特許異議申立
2021-700039
透過型透明スクリーン、映像表示システムおよび映像表示方法
- 審判番号
- 2021-700039
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-088497
- 登録番号
- 6736958
- 請求日
- 2021年01月14日
- 審決日
- 2022年12月08日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】AGC株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人志賀国際特許事務所
- 【異議申立人】岡本 敏夫
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 濱野 隆
- 審判官 中塚 直樹
- 分類
- P1652.113-YAA(G03B) / P1652.121-YAA(G03B) / P1652.537-YAA(G03B) / P1652.536-YAA(G03B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条、特許法第29条、特許法第120条の8第1項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6736958号発明「透過型透明スクリーン、映像表示システムおよび映像表示方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6736958号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
特許第6736958号の請求項1、3、5及び8に係る特許を維持する。
特許第6736958号の請求項2、4及び7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6736958号(以下「本件特許」という。)に係る特許出願は、平成28年4月26日にされたものであり、令和2年7月20日にその特許権の設定の登録がされ、同年8月5日にその特許掲載公報が発行された。本件特許の特許請求の範囲に記載された請求項の数は8である。
これに対して、令和3年1月14日に特許異議申立人岡本敏夫(以下「申立人」という。)は、証拠として甲1号証~甲19号証を提出し、本件特許の請求項1~5、7~8について特許異議の申立てをした。
その後の経緯は、次のとおりである。
令和3年 3月25日付け:取消理由通知書
同年 5月28日 :訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年 6月10日付け:訂正拒絶理由通知書
同年 7月15日 :意見書、手続補正書の提出(特許権者)
同月16日 :手続補正書の提出(特許権者)
同年 8月18日付け:手続補正指令書(方式)
同年 9月16日 :手続補正書(特許権者)
同年10月28日付け:訂正拒絶理由通知書
同年12月 3日 :意見書、手続補正書の提出(特許権者)
同月23日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和4年 3月 4日 :訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年 4月18日 :意見書の提出(特許異議申立人)
同年 6月24日付け:訂正拒絶理由通知書
同年 7月29日 :意見書、手続補正書の提出(特許権者)
同年 8月22日 :上申書の提出(特許権者)
同年 9月22日付け:取消理由通知書
同年10月12日 :訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
以下、令和4年10月12日に提出された訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。
第2 本件訂正について
1 請求の趣旨
本件訂正に係る請求の趣旨は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求めるものである。
なお、本件訂正により、令和3年5月28日及び令和4年3月4日に提出された訂正請求書による訂正の請求は取り下げられたものとみなされる(特許法120条の5第7項)。
2 本件訂正前の特許請求の範囲の記載
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~8の記載(登録時における特許請求の範囲の記載)は、以下のとおりである。
「【請求項1】
透明樹脂および光散乱材料を含む光散乱層を有する透過型透明スクリーンであって、
前記光散乱材料が、平均1次粒子径100~400nmの無機微粒子であり、該無機微粒子の一部は1次粒子の20個以下が凝集した凝集体となっている凝集粒子を含み、
20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子の個数が、凝集粒子の全個数のうち10%以下であり、
前記透明樹脂の屈折率と、前記無機微粒子の屈折率との差が0.15以上であり、
前記無機微粒子の含有割合が、前記光散乱層の100質量%のうち、0.01~10質量%であり、
ヘーズが、5~45%であり、
全光線透過率が、40%以上である、透過型透明スクリーン。
【請求項2】
前記光散乱層における無機微粒子の含有割合が光散乱層の100質量%のうち、0.01~10質量%である請求項1に記載の透過型透明スクリーン。
【請求項3】
前記光散乱材料が、酸化チタン、酸化ジルコニウムからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1または2に記載の透過型透明スクリーン。
【請求項4】
波長が400nm~480nmの青色光散乱強度(A)と、波長が400nm~700nmの可視光散乱強度(B)との比、A/Bが、0.75~1.25である、請求項1~3のいずれか一項に記載の透過型透明スクリーン。
【請求項5】
前記透明樹脂が、熱可塑性樹脂である、請求項1~4のいずれか一項に記載の透過型透明スクリーン。
【請求項6】
前記透明樹脂が、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、エチレン・酢酸ビニルコポリマーからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の透過型透明スクリーン。
【請求項7】
前記透明樹脂の分子量が、5000~1000000である、請求項5または6に記載の透過型透明スクリーン。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の透過型透明スクリーンと、前記透過型透明スクリーンの第1の面側に設置された投影機とを備えた、映像表示システム。」
3 本件訂正後の特許請求の範囲の記載
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~8の記載(令和4年10月12日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の記載)は、以下のとおりである。下線は訂正箇所である。
「【請求項1】
透明樹脂および光散乱材料を含む光散乱層を有する透過型透明スクリーンであって、
前記光散乱材料が、平均1次粒子径100~400nmの無機微粒子であり、該無機微粒子の一部は1次粒子の20個以下が凝集した凝集体となっている凝集粒子を含み、
20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子の個数が、凝集粒子の全個数のうち10%以下であり、
20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子の個数が、凝集粒子の全個数のうち10%以下であるとは、TEMで撮像した、前記透過型透明スクリーンの任意の10cm角の範囲の9箇所の全てで、20個より多い1次粒子で構成されている凝集粒子の個数が凝集粒子の全個数のうち10%以下であることが観察できることを意味し、
前記無機微粒子の平均粒子径が、464.34nm以上であり、
前記透明樹脂の屈折率と、前記無機微粒子の屈折率との差が0.15以上であり、
前記無機微粒子の含有割合が、前記光散乱層の100質量%のうち、0.01~10質量%であり、
ヘーズが、5~45%であり、
D65光源で測定された、波長が400nm~480nmの青色光散乱強度(A)と、D65光源で測定された、波長が400nm~700nmの可視光散乱強度(B)との比、A/Bが、0.8~1.2であり、
全光線透過率が、40%以上である、透過型透明スクリーン。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
前記光散乱材料が、酸化チタン、酸化ジルコニウムからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載の透過型透明スクリーン。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
前記透明樹脂が、熱可塑性樹脂である、請求項1、3のいずれか一項に記載の透過型透明スクリーン。
【請求項6】
前記透明樹脂が、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、エチレン・酢酸ビニルコポリマーからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1、3、5のいずれか一項に記載の透過型透明スクリーン。
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
請求項1、3、5、6のいずれか一項に記載の透過型透明スクリーンと、前記透過型透明スクリーンの第1の面側に設置された投影機とを備えた、映像表示システム。」
4 本件訂正の内容
本件訂正の内容を請求項ごとに訂正事項として整理すると、以下のとおりである。
なお、本件訂正前の請求項1~8について、請求項2~8は、それぞれ請求項1の記載を直接的又は間接的に引用しているから、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、請求項1~8は、特許法120条の5第4項の規定する一群の請求項である。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を、
「透明樹脂および光散乱材料を含む光散乱層を有する透過型透明スクリーンであって、
前記光散乱材料が、平均1次粒子径100~400nmの無機微粒子であり、該無機微粒子の一部は1次粒子の20個以下が凝集した凝集体となっている凝集粒子を含み、
20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子の個数が、凝集粒子の全個数のうち10%以下であり、
20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子の個数が、凝集粒子の全個数のうち10%以下であるとは、TEMで撮像した、前記透過型透明スクリーンの任意の10cm角の範囲の9箇所の全てで、20個より多い1次粒子で構成されている凝集粒子の個数が凝集粒子の全個数のうち10%以下であることが観察できることを意味し、
前記無機微粒子の平均粒子径が、464.34nm以上であり、
前記透明樹脂の屈折率と、前記無機微粒子の屈折率との差が0.15以上であり、
前記無機微粒子の含有割合が、前記光散乱層の100質量%のうち、0.01~10質量%であり、
ヘーズが、5~45%であり、
D65光源で測定された、波長が400nm~480nmの青色光散乱強度(A)と、D65光源で測定された、波長が400nm~700nmの可視光散乱強度(B)との比、A/Bが、0.8~1.2であり、
全光線透過率が、40%以上である、透過型透明スクリーン。」
に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項3、5、6、8も同様に訂正する)
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を、
「前記光散乱材料が、酸化チタン、酸化ジルコニウムからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載の透過型透明スクリーン。」
に訂正する。
(請求項3の記載を引用する請求項5、6、8も同様に訂正する)
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5を、
「前記透明樹脂が、熱可塑性樹脂である、請求項1、3のいずれか一項に記載の透過型透明スクリーン。」
に訂正する。
(請求項5の記載を引用する請求項6、8も同様に訂正する)
(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6を、
