特許無効審判
2024-800043
圧延装置
- 審判番号
- 2024-800043
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2021-529780
- 登録番号
- 7189346
- 請求日
- 2024年03月22日
- 審決日
- 2025年02月20日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】Primetals Technologies Japan 株式会社
- 【請求人代理人】SSIP弁理士法人
- 【被請求人】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
- 【被請求人代理人】江崎 光史
- 【被請求人代理人】鍛冶澤 實
- 【被請求人代理人】上西 克礼
- 【被請求人代理人】中村 真介
- 【被請求人代理人】石田 大成
- 【被請求人代理人】高原 昭典
- 審判長/審判官
- 審判長 刈間 宏信
- 審判官 堀内 亮吾
- 審判官 鈴木 貴雄
- 分類
- P1113.113-YAA(B21B) / P1113.121-YAA(B21B) / P1113.537-YAA(B21B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第134条の2第9項、特許法第134条の2第1項、特許法第36条第6項第2号、特許法第134条の2第3項、特許法第123条第1項第2号、特許法第29条第1項、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第7189346号発明「圧延装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第7189346号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨
1 請求の趣旨
「特許第7189346号の特許請求の範囲の請求項1乃至10に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求める。
2 答弁の趣旨
答弁書の記載から、次を結論とする審決を求めるものといえる。
(1)訂正を認める。
(2)本件審判の請求は成り立たない。
(3)審判費用は請求人の負担とする。
第2 手続の経緯 本件特許の手続の経緯は、概略、以下のとおりである。1 本件特許の出願から設定登録までの経緯
本件特許無効審判の請求に係る特許第7189346号(以下「本件特許」という。)の請求項1~10に係る発明についての、出願から設定登録までの手続の経緯の概略は、次のとおりである。
2019年(令和元年)12月 2日:国際出願(PCT/EP2019/083214、パリ優先権主張 外国庁受理 :2019年(平成31年)1月2日 ドイツ連邦共和国(DE))
令和 3年 5月26日 :国内書面の提出(特願2021-529780)
令和 4年10月28日付け :特許査定
令和 4年12月5日 :設定登録
2 本件特許無効審判の手続の経緯
本件特許無効審判における手続の経緯の概略は、以下のとおりである。
令和 6年 3月22日 :審判請求書の提出
同年 8月 2日 :答弁書、訂正請求書の提出
同年10月 7日 :弁駁書の提出
同年11月 5日付け:書面審理通知(職権)
前記弁駁書によれば、前記訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲に記載の訂正後の請求項1~10に対する、前記審判請求書にて主張した全ての無効理由について、請求人が争わないことが明らかとなったため、職権により書面審理によるものとした。
第3 訂正請求について
1 訂正請求の趣旨
「特許第7189346号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~10について訂正する」ことを求める。
2 訂正の内容
(1)本件訂正前後の特許請求の範囲の記載
令和6年8月2日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、特許掲載公報に記載された次のアの特許請求の範囲の記載を、前記訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲に記載された次のイに訂正するものである。
ア 本件訂正前の特許請求の範囲
【請求項1】
圧延装置(100)であって、この圧延装置が、
台架(102)と、
前記台架(102)にチョックを用いて装着されており且つ互いに相対的に軸線方向に移動可能である、少なくとも2つのロール(104-105)と、および、
前記ロール(104-105)の内の少なくとも1つのロールのチョックに所属して設けられており、且つ、このチョックに対して作用可能である、少なくとも1つの軸線方向移動装置(108)とを備えており、
前記軸線方向移動装置(108)が、
固定ブロック(110)と、
少なくとも1つの移動可能な曲げブロック(112、113)と、および、
前記曲げブロック(112、113)に所属して設けられた、少なくとも1つの移動シリンダー(114)とを有しており、
この移動シリンダー(114)によって、前記曲げブロックが、前記固定ブロック(110)に対して相対的に移動可能である、
様式の上記圧延装置において、
前記固定ブロック(110)が、
複数の部材から成るように形成されており、且つ、
中央の移動コンソール(116)、および、この移動コンソールから分離された別個の2つの保持条片(117、118)を有しており、
これら保持条片が、前記移動コンソール(116)に対して隣接して、それぞれに、この移動コンソールの上側および下側に配置されており、且つ、前記台架(102)の圧延ロールスタンドに組み付けられており、
中央の前記移動コンソール(116)が、個別部材として形成されている、
ことを特徴とする圧延装置(100)。
【請求項2】
中央の前記移動コンソール(116)は、鍛造部材の様式で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧延装置(100)。
【請求項3】
中央の前記移動コンソール(116)は、鍛造されたロッド材料から製造されていることを特徴とする請求項2に記載の圧延装置(100)。
【請求項4】
前記保持条片(117、118)は、それぞれに、単一部材として、薄板から製造されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の圧延装置(100)。
【請求項5】
前記保持条片(117、118)は、前記台架(102)のスタンドの横ビーム(103)に組み付けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の圧延装置(100)。
【請求項6】
前記軸線方向移動装置(108)は、上側の曲げブロック(112)と下側の曲げブロック(113)とを有しており、
これら両方の曲げブロック(112、113)が、それぞれに、前記移動コンソール(116)と、前記上側の保持条片もしくは前記下側の保持条片(117、118)との間に配置されていること、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の圧延装置(100)。
【請求項7】
前記上側の曲げブロック(112)と前記下側の曲げブロック(113)とに、それぞれに、1つの移動シリンダー(114)が所属して設けられていることを特徴とする請求項6に記載の圧延装置(100)。
【請求項8】
曲げブロック(112、113)の外側で、この曲げブロックに対して所属して設けられた前記移動シリンダー(114)が、前記固定ブロック(110)と結合された端面プレート(120)に、フランジを介して接合されており、
前記移動シリンダー(114)のピストンロッド(115)が、このピストンロッドの端面側でもって、強固に前記曲げブロック(112、113)と結合されていることを特徴とする請求項1または請求項1から7のいずれか一つに記載の圧延装置(100)。
【請求項9】
前記移動シリンダー(114)は、液圧油の様式の作動媒体の供給のために、不動の管敷設を備えていることを特徴とする請求項8に記載の圧延装置(100)。
【請求項10】
曲げブロック(112、113)、および、この曲げブロックに所属して設けられた前記移動シリンダー(114)は、モジュール式に構成されており、且つ、それぞれに、固有の構造ユニットとして形成されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一つに記載の圧延装置(100)。
イ 本件訂正後の特許請求の範囲(下線は、訂正箇所を示すため、被請求人が付したものである。第3欄において以下同様。)
【請求項1】
圧延装置(100)であって、この圧延装置が、
台架(102)と、
前記台架(102)にチョックを用いて装着されており且つ互いに相対的に軸線方向に移動可能である、少なくとも2つのロール(104-105)と、および、
前記ロール(104-105)の内の少なくとも1つのロールのチョックに所属して設けられており、且つ、このチョックに対して作用可能である、少なくとも1つの軸線方向移動装置(108)とを備えており、
前記軸線方向移動装置(108)が、
固定ブロック(110)と、
少なくとも1つの移動可能な曲げブロック(112、113)と、および、
前記曲げブロック(112、113)に所属して設けられた、少なくとも1つの移動シリンダー(114)とを有しており、
この移動シリンダー(114)によって、前記曲げブロックが、前記固定ブロック(110)に対して相対的に移動可能である、
様式の上記圧延装置において、
前記固定ブロック(110)が、
複数の部材から成るように形成されており、且つ、
曲げブロックの保持及び案内のための中央の移動コンソール(116)、および、この移動コンソールから分離された、曲げブロックの保持機能を引き受けるだけの別個の2つの保持条片(117、118)を有しており、
これら保持条片が、前記移動コンソール(116)に対して隣接して、それぞれに、この移動コンソールの上側および下側に配置されており、且つ、前記台架(102)の圧延ロールスタンドに組み付けられており、
中央の前記移動コンソール(116)が、個別部材として形成されている、
ことを特徴とする圧延装置(100)。
【請求項2】
中央の前記移動コンソール(116)は、鍛造部材の様式で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧延装置(100)。
【請求項3】
中央の前記移動コンソール(116)は、鍛造されたロッド材料から製造されていることを特徴とする請求項2に記載の圧延装置(100)。
【請求項4】
前記保持条片(117、118)は、それぞれに、単一部材として、薄板から製造されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の圧延装置(100)。
【請求項5】
前記保持条片(117、118)は、前記台架(102)のスタンドの横ビーム(103)に組み付けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の圧延装置(100)。
【請求項6】
前記軸線方向移動装置(108)は、上側の曲げブロック(112)と下側の曲げブロック(113)とを有しており、
これら両方の曲げブロック(112、113)が、それぞれに、前記移動コンソール(116)と、前記上側の保持条片もしくは前記下側の保持条片(117、118)との間に配置されていること、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の圧延装置(100)。
【請求項7】
前記上側の曲げブロック(112)と前記下側の曲げブロック(113)とに、それぞれに、1つの移動シリンダー(114)が所属して設けられていることを特徴とする請求項6に記載の圧延装置(100)。
【請求項8】
曲げブロック(112、113)の外側で、この曲げブロックに対して所属して設けられた前記移動シリンダー(114)が、前記固定ブロック(110)と結合された端面プレート(120)に、フランジを介して接合されており、
前記移動シリンダー(114)のピストンロッド(115)が、このピストンロッドの端面側でもって、強固に前記曲げブロック(112、113)と結合されていることを特徴とする請求項1または請求項1から7のいずれか一つに記載の圧延装置(100)。
【請求項9】
前記移動シリンダー(114)は、液圧油の様式の作動媒体の供給のために、不動の管敷設を備えていることを特徴とする請求項8に記載の圧延装置(100)。
【請求項10】
