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特許異議申立

2023-700078

樹脂組成物、樹脂層付き支持体、プリプレグ、積層板、多層プリント配線板及びミリ波レーダー用プリント配線板

審判番号
2023-700078
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-528835
登録番号
7107218
請求日
2023年01月26日
審決日
2024年07月04日
公報発行日
2024年10月25日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社レゾナック
  • 【権利者代理人】長谷川 芳樹
  • 【権利者代理人】清水 義憲
  • 【権利者代理人】平野 裕之
  • 【権利者代理人】吉住 和之
  • 【権利者代理人】篠田 真由美
  • 【異議申立人】斎藤 敏子
審判長/審判官
  • 審判長 ▲吉▼澤 英一
  • 審判官 小出 直也
  • 審判官 近野 光知
分類
P1652.121-YAA(C08L) / P1652.537-YAA(C08L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8第1項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第9項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7107218号発明「樹脂組成物、樹脂層付き支持体、プリプレグ、積層板、多層プリント配線板及びミリ波レーダー用プリント配線板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7107218号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕、〔8-15〕、〔16-23〕、〔24-31〕、〔32-40〕、〔41-48〕について訂正することを認める。 特許第7107218号の請求項2~4、6、9~11、13、15、17~19、21、23、25~27、29、31、33~35、37、39、40、42~44、46、48に係る特許を維持する。 特許第7107218号の請求項1、5、8、12、16、20、24、28、32、36、41、45についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7107218号(以下、「本件特許」という。)は、平成29年7月19日(優先権主張 平成28年7月20日 日本国(JP))を国際出願日とする特許出願(特願2018-528835号)に係るものであって、令和4年7月19日にその特許権の設定登録(請求項の数48)がされ、同年同月27日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和5年1月26日に特許異議申立人 斎藤 敏子(以下「申立人」という。)により、本件特許の請求項1~6、8~13、15~21、23~29、31~37、39~46、48に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。 本件特許異議の申立て以降における手続の経緯は、以下のとおりである。 令和5年 5月30日付け: 取消理由通知 同年 7月31日 : 意見書及び訂正請求書の提出(特許権者) 同年 8月10日付け: 訂正請求があった旨の通知(申立人宛) 同年10月31日付け: 訂正拒絶理由通知 同年12月 5日 : 意見書の提出(特許権者) 令和6年 1月23日付け: 取消理由通知(決定の予告) 同年 3月27日 : 意見書及び訂正請求書の提出(特許権者) 同年 4月 4日付け: 訂正請求があった旨の通知(申立人宛) なお、令和5年8月10日付け及び令和6年4月4日付けの通知に対して、申立人からの意見書の提出はなかった。 また、令和5年7月31日の訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和6年3月27日に特許権者が行った訂正の請求は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~48について訂正することを求めるものであって、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所であり、当審が付した。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「前記(B)非ハロゲン系難燃剤がフェノール系酸化防止剤を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。」とあるのを、 「(A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有し、 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基であり、 前記(B)非ハロゲン系難燃剤がフェノール系酸化防止剤を含む、樹脂組成物であって、 前記樹脂組成物の硬化物の10GHzでの比誘電率が3.6以下である、樹脂組成物。 【化13】 [図:0001415256000001.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。]」 に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に「前記(B)非ハロゲン系難燃剤がホスファイト系酸化防止剤を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。」とあるのを、 「(A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有し、 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基であり、 前記(B)非ハロゲン系難燃剤がホスファイト系酸化防止剤を含む、樹脂組成物であって、 前記樹脂組成物の硬化物の10GHzでの比誘電率が3.6以下である、樹脂組成物。 【化14】 [図:0001415256000002.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。]」 に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に「前記(B)非ハロゲン系難燃剤がチオエーテル系酸化防止剤を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。」とあるのを、 「(A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有し、 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基であり、 前記(B)非ハロゲン系難燃剤がチオエーテル系酸化防止剤を含む、樹脂組成物であって、 前記樹脂組成物の硬化物の10GHzでの比誘電率が3.6以下である、樹脂組成物。 【化15】 [図:0001415256000003.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。]」 に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6に「請求項1~5のいずれか一項」とあるのを、「請求項2~4のいずれか一項」に訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項7に「請求項1~6のいずれか一項」とあるのを、「請求項2~4のいずれか一項」に訂正する。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項8を削除する。 (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項9に「前記(B)非ハロゲン系難燃剤がフェノール系酸化防止剤を含む、請求項8に記載の樹脂層付き支持体。」とあるのを、 「(A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有し、 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基であり、 前記(B)非ハロゲン系難燃剤がフェノール系酸化防止剤を含む、樹脂組成物を含む樹脂層及び支持基材を備える、樹脂層付き支持体。 【化16】 [図:0001415256000004.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。]」に訂正する。 (10)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項10に「前記(B)非ハロゲン系難燃剤がホスファイト系酸化防止剤を含む、請求項8に記載の樹脂層付き支持体。」とあるのを、 「(A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有し、 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基であり、 前記(B)非ハロゲン系難燃剤がホスファイト系酸化防止剤を含む、樹脂組成物を含む樹脂層及び支持基材を備える、樹脂層付き支持体。 【化17】 [図:0001415256000005.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。]」 に訂正する。 (11)訂正事項11 特許請求の範囲の請求項11に「前記(B)非ハロゲン系難燃剤がチオエーテル系酸化防止剤を含む、請求項8に記載の樹脂層付き支持体。」とあるのを、 「(A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有し、 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基であり、 前記(B)非ハロゲン系難燃剤がチオエーテル系酸化防止剤を含む、樹脂組成物を含む樹脂層及び支持基材を備える、樹脂層付き支持体。 【化18】 [図:0001415256000006.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。]」に訂正する。 (12)訂正事項12 特許請求の範囲の請求項12を削除する。 (13)訂正事項13 特許請求の範囲の請求項13に「請求項8~12のいずれか一項」とあるのを、「請求項9~11のいずれか一項」に訂正する。 (14)訂正事項14 特許請求の範囲の請求項14に「請求項8~13のいずれか一項」とあるのを、「請求項9~11のいずれか一項」に訂正する。 (15)訂正事項15 特許請求の範囲の請求項15に「請求項8~14のいずれか一項」とあるのを、「請求項9~11、13及び14のいずれか一項」に訂正する。 (16)訂正事項16 特許請求の範囲の請求項16を削除する。 (17)訂正事項17 特許請求の範囲の請求項17に「前記(B)非ハロゲン系難燃剤がフェノール系酸化防止剤を含む、請求項16に記載のプリプレグ。」とあるのを、 「(A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有し、 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基であり、 前記(B)非ハロゲン系難燃剤がフェノール系酸化防止剤を含む、樹脂組成物と、繊維基材と、から構成される、プリプレグ。 【化19】 [図:0001415256000007.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。]」に訂正する。 (18)訂正事項18 特許請求の範囲の請求項18に「前記(B)非ハロゲン系難燃剤がホスファイト系酸化防止剤を含む、請求項16に記載のプリプレグ。」とあるのを、 「(A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有し、 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基であり、 前記(B)非ハロゲン系難燃剤がホスファイト系酸化防止剤を含む、樹脂組成物と、繊維基材と、から構成される、プリプレグ。 【化20】 [図:0001415256000008.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。]」に訂正する。 (19)訂正事項19 特許請求の範囲の請求項19に「前記(B)非ハロゲン系難燃剤がチオエーテル系酸化防止剤を含む、請求項16に記載のプリプレグ。」とあるのを、 「(A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有し、 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基であり、 前記(B)非ハロゲン系難燃剤がチオエーテル系酸化防止剤を含む、樹脂組成物と、繊維基材と、から構成される、プリプレグ。 【化21】 [図:0001415256000009.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。]」に訂正する。 (20)訂正事項20 特許請求の範囲の請求項20を削除する。 (21)訂正事項21 特許請求の範囲の請求項21に「請求項16~20のいずれか一項」とあるのを、「請求項17~19のいずれか一項」に訂正する。 (22)訂正事項22 特許請求の範囲の請求項22に「請求項16~21のいずれか一項」とあるのを、「請求項17~19のいずれか一項」に訂正する。 (23)訂正事項23 特許請求の範囲の請求項23に「請求項16~22のいずれか一項」とあるのを、「請求項17~19、21及び22のいずれか一項」に訂正する。 (24)訂正事項24 特許請求の範囲の請求項24を削除する。 (25)訂正事項25 特許請求の範囲の請求項25に「前記(B)非ハロゲン系難燃剤がフェノール系酸化防止剤を含む、請求項24に記載の積層板。」