「前記透明樹脂が、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、エチレン・酢酸ビニルコポリマーからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1、3、5のいずれか一項に記載の透過型透明スクリーン。」に訂正する。
(請求項6の記載を引用する請求項8も同様に訂正する)
(7) 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(8) 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8を、
「請求項1、3、5、6のいずれか一項に記載の透過型透明スクリーンと、前記透過型透明スクリーンの第1の面側に設置された投影機とを備えた、映像表示システム。」に訂正する。
(9) 訂正事項9
明細書の段落【0011】を、
「【0011】
本発明は、以下の構成を有する。
[1]透明樹脂および光散乱材料を含む光散乱層を有する透過型透明スクリーンであって、前記光散乱材料が、平均1次粒子径100~400nmの無機微粒子であり、該無機微粒子の一部は1次粒子の20個以下が凝集した凝集体となっている凝集粒子を含み、20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子の個数が、凝集粒子の全個数のうち10%以下であり、20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子の個数が、凝集粒子の全個数のうち10%以下であるとは、TEMで撮像した、前記透過型透明スクリーンの任意の10cm角の範囲の9箇所の全てで、20個より多い1次粒子で構成されている凝集粒子の個数が凝集粒子の全個数のうち10%以下であることが観察できることを意味し、前記無機微粒子の平均粒子径が、464.34nm以上であり、前記透明樹脂の屈折率と、前記無機微粒子の屈折率との差が0.15以上であり、前記無機微粒子の含有割合が、前記光散乱層の100質量%のうち、0.01~10質量%であり、ヘーズが、5~45%であり、D65光源で測定された、波長が400nm~480nmの青色光散乱強度(A)と、D65光源で測定された、波長が400nm~700nmの可視光散乱強度(B)との比、A/Bが、0.8~1.2であり、全光線透過率が、40%以上である、透過型透明スクリーン。
[2](削除)[3]前記光散乱材料が、酸化チタン、酸化ジルコニウムからなる群から選ばれる1種以上である、[1]に記載の透過型透明スクリーン。[4](削除)[5]前記透明樹脂が、熱可塑性樹脂である、[1]、[3]のいずれか1に記載の透過型透明スクリーン。[6]前記透明樹脂が、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、エチレン・酢酸ビニルコポリマーからなる群から選ばれる1種以上である、[1]、[3]、[5]のいずれか1に記載の透過型透明スクリーン。[7](削除)[8]前記[1]、[3]、[5]、[6]のいずれか1に記載の透過型透明スクリーンと、前記透過型透明スクリーンの第1の面側に設置された投影機とを備えた、映像表示システム。」
に訂正する。
(10) 訂正事項10
明細書の段落【0026】を、
「【0026】
屈折率は、ナトリウムランプのd線(波長589nm)を用いて室温で測定したときの値である。」
に訂正する。
5 本件訂正についての当審の判断
(1)訂正の目的
ア 訂正事項1
(ア) 訂正事項1の訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子の個数が、凝集粒子の全個数のうち10%以下であり」という記載を「20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子の個数が、凝集粒子の全個数のうち10%以下であるとは、TEMで撮像した、前記透過型透明スクリーンの任意の10cm角の範囲の9箇所の全てで、20個より多い1次粒子で構成されている凝集粒子の個数が凝集粒子の全個数のうち10%以下であることが観察できることを意味し、」と訂正することを含むところ、この訂正は、「20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子の個数」の測定方法を、TEMによる撮像方法に限定するとともに、「20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子の個数が、凝集粒子の全個数のうち10%以下である[こと]」は、「TEMで撮像した、前記透過型透明スクリーンの任意の10cm角の範囲の9箇所の全てで、20個より多い1次粒子で構成されている凝集粒子の個数が凝集粒子の全個数のうち10%以下であることが観察できることを意味[する]こと」を明確化するものである。したがって、当該訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
(イ) 訂正事項1の訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「無機微粒子」について、「前記無機微粒子の平均粒子径が、464.34nm以上であり、」と限定することを含むものであり、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(ウ) 訂正事項1の訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1において、「D65光源で測定された、波長が400nm~480nmの青色光散乱強度(A)と、D65光源で測定された、波長が400nm~700nmの可視光散乱強度(B)との比、A/Bが、0.8~1.2であり、」と限定することを含むものであり、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(エ) よって、訂正事項1の訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
イ 訂正事項2、4、7
訂正事項2、4及び7の訂正は、それぞれ請求項2、4及び7を削除するものであるから、いずれも特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
ウ 訂正事項3、5、6、8
(ア) 訂正事項3の訂正は、訂正事項2により請求項2を削除したことに伴い、請求項3が引用する請求項を請求項1または2から請求項1に訂正するものであり、多数項を引用している請求項の引用請求項数の削減に該当するから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(イ) 訂正事項5の訂正は、訂正事項2、4により請求項2、4を削除したことに伴い、請求項5が引用する請求項を請求項1~4から請求項1、3に訂正するものであり、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(ウ) 訂正事項6の訂正は、訂正事項2、4により請求項2、4を削除したことに伴い、請求項6が引用する請求項を請求項1~5から請求項1、3、5に訂正するものであり、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(エ) 訂正事項8の訂正は、訂正事項2、4、7により請求項2、4、7を削除したことに伴い、請求項8が引用する請求項を請求項1~7から請求項1、3、5、6に訂正するものであり、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
エ 訂正事項9
訂正事項9の訂正は、訂正事項1~8により特許請求の範囲を訂正したことに伴い、特許請求の範囲の記載と整合させるために、明細書の記載を正すものであるから、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
オ 訂正事項10
訂正事項10の訂正は、本件訂正前の明細書の段落【0026】の「拡散反射率および屈折率は、ナトリウムランプのd線(波長589nm)を用いて室温で測定したときの値である。」との記載から、「拡散反射率および」の文言を削除して「屈折率は、ナトリウムランプのd線(波長589nm)を用いて室温で測定したときの値である。」と訂正するものであり、「拡散反射率」に関する不明瞭な記載を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
(2) 新規事項の追加、特許請求の範囲の実質的拡張・変更
ア 訂正事項1
(ア) 訂正事項1において、「20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子の個数が、凝集粒子の全個数のうち10%以下であるとは、TEMで撮像した、前記透過型透明スクリーンの任意の10cm角の範囲の9箇所の全てで、20個より多い1次粒子で構成されている凝集粒子の個数が凝集粒子の全個数のうち10%以下であることが観察できることを意味し、」と訂正することは、願書に添付された明細書の段落【0053】の以下の記載に基づくものであると認められる。下線は当審において付した。以下同様である。
「【0053】
(中略)
前記凝集粒子は、透過型透明スクリーンの任意の10cm角の範囲を、9箇所を、SEMまたはTEM等で観察することによって確認できる。凝集粒子が、1次粒子の20個以下が凝集した粒子であるとは、前記方法で観察した結果、9箇所の全てで、20個より多い1次粒子で構成されている凝集粒子の個数が凝集粒子の全個数のうち10%以下であることを意味する。凝集粒子の凝集形態は、一次粒子が1列または2列につながった形態、1次粒子が球状に凝集した形態等が挙げられる。凝集粒子の凝集個数を前記範囲となるように制御するには、光散乱材料33を透明樹脂32に溶液状態で分散する方法などで制御することができる。」
(イ) 訂正事項1において、「前記無機微粒子の平均粒子径が、464.34nm以上であり、」と訂正することは、願書に添付された明細書の段落【0105】の【表1】の記載に基づくものであると認められる。
「【0105】
【表1】
[図:0001395168000001.jpg]
」
(ウ) 訂正事項1において、「D65光源で測定された、波長が400nm~480nmの青色光散乱強度(A)と、D65光源で測定された、波長が400nm~700nmの可視光散乱強度(B)との比、A/Bが、0.8~1.2であり、」と訂正することは、願書に添付された明細書の段落【0105】の【表1】の記載及び段落【0104】の記載に基づくものであると認められる。
「【0104】
作製した光散乱シートの全光線透過率、全光線反射率、透過色調YI値を、日本工業規格(JISZ8720:2012)に記載のD65光源を用いて分光光度計で測定した。ヘーズ値は、日本工業規格(JIS K7136)に準拠したヘーズメーターを用いて、日本工業規格(JIS Z8720:2012)に記載のD65光源を用いて測定した。」
(エ) 訂正事項1において、「波長が400nm~480nmの青色光散乱強度(A)と、波長が400nm~700nmの可視光散乱強度(B)との比、A/Bが、0.8~1.2であり」と訂正することは、願書に添付された明細書の段落【0074】の記載に基づくものであると認められる。
「【0074】
スクリーン1は、波長が400~480nmの青色光散乱強度(A)と、波長が400~700nmの可視光散乱強度(B)との比、A/Bが、0.7~1.25が好ましく、0.8~1.2がより好ましい。この範囲であると、背景像の色変化が少なく、かつ投影像の色再現も良い。」
(オ) 前記(ア)~(エ)の検討結果を踏まえると、訂正事項1の訂正は、本件特許の願書に添付された明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
また、訂正事項1の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126第6項の規定に適合する。
イ 訂正事項2、4、7
訂正事項2、4及び7の訂正は、それぞれ請求項2、4及び7を削除するものであるから、いずれも本件特許の願書に添付された明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
また、訂正事項2、4及び7の訂正は、いずれも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126第6項の規定に適合する。
ウ 訂正事項3、5、6、8
訂正事項3、5、6及び8の訂正は、いずれも多数項を引用している請求項の引用請求項数を削減するものであるから、本件特許の願書に添付された明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
また、訂正事項3、5、6及び8の訂正は、いずれも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126第6項の規定に適合する。
