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特許拒絶査定不服審判

2024-007671

ヘテロ二環式有機酸およびその塩類

審判番号
2024-007671
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2022-095809
請求日
2024年05月09日
審決日
2026年03月24日
公報発行日
2026年09月25日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】シェンチェン イオノヴァ ライフ サイエンス カンパニー リミテッド
  • 【請求人代理人】弁理士法人東海特許事務所
  • 【請求人】フォーシャン イオノヴァ バイオセラピューティクス カンパニー インコーポレイテッド
  • 【請求人代理人】弁理士法人東海特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 阪野 誠司
  • 審判官 冨永 保
  • 審判官 新留 豊
分類
P18 .121-ZB (C07D) / P18 .56 -ZB (C07D) / P18 .572-ZB (C07D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第50条の2、特許法第17条の2第5項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2022- 95809「ヘテロ二環式有機酸およびその塩類」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 8月17日出願公開、特開2022-120130〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2019年(平成31年)3月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2018年3月2日 中国(CN))を国際出願日とする出願である、特願2020-541730号の一部を令和4年6月14日に新たな特許出願としたものであって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。 令和5年 6月23日付け:特許法第50条の2の通知を伴う拒絶理由 通知 令和5年11月10日 :意見書、手続補正書の提出(提出日) 令和6年 1月 5日 :令和5年11月10日提出の手続補正につ いての補正の却下の決定、拒絶査定 令和6年 5月 9日 :審判請求書、手続補正書、手続補足書の提 出(受付日) 第2 令和6年5月9日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和6年5月9日にされた手続補正を却下する。 [理由](補正の適否の判断) 1 補正の内容 令和6年5月9日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)により、本件補正前の請求項1~16、18~19及び22~24が削除され、本件補正前の請求項17の記載に基づき、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。 「【請求項1】 化合物とトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとの間で形成される医薬的に許容される塩であって、 前記化合物は、 4-(1-{[2-メチル-4-(4-トリフルオロメチル-ベンジル)-4H-チエノ[3,2-b]ピロール-3-カルボニル]アミノ}シクロプロピル)安息香酸;または4-(1-{[4-(4-トリフルオロメチル-ベンジル)-4H-チエノ[3,2-b]ピロール-3-カルボニル]-アミノ}-シクロプロピル)-安息香酸; である、医薬的に許容される塩。」 2 本件補正前の特許請求の範囲 令和5年11月10日提出の手続補正は令和6年1月5日付けで補正の却下の決定がされているから、本件補正前の特許請求の範囲の請求項17の記載は、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項17に記載された次のとおりである。 本件補正前の請求項17は請求項1の従属項であるので、請求項1と請求項17の両方を併記する。 「【請求項1】 式Iの化合物の医薬的に許容される塩。 