とあるのを、 「(A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有し、 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基であり、 前記(B)非ハロゲン系難燃剤がフェノール系酸化防止剤を含む、樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層と、導体層と、を有する積層板。 【化22】 [図:0001415256000010.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。]」 に訂正する。 (26)訂正事項26 特許請求の範囲の請求項26に「前記(B)非ハロゲン系難燃剤がホスファイト系酸化防止剤を含む、請求項24に記載の積層板。」とあるのを、 「(A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有し、 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基であり、 前記(B)非ハロゲン系難燃剤がホスファイト系酸化防止剤を含む、樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層と、導体層と、を有する積層板。 【化23】 [図:0001415256000011.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。]」 に訂正する。 (27)訂正事項27 特許請求の範囲の請求項27に「前記(B)非ハロゲン系難燃剤がチオエーテル系酸化防止剤を含む、請求項24に記載の積層板。」とあるのを、 「(A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有し、 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基であり、 前記(B)非ハロゲン系難燃剤がチオエーテル系酸化防止剤を含む、樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層と、導体層と、を有する積層板。 【化24】 [図:0001415256000012.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。]」 に訂正する。 (28)訂正事項28 特許請求の範囲の請求項28を削除する。 (29)訂正事項29 特許請求の範囲の請求項29に「請求項24~28のいずれか一項」とあるのを、「請求項25~27のいずれか一項」に訂正する。 (30)訂正事項30 特許請求の範囲の請求項30に「請求項24~29のいずれか一項」とあるのを、「請求項25~27のいずれか一項」に訂正する。 (31)訂正事項31 特許請求の範囲の請求項31に「請求項24~30のいずれか一項」とあるのを、「請求項25~27、29及び30のいずれか一項」に訂正する。 (32)訂正事項32 特許請求の範囲の請求項32を削除する。 (33)訂正事項33 特許請求の範囲の請求項33に「前記(B)非ハロゲン系難燃剤がフェノール系酸化防止剤を含む、請求項32に記載の多層プリント配線板。」とあるのを、 「(A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有し、 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基であり、 前記(B)非ハロゲン系難燃剤がフェノール系酸化防止剤を含む、樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層と、少なくとも3層の回路層とを備える、多層プリント配線板。 【化25】 [図:0001415256000013.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。]」 に訂正する。 (34)訂正事項34 特許請求の範囲の請求項34に「前記(B)非ハロゲン系難燃剤がホスファイト系酸化防止剤を含む、請求項32に記載の多層プリント配線板。」とあるのを、 「(A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有し、 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基であり、 前記(B)非ハロゲン系難燃剤がホスファイト系酸化防止剤を含む、樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層と、少なくとも3層の回路層とを備える、多層プリント配線板。 【化26】 [図:0001415256000014.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。]」 に訂正する。 (35)訂正事項35 特許請求の範囲の請求項35に「前記(B)非ハロゲン系難燃剤がチオエーテル系酸化防止剤を含む、請求項32に記載の多層プリント配線板。」とあるのを、 「(A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有し、 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基であり、 前記(B)非ハロゲン系難燃剤がチオエーテル系酸化防止剤を含む、樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層と、少なくとも3層の回路層とを備える、多層プリント配線板。 【化27】 [図:0001415256000015.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。]」 に訂正する。 (36)訂正事項36 特許請求の範囲の請求項36を削除する。 (37)訂正事項37 特許請求の範囲の請求項37に「請求項32~36のいずれか一項」とあるのを「請求項33~35のいずれか一項」に訂正する。 (38)訂正事項38 特許請求の範囲の請求項38に「請求項32~37のいずれか一項」とあるのを「請求項33~35のいずれか一項」に訂正する。 (39)訂正事項39 特許請求の範囲の請求項39に「請求項32~38のいずれか一項」とあるのを「請求項33~35、37及び38のいずれか一項」に訂正する。 (40)訂正事項40 特許請求の範囲の請求項40に「請求項32~39のいずれか一項」とあるのを「請求項33~35及び37~39のいずれか一項」に訂正する。 (41)訂正事項41 特許請求の範囲の請求項41を削除する。 (42)訂正事項42 特許請求の範囲の請求項42に「前記(B)非ハロゲン系難燃剤がフェノール系酸化防止剤を含む、請求項41に記載のミリ波レーダー用プリント配線板。」とあるのを、 「(A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有し、 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基であり、 前記(B)非ハロゲン系難燃剤がフェノール系酸化防止剤を含む、樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層と、回路層とを備える、ミリ波レーダー用プリント配線板。 【化28】 [図:0001415256000016.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。]」 に訂正する。 (43)訂正事項43 特許請求の範囲の請求項43に「前記(B)非ハロゲン系難燃剤がホスファイト系酸化防止剤を含む、請求項41に記載のミリ波レーダー用プリント配線板。」とあるのを、 「(A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有し、 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基であり、 前記(B)非ハロゲン系難燃剤がホスファイト系酸化防止剤を含む、樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層と、回路層とを備える、ミリ波レーダー用プリント配線板。 【化29】 [図:0001415256000017.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。]」 に訂正する。 (44)訂正事項44 特許請求の範囲の請求項44に「前記(B)非ハロゲン系難燃剤がチオエーテル系酸化防止剤を含む、請求項41に記載のミリ波レーダー用プリント配線板。」とあるのを、 「(A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有し、 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基であり、 前記(B)非ハロゲン系難燃剤がチオエーテル系酸化防止剤を含む、樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層と、回路層とを備える、ミリ波レーダー用プリント配線板。 【化30】 [図:0001415256000018.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。]」 に訂正する。 (45)訂正事項45 特許請求の範囲の請求項45を削除する。 (46)訂正事項46 特許請求の範囲の請求項46に「請求項41~45のいずれか一項」とあるのを、「請求項42~44のいずれか一項」に訂正する。 (47)訂正事項47 特許請求の範囲の請求項47に「請求項41~46のいずれか一項」とあるのを、「請求項42~44のいずれか一項」に訂正する。 (48)訂正事項48 特許請求の範囲の請求項48に「請求項41~47のいずれか一項」とあるのを、「請求項42~44、46及び47のいずれか一項」に訂正する。 2 一群の請求項について (1)訂正前の請求項1~7において、請求項2~7はそれぞれ請求項1を引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 したがって、訂正前の請求項1~7に対応する訂正後の請求項1~7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 (2)訂正前の請求項8~15において、請求項9~15はそれぞれ請求項8を引用するものであって、訂正事項8によって記載が訂正される請求項8に連動して訂正されるものである。 したがって、訂正前の請求項8~15に対応する訂正後の請求項8~15は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 (3)訂正前の請求項16~23において、請求項17~23はそれぞれ請求項16を引用するものであって、訂正事項16によって記載が訂正される請求項16に連動して訂正されるものである。 したがって、訂正前の請求項16~23に対応する訂正後の請求項16~23は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 (4)訂正前の請求項24~31において、請求項25~31はそれぞれ請求項24を引用するものであって、訂正事項24によって記載が訂正される請求項24に連動して訂正されるものである。 したがって、訂正前の請求項24~31に対応する訂正後の請求項24~31は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 (5)訂正前の請求項32~40において、請求項33~40はそれぞれ請求項32を引用するものであって、訂正事項32によって記載が訂正される請求項32に連動して訂正されるものである。 したがって、訂正前の請求項32~40に対応する訂正後の請求項32~40は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 (6)訂正前の請求項41~48において、請求項42~48はそれぞれ請求項41を引用するものであって、訂正事項41によって記載が訂正される請求項41に連動して訂正されるものである。 したがって、訂正前の請求項41~48に対応する訂正後の請求項41~48は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1、5、8、12、16、20、24、28、32、36、41、45について 訂正事項1、5、8、12、16、20、24、28、32、36、41、45は、それぞれ請求項1、5、8、12、16、20、24、28、32、36、41、45を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。また、新規事項を追加するものでもなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項2~4、9~11、17~19、25~27、33~35、42~44について 訂正事項2~4、9~11、17~19、25~27、33~35、42~44は、訂正前の請求項2~4、9~11、17~19、25~27、33~35、42~44において、引用形式から独立形式に改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。また、新規事項を追加するものでもなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)訂正事項6、7、13~15、21~23、29~31、37~40、46~48について 訂正事項6、7、13~15、21~23、29~31、37~40、46~48は、訂正前の請求項6、7、13~15、21~23、29~31、37~40、46~48において、引用する請求項の一部を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。また、新規事項を追加するものでもなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 4 独立特許要件について 上記「第1 手続の経緯」で述べたとおり、本件特許異議の申立ては、本件請求項1~48に係る特許のうち請求項1~6、8~13、15~21、23~29、31~37、39~46、48に係る特許に対して申立てられたものであるから、請求項7、14、22、30、38、47に係る特許に対しては申立てられていない。 