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特許異議申立

2023-700042

反射防止フィルム、偏光板およびディスプレイ装置

審判番号
2023-700042
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-509911
登録番号
7102038
請求日
2023年01月17日
審決日
2024年01月05日
公報発行日
2024年04月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】エルジー・ケム・リミテッド
  • 【権利者代理人】小野 誠
  • 【権利者代理人】重森 一輝
  • 【権利者代理人】市川 英彦
  • 【権利者代理人】実広 信哉
  • 【権利者代理人】渡部 崇
  • 【異議申立人】鈴木 多香子
  • 【異議申立人】笠原 佳代子
審判長/審判官
  • 審判長 里村 利光
  • 審判官 神谷 健一
  • 審判官 清水 康司
分類
P1651.536-YAA(G02B) / P1651.537-YAA(G02B) / P1651.572-YAA(G02B) / P1651.113-YAA(G02B) / P1651.121-YAA(G02B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第36条、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7102038号発明「反射防止フィルム、偏光板およびディスプレイ装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7102038号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~14〕について訂正することを認める。 特許第7102038号の請求項1~6、8~14に係る特許を維持する。 特許第7102038号の請求項7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7102038号(請求項の数14。以下「本件特許」という。)についての出願(特願2021-509911号)は、令和2年5月20日(パリ条約に基づく優先権主張 2019年(令和元年)5月28日 2020年(令和2年)5月7日 いずれも韓国(KR))を国際出願日とする出願であって、令和4年7月8日にその特許権の設定登録がされ、同月19日に特許掲載公報が発行された。 本件特許について、特許掲載公報の発行の日から6月以内である令和5年1月17日に、特許異議申立人 鈴木 多香子(以下「申立人A」という。)及び特許異議申立人 笠原 佳代子(以下「申立人B」という。)から、それぞれ、本件特許の請求項1~14に係る特許に対して特許異議の申立てがされた(異議2023-700042号、以下「本件事件」という。)。 本件事件についての、その後の手続等の経緯は、以下のとおりである。 令和5年 4月25日付け: 取消理由通知書 令和5年 8月 4日提出: 訂正請求書 令和5年 8月 4日提出: 意見書(特許権者) 令和5年10月 5日提出: 意見書(申立人A) なお、申立人Bは、令和5年9月1日付けの訂正請求があった旨の通知に対して意見書を提出しなかった。 第2 訂正請求について 令和5年8月4日にされた訂正の請求を、以下「本件訂正請求」という。 1 訂正の趣旨 本件訂正請求の趣旨は、「特許第7102038号の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~14について訂正することを求める。」というものである。 2 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は、以下の訂正事項を含むものである。なお、下線は訂正された箇所を示す。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1における「前記光透過性基材は、一方向の引張強度に対する、前記一方向と垂直な方向の引張強度の比率は2~5である」との記載を「前記光透過性基材は、一方向の引張強度に対する、前記一方向と垂直な方向の引張強度の比率は2~5であるポリエチレンテレフタレートフィルムであり、」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1における「反射防止フィルム。」という記載を「前記無機微粒子は、ソリッド状無機ナノ粒子及び中空状無機ナノ粒子を含む、反射防止フィルム。」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3における「前記無機微粒子は、0.5~100nmの直径を有するソリッド状無機ナノ粒子および1~200nmの直径を有する中空状無機ナノ粒子からなる群より選択された1種以上を含む」との記載を「前記無機微粒子は、0.5~100nmの直径を有するソリッド状無機ナノ粒子および1~200nmの直径を有する中空状無機ナノ粒子を含む」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項8における「請求項1~7のいずれか一項に記載の反射防止フィルム」との記載を「請求項1~6のいずれか一項に記載の反射防止フィルム」に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項9における「請求項1~8のいずれか一項に記載の反射防止フィルム」との記載を「請求項1~6、8のいずれか一項に記載の反射防止フィルム」に訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項10における「請求項1~9のいずれか一項に記載の反射防止フィルム」との記載を「請求項1~6、8~9のいずれか一項に記載の反射防止フィルム」に訂正する。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項11における「請求項1~9のいずれか一項に記載の反射防止フィルム」との記載を「請求項1~6、8~9のいずれか一項に記載の反射防止フィルム」に訂正する。 (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項14における「請求項1~9のいずれか一項に記載の反射防止フィルム」との記載を「請求項1~6、8~9のいずれか一項に記載の反射防止フィルム」に訂正する。 本件訂正請求は、一群の請求項である、請求項1~請求項14を対象として請求されたものであり、請求項2~14はそれぞれ直接又は間接的に請求項1を引用しているものであって、訂正事項1~2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 3 訂正の適否についての判断 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的 訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1における「光透過性基材」の素材を「ポリエチレンテレフタレートフィルム」と特定するものである。 したがって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号(特許請求の範囲の減縮)に掲げる事項を目的とする訂正に該当する。 イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内であること 訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項7の「前記光透過性基材は、ポリエチレンテレフタレートフィルムである」、及び、段落【0104】の「このような光透過性基材の具体的な例としては、・・・ポリエチレンテレフタレートフィルムが挙げられる。」との記載に基づくものである。 そうすると、訂正事項1による訂正は、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項が導入するものではないことは明らかであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。 したがって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではないこと 上記ア及びイに照らせば、訂正事項1による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。 エ 請求項2~14についても同様である。 オ 小括 よって、訂正事項1による訂正は、訂正要件を満たす。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的 訂正事項2による訂正は、訂正前の請求項1における「無機微粒子」の種類を「ソリッド状無機ナノ粒子及び中空状無機ナノ粒子を含む」と特定するものである。 したがって、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号(特許請求の範囲の減縮)に掲げる事項を目的とする訂正に該当する。 イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内であること 訂正事項2による訂正は、本件明細書の段落【0065】における「前記無機微粒子は、ソリッド状無機ナノ粒子および/または中空状無機ナノ粒子を含むことができ」との記載に基づくものである。 そうすると、訂正事項2による訂正は、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項が導入されることはないことは明らかであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。 したがって、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではないこと 上記ア及びイに照らせば、訂正事項2による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。 エ 請求項2~14についても同様である。 オ 小括 よって、訂正事項2による訂正は、訂正要件を満たす。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的 訂正事項3による訂正は、訂正前の請求項3における「前記無機微粒子は、0.5~100nmの直径を有するソリッド状無機ナノ粒子および1~200nmの直径を有する中空状無機ナノ粒子からなる群より選択された1種以上を含む」と選択的な記載とされていたところ、0.5~100nmの直径を有するソリッド状無機ナノ粒子および1~200nmの直径を有する中空状無機ナノ粒子を含むことを規定するものである。 したがって、訂正事項3による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号(特許請求の範囲の減縮)に掲げる事項を目的とする訂正に該当する。 イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内であること 訂正事項3による訂正は、本件明細書の「前記無機微粒子は、ソリッド状無機ナノ粒子および/または中空状無機ナノ粒子を含むことができ」(段落【0065】)の記載、「前記ソリッド状無機ナノ粒子は0.5~100nm、1~80nm、2~70nmまたは5~60nmの直径を有することができる。」(段落【0067】)の記載、及び、「前記中空状無機ナノ粒子は1~200nm、10~150nm、20~130nm、30~110nmまたは40~100nmの直径を有することができる。」(段落【0068】)の記載に基づくものである。 そうすると、訂正事項3による訂正は、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項が導入されることはないことは明らかであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。 したがって、訂正事項3による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではないこと 上記ア及びイに照らせば、訂正事項3による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項3による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。 