特許拒絶査定不服審判
2023-002484
エレクトロルミネセンスデバイスのための有機ホスト材料
- 審判番号
- 2023-002484
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-176054
- 請求日
- 2023年02月14日
- 審決日
- 2024年11月11日
- 公報発行日
- 2025年04月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ユニバーサル ディスプレイ コーポレイション
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 【請求人代理人】廣田 浩一
- 【請求人代理人】伊東 忠彦
- 審判長/審判官
- 審判長 阪野 誠司
- 審判官 瀬良 聡機
- 審判官 松元 麻紀子
- 分類
- P18 .121-WZ (C07D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-176054「エレクトロルミネセンスデバイスのための有機ホスト材料」拒絶査定不服審判事件〔令和元年5月9日出願公開、特開2019-69938〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)9月20日(パリ条約による優先権主張 2017年10月5日 米国(US)、2018年9月11日 米国(US))の出願であって、令和4年2月24日付けで拒絶理由が通知され、同年7月28日に意見書及び手続補正書が提出され、同年10月27日付けで拒絶査定され、令和5年2月14日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年6月5日及び令和6年3月12日に上申書が提出され、同年6月25日付けで当審合議体から拒絶理由が通知され、同年9月26日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明について
この出願の特許請求の範囲の請求項1~9に係る発明は、令和6年9月26日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】
下記からなる群より選択されることを特徴とする化合物。
【化1】
[図:0001420702000001.jpg]
(式中、RA、RB、RC、及びRDは、それぞれ独立して、モノから置換の最大可能数を表す、又は無置換を表し;
Lが、置換又は非置換の6員芳香族環であり;
R、RA、RB、及びRCは、それぞれ独立して、水素である、又は重水素、フッ素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、アミノ、シリル、及びこれらの組合せからなる群から選択される置換基であり;
RDは、フェニル、ビフェニル、トリフェニル、トリフェニレン、ナフタレン、置換のフェニル、置換のビフェニル、置換のトリフェニル、置換のトリフェニレン、及び置換のナフタレンからなる群から選択される置換基であり、ジベンゾチオフェン基を含まない。)
(ただし、前記化合物は、下記化合物ではない。)
【化2】
[図:0001420702000002.jpg]
」
第3 当審合議体から通知した拒絶理由の理由
1 令和6年6月25日付け拒絶理由通知の拒絶の理由のうち理由3は、概略、次のとおりである。
理由3:(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・・・
記
・・・
引用文献5:特表2014-518900号公報(原審の拒絶査定で引用された引用文献5)
・・・
理由3について
請求項1、4、5、7~11について
引用文献5
・・・
・・・本願発明1の化合物の置換基や連結基に関して、実質的相違点があった場合においても、摘記(1a)一般式における選択肢が十分に少ない場合や、摘記(1c)の個別の化合物の各構造から、当業者が置換基や連結基を変更できることを認識できる場合に関しては、当該相違点は、引用発明5及び引用文献5に記載された技術的事項及び本願優先日時点の技術常識を参酌すれば当業者が容易になし得る技術的事項である。
そして、本願発明1の効果は、本願明細書全体において、具体性をもって記載されておらず、予測できない、かつ顕著な効果であるとはいえない。
・・・
したがって、本願発明1は、・・・引用文献5に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものである。