そして、訂正事項7、14、22、30、38、47による訂正前の請求項7、14、22、30、38、47についての訂正は、上記3で述べたとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、これらは独立して特許を受けることができるものでなければならない。 そこで、訂正後の請求項7、14、22、30、38、47に係る発明の独立特許要件について検討すると、後記「第5 当審の判断」で述べるように、本件訂正後の請求項2~4、9~11、17~19、25~27、33~35、42~44に係る発明には、特許を受けることができないとすべき理由があるとはいえないから、これらの請求項を引用する本件訂正後の請求項7、14、22、30、38、47に係る発明についても、同様に特許を受けることができないとすべき理由があるとはいえず、また他に特許を受けることができない理由を発見しないため、本件訂正後の請求項7、14、22、30、38、47に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるといえる。 したがって、訂正事項7、14、22、30、38、47による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法126条第7項の規定を満たす訂正であるといえる。 5 まとめ よって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる目的に適合し、また、同条第9項において準用する同法第126条第5項、第6項及び第7項の規定に適合するから、本件訂正を認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1~48に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1~48に記載される事項により特定される以下のとおりのものであると認める。 「【請求項1】(削除) 【請求項2】 (A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有し、 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基であり、 前記(B)非ハロゲン系難燃剤がフェノール系酸化防止剤を含む、樹脂組成物であって、 前記樹脂組成物の硬化物の10GHzでの比誘電率が3.6以下である、樹脂組成物。 【化13】 [図:0001415256000019.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。] 【請求項3】 (A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有し、 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基であり、 前記(B)非ハロゲン系難燃剤がホスファイト系酸化防止剤を含む、樹脂組成物であって、 前記樹脂組成物の硬化物の10GHzでの比誘電率が3.6以下である、樹脂組成物。 【化14】 [図:0001415256000020.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。] 【請求項4】 (A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有し、 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基であり、 前記(B)非ハロゲン系難燃剤がチオエーテル系酸化防止剤を含む、樹脂組成物であって、 前記樹脂組成物の硬化物の10GHzでの比誘電率が3.6以下である、樹脂組成物。 【化15】 [図:0001415256000021.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。] 【請求項5】(削除) 【請求項6】 前記少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基が、下記式(I)で表される基である、請求項2~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。 【化2】 [図:0001415256000022.jpg] [式(I)中、R1は4価の有機基を示す。] 【請求項7】 前記化合物とは異なるマレイミド基含有化合物を更に含有する、請求項2~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。 【請求項8】(削除) 【請求項9】 (A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有し、 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基であり、 前記(B)非ハロゲン系難燃剤がフェノール系酸化防止剤を含む、樹脂組成物を含む樹脂層及び支持基材を備える、樹脂層付き支持体。 【化16】 [図:0001415256000023.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。] 【請求項10】 (A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有し、 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基であり、 前記(B)非ハロゲン系難燃剤がホスファイト系酸化防止剤を含む、樹脂組成物を含む樹脂層及び支持基材を備える、樹脂層付き支持体。 【化17】 [図:0001415256000024.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。] 【請求項11】 (A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有し、 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基であり、 前記(B)非ハロゲン系難燃剤がチオエーテル系酸化防止剤を含む、樹脂組成物を含む樹脂層及び支持基材を備える、樹脂層付き支持体。 【化18】 [図:0001415256000025.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。] 【請求項12】(削除) 【請求項13】 前記少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基が、下記式(I)で表される基である、請求項9~11のいずれか一項に記載の樹脂層付き支持体。 【化4】 [図:0001415256000026.jpg] [式(I)中、R1は4価の有機基を示す。] 【請求項14】 前記樹脂組成物が、前記化合物とは異なるマレイミド基含有化合物を更に含有する、請求項9~11のいずれか一項に記載の樹脂層付き支持体。 【請求項15】 前記樹脂組成物の硬化物の10GHzでの比誘電率が3.6以下である、請求項9~11、13及び14のいずれか一項に記載の樹脂層付き支持体。 【請求項16】(削除) 【請求項17】 (A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有し、 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基であり、 前記(B)非ハロゲン系難燃剤がフェノール系酸化防止剤を含む、樹脂組成物と、繊維基材と、から構成される、プリプレグ。 【化19】 [図:0001415256000027.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。] 【請求項18】 (A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有し、 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基であり、 前記(B)非ハロゲン系難燃剤がホスファイト系酸化防止剤を含む、樹脂組成物と、繊維基材と、から構成される、プリプレグ。 【化20】 [図:0001415256000028.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。] 【請求項19】 (A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有し、 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基であり、 前記(B)非ハロゲン系難燃剤がチオエーテル系酸化防止剤を含む、樹脂組成物と、繊維基材と、から構成される、プリプレグ。 【化21】 [図:0001415256000029.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。] 【請求項20】(削除) 【請求項21】 前記少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基が、下記式(I)で表される基である、請求項17~19のいずれか一項に記載のプリプレグ。 【化6】 [図:0001415256000030.jpg] [式(I)中、R1は4価の有機基を示す。] 【請求項22】 前記樹脂組成物が、前記化合物とは異なるマレイミド基含有化合物を更に含有する、請求項17~19のいずれか一項に記載のプリプレグ。 【請求項23】 前記樹脂組成物の硬化物の10GHzでの比誘電率が3.6以下である、請求項17~19、21及び22のいずれか一項に記載のプリプレグ。 【請求項24】(削除) 【請求項25】 (A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有し、 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基であり、 前記(B)非ハロゲン系難燃剤がフェノール系酸化防止剤を含む、樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層と、導体層と、を有する積層板。 【化22】 [図:0001415256000031.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。] 【請求項26】 (A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有し、 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基であり、 前記(B)非ハロゲン系難燃剤がホスファイト系酸化防止剤を含む、樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層と、導体層と、を有する積層板。 【化23】 [図:0001415256000032.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。] 【請求項27】 (A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有し、 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基であり、 前記(B)非ハロゲン系難燃剤がチオエーテル系酸化防止剤を含む、樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層と、導体層と、を有する積層板。 【化24】 [図:0001415256000033.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。] 【請求項28】(削除) 【請求項29】 前記少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基が、下記式(I)で表される基である、請求項25~27のいずれか一項に記載の積層板。 【化8】 [図:0001415256000034.jpg] [式(I)中、R1は4価の有機基を示す。] 【請求項30】 前記樹脂組成物が、前記化合物とは異なるマレイミド基含有化合物を更に含有する、請求項25~27のいずれか一項に記載の積層板。 【請求項31】 前記樹脂組成物の硬化物の10GHzでの比誘電率が3.6以下である、請求項25~27、29及び30のいずれか一項に記載の積層板。 【請求項32】(削除) 【請求項33】 (A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有し、 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基であり、 前記(B)非ハロゲン系難燃剤がフェノール系酸化防止剤を含む、樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層と、少なくとも3層の回路層とを備える、多層プリント配線板。 【化25】 [図:0001415256000035.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。] 【請求項34】 (A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有し、 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基であり、 前記(B)非ハロゲン系難燃剤がホスファイト系酸化防止剤を含む、樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層と、少なくとも3層の回路層とを備える、多層プリント配線板。 【化26】 [図:0001415256000036.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。] 【請求項35】 (A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有し、 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基であり、 前記(B)非ハロゲン系難燃剤がチオエーテル系酸化防止剤を含む、樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層と、少なくとも3層の回路層とを備える、多層プリント配線板。 