曲げブロック(112、113)、および、この曲げブロックに所属して設けられた前記移動シリンダー(114)は、モジュール式に構成されており、且つ、それぞれに、固有の構造ユニットとして形成されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一つに記載の圧延装置(100)。
(2) 本件訂正の内容
特許請求の範囲の請求項1に
「固定ブロック(110)が、複数の部材から成るように形成されており、且つ、中央の移動コンソール(116)、および、この移動コンソールから分離された別個の2つの保持条片(117、118)を有しており、」と記載されているのを、
「固定ブロック(110)が、複数の部材から成るように形成されており、且つ、曲げブロックの保持および案内のための中央の移動コンソール(116)、および、この移動コンソールから分離された、曲げブロックの保持機能を引き受けるだけの別個の2つの保持条片(117、118)を有しており、」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2~10も同様に訂正するものである)
(3) 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~10について、請求項2~10がそれぞれ請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあって、本件訂正によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、本件訂正は、特許法第134条の2第3項に規定する一群の請求項である請求項〔1~10〕について請求をするものである。
(4)独立特許要件について
本件特許無効審判の請求は、全ての請求項を対象としているので、本件訂正に関して、特許法第134条の2第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 訂正の適否についての判断
(1)訂正の目的
訂正前の請求項1に係る特許発明は、「固定ブロック(110)が、複数の部材から成るように形成されており、且つ、中央の移動コンソール(116)、および、この移動コンソールから分離された別個の2つの保持条片(117、118)を有して」と特定している。
これに対して、訂正後の請求項1は、「固定ブロック(110)が、複数の部材から成るように形成されており、且つ、曲げブロックの保持および案内のための中央の移動コンソール(116)、および、この移動コンソールから分離された、曲げブロックの保持機能を引き受けるだけの別個の2つの保持条片(117、118)を有して」との記載により、訂正後の請求項1に係る発明における「中央の移動コンソール(116)」について「曲げブロックの保持および案内のための」ものであることを特定し限定するとともに、「保持条片(117、118)」について「曲げブロックの保持機能を引き受けるだけの」ものであることを特定し、更に限定するものである。すなわち、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に、訂正後の請求項2~10は、訂正後の請求項1の記載を引用することにより、訂正後の請求項2~10に係る発明における「中央の移動コンソール(116)」と「保持条片(117、118)」が担う機能を具体的に特定し、更に限定するものであるため、その訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2)本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であること
本件訂正は、明細書の【0011】に「中央の移動コンソール(116)」と「保持条片(117、118)」が担う機能について、「移動可能な曲げブロックの案内および収容のために利用される…(略)…中央部材」、「固定ブロックが、-中央部材として-曲げブロックの保持および案内のために必要な特性を有する中央の移動コンソールを有する」、「保持条片が、-この保持条片の名称に相応して-ただ曲げブロックの保持機能を引き受けるだけである」と記載されていることから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
本件訂正は、訂正前の請求項1の記載を引用する訂正前の請求項2~10の記載についても実質的に訂正するものであるが、訂正後の請求項1で特定する事項と、訂正後の請求項2~10で特定する事項との関係を考慮して検討すると、訂正後の請求項2~10で特定する事項は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、本件訂正は、訂正後の請求項2~10との関係においても、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではないこと
上記(1)から明らかなように、本件訂正は、「中央の移動コンソール(116)」と「保持条片(117、118)」が担う機能を具体的に特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
本件訂正は、訂正前の請求項1の記載を引用する訂正前の請求項2~10の記載についても実質的に訂正するものであるが、訂正後の請求項1で特定する事項と、訂正後の請求項2~10で特定する事項との関係を考慮して検討すると、訂正後の請求項2~10で特定する事項は、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。
したがって、本件訂正は、訂正後の請求項2~10との関係においても、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。
(4)請求人の主張について
請求人は、弁駁書において「令和6年8月2日付訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲に記載の訂正後の請求項1~10について、新規性(特許法第29条第1項第3号)、進歩性(特許法第29条第2項)及び明確性(特許法第36条第6項第2号)にかかる無効理由(特許法第123条第1項第2号及び第4号)を主張しない。
請求人は、令和6年8月2日付訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲に記載の訂正後の請求項1~10について、以後、弁駁しない。」としており、訂正要件について争っていない。
4 訂正請求についてのむすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、本件訂正を認める。
第4 本件発明
前記第3のとおり本件訂正の請求による請求項1~10についての訂正は認められるから、本件特許の請求項1~10に係る発明(以下、各請求項に係る発明を「本件発明1」などという)は、それぞれ、訂正特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項(上記第3の2(1)イを参照。)により特定されるとおりのものである。
第5 請求人の主張及び証拠方法
1 請求人の主張の概要
審判請求書における、訂正前の請求項1~10に係る発明(以下「訂正前発明1」等という。)に対する無効理由についての主張は下記のとおり。
なお、本件特許の請求項1~10に係る発明(本件発明1~10)に対しては、新規性、進歩性及び明確性に係る全ての無効理由を主張していない(前記第3の3(4)に示した弁駁書における主張を参照。)。
(1)無効理由1(甲1発明に基づく新規性及び進歩性の欠如)
ア 無効理由1-1(甲1発明に基づく新規性の欠如)
訂正前発明1、4~7及び10は、甲第1号証(下記2を参照。甲号証については以下同様。)に記載されたものであるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである(審判請求書第56~60ページ)。
特に、訂正前発明1と甲1に記載された発明(以下、第5及び第6において「甲1発明」という。)の発明特定事項(構成要素)の間の相当関係について、甲1発明における「ハウジング(12)」、「操作側固定ブロック(1)」及び「(2つの)押さえ板(13)」は、訂正前発明1の「台架(102)」、「中央の移動コンソール(116)」及び「2つの保持条片(117、118)」にそれぞれ相当し、甲1発明における「操作側固定ブロック(1)」及び「(2つの)押さえ板(13)」の組合せは、訂正前発明1の「固定ブロック(110)」に相当する(審判請求書第56ページ)ものであり、甲1発明において、「これら押さえ板(13)が、…それぞれ、操作側固定ブロック(1)の上部および下部に取り付けられ…」(構成1f)ていることから、一対の押さえ板(13)は、それぞれ、操作側固定ブロック(1)のうち上側部分及び下側部分に対応して配置されている点で、訂正前発明1における「これら保持条片が、…それぞれに、この移動コンソールの上側および下側に配置されて…」(構成F)いるとの発明特定事項と一致する(審判請求書第57ページ)。
イ 無効理由1-2(甲1発明に基づく進歩性の欠如)
訂正前発明1は、甲1発明に基づいて、あるいは甲1発明に甲第3号証に記載された技術事項を適用することで、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり(審判請求書第66~69ページ)、訂正前発明2~10についても、甲1発明及び例えば甲第2号証、甲第3号証又は甲第4号証に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易になし得たものである(審判請求書第73~78ページ)から、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
具体的には下記の(ア)~(ウ)のとおりである。
(ア) 保持条片が、移動コンソールに対して隣接して、移動コンソールの上側及び下側に配置されているとの相違点について、甲1発明から容易である
甲1発明の押さえ板(13)が、甲1発明の操作側固定ブロック(1)の「上部および下部」に対応して設けられ、且つ、甲1発明のハウジング(12)に直接的に組付けられるものではない点で、訂正前発明1における「これら保持条片が、前記移動コンソール(116)に対して隣接して、それぞれに、この移動コンソールの上側および下側に配置されており、且つ、前記台架(102)の圧延ロールスタンドに組み付けられて」(構成F)との「保持条片」の配置と相違し(審判請求書第64~65ページ、以下「<相違点>」という。)、その<相違点>は、操作側固定ブロック(1)及び2つの押さえ板(13)から成る複数の部材(1、13)の分割位置が訂正前発明1の固定ブロックの複数の部材(116、117、118)の分割位置と相違することに起因するものであり、訂正前発明1では、「これら保持条片が、前記移動コンソール(116)に対して隣接して、それぞれに、この移動コンソールの上側および下側に配置されており、且つ、前記台架(102)の圧延ロールスタンドに組み付けられて」(構成F)いるのに対し、甲1発明では、押さえ板(13)が、移動ブロック(3、14)の「上側および下側」に配置されておらず、圧延機のハウジング(12)に直接的に組付けられていないというものである(審判請求書第67ページ)ことに帰結するところ、甲1発明から出発した当業者が、コストや要求品質等の設計上の制約を満たすように、圧延機のハウジング(12)の窓や移動ブロック(3、14)等の周辺の他の部材の形状を考慮して、操作側固定ブロック(1)及び押さえ板(13)の各部品の適切な形状および大きさを選択し、操作側固定ブロック(1)及び2つの押さえ板(13)から成る複数の部材(1、13)の分割位置を変更する(水平方向に沿った分割線にて押さえ板(13)と操作側固定ブロック(1)とを分割する)ことで、「これら保持条片が、前記移動コンソール(116)に対して隣接して、それぞれに、この移動コンソールの上側および下側に配置され…」たとの訂正前発明1の構成を得ることは通常の創作能力の発揮に過ぎない。(審判請求書第68ページ)
訂正前発明1は、固定ブロックを、曲げブロックの保持及び案内のために必要な特性を有する中央の移動コンソールと、移動コンソールから分離して、曲げブロックの保持機能を引き受けるだけである上側及び下側の保持条片とで構成することで、移動コンソール及び両方の外側の保持条片により固定ブロックの3つの機能的領域を形成して、加工部材コストを低減する作用効果を享受するものである。(審判請求書第66ページ)
これに対して、甲1発明においても、操作側上移動ブロック(3)及び操作側下移動ブロック(14)の“保持及び案内のために必要な特性”を有する「中央の移動コンソール」としての機能を果たす操作側固定ブロック(1)と、“ただ移動ブロック(3、14)の保持機能を引き受けるだけ”の「保持条片」として機能する2つの押さえ板(13)と、によって3つの機能領域が実現されている。