エ 訂正事項9
訂正事項9の訂正は、訂正事項1~8により特許請求の範囲を訂正したことに伴い、特許請求の範囲の記載と整合させるために、明細書の記載を正すものであるから、本件特許の願書に添付された明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
また、訂正事項9の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126第6項の規定に適合する。
オ 訂正事項10
訂正事項10の訂正は、明細書の段落【0026】において、「拡散反射率」に関する不明瞭な記載を削除するものであるから、本件特許の願書に添付された明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
また、訂正事項10の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126第6項の規定に適合する。
(3) 独立特許要件
請求項6は特許異議の申立てがされていない請求項であるところ、前記(1)に示したとおり、請求項6に係る訂正は、訂正事項1、3、5及び6により、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするから、訂正後の請求項6について、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する特許法126条7項に規定する要件(以下「独立特許要件」という。)が課されることになる。
当審において、請求項6の訂正拒絶理由を検討したところ、以下に示すとおり、本件訂正により上記訂正拒絶理由は解消しており、請求項6に係る訂正は、独立特許要件を満たすものであると判断した。
ア 請求項6の訂正拒絶理由の概要
令和4年6月24日付けで通知した訂正拒絶理由は、概略以下のとおりである。
(ア) 明確性要件違反
訂正後の請求項6に係る発明は、「波長が400nm~480nmの青色光散乱強度(A)と、波長が400nm~700nmの可視光散乱強度(B)との比、A/Bが、0.8~1.2であり」と特定しているが、「青色光散乱強度(A)」及び「可視光散乱強度(B)」は、どのような光源を使用してどのように測定した値であるか、明細書及び図面の記載を参酌しても不明である。
したがって、訂正後の請求項6に係る発明は、明確でない。
(イ) サポート要件違反
また、「青色光散乱強度(A)」及び「可視光散乱強度(B)」がどのようにして測定した値であるのか不明である以上、「A/Bが0.8~1.2であること」を特定した結果、訂正後の請求項6のその他の特定事項と相まって、どのような課題を解決することができるのか、当業者は、実質的に認識することができない。
したがって、訂正後の請求項6に係る発明は、訂正明細書の発明の詳細な説明に当業者が認識できる程度に実質的に記載された発明であるとはいえない。
(ウ) 実施可能要件、委任省令要件違反
さらに、訂正後の請求項6に係る発明の「青色光散乱強度(A)」及び「可視光散乱強度(B)」について、どのような光源を使用してどのように測定した値であるか不明であるから、明細書及び図面の記載は、発明が解決しようとする課題の解決手段を理解するために必要な事項を記載することにより当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。
イ 独立特許要件についての当審の判断
本件訂正後の請求項6の「波長が400nm~480nmの青色光散乱強度(A)」及び「波長が400nm~700nmの可視光散乱強度(B)」は、明細書の段落【0105】の【表1】に記載されているように、それぞれ「A 400~480nm光拡散反射率(%)」及び「B 400~700nm光拡散反射率(%)」を意味するところ、これらは、本件訂正後は、いずれも「D65光源で測定された」ものであることが特定されているから、D65光源を用いて測定された光散乱強度から、明細書の段落【0025】において定義される「拡散反射率」を求めたものであることが当業者において理解できる。
よって、本件訂正後の請求項6の「青色光散乱強度(A)」及び「可視光散乱強度(B)」が、「D65光源で測定された」「拡散反射率」を意味することは明確になったから、本件訂正後の請求項6の記載は、明確性要件及びサポート要件を充足するものであり、本件訂正後の明細書の発明の詳細な説明の記載も、訂正後の請求項6に係る発明について、実施可能要件及び委任省令要件を充足する。
(4) 小括
前記(1)~(3)において検討した訂正要件についての当審の判断をまとめると、訂正事項1~10の訂正は、いずれも訂正要件を満たすものであるから、本件訂正は適法なものである。
よって、前記結論のとおり、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
第3 当審の判断
1 本件訂正発明について
前記第2において説示したとおり、本件訂正は認められたから、本件特許の請求項1、3、5、6及び8に係る発明(以下、請求項の番号に従い「本件訂正発明1」等という。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1、3、5、6及び8に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1、3、5、6及び8の記載は、前記第2の3に摘記したとおりである。
2 取消理由の概要
本件特許について、令和4年9月22日に特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1) 取消理由1(明確性)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(2) 取消理由2(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(3) 取消理由3(実施可能要件、委任省令要件)
本件特許は、明細書の記載が特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
取消理由1(明確性要件違反)について
請求項1には、「波長が400nm~480nmの青色光散乱強度(A)と、波長が400nm~700nmの可視光散乱強度(B)との比、A/Bが、0.8~1.2であり」と記載されているが、「青色光散乱強度(A)」及び「可視光散乱強度(B)」は、どのような光源を使用してどのように測定した値であるか、明細書及び図面の記載を参酌しても不明である。
したがって、請求項1に係る発明並びに請求項1の記載を引用する請求項3、5及び8に係る発明は、明確でない。
取消理由2(サポート要件違反)について
「青色光散乱強度(A)」及び「可視光散乱強度(B)」がどのようにして測定した値であるのか不明である以上、「A/Bが0.8~1.2であること」を特定した結果、請求項1のその他の特定事項と相まって、どのような課題を解決することができるのか、当業者は、実質的に認識することができない。
したがって、請求項1に係る発明並びに請求項1の記載を引用する請求項3、5及び8に係る発明は、明細書の発明の詳細な説明に当業者が認識できる程度に実質的に記載された発明であるとはいえない。
取消理由3(実施可能要件違反及び委任省令要件違反)について
請求項1に係る発明の「青色光散乱強度(A)」及び「可視光散乱強度(B)」について、どのような光源を使用してどのように測定した値であるか不明であるから、明細書及び図面の記載は、発明が解決しようとする課題の解決手段を理解するために必要な事項を記載することにより当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。
したがって、明細書の発明の詳細な説明の記載は、請求項1、3、5及び8に係る発明について、経済産業省令(特許法施行規則24条の2)で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
3 取消理由についての当審の判断
本件訂正後の請求項1の「波長が400nm~480nmの青色光散乱強度(A)」及び「波長が400nm~700nmの可視光散乱強度(B)」は、明細書の段落【0105】の【表1】に記載されているように、それぞれ「A 400~480nm光拡散反射率(%)」及び「B 400~700nm光拡散反射率(%)」を意味するところ、これらは、本件訂正後は、いずれも「D65光源で測定された」ものであることが特定されているから、D65光源を用いて測定された光散乱強度から、明細書の段落【0025】において定義される「拡散反射率」を求めたものであることが当業者において理解できる。
よって、本件訂正後の請求項1の「青色光散乱強度(A)」及び「可視光散乱強度(B)」が、「D65光源で測定された」「拡散反射率」を意味することは明確になったから、本件訂正後の請求項1の記載は、明確性要件及びサポート要件を充足するものであり、本件訂正後の明細書の発明の詳細な説明の記載も、訂正後の請求項1に係る発明について、実施可能要件及び委任省令要件を充足する。
本件訂正後の請求項3、5及び8に係る発明についても同様である。
したがって、前記取消理由1~3はいずれも解消された。
第4 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由の概要
申立人は、以下の申立理由1~6に示す理由により、請求項1~5、7、8に係る特許は取り消すべきものである旨主張する。
(1) 申立理由1
請求項1~5、7及び8に係る発明は、甲1号証に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当するから、請求項1~5、7及び8に係る特許は、同項の規定に違反してされたものである。
(2) 申立理由2
請求項1、2、5、7及び8に係る発明は、甲7号証に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当するから、請求項1、2、5、7及び8に係る特許は、同項の規定に違反してされたものである。
(3) 申立理由3
請求項1~5、7及び8に係る発明は、甲12号証、及び、甲1号証又は甲7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5、7及び8に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
(4) 申立理由4
請求項3及び4に係る発明は、甲7号証及び甲1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3及び4に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
(5) 申立理由5
本件特許は、下記ア~エに示す理由(以下、それぞれ「申立理由5-1」から「申立理由5-4」までという。)のとおり、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
ア 申立理由5-1
請求項1における「1次粒子の20個以下が凝集した凝集体」及び「20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子」について、例えば、SEM(走査電子顕微鏡)とTEM(透過電子顕微鏡)では観察原理が異なり、「1次粒子の20個以下が凝集した凝集体」及び「20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子」であると認定される範囲が測定方法によって異なるところ、請求項1にはどのような方法で測定するのかについて特定がないから、その測定方法を当業者は理解できず、発明が不明確である。
イ 申立理由5-2
請求項1における「透明樹脂の屈折率」及び「無機微粒子の屈折率」について、屈折率の測定方法にはさまざまなものがあり、測定方法が異なれば屈折率の値が異なるところ、請求項1にはどのような方法で屈折率を測定するのかについて特定がないから、これらの屈折率の測定方法を当業者は理解できず、発明が不明確である。
ウ 申立理由5-3
請求項4における「波長が400nm~480nmの青色光散乱強度(A)と、波長が400nm~700nmの可視光散乱強度(B)との比、A/Bが、0.75~1.25である」ことについて、請求項4にはどのような光源を使用して測定したものであるのか特定がないから、光散乱強度の測定方法を当業者は理解できず、発明が不明確である。
エ 申立理由5-4
請求項7における「前記透明樹脂の分子量が、5000~1000000である」ことについて、樹脂の分子量の示し方は、数平均分子量、重量平均分子量、粘度平均分子量等の複数のものが考えられ、これらは互いに値が異なるところ、請求項7の「透明樹脂の分子量」が、それらのいずれを示すのか特定されていないから、分子量の測定方法を当業者は理解できず、発明が不明確である。
(6) 申立理由6