2 ここで、本願発明は、当審合議体から通知された拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の対象となった補正前の請求項1に係る発明(上記1における「本願発明1」に当たる。)に包含されており、既に当審拒絶理由として通知されていたものである。
3 審判請求人は、令和6年9月26日付け意見書1頁下から5~3行で、補正により請求項1の「R、RA、RB、及びRC」の規定について、理由3が指摘されていない請求項2及び3を組み入れた旨主張している。
しかしながら、請求項2及び3に拒絶理由が通知されていなかったのは、「R、RA、RB、及びRC」の選択肢に水素がない(すなわち、引用発明に該当しない。)からであり、今回の補正によっても、進歩性の拒絶理由の根拠となり指摘された引用発明が該当する「RA、RB、及びRC」は「水素である、又は」との記載はそのまま残っており(請求項2及び3が組み込まれていない。)、上記のとおり、本願発明に該当する化合物について、既に拒絶理由が通知されていたと判断すべきである。
第4 当審合議体の判断
当審合議体は、上記当審拒絶理由の理由3のとおり、本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献5に記載された発明及び本願の優先日時点の技術常識に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることはできないと考える。
引用文献5 特表2014-518900号公報
理由は以下のとおりである。
以下、文献の摘記はすべて全角で表記する。また、文献からの摘記箇所における「・・・」は記載の省略を示し、下線は当審合議体による。
1 引用文献5の記載
原査定及び当審拒絶理由で引用された本願優先日前に頒布された刊行物である上記「引用文献5」には、次の記載がある。
(1a)「【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電子材料用の新規な化合物および同化合物を使用した有機電界発光素子に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、高い発光効率および長い動作寿命を素子に与え、適切なカラーコーディネーションを有する優れた構造を有する有機電子材料用の化合物;ならびに前記化合物を使用した、高い効率および長い動作寿命を有する有機電界発光素子を提供することである。
・・・
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、以下の式1により表される化合物により、上記目的が達成され得ることを見出した:
【化1】
[図:0001420702000003.jpg]
式中、
L1およびL2は、それぞれ独立に、単結合、置換もしくは非置換3~30員ヘテロアリーレン基、置換もしくは非置換(C6-C30)アリーレン基、または置換もしくは非置換(C6-C30)シクロアルキレン基を表し;
X1はCHまたはNを表し;
Y1~Y3は、それぞれ独立に、-O-、-S-、-CR6R7-または-NR8-を表し、但しY2およびY3は同時には存在せず;
R1~R5は、それぞれ独立に、水素、重水素、ハロゲン、置換もしくは非置換(C1-C30)アルキル基、置換もしくは非置換(C6-C30)アリール基、置換もしくは非置換3~30員ヘテロアリール基、置換もしくは非置換(C3-C30)シクロアルキル基、置換もしくは非置換5~7員ヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換(C6-C30)アリール(C1-C30)アルキル基、-NR11R12、-SiR13R14R15、-SR16、-OR17、シアノ基、ニトロ基またはヒドロキシル基を表すか;あるいは1つもしくは複数の隣接置換基と結合して、単環式もしくは多環式の、(C5-C30)脂環式環または芳香環を形成しており、その環の1つもしくは複数の炭素原子は窒素、酸素および硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子で置きかえられていてもよく;