したがって、訂正前発明1の上記作用効果は、甲1発明においても同様に享受できる程度のものに過ぎず、甲1発明から出発した当業者にとって予想を超える格別なものでもない。(審判請求書第66~67ページ)
(イ) 保持条片が台架の圧延ロールスタンドに組み付けられているとの相違点について、甲1発明から容易である
上述のように、甲1発明において、圧延機のハウジング(12)の窓や移動ブロック(3、14)等の周辺の他の部材の形状を考慮して分割位置が変更された押さえ板(13)(すなわち、水平方向の分割線に沿って操作側固定ブロック(1)から分割された押さえ板(13))を採用するに際して、押さえ板(13)をハウジング(12)に組み付けるようにし、訂正前発明1の「これら保持条片が、…前記台架(102)の圧延ロールスタンドに組み付けられ」た構成を得ることも通常の創作能力の発揮に過ぎない。(審判請求書第69ページ)
(ウ) 保持条片が台架の圧延ロールスタンドに組み付けられているとの相違点について、甲1発明と甲第3号証の技術的事項から容易である
甲第3号証に記載されるように、シフトブロック(12)をロール軸方向に移動可能に支持するプロジェクトブロック(17)が、ハウジング(5)の窓の最上部、最下部にそれぞれ配置された状態でハウジング(5)の窓に組付けられる、との技術事項は本件出願以前から当業者にとって周知であった。
そうすると、押さえ板(13)の上記分割位置の変更に伴い、押さえ板(13)の組付け構造を見直すのに際して、甲第3号証の技術事項を考慮し、押さえ板(13)をハウジング(12)の窓の最上部及び最下部にそれぞれ配置してハウジング(12)の窓に組み付けるようにして、訂正前発明1の「これら保持条片が、…前記台架(102)の圧延ロールスタンドに組み付けられ」た構成を得ることは通常の創作能力の発揮に過ぎない。(審判請求書第69ページ)
(2)無効理由2(甲2発明に基づく新規性及び進歩性の欠如)
ア 無効理由2-1(甲2発明に基づく新規性の欠如)
訂正前発明1及び4~7は、甲第2号証に記載されたものであるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである(審判請求書第61~64ページ)。
具体的には、下記の(ア)~(ウ)のとおりである。
(ア) 「保持条片」を認定するための、甲第2号証の図2から認められる構成に関して
甲第2号証の図2から、ブロック(3)の上部及び下部に、2つの板状の“固定部材”がブロック(3)に隣接するように設けられていることが看取される。(審判請求書第47ページ)。
(イ) 「保持条片が、…それぞれに、この移動コンソールの上側及び下側に配置されて」との構成を、甲第2号証から認定できる。
訂正前発明1と甲第2号証に記載された発明(以下、第5及び第6において「甲2発明」という。)の発明特定事項(構成要素)の間の相当関係について、甲2発明における「直立スタンド(1)」、「ブロック(3)」及び図2に示される上側及び下側の「“固定部材”」は、訂正前発明1の「台架(102)」、「中央の移動コンソール(116)」及び「2つの保持条片(117、118)」にそれぞれ相当し、甲2発明における「ブロック(3)」及び上側及び下側の「“固定部材”」を含む「静止部」は、訂正前発明1の「固定ブロック(110)」に相当する(審判請求書第61ページ)ものであり、甲2発明において、「2つの“固定部材”が、ブロック(3)のベース(7)に対して隣接して、それぞれ、ベース(7)の上部及び下部に当接して配置され…」(構成2f)ていることから、2つの“固定部材”は、それぞれ、ブロック(3)のベース(7)のうち上側部分及び下側部分に対応して配置されている点で、訂正前発明1における「これら保持条片が、…それぞれに、この移動コンソールの上側および下側に配置されて…」(構成F)いるとの発明特定事項と一致する。(審判請求書第62ページ)
(ウ) 保持条片が台架の圧延ロールスタンドに組み付けられているとの構成に関する構成が甲第2号証から認定できる。
甲2発明の構成2fを「2つの“固定部材”が、…ボルト(2)によってブロック(3)とともに直立スタンド(1)に固定され」(審判請求書第50ページ)と認定できる。
イ 無効理由2-2(甲2発明に基づく進歩性の欠如)
訂正前発明1は、甲2発明に基づいて、あるいは甲2発明に甲第3号証に記載された技術事項を適用することで、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり(審判請求書第70~72ページ)、訂正前発明2~10についても、甲2発明及び例えば甲第1号証、甲第3号証又は甲第4号証に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易になし得たものである(審判請求書第73~78ページ)から、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(3)無効理由3(明確性違反)
訂正前発明3~10は明確ではないから、特許法第36条第6項第2号の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
具体的には、請求項3に記載の「ロッド材」について、(i)「ロッド材料」は、軸方向に沿った寸法と、鉛直方向に沿った寸法とのアスペクト比が1に近いものであり、一般的なロッドの用語の範疇を超え、どのような材料を含むのか明確ではないし、(ii)「移動コンソール」が、「鍛造されたロッド材料」から製造されたのかが不明である。訂正前発明3を引用する訂正前発明4~10も同様に明確でない(審判請求書第78~79ページ)。
2 証拠方法
請求人は、証拠方法として、審判請求書に甲第1号証~甲第4号証を添付して提出した。
甲第1号証:中国実用新案第2719433号明細書及び甲第1号証訳文
甲第2号証:西独国特許出願公開第3331055号明細書及び甲第2号証訳文
甲第3号証:特許第4928653号公報
甲第4号証:宇和野晃三,星昌,“圧延機用大物鋳鍛鋼品について”,日立評論別冊第29号,日立評論社,昭和34年5月10日発行,P61-P65
(以下、甲第1号証等、甲第1号証訳文等を、「甲1」等、「甲1訳文」等という。)
第6 被請求人の主張の概要
被請求人は、本件訂正の請求をするとともに、答弁書において、以下の主張の概要のとおり、請求人が主張する無効理由は、いずれも成り立たない、と主張している。
(1)無効理由1(甲1発明に基づく新規性及び進歩性の欠如)
ア 無効理由1-1(甲1発明に基づく新規性の欠如)に対する主張(答弁書第14~17ページ)
(ア) 甲1発明は、保持条片が圧延ロールスタンドに組み付けられているとの構成及び保持条片が移動コンソールの上側及び下側に配置されているとの構成を有していない(答弁書第14~16ページ)
前記第5の1(1)アについて、本件発明1と甲1発明の相当関係の説明では、甲1発明の「押さえ板(13)」の「操作側固定ブロック(1)」に対する配置と、本件発明1の「保持条片」の「移動コンソール」に対する配置のみが対比され、甲1発明の「押さえ板(13)」の固定に関する事項と、本件発明1の「保持条片が…台架(102)の圧延ロールスタンドに組み付けられて」いる発明特定事項との対比が看過されている。
そこで、この点について検討するに、本件発明1では、「保持条片が、…前記台架(102)の圧延ロールスタンドに組み付けられて」いるのに対し、甲1発明では、甲1に「操作側上移動ブロック3および操作側下移動ブロック14はそれぞれ押さえ板13により操作側固定ブロック1に取り付けられ、押さえ板13は小孔およびボルトを締める形式で操作側固定ブロック1に固定される」(甲1訳文の段落【0008】)と記載されているように、「押さえ板(13)」は、「操作側固定ブロック(1)」に固定され、「ハウジング(12)」には固定されない。すると、甲1発明は、「保持条片」が「台架(102)の圧延ロールスタンドに組み付けられて」いる本件発明1とは、この点において相違する。
また、本件発明1は、「保持条片が、…移動コンソールの上側および下側に配置されて」いるのに対し、甲1発明では、「押さえ板(13)」が、「操作側固定ブロック(1)」の上端部分および下端部分の水平方向における横側に配置されているのであって、「操作側固定ブロック(1)」の垂直方向における上側及び下側に配置されているのではない。すると、甲1発明は、「押さえ板(13)」の「操作側固定ブロック(1)」に対する配置についても本件発明1と相違する。
結局、甲1発明の構成1fは、本件発明1の構成Fには一致せず、本件発明1と甲1発明とは、少なくともこの構成において相違する。
よって、本件発明1は、請求人が主張するように甲1に記載されたものではないから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであるということはできず、本件発明1に対して請求人が主張する無効理由1-1は、本件特許を無効にすべき根拠にならない。
(イ) 甲1発明は、訂正により明らかになった相違点に係る本件発明1の構成を有していない(答弁書第16~17ページ)
本件発明1は、「中央の移動コンソール(116)」が「曲げブロックの保持および案内」の機能を担う一方、「保持条片(117、118)」は、「曲げブロックの保持機能を引き受けるだけ」の構成とされている。
本件発明1では、「中央の移動コンソール(116)」が「曲げブロックの保持および案内」の際に「曲げブロック」から受ける負荷(「軸線方向移動装置」がチョックに対して作用するときに「曲げブロック」がチョックから受ける反作用による負荷)は、「移動コンソール」から分離された「保持条片」には及ばない一方、「保持条片(117、118)」が、「移動コンソールの上側および下側」において「曲げブロックの保持機能を引き受ける」ことにより受ける負荷は、そのまま「保持条片」が組み付けられた「台架(102)の圧延ロールスタンド」に伝わり、「移動コンソール」には及ばない。
これに対し、甲1発明は、「操作側上移動ブロック3および操作側下移動ブロック14はそれぞれ押さえ板13により操作側固定ブロック1に取り付けられ、押さえ板13は…操作側固定ブロック1に固定される」(甲1訳文の段落【0008】)から、「押さえ板13」が「操作側上移動ブロック3および操作側下移動ブロック14」を「操作側固定ブロック1」に取り付けることにより「押さえ板13」が「操作側上移動ブロック3および操作側下移動ブロック14」から受ける負荷は、そのまま「操作側固定ブロック1」に及ぶ。逆に、「操作側固定ブロック1」が「操作側上移動ブロック3および操作側下移動ブロック14」を保持し案内するときの負荷は、「操作側固定ブロック1」に固定される「押さえ板13」に及ぶ。
結局、甲1発明では、「操作側固定ブロック(1)」と「押さえ板(13)」とが、確かに別々の部材として製造されているものの、両者が一体に固定されることによって、それらが担う機能が未分化とされており、各部材ごとの機能的な領域に分割されていない。これでは、本件発明1がその基礎とした問題のある従来の一体型の固定ブロックによる構成と何ら違いがない。その意味において、甲1発明の「操作側固定ブロック(1)」と「押さえ板(13)」は、固定ブロックの各部が担う機能が分離されていない従来の一体型の固定ブロックと何ら変わるところがなく、実質的に複数の部材で構成されているとはいえないものである。
したがって、訂正により「中央の移動コンソール」と「保持条片」が担う別々の機能が明らかとされた本件発明1は、「操作側固定ブロック(1)」と「押さえ板(13)」とが互いに一体に固定されて各部材ごとの機能的な領域に分割されていない甲1発明とは異なるものである。
よって、本件発明1は、甲1に記載されたものではないから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであるということはできず、本件発明1に対して請求人が主張する無効理由1-1は、本件特許を無効にすべき根拠にならない。
イ 無効理由1-2(甲1発明に基づく進歩性の欠如)に対する主張(答弁書第24~28ページ)
(ア) 前記第5の1(1)イ(ア)について(答弁書第25~27ページ)
甲1発明では、「操作側固定ブロック(1)」の断面「T字形」の頂辺(頭部)の部分が「操作側上移動ブロック(3)」と「操作側下移動ブロック(14)」の高さに合わせて上下に延在して形成されていることにより、「操作側上移動ブロック(3)」と「操作側下移動ブロック(14)」が「押さえ板(13)」によって「操作側固定ブロック(1)」に取り付けられたときに、「操作側固定ブロック(1)」の上部と下部において「操作側上移動ブロック(3)」と「操作側下移動ブロック(14)」が保持されるように構成され、「操作側固定ブロック(1)」は、そのために必要な大きさと強度を有する材料から形成されている。つまり、上記訂正により明らかになった相違点(上記ア(イ))においても述べたように、甲1発明では、「操作側固定ブロック(1)」と「押さえ板(13)」とは、両者が一体に固定されていることによって、それらが担う機能が未分化とされ、各部材ごとの機能的な領域に分割されておらず、「操作側固定ブロック(1)」と「押さえ板(13)」とは、協働して「操作側上移動ブロック(3)」と「操作側下移動ブロック(14)」を保持し且つ案内する機能を一体で担うために必要な大きさと配置と相互の機械的接続をもって構成されている。
