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特許異議申立

2023-700054

免震構造

審判番号
2023-700054
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-004517
登録番号
7103575
請求日
2023年01月19日
審決日
2023年03月30日
公報発行日
2023年04月28日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社竹中工務店
  • 【権利者代理人】弁理士法人太陽国際特許事務所
  • 【異議申立人】冨田 圭太郎
審判長/審判官
  • 審判長 前川 慎喜
  • 審判官 ▲吉▼川 康史
  • 審判官 蔵野 いづみ
分類
P1651.113-Y (E04H) / P1651.121-Y (E04H)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7103575号発明「免震構造」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7103575号の請求項1~4に係る特許を維持する。

理由

理 由 1 手続の経緯 特許第7103575号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成30年1月15日に出願され、令和4年7月11日にその特許権の設定登録がされ、同月20日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和5年1月19日に特許異議申立人冨田圭太郎(以下「申立人」という。)は特許異議の申立てを行った。 2 本件特許発明 本件特許の請求項1~4の特許に係る発明(以下、それぞれの発明を「本件特許発明1」等という。)はそれぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 下部構造体の上面に設置された免震装置と、 前記免震装置の上部に固定され、前記免震装置の外側へ突出した鋼製プレートと、 前記鋼製プレートの上部に固定され、上端面が鉄骨造の上部構造体における鉄骨梁の上端面より高い位置に形成されて、前記鉄骨梁と柱との仕口部が埋設されたコンクリート補強体と、 を備えた免震構造。 【請求項2】 前記鋼製プレート及び前記コンクリート補強体は、前記仕口部から前記鉄骨梁に沿って延設されている、請求項1に記載の免震構造。 【請求項3】 前記免震装置は前記下部構造体の柱頭に設置されている、請求項2に記載の免震構造。 【請求項4】 前記コンクリート補強体は、平面視で前記鉄骨梁に沿う十字形状とされている、 請求項1~3の何れか1項に記載の免震構造。」 3 申立理由の概要 申立人は、主たる証拠として次に示す甲第1号証~甲第3号証(以下「甲1」等という。)及び従たる証拠として次に示す甲第4号証~甲第6号証(以下「甲4」等という。)を提出し、 本件特許発明1、2は甲1又は甲2に記載された発明であり、本件特許発明4は甲2に記載された発明であって、請求項1、2及び4に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、 また、本件特許発明1、2は甲3記載の発明に基づいて、本件特許発明3は甲1、甲2、甲3記載の発明及び周知技術(甲4、甲5)に基づいて、本件特許発明4は甲1、甲3記載の発明及び周知技術(甲6)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、請求項1~4に係る特許は、同条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。 (証拠方法) 甲第1号証:株式会社建設ITワールド“3Dモデル化、ソフト開発から導入支援までをワンストップでBIM/CIMの”駆け込み寺”としてGSAを活用する方法(GSA)”,[online],2016年6月8日,建設ITワールド,[令和4年12月14日検索],インターネット<URL:https://ken-it.world/success/2016/06/gsa-bim-cim-service.html> (株式会社建設ITワールドのウエブサイトの上記URLより申立人が令和4年12月14日に出力したとする写し) 甲第2号証:土浦市“土浦市消防本部新消防庁舎整備事業について“, [online],2016年3月24日,土浦市ホームページ,[令和4年12月29日検索],インターネット<URL:https://www.city.tsuchiura.lg.jp/page/page003996.html> (土浦市のウエブサイトの上記URLより申立人が令和4年12月29日に出力したとする写し) 甲第3号証:特開2002-371723号公報 甲第4号証:特開2017-36559号公報 甲第5号証:特開2010-281069号公報 甲第6号証:特開2017-36560号公報 4 文献の記載 (1)甲1発明 ア 甲1に記録された事項 甲1には、株式会社建設ITワールドのウエブサイトのURLが記載されており、甲1は当該URLにより表示されるウェブページを申立人が令和4年12月14日に出力したとする写しである。そこで、甲1に記載されている上記URLに記録されている事項の認定を行う便宜上、甲1として提出されたウェブサイトの内容を出力したとする写しを基に以下の摘記を行う。 (ア)第1頁 「3Dモデル化、ソフト開発から導入支援までをワンストップでBIM/CIMの”駆け込み寺”としてGSAを活用する方法(GSA) 2016年6月8日 東京・四谷のGSAには、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)やCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)についての相談や業務依頼が毎日のように寄せられる。」 (イ)第2頁 「 [図:0001396339000001.jpg] 」 i)上に示された図より、下部に白色の屈折された線状の部材が複数設けられ、その上部に黒色の円柱状の部材が配置され、当該円柱状の部材は上部にフランジを有し、前記フランジの上部に白色の方形状の板状部材が配置され、方形状の板状部材の1辺の長さはフランジの直径よりわずかに大きく、さらに板状部材の上方に水平方向及び垂直方向に延びる茶色の部材が交差して設けられるとともにその周囲に種々の色の屈折された線状の部材が複数設けられていることが看取される。 ii)当該図の下方に、「免震装置や鉄骨が入り組んだ、複雑な配筋の施工シミュレーション」と記載されていることから、図中の屈折された線状の部材は鉄筋であり、黒色の円柱状の部材は免震装置であるといえる。また、免震装置の下方は下部の構造物となるものであり、上方は上部の構造物となるものであるといえ、技術常識を考慮すると、白色の方形状の板状部材は、免震装置と上部の構造物との間に配置されたプレートであるといえる。 そして、図中の茶色の部材の形状は明確に視認できないが、上記の「免震装置や鉄骨が入り組んだ」という記載から、茶色の部材は鉄骨であると推認されるので、当該図は、板状部材の上方には、水平方向及び垂直方向に延びる鉄骨が交差して設けられるとともにその周囲に鉄筋が複数設けられていることを表しているといえる。 iii)そうすると、甲1には、複数の配筋を含む下部の構造物となるものの上部に円柱状の免震装置が配置され、当該免震装置は上部にフランジを有し、前記フランジの上部に方形状のプレートが配置され、方形状のプレートの1辺の長さはフランジの直径よりわずかに大きく、さらに、プレートの上方に水平方向及び垂直方向に延びる鉄骨が交差して設けられるとともにその周囲に鉄筋が複数設けられて上部の構造物となる構造が記載されていると認められる。 (ウ)第2頁 「同社に持ち込まれる案件で多いのは、BIM/CIMのモデル作成だ。「複雑に入り組んだ配筋の施工シミュレーションやアプリを使った自動配筋など、基本的なソフトだけでは難しいものがよく持ち込まれます。対象構造物としては河川、トンネル、橋梁、道路、造成、地質、建物まで。」 イ 甲1発明 上記アより、甲1に記載されているURLには、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記録されていると認められる。 甲1発明 「BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)やCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)のモデル作成において用いられる、 複数の鉄筋を含む下部の構造物となるものの上部に円柱状の免震装置が配置され、当該免震装置は上部にフランジを有し、前記フランジの上部に方形状のプレートが配置され、方形状のプレートの1辺の長さはフランジの直径よりわずかに大きく、さらに、プレートの上方に水平方向及び垂直方向に延びる鉄骨が交差して設けられるとともにその周囲に鉄筋が複数設けられて上部の構造物となる構造。」 (2)甲2発明 ア 甲2に記録された事項 甲2には、土浦市のウエブサイトのURLが記載されており、甲2は当該URLにより表示されるウェブページを申立人が令和4年12月29日に出力したとする写しである。そこで、甲1と同様、甲2に記載されている上記URLに記録されている事項の認定を行う便宜上、甲2として提出されたウェブサイトの内容を出力したとする写しを基に以下の摘記を行う。 (ア)第1頁 「 [図:0001396339000002.jpg] 」 上の記載より、甲2には、平成28年3月24日(金)に竣工式が実施された、土浦市消防本部新消防庁舎の免震構造を備えた鉄骨3階の庁舎棟に関する工事の記録が記載されていると認められる。 (イ)第5頁 「 [図:0001396339000003.jpg] 」 左下の写真より、コンクリート構造物が設けられ、その上部に円柱状の部材が配置され、さらにその上に方形状の板状部材が配置されるとともに当該方形状の板状部材から上方に向けてアンカーボルトが立設され、方形状の板状部材の1辺の長さは円柱状の部材の直径より大きいことが看取される。技術常識を考慮すると、当該コンクリート構造物は、基礎コンクリートであり、また、「免震装置(ゴム支承) 真ん中の丸い部分がゴム」であると記載されているから、当該「円柱状の部材」はゴムからなる免震装置であるといえる。 次に、右上の写真の下に「1階床鉄骨梁の施工」と記載があることを踏まえると、右上の写真より、水平方向の直交する2方向に鉄骨梁が設置されていることが看取される。 さらに、「右の写真はその上に柱を設置し,床梁のコンクリートを打つために鉄筋を施工したところです。」と記載されることを踏まえると、右下の写真より、免震装置の上部に上方に向けて柱が設けられるとともに、水平方向の直交する2方向に床梁のコンクリートを打つために鉄筋が施工されていることが看取される。 これより、甲2には、基礎コンクリートの上部にゴムからなる円柱状の免震装置が配置され、免震装置の上に方形状の板状部材が配置されるとともに当該方形状の板状部材から上方に向けてアンカーボルトが立設され、方形状の板状部材の1辺の長さは免震装置の直径より大きく、 免震装置の上部に上方に向けて柱が設けられるとともに、水平方向の直交する2方向に鉄骨梁が設置されるとともに床梁のコンクリートを打つために鉄筋が施工されていることが記載されていると認められる。 イ 甲2発明 上記アより、甲2に記載されているURLには、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記録されていると認められる。 甲2発明 「土浦市消防本部新消防庁の免震構造を備えた鉄骨3階の庁舎棟において、 基礎コンクリートの上部にゴムからなる円柱状の免震装置が配置され、免震装置の上に方形状の板状部材が配置されるとともに当該方形状の板状部材から上方に向けてアンカーボルトが立設され、方形状の板状部材の1辺の長さは免震装置の直径より大きく、 免震装置の上部に上方に向けて柱が設けられるとともに、水平方向の直交する2方向に鉄骨梁が設置されるとともに床梁のコンクリートを打つために鉄筋が施工されている構造。」 (3)甲3発明 ア 甲3に記載の事項 甲3には図面とともに以下の事項が記載されている(下線は合議体が付した。以下同様。)。 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、施工性に優れるとともに、コスト低減を可能にする免震建築の上部基礎構造に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、免震装置54を適用した鉄骨建物の基礎構造としては、図2に示すものが一般的に知られている。下部基礎コンクリート51の上面にアンカーボルト57を介して強固に埋設された免震装置下ベースプレート53と、その上面に配置される免震装置54の下部フランジ55が連結ボルト57aにより締結されるとともに、前記免震装置54の上部フランジ56とその上方に位置する上部基礎構造部52とが連結ボルト63aにより固定されている。ここで、前記免震装置54の上方に位置する上部基礎構造部52は、免震装置上ベースプレート62と、柱受け鉄骨58と、この柱受け鉄骨58を埋設するコンクリート60と、により構成されている。前記免震装置上ベースプレート62が前記免震装置54の上面に載置されるとともに、該免震装置上ベースプレート62の上面に固定された柱受け鉄骨58のさらに上部には鉄骨柱61の柱脚部に溶接された仕口部鉄骨59が溶接されて、これら免震装置上ベースプレート62、柱受け鉄骨58、仕口部鉄骨59が一体となるようにコンクリート60により埋設されることにより構成されている。なお、免震装置上ベースプレート62は、アンカーボルト63によりコンクリート60中に強固に埋設される。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかし、上述する従来の免震装置の上部基礎構造にあっては、次の欠点があった。上部基礎構造部52は、柱受け鉄骨58及び仕口部鉄骨59がコンクリート60により埋設される基本構成であるため、コンクリート60の重量分だけ免震装置54に作用する荷重が増大するとともに、免震装置上ベースプレート62をコンクリート60に埋設するアンカーボルト63の接続状況を目視で確認することができない。また、コンクリート60の打設以前における上部基礎構造部52を構成する柱受け鉄骨58の上部への鉄骨柱の建て方時には、前記柱受け鉄骨58が鉄骨柱を支持できるに十分な構造を有していないため、図示しない仮設フレーム等を用いて鉄骨柱を仮支持する必要があり、施工性に乏しい。 【0004】上記事情に鑑み、本発明は、施工性に優れるとともに品質保守管理が容易で、コスト低減にも効果的な免震建築の上部基礎構造を提供することを目的としている。」 (イ)「【0015】このような構成による前記免震装置連結体14の上部には、柱脚筒体である仕口部鉄骨19が同軸状に載置されて、溶接により連結されているとともに、該仕口部鉄骨19に設けられたブラケット19aには、鉄骨梁20が締結されている。・・・」 (ウ)図1 「 [図:0001396339000004.jpg] 」 【0015】に「このような構成による前記免震装置連結体14の上部には、柱脚筒体である仕口部鉄骨19が同軸状に載置されて、溶接により連結されているとともに、該仕口部鉄骨19に設けられたブラケット19aには、鉄骨梁20が締結されている。」と記載され、図1から、鉄骨梁20は仕口部鉄骨19の上下と同じ高さで、仕口部鉄骨19に設けられたブラケット19aから側方に延設されていることが看取されるので、甲3には、柱脚筒体である仕口部鉄骨19に設けられたブラケット19aには、鉄骨梁20が締結され、鉄骨梁20は仕口部鉄骨19の上下と同じ高さで、仕口部鉄骨19に設けられたブラケット19aから側方に延設されていることが記載されていると認められる(認定事項1)。 (エ)図2 「 [図:0001396339000005.jpg] 」 i)図中符号54、符号56,符号62はそれぞれ、「免震装置54」、「上部フランジ56」、「免震装置上ベースプレート62」を示し、図2より、免震装置上ベースプレート62は、免震装置54の上部フランジ56よりも外側に延びていることが看取されるので、甲3には、免震装置上ベースプレート62は、免震装置54の上部フランジ56よりも外側に延びていることが記載されていると認められる(認定事項2)。 ii)図中符号59、61はそれぞれ、「仕口部鉄骨59」、「鉄骨柱61」を示し、【0002】に「鉄骨柱61の柱脚部に溶接された仕口部鉄骨59」と記載されている。そして、図2より、仕口部鉄骨59には、符号は付されていないものの、図1に記載される符号19a及び符号20が付された部材と同様の部材が設けられていることが看取されるので、図2にも、図1と同様、「ブラケット」及び「鉄骨梁」が設けられているといえる。 そうすると、認定事項1に倣って、甲3には、柱脚筒体である仕口部鉄骨59に設けられたブラケットには、鉄骨梁が締結され、鉄骨梁は仕口部鉄骨59の上下と同じ高さで、仕口部鉄骨59に設けられたブラケットから側方に延設されていることが記載されていると認められる(認定事項3)。 iii)図中符号60は「コンクリート60」を示し、図2より、鉄骨梁の上下の位置にコンクリート60があることが看取されるとともに、【0002】に「これら免震装置上ベースプレート62、柱受け鉄骨58、仕口部鉄骨59が一体となるようにコンクリート60により埋設される」と記載されるから、甲3には、これら免震装置上ベースプレート62、柱受け鉄骨58、仕口部鉄骨59が一体となるようにコンクリート60により埋設され、鉄骨梁の上下もコンクリートにより埋設されることが記載されていると認められる(認定事項4)。 イ 甲3発明 上記アより、甲3には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。 