エ 小括 よって、訂正事項3による訂正は、訂正要件を満たす。 (4)訂正事項4について ア 訂正の目的 訂正事項4は、訂正前の請求項7を削除するものである。 したがって、訂正事項4による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号(特許請求の範囲の減縮)に掲げる事項を目的とする訂正に該当する。 イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内であること 訂正事項4は、訂正前の請求項7を削除するものである。 そうすると、訂正事項4による訂正は、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項が導入されることはないことは明らかであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。 したがって、訂正事項4による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではないこと 上記ア及びイに照らせば、訂正事項4による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項4による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。 エ 小括 よって、訂正事項4による訂正は、訂正要件を満たす。 (5)訂正事項5~9について ア 訂正の目的 訂正事項5は、訂正事項4により訂正前の請求項7を削除したことにともない、請求項8が引用する請求項における「請求項1~7のいずれか一項に記載の反射防止フィルム」との記載を「請求項1~6のいずれか一項に記載の反射防止フィルム」とし、引用する多数請求項から請求項7を削減するものである。 訂正事項6~9についても、同様に引用する多数請求項から請求項7を削減するものである。 したがって、訂正事項5~9による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号(特許請求の範囲の減縮)に掲げる事項を目的とする訂正に該当する。 イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内であること 訂正事項5~9は、択一的に引用する多数の請求項のうち一部の請求項である請求項7を削減するものである。 そうすると、訂正事項5~9による訂正は、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項が導入されることはないことは明らかであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。 したがって、訂正事項5~9による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではないこと 上記ア及びイに照らせば、訂正事項5~9による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項5~9による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。 エ 小括 よって、訂正事項5~9による訂正は、訂正要件を満たす。 (6)まとめ 上記のとおり、訂正事項1~9に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~14〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は認められることとなったことから、本件特許の請求項1~6、8~14に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明6」、「本件特許発明8」~「本件特許発明14」という。また、請求項1~6、8~14に係る発明を「本件特許発明」と総称する。)は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1~6、8~14に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。 「【請求項1】 光透過性基材;ハードコート層;および低屈折層を含み、 反射(Reflection)モードのX線回折(XRD)パターンにおいて、22~24°の2θ値に現れるピークの半値全幅(FWHM)が1.5°以下であり、 前記低屈折層は、バインダー樹脂、および前記バインダー樹脂に分散した無機微粒子を含み、 前記バインダー樹脂は、光重合性化合物および光反応性官能基を含む含フッ素化合物の間の架橋重合体を含み、 前記光透過性基材は、一方向の引張強度に対する、前記一方向と垂直な方向の引張強度の比率は2~5であるポリエチレンテレフタレートフィルムであり、 前記無機微粒子は、ソリッド状無機ナノ粒子及び中空状無機ナノ粒子を含む、反射防止フィルム。 【請求項2】 前記光透過性基材は、30~40℃の温度および90~100%の相対湿度の条件下、透湿率が50g/m2・day以下である、請求項1に記載の反射防止フィルム。 【請求項3】 前記無機微粒子は、0.5~100nmの直径を有するソリッド状無機ナノ粒子および1~200nmの直径を有する中空状無機ナノ粒子を含む、請求項1または2に記載の反射防止フィルム。 【請求項4】 前記ハードコート層は、光硬化性樹脂を含むバインダー樹脂、および前記バインダー樹脂に分散した有機または無機微粒子を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の反射防止フィルム。 【請求項5】 前記ハードコート層のバインダー樹脂は、数平均分子量10,000以上の高分子量(共)重合体をさらに含む、請求項4に記載の反射防止フィルム。 【請求項6】 前記光透過性基材は、 波長400nm~800nmで測定される厚さ方向のレターデーション(Rth)が5,000nm以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の反射防止フィルム。」 「【請求項8】 前記反射防止フィルムは、380nm~780nmの波長帯領域で平均反射率が2.0%以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の反射防止フィルム。 【請求項9】 前記反射防止フィルムは、 平均反射率の偏差が0.2%p以下であり、 透光率の偏差が0.2%p以下である、請求項1~6、8のいずれか一項に記載の反射防止フィルム。 【請求項10】 請求項1~6、8~9のいずれか一項に記載の反射防止フィルムと、偏光子とを含む偏光板。 【請求項11】 偏光子と、 前記偏光子を中心に対向するように位置する10μm以下の厚さを有する第2ハードコート層および請求項1~6、8~9のいずれか一項に記載の反射防止フィルムとを含む、偏光板。 【請求項12】 前記偏光子;前記第2ハードコート層;および前記反射防止フィルム;を合わせた総厚さが200μm以下である、請求項11に記載の偏光板。 【請求項13】 前記偏光子の一面には前記10μm以下の厚さを有する第2ハードコート層が位置し、他の一面には前記反射防止フィルムの光透過性基材が位置し、 前記光透過性基材は、 波長400nm~800nmで測定される厚さ方向のレターデーション(Rth)が5,000nm以上である、請求項11または12に記載の偏光板。 【請求項14】 請求項1~6、8~9のいずれか一項に記載の反射防止フィルムを含むディスプレイ装置。」 第4 令和5年4月25日付け取消理由通知について 特許権者に対して、当合議体が令和5年4月25日付け取消理由通知書により通知した取消しの理由の概要は、次のとおりである。 (なお、申立人Aが提出した甲第1~8号証、及び、申立人Bが提出した甲第1~7号証を、以下それぞれ甲1A~甲8A、及び、甲1B~甲7Bという。) 理由1:(進歩性)本件特許の請求項1~14に係る発明は、本件特許の出願の最先の優先権主張の日(以下「本件優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~14に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 理由2:(サポート要件) 本件特許の請求項1~6、8~14に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるということができないから、請求項1~6、8~14に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 引用文献等一覧 引用例1:特表2018-525667号公報(甲1A、甲1B) 引用例2:佐々木靖、外2名、“超複屈折フィルム「COSMOSHINE SRF(R)(丸囲み文字のRを「(R)」と表記した。)”、第117回プラスチックフィルム研究会 講演要旨集、公益社団法人高分子学会、平成30年7月5日、p3-4(甲7B) 引用例3:岡田一幸、外5名、“延伸ロールを用いた一軸延伸ポリエチレンテレフタラートフィルムの配向構造”、高分子論文集、公益社団法人高分子学会、平成26年11月25日、第71巻、第11号、p.593-600(甲2Bの1) 引用例4:特開2002-331575号公報(甲6A) 引用例5:特開平8-244750号公報(甲3A) 引用例6:桜田一郎、外3名、“高分子の結晶領域における分子鎖軸に対し直角方向の弾性率の測定 第5報 ポリエチレンテレフタレートおよびその共重合物”、高分子化学、公益社団法人高分子学会、昭和44年12月25日、第26巻、第296号、p.823-832(甲2Bの2) なお、引用例1は主引用例、引用例2は副引用例である。また、引用例3~6は、技術常識を示す文献である。 第5 取消しの理由についての当合議体の判断 1 理由1:(進歩性)について (1)甲1の記載及び甲1に記載された発明 ア 引用例1の記載 取消しの理由で引用された引用例1(甲1A、甲1B)には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体において付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。以下、同様である。 (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 3,000~30,000nmの面内位相差値(Rin)を有し、厚さ方向の位相差値(Rth)に対する面内位相差値(Rin)の比(Rin/Rth)が0.2~1.2であるポリエステルフィルム;および 前記ポリエステルフィルム上に位置し、光重合性化合物、無機粒子、および反応性官能基が1以上置換されたポリシルセスキオキサンを含む光硬化性コーティング組成物の架橋重合物である低屈折層を含む 反射防止フィルム。 【請求項2】 前記ポリエステルフィルムは、ポリエチレンテレフタレート、あるいはポリエチレンナフタレートの一軸延伸フィルム、あるいは二軸延伸フィルムである、 請求項1に記載の反射防止フィルム。」 (イ)「【0037】 前記光反応性官能基を含むフッ素系化合物が含まれることによって、前記光硬化性コーティング組成物から製造される低屈折層は、光重合性化合物、反応性官能基が1以上置換されたポリシルセスキオキサン、および光反応性官能基を含むフッ素系化合物の間の架橋重合体を含む高分子樹脂と、これに分散した無機粒子とを含む。」 (ウ)「【実施例】 【0088】 以下、発明の具体的な実施例を通じて発明の作用、効果をより具体的に説明する。ただし、これは発明の例として提示されたものであり、これによって発明の権利範囲がいかなる意味でも限定されるものではない。 【0089】 実施例1~4および比較例1~4:反射防止フィルムの製造 【0090】 下記表1に記載されている基材フィルムとハードコート組成物および光硬化性コーティング組成物を用いて、次のような方法で反射防止フィルムを製造した。 【0091】 具体的には、基材フィルムにハードコート組成物を#10mayerbarでコーティングし、90℃で1分間乾燥した後、150mJ/cm2の紫外線を照射して、5μmの厚さを有するハードコート層(帯電防止ハードコート層または防眩性ハードコート層)を形成した。 【0092】 そして、前記ハードコート層に光硬化性コーティング組成物を#3mayerbarでコーティングし、60℃で1分間乾燥した。そして、窒素パージング下、前記乾燥物に180mJ/cm2の紫外線を照射して、110nmの厚さを有する低屈折層を形成することによって、反射防止フィルムを製造した。 