本件特許は、下記ア及びイに示すとおり(以下、それぞれ「申立理由6-1」及び「申立理由6-2」という。)、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
ア 申立理由6-1
請求項1に係る発明は、「20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子の個数が、凝集粒子の全個数のうち10%以下」であるスクリーンに関する発明であるが、本件特許の明細書には、出願時の技術常識に照らしても、「凝集粒子の全個数のうち10%以下」の範囲内であれば、発明の課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体例又は説明が記載されていないから、請求項1~5、7及び8に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
また、請求項1に係る発明では、無機微粒子の平均1次粒子径が100~400nmであり、無機微粒子の凝集体のうち、20個より多い1次粒子で構成されている凝集粒子の個数が、凝集粒子の全個数のうち10%以下であることが規定されているが、発明の詳細な説明では、その技術的意義について当業者が理解できるように記載されていないから、請求項1~5、7及び8に係る発明と、発明の詳細な説明に発明として記載されたものが、実質的に対応しているとはいえない。
イ 申立理由6-2
請求項1に係る発明では、「前記透明樹脂の屈折率と、前記無機微粒子の屈折率との差が0.15以上」であることが規定されているが、屈折率の差を「0.15以上」とする数値限定について、請求項1~5、7及び8に係る発明と、発明の詳細な説明に発明として記載されたものが、実質的に対応しているとはいえない。
2 申立人が提出した証拠
甲1号証:国際公開第2006/016556号
甲2号証:ナノパーティクルテクノロジーハンドブック、日刊工業新聞社発行
甲3号証:複合材料とフィラー、株式会社シーエムシー出版発行
甲4号証:特開2007-34324号公報
甲5号証:カラーマーキングファクトリー社ホームページ
http://www.presen.co.jp/shop/21_2148.html
甲6号証:杉田エース株式会社ホームページ
https://www.sugicow.com/products/detai4l.php?product_id=233690&dsn_tp=default
甲7号証:特開2006-10819号公報
甲8号証:微粒子の分散と凝集、株式会社東レリサーチセンター発行
甲9号証:Panlite L-1250Yのカタログ、帝人社発行
甲10号証:JIS ハンドブック 26 プラスチック I試験、日本規格協会発行
甲11号証:スガ試験機株式会社ホームページ
https://www.sugatest.co.jp/function/ex2/
甲12号証:特開2011-16951号公報
甲13号証:華陽物産株式会社ホームページ
https://kayo-corp.co.jp/common/pdf/pla_propertylistOl.pdf
甲14号証:DIC株式会社ホームページ
https://www.dic-g1oba1.com/ja/products/epoxy/bpa_solid/
甲15号証:株式会社KDAのホームページ
https://www.kdal969.com/materials/pla_mate_ep2b.html
甲16号証:ユーロフィンイーエージー株式会社のホームページ
http://www.nanoscience.co.jp/knowledge/TEM/knowledge06.html
甲17号証:株式会社UBE科学分析センターのホームページ
https://www.ube-ind.co.jp/usal/documents/s379_520.html
甲18号証:島津製作所ホームページ
https://www.shimadzu.co.jp/products/opt/guide2/index.html
甲19号証:日本分光株式会社ホームページ
https://www.jasco.co.jp/jpn/technique/internet-seminar/cdord/cd6.html
3 当審の判断
(1) 申立理由1について
ア 甲1号証(国際公開第2006/016556号)
(ア) 甲1号証の記載事項
甲1号証には、次の事項が記載されている。下線は当審において付した。以下同様である。
「[0014] 図1~図5は、本発明の透過型スクリーン1の実施の形態を示す断面図である。図示するように、本発明の透過型スクリーン(以下、適宜「スクリーン」という。)1は、光拡散層2または光拡散層2aを備えている。光拡散層2は、透明バインダー21中に光拡散要素22を含有している。光拡散層2aもまた透明バインダー21中に光拡散要素22を含有しているが、透明バインダー21として粘着性を有するものを使用し、光拡散層2a自体が粘着性を有する。」
「[0016] 光拡散層2、2aの透明バインダー21としては、例えば、ガラスや高分子樹脂を用いる。」
「[0022] 相対屈折率を1.25以上とする場合には、光拡散要素22として、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化鉛、酸化インジウムなどの高屈折粒子があげられる。これらの中でも、安価で取扱いが容易である酸化チタンが好適に使用される。
[0023] 光拡散要素22の平均粒子径(気体の場合、気泡の径もしくは中空ビーズの気体部分の径の平均)は、0.1~40μm程度である。また、平均粒子径は、光拡散層2または2aの両表面を平滑にすべく、光拡散層の厚みより小さいことが好ましい。」
「[0036] ヘーズは、光の散乱度合いを示すパラメータである。ヘーズを高くすることにより、視野角は広がるが透視性は低下する。逆にヘーズを低くすると、視野角は狭くなるが透視性は向上する。本実施の形態では、透過型スクリーン全体のヘーズを10~85%、好ましくは25~70%とするものである。透過型スクリーン全体のヘーズが10%より小さい場合には、残り二つの条件を満たしていても、視野角を十分にすることができない。また、ヘーズが85%を超える場合には、残り二つの条件を満たしていても、透視性を十分にすることができない。ここでいう全体のヘーズとは、内部ヘーズ(相対屈折率から生じるヘーズ)と外部ヘーズ(表面凹凸に起因するヘーズ)の合計である。」
「[0038] 本発明の透過型スクリーンにおいては、全光線透過率(JIS K7361-1:1997)が70%以上であることが好ましい。」
「[0041] また、本発明の透過型スクリーン1は、図6のように、プロジェクター7と視認者8との間に配置されて使用される。視認者8側の面には、蛍光灯等の映り込みを防止するため、上述した反射防止層を備えることが好ましい。」
「[0049] 以下、実施例により本発明を更に説明する。なお、「部」、「%」は特に示さない限り、重量基準とする。」
「[0054][実施例4]
厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラーT-60:東レ社)の一方の面に、下記組成の光拡散層塗布液bを塗布し、乾燥することにより厚み45μmの光拡散層を形成した。光拡散層中の透明バインダーの屈折率は1.56であった。次いで、光拡散層上に、下記組成の粘着層塗布液cを塗布し、乾燥することにより厚み10μmの光拡散層を形成した。次いで、粘着層上に上記同様のポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り合わせ、実施例4の透過型スクリーンを得た。
[0055]<光拡散層塗布液b>
・ポリエステル系樹脂 25部
(ケミット1249:東レ社、固形分100%)
・酸化チタン 0.15部
(KA-20:チタン工業社)
(屈折率2.52、平均粒径0.4μm)
・酢酸エチル 5部
・トルエン 5部」
「[0068] 実施例1~6および比較例1~8で得られた透過型スクリーンの「相対屈折率」、両表面の「算術平均粗さ」、「ヘーズ」を表1に示す。なお、比較例3、4においては、表の右側の数値が、ハードコート層、光拡散層の算術平均粗さを示す。また、比較例3、4においては、ハードコート層、光拡散層側から光を入射してヘーズを測定した。
[0069][表1]
[図:0001395168000002.jpg]
」
「[図1]
[図:0001395168000003.jpg]
」
「[図6]
[図:0001395168000004.jpg]
」
(イ) 甲1発明の認定
前記(ア)において摘記した事項を総合すると、甲1号証には、次のとおりの発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
[甲1発明]
「プロジェクター7と視認者8との間に配置されて使用される透過型スクリーン1であって([0041]、図6)、
前記透過型スクリーン1は光拡散層2を備え、前記光拡散層2は透明バインダー21中に光拡散要素22を含有し([0014]、図1)、
前記透明バインダー21は、屈折率1.56のポリエステル系樹脂であるケミット1249であり、([0016]、[0054]、[0055])、
前記光拡散要素22は、屈折率2.52で平均粒径0.4μmの酸化チタンであるKA-20であり([0022]、[0023]、[0055])、
前記光拡散層2は、重量基準で25部の前記ポリエステル系樹脂であるケミット1249、0.15部の前記酸化チタンであるKA-20、5部の酢酸エチル、5部のトルエンからなる光拡散層塗布液bを塗布し、乾燥することにより形成され([0054]、[0055])、
前記透過型スクリーン1全体のヘーズは、39.1%であり([0036]、[0068]、[0069])、
前記透過型スクリーン1の全光線透過率は70%以上であることが好ましい([0038])、
透過型スクリーン1。」
イ 本件訂正発明1と甲1発明の対比・判断
(ア) 対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
a 甲1発明の「透過型スクリーン1」及び「光拡散層2」は、それぞれ、本件訂正発明1の「透過型透明スクリーン」及び「光散乱層」に相当する。
b 甲1発明の「透明バインダー21」は、「ポリエステル系樹脂であるケミット1249」が用いられているから、本件訂正発明1の「透明樹脂」に相当する。
c 甲1発明の「光拡散要素22」は、本件訂正発明1の「光散乱材料」に相当する。そして、甲1発明の「光拡散要素22」には「平均粒径0.4μm(当合議体注:400nmに相当)の酸化チタンであるKA-20」が用いられているところ、ここでいう「平均粒径」とは、粒子が凝集していない状態における「平均1次粒子径」を示すものと認められ、かつ「酸化チタン」は無機材料である。
よって、本件訂正発明1と甲1発明は、「前記光散乱材料が、平均1次粒子径100~400nmの無機微粒子」である点で共通する。
d 甲1発明は、「透明バインダー21」として「屈折率1.56のポリエステル系樹脂であるケミット1249」が用いられており、「光拡散要素22」として「屈折率2.52で平均粒径0.4μmの酸化チタンであるKA-20」が用いられているところ、「透明バインダー21」の屈折率と「光拡散要素22」の屈折率の差は、2.52-1.56=0.96である。
よって、本件訂正発明1と甲1発明は、「前記透明樹脂の屈折率と、前記無機微粒子の屈折率との差が0.15以上」である点で共通する。
e 甲1発明は、「前記光拡散層2は、重量基準で25部の前記ポリエステル系樹脂、0.15部の前記酸化チタン、5部の酢酸エチル、5部のトルエンからなる光拡散層塗布液bを塗布し、乾燥することにより形成され」たものであるところ、酢酸エチルとトルエンは溶媒であるから、塗布し乾燥した後に得られる「光拡散層2」に含まれるのは、重量基準で25部のポリエステル系樹脂と0.15部の酸化チタンのみである。
そこで、光拡散層2における酸化チタンの含有割合を計算すると、[0.15/(25+0.15)]×100≒0.60質量%であるから、本件訂正発明1と甲1発明は、「前記無機微粒子の含有割合が、前記光散乱層の100質量%のうち、0.01~10質量%」である点で共通する。
f 甲1発明は、「前記透過型スクリーン1全体のヘーズ」が「39.1%」である。よって、本件訂正発明1と甲1発明は、「ヘーズが、5~45%」である点で共通する。
g 甲1発明の「光拡散要素22」は「平均粒径0.4μmの酸化チタンであるKA-20」であるところ、光拡散要素22の平均粒径と可視光の波長が同程度であるので、「光散乱層2」における光の散乱は、散乱強度に波長依存性がないミー散乱が支配的であると認められる。そして、ミー散乱が支配的であると、青色光散乱強度と可視光散乱強度は同程度となるから、本件訂正発明1と甲1発明は、「D65光源で測定された、波長が400nm~480nmの青色光散乱強度(A)と、D65光源で測定された、波長が400nm~700nmの可視光散乱強度(B)との比、A/Bが、0.8~1.2であ[る]」点で共通する。
h 甲1発明は、「前記透過型スクリーン1の全光線透過率は70%以上であることが好ましい」ものである。よって、本件訂正発明1と甲1発明は、「全光線透過率が、40%以上」である点で共通する。
