特許拒絶査定不服審判
2023-015766
高粘度潤滑剤を使用したカテーテルアセンブリおよび関連する方法
- 審判番号
- 2023-015766
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-545785外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年09月19日
- 審決日
- 2024年09月17日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
- 【請求人代理人】弁理士法人谷・阿部特許事務所
- 分類
- P18 .113-Z (A61M) / P18 .121-Z (A61M) / P18 .575-Z (A61M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-545785「高粘度潤滑剤を使用したカテーテルアセンブリおよび関連する方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 9月 6日国際公開、WO2019/168597、令和 3年 6月24日国内公表、特表2021-515619〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(平成31年)1月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2018年3月2日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の概要は以下のとおりである。
令和 4年10月31日付け:拒絶理由通知
令和 5年 2月 8日 :意見書、手続補正書の提出
令和 5年 5月 2日付け:拒絶査定
令和 5年 9月19日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 5年12月22日 :上申書の提出
第2 令和5年9月19日の手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年9月19日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正される(下線は補正箇所を示す。)。
「【請求項1】
針が隔壁のスリット内に配置されているとき、カテーテルアセンブリの前記隔壁を介した血液漏出を防止するためのカテーテルアセンブリの製造方法であって、
前記隔壁のスリットは、ギャップを含み、潤滑剤は前記ギャップ内に提供され、前記針の外面と前記隔壁のスリットとの間に配置された複数のギャップ内に前記潤滑剤を提供するステップを含み、前記隔壁は、カテーテルアダプタの管腔内に配置され、カテーテルは、前記カテーテルアダプタの遠位端から遠位方向に延在し、前記針の前記外面と前記隔壁のスリットとの間に配置された前記複数のギャップ内に前記潤滑剤を提供するステップは、
前記隔壁のスリットに前記針を挿入する前に、前記針の前記外面に前記潤滑剤を塗布するステップと、
潤滑される針を、前記隔壁のスリットから前記カテーテルの遠位先端に向かって遠位方向に直接挿入するステップであって、前記潤滑される針が前記隔壁に接触している間に、前記カテーテルの遠位先端に向かって潤滑される針を遠位方向に移動させることに応じて、前記潤滑剤が前記複数のギャップ内に堆積され、前記潤滑される針を前記隔壁のスリットから遠位方向に直接挿入する、ステップと、を含む、カテーテルアセンブリの製造方法。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和5年2月8日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
針が隔壁のスリット内に配置されているとき、カテーテルアセンブリの前記隔壁を介した血液漏出を防止するためのカテーテルアセンブリの製造方法であって、前記隔壁のスリットは、ギャップを含み、潤滑剤は前記ギャップ内に提供され、前記針の外面と前記隔壁のスリットとの間に配置された複数のギャップ内に前記潤滑剤を提供するステップを含む、カテーテルアセンブリの製造方法。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「隔壁」について「カテーテルアダプタの管腔内に配置され」ること、「カテーテルは、前記カテーテルアダプタの遠位端から遠位方向に延在」すること及び本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「前記針の外面と前記隔壁のスリットとの間に配置された複数のギャップ内に前記潤滑剤を提供するステップ」について「前記針の前記外面と前記隔壁のスリットとの間に配置された前記複数のギャップ内に前記潤滑剤を提供するステップは、前記隔壁のスリットに前記針を挿入する前に、前記針の前記外面に前記潤滑剤を塗布するステップと、潤滑される針を、前記隔壁のスリットから前記カテーテルの遠位先端に向かって遠位方向に直接挿入するステップであって、前記潤滑される針が前記隔壁に接触している間に、前記カテーテルの遠位先端に向かって潤滑される針を遠位方向に移動させることに応じて、前記潤滑剤が前記複数のギャップ内に堆積され、前記潤滑される針を前記隔壁のスリットから遠位方向に直接挿入する、ステップと、を含む」ことを限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項及び引用発明
