特許拒絶査定不服審判
2023-011088
マーカを含む展開カテーテル
- 審判番号
- 2023-011088
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-117138外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年07月03日
- 審決日
- 2024年08月13日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】恩田 誠
- 【請求人代理人】恩田 博宣
- 【請求人代理人】本田 淳
- 分類
- P18 .113-Z (A61M) / P18 .121-Z (A61M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-117138号「マーカを含む展開カテーテル」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年12月 9日出願公開、特開2021-184799号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年) 2月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年 2月27日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願である特願2019-534740号の一部を令和 3年 7月15日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は、概略以下のとおりである。
令和 3年11月15日提出 上申書及び手続補正書
令和 4年 6月10日付け 拒絶理由通知
令和 4年10月28日提出 意見書及び手続補正書
令和 5年 2月21日付け 拒絶査定
令和 5年 7月 3日提出 審判請求書
第2 本願発明
本願の請求項1~15に係る発明は、令和 4年10月28日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
アウターカテーテルであって、
基端部と、
先端部と、
基端部と先端部との間に延在するルーメンと、を含む、アウターカテーテルと、
アウターカテーテルの先端部分に設けられた第1のマーカおよび第2のマーカと、
アウターカテーテルのルーメン内に摺動式に配置されるインナーカテーテルと、
インナーカテーテルの周囲に配置されるステントであって、アウターカテーテルのルーメン内に配置されていないときに第1の構成から第2の構成に移行するように構成されており、第2の構成にあるときに基端保持部材を有する、ステントと、を含み、
アウターカテーテルが、体管腔内の基準位置に対して、インナーカテーテルおよびステントとともに基端方向へ後退可能であり、
前記基準位置の近位にある第1のマーカを体管腔内で確認することによって、基端保持部材全体が該基準位置に対して近接して展開できることがわかるように、アウターカテーテルがインナーカテーテルに沿って基端方向に後退するとともに、第1のマーカが、アウターカテーテルの先端部分において位置決めされている、システム。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、以下の理由を含む。
本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特表2015-518741号公報
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与。)。
(1)「【0039】
図5A-5Eは、隣接する身体管腔、例えば、管腔L1および管腔L2にアクセスするためのステップを図示する。カテーテルデバイス10は、内視鏡40に取り付けられる。内視鏡またはエコー内視鏡40の遠位端(図5A-5E)が、通常、GI管内の標的場所に隣接する経口的入口を介して、位置付けられる。」
(2)「【0044】
組織ステントまたはアンカ34の遠位フランジセグメント42は、ここで、第2のスライドアクチュエータ18を近位方向に移動させ、シース27を後退させることによって拡張される。第2のスライドアクチュエータは、図5Cにおけるように、第2のロック22を解放後、第1のスライドアクチュエータ15の近位延在部17に沿って、所定の位置まで、部分的に引き戻される。第2のスライドアクチュエータ18のロック22(図1)の一部は、該ロック22が、所定の位置において停止部に係合し、それによって、アクチュエータ18の近位移動を停止する、トラック(図示せず)内を移動する。所定の位置は、組織アンカ34の遠位フランジ42のみ、シース27による拘束から解放され、拡張することを可能にするように較正されることができる。第2のスライドアクチュエータ18の該近位運動は、シース27を後退させる一方、シャフト28は、定位置に保持され、これは、組織アンカ34の遠位部分を拘束から解放する。カテーテルオペレータは、遠位フランジを展開後、遠位フランジの拡張を検証するために、一時停止することができる。いくつかの実施形態では、超音波が、遠位フランジセグメント42の拡張を可視化するために使用されることができる。いくつかの実施形態では、遠位フランジセグメント42の拡張の直接可視化が、可能である。いくつかの実施形態では、シースは、シースの部分的後退後、可視化され得る、可視マーカーを有することができる。シース上のマーカーは、後退に先立って、組織壁によって見えにくい可能性がある。遠位フランジからの制約を除去するために十分な距離だけ、シール(審決注:「シース」の誤記と認められる。)を後退させた後、シース上のマーカーは、したがって、可視となることができる。マーカーは、超音波撮像、直接可視化、または蛍光透視法下、可視となることができる。ある場合には、複数のマーカーが、視覚的に区別され、種々の距離にわたるシースの後退に対応し得る、異なる色またはパターンを伴って、シース上で使用されることができる。」