【化27】 [図:0001415256000037.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。] 【請求項36】(削除) 【請求項37】 前記少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基が、下記式(I)で表される基である、請求項33~35のいずれか一項に記載の多層プリント配線板。 【化10】 [図:0001415256000038.jpg] [式(I)中、R1は4価の有機基を示す。] 【請求項38】 前記樹脂組成物が、前記化合物とは異なるマレイミド基含有化合物を更に含有する、請求項33~35のいずれか一項に記載の多層プリント配線板。 【請求項39】 前記樹脂組成物の硬化物の10GHzでの比誘電率が3.6以下である、請求項33~35、37及び38のいずれか一項に記載の多層プリント配線板。 【請求項40】 請求項33~35及び37~39のいずれか一項に記載の多層プリント配線板のミリ波レーダーへの応用。 【請求項41】(削除) 【請求項42】 (A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有し、 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基であり、 前記(B)非ハロゲン系難燃剤がフェノール系酸化防止剤を含む、樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層と、回路層とを備える、ミリ波レーダー用プリント配線板。 【化28】 [図:0001415256000039.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。] 【請求項43】 (A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有し、 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基であり、 前記(B)非ハロゲン系難燃剤がホスファイト系酸化防止剤を含む、樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層と、回路層とを備える、ミリ波レーダー用プリント配線板。 【化29】 [図:0001415256000040.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。] 【請求項44】 (A)マレイミド基少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有し、 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基であり、 前記(B)非ハロゲン系難燃剤がチオエーテル系酸化防止剤を含む、樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層と、回路層とを備える、ミリ波レーダー用プリント配線板。 【化30】 [図:0001415256000041.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。] 【請求項45】(削除) 【請求項46】 前記少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基が、下記式(I)で表される基である、請求項42~44のいずれか一項に記載のミリ波レーダー用プリント配線板。 【化12】 [図:0001415256000042.jpg] [式(I)中、R1は4価の有機基を示す。] 【請求項47】 前記樹脂組成物が、前記化合物とは異なるマレイミド基含有化合物を更に含有する、請求項42~44のいずれか一項に記載のミリ波レーダー用プリント配線板。 【請求項48】 前記樹脂組成物の硬化物の10GHzでの比誘電率が3.6以下である、請求項42~44、46及び47のいずれか一項に記載のミリ波レーダー用プリント配線板。」 (以下、本件特許の請求項1~48に係る発明を、それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」・・・のようにいい、これらのうち削除されていない請求項に係る発明をまとめて「本件発明」という。また、本件特許の願書に添付された明細書を「本件明細書」という。) 第4 申立理由の概要、証拠方法、取消理由の概要 1 申立理由の概要 特許異議申立書に記載した申立理由の概要は次のとおりである。 申立理由1(甲1による進歩性)本件特許の請求項1~6、8~13、15~21、23~29、31~37、39~46、48に係る発明は、下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 申立理由2(甲7による進歩性)本件特許の請求項1~6、8~13、15~21、23~29、31~37、39~46、48に係る発明は、下記の甲第7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 申立理由3(甲8による進歩性)本件特許の請求項1~6、8~13、15~21、23~29、31~37、39~46、48に係る発明は、下記の甲第8号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 申立理由4(サポート要件)本件特許の請求項1~6、8~13、15~21、23~29、31~37、39~46、48に係る発明に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 2 証拠方法 申立人が特許異議申立書に添付した証拠方法は、次のとおりである。 甲第1号証:国際公開第2015/152427号 甲第2号証:国際公開第2015/048575号及びその抄訳文 甲第3号証:特開2014-001289号公報 甲第4号証:特開2014-194013号公報 甲第5号証:春名 徹 編著、高分子添加剤ハンドブック、株式会社シーエムシー出版発行、2014年7月20日発行、第1版第2刷、表紙、21~48頁、奥付 甲第6号証:特開2016-040797号公報 甲第7号証:特開2016-060840号公報 甲第8号証:特開2013-199645号公報 (以下、それぞれ「甲1」~「甲8」のようにいう。) 3 取消理由の概要 当審が、令和6年1月23日付けの取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由の概要は次のとおりである。 取消理由1(甲2による進歩性)本件特許の請求項1、5、6、8、12、13、15、16、20、21、23、24、28、29、31、32、36、37、39~41、45、46、48に係る発明は、甲2に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 第5 当審の判断 当審は、以下に述べるように、上記取消理由1及び特許異議申立書に記載した申立理由1~4によっては、本件特許の請求項2~4、6、9~11、13、15、17~19、21、23、25~27、29、31、33~35、37、39、40、42~44、46、48に係る特許を取り消すことはできないものと判断する。 そして、本件特許の請求項1、5、8、12、16、20、24、28、32、36、41、45は、上記のとおり、本件訂正請求により削除された。これにより、これらの請求項に係る特許に対する申立人による特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 1 取消理由1について 取消理由1は、本件特許の 請求項1、5及びそれらを引用する請求項6 請求項8、12及びそれらを引用する請求項13、15 請求項16、20及びそれらを引用する請求項21、23 請求項24、28及びそれらを引用する請求項29、31 請求項32、36及びそれらを引用する請求項37、39、40 請求項41、45及びそれらを引用する請求項46、48 に係る特許について指摘したものであるが、上記のとおり請求項1、5、8、12、16、20、24、28、32、36、41、45は訂正請求により削除された。 そこで、以下、請求項6、13、15、21、23、29、31、37、39、40、46、48についての取消理由1について検討する。 (1)甲2に記載された事項 甲2には、次の事項が記載されている。なお、甲2は英語で記載されているため、申立書p63~71に記載された抄訳文を参考に、当審の訳を示す。 「1. a)少なくとも1つの低誘電率、低誘電正接の樹脂、及び b)接着促進剤、硬化触媒、阻害剤、充填剤、難燃剤及び反応性希釈剤からなる群から選択される少なくとも1つの化合物 を含む硬化性組成物。 2.少なくとも1つの低誘電率、低誘電正接の樹脂が、マレイミド末端ポリイミドを含む、請求項1に記載の組成物。 3.マレイミド末端ポリイミドが、以下からなる群 [図:0001415256000043.jpg] [図:0001415256000044.jpg] (式中、mの値は50~1000の整数であり、nの値は1~10の整数である。) から選択される、請求項2に記載の組成物。」(特許請求の範囲第1~3項) 「[0002]本発明は、低誘電率および低誘電正接のポリマー、フィルム、接着剤、およびそれを使用した電子部品、特に、マレイミド末端ポリイミド樹脂、官能化ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエンをパーフルオロ炭化水素フィラーおよびPOSSナノ粒子とともに含む組成物に関する。 背景技術 [0003]通信情報の急激な増加に伴い、高密度実装のための電子機器の小型化、軽量化、高速化が強く求められている。電子産業では、高周波環境での動作に適した低誘電電気絶縁材料とポリマーに対する需要が高まっている。」 「[0007]交流電場のサイクルごとに誘電体材料で消費されるエネルギーとそこに蓄えられるエネルギーとの比は、誘電正接として知られている。材料の誘電損失は、比誘電率に誘電正接を掛けた値に比例する。したがって、高周波領域では、周波数が高くなるにつれて誘電正接が増加する。電子機器の高密度実装により、単位面積当たりの放熱量が増加する。誘電損失を減らすには、誘電正接の低い絶縁材料を使用する必要がある。誘電損失の少ない低誘電ポリマーを用いると、誘電損失や電気抵抗による発熱が抑えられ、信号の誤動作が少なくなる。このため、高周波通信分野では伝送損失やエネルギー損失の少ない材料が強く望まれている。 [0008]良好な絶縁特性と低誘電率を有する多くの異なるポリマーが、電子用途で使用されてきた。理想的な材料は、誘電率が低く、誘電正接が低く、膜形成特性が良好で、耐熱性が高く、さまざまな基材への接着性が高く、吸湿量が非常に少ないものである。多くの用途で非常に重要なその他の特性には、低製造コスト、低燃焼性、優れた耐薬品性、および低イオン性が含まれる。これまでのところ、これらの優れた特性をすべて満たす材料はない。」 「[0024]本発明のマレイミド末端ポリイミドを単独で、又は他の記載された添加剤と組み合わせて使用すると、多種多様な電子パッケージ用途に理想的な非常に優れた性能のフィルムが得られる。これらの電子機器の用途には、フレキシブル銅張積層板、複合パッケージ、リチウムイオン電池構造、燃料電池とその構造、絶縁保護コーティング用途、ダイアタッチペーストおよびフィルム用途が含まれるが、これらに限定されない。」 「[0037]本発明はまた、本発明による組成物を含むフィルムを提供し、これは、典型的には、低誘電率および低誘電正接有し、マイクロエレクトロニクスフィルムであり得る。 [0038]典型的には低誘電率や低誘電正接を有し、マイクロエレクトロニクスコーティングであり得る本発明の組成物を含むコーティングも提供される。特定の態様では、コーティングはコンフォーマルコーティングであり、高電力伝送ケーブル、ポール、又はアタッチメント上のコーティングであり得る。 [0039]また、本発明に含まれるのは、典型的には低誘電率及び低誘電正接を有する本発明の組成物で構築された燃料電池、フレキシブル銅張積層板、及びリチウムイオン電池である。 [0040]本発明はさらに、ダイアタッチペースト、ダイアタッチフィルム、及び複合パッケージを提供し、これらはそれぞれ、低誘電率及び低誘電正接を有することができ、エレクトロニクス又はマイクロエレクトロニクス産業で使用することができ、また使用することができる。」 「[0056]「フレキシブル銅張積層板」(FCCL)とは、薄い銅シートでラミネートされた接着剤層を備えた低誘電率ポリマーで構成されたラミネートを指す。ラミネートは、単層、二層または多層にすることができる。パターンをインプリント可能なカバー層も適用され、次に銅をエッチング除去して、フレキシブル回路基板を形成することができる。」 「[0083]さらに、本明細書で使用される場合、「C36」は、36個の炭素脂肪族部分のすべての可能な構造異性体を指し、主鎖に3つまでの炭素-炭素二重結合を有する分岐異性体および環状異性体を含む。「C36」の定義が言及する部分の非限定的な一例は、以下の構造によって示されるように、シクロヘキサンベースのコアおよびコアに結合した4つの長い「アーム」を含む部分である: [図:0001415256000045.jpg] 」 「[0164]本発明での使用が企図される難燃剤には、以下のものが含まれるがこれらに限定されない。水酸化アルミニウム;高温安定水酸化マグネシウム;ホウ酸塩;メラミン誘導体;および有機リン酸エステル。ハロゲン化炭化水素は、非常に効果的な難燃剤であるものの、これらの化合物は、マイクロエレクトロニクス用途で信頼性の問題を引き起こすため、その使用は非常に限られる。 さらに、ハロゲン化炭化水素は環境汚染物であると考えられているため、その使用は好ましくない。本発明の組成物での使用が考えられる難燃剤は、高い誘電率および高い誘電正接を有する。したがって、これらの材料(特に無機材料)は、非常に大量に使用することはできず、さもなければ本発明の組成物の望ましい特性が失われる可能性がある。 [0165]低濃度(5~10重量%)であっても、テフロンおよび/またはPOSSを本発明の配合物に添加すると、配合物の可燃性が低下する。これらの化合物を添加すると、コーティング、フィルム、または接着剤の誘電率と誘電正接も低下する。