(イ) 一致点及び相違点
前記(ア)の対比の結果をまとめると、本件訂正発明1と甲1発明は、以下の一致点Aにおいて一致し、以下の相違点Aにおいて相違する。
a 一致点A
「透明樹脂および光散乱材料を含む光散乱層を有する透過型透明スクリーンであって、
前記光散乱材料が、平均1次粒子径100~400nmの無機微粒子であり、
前記透明樹脂の屈折率と、前記無機微粒子の屈折率との差が0.15以上であり、
前記無機微粒子の含有割合が、前記光散乱層の100質量%のうち、0.01~10質量%であり、
ヘーズが、5~45%であり、
D65光源で測定された、波長が400nm~480nmの青色光散乱強度(A)と、D65光源で測定された、波長が400nm~700nmの可視光散乱強度(B)との比、A/Bが、0.8~1.2であり、
全光線透過率が、40%以上である、透過型透明スクリーン。」
b 相違点A
本件訂正発明1では、
「該無機微粒子の一部は1次粒子の20個以下が凝集した凝集体となっている凝集粒子を含み、
20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子の個数が、凝集粒子の全個数のうち10%以下であり、
20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子の個数が、凝集粒子の全個数のうち10%以下であるとは、TEMで撮像した、前記透過型透明スクリーンの任意の10cm角の範囲の9箇所の全てで、20個より多い1次粒子で構成されている凝集粒子の個数が凝集粒子の全個数のうち10%以下であることが観察できることを意味し、
前記無機微粒子の平均粒子径が、464.34nm以上であ[る]」
のに対して、甲1発明では、「光拡散要素22」である「酸化チタン」の平均粒径が0.4μmであり、「透明バインダー21」中においてどの程度凝集ないし分散しているか不明である点。
(ウ) 判断
本件訂正発明1は、前記相違点Aにおいて甲1発明と相違するから、本件訂正発明1は、甲1号証に記載された発明ではない。
本件訂正発明3、5、8についても、少なくとも前記相違点Aにおいて甲1発明と相違するから、本件訂正発明3、5、8は、甲1号証に記載された発明ではない。
ウ 申立理由1に係る申立人の主張について
(ア) 申立人の主張の概要
微粒子の凝集は、微粒子の粒子径に依存し、ナノ粒子の場合に格段に凝集が起きやすいことは、技術常識である(甲2号証参照)。
また、フィラーの粒径が減少するにつれて二次凝集を起こしやすくなること、粒径の減少とともに、粒子間距離が急激に減少すること、その例として、粒径0.1μm(100nm)程度で急激に減少することも、技術常識である(甲3号証参照)。
本件訂正発明1の「該無機微粒子の一部は1次粒子の20個以下が凝集した凝集体となっている凝集粒子を含み、20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子の個数が、凝集粒子の全個数のうち10%以下であ[る]」ことは、単に平均1次粒子径100~400nmの無機微粒子を用いたことによる結果を規定したにすぎないから、上記技術常識を踏まえると、甲1発明(甲1号証の実施例4)の酸化チタン(1次粒子の平均粒径0.4μm)も、「該無機微粒子の一部は1次粒子の20個以下が凝集した凝集体となっている凝集粒子を含み、20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子の個数が、凝集粒子の全個数のうち10%以下であり」という構成を満たしている。
(イ) 申立人の主張に対する当審の判断
申立人が主張する技術常識は、1次粒子径のオーダーによって凝集の程度が異なり、100nm程度で急激に凝集が起きやすくなることを示すにとどまり、例えば、1次粒子の平均粒径が0.4μm(=400nm)の場合に、凝集状態が具体的にどの程度のものになるかまでを教示するものではないから、上記技術常識を考慮しても、甲1発明(甲1号証の実施例4)の酸化チタン(1次粒子の平均粒径0.4μm)の凝集状態が具体的にどの程度であるか不明であることに変わりはない。
したがって、甲1発明が、「該無機微粒子の一部は1次粒子の20個以下が凝集した凝集体となっている凝集粒子を含み、20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子の個数が、凝集粒子の全個数のうち10%以下であ[る]」という構成を満たしているとまではいえない。
同様に、甲1発明が、「前記無機微粒子の平均粒子径が、464.34nm以上であ[る]」という構成も満たしているとまではいえない。
よって、申立理由1に係る申立人の主張を採用することはできない。
エ 小括
以上のとおりであるから、申立理由1(より正確には、申立理由1のうち、本件訂正により削除されていない請求項である請求項1、3、5及び8に係る特許についてのもの)は、理由がない。
なお、申立理由1のうち、請求項2、4、7に係る特許についてのものは、本件訂正により削除された請求項に対するものであり、当該申立てに係る特許が存在しないこととなったため、不適法な特許異議申立てとなった。
(2) 申立理由2について
ア 甲7号証(特開2006-10819号公報)
(ア) 甲7号証の記載事項
甲7号証には、次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、照明カバー、照明看板、液晶ディスプレイのバックライト光拡散板やバックライト導光板、透過型スクリーン等の光の散乱を目的とした部材に好適な光拡散性樹脂組成物に関する。」
「【0053】
[合成例1(球状疎水性シリカ微粒子の合成)]
攪拌機と、滴下ロートと、温度計とを備えた3リットルのガラス製反応器に、メタノール623.7gと、水38.9gと、28質量%アンモニア水52.3gとを添加して混合した。この混合溶液を20℃で攪拌しながら、テトラメトキシシラン1163.7g(7.65モル)と、5.48質量%アンモニア水418.1gとを同時に添加開始し、テトラメトキシシランは6時間、アンモニア水は5時間かけて滴下した。テトラメトキシシラン滴下完了後も0.5時間攪拌を続けて加水分解および縮合反応を行い、親水性シリカ微粒子分散液(懸濁液)を得た。この分散液に、室温で、ヘキサメチルジシラザン184.7g(1.14モル)を添加した後、60℃に加熱し、3時間反応させて、親水性シリカ微粒子の表面をトリメチルシリル化した。次いで、溶媒を減圧下で留去することにより、1次粒子の平均粒径0.3μmの球状疎水性シリカ微粒子1を540g得た。」
「【0060】
[実施例6~10、比較例3~4]
ポリカーボネート(商品名:パンライトL-1250、帝人化成株式会社製)50.0gおよび表1に示した微粒子を表1に示した配合量で、二軸混練機(商品名:LABO PLASTOMILL、株式会社東洋精機製作所製)に投入し、230℃、30rpmの条件で5分間混合した。得られた混合物をプレス機(庄司鉄工株式会社製)で、240℃の条件で厚さ2.7mmに成型することにより、試験シート6~10およびC3~C4を作製した。これらの試験シート6~10およびC3~C4を用いて、濁度計(曇り度計)(商品名:NDH2000、日本電色工業株式会社製)により、全光透過率および光拡散透過率を測定した。測定結果を表2に示す。」
(当審注:「ポリカーボネート(商品名:パンライトL-1250、帝人化成株式会社製)50.0gおよび表1に示した微粒子を表1に示した配合量で」という記載における「表1」が「表2」の誤記であることは文脈から明らかであり、正しくは「ポリカーボネート(商品名:パンライトL-1250、帝人化成株式会社製)50.0gおよび表2に示した微粒子を表2に示した配合量で」であると認められる。)
「【0061】
【表1】
[図:0001395168000005.jpg]
【0062】
【表2】
[図:0001395168000006.jpg]
」
(イ) 甲7発明の認定
前記(ア)において摘記した事項を総合すると、甲7号証には、次のとおりの発明(以下「甲7発明」という。)が記載されていると認められる。
[甲7発明]
「透過型スクリーン等の光の散乱を目的とした部材に好適な光拡散性樹脂組成物であって、(【0001】)
1次粒子の平均粒径0.3μmの球状疎水性シリカ微粒子1を用いて、(【0053】)
ポリカーボネート(商品名:パンライトL-1250、帝人化成株式会社製)50.0g及び球状疎水性シリカ微粒子1を実施例6では1.50g、実施例7では0.25gの配合量で、二軸混練機(商品名:LABO PLASTOMILL、株式会社東洋精機製作所製)に投入し、230℃、30rpmの条件で5分間混合し、得られた混合物をプレス機(庄司鉄工株式会社製)で、240℃の条件で厚さ2.7mmに成型することにより、試験シート6及び7を作製し、これらの試験シート6及び7を用いて、濁度計(曇り度計)(商品名:NDH2000、日本電色工業株式会社製)により、全光透過率および光拡散透過率を測定したところ、実施例6では全光透過率84%、光拡散透過率22%、実施例7では全光透過率88%、光拡散透過率15%の測定結果が得られる、(【0060】、【表2】の実施例6及び実施例7)
光拡散性樹脂組成物。」
イ 本件訂正発明1と甲7発明の対比・判断
(ア) 対比
本件訂正発明1と甲7発明を対比すると、本件訂正発明1と甲7発明は、以下の一致点Bにおいて一致し、以下の相違点B1~B3において相違する。
なお、ヘーズについては、(光拡散透過率/全光透過率)×100(単位:%)として計算すると、
甲7発明の実施例6のヘーズは(22/84)×100=26%であり、
甲7発明の実施例7のヘーズは(15/88)×100=17%であるため、
ヘーズについては一致点として認定した。
a 一致点B
「透明樹脂および光散乱材料を含む光散乱層を有する透過型透明スクリーンであって、
前記光散乱材料が、平均1次粒子径100~400nmの無機微粒子であり、
前記無機微粒子の含有割合が、前記光散乱層の100質量%のうち、0.01~10質量%であり、
ヘーズが、5~45%であり、
全光線透過率が、40%以上である、透過型透明スクリーン。」
b 相違点
(a) 相違点B1
本件訂正発明1では、
「該無機微粒子の一部は1次粒子の20個以下が凝集した凝集体となっている凝集粒子を含み、
20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子の個数が、凝集粒子の全個数のうち10%以下であり、
20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子の個数が、凝集粒子の全個数のうち10%以下であるとは、TEMで撮像した、前記透過型透明スクリーンの任意の10cm角の範囲の9箇所の全てで、20個より多い1次粒子で構成されている凝集粒子の個数が凝集粒子の全個数のうち10%以下であることが観察できることを意味し、
前記無機微粒子の平均粒子径が、464.34nm以上であ[る]」のに対して、甲7発明では、1次粒子の平均粒径0.3μmの球状疎水性シリカ微粒子1の一部がどの程度凝集体となっているか不明である点。
(b) 相違点B2
本件訂正発明1では、「前記透明樹脂の屈折率と、前記無機微粒子の屈折率との差が0.15以上であ[る]」のに対して、甲7発明では、ポリカーボネート(商品名:パンライトL-1250、帝人化成株式会社製)の屈折率と、球状疎水性シリカ微粒子1の屈折率との差がいくらであるか不明である点。
(c) 相違点B3
本件訂正発明1では、「D65光源で測定された、波長が400nm~480nmの青色光散乱強度(A)と、D65光源で測定された、波長が400nm~700nmの可視光散乱強度(B)との比、A/Bが、0.8~1.2であ[る]」のに対して、甲7発明では、試験シート6及び7について、D65光源で測定された、波長が400nm~480nmの青色光散乱強度と、D65光源で測定された、波長が400nm~700nmの可視光散乱強度との比が、いくらであるか不明である点。
(イ) 判断
本件訂正発明1は、前記相違点B1~B3において甲7発明と相違するから、本件訂正発明1は、甲7号証に記載された発明ではない。
本件訂正発明5、8についても、少なくとも前記相違点B1~B3において甲7発明と相違するから、本件訂正発明5、8は、甲7号証に記載された発明ではない。
ウ 申立理由2に係る申立人の主張について
(ア) 申立人の主張の概要
熱可塑性樹脂と微粒子を押出機で混練し、シート状に成形した場合にも、微粒子の凝集は、微粒子の粒子径に依存し、ナノ粒子の場合に格段に凝集が起きやすいことは、技術常識である(甲2、3、8号証参照)。