R6~R8およびR11~R17は、それぞれ独立に、水素、重水素、ハロゲン、置換もしくは非置換(C1-C30)アルキル基、置換もしくは非置換(C6-C30)アリール基、置換もしくは非置換3~30員ヘテロアリール基、置換もしくは非置換5~7員ヘテロシクロアルキル基、または置換もしくは非置換(C3-C30)シクロアルキル基を表すか;あるいは1つもしくは複数の隣接置換基と結合して、単環式もしくは多環式の、(C5-C30)脂環式環または芳香環を形成しており、その環の1つもしくは複数の炭素原子は窒素、酸素および硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子で置きかえられていてもよく;
a、b、cおよびeは、それぞれ独立に、1~4の整数を表し;a、b、cまたはeが2以上の整数である場合には、R1の各々、R2の各々、R3の各々またはR5の各々は同一かまたは異なっており;
dは1~3の整数を表し;dが2以上の整数である場合には、R4の各々は同一かまたは異なっており;
前記ヘテロシクロアルキル基およびヘテロアリール(ヘテロアリーレン)基はB、N、O、S、P(=O)、SiおよびPから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明による有機電子材料用の化合物は、高い発光効率および長い動作寿命を有する有機電界発光素子を製造することができる。
【0012】
さらに、本発明による化合物は電子を輸送する効率が高いので、素子を製造する際に結晶化を防ぐことができるであろう。さらに、この化合物は、良好な層形成性を有し、素子の電流特性を改善する。そのため、この化合物は低下した駆動電圧および増加した電力効率を有する有機電界発光素子をもたらすことができる。」
(1b)「【0015】
本明細書中、・・・;「(C6-C30)アリール(アリーレン)」は、6~30個の炭素原子を有する芳香族炭化水素由来の単環または縮合環であり、ここで、炭素原子の数は好ましくは6~20個、より好ましくは6~12個であり、それだけに限らないが、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフチル、フルオレニル、フェナントレニル、アントラセニル、インダニル、インデニル、トリフェニレニル、ピレニル、テトラセニル、ペリレニル、クリセニル、ナフタセニル、フルオランテニルなどが挙げられる;
・・・
【0016】
本明細書中、「置換または非置換」という表現中の「置換」は、特定の官能基中の水素原子が別の原子または基、すなわち、置換基で置きかえられていることを意味する。
【0017】
L1、L2、R1~R5、R6~R8およびR11~R17基中の置換アルキル(アルキレン)基、置換アルケニル基、置換アルキニル基、置換シクロアルキレン基、置換シクロアルキル基、置換ヘテロシクロアルキル基、置換アリール(アリーレン)基、置換ヘテロアリール(ヘテロアリーレン)基および置換芳香環の置換基は、それぞれ独立に、好ましくは重水素、ハロゲン、ハロゲンで置換されたもしくは置換されていない(C1-C30)アルキル基、(C6-C30)アリール基、(C1-C30)アルキルもしくは(C6-C30)アリールで置換されたまたは置換されていない3~30員ヘテロアリール基、(C3-C30)シクロアルキル基、3~7員ヘテロシクロアルキル基、トリ(C1-C30)アルキルシリル基、トリ(C6-C30)アリールシリル基、ジ(C1-C30)アルキル(C6-C30)アリールシリル基、(C1-C30)アルキルジ(C6-C30)アリールシリル基、(C2-C30)アルケニル基、(C2-C30)アルキニル基、シアノ基、カルバゾリル基、ジ(C1-C30)アルキルアミノ基、(C1-C30)アルキルで置換されたもしくは置換されていないジ(C6-C30)アリールアミノ基、(C1-C30)アルキル(C6-C30)アリールアミノ基、ジ(C6-C30)アリールボロニル基、ジ(C1-C30)アルキルボロニル基、(C1-C30)アルキル(C6-C30)アリールボロニル基、(C6-C30)アリール(C1-C30)アルキル基、(C1-C30)アルキル(C6-C30)アリール基、カルボキシル基、ニトロ基、およびヒドロキシル基からなる群から選択される少なくとも1つであり、より好ましくは重水素、ハロゲン、ハロゲンで置換されたもしくは置換されていない(C1-C30)アルキル基、(C6-C30)アリール基、(C1-C30)アルキル(C6-C30)アリール基、(C1-C30)アルキルもしくは(C6-C30)アリールで置換されたまたは置換されていない3~30員ヘテロアリール基、(C3-C30)シクロアルキル基、トリ(C6-C30)アリールシリル基、(C1-C30)アルキルで置換されたもしくは置換されていないジ(C6-C30)アリールアミノ基、および(C6-C30)アリール(C1-C30)アルキル基からなる群から選択される少なくとも1つであり、さらにより好ましくは重水素、フッ素、メチル、フェニル、ナフチル、ビフェニル、トリフェニルシリル、tert-ブチルで置換されたジフェニルアミノ、tert-ブチルで置換されたカルバゾリルからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0018】