【表1】 [図:0001409089000001.jpg] 」 (エ)「【0093】 前記表1で、各基材フィルムの製造会社、位相差および透湿度のような物性は、下記表2に記載されている。HD1は、KYOEISHA社の塩タイプの帯電防止ハードコート液(固形分50重量%、製品名:LJD-1000)である。 【0094】 HD2は、ペンタエリスリトールトリアクリレート(分子量:298g/mol)13g、ウレタンアクリレートオリゴマー(306I、Kyoeish社)10g、ウレタンアクリレートオリゴマー(306T、Kyoeish社)10g、溶媒としてイソプロピルアルコール20g、光開始剤(Irgacure184、Ciba社)2g、レベリング剤(Tegoglide410)0.5gを均一に混合して製造した組成物に、平均粒径が3μm、屈折率が1.555の球状の有機微粒子であるアクリル-スチレン共重合体(Techpolymer、Sekisui Plastic社)2.3gと、体積平均粒径12nmのナノシリカ分散液(MA-ST、NissanChemical社)0.01gを添加して製造した目眩しさ防止ハードコート組成物である。LR1、LR2およびLR3の具体的な成分および組成は、下記表3に記載されている。LR1、LR2およびLR3は、下記表3に記載された成分を記載された組成で混合し、MIBK(methylisobutylketone)およびPGME(propyleneglycolmonomethylether)を1:1の重量比率で混合した溶媒に、固形分が3重量%となるように希釈して使用した。 【表2】 [図:0001409089000002.jpg] ・・・ 【0096】 (2)OTSUKA ELECTRONICS社のRETS-100により前記基材フィルムの面内位相差値(Rin=|nx-ny|×d)と厚さ方向の位相差値(Rth=[(nx+ny)/2-nz]d)を測定した。 ・・・ 【表3】 [図:0001409089000003.jpg] (単位:g) 【0098】 1)中空シリカ分散液:数平均直径が50nmの中空シリカ粒子がメチルイソブチルケトンに固形分20重量%で分散したTHRULYA4320(触媒化成製品) 【0099】 2)ポリシルセスキオキサン:Hybrid Plastics社のMA0701 【0100】 3)光反応性官能基を含むフッ素系化合物:光反応性官能基を含み、ケイ素を微量含むフッ素系化合物であって、メチルイソブチルケトンに30重量%に希釈したDIC社のRS537 【0101】 4)光開始剤:Ciba社のIrgacure-127」 (オ)「【0102】 試験例:反射防止フィルムの物性の測定 【0103】 1.平均反射率の測定 ・・・ 【0106】 2.耐スクラッチ性の測定 ・・・ 【0107】 3.干渉縞発生有無の評価 ・・・ 【0108】 4.透湿度および透水性評価 ・・・ 【表4】 [図:0001409089000004.jpg] 」 イ 引用例1に記載された発明 引用例1(特に、【0089】~【0101】及び【表1】~【表3】)には、基材フィルムとハードコート組成物および光硬化性コーティング組成物を用いて製造した反射防止フィルムのうち、実施例1に係る「反射防止フィルム」が記載されている。 ここで、前記基材フィルムは【表1】の「TA015(厚さ80μm)」であり、前記ハードコート組成物は【0093】に記載された「HD1」であり、前記光硬化性コーティング組成物は【表3】に記載された「LR1」であると理解することができる。 そうすると、引用例1には、次の「反射防止フィルム」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「基材フィルムにハードコート組成物をコーティングし、90℃で1分間乾燥した後、150mJ/cm2の紫外線を照射して、5μmの厚さを有するハードコート層を形成し、前記ハードコート層に光硬化性コーティング組成物をコーティングし、60℃で1分間乾燥し、窒素パージング下、前記乾燥物に180mJ/cm2の紫外線を照射して、110nmの厚さを有する低屈折層を形成することによって製造した、反射防止フィルム。 ここで、前記基材フィルム、前記ハードコート組成物及び前記光硬化性コーティング組成物は、以下に示すものである。 基材フィルム:下記表2のTA015 ハードコート組成物(HD1):KYOEISHA社の塩タイプの帯電防止ハードコート液(固形分50重量%、製品名:LJD-1000 光硬化性コーティング組成物:下記表3のLR1 記 表2 [図:0001409089000005.jpg] 表3 [図:0001409089000006.jpg] (単位:g) 1)中空シリカ分散液:数平均直径が50nmの中空シリカ粒子がメチルイソブチルケトンに固形分20重量%で分散したTHRULYA4320(触媒化成製品) 2)ポリシルセスキオキサン:Hybrid Plastics社のMA0701 3)光反応性官能基を含むフッ素系化合物:光反応性官能基を含み、ケイ素を微量含むフッ素系化合物であって、メチルイソブチルケトンに30重量%に希釈したDIC社のRS537 4)光開始剤:Ciba社のIrgacure-127。」 (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と引用発明とを対比する。 (ア)光透過性基材;ハードコート層 引用発明の「基材フィルム」は、TA015(TOYOBO社)であって、Rin8400nm及びRth9200nmという光学特性を具備するものである。加えて、特開2015-129936号公報(【0143】)によれば、前記TA015は透光性のポリエチレンテレフタレートフィルムであることは当業者に自明である。 そうすると、本件特許発明1の「光透過性基材」と、引用発明の「基材フィルム」とは、「光透過性基材は、」「ポリエチレンテレフタレートフィルムであり」との点で共通する。 また、引用発明の「ハードコート層」は、その文言が意味するとおり、本件特許発明1の「ハードコート層」に相当する。 (イ)低屈折層 引用発明の「低屈折層」は、その文言が意味するとおり、本件特許発明1の「低屈折層」に相当する。 また、引用発明の「低屈折層」は、「前記ハードコート層に光硬化性コーティング組成物をコーティングし」て形成される層であって、前記光硬化性コーティング組成物は、上記表3のLR1欄の記載から理解される組成を有する。 前記組成及び上記(1)ア(イ)によれば、引用発明の「低屈折層」は、「ジペンタエリスリトールペンタアクリレート」(光重合性化合物)、反応性官能基が1以上置換されたポリシルセスキオキサン、および「光反応性官能基を含むフッ素系化合物:光反応性官能基を含み、ケイ素を微量含むフッ素系化合物であって、メチルイソブチルケトンに30重量%に希釈したDIC社のRS537」の間の架橋重合体を含む高分子樹脂と、これに分散した「中空シリカ分散液中の数平均直径が50nmの中空シリカ粒子」(本件特許発明1の「中空状無機ナノ粒子」に相当)とを含むものである。 そうすると、引用発明の「中空シリカ粒子」が、本件特許発明1の「中空状無機ナノ粒子」に相当し、「バインダー樹脂に分散した」及び「中空状無機ナノ粒子を含む」との要件を満たす。さらに、引用発明の「光硬化性コーティング組成物の架橋重合物」から前記「中空シリカ粒子」を除いた成分が、本件特許発明1の「バインダー樹脂」に相当する。 イ 一致点・相違点 (ア)一致点 上記アの対比をふまえると、本件特許発明1と引用発明とは、以下の点で一致する。 「光透過性基材;ハードコート層;および低屈折層を含み、 前記低屈折層は、バインダー樹脂、および前記バインダー樹脂に分散した無機微粒子を含み、 前記バインダー樹脂は、光重合性化合物および光反応性官能基を含む含フッ素化合物の間の架橋重合体を含み、 前記光透過性基材は、ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、 前記無機微粒子は、中空状無機ナノ粒子を含む、 反射防止フィルム。」 (イ)相違点 また、本件特許発明1と引用発明とは、以下の点で相違又は一応相違する。 (相違点1-1) 本件特許発明1は、「反射(Reflection)モードのX線回折(XRD)パターンにおいて、22~24°の2θ値に現れるピークの半値全幅(FWHM)が1.5°以下であり」という条件を満たすとともに、その光透過性基材が「一方向の引張強度に対する、前記一方向と垂直な方向の引張強度の比率は2~5である」という条件を満たすものであるのに対して、引用発明は、それらの条件を満たすものか否か不明である点。 (相違点1-2) 「無機微粒子」が、本件特許発明1では、「ソリッド状無機ナノ粒子及び中空状無機ナノ粒子を含む」のに対し、引用発明では、「中空シリカ粒子」を含むものの、「ソリッド状無機ナノ粒子」を含まない点。 ウ 判断 相違点1-1に係る本件特許発明1の構成であるX線回折(XRD)パターンにおけるピークに関して、本件明細書には、以下の記載がある。 「【0028】 前記反射防止フィルムの反射モードのX線回折パターンにおいて、22~24°の2θ値におけるピークは、高分子鎖が非常によく整列(配列)された光透過性基材を含む場合に現れるので、このようなピークを有する反射防止フィルムは光学的物性に優れることができる。また、前記ピークの半値全幅が1.5°以下となる場合、反射防止フィルムに含まれている光透過性基材の結晶面の結晶子サイズが大きいもので、これを含む反射防止フィルムは光学的物性に優れていて、反射率の偏差が低い。」 「【0031】 前記ピークの2θ値は、前記光透過性基材内の高分子の結晶内の特定の面間距離(d-spacing)に起因するもので、前記ピークの半値全幅は、前記光透過性基材内の高分子結晶の大きさに起因するものである。 【0032】 具体的には、光透過性基材内の特定の面間距離(d-spacing)は、反射(Reflection)モードのX線回折(XRD)パターンに現れるピークの2θ値から確認することができる。より具体的には、Cuターゲット(target)および1.54Åの波長(λ)の時、前記光透過性基材内の(-110)結晶面は、22~24°の2θ値にピークとして現れる。 【0033】 また、前記光透過性基材内の高分子結晶の大きさは、前記22~24°の2θ値に現れる ピークの半値全幅に影響を与えることができ、前記半値全幅が小さいほど光透過性基材内 の高分子結晶の大きさは大きくなり、これによって、前記光透過性基材内の高分子の当該 結晶面が高い整列度で配列される。」 「【0098】 先に述べたように、前記ピークの2θ値は、高分子の結晶内の特定の面間距離(d-spacing)に起因するものであり、前記光透過性基材内の高分子の結晶状態に起因するものであってもよく、前記22~24°の2θ値に現れるピークの半値全幅は、前記透過性基材内の高分子結晶の大きさに起因するものであってもよい。 【0099】 また、前記光透過性基材内の高分子結晶の特定の面間距離(d-spacing)および大きさは、光透過性基材の製造過程での延伸比、延伸温度および延伸後の冷却速度などと関連があり、さらに、前記光透過性基材の一方向および前記一方向と垂直な方向との引っ張り強度の比率と関連がありえる。」 上記記載事項によれば、本件特許発明1の相違点に係る「反射(Reflection)モードのX線回折(XRD)パターンにおいて、22~24°の2θ値に現れるピークの半値全幅(FWHM)が1.5°以下であり」との条件は、「一方向の引張強度に対する、前記一方向と垂直な方向の引張強度の比率は2~5である」との条件と併せて、反射防止フィルムを構成する光透過性基材について、当該光透過性基材内の高分子結晶の結晶状態や結晶の大きさを特定しようとするものであると認められる。 以上を踏まえて、上記相違点1-1について検討する。 引用例2には、液晶表示装置用偏光子保護フィルムとして好適なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである「COSMOSHINE SRF(R)」について記載されており、その特性について、その面内位相差が「8,400」であり、一般PETに対し著しく大きい面内位相差を有したものであること(4頁右欄、表1)、またその破断強度(本件特許発明における「引張強度」に相当)は、MD方向が83(MPa)、TD方向が320(MPa)であること(表1)、該フィルムが延伸・結晶化させたPETフィルムであって、フィルム幅方向の配向各分布が著しく小さいこと(4頁右欄)、が記載されている。ここで、上記各方向の破断強度の値から、「一方向の引張強度に対する、前記一方向と垂直な方向の引張強度の比率」は約3.9であると算出される。 