(3)「【0045】」
第1のスライドアクチュエータ15は、ここで、ハンドル12上において、ロック20を解放後、ノブ16を使用して、近位方向にゆっくりと移動され、したがって、拡張された遠位アンカフランジ42を管腔L2の組織T2の内側表面に対して移動させ、組織T1を組織T2により近接して位置付け、図5Dにおけるように、管腔L1およびL2を近接並列状態に保持する。遠位フランジ42は、管腔L2に係合し、それを制御するために使用されることができる。遠位フランジ42は、管腔L1およびL2に接近および接着するために使用されることができる。
(4)「【0046】
ステントロック30(図2A)は、組織/ステントアンカ34の近位端をしっかりと保持し、組織T2に対する近位牽引を可能にする。ロック20は、次いで、再係合され、第1のスライドアクチュエータ15を制御ハンドル本体14に固着させる。遠位フランジ42と管腔L2および組織T2の係合は、ステント34の近位端を解放するのに先立って、検証されることができる。遠位フランジ42と管腔L2の係合は、超音波を使用して、またはシース上のマーカーの可視化を通して、検証されることができる。シース上のマーカーは、シースが後退され、遠位フランジが組織T2と係合されると、可視となることができる。例えば、マーカーは、若干、組織壁T1およびT2の厚さを上回る、シースの端部からの距離にあり得る。したがって、マーカーは、シースを後退させ、遠位フランジ42を拡張し、遠位フランジ42と組織T2を係合した後のみ可視となり、それによって、シース上のマーカーを管腔L1内の内視鏡に可視にするであろう。」
(5)「【0047】
組織アンカステント34の近位セグメント44は、ここで、図5Eにおけるように、ロック22を解放し、シース27をさらに後退させた後、第2のスライドアクチュエータ18を第1のスライドアクチュエータ15の近位端またはその近傍の位置まで近位方向に移動させることによって、拡張される。組織アンカステント34の近位端は、第2のスライドアクチュエータ18がその進行の近位端に到達するにつれて、ステントロック30(図2A)から解放される。これは、本実施例では、管腔L1とL2との間の流体連通を可能にする中心管腔46を有する、組織アンカ全体を解放させる。デバイス10は、ここで、除去され、流体連通が確立されている状態で、管腔L1と管腔L2との間に埋入された中心管腔46を伴う、組織アンカ34を残す。ステント34は、組織壁への損傷を最小限にしながら、組織T1およびT2をともにしっかりと保持することによって、管腔L1と管腔L2との間に健常吻合の形成を助長することができる。ステント34は、後日、除去されることができる。」
(6)「図5A
[図:0001418723000001.jpg]
」
(7)「図5B
[図:0001418723000002.jpg]
」
(8)「図5C
[図:0001418723000003.jpg]
」
(9)「図5D
[図:0001418723000004.jpg]
」
(10)「図5E
[図:0001418723000005.jpg]
」
(11)特に、上記(2)の下線部の記載及び(7)~(10)の図面の記載からすれば、シース27は、第2のスライドアクチュエータ18が設けられた基端部と、組織アンカ34が解放される先端部との間に延在するシャフト28が配置されるルーメンを含んでいる。
(12)特に、上記(2)、(4)の下線部の記載及び(8)~(9)の図面の記載からすれば、シース27の先端部から若干組織壁T1およびT2の厚さを上回る距離に複数のマーカーが設けられている。
(13)特に、上記(2)、(5)の下線部の記載及び(7)~(10)の図面の記載からすれば、シース27は、シャフト28に沿って後退するから、当該シャフト28はシース27のルーメン内に摺動式に配置されている。
(14)特に、(10)の図面の記載からすれば、組織アンカ34はシャフト28の周囲に配置されていることが看取でき、また、上記(2)、(5)の下線部の記載及び(9)~(10)の図面の記載からすれば、シース27の拘束から解放されたとき拡張するように構成されており、拡張されたとき近位セグメント44を有する。
(15)特に、上記(3)、(4)の下線部の記載及び(8)~(9)の図面の記載からすれば、シース27は、近接並列状態に保持された組織T1およびT2に対して、シャフト28および組織アンカ34とともに近位方向に後退可能である。
(16)特に、上記(4)、(5)の下線部の記載及び(9)~(10)の図面の記載からすれば、カテーテルデバイスは、組織T1の近位にあるマーカーを管腔L1内で可視することによって、近位セグメント44全体が該組織T1に近接して解放できる位置に、シース27がシャフト28に沿って近位方向に後退したことがわかるように、マーカーがシースの先端部から若干組織壁T1およびT2の厚さを上回る距離において位置決められている。
2 引用発明
上記(1)~(10)の記載及び(11)~(16)の認定によれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「 基端部と、
先端部と、
基端部と先端部との間に延在するルーメンと、を含む、シース27と、
シース27の先端部から若干組織壁T1およびT2の厚さを上回る距離に設けられた複数のマーカーと、