上記式1中、L1およびL2は、それぞれ独立に、好ましくは単結合、(C1-C6)アルキルで置換されたもしくは置換されていない(C6-C12)アリーレン基、または非置換(C6-C30)シクロアルキレン、より好ましくは単結合、フェニレン、ビフェニレン、ジメチルフェニレンまたはシクロヘキシレンである。
・・・
【0023】
本発明の代表的な化合物には、それだけに限らないが以下の化合物が挙げられる:
【化4】
[図:0001420702000004.jpg]
【化5】
[図:0001420702000005.jpg]
【化6】
[図:0001420702000006.jpg]
【化7】
[図:0001420702000007.jpg]
【化8】
[図:0001420702000008.jpg]
【化9】
[図:0001420702000009.jpg]
【化10】
[図:0001420702000010.jpg]
【化11】
[図:0001420702000011.jpg]
【化12】
[図:0001420702000012.jpg]
【化13】
[図:0001420702000013.jpg]
【化14】
[図:0001420702000014.jpg]
」
(1c)「【0024】
本発明による有機電子材料用の化合物は、以下の反応スキームにしたがって調製され得る。
【化15】
[図:0001420702000015.jpg]
【化16】
[図:0001420702000016.jpg]
式中、R1~R5、Y1~Y3、X1、L1、L2、a、b、c、dおよびeは上記式1に定義される通りであり、Xはハロゲンを表す。
【0025】
さらに、本発明は、式1の化合物を含む有機電界発光素子を提供する。前記有機電界発光素子は、第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と第2の電極との間の少なくとも1個の有機層とを含む。前記有機層は、本発明による式1の少なくとも1種の化合物を含む。さらに、前記有機層は、式1の化合物がホスト材料として含まれる発光層を含む。
【0026】
さらに、本発明によるホスト材料と共に有機電界発光素子に使用される燐光ドーパントは、以下の式2により表される化合物から選択され得る:
【化17】
[図:0001420702000017.jpg]
式中、M1はIr、Pt、PdおよびOsからなる群から選択され;L101、L102およびL103は、それぞれ独立に、以下の構造から選択され:
【化18】
[図:0001420702000018.jpg]
R201~R203は、それぞれ独立に、水素、重水素、ハロゲン(複数可)で置換されていないもしくは置換された(C1-C30)アルキル基、(C1-C30)アルキル基(複数可)で置換されていないもしくは置換された(C6-C30)アリール基、またはハロゲンを表し;
R204~R219は、それぞれ独立に、水素、重水素、置換もしくは非置換(C1-C30)アルキル基、置換もしくは非置換(C1-C30)アルコキシ基、置換もしくは非置換(C3-C30)シクロアルキル基、置換もしくは非置換(C2-C30)アルケニル基、置換もしくは非置換(C6-C30)アリール基、置換もしくは非置換モノ-またはジ-(C1-C30)アルキルアミノ基、置換もしくは非置換モノ-またはジ-(C6-C30)アリールアミノ基、SF5、置換もしくは非置換トリ(C1-C30)アルキルシリル基、置換もしくは非置換ジ(C1-C30)アルキル(C6-C30)アリールシリル基、置換もしくは非置換トリ(C6-C30)アリールシリル基、シアノ基、またはハロゲンを表し;
R220~R223は、それぞれ独立に、水素、重水素、ハロゲン(複数可)で置換されていないもしくは置換された(C1-C30)アルキル基、または(C1-C30)アルキル基(複数可)で置換されていないもしくは置換された(C6-C30)アリール基を表し;