甲3発明 「下部基礎コンクリート51の上面にアンカーボルト57を介して強固に埋設された免震装置下ベースプレート53と、その上面に配置される免震装置54の下部フランジ55が連結ボルト57aにより締結されるとともに、前記免震装置54の上部フランジ56とその上方に位置する上部基礎構造部52とが連結ボルト63aにより固定され、 前記免震装置54の上方に位置する上部基礎構造部52は、免震装置上ベースプレート62と、柱受け鉄骨58と、この柱受け鉄骨58を埋設するコンクリート60と、により構成されていて、前記免震装置上ベースプレート62が前記免震装置54の上面に載置されるとともに、該免震装置上ベースプレート62の上面に固定された柱受け鉄骨58のさらに上部には鉄骨柱61の柱脚部に溶接された仕口部鉄骨59が溶接されて(【0002】)、 免震装置上ベースプレート62は、免震装置54の上部フランジ56よりも外側に延びていて(認定事項2)、 柱脚筒体である仕口部鉄骨59に設けられたブラケットには、鉄骨梁が締結され、鉄骨梁は仕口部鉄骨59の上下と同じ高さで、仕口部鉄骨59に設けられたブラケットから側方に延設され(認定事項3)、 これら免震装置上ベースプレート62、柱受け鉄骨58、仕口部鉄骨59が一体となるようにコンクリート60により埋設され、鉄骨梁の上下もコンクリートにより埋設される(認定事項4)ことにより構成されている、 免震装置54を適用した鉄骨建物の基礎構造(【0002】)。」 (4)甲4に記載された技術 ア 甲4に記載の事項 (ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は、免震装置の交換方法に関する。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 ・・・ 【0005】 本発明は上記のような事情に鑑みてなされものであり、その目的は、躯体の交差部の下方にジャッキ装置を設置するスペースが確保できない場合であっても、交差部をジャッキアップして免震装置の交換を可能とする免震装置の交換方法を提供することである。」 (イ)「【0018】 躯体4は、図1に示すように、複数の柱4aと、隣り合う柱4a間に架け渡された複数の梁4bと、を主たる要素として複数層に構成されたものである。 柱4aは、基礎杭2aの上方に位置し、梁4bは柱4a同士を繋ぐようにして縦横に配置されている。 また、床スラブ4cが、梁4bの上端部間に亘って設けられるとともに、後述する交差部5および梁4bと一体化しており、躯体4に階層を形成している。 【0019】 また、躯体4は、この躯体4の下端部において柱4aと梁4bとが交差する位置に設けられて、柱4aよりも大径に設定された交差部5を有する。・・・」 (ウ)「【0027】 そして、本実施形態においては、上述のように突出部6の下方にジャッキ装置20設置用スペースを確保できないため、交差部5の周囲に、交差部5から横方向に張り出す張出部40を増設し、その張出部40を、ジャッキ装置20によって下方からジャッキアップする。 このような張出部40は、図2~図7に示すように、本体部41と、アンカー部材45と、を備える。 【0028】 本体部41は、現場で打設される所謂“増し打ちコンクリート”製である。すなわち、本体部41は、交差部5の周囲における所定の高さ位置に型枠(図示せず)を形成し、型枠内に、複数の鉄筋44が配筋されるとともに、コンクリートが打設されることによって形成されている。 さらに、このような鉄筋コンクリート製の本体部41は、梁4bと交差部5とによって形成される入隅箇所から張り出すように増設されている。換言すれば、本体部41は、梁4bの側面と、当該側面と平面視において交差方向に連続する交差部5の側面に対して、アンカー部材45を介して定着するように固定されている。・・・」 (エ)「【0035】 また、交差部5から三方向に梁4bが伸びる箇所においては、図4に示すように、張出部40の下面(すなわち、底部42の下面)には、ジャッキ装置20が設置される位置に対応して、滑動部材21が埋設されている。滑動部材21は、張出部40とジャッキ装置20との間に介在した状態となっている。より具体的に説明すると、滑動部材21は、張出部40における突出定着部43の下方に対応する位置に、かつ平面視において突出定着部43の範囲を越えない状態で設けられている。 また、このように滑動部材21が設けられる箇所の下方に、台座2gが設けられた状態となっている。 この滑動部材21は、ジャッキ装置20によって交差部5をジャッキアップさせた時、すなわち、既存免震装置10xまたは新規免震装置10nが免震機能を発揮できない時に、その代わりに免震機能を発揮するものである。例えばジャッキアップ時に地震が起きた場合には、ジャッキ装置20によって交差部5をジャッキアップしたまま、滑動部材21を含んだ張出部40(すなわち、躯体4)がジャッキ装置20上を滑動し、免震作用を得ることができる。 なお、滑動部材21は板状体であり、例えば表面(ジャッキ装置20との接触面)が平滑に形成されたステンレス板等の金属板が用いられている。また、そのサイズは突出定着部43の平面視における面積よりも若干小さく設定されており、突出定着部43の下方の略全面を滑動面とすることができる。」 (オ)「【図3】 [図:0001396339000006.jpg] 」 図中符号4b、41はそれぞれ、「梁4b」、「張出部40」を示し、図3より、梁4bの上端面より張出部40が低い位置に形成されていることが看取される(認定事項5)。 イ 甲4に記載された技術 上記アより、甲4には、次の技術(以下「甲4に記載された技術」という。)が記載されていると認められる。 