特許拒絶査定不服審判
2024-013619
カテーテル
- 審判番号
- 2024-013619
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-069452
- 請求日
- 2024年08月23日
- 審決日
- 2025年02月18日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】日本ライフライン株式会社
- 【請求人代理人】富所 輝観夫
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 哲男
- 審判官 立花 啓
- 審判官 安井 寿儀
- 分類
- P18 .113-WZ (A61M) / P18 .121-WZ (A61M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023- 69452「カテーテル」拒絶査定不服審判事件〔令和 6年 1月16日出願公開、特開2024- 4451〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和 5年 4月20日(優先権主張 令和 4年 6月28日)の出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
令和 6年 3月 5日付け:拒絶理由通知書
同年 4月26日 :意見書及び手続補正書の提出
同年 6月14日付け:拒絶査定
同年 8月23日 :審判請求書及び手続補正書の提出
同年10月31日付け:令和 6年 8月23日付けの手続補正に
ついての補正の却下の決定
及び拒絶理由通知書
同年12月25日 :意見書及び手続補正書の提出
第2 本願発明
令和 6年12月25日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「シャフトと、
前記シャフトの先端側に取り付けられて膨張可能なバルーンと、
前記バルーンの外周を被覆し、前記バルーンの収縮に追従して弾性変形可能な被覆部材と、
を備え、
前記バルーンの未使用状態において、前記被覆部材は、弾性力によって前記バルーンを内周側に押さえつけており、
前記被覆部材は、前記バルーンが膨張するのを許容し、当該バルーンの膨張に伴って膨張し、
前記被覆部材の弾性率が前記バルーンの弾性率より小さいカテーテル。」
第3 拒絶の理由
当審が通知した令和 6年10月31日付け拒絶理由通知書に係る拒絶の理由は、次の理由を含むものである。
理由1.(新規性)本願発明は、その出願(優先日)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2.(進歩性)本願発明は、その出願(優先日)前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明に基いて、その出願(優先日)前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献:特表2021-520948号公報
第4 当審の判断
1 引用文献の記載
引用文献には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。)。
(1)「【0003】
背景
バルーンカテーテルは、導管疾患の治療における使用を含む、様々な医療現場で使用できる。バルーンカテーテルは低侵襲血管内治療の一部として血管形成術の治療に使用できる。さらに、バルーンカテーテルは、管腔内医療処置に関連して組織(例えば、導管構造)を拡張し、血管又は他の開口部に展開されたメディカルデバイス(例えば、ステント又はステントグラフト)を拡張し又はそれらの組み合わせのために使用される。バルーンカテーテルは、閉塞の目的で(例えば、導管構造を一時的にブロックするために)使用することもできる。様々な治療位置へのデリバリーを容易にするために、バルーンがその圧縮状態にあるときに、バルーンカテーテルが小さいバルーン直径(例えば、デリバリー直径)を有することが望ましい。現在の圧縮技術では、膨張時に全体のサイズ/表面積を維持しながら、バルーンを折りたたみ、プリーツを付け、及び/又は、押し潰して、バルーンを圧縮直径に低減することを含む。」
(2)「【0036】