それにもかかわらず、この点について請求人は、「甲1発明においても、操作側上移動ブロック(3)及び操作側下移動ブロック(14)の“保持および案内のために必要な特性”を有する「中央の移動コンソール」としての機能を果たす操作側固定ブロック(1)と、“ただ移動ブロック(3、14)の保持機能を引き受けるだけ”の「保持条片」として機能する2つの押さえ板(13)と、によって3つの機能領域が実現され」、したがって、「訂正前発明1の上記作用効果は、甲1発明においても同様に享受できる程度のものに過ぎず、甲1発明から出発した当業者にとって予想を超える格別なものでもない」と主張するが、この主張は、甲1発明において、「操作側固定ブロック(1)」と「押さえ板(13)」の機能がそもそも分離されていないにもかかわらず、本件特許に係る発明を知ってから得た知識を前提にして、それらの効果があたかも当業者に容易に予見できるかのように判断する典型的な後知恵に基づくものであり、失当と言うほかない。
結局、甲1発明は、「操作側固定ブロック(1)」と「押さえ板(13)」とが協働して「操作側上移動ブロック(3)」と「操作側下移動ブロック(14)」の保持と案内の機能を一体で担う必要性から、「操作側固定ブロック(1)」と「押さえ板(13)」の形状と大きさは、「操作側上移動ブロック(3)」と「操作側下移動ブロック(14)」の保持と案内のために「操作側上移動ブロック(3)」と「操作側下移動ブロック(14)」の大きさの制約を受けて自由に選択できないし、「操作側固定ブロック(1)」に対する「押さえ板(13)」の配置も変更することができないから、請求人が主張するように「操作側固定ブロック(1)及び押さえ板(13)の各部品の適切な形状および大きさを選択し、操作側固定ブロック(1)及び2つの押さえ板(13)から成る複数の部材(1、13)の分割位置を変更する…ことは通常の創作能力の発揮に過ぎない」と言うことはできない。
(イ) 前記第5の1(1)イ(イ)について(答弁書第27ページ)
甲1発明において「水平方向の分割線に沿って操作側固定ブロック(1)から分割された押さえ板(13)」としたからといって、「押さえ板(13)」の「操作側固定ブロック(1)」に対する固定を解除する必然性はない。請求人の主張は、「水平方向の分割線に沿って操作側固定ブロック(1)から分割された押さえ板(13)」とした上で、「押さえ板(13)」の「操作側固定ブロック(1)」に対する固定を解除し、次に「押さえ板(13)をハウジング(12)に組み付けるように」するという変更を累積的に加えることが当業者にとって想到容易であるという論理に基づくものであり、「水平方向の分割線に沿って操作側固定ブロック(1)から分割された押さえ板(13)」にすることを含めて、甲1発明から出発して実に三段階の変更を加えて本件発明1にすることが当業者に想到容易であるとする、いわゆる容易の容易の論理に立脚して本件発明1の進歩性を否定するものであるから、明らかに失当である。
(ウ) 前記第5の1(1)イ(ウ)について(答弁書第27~28ページ)
甲3に記載されているのは、ハウジング5に固定されたプロジェクトブロック17の間にシフトブロック12が嵌合され、シフトブロック12がプロジェクトブロック17によって移動可能に保持されるという構成であって、シフトブロック12の保持と案内の両方の機能をプロジェクトブロック17だけが担う構成である。
してみれば、甲1発明の固定ブロックと押さえ板に相当する部材を個別に備えた構成にはなっていない甲3に記載の技術事項は、甲1発明において何ら参考にならないから、請求人の上記主張は考慮するに値しない。
よって、本件発明1は、甲1発明に基づいて(または甲1発明に甲3の技術事項を適用することで)当業者が容易になし得たものとは言えないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるということはできず、本件発明1に対して請求人が主張する無効理由1-2は、本件特許を無効にすべき根拠にならない。
(2)無効理由2(甲2発明に基づく新規性及び新規性の欠如)に対する主張
ア 無効理由2-1(甲2発明に基づく新規性の欠如)に対する主張(答弁書第18~21ページ)
(ア) 前記第5の1(2)ア(ア)における甲2発明の認定誤りについて(答弁書第18~20ページ)
甲2に“固定部材”についての記載はなく、“固定部材”がいかなる形態でどのような機能を有するのか、「板状」であるのか否か、何かを固定するのか或いは何かに固定されるのか、推測の域を出ない。
そこで、甲2の図面を参照するに、先ず、図2は、図1におけるII-II線における断面図に過ぎず、この図から“固定部材”なるものが「板状」であるとは言えない。実際、図1において、一点鎖線で示された「ボルト2」よりも図1の下側に図示されている「カバープレート10」の上面には、“固定部材”が配置されていることは少なくとも見て取れない。すると、“固定部材”は、図1の「ボルト2」の位置から「ベース7」の端部にかけてわずかに延在しているだけのもので、「板状」とは到底言えないものである。むしろ、請求人が図2から推測して“固定部材”と呼んでいる部材は、「操作側の直立スタンド1に…ボルト2によってブロック3が接続され」(甲2訳文の段落[0013])との甲2の記載及び図2より、「ボルト2」の頭と「ブロック3」の「ベース7」との間に介在して「ボルト2」の頭よりも広い面積で「ベース7」に圧接することで「ボルト2」から「ベース7」に加えられる締結力を広い面積に分散させる働きをしていることが看取できることから、「ボルト2」のための“ワッシャ”としての機能を担っていると捉えるのが自然である。
[図:0001424516000001.jpg]
そうすると、請求人が、「図2から、上側及び下側の“固定部材”は、ボルト(2)によってブロック(3)とともに直立スタンド(1)に固定されていることが看取される」(前記第5の1(2)ア(ア))と摘記しているのも、「ボルト2」を「直立スタンド1」に締結することによって、「ブロック3」の「ベース7」に“圧接”されるだけの“ワッシャ”が「直立スタンド1」に“固定”されていると述べているようなものであり、誤りである。
したがって、請求人による甲2発明についての「2f.2つの“固定部材”が、…ボルト(2)によってブロック(3)とともに直立スタンド(1)に固定され」(前記第5の1(2)ア(ウ))との認定は誤りである。
以上により、本件発明1の構成Fと、認定に誤りのある甲2発明の構成2fとは互いに対比することができず、これらの構成要素が互いに一致しているとは言えない。
よって、本件発明1は、請求人が主張するように甲2に記載されたものではないから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであるということはできず、本件発明1に対して請求人が主張する無効理由2-1は、本件特許を無効にすべき根拠にならない。
(イ) 前記第5の1(2)ア(イ)における一致点の認定誤りについて(答弁書第20~21ページ)
甲2発明の“ワッシャ”を板状の“固定部材”とみなし、「“固定部材”が…直立スタンド(1)に固定され」るとみなしたとしても、いずれにしろ、請求人による一致点の認定には誤りがある。
本件発明1と甲2発明の相当関係について、甲2発明の「“固定部材”」の「ブロック(3)のベース(7)」に対する配置と、本件発明1の「保持条片」の「移動コンソール」に対する配置のみが対比され、甲2発明の「“固定部材”」の固定に関する発明特定事項と、本件発明1の「保持条片が…台架(102)の圧延ロールスタンドに組み付けられて」いる発明特定事項との対比が看過されている。
そこで、この点について検討するに、本件発明1では、「保持条片が、… 前記台架(102)の圧延ロールスタンドに組み付けられて」いるのに対し、甲2発明では、「“固定部材”」は、「ベース(7)の上部及び下部に当接して」「直立スタンド(1)」には組み付けられない。すると、甲2発明は、「保持条片」が「台架(102)の圧延ロールスタンドに組み付けられて」いる本件発明1とは、この点において相違する。
また、本件発明1は、「保持条片が、…移動コンソールの上側および下側に配置されて」いるのに対し、甲2発明では、「“固定部材”」が、「ベース(7)の上部及び下部」の水平方向における横側に配置されているのであって、「操作側固定ブロック(1)」の垂直方向における上側および下側に配置されているのではない。すると、甲2発明は、「“固定部材”」の「ブロック(3)のベース(7)」に対する配置についても本件発明1と相違する。
結局、甲2発明の構成2fは、本件発明1の構成Fには一致せず、本件発明1と甲2発明とは、少なくともこの構成において相違する。
(ウ) 前記第5の1(2)ア(ウ)における認定誤りについて(答弁書第21ページ)
請求人による本件発明1と甲2発明との上記の各構成要素間の相当関係の認定によれば、仮に本件発明1の構成Fが甲2発明の構成2fと同じであるというのであれば、本件発明1は、「保持条片」が「中央の移動コンソール」とともに「台架(102)の圧延ロールスタンドに組み付けられて」いる事項を有していなければならないところ、実際には、本件発明1は、そのような事項を有しておらず、「移動コンソールから分離された」「保持条片が…圧延ロールスタンドに組み付けられて」いる事項しか有していないのであるから、本件発明1の構成Fと甲2発明の構成2fとが異なっていることは、請求人も自ら認めていることである。
以上により、本件発明1の構成Fと甲2発明の構成2fとは一致しないから、請求人による本件発明1と甲2発明の構成との一致点の認定には誤りがある。
よって、本件発明1は、請求人が主張するように甲2に記載されたものではないから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであるということはできず、本件発明1に対して請求人が主張する無効理由2-1は、本件特許を無効にすべき根拠にならない。
(エ) 訂正により明らかになった相違点について(答弁書第22~23ページ)
上記(1)ア(イ)と同様に、本件発明1は、「中央の移動コンソール(116)」が「曲げブロックの保持および案内」の機能を担う一方、「保持条片(117、118)」は、「曲げブロックの保持機能を引き受けるだけ」の構成とされ、「移動コンソール」と「保持条片」がそれぞれ受ける負荷は、互いに相手側に影響しない。
これに対し、甲2発明は、「ボルト(2)」が“ワッシャ”(請求人がいう“板状の固定部材”)を介してH形の「ブロック(3)」を「直立スタンド(1)」に接続するに留まり、“ワッシャ”が「スラストピース(13、14)」を保持する機能をそもそも担わない。
また、H形の「ブロック(3)」の上方および下方の開放端を覆う“カバープレート10、11”は、H形の「ブロック(3)」とともに“角柱”の二重ガイドとしての「上部ガイドチャンバ(4)」と「下部ガイドチャンバ(5)」を画成し、その中に「スラストピース(13、14)」が軸平行に移動可能に保持されるから、むしろ、甲2発明においては、H形の「ブロック(3)」の上方および下方の開放端を覆う“カバープレート10、11”が、本件発明1の「保持条片」と比べられる機能を有する部材であると言えるところ、甲2発明では、H型の「ブロック(3)」と“カバープレート10、11”が一体化され、“カバープレート10、11”は「直立スタンド(1)」に組み付けられない。
そのため、「ブロック(3)」と“カバープレート10、11”とは、別々の部材として製造されているものの、両者が一体化されることによって、それらが担う機能が未分化とされており、各部材ごとの機能的な領域に分割されていない。その意味において、甲2発明の「ブロック(3)」と“カバープレート10、11”は、固定ブロックの各部が担う機能が分離されていない従来の一体型の固定ブロックと何ら変わるところがなく、実質的に複数の部材で構成されているとは言えないものである。
したがって、訂正により「中央の移動コンソール」と「保持条片」が担う別々の機能が明らかとされた本件発明1は、甲2発明の“ワッシャ”としての「“固定部材”」を本件発明1の「保持条片」とみなした場合はもとより、甲2発明の“カバープレート10、11”を本件発明1の「保持条片」とみなしたとしても、「ブロック(3)」と“カバープレート10、11”とが一体化されて各部材ごとの機能的な領域に分割されていない甲2発明とは異なるものである。