甲4に記載された技術 「複数の柱4aと、隣り合う柱4a間に架け渡された複数の梁4bと、を主たる要素として複数層に構成された躯体4の下端部において柱4aと梁4bとが交差する位置に設けられて、柱4aよりも大径に設定された交差部5を有し(【0018】、【0019】)、 交差部5の周囲に、交差部5から横方向に張り出す張出部40を増設し、その張出部40を、ジャッキ装置20によって下方からジャッキアップすることで免震装置の交換を可能とし、 張出部40は本体部41を備え、交差部5の周囲における所定の高さ位置に型枠を形成し、型枠内に、複数の鉄筋44が配筋されるとともに、コンクリートが打設されることによって形成されている鉄筋コンクリート製の本体部41が、梁4bと交差部5とによって形成される入隅箇所から張り出すように増設され(【0005】、【0027】、【0028】)、 張出部40の下面には、ジャッキ装置20が設置される位置に対応して、滑動部材21が埋設され、滑動部材21は、ジャッキ装置20によって交差部5をジャッキアップさせて既存免震装置10xまたは新規免震装置10nが免震機能を発揮できない時に、その代わりに免震機能を発揮するものであり、ジャッキ装置20との接触面が平滑に形成されたステンレス板等の金属板が用いられていて(【0035】)、 梁4bの上端面より張出部40が低い位置に形成されている(認定事項5)、免震装置(【0005】)。」 5 当審の判断 (1)本件特許発明1について ア 本件特許発明1 本件特許発明1は、前記2に示したとおりであり以下に再掲する(符号A等は、分説のため合議体が付した。また、符号により分説された発明特定事項を、以下では「特定事項A」等という。)。 本件特許発明1 「【請求項1】 A 下部構造体の上面に設置された免震装置と、 B 前記免震装置の上部に固定され、前記免震装置の外側へ突出した鋼製プレートと、 C 前記鋼製プレートの上部に固定され、上端面が鉄骨造の上部構造体における鉄骨梁の上端面より高い位置に形成されて、前記鉄骨梁と柱との仕口部が埋設されたコンクリート補強体と、 D を備えた免震構造。」 イ 甲1発明を主引例とする場合 (ア)対比 本件特許発明1と甲1発明とを対比する。 i)特定事項Aについて 甲1発明の 「下部の構造物」、 「上部」、 「配置され」ること、 「円柱状の免震装置」はそれぞれ、 本件特許発明1の 「下部構造体」、 「上面」、 「設置された」こと、 「免震装置」に相当するから、甲1発明は、本件特許発明1の特定事項Aに相当する構成を備えている。 ii)特定事項Bについて 甲1発明の「前記フランジの上部に」「配置され」た「方形状のプレート」は、その材質の記載はないが、技術常識を考慮すると鋼製であると解することが自然であるので、本件特許発明1の「前記免震装置の上部に固定され」た「鋼製プレート」に相当する。 また、甲1発明において、「方形状のプレートの1辺の長さはフランジの直径よりわずかに大き」いことと本件特許発明1の「前記免震装置の外側へ突出した鋼製プレート」とは、免震装置の外側に延びた鋼製プレートである点で共通する。 よって、甲1発明と本件特許発明1の特定事項Bとは、免震装置の上部に固定され、免震装置の外側へ延びた鋼製プレートを備える点で共通する。 iii)特定事項Cについて 甲1発明の 「水平方向」「に延びる鉄骨」、 「垂直方向に延びる鉄骨」、 「水平方向及び垂直方向に延びる鉄骨が交差して設けられる」ことはそれぞれ、 本件特許発明1の 「鉄骨梁」、 「柱」、 「仕口部」に相当する。 また、甲1発明の「プレートの上方に」おいて、「鉄筋が複数設けられて」いる箇所である「水平方向及び垂直方向に延びる鉄骨が交差して設けられる」箇所「の周囲」は、コンクリートが打設された鉄筋コンクリート構造物となることは自明であるから、本件特許発明1の特定事項Cと、鋼製プレートの上部に固定され、上端面が鉄骨を含む上部構造体における鉄骨梁の上端面より高い位置に形成されているという点、及び、鉄骨梁と柱との仕口部が埋設されたコンクリート構造物を備える点で共通する。 よって、甲1発明と本件特許発明1の特定事項Cとは、鋼製プレートの上部に固定され、上端面が鉄骨を含む上部構造体における鉄骨梁の上端面より高い位置に形成されて、前記鉄骨梁と柱との仕口部が埋設されたコンクリート構造物を備える点で共通する。 iv)特定事項Dについて 甲1発明の「免震装置」を含む「構造」は、本件特許発明の「免震構造」に相当し、甲1発明は、本件特許発明1の特定事項Dに相当する構成を備えている。 v)一致点及び相違点 上記i)~iv)より、甲1発明と本件特許発明1とは、以下に示す一致点で一致し、同相違点で相違する。 [一致点] A 下部構造体の上面に設置された免震装置と、 B’ 前記免震装置の上部に固定され、前記免震装置の外側へ延びた鋼製プレートと、 C’ 前記鋼製プレートの上部に固定され、上端面が鉄骨を含む上部構造体における鉄骨梁の上端面より高い位置に形成されて、前記鉄骨梁と柱との仕口部が埋設されたコンクリート構造物と、 D を備えた免震構造。 [相違点] i)相違点1(特定事項B) 免震装置の外側に対する鋼製プレートの位置について、本件特許発明1の鋼製プレートは、免震装置の外側へ「突出した」ものであるのに対し、甲1発明の方形状のプレートの1辺の長さは免震装置上部のフランジの直径よりわずかに大きいものであるものの、「突出した」ものであるとはいえない点。 ii)相違点2(特定事項C) 上部構造体について、本件特許発明1では「鉄骨造」であるのに対し、甲1発明の上部の構造物には、プレートの上方に水平方向及び垂直方向に延びる鉄骨が交差して設けられるものの、鉄骨造であるかどうか不明である点。 iii)相違点3(特定事項C) 鉄骨梁と柱との仕口部が埋設されたコンクリート補強体について、本件特許発明1は、「コンクリート補強体」であるのに対し、甲1発明の鉄筋が複数設けられている箇所である水平方向及び垂直方向に延びる鉄骨が交差して設けられる箇所の周囲は、コンクリートが打設された鉄筋コンクリート構造物となることは自明であるものの、「コンクリート補強体」であるかどうか不明である点。 (イ)合議体の判断 相違点1~相違点3は関連しているのでまとめて検討する。 i)本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には、「コンクリート補強体」を備えること、及び「鋼製プレート」が「免震装置の外側へ突出した」ものであることによる作用効果について次の事項が記載されている。 