したがって、本発明の特定の実施形態では、このような難燃剤を本発明の組成物に少量(5~10重量%)含ませて、良好な特性を損なうことなく可燃性を低下させることができる。」 「[0169]硬化したとき本発明のマレイミド末端ポリイミドは、非常に強靭なフィルムとなり、それは非常に疎水性で、低いモジュラス、低い誘電率、低い誘電正接を有する。これらの特性、特に、誘電率と誘電正接は、フッ素化炭化水素充填材およびPOSSナノ粒子が、本発明の組成物中に含まれる場合に高められる。マレイミド末端ポリイミド配合物の燃焼評価が非常に改善されるという付加的な利点も得られる。」 「実施例 実施例1:化合物I(BMI-3000)の合成。 [図:0001415256000046.jpg] ここで、nは、1~10である。 テフロンコーティングされた攪拌棒を備えた1Lの反応フラスコに、164.7g(300mmol)のプリアミン-1075(ダイマージアミン、EC Reg No.273-282-8;クローダ コーティング&ポリマー、イースト ヨークシャー、イギリス)を入れた。反応フラスコに、200gのN-メチルピロリドン(NMP)及び500gのトルエンを加え、続いて25gのメタンスルホン酸を加えた。混合物を激しく撹拌しながら、ピロメリット酸二無水物43.6g(200mmol)をフラスコに加えた。ポリアミック酸溶液を加熱還流し、反応で生成した水を、ディーン・スターク・トラップを使用して6時間かけて除去した。溶液を冷却し、23.5g(240mmol)の無水マレイン酸をフラスコに加えた。溶液を一晩加熱還流した。18時間後、ディーン・スターク・トラップに残りの水が回収され、反応の終了を示した。溶液をさらに500gのトルエンで希釈し、分液漏斗に入れた。溶液を200gの水で洗浄し、続いて100gの塩水で2回洗浄してNMPと酸を除去した。トルエンの大部分を真空下で除去して、約50重量%の固形分溶液を得た。生成物は、攪拌されたメタノール中に沈殿させることにより収集した。ブフナー漏斗で濾過することにより、固形の樹脂を回収し、続いてオーブンで乾燥させた。」(53頁1行~54頁14行) 「実施例5:誘電率および誘電正接 [0175]薄膜は、誘電率および誘電正接を試験するための添加剤を含む様々な材料で作製された。これらのフィルムの主な樹脂は、マレイミド末端ポリアミドであり、高沸点溶媒(例えば、テトラリン;1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン)中でポリエチレン誘導体、テフロンまたはPOSSと混合した。POSSはポリアミド樹脂との混合に問題はなかったが、ポリエチレン誘導体とテフロンの場合、材料を密接に接触させるため、混合物を3本ロールミルに数回通し、完全に混合した後、溶剤と2%ジクミルパーオキサイドを硬化開始剤として添加した。 [0176]次に、少量の混合物を2×2インチの浅い型に入れ、100℃のオーブンに数時間入れて、溶媒を揮発させた。溶媒除去後、表面の酸素阻害を防ぐために金型の上部を覆った。温度をゆっくりと175℃まで上げ、3時間保持して樹脂を完全に硬化させた。フィルムを金型から取り出し、分析に供される厚さは約40ミル(1mm)だった。 [0177]誘電率と誘電正接はヒューレット・パッカード社のインピーダンス マテリアルアナライザを使用して決定した。誘電率と誘電正接は1GHzの周波数で測定され、結果は下記表1に記載した。 表1 誘電率および誘電正接のデータ サンプル 平均誘電率 平均誘電正接 1GHz 1GHz 化合物I(BMI-3000) 2.5 0.003 化合物I(BMI-3000) 2.4 0.002 +25%ポリエチレンのマレイミドエステル 化合物I(BMI-3000) 2.54 0.002 +15%テフロン 化合物I(BMI-3000) 2.51 0.004 +5%POSS MA0735 化合物II(BMI-2192) 2.66 0.005」 (2)甲2に記載された発明 甲2の請求項1には、「a)少なくとも1つの低誘電率、低誘電正接の樹脂、及びb)接着促進剤、硬化触媒、阻害剤、充填剤、難燃剤及び反応性希釈剤からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含む硬化性組成物。」が記載されており(請求項1)、「a)少なくとも1つの低誘電率、低誘電正接の樹脂」としてマレイミド末端ポリイミドが用いられること(請求項2)も記載されている。 そして、そのマレイミド末端ポリイミドの具体例として、実施例1では下記構造を有するBMI-3000が製造されている。 [図:0001415256000047.jpg] そうすると、請求項1の硬化性組成物として、a)としてBMI-3000を用いるものに着目すると、甲2には次の発明が記載されている。 「a)下記BMI-3000 [図:0001415256000048.jpg] 及びb)接着促進剤、硬化触媒、阻害剤、充填剤、難燃剤及び反応性希釈剤からなる群から選択される少なくとも1つの化合物 を含む硬化性組成物。」(以下「甲2発明」という。) (3)本件発明6について ア 本件発明6と甲2発明との対比 本件発明6を、請求項2~4を引用しない形式にして書き下すと、以下のようになる。 「(A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有し、 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基であり、 前記(B)非ハロゲン系難燃剤がフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤又はチオエーテル系酸化防止剤を含む、樹脂組成物であって、 前記樹脂組成物の硬化物の10GHzでの比誘電率が3.6以下であり、 前記少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基が、下記式(I)で表される基である、樹脂組成物。 【化13】 [図:0001415256000049.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。] 【化2】 [図:0001415256000050.jpg] [式(I)中、R1は4価の有機基を示す。]」 本件発明6と甲2発明とを対比すると、甲2発明の「BMI-3000」は、本件明細書の実施例1において、本件発明6の成分(A)として用いられている「BMI-3000」と同じ製品であり、その構造は本件明細書の【0180】に記載されたものに相当するから、本件発明6の 「(A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物」であって、「炭化水素基が下記式(II)で表される基であり」、「少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基が、下記式(I)で表される基である 【化13】 [図:0001415256000051.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。] 【化2】 [図:0001415256000052.jpg] [式(I)中、R1は4価の有機基を示す。]」 ものに相当する。 また、甲2発明の「難燃剤」は、本件発明6の「非ハロゲン系難燃剤」と「難燃剤」である限りにおいて一致する。 そして、甲2発明の「BMI-3000」は甲2の請求項1に記載された「低誘電率、低誘電正接の樹脂」の具体例であるから、それを含む甲2発明の「硬化性組成物」は、本件発明6の「樹脂組成物」に相当する。 そうすると、両者は 「(A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)難燃剤と、を含有し、 前記炭化水素基が下記式(II)で表される基であり、 【化13】 [図:0001415256000053.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。] 前記少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基が、下記式(I)で表される基である、樹脂組成物。 【化2】 [図:0001415256000054.jpg] [式(I)中、R1は4価の有機基を示す。]」 である点において一致し、以下の点において相違する。 <相違点1-1> 「(B)難燃剤」が、本件発明6では「非ハロゲン系難燃剤」であって、「前記(B)非ハロゲン系難燃剤がフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤又はチオエーテル系酸化防止剤を含」むものであるのに対し、甲2発明では「難燃剤」である点 <相違点1-2> 樹脂組成物の硬化物の10GHzでの比誘電率が、本件発明6では「3.6以下」であるのに対し、甲2発明ではその値が不明な点 イ 相違点についての判断 相違点1-1について検討すると、甲2には、難燃剤として、水酸化アルミニウムや有機リン酸エステル等の「非ハロゲン系難燃剤」に相当する難燃剤の例示はあるものの([0164])、「フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤又はチオエーテル系酸化防止剤」を「(非ハロゲン系)難燃剤」として用いることの記載はない。 そして、「フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤又はチオエーテル系酸化防止剤」は、「酸化防止剤」として用いられる周知の添加剤ではあるものの、それらに「難燃剤」としての働きが知られているわけではないから、甲2発明において、「難燃剤」として「フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤又はチオエーテル系酸化防止剤」を用いることが当業者に動機づけられるとはいえない。 そして、本件発明6は、成分(A)という特定のマレイミド基含有化合物に「非ハロゲン系難燃剤」として「フェノール系酸化防止剤」、「ホスファイト系酸化防止剤」又は「チオエーテル系酸化防止剤」を配合することによって、それを配合しない場合と比較して「V-0」という高難燃性を得ることができるという顕著な効果を発揮するものである(本件明細書の実施例1~10と比較例1の比較結果を参照。)。 したがって、相違点1-2について検討するまでもなく、本件発明6は甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明6についてのまとめ よって、本件発明6は、甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、取消理由1によっては、本件特許の請求項6に係る特許を取り消すことはできない。 (4)本件発明13、21、29、37、46について これらの発明は、本件発明6において、「前記樹脂組成物の硬化物の10GHzでの比誘電率が3.6以下である」という条件を外した上で、「樹脂組成物」の部分を、本件発明13では「樹脂組成物を含む樹脂層及び支持基材を備える、樹脂層付き支持体。」とし、本件発明21では「樹脂組成物と、繊維基材と、から構成される、プリプレグ」とし、本件発明29では「樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層と、導体層と、を有する積層板」とし、本件発明37では「樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層と、少なくとも3層の回路層とを備える、多層プリント配線板」とし、本件発明46では「樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層と、回路層とを備える、ミリ波レーダー用プリント配線板」としたものに相当する。 そうすると、本件発明13、21、29、37、46を甲2発明と対比すると、両者は少なくとも上記(3)アで示した相違点1-1において相違するところ、相違点1-1についての判断は、上記(3)イで示したとおりであるから、甲2発明において、「難燃剤」として「フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤又はチオエーテル系酸化防止剤」を用いることが当業者に動機づけられるとはいえない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明13、21、29、37、46は、甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、取消理由1によっては、本件特許の請求項13、21、29、37、46に係る特許を取り消すことはできない。 (5)本件発明15、23、31、39、40、48について 本件発明15は本件発明13を引用するものであり、本件発明23は本件発明21を引用するものであり、本件発明31は本件発明29を引用するものであり、本件発明39、40は本件発明37を引用するものであり、本件発明48は本件発明46を引用するものである。 そして、上記(4)のとおり、本件発明13、21、29、37、46が甲2の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件発明15、23、31、39、40、48についても甲2の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (6)取消理由1についてのまとめ よって、取消理由1によっては、本件発明6、13、15、21、23、29、31、37、39、40、46、48についての特許を取り消すことはできない。 2 申立理由1(甲1による進歩性)について (1)甲1に記載された発明 甲1には、調製例22で製造された熱硬化性樹脂組成物が記載されており、その評価結果が実施例22として記載されている([0168]~[0170]、[0173]~[0176])。また、調製例22で用いられた各成分の詳細は[0128]~[0152]、[0169]に記載されている。 調製例22で製造された熱硬化性樹脂組成物及び当該組成物を用いた実施例22の評価結果に着目すると、甲1には次の発明が記載されている。 