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特許異議申立

2023-700046

濃厚な発酵乳およびその製造方法

審判番号
2023-700046
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-217201
登録番号
7102094
請求日
2023年01月18日
審決日
2023年10月16日
公報発行日
2024年01月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社明治
  • 【権利者代理人】葛和 清司
  • 【権利者代理人】矢後 知美
  • 【異議申立人】松本 保
審判長/審判官
  • 審判長 淺野 美奈
  • 審判官 磯貝 香苗
  • 審判官 植前 充司
分類
P1651.113-YAA(A23C) / P1651.121-YAA(A23C) / P1651.537-YAA(A23C)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条6項1号特許法113条4号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項、特許法第126条第6項、特許法第113条第4号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7102094号発明「濃厚な発酵乳およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7102094号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし9〕、10について訂正することを認める。 特許第7102094号の請求項1ないし14に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7102094号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし14に係る特許についての出願は、 平成28年11月 7日に出願され、 令和 4年 7月 8日にその特許権の設定登録(請求項の数 14)がされ、 令和 4年 7月19日に特許掲載公報が発行された。 その後、当該特許に対し、 令和 5年 1月18日に松本 保(以下、「特許異議申立人」という。)が、全ての請求項に係る特許に対して特許異議の申立てを行い、 令和 5年 4月20日付けで取消理由が通知され、 令和 5年 6月23日に特許権者(株式会社明治)により訂正請求がなされるとともに意見書が提出され、 令和 5年 7月 7日付けで特許法第120条の5第5項の規定に基づき特許異議申立人に対し訂正請求があった旨の通知がされたが、これに対し特許異議申立人は何ら応答がなかったものである。 第2 本件訂正について 1 訂正の内容 令和 5年 6月23日にされた訂正請求における訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「方法であって、噴霧乾燥する工程を経ない」と記載されているのを、 「方法であって、乳糖を添加する工程を含み、噴霧乾燥する工程を経ない」に訂正する。 併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項についても同様の訂正をする。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項10において、請求項1ないし7を引用する請求項8または請求項1ないし8を引用する請求項9を引用するものを、請求項1を引用する請求項2を引用する請求項7を引用する請求項8を引用するものとし、これを独立形式に改める。 (3)一群の請求項について 訂正前の請求項1ないし10のうち、請求項2ないし10は請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、訂正前の請求項1ないし10に対応する訂正後の請求項1ないし10は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 なお、訂正後の請求項10については、訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とする求めがある。 2 訂正の目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1に係る請求項1の訂正は、請求項1における「原料乳(ただし、噴霧乾燥用の原料乳を除く)を製造する方法」において、「乳糖を添加する工程を含み」との特定をするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1に係る請求項1の訂正は、本件特許明細書の【0010】、【0020】、【0030】の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項についても同様である。 (2)訂正事項2について 訂正事項2に係る請求項10の訂正は、訂正前の請求項10が、請求項1ないし7を引用する請求項8、または、請求項1ないし8を引用する請求項9を引用する記載であったものから、請求項1を引用する請求項2を引用する請求項7を引用する請求項8を引用するものとし、かつ、独立形式に書き下したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 そして、訂正事項2に係る請求項10の訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 また、訂正前の請求項1ないし14について特許異議申立てがされているから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 したがって、本件特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし9〕、10について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし14に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明14」といい、まとめて「本件特許発明」という。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定される次のとおりものである。 【請求項1】 膜分離処理で濃縮した液状の濃縮乳を主成分とし、 7.5~20重量%のタンパク質、 0~3.0重量%の脂質、 5~18重量%の乳糖 を含む原料乳(ただし、噴霧乾燥用の原料乳を除く)を製造する方法であって、 乳糖を添加する工程を含み、 噴霧乾燥する工程を経ない、前記製造方法。 【請求項2】 原料乳が、粉末状の乳タンパク質を含まない、請求項1に記載の製造方法。 【請求項3】 原料乳が、安定化剤を含まない、請求項1または2に記載の製造方法。 【請求項4】 原料乳が、0.15~2重量%の灰分を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。 【請求項5】 原料乳が、0.05~0.7重量%のカルシウムを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。 