(2-1)引用文献2
ア 引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2007-125126号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付した。)
(ア)
「【0030】
本発明によれば、シール部材の外周部を圧縮する圧縮手段を設けたことにより、内針をスリットに挿通した状態および当該スリットから内針を抜去した状態の各状態で、シール部材のシール機能が低下するのを確実に防止することができる。これにより、スリットを介して、血液や薬液などの液体が漏れ出すのを確実に防止することができる。」
(イ)
「【0033】
なお、以下では、図1、図9~図11中の右側を「基端」、左側を「先端」とし、また、図2~図6中の上側を「基端」、下側を「先端」として説明を行う。」
(ウ)
「【0034】
各図に示す留置針組立体1は、中空の外針2と、外針2の基端部に固定された外針ハブ3と、外針2内に挿通される内針4と、内針4の基端部に固定された内針ハブ5と、外針ハブ3の基端部(または側方部)に、内腔71が外針2の内腔21と連通するように接続されたチューブ7とを有している。」
(エ)
「【0044】
外針2には、先端に鋭利な針先41を備える内針4が挿通される。留置針組立体1は、内針4を外針2に挿通し、後述する内針ハブ5と外針ハブ3とを当接させた状態、すなわち、図1および図2に示す状態で使用される。以下、この状態を「組立状態」と言う。」
(オ)
「【0065】
図2~図6に示すように、留置針組立体1は、外針ハブ3の内部31に、円柱状(ブロック状)をなすシール部材8を有している。図9に示すように、シール部材8には、スリット81と、フランジ(拡径部)84とが形成されている。
【0066】
スリット81は、シール部材8のほぼ中央に設けられ、当該シール部材8の長手方向に沿って貫通している。スリット81は、自己閉塞性を有する、すなわち、自然状態で閉状態となるものであってもよいし、自然状態で開状態となるものであってもよい。ここで、「自然状態」とは、シール部材8に外力を付与しない状態をいう。
【0067】
また、スリット81は、その形状が一文字状をなしている。このようにスリット81が簡単な形状をなしているため、当該スリット81に内針4を容易に挿入することができる。」
(カ)
「【0092】
また、スリット81の内面811および内針4の外面(外周面)45の少なくとも一方の面には、それらの間の摩擦抵抗を低減する摩擦低減処理が施されているのが好ましい。
【0093】
この摩擦低減処理としては、特に限定されないが、例えば、スリット81の内面811および内針4の外面45の少なくとも一方の面に潤滑剤を付与する処理が挙げられる。
【0094】
この潤滑剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコンオイル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0095】
ここで、仮に摩擦低減処理を施すのが省略されている場合には、例えば、図13に示すように、内針4がその中心軸回りに回転した状態で留置針組立体1が組立てられたとすると、内針4の外面45とスリット81の各内面811との間の摩擦抵抗により、各内面811が引張られたり、圧縮されたりして、歪み(変形して)、各内面811と外面45との間に、液漏れが生じる程度の大きさの隙間86が形成されるおそれがある。
【0096】
これに対して、摩擦低減処理を施すことにより、スリット81の各内面811における、内針4の外面45による内針4の中心軸回りの引張や圧縮が防止または抑制され、よって、液漏れが生じる程度の大きさの隙間86が形成されるのが防止される。
【0097】
また、潤滑剤で隙間86が満たされることとなり、よって、シール部材8のシール性が向上する。
【0098】
また、潤滑剤を付与する方法としては、特に限定されないが、例えば、スリット81の内面811や内針4の外面45に潤滑剤を塗布したり、シール部材8や内針4を潤滑剤に浸漬したりする方法が挙げられる。」
(キ)図1
「
[図:0001418839000001.jpg]
」
(ク)図2
「
[図:0001418839000002.jpg]
」
(ケ)図6
「
[図:0001418839000003.jpg]
」
(コ)図13
「
[図:0001418839000004.jpg]
」
イ 上記アの記載及び図示内容から、引用文献2には次の事項が記載されている。
(ア)
上記ア(カ)の記載から、留置針組立体1を組立てる際、仮に摩擦低減処理を施すのが省略されている場合、各内面811と外面45との間に、液漏れが生じる程度の大きさの隙間86が形成されるおそれがある。そうすると、摩擦低減処理は、留置針組立体1が組立てられる際の処理であるから、引用文献2には、摩擦低減処理が施されることを含む留置針組立体1の組立て方法が記載されている。
(イ)