本件訂正発明1の「該無機微粒子の一部は1次粒子の20個以下が凝集した凝集体となっている凝集粒子を含み、20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子の個数が、凝集粒子の全個数のうち10%以下であ[る]」ことは、単に平均1次粒子径100~400nmの無機微粒子を用いたことによる結果を規定したにすぎないから、上記技術常識を踏まえると、甲7発明(甲7号証の実施例6及び7)のシリカ微粒子(1次粒子の平均粒径0.3μm)を含む試験シート6及び7も、「該無機微粒子の一部は1次粒子の20個以下が凝集した凝集体となっている凝集粒子を含み、20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子の個数が、凝集粒子の全個数のうち10%以下であり」という構成を満たしている。
(イ) 申立人の主張に対する当審の判断
申立人が主張する技術常識は、例えば、1次粒子の平均粒径が0.3μmの場合に、凝集状態が具体的にどの程度のものになるかを教示するものではないから、上記技術常識を考慮しても、甲7発明(甲7号証の実施例6及び7)のシリカ微粒子(1次粒子の平均粒径0.3μm)を含む試験シート6及び7における凝集状態が具体的にどの程度であるか不明であることに変わりはない。
したがって、甲7発明が、「該無機微粒子の一部は1次粒子の20個以下が凝集した凝集体となっている凝集粒子を含み、20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子の個数が、凝集粒子の全個数のうち10%以下であ[る]」という構成を満たしているとまではいえない。
同様に、甲7発明が、「前記無機微粒子の平均粒子径が、464.34nm以上であ[る]」という構成も満たしているとまではいえない。
よって、申立理由2に係る申立人の主張を採用することはできない。
エ 小括
以上のとおりであるから、申立理由2(より正確には、申立理由2のうち、本件訂正により削除されていない請求項である請求項1、5及び8に係る特許についてのもの)は、理由がない。
なお、申立理由2のうち、請求項2、7に係る特許についてのものは、本件訂正により削除された請求項に対するものであり、当該申立てに係る特許が存在しないこととなったため、不適法な特許異議申立てとなった。
(3) 申立理由3について
ア 甲12号証(特開2011-16951号公報)
(ア) 甲12号証の記載事項
甲12号証には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
導光シート上に設けられる接着シートであって、
前記接着シートが、透明接着剤層中に白色微粒子を含有する光拡散接着剤層を有し、
前記接着シート表面と垂直方向から測定される可視光透過率が75%以上であり、
拡散透過率が、5~35%である光拡散接着シート。」
「【0001】
本発明は、携帯電話や携帯情報端末等のボタン操作部に使用されるキートップ等の透光性部材を、シート側方からのバックライト光を伝播させる導光シート上に固定する接着シート、導光シート上に当該接着シートが設けられた光拡散導光シート、および、当該光拡散導光シート上にキートップが設けられたキーシートに関する発明である。」
「【0017】
[光拡散接着シート]
本発明の光拡散接着シートは、透明接着剤層中に白色微粒子を含有する光拡散接着剤層を有し、接着シート表面と垂直方向から測定される可視光透過率が75%以上であり、同方向から測定される拡散透過率が5~35%の接着シートであり、透明/半透明な樹脂フィルム等から形成される導光シート上に設けられる接着シートであり、好適には導光シートと透光性部材とを固定する接着シートである。」
「【0020】
光拡散接着シートの拡散透過率は、JIS-K-7136に準拠し、JIS-K-7136により定義・測定されるヘーズに、JIS-K-7361に準拠し測定される全光線透過率を乗じ、さらに100で除して得られる数値である。すなわち、光拡散接着シート表面の垂直方向から通過する透過光のうち、前方散乱によって、入射光から0.044rad(2.5°)以上それた透過光の百分率である。当該拡散透過率は、例えば、村上色彩技術研究所製HR-100で測定される」
「【0027】
[光拡散接着剤層]
本発明に使用する光拡散接着剤層は、透明接着剤層中に白色微粒子を含有する接着剤層である。光拡散接着剤層中の白色微粒子の含有量は、光拡散接着剤層の面積1m2あたりに占める白色微粒子体積含有量が0.005~0.1cm3であることが好ましく、より好ましくは0.01~0.05cm3である。白色微粒子の含有量が当該範囲上限以下とすることで、シート側方から導入された光を均一に拡散することが容易になり、光拡散接着シートを垂直方向から視認した際の照光の部分的なムラが生じ難くなる。白色微粒子の含有量が当該範囲下限以上であると光拡散性を付与しやすくなり、好適な視認性が得られる。
配合量は、使用する白色微粒子の粒子径等に応じて、上記含有量範囲となるよう適宜調整すればよいが、接着性能の低下を抑制するため、光拡散接着剤層中の20質量%以下の含有量することが好ましい。
【0028】
[白色微粒子]
前記光拡散接着剤層に含有される白色微粒子の材質は特に制限されるものではないが、無機微粒子を用いることが好ましい。前記無機微粒子は例えば、酸化チタン(チタン白)、酸化亜鉛、鉛白(2PbCO3、Pb(OH)2)、などが上げられるが、好ましくは前記無機微粒子として酸化チタンを微粒子としてものが用いられる。前記材料を用いることで、粒径のコントロールが容易になり、透明接着剤層中への分散も比較的容易になり、可視光透過率および拡散透過率の光学物性のコントロールもしやすくなる。
【0029】
前記光拡散接着剤層に含有される白色微粒子の平均粒子径は0.1~50μmであることが好ましい。また、前記光拡散接着剤層の厚さに対する前記白色微粒子の粒子径の比が1/2以下であることが好ましく、より好ましくは1/3であり、さらに好ましくは1/4である。当該範囲の粒子径の白色微粒子を用いることで光拡散接着剤層の表面に白色微粒子の凹凸が形成されることを防ぎ、平滑な光拡散接着剤層としやすくなる。
【0030】
[透明接着剤層]
前記光拡散接着剤層に用いられる透明接着剤層を形成する接着剤組成物はシート状に形成できるものであれば、分類は特に制限されず使用できる。たとえば、粘着剤(感圧接着剤とも言う)、湿気硬化型接着剤、感熱接着剤(熱硬化型および熱可塑型)、UV硬化型接着剤などの分類が上げられる、接着固定に使用できるもので透明であれば接着剤の種類は特に制限されず使用できる。なお、キートップ固定用として用いる場合には、感熱接着剤組成物を用いることが好ましく、熱可塑型感熱接着剤組成物を用いることがより好ましい。前記感熱接着剤組成物を用いることで、キートップの接着工程に要する時間を短縮でき、また、十分な接着強度を確保しやすくなるため好ましい。」
「【0076】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明する。なお実施例および比較例における部との記載は質量部を表し、用いた原料の質量部は揮発成分を除く固形分の質量部とする。
【0077】
(実施例1)
ポリエステルとしてバイロンBX10SS(Mn=21,000、Tg=-18℃、東洋紡績株式会社製)62.1部と、ポリエステルウレタンとしてバイロンUR1350(Mn=36,000、Tg=43℃、東洋紡績株式会社製)13.7部と、エポキシ樹脂としてエピクロン1055(Mn=900、DIC株式会社製)24.2部をメチルエチルケトンとトルエンの質量比が1:1である混合溶剤を用いて、組成物中の固形分量が35%となるように調整した。この接着剤組成物(固形分)中の濃度が0.35w%となるように二酸化チタン微粒子JR-301(平均粒径0.3μm、テイカ株式会社)を添加しペイントコーディネーターを用いて10分間混合攪拌した。この組成物にイソシアネート化合物としてバーノックDN980(ヘキサメチレンジイソシアネート型、DIC株式会社製)3.2部を添加し10分攪拌した後、1時間放置して泡抜けさせた。このように作成した感熱接着剤組成物を棒状の金属アプリケータを用いて、シリコーン化合物で片面を剥離処理した厚さ75μmのPETフィルムの剥離処理面上に乾燥後の厚さが30μmになるように塗工し、100℃の乾燥機に5分間投入し乾燥した後、シリコーン化合物で片面を剥離処理した38μmのPETフィルムを貼り合わせた。その後、40℃で3日間放置し、熱接着シートを得た。
【0078】
(実施例2)
二酸化チタン微粒子の濃度が0.07w%に変更した以外は実施例1と同様にして熱接着シートを得た。
【0079】
(実施例3)
二酸化チタン微粒子の濃度を0.70w%に変更した以外は実施例1と同様にして熱接着シートを得た。
【0080】
(実施例4)
二酸化チタン微粒子の濃度を1.05w%に変更し、乾燥後の接着シート厚みが10μmに変更した以外は実施例1と同様にして熱接着シートを得た。
【0081】
(実施例5)
二酸化チタン微粒子の濃度を0.18w%に変更し、乾燥後の接着シート厚みが60μmに変更した以外は実施例1と同様にして熱接着シートを得た。
【0082】
(実施例6)
二酸化チタン微粒子の濃度を0.12w%に変更し、乾燥後の接着シート厚みが90μmに変更した以外は実施例1と同様にして熱接着シートを得た。」
「【0093】
【表1】
[図:0001395168000007.jpg]
」
(イ) 甲12発明の認定
前記(ア)において摘記した事項を総合すると、甲12号証には、次のとおりの発明(以下「甲12発明」という。)が記載されていると認められる。
[甲12発明]
「導光シート上に設けられる接着シートであって、前記接着シートが、透明接着剤層中に白色微粒子を含有する光拡散接着剤層を有し、前記接着シート表面と垂直方向から測定される可視光透過率が75%以上であり、拡散透過率が、5~35%である光拡散接着シートであって、(【請求項1】)
携帯電話や携帯情報端末等のボタン操作部に使用されるキートップ等の透光性部材を、シート側方からのバックライト光を伝播させる導光シート上に固定するためのものであり、(【0001】)
光拡散接着シートは、透明接着剤層中に白色微粒子を含有する光拡散接着剤層を有し、接着シート表面と垂直方向から測定される可視光透過率が75%以上であり、同方向から測定される拡散透過率が5~35%の接着シートであり、透明/半透明な樹脂フィルム等から形成される導光シート上に設けられる接着シートであり、好適には導光シートと透光性部材とを固定する接着シートであり、(【0017】)
光拡散接着シートの拡散透過率は、JIS-K-7136に準拠し、JIS-K-7136により定義・測定されるヘーズに、JIS-K-7361に準拠し測定される全光線透過率を乗じ、さらに100で除して得られる数値であり、(【0020】)
光拡散接着剤層は、透明接着剤層中に白色微粒子を含有する接着剤層であり、(【0027】)
前記光拡散接着剤層に含有される白色微粒子の材質は無機微粒子として酸化チタンが用いられ、(【0028】)
前記光拡散接着剤層に含有される白色微粒子の平均粒子径は0.1~50μmであることが好ましく、(【0029】)
実施例1は、ポリエステルとしてバイロンBX10SS(Mn=21,000、Tg=-18℃、東洋紡績株式会社製)62.1部と、ポリエステルウレタンとしてバイロンUR1350(Mn=36,000、Tg=43℃、東洋紡績株式会社製)13.7部と、エポキシ樹脂としてエピクロン1055(Mn=900、DIC株式会社製)24.2部をメチルエチルケトンとトルエンの質量比が1:1である混合溶剤を用いて、組成物中の固形分量が35%となるように調整し、この接着剤組成物(固形分)中の濃度が0.35w%となるように二酸化チタン微粒子JR-301(平均粒径0.3μm、テイカ株式会社)を添加しペイントコーディネーターを用いて10分間混合攪拌し、この組成物にイソシアネート化合物としてバーノックDN980(ヘキサメチレンジイソシアネート型、DIC株式会社製)3.2部を添加し10分攪拌した後、1時間放置して泡抜けさせ、このように作成した感熱接着剤組成物を棒状の金属アプリケータを用いて、シリコーン化合物で片面を剥離処理した厚さ75μmのPETフィルムの剥離処理面上に乾燥後の厚さが30μmになるように塗工し、100℃の乾燥機に5分間投入し乾燥した後、シリコーン化合物で片面を剥離処理した38μmのPETフィルムを貼り合わせ、その後、40℃で3日間放置し、熱接着シートを得たものであって、全光線透過率83.1%、拡散透過率18.2%であり、(【0077】、【0093】【表1】実施例1)
実施例2は、二酸化チタン微粒子の濃度が0.07w%に変更した以外は実施例1と同様にして熱接着シートを得たものであって、全光線透過率88.1%、拡散透過率5.5%であり、(【0078】、【0093】【表1】実施例2)
実施例3は、二酸化チタン微粒子の濃度を0.70w%に変更した以外は実施例1と同様にして熱接着シートを得たものであって、全光線透過率77.6%、拡散透過率31.1%であり、(【0079】、【0093】【表1】実施例3)
実施例4は、二酸化チタン微粒子の濃度を1.05w%に変更し、乾燥後の接着シート厚みが10μmに変更した以外は実施例1と同様にして熱接着シートを得たものであって、全光線透過率83.1%、拡散透過率18.2%であり、(【0080】、【0093】【表1】実施例4)
