特許異議申立
2023-700098
冷凍ミートソース
- 審判番号
- 2023-700098
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-534594
- 登録番号
- 7110201
- 請求日
- 2023年02月01日
- 審決日
- 2023年03月27日
- 公報発行日
- 2023年04月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社日清製粉ウェルナ
- 【権利者代理人】弁理士法人翔和国際特許事務所
- 【異議申立人】滝澤 榮夫
- 審判長/審判官
- 審判長 平塚 政宏
- 審判官 三上 晶子
- 審判官 植前 充司
- 分類
- P1651.113-Y (A23L) / P1651.121-Y (A23L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7110201号発明「冷凍ミートソース」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7110201号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7110201号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)8月3日(優先権主張 平成29年8月3日)を国際出願日とする出願であって、令和4年7月22日にその特許権の設定登録(請求項の数4)がされ、同年8月1日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許に対して、令和5年2月1日に特許異議申立人 滝澤 榮夫(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし4)がされた。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし4に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、これらをまとめて「本件特許発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
ミートソースとスパイスとの混合物の冷凍物を含み、該混合物が、シナモン及びクミンの両方を含有し、該混合物におけるシナモンとクミンとの含有質量比が、シナモン:クミンとして、2:1~1:1である冷凍ミートソース。
【請求項2】
前記混合物における前記スパイスの1種あたりの含有量が、前記ミートソース100質量部に対して0.001~0.1質量部である請求項1に記載の冷凍ミートソース。
【請求項3】
前記ミートソースは、ひき肉、香味野菜、トマト及び水を含有し、
前記ひき肉の含有量が5~40質量%、前記香味野菜の含有量が3~40質量%、前記トマトの含有量が5~40質量%である請求項1又は2に記載の冷凍ミートソース。
【請求項4】
前記ミートソースは、前記ひき肉として、牛肉のひき肉を含有する請求項3に記載の冷凍ミートソース。」
第3 特許異議の申立ての理由の概要
令和5年2月1日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要は以下のとおりである。
1 申立理由1(甲第5号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1、3ないし4に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、甲第5号証に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由2-1(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
・本件明細書[0021]~[0029]の官能評価試験で使用されているミートソースが不明であるため、本件特許発明の効果を確認できない。
・本件明細書の官能評価試験では、異なる評価対象である「コク」と「油っぽさ」を一つにまとめて評価しているため、該官能評価試験の評価基準自体が、評価に迷うものである上、該評価基準において「油っぽさが無く」「濃厚なコクがある」とすることは、油脂がコクに関連し、油脂が多ければコクを感じ、多すぎれば油っぽさを感じることと矛盾している。したがって、本件明細書の実験は、全体的に信頼性を欠くものである。
3 申立理由2-2(サポート要件)
本件特許の請求項1、3ないし4に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
・クミンやシナモンの量が課題の解決に重要な役割を果たすことは、言うまでもないことであるが、本件特許発明1、3及び4は、クミンとシナモンの添加量の限定が無く、課題が解決できると認識できない添加量の範囲を含む。
4 申立理由3(実施可能要件)
本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
・本件明細書[0021]~[0029]の官能評価試験で使用されているミートソースが不明であるため、該試験の再現実験ができない。
・本件明細書の官能評価試験では、異なる評価対象である「コク」と「油っぽさ」を一つにまとめて評価しているため、該官能評価試験の評価基準自体が、評価に迷うものである上、該評価基準において「油っぽさが無く」「濃厚なコクがある」とすることは、油脂がコクに関連し、油脂が多ければコクを感じ、多すぎれば油っぽさを感じることと矛盾している。したがって、本件明細書の実験は、全体的に信頼性を欠くものである。したがって、該試験の再現実験を行う際にパネラーに評価の基準を正しく伝えることができず、再現実験を行うことができない。