「下記製造例A-1で製造されたポリフェニレンエーテル誘導体A-1を100質量部、熱硬化性樹脂であるBMI-4000(2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン)を25質量部、無機充填剤であるSC-2050KNG(球状溶融シリカ)を35質量部及びAlOOH(ベーマイト型水酸化アルミニウム)を25質量部、硬化促進剤であるパーブチル-P(α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン)を0.6質量部及びG-8009L(イソシアネートマスクイミダゾール)を0.6質量部、酸化防止剤であるAO-20(1,3,5-トリス[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン)を0.09質量部、有機溶媒であるメチルエチルケトン15質量部及びシクロヘキサノン5質量部からなる、熱硬化性樹脂組成物であって、それを用いて製造された銅張積層板の10GHzの比誘電率が3.58、誘電正接が0.0058であり、難燃性評価(UL-94垂直試験法)がV-0である、熱硬化性樹脂組成物。 <製造例A-1> 温度計、還流冷却管、撹拌装置を備えた加熱及び冷却可能な容積2リットルのガラス製フラスコ容器に、トルエン、数平均分子量が約16000のポリフェニレンエーテル、p-アミノフェノールを投入し、フラスコ内の温度を90℃に設定、保温して撹拌しながら溶解した。溶解を目視で確認した後、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネートとナフテン酸マンガンとを添加し、溶液温度90℃で4時間反応させた後、70℃に冷却して分子末端に一級アミノ基を有するポリフェニレンエーテル化合物(A’)を得た。 次に上記反応溶液に、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて、攪拌しながら液温を昇温し、120℃で保温しながら4時間反応させた後、冷却及び200メッシュ濾過してポリフェニレンエーテル誘導体(A-1)を製造した。」(以下「甲1発明」という。) (2)本件発明2について ア 対比 本件発明2と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「BMI-4000(2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン)」は、以下の構造を有する化合物であり、 [図:0001415256000055.jpg] 「マレイミド基を有する化合物」である限りにおいて、本件発明2の「(A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物」と一致する。 甲1発明の「酸化防止剤であるAO-20(1,3,5-トリス[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン)」は、本件明細書の【0104】にフェノール系酸化防止剤の例として記載され、実施例においても配合例が示されている「AO-20(1,3,5-トリス(3’,5’-ジーt-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)-sec-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)トリオン)」(【0175】)と同じものと認められるから、本件発明2の「フェノール系酸化防止剤」に相当する。そして、この化合物はハロゲンを含まないから、「非ハロゲン系化合物」である限りにおいて本件発明2の「(B)非ハロゲン系難燃剤」に相当する。 そうすると、両者は、 「(A)マレイミド基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系化合物と、を含有し、 前記(B)非ハロゲン系化合物がフェノール系酸化防止剤を含む、樹脂組成物。」 である点において一致し、以下の点で相違する。 <相違点2-1> 「(A)マレイミド基を有する化合物」が、本件発明2では 「(A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物」であって、「前記炭化水素基が下記式(II)で表される基 [図:0001415256000056.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。]」 であるのに対し、甲1発明ではそのような構造を有さない点 <相違点2-2> 「(B)非ハロゲン系化合物」が、本件発明2では「非ハロゲン系難燃剤」であるのに対し、甲1発明では「酸化防止剤」ではあるものの、「難燃剤」ではない点 <相違点2-3> 本件発明2では、「前記樹脂組成物の硬化物の10GHzでの比誘電率が3.6以下」であるのに対し、甲1発明では「熱硬化性樹脂組成物・・・を用いて製造された銅張積層板の10GHzの比誘電率が3.58」である点 イ 相違点についての判断 相違点2-1及び2-2は関連しているので、まとめて検討する。 甲1の請求項6には、マレイミド化合物として甲1発明のものだけでなく、「分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するビスマレイミド化合物(a)」が使用できることが記載されている。 そして、甲1発明の組成物は、甲1の[0011]に記載されるように、「高周波特性(低誘電率、低誘電正接)」及び「高難燃性」を有することが求められるものであり、組成物を用いて製造された銅張積層板の10GHzの比誘電率が3.58、誘電正接が0.0058と誘電特性に優れ、難燃性評価がV-0と高難燃性を有するものである。 一方、甲2には、上記「分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するビスマレイミド化合物(a)」に該当する、「BMI-3000」というビスマレイミド化合物が、1GHzの比誘電率が2.5、1GHzの誘電正接が0.003と、良好な誘電特性を有することが記載されている。 しかし、甲1発明は「高周波特性」だけでなく「高難燃性」も求められるものであるところ、甲1発明には、通常「難燃剤」とされる成分(例えば甲1の[0152]の「(11)難燃剤」に挙げられる成分)が含まれていないし、甲1発明に含まれる酸化防止剤に高難燃性を付与する作用があるとの技術常識もないから、甲1発明の「BMI-4000」を甲2に記載された「BMI-3000」に置き換えたときに、同じようにV-0という高難燃性が得られることは当業者が直ちに予測できることとはいえない。 このことは、本件明細書の比較例2において、甲1発明と同じ「BMI-4000」を含む比較例2の組成物は、(B)成分を含まなくても「V-0」の難燃性が得られているが、それを「BMI-3000」に置き換えた比較例1では「×」(V-0より下のV-2の評価基準すら満たさない)とされていることとも整合する。 そして、本件明細書の比較例1と実施例1を比較すると、マレイミド化合物として本件発明1の(A)成分に該当する「BMI-3000」を用いただけでは難燃性の評価が「×」であったところ、そこにフェノール系酸化防止剤である「AO-20」を「難燃剤」として配合することによって、難燃性の評価試験で「V-0」の評価が得られており、このような効果は、甲1、甲2の記載から当業者が予測できることではない。 また、甲3(特許請求の範囲、【0059】)、甲4(特許請求の範囲、【0063】、【0065】、【0098】)には、本件発明1の(A)成分を含む組成物に難燃剤や酸化防止剤を配合できることが記載されているものの、「フェノール系酸化防止剤」を「難燃剤」として配合することや、それによって「V-0」という難燃性が得られることは記載がない。 したがって、相違点2-3について検討するまでもなく、甲2~甲4の記載を考慮しても、甲1発明において相違点2-1及び2-2に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到することであるとはいえない。 ウ 本件発明2についてのまとめ よって、本件発明2は、甲1~甲4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、申立理由1によっては、本件特許の請求項2に係る特許を取り消すことはできない。 (3)本件発明3、4について ア 対比 本件発明3、4を、上記(2)アで検討した点をふまえて甲1発明と対比すると、両者は、 「(A)マレイミド基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系化合物と、を含有し、 前記(B)非ハロゲン系化合物が酸化防止剤を含む、樹脂組成物。」 である点において一致し、以下の点で相違する。 <相違点2-4> 「(A)マレイミド基を有する化合物」が、本件発明3、4では 「(A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物」であって、「前記炭化水素基が下記式(II)で表される基 [図:0001415256000057.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。]」 であるのに対し、甲1発明ではそのような構造を有さない点 <相違点2-5> 「非ハロゲン系化合物」が、本件発明3、4では「非ハロゲン系難燃剤」であって、かつ非ハロゲン系化合物に含まれる「酸化防止剤」が「ホスファイト系酸化防止剤」(本件発明3)又は「チオエーテル系酸化防止剤」(本件発明4)であるのに対し、甲1発明では非ハロゲン系の「難燃剤」を含むものではなく、難燃剤に含まれる酸化防止剤が「フェノール系酸化防止剤」である点 <相違点2-6> 本件発明3、4では、「前記樹脂組成物の硬化物の10GHzでの比誘電率が3.6以下」であるのに対し、甲1発明では「熱硬化性樹脂組成物・・・を用いて製造された銅張積層板の10GHzの比誘電率が3.58」である点 イ 相違点についての判断 まず相違点2-4、2-5について検討すると、上記(2)イで示したのと同様の理由により、甲1発明は「高周波特性」だけでなく「高難燃性」も求められるものであるところ、甲1発明には、通常「難燃剤」とされる成分が含まれていないし、甲1発明に含まれる酸化防止剤に高難燃性を付与する作用があるとの技術常識もないから、甲1発明の「BMI-4000」を甲2に記載された「BMI-3000」に置き換えたときに、同じようにV-0という高難燃性が得られることは当業者が直ちに予測できることとはいえない。 そして、本件発明3、4については、酸化防止剤が「ホスファイト系酸化防止剤」又は「チオエーテル系酸化防止剤」である点でさらに甲1発明と相違するところ、甲1にはホスファイト系酸化防止剤やチオエーテル系酸化防止剤を配合することについて記載がないし、これらが甲5に記載されるように「酸化防止剤」として慣用されているとしても、それらを「難燃剤」として配合することは当業者が容易に想到することではないし、それによってV-0という高難燃性が得られることも、当業者が予測できることではない。 その他の点については上記(2)イで述べたとおりであり、相違点2-6について検討するまでもなく、甲2~甲4の記載を考慮しても、甲1発明において、相違点2-4及び2-5に係る構成を採用し、本件発明3、4の構成とすることは当業者が容易に想到することではない。 ウ 本件発明3、4についてのまとめ よって、本件発明3、4は、甲1~甲4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、申立理由1によっては、本件特許の請求項3、4に係る特許を取り消すことはできない。 (4)本件発明6について 本件発明6は本件発明2~4を引用するものであり、本件発明2~4が甲1~甲4の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件発明6についても甲1~甲4の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)本件発明9~11、17~19、25~27、33~35、42~44について これらの発明は、本件発明2~4において、「前記樹脂組成物の硬化物の10GHzでの比誘電率が3.6以下である」という条件を外した上で、「樹脂組成物」の部分を、本件発明9~11では「樹脂組成物を含む樹脂層及び支持基材を備える、樹脂層付き支持体。」とし、本件発明17~19では「樹脂組成物と、繊維基材と、から構成される、プリプレグ」とし、本件発明25~27では「樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層と、導体層と、を有する積層板」とし、本件発明33~35では「樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層と、少なくとも3層の回路層とを備える、多層プリント配線板」とし、本件発明42~44では「樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層と、回路層とを備える、ミリ波レーダー用プリント配線板」としたものに相当する。 そうすると、本件発明9、17、25、33、42を甲1発明と対比すると、両者は少なくとも上記(2)アで示した相違点2-1及び2-2において相違し、本件発明10、11、18、19、26、27、34、35、43及び44を甲1発明と対比すると、両者は少なくとも上記(3)アで示した相違点2-4及び2-5において相違する。 そして、これらの相違点については、上記(2)イ、(3)イで示したとおり、甲1~甲4の記載に基づいて、当業者が容易に想到することではない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明9~11、17~19、25~27、33~35、42~44は、甲1~甲4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、申立理由1によっては、本件特許の請求項9~11、17~19、25~27、33~35、42~44に係る特許を取り消すことはできない。 (6)本件発明13、15、21、23、29、31、37、39、40、46、48について 本件発明13、15は本件発明9~11を引用するものであり、本件発明21、23は本件発明17~19を引用するものであり、本件発明29、31は本件発明25~27を引用するものであり、本件発明37、39、40は本件発明33~35を引用するものであり、本件発明46、48は本件発明42~44を引用するものである。 