特許拒絶査定不服審判
2023-016228
非一時的記憶媒体
- 審判番号
- 2023-016228
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-210856外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年09月26日
- 審決日
- 2024年10月15日
- 公報発行日
- 2025年03月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】パナソニック インテレクチュアル プロパティ コーポレーション オブ アメリカ
- 【請求人代理人】新居 広守
- 【請求人代理人】寺谷 英作
- 【請求人代理人】道坂 伸一
- 分類
- P18 .1 -Z (H04N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項、特許法第2条第1項、特許法第2条第4項、特許法第2条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-210856「非一時的記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 4月 1日出願公開、特開2022- 51735〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和元年)5月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2018年5月17日(US)米国)を国際出願日とする特願2020-519647号の一部を令和3年12月24日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和4年12月28日付け:拒絶理由通知
令和5年 3月22日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年 6月 9日付け:拒絶査定
令和5年 9月26日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和5年10月20日付け:前置報告
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和5年 9月26日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりのものである。なお、各構成の符号A~Iは、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成A~構成Iと称する。
(本願発明)
【請求項1】
A ビットストリームを保存する、コンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体であって、
B 前記ビットストリームは、復号処理を前記コンピュータに実行させるためのシンタックスを含み、
C 前記復号処理は、
動画像に含まれる各ピクチャの処理対象ブロックに対して、動きベクトル候補リストを生成するステップと、
D 前記動きベクトル候補リストから前記処理対象ブロックの動きベクトルを前記ビットストリームから復号したインデックスパラメータに基づいて選択し、前記選択した動きベクトルを用いて、前記処理対象ブロックの予測画像を生成するステップと、
E 前記動きベクトル候補リストは、前記処理対象ブロックの動きベクトルに対する複数の動きベクトル候補を含み、
F 前記処理対象ブロックが矩形ブロックであることに応えて、前記複数の動きベクトル候補の第1の最大数を導出するステップと、
G 前記処理対象ブロックが非矩形ブロックであることに応えて、前記複数の動きベクトル候補の前記第1の最大数と異なる第2の最大数を導出するステップと、
H 前記処理対象ブロックに対して、前記導出した第1または第2の最大数の前記動きベクトル候補リストを生成するステップと、を含み、
I 前記ビットストリームは、前記復号処理において前記動きベクトル候補リストに含まれる前記複数の動きベクトル候補の第1または第2の最大数に基づいて復号され、前記動きベクトル候補リストにおける前記処理対象ブロックの動きベクトルを指し示す前記インデックスパラメータを前記シンタックスとして含む、
A 非一時的記憶媒体。
第3 原査定の理由
令和5年 6月 9日付け拒絶査定の理由の概要は以下のとおりである。なお、令和5年 3月22日の手続補正書の請求項3に係る発明が本願発明に対応する。
(発明該当性)この出願の請求項3に記載されたものは、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。
記
請求項3に記載されたものは、「ビットストリームを保存する、コンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体」であって、当該ビットストリームは、「復号処理を前記コンピュータに実行させるためのシンタックスと前記復号処理において処理対象ブロックの動きベクトルを選択するためのインデックスパラメータ」を含むものである。
また、請求項3には、復号処理の内容が記載されている。
ここで、当該媒体に保存されているビットストリームについて検討すると、請求項3では、当該ビットストリームが、「シンタックス」と「インデックスパラメータ」を含むことが特定されるのみであり、データの構造については何ら具体的な記載がない。
よって、請求項3に記載の上記復号処理は、データの構造に基づくものとはいえない。
したがって、請求項3の「ビットストリーム」は、データの有する構造がプロセッサの処理を規定するものではなく、プログラムに類似する性質を有するものではないから、プログラムに準ずるものであるとはいえない。