「【0026】 (作用・効果) 本実施形態に係る免震構造によると、鉄骨造の上部構造体16における鉄骨柱16Aと鉄骨梁16Bとの仕口部16Cが、コンクリートで形成された補強体30に埋設されている。これにより、補強体30を備えない場合と比較して仕口部16Cの剛性が向上する。このため、免震装置14を取り替える際、補強体30をジャッキアップしても仕口部16Cが変形し難い。なお、補強体30をジャッキアップする際は、免震装置14の上フランジ14Aと鋼製プレート20とを固定するボルトを外し、互いに分離可能な状態にする。 ・・・ 【0028】 なお、免震装置14の両側からジャッキJを用いて延設部30Xをジャッキアップすると、延設部30XはジャッキJから上向きの力Pを受ける。このため補強体30の下面は略X方向に伸び変形しようとする。しかし、補強体30には、一方の延設部30Xから他方の延設部30Xに亘って鋼製プレート20が固定されている。さらに、鋼製プレート20と補強体30とはスタッド22によって接合されている。したがってこの鋼製プレート20が引張力に抵抗することで、補強体30のひび割れを抑制できる。これにより、鉄骨柱16Aから受ける軸力による仕口部16Cの沈み込み及び変形を抑制できる。」 「 [図:0001396339000007.jpg] 」 上記記載から、本件特許発明1において、「コンクリート補強体」を備えること、及び「鋼製プレート」が「免震装置の外側へ突出した」ものであることにより、免震装置14を取り替える際、免震装置14の両側からジャッキJを用いてコンクリート補強体30をジャッキアップしても、鉄骨造の上部構造体16における鉄骨柱16Aと鉄骨梁16Bとの仕口部16Cが、コンクリート補強体30に埋設されている仕口部16Cが変形し難いという作用効果を奏するとともに、 コンクリート補強体30に鋼製プレート20が固定されていることにより、鋼製プレート20が引張力に抵抗することで、コンクリート補強体30のひび割れを抑制できること、及び、鉄骨柱16Aから受ける軸力による仕口部16Cの沈み込み及び変形を抑制できるという作用効果を奏するものと認められる。 ii)ここで、相違点1に関連して、甲1発明の方形状のプレートの1辺の長さは免震装置上部のフランジの直径よりわずかに大きい程度であって、免震装置の両側からジャッキを用いて鉄筋コンクリート構造物をジャッキアップすることを可能とする程度に免震装置の外側へ「突出した」ものであるとはいえない。 さらに、相違点2及び相違点3に関連して、甲1発明の上部の構造物が、鉄骨造であるか、あるいは、鉄骨鉄筋コンクリート造であるか等不明であって、水平方向及び垂直方向に延びる鉄骨が交差して設けられる箇所の周囲の鉄筋コンクリート構造物が、鉄骨鉄筋コンクリート造の上部の構造物の一部をなすものであるのか、鉄骨造の上部の構造物に付加して設けたものであるのか、あるいはその余のものであるのか不明である。そしていずれであっても、甲1発明の水平方向及び垂直方向に延びる鉄骨が交差して設けられる箇所の周囲の鉄筋コンクリート構造物が、ジャッキアップすることを可能とする程度の強度を備えた「コンクリート補強体」であると認めるに足る根拠を見出せない。 したがって、本件特許発明1は、甲1発明と同一ではない。また、上記相違点1~相違点3に係る本件特許発明1の構成は周知技術であるともいえないから、本件特許発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に想到し得るものではない。 iii)この点について、甲4には、前記(4)イに示した甲4に記載された技術が記載されている。 甲4に記載された技術の「ステンレス板等の金属板が用いられてい」る「滑動部材21」と本件特許発明1の「鋼製プレート」とは、鋼製のプレートである点で共通するが、甲4に記載された技術の「滑動部材21」は、「ジャッキ装置20が設置される位置に対応して」「張出部40の下面に」「埋設され」ているものであって、本件特許発明1のように「鋼製プレート」が、「前記免震装置の上部に固定され、前記免震装置の外側へ突出した」ものには該当しない。 また、甲4に記載された技術の「梁4bと交差部5とによって形成される入隅箇所から張り出すように増設され」ている「張出部40」の「鉄筋コンクリート製の本体部41」は、「ジャッキ装置20によって下方からジャッキアップすることで免震装置の交換を可能」とするものであるから、これは、本件特許発明1の「コンクリート補強体」と、コンクリート製の補強体である点で共通するものの、甲4に記載された技術の「張出部40」は、「躯体4の下端部において柱4aと梁4bとが交差する位置に設けられ」た「交差部5の周囲に、交差部5から横方向に張り出す」ように「増設」したものであるから、本件特許発明1のように「前記鉄骨梁と柱との仕口部が埋設された」ものではなく、しかも、「梁4bの上端面より張出部40が低い位置に形成されている」から、「上端面が鉄骨造の上部構造体における鉄骨梁の上端面より高い位置に形成されて」いるものでもない。 そして、少なくとも前記相違点1及び相違点3に係る本件特許発明1の構成は、甲2に記載されているURLに記録されておらず、甲3並びに周知技術の例として提出された甲5及び甲6に記載も示唆もされていないから、本件特許発明1は、申立人が証拠として提出した甲1及び甲2に記載のURLに記録された事項並びに甲3~6に記載の事項に基いて、当業者が容易に想到し得るものではない。 ウ 甲2発明を主引例とする場合 (ア)対比 本件特許発明1と甲2発明とを対比する。 i)特定事項A~Dについて 甲2発明の 「基礎コンクリート」、 「上部」、 「配置され」ること、 「ゴムからなる円柱状の免震装置」、 「鉄骨3階の庁舎棟」、 「鉄骨梁」、 「柱」、 「免震装置」を含む「構造」はそれぞれ、 本件特許発明1の 「下部構造体」、 「上面」、 「設置された」こと、 「免震装置」、 「鉄骨造の上部構造体」、 「鉄骨梁」、 「柱」、 「免震構造」に相当する。 そうすると、甲2発明は、本件特許発明1の特定事項A、Dに相当する構成を備えている。 