【請求項6】 75℃・達温、95℃・達温、75℃~95℃・15~60秒間、110℃~150℃・1~5秒間のいずれかの条件で加熱殺菌処理する、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。 【請求項7】 主成分の濃縮乳が、濃縮の前に、生乳、殺菌処理した乳および/または脱脂乳のpHを5.5~6.5に調整し、0.5時間以上保持する酸性化処理されて調製された濃縮乳である、請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。 【請求項8】 請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法によって製造された原料乳を発酵させることを含む、発酵乳の製造方法。 【請求項9】 原料乳を容器に充填し、その後に発酵させる、請求項8に記載の発酵乳の製造方法。 【請求項10】 膜分離処理で濃縮した液状の濃縮乳を主成分とし、 7.5~20重量%のタンパク質、 0~3.0重量%の脂質、 5~18重量%の乳糖 を含み、 粉末状の乳タンパク質を含まない原料乳(ただし、噴霧乾燥用の原料乳を除く)を製造する方法であって、噴霧乾燥する工程を経ず、 主成分の濃縮乳が、濃縮の前に、生乳、殺菌処理した乳および/または脱脂乳のpHを5.5~6.5に調整し、0.5時間以上保持する酸性化処理されて調製された濃縮乳である、 前記製造方法によって製造された原料乳を発酵させることを含む発酵乳の製造方法により製造された、発酵乳。 【請求項11】 7.5~20重量%のタンパク質、 0~3.0重量%の脂質、 5~18重量%の乳糖 を含む、膜分離処理で濃縮した液状の濃縮乳を主成分とする原料乳を発酵させることを含む、発酵乳の食感を滑らかにする方法。 【請求項12】 7.5~20重量%のタンパク質、 0~3.0重量%の脂質、 4~18重量%の乳糖、 0.15~2重量%の灰分、 を含む、膜分離処理で濃縮した液状の濃縮乳を主成分とする原料乳を発酵させることを含む、発酵乳の食感を滑らかにし、かつ、発酵乳の塩味またはえぐ味を低減、もしくは発酵乳にコク味を付与する方法。 【請求項13】 7.5~20重量%のタンパク質、 0~3.0重量%の脂質、 4~18重量%の乳糖、 0.05~0.7重量%のカルシウム、 を含む、膜分離処理で濃縮した液状の濃縮乳を主成分とする原料乳を発酵させることを含む、発酵乳の食感を滑らかにし、かつ、発酵乳の塩味またはえぐ味を低減、もしくは発酵乳にコク味を付与する方法。 【請求項14】 発酵乳がセットタイプヨーグルトである、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。 第4 特許異議申立書に記載した特許異議申立理由の概要 特許異議申立人は、本件特許に対する特許異議申立理由として、下記1ないし4の申立理由を主張し、5の証拠方法を提出した。 1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1ないし14に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第1号証に記載された発明に基づいてその出願前にその発明が属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし14に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 申立理由2(甲第2号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1ないし14に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第2号証に記載された発明に基づいてその出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし14に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 3 申立理由3(甲第4号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項12及び13に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第4号証に記載された発明に基づいてその出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項12及び13に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 4 申立理由4(サポート要件) 本件特許の請求項13及び14に係る特許は、下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ・本件特許発明13及び14は、特定の原料乳を発酵させることを含む「コク味を付与する方法」に関する発明であるところ、本件特許明細書において「コク味」が評価されていない(本件特許の実施例。)。したがって、本件特許発明13及び14は、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えるものであり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 5 証拠方法 甲第1号証:J Sci Food Agric 1995,69,p283-290 甲第2号証:Research Journal of Agriculture and Biological Sciences,5(4):310-316,2009 甲第3号証:日本食品工業学会誌、第32巻、第2号、1985年2月、p144-155 甲第4号証:International Dairy Journal Volume 47,August 2015,p6-18 甲第5号証:牛乳乳製品の知識 改訂版、一般社団法人Jミルク、2017年10月(初版2012年10月)(https://www.j-milk.jp/findnew/chapter2/0406.html)、表紙、目次、奥付、p039 証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。 第5 取消理由通知に記載した取消理由の概要 当審が令和 5年 4月20日付けで特許権者に通知した取消理由通知における取消理由の概要は次のとおりである。 1 取消理由1(甲1に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1ないし5、8、10に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1ないし6、8ないし10に係る発明は、甲1に記載された発明に基づいてその出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし6、8ないし10に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 取消理由2(甲2に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1、3、8ないし10に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1、3ないし10に係る発明は、甲2に記載された発明に基づいてその出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3ないし10に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 第6 令和 5年 4月20日付けで特許権者に通知した取消理由についての判断 当審は以下に述べるように、令和 5年 4月20日付けで特許権者に通知した取消理由1及び取消理由2は、いずれも理由がないと判断する。 