実施例5は、二酸化チタン微粒子の濃度を0.18w%に変更し、乾燥後の接着シート厚みが60μmに変更した以外は実施例1と同様にして熱接着シートを得たものであって、全光線透過率83.1%、拡散透過率18.2%であり、(【0081】、【0093】【表1】実施例5)
実施例6は、二酸化チタン微粒子の濃度を0.12w%に変更し、乾燥後の接着シート厚みが90μmに変更した以外は実施例1と同様にして熱接着シートを得たものであって、全光線透過率83.1%、拡散透過率18.2%である、(【0082】、【0093】【表1】実施例6)
光拡散接着シート。」
イ 本件訂正発明1と甲12発明の対比・判断
(ア) 対比
本件訂正発明1と甲12発明を対比すると、本件訂正発明1と甲12発明は、以下の一致点Cにおいて一致し、以下の相違点C1~C4において相違する。
なお、ヘーズについては、(拡散透過率/全光線透過率)×100(単位:%)として計算すると、
甲12発明の実施例1、4~6のヘーズは
(18.2/83.1)×100=21.9%であり、
甲12発明の実施例2のヘーズは
(5.5/88.1)×100=6.2%であり、
甲12発明の実施例3のヘーズは
(31.1/77.6)×100=40.1%であるため、
ヘーズについては一致点として認定した。
a 一致点C
「透明樹脂および光散乱材料を含む光散乱層を有する透明部材であって、
前記光散乱材料が、平均1次粒子径100~400nmの無機微粒子であり、
前記無機微粒子の含有割合が、前記光散乱層の100質量%のうち、0.01~10質量%であり、
ヘーズが、5~45%であり、
全光線透過率が、40%以上である、透明部材。」
b 相違点
(a) 相違点C1
本件訂正発明1では、透明部材が「透過型透明スクリーン」であるのに対して、甲12発明では、透明部材が「光拡散接着シート」である点。
(b) 相違点C2
本件訂正発明1では、
「該無機微粒子の一部は1次粒子の20個以下が凝集した凝集体となっている凝集粒子を含み、
20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子の個数が、凝集粒子の全個数のうち10%以下であり、
20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子の個数が、凝集粒子の全個数のうち10%以下であるとは、TEMで撮像した、前記透過型透明スクリーンの任意の10cm角の範囲の9箇所の全てで、20個より多い1次粒子で構成されている凝集粒子の個数が凝集粒子の全個数のうち10%以下であることが観察できることを意味し、
前記無機微粒子の平均粒子径が、464.34nm以上であ[る]」のに対して、甲12発明では、二酸化チタン微粒子JR-301(平均粒径0.3μm、テイカ株式会社)の一部がどの程度凝集体となっているか不明である点。
(c) 相違点C3
本件訂正発明1では、「前記透明樹脂の屈折率と、前記無機微粒子の屈折率との差が0.15以上であ[る]」のに対して、甲12発明では、ポリエステル(バイロンBX10SS)、ポリエステルウレタン(バイロンUR1350)、エポキシ樹脂(エピクロン1055)の屈折率と、二酸化チタン微粒子JR-301の屈折率との差がいくらであるか不明である点。
(d) 相違点C4
本件訂正発明1では、「D65光源で測定された、波長が400nm~480nmの青色光散乱強度(A)と、D65光源で測定された、波長が400nm~700nmの可視光散乱強度(B)との比、A/Bが、0.8~1.2であ[る]」のに対して、甲12発明では、実施例1~6の接着シートについて、D65光源で測定された、波長が400nm~480nmの青色光散乱強度と、D65光源で測定された、波長が400nm~700nmの可視光散乱強度との比が、いくらであるか不明である点。
(イ) 判断
事案に鑑み、相違点C2について検討する。
a 前記(1)及び(2)において検討したとおり、前記相違点C2に係る本件訂正発明1の構成である
「該無機微粒子の一部は1次粒子の20個以下が凝集した凝集体となっている凝集粒子を含み、
20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子の個数が、凝集粒子の全個数のうち10%以下であり、
20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子の個数が、凝集粒子の全個数のうち10%以下であるとは、TEMで撮像した、前記透過型透明スクリーンの任意の10cm角の範囲の9箇所の全てで、20個より多い1次粒子で構成されている凝集粒子の個数が凝集粒子の全個数のうち10%以下であることが観察できることを意味し、
前記無機微粒子の平均粒子径が、464.34nm以上であ[る]」ことについては、甲1号証及び甲7号証のいずれにも開示されておらず、また、周知な事項であるとも認められないから、甲12発明に甲1号証又は甲7号証に開示された技術事項をいかに適用しても、前記相違点C2に係る本件訂正発明1の構成とすることは当業者にとって容易に想到し得たことではない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲12発明と甲1号証又は甲7号証に開示された技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。
b 本件訂正発明3、5及び8は、本件訂正発明1の全ての構成を含むから、前記aにおいて説示した理由と同様の理由により、本件訂正発明3、5及び8は、甲12発明と甲1号証又は甲7号証に開示された技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。
ウ 申立理由3に係る申立人の主張について
申立人は、申立理由1における主張と同様に、微粒子の凝集に係る技術常識を踏まえると、甲12発明(甲12号証の実施例1~6)の二酸化チタン微粒子(平均粒径0.3μm)も、「該無機微粒子の一部は1次粒子の20個以下が凝集した凝集体となっている凝集粒子を含み、20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子の個数が、凝集粒子の全個数のうち10%以下であり」という構成を満たしている旨主張している。
しかしながら、申立人が主張する技術常識は、例えば、1次粒子の平均粒径が0.3μmの場合に、凝集状態が具体的にどの程度のものになるかを教示するものではないから、上記技術常識を考慮しても、甲12発明(甲12号証の実施例1~6)の二酸化チタン微粒子(平均粒径0.3μm)の凝集状態が具体的にどの程度であるか不明であることに変わりはない。
したがって、甲12発明が、「該無機微粒子の一部は1次粒子の20個以下が凝集した凝集体となっている凝集粒子を含み、20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子の個数が、凝集粒子の全個数のうち10%以下であ[る]」という構成を満たしているとまではいえない。
同様に、甲12発明が、「前記無機微粒子の平均粒子径が、464.34nm以上であ[る]」という構成も満たしているとまではいえない。
よって、申立理由3に係る申立人の主張を採用することはできない。
エ 小括
以上のとおりであるから、申立理由3(より正確には、申立理由3のうち、本件訂正により削除されていない請求項である請求項1、3、5及び8に係る特許についてのもの)は、理由がない。
なお、申立理由3のうち、請求項2、4、7に係る特許についてのものは、本件訂正により削除された請求項に対するものであり、当該申立てに係る特許が存在しないこととなったため、不適法な特許異議申立てとなった。
(4) 申立理由4について
ア 本件訂正発明3と甲7発明の対比・判断
(ア) 対比
前記(2)の申立理由2について検討した結果を踏まえつつ、本件訂正発明3と甲7発明を対比すると、本件訂正発明3と甲7発明は、前記一致点Bにおいて一致し、前記相違点B1~B3の他に、以下の相違点B4において相違する。
<相違点B4>
本件訂正発明3では、「前記光散乱材料が、酸化チタン、酸化ジルコニウムからなる群から選ばれる1種以上である」のに対して、甲7発明では、球状疎水性シリカ微粒子1を用いている点。
(イ) 判断
前記(1)において検討したとおり、甲1号証には、前記相違点B1に係る本件訂正発明3の構成である
「該無機微粒子の一部は1次粒子の20個以下が凝集した凝集体となっている凝集粒子を含み、
20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子の個数が、凝集粒子の全個数のうち10%以下であり、
20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子の個数が、凝集粒子の全個数のうち10%以下であるとは、TEMで撮像した、前記透過型透明スクリーンの任意の10cm角の範囲の9箇所の全てで、20個より多い1次粒子で構成されている凝集粒子の個数が凝集粒子の全個数のうち10%以下であることが観察できることを意味し、
前記無機微粒子の平均粒子径が、464.34nm以上であ[る]」ことが開示されておらず、また、周知な事項であるとも認められないから、甲7発明に甲1号証に開示された技術事項をいかに適用しても、前記相違点B1に係る本件訂正発明3の構成とすることは当業者にとって容易に想到し得たことではない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明3は、甲7発明と甲1号証に開示された技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。
イ 小括
以上のとおりであるから、申立理由4(より正確には、申立理由4のうち、本件訂正により削除されていない請求項である請求項3に係る特許についてのもの)は、理由がない。
なお、申立理由4のうち、請求項4に係る特許についてのものは、本件訂正により削除された請求項に対するものであり、当該申立てに係る特許が存在しないこととなったため、不適法な特許異議申立てとなった。
(5) 申立理由5について
ア 申立理由5-1(凝集粒子の個数の測定方法)について
申立理由5-1の、SEM(走査電子顕微鏡)とTEM(透過電子顕微鏡)では観察原理が異なり、「1次粒子の20個以下が凝集した凝集体」及び「20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子」であると認定される範囲が測定方法によって異なるところ、請求項1にはどのような方法で測定するのかについて特定がないから、その測定方法を当業者は理解できず、発明が不明確であるという申立理由について検討する。
本件訂正により、請求項1は、「20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子の個数が、凝集粒子の全個数のうち10%以下であるとは、TEMで撮像した、前記透過型透明スクリーンの任意の10cm角の範囲の9箇所の全てで、20個より多い1次粒子で構成されている凝集粒子の個数が凝集粒子の全個数のうち10%以下であることが観察できることを意味[する]」と訂正されたため、観察方法がTEMであり、TEMで撮像して観察により確認できる限りの凝集粒子の個数を計数することになるから、その測定方法を当業者は理解できるといえる。
よって、この点について発明は明確であり、申立理由5-1は理由がない。
イ 申立理由5-2(屈折率の測定方法)について
(ア) 申立理由5-2の、「透明樹脂の屈折率」及び「無機微粒子の屈折率」について、屈折率の測定方法にはさまざまなものがあり、測定方法が異なれば屈折率の値が異なるところ、請求項1にはどのような方法で屈折率を測定するのかについて特定がないから、これらの屈折率の測定方法を当業者は理解できず、発明が不明確であるという申立理由について検討する。
(イ) そもそも均質媒体の屈折率については、定義が複数あるわけではなく、波長ごとに概念上は一義的に定まる光学物性値であるところ、屈折率の測定方法として、例えば、甲18号証に示されているように、最小偏角法や臨界角法等のさまざまなものがあるとしても、測定方法の違いは測定誤差の程度の違いとして現れるのであって、一義的に定まっている屈折率そのものが変わることはない。
(ウ) また、本件特許の明細書の段落【0026】には、「屈折率は、ナトリウムランプのd線(波長589nm)を用いて室温で測定したときの値である。」と記載されており、測定に用いられる波長は固定されているから、測定にあたって屈折率の波長分散性を考慮する必要もない。
(エ) そうすると、請求項1において、「透明樹脂の屈折率」及び「無機微粒子の屈折率」の測定方法を具体的に明示しなければ、特許請求の範囲の記載が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確ではなく、申立理由5-2は理由がない。
ウ 申立理由5-3(光散乱強度の測定方法)について