「図2~図6中の上側を「基端」、下側を「先端」」(上記ア(イ))として、上記ア(ク)の図示内容から、外針2は、外針ハブ3の先端から先端方向に延在していることが看取できる。
ウ 引用発明
上記ア及びイを総合すると、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。
「留置針組立体1の組立て方法であって、
留置針組立体1は、中空の外針2と、外針2の基端部に固定された外針ハブ3と、外針2内に挿通される内針4と、を有し、
外針ハブ3の内部31に、シール部材8を有し、シール部材8には、スリット81が形成され、
外針2は、外針ハブ3の先端から先端方向に延在し、
スリット81の内面811および内針4の外面(外周面)45の少なくとも一方の面には、それらの間の摩擦抵抗を低減する摩擦低減処理が施されることを含み、
この摩擦低減処理としては、スリット81の内面811および内針4の外面45の少なくとも一方の面に潤滑剤を付与し、
潤滑剤を付与する方法としては、スリット81の内面811や内針4の外面45に潤滑剤を塗布し、
潤滑剤で隙間86が満たされることとなり、シール部材8のシール性が向上する、留置針組立体1の組立て方法。」
(2-2)引用文献1
ア 引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特表2013-540486号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付した。また、「・・・」は省略を示す。)
(ア)
「【0045】
隔壁356のスリット366は導入針350によってバイアスされ、開放される。いくつかの実施形態においては、針350の外表面とスリット366との間にシールが形成されている。よって、針350とスリット366との界面を介して流体および空気がバイパスすることが防止される。・・・
【0046】
他の実施形態においては、針350とスリット366との界面に乾燥潤滑剤(non-wetting lubricant)が塗布され、流体および/または空気の漏出の恐れをさらに低減できるようにされる。・・・
【0047】
潤滑剤は、カテーテルアセンブリの製造時に隔壁スリット366に塗布することができる。従って、いくつかの実施形態では、導入針350の先端および/または隔壁作動器380の先端に配される。製造時に、潤滑剤が付与された導入針350の先端および/または潤滑剤が付与された隔壁作動器380の先端は隔壁スリット366を通して挿入され、その移動によって潤滑剤が内側スリット面に転移する。いくつかの実施形態では、針350がまず隔壁スリット366に挿入されてから、隔壁作動器380の挿入が行われる。そして針および隔壁作動器380を取り外すことで、使用の準備を行うことができる。このようにすることで、潤滑剤を隔壁スリット366に塗布することができる。」
(イ) 図8
「
[図:0001418839000005.jpg]
」
(3)対比
本件補正発明と引用発明2とを対比する。
ア 引用発明2の「留置針組立体1」は、その構造及び機能からみて、本件補正発明の「カテーテルアセンブリ」に相当し、以下同様に、「中空の外針2」は「カテーテル」に、「外針ハブ3」は「カテーテルアダプタ」に、「内針4」は「針」に、「シール部材8」は「隔壁」に、「スリット81」は「スリット」に、「隙間86」は「ギャップ」に、それぞれ相当する。
イ 引用文献2の上記(2-1)ア(ア)の記載から、引用発明2の「シール部材8」は、「血液」をシールするものである。そして、引用発明2の「潤滑剤で隙間86が満たされることとなり、シール部材8のシール性が向上する、留置針組立体1の組立て方法」は、内針4がシール部材8のスリット81内に配置されているとき、留置針組立体1のスリット81を介した血液漏出を防止するから、本件補正発明の「針が隔壁のスリット内に配置されているとき、カテーテルアセンブリの前記隔壁を介した血液漏出を防止するためのカテーテルアセンブリの製造方法」に相当する。
ウ 引用発明2の「隙間86」は、シール部材8のスリット81の各内面811と内針4の外面45との間に形成されるから、引用発明の「シール部材8」の「スリット81」に「隙間86」を形成することは、本件補正発明の「前記隔壁のスリットは、ギャップを含」むことに相当する。
エ 引用発明2の「隙間86」は、内針4の外面45とシール部材8のスリット81との間に配置されており、上記(2-1)ア(コ)の図示内容からみて「複数」である。また、引用発明2の潤滑剤を「付与」することは、本件補正発明の潤滑剤を「提供」することに相当する。そうすると、引用発明2の「スリット81の内面811および内針4の外面(外周面)45の少なくとも一方の面には、それらの間の摩擦抵抗を低減する摩擦低減処理が施されることを含み、この摩擦低減処理としては、スリット81の内面811および内針4の外面45の少なくとも一方の面に潤滑剤を付与し、潤滑剤を付与する方法としては、スリット81の内面811や内針4の外面45に潤滑剤を塗布」することは、本件補正発明の「潤滑剤は前記ギャップ内に提供され、前記針の外面と前記隔壁のスリットとの間に配置された複数のギャップ内に前記潤滑剤を提供するステップを含み、」「前記針の前記外面と前記隔壁のスリットとの間に配置された前記複数のギャップ内に前記潤滑剤を提供するステップは、前記隔壁のスリットに前記針を挿入する前に、前記針の前記外面に前記潤滑剤を塗布するステップと、潤滑される針を、前記隔壁のスリットから前記カテーテルの遠位先端に向かって遠位方向に直接挿入するステップであって、前記潤滑される針が前記隔壁に接触している間に、前記カテーテルの遠位先端に向かって潤滑される針を遠位方向に移動させることに応じて、前記潤滑剤が前記複数のギャップ内に堆積され、前記潤滑される針を前記隔壁のスリットから遠位方向に直接挿入する、ステップと、を含む」ことと、「潤滑剤は前記ギャップ内に提供され、前記針の外面と前記隔壁のスリットとの間に配置された複数のギャップ内に前記潤滑剤を提供するステップを含」むことの限りにおいて一致する。