そして、上記(5)のとおり、本件発明9~11、17~19、25~27、33~35、42~44が甲1~甲4の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件発明13、15、21、23、29、31、37、39、40、46、48についても甲1~甲4の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (7)申立理由1についてのまとめ よって、申立理由1によっては、本件発明2~4、6、9~11、13、15、17~19、21、23、25~27、29、31、33~35、37、39、40、42~44、46、48についての特許を取り消すことはできない。 3 申立理由2(甲7による進歩性)について (1)甲7に記載された発明 甲7の請求項1には、 「1分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有する、芳香族炭化水素基含有マレイミド化合物(A)と、 1分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有する、芳香族炭化水素基非含有マレイミド化合物(B)とを含有する、熱硬化性樹脂組成物。」 が記載されており、請求項8には、 「さらに、硬化促進剤(E)、エポキシ樹脂(F)、無機充填剤(G)及び難燃剤(H)から選択される少なくとも1つを含有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。」 が記載されている。 そして、甲7には、その具体例として実施例1が記載されている。 実施例1に着目すると、甲7には次の発明(以下「甲7発明」という。)が記載されている。 「BMI(4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド)197.2質量部、1,3-プロピレンビスマレイミド32.3質量部、4,4’-ジアミノジフェニルメタン23.8質量部、p-アミノフェノール8.7質量部、硬化促進剤P200-H50(2-フェニルイミダゾールとビスフェノールA型エポキシ樹脂との付加反応物)4.5質量部、エポキシ樹脂HP-7200H(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)75質量部、無機充填剤SC-2050-KC(溶融シリカ)321.4質量部、難燃剤PX-200(1,3-フェニレンビス(ジ-2,6-キシレニルホスフェート)73.1質量部からなる熱硬化性樹脂組成物であって、銅張積層板としたときの難燃性の評価(UL-94)がV-0であり、樹脂板としたときの1GHzにおける比誘電率が3.2、誘電正接が0.0067である、熱硬化性樹脂組成物。」 (2)本件発明2~4について ア 対比 本件発明2~4を甲7発明と対比する。 甲7発明の「BMI(4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド)」は、「マレイミド基を有する化合物」である限りにおいて、本件発明2~4の「(A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物」と一致する。 甲1発明の「難燃剤PX-200(1,3-フェニレンビス(ジ-2,6-キシレニルホスフェート)」は、「非ハロゲン系難燃剤」である限りにおいて、本件発明2~4の「(B)非ハロゲン系難燃剤」に相当する。 そうすると、両者は、 「(A)マレイミド基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有する樹脂組成物。」 である点において一致し、以下の点で相違する。 <相違点3-1> 「(A)マレイミド基を有する化合物」が、本件発明2~4では 「(A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物」であって、「前記炭化水素基が下記式(II)で表される基 [図:0001415256000058.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。]」 であるのに対し、甲7発明ではそのような構造を有さない点 <相違点3-2> 「(B)非ハロゲン系難燃剤」が、本件発明2では「フェノール系酸化防止剤を含む」ものであり、本件発明3では「ホスファイト系酸化防止剤を含む」ものであり、本件発明4では「チオエーテル系酸化防止剤を含む」ものであるのに対し、甲7発明では「難燃剤PX-200(1,3-フェニレンビス(ジ-2,6-キシレニルホスフェート)」である点 <相違点3-3> 本件発明2~4では、「前記樹脂組成物の硬化物の10GHzでの比誘電率が3.6以下」であるのに対し、甲7発明では「樹脂板としたときの1GHzにおける比誘電率が3.2」である点 イ 相違点についての判断 相違点3-1及び3-2について検討する。 甲7の【0034】には、甲7発明の組成物は「酸化防止剤」を含んでもよいことが記載されており、【0041】には「酸化防止剤」として「ヒンダードフェノール系酸化防止剤」が例示されている。また、「フェノール系酸化防止剤」、「ホスファイト系酸化防止剤」及び「チオエーテル系酸化防止剤」は、甲5に記載されるように、酸化防止剤として周知のものである。 しかし、甲7発明の組成物は、甲7の【0005】に記載されるように、「難燃性」に優れた熱硬化性樹脂組成物を提供することをその目的とするものであり、甲7発明の組成物を用いて製造された銅張積層板は、難燃性評価がV-0と難燃性に優れたものである。 そして、甲7発明は「難燃剤PX-200(1,3-フェニレンビス(ジ-2,6-キシレニルホスフェート)」を含むものであり、これは難燃性を向上させる成分として知られているものであるところ、「フェノール系酸化防止剤」、「ホスファイト系酸化防止剤」、「チオエーテル系酸化防止剤」はあくまで「酸化防止剤」であって、「難燃剤」として働くことが知られたものではないから、甲7発明において、「難燃剤PX-200(1,3-フェニレンビス(ジ-2,6-キシレニルホスフェート)」をこれらの酸化防止剤に置き換える動機付けがあるとはいえない。 ましてや、上記2(2)イ及び(3)イで述べたのと同様に、甲7発明のマレイミド化合物を甲2に記載された「BMI-3000」に置き換えた上で、「難燃剤PX-200(1,3-フェニレンビス(ジ-2,6-キシレニルホスフェート)」を「難燃剤」として働くことが知られていない「フェノール系酸化防止剤」、「ホスファイト系酸化防止剤」又は「チオエーテル系酸化防止剤」に置き換えたときに、甲7発明と同じようにV-0という高難燃性が得られることは当業者が予測できることではない。 そして、本件発明2~4は、成分(A)という特定のマレイミド基含有化合物に「難燃剤」として「フェノール系酸化防止剤」、「ホスファイト系酸化防止剤」又は「チオエーテル系酸化防止剤」を配合することによって、それを配合しない場合と比較して「V-0」という高難燃性を得ることができるという顕著な効果を発揮するものである(本件明細書の実施例1~10と比較例1の比較結果を参照。)。 また、甲2には、本件発明2の(A)成分に該当する「BMI-3000」というマレイミド化合物が1GHzの比誘電率が2.5、1GHzの誘電正接が0.003と、良好な誘電特性を有することが記載されているにすぎないし、甲3(特許請求の範囲、【0059】)、甲4(特許請求の範囲、【0063】、【0065】、【0098】)には、本件発明2の(A)成分を含む組成物に難燃剤や酸化防止剤を配合できることが記載されているものの、「フェノール系酸化防止剤」、「ホスファイト系酸化防止剤」又は「チオエーテル系酸化防止剤」を「難燃剤」として配合することや、それによって「V-0」という難燃性が得られることは記載がない。 したがって、相違点3-3について検討するまでもなく、甲2~甲5の記載を考慮しても、甲7発明において相違点3-1及び3-2に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到することであるとはいえない。 ウ 本件発明2~4についてのまとめ よって、本件発明2~4は、甲7、甲2~甲5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、申立理由2によっては、本件特許の請求項2~4に係る特許を取り消すことはできない。 (3)本件発明6について 本件発明6は本件発明2~4を引用するものであり、本件発明2~4が甲7、甲2~甲5の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件発明6についても甲7、甲2~甲5の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件発明9~11、17~19、25~27、33~35、42~44について これらの発明は、本件発明2~4において、「前記樹脂組成物の硬化物の10GHzでの比誘電率が3.6以下である」という条件を外した上で、「樹脂組成物」の部分を、本件発明9~11では「樹脂組成物を含む樹脂層及び支持基材を備える、樹脂層付き支持体。」とし、本件発明17~19では「樹脂組成物と、繊維基材と、から構成される、プリプレグ」とし、本件発明25~27では「樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層と、導体層と、を有する積層板」とし、本件発明33~35では「樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層と、少なくとも3層の回路層とを備える、多層プリント配線板」とし、本件発明42~44では「樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層と、回路層とを備える、ミリ波レーダー用プリント配線板」としたものに相当する。 そうすると、本件発明9~11、17~19、25~27、33~35、42~44を甲1発明と対比すると、両者は少なくとも上記(2)アで示した相違点3-1及び3-2において相違する。 そして、これらの相違点については、上記(2)イで示したとおり、甲7、甲2~甲5の記載に基づいて、当業者が容易に想到することではない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明9~11、17~19、25~27、33~35、42~44は、甲7、甲2~甲5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、申立理由2によっては、本件特許の請求項9~11、17~19、25~27、33~35、42~44に係る特許を取り消すことはできない。 (5)本件発明13、15、21、23、29、31、37、39、40、46、48について 本件発明13、15は本件発明9~11を引用するものであり、本件発明21、23は本件発明17~19を引用するものであり、本件発明29、31は本件発明25~27を引用するものであり、本件発明37、39、40は本件発明33~35を引用するものであり、本件発明46、48は本件発明42~44を引用するものである。 そして、上記(4)のとおり、本件発明9~11、17~19、25~27、33~35、42~44が甲7、甲2~甲5の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件発明13、15、21、23、29、31、37、39、40、46、48についても甲7、甲2~甲5の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (6)申立理由2についてのまとめ よって、申立理由2によっては、本件発明2~4、6、9~11、13、15、17~19、21、23、25~27、29、31、33~35、37、39、40、42~44、46、48についての特許を取り消すことはできない。 4 申立理由3(甲8による進歩性)について (1)甲8に記載された発明 甲8の請求項1には、 「芳香族テトラカルボン酸類(a1)およびダイマージアミンを30モル%以上含むジアミン類(a2)を反応させてなるポリイミド樹脂(A)、熱硬化性樹脂(B)、難燃剤(C)、ならびに有機溶剤(D)を含むポリイミド系接着剤組成物。」 が記載されており、その具体例として実施例1が記載されている。 実施例1に着目し、甲8の請求項1にならって整理すると、甲8には次の発明(以下「甲8発明」という。)が記載されている。 「BTDA(3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物)及びPRIAMINE(ダイマージアミン)を反応させてなるポリイミド樹脂(A)100g、jER828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)4.22g及びタマノルT759(フェノールノボラック樹脂)2.18g及び2E4MZ(2-エチル-4-メチルイミダゾール)0.06gからなる熱硬化性樹脂(B)、セラシュールBMT-3LV(べーマイト)25.66g及びラピトルFP-300(フェノキシフォスファゼン誘導体)11.10gからなる難燃剤(C)、シクロヘキサン49.33g及びメタノール8.55gからなる有機溶剤(D)からなる、ポリイミド系接着剤組成物。」 (2)本件発明2~4について ア 対比 本件発明2~4を甲8発明と対比する。 甲8発明の「BTDA(3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物)及びPRIAMINE(ダイマージアミン)を反応させてなるポリイミド樹脂(A)」は、BDTAに含まれる2つの酸無水物基と、PRIAMINEの2つのアミノ基が反応してイミド結合を形成して得られるポリイミド樹脂であり、2つの酸無水物基と2つのアミノ基が反応することによって「2つのイミド結合を有する2価の基」が形成され、かつ、PRIAMINEに由来する「飽和又は不飽和の2価の炭化水素基」を有するものであるから、「少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物」である限りにおいて本件発明2~4の「(A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物」と一致する。 甲8発明の「セラシュールBMT-3LV(べーマイト)25.66g及びラピトルFP-300(フェノキシフォスファゼン誘導体)11.10gからなる難燃剤(C)」は、「非ハロゲン系難燃剤」である限りにおいて、本件発明2~4の「(B)非ハロゲン系難燃剤」に相当する。 