図1は、幾つかの実施形態による、インプラント可能なメディカルデバイスをデリバリーするためのカテーテルシステム100を示す。様々な例によれば、システム100は、デリバリーカテーテル200、インプラント可能なメディカルデバイス300及びバルーン400を含む。インプラント可能なメディカルデバイス300は、患者の体内の所望の治療位置に配置するために、バルーン400の少なくとも一部にわたってデリバリー直径で維持される。カテーテルシステム100は、インプラント可能なメディカルデバイスをデリバリーするように構成されて示されているが、カテーテルシステム100は、所望に応じて、閉塞カテーテル、ドラッグデリバリーカテーテル又は拡張カテーテルとして追加的又は代替的に構成されうる。したがって、幾つかの例において、カテーテルシステム100は、インプラント可能なメディカルデバイス300を含まなくてもよい。」
(3)「【0044】
図2は、デリバリーカテーテル200上のバルーン400上に維持されたデバイス300の拡大図を示す。示されるように、バルーン400は、デリバリーカテーテル200の一部の上に直接維持されることができる。幾つかの実施形態において、バルーン400は、デリバリーカテーテル200の遠位端220又はその近くに維持されうる。しかしながら、上記のように、バルーン400は、所望に応じて、デリバリーカテーテル200の近位端210と遠位端220との間の任意の位置に維持されうる。」
(4)「【0048】
幾つかの実施形態において、バルーン400は、公称膨張圧力がバルーン400に供給されるときに、非拡張直径Du(例えば、非拡張構成)と公称バルーン直径Dn(例えば、拡張構成)との間で拡張可能である。幾つかの例において、バルーン400が一定の膨張圧力でさらなる膨張に対する抵抗の急激な増加を示すときに、公称バルーン直径Dnに達する。幾つかの実施形態において、これは、バルーン400のさらなる拡張が、バルーン400の定格破裂圧力を超える圧力を付与することを使用者に要求する直径であることができる。様々な例において、公称膨張圧力は、6気圧~15気圧、8気圧~15気圧、6気圧~10気圧、6気圧~8気圧又は6気圧~7気圧であることができる。これらの公称膨張圧力は、様々な公称バルーン直径Dnに対応することができる。幾つかの実施形態において、バルーン400がデリバリーカテーテル200上に維持されるときに、公称バルーン直径Dnは、4mm~15mm、5mm~12mm、6mm~9mm又は6mm~7mmであることができる。例えば、公称膨張圧力は、公称バルーン直径Dnが9mm~16mmの場合は6気圧~10気圧であり、公称バルーン直径Dnが4mm~8mmの場合は11気圧~16気圧であることができる。」
(5)「【0052】
バルーン400は、バルーン400の所望の拡張特性に応じて、様々な適切な材料を含むことができる。幾つかの実施形態において、バルーン400は、例えば、非順応性の、一般に非弾性のバルーンを含むことができる。そのような実施形態において、バルーン400は、十分な加圧時にバルーン400を所望の直径に拡張し、特定の破裂圧力に達するまで、さらなる加圧下で所望の直径又はその近くに留まることができるように構成される材料を含むことができる。例えば、適切な材料としては、ナイロン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカプロラクタム、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリイミド、ABSコポリマー、ポリエステル/ポリエーテルブロックコポリマー、アイオノマー樹脂、液晶ポリマー及び硬質ロッドポリマーを挙げることができる。」
(6)「【0055】
図4は、幾つかの実施形態による、カバーによって非拡張直径に維持されたバルーンを示す。示されるように、バルーン400は、カバー500によって少なくとも部分的に非拡張直径Duに維持される。カバー500は、バルーン400の全部又は一部にわたって非拡張構成に維持されることができ、バルーン400を維持し、束縛し又はさもなければ拘束するように構成されうる。幾つかの例において、バルーン400は、カバー500の下に拘束され、カバー500は、バルーンの作動長の少なくとも一部又は全部を覆う。バルーンの「作業長」は、拡張して医療処置の一部として利用されるように構成されたバルーンの部分を指す。
【0056】
カバー500は、第一のカバー端502、第二のカバー端504、内面506及び外面508を有する。幾つかの実施形態において、バルーン400は、カバー500によって同軸に包囲されうる。例えば、内面506は、バルーン400とカバー500が実質的に同じ形状を含むように、バルーン400の外面に実質的に一致しうる。幾つかの実施形態において、カバー500は、バルーン400とは異なる形状又は構成であることができる。
【0057】