1 取消理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)について (1)甲1の記載事項等 ア 甲1の記載事項 甲1には以下の記載がある。なお、甲1は外国文献のため訳文を摘記する。 第283頁 Abstract 「限外濾過(UF)及び逆浸透(RO)は、タンパク質を強化した脱脂乳を製造するために、脱脂乳(スキムミルク)の全固形分を増やすために使用されている。いずれの手法により濃縮された乳も適切に発酵に供され得るが、逆浸透(RO)では乳の構成成分の比率を変化させることはない。10kDaカットオフ膜による限外濾過によって、様々なタンパク質/乳糖比を有する濃縮乳を得ることができる。比率1・2―1・3では、市販のヨーグルトよりも最大35%タンパク質が多く、食感の良いヨーグルトが得られる。」 第284頁 左欄 3~7行目 「本研究の目的は、UFとROを用いた乳の濃縮について検討することであった。そこで、タンパク質と乳糖の比率が異なる濃縮乳を発酵させ、ヨーグルトを得た。最終製品の物理化学的特定及び官能特性を測定した。」 第284頁 右欄 Fermentation Step 「発酵工程 いずれかの手法で濃縮した乳を、殺菌したポット内で80℃、60分間加熱した後、45℃に冷却し、層流キャビネット内でStreptococcus themophilus 及び Lactobacillus bulgaricusを植菌した。工業規模でのヨーグルト生産をシュミレートするために、濃縮乳1kgあたり30gのスターター培養物の接種を採用した。酸性度(pHと°D)及び微生物増殖は、45℃の発酵工程で調査した。」 第284頁 右欄 Raw material 「原料 Central Lechera Asturiana(CLAS,Asturias,Spain)から供給された脱脂乳(0.5g fat kg-1)を原材料として使用した。牛乳は実験室に送られる前に工場で低温殺菌(62-65℃、15秒)された。部分脱脂乳(22g fat kg-1)を原料としていくつかの追加実験が行われたが、タンク内でクリームが急速に生成され、UFとROの透過水量が劇的に減少したため、期待外れの結果となった。」 第286頁 左欄 Milk concentration by UFの1行目~第287頁 右欄の7行目 「UFにより濃縮された乳 脱脂乳を試料として用いた場合の透過流速を測定するために予備実験を行った。Fig.2、3及び4はこれらの結果の一部を示している。 これらの結果は、同様の操作条件により他で(Glover et al 1978)提示された結果と類似する。透過流速は、水による透過流速の10%未満であった。これは、タンパク質性の試料がこれらの膜を詰まらせる傾向が強いことを示している(San Martin 1988;Olano 1990)。 線速度の増加は、濃度分極厚を減少させることにより、透過流速を改善する。Fig.4では線速度が増大する場合において最大透過流速はより高い膜貫通圧力にて得られることが示されている(Cheryan 1986)。 UFプロセス全体のタンパク質及び乳糖濃度をFig.5に示す。結果はFig.6に示すデータから得られるとおり、VCR(体積濃縮係数)に対するタンパク質及び乳糖の平均膜排除率は2つのプロットに対する傾きから得られる。 これらのデータは、次式により相互に関連付けることができる。 [図:0001405814000001.jpg] ここで、CiとC0iは、それぞれ、成分iの濃縮後、及び、予め測定された濃度である。VCRは体積濃縮係数、σiは成分iの平均排除率である。 タンパク質の膜排除率は非常に高く(σ=99.1%)、操作条件に依存しない。Fig.6の回帰(R=0.982)は様々な圧力と温度で実施された実験が含まれる。これらの結果は、膜カットオフが10000であり、これが殆どの乳タンパク質の分子量よりも小さいことを考慮に入れて説明することができる(カゼイン=25000、免疫グロブリン=180000、ウシ血清アルブミン=66000、β-ラクトグロブリン=18000、α-ラクタルブミン=14000、プロテオース-ペプトン=3000―22000)。したがって、総タンパク質の除去が期待される。透過液で検出される少量のNは、乳のタンパク質分解の結果として生成された小さなペプチドによるものか、実験誤差に含まれる可能性によるものかである。 Fig.6は乳糖の排除に関する全く異なる結果を示す。この図では、実験による点の刻みは異なる操作条件による(タンパク質のケースと同様である。)。ここで得られる貧弱な回帰は、乳糖の排除が操作条件に依存することを意味する。Fig.7では、異なる2つの実験条件に従って乳糖の排除がプロットされている。どちらの場合も、回帰パラメータは許容範囲内(R=0.96、R=0.97)である。乳糖の除去は1.4~5.2%の範囲で推移した。」 第287頁 Fig.6 「 [図:0001405814000002.jpg] タイトル タンパク質及び乳糖の膜排除、VCRによる影響 ○,タンパク質 ●,乳糖」 第287頁 Fig.7 「 [図:0001405814000003.jpg] タイトル タンパク質及び乳糖の膜排除、操作条件による影響 ○ 20℃、0-2MPa、55リットルh-1 ● 20℃、0-3MPa、40リットルh-1」 第288頁 左欄 Fermentation of concentrated milk by UFの1行目~右欄の2行目 「UFにより濃縮された乳の発酵 UFにより濃縮された乳は、殺菌したボトルに移され、80℃で60分間加熱された。他の方法(Aimar et al 1988)と比較した場合、この穏やかな処理は乳をUFによって濃縮する場合のもうひとつの利点である。従来の方法では、この熱処理は、特に、最終的なヨーグルトが適切な粘度とテクスチャーを達成することを目的としている。 UFで濃縮された乳の場合、タンパク質含有量の増加により、よりマイルドな熱処理で適切な粘度を得ることができる。濃縮乳を低温殺菌した後、45℃に冷却し、S thermophilus及びL bulgaricus(30g kg-1)を接種し、45℃で3時間保持し、次いでヨーグルトを4℃に冷却した。発酵段階において、微生物増殖及び酸度の発現(pHと°D)に対するタンパク質と乳糖の比率の影響を調査した。続いて、工場関係者による簡単な官能検査が行われた。」 第288頁 右欄の下から7行目~1行目 「表4は、タンパク質/乳糖比の異なる濃縮乳から得られたヨーグルトの最終的な特性の一部を示している。発酵された試料には1から10までの番号が付けられている。表の最初のセクションでは、UFステップの操作条件が示されている。2つめのセクションでは、最終的なヨーグルトの特性に対応するデータを示している。」 第289頁 TABLE 4 「 [図:0001405814000004.jpg] 」 第289頁 左欄 1~8行目 「NFS値が105g kg-1より低い場合、製品はかなり液状であり、ヨーグルトと見なすことはできない。