しかしながら、引用例2には、面内位相差、破断強度等については記載されているが、反射(Reflection)モードのX線回折(XRD)パターンに関する情報、延伸の軸数、延伸方法、延伸倍率及び結晶の大きさに関する記載はない。 引用例3は延伸ロールを用いた一軸延伸ポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムの配向構造に関する論文であり、そこには、PETフィルムの所定の延伸倍率における広角X線散乱(WAXS)像が記載されている(595頁Figure 2~Figure 4.)。 引用例3からは、一軸延伸PETフィルムにおいて、(1)延伸倍率が高いほどMD方向とND方向(厚さ方向)の屈折率差が大きくなること(図2)、(2)広角X線散乱(WAXS)像に(-1,1,0)面のピークが観察されること(図3及び図4)、が理解できるにとどまり、延伸倍率と本件特許発明における半値全幅の定量的な関係を把握することはできない。 引用例4は離型用二軸延伸ポリエステルフィルムに関する文献であり、そこには以下の記載がある。 「【0045】PET結晶の[100], [110]面の回折角に相当する25.8°、22.5°での回折強度をH1 、H2とし、下記式により、結晶子の大きさをD[hkl]とすると、仮に[100]面に垂直な結晶子のサイズD[100]を求める場合は、 D[100]=K・λ/β・cosθ ここで K(半値幅使用時の定数)=0.90 λ(X線の波長)=1.5418(Å) β(回折線幅 rad)=回折強度H1の高さの半分の回折 強度1/2H1で測定した回折線幅(半価幅)×0.01744(rad)* * 2π(rad)=360°(1°=0.01744rad) θ([100]面の回折角)=25.8(°) である。」 上記記載から、結晶子のサイズDと回折線幅βが反比例の関係にあることが読み取れる。 また、引用例4の【表1】の実施例1及び2は横延伸倍率のみ異なるものであり、両者を比較すると、横延伸倍率が大きい実施例1の結晶子のサイズD[100]は54(Å)、横延伸倍率が小さい実施例2の結晶子のサイズD[100]は52(Å)であること、すなわち、二軸延伸ポリエステルフィルムにおいて、横延伸倍率が大きいと結晶子のサイズD[100]が大きいという傾向がせいぜい読み取れるにとどまる。 引用例5は、シームレス缶に関する文献であり、引用例5には以下の記載がある。 「【0033】本発明において、面指数(010)のピークの半値巾が小さいということは、これに垂直方向、即ち(100)面方向への結晶サイズが大きいということであり、単にポリエチレンテレフタレートのベンゼン面がフィルム面と平行に配向しているだけではなく、ベンゼン面の方向の結晶サイズも大きくなっているという事実を物語っている。」 「【0031】二軸延伸ポリエチレンテレフタレートを積層した積層体を用いて同様の加工を行った図5及び6とこれらの図8及び9とを対比すると、面指数(010)の半値巾(Wh)が、未延伸フィルムを用いた場合1.8゜以上と大きいのに対して、二軸延伸フィルムを用いた場合1.8゜以内と小さくなっていることが明らかである。」 これらの記載から、面指数(010)のピークの半値巾が小さいことは、(100)面方向への結晶サイズが大きいことを意味するのであって、未延伸フィルムを用いた場合に比べ、二軸延伸フィルムを用いた場合は、面指数(010)の半値巾(Wh)が小さくなる傾向があることが読み取れるにとどまる。 引用例6は、高分子の結晶領域における分子鎖軸に対し直角方向の弾性率の測定に関する論文であり、以下のPET実験用試料のX線回折曲線が記載されている。 「 [図:0001409089000007.jpg] 」 上記記載から、X線回折曲線において、2θが22°~23°の間にピークが存在することが理解できるにとどまり、半値幅については具体的な記述がなく、図6の図示から、22°~23°の間のピークの半値幅が1.5°以下であることまでは理解できない。 上記のとおり、引用例2には、PETフィルムの高分子結晶の結晶状態及び結晶の大きさ並びにX線回折パターンの半値全幅を特定可能な事項は何ら記載されていない。 そして、仮に引用例3~6の上記各記載から、PETフィルムにおいて、延伸倍率と結晶サイズや延伸倍率とX線回折曲線の半値幅との間の定性的な傾向までは当業者に周知であったといえたとしても、定量的な関係までが周知であったと理解することができないことは上記のとおりである。 そうすると、引用例3~6の記載事項を考慮しても、引用例2記載のPETフィルムが「反射(Reflection)モードのX線回折(XRD)パターンにおいて、22~24°の2θ値に現れるピークの半値全幅(FWHM)が1.5°以下であり」、かつ、「一方向の引張強度に対する、前記一方向と垂直な方向の引張強度の比率は2~5である」との条件を満たすとの蓋然性が高いとまではいえない。 よって、引用発明の「基材フィルム」としての「ポリエチレンテレフタレートフィルム」に換えて、引用例2記載のPETフィルムの構成を当業者が容易に採用し得たとしても、その結果、引用発明の「基材フィルム」が「反射(Reflection)モードのX線回折(XRD)パターンにおいて、22~24°の2θ値に現れるピークの半値全幅(FWHM)が1.5°以下であり」、かつ、「一方向の引張強度に対する、前記一方向と垂直な方向の引張強度の比率は2~5である」との条件を満たすことはない、すなわち、相違点1-1に係る本件特許発明1の構成に至らないというべきである。 上記判断は、申立人A及びBが提出したいずれの証拠を検討しても変わらない。 したがって、引用発明において、相違点1-1に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 エ 異議申立人の主張について 申立人A及びBは、周知技術に基づけば、甲1A(甲1B)(特表2018-525667号公報)表2記載の商品名TA015が「反射(Reflection)モードのX線回折(XRD)パターンにおいて、22~24°の2θ値に現れるピークの半値全幅(FWHM)が1.5°以下であり」、かつ、「一方向の引張強度に対する、前記一方向と垂直な方向の引張強度の比率は2~5である」との条件を満たす蓋然性が高いとして、本件特許発明1は、甲1A(甲1B)記載の発明と同一、又は、甲1A(甲1B)記載の発明から当業者が容易に想到できると主張している。(申立人A提出の異議申立書15~40頁「(4-3)理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性欠如)」欄、申立人B提出の異議申立書7~42頁「(3)申立ての根拠 理由A:全請求項」欄参照。) しかしながら、上記「ウ 判断」で述べたとおりである。 よって、いずれの異議申立人の主張も採用しない。 オ 小括 前述したとおり、引用発明において、相違点1-1に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではないから、相違点(1-2)について検討するまでもなく、本件特許発明1は引用発明ではなく、また、本件特許発明1は引用発明及び異議申立人が提出したいずれの証拠の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3)本件特許発明2~6、8~14について 本件特許の特許請求の範囲の請求項2~6、8~14は、いずれも、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件特許発明2~6、8~14は、本件特許発明1の構成を全て具備するものである。 そうすると、上記(2)のとおり、本件特許発明1が、引用発明及び異議申立人が提出したいずれの証拠の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない以上、本件特許発明2~6、8~14も、引用発明及び異議申立人が提出したいずれの証拠の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 2 理由2:(サポート要件)について (1)本件特許発明 本件特許発明は、上記「第3 本件特許発明」欄に記載のとおりである。 (2)発明が解決しようとする課題 本件特許発明が解決しようとする課題は、本件明細書の発明の詳細な説明の【0007】に記載されているとおり、「低い反射率および透光率の偏差を有しかつ高い耐スクラッチ性および防汚性を同時に実現することができ、ディスプレイ装置の画面の鮮明度を高めることができる反射防止フィルムを提供する」ことであるといえる。 (3)本件の明細書の記載 本件明細書の発明の詳細な説明には、段落【0143】~【0144】にハードコート層形成用コーティング液の製造について具体例が記載され、段落【0146】~【0147】に低屈折層形成用コーティング液の製造について具体例が記載され、段落【0148】~【0151】に実施例および比較例の反射防止フィルムの製造について具体例が記載され、表2には、実施例・比較例の、光透過性基材の引張強度の比率、厚さ方向のレターデーション、ハードコート層のコーティング液の種類、低屈折層のコーティング液の種類について記載され、段落【0152】~【0156】に反射モードのX線回折(XRD)評価についての具体例が記載され、図1,2には反射防止フィルムに対するX線回折(XRD)パターンが記載されている。また、段落【0163】~【0164】及び表3には、実施例1~5、及び、比較例1~4のX線回折(XRD)パターンのピーク、半値全幅等の測定結果が記載されている。そして、段落【0167】~【0173】には、実施例1~5及び比較例1~4でそれぞれ得られた反射防止フィルムの光透過性基材を用いて偏光板を製造し、評価した結果について具体的に記載されている。 本件明細書の発明の詳細な説明に記載された各実施例において、光透過性基材の素材について明記はないが、図1にそのX線回折パターンが示された実施例1の反射防止フィルムは、図1のX線回折パターン全体から、ポリエチレンテレフタレートからなる光透過性基材を用いたものと認められる。また、実施例2~5についても、光透過性基材の素材についての記載はなく、X線回折パターンも示されていないが、表2に示される特性などから、実施例1と同様にポリエチレンテレフタレートからなる光透過性基材を用いたものであるといえる。 (4)サポート要件についての判断 上記訂正事項1に係る訂正により、本件発明の光透過性基材は「一方向の引張強度に対する、前記一方向と垂直な方向の引張強度の比率は2~5であるポリエチレンテレフタレートフィルムであ」ることが明確となった。 また、「反射(Reflection)モードのX線回折(XRD)パターンにおいて、22~24°の2θ値に現れるピークの半値全幅(FWHM)が1.5°以下であ」るという条件と、「一方向の引張強度に対する、前記一方向と垂直な方向の引張強度の比率は2~5であるポリエチレンテレフタレートフィルムであ」るという条件等を満たす実施例が、発明が解決しようとする課題を解決することは当該明細書に開示されているといえる。 以上によれば、本件発明には、光透過性基材がポリエチレンテレフタレートからなり、反射(Reflection)モードのX線回折(XRD)パターンにおいて、22~24°の2θ値に現れるピークの半値全幅(FWHM)が1.5°以下であり、かつ、一方向の引張強度に対する、前記一方向と垂直な方向の引張強度の比率は2~5であるとの条件を満たせば、上記課題を解決できると当業者が認識できると解される。 したがって、本件特許発明が、当業者が上記課題を解決できると認識する範囲を超えないものであることは明らかである。 第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての当合議体の判断 1 申立人Bが主張する申立理由B(甲5Bを主引例とする新規性、進歩性)について (1)申立理由の概要 申立人Bは、令和元年5月28日に出願された先の出願(甲6Bの1)の実施例には、使用した光透過性基材について、引張強度の比率のみが記載されていた(表2)のに対して、令和2年5月7日に出願された先の出願(甲6Bの2)の実施例には、使用した光透過性基材について、厚さ方向のレターデーション(Rth,nm)が追加記載され(表2)、本件特許の最先の優先日(令和元年5月28日)において、本件特許について発明が完成していたとはいえないため当該優先権主張の効果はなく、本件特許の優先日が令和2年5月7日に繰り下がり、その結果、令和2年4月23日に国際公開された甲5Bが公知文献となり、甲5Bに記載された発明に基づいて新規性、進歩性を有しないから、本件特許は取り消されるべきである旨主張する(申立人B提出の特許異議申立書42~47頁参照。)。 (2)優先権主張の効果について 本件出願は、2019年(令和元年)5月28日に出願された韓国特許出願10-2019-0062633号(甲6Bの1)、及び、2020年(令和2年)5月7日に出願された韓国特許出願10-2020-0054680号(甲6Bの2)を基礎として、パリ条約に基づく優先権主張がなされたものである。 ここで、甲5B(国際公開第2020/080858号)は、本件特許の最先の優先日(令和元年5月28日)と出願日との間である2020年(令和2年)4月23日に国際公開されたものであるから、当該優先日に係る優先権主張の効果について判断することが必要となるので、以下、この点についてまず検討する。 パリ条約に基づく優先権主張の効果が認められるためには、以下の要件が満たされる必要がある(特許・実用新案 審査基準 第V部 第1章 パリ条約による優先権 「3.1.3 第一国出願の出願書類の全体に記載した事項との対比及び判断」欄参照。)。 「(1)対比における基本的な考え方 日本出願の明細書、特許請求の範囲及び図面が第一国出願(注)について補正されたものであると仮定した場合において、その補正がされたことにより、日本出願の請求項に係る発明が、「第一国出願の出願書類全体に記載した事項」との関係において、新規事項の追加されたものとなる場合には、パリ条約による優先権の主張の効果が認められない。すなわち、当該補正が、請求項に係る発明に、「第一国出願書類全体に記載した事項」との関係において、新たな技術的事項を導入するものであった場合には、優先権の主張の効果が認められない。 ここで、「第一国出願の出願書類全体に記載した事項」とは、当業者によって、第一国出願の出願書類全体の記載を総合することにより導かれる技術的事項である。 ・・・ (2)日本出願の請求項に係る発明が、第一国出願の出願書類の全体に記載した事項の範囲内のものとされない主な類型 a 第一国出願の出願書類の全体に記載した事項以外の事項が請求項に係る発明を特定するための事項(以下この部において「発明特定事項」という。)として記載されている場合 ・・・ b実施の形態の追加や発明特定事項の一部の削除等の場合 ・・・ c日本出願の請求項に係る発明が、日本出願において初めて実施可能となる場合」 これを本件にあてはめると、次のとおりである。 ア 本件特許発明1に係る優先権主張の効果について (ア)甲6Bの1(甲6Bの1の翻訳文)の記載について 甲6Bの1(甲6Bの1の翻訳文)の特許請求の範囲には、以下の記載が認められる(当該特許請求の範囲に記載された事項について、以下「記載事項A」などという。)。 記載事項A-1 「【請求項1】 光透過性基材;ハードコート層;および低屈折層を含み、 反射(Reflection)モードのX線回折(XRD)パターンにおいて、22~24°の2θ値に現れるピークの半値全幅(FWHM)が1.5°以下である、反射防止フィルム。」 記載事項A-2 「【請求項3】 前記低屈折層は、バインダー樹脂、および前記バインダー樹脂に分散した無機微粒子を含む、請求項1に記載の反射防止フィルム。」 記載事項A-3 「【請求項4】 前記バインダー樹脂は、光重合性化合物および光反応性官能基を含む含フッ素化合物の間の架橋重合体を含む、請求項3に記載の反射防止フィルム。」 記載事項A-4 「【請求項13】 偏光子と、 前記偏光子を中心に対向するように位置する10μm以下の厚さを有する第2ハードコート層および請求項1に記載の反射防止フィルムとを含む、偏光板。」 記載事項A-5 「【請求項15】 前記偏光子の一面には前記10μm以下の厚さを有する第2のハードコート層が位置し、他の一面には前記反射防止フィルムの光透過性基材が位置し、 前記光透過性基材は、 波長400nm~800nmで測定される厚さ方向のレターデーション(Rth)が5,000nm以上であり、 一方向の引張強度に対する、前記一方向と垂直な方向の引張強度の比率は2以上であり、 前記一方向の引張強度は、前記一方向と垂直な方向の引張強度より小さい値を有する、請求項13に記載の偏光板。」 甲6Bの1(甲6Bの1の翻訳文)の明細書には、以下の記載が認められる(当該明細書に記載された事項について、以下「記載事項B」などという。)。 記載事項B-1 「【解決しようとする課題】 【0006】 本発明は、低い反射率および透光率の偏差を有しかつ高い耐スクラッチ性および防汚性を同時に実現することができ、ディスプレイ装置の画面の鮮明度を高めることができる反射防止フィルムを提供する。」 記載事項B-2 「【0025】 そこで、本発明者らは、反射防止フィルムに関する研究を進めて、反射モードのX回折パターンにおいて、22~24°の2θ値に現れるピークの半値全幅(FWHM)が1.5°以下である反射防止フィルムは、反射防止フィルムの全体において類似の反射率および透光率が現れて反射率および透光率の偏差が少ないだけでなく、高い耐スクラッチ性および防汚性を同時に実現することができ、ディスプレイ装置の画面の鮮明度を有するという点を、実験と通して確認して、発明を完成した。」 記載事項B-3 「【0029】 前記反射防止フィルムの反射モードのX線回折パターンにおいて、22~24°の2θ値におけるピークは、高分子鎖が非常によく整列(配列)された光透過性基材を含む場合に現れるので、このようなピークを有する反射防止フィルムは光学的物性に優れることができる。また、前記ピークの半値全幅が1.5°以下となる場合、反射防止フィルムに含まれている光透過性基材の結晶面の結晶子サイズが大きいもので、これを含む反射防止フィルムは光学的物性に優れていて、反射率の偏差が低い。」 記載事項B-4 「【0032】 前記ピークの2θ値は、前記光透過性基材内の高分子の結晶内の特定の面間距離(d-spacing)に起因するもので、前記ピークの半値全幅は、前記光透過性基材内の高分子結晶の大きさに起因するものである。 【0033】 具体的には、光透過性基材内の特定の面間距離(d-spacing)は、反射(Reflection)モードのX線回折(XRD)パターンに現れるピークの2θ値から確認することができる。より具体的には、Cuターゲット(target)および1.54Åの波長(λ)の時、前記光透過性基材内の(-110)結晶面は、22~24°の2θ値にピークとして現れる。 【0034】 また、前記光透過性基材内の高分子結晶の大きさは、前記22~24°の2θ値に現れるピークの半値全幅に影響を与えることができ、前記半値全幅が小さいほど光透過性基材内の高分子結晶の大きさは大きくなり、これによって、前記光透過性基材内の高分子の当該結晶面が高い整列度で配列される。」 記載事項B-5 「【0089】 前記有機または無機微粒子は、粒径が具体的に限定されるものではないが、例えば、有機微粒子は1~10μmの粒径を有することができ、前記無機粒子は1nm~500nm、または1nm~300nmの粒径を有することができる。前記有機または無機微粒子は、粒径は体積平均粒径と定義される。 【0090】 また、前記ハードコート層に含まれる有機または無機微粒子の具体例が限定されるものではないが、例えば、前記有機または無機微粒子は、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシド樹脂およびナイロン樹脂からなる有機微粒子であるか、酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ジルコニウムおよび酸化亜鉛からなる無機微粒子であってもよい。 【0091】 前記ハードコート層のバインダー樹脂は、数平均分子量10,000以上、13,000以上、15,000~100,000または20,000~80,000の高分子量(共)重合体をさらに含んでもよい。前記高分子量(共)重合体は、セルロース系ポリマー、アクリル系ポリマー、スチレン系ポリマー、エポキシド系ポリマー、ナイロン系ポリマー、ウレタン系ポリマー、およびポリオレフィン系ポリマーからなる群より選択される1種以上であってもよい。」 記載事項B-6 「【0102】 先に述べたように、前記ピークの2θ値は、高分子の結晶内の特定の面間距離(d-spacing)に起因するものであり、前記光透過性基材内の高分子の結晶状態に起因するものであってもよく、前記22~24°の2θ値に現れるピークの半値全幅は、前記透過性基材内の高分子結晶の大きさに起因するものであってもよい。 【0103】 また、前記光透過性基材内の高分子結晶の特定の面間距離(d-spacing)および大きさは、光透過性基材の製造過程での延伸比、延伸温度および延伸後の冷却速度などと関連があり、さらに、前記光透過性基材の一方向および前記一方向と垂直な方向との引っ張り強度の比率と関連がありえる。 【0104】 具体的には、前記光透過性基材は、一方向および前記一方向と垂直な方向に異なる引張強度の値が現れ、例えば、一方向の引張強度に対する、前記一方向と垂直な方向の引張強度の比率は2以上、3以上、4~30、または5~20であってもよい。・・・ 【0105】 前記光透過性基材は、波長400nm~800nmで測定される厚さ方向のレターデーション(Rth)が5,000nm以上、7,000~50,000nm、8,000~40,000nmであってもよい。このような光透過性基材の具体例としては、一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムまたは二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが挙げられる。」 記載事項B-7 「【0107】 厚さ方向のレターデーションは、通常知られた測定方法および測定装置により確認することができる。例えば、厚さ方向のレターデーションの測定装置としては、AXOMETRICS社製の商品名「アクソスキャン(AxoScan)]などが挙げられる。」 記載事項B-8 「【発明を実施するための形態】 【0146】 発明を下記の実施例でより詳しく説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるものではない。 【0148】 製造例1:ハードコート層形成用コーティング液の製造 【0149】 下記表1に記載の成分を混合してハードコート層形成用コーティング液(B1、B2およびB3)を製造した。 【0151】 【表1】 [図:0001409089000008.jpg] 【0152】 DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート PETA:ペンタエリスリトールトリアクリレート 【0153】 UA-306T:ウレタンアクリレートとしてトルエンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートとの反応物(Kyoeisha製品) 【0154】 8BR-500:光硬化型ウレタンアクリレートポリマー(Mw200,000、Taisei Fine Chemical製品) 【0155】 IRG-184:開始剤(Irgacure184、Ciba社) 【0156】 Tego-270:Tego社のレベリング剤 【0157】 BYK350:BYK社のレベリング剤 【0158】 IPAイソプロピルアルコール 【0159】 XX-103BQ(2.0μmRI1.515):ポリスチレンとポリメチルメタクリレートとの共重合粒子(Sekisui Plastic製品) 【0160】 XX-113BQ(2.0μmRI1.555):ポリスチレンとポリメチルメタクリレートとの共重合粒子(Sekisui Plastic製品) 【0161】 MA-ST(30%メタノール溶液):大きさ10~15nmのナノシリカ粒子がメチルアルコールに分散した分散液(Nissan Chemical製品) 【0163】 製造例2-1:低屈折層形成用コーティング液(C1)の製造 【0164】 トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)100g、中空状シリカナノ粒子(直径範囲:約42nm~66nm、JSC catalyst and chemicals社製品)283g、ソリッド状シリカナノ粒子(直径範囲:約12nm~19nm)59g、第1含フッ素化合物(X-71-1203M、ShinEtsu社)115g、第2含フッ素化合物(RS-537、DIC社)15.5gおよび開始剤(Irgacure127、Ciba社)10gを、MIBK(メチルイソブチルケトン)溶媒に固形分濃度3重量%となるように希釈して、低屈折層形成用コーティング液(光硬化性コーティング組成物)を製造した。 