よって、本件発明1は、甲2に記載されたものではないから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであるということはできず、本件発明1に対して請求人が主張する無効理由2-1は、本件特許を無効にすべき根拠にならない。
イ 無効理由2-2(甲2発明に基づく進歩性の欠如)について(答弁書第28~29ページ)
前記アと同様に、甲2発明には、そもそも本件発明1の「保持条片」に相当する部材が存在しないから、たとえ当業者といえども甲2発明に基づいて本件発明1を発明することはできない。
仮に、甲2発明の“カバープレート10、11”を本件発明1の「保持条片」とみなしたとしても、“カバープレート10、11”は、「ブロック(3)」と一体化されて「直立スタンド(1)」には組み付けられないから、たとえ当業者といえども甲2発明に基づいて(甲2発明に甲3の技術事項を適用しても)本件発明1を発明することはできない。
よって、本件発明1は、甲2発明に基づいて(または甲2発明に甲3の技術事項を適用することで)当業者が容易になし得たものとは言えないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるということはできず、本件発明1に対して請求人が主張する無効理由2-2は、本件特許を無効にすべき根拠にならない。
(3)無効理由3(明確性違反)について(答弁書第29~32ページ)
前記第5の1(3)(i)について、本件特許の図面の図2における(下図において黄色で示された)移動コンソール116は、「T字形」の頂辺(頭部)の長さが、図4における従来の(下図において黄色で示された)固定ブロック10のものより著しく短縮されており、移動コンソール116を軸方向に視たときの鉛直方向における移動コンソール116の縦横の寸法に比べて軸方向における移動コンソール116の寸法が大きくなっている。したがって、図2に示された実施例の移動コンソール116は、長尺な「ロッド材料」を利用して製造された長尺な部材であり、「「ロッド材料」は、軸方向に沿った寸法と、鉛直方向に沿った寸法とのアスペクト比が1に近いものであり」との指摘には当たらない。
そして、図2に示された「移動コンソール116」は、軸線方向に延びる長尺部材であるから、「ロッド材料から製造された」ものであることに特段不明な点はなく、「どのような材料を含むのか明確ではない」ということにはならない。
むしろ、長尺な形状である一般的な「ロッド」の用語の範疇から逸脱しない程度の長尺な形状の「移動コンソール」が、「ロッド材料から製造されている」との事項により特定されているのであって、請求人も述べている「一般的な「ロッド」の用語の範疇」の解釈を変更することなく、その範疇に含まれる「ロッド材料から製造された」「軸線方向に延びる長尺部材である」「移動コンソール」は、当業者にとって十分理解できるものである。
[図:0001424516000002.jpg]
前記第5の1(3)(ii)について、図2に示された移動コンソール116は、「ロッド材料」の長尺な形状を喪失しておらず、入手可能な半製品の様式の標準規格寸法もしくは標準規格材料としての適当な「ロッド材料」を選択し、必要に応じてその長さを整えたり、曲げブロックを案内するための面を平滑にフライス加工したりするなどの最小限の加工を加えることはあっても、ほぼ元の「ロッド材料」を活かして移動コンソール116を製造していることが当業者に明らかである。
そして、元の「ロッド材料」に必要最小限の加工を加えることがあったとしても、鍛造により形成された表面が全て失われるわけではないし、いずれにしろ内部には鍛造によりもたらされる組織の構造が残されているのであるから、当業者が「中央の前記移動コンソール(116)は、鍛造されたロッド材料から製造されていることを」判別することは可能である。
また、“鍛造品”は、物の構造又は特性を特定する用語として概念が定着しているものであり、物の発明においてその物の製造方法が記載されている場合に該当しないのであるから、その点においても、「物の発明である「圧延機」の「移動コンソール(116)」が、「鍛造されたロッド材から製造され」たものである」ことに不明な点はない。
第7 無効理由1及び2の当審の判断について
当審合議体は、以下に示すとおり、無効理由1-1、1-2、2-1、2-2のいずれについても理由がないものと判断する。(本件発明2~10は本件発明1を引用することから、本件発明1の新規性・進歩性についての判断を示す。)
1 引用発明
(1)甲1
ア 甲1(2005年8月24日公告)には、以下の記載がある。(括弧内に請求人が提出した甲1訳文を付記する。)
第4ページ第2~3行
(【0001】
本考案は、大型の熱間連続圧延機で鋼板の形状及び板クラウンを制御するために用いるロールシフト機構に関する。)
第4ページ下から第7行~第5ページ第1行
(【0004】
大型の熱間連続圧延機で圧延した鋼板の形状および板クラウンを効果的に制御するため、鋼板の圧延過程において、圧延機のワークロールは圧延した鋼板の形状及び板クラウンのフィードバック状況に基づき、相対してシフトを行う必要がある。ワークロールのシフトを実現するため、本考案で設計したロールシフト機構は、主に4つのロールシフトシリンダ、2つの「T」形固定ブロック、4つの移動ブロック、4つの軸方向固定シリンダ、4つの移動ブロックロッキングシリンダ、4つの油圧サーボシステム及びポジションセンサなどからなる。鋼板の圧延過程において、圧延工程の要求に基づき、圧延機の自動制御システムは油圧サーボシステムにロールシフトコマンドを送信する。油圧サーボシステムがロールシフトシリンダの伸縮を制御し、さらに移動ブロックを固定ブロックに沿ってスライドさせる。移動ブロックおよびワークロールはワークロール’を介して接続され、これによりワークロールの圧延過程におけるシフトを実現する。)
第5ページ下から第8行~第6ページ下から第6行
(【0008】
図1から図3に示すように、本考案の操作側固定ブロック1および駆動側固定ブロック2はいずれも「T」字型を呈し(当審注:図3参照)、小孔およびボルトにより、圧延機のハウジング12に固定される(当審注:図2のハウジング12にねじ止めされている符号のないボルト参照)。4つのロールシフトシリンダ6はクレビス形式でそれぞれ操作側固定ブロック1の外端とつながり、さらにトラニオン形式でそれぞれ操作側上移動ブロック3および操作側下移動ブロック14とつながる(当審注:図2参照)。該ロールシフトシリンダ6内部にポジションセンサ10が取り付けられ、油圧サーボシステム9はロールシフトシリンダ6の付近に設けられ、管路を介してロールシフトシリンダ6とつながる。該操作側上移動ブロック3および操作側下移動ブロック14はそれぞれ押さえ板13により操作側固定ブロック1に取り付けられ、押さえ板13は小孔およびボルトを締める形式で操作側固定ブロック1に固定される(当審注:図1及び図3参照)。操作側上移動ブロック3、操作側下移動ブロック14と、操作側固定ブロック1との間にスライドプレート18を有し、該スライドプレート18はいずれも小孔およびボルトを締める形式でそれぞれ操作側上移動ブロック3および操作側下移動ブロック14に固定され、操作側上移動ブロック3および操作側下移動ブロック14を操作側固定ブロック1に相対してスライドさせることができる。操作側上移動ブロック3および操作側下移動ブロック14の内部にそれぞれ2つのロールベンディングシリンダ5が取り付けられ(当審注:図2参照)、操作側上移動ブロック3および操作側下移動ブロック14の内部の丸孔部分に軸孔嵌合形式で軸方向固定シリンダ7が取り付けられる(当審注:図1及び図2に軸方向固定シリンダ7の一端のシャフトエンドバッフル19が図示されている)。該軸方向固定シリンダ7の一端にシャフトエンドバッフル19を備え、圧延機が動作するとき、軸方向固定シリンダ7はシャフトエンドバッフル19を突出させてワークロールチョック16に係着させ、操作側上移動ブロック3および操作側下移動ブロック14をワークロールチョック16とつなげる(当審注:図1~図3参照)。ロールを交換するとき、軸方向固定シリンダ7がシャフトエンドバッフル19を引っ込め、操作側上移動ブロック3および操作側下移動ブロック14をワークロールチョック16から離す。該駆動側固定ブロック2の外端が外に突出して支持し、さらに丸孔を有し、ロールを交換するとき、圧延ロール側スピンドル頭部のスピンドル押さえ板装置を固定するのに用いられる。駆動側上移動ブロック4および駆動側下移動ブロック15はそれぞれ押さえ板13により該駆動側固定ブロック2に取り付けられ、押さえ板13は小孔およびボルトを締める形式で駆動側固定ブロック2に固定される。駆動側上移動ブロック4、駆動側下移動ブロック15と、駆動側固定ブロック2との間にスライドプレート18を有し、該スライドプレート18はいずれも小孔およびボルトを締める形式でそれぞれ駆動側上移動ブロック4および駆動側下移動ブロック15に固定され、駆動側上移動ブロック4および駆動側下移動ブロック15を駆動側固定ブロック2に相対してスライドさせることができる。駆動側上移動ブロック4および駆動側下移動ブロック15の内部にそれぞれ2つのロールベンディングシリンダ5が取り付けられ、駆動側上移動ブロック4および駆動側下移動ブロック15の内部の丸孔部分に、軸孔嵌合形式で移動ブロックロッキングシリンダ8が取り付けられ、移動ブロックロッキングシリンダ8の外側にロッキングブロック20が取り付けられる。)
第7ページ第5~11行
(【0011】
本考案が動作するとき、圧延機制御システムのコマンドに基づき、油圧サーボシステム9およびポジションセンサ10が4つのロールシフトシリンダ6の動作を制御し、ここでポジションセンサ10はロールシフトで移動しようとする距離を予め規定するのに用いられる。4つのロールシフトシリンダ6が2つの操作側上移動ブロック3および2つの操作側下移動ブロック14を操作側固定ブロック1のスライド面に沿ってスライドさせ、2つの操作側上移動ブロック3および2つの操作側下移動ブロック14がさらにそれぞれ上ワークロール11および下ワークロール17を軸方向にシフトさせる。上ワークロール11および下ワークロール17が、さらにそれぞれ2つの駆動側上移動ブロック4および2つの駆動側下移動ブロック15を駆動側固定ブロック2のスライド面に沿ってスライドさせることにより、圧延ロールのロールシフト過程を実現する。)
図1
「
[図:0001424516000003.jpg]
」
図2
「
[図:0001424516000004.jpg]
」
図3
「
[図:0001424516000005.jpg]
」
イ 上記ア及び図面の図示内容から、甲1には以下の事項が記載されているといえる。
甲1に記載された熱間連続圧延機においては、「4つのロールシフトシリンダ6が2つの操作側上移動ブロック3および2つの操作側下移動ブロック14を操作側固定ブロック1のスライド面に沿ってスライドさせ、2つの操作側上移動ブロック3および2つの操作側下移動ブロック14がさらにそれぞれ上ワークロール11および下ワークロール17を軸方向にシフトさせる」(【0011】)ことから、上ワークロール(11)及び下ワークロール(17)は、互いに相対的に軸線方向に移動可能である。
また、甲1には「大型の熱間連続圧延機で鋼板の形状及び板クラウンを制御するために用いるロールシフト機構」(【0001】)の構成要素に関して、「ロールシフト機構は、主に4つのロールシフトシリンダ、2つの「T」形固定ブロック、4つの移動ブロック、…などからなる」(【0004】)ことが記載されているから、甲1に記載の操作側のロールシフト機構は、4つのロールシフトシリンダ(6)、「「T」字型を呈」する2つの操作側固定ブロック(1)、2つの操作側上移動ブロック(3)及び2つの操作側下移動ブロック(14)(【0008】)を含む。甲1には、ロールシフト機構の移動ブロックについて、「移動ブロックおよびワークロールはワークロールチョックを介して接続され」(【0004】)ることが記載され、【0011】にはロールシフト機構のロールシフトシリンダ(6)が移動ブロック(3、14)をスライドさせることでワークロール(11、17)の軸方向のシフトを実現することが記載されているから、甲1に記載の移動ブロックを含むロールシフト機構は、ワークロールチョック(16)に対して設けられるとともに、ワークロールチョック(16)に作用可能である。
また、「操作側上移動ブロック3および操作側下移動ブロック14はそれぞれ押さえ板13により操作側固定ブロック1に取り付けられ、押さえ板13は小孔およびボルトを締める形式で操作側固定ブロック1に固定され」(【0008】)ているから、ロールシフト機構は、操作側固定ブロック(1)に固定される2つの押さえ板(13)(【図1】及び【図3】)を含む。