このパラメータが130g kg-1よりも高い場合、最終的な凝固物は固すぎ、製品はソフトチーズに類似している。試料番号8、9、10はタンパク質濃度が高く、これが最終的なヨーグルトの固さ(高い粘性)の原因となっている。」 第289頁 左欄 CONCLUSIONSの1~10行目 「UFは濃縮タンパク質ヨーグルトの製造に最適なオプションと考えられている。ROでは発酵可能な製品が得られるが、成分間の比率は市販品と大きな違いはない。10kDaのカットオフ膜を用いたUFでは、濃縮乳を十分に発酵させることができ、市販のヨーグルトよりもタンパク質含有量が最大35%高い製品を得ることができた。また、従来よりもマイルドな熱処理を行うことで、タンパク質へのダメージが少なくなっている。」 イ 甲1に記載された発明 上記アの記載のうち、TABLE 4の試料番号9を中心に整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1-製法発明」、「甲1-物発明」という。)が記載されていると認められる。 <甲1-製法発明> 「脱脂乳(0.5g fat kg-1)を原材料として使用し、10kDaのカットオフ膜を用いた限外濾過(UF)により濃縮された乳を、80℃で60分間加熱殺菌し、45℃に冷却し、S thermophilus及びL bulgaricus(30g kg-1)を接種し、45℃で3時間保持して発酵させ、次いで4℃に冷却した発酵乳が、85g kg-1のタンパク質、50g kg-1の乳糖となる、製造方法。」 <甲1-物発明> 「甲1-製法発明により製造された発酵乳。」 ウ 甲5の記載事項 甲5には次の記載がある。 p.39 右欄下から11行~下から4行 「また、ヨーグルト製造に使用されている乳酸菌は菌体内にラクターゼを産生しますので、生菌タイプのヨーグルト中にはラクターゼ活性が残っており、乳糖の分解が進みます。その結果、ヨーグルトは乳酸菌による発酵によって乳糖の20~40%が分解されて減少しています。」 (2)判断 ア 本件特許発明1についての対比・判断 本件特許発明1と甲1-製法発明とを対比する。 甲1-製法発明における「限外濾過(UF)により濃縮された乳」は、本件特許発明1における「膜分離で濃縮した液状の濃縮乳」に相当する。 また、甲1-製法発明の製造方法は、発酵乳を製造するために限外濾過(UF)により濃縮された乳を原料としているから、噴霧乾燥用の原料乳は含んでいない。 したがって、甲1-製法発明は、本件特許発明1の「(ただし、噴霧乾燥用の原料乳を除く)」という条件を満たす。 さらに、甲1-製法発明の製造方法においては、噴霧乾燥する工程は含まれていないから、本件特許発明1の「噴霧乾燥する工程を経ない」との特定事項を満たす。 そうすると、本件特許発明1と甲1-製法発明との一致点、相違点は次のとおりである。 <一致点> 「膜分離処理で濃縮した液状の濃縮乳を主成分とした原料乳(ただし、噴霧乾燥用の原料乳を除く)を製造する方法であって、噴霧乾燥する工程を経ない、前記製造方法。」 <相違点1-1> 本件特許発明1においては、原料乳が7.5~20重量%のタンパク質を含むとの特定を有するのに対して、甲1-製法発明においてはそのような特定はない点。 <相違点1-2> 本件特許発明1においては、原料乳が0~3.0重量%の脂質を含むとの特定を有するのに対して、甲1-製法発明においてはそのような特定はない点。 <相違点1-3> 本件特許発明1においては、原料乳が5~18重量%の乳糖を含むとの特定を有するのに対して、甲1-製法発明においてはそのような特定はない点。 <相違点1-4> 本件特許発明1においては、乳糖を添加する工程を含むとの特定を有するのに対して、甲1-製法発明においてはそのような特定はない点。 事案に鑑み、相違点1-4について検討する。 相違点1-4は、実質的な相違点である。 よって、本件特許発明1は甲1-製法発明ではない。 また、甲1及び他の全ての証拠の記載をみても、甲1-製法発明において、乳糖を添加する工程を採用する動機となる記載はない。 したがって、甲1-製法発明において、相違点1-4に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 よって、その他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1-製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 イ 本件特許発明2ないし6、8、9についての対比・判断 本件特許発明2ないし6、8、9は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであって、請求項1に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1と同様に判断される。 よって、本件特許発明2ないし5、8は甲1-製法発明ではなく、また、本件特許発明2ないし6、8、9は甲1―製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 本件特許発明10についての対比・判断 本件特許発明10と甲1-物発明とを対比する。 甲1-物発明における「限外濾過(UF)により濃縮された乳」は、本件特許発明10における「膜分離で濃縮した液状の濃縮乳」に相当する。 また、甲1-物発明では、発酵乳を製造するために限外濾過(UF)により濃縮された乳を原料としているから、噴霧乾燥用の原料乳は含まず、かつ、粉末状の乳タンパク質も含んでいない。 したがって、甲1-物発明は、本件特許発明10の「粉末状の乳タンパク質を含まない原料乳(ただし、噴霧乾燥用の原料乳を除く)」という条件を満たす。 さらに、甲1-物発明における「発酵乳」は、噴霧乾燥する工程を経ずに製造されているから、本件特許発明10における「噴霧乾燥する工程を経ず」「製造方法によって製造された原料乳を発酵させることを含む発酵乳の製造方法により製造された、発酵乳。」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲1-物発明との一致点、相違点は次のとおりである。 <一致点> 「膜分離処理で濃縮した液状の濃縮乳を主成分とし、粉末状の乳タンパク質を含まない原料乳(ただし、噴霧乾燥用の原料乳を除く)を製造する方法であって、噴霧乾燥する工程を経ず、前記製造方法によって製造された原料乳を発酵させることを含む発酵乳の製造方法により製造された、発酵乳。」 <相違点1-5> 本件特許発明10においては、原料乳が7.5~20重量%のタンパク質を含むとの特定を有するのに対して、甲1-物発明においてはそのような特定はない点。 <相違点1-6> 本件特許発明10においては、原料乳が0~3.0重量%の脂質を含むとの特定を有するのに対して、甲1-物発明においてはそのような特定はない点。 <相違点1-7> 本件特許発明10においては、原料乳が5~18重量%の乳糖を含むとの特定を有するのに対して、甲1-物発明においてはそのような特定はない点。 <相違点1-8> 本件特許発明10においては、主成分の濃縮乳が、濃縮の前に、生乳、殺菌処理した乳および/または脱脂乳のpHを5.5~6.5に調製し、0.5時間以上保持する酸性化処理された調製された濃縮乳であるの特定を有するのに対して、甲1-物発明においてはそのような特定はない点。 事案に鑑み、相違点1-8について検討する。 