審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2023-011515

R-ピリジルオキシカルボン酸、その塩、そのエステル誘導体、その調製方法、その除草組成物及びその用途

審判番号
2023-011515
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-537921外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年07月07日
審決日
2025年02月25日
公報発行日
2025年08月29日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (C07D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-537921「R-ピリジルオキシカルボン酸、その塩、そのエステル誘導体、その調製方法、その除草組成物及びその用途」拒絶査定不服審判事件〔2020年7月2日国際公開、WO2020/135235、令和4年2月17日国内公表、特表2022-515285〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2019年(令和元年)12月20日〔パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2018年12月27日(以下「本願優先日」という。) 中国(CN)〕を国際出願日とする出願であって、令和4年9月6日付け拒絶理由通知に対し、同年12月9日に意見書とともに手続補正書が提出されたが、令和5年3月3日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年7月7日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、同年8月18日に手続補正書(方式)が提出され、令和6年1月17日に上申書が提出されたものである。 第2 令和5年7月7日にされた手続補正についての補正の却下の決定 〔補正の却下の決定の結論〕 令和5年7月7日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 〔理由〕 1 補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1の記載を、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の下記(A)の記載(令和4年12月9日提出の手続補正書を参照。)から、下記(B)の記載(令和5年7月7日提出の手続補正書を参照。)とする補正事項を含むものである(下線は本件補正による記載の変更箇所を示す。)。 (A) 本件補正前の請求項1の記載 「【請求項1】 式I: 【化1】 [図:0001425025000001.jpg] [式中、 A及びBは、それぞれ独立して、ハロゲン又はC1-C8アルキルを表し、 Cは、水素、ハロゲン又はC1-C8アルキルを表し、 Qは、ハロゲン、シアノ、シアノC1-C8アルキル、ヒドロキシC1-C8アルキル、アミノ、ニトロ若しくはホルミル;ハロゲンを有する若しくは有しない、C1-C8アルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、C3-C8シクロアルキル、C1-C8アルコキシ、C1-C8アルキルチオ、C1-C8アルキルカルボニル、C1-C8アルコキシカルボニル、C1-C8アルキルアミノC1-C8アルキル若しくはC1-C8アルコキシC1-C8アルキル;又は無置換の若しくは置換されている、アリール、ヘテロアリール、アリールC1-C8アルキル若しくはヘテロアリールC1-C8アルキルを表し、 Yは、NR1R2を表し、 R1は、H;1~2個のR11により置換されていてもよいC1-C8アルキル;又は-COR12を表し、 R2は、H又はC1-C8アルキルを表し、 R11は、無置換の若しくはハロC1-C8アルキルからなる群から選択される1~3個の基により置換されている 【化2】 [図:0001425025000002.jpg] を表し、 R12は、H、C1-C18アルキル又はフェニルを表す。] により表されるR-ピリジルオキシカルボン酸、その塩又はそのエステル誘導体であって、 前記塩は、金属塩、アミン塩、スルホニウム塩又はホスホニウム塩であり、 前記エステルは、 【化3】 [図:0001425025000003.jpg] [式中、 Xは、O又はSを表し、 Mは、ハロゲンを有する若しくは有しない、C1-C18アルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、C3-C8シクロアルキル、-C1-C8アルキル-Z、 【化4】 [図:0001425025000004.jpg] 又は無置換の若しくは置換されている、ヘテロシクリル、アリール若しくはヘテロアリールを表し、 Zは、 【化5】 [図:0001425025000005.jpg] シアノ若しくはニトロ;又は無置換の若しくは置換されている、ヘテロシクリル、アリール若しくはヘテロアリールを表し、 R3は、それぞれ独立して、C1-C8アルキル又はC2-C8アルケニルを表し、 R4、R5及びR6は、それぞれ独立して、水素、C1-C8アルキル又はC1-C8アルコキシカルボニルを表す。] であり、 用語「ヘテロシクリル」は、 【化6】 [図:0001425025000006.jpg] を指し、 用語「アリール」は、フェニル又はナフチルを指し、 用語「ヘテロアリール」は、 【化7】 [図:0001425025000007.jpg] を指し、ここで、これらの基は、以下の基: ハロゲン及びシアノ;並びに ハロゲンを有する又は有しない、C1-C6アルキル、OR’’及びSR’’ からなる群から選択される少なくとも1個の基により置換されていてもよく、 R’は、それぞれ独立して、水素;又はハロゲンを有する若しくは有しないC1-C6アルキルを表し、 R’’は、それぞれ独立して、水素又はC1-C6アルキルを表す、前記R-ピリジルオキシカルボン酸、その塩又はそのエステル誘導体。」 (B) 本件補正後の請求項1の記載 「【請求項1】 式I: 【化1】 [図:0001425025000008.jpg] [式中、 A及びBは、それぞれ独立して、ハロゲン又はC1-C8アルキルを表し、 Cは、水素、ハロゲン又はC1-C8アルキルを表し、 Qは、ハロゲン、シアノ、シアノC1-C8アルキル、ヒドロキシC1-C8アルキル、アミノ、ニトロ若しくはホルミル;ハロゲンを有する若しくは有しない、C1-C8アルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、C3-C8シクロアルキル、C1-C8アルコキシ、C1-C8アルキルチオ、C1-C8アルコキシカルボニル、C1-C8アルキルアミノC1-C8アルキル若しくはC1-C8アルコキシC1-C8アルキル;又は無置換の若しくは置換されている、アリール、ヘテロアリール若しくはアリールC1-C8アルキルを表し、 Yは、NR1R2を表し、 R1は、H;1~2個のR11により置換されていてもよいC1-C8アルキル;又は-COR12を表し、 R2は、H又はC1-C8アルキルを表し、 R11は、無置換の若しくはハロC1-C8アルキルからなる群から選択される1~3個の基により置換されている 【化2】 [図:0001425025000009.jpg] を表し、 R12は、H、C1-C18アルキル又はフェニルを表す。] により表されるR-ピリジルオキシカルボン酸、その塩又はそのエステル誘導体であって、 前記塩は、金属塩、アミン塩、スルホニウム塩又はホスホニウム塩であり、 前記エステルは、 【化3】 [図:0001425025000010.jpg] [式中、 Xは、O又はSを表し、 Mは、ハロゲンを有する若しくは有しない、C1-C18アルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、C3-C8シクロアルキル、-C1-C8アルキル-Z、 【化4】 [図:0001425025000011.jpg] 又は無置換の若しくは置換されている、ヘテロシクリル、アリール若しくはヘテロアリールを表し、 Zは、 【化5】 [図:0001425025000012.jpg] シアノ若しくはニトロ;又は無置換の若しくは置換されている、ヘテロシクリル、アリール若しくはヘテロアリールを表し、 R3は、それぞれ独立して、C1-C8アルキル又はC2-C8アルケニルを表し、 R4、R5及びR6は、それぞれ独立して、水素、C1-C8アルキル又はC1-C8アルコキシカルボニルを表す。] であり、 用語「ヘテロシクリル」は、 【化6】 [図:0001425025000013.jpg] を指し、 用語「アリール」は、フェニル又はナフチルを指し、 用語「ヘテロアリール」は、 【化7】 [図:0001425025000014.jpg] を指し、ここで、これらの基は、以下の基: ハロゲン及びシアノ;並びに ハロゲンを有する又は有しない、C1-C6アルキル、OR’’及びSR’’ からなる群から選択される少なくとも1個の基により置換されていてもよく、 R’は、それぞれ独立して、水素;又はハロゲンを有する若しくは有しないC1-C6アルキルを表し、 R’’は、それぞれ独立して、水素又はC1-C6アルキルを表す、前記R-ピリジルオキシカルボン酸、その塩又はそのエステル誘導体。」 2 補正の適否 (1) 補正の目的 ア 発明を特定するために必要な事項の減縮であること 本件補正のうち、請求項1についての補正は、上記1に摘記したとおり、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「式I・・・により表されるR-ピリジルオキシカルボン酸、その塩又はそのエステル誘導体」(「・・・」は摘記の省略を示す。以下同じ。)について、補正後の請求項1では、式中の「Q」及び「Y」の選択肢の一部を削除し、「エステル」である場合の「式I-1」の式中の「M」及び「Z」の選択肢の一部を削除し、その範囲を限定したものである。 具体的には、「Q」の選択肢のうち、「C1-C8アルキルカルボニル」及び「ヘテロアリールC1-C8アルキル」を削除し、「Y」が表している「NR1R2」における「R1」の選択肢の一つである「1~2個のR11により置換されていてもよいC1-C8アルキル」における「R11」について、 「無置換の若しくはハロC1-C8アルキルからなる群から選択される1~3個の基により置換されている [図:0001425025000015.jpg] 」 である場合を削除し、「Q」、「M」及び「Z」の定義中の用語「ヘテロアリール」について、10種の基から6種の基に選択肢を限定し(【化7】)、「M」及び「Z」の定義中の用語「ヘテロシクリル」について、3種の基から1種の基のみに選択肢を限定した(【化6】)ものである。 