これら2つの押さえ板(13)は、操作側固定ブロック(1)に隣接するとともに、操作側固定ブロック(1)の上部及び下部にそれぞれ取り付けられている(【図1】及び【図3】)。各々の押さえ板(13)は、「…小孔およびボルトを締める形式で操作側固定ブロック1に固定され…」(【0008】)、さらに操作側固定ブロック1は、「…小孔およびボルトにより、圧延機のハウジング12に固定され」(【0008】)るのであるから、2つの押さえ板(13)は、操作側固定ブロック(1)を介して圧延機のハウジング(12)に組み付けられている。なお、【図1】~【図3】から、操作側固定ブロック(1)は1つの個別部材であることが看取される。また、【図1】及び【図3】から、2つの押さえ板(13)はそれぞれ板状の単一部材であることが看取される。
【図2】から、操作側固定ブロック(1)が、ハウジング(12)のうち上ワークロール(11)の側方に位置する部分に組付けられていることが看取される。
【図1】及び【図3】から、操作側上移動ブロック(3)が操作側固定ブロック(1)と上側の押さえ板(13)との間に配置されていること、及び、操作側下移動ブロック(14)が操作側固定ブロック(1)と下側の押さえ板(13)との間に配置されていることが看取される。
【図2】から、ロールシフトシリンダ(6)が操作側上移動ブロック(3)の外側に設けられていることが看取される。
【図2】から、操作側上移動ブロック(3)に対応して設けられたロールシフトシリンダ(6)のシリンダ部が、操作側上移動ブロック(3)に接合されていることが看取される。
【図2】から、ロールシフトシリンダ(6)のピストンロッドの端部が操作側固定ブロック(1)にクレビス形式で結合されていることが看取される。
ウ 以上から、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
〔甲1発明〕
「熱間連続圧延機であって、
熱間連続圧延機が、
ハウジング12と、
前記ハウジング12にワークロールチョック16を用いて装着されており且つ互いに相対的に軸線方向に移動可能である、上ワークロール11、下ワークロール17と、及び、
前記上ワークロール11、下ワークロール17の内の少なくとも1つのロールのワークロールチョック16に所属して設けられており、且つ、このワークロールチョック16に対して作用可能である、ロールシフト機構を備えており、
前記ロールシフト機構が、
操作側固定ブロック1及び押さえ板13と、
操作側上移動ブロック3及び操作側下移動ブロック14と、及び、シフトシリンダー6とを有しており、
シフトシリンダー6によって、前記操作側上移動ブロック3及び操作側下移動ブロック14が、前記操作側固定ブロック1及び押さえ板13に対して相対的に移動可能である、
様式の上記熱間連続圧延機において、
前記操作側固定ブロック1及び押さえ板13が、
前記操作側固定ブロック1及び押さえ板13から成るように形成されており、且つ、
前記操作側固定ブロック1、及び、この操作側固定ブロック1から分離された、押さえ板13を有しており、
これら押さえ板13が、前記操作側固定ブロック1に対して隣接して、それぞれに、この操作側固定ブロック1の上側及び下側に配置されており、
前記操作側固定ブロック1が、個別部材として形成されている、
熱間連続圧延機。」
(2)甲2
ア 甲2(1985年3月14日発行)には以下の記載がある。(なお、摘記箇所のページ数は、甲2の上部に手書きで記載された数字で表し、括弧内に請求人が提出した甲2訳文を段落番号とともに付記する。)」
第4ページ第2~13行
(【0001】
本発明は、軸方向に移動可能に配置されている2つのワークロールと2つのバックアップロールを備えるロールスタンドに関し、この場合、スタンド固定式に設けられたブロックには、ワークロールのチョック用の垂直ガイド面が装備され、プランジャを介してロールのバランシングと曲げに有効に作用する調整手段が取り付けられている。)
第6ページ14~23行
(【0005】
従って、本発明は、軸方向に移動可能なワークロールを備えるロールスタンドを創出するという課題に基づいており、このワークロールを軸方向に移動するための装置は、コンパクトで堅牢な構造であり、円滑な作動によって少量のエネルギーしか必要とせず、僅かなスペース要件によって、また駆動要素の領域外およびロール交換に必要なスペースの領域外にある装置の配置によって、ロール交換の邪魔にならず、またワークロールの軸受に作用してその耐用年数に悪影響を与える負荷モーメントを回避する。)
第6ページ24行~第7ページ下から3行
(【0006】
この課題は、ロールのバランシングおよび/または曲げのための調整手段を支持するブロックが、本発明に基づき、スタンド固定式の、ロール軸に平行な角柱ガイドとして構成されており、それらのブロック内には、調整手段を装備しているスラストピースがそれぞれ1つ、軸方向に移動可能に保持されていることによって、またブロックの上壁と下壁に、調整手段のプランジャが貫通するための、長手方向のスロットとして構成されている凹部が取り付けられていることによって、また脱着可能な垂直方向のガイドによりスラストピースが形状結合的にチョックを軸方向にガイドすることによって、またスラストピースには、このスラストピースと直立スタンドとの間にスラストピースの調整範囲を決定する有効な動力駆動が割り当てられていることによって解決される。これらの措置により、第一に、チョックと、それらを支持するプランジャとの間での移動が基本的に回避されるため、プランジャによって加えられる力は常に軸受の中心面においてチョックに伝達可能であり、従ってこれらの力が望ましくないモーメントを発生させることはできない。また、プランジャと、それらによって支持されているチョックとの間での相対移動が回避されることにより、摩擦力によって生じる望ましくないモーメントはここでも排除される。角柱のガイドとして設けられているガイドチャンバは、大部分が閉じられているか、または完全に閉じられているため、効果的な潤滑を施すことができ、汚れや錆びに対して保護され、かつ良く潤滑された部品は僅かな力でも動かすことができる。本来の駆動システムは脇に置いておくことができさえすれば、ロール交換に必要なスペースも、また駆動要素で占められるスペースも無制限に使用可能である。さらなる利点として、チョックと、これらにプリテンションをかけているプランジャとの間での移動がなくなることにより、プランジャの支持および気密性だけでなく、調整手段として設けられている油圧シリンダの支持および気密性も損なうおそれのある送り方向と逆に作用する半径方向の力もなくなる。また、そのような調整手段が故障した場合でも、スラストピースは簡単に交換できるように形成することができ、また交換ピースとして保管することができるので、調整装置の欠陥がラインの長期間の故障を引き起こすことはなく、準備されたピースの交換によって簡単かつ迅速に修理可能である。)
第7ページ下から2行~第8ページ17行
(【0007】
ほとんどの用途において、2つのワークロールの軸方向の移動は、逆方向であるか、少なくとも互いに独立していることが要求される。このことから、各ブロックには、上スラストピースを有する上部ガイドチャンバと、下スラストピースを有する下部ガイドチャンバとが装備され、また各スラストピースには、独立して制御可能または調整可能な動力駆動が装備されことが適切であると実証された。そのような動力駆動としては、油圧シリンダが適していることが分かった。油圧シリンダの場合、圧力またはピストン径を縮小するために、スラストピースごとに重なって配置されている少なくとも2つの圧力シリンダを設けることが可能である。この圧力シリンダは、スラストピースの、側面が突出しているアングルピースに係合することができ、実質的にブロックの側面に配置することができる。しかし、スラストピース自体が圧力シリンダを有しており、それらのピストンロッドがガイドチャンバに重なるブロック固定式クロスメンバに係合することにより、スペース要件はさらに低下し、スラストピースの摩耗を増加させるモーメントも回避することができる。)
第10ページ第5~15行
(【0013】
操作側の直立スタンド1には、図2に示されているボルト2によってブロック3が接続されており、このブロック3は、角柱の二重ガイドとして構成されており、特に図2によれば、上部ガイドチャンバ4および下部ガイドチャンバ5を有している。ブロック3は、カバープレート6によって対向するスタンドに対して閉じられている。ブロック3のベース7は、図2によれば、ボルト2によって直立スタンド1の凹部の支持面に向かって引きつけられていることにより、垂直方向の力に対して保護されており、また水平方向の力、特に軸平行の力は、ばね8によってブロック3から直立スタンド1に伝達される。)
第10ページ第16~最終行
(【0014】
ガイドチャンバ4および5は、側面がブロック3のベース7およびフランク9によって画定されており、これらは中間壁によって互いに接続され、またチャンバは、外部がそれぞれカバープレート10または11によって覆われており、これらのカバープレート10または11はそれぞれ、調整手段が貫通するための、長孔として構成されている凹部12を有している。ガイドチャンバには、上部および下部のスライディングピース13または14(当審注:スライディングピース13又は14は、甲2の明細書の他の箇所におけるスラストピース13又は14と同義であることが明らかであるから、本審決の判断においては、スラストピース13又は14の表記で統一する。)が軸平行に移動可能に保持されている。これらのスライディングピース13または14には、シリンダカバー15によって外側が覆われている油圧シリンダが組み込まれており、プランジャ16として構成されている、シリンダ内をガイドされるピストンのピストンロッドがこの油圧シリンダを貫通している。2つのブロック3の互いに対向するフランク9の間では、摩耗プレート17を装備したチョック18がガイドされ、これらのチョック18は円すいころ軸受19ならびにスラスト軸受20とともに、ワークロール21のロールジャーナルをガイドする。プランジャ、例えばプランジャ16は、摩耗プレート34によって強化されているチョックの突出する端部に作用する。)
第11ページ第1~15行
(【0015】
図1が示すように、チョック18は、前方へ突出するロックバー22を有しており、このロックバー22はスラストピース13の端面に当たり、かつラッチ24の自由端によって重ね合わされ、このラッチ24はスラストピース13のアングルピース23上で格納可能にガイドピース25によってガイドされている。このガイドピースは、アングルピース23とラッチ24を貫通し、ピストンロッド26の自由端にボルトで固定されており、ピストンロッド26のピストンは、ブロック3のベース7の突出部28の中に組み込まれている油圧シリンダ27内でガイドされている。ガイドピース25はラッチ24の長孔を貫通し、その周縁領域は、ガイドピース25に対してボルト30によって締め付けられているワッシャによって重ね合わされている。アングルピース23の中には油圧シリンダ31が組み込まれており、そのピストンロッド32はラッチ24の角度付き端部33に接続されている。)
第11ページ第16行~第12ページ第7行
(【0016】
これにより、以下の作動モードが生じる。すなわち、油圧シリンダ27の制御された加圧により、上部スラストピース13は軸平行に移動することができ、これに伴って、ロックバー22を取り囲むスラストピース13の支持面ならびにラッチ24の支持面を介してチョック18が動かされる。ワークロール21の移動時に発生する力は、追加のスラスト軸受20によって吸収される。その際、ガイドチャンバは十分に潤滑されており、大部分が密閉されているため、汚れが堆積することもなく、酸化作用も摩擦係数に不利な影響を及ぼさないため、ブロック3で生じる力は低いままである。プランジャ16は、チョック、例えばチョック18と同程度に移動するので、プランジャ自体は、半径方向の力による、プランジャのガイドおよび気密性を損なう摩耗形成から保護されており、円すいころ軸受19にも悪影響を与えるモーメントも回避される。というのも、プランジャ16はチョックと連動しており、従って、常に2つの円すいころ軸受19の中心線において支持され、均質な動きによる摩耗プレート34への摩擦力が排除されているからである。ワークロール交換のため、チョック18は次のように簡単に解放することができる。油圧シリンダ31の加圧により、そのピストンロッドが繰り出すことでラッチ24を引き戻し、ラッチ24のフロントがチョック18のロックバー22を解放することから、ロール交換を支障なく行うことができる。)
第12ページ第8~23行
(【0017】
図1を理解しやすくするため、ワークロール21のロールジャーナルおよびチョック18の領域で示されている水平方向断面図は、上部ワークロールの軸の高さにのび、3つの異なる面にあるブロック3の領域にわたっていることに注意されたい。3つの異なる面とは、上部カバープレート10の下面と上部スラストピース13の上面との間にある上部分、図2のプランジャ16の先端と摩耗プレート34との間にある中央部分、および油圧シリンダ27の軸高にある下部分であり、油圧シリンダ27はブロック3において4段に重なって設けられており、それらのうち2つが上部スラストピース13の移動のために設けられており、その下にある2つは下部スラストピース14の移動のために設けられている。油圧シリンダ31もまた、それが望ましい場合には、スラストピースごとに2段で設けられてよい。)