そして、請求項3の「媒体」は、当該媒体に保存されたデータの内容と用途を特定したものに過ぎないから、情報の単なる提示を行うものに該当し、技術的思想ではない。
以上によれば、請求項3の「媒体」は、自然法則を利用した技術的思想の創作とはいえず、特許法第29条第1項柱書でいう「発明」に該当しない。
第4 判断
1 本願発明の「ビットストリームを保存する、コンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体」の発明特定事項について
(1)「ビットストリームを保存する、コンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体」に保存される情報の構成
本願発明の「ビットストリームを保存する、コンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体」に保存される情報は、「復号処理を前記コンピュータに実行させるためのシンタックス」(構成B)と、「前記復号処理において前記動きベクトル候補リストに含まれる前記複数の動きベクトル候補の第1または第2の最大数に基づいて復号され、前記動きベクトル候補リストにおける前記処理対象ブロックの動きベクトルを指し示す」「インデックスパラメータを前記シンタックスとして含む」(構成I)、「ビットストリーム」(構成A)である。
(2)「ビットストリームを保存する、コンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体」に関連する情報処理
本願発明の「ビットストリームを保存する、コンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体」は、コンピュータに読み取られて「復号処理を前記コンピュータに実行させるためのシンタックスを含」むものであり(構成B)、
「前記復号処理は、
動画像に含まれる各ピクチャの処理対象ブロックに対して、動きベクトル候補リストを生成するステップと、
前記動きベクトル候補リストから前記処理対象ブロックの動きベクトルを前記ビットストリームから復号したインデックスパラメータに基づいて選択し、前記選択した動きベクトルを用いて、前記処理対象ブロックの予測画像を生成するステップと、
前記動きベクトル候補リストは、前記処理対象ブロックの動きベクトルに対する複数の動きベクトル候補を含み、
前記処理対象ブロックが矩形ブロックであることに応えて、前記複数の動きベクトル候補の第1の最大数を導出するステップと、
前記処理対象ブロックが非矩形ブロックであることに応えて、前記複数の動きベクトル候補の前記第1の最大数と異なる第2の最大数を導出するステップと、
前記処理対象ブロックに対して、前記導出した第1または第2の最大数の前記動きベクトル候補リストを生成するステップと、を含」(構成C~H)むものである。
そうすると、本願発明の「ビットストリームを保存する、コンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体」に関連する情報処理は、「ビットストリームを保存する、コンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体」がコンピュータに読み取られることで実行される
「動画像に含まれる各ピクチャの処理対象ブロックに対して、動きベクトル候補リストを生成するステップと、
前記動きベクトル候補リストから前記処理対象ブロックの動きベクトルを前記ビットストリームから復号したインデックスパラメータに基づいて選択し、前記選択した動きベクトルを用いて、前記処理対象ブロックの予測画像を生成するステップと、
前記動きベクトル候補リストは、前記処理対象ブロックの動きベクトルに対する複数の動きベクトル候補を含み、
前記処理対象ブロックが矩形ブロックであることに応えて、前記複数の動きベクトル候補の第1の最大数を導出するステップと、
前記処理対象ブロックが非矩形ブロックであることに応えて、前記複数の動きベクトル候補の前記第1の最大数と異なる第2の最大数を導出するステップと、
前記処理対象ブロックに対して、前記導出した第1または第2の最大数の前記動きベクトル候補リストを生成するステップと」からなる「復号処理」であるといえる。
2 発明該当性についての判断
特許法において、「発明」とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なものをいう。」(第2条第1項)とされている。
また、同法において、「物の発明」における「物」は、「プログラム等を含む。」(第2条第3項第1号)とされ、当該「プログラム等」とは、「プログラム(電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下この項において同じ。)その他電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるものをいう。」(第2条第4項)とされている。
そこで、本件補正発明が、特許法でいう「発明」に該当するか否かについて、以下検討する。
2-1 「ビットストリームを保存する、コンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体」に保存された情報ついて
(1)「ビットストリームを保存する、コンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体」に保存された情報が「自然法則を利用した技術的思想」であるかどうかについて