【0166】 製造例2-2:低屈折層形成用コーティング液(C2)の製造 【0167】 ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)100g、中空状シリカナノ粒子(直径範囲:約51nm~72nm、JSC catalyst and chemicals社製品)143g、ソリッド状シリカナノ粒子(直径範囲:約12nm~19nm)29g、含フッ素化合物(RS-537、DIC社)56gおよび開始剤(Irgacure127、Ciba社)3.1gを、MIBK(メチルイソブチルケトン)溶媒に固形分濃度3.5重量%となるように希釈して、低屈折層形成用コーティング液(光硬化性コーティング組成物)を製造した。」 記載事項B-9 「【0169】 <実施例1~3および比較例1~4:反射防止フィルムの製造> 下記表2に記載のそれぞれの光透過性基材(厚さ80μm)上に、前記製造されたハードコート層形成用コーティング液(B1、B2、B3)それぞれを#12mayerbarでコーティングした後、60℃の温度で2分乾燥し、UV硬化してハードコート層(コーティング厚さは5μm)を形成した。UVランプはH bulbを用い、窒素雰囲気下で硬化反応を進行させた。硬化時に照射されたUV光量は100mJ/cm2である。 【0171】 前記ハードコート層上に、前記低屈折層形成用コーティング液(C1、C2)を#4 mayer barで厚さが約110~120nmとなるようにコーティングし、40℃の温度で1分間乾燥および硬化した。前記硬化時には、窒素パージング下、前記乾燥したコーティング液に252mJ/cm2の紫外線を照射した。 【0173】 【表2】 [図:0001409089000009.jpg] 【0174】 *引張強度の比率:光透過性基材において、より小さい値を有する一方向の引張強度に対する、より大きい値を有する前記一方向と垂直な方向の引張強度の比率。引張強度の測定方法は、JIS C-2318に準じて光透過性基材の引張強度を測定する。 【0176】 評価 【0177】 1.反射モードのX線回折(XRD)評価 【0178】 実施例および比較例で得られた反射防止フィルムに対して、2cm*2cm(横*縦)の大きさにサンプルを用意した後、1.54Åの波長のCu-Kα線を照射して反射モードのX線回折(XRD)パターンを測定した。 【0179】 具体的には、ローバックグラウンドケイ素ホルダー(low background Si holder、Bruker社)上に浮かび上がらないようにサンプルを固定して用意し、測定装置はBruker AXS D4 Endeavor XRDを用いた。使用電圧および電流はそれぞれ40kVおよび40mAであり、使用したオプティクス(optics)および検出器(detector)などの装置および条件は次の通りである。 【0180】 -一次(入射ビーム)光学系(Primary(incident beam)optics):電動発散スリット、ソーラースリット2.3°(motorized divergence slit、soller slit2.3°) 【0181】 -二次(回折ビーム)光学系(Secondary(diffracted beam)optics):ソーラースリット2.3°(sollerslit2.3°) 【0182】 -受光スリット(Receiving slit):0.1deg 【0183】 -LynxEye検出器(1D検出器) 【0184】 測定モードはcoupled2θ/θモードであり、FDS(FixedDivergenceSlit)0.3°を用いて、2θ値が6°から70°までの領域を、毎0.04°ごとに175秒ずつ測定した。 【0185】 また、X線回折(XRD)パターンにおいて、22~24°の2θ値の間に現れるピークの半値全幅は、Bruker社のTOPASプログラムを用いて測定した。具体的には、TOPASプログラムで測定範囲(フィッティング領域)を10~40°に指定し、PV(pseudo-Voigt)関数を用いて、約17°、19°、23°、26°付近のピークを入力して半値全幅を求めた。以後、22~24°の2θ値の間に現れるピークの2θ値と、前記ピークの半値全幅を下記表3に記載した。 【0186】 一方、図1は、実施例1の反射防止フィルムに対するX線回折(XRD)パターンであり、図2は、比較例3の反射防止フィルムに対するX線回折(XRD)パターンである。」 (イ)次に、上記(ア)を踏まえて、本件特許発明1が甲6Bの1(甲6Bの1の翻訳文)全体に記載した事項との関係において新規事項の追加がされたものといえるか、について検討する。 本件特許発明1は、上記「第3 本件特許発明」記載のとおりであるところ、本件特許発明1の各発明特定事項と上記(ア)の記載事項との対応は、以下のとおりとなる。 本件特許発明1の「光透過性基材;ハードコート層;および低屈折層を含」む点は、上記記載事項A-1、及び、その実施例であるB-8~B-9に記載がある。 本件特許発明1の「反射(Reflection)モードのX線回折(XRD)パターンにおいて、22~24°の2θ値に現れるピークの半値全幅(FWHM)が1.5°以下であ」る点は、上記記載事項A-1、B-2~B-4、B-6、及び、その実施例であるB-9に記載されている。 本件特許発明1の「前記低屈折層は、バインダー樹脂、および前記バインダー樹脂に分散した無機微粒子を含」む点は、上記記載事項A-2、B-5、及び、その実施例であるB-8に記載されている。 本件特許発明1の「前記バインダー樹脂は、光重合性化合物および光反応性官能基を含む含フッ素化合物の間の架橋重合体を含」む点は、上記記載事項A-3、及び、その実施例であるB-8に記載されている。 本件特許発明1の「前記光透過性基材は、一方向の引張強度に対する、前記一方向と垂直な方向の引張強度の比率は2~5であるポリエチレンテレフタレートフィルムであ」る点は、上記記載事項A-5、B-6、及び、その実施例であるB-9に記載されている。 本件特許発明1の「前記無機微粒子は、ソリッド状無機ナノ粒子及び中空状無機ナノ粒子を含む」点は、上記記載事項B-8に記載されている。 また、上記記載事項B-8~B-9には具体的な製法が記載されており、本願特許発明1は、甲6Bの1(甲6Bの1の翻訳文)全体に記載した事項から実施可能であるといえる。 したがって、本件特許発明1が甲6Bの1(甲6Bの1の翻訳文)全体に記載した事項との関係において新たな技術的事項を導入するもの(新規事項の追加がされたもの)とはいえない。 (ウ)小括 上記(ア)~(イ)の検討結果から、本件特許発明1について、最先の優先日に係る優先権主張の効果は認められるといえる。 イ 本件特許発明2に係る優先権主張の効果について (ア)甲6Bの1(甲6Bの1の翻訳文)の記載について 甲6Bの1(甲6Bの1の翻訳文)の特許請求の範囲には、上記ア(ア)で示した事項に加え、以下の記載が認められる。 記載事項A-6 「【請求項2】 前記光透過性基材は、30~40℃の温度および90~100%の相対湿度の条件下、透湿率が50g/m2・day以下である、請求項1に記載の反射防止フィルム。」 記載事項B-10 「【0199】 5.透湿率評価 【0200】 実施例および比較例で得られた反射防止フィルムの透湿率は、38℃の温度および100%の相対湿度下、MOCONtest装置(PERMATRAN-W、MODEL3/61)を用いて測定した。 【0202】 【表3】 [図:0001409089000010.jpg] 【0203】 前記表3によれば、実施例1~5の反射防止フィルムは、平均反射率の偏差が0.16%p以下で、透光率の偏差が0.08%p以下であり、反射防止フィルム全般において平均反射率と透光率の差がほとんどないことを確認した。しかし、比較例1~4の反射防止フィルムは、実施例1~5の反射防止フィルムとは異なり、平均反射率の偏差および透光率の偏差が顕著に高いことを確認した。」 (イ)本件特許発明2が甲6Bの1(甲6Bの1の翻訳文)全体に記載した事項との関係において新規事項の追加がされるものといえるかについて 本件特許発明2は、上記「第3 本件特許発明」記載のとおりである。 本件特許発明2の「前記光透過性基材は、30~40℃の温度および90~100%の相対湿度の条件下、透湿率が50g/m2・day以下である」点は、上記記載事項A-6、及び、その実施例であるB-10に記載がある。 その他の事項については、既に述べたとおりである。 したがって、本件特許発明2が甲6Bの1(甲6Bの1の翻訳文)全体に記載した事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるとはいえない。 (ウ)小括 上記(ア)~(イ)の検討結果から、本件特許発明2について、最先の優先日に係る優先権主張の効果は認められる。 ウ 本件特許発明3~6に係る優先権主張の効果について (ア)甲6Bの1(甲6Bの1の翻訳文)の記載について 甲6Bの1(甲6Bの1の翻訳文)の特許請求の範囲には、上記ア(ア)で示した事項に加え、以下の記載が認められる。 記載事項A-7 「【請求項5】 前記無機微粒子は、0.5~100nmの直径を有するソリッド状無機ナノ粒子および1~200nmの直径を有する中空状無機ナノ粒子からなる群より選択された1種以上を含む、請求項3に記載の反射防止フィルム。 【請求項6】 前記ハードコート層は、光硬化性樹脂を含むバインダー樹脂、および前記バインダー樹脂に分散した有機または無機微粒子を含む、請求項1に記載の反射防止フィルム。 【請求項7】 前記ハードコート層のバインダー樹脂は、数平均分子量10,000以上の高分子量(共)重合体をさらに含む、請求項6に記載の反射防止フィルム。 【請求項8】 前記光透過性基材は、 波長400nm~800nmで測定される厚さ方向のレターデーション(Rth)が5,000nm以上であり、 一方向の引張強度に対する、前記一方向と垂直な方向の引張強度の比率は2以上であり、 前記一方向の引張強度が、前記一方向と垂直な方向の引張強度より小さい値を有する反射防止フィルム。 請求項1に記載の反射防止フィルム。」 (イ)本件特許発明3~6が甲6Bの1(甲6Bの1の翻訳文)全体に記載した事項との関係において新規事項の追加がされるものといえるかについて 本件特許発明3~6は、上記「第3 本件特許発明」記載のとおりである。 本件特許発明3~6は、上記記載事項A-5、A-7、B-7、及び、その実施例であるB-8~B-9に記載がある。 その他の事項については、既に述べたとおりである。 したがって、本件特許発明3~6が甲6Bの1(甲6Bの1の翻訳文)全体に記載した事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるとはいえない。 (ウ)小括 上記(ア)~(イ)の検討結果から、本件特許発明3~6について、最先の優先日に係る優先権主張の効果は認められる。 エ 本件特許発明8~14に係る優先権主張の効果について (ア)甲6Bの1(甲6Bの1の翻訳文)の記載について 甲6Bの1(甲6Bの1の翻訳文)の特許請求の範囲には、上記ア(ア)~ウ(ア)で示した事項に加え、以下の記載が認められる。 記載事項A-8 「【請求項10】 前記反射防止フィルムは、380nm~780nmの波長帯領域で平均反射率が2.0%以下である、請求項1に記載の反射防止フィルム。 【請求項11】 前記反射防止フィルムは、 平均反射率の偏差が0.2%p以下であり、 透光率の偏差が0.2%p以下である、請求項1記載の反射防止フィルム。 【請求項12】 請求項1に記載の反射防止フィルムと、偏光子とを含む偏光板。 【請求項13】 偏光子と、 前記偏光子を中心に対向するように位置する10μm以下の厚さを有する第2ハードコート層および請求項1に記載の反射防止フィルムとを含む、偏光板。 【請求項14】 前記偏光子;前記第2ハードコート層;および前記反射防止フィルム;を合わせた総厚さが200μm以下である、請求項13に記載の偏光板。 【請求項15】 前記偏光子の一面には前記10μm以下の厚さを有する第2ハードコート層が位置し、他の一面には前記反射防止フィルムの光透過性基材が位置し、 前記光透過性基材は、 波長400nm~800nmで測定される厚さ方向のレターデーション(Rth)が5,000nm以上であり、 一方向の引張強度に対する、前記一方向と垂直な方向の引張強度の比率は2以上であり、 前記一方向の引張強度は、前記一方向と垂直な方向の引張強度より小さい値を有する、請求項13記載の偏光板。 【請求項16】 請求項1に記載の反射防止フィルムを含むディスプレイ装置。」 記載事項B-11 「【0205】 製造例3:第2ハードコート層が一面に形成された偏光子の製造 【0206】 (1)第2ハードコート層形成用コーティング液(A)の製造 【0207】 トリメチロイルプロパントリアクリレート28g、KBE-403 2g、開始剤KIP-100f、0.1g、レベリング剤(Tegowet270)0.06gを均一に混合して、第2ハードコート層形成用コーティング液(A)を製造した。 