第14ページ下から第13行~第15ページ第6行
(【0022】
説明されているロールスタンドは、角柱のガイドを有するブロックと、この中でガイドされ、かつ移動可能なスラストピースとを備えており、一連の用途に有利であることが明らかとなった。従って、例えば軸方向の移動を行うことにより、圧延材料によって生じる表面の摩耗、特に圧延材料のエッジによって引き起こされる摩耗の位置を、軸方向への移動によって拡散させる形で、またはレーキング処理によって拡散させる形でずらすことにより、ワークロールの耐用年数を延ばすことができる。曲げ力によって生じるそれぞれの曲げモーメントにも、移動によって影響を与えることができる。なぜなら、圧延材料のエッジまでの間隔またはバックアップロールのボールエンドまでの間隔は変更可能だからである。これに加え、ロールギャッププロファイルの影響もさらなる可能性としてある。例えば、DE-PS3038865によるボトルローラに必要な軸方向の移動を発生させることができ、ここでは、僅かなスペース要件および追加モーメントをローラベアリングから遠ざけることが有利であると実証されている。)
図1
「
[図:0001424516000006.jpg]
」
図2
「
[図:0001424516000007.jpg]
」
図3
「
[図:0001424516000008.jpg]
」
イ 上記ア及び図面の図示内容から、甲2には以下の事項が記載されているといえる。
甲2の【0022】には、「ロールスタンド」の有用性について、「…例えば軸方向の移動を行うことにより、圧延材料によって生じる表面の摩耗、特に圧延材料のエッジによって引き起こされる摩耗の位置を、軸方向への移動によって拡散させる形で、またはレーキング処理によって拡散させる形でずらすことにより、ワークロールの耐用年数を延ばすことができる」旨が記載されている。ここで、「圧延材料」はワークロールを備えた「ロールスタンド」による圧延対象であると解されるから、甲2には、「ロールスタンド」が圧延材料の圧延を行うものであることが記載されているに等しい。甲2において、「…ワークロールを軸方向に移動させるための装置…」(【0005】)は、2つのワークロール(21)の軸方向移動のために設けられる部品(すなわち、ブロック(3)、上部スラストピース(13)、下部スラストピース(14)及び油圧シリンダ(27))の総称である。これらの部品は、「油圧シリンダ27の制御された加圧により、上部スラストピース13は軸平行に移動することができ、これに伴って、ロックバー22を取り囲むスラストピース13の支持面ならびにラッチ24の支持面を介してチョック18が動かされる。」(【0016】)との記載から明らかなように、チョック(18)に対して作用可能に設けられる。
甲2の図2(下記参考図1を参照)から、ブロック(3)の上部及び下部に、ブロック(3)に隣接するように2つの板状の“固定部材”がボルト(2)によってブロック(3)とともに直立スタンド(1)に固定されていることが看取される。このことから、ブロック3並びに上側及び下側の“固定部材”は、それぞれが分離可能な個別の単一部材であるとともに、ひとまとまりの“静止部”を形成するものである。これに対し、上部スラストピース(13)及び下部スラストピース(14)は、ブロック(3)内で軸方向に移動可能に保持されているから(【0006】)、上記構成の“固定部材”及びブロック3からなる“静止部”に対して軸方向に移動可能な“可動部”である。
甲2の図1から、ブロック(3)は、直立スタンド(1)のうちワークロール(21)の側方に位置する部分に固定されていることが看取される。甲2の図2から、上部スラストピース(13)が、ブロック(3)と上側の“固定部材”(図2、下記参考図1を参照)との間に配置されていること、及び、下部スラストピース(14)が、ブロック(3)と下側の“固定部材”(図2、下記参考図1を参照)との間に配置されていることが看取される。
<参考図1(甲第2号証の図2に基づく、審判請求書第48ページ)>
[図:0001424516000009.jpg]
ウ 以上から、甲2には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。
〔甲2発明〕
「ロールスタンドであって、このロールスタンドが、
直立スタンド1と、
前記直立スタンド1にチョック50を用いて装着されており且つ互いに相対的に軸線方向に移動可能である、ワークロール21と、及び、
前記ワークロール21のチョック50に所属して設けられており、且つ、このチョック50に対して作用可能である、ワークロールを軸方向に移動するための装置を備えており、
前記装置が、
ブロック3と、
上部スラストピース13、下部スラストピース14と、及び、前記上部スラストピース13及び下部スラストピース14に所属して設けられた、油圧シリンダ27とを有しており、
この油圧シリンダ27によって、前記上部スラストピース13、下部スラストピース14が、前記ブロック3に対して相対的に移動可能である
ロールスタンド。」
(3)甲3
ア 甲3(平成24年5月9日発行)には、以下の記載がある。
「【0050】
図1に示すように、6段圧延機51は、金属板である圧延材(鋼板)1に直接接して圧延する上下一対の作業ロール2と、この作業ロール2を夫々支持する上下一対の中間ロール3と、この中間ロール3を夫々支持する上下一対の補強ロール4とを備えている。作業ロール2及び中間ロール3のロール端には各々軸受箱8及び軸受箱9が取り付けられ、図2に示すように、これらの軸受箱8及び軸受箱9に垂直方向の力を作用させることにより各ロールを撓ませる作業ロールベンディング装置10及び中間ロールベンディング装置11が設置されている。そして、補強ロール4の軸受箱6を介して、ハウジング5で支持する構造としてある。」
「【0052】
尚、作業ロールベンディング装置10は、作業ロールに対して、インクリーズベンディングおよびデクリーズベンディングを与えることができる。」
「【0053】
また、上下一対の中間ロール3には、ロール軸方向に移動可能なようにロールシフト装置23(図3)が設置されている。このシフト装置23の例を図3を用いて説明する。中間ロール3の軸受箱9は、中間ロールオフセット装置19に挟まれ、その中間ロールオフセット装置19は、プロジェクトブロック17に嵌合しロール軸方向に移動可能なシフトブロック12に組み込まれている。ここで、中間ロールオフセット装置19は、中間ロール3を水平方向に移動させ、作業ロール2との相対位置を変える目的で設置しているが、構成、目的、作用の詳細については後述する。駆動側のシフトブロック12と中間ロール軸受箱9は、油圧シリンダ15により動作するキーパープレート14を介し連結され、さらに、操作側のシフトブロック12と駆動側のシフトブロック12は、ステー18により連結されている。これにより、中間ロール3とシフトブロック12は一体となる。そして、ハウジング5に固定されたシフトフレーム24には油圧シリンダ16が設置されており、駆動側のシフトブロック12と連結されている。このような構成によって、油圧シリンダ16を駆動することで中間ロール3及びシフトブロック12を、ロール軸方向で自由な位置に移動させることが可能となる。特に、中間ロールオフセット装置19には、中間ロールベンディング装置11が内蔵してあるため、中間ロール3をロール軸方向にシフトしても、かつ/または中間ロール3を水平方向に移動しても、ベンディング力の作用点は変わらないという特徴を備えている。」
図1
「
[図:0001424516000010.jpg]
」
図2
「
[図:0001424516000011.jpg]
」
図3
「
[図:0001424516000012.jpg]
」
イ 上記ア及び図面の図示内容から、甲3には以下の事項が記載されているといえる。
甲3の図2から、プロジェクトブロック17がハウジング5の窓(左右ハウジング5間の距離が拡大している部分;【図2】)の最上部及び最下部のそれぞれに配置されていることが看取される。
甲3の図3から、プロジェクトブロック17がハウジング5に組付けられていること、及び、油圧シリンダ16のピストンロッドの端部がシフトブロック12に結合されていることが看取される。
ウ 以上から、甲3には、以下の技術事項が記載されている。〔甲3記載の技術事項〕(甲3記載の技術事項1)ハウジング5と、軸受箱9に支持される上下一対の中間ロール3と、中間ロール3をロール軸方向で自由な位置に移動させることが可能なシフト装置23と、を備える6段圧延機51【0050】)。(甲3記載の技術事項2)シフト装置23が、軸受箱9に連結されるとともに中間ロールベンディング装置11が組み込まれるシフトブロック12と、シフトブロック12をロール軸方向に移動可能に支持するプロジェクトブロック17と、シフトブロック12に連結される油圧シリンダ16と、を含むこと(【0053】)。(甲3記載の技術事項3)プロジェクトブロック17が、ハウジング5の窓(左右ハウジング間の距離が拡大している部分;【図2】)の最上部及び最下部のそれぞれに配置されており(【図2】)、かつ、ハウジング5に組付けられている(【図3】)こと。(甲3記載の技術事項4)油圧シリンダ16のシリンダ部がハウジング5に固定されるシフトフレーム24に設置されているとともに(【0053】)、油圧シリンダ16のピストンロッドの端部がシフトブロック12に結合されていること(【図3】)。
(4)甲4
甲4(昭和34年5月10日発行)には、以下の記載がある。
61ページ左欄
「圧延機用部品の種類は圧延機の形式に関係なくほぼ共通である。たとえば冷間圧延機に使用される鋳鍛鋼部品を例にあげると、ロール以外の主要部品としてはロールハウジング、圧下ネジ、メタルチョックなどのロールハウジングに組み込まれ直接材料の圧延に関与する部分、減速ギヤ、駆動軸、ピニオンおよびそのハウジング、スピンドルおよびカップリングなどの圧延機の駆動機部品、さらに圧延機付属機器部品としてテンションロール、リールシャフトおよび同部品などがある。」
2 甲1発明の新規性及び進歩性
(1)本件発明1と甲1発明との対比及び判断
ア 対比
本件発明1と甲1発明を対比すると、
甲1発明の「熱間連続圧延機」は本件発明1の「圧延装置」に相当する。
以下同様に、
「ハウジング12」は「台架」に、
「ワークロールチョック16」は「チョック」に、
「上ワークロール11」及び「下ワークロール17」は「少なくとも2つのロール」に、
「ロールシフト機構」は「少なくとも1つの軸線方向移動装置」に、
「操作側固定ブロック1及び押さえ板13」は「固定ブロック」及び「複数の部材」に、
「操作側上移動ブロック3及び操作側下移動ブロック14」は「少なくとも1つの移動可能な曲げブロック」に、
「シフトシリンダー6」は「曲げブロックに所属して設けられた、少なくとも1つの移動シリンダー」に、それぞれ相当する。
また、甲1発明の「操作側固定ブロック1」と、本件発明1の「曲げブロックの保持及び案内のための中央の移動コンソール」を対比すると、「中央の移動コンソール」という点で一致する。
また、甲1発明の「押さえ板13」と、本件発明1の「曲げブロックの保持機能を引き受けるだけの別個の2つの保持条片」を対比すると、「別個の2つの保持条片」という点で一致する。
イ 一致点
本件発明1と甲1発明とは以下の点で一致する。
「圧延装置であって、この圧延装置が、
台架と、
前記台架にチョックを用いて装着されており且つ互いに相対的に軸線方向に移動可能である、少なくとも2つのロールと、及び、
前記ロールの内の少なくとも1つのロールのチョックに所属して設けられており、且つ、このチョックに対して作用可能である、少なくとも1つの軸線方向移動装置を備えており、
前記軸線方向移動装置が、
固定ブロックと、
少なくとも1つの移動可能な曲げブロックと、及び、前記曲げブロックに所属して設けられた、少なくとも1つの移動シリンダーとを有しており、
この移動シリンダーによって、前記曲げブロックが、前記固定ブロックに対して相対的に移動可能である、
様式の上記圧延装置において、
前記固定ブロックが、
複数の部材から成るように形成されており、且つ、
中央の移動コンソール、及び、この移動コンソールから分離された、別個の2つの保持条片を有しており、
これら保持条片が、前記移動コンソールに対して隣接して、それぞれに、この移動コンソールの上側及び下側に配置されており、
中央の前記移動コンソールが、個別部材として形成されている、
圧延装置。」
ウ 相違点
本件発明1と甲1発明とは以下の点で相違する。
<相違点1>
固定ブロックの中央の移動コンソールの機能について、本件発明1は、曲げブロックの保持及び案内のためのものであるのに対して、甲1発明では、中央の移動コンソール(操作側固定ブロック1)の機能について特定がない点。