R224およびR225は、それぞれ独立に、水素、重水素、置換もしくは非置換(C1-C30)アルキル基、置換もしくは非置換(C6-C30)アリール基、またはハロゲンを表し、あるいはR224およびR225は縮合環を有するかもしくは有さない(C3-C12)アルキレン基または(C3-C12)アルケニレン基を介して互いに結合して、単環式もしくは多環式の、脂環式環または芳香環を形成してもよく;
R226は、置換もしくは非置換(C1-C30)アルキル基、置換もしくは非置換(C6-C30)アリール基、置換もしくは非置換5または30員ヘテロアリール基、またはハロゲンを表し;
R227~R229は、それぞれ独立に、水素、重水素、置換もしくは非置換(C1-C30)アルキル基、置換もしくは非置換(C6-C30)アリール基、またはハロゲンを表し;
Qは
【化19】
[図:0001420702000019.jpg]
【化20】
[図:0001420702000020.jpg]
または
【化21】
[図:0001420702000021.jpg]
を表し;R231~R242は、それぞれ独立に、水素、重水素、ハロゲン(複数可)で置換されていないもしくは置換された(C1-C30)アルキル基、(C1-C30)アルコキシ基、ハロゲン、置換もしくは非置換(C6-C30)アリール基、シアノ基、または置換もしくは非置換(C5-C30)シクロアルキル基を表し、あるいはR231~R242の各々は(C2-C30)アルキレン基または(C2-C30)アルケニレン基を介して隣接置換基と結合してスピロ環または縮合環を形成していてもよく、あるいは(C2-C30)アルキレン基または(C2-C30)アルケニレン基を介してR207またはR208と結合して飽和または不飽和縮合環を形成していてもよい。」
(1d)「【0055】
実施例1:本発明による化合物を使用したOLED素子の製造
本発明による化合物を使用してOLED素子を製造した。有機発光ダイオード(OLED)素子用のガラス基板上の透明電極酸化インジウムスズ(ITO)薄膜(15Ω/sq)(Samsung Corning、大韓民国)を順次トリクロロエチレン、アセトン、エタノールおよび蒸留水を用いた超音波洗浄に供し、次いで、イソプロパノール中に保管した。次いで、このITO基板を真空蒸着装置の基板ホルダー上に載せた。N1,N1’-([1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイル)ビス(N1-(ナフタレン-1-イル)-N4,N4-ジフェニルベンゼン-1,4-ジアミン)を前記真空蒸着装置のセルに導入し、次いで、前記装置のチャンバー内の圧力を10-6トルに制御した。その後、電流をセルに印加して上記導入材料を蒸発させ、それによってITO基板上に60nmの厚さを有する正孔注入層を形成した。次いで、N,N’-ジ(4-ビフェニル)-N,N’-ジ(4-ビフェニル)-4,4’-ジアミノビフェニルを前記真空蒸着装置の別のセルに導入し、電流をセルに印加することにより蒸発させ、それによって正孔注入層上に20nmの厚さを有する正孔輸送層を形成した。その後、化合物C-5をホスト材料として、真空蒸着装置の1つのセルに導入し、化合物D-11をドーパントとして別のセルに導入した。この2つの材料を異なる速度で蒸発させ、4重量%のドーピング量で堆積させて、正孔輸送層上に30nmの厚さを有する発光層を形成した。次いで、2-(4-(9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン-2-イル)フェニル)-1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾールを1つのセルに導入し、キノリン酸リチウムを別のセルに導入した。この2つの材料を同じ速度で蒸発させ、50重量%のドーピング量で堆積させて、発光層上に30nmの厚さを有する電子輸送層を形成した。次いで、電子輸送層上に2nmの厚さを有する電子注入層としてキノリン酸リチウムを堆積させた後、150nmの厚さを有するAlカソードを、電子注入層上に別の真空蒸着装置により堆積させた。こうして、OLED素子が製造された。OLED素子を製造するために使用された全材料は、10-6トルで真空昇華により精製されたものであった。
【0056】
製造されたOLED素子は、5.1Vの駆動電圧で、1135cd/m2の輝度および15.2mA/cm2の電流密度を有する赤色発光を示した。さらに、5000nitの輝度で、90%の輝度に減少させるためにかかる最小時間は70時間であった。