(ア) 申立理由5-3の、請求項4における光散乱強度の測定方法を当業者は理解できず、発明が不明確であるという申立理由については、本件訂正により請求項4は削除され、当該申立てに係る特許が存在しないこととなったため、不適法な特許異議申立てであって、その補正をすることができないものとなった。したがって、当該特許異議申立ては、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下すべきものである。
(イ) なお、本件訂正後の請求項1は、本件訂正前の請求項4に対応する構成を含むものの、前記第3の3において説示したとおり、本件訂正後の請求項1の「青色光散乱強度(A)」及び「可視光散乱強度(B)」が「D65光源で測定された」「拡散反射率」を意味することは明確になった。
エ 申立理由5-4(分子量の測定方法)について
申立理由5-4の、請求項7における分子量の測定方法を当業者は理解できず、発明が不明確であるという申立理由については、本件訂正により請求項7は削除され、当該申立てに係る特許が存在しないこととなったため、不適法な特許異議申立てであって、その補正をすることができないものとなった。したがって、当該特許異議申立ては、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下すべきものである。
オ 小括
以上のとおりであるから、申立理由5のうち、本件訂正により削除されていない請求項である請求項1に係る特許についてのものは、理由がない。
なお、申立理由5のうち、請求項4、7に係る特許についてのものは、本件訂正により削除された請求項に対するものであり、当該申立てに係る特許が存在しないこととなったため、不適法な特許異議申立てとであって、その補正をすることができないものとなった。したがって、当該特許異議申立ては、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下すべきものである。
(6) 申立理由6について
ア 申立理由6-1について
(ア) 「20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子の個数が、凝集粒子の全個数のうち10%以下」とする構成に関して、本件特許の明細書には、以下の記載がある。
「【0008】
しかし、透過型透明スクリーン101においては、図16に示すように第1の面A側の光景の光L1が散乱層134において散乱するが、散乱層に含まれる粒子のサイズによって散乱の仕方が異なる。一般に粒子径が光の波長よりも十分小さい場合、散乱強度は波長が小さいほど大きくなるとされる(レイリー散乱)。また粒子径が光の波長と同じ程度であると散乱強度は波長によらず同じ程度になるとされる(ミー散乱)。特許文献1に開示されたメジアン径0.1~50nm、かつ最大粒子径が10~500nmであるような粒子を散乱層134に用いると、レイリー散乱が支配的となり、青色の波長の散乱割合が多くなり、光景の色が黄味かかって見える。また、投影した画像は青色が強調され、表示したい画像とは異なる色調となり、投影機器もしくは元の画像を調整する必要がある。例えば、投影機としてプロジェクタを用いた場合、散乱されにくい緑色や赤色に合わせて青色の出力を落とす必要があり、結果、プロジェクタが本来持つ輝度(ルーメン)は発揮されないことになる。これにより、期待していたよりも暗い画像となってしまう課題がある。また、元の画像側で調整する場合も、煩雑な処理が必要となる。一方、ヘッドアップディスプレイや、ショーウィンドウなど、安全性や意匠性に関係する用途では光景の色を実際の色と同じ程度に見せることが必要になると考えられる。また黄味みの問題を解決する目的で粒子径を大きくすると透明性が損なわれやすい(特許文献1の比較例3)。」
「【0053】
光散乱材料33は、平均1次粒子径が100~400nmの無機微粒子であり、該無期微粒子の一部は1次粒子の20個以下が凝集した凝集体となっている凝集粒子を含む。平均1次粒子径は、無機微粒子のSEMまたはTEM写真を観察した写真において、1次粒子の粒子径を計測して平均値を求める方法や、透過型透明スクリーンの任意の10cm角の範囲を、9箇所を、SEMまたはTEM等で観察した写真において、1次粒子の粒子径を計測して平均値を求めることにより得られる。平均粒子径は粒径アナライザーFPAR-1000(大塚電子社製)などにより動的光散乱法(JISや、動的光散乱法、などの一般名)で求めることができる。
光散乱材料33の平均1次粒子径は150~400nmが好ましく、200~400nmがより好ましい。平均1次粒子径が100nm以上であると、透過型透明スクリーンを透過した光景の色が黄味を帯びるのを抑制できる。平均1次粒子の粒子径がこの範囲であると、凝集粒子が20個以下となりやすいと考えられる。
光散乱材料33は光散乱層34において、20個以下の前記1次粒子が凝集した凝集粒子を含む。凝集粒子は1次粒子の20個以下が凝集したものであり、15個以下が好ましく、10個以下がより好ましい。また、透明樹脂と光散乱材料を含む液状の材料を塗工して光散乱層を形成する場合は、前記個数が前記範囲であると、分散安定性が良好であり好ましい。
前記凝集粒子は、透過型透明スクリーンの任意の10cm角の範囲を、9箇所を、SEMまたはTEM等で観察することによって確認できる。凝集粒子が、1次粒子の20個以下が凝集した粒子であるとは、前記方法で観察した結果、9箇所の全てで、20個より多い1次粒子で構成されている凝集粒子の個数が凝集粒子の全個数のうち10%以下であることを意味する。凝集粒子の凝集形態は、一次粒子が1列または2列につながった形態、1次粒子が球状に凝集した形態等が挙げられる。凝集粒子の凝集個数を前記範囲となるように制御するには、光散乱材料33を透明樹脂32に溶液状態で分散する方法などで制御することができる。」
(イ) 前記(ア)に摘記した記載から、「20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子の個数が、凝集粒子の全個数のうち10%以下」とすることは、粒子径が光の波長よりも十分小さいとレイリー散乱が支配的となり、青色の波長の散乱割合が多くなり、光景の色が黄味かかって見えるようになってしまうため、黄味みの問題を解決する目的で粒子径を大きくする必要があるところ、粒子径を大きくすると透明性が損なわれやすく、また、透明樹脂と光散乱材料を含む液状の材料を塗工して光散乱層を形成する場合の分散安定性にも影響することから、20個より多い1次粒子で構成されている凝集粒子の個数の相対的割合に低い上限を設け、当該上限を超えないようにした趣旨であることが理解できる。
(ウ) ここで、当業者にとっては、波長の大きさと散乱体の大きさの関係により、散乱強度がλの4乗則に従うレイリー散乱が支配的な領域と波長依存性がないミー散乱が支配的な領域とで、光散乱現象における光散乱の強度の波長依存性が異なることは技術常識である。かかる技術常識に照らして上記(イ)に示した趣旨を光散乱現象の観点からさらに検討してみると、「20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子の個数が、凝集粒子の全個数のうち10%以下」としたことの技術的意義は、要するに、光散乱体としての凝集粒子の凝集度を制御することにより、レイリー散乱とミー散乱のバランスを取ろうとした趣旨であることが理解できる。
(エ) また、請求項1には、「20個より多い1次粒子で構成されている前記凝集粒子の個数が、凝集粒子の全個数のうち10%以下」という凝集度に係る特定だけでなく、「ヘーズが、5~45%であり」というヘーズに係る限定、及び、「D65光源で測定された、波長が400nm~480nmの青色光散乱強度(A)と、D65光源で測定された、波長が400nm~700nmの可視光散乱強度(B)との比、A/Bが、0.8~1.2であり」という光散乱強度比に係る限定もある。
そして、この特定事項は、「透明性が損なわれることなく黄味みの問題が生じない」ことを、物理量をもって規定したものであることは、当業者には自明である。
そうすると、請求項1の記載は、全体としてみると、「ヘーズが、5~45%」の条件を満たし、かつ、「D65光源で測定された、波長が400nm~480nmの青色光散乱強度(A)と、D65光源で測定された、波長が400nm~700nmの可視光散乱強度(B)との比、A/Bが、0.8~1.2である」という条件を満たすように凝集粒子の粒径の分布を間接的に限定しているということができる。
すなわち、請求項1は、透明性が損なわれることなく黄味みの問題が生じないという目的にかなうように十分に技術手段を特定したということができ、透明性が損なわれることなく黄味みの問題が生じないという効果を奏するのに十分な構成を請求項1が備えていることは、当業者が認識できることである。
(オ) したがって、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載が、請求項1の記載に対応しておらず、発明の課題を解決できると当業者が認識できる程度に記載されていないとか、請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない場合に該当しないことは、当業者には明らかである。
よって、申立理由6-1は、理由がない。
イ 申立理由6-2について
(ア) 屈折率の差に関して、本件特許の明細書には、以下の記載がある。
「【0054】
光散乱材料33としては、酸化チタン(屈折率:2.5~2.7)、酸化ジルコニウム(屈折率:2.4)、酸化アルミニウム(屈折率:1.76)、酸化亜鉛(屈折率:2.0)、硫酸バリウム(屈折率:1.64)、硫化亜鉛(屈折率:2.2)等の高屈折率材料の微粒子;ポーラスシリカ(屈折率:1.3以下)、中空シリカ(屈折率:1.3以下)等の低屈折率材料の微粒子;透明樹脂32との相溶性の低い屈折率が異なる樹脂材料;結晶化した樹脂材料等が挙げられる。光散乱材料は、バインダーとなる樹脂材料と屈折率が異なっていることで光を散乱させる機能を持っている材料である。多くの樹脂材料の屈折率は、1.45~1.65の屈折率を持つため、それらの樹脂材料から0.15以上屈折率が異なることが好ましく、より好ましくは、0.25以上、さらに好ましくは、0.5以上異なることが好ましい。よって、光散乱材料の屈折率は、1.6以上であると良く、1.7以上であると好ましく、1.95以上であるとより好ましい。また、光散乱材料は、屈折率が1.5以下であるとよく、1.4以下であると好ましく、光散乱材料の一部に屈折率が1.1~1.0とみなせるような1nm以上の空隙を含んでいるとさらに好ましい。光散乱材料33としては、高屈折率である点から、酸化チタン、酸化ジルコニウムが特に好ましい。また、光散乱材料は2種以上を混合してもよい。さらに平均1次粒子径が異なる、同じ種類の材料を用いてもよい。また、光散乱材料33には、本願発明の効果を損なわない範囲で、平均1次粒子径が100nm以下の微粒子が含まれてもよい。」
(イ) 前記(ア)に摘記した記載から、「前記透明樹脂の屈折率と、前記無機微粒子の屈折率との差が0.15以上」であることは、バインダーとなる樹脂材料と無機微粒子の屈折率にある程度の差を設けることにより、光散乱機能を担保したものであるといえる。
そして、多くの樹脂材料の屈折率が1.45~1.65の屈折率を持つとしており、それらの樹脂材料から無機微粒子の屈折率が0.15以上異なる場合には、透明樹脂の屈折率に対する屈折率差は、概ね10%以上であると評価できるから、このような数値の限定により光散乱機能の向上が図れることは明らかであって、かかる数値の限定には合理性を認めることができる。
したがって、発明の課題を解決できると当業者が認識できる程度に記載されていないとか、請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないなどというものでないことは、明らかである。
よって、申立理由6-2は、理由がない。
ウ 小括
前記ア及びイの検討のとおりであるから、申立理由6(より正確には、申立理由1のうち、本件訂正により削除されていない請求項である請求項1、3、5及び8に係る特許についてのもの)は、理由がない。
なお、申立理由6のうち、請求項2、4、7に係る特許についてのものは、本件訂正により削除された請求項に対するものであり、当該申立てに係る特許が存在しないこととなったため、不適法な特許異議申立てとなった。
第5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知で通知した取消理由及び特許異議の申立ての理由によっては、請求項1、3、5、8に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに請求項1、3、5、8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項2、4、7は、本件訂正により削除された。これにより、請求項2、4、7に係る特許についての特許異議の申立ては、当該申立てに係る特許が存在しないこととなったため、不適法な特許異議の申立てであって、その補正をすることができないものであるといえるから、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700039