イ 「産業上の利用分野」及び「解決しようとする課題」が同一であること 補正前の請求項1に記載された発明と、補正後の請求項1に記載された発明とは、いずれも「式I・・・により表されるR-ピリジルオキシカルボン酸、その塩又はそのエステル誘導体」それ自体に係るものであるから、両者の「産業上の利用分野」及び「解決しようとする課題」は同一である。 ウ 補正の目的についてのまとめ したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。 そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか。いわゆる「独立特許要件」。)について、以下検討する。 (2) 独立特許要件について ア 本件補正発明について 本件補正発明は、上記1(B)に摘記した令和5年7月7日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「本件補正請求項1」という。)に記載された事項により特定されるとおりのものである。 ここで、本件補正請求項1の記載によれば、本件補正発明は「式I・・・により表されるR-ピリジルオキシカルボン酸、その塩又はそのエステル誘導体」に係るものであるところ、「R-ピリジルオキシカルボン酸」の「R-」という記号は、「式I」の構造式における「Q」が置換している「*」の印が付されている炭素原子が不斉中心であることを理解できるから、当該炭素原子における立体配置が「R配置」であることを意味しているものと認められる。 そして、「式I」により表されるR-ピリジルオキシカルボン酸の「エステル誘導体」については、「式I-1」により特定されているところ、当該式中の「A」、「B」、「C」、「Y」及び「Q」の定義は、「式I」での定義と同じであると認められる。 イ 引用文献の記載事項 以下、この審決において引用する文献の記載事項を摘記する。なお、摘記中の下線は、注釈がなければ当審合議体が付したものであり、「・・・」は摘記の省略を表す。 (ア) 引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由において引用された本願優先日前に頒布された刊行物である「米国特許第4110104号明細書」(以下、原査定と同様に「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(表を除き、当審合議体による訳文で摘記し、必要に応じて植物名の原文も併記する。以下、引用文献2及び5の摘記についても同様である。)。 ・摘記(1a) 「1.望ましくない植物種の生長を制御する方法であって、植物、植物の一部又はその生息地に対して、除草有効量の以下の一般式に対応する化合物を適用する方法。 [図:0001425025000016.jpg] ここで、Xはクロロ又はブロモを表し;Rはカルバモイル基(-CONR3R4)又はカルボキシル基(-COOH)若しくはそれらのカルボン酸塩を表し;R3及びR4はそれぞれ独立して水素又は炭素数1~8のアルキル基を表し;Mは水素又は低級アルキル基を表し;R1は水素、低級アルキル基、アミノ基、又は炭素数1~4の低級アルキルアミノ基を表し;R2は水素、X、低級アルキル基、アミノ基、又は低級アルキルアミノ基を表し、ただし、R1又はR2のいずれか一方はアミノ基又は低級アルキルアミノ基であり、もう一方のR1又はR2は常にアミノ基又は低級アルキルアミノ基以外である。」 (特許請求の範囲) ・摘記(1b) 「本発明は、植物の栽培及び作物の育成にも関連しており、作物における、出芽、種子の発芽、苗の生長及び収穫を改善するための、農学的な手法及び組成物に関するものである。この発明はまた、除草剤組成物及び重要な経済作物の存在下で望ましくない植物の生長を抑制又は制御する方法にも関連している。」 (1欄63行~2欄2行) ・摘記(1c) 「以下の例は本発明及びこれを実施できる方法を示すが、その全体的な範囲について限定するものとして解釈されるべきではない。 例1 ・・・ 例4 2-[4-アミノ-3,5,6-トリクロロ-2-(ピリジルオキシ)]プロピオン酸(審決注:以下、便宜的に「化合物a」ということがある。) [図:0001425025000017.jpg] 実施例2と同様に調製した2-[4-アミノ-3,5,6-トリクロロ-2-(ピリジルオキシ)]プロピオン酸エチルエステル18.0g(0.6モル)と、150mLの水に溶解した水酸化ナトリウム3.0g(0.08モル)の混合物を、撹拌しながら、95℃で2時間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、2-[4-アミノ-3,5,6-トリクロロ-2-(ピリジルオキシ)]プロピオン酸の生成物を希塩酸で酸性化により沈殿させた。生成物を濾過により62%の理論収率で回収し、186~187℃で融解した。 ・・・ 例8 2-[4-(メチルアミノ)-3,5-ジクロロ-6-フルオロ-2-(ピリジルオキシ)]プロピオン酸(審決注:以下、便宜的に「化合物e」ということがある。) [図:0001425025000018.jpg] 2-[(3,5-ジクロロ-6-フルオロ-4-(メチルアミノ)-2-(ピリジルオキシ)]プロピオン酸エチルエステル6.22g(0.02モル)を50mLのエタノールに溶解することによって、溶液を調製した。この溶液に、25mLの水に水酸化ナトリウム1.6g(0.04モル)を溶解させた溶液を添加した。この混合物を55℃に加温した後、室温まで冷却させた。この冷却した溶液を砕いた氷に注ぎ、塩酸で酸性化した。生成物である2-[(4-(メチルアミノ)-3,5-ジクロロ-6-フルオロ-2-(ピリジルオキシ)]プロピオン酸を白色沈殿として濾過により回収し、50℃で水銀30mLの真空オーブン中で一晩乾燥させた。生成物は5.5gの収量で回収され、172℃~175℃で融解した熱トルエンから再結晶した。分析の結果、その生成物は、炭素、水素及び窒素の含有量が、上記名称の化合物について計算された理論上の含有量が、それぞれ、38.19、3.21及び9.90%であるのに対して それぞれ、38.22、3.17及び9.69%であった。 以下の本発明の化合物は、上述した方法に従って製造される。 ・・・; 186~188℃の融点を有する2-[4-アミノ-3,5-ジクロロ-6-フルオロ-2-(ピリジルオキシ)]-プロピオン酸(審決注:以下、便宜的に「化合物d」ということがある。)。; ・・・ 156~157℃で融解する2-[4-アミノ-3,5-ジクロロ-2-(ピリジルオキシ)]プロピオン酸(審決注:以下、便宜的に「化合物b」ということがある。)。; ・・・ 及び 220℃で分解する2-[4-(メチルアミノ)-3,5,6-トリクロロ-2-(ピリジルオキシ)]-プロピオン酸カリウム塩(審決注:以下、便宜的に「化合物c」ということがある。)。」 (4欄52行~9欄2行) ・摘記(1d) 「本発明の顕著な特徴は、これらの化合物が、出芽後又は出芽前の施用のいずれかにより、例えば、イヌビエ(原文は barnyard grass)、メヒシバ(原文は crabgrass)、キンエノコロ(原文は yellow foxtail)、セイバンモロコシ(原文は Johnson grass)、野生オート麦(原文は wild oats)、ヒルガオ(原文は bindweed)、アカザ(原文は pigweed)、ブタクサ(原文は ragweed)及び野生カラシナ(原文は wild mustard)などの小さな種の草及び広葉植物の生長を防除する能力である。 この能力は極めて重要である。というのも、これらの化合物は、トウモロコシ、イネ、大豆、小麦などの経済的で大きな種子の作物には通常は害を及ぼさないからである。この特徴により、経済的で大きな種子の作物が存在する場合でも、望ましくない小さな種子の植物を選択的に防除することができる。」 (9欄12~24行) ・摘記(1e) 「これらの濃縮組成物の一部を、別々の水の一部に分散して、最終的な水性混合物の100ガロンあたり0.44ポンドのいずれか1つの化合物をそれぞれ含む水性組成物が得られる。希釈された組成物は、非常に望ましい湿潤性及び浸透性を有し、植物の部分にエステル化合物の生長抑制量を散布するのに適している。 例11 本発明の代表的な製品を、イヌビエ(原文は barnyard grass)、野生カラシナ(原文は wild mustard)、メヒシバ(原文は crabgrass)、アカザ(原文は pigweed)、キンエノコロ(原文は yellow foxtail)及びヒルガオ(原文は bindweed)の出芽後の制御について評価した。これらの評価では、上記の植物種が約4インチの高さに生長した区画を使用した。最終的な組成物の百万部に対して4000部の特定のアミノハロピリジン化合物を含む水性スプレー組成物を、例10の手順に従って調製し、別の組成物それぞれを別々の区画に適用した。適用は流出点まで行い、従来のスプレー装置を用いて実施した。他の区画には、対照として毒物を含まない類似の組成物をスプレーした。その後、各区画を植物の生長に適した条件下に維持した。処理から2週間後、各区画の植物の生長を調べ、評価した。処理した区画の試験結果を、以下の表A(Table A)に示す。 [図:0001425025000019.jpg] (審決注:「2-[4-Amino-3,5,6-trichloro-2-(pyridyloxy)propionic acid」は、「2-[4-アミノ-3,5,6-トリクロロ-2-(ピリジルオキシ)]プロピオン酸」(化合物a)であり、 「2-[4-Amino-3,5-dichloro-2-(pyridyloxy)]propionic acid」は、「2-[4-アミノ-3,5-ジクロロ-2-(ピリジルオキシ)]プロピオン酸」(化合物b)である。 「Percent Kill and Control of ・・・」は、「・・・の枯殺及び制御の百分率」を意味する(以下同じ)。) 例12 本発明の代表的な製品を、イヌビエ(原文は barnyard grass)、アサガオ(原文は annual morning glory)、メヒシバ(原文は crabgrass)、シロバナチョウセンアサガオ(原文は Jimson weed)、キンエノコロ(原文は yellow foxtail)、オナモミ(原文は cocklebur)及びセイバンモロコシ(原文は Johnson grass)の出芽後の制御について評価した。・・・。処理した区画の試験結果を、以下の表B(Table B)に示す。 [図:0001425025000020.jpg] (審決注:「2-[4-(Methylamino)-3,5,6-trichloro-2-(pyridyloxy)]propionic acid:potassium salt」は、「2-[4-(メチルアミノ)-3,5,6-トリクロロ-2-(ピリジルオキシ)]プロピオン酸カリウム塩」(化合物c)であり、 「2-[4-Methylamino-3,5-dichloro-6-fluoro-2-(pyridyloxy)]propionic acid」は、「2-[4-メチルアミノ-3,5-ジクロロ-6-フルオロ-2-(ピリジルオキシ)]プロピオン酸」(化合物eと同じ化合物)であり、 「2-[4-Amino-3,5-dichloro-6-fluoro-2-(pyridyloxy)]propionic acid」は、「2-[4-アミノ-3,5-ジクロロ-6-フルオロ-2-(ピリジルオキシ)]プロピオン酸」(化合物d)である。)」 (13欄33行~14欄62行) (イ) 引用文献2の記載事項 原査定の拒絶の理由において引用された本願優先日前に頒布された刊行物である「米国特許第4108629号明細書」(以下、原査定と同様に「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。 ・摘記(2a) 「1.望ましくない植物種の生長を制御する方法であって、植物、植物の一部又はその生息地に対して、除草有効量の以下の一般式に対応する化合物を適用する方法。 [図:0001425025000021.jpg] ここで、Xはクロロ又はブロモを表し;Rは炭素数1~12のアルキル基又は式-(CH2)nOR3のラジカル基を表し、ここで、nは2~4の整数を表し、R3は炭素数1~4の低級アルキル基又はフェニル基を表し;Mは水素又はメチル基を表し;R1は水素、炭素数1~4の低級アルキル基、アミノ基、又は炭素数1~4の低級アルキルアミノ基を表し;R2は水素、X、低級アルキル基、アミノ基、又は低級アルキルアミノ基を表し、ただし、R1又はR2のいずれか一方はアミノ基又は低級アルキルアミノ基であり、もう一方のR1又はR2は常にアミノ基又は低級アルキルアミノ基以外である。」 (特許請求の範囲) ・摘記(2b) 「本発明は、植物の栽培及び作物の育成にも関連しており、作物における、出芽、種子の発芽、苗の生長及び収穫を改善するための、農学的な手法及び組成物に関するものである。この発明はまた、除草剤組成物及び重要な経済作物の存在下で望ましくない植物の生長を抑制又は制御する方法にも関連している。」 (1欄55~62行) ・摘記(2c) 「以下の例は本発明及びこれを実施できる方法を示すが、その全体的な範囲について限定するものとして解釈されるべきではない。 例1: ・・・ 例3: 2-(3,5-ジクロロ-6-フルオロ-4-(メチルアミノ)-2-ピリジルオキシ)プロピオン酸エチルエステル(審決注:以下、便宜的に「化合物h」ということがある。) [図:0001425025000022.jpg] ・・・ 生成物は、67~68.5℃で融解し、分析の結果、炭素、水素及び窒素の含有量が、上記名称の化合物について計算された理論上の含有量が、それぞれ、42.46、4.21及び9.0%であるのに対して それぞれ、42.61、4.23及び8.91%であった。 以下の本発明の化合物は、上述した方法に従って製造される。 ・・・ 1.5231の屈折率を有する2-[4-メチルアミノ-3,5,6-トリクロロ-2-(ピリジルオキシ)]-プロピオン酸n-オクチルエステル(審決注:以下、便宜的に「化合物g」ということがある。); ・・・ 78~83℃の融点を有する2-[4-アミノ-3,5-ジクロロ-2-(ピリジルオキシ)]プロピオン酸エチルエステル(審決注:以下、便宜的に「化合物f」ということがある。); ・・・ 86~88℃の融点を有する2-[4-アミノ-3,5-ジクロロ-6-フルオロ-2-(ピリジルオキシ)]-プロピオン酸エチルエステル(審決注:以下、便宜的に「化合物i」ということがある。);及び」 (3欄38行~5欄53行) ・摘記(2d) 「本発明の顕著な特徴は、これらのエステル化合物が、出芽後又は出芽前の施用のいずれかにより、例えば、イヌビエ(原文は barnyard grass)、メヒシバ(原文は crabgrass)、キンエノコロ(原文は yellow foxtail)、セイバンモロコシ(原文は Johnson grass)、野生オート麦(原文は wild oats)、ヒルガオ(原文は bindweed)、アカザ(原文は pigweed)、ブタクサ(原文は ragweed)及び野生カラシナ(原文は wild mustard)などの小さな種の草及び広葉植物の生長を防除する能力である。 この能力は極めて重要である。というのも、これらの化合物は、トウモロコシ、イネ、大豆、小麦などの経済的で大きな種子を作物には通常は害を及ぼさないからである。 この特徴により、経済的で大きな種子の作物が存在する場合でも、望ましくない小さな種子の植物を選択的に防除することができる。」 (5欄66行~6欄10行) ・摘記(2e) 「これらの濃縮組成物の一部を、別々の水の一部に分散して、最終的な水性混合物の100ガロンあたり0.44ポンドのいずれか1つのエステル化合物をそれぞれ含む水性組成物が得られる。希釈された組成物は、非常に望ましい湿潤性及び浸透性を有し、植物の部分にエステル化合物の生長抑制量を散布するのに適している。 例5 本発明の代表的な製品を、イヌビエ(原文は barnyard grass)、野生カラシナ(原文は wild mustard)、メヒシバ(原文は crabgrass)、アカザ(原文は pigweed)、キンエノコロ(原文は yellow foxtail)及びヒルガオ(原文は bindweed)の出芽後の制御について評価した。これらの評価では、上記の植物種が約4インチの高さに生長した区画を使用した。最終的な組成物の百万部に対して4000部の特定のアミノハロピリジルオキシエステル化合物を含む水性スプレー組成物を、例4の手順に従って調製し、別の組成物それぞれを別々の区画に適用した。適用は流出点まで行い、従来のスプレー装置を用いて実施した。他の区画には、対照として毒物を含まない類似の組成物をスプレーした。その後、各区画を植物の生長に適した条件下に維持した。処理から2週間後、各区画の植物の生長を調べ、評価した。処理した区画の試験結果を、以下の表A(Table A)に示す。 [図:0001425025000023.jpg] (審決注:「2-[4-Amino-3,5-dichloro-2-(pyridyloxy)]propionic acid:ethyl ester」は、「2-[4-アミノ-3,5-ジクロロ-2-(ピリジルオキシ)]プロピオン酸エチルエステル」(化合物f)である。) 例6 本発明の代表的な製品を、イヌビエ(原文は barnyard grass)、アサガオ(原文は annual morning glory)、メヒシバ(原文は crabgrass)、シロバナチョウセンアサガオ(原文は Jimson weed)、キンエノコロ(原文は yellow foxtail)、オナモミ(原文は cocklebur)及びセイバンモロコシ(原文は Johnson grass)の出芽後の制御について評価した・・・。処理した区画の試験結果を、以下の表B(Table B)に示す。 [図:0001425025000024.jpg] (審決注:「2-[4-Methylamino-3,5,6-trichloro-2-(pyridyloxy)]propionic acid:n-octyl ester」は、「2-[4-メチルアミノ-3,5,6-トリクロロ-2-(ピリジルオキシ)]プロピオン酸n-オクチルエステル」(化合物g)であり、 「2-[4-methylamino-3,5-dichloro-6-fluoro-2-pyridyloxy)]-propionic acid:ethyl ester」は、「2-[4-メチルアミノ-3,5-ジクロロ-6-フルオロ-2-ピリジルオキシ)]-プロピオン酸エチルエステル」(化合物hと同じ化合物)であり、 「2-[4-Amino-3,5-dichloro-6-fluoro-2-(pyridyloxy)]propionic acid:ethyl ester」は、「2-[4-アミノ-3,5-ジクロロ-6-フルオロ-2-(ピリジルオキシ)]プロピオン酸エチルエステル」(化合物i)である。) ・・・ 例9 2-[4-アミノ-3,5-ジクロロ-2-(ピリジルオキシ)]プロピオン酸エチルエステル」(審決注:化合物f)を、作物である小麦をともに播種した区画において、雑草であるイヌビエ(原文は barnyard grass)、キンエノコロ(原文は yellow foxtail)、セイバンモロコシ(原文は Johnson grass)、アカザ(原文は pigweed)、ブタクサ(原文は ragweed)及び野生カラシナ(原文は wild mustard)の出芽苗の選択的制御に用いた。・・・。処理から2週間後の区画を調査したところ、全ての雑草種はほぼ完全に枯死して制御され、小麦は旺盛に生育していることが示された。・・・」 (10欄3行~13欄17行) (ウ) 引用文献5の記載事項 原査定の拒絶の理由において引用された本願優先日前に頒布された刊行物である「Kurihara, N., et al.,"Pesticides report 37. Chirality in synthetic agrochemicals: Bioactivity and safety consideration (Technical report)",Pure and Applied Chemistry,1997,69(6),1335-1348」(以下、原査定と同様に「引用文献5」という。)には、以下の事項が記載されている。 ・摘記(5a) 「概要:キラル構造を持つほとんどの合成農薬は、望ましい生物活性が一方のエナンチオ純粋な異性体のみからしか得られなくても、ラセミ体として販売されている。しかし、ピレスロイド系殺虫剤、アリールオキシプロピオン酸エステル系除草剤、トリアゾール系殺菌剤などの一部の合成農薬は、最も生物活性が高い一方のエナンチオ純粋な異性体として販売されている。エナンチオ純粋な農薬の相対的な生物活性、調製及び分析に関する多数の報告がある。また、ラセミ体における異なるエナンチオマーが、どのように選択的に代謝されるかという、いくつかの例も報告されている。農薬がキラル構造を持つ場合、作用機序を明らかにし、代謝経路を解明し、各エナンチオ純粋な異性体の人間及び環境に対する毒性を明らかにするための努力がなされるべきである。ラセミ体の個々のエナンチオマーの生物活性に大きな差がある場合には、求められる生物活性が最も高い一方のエナンチオ純粋な異性体のみを開発し使用することが望ましい。 ・・・ 1.序論 ・・・ 新規な合成キラル農薬の実験室合成では、通常、ラセミ体が生成される。多くのキラル農薬は、ラセミ体として合成され供給されるが、望まれる生物活性は個々のエナンチオ純粋な異性体に限定される場合があり、他の異性体は非常に効果が低いか、或いは完全に不活性であることさえある。