・クミンやシナモンの量が課題の解決に重要な役割を果たすことは、言うまでもないことであるが、本件特許発明1、3及び4は、クミンとシナモンの添加量の限定が無く、課題解決されたものを作ることができない添加量の範囲が包含される。
4 証拠方法
1 甲第1号証:カロリーノート、「マ・マー深味ミートソースのカロリーと栄養[日清フーズ]」、2018.03.10、URL: https://calorie-note.club/nisshin-mamah-fukaaji-meat-sauce
2 甲第2号証:クミタス、「商品名 青の洞窟 ボロネーゼ140g メーカー 日清フーズ」、商品情報最終更新日:2021年11月14日、URL: https://www.kumitasu.com/products/detail/15609/
3 甲第3号証:クミタス、「商品名:マ・マー ミートソース290g メーカー 日清フーズ」、商品情報最終更新日:2016年3月16日、URL: https://www.kumitasu.com/products/detail/80298/
4 甲第4号証:山本 隆、「おいしさとコクの科学」、日本調理科学会誌,Vol.43, No.6,2010,pp.327~332
5 甲第5号証:cookpad、「シンシナティ チリ スパゲティー」、クックパッドレシピ ID: 2574590 公開日;14/04/06 更新日:14/05/01(2014年5月1日)、URL: https://cookpad.com/recipe/2574590
6 甲第6号証:ハウス食品株式会社、「ギャバン12gシナモンスティック(カシア)」、インターネットアーカイブ、2016.06.04収録、URL: https://housefoods.jp/products/catalog/cd_l%2C082737.html
7 甲第7号証:Ameba オフィシャルブロガー ニックネーム 料理研究家ヤミー、アメブロ、「手作りカレー粉で飛び切りおいしい! カルダモンが香る♪ チキンカレー。」、2010.03.24、URL: https://ameblo.jp/3stepcooking/entry-10489848459.html
8 甲第8号証:TrustCellar、 「有機 JAS シナモンパウダー100g」、発行日不明、URL: https://trustcellar.com/products/8811
9 甲第9号証:cookpad、 「ケチャ・シナモンでコク旨ドレッシング♪」、クックパッドレシピ、レシピ ID:3052171 公開日:15/03/07(2015年3月7日): 更新日:15/03/07(2015年3月7日)、URL: https://cookpad.com/recipe/3052171
10 甲第10号証:ハーブとスパイスの雑学・レシピ、「カレーに必須、クミン。シードやパウダーの使い方と効果効能。栽培方法」、インターネットアーカイブ、2017.05.25収録、URL: https://web.archive.org/web/20170525184406/http://herb-spice.net/cumin
11 甲第11号証:goo ブログ、こころの染織、「クミンシードにハマってる~」、2012.05.26、URL: https://blog.goo.ne.jp/aonoie5589/e/b57c6ea7cOf4de168269d02d8ald223c
12 甲第12号証:美的.com、『意外と知らない、クミンの嬉しい「4つの効能」痩せ効果を高めるレシピも!』、2021.06.29、URL: https://www.biteki.com/life-style/food-recipe/538782
13 甲第13号証:CUMIN HOUSE,「ランチメニュー」、公開日不明、URL: https://www.cuminhouse.com/
14 甲第14号証:かわしま屋 Food for Well-being 編集部、「クミンの効能と使い方。カレー以外に活用できるレシピは?」、2018.12.03、URL: https://kawashima-ya.jp/contents/?p=16498
15 甲第15号証:特公平4-80663号公報
16 甲第16号証:Barilla,RECIPES レシピ、 「CHICKEN MOLE CASARECCE チキンモーレ カサレッチェ」、インターネットアーカイブ、2016.7.08収録、URL: https://web.archive.org/web/20160708053947/https://barilla.co.jp/recipes/recipe01_05.html
17 甲第17号証:Ameba,まんまる えがお キッチン、「スパイスを楽しもう会 後編 「ドライカレーのおにぎらず」☆スパイス大使☆」、2014.11.09、URL: https://ameblo.jp/mammaru-egao/entry-11949628734.html
18 甲第18号証:KANTO EXPRESS、関東食糧株式会社コーポレートサイト、「シナモンセイロンスティック シール巻(カップ)20本入」、公知日不明、URL: https://www.kanto-syokuryo.jp/shop/g/g01401106/