シース27のルーメン内に摺動式に配置されるシャフト28と、
シャフト28の周囲に配置される組織アンカ34であって、シース27の拘束から解放されたとき拡張するように構成されており、拡張されたとき近位セグメント44を有する、組織アンカ34と、を含み、
シース27が、近接並列状態に保持された組織T1およびT2に対して、シャフト28および組織アンカ34とともに近位方向に後退可能であり、
組織T1の近位にあるマーカーを管腔L1内で可視することによって、近位セグメント44全体が該組織T1に近接して解放できる位置に、シース27がシャフト28に沿って近位方向に後退したことがわかるように、マーカーがシースの先端部から若干組織壁T1およびT2の厚さを上回る距離において位置決められている、カテーテルデバイス。」
第5 対比・判断
1 対比
以下、本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「シース27」は、機能及び構造上、本願発明の「アウターカテーテル」に相当するので、引用発明の「基端部と、先端部と、基端部と先端部との間に延在するルーメンと、を含む、シース27」は、本願発明の「アウターカテーテルであって、基端部と、先端部と、基端部と先端部との間に延在するルーメンと、を含む、アウターカテーテル」に相当する。
(2)引用発明の「シース27の先端部から若干組織壁T1およびT2の厚さを上回る距離」の部分は、機能及び構造上、本願発明の「アウターカテーテルの先端部分」に相当し、同様に、「複数のマーカー」は、「第1のマーカおよび第2のマーカ」に相当するので、引用発明の「シース27の端部から若干組織壁T1およびT2の厚さを上回る距離に設けられた複数のマーカー」は、本願発明の「アウターカテーテルの先端部分に設けられた第1のマーカおよび第2のマーカ」に相当する。
(3)引用発明の「シャフト28」は、機能及び構造上、本願発明の「インナーカテーテル」に相当するので、引用発明の「シース27のルーメン内に摺動式に配置されるシャフト28」は、本願発明の「アウターカテーテルのルーメン内に摺動式に配置されるインナーカテーテル」に相当する。
(4)引用発明の「組織アンカ34」は、機能及び構造上、本願発明の「ステント」に相当し、同様に、「近位セグメント44」は、「基端保持部材」に相当する。そして、引用発明の「組織アンカ34」が、シース27に拘束された状態は、本願発明の「ステント」の「第1の構成」に、また、シース27の拘束から解放されて拡張された状態は、本願発明の「ステント」の「第2の構成」にそれぞれ相当するから、引用発明の「シャフト28の周囲に配置される組織アンカ34であって、シース27の拘束から解放されたとき拡張するように構成されており、拡張されたとき近位セグメント44を有する、組織アンカ34」は、本願発明の「インナーカテーテルの周囲に配置されるステントであって、アウターカテーテルのルーメン内に配置されていないときに第1の構成から第2の構成に移行するように構成されており、第2の構成にあるときに基端保持部材を有する、ステント」に相当する。
(5)引用発明の組織T1およびT2が近接並列状体に保持された位置は、機能及び構造上、本願発明の「体管腔内の基準位置」に相当し、同様に、「近位方向」は「基端方向」に相当するから、引用発明の「シース27が、近接並列状体に保持された組織T1およびT2に対して、シャフト28および組織アンカ34とともに近位方向に後退可能であ」る点は、本願発明の「アウターカテーテルが、体管腔内の基準位置に対して、インナーカテーテルおよびステントとともに基端方向へ後退可能であ」る点に相当する。
(6)引用発明の「複数のマーカー」の内の1つは、本願発明の「第1のマーカ」に相当し、引用発明の「マーカーを管腔L1内で可視すること」は、機能及び構造上、本願発明の「第1のマーカを体管腔内で確認すること」に相当するから、引用発明の「組織T1の近位にあるマーカーを管腔L1内で可視することによって、近位セグメント44全体が該組織T1に近接して解放できる位置に、シース27がシャフト28に沿って近位方向に後退したことがわかるように、マーカーがシースの先端部から若干組織壁T1およびT2の厚さを上回る距離において位置決められている」ことは、本願発明の「基準位置の近位にある第1のマーカを体管腔内で確認することによって、基端保持部材全体が該基準位置に対して近接して展開できることがわかるように、アウターカテーテルがインナーカテーテルに沿って基端方向に後退するとともに、第1のマーカが、アウターカテーテルの先端部分において位置決めされている」ことに相当する。
(7)引用発明の「カテーテルデバイス」は、機能及び構造上、本願発明の「システム」に相当する。
2 判断
上記1のとおりであるから、本願発明は引用発明である。
また、仮に本願発明の「第2のマーカ」が、実施例に記載されたような、直接可視される色マーカーである「第1のマーカ」と異なる手段で可視化されるマーカーに限定されるとしても、引用文献1には、マーカーとして、直接可視化される色マーカーのみでなく、超音波撮像又は蛍光透視法により可視化されるマーカーを使用することについても記載されている(上記第4の1(2)及び(4)の下線部参照。)から、引用発明の複数のマーカーの一方に、上記したような超音波撮像又は蛍光透視法により可視化されるマーカーを採用して本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号又は同条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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