相違点1-8は、実質的な相違点である。 よって、本件特許発明10は、甲1-物発明ではない。 また、甲1及び他の全ての証拠の記載をみても、甲1-物発明において、主成分の濃縮乳を、濃縮の前に、生乳、殺菌処理した乳および/または脱脂乳のpHを5.5~6.5に調製し、0.5時間以上保持する酸性化処理された調製された濃縮乳とする動機となる記載はない。 したがって、甲1-物発明において、相違点1-8に係る本件特許発明10の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 よって、その他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明10は甲1-物発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)取消理由1についてのまとめ 以上のとおり、本件特許の請求項1ないし5、8、10に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、本件特許の請求項1ないし6、8ないし10に係る発明は、特許法第29条第2項に該当しないから、本件特許の請求項1ないし6、8ないし10に係る特許は特許法第113条第2号に該当しない。 よって、取消理由1によって本件特許を取り消すことはできない。 2 取消理由2(甲2に基づく新規性・進歩性)について (1)主な証拠等の記載事項 ア 甲2の記載事項 甲2には以下の記載がある。なお、甲2は外国文献のため訳文を摘記する。 文献タイトル 「高タンパク質無脂肪ヨーグルトの製造と評価」 第310頁 Abstract 「脱脂粉乳と脱脂乳保持液を様々な割合で配合し、高タンパク質無脂肪ヨーグルトを製造した。タンパク質含有量が5.77%~8.57%の各種ヨーグルトミックスを調製した。コントロールは脱脂粉乳のみで強化された脱脂乳から調製され、タンパク質含有量が約4.84%となるように強化された。混合物をよく混和し、80℃20分または90℃10分で加熱した後、42℃でヨーグルト培養液を用いて発酵させた。ヨーグルトの見かけ粘度や硬さなどのレオロジー特定及びシネレシスに対する強化方法と加熱処理の影響を検討した。脱脂乳保持液を添加したヨーグルトは、脱脂粉乳のみを添加したヨーグルトと比較して、見かけ粘度が高く、硬く、低い離水、またタンパク質の含有量が高く、乳糖の含有量は低かった。低加熱ミックスのヨーグルトは、高加熱ミックスのヨーグルトよりも粘度と硬度が低いことがわかった。官能分析では、タンパク質6.7%までの脱脂乳保持液を添加したヨーグルト、特に低加熱処理を行ったヨーグルトは、コントロールのヨーグルトと同様に許容できると評価された。」 第310頁 右欄の1~8行目 「ヨーグルト製造のための牛乳の強化方法として限外濾過による方法がある。限外濾過は、乳濃縮のための適切な技術として説明されており、UF脱脂濃縮乳のレオロジー特性を評価するために多くの研究が行われてきた。限外濾過で濃縮されたタンパク質濃縮物は、従来の方法で製造されたものよりも栄養価が優れている。」 第311頁 MATERIALS AND METHODS Fluid Skim Milk 「液状脱脂乳:本実験では、乳成分のばらつきを避けるため、低温殺菌した新鮮な脱脂乳(63℃、30分)を原料のストックとして使用した。」 第311頁 MATERIALS AND METHODS Skim Milk Powder 「脱脂粉乳:スプレードライ中温脱脂粉乳(Mlekpol,Poland)を使用した。」 第311頁 MATERIALS AND METHODS Skim Milk Retentate 「脱脂乳保持液:低温殺菌した新鮮な脱脂乳を、CARBOSEPモジュール UF-unit(Type 2S 151 tubular,仏)により、総面積6.8m2の酸化ジルコニウム膜を用いて50℃で容量比3倍濃縮で限外濾過を行った。入力圧力は5bar、出口圧力は3barであった。得られた残留物は15.3%のT.S.を含んでいた。濃縮後、63℃で30分間低温殺菌し、約5℃まで急冷した後、-23℃で凍結保存した。実験に使用する前に、30℃の水浴で60分間解凍した。」 第311頁 MATERIALS AND METHODS Preparation of Yogurt Premix 「ヨーグルトプレミックスの調製:低温殺菌した新鮮な脱脂乳にSMPとSMRを様々な割合で添加して、タンパク質含有量が5.77%から8.57%のプレミックスを調製した。実験は4つの処理から構成された。比較のために、SMPのみを添加したコントロールミックスを調製した。ヨーグルトの製造に使用したヨーグルトミックスの配合をTable 1に示す。最終的なミックスは、高速ブレンダーを用いて45℃で5分間混合された。化学分析のために試料を採取した。」 第311頁 MATERIALS AND METHODS Yogurt Manufacture 「ヨーグルトの製造:各処方のミックスを2つの別々のバッチに分けた。最初のバッチは80℃で20分間熱処理した。2つめのバッチは、90℃で10分間加熱した。各バッチを42℃まで急冷し、2%のヨーグルト培養物を接種した。接種したヨーグルトプレミックスを250mL滅菌ガラス容器に分注し、アルミホイルで覆い、42℃で完全に凝固するまで培養した。凝固後、容器は5±1℃の低温冷蔵庫で14日間保存した。無脂肪ヨーグルトの試験は、2日に分けて2回実施された。ヨーグルトの見かけの粘度、硬さ及びシネレシスを5日間の冷蔵保存後に評価し、新鮮なヨーグルトと保存期間終了後のヨーグルトについて官能評価を行った。」 第312頁 Table 1 「タイトル:SMP及びSMRで強化した液状脱脂乳を原料とする高タンパク無脂肪ヨーグルトのヨーグルトミックス配合について [図:0001405814000005.jpg] 」 第312頁 RESULTS AND DISCUSSIONS Chemical Composition 「化学組成:ヨーグルトミックスの化学組成の平均値をTable1に示す。」 第314頁 Conclusion 「結論:高タンパク質無脂肪ヨーグルトは、SMP及びSMRで強化した脱脂乳から製造することが可能である。無脂肪ヨーグルトの一般的な欠点である乳清分離を防ぐために、追加の安定剤は必要がない。」 第315頁 左欄11~23行目 「無脂肪ヨーグルトの強化にSMRとSMPを併用することは、高タンパク無脂肪ヨーグルトの食感特性を最適化し、従来の製品に近いボディと食感を作り出すために、UF脱脂乳を扱う製品開発者を支援することができる。また、粉乳の添加を最小限に抑えるためにも使用できる。つまり、SMRとSMPの配合をコントロールし、発酵前に80℃/20分の熱処理を施すことで、脱脂乳から高タンパク質の無脂肪ヨーグルトを得ることができる。したがって、SMRをSMPと組み合わせることで、ヨーグルトの品質を落とすことなく、タンパク質含有量を高めることができる。」 イ 甲2に記載された発明について 上記(ア)の記載のうち、Table 1の試料3を中心に整理すると、甲2には次の発明(以下、「甲2―製法発明」、「甲2―物発明」という。)が記載されていると認められる。 <甲2-製法発明> 「低温殺菌した新鮮な脱脂乳を総面積6.8m2の酸化ジルコニウム膜を用いて50℃で容量比3倍濃縮で限外濾過を行い、濃縮後、63℃で30分間低温殺菌し、約5℃まで急冷した後、-23℃で凍結保存し、使用する前に、30℃の水浴で60分間解凍した脱脂乳保持液(SMR)を60重量%、スプレードライ中温脱脂粉乳(SMP)を2重量%、低温殺菌した新鮮な液状脱脂乳(FSM)を38重量%配合し、タンパク質含有量が7.64±0.05%、乳糖含有量が5.48±0.03%であるヨーグルトミックスを、80℃で20分間あるいは90℃で10分間加熱処理した後、42℃まで急冷し、2%のヨーグルト培養物を接種し、接種したヨーグルトプレミックスを250mL滅菌ガラス容器に分注し、アルミホイルで覆い、42℃で完全に凝固するまで培養して凝固させる高タンパク質無脂肪ヨーグルトの製造方法。」 <甲2―物発明> 「甲2―製法発明により製造された高タンパク質無脂肪ヨーグルト。」 ウ 甲3の記載事項 甲3には「乳業における膜分離技術の応用」に関し、次の記載がある。 「UF処理において、乳糖及び灰分含有量を更に低下させるため水を加えながらろ過を行うダイアフィルトレーション、あるいはカルシウム含量を特に減少させるために乳のpHを低下させて行う方法も知られている。 このようにUF単独あるいは他の方法と組み合わせることにより乳の組成を任意に調整することが可能であり、新しい原料素材が得られている。」 (第149頁右欄下から3行~第150頁左欄下から4行) (2)判断 ア 本件特許発明1についての対比・判断 本件特許発明1と甲2―製法発明とを対比する。 甲2-製法発明における「総面積6.8m2の酸化ジルコニウム膜を用いて50℃で容量比3倍濃縮で限外濾過」する事項は、本件特許発明1における「膜分離処理で」「乳を」「濃縮」する事項に相当する。 甲2-製法発明における「脱脂乳保持液(SMR)」は、本件特許発明1における「膜分離処理で濃縮した液状の濃縮乳」に相当する。 甲2―製法発明における「タンパク質含有量が7.64±0.05%、乳糖含有量が5.48±0.03%」は、本件特許発明1における「7.5~20重量%のタンパク質、5~18重量%の乳糖」に相当する。 そして、甲2―製法発明における「ヨーグルトプレミックス」は本件特許発明1における「原料乳」に相当し、ヨーグルト製造用の原料であるから、「(ただし、噴霧乾燥用の原料乳を除く)」との条件を満たす。 さらに、甲2-製法発明における原料乳を製造する方法においては、噴霧乾燥する工程は含まれていないから、本件特許発明1における「噴霧乾燥する工程を経ない」との発明特定事項を満たす。 そうすると、本件特許発明1と甲2―製法発明との一致点、相違点は次のとおりである。 <一致点> 「膜分離処理で濃縮した液状の濃縮乳を主成分とし、7.5~20重量%のタンパク質、5~18重量%の乳糖を含む原料乳(ただし、噴霧乾燥用の原料乳を除く)を製造する方法。」 <相違点2-1> 本件特許発明1においては、0~3.0重量%の脂質を含むとの特定を有するのに対して、甲2―製法発明においてはそのような特定はない点。 <相違点2-2> 本件特許発明1においては、乳糖を添加する工程を含み、との特定を有するのに対して、甲2-製法発明においてはそのような特定はない点。 事案に鑑み、相違点2-2について検討する。 相違点2-2は、実質的な相違点である。 よって、本件特許発明1は、甲2-製法発明ではない。 また、甲2及び他の全ての証拠の記載をみても、甲2-製法発明において、乳糖を添加する工程を採用する動機となる記載はない。 したがって、甲2-製法発明において、相違点2-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 よって、その他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は甲2-製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 イ 本件特許発明3ないし9についての対比・判断 本件特許発明3ないし9は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであって、請求項1に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1と同様に判断される。 よって、本件特許発明3、8、9は、甲2-製法発明ではなく、また、本件特許発明3ないし9は、甲2-製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 本件特許発明10についての対比・判断 本件特許発明10と甲2―物発明とを対比する。 甲2―物発明の「ヨーグルト」は、本件特許発明10における「発酵乳」に相当する。 そうすると、本件特許発明10と甲2―物発明のと一致点、相違点は次のとおりである。 <一致点> 「膜分離処理で濃縮した液状の濃縮乳を主成分とし、7.5~20重量%のタンパク質、5~18重量%の乳糖を含み、原料乳(ただし、噴霧乾燥用の原料乳を除く)を製造する方法であって、噴霧乾燥する工程を経ず、前記製造方法によって製造された原料乳を発酵させることを含む発酵乳の製造方法により製造された発酵乳。」 <相違点2-3> 本件特許発明10においては、「0~3.0重量%の脂質を含」むとの特定を有するのに対して、甲2―物発明においてはそのような特定はない点。 <相違点2-4> 本件特許発明10においては、「粉末状の乳タンパク質を含まない原料乳」との特定を有するのに対して、甲2-物発明においてはそのような特定はない点。 <相違点2-5> 本件特許発明10においては、「主成分の濃縮乳が、濃縮の前に、生乳、殺菌処理した乳および/または脱脂乳のpHを5.5~6.5に調整し、0.5時間以上保持する酸性化処理されて調整された濃縮乳である」との特定を有するのに対して、甲2―物発明においてはそのような特定はない点。 事案に鑑み、相違点2-5について検討する。 相違点2-5は、実質的な相違点である。 よって、本件特許発明10は、甲2-物発明ではない。 また、甲2及び他の全ての証拠の記載をみても、甲2発明において、主成分の濃縮乳を、濃縮の前に、生乳、殺菌処理した乳および/または脱脂乳のpHを5.5~6.5に調整し、0.5時間以上保持する酸性化処理された調整された濃縮乳とする動機となる記載はない。 したがって、甲2-物発明において、相違点2-5に係る本件特許発明10の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 よって、その他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明10は甲2-物発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)取消理由2についてのまとめ 以上のとおり、本件特許の請求項1、3及び8ないし10に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、本件特許の請求項1及び3ないし10に係る発明は、特許法第29条第2項に該当しないから、本件特許の請求項1及び3ないし10に係る特許は特許法第113条第2号に該当しない。 よって、取消理由2によって本件特許を取り消すことはできない。 第7 取消理由に採用しなかった特許異議申立書に記載した申立理由について 取消理由に採用しなかった特許異議申立書に記載した申立理由は、 ・申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性 請求項7、11ないし14) ・申立理由2(甲2に基づく新規性・進歩性 請求項2、4ないし7、11ないし14) ・申立理由3(甲4に基づく新規性・進歩性 請求項12及び13) ・申立理由4(サポート要件 請求項13及び14)である。 