19 甲第19号証:Hatena Blog、yachikusakusaki's blog,『カレーに使われる基本スパイス:NHK「趣味どっき! カレーの世界」から、まとめてみました。 +スパイスの花と植物分類 カレー[5]』、2017.07.16、URL: https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2017/07/16/034445
20 甲第20号証:筋肉料理人 藤吉和男、 「柔らかスパイシー!鶏肉のクミンシード焼き」、2016.11.25、URL: http://dt125kazuo.blog22.fc2.com/blog-entry-3796.html
(以下、順に「甲1」のようにいう。)
証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。
第4 当審の判断
当審は、以下に述べるように、上記申立理由1ないし3にはいずれも理由がないと判断する。
1 申立理由1(甲5に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲5に記載された事項等
ア 甲5に記載された事項
甲5には、おおむね次の事項が記載されている。
・「
[図:0001396342000001.jpg]
[図:0001396342000002.jpg]
[図:0001396342000003.jpg]
」(第1~2頁)
イ 甲5に記載された発明
甲5に記載された事項を、「作り方」の1、2及び3の「塩こしょうで味を整えてできあがりです。」に記載の手順で作られるスパゲティーソースに関して整理すると、甲5には次の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されていると認める。
<甲5発明>
「以下の材料から作られるスパゲティーソース。
材料(4人分)
ベジミート ひき肉タイプ 300g
にんにく(みじん切り) 2片分
玉ねぎ(みじん切り) 2個分
ピーマン(みじん切り) 2個分
シナモン 小さじ1
パプリカ 小さじ1
クミンパウダー 小さじ1/2
チリパウダー 小さじ1/2
オールスパイス 小さじ1/4
マジョラム 小さじ1/4
ナツメグ ひとつまみ
しお 小さじ1/2
こしょう 少々
トマト水煮缶 1缶
トマトソース缶 小1缶」
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲5発明とを対比する。
甲5発明のスパゲティーソースは「ベジミート ひき肉タイプ」を含むから、甲5発明の「スパゲティーソース」は本件特許発明1の「ミートソース」との特定事項を満たす。
甲5発明は「シナモン」を「小さじ1」、「クミンパウダー」を「小さじ1/2」含むものであるから、甲5発明のスパゲティーソースは、本件特許発明1の「ミートソースとスパイスとの混合」に相当するものであって、かつ、「該混合物が、シナモン及びクミンの両方を含有し、該混合物におけるシナモンとクミンとの含有質量比が、シナモン:クミンとして、2:1~1:1である」との特定事項を満たす。
してみると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ミートソースとスパイスとの混合物を含み、該混合物が、シナモン及びクミンの両方を含有し、該混合物におけるシナモンとクミンとの含有質量比が、シナモン:クミンとして、2:1~1:1であるミートソース。」
そして、両者は、次の点で相違する。
<相違点>
本件特許発明1のミートソースは「冷凍」されているのに対し、甲5発明は冷凍されているものであるかが不明である点。
イ 判断
上記相違点について検討する。
甲5の記載及び他の証拠を見ても、甲5発明が相違点に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものではない。
したがって、相違点は実質的な相違点である。
してみると、本件特許発明1は甲5発明であるとはいえない。
また、本件特許発明1は、冷凍ミートソースにおいてシナモンとクミンとの含有質量比を、シナモン:クミンとして、2:1~1:1とすることで、冷凍ミートソースを、喫食可能な状態で油っぽさが無く、且つ肉の旨味が濃厚でコクが十分にあるものとするものであるが、かかる事項は、甲5及び他の何れの証拠にも、記載も示唆もされていない。
したがって、本件特許発明1は、甲5発明並びに甲5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2)本件特許発明2ないし4について
本件特許発明2ないし4は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
したがって、本件特許発明3ないし4は、本件特許発明1と同様に、甲5発明であるとはいえない。
また、本件特許発明2ないし4は、本件特許発明1と同様に、甲5発明並びに甲5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)申立理由1についてのまとめ
上記のとおりであるから、申立理由1は、その理由がない。
2 申立理由2(サポート要件)について
(1)判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
これを踏まえ、以下検討する。
(2)判断
本件特許の発明の詳細な説明(以下、「詳細な説明」という。)の【0006】によると、本件特許発明の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、「喫食可能な状態で油っぽさが無く、且つ肉の旨味が濃厚でコクが十分にあるミートソースを提供する」ことである。