幾つかの実施形態において、カバー500はまた、バルーン400の半径方向の拡張中に弾性的に伸長するように構成される。例えば、バルーン拡張中に、バルーン400は、長手方向に伸長し、カバー500上に長手方向の伸長力を与えることができる。カバー500は、次に、デバイス300に長手方向に伸長する力を与えることができ、これは、デバイスの拡張の結果として発生する可能性のある長手方向の短縮力を打ち消すことができる。本明細書で使用されるときに、「短縮率」は、デバイス300の長さが、その非拡張直径からその拡張直径に、又は言い換えれば、その非拡張構成からその拡張構成に拡張されたときに減少する百分率であることができる。幾つかの実施形態において、デバイス300は、カバー500のないシステム100とは対照的に、カバー500とともに使用されるときに、20パーセント未満で短縮することができる。」
(7)「【0060】
カバー500は、例えば、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、変性(例えば、高密度化)ePTFE及びPTFEの延伸コポリマーなどの延伸フルオロポリマーなどのポリマーを含むことができる。幾つかの例において、ポリマーは、ノード及びフィブリル微細構造を含むことができ、及び/又は、高度にフィブリル化されうる(すなわち、溶融フィブリルの不織布ウェブ)。例えば、カバー500は蛇行したフィブリルを含みうる。幾つかの実施形態において、蛇行したフィブリルは、カバー500が半径方向又は周方向に拡張可能でありかつ軸方向又は長手方向に拡張可能であることの両方を可能にし得る。したがって、カバー500は、バルーン400とともに拡張することができ、バルーン400の拡張を制限したり、又は、バルーン400及び/又はデバイス300の不均一な拡張を引き起こしたりしない。
【0061】
幾つかの実施形態において、カバー500は、とりわけ、例えば、PMVE-TFE(ペルフルオロメチルビニルエーテル-テトラフルオロエチレン)コポリマー、PAVE-TFE(ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)-テトラフルオロエチレン)コポリマー、シリコーン及びポリウレタンなどのエラストマーを含むことができる。幾つかの例において、エラストマーは、カバー500の伸長及び/又は拡張後に蛇行性フィブリルがそれらの形状、長さなどを回復させるのを助けることができる。適切なカバー及び/又はカバー材料及び/又はステントの例は、2013年12月18日にW.L. Gore&Associates, Inc.によって出願された「Medical Balloon Devices and Methods」というタイトルの米国出願公開第2014/0172066号明細書、及び、2015年11月24日にW.L. Gore & Associates, Inc.によって出願された「Balloon Expandable Endoprosthesis」というタイトルの米国出願公開第2016/0143759号明細書に見ることができる。」
(8)「【0067】
図6は、幾つかの実施形態による、プリーツ又は折り目がないカバー500及びプリーツ及び折り目があるバルーン400の内部を示すカテーテルシステム100の一部の断面図である。示されるように、バルーン400は、折り畳まれ、プリーツ形成され、又は押しつぶされることができ、一方、カバー500はプリーツ510を含まない。したがって、カバー500は、折り畳み、プリーツ又は押し潰しを使用せずに圧縮されうる。そのような実施形態において、バルーン400がプリーツ及び/又は折り目を有する一方で、カバー500はピンと張ることができる。バルーン400が膨張して展開すると、カバー500は伸長して、よりピンと張るようになることができる。幾つかの実施形態において、カバーはまた、カバー表面に適用される薬剤物質(例えば、ヘパリン、抗生物質など)などの治療的処置薬を有することができる。そのような治療的処置薬は、治癒を促進し、組織の炎症を軽減し、感染を軽減又は阻害し、及び/又は、他の様々な治療結果を促進しうる。」
(9)図1「
[図:0001422285000001.jpg]
」
(10)図2「
[図:0001422285000002.jpg]
」
(11)図4「
[図:0001422285000003.jpg]
」
(12)図6「
[図:0001422285000004.jpg]
」
上記(1)~(8)の特に下線部の記載及び(9)~(12)の図面の記載からすれば、引用文献には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「デリバリーカテーテル200と、
デリバリーカテーテル200の遠位端220に維持されて拡張可能なバルーン400と、
バルーン400を包囲するカバー500と、
を備え、
カバー500は、エラストマーを含み、バルーン400の全部又は一部にわたって非拡張構成に維持されることができ、バルーン400を維持し、束縛し又はさもなければ拘束するように構成され、
