分17とが交互に並ぶ断続ねじであり、 雌ねじ5はスカート壁3内を螺旋状に二周するように延び、ねじ山16は一周当たり10個設けられており、 図6において下側に位置する10個のねじ山16の各ねじ無し部分の図6における真上に、図6において上側に位置する10個のねじ山16が位置せず、 図6において上側に位置する10個のねじ山16を図6において下側に位置する10個のねじ山16より周方向に短くしてある、キャップ。」 2 本件発明1について (1)対比 ア 甲1発明の「容器20」の「口元部21」は、本件発明1の「容器口部」に相当し、甲1発明の「合成樹脂製キャップ1」は、本件発明1の、「キャップ」に相当する。 イ 甲1発明の「筒部3」は、「内面8aには、容器20の雄ネジ22に螺合するネジ部10が形成されて」いる「主部8」と、「スコア6」によって、「主部8と、ブリッジ7によって主部8に連結されたタンパーエビデンスリング部(TEリング部)9」とに区画されていることから、甲1発明の「主部8」、「TEリング部9」、「雄ネジ22」、「ネジ部10」は、本件発明1の「側壁」、「タンパーエビデンスバンド」、「雄ねじ」、「雌ねじ」に相当する。 また、甲1発明の「TEリング部9」が「スコア6によって、主部8と、ブリッジ7によって主部8に連結され」ることは、本件発明1の「タンパーエビデンスバンド」が「側壁の下側に弱化部を介して連結され」ることに相当する。 ウ 甲1発明の「係止段部23」、「ニブ11」、「分割ネジ部19」は、それぞれ、本件発明1の「環状突起」、「フック」、「ねじ片」に相当する。 エ 甲1発明の「ニブ11」が「係止段部23に下方から係止」することは、本件発明1の「フック」が「環状突起にその下方から係止」することに相当する。 オ 甲1発明の「ネジ部10」が「ネジ分割部18において長手方向に複数の分割ネジ部19に分割」されることは、本件発明1の「雌ねじは周方向に間隔をおいて並ぶ複数のねじ片によって構成され」ることに相当する。 そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「容器口部に形成された雄ねじに螺合する雌ねじが設けられた側壁と、該側壁の下側に弱化部を介して連結され、前記容器口部に形成された環状突起にその下方から係止可能なフックが設けられたタンパーエビデンスバンドとを具備したキャップであって、 前記雌ねじは周方向に間隔をおいて並ぶ複数のねじ片によって構成されるキャップ。」 [相違点] 本件発明1では、「キャッピング時に前記フックが前記環状突起を下向きに乗り越えようとする際、前記雄ねじを上向きに乗り越え易い位置にあるねじ片である特定ねじ片を、前記雄ねじを上向きに乗り越え難い位置にあるねじ片である非特定ねじ片よりも周方向に長くしてあり、前記特定ねじ片は、最もねじ切り始め側にあるねじ片を含まず、前記フックの上面から前記特定ねじ片までの上下方向の距離を、前記雌ねじのねじピッチの2倍以上としてある」のに対して、甲1発明では、そのような構成であるかどうかが明らかでない点。 (2)判断 上記相違点について検討する。 甲1発明の「分割ネジ部19e」は、「ねじ切り始め側基準点からねじ切り終わり側に向かって360°周回した付近にあるねじ片」であり、「分割ネジ部19e」以外の「分割ネジ部19」よりも長くしてあり、さらに、「分割ネジ部19e」は最もねじ切り始め側にないことが分かるものの、甲1には、「ニブ11」の上面から「分割ネジ部19e」までの上下方向の距離を、「ネジ部10」のねじピッチの2倍以上としてあることは、記載されていない。 そして、甲1発明において、本件発明1のように、「キャッピング時に前記フックが前記環状突起を下向きに乗り越えようとする際、前記雄ねじを上向きに乗り越え易い位置にあるねじ片」に着目して、当該ねじ片を「特定ねじ片」として、「前記雄ねじを上向きに乗り越え難い位置にあるねじ片である非特定ねじ片よりも周方向に長くしてあり、前記特定ねじ片は、最もねじ切り始め側にあるねじ片を含まず、前記フックの上面から前記特定ねじ片までの上下方向の距離を、前記雌ねじのねじピッチの2倍以上としてある」構成とすることの動機はない。 また、甲2記載技術事項においても、「キャッピング時に前記フックが前記環状突起を下向きに乗り越えようとする際、前記雄ねじを上向きに乗り越え易い位置にあるねじ片である特定ねじ片を、前記雄ねじを上向きに乗り越え難い位置にあるねじ片である非特定ねじ片よりも周方向に長くしてあり、前記特定ねじ片は、最もねじ切り始め側にあるねじ片を含まず、前記フックの上面から前記特定ねじ片までの上下方向の距離を、前記雌ねじのねじピッチの2倍以上としてある」構成とすることは、記載も示唆もされていない。 したがって、本件発明1は、甲1発明ではなく、甲1発明及び甲2記載技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 本件発明2~4について 本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記2で検討したものと同じ理由により、本件発明2~4は、甲1発明及び甲2記載技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない 第6 取消理由として採用しなかった特許異議申立理由 1 取消理由として採用しなかった特許異議申立理由の概要 (実施可能要件)本件特許は、明細書の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 申立人は、「多数のねじ片のうちのいずれの領域に存在するねじ片を『キャッピング時に前記フックが前記環状突起を下向きに乗り越えようとする際、前記雄ねじを上向きに乗り越え易い位置にあるねじ片である特定ねじ片』として特定し、いずれの領域に存在するねじ片を『前記雄ねじを上向きに乗り越え難い位置にあるねじ片である非特定ねじ片』として特定するのか、理解できない。 したがって、本件発明1~4は、発明の詳細な説明において当業者が実施できる程度に記載したものとはいえない。」と概略主張している。 2 判断 本件特許明細書には、以下の事項が記載されている。 「例えば、キャップを滅菌水(無菌水)で冷却する冷却方式がとられる場合、特にフック56が環状突起M2を乗り越えるときの乗り越えトルクが比較的大きいキャップでは、そのキャッピング時に、一部のねじ片57が雄ねじM1を上向きに乗り越えてしまう閉栓不良(所謂ルーズキャップ)を生じることがある」(【0006】) 「上記閉栓不良につき本発明者らが分析したところ、雄ねじM1を上向きに乗り越えた複数のねじ片57は周方向に連続して並んでいたのであり、このことから、キャッピング時にフック56が環状突起M2を下向きに乗り越えようとする際、雄ねじM1を上向きに乗り越え易い位置にあるねじ片57と、上向きに乗り越え難い位置にあるねじ片57とがあることが分かった。」(【0017】) これらの記載によると、キャッピング時に、「雄ねじを上向きに乗り越え易い位置にあるねじ片である特定ねじ片」及び「雄ねじを上向きに乗り越え難い位置にあるねじ片である非特定ねじ片」が特定されること分かるといえる。 また、キャップの形状や容器口部の形状が変わると、「特定ねじ片」及び「非特定ねじ片」の位置は変わり得るものの、実験ないし試験をある程度繰り返し遂行し試行錯誤を重ねることで、「特定ねじ片」及び「非特定ねじ片」の位置を特定することができることは理解できるから、本件発明1~4は、発明の詳細な説明において当業者が実施できる程度に記載されている。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に、本件請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700240

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