・・・ エナンチオマー間で特定の所望の生物活性に大きな差がある場合は、他の異性体が重大な悪影響を示さない場合でも、化学物質の環境への影響を低減するため、所望の生物活性を有する異性体のみを使用することが望ましい。・・・ 最近、農薬及び医薬品の立体化学に関するいくつかの研究論文及び総説が出版されている(参照文献1~4)。したがって、本稿の目的は、キラル農薬に関する広範な総説を提示することではなく、(a)農薬におけるキラリティに関する知識の現状を簡潔にレビューし、(b)キラリティを具体的に考慮することが適切である場合を明らかにすることである。」 (1336頁「概要」欄、1336頁下から7行~1337頁22行) ・摘記(5b) 「6.アリールオキシプロピオン酸エステル及びその他の除草剤 様々な2-アリールオキシプロピオン酸及びそのエステルが、商業用除草剤及び植物生長調節剤として開発されている。これらは葉緑体内のアセチル-CoAカルボキシラーゼを阻害し除草活性を示す。そのプロピオン酸の塩又はエステルの2位は、アリールオキシ基で置換されているため、キラル中心である。通常、その(R)-異性体は(S)-異性体よりも高い除草活性を持つことを示す多くの報告がある。構造的に関連しているアニリノプロパンアミドの誘導体も除草活性を示し、それらのエナンチオマーの異なる活性についても、いくつか報告されている(参照文献82~86)。 6.1 生物活性 研究により、2-アリールオキシプロピオン酸エステル(例:2-(2,4-ジクロロフェノキシ)プロピオン酸)の(+)-エナンチオマーが、アルファルファ胚の誘導において活性を示す一方、(-)型は不活性であることが実証された(参照文献82)。 ストラスマン及びその共同研究者ら(参照文献83)は、フルオログリコフェンエチル、ジクロロプロップP及びメコプロップPを含むフェノキシ系除草剤の生物活性のある異性体のみを使用すること、これにより土壌に適用される化学物質の総量を削減すること、を提唱した。モルヴァン及びその共同研究者ら(参照文献84)も、穀物のうちの双子葉植物の早期の出芽後の制御のために、フルオログリコフェンエチルとジクロロプロップPの混合物を適用するにあたり、同様の見解を示した。フルアジフォップ-P-ブチル((R)型)は、セイヨウアブラナ及び他の広葉作物に対する選択的な除草剤として使用されている(参照文献85)。ジクロロプロップP((R)型:デュプロサンPP、BASF)及びメコプロップP((R)型:デュプロサンKV、BASF)が市販されている。ジクロフォップメチルの両方のエナンチオマーは、稲田における雑草の制御において、同様の出芽前除草活性を示した。しかし、出芽後の適用においては、(R)-(+)-エナンチオマーが、キビ・アワ及びオーツ麦に対し、より高い活性を示した。キノフォップエチル、トリフォップメチル、ナプロパミド(アリールオキシアルカンアミドの一種)の(R)型も、より高い除草活性を有する。フェノプロップ及び関連化合物も同様の立体異性体選択性を示す。 ・・・ 他のいくつかの2-[(アリールオキシ)フェノキシ]プロピオン酸及びその誘導体の除草活性が報告されており、上述したアリールオキシプロピオン酸エステルとともに、表6に示す。 アニリノプロパンアミド誘導体は、アリールオキシプロピオン酸エステルに構造的に関連する除草剤である。WL-19511の(R)-異性体は、(S)-異性体よりも生物活性が高い。対照的に、フラムプロップ-M-イソプロピル、メトラクロール及びCGA-29212の(S)-異性体は、他のエナンチオマーよりも高い除草活性を有する(参照文献88)。 イミダゾール-5-カルボン酸エステルの(R)-異性体は(S)-異性体よりも高い除草活性を有する(表6)。イマザメタベンズ、イマザピル、イマザキン、イマゼタピルなどのイミダゾリノン系除草剤は、いずれもキラル構造を有する、個々のエナンチオマーの相対的な生物活性に関する情報は、まだ得られていない。 表6 アリールオキシプロピオン酸及び関連する除草剤の分子構造 [図:0001425025000025.jpg] [図:0001425025000026.jpg] ・・・ (審決注:「Dichlorprop」、「Clomeprop」、「Mecoprop」、「Fluazifop-P-butyl」、「Fenoxaprop-ethyl」、「Metolachlor」、「Flamprop-M-isopropyl」、「Diclofop」、「Haloxyfop」、「Quizalofop」、「Propaquizalofop」、「Isoxapyrifop」は、それぞれ、「ジクロロプロップ」、「クロメプロップ」、「メコプロップ」、「フルアジフォップ-P-ブチル」、「フェノキサプロップエチル」、「メトラクラー」、「フランプロップーMーイソプロピル」、「ジクロフロップ」、「ハロキシフォップ」、「クイザロフォップ」、「プロパクイザロフォップ」、「イソキサピリフォップ」である。)」 (1342頁下から24行~1344頁の表6の一部) ・摘記(5c) 「7.結論 1. キラル農薬のエナンチオマー間で生物活性が異なる例が数多く観察されている。 2. キラル農薬のエナンチオマー間の生物活性の違いは、作用部位での固有の活性の違いから生じる場合もあれば、代謝的解毒の速度の違いや、標的部位で活性異性体の濃度を減少させる他のプロセスの違いから生じる場合もある。 3. 一部の個々の立体異性体及びエナンチオ純粋な異性体の合成農薬が現在市販されているが(例:ピレスロイド系殺虫剤、アリールオキシプロピオン酸エステル系除草剤、トリアゾール系殺菌剤)、キラルな有機リン系殺虫剤の一方のエナンチオ純粋な異性体は商業的に入手可能でない。 4. エナンチオマー対の分離やキラル合成は、しばしば技術的に困難であり、労力がかかり高価なプロセスである。しかし、いくつかの農薬に対して、キラルなHPLC及びGCカラムを用いた不斉合成及びエナンチオマーの分離の技術が開発されている。純粋なエナンチオ純粋な異性体の調製方法のさらなる改善が期待される。 5. ある事例(エスフェンバレート)では、非標的生物に対する望ましくない毒性反応が、立体異性体の混合物中の生物活性が低い一方のエナンチオ純粋な異性体から生じることが示されたため、毒性ある異性体が除去され、より活性の高い異性体が市販され;これにより有害作用が軽減された。」 (1345頁8~24行) (エ) 引用文献6の記載事項 原査定の拒絶の理由において引用された本願優先日前に頒布された刊行物である「山中 宏、宮崎 浩、村上 尚道,"光学活性体のプレパレーション・生理活性・利用",季刊 化学総説 光学異性体の分離,日本,株式会社学会出版センター,1999年6月10日,No.6,P.8-9,124,212-213」(以下、原査定と同様に「引用文献6」という。)には、以下の事項が記載されている(審決注:下線は、原査定において「引用文献6」として引用された、別事件における「甲第3号証」としての同文献に付されていたものである。)。 ・摘記(6a) 「 [図:0001425025000027.jpg] 」 (9頁1~12行) ・摘記(6b) 「 [図:0001425025000028.jpg] 」 (124頁6~31行) ウ 引用文献1を主引例とする場合 (ア) 引用文献1に記載された発明 引用文献1には、「望ましくない植物種の生長を制御する方法」に用いられる「除草剤組成物」について、一般式に対応する化合物を用いることが記載され(摘記(1a)及び(1b))、例4及び例8として当該一般式に包含される具体的な化合物の合成例が示され、同様の方法により製造した他の化合物についても物性値が示されており(摘記(1c))、例11及び例12では、これらの化合物を用いて、イヌビエなどの複数の植物に対する除草効果を試験した結果が具体的に記載されている(摘記(1e))。 そうすると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 ≪引用発明1≫ 「a.2-[4-アミノ-3,5,6-トリクロロ-2-(ピリジルオキシ)]プロピオン酸、 b.2-[4-アミノ-3,5-ジクロロ-2-(ピリジルオキシ)]プロピオン酸、 c.2-[4-(メチルアミノ)-3,5,6-トリクロロ-2-(ピリジルオキシ)]プロピオン酸カリウム塩、 d.2-[4-アミノ-3,5-ジクロロ-6-フルオロ-2-(ピリジルオキシ)]プロピオン酸、 又は e.2-[4-(メチルアミノ)-3,5-ジクロロ-6-フルオロ-2-(ピリジルオキシ)]プロピオン酸。」 (以下、引用発明1の上記5つの化合物を順に「化合物a」~「化合物e」という。)。 (イ) 対比 本件補正発明と引用発明1とを対比する。 a 引用発明1の化合物aについて 引用発明1の化合物aは、本件補正発明の「式I」において、「A」、「B」及び「C」が「ハロゲン」(クロロ)であり、「Q」が「ハロゲンを有しないC1-C8アルキル」(メチル)であり、「Y」が「NR1R2」を表し、「R1」及び「R2」が「H」である化合物に相当する。 b 引用発明1の化合物bについて 引用発明1の化合物bは、本件補正発明の「式I」において、「A」及び「B」が「ハロゲン」(クロロ)であり、「C」が「水素」であり、「Q」が「ハロゲンを有しないC1-C8アルキル」(メチル)であり、「Y」が「NR1R2」を表し、「R1」及び「R2」が「H」である化合物に相当する。 c 引用発明1の化合物cについて 引用発明1の化合物cは、本件補正発明の「式I」において、「A」、「B」及び「C」が「ハロゲン」(クロロ)であり、「Q」が「ハロゲンを有しないC1-C8アルキル」(メチル)であり、「Y」が「NR1R2」を表し、「R1」及び「R2」の一方が「H」で他方が「C1-C8アルキル」(メチル)である化合物の「金属塩」(カリウム塩)である化合物に相当する。 d 引用発明1の化合物dについて 引用発明1の化合物dは、本件補正発明の「式I」において、「A」及び「B」が「ハロゲン」(クロロ)であり、「C」が「ハロゲン」(フルオロ)であり、「Q」が「ハロゲンを有しないC1-C8アルキル」(メチル)であり、「Y」が「NR1R2」を表し、「R1」及び「R2」が「H」である化合物に相当する。 e 引用発明1の化合物eについて 引用発明1の化合物eは、本件補正発明の「式I」において、「A」及び「B」が「ハロゲン」(クロロ)であり、「C」が「ハロゲン」(フルオロ)であり、「Q」が「ハロゲンを有しないC1-C8アルキル」(メチル)であり、「Y」が「NR1R2」を表し、「R1」及び「R2」の一方が「H」で他方が「C1-C8アルキル」(メチル)である化合物に相当する。 f 本件補正発明と引用発明1との一致点及び相違点 以上のとおり、引用発明1の化合物a~化合物eは、いずれも、本件補正発明の「式I」における「A」、「B」、「C」、「Y」及び「Q」の条件を全て満たすピリジルオキシカルボン酸又はその金属塩であるといえる。 そうすると、本件補正発明と引用発明1との間には、次の一致点及び相違点があるものと認められる。 <一致点> 「 式I: 【化1】 [図:0001425025000029.jpg] [式中、 A及びBは、それぞれ独立して、ハロゲン又はC1-C8アルキルを表し、 Cは、水素、ハロゲン又はC1-C8アルキルを表し、 Qは、ハロゲン、シアノ、シアノC1-C8アルキル、ヒドロキシC1-C8アルキル、アミノ、ニトロ若しくはホルミル;ハロゲンを有する若しくは有しない、C1-C8アルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、C3-C8シクロアルキル、C1-C8アルコキシ、C1-C8アルキルチオ、C1-C8アルコキシカルボニル、C1-C8アルキルアミノC1-C8アルキル若しくはC1-C8アルコキシC1-C8アルキル;又は無置換の若しくは置換されている、アリール、ヘテロアリール若しくはアリールC1-C8アルキルを表し、 Yは、NR1R2を表し、 R1は、H;1~2個のR11により置換されていてもよいC1-C8アルキル;又は-COR12を表し、 R2は、H又はC1-C8アルキルを表し、 R11は、無置換の若しくはハロC1-C8アルキルからなる群から選択される1~3個の基により置換されている 【化2】 [図:0001425025000030.jpg] を表し、 R12は、H、C1-C18アルキル又はフェニルを表す。] により表されるピリジルオキシカルボン酸、その塩又はそのエステル誘導体であって、 前記塩は、金属塩、アミン塩、スルホニウム塩又はホスホニウム塩であり、 前記エステルは、 【化3】 [図:0001425025000031.jpg] [式中、 Xは、O又はSを表し、 Mは、ハロゲンを有する若しくは有しない、C1-C18アルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、C3-C8シクロアルキル、-C1-C8アルキル-Z、 【化4】 [図:0001425025000032.jpg] 又は無置換の若しくは置換されている、ヘテロシクリル、アリール若しくはヘテロアリールを表し、 Zは、 【化5】 [図:0001425025000033.jpg] シアノ若しくはニトロ;又は無置換の若しくは置換されている、ヘテロシクリル、アリール若しくはヘテロアリールを表し、 R3は、それぞれ独立して、C1-C8アルキル又はC2-C8アルケニルを表し、 R4、R5及びR6は、それぞれ独立して、水素、C1-C8アルキル又はC1-C8アルコキシカルボニルを表す。] であり、 用語「ヘテロシクリル」は、 【化6】 [図:0001425025000034.jpg] を指し、 用語「アリール」は、フェニル又はナフチルを指し、 用語「ヘテロアリール」は、 【化7】 [図:0001425025000035.jpg] を指し、ここで、これらの基は、以下の基: ハロゲン及びシアノ;並びに ハロゲンを有する又は有しない、C1-C6アルキル、OR’’及びSR’’ からなる群から選択される少なくとも1個の基により置換されていてもよく、 R’は、それぞれ独立して、水素;又はハロゲンを有する若しくは有しないC1-C6アルキルを表し、 R’’は、それぞれ独立して、水素又はC1-C6アルキルを表す、前記ピリジルオキシカルボン酸、その塩又はそのエステル誘導体。」 <相違点1> 式Iにより表されるピリジルオキシカルボン酸が、本件補正発明では、式中の「Q」が置換している「*」の印が付されている炭素原子における立体配置について「R配置」である(R-異性体である)ことが特定されているのに対して、引用発明1では、当該立体配置(R-異性体であること)が特定されていない点。 (ウ) 相違点についての判断 上記相違点1について検討する。 a 合成農薬のエナンチオ異性体及び光学分割に関する技術常識 引用文献5は、農薬のキラリティについての総説であり(摘記(5a))、除草剤に使用される合成農薬において、「ラセミ体の個々のエナンチオマーの生物活性に大きな差がある場合には、生物活性が最も高い一方のエナンチオ純粋な異性体のみを開発し使用することが望ましい」ことが記載され(摘記(5a))、「キラル農薬のエナンチオマー間の生物活性の違いの例が多数観察されている」ことが記載されている(摘記(5c))。また、例えば、「アリールオキシプロピオン酸エステル」では、プロピオン酸エステルの2位はキラル中心であり、通常、R-異性体はS-異性体よりも高い除草活性を持つことを示す多くの報告があることが記載されている(摘記(5b))。 なお、複数の特許文献、例えば、国際公開2010/044215号、特開2014-005252号公報、特開2011-037870号公報、特開平3-068563号公報においても、除草活性が高い一方のエナンチオマーを除草剤として使用することが記載されている。 そうすると、生物活性を示す除草剤に使用される合成農薬において、R-異性体とS-異性体とでは、その除草活性が大きく異なることがあり、活性が最も高い一方のエナンチオマー異性体のみを選択して使用することが望ましいことが、本願優先日前の技術常識であったと認められる。 また、ラセミ体の化合物について、キラルなHPLC(キラルな高分子を固定相とするHPLC)などによって光学分割することは、本願優先日前における周知慣用手段であったと認められる(摘記(5c)、(6a)及び(6b)を参照。)。 b 引用発明1の化合物のR-異性体の選択について 引用文献1には、引用発明1の5つの化合物(化合物a~e)について、合成したこととともに(摘記(1c))、イヌビエなどの複数の植物に対する除草効果を試験した結果(摘記(1e))が具体的に記載されている。 ここで、引用発明1の化合物a~eは、それらの化学構造からみて、プロピオン酸の部分の2位の炭素原子(本件補正発明における式Iの「Q」が置換している「*」の印が付された炭素原子に対応する。)が不斉原子でありキラル中心であることは、引用文献1の記載に接した当業者であれば当然に認識するものといえる。また、引用文献1には、化合物a~eの合成の過程において光学分割を行ったと認められるような記載はないから、引用文献1に記載されている化合物a~eはラセミ体であると、当業者は理解するものといえる。 そうすると、上記aで認定した合成農薬のエナンチオ異性体及び光学分割に関する本願優先日前の技術常識を踏まえれば、キラル中心を有することが明らかな合成農薬である引用発明1の化合物a~eについて、R-異性体とS-異性体とで除草活性が異なることを予想し、それらのラセミ体をキラルなHPLCなどの周知慣用手段により光学分割して、より優れた除草活性を発揮するエナンチオマー異性体を特定し、その具体的な除草活性を確認することは、当業者ならば容易になし得たことである。 また、引用文献5の記載によれば、様々な2-アリールオキシプロピオン酸及びそれらのエステルにおけるプロピオン酸の部分の2位はキラル中心であり、通常、それらのR-異性体がS-異性体より高い除草活性を持つことを示す多くの報告があるとされていることから(摘記(5b))、当該2-アリールオキシプロピオン酸及びそれらのエステルにおける「アリールオキシ基」部分が「ピリジルオキシ基」であるものに該当する引用発明1の化合物a~eについても、R-異性体がS-異性体より高い除草活性を有することを期待して、その活性の程度を実際に確認し、R-異性体を選択することは、当業者が容易になし得たことである。 c 本件補正発明の効果について (a) 本願明細書の実施例等の記載 本件補正発明における式Iは、非常に多くの化合物を包含するものであるところ、本願明細書には、【0054】【表1】に、式Iのプロピオン酸の部分が遊離酸である本件補正発明の化合物を含む73個のR配置の化合物(No. 1-1~1-73)が、可変基「A」~「Y」の選択肢の組み合わせの形式で列記され、【0055】【表2】に、式Iのプロピオン酸の部分が塩又はエステルである本件補正発明の化合物を含むR配置の387個の化合物(No. 2-1~2-387)が、可変基「A」~「塩/M」の選択肢の組み合わせの形式で列記されており、【0056】【表3】に、上記【表1】及び【表2】に記載されたR配置の化合物のうちの一部のものについて、物性値として1HNMRのデータが示されている。 これらの本願明細書に具体的に記載されているR配置の化合物のうち、「No. 1-2」の化合物は引用発明1の化合物aのR-異性体に該当するものであり、「No. 1-26」の化合物は引用発明1の化合物dのR-異性体に該当するものであり、「No. 1-68」の化合物は引用発明1の化合物eのR-異性体に該当するものである。 また、【0059】~【0067】には、「代表的な化合物の例」として上記【表1】及び【表2】に記載されたR配置の化合物のうちの5つの化合物について具体的な合成例が記載されているところ、【0060】~【0061】には、上記「No. 1-2」の化合物の合成例が具体的に記載されている。 そして、【0068】以降には「生物活性評価」に関する事項が記載されており、植物破壊(=成長阻害率)の活性レベル基準について、生重量阻害率による成長阻害率が「85%以上」の「レベル5」から成長阻害率が「5%未満」の「レベル0」までの次の6段階: レベル5:成長阻害率が85%以上である。 レベル4:成長阻害率が60%以上、85%未満である。 レベル3:成長阻害率が40%以上60%未満である。 レベル2:成長阻害率が20%以上40%未満である。 レベル1:成長阻害率が5%以上、20%未満である。 レベル0:成長阻害率が5%未満である。 で評価した旨の説明が記載され、【0068】~【0073】には、「出芽後段階(post-emergence stage)」の試験の方法及び結果が記載されている。 当該試験結果のうち、【0071】【表4】には、上記【表1】及び【表2】に記載されたR配置の化合物のうちの一部のものについて、イネ科雑草である「Echinochloa crusgalli(イヌビエ)」及び「Digitaria sanguinalis(メヒシバ)」、並びに、広葉雑草である「Monochoria Vaginalis(コナギ)」、「Abutilon theophrasti Medic.(イチビ)」及び「Galium aparine(ヤエムグラ)」に対する活性試験の結果(1000 g a.i./ha)が示されており(審決注:雑草の学名は半角で表記し和名を併記した。以下同じ。)、上述した「No. 1-2」の化合物及び「No. 1-26」の化合物は、上記5種の雑草に対する成長阻害率が全て「レベル5」であったことが示されている。 そして、これに続く【0072】【表5】には、上記【表4】に記載されたR配置の化合物についての試験結果の一部とともに、それらの化合物のうちの一部のもののラセミ体及びS配置の化合物と比較した試験結果が、別のイネ科雑草の「Semen Euphorbiae Lathyridis(ホルトソウ)」及び「イネ」に対する成長阻害率の結果を加えて示されているところ、上述した「No. 1-2」の化合物及び「No. 1-26」の化合物を含めた上記【表1】及び【表2】に記載の化合物のうちの一部のものについて、それぞれラセミ体(引用発明1の化合物a及び化合物dに該当する化合物を含む。)