【0208】 (2)第2ハードコート層が一面に形成された偏光子の製造 【0209】 偏光子であるポリビニルアルコール偏光子(厚さ:25um、製造会社:LG化学)の一面に前記第2ハードコート層形成用コーティング液(A)を7umの厚さに塗布し、窒素パージング下、乾燥したコーティング物に500mJ/cm2の紫外線を照射して、第2ハードコート層が一面に形成された偏光子を製造した。 【0211】 <実施例6~10および比較例5~8:偏光板の製造> 【0212】 下記表4に記載の通り、前記実施例1~5および比較例1~4でそれぞれ得られた反射防止フィルムの光透過性基材上に、前記製造例3で得られた第2ハードコート層が一面に形成された偏光子をUV接着剤で接着して偏光板を製造した。具体的には、前記反射防止フィルムの光透過性基材と前記偏光子とが直接的に接するようにして偏光板を製造し、製造された偏光板は、低屈折層、ハードコート層、光透過性基材、偏光子および第2ハードコート層が順次に積層されている。 ・・・ 【0215】 評価 【0216】 1.平均反射率の偏差および透光率の偏差評価 【0217】 前記実施例6~10および比較例5~8に対して、先に述べたのと同様の方法で平均反射率の偏差および透光率の偏差を測定して下記表5に示した。 【0219】 2.クラック特性 【0220】 前記実施例6~10および比較例5~8に対して、一辺の長さが10cmの正方形に裁断し、TV用ガラス(横12cm、縦12cm、厚さ0.7mm)の一面に接合して熱衝撃評価用サンプルを製造した。この時、偏光子のMD方向が正方形の一辺と平行となるように偏光板を裁断した。裁断したサンプルを熱衝撃チャンバーに垂直に立てておき、常温から80℃に昇温して30分放置し、以後、温度を-30℃に下げて30分放置後、常温に温度調節することを1サイクルとして、計100サイクルを繰り返した。以後、評価用サンプルの偏光子の間に発生したクラックと偏光子との間に隙間が生じたことを肉眼で確認して、長さ1cm以上のクラックの個数を確認し、その結果を下記表5に記載した。 ・・・ 【0223】 下記の表5によれば、実施例6~10の平光板は、平均反射率の偏差が0.13%p以下で、透光率の偏差が0.06%p以下であり、平光板全般において平均反射率と透光率の差がほとんどなく、視認性の部位別偏差がないことを確認した。しかし、比較例5~8の偏光板は、実施例6~8の偏光板とは異なり、平均反射率の偏差および透光率の偏差が顕著に高くて、部位別視認性の偏差が大きく現れることを予測することができる。 【0224】 また、平均反射率および透光率の偏差が低い実施例6~10は、100Cycle繰り返されたクラック試験でクラックが全く発生しないことを確認した。これに対し、比較例5~8の偏光板は、クラックが発生することを確認した。」 (イ)本件特許発明8~14が甲6Bの1(甲6Bの1の翻訳文)全体に記載した事項との関係において新規事項の追加がされるものといえるかについて 本件特許発明8~14は、上記「第3 本件特許発明」記載のとおりである。 本件特許発明8~14は、上記記載事項A-8、及び、その実施例であるB-8~B-11に記載がある。 その他の事項については、既に述べたとおりである。 したがって、本件特許発明8~14が甲6Bの1(甲6Bの1の翻訳文)全体に記載した事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるとはいえない。 (ウ)小括 上記(ア)~(イ)の検討結果から、本件特許発明8~14について、最先の優先日に係る優先権主張の効果は認められる。 オ まとめ 上記ア~エのとおりであるから、本件特許の甲6Bの1(2019年(令和元年)5月28日に出願された出願)に基づく優先権主張の効果は認められる。 (3)甲5Bに基づく新規性・進歩性について 上記(1)のとおり、甲5Bの公知日は2020年(令和2年)4月23日であるのに対し、上記(2)のとおり、本件特許の甲6Bの1(2019年(令和元年)5月28日に出願された出願)に基づく優先権主張の効果は認められるから、当該優先日後に公知となった甲5Bに記載された発明に基づき本件特許発明の新規性・進歩性がないとはいえない。 また、仮に当該優先権主張の効果が認められなかったとしても、そもそも甲5Bには「反射(Reflection)モードのX線回折(XRD)パターンにおいて、22~24°の2θ値に現れるピークの半値全幅(FWHM)が1.5°以下であ」る点が記載されているとは認められないから、甲5Bに記載された発明に基づき、本件特許発明が新規性及び進歩性を欠くとはいえない。 (4)異議申立人の主張について 申立人Bは、最先の優先日において、本件発明について発明が完成していないため、本件特許は有効優先日が2020年5月7日となる旨、及び、本件特許発明は甲5Bに記載された発明と同一であるか、又甲5B、及び周知技術に基づいて、当業者が容易になし得るものであり、その特許は取り消されるべきであると主張する(申立人B提出の異議申立書33頁「(カ)甲第6号証の1~2」欄、42~47頁「(理由B)」欄参照。)。 しかしながら、上記(2)~(3)で検討したとおりであるから、当該主張は採用できない。 (5)甲5Bを主引例とする新規性・進歩性についてのまとめ 上記(2)~(4)のとおりであるから、特許異議申立理由(甲5Bを主引例とする新規性・進歩性)は、採用すべき理由がない。 2 申立人Aが主張する申立理由2-1(サポート要件)について (1)申立人Aの主張 申立人Aは、申立人A提出の特許異議申立書の41頁~42頁「(4-4-1)サポート要件」欄において、概略、以下の点を主張する。 ア 本件特許発明は「反射(Reflection)モードのX線回折(XRD)パターンにおいて、22~24°の2θ値に現れるピークの半値全幅(FWHM)が1.5°以下であり、」と特定しているが、発明の詳細な説明には、半値全幅、引張強度、Rthが特定の数値範囲の場合に平均反射率等の評価が良いことしか記載されておらず(表2、3)、本件特許発明は、発明の効果を奏さない態様を包含している(申立人A提出の異議申立書41頁(4-4-1)(i)欄参照。)。 イ 本件特許発明は、低屈折層がバインダー樹脂及び無機微粒子を含むことのみ特定しており、表3に記載された評価を得られないものを包含している(申立人A提出の異議申立書41~42頁(4-4-1)(ii)欄参照。)。 ウ 本件特許発明は、ハードコート層及び低屈折層の厚み、及び、材料を特定していないが、発明の詳細な説明には、特定の例しか記載されておらず、発明の課題を達成し得ない態様を包含している(申立人A提出の異議申立書42頁(4-4-1)(iii)~(iv)欄参照。)。 (2)当合議体の判断 上記(1)アないしウの申立人Aの主張について検討する。 ア 主張アについて 本件特許の発明の詳細な説明の表2、3において、半値全幅を変更させた場合について発明の効果を説明しているから、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 イ 主張イ及びウについて 本件特許の発明の詳細な説明においてハードコート層及び低屈折層について記載されており、前記「第5 2(4)サポート要件についての判断」で示したとおり、光透過性基材がポリエチレンテレフタレートからなり、反射(Reflection)モードのX線回折(XRD)パターンにおいて、22~24°の2θ値に現れるピークの半値全幅(FWHM)が1.5°以下であり、かつ、一方向の引張強度に対する、前記一方向と垂直な方向の引張強度の比率は2~5であるとの条件を満たせば、上記課題を解決できると当業者が認識できるといえるから、その全てが特許請求の範囲に記載されていなくとも、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 (3)まとめ 上記(2)のとおりであるから、特許異議申立理由(サポート要件)は、採用すべき理由がない。 3 申立人Aが主張する申立理由2-2(明確性要件)について (1)申立人Aの主張 申立人Aは、申立人A提出の特許異議申立書の42頁~44頁「(4-4-2)明確性要件」欄において、概略、以下の点を主張する。 ア 本件特許発明は、「反射(Reflection)モードのX線回折(XRD)パターンにおいて、22~24°の2θ値に現れるピークの半値全幅(FWHM)が1.5°以下であり」と特定しているが、X線回折パターンの測定方法が不明確である。 イ 本件特許発明は、「反射(Reflection)モードのX線回折(XRD)パターンにおいて、22~24°の2θ値に現れるピークの半値全幅(FWHM)が1.5°以下であり」と特定しているが、X線回折パターンは、いかなるX線回折パターンを意味するのか不明確である。 ウ 本件特許発明8、9は、平均反射率、平均反射率の偏差、透光率の偏差を特定しているが、どのような大きさのサンプルを用いて計測したのか、その測定方法が不明確である。例えばサンプルの大きさが1cm角と100cm角とは全く異なるデータが得られると考えられる。 (2)当合議体の判断 特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきであるから、以下、この判断基準に基づき、上記(1)ア~ウの異議申立人の主張について検討する。 ア 主張ア及びイについて 本件特許の明細書段落【0152】~【0154】には、実施例および比較例で得られた反射防止フィルムに対して、2cm*2cm(横*縦)の大きさにサンプルを用意した後、1.54Åの波長のCu-Kα線を照射して反射モードのX線回折(XRD)パターンを測定した旨、具体的には、ローバックグラウンドケイ素ホルダー(low background Si holder、Bruker社)上に浮かび上がらないようにサンプルを固定して用意し、測定装置はBruker AXS D4 Endeavor XRDを用いた旨、使用電圧および電流はそれぞれ40kVおよび40mAである旨、使用したオプティクス(optics)および検出器(detector)などの装置および条件について記載されている。 また、当該明細書段落【0155】には、測定値の導出方法について具体的に記載されている。 そして、反射モードのX線回折(XRD)評価方法自体は、当業者に周知である。 したがって、上記記載及び本件出願時における技術常識に照らせば、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 イ 主張ウについて 異議申立人は、「例えばサンプルの大きさが1cm角と100cm角とは全く異なるデータが得られると考えられる。」と主張しているが、どの程度異なるのか立証していない。 したがって、当業者の出願時における技術常識を基礎とすれば、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 (3)まとめ 上記(2)のとおりであるから、特許異議申立理由(明確性要件)は、採用すべき理由がない。 4 申立人Aが主張する申立理由2-3(実施可能要件)について (1)異議申立人の主張 異議申立人は、申立人A提出の特許異議申立書の44頁~46頁「(4-4-3)実施可能要件」欄において、概略、以下の点を主張する。 ア 本件特許発明について、X線回折パターンにおける22~24°の2θ値に現れるピークの半値全幅・引張強度比と、レターデーション(Rth)との関係が、当業者が実施できる程度に記載されておらず、当業者が発明の詳細な説明に基づいて本件特許発明1を再現することができない。 イ 引張強度比について、発明の詳細な説明には、JIS C-2318に準じて測定する旨記載されているが(段落151)、JIS C-2318には引張強度の測定方法は記載されていない。 ウ 実施例には光透過性基材にどのような材料を用いて、どのように引っ張れば表3に記載された評価が得られるのかが記載されておらず、説明されておらず、当業者が発明の詳細な説明に基づいて本件特許発明1を再現することができない。 (2)当合議体の判断 上記ア~ウについてまとめて検討する。 本件明細書には、以下の記載が認められる。 「【0023】 発明の一実施形態によれば、光透過性基材;ハードコート層;および低屈折層を含み、反射(Reflection)モードのX線回折(XRD)パターンにおいて、反射(Reflection)モードのX線回折(XRD)パターンにおいて、22~24°の2θ値に現れるピークの半値全幅(FWHM)が1.5°以下である反射防止フィルムが提供される。 