また、甲2発明の「床梁のコンクリート」は、「水平方向の直交する2方向」に打たれるから、本件特許発明1の「上端面が鉄骨造の上部構造体における鉄骨梁の上端面より高い位置に形成されて、前記鉄骨梁と柱との仕口部が埋設されたコンクリート補強体」と鉄骨梁と柱との仕口部が埋設されたコンクリート構造物である点で共通する。 よって、甲2発明と本件特許発明1の特定事項Cとは、上端面が鉄骨造の上部構造体における鉄骨梁の上端面より高い位置に形成されて、前記鉄骨梁と柱との仕口部が埋設されたコンクリート構造物を備える点で共通する。 ii)一致点及び相違点 上記i)より、甲2発明と本件特許発明1とは、以下に示す一致点で一致し、以下に示す相違点で相違する。 [一致点] A 下部構造体の上面に設置された免震装置と、 C’’ 上端面が鉄骨造の上部構造体における鉄骨梁の上端面より高い位置に形成されて、前記鉄骨梁と柱との仕口部が埋設されたコンクリート構造物と、 D を備えた免震構造。 [相違点] i)相違点4(特定事項B) 本件特許発明1は「前記免震装置の上部に固定され、前記免震装置の外側へ突出した鋼製プレート」を備えるのに対し、甲2発明の免震装置の上に配置される方形状の板状部材が鋼製プレートであるかどうか不明である点。 ii)相違点5(特定事項C) 鉄骨梁と柱との仕口部が埋設されたコンクリート補強体について、本件特許発明1は、「前記免震装置の上部に固定され」た「コンクリート補強体」であるのに対し、甲2発明は、上記i)のとおり、鋼製プレートを備えるかどうか不明であるとともに、「床梁のコンクリート」は、「コンクリート補強体」であるとはいえない点。 (イ) 合議体の判断 相違点4及び相違点5は関連しているのでまとめて検討する。 i)本件特許の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された「コンクリート補強体」を備えること、及び「鋼製プレート」が「免震装置の外側へ突出した」ものであることによる作用効果は、前記イ(イ)i)に示したとおりである。 相違点4に関連して、甲2発明の免震装置の上に配置された「方形状の板状部材」は、免震装置の上部に形成されたフランジである可能性もあるので、当該板状部材が鋼製のプレートであるかどうか不明であるし、仮に、鋼製のプレートであるとしても、免震装置の両側からジャッキを用いて鉄筋コンクリート構造物をジャッキアップすることを可能とする程度に免震装置の外側へ「突出した」ものであるとはいえない。 相違点5に関連して、甲2発明の「床梁のコンクリート」は、文字どおり床梁をなす構造物であって、「コンクリート補強体」には該当しない。 したがって、本件特許発明1は、甲2発明と同一ではない。また、上記相違点4及び相違点5に係る本件特許発明1の構成は周知技術であるともいえないから、本件特許発明1は、甲2発明に基いて当業者が容易に想到し得るものではない。 ii)相違点4及び相違点5はそれぞれ、前記イ(イ)で検討した相違点1及び相違点3と同じ構成を相違点として含んでいるので、同様に、前記相違点4及び相違点5に係る本件特許発明1の構成は、甲1に記載されているURLに記録されておらず、甲4及び周知技術の例として提出された甲5及び甲6に記載も示唆もされていないから、本件特許発明1は、申立人が証拠として提出した甲1及び甲2に記載のURLに記録された事項並びに甲3~6に記載の事項に基いて、当業者が容易に想到し得るものではない。 エ 甲3発明を主引例とする場合 (ア)対比 本件特許発明1と甲3発明とを対比する。 i)特定事項A、Dについて 甲3発明の 「下部基礎コンクリート51」、 「上面」、 「アンカーボルト57を介して強固に埋設された免震装置下ベースプレート53」「の上面に配置される」こと、 「免震装置54」、 「免震装置54を適用した鉄骨建物の基礎構造」はそれぞれ、 本件特許発明1の 「下部構造体」、 「上面」、 「設置された」こと、 「免震装置」、 「免震構造」に相当するから、甲3発明は、本件特許発明1の特定事項A、Dに相当する構成を備えている。 ii)特定事項Bについて 甲3発明の「免震装置54の上面に載置される」「免震装置上ベースプレート62」は、技術常識を考慮すると鋼製であると解することが自然であるので、本件特許発明1の「前記免震装置の上部に固定され」る「鋼製プレート」に相当する。 また、甲3発明において「免震装置上ベースプレート62は、免震装置54の上部フランジ56よりも外側に延びてい」ることと、本件特許発明1の「免震装置の外側へ突出した鋼製プレート」とは、免震装置の外側に延びた鋼製プレートである点で共通する。 よって、甲3発明と本件特許発明1の特定事項Bとは、免震装置の上部に固定され、免震装置の外側へ延びた鋼製プレートを備える点で共通する。 iii)特定事項Cについて 甲3発明の 「鉄骨建物」、 「鉄骨梁」、 「鉄骨柱61」、 「鉄骨柱61の柱脚部に溶接された仕口部鉄骨59」はそれぞれ、 本件特許発明1の 「鉄骨造の上部構造体」、 「鉄骨梁」、 「柱」、 「鉄骨梁と柱との仕口部」に相当する。 そして、甲3発明において、「免震装置上ベースプレート62の上面に固定された柱受け鉄骨58のさらに上部には鉄骨柱61の柱脚部に溶接された仕口部鉄骨59が溶接されて」「これら免震装置上ベースプレート62、柱受け鉄骨58、仕口部鉄骨59が一体となるようにコンクリート60により埋設され、鉄骨梁の上下もコンクリートにより埋設される」ことと本件特許発明1の「コンクリート補強体」が「前記免震装置の上部に固定され」ていることとは、コンクリート構造物が免震装置の上部に固定されている点で共通する。 また、甲3発明において「仕口部鉄骨59が」「コンクリート60により埋設され」ることと本件特許発明1の「前記鉄骨梁と柱との仕口部が埋設されたコンクリート補強体」とは、鉄骨梁と柱との仕口部が埋設されたコンクリート構造物である点で共通する。 さらに、甲3発明において「鉄骨梁の上下もコンクリートにより埋設される」ることと本件特許発明1の「コンクリート補強体」の「上端面が鉄骨造の上部構造体における鉄骨梁の上端面より高い位置に形成されて」いることとは、コンクリート構造部の上端面が鉄骨造の上部構造体における鉄骨梁の上端面より高い位置に形成されていることと共通する。 