及びS配置の化合物と並べて、次のように記載されている。 「【表5】 [図:0001425025000036.jpg] [図:0001425025000037.jpg] [図:0001425025000038.jpg] [図:0001425025000039.jpg] 」 上記の比較活性試験の結果について、【0073】には、 「さらに、本発明のR-異性体は、ラセミ体及びS-異性体と比較して、イネ科雑草、例えば、Echinochloa crusgalli、Digitaria sanguinalis、Semen Euphorbiae Lathyridisに対する活性が著しく向上しており、イネに対する選択性も良好であった。」(審決注:雑草の学名は半角で摘記した。) と記載されている。 (b) 本件補正発明の想到容易性における効果の参酌 上記(a)で確認した本願明細書の実施例の記載によれば、ラセミ体である引用発明1の化合物a及び化合物dのそれぞれのR-異性体に該当する「No. 1-2」の化合物及び「No. 1-26」の化合物は、それらのラセミ体及びS-異性体よりも、イヌビエなど複数の雑草に対する除草活性が高く、「No. 1-26」の化合物についてはイネに対する選択性も高いことが認められる。 しかしながら、このような本願明細書に記載された本件補正発明の効果については、上記aで認定したとおり、生物活性を示す除草剤に使用される合成農薬において、R-異性体とS-異性体とでは除草活性が大きく異なることがあり、活性が最も高い一方のエナンチオマー異性体のみを選択して使用することが望ましいということが、本願優先日前の技術常識であったのであるから、R-異性体である本件補正発明の「No. 1-2」の化合物及び「No. 1-26」の化合物が、それぞれラセミ体である引用発明1の化合物a及び化合物dよりも高い除草活性を有することは、当業者が予測し得ない顕著な効果であるとはいえない。 また、引用文献1には、同文献に記載された化合物が、「トウモロコシ、イネ、大豆、小麦などの経済的で大きな種子の作物には通常は害を及ぼさない」ことにより、「経済的で大きな種子の作物が存在する場合でも、望ましくない小さな種子の植物を選択的に防除することができる」、ということが記載されているから(摘記(1d))、R-異性体である本件補正発明の化合物が、イネに対する選択性を有すること自体は、当業者が予測し得ることであり、その選択性の程度が、ラセミ体である化合物より高い場合があったとしても、格別顕著な効果であるとまではいえない。 したがって、本願明細書に記載された本件補正発明の効果を参酌したとしても、ラセミ体である引用発明1の化合物a~eについて、そのR-異性体の化合物の発明とすることの容易想到性についての上記bの判断は左右されるものではない。 (エ) 引用文献1を主引例とする場合のまとめ 以上のとおり、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献1及び5に記載された事項、並びに、引用文献5~6に記載の技術常識及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 エ 引用文献2を主引例とする場合 (ア) 引用文献2に記載された発明 引用文献2には、「望ましくない植物種の生長を制御する方法」に用いられる「除草剤組成物」について、一般式に対応する化合物を用いることが記載され(摘記(2a)及び(2b))、例3として当該一般式に包含される具体的な化合物の合成例が示され、同様の方法により製造した他の化合物についても物性値が示されており(摘記(2c))、例5、例6及び例9では、これらの化合物を用いて、イヌビエなどの複数の植物に対する除草効果を試験した結果が具体的に記載されている(摘記(2e))。 そうすると、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 ≪引用発明2≫ 「f.2-[4-アミノ-3,5-ジクロロ-2-(ピリジルオキシ)]プロピオン酸エチルエステル、 g.2-[4-メチルアミノ-3,5,6-トリクロロ-2-(ピリジルオキシ)]-プロピオン酸n-オクチルエステル、 h.2-(3,5-ジクロロ-6-フルオロ-4-(メチルアミノ)-2-ピリジルオキシ)プロピオン酸エチルエステル、 又は i.2-[4-アミノ-3,5-ジクロロ-6-フルオロ-2-(ピリジルオキシ)]-プロピオン酸エチルエステル。」 (以下、引用発明2の上記4つの化合物を順に「化合物f」~「化合物i」という。)。 (イ) 対比 本件補正発明と引用発明2とを対比する。 a 引用発明2の化合物fについて 引用発明2の化合物fは、本件補正発明の「式I-1」において、「A」及び「B」が「ハロゲン」(クロロ)であり、「C」が「水素」であり、「Y」が「NR1R2」を表し、「R1」及び「R2」が「H」であり、「Q」が「ハロゲンを有しないC1-C8アルキル」(メチル)であり、「X」が「O」であり、「M」が「ハロゲンを有しないC1-C8アルキル」(エチル)である「エステル誘導体」に相当する。 b 引用発明2の化合物gについて 引用発明2の化合物gは、本件補正発明の「式I-1」において、「A」、「B」及び「C」が「ハロゲン」(クロロ)であり、「Y」が「NR1R2」を表し、「R1」及び「R2」の一方が「H」で他方が「C1-C8アルキル」(メチル)であり、「X」が「O」であり、「M」が「ハロゲンを有しないC1-C8アルキル」(n-オクチル)である「エステル誘導体」に相当する。 c 引用発明2の化合物hについて 引用発明2の化合物hは、本件補正発明の「式I-1」において、「A」及び「B」が「ハロゲン」(クロロ)であり、「C」が「ハロゲン」(フルオロ)であり、「Y」が「NR1R2」を表し、「R1」及び「R2」の一方が「H」で他方が「C1-C8アルキル」(メチル)であり、「X」が「O」であり、「M」が「ハロゲンを有しないC1-C8アルキル」(エチル)である「エステル誘導体」に該当する。 d 引用発明2の化合物iについて 引用発明2の化合物iは、本件補正発明の「式I-1」において、「A」及び「B」が「ハロゲン」(クロロ)であり、「C」が「ハロゲン」(フルオロ)であり、「Y」が「NR1R2」を表し、「R1」及び「R2」が「H」であり、「Q」が「ハロゲンを有しないC1-C8アルキル」(メチル)であり、「X」が「O」であり、「M」が「ハロゲンを有しないC1-C8アルキル」(エチル)である「エステル誘導体」に相当する。 e 本件補正発明と引用発明2との一致点及び相違点 以上のとおり、引用発明1の化合物f~化合物iは、いずれも、本件補正発明の「式I-1」における「A」、「B」、「C」、「Y」、「Q」、「X」及び「M」の条件を全て満たす「ピリジルオキシカルボン酸」の「エステル誘導体」であるといえる。 そうすると、本件補正発明と引用発明2との間には、上記ウ(イ)fで認定した本件補正発明と引用発明1との間の一致点と同じ一致点があり、以下の相違点2があるものと認められる。 <相違点2> 式I-1により表されるピリジルオキシカルボン酸のエステル誘導体が、本件補正発明では、式中の「Q」が置換している「*」の印が付されている炭素原子における立体配置について「R配置」である(R-異性体である)ことが特定されているのに対して、引用発明2では、当該立体配置(R-異性体であること)が特定されていない点。 (ウ) 相違点についての判断 上記相違点2について検討する。 a 合成農薬のエナンチオ異性体及び光学分割に関する技術常識 合成農薬のエナンチオ異性体及び光学分割に関する技術常識については、上記ウ(ウ)aで認定したとおりである。 b 引用発明2の化合物のR-異性体の選択について 引用文献2には、引用発明2の4つの化合物(化合物f~i)について、合成したこととともに(摘記(2c))、イヌビエなどの複数の植物に対する除草効果を試験した結果(摘記(2e))が具体的に記載されている。 ここで、引用発明2の化合物f~iは、それらの化学構造からみて、プロピオン酸エステルの部分の2位の炭素原子(本件補正発明における式I-1の「Q」が置換している「*」の印が付された炭素原子に対応する。)が不斉原子であり、キラル中心であることは、引用文献2の記載に接した当業者であれば当然に認識するものといえる。また、引用文献2には、化合物f~iの合成の過程において光学分割を行ったと認められるような記載はないから、引用文献2に記載されている化合物f~iはラセミ体であると、当業者は理解するものといえる。 そうすると、上記aで認定した合成農薬のエナンチオ異性体及び光学分割に関する本願優先日前の技術常識を踏まえれば、キラル中心を有することが明らかな合成農薬である引用発明2の化合物f~iについて、R-異性体とS-異性体とで除草活性が異なることを予想し、それらのラセミ体をキラルなHPLCなどの周知慣用手段により光学分割して、より優れた除草活性を発揮するエナンチオマー異性体を特定し、その具体的な除草活性を確認することは、当業者ならば容易になし得たことである。 また、引用文献5の記載によれば、様々な2-アリールオキシプロピオン酸及びそれらのエステルにおけるプロピオン酸の部分の2位はキラル中心であり、通常、それらのR-異性体がS-異性体より高い除草活性を持つことを示す多くの報告があるとされていることから(摘記(5b))、当該2-アリールオキシプロピオン酸及びそれらのエステルにおける「アリールオキシ基」部分が「ピリジルオキシ基」であるものに該当する引用発明2の化合物f~iについても、R-異性体がS-異性体より高い除草活性を有することを期待して、その活性の程度を実際に確認し、R-異性体を選択することは、当業者が容易になし得たことである。 c 本件補正発明の効果について (a) 本願明細書の実施例等の記載 本願明細書には、上記ウ(ウ)c(a)で認定した事項に加えて、次の事項が記載されている。 【0055】【表2】に具体的に記載された化合物のうち、「No. 2-71」の化合物は引用発明2の化合物iのR-異性体に該当するものであり、【0072】【表5】には、「No. 2-71」の化合物について、ラセミ体(引用発明2の化合物iに該当する。)及びS配置の化合物と並べて記載されている。 (b) 本件補正発明の想到容易性における効果の参酌 上記(a)で確認した本願明細書の実施例の記載によれば、ラセミ体である引用発明2の化合物iのR-異性体に該当する「No. 2-71」の化合物は、そのラセミ体及びS-異性体よりも、イヌビエなど複数の雑草に対する除草活性が高く、イネに対する選択性も高いことが認められる。 