【0024】 そこで、本発明者らは、反射防止フィルムに関する研究を進めて、反射モードのX線回折パターンにおいて、22~24°の2θ値に現れるピークの半値全幅(FWHM)が1.5°以下である反射防止フィルムは、反射防止フィルムの全体において類似の反射率および透光率が現れて反射率および透光率の偏差が少ないだけでなく、高い耐スクラッチ性および防汚性を同時に実現することができ、ディスプレイ装置の画面の鮮明度を有するという点を、実験を通して確認して、発明を完成した。 ・・・ 【0098】 先に述べたように、前記ピークの2θ値は、高分子の結晶内の特定の面間距離(d-spacing)に起因するものであり、前記光透過性基材内の高分子の結晶状態に起因するものであってもよく、前記22~24°の2θ値に現れるピークの半値全幅は、前記光透過性基材内の高分子結晶の大きさに起因するものであってもよい。 【0099】 また、前記光透過性基材内の高分子結晶の特定の面間距離(d-spacing)および大きさは、光透過性基材の製造過程での延伸比、延伸温度および延伸後の冷却速度などと関連があり、さらに、前記光透過性基材の一方向および前記一方向と垂直な方向との間の引張強度の比率と関連があり得る。 【0100】 具体的には、前記光透過性基材は、一方向および前記一方向と垂直な方向に異なる引張強度の値が現れ、例えば、一方向の引張強度に対する、前記一方向と垂直な方向の引張強度の比率は2以上、2~30、2.1~20、2.2~10、または2.2~5であってもよい。 【0101】 この時、前記一方向の引張強度は、前記一方向と垂直な方向の引張強度より小さい値を有する。前記引張強度の比率が2未満であれば、反射防止フィルムの部位別反射率および透光率の偏差が大きく、可視光線の干渉によるレインボー現象が発生することがある。 【0102】 前記光透過性基材は、一方向の引張強度が50~500Mpa、60~450Mpa、または70~400Mpaであってもよい。 【0103】 また、前記光透過性基材の前記一方向と垂直な方向の引張強度は50~500Mpa、60~450Mpa、または70~400Mpaであってもよい。 【0104】 前記光透過性基材は、波長400nm~800nmで測定される厚さ方向のレターデーション(Rth)が5,000nm以上、5、200~50,000nm、5,400~40,000nm、5,600~30,000nm、5,800~20,000nm、または5,800~10,000nmであってもよい。このような光透過性基材の具体例としては、一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムまたは二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが挙げられる。 ・・・ 【0125】 一方、前記偏光子は、様々な方向に振動しながら入射する光から一方の方向に振動する光だけを抽出できる特性を示す。このような特性は、ヨウ素を吸収したポリビニルアルコール(PVA、polyvinylalcohol)を強い張力で延伸して達成可能である。例えば、PVAフィルムを水溶液に浸漬して膨潤(swelling)させる膨潤段階と、前記膨潤されたPVAフィルムに偏光性を付与する二色性染料物質で染色する段階と、前記染色されたPVAフィルムを延伸(stretch)して前記二色性染料物質を延伸方向に並んで配列させる延伸段階と、前記延伸段階を経たPVAフィルムの色を補正する補色段階とを経て偏光子を形成することができるが、これに限定されるものではない。 ・・・ 【発明を実施するための形態】 【0142】 発明を下記の実施例でより詳しく説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるものではない。 【0143】 製造例1:ハードコート層形成用コーティング液の製造 下記表1に記載の成分を混合してハードコート層形成用コーティング液(B1、B2およびB3)を製造した。 【0144】 【表1】 [図:0001409089000011.jpg] 【0145】 DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート PETA:ペンタエリスリトールトリアクリレート UA-306T:ウレタンアクリレートとしてトルエンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートとの反応物(Kyoeisha製品) 8BR-500:光硬化型ウレタンアクリレートポリマー(Mw200,000、TaiseiFineChemical製品) IRG-184:開始剤(Irgacure184、Ciba社) Tego-270:Tego社のレベリング剤 BYK350:BYK社のレベリング剤 IPAイソプロピルアルコール XX-103BQ(2.0μmRI1.515):ポリスチレンとポリメチルメタクリレートとの共重合粒子(SekisuiPlastic製品) XX-113BQ(2.0μmRI1.555):ポリスチレンとポリメチルメタクリレートとの共重合粒子(SekisuiPlastic製品) MA-ST(30%メタノール溶液):大きさ10~15nmのナノシリカ粒子がメチルアルコールに分散した分散液(NissanChemical製品) 【0146】 製造例2-1:低屈折層形成用コーティング液(C1)の製造 トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)100g、中空状シリカナノ粒子(直径範囲:約42nm~66nm、JSCcatalystandchemicals社製品)283g、ソリッド状シリカナノ粒子(直径範囲:約12nm~19nm)59g、第1含フッ素化合物(X-71-1203M、ShinEtsu社)115g、第2含フッ素化合物(RS-537、DIC社)15.5gおよび開始剤(Irgacure127、Ciba社)10gを、MIBK(メチルイソブチルケトン)溶媒に固形分濃度3重量%となるように希釈して、低屈折層形成用コーティング液(光硬化性コーティング組成物)を製造した。 ・・・ 【0147】 製造例2-2:低屈折層形成用コーティング液(C2)の製造 ・・・ 【0148】 <実施例1~3および比較例1~4:反射防止フィルムの製造> 下記表2に記載のそれぞれの光透過性基材(厚さ80μm)上に、前記製造されたハードコート層形成用コーティング液(B1、B2、B3)それぞれを#12mayerbarでコーティングした後、60℃の温度で2分乾燥し、UV硬化してハードコート層(コーティング厚さは5μm)を形成した。 ・・・ 【0150】 【表2】 [図:0001409089000012.jpg] 【0151】 *引張強度の比率:光透過性基材において、より小さい値を有する一方向の引張強度に対する、より大きい値を有する前記一方向と垂直な方向の引張強度の比率。引張強度の測定方法は、JISC-2318に準じて光透過性基材の引張強度を測定する。 【0152】 評価 1.反射モードのX線回折(XRD)評価 実施例および比較例で得られた反射防止フィルムに対して、2cm*2cm(横*縦)の大きさにサンプルを用意した後、1.54Åの波長のCu-Kα線を照射して反射モードのX線回折(XRD)パターンを測定した。 ・・・ 【0154】 測定モードはcoupled 2θ/θモードであり、FDS(Fixed Divergence Slit)0.3°を用いて、2θ値が6°から70°までの領域を、毎0.04°ごとに175秒ずつ測定した。 【0155】 また、X線回折(XRD)パターンにおいて、22~24°の2θ値の間に現れるピークの半値全幅は、Bruker社のTOPASプログラムを用いて測定した。具体的には、TOPASプログラムで測定範囲(フィッティング領域)を10~40°に指定し、PV(pseudo-Voigt)関数を用いて、約17°、19°、23°、26°付近のピークを入力して半値全幅を求めた。以後、22~24°の2θ値の間に現れるピークの2θ値と、前記ピークの半値全幅を下記表3に記載した。 ・・・ 【0157】 2.平均反射率評価 実施例および比較例で得られた反射防止フィルムの裏面(ハードコート層が形成されていない光透過性基材の一面)を暗色処理した後に、Solidspec3700(SHIMADZU)装置の反射率(Reflectance)モードを用いて、380~780nmの波長領域で平均反射率を測定し、その結果を下記表3に記載した。 【0158】 3.平均反射率の偏差評価 実施例および比較例で得られた反射防止フィルムに対して任意のポイントを20個選定し、それぞれのポイントに対して前記「2.平均反射率評価方法」で平均反射率を測定した。・・・20個の平均反射率の偏差のうち最も大きい値を有する平均反射率の偏差を下記表3に記載した。 【0159】 4.透光率の偏差評価 ・・・ 【0161】 以後、測定された20個のポイントの透光率の算術平均値を求めた。以後、各ポイントで透光率と前記算術平均値との間の差(絶対値)を透光率の偏差と定義し、各20個のポイントで透光率の偏差を計算した。20個の透光率の偏差のうち最も大きい値を有する透光率の偏差を下記表3に記載した。 【0162】 5.透湿率評価 実施例および比較例で得られた反射防止フィルムの透湿率は、38℃の温度および100%の相対湿度下、MOCON test装置(PERMATRAN-W、MODEL3/61)を用いて測定した。 【0163】 【表3】 [図:0001409089000013.jpg] 【0164】 前記表3によれば、実施例1~5の反射防止フィルムは、平均反射率の偏差が0.16%p以下で、透光率の偏差が0.08%p以下であり、反射防止フィルム全般において平均反射率と透光率の差がほとんどないことを確認した。しかし、比較例1~4の反射防止フィルムは、実施例1~5の反射防止フィルムとは異なり、平均反射率の偏差および透光率の偏差が顕著に高いことを確認した。 【0165】 製造例3:第2ハードコート層が一面に形成された偏光子の製造 (1)第2ハードコート層形成用コーティング液(A)の製造 トリメチロイルプロパントリアクリレート28g、KBE-4032g、開始剤KIP-100f、0.1g、レベリング剤(Tegowet270)0.06gを均一に混合して、第2ハードコート層形成用コーティング液(A)を製造した。 【0166】 (2)第2ハードコート層が一面に形成された偏光子の製造 偏光子であるポリビニルアルコール偏光子(厚さ:25um、製造会社:LG化学)の一面に前記第2ハードコート層形成用コーティング液(A)を7umの厚さに塗布し、窒素パージング下、乾燥したコーティング物に500mJ/cm2の紫外線を照射して、第2ハードコート層が一面に形成された偏光子を製造した。 【0167】 <実施例6~10および比較例5~8:偏光板の製造> 下記表4に記載の通り、前記実施例1~5および比較例1~4でそれぞれ得られた反射防止フィルムの光透過性基材上に、前記製造例3で得られた第2ハードコート層が一面に形成された偏光子をUV接着剤で接着して偏光板を製造した。具体的には、前記反射防止フィルムの光透過性基材と前記偏光子とが直接的に接するようにして偏光板を製造し、製造された偏光板は、低屈折層、ハードコート層、光透過性基材、偏光子および第2ハードコート層が順次に積層されている。 【0168】 【表4】 [図:0001409089000014.jpg] 」 前記各記載に基づけば、当業者は、延伸条件を適宜調整することによって過度な試行錯誤を要することなく、本件特許発明に係る反射防止フィルムを製造できるといえる。 そして、上記主張ア~ウは、要するに、製造時の各種パラメータの測定方法や評価方法が不明瞭だということを指摘するのみであって、仮に、これら方法が多少不明瞭であったとしても、上記のとおり延伸条件等を最適化することで、本件明細書等の記載に基づいて、当業者は本件特許発明に係る反射防止フィルムを製造することができるといえる。 したがって、上記主張はいずれも採用できない。 (3)まとめ 上記(2)のとおりであるから、特許異議申立理由(実施可能要件違反)は、採用すべき理由がない。 第7 むすび 請求項1~6、8~14に係る特許は、いずれも、令和5年4月25日付け取消理由通知書に記載した取消しの理由、及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。また、他に請求項1~6、8~14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、請求項7に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項7に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700042

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