【0057】
実施例2:本発明による化合物を使用したOLED素子の製造
ホスト材料として化合物C-11およびドーパントとして化合物D-11を使用したことを除いて、実施例1と同様にOLED素子を製造した。
【0058】
製造されたOLED素子は、4.9Vの駆動電圧で、1010cd/m2の輝度および12.2mA/cm2の電流密度を有する赤色発光を示した。さらに、5000nitの輝度で、その輝度の90%まで減少するのにかかる最小時間は80時間であった。
【0059】
実施例3:本発明による化合物を使用したOLED素子の製造
ホスト材料として化合物C-34およびドーパントとして化合物D-7を使用したことを除いて、実施例1と同様にOLED素子を製造した。
【0060】
製造されたOLED素子は、6.0Vの駆動電圧で、1090cd/m2の輝度および7.3mA/cm2の電流密度を有する赤色発光を示した。さらに、5000nitの輝度で、その輝度の90%まで減少するのにかかる最小時間は140時間であった。
【0061】
実施例4:本発明による化合物を使用したOLED素子の製造
ホスト材料として化合物C-80およびドーパントとして化合物D-7を使用したことを除いて、実施例1と同様にOLED素子を製造した。
【0062】
製造されたOLED素子は、5.8Vの駆動電圧で1180cd/m2の輝度および7.9mA/cm2の電流密度を有する赤色発光を示した。さらに、5000nitの輝度で、その輝度の90%まで減少するのにかかる最小時間は100時間であった。
【0063】
実施例5:本発明による化合物を使用したOLED素子の製造
ホスト材料として化合物C-103およびドーパントとして化合物D-6を使用したことを除いて、実施例1と同様にOLED素子を製造した。
【0064】
製造されたOLED素子は、5.1Vの駆動電圧で、1100cd/m2の輝度および16.4mA/cm2の電流密度を有する赤色発光を示した。さらに、5000nitの輝度で、その輝度の90%まで減少するのにかかる最小時間は90時間であった。
【0065】
比較実施例1:従来の電界発光化合物を使用したOLED素子の製造
ホスト材料として4,4’-N,N’-ジカルバゾール-ビフェニル(CBP)およびドーパントとして化合物D-11を使用することにより正孔輸送層上に30nmの厚さを有する発光層を堆積させ、アルミニウム(III)ビス(2-メチル-8-キノリナト)-4-フェニルフェノラートを使用することにより10nmの厚さを有する正孔阻止層を堆積させることを除いて、実施例1と同様にOLED素子を製造した。
【0066】
製造されたOLED素子は、8.2Vの駆動電圧で、1000cd/m2の輝度および20.0mA/cm2の電流密度を有する赤色発光を示した。さらに、5000nitの輝度で、その輝度の90%まで減少するのにかかる最小時間は10時間であった。
【0067】
本発明の有機電子材料用の化合物は、従来の材料よりも優れた発光特性を有する。さらに、ホスト材料として本発明による化合物を使用した素子は、優れた発光特性を有するだけでなく、駆動電圧を減少させることにより電力効率の増加も誘発し、したがって電力消費を改善することもできる。」
2 引用文献5に記載された発明について
ア 引用文献5は、有機電子材料用の新規な化合物及び同化合物を使用した有機電界発光素子に関するに関する文献であって(摘記(1a))、摘記(1a)の「式1により表される化合物」の構造式に対応した化合物として、【0028】に代表的な化合物C-99が記載されている(摘記(1b))。
また、摘記(1c)の反応スキーム2が、上記化合物C-99に対応するスキームとして記載されている。
したがって、引用文献5には、化合物C-99が、製造方法を伴って記載されているといえるのであるから、以下の構造式で表される化合物の発明が記載されているということができる(以下「引用発明5」という。)。
「
[図:0001420702000022.jpg]
」
3 対比・判断
(1)本願発明と引用発明5の対比・判断
ア 対比
本願発明1と引用発明5を対比すると、
まず、引用発明5の
「
[図:0001420702000023.jpg]
」
は、本願発明の【化1】の化合物の
「
[図:0001420702000024.jpg]
」
のLが、非置換のフェニレン環であり;
Rが「アリール」で、RA、RB、及びRCが「水素」であり、
RDが、「置換のフェニル」に該当する、ジベンゾチオフェンで置換されたフェニルであり、