カバー500は、バルーン400とともに拡張することができ、バルーン400の拡張を制限せず、
カバー500は弾性的に伸長するように構成され、バルーン400は非弾性であるカテーテルシステム100。」
2 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「デリバリーカテーテル200」は、機能及び構造上、本願発明の「シャフト」に相当する。
(2)引用発明の「デリバリーカテーテル200の遠位端220」は、本願発明の「シャフトの先端側」に相当する。また、引用発明の「デリバリーカテーテル200の遠位端220に維持される」「バルーン400」は、デリバリーカテーテル200の遠位端220に維持されるために取り付けられていると表現できる。さらに、引用発明の「拡張可能」は、本願発明の「膨張可能」に相当する。したがって、引用発明の「デリバリーカテーテル200の遠位端に維持されて拡張可能なバルーン400」は、本願発明の「シャフトの先端側に取り付けられて膨張可能なバルーン」に相当する。
(3)本願明細書の段落【0023】には、「被覆部材4がバルーン3の外周を被覆する、とは、被覆部材4が、少なくともバルーン3の主要部分(膨張する部分)の外周を覆うように配置されることをいう。なお、図3(A)に示されるバルーン3の未使用状態や、図3(C)に示されるバルーン3の収縮状態では、バルーン3が折り畳まれているため、被覆部材4の内周面はバルーン3の主要部分の外周面の一部に接触または近接する。」と記載されている。
そして、引用発明の「バルーン400を包囲するカバー500」は、「カバー500」が、上記1(6)、(8)及び上記(12)の図面の記載を参照すると、バルーンの400の外周を被覆していることが明らかであって、「バルーン400とともに拡張することができ」、「弾性的に伸長する」から、本願発明の「前記バルーンの外周を被覆し、前記バルーンの収縮に追従して弾性変形可能な被覆部材」に相当する。
(4)引用発明の「カバー500は、バルーン400とともに拡張することができ、バルーン400の拡張を制限しない」ことは、本願発明の「前記被覆部材は、前記バルーンが膨張するのを許容し、当該バルーンの膨張に伴って膨張」することに相当する。
(5)引用発明の「カバー500は弾性的に伸長するように構成され、バルーン400は非弾性である」構成は、カバー500が弾性で、バルーン400が非弾性であるから、本願発明の「前記被覆部材の弾性率が前記バルーンの弾性率より小さい」構成に相当する。
(6)引用発明の「カテーテルシステム100」は、本願発明の「カテーテル」に相当する。
したがって、両者は、
「シャフトと、
前記シャフトの先端側に取り付けられて膨張可能なバルーンと、
前記バルーンの外周を被覆し、前記バルーンの収縮に追従して弾性変形可能な被覆部材と、
を備え、
前記被覆部材は、前記バルーンが膨張するのを許容し、当該バルーンの膨張に伴って膨張し、
前記被覆部材の弾性率が前記バルーンの弾性率より小さいカテーテル。」
である点で一致し、次の点で一応相違する。
[相違点]
本願発明は、「前記バルーンの未使用状態において、前記被覆部材は、弾性力によって前記バルーンを内周側に押さえつけて」いるのに対し、引用発明は、「カバー500」がそのように特定されていない点。
3 判断
上記相違点について検討する。
引用発明は、「カバー500は、エラストマーを含み、バルーン400の全部又は一部にわたって非拡張構成に維持されることができ、バルーン400を維持し、束縛し又はさもなければ拘束するように構成され」るものであり、引用文献の段落【0003】には、バルーンの圧縮状態において、バルーン直径が小さいことが望ましいことが記載されているから、引用発明は、バルーン400の圧縮状態においてバルーン直径をより小さくすることを考慮したものであり、バルーン400を維持し、束縛し又は拘束できるものであって、エラストマーを含むカバー500は、その弾性力によりバルーン400を内周側に押さえつけている。
したがって、上記相違点は、実質的な相違点ではなく、相違点に係る本願発明の事項は、引用発明が実質的に備える構成にすぎない。
仮に、上記相違点が実質的な相違点であるとしても、バルーンを使用する前の圧縮状態において、バルーン直径をより小さくするため、カバー500の弾性力によってバルーン400を内周側に押さえつける構成とすることは、上記引用文献の段落【0003】の記載に照らして、当業者が容易に想到し得ることである。
したがって、本願発明は、引用発明であり、また、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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