以下、順に検討する。 1 申立理由1(甲1に基づく進歩性 請求項7、11ないし14)について (1)判断 ア 本件特許発明7についての対比・判断 本件特許発明7と甲1-製法発明とを対比する。 本件特許発明7は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであって、請求項1に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1と同様に判断される。 よって、本件特許発明7は、甲1-製法発明ではなく、また、本件特許発明7は、甲1-製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 イ 本件特許発明11ないし13についての対比・判断 甲1の第289頁TABLE 4の試料番号9は「Bad Texture」と記載されており、甲1-製法発明は、悪いテクスチャーであったことが記載されている。 そうすると、甲1からは、「発酵乳の食感を滑らかにする方法」に係る発明に対応する発明、「発酵乳の食感を滑らかにし、かつ、発酵乳の塩味またはえぐ味を低減、もしくは発酵乳にコク味を付与する方法」に係る発明に対応する発明を認定することができない。 したがって、本件特許発明11ないし13は、甲1に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 本件特許発明14についての対比・判断 本件特許発明14は、請求項11ないし13を直接又は間接的に引用して特定するものであって、請求項11ないし13に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明11ないし13と同様に判断される。 よって、本件特許発明14は、甲1に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)申立理由1についてのまとめ 以上のとおり、本件特許発明7、11ないし14は、特許法第29条第1項3号に該当せず、特許法第29条第2項に該当しないから、本件特許の請求項7、11ないし14に係る特許は特許法第113条第2号に該当しない。 よって、申立理由1によって本件特許を取り消すことはできない。 2 申立理由2(甲2に基づく新規性・進歩性 請求項2、4ないし7、11ないし14)について (1)判断 ア 本件特許発明2、4ないし7についての対比・判断 本件特許発明2、4ないし7と甲2-製法発明とを対比する。 本件特許発明2、4ないし7は、請求項1を直接引用して特定するものであって、請求項1に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1と同様に判断される。 よって、本件特許発明2、4ないし7は甲2-製法発明ではなく、甲2-製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 イ 本件特許発明11ないし13についての対比・判断 甲2のp.310 Abstractには、「脱脂乳保持液を添加したヨーグルトは、脱脂粉乳のみを添加したヨーグルトと比較して、見かけ粘度が高く、硬く、低い離水、またタンパク質の含有量が高く、乳糖の含有量は低かった。」、甲2のp.315 左欄11~23行目には、「無脂肪ヨーグルトの強化にSMRとSMPを併用することは、高タンパク無脂肪ヨーグルトの食感特性を最適化し、従来の製品に近いボディと食感を作り出すために、UF脱脂乳を扱う製品開発者を支援することができる。」との記載があるから、甲2では、発酵乳の、見かけ粘度、硬さ、低い離水、タンパク質の含有量、乳糖の含有量、ボディと食感について着目するものではあるが、食感を滑らかにすることについては記載がなく、示唆もない。 そうすると、甲2からは、「発酵乳の食感を滑らかにする方法」に係る発明に対応する発明、「発酵乳の食感を滑らかにし、かつ、発酵乳の塩味またはえぐ味を低減、もしくは発酵乳にコク味を付与する方法」に係る発明に対応する発明を認定することができない。 したがって、本件特許発明11ないし13は、甲2に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 本件特許発明14についての対比・判断 本件特許発明14は、請求項11ないし13を直接又は間接的に引用して特定するものであって、請求項11ないし13に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明11ないし13と同様に判断される。 よって、本件特許発明14は、甲1に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)申立理由2についてのまとめ 以上のとおり、本件特許発明2、4ないし7、11ないし14は、特許法第29条第1項3号に該当せず、特許法第29条第2項に該当しないから、本件特許の請求項2、4ないし7、11ないし14に係る特許は特許法第113条第2号に該当しない。 よって、申立理由2によって本件特許を取り消すことはできない。 3 取消理由3(甲4に基づく新規性・進歩性 請求項12及び13)について (1)甲4の記載事項等 ア 甲4の記載事項 甲4には以下の記載がある。なお、甲4は外国文献のため訳文を摘記する。 「タイトル:未変性ホエイプロテインを含む高タンパク低脂肪ヨーグルトの構造とレオロジーの改善」 Fig.1 「 [図:0001405814000006.jpg] 殺菌されていない脱脂乳の精密濾過及び限外濾過画分に基づく攪拌ヨーグルトの製造を示すフローチャート。 化学組成の詳細については表1及び表2を参照。 略語;CF濃縮係数、CCカゼイン濃縮物、NWPCネイティブホエイプロテイン濃縮物、TP真のタンパク質、Cカゼイン、NWPネイティブホエイプロテイン」 p.9 Table 2 「 [図:0001405814000007.jpg] (タイトル) ヨーグルトミルクベースの化学組成 (注釈) a C、L、M及びHは、ネイティブホエイプロテイン濃縮物の添加レベルを指す。ヨーグルトミルクベースのホエイプロテイン:カゼイン比について、コントロール(添加なし、10:90)、low(25:75)、medium(35:65)、high(45:55)。75及び95は、ヨーグルトミルクベースの熱処理を指す。それぞれ75℃5分;95℃5分。値は、平均値±平均からの標準偏差である(n=2)。Tukeyの一対比較によると、同じコンポーネント内に共通の文字を持たないミルクベースは異なるものを示す(P<0.05)。 b 分散分析によって特定された実験的要因の影響。NWPC=ネイティブホエイプロテイン濃縮物の添加、T、熱処理温度;*有意な効果を示す(P<0.05)。ns、有意な影響なし;na、分析されていない(熱処理前のミルクベースで測定されているため、分散分析に含まれていない。)。 c 熱処理後のミルクベースで測定。UD、未変性;LA ラクトアルブミン;LG ラクトグロブリン。UD(%)は、熱処理前のミルクベース中の未変性ホエイプロテインの量と比較した、熱処理後にミルクベース中に残った未変性ホエイプロテインの割合を示す。 d 熱処理後のミルクベースで測定。」 p.12 Fig.4 「 [図:0001405814000008.jpg] △75℃5分、■95℃5分間加熱したヨーグルトミルクベースから製造された攪拌ヨーグルトの官能プロファイリング。