「
[図:0001420702000025.jpg]
」には該当しない。
したがって、本願発明1と引用発明5は、
「下記からなる群より選択されることを特徴とする化合物。
【化1】
[図:0001420702000026.jpg]
(式中、RA、RB、RC、及びRDは、それぞれ独立して、モノから置換の最大可能数を表す、又は無置換を表し;
Lが、置換又は非置換の6員芳香族環であり;
R、RA、RB、及びRCは、それぞれ独立して、水素である、又は重水素、フッ素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、アミノ、シリル、及びこれらの組合せからなる群から選択される置換基であり;
RDは、フェニル、ビフェニル、トリフェニル、トリフェニレン、ナフタレン、置換のフェニル、置換のビフェニル、置換のトリフェニル、置換のトリフェニレン、及び置換のナフタレンからなる群から選択される置換基である。)
(ただし、前記化合物は、下記化合物ではない。)
【化2】
[図:0001420702000027.jpg]
」という点で一致し、以下の点で相違する。
相違点:本願発明は、「RDは、」「ジベンゾチオフェン基を含まない。」と特定されているのに対して、引用発明5は、本願発明の「RD」に相当する基が、「ジベンゾチオフェン基」で置換された「置換のフェニル」である点。
イ 判断
(ア)引用発明5は、本願発明の「RD」に相当する基が「ジベンゾチオフェン基」で置換された「置換のフェニル」であるところ、引用文献5の摘記(1a)に
「以下の式1により表される化合物により、上記目的が達成され得ることを見出した:
【化1】
[図:0001420702000028.jpg]
式中、
L1およびL2は、それぞれ独立に、単結合、置換もしくは非置換3~30員ヘテロアリーレン基、置換もしくは非置換(C6-C30)アリーレン基、または置換もしくは非置換(C6-C30)シクロアルキレン基を表し;
X1はCHまたはNを表し;
Y1~Y3は、それぞれ独立に、-O-、-S-、-CR6R7-または-NR8-を表し、但しY2およびY3は同時には存在せず;
R1~R5は、それぞれ独立に、水素、・・・」と記載されるように、引用発明5の化合物は、式1の具体例として記載された化合物である。
(イ)そして、引用発明5の化合物は、式1の化合物において、
[図:0001420702000029.jpg]
が、
[図:0001420702000030.jpg]
、すなわち、本願発明の「RD」に相当する基が「ジベンゾチオフェン基」で置換された「置換のフェニル」である化合物であるところ、式1のY1は、「-O-、-S-、-CR6R7-または-NR8-」のわずか4つの選択肢しかないのであるから、当該「RD」に相当する基を、引用発明5の化合物のY1の-S-に換えて、-O-とした場合のジベンゾフラン基で置換された「置換のフェニル」や、-NR8-とした場合のカルバゾール基で置換された「置換のフェニル」とすることは当業者が容易に想到し得る技術的事項であるといえる。
(ウ)特に、摘記(1b)の【0023】において、引用発明5の化合物であるC-99に続いてC-100~104として記載されている例示化合物には、式1の
[図:0001420702000031.jpg]
の構造が、
[図:0001420702000032.jpg]
や
[図:0001420702000033.jpg]
である化合物が記載されていること、並びに、摘記(1d)の実施例5において、
[図:0001420702000034.jpg]
の構造を有するC-103の化合物をホスト材料として使用した場合の特性が引用文献5の他の実施例を用いた場合と同様に良好な特性を示していることが記載されていることを参照すれば、なおさら、引用発明5の化合物のY1の-S-に換えて、-O-とした場合のジベンゾフラン基で置換された「置換のフェニル」や、-NR8-とした場合のカルバゾール基で置換された「置換のフェニル」とすることは当業者が容易に想到し得ることといえる。
(エ)したがって、引用発明5の化合物において、引用発明5の化合物の一般式に相当する式1における少数の選択肢から、例示化合物の対応構造も参考にして、本願発明の相違点の構成である「RD」を「ジベンゾチオフェン基を含まない」構造の「置換のフェニル」とすることは、当業者が容易になし得た技術的事項である。
(オ)本願発明の効果について