<相違点2>
固定ブロックの別個の2つの保持条片の機能について、本件発明1は、曲げブロックの保持機能を引き受けるだけの機能であるのに対して、甲1発明では、別個の2つの保持条片(押さえ板13)の機能について特定がない点。
<相違点3>
固定ブロックの保持条片が、本件発明1では、台架の圧延ロールスタンドに組み付けられているのに対して、甲1発明では、操作側固定ブロック1の上側及び下側に配置されている点。
エ 相違点の検討
<相違点1>の検討
甲1には、中央の移動コンソール(操作側固定ブロック1)の機能について、曲げブロック(操作側上移動ブロック3及び操作側下移動ブロック14)の保持及び案内をすることの記載はない。
具体的に検討すると、甲1には、前記1(1)の構成が開示されているのみであって、中央の移動コンソールの機能として、曲げブロックの保持及び案内をすることは記載されておらず、中央の移動コンソールの形状から曲げブロックの保持及び案内していることが明らかであるともいえない。
また、中央の移動コンソールが曲げブロックの保持及び案内をしていることについて、甲3記載の技術的事項や、甲2又は甲4から導かれる周知技術から容易に想到し得たともいえず、また、他に技術常識であったことを示す証拠も存在しないから、相違点1は、甲1発明及び甲2~4の記載に基づいて、当業者が容易に想到できたものとはいえない。
そして、中央の移動コンソールの機能については、本件訂正より新たに限定された事項であるところ、請求人は甲1発明が相違点1に係る本件発明1の構成を有していないことについて、前記第3の3(4)に示した弁駁書のとおり、何ら主張をしていない。
<相違点2>の検討
甲1には、別個の2つの保持条片(押さえ板13)の機能について曲げブロック(操作側上移動ブロック3及び操作側下移動ブロック14)の保持機能を引き受けるだけの機能である点について記載がない。
具体的に検討すると、甲1には、前記1(1)の構成が開示されているのみであって、別個の2つの保持条片の機能について曲げブロックの保持機能を引き受けるだけの機能であることは記載されておらず、別個の2つの保持条片の形状からみて、曲げブロックの保持機能を引き受けるだけの機能であることが明らかであるともいえない。
また、別個の2つの保持条片の機能について曲げブロックの保持機能を引き受けるだけの機能であることについて、甲3記載の技術的事項や、甲2又は甲4から導かれる周知技術から容易に想到し得たともいえず、また、他に技術常識であったことを示す証拠も存在しないから、相違点2は、甲1発明及び甲2~4の記載に基づいて、当業者が容易に想到できたものとはいえない。
そして、別個の2つの保持条片の機能については、本件訂正より新たに限定された事項であるところ、請求人は甲1発明が相違点2に係る本件発明1の構成を有していないことについて、前記第3の3(4)に示した弁駁書のとおり、何ら主張をしていない。
<相違点3>の検討
甲1には、前記1(1)の構成が開示されているのみであって、固定ブロックの保持条片が組み付けられる対象が、台架の圧延ロールスタンドであることについて記載されていない。
また、台架の圧延ロールスタンドに組み付けることについて、甲3記載の技術的事項や、甲2又は甲4から導かれる周知技術から容易に想到し得たともいえず、また、他に技術常識であったことを示す証拠も存在しないから、相違点3は、甲1発明及び甲2~4の記載に基づいて、当業者が容易に想到できたものとはいえない。
オ 本件発明1と甲1発明の対比及び判断の小括
以上のとおり、本件発明1と甲1発明とを対比すると、相違点1~3が存在するから、本件発明1が甲1発明であるとはいえない。
また、本件発明1は、甲1発明、甲3記載の技術的事項、並びに、甲2及び甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件発明1と甲2発明の対比及び判断
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比すると、
甲2発明の「ロールスタンド」は本件発明1の「圧延装置」に相当する。
以下同様に、
「直立スタンド1」は「台架」に、
「チョック50」は「チョック」に、
「ワークロール21」は「少なくとも2つのロール」に、
「ワークロールを軸方向に移動するための装置」は「少なくとも1つの軸線方向移動装置」に、
「ブロック3」は「固定ブロック」及び「中央の移動コンソール」に、
「上部スラストピース13、下部スラストピース14」は「少なくとも1つの移動可能な曲げブロック」に、
「油圧シリンダ27」は「曲げブロックに所属して設けられた、少なくとも1つの移動シリンダー」に、それぞれ相当する。
イ 一致点
本件発明1と甲2発明とは以下の点で一致する。
「圧延装置であって、この圧延装置が、
台架と、
前記台架にチョックを用いて装着されており且つ互いに相対的に軸線方向に移動可能である、少なくとも2つのロールと、及び、
前記ロールの内の少なくとも1つのロールのチョックに所属して設けられており、且つ、このチョックに対して作用可能である、少なくとも1つの軸線方向移動装置を備えており、
前記軸線方向移動装置が、
固定ブロックと、
少なくとも1つの移動可能な曲げブロックと、及び、前記曲げブロックに所属して設けられた、少なくとも1つの移動シリンダーとを有しており、
この移動シリンダーによって、前記曲げブロックが、前記固定ブロックに対して相対的に移動可能であり、
固定ブロックが、中央の移動コンソールを有している
圧延装置。」
ウ 相違点
本件発明1と甲2発明とは以下の点で相違する。
<相違点1>
中央の移動コンソールが、本件発明1は「曲げブロックの保持及び案内」の機能を有しているのに対して、甲2発明は移動コンソール(ブロック3)の機能についての特定がない点。
<相違点2>
固定ブロックが、本件発明1は「複数の部材から成るように形成」されており、「移動コンソールから分離された、曲げブロックの保持機能を引き受けるだけの別個の2つの保持条片」を有しており、「これら保持条片が、前記移動コンソール(116)に対して隣接して、それぞれに、この移動コンソールの上側および下側に配置されており、且つ、前記台架(102)の圧延ロールスタンドに組み付けられて」いるに対して、甲2発明では、そのような保持条片について特定されていない点。
エ 相違点の検討
<相違点1>の検討
甲2には、中央の移動コンソール(ブロック3)が、曲げブロック(上部スラストピース13、下部スラストピース14)の保持及び案内の機能を有しているとの記載はなく、中央の移動コンソールの形状から、曲げブロックの保持及び案内の機能を有しているとも認められない。
また、中央の移動コンソールが曲げブロックの保持及び案内をしていることについて、甲3記載の技術的事項や、甲1又は甲4から導かれる周知技術から容易に想到し得たともいえず、また、他に技術常識であったことを示す証拠も存在しないから、相違点1は、甲2発明及び甲1、3~4の記載に基づいて、当業者が容易に想到できたものとはいえない。
そして、中央の移動コンソールの機能については、本件訂正より新たに限定された事項であるところ、請求人は甲2発明が相違点1に係る本件発明1の構成を有していないことについて反論をしていない。
<相違点2>の検討
保持条片について、甲2の“固定部材”が相当するかを検討すると、甲2には“固定部材”の具体的な記載はなく、“固定部材”がいかなる形態でどのような機能を有するのか、明らかではない。したがって、甲2の“固定部材”は、本件発明1の「曲げブロックの保持機能を引き受けるだけの別個の2つの保持条片」に相当するものとはいえない。
また、「曲げブロックの保持機能を引き受けるだけ」の機能を有する保持条片について、甲3記載の技術的事項や、甲1又は甲4から導かれる周知技術から容易に想到し得たともいえず、また、他に技術常識であったことを示す証拠も存在しないから、相違点2は、甲21発明及び甲1、3~4の記載に基づいて、当業者が容易に想到できたものとはいえない。
そして、保持条片の機能については、本件訂正より新たに限定された事項であるところ、請求人は甲2発明が相違点2に係る本件発明1の構成を有していないことについて反論をしていない。
オ 本件発明1と甲2発明の対比及び判断の小括
以上のとおり、本件発明1と甲2発明とを対比すると、相違点1~2が存在するから、本件発明1が甲2発明であるとはいえない。
また、本件発明1は、甲2発明、甲3記載の技術的事項、並びに、甲1及び甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3 本件発明2~10の新規性及び進歩性
本件発明2~10は、本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て含むから、本件発明1と同様に、本件発明4~7及び10は、甲1発明であるとはいえないし、本件発明4~7は、甲2発明であるともいえない。
また、本件発明2~10は、甲1発明、甲3記載の技術的事項、並びに、甲2及び甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲2発明、甲3記載の技術的事項、並びに、甲1及び甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
4 無効理由1及び2についての小括
したがって、本件発明1、4~7及び10に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものとはいえないし、本件発明1~10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。
よって、請求人が主張する無効理由1及び2により、本件特許の請求項1~10に係る特許を無効とすることはできない。
第8 無効理由3の当審の判断について
1 請求項3の「ロッド材料」の明確性について
請求人は、(i)「ロッド材料」は、軸方向に沿った寸法と、鉛直方向に沿った寸法とのアスペクト比が1に近いものであり、一般的なロッドの用語の範疇を超え、どのような材料を含むのか明確ではない(上記第5の1(3)(i))と主張する。
しかしながら、本件特許の図面の図2における移動コンソール116は、「T字形」の頂辺(頭部)の長さが、図4における従来の固定ブロック10のものより著しく短縮されており、移動コンソール116を軸方向に視たときの鉛直方向における移動コンソール116の縦横の寸法に比べて軸方向における移動コンソール116の寸法が大きくなっている。
したがって、図2に示された実施例の移動コンソール116は、長尺な「ロッド材料」を利用して製造された長尺な部材であり、「ロッド材料」は、軸方向に沿った寸法と、鉛直方向に沿った寸法とのアスペクト比が1に近いもの、との指摘には当たらない。
そして、図2に示された「移動コンソール116」は、軸線方向に延びる長尺部材であるから、「ロッド材料から製造されている」ものというべきである。
したがって、請求項3の「ロッド材料」という記載は明確である。
2 請求項3の「鍛造されたロッド材料」の明確性について
請求人は、(ii)「移動コンソール」が、「鍛造されたロッド材」から製造されたのかが不明である(上記第5の1(3)(ii))と主張する。
しかしながら、図2に示された移動コンソール116は、「ロッド材料」の長尺な形状を喪失しておらず、入手可能な半製品の様式の標準規格寸法もしくは標準規格材料としての適当な「ロッド材料」を選択し、必要に応じてその長さを整えたり、曲げブロックを案内するための面を平滑にフライス加工したりするなどの最小限の加工を加えることはあっても、ほぼ元の「ロッド材料」を活かして移動コンソール116を製造していることが当業者に明らかである。
そして、元の「ロッド材料」に必要最小限の加工を加えることがあったとしても、鍛造により形成された表面が全て失われるわけではないし、いずれにしろ内部には鍛造によりもたらされる組織の構造が残されているのであるから、当業者が「鍛造されたロッド材料から製造されていること」を判別することは可能である。
したがって、請求項3の「鍛造されたロッド材料」という記載は明確である。
3 以上のことからすれば、本件発明3及び本件発明3を引用する本件発明4~10は明確であるから、本件発明3~10に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。
よって、請求人が主張する無効理由3により、本件特許の請求項3~10に係る特許を無効とすることはできない。
第9 むすび
以上のとおりであるから、無効理由1~3はいずれも理由がないものであり、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1~10についての特許は、無効理由1~3によっては、無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-800043