本願発明の「ビットストリームを保存する、コンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体」に保存された情報である上記1(1)の「シンタックス」と「インデックスパラメータ」とを含む「ビットストリーム」は、「0」と「1」からなるビット列の羅列(ストリーム)のデータであって、上記1(2)のとおり、構成C~Hの復号処理に用いられる被処理データとして、復号処理を実行するコンピュータの回路に供されるものにすぎず、何ら情報処理の内容や手順を規定するものではない。
すると、本願発明の「ビットストリームを保存する、コンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体」に保存された情報は、供される情報の内容にのみ特徴を有するものであって、情報の単なる提示にとどまるものであるから、それ自体が技術的思想を有するということはできない。
したがって、本願発明の「ビットストリームを保存する、コンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体」に保存された情報は、特許法第2条第1項に規定された「自然法則を利用した技術的思想」に該当するものではない。
(2)「ビットストリームを保存する、コンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体」に保存された情報が「プログラム」であるかどうかについて
本願発明の「ビットストリームを保存する、コンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体」に保存された情報である上記1(1)の「シンタックス」と「インデックスパラメータ」とを含む「ビットストリーム」は、「0」と「1」からなるビット列の羅列(ストリーム)のデータであって、上記1(2)のとおり、構成C~Hの復号処理に用いられる被処理データとして、復号処理を実行するコンピュータの回路に供されるものにすぎず、一の結果を得ることが出来るように組み合わされたものとして、コンピュータが果たす複数の機能を手順ないし機能実現手段として特定したコンピュータに対する指令ではないから、特許法第2条第4項における「プログラム」ではない。
(3)「ビットストリームを保存する、コンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体」に保存された情報が「プログラムに準ずる」ものであるかどうかについて
本願発明の「ビットストリームを保存する、コンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体」に保存された情報は、上記(1)~(2)のとおり、何らコンピュータによる処理を規定するものではないから、プログラムに類似する性質を有するもの(「プログラムに準ずるもの」)ということはできない。
2-2 「ビットストリームを保存する、コンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体」について
次に、これらの情報が保存された「ビットストリームを保存する、コンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体」について検討する。
上記2-1で説明したように、本願発明の「ビットストリームを保存する、コンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体は、特許法第2条第4項に規定する「プログラム」または「プログラムに準ずるもの」を保存したものを特定していない。
2-3 小活
以上のことから、本願発明は「情報の単なる提示」を行うものであって、特許法第2条柱書きにおける「自然法則を利用した技術的思想の創作」ではなく、特許法第29条第1項柱書きに規定する「発明」に該当しない。
3 審判請求書の主張について
審判請求人は、審判請求書において、本願発明の「ビットストリームは、「前記復号処理において前記動きベクトル候補リストに含まれる前記複数の動きベクトル候補の第1または第2の最大数に基づいて復号され、前記動きベクトル候補リストにおける前記処理対象ブロックの動きベクトルを指し示す前記インデックスパラメータを前記シンタックスとして含む」というデータ構造を有し」、「当該データ構造は、コンピュータによる上記の復号処理に対応する情報処理を可能とするデータ構造であり、コンピュータによる情報処理を規定するという点でプログラムに類似する性質を有しており、プログラムに準ずるデータ構造であると思料致します。そのため、請求項1に記載のビットストリームは、プログラムに準ずると思料致します。したがって、請求項1に記載の内容は、特許法第29条第1項柱書の「発明」に該当する」との主張を行っている。
しかしながら、単に、ビットストリームが、「シンタックス」を含み、当該ビットストリームが、「インデックスパラメータ」を「シンタックス」として含むという記載では、データの具体的な構造を特定したことにはならない。
また、請求項1に記載の復号処理の内容(構成C~H)は、データの構造とは何ら関連していないから、データの構造に基づくものとはいえない。
よって、審判請求人の主張は採用することができない。
4 まとめ
以上のとおりであるから、本願請求項1の「ビットストリームを保存する、コンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体」は、「情報の単なる提示」を行うものであるから、特許法第2条第1項における「自然法則を利用した技術的思想の創作」ではなく、特許法第29条第1項柱書でいう「発明」に該当しない。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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