してみれば、甲3発明と本件特許発明1の特定事項Cとは、鋼製プレートの上部に固定され、上端面が鉄骨造の上部構造体における鉄骨梁の上端面より高い位置に形成されて、鉄骨梁と柱との仕口部が埋設されたコンクリート構造物を備える点で共通する。 iv)一致点及び相違点 上記i)~iii)より、甲3発明と本件特許発明1とは、以下に示す一致点で一致し、以下に示す相違点で相違する。 [一致点] A 下部構造体の上面に設置された免震装置と、 B’ 前記免震装置の上部に固定され、前記免震装置の外側へ延びた鋼製プレートと、 C’’’ 前記鋼製プレートの上部に固定され、上端面が鉄骨造の上部構造体における鉄骨梁の上端面より高い位置に形成されて、前記鉄骨梁と柱との仕口部が埋設されたコンクリート構造物と、 D を備えた免震構造。 [相違点] i)相違点6(特定事項B) 免震装置の外側に対する鋼製プレートの位置について、本件特許発明1の鋼製プレートは、免震装置の外側へ「突出した」ものであるのに対し、甲3発明の免震装置上ベースプレート62は、免震装置54の上部フランジ56よりも外側に延びているものの、「突出した」ものであるとはいえない点。 ii)相違点7(特定事項C) 鉄骨梁と柱との仕口部が埋設されたコンクリート補強体について、本件特許発明1は、「コンクリート補強体」であるのに対し、甲3発明の「仕口部鉄骨59が」「コンクリート60により埋設され」るものの、「コンクリート補強体」であるかどうか不明である点。 (イ)合議体の判断 相違点6及び相違点7は関連しているのでまとめて検討する。 i)本件特許の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された「コンクリート補強体」を備えること、及び「鋼製プレート」が「免震装置の外側へ突出した」ものであることによる作用効果は、前記イ(イ)i)に示したとおりである。 相違点6に関連して、甲3発明の免震装置上ベースプレート62は、免震装置54の上部フランジ56よりも外側に延びているものの、免震装置の両側からジャッキを用いて鉄筋コンクリート構造物をジャッキアップすることを可能とする程度に免震装置の外側へ「突出した」ものであるとはいえない。 さらに、相違点7に関連して、甲3発明の「仕口部鉄骨59が」「コンクリート60により埋設され」る範囲がどこまで拡がっているか不明である。甲3の図2を見ると、図中符号60が示す「コンクリート60」の範囲は斜め方向に向いた3本組の二点破線で表されているといえ、また、図中符号60が示す範囲の左右及び上方向には、1本の二点破線が引かれて区画されていることから、図中符号62が示す「免震装置上ベースプレート62」の直上方のみならず、さらに左右方向及び上方もコンクリートにより埋設されていることが窺われる。 そうすると、甲3発明の「仕口部鉄骨59が」「コンクリート60により埋設され」る範囲は、「免震装置上ベースプレート62」の直上方に区画された領域であると認めるに足る根拠はなく、むしろ、当該領域より広い範囲までコンクリートが埋設されていると考える方が自然であるから、補強体として設けられたものであるか、あるいは、躯体の一部をなす構造物であるのか不明である。そして、いずれであっても、甲3発明の仕口部鉄骨59を埋設するコンクリート60であるコンクリート構造物が、ジャッキアップすることを可能とする程度の強度を備えた「コンクリート補強体」であると認めるに足る根拠を見出せない。 したがって、本件特許発明1は、甲3発明と同一ではない。また、上記相違点6及び相違点7に係る本件特許発明1の構成は周知技術であるともいえないから、本件特許発明1は、甲3発明に基いて当業者が容易に想到し得るものではない。 ii)相違点6及び相違点7はそれぞれ、前記イ(イ)で検討した相違点1及び相違点3と同じ構成を相違点として含んでいるので、同様に、前記相違点6及び相違点7に係る本件特許発明1の構成は、甲1及び甲2に記載されているURLに記録されておらず、甲4及び周知技術の例として提出された甲5及び甲6に記載も示唆もされていないから、本件特許発明1は、申立人が証拠として提出した甲1及び甲2に記載のURLに記録された事項並びに甲3~6に記載の事項に基いて、当業者が容易に想到し得るものではない。 オ 本件特許発明1についてのまとめ 以上のとおり、本件特許発明1は、甲1発明~甲3発明と同一でなく、甲3発明に基いて当業者が容易に想到し得るものではなく、また、甲1発明~甲3発明、甲4に記載された技術及び甲5、甲6に記載の事項に基いて当業者が容易に想到し得るものでもない。 したがって、本件特許発明1は、特許法第29条第1項第3号の規定に該当するものではなくまた、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 (2)本件特許発明2~本件特許発明4について 本件特許発明2及び本件特許発明4は、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含みさらに減縮した発明であって、本件特許発明3は、本件特許発明2の発明特定事項をすべて含みさらに減縮した発明である。 よって、上記(1)に示した理由と同様の理由により、本件特許発明2~本件特許発明4は、甲1発明~甲3発明と同一でなく、甲3発明に基いて当業者が容易に想到し得るものではなく、また、甲1発明~甲3発明、甲4に記載された技術及び甲5、甲6に記載の事項に基いて、当業者が容易に想到し得るものでもない。 したがって、本件特許発明2~4は、特許法第29条第1項第3号の規定に該当するものではなく、また、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 6 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700054

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