オ 引用発明2の「外針ハブ3の内部31に、シール部材8を有し」ている態様は、上記(2-1)ア(ク)の図示内容から外針ハブ3の内部31が管腔であることが明らかであるから、本件補正発明の「前記隔壁は、カテーテルアダプタの管腔内に配置され」る態様に相当する。
カ 引用発明2の「外針2」が「外針ハブ3の先端から先端方向に延在」する態様は、本件補正発明の「カテーテルは、前記カテーテルアダプタの遠位端から遠位方向に沿在」する態様に相当する。
したがって、両者は、
「針が隔壁のスリット内に配置されているとき、カテーテルアセンブリの前記隔壁を介した血液漏出を防止するためのカテーテルアセンブリの製造方法であって、
前記隔壁のスリットは、ギャップを含み、前記隔壁は、カテーテルアダプタの管腔内に配置され、カテーテルは、前記カテーテルアダプタの遠位端から遠位方向に延在する、カテーテルアセンブリの製造方法。」
である点で一致し、次の点で一応相違する。
[相違点]
本件補正発明は、「潤滑剤は前記ギャップ内に提供され、前記針の外面と前記隔壁のスリットとの間に配置された複数のギャップ内に前記潤滑剤を提供するステップを含み、」「前記針の前記外面と前記隔壁のスリットとの間に配置された前記複数のギャップ内に前記潤滑剤を提供するステップは、前記隔壁のスリットに前記針を挿入する前に、前記針の前記外面に前記潤滑剤を塗布するステップと、潤滑される針を、前記隔壁のスリットから前記カテーテルの遠位先端に向かって遠位方向に直接挿入するステップであって、前記潤滑される針が前記隔壁に接触している間に、前記カテーテルの遠位先端に向かって潤滑される針を遠位方向に移動させることに応じて、前記潤滑剤が前記複数のギャップ内に堆積され、前記潤滑される針を前記隔壁のスリットから遠位方向に直接挿入する、ステップと、を含む」のに対して、引用発明2は、スリット81の内面811および内針4の外面(外周面)45の少なくとも一方の面には、それらの間の摩擦抵抗を低減する摩擦低減処理が施されることを含み、この摩擦低減処理としては、スリット81の内面811および内針4の外面45の少なくとも一方の面に潤滑剤を付与し、潤滑剤を付与する方法としては、スリット81の内面811や内針4の外面45に潤滑剤を塗布し、潤滑剤で隙間86が満たされることとなり、シール部材8のシール性が向上する点。
(4)判断
上記相違点について検討する。
引用発明2は、「潤滑剤を付与する方法としては、スリット81の内面811や内針4の外面45に潤滑剤を塗布」するものであるところ、「内針4の外面45」に潤滑剤を塗布するにあたっては、内針4、外針2及びシール部材8の位置関係等からみて、潤滑剤の塗布は、スリット81に内針4を挿入する前に行われると考えるのが自然である。
そして、外面45に潤滑剤が塗布された内針4をスリット81に直接挿入し、先端方向に移動させることに応じて、潤滑剤が隙間86内に堆積され、潤滑剤で隙間86が満たされることは明らかである。
そうすると、引用発明2は、潤滑剤が塗布された内針4を、シール部材8のスリット81から外針2の先端に向かって先端方向に直接挿入し、潤滑剤が塗布された内針4がシール部材8に接触している間に、外針2の先端に向かって内針4を先端方向に移動させることに応じて、潤滑剤が隙間86内に堆積され、潤滑剤が塗布された内針4をシール部材8のスリット81から先端方向に直接挿入する、ステップを含むと表現できる。ここで、潤滑剤が塗布された「内針4」は、本件補正発明の「潤滑される針」に相当する。
したがって、上記相違点は実質的な相違点ではない。
よって、本件補正発明は、引用発明2である。
仮に、上記相違点が実質的な相違点であるとして、以下検討する。
上記(2-2)から、引用文献1には、カテーテルアセンブリの製造時に、潤滑剤が付与された導入針350の先端を隔壁スリット366を通して挿入し、その移動によって潤滑剤が内側スリット面に転移することで、潤滑剤を隔壁スリット366に塗布することが記載されている。
引用発明2において、引用文献1の記載事項を参酌して、製造時に、潤滑剤が塗布された内針4を、シール部材8のスリット81から外針2の先端に向かって先端方向に直接挿入し、潤滑剤が塗布された内針4がシール部材8に接触している間に、外針2の先端に向かって内針4を先端方向に移動させることに応じて、潤滑剤が隙間86内に堆積して、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
また、本件補正発明の奏する効果は、引用発明2及び引用文献1の記載事項から当業者が予測し得た範囲内のものであり、格別顕著なものでない。