そうすると、両者は、 「(A)少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、(B)非ハロゲン系難燃剤と、を含有する樹脂組成物。」 である点において一致し、以下の点で相違する。 <相違点4-1> 「(A)少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物」が、本件発明2~4では 「(A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物」であって、「前記炭化水素基が下記式(II)で表される基 [図:0001415256000059.jpg] [式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。]」 であるのに対し、甲8発明ではそのような構造を有さない点 <相違点4-2> 「(B)非ハロゲン系難燃剤」が、本件発明2では「フェノール系酸化防止剤を含む」ものであり、本件発明3では「ホスファイト系酸化防止剤」を含むものであり、本件発明4では「チオエーテル系酸化防止剤を含む」ものであるのに対し、甲8発明では「セラシュールBMT-3LV(べーマイト)25.66g及びラピトルFP-300(フェノキシフォスファゼン誘導体)11.10gからなる難燃剤(C)」である点 <相違点4-3> 本件発明2~4では、「前記樹脂組成物の硬化物の10GHzでの比誘電率が3.6以下」であるのに対し、甲8発明ではその値が不明な点 イ 相違点についての判断 相違点4-1及び4-2について検討する。 甲8の【0054】には、甲8発明の組成物は「酸化防止剤」を含んでもよいことが記載されており、例えば甲5に記載されるように、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤は、酸化防止剤として周知のものである。 しかし、甲8発明の組成物は難燃剤を含むものであり、甲8発明に相当する実施例1において難燃性の評価試験が行われ、UL94規格のV-0クラスに相当することが示されるように、高い難燃性が求められるものである。 そして、甲8発明は「セラシュールBMT-3LV(べーマイト)25.66g及びラピトルFP-300(フェノキシフォスファゼン誘導体)11.10gからなる難燃剤(C)」を含むものであり、これは難燃性を向上させる成分として知られているものであるところ、「フェノール系酸化防止剤」、「ホスファイト系酸化防止剤」及び「チオエーテル系酸化防止剤」はあくまで「酸化防止剤」であって、「難燃剤」として働くことが知られたものではないから、甲8発明において、「セラシュールBMT-3LV(べーマイト)25.66g及びラピトルFP-300(フェノキシフォスファゼン誘導体)11.10gからなる難燃剤(C)」を「フェノール系酸化防止剤」、「ホスファイト系酸化防止剤」又は「チオエーテル系酸化防止剤」に置き換える動機付けがあるとはいえない。 ましてや、上記2(2)イ及び(3)イで述べたのと同様に、甲8発明の化合物を甲2に記載された「BMI-3000」に置き換えることができたとしても、それに加えて「セラシュールBMT-3LV(べーマイト)25.66g及びラピトルFP-300(フェノキシフォスファゼン誘導体)11.10gからなる難燃剤(C)」を「難燃剤」として働くことが知られていない「フェノール系酸化防止剤」、「ホスファイト系酸化防止剤」又は「チオエーテル系酸化防止剤」に置き換えたときに、甲8発明と同じようにV-0という高難燃性が得られることは当業者が予測できることではない。 そして、本件発明2~4は、成分(A)という特定のマレイミド基含有化合物に、「難燃剤」として「フェノール系酸化防止剤」、「ホスファイト系酸化防止剤」又は「チオエーテル系酸化防止剤」を用いることによって、それを用いない場合と比較して「V-0」という高難燃性を得ることができるという顕著な効果を発揮するものである(本件明細書の実施例1~10と比較例1の比較結果を参照。)。 また、甲3(特許請求の範囲、【0059】)、甲4(特許請求の範囲、【0063】、【0065】、【0098】)には、本件発明1の(A)成分を含む組成物に難燃剤や酸化防止剤を配合できることが記載されているものの、「フェノール系酸化防止剤」、「ホスファイト系酸化防止剤」又は「チオエーテル系酸化防止剤」を「難燃剤」として配合することや、それによって「V-0」という難燃性が得られることは記載がない。 そして、甲2には、本件発明2の(A)成分に該当する「BMI-3000」というマレイミド化合物が1GHzの比誘電率が2.5、1GHzの誘電正接が0.003と、良好な誘電特性を有することが記載されているにすぎない。 したがって、相違点4-3について検討するまでもなく、甲2~甲5の記載を考慮しても、甲8発明において相違点4-1、4-2に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到することであるとはいえない。 ウ 本件発明2~4についてのまとめ よって、本件発明2~4は、甲8、甲2~甲5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、申立理由3によっては、本件特許の請求項2~4に係る特許を取り消すことはできない。 (3)本件発明6について 本件発明6は本件発明2~4を引用するものであり、本件発明2~4が甲8、甲2~甲5の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件発明6についても甲8、甲2~甲5の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件発明9~11、17~19、25~27、33~35、42~44について これらの発明は、本件発明2~4において、「前記樹脂組成物の硬化物の10GHzでの比誘電率が3.6以下である」という条件を外した上で、「樹脂組成物」の部分を、本件発明9~11では「樹脂組成物を含む樹脂層及び支持基材を備える、樹脂層付き支持体。」とし、本件発明17~19では「樹脂組成物と、繊維基材と、から構成される、プリプレグ」とし、本件発明25~27では「樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層と、導体層と、を有する積層板」とし、本件発明33~35では「樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層と、少なくとも3層の回路層とを備える、多層プリント配線板」とし、本件発明42~44では「樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層と、回路層とを備える、ミリ波レーダー用プリント配線板」としたものに相当する。 そうすると、本件発明9~11、17~19、25~27、33~35、42~44を甲8発明と対比すると、両者は少なくとも上記(2)アで示した相違点4-1及び4-2において相違する。 そして、これらの相違点については、上記(2)イで示したとおり、甲8、甲2~甲5の記載に基づいて、当業者が容易に想到することではない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明9~11、17~19、25~27、33~35、42~44は、甲8、甲2~甲5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、申立理由3によっては、本件特許の請求項9~11、17~19、25~27、33~35、42~44に係る特許を取り消すことはできない。 (5)本件発明13、15、21、23、29、31、37、39、40、46、48について 本件発明13、15は本件発明9~11を引用するものであり、本件発明21、23は本件発明17~19を引用するものであり、本件発明29、31は本件発明25~27を引用するものであり、本件発明37、39、40は本件発明33~35を引用するものであり、本件発明46、48は本件発明42~44を引用するものである。 そして、上記(4)のとおり、本件発明9~11、17~19、25~27、33~35、42~44が甲8、甲2~甲5の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件発明13、15、21、23、29、31、37、39、40、46、48についても甲8、甲2~甲5の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (6)申立理由3についてのまとめ よって、申立理由3によっては、本件発明2~4、6、9~11、13、15、17~19、21、23、25~27、29、31、33~35、37、39、40、42~44、46、48についての特許を取り消すことはできない。 5 申立理由4(サポート要件)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(知財高裁、平成17年(行ケ)10042号判決参照)。 (2)本件発明が解決しようとする課題 本件発明が解決しようとする課題は、本件明細書の【0008】の記載からみて、「優れた高周波特性(低比誘電率、低誘電正接)を備え、かつ、耐熱性及び難燃性を高い水準で備え、地球環境への負荷が少ない樹脂組成物、並びに、該樹脂組成物を用いて製造される樹脂層付き支持体、プリプレグ、積層板、多層プリント配線板及びミリ波レーダー用プリント配線板を提供すること」であると認められる。 (3)サポート要件の判断 本件明細書の【0036】~【0068】には、本件発明の成分(A)についてどのようなものが使用されるかが記載され、【0036】には「(A)成分を用いることで、高周波特性及び導体との高い接着性を有する樹脂組成物を得ることができる。」と記載されている。 また、本件明細書の【0102】~【0114】には本件発明の成分(B)についてどのようなものが使用されるかが記載され、【0102】には「(B)成分を用いることで、高周波特性の大幅な悪化がなく導体との高い接着性を有し、かつ、難燃性を有する樹脂組成物を得ることができる。さらに、環境負荷を低減することができる。」と記載されている。 そして、本件明細書の実施例には、本件発明の成分(A)に相当するBMI-3000及びBMI-5000と、(B)に相当するフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤又はチオエーテル系酸化防止剤を含む実施例1~10が記載され(【表1】)、それらの10GHzの比誘電率が3.02以下、10GHzの誘電正接が0.0019以下、難燃性のUL-94規格が「V-0」、はんだ耐熱性の評価が「○」(三枚の試験片全てにおいて、フィルム内部及びフィルムと銅箔間に膨れ又はミーズリングの発生が認められない。)であったことが示され(【表4】)、上記本件発明の課題を解決できることが示されている一方、本件発明の成分(A)を単独で用いた比較例1は、難燃性のUL-94規格を満たさず、本件発明の成分(A)に該当しないBMI-4000を単独で用いた比較例2は、10GHzの比誘電率が3.12、10GHzの誘電正接が0.0120と高く、本件発明の課題を解決できないことが示されている(【表3】、【表6】)。 これらの記載からみて、本件発明の組成物であれば、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できるものと認められる。 (4)申立人の主張について 申立人は、比較例2の結果を参酌すると、組成物中に(A2)成分を多量に配合した場合には、誘電特性が本件特許発明ほど優れず、高周波特性を備えることを達成できないことが予測され、例えば、難燃剤自体が高い誘電率及び高い誘電正接を有する場合もあり、難燃剤をあまり多く配合すると所望する組成物の特性が得られない場合があるから、(A)成分及び(B)成分の配合割合が何ら規定されていない本件発明が両者のあらゆる配合比において本件明細書の実施例と同等の作用効果を奏するとはいえない旨を主張する(特許異議申立書134頁下から5行~135頁下から4行)。 しかし、サポート要件の判断は、上記(1)で示した判断基準に沿って判断されるものであるところ、本件明細書の記載によれば、成分(A)を用いれば、それ以外のマレイミド化合物(例えば(A2))を用いるよりも高周波特性が向上することを理解することができるから、(A2)成分や(B)成分(難燃剤)の配合量が実施例よりも多くても、成分(A)を含まない場合に比べて高周波特性が向上することは当業者が理解できることである。 また、申立人による、組成物中に(A2)成分を多量に配合した場合には、誘電特性が本件特許発明ほど優れず、高周波特性を備えることを達成できないことが予測される旨や、難燃剤をあまり多く配合すると所望する組成物の特性が得られない場合がある旨の主張は、可能性を指摘するだけで、具体的な証拠を伴うものではない。 したがって、申立人の主張は採用することができない。 (5)申立理由4についてのまとめ よって、本件発明2~4、6、9~11、13、15、17~19、21、23、25~27、29、31、33~35、37、39、40、42~44、46、48に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由4によっては、本件発明2~4、6、9~11、13、15、17~19、21、23、25~27、29、31、33~35、37、39、40、42~44、46、48についての特許を取り消すことはできない。 第6 むすび 上記第5のとおり、本件特許の請求項2~4、6、9~11、13、15、17~19、21、23、25~27、29、31、33~35、37、39、40、42~44、46、48に係る特許は、取消理由(決定の予告)及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項2~4、6、9~11、13、15、17~19、21、23、25~27、29、31、33~35、37、39、40、42~44、46、48に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、本件特許の請求項1、5、8、12、16、20、24、28、32、36、41、45は、上記のとおり、本件訂正請求により削除された。これにより、これらの請求項に係る特許に対する申立人による特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700078

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