そして、詳細な説明の【0009】に、「冷凍ミートソースにシナモン及び/又はクミンを含有させることで、該冷凍ミートソースを解凍して喫食可能状態となったスパイス入りミートソースは、従来のミートソースに比して油っぽさが低減されており、しかも肉の旨味が濃厚で十分なコクがあるものとなる。シナモンは従来、アップルパイやシナモンロールなどの洋菓子、カプチーノや紅茶などの飲料に多用され、カレーソースなどにも使用される。またクミンは、インド風カレーを作る際の主要スパイスである。このような、菓子やカレー料理などに従来多用されているスパイスが、冷凍ミートソースの解凍物において油っぽさを低減すると共に、肉の濃厚な旨味を引き出してコクを増す効果を奏することは従来知られていない。」との記載があり、【0012】に「特に、前記混合物(スパイス入りミートソース)にシナモン及びクミンの両方を含有させると、それぞれの効果が合わさって相乗的に作用し、冷凍ミートソースを解凍して得られるスパイス入りミートソースが、バランスのとれたコクのあるものとなるため好ましい。シナモン及びクミンを併用する場合の前記混合物における両スパイスの含有質量比は、シナモン:クミンとして、好ましくは10:1~1:10、さらに好ましくは2:1~1:2である。」との記載があり、さらに、具体的な実施例及び比較例の結果の記載もある。ここで、比較例1ないし6がシナモンやクミンを含有しないことは、詳細な説明の【0025】の「表1に示す通り、各実施例は、シナモン及びクミンから選択される1種以上の特定スパイスを含有することに起因して、この特定スパイスを含有しない各比較例に比して、ソース風味に優れていた。」との記載からみて明らかである(下線は説明のために付した)。
そうすると、当業者は、ミートソースとスパイスとの混合物の冷凍物を含み、該混合物が、シナモン及びクミンの両方を、シナモン:クミンとして、2:1~1:1で含有する冷凍ミートソースとの事項を満たすことにより、喫食可能な状態で油っぽさが無く、且つ肉の旨味が濃厚でコクが十分にあるミートソースを提供するという効果が定性的に発揮される、すなわち、発明の課題を解決できると認識する。
そして、本件特許発明は、上記の発明の課題を解決できる特定事項を全て含むものである。
したがって、本件特許発明は、詳細な説明に記載された発明で、詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
(3)特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、上記第3 2及び3に記載のとおり主張し、本件特許発明がサポート要件違反であるとしている。
以下、当該主張について検討する。
ア 第3 2の主張について
サポート要件については上記(2)のとおりに判断されるのであり、特許異議申立人の第3 2の主張はいずれも上記判断に影響しない。
イ 第3 3の主張について
上記(2)で述べたように、当業者が発明の課題を解決できると認識できるものは、「ミートソースとスパイスとの混合物の冷凍物を含み、該混合物が、シナモン及びクミンの両方を含有し、該混合物におけるシナモンとクミンとの含有質量比が、シナモン:クミンとして、2:1~1:1である」である。
そして、申立人は、「シナモンとクミンとの含有質量比が、シナモン:クミンとして、2:1~1:1」であっても、クミンやシナモンの量によっては油っぽさの低減効果やコクの増強効果が発揮されず課題を解決できない旨主張するものの、当該主張を裏付ける具体的な証拠を示していない。
したがって、特許異議申立人の上記主張を採用することはできない。
(4)申立理由2についてのまとめ
上記のとおりであるから、申立理由2は、その理由がない。
3 申立理由3(実施可能要件)について
(1)判断基準
本件特許発明1ないし4は、上記第2のとおり、「物」の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。
(2)判断
詳細な説明には、本件特許発明1ないし4の各発明特定事項に関し、【0010】~【0012】には、シナモン及びクミンの含有質量比及び含有量が記載され、【0013】~【0014】には、ひき肉、香味野菜、トマトの含有量、及び、ひき肉として牛肉のひき肉を使用することが好ましいことが記載され、【0016】~【0018】には、本発明の冷凍ミートソースの一般的な製造手順が記載されている。
そして、詳細な説明の【0021】~【0029】には、牛肉のひき肉、香味野菜、トマト及び水を含む市販のミートソースを基本ソースとし、この基本ソースにシナモン及びクミンを加えて加熱してミートソースを製造し、製造したミートソースを冷凍して、シナモン及びクミンを、シナモンとクミンとの含有質量比が、シナモン:クミンとして、2:1~1:1であるように調整した具体的な実施例の記載もある。
してみれば、本件特許発明1ないし4は、上記(1)に掲げる実施可能要件における判断基準を充足するものといえる。
(3)特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、上記第3 4に記載のとおり主張し、本件特許発明が実施可能要件違反であるとしている。
しかしながら、実施可能要件については、上記(2)のとおりに判断されるのであり、当該特許異議申立人の主張はいずれも上記判断に影響しない。
(4)申立理由3についてのまとめ
上記のとおりであるから、申立理由3は、その理由がない。
第5 むすび
したがって、特許異議申立人の主張する申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700098