よって、本件補正発明は、引用発明2及び引用文献1の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)小括
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明2であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
また、本件補正発明は、引用発明2及び引用文献1の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
3 むすび
本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~20に係る発明は、令和5年2月8日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~20に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]1(2)に記載されたとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、以下の理由を含むものである。
理由1:本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2:本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1、2に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特表2013-540486号公報
引用文献2:特開2007-125126号公報
3 引用文献の記載事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2の記載事項及び引用発明は、上記第2の[理由]2(2-1)のとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、上記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記隔壁は、カテーテルアダプタの管腔内に配置され、カテーテルは、前記カテーテルアダプタの遠位端から遠位方向に延在し」という事項と、上記相違点に係る「前記針の前記外面と前記隔壁のスリットとの間に配置された前記複数のギャップ内に前記潤滑剤を提供するステップは、前記隔壁のスリットに前記針を挿入する前に、前記針の前記外面に前記潤滑剤を塗布するステップと、潤滑される針を、前記隔壁のスリットから前記カテーテルの遠位先端に向かって遠位方向に直接挿入するステップであって、前記潤滑される針が前記隔壁に接触している間に、前記カテーテルの遠位先端に向かって潤滑される針を遠位方向に移動させることに応じて、前記潤滑剤が前記複数のギャップ内に堆積され、前記潤滑される針を前記隔壁のスリットから遠位方向に直接挿入する、ステップと、を含む」という事項を削除したものに相当する。
ここで、本件補正発明と引用発明2を対比すると上記第2の[理由]2(3)のとおりであるところ、本願発明においては、「前記針の前記外面と前記隔壁のスリットとの間に配置された前記複数のギャップ内に前記潤滑剤を提供するステップ」が「前記隔壁のスリットに前記針を挿入する前に、前記針の前記外面に前記潤滑剤を塗布するステップと、潤滑される針を、前記隔壁のスリットから前記カテーテルの遠位先端に向かって遠位方向に直接挿入するステップであって、前記潤滑される針が前記隔壁に接触している間に、前記カテーテルの遠位先端に向かって潤滑される針を遠位方向に移動させることに応じて、前記潤滑剤が前記複数のギャップ内に堆積され、前記潤滑される針を前記隔壁のスリットから遠位方向に直接挿入する、ステップと、を含む」ことは特定されていない。
そうすると、引用発明2の「スリット81の内面811および内針4の外面(外周面)45の少なくとも一方の面には、それらの間の摩擦抵抗を低減する摩擦低減処理が施されることを含み、この摩擦低減処理としては、スリット81の内面811および内針4の外面45の少なくとも一方の面に潤滑剤を付与し、潤滑剤を付与する方法としては、スリット81の内面811や内針4の外面45に潤滑剤を塗布」することは、本願発明の「潤滑剤は前記ギャップ内に提供され、前記針の外面と前記隔壁のスリットとの間に配置された複数のギャップ内に前記潤滑剤を提供するステップを含む」ことに相当する。
したがって、本願発明と引用発明2は、
「針が隔壁のスリット内に配置されているとき、カテーテルアセンブリの前記隔壁を介した血液漏出を防止するためのカテーテルアセンブリの製造方法であって、前記隔壁のスリットは、ギャップを含み、潤滑剤は前記ギャップ内に提供され、前記針の外面と前記隔壁のスリットとの間に配置された複数のギャップ内に前記潤滑剤を提供するステップを含む、カテーテルアセンブリの製造方法。」
である点で一致する。
よって、本願発明は、引用文献2に記載された発明である。
仮に相違点があるとしても、上記第2の[理由]2(4)と同じ理由で、本願発明は、引用文献2に記載された発明及び引用文献1の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、又は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-015766