強度(平均±標準偏差、n=2)、1~9の連続スケールでの外観特性(粗さ、粒度、光沢、粘り、厚み)及び一貫性特性(粘性、粗さ、ざらざら、滑らかさ)。表記C,L,M,Hは未変性ホエイプロテイン濃縮物の添加レベルを表し、ホエイプロテイン:カゼイン比率が参照(添加無し、10:90)、低(25:75)、中(35:65)、高(45:55)である。共通添字のないヨーグルトはTukeyの比較法に即し異なる(p<0.05)。」 p.17 5 Conclusion 「この研究は、ホエイプロテインの変性状態とホエイプロテインとカゼインの比率がヨーグルトの構造に影響を与え、それによってヨーグルトのレオロジー特性と官能特性に影響を与えることを示した。ヨーグルトミルクベースの低温処理(75℃、5分)と組み合わせたホエイプロテイン:カゼイン比(25:75~35:65)の増加により、かなりの量のホエイプロテインが未変性の状態で存在する滑らかで粘性のある高タンパク質、低脂肪のヨーグルトを得た。」 イ 甲4に記載された発明について 上記アの記載のうち、FIG.1のフローチャート及びTable 2の混合物M-75及びH-75を中心に整理すると、甲4には次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。 <甲4発明> 「未殺菌の脱脂乳を濃縮係数1.6又は2.9の精密濾過したカゼイン濃縮物(CC1.6、CC2.9)と、精密濾過の透過物を限外濾過した未変性ホエイプロテイン濃縮物(NWPC)を65:35、55:45で添加混合したヨーグルトミルクベースM-75、H-75であって、真のタンパク質が8.02±0.02%、8.09±0.07%、ラクトースが122.8±5.1mmol kg-1、124.4±8.7mmol kg-1であるヨーグルトミルクベースM-75、H-75を、均質化処理及び75℃5分又は95℃5分の熱処理を行い、その後、pH4.60±0.01にて培養し、攪拌及び冷却してパックして製造した攪拌ヨーグルトの滑らかで粘性のある高タンパク質、低脂肪のヨーグルトを得る方法。」 (2)判断 本件特許発明12及び13について検討する。 甲4からは、「発酵乳の食感を滑らかにし、かつ、発酵乳の塩味またはえぐ味を低減、もしくは発酵乳にコク味を付与する方法」に係る発明に対応する発明を認定することができない。 したがって、本件特許発明12及び13は、甲4に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)申立理由3についてのまとめ 以上のとおり、本件特許発明12及び13は、特許法第29条第1項3号に該当せず、特許法第29条第2項に該当しないから、本件特許の請求項12及び13に係る特許は特許法第113条第2号に該当しない。 よって、申立理由3によって本件特許を取り消すことはできない。 4 申立理由4(サポート要件)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 以下に検討する。 (2)特許請求の範囲の記載 本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。 (3)サポート要件の判断 本件特許の発明の詳細な説明【0005】によると、本件特許発明が解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、低脂肪・無脂肪、高タンパク質でありながら、滑らかな食感を有する濃厚な発酵乳を合理的に製造すること、である。 発明の詳細な説明の【0008】には、本件特許発明1ないし14に対応する記載があり、同【0009】には、低脂肪・無脂肪、高タンパク質の原料乳に、乳糖を含有せしめることで、滑らかな食感を有する発酵乳を提供することができることが記載されている。 また、発明の詳細な説明の【0011】には発酵乳について、同【0014】には原料乳について記載され、同【0015】には、原料乳には、非加熱的な方法で、生乳、殺菌、処理した乳、脱脂乳などを濃縮して、高タンパク質の液状の濃縮乳を調整し、この濃縮乳を主成分として使用することで、高タンパク質の原料乳を調整することができること、加熱臭などの問題を抑制する観点から、原料乳には、液状の濃縮乳のみを使用し、粉末状の濃縮乳を使用しないことが好ましいこと、非加熱的な方法は、具体的には、膜分離処理を使用することができ、高タンパク質の濃縮乳を効率的に調整することができる観点から、限外ろ過(UF)処理を使用することが好ましいこと、が記載されている。 さらに、発明の詳細な説明の【0016】にはタンパク質について、同【0017】ないし【0018】には原料乳におけるタンパク質の濃度について、同【0019】には脂質と原料乳における脂質の濃度について、同【0020】には乳糖について、同【0021】には滑らかな食感を得る観点から好適とされる原料乳における乳糖の濃度について、それぞれ記載されており、同【0022】には灰分について、同【0023】にはMCPから苦味の原因のカルシウム(Ca)を効率的に低減(除去)する工程について、同【0024】には透析ろ過(DF)処理について、同【0025】ないし【0027】には発酵工程について、それぞれ記載されている。 そして、発明の詳細な説明の【0029】ないし【0037】においては、生乳を遠心分離処理して脱脂乳を調製し、リン酸を用いて脱脂乳のpHを調整し、限外ろ過処理により濃縮してミルクタンパク質濃縮物(MPC)を調整し、この液状のMPCに水と乳糖(無水)を配合して原料乳を製造し、この原料乳を乳酸菌により発酵させて発酵乳を製造する具体的製造例が記載されており、原料乳のタンパク質濃度が7.5~20重量%、脂質が0~3.0重量%、乳糖が5~18重量%である場合に、ハードタイプ・ソフトタイプ双方の発酵乳の官能検査において滑らかさで高評価が得られたことが記載されている。 そうすると、当業者は、「7.5~20重量%のタンパク質、0~3重量%の脂質、5~18重量%の乳糖を含む、膜分離処理で濃縮した液状の濃縮乳を主成分とする原料乳を発酵させることを含む、方法」との特定事項を満たすことにより、「滑らかな食感を有する発酵乳を提供すること」との発明の課題を解決できると認識できる。 そして、本件特許発明13及び14は、上記発明の課題を解決できると認識できる特定事項を全て含み、さらに限定したものである。 したがって、本件特許発明13及び14は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 よって、本件特許発明13及び14に関して、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。 なお、特許異議申立人の上記第4 4の主張は、上記判断に影響しない。 (4)申立理由4についてのまとめ 上記のとおり、本件特許の請求項1ないし14に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、特許法第113条第4号に該当せず、申立理由4によって取り消すことはできない。 第8 結語 上記第6及び第7のとおり、本件特許の請求項1ないし14に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700046

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