しかしながら、このような本願明細書に記載された本件補正発明の効果については、上記aで認定したとおり、生物活性を示す除草剤に使用される合成農薬において、R-異性体とS-異性体とでは除草活性が大きく異なることがあり、活性が最も高い一方のエナンチオマー異性体のみを選択して使用することが望ましいということが、本願優先日前の技術常識であったのであるから、R-異性体である本件補正発明の「No. 2-71」の化合物が、ラセミ体である引用発明2の化合物iよりも高い除草活性を有することは、当業者が予測し得ない顕著な効果であるとはいえない。 また、引用文献2には、同文献に記載された化合物が、「トウモロコシ、イネ、大豆、小麦などの経済的で大きな種子の作物には通常は害を及ぼさない」ことにより、「経済的で大きな種子の作物が存在する場合でも、望ましくない小さな種子の植物を選択的に防除することができる」、ということが記載され(摘記(2d))、例9において、引用発明2の化合物fの処理により、イヌビエなどの雑草種はほぼ完全に枯死して制御されたのに対し、小麦は旺盛に生育したことが記載されている(摘記(2e))。 そうすると、R-異性体である本件補正発明の化合物が、イネに対する選択性を有すること自体は、当業者が予測し得ることであり、その選択性の程度が、ラセミ体である化合物よりも高い場合があったとしても、格別顕著な効果であるとまではいえない。 したがって、本願明細書に記載された本件補正発明の効果を参酌したとしても、ラセミ体である引用発明2の化合物f~iについて、そのR-異性体の化合物の発明とすることの容易想到性についての上記bの判断は左右されるものではない。 (エ) 引用文献2を主引例とする場合のまとめ 以上のとおり、本件補正発明は、引用文献2に記載された発明、引用文献2及び5に記載された事項、並びに、引用文献5~6に記載の技術常識及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものである。 オ 請求人の主張について (ア) 審判請求書における請求人の主張の概要 請求人は、令和5年8月18日提出の手続補正書(方式)により補正された審判請求書(以下、単に「審判請求書」という。)において、拒絶査定の理由(進歩性欠如)に対する反論として、概略、以下のa~eの主張をしている(引用文献1又は2を主引例とする場合のみを示す。)。 ・主張a 引用文献1又は2に記載の化合物のコア構造はヘテロアリールに属するピリジルであるが、引用文献5に記載の化合物のコア構造はアリールであり、ヘテロアリール化合物とアリール化合物とが、有意な構造的相違を示し、構造的類似性を有しないことは、当業者に一般的に知られていることであるから、当業者が引用文献1又は2と引用文献5を組み合わせる動機付けは存在しない。また、引用文献5には、R-芳香族オキシアルキルカルボン酸が、通常、対応するS-異性体よりも高い除草活性を有することが記載されているが、アリールとピリジルとの有意な構造的相違により、当業者は、R-ピリジルオキシカルボン酸がS-ピリジルオキシカルボン酸よりも高い除草活性を有することを予測できない。 ・主張b 既存のS-芳香族オキシアルキルカルボン酸には、ラセミ体の芳香族オキシアルキルカルボン酸よりも高い除草活性を有するものが存在し(参考資料1:特開昭63-10749号公報)、引用文献5の技術開示と矛盾しているところ、引用文献1又は2のコア構造と引用文献5のコア構造との有意な相違と相まって、R-ピリジルオキシカルボン酸が、ラセミ体ピリジルオキシカルボン酸又はS-ピリジルオキシカルボン酸よりも高い除草活性を有することを予測することは、当業者といえども極めて困難である。 ・主張c 本願化合物と引用文献1又は2に記載の化合物とは、構造又は立体配置の点で明らかに相違する。 ・主張d 予想外なことに、R配置である本願化合物は、ラセミ体である引用文献1又は2に記載の化合物と比較して、イネ科雑草(Echinochloa crusgalli(イヌビエ)、Digitaria sanguinalis(メヒシバ)及びSemen Euphorbiae Lathyridis(ホルトソウ))に対して有意に向上した活性を有するとともに、イネに対する良好な選択性を有し(本願明細書の【0072】【表5】及び【0073】)、予測し得ない顕著な効果を有する。 ・主張e 引用文献5~7の記載を参照しても、上記a~dで主張した事項は覆らない。特に、引用文献5には、(S)-異性体が他の異性体より高い除草活性を有する例(フラムプロップ-M-イソプロピル、メトラクロール及びCGA-29212)が記載されている(審決注:摘記(5b)を参照。)ことは、「芳香族オキシアルキルカルボン酸やそのエステル類について、R体とS体とで活性が異なり、通常R体が強い活性を示す」ことに完全に反しており、引用文献6には、従来の光学異性体の分離方法が記載されているに過ぎない。 (イ) 審判請求書における請求人の主張についての判断 a 主張aについて 引用発明1の化合物a~e及び引用発明2の化合物f~iがピリジン環を有するのに対し、引用文献5に例示されているアリールオキシプロピオン酸(又はそのエステル)がベンゼン環を有する点で、両者は、その構造の一部に相違があるとしても、6員芳香環が酸素原子を介してプロピオン酸(又はそのエステル)の2位の不斉炭素原子に置換した構造を有する点では共通しており、上記ウ(ウ)及びエ(ウ)で説示したとおり、生物活性を示す除草剤に使用される合成農薬において、R-異性体とS-異性体とでは、その除草活性が大きく異なることがあり、活性が最も高い一方のエナンチオマー異性体のみを選択して使用することが望ましいという、本願優先日前の技術常識を踏まえて、引用文献5に例示されたアリールオキシプロピオン酸(又はそのエステル)のR-異性体が、S-異性体よりも高い除草活性を有することも考慮すれば、それらと一部共通する構造を有する引用発明1の化合物a~e及び引用発明2の化合物f~iについても、R-異性体がS-異性体よりも高い除草活性を有することを期待して、その活性の程度を実際に確認し、R-異性体を選択することは、当業者が容易になし得たことであり、そのことは、本願明細書に記載された本件補正発明の効果を参酌しても、左右されるものではない。 したがって、請求人の上記主張aは採用できない。 b 主張bについて 引用文献5に記載のアリールオキシプロピオン酸(又はそのエステル)と一部共通する構造を有する既知の芳香族オキシアルキルカルボン酸の中に、S-異性体のほうがラセミ体よりも高い除草活性を有する化合物が存在するとしても、上記aでも述べた生物活性を示す除草剤に使用される合成農薬のエナンチオ異性体の除草活性に関する技術常識と矛盾するものではないし、少なくとも、R-異性体又はS-異性体の一方が、他方及びラセミ体よりも高い除草活性を有することを期待して、それら異性体を取得する動機付けは十分にあるといえ、結果的に、R-異性体のほうが高い除草活性を有するということを確認したとしても、当業者が予測できない格別顕著な効果であるとはいえない。 したがって、請求人の上記主張bは採用できない。 c 主張cについて 上記ウ(イ)及びエ(イ)で認定したとおり、本件補正発明の化合物は、引用発明1の化合物a~e及び引用発明2の化合物f~iとは、構造は共通しており、立体配置について「R配置」であることが特定され、R-異性体であることが特定されている点でのみ相違するものであるところ、当該相違点については、上記ウ(ウ)及びエ(ウ)で説示したとおり、当業者が容易に想到し得るものである。 したがって、請求人の上記主張cは採用できない。 d 主張dについて 上記ウ(ウ)c(b)及びエ(ウ)c(b)で説示したとおり、引用文献1及び2には、両文献に記載された化合物が、「トウモロコシ、イネ、大豆、小麦などの経済的で大きな種子の作物には通常は害を及ぼさない」ことにより、「経済的で大きな種子の作物が存在する場合でも、望ましくない小さな種子の植物を選択的に防除することができる」ことが記載されているから、R-異性体である本件補正発明の化合物が、イネに対する選択性を有すること自体は、当業者が予測し得ることであり、その選択性の程度が、ラセミ体である引用発明1及び引用発明2の化合物よりも高いとしても、格別顕著な効果であるとまではいえず、そのような本願明細書に記載された本件補正発明の効果を参酌したとしても、ラセミ体である引用発明1及び引用発明2の化合物のR-異性体の発明とすることの容易想到性の判断は左右されるものではない。 したがって、請求人の上記主張dは採用できない。 e 主張eについて 請求人の上記主張a~dが、いずれも採用できないことは、既に説示したとおりであり、引用文献5に(S)-異性体のほうが高い除草活性を有する除草剤の例も記載されていることは、上記aでも述べた生物活性を示す除草剤に使用される合成農薬のエナンチオ異性体の除草活性に関する技術常識と矛盾するものではないし、引用文献6に記載された従来の光学異性体の分離方法は、周知慣用技術であるから、これを採用してラセミ体である引用発明1及び2の化合物の光学分割を行うことは、当業者が容易になし得ることである。 したがって、請求人の上記主張eは採用できない。 (ウ) 上申書における請求人の主張について 請求人は、令和6年1月17日提出の上申書において、特許請求の範囲の補正案1及び補正案2を提示するとともに、これらの補正案による本願発明は、予測し得ない技術的効果を有する旨を主張し、特許請求の範囲の補正を行う機会を求めている。 しかしながら、特許法においては、拒絶査定不服審判の請求と同時に特許請求の範囲等の補正をすることができることを定めているから、それ以外に特段の理由なく補正の機会を設けることは、法律の規定するところではないうえ、引用文献1又は2を主引例とした、引用文献5及び6に記載の技術常識及び周知技術を適用することによる、本願に係る発明の進歩性の欠如については、原審における令和4年9月6日付け拒絶理由通知から一貫して指摘され続けてきたことであり、請求人(出願人)には、特許請求の範囲を補正する機会が既に十分に与えられていたといえるから、審判の請求と同時にした特許請求の範囲の補正によっても、原査定の理由が解消していない場合にまで、敢えて新たに特許請求の範囲を補正する機会を設けるべきものとすることはできない。 カ 独立特許要件についてのまとめ 以上のとおり、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献1及び5に記載された事項、並びに、引用文献5~6に記載の技術常識及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、引用文献2に記載された発明、引用文献2及び5に記載された事項、並びに、引用文献5~6に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。 