本願明細書には、本願発明の効果について、具体性をもって記載されていない。実験において製造された唯一の合成例H1の化合物についても、【0115】に記載された化学構造
[図:0001420702000035.jpg]
を有し、本願発明から除かれた化合物であるところ、その化合物でさえどのような効果を奏していたのか何ら検証されてはいない。
したがって、本願発明の効果は、予測できない、かつ顕著な効果であるとはいえない。
ウ 本願発明と引用発明5の対比・判断のまとめ
したがって、本願発明は、引用文献5に記載された発明及び引用文献5に記載された技術的事項から当業者が容易に発明することができたものである。
4 審判請求人の主張の検討
(1)令和6年9月26日提出の意見書における構成の容易想到性に関する主張の検討
ア 審判請求人は、上記意見書2頁9~13行において、引用文献5には、RDの選択肢について、「RDは、フェニル、ビフェニル、トリフェニル、トリフェニレン、ナフタレン、置換のフェニル、置換のビフェニル、置換のトリフェニル、置換のトリフェニレン、及び置換のナフタレンからなる群から選択される置換基であり、ジベンゾチオフェン基を含まない。」との記載も示唆もなく、本願発明の特徴を全て備えることの動機付けがないので、容易に想到し得たことの論理付けができない旨の主張をしている。
イ しかしながら、上記2及び3において検討したように、引用発明5の化合物において、置換基であるジベンゾチオフェンをジベンゾフランやカルバゾールに変更することは、引用発明5を認定した同じ文献である引用文献5に、引用発明5の一般式に相当する式1中のY1の結合の選択肢がわずかに4つしかないことや、Y1をそのように変更した化合物が例示され、実施例で用いられていることを考慮すると、引用発明5と引用文献5に記載された技術的事項を、併せて理解できる当業者であれば、容易になし得る技術的事項であり、本願発明の構成が論理付けられることは、既に述べたとおりである。
そして、本願発明が当業者の予測できない、かつ顕著な効果を有しているとはいえないことも上述のとおりである。
したがって、審判請求人のRDの選択肢について、記載も示唆もなく、動機付けがないので、容易に想到し得たことの論理付けができない旨の記主張は採用できない。
なお、審判請求人は、令和5年6月5日提出の上申書の13頁33行~14頁13行においても、同様の補正案を提示した上で同様の主張をしているが、主張が採用できないのは上述のとおりである。
(2)令和6年9月26日提出の意見書における本願発明の効果に関する主張の検討
ア 審判請求人は、上記意見書2頁14行~4頁12行において、追加実施例と称して、実施例の化合物H1と比較化合物C-99とを、デバイスのホスト材料としてそれぞれ採用した場合の、デバイス性能特性の比較をした[表I]を示して、実施例のH1の化合物が比較化合物のC-99に対して、デバイス寿命、外部量子効率、LE、動作電圧が改善されていることを指摘して、本願発明が有利な効果を有している旨主張している。
イ しかしながら、上記効果については、いずれの特性についても本願明細書に記載がないから、上記効果の主張は、本願明細書の記載にも、特許請求の範囲の記載にも基づかない主張であり採用することはできない。
また、追加実施例で用いられた化合物H1は、本願発明から除かれた、本願発明に該当しない化合物であるし、本願発明の効果を検討する場合に、本願発明の化合物と効果を比較すべき対象化合物は、引用発明のC-99の化合物自体ではなく、相違点を変更して本願発明の構成を想定した場合の化合物であり、上記追加実施例では、当該対象化合物の技術常識を考慮した上で予想される効果と本願発明の効果を比較していないことからも、上記主張は採用することができない。
(3)小括
したがって、上記審判請求人の主張はいずれも採用できない。
5 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用文献5に記載された発明及び引用文献5に記載された技術的事項、並びに本願優先日時点の技術常識に基いて、本願出願前に当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第5 むすび
請求項1に係る発明は、引用文献5に記載された発明及び引用文献5に記載された技術的事項、並びに本願優先日前の技術常識に基いて、本願出願前に当業者が容易に発明することができたものであるから、その余の請求項について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-002484