3 補正の却下の決定のむすび 以上のとおりであるから、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなく、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記〔補正の却下の決定の結論〕のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願に係る発明は、令和4年12月9日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は、上記第2の1(A)に摘記したとおりのものである(以下、当該請求項1に係る発明を「本願発明」という。)。 2 原査定の拒絶の理由 原査定は、 「この出願については、令和 4年 9月 6日付け拒絶理由通知書に記載した理由1によって、拒絶をすべきものです。」 というものであり、その理由1は、令和4年9月6日付け拒絶理由通知書に記載された、 「1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・・・ ●理由1について ・請求項 1-10 ・引用文献等 1-7 ・・・ <引用文献等一覧> 1.米国特許第4110104号明細書 2.米国特許第4108629号明細書 3.米国特許第3755339号明細書 4.仏国特許出願公開第2237887号明細書 5.Kurihara, N., et al.,Pesticides report 37. Chirality in synthetic agrochemicals: Bioactivity and safety consideration (Technical report),Pure and Applied Chemistry,1997年,69(6),1335-1348. 6.山中 宏、宮崎 浩、村上尚道,光学活性体のプレパレーション・生理活性 ・利用,季刊 化学総説 光学異性体の分離,日本,株式会社学会出版センター,1999年06月10日,No.6,P.8-9,124,212-213,甲第3号証(周知技術を示す文献) 7.特開昭52-108978号公報」 というものである。 そして、上記拒絶理由通知書では、上記理由1について、次の点が指摘されている(下線は、当審において付したものである。)。 「引用文献1-4には、除草剤である4-アミノ-ピリジノールカルボン酸やそのエステル類が記載され、かかるピリジノールカルボン酸やそのエステルを、ピリジノールと対応するハロアルキルカルボン酸またはハロアルキルエステルとの反応により製造することも記載されている(引用文献1-4;特許請求の範囲、実施例)。 本願の請求項1-10に係る発明と引用文献1-4に記載された発明とを対比すると、両者は、本願発明が4-アミノ-ピリジノールカルボン酸やそのエステル類のR体であるのに対し、引用文献1-4に記載された発明はラセミ体である点で相違する。 しかしながら、引用文献1-4に記載の除草剤である4-アミノ-ピリジノールカルボン酸やそのエステル類は、ピリジノールエーテルが連結した炭素原子が不斉炭素原子であり、光学異性体が存在することはその化学構造から明らかであるところ、引用文献5に記載されるように、光学活性な除草剤である芳香族オキシアルキルカルボン酸やそのエステル類について、R体とS体とで活性が異なり、通常R体が強い活性を示す、といったように、光学異性体の存在を意識して活性に優れる方を選択することが知られている(CONTENTS 6)。そうすると、引用文献1-4に記載の4-アミノ-ピリジノールカルボン酸やそのエステル類について、その不斉炭素原子に基づくR体、S体が存在することに着目し、既知の不斉反応や光学分割法等の慣用の光学異性体の分離方法(かかる慣用の光学異性体の分離方法については、要すれば引用文献6を参照)によりR体とS体を単離して活性等でよりすぐれた方を選択することは当業者が容易になしえることである。また、その際、4-アミノ-ピリジノールカルボン酸の光学活性なエステルに関し、引用文献7に記載の除草剤であるピリジノールカルボン酸のエステル(実施例2の表)として、アルキルエステルと同様に既知のアリールアルキルエステルやヘテロシクリルアルキルエステルを使用し、新たなエステル体を創製することも当業者が適宜なしえることである。 そして、本願発明のR体が奏する効果は、光学活性体であるR体、S体のうち活性に優れる方を選択した結果発揮されるものにすぎず、引用文献1-7の記載から当業者が予測し得ない格別顕著なものであるとは認められない。」 また、原査定では、上記理由1について、次の点も指摘されている。 「出願人は、意見書において、下記主張1-2に基づき、補正後の本願請求項1-9に係る発明の進歩性は、引用文献1-7によって否定されない旨主張する。 (主張1) 本願化合物は、引用文献1-4に記載の化合物と比較して、イネ科雑草(Echinochloa crusgalli、Digitaria sanguinalis及びSemen Euphorbiae Lathyridis)に対して顕著に向上した活性を有するとともに、イネに対する良好な選択性を有すること。 (主張2) ・・・ 上記主張1-2について検討する。 主張1における本願化合物の効果は、引用文献1-4に記載の化合物のR体とS体とを単離して効果の優れた方を選択したことによる効果に過ぎない。そして、引用文献5には、引用文献1~4に記載の化合物と類似した構造を有する2-アリルオキシプロパン酸及びそのエステル類は、通常R体が強い除草活性を示すことが記載されていることからも、引用文献1-4に記載の化合物のR体が高い除草活性を示すことは、当業者の予測の範囲内である。」 3 当審における判断 上記第2の2(1)アで説示したとおり、本件補正発明は、本願発明における「式I・・・により表されるR-ピリジルオキシカルボン酸、その塩又はそのエステル誘導体」において、式中の「Q」及び「Y」の選択肢の一部を削除し、「エステル」である場合の「式I-1」の式中の「M」及び「Z」の選択肢の一部を削除し、その範囲を限定したものである。 そうすると、上記第2の2(2)で説示したとおり、本願発明と比較して、その範囲が限定された本件補正発明が、引用文献1に記載された発明、引用文献1及び5に記載された事項、並びに、引用文献5~6に記載の技術常識及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものであり、また、引用文献2に記載された発明、引用文献2及び5に記載された事項、並びに、引用文献5~6に記載の技術常識及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるから、本件補正発明を包含する関係にある本願発明についても、引用文献1に記載された発明、引用文献1及び5に記載された事項、並びに、引用文献5~6に記載の技術常識及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものであり、また、引用文献2に記載された発明、引用文献2及び5に記載された事項、並びに、引用文献5~6に記載の技術常識及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献1及び5に記載された事項、並びに、引用文献5及び6に記載の技術常識及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであり、また、引用文献2に記載された発明、引用文献2及び5に記載された事項、並びに、引用文献5及び6に記載の技術常識及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2023-011515

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決1件(チンタオ、キングアグルート、ケミカル、コンパウンド、カンパニー、リミテッド)
  • 2023-014043拒絶査定不服審判 / 2025-10-28 / 原査定取消(特許/登録すべき)変異型p-ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ、それをコードする核酸およ…
    同じ当事者: チンタオ、キングアグルート、ケミカル、コンパウンド、カンパニー、リミテッド
同じ根拠条文の審決7,656件(特許法29条2項)
  • 2024-007671拒絶査定不服審判 / 2026-03-24 / 請求不成立ヘテロ二環式有機酸およびその塩類
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2023-000939拒絶査定不服審判 / 2024-12-20 / 請求不成立1-(4-{[6-アミノ-5-(4-フェノキシ-フェニル)-ピリミジン-4-イル…
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2023-007054拒絶査定不服審判 / 2024-12-02 / 請求不成立N-メチル-2-ピロリドンの精製方法及び精製システム
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2023-002484拒絶査定不服審判 / 2024-11-11 / 請求不成立エレクトロルミネセンスデバイスのための有機ホスト材料
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2023-010536拒絶査定不服審判 / 2024-10-15 / 請求不成立N-[1-(5-シアノ-ピリジン-2-イルメチル)-1H-ピラゾール-3-イル]…
    共通の条文: 特許法29条2項
検索でもっと見る →
同じ論点・分野の審決(審決分類)542件(121・C07D)
  • 2024-002953拒絶査定不服審判 / 2026-08-21 / 原査定取消(特許/登録すべき)RIPK1阻害剤としての縮合環ヘテロアリール化合物
    共通の審決分類: 121・C07D
  • 2024-005379拒絶査定不服審判 / 2026-08-17 / 原査定取消(特許/登録すべき)TSPO結合剤
    共通の審決分類: 121・C07D
  • 2024-010499拒絶査定不服審判 / 2026-08-17 / 原査定取消(特許/登録すべき)有機化合物
    共通の審決分類: 121・C07D
  • 2024-011315拒絶査定不服審判 / 2026-08-17 / 原査定取消(特許/登録すべき)バイオベースポリマーを生成するためのモノマー及び他の反応物の色安定化
    共通の審決分類: 121・C07D
  • 2024-012358拒絶査定不服審判 / 2026-08-17 / 原査定取消(特許/登録すべき)セレンテラジンの合成
    共通の審決分類: 121・C07D

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存