【化1】 [図:0001438677000001.jpg] 式I [式中、 R1およびR2は独立して、水素、ハロ、C1-6アルキル、C1-6シクロアルキル、C1-6フルオロシクロアルキル、およびC1-6フルオロアルキルからなる群から選択され;または、R1およびR2は、それらが共に結合している炭素原子と一緒になって、Rcで任意に置換された3~6員の炭素環を形成するか、またはS、OおよびNRbからなる群から独立して選択される1つまたは2つのヘテロ原子をそれぞれ含む3~6員の複素環基を形成し;各Rbは独立して、水素、ハロ、C1-6アルキル、C1-6シクロアルキル、C1-6フルオロシクロアルキル、C1-6フルオロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-C(O)-C1-6アルキル、-C(O)-アリール、-S(O)2-アルキル、および-S(O)2-アリールからなる群から選択され; YはOまたはSであり; Xは結合、=CH-、CH2、O、またはSであり; Ar1およびAr2はそれぞれ、C3-6シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルからなる群から独立して選択されるか、またはC3-6シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルの縮合類似体(fused analog)であり、Ar1およびAr2はそれぞれ、1~3個のRc基で任意に置換されており; 各Rcは独立して、ハロ、C1-6アルキル、C1-6シクロアルキル、C1-6フルオロシクロアルキル、およびC1-6フルオロアルキルからなる群から選択され; Raは、-CO2H、-CO2M、-C(O)NHS(O)2Raa、または 【化2】 [図:0001438677000002.jpg] であり; Raaは、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6シクロアルキル、C1-6シクロハロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり; Mは、医薬的に許容される塩またはエステルプロドラッグ基であり; 【化3】 [図:0001438677000003.jpg] は6,6-、5,5-、5,6-または6,5-二環式基である] 【請求項17】 式Iの化合物は、 4-((1S)-1-{[4-(4-クロロベンジル)-4H-チエノ[3,2-b]ピロール-3-カルボニル]アミノ}エチル)安息香酸; 4-((1S)-1-{[4-(4-クロロベンジル)-2-メチル-4H-チエノ[3,2-b]ピロール-3-カルボニル]アミノ}エチル)安息香酸; 4-((1S)-1-{[4-(4-トリフルオロメチルベンジル)-2-メチル-4H-チエノ[3,2-b]ピロール-3-カルボニル]アミノ}エチル)安息香酸; 4-(1-{[4-(4-クロロ-ベンジル)-2-メチル-4H-チエノ[3,2-b]ピロール-3-カルボニル]アミノ}シクロプロピル)安息香酸; 4-(1-{[2-メチル-4-(4-トリフルオロメチル-ベンジル)-4H-チエノ[3,2-b]ピロール-3-カルボニル]アミノ}シクロプロピル)安息香酸; 4-(1-{[5-オキソ-4-(4-トリフルオロメチルベンジル)-5,6-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-b]ピロール-3-カルボニル]アミノ}シクロプロピル)安息香酸; 4-((1S)-1-{[5-クロロ-1-(4-クロロベンジル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-7-カルボニル]アミノ}エチル)安息香酸; 4-((1S)-1-{[6-クロロ-3-(4-クロロベンジル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロベンゾオキサゾール-4-カルボニル]アミノ}エチル)安息香酸; 4-(1-{[6-クロロ-2-オキソ-3-(4-トリフルオロメチルベンジル)-2,3-ジヒドロベンゾオキサゾール-4-カルボニル]アミノ}シクロプロピル)安息香酸; 4-((1S)-1-{[7-クロロ-3-(4-トリフルオロメチルベンジル)インドリジン-5-カルボニル]アミノ}エチル)安息香酸; 4-(1-{[7-クロロ-3-(4-トリフルオロメチルフェノキシ)インドリジン-5-カルボニル]-アミノ}シクロプロピル)安息香酸; 4-(1-{[7-クロロ-3-(4-トリフルオロメチルフェノキシ)-イミダゾ[1,2-a]ピリジン-5-カルボニル]アミノ}シクロプロピル)安息香酸; 4-((1S)-1-{[7-クロロ-3-(4-トリフルオロメチルフェノキシ)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-5-カルボニル]アミノ}エチル)安息香酸; 4-((1S)-1-{[7-クロロ-3-(4-トリフルオロメチルフェニルスルファニル)-イミダゾ[1,2-a]ピリジン-5-カルボニル]アミノ}エチル)安息香酸; 4-(1-{[7-クロロ-3-(4-トリフルオロメチルベンジル)-イミダゾ[1,2-a]ピリジン-5-カルボニル]アミノ}シクロプロピル)安息香酸; 4-(1-{[7-フルオロ-3-(4-トリフルオロメチルベンジル)-イミダゾ[1,2-a]ピリジン-5-カルボニル]アミノ}シクロプロピル)安息香酸; 4-(1-{[7-フルオロ-3-(4-トリフルオロメチルベンジル)-インドリジン-5-カルボニル]アミノ}-シクロプロピル)安息香酸; 4-((1S)-1-{[7-フルオロ-3-(4-トリフルオロメチルベンジル)インドリジン-5-カルボニル]アミノ}エチル)安息香酸; 4-(1-{[7-フルオロ-3-(4-トリフルオロメチルベンジル)-インドリジン-5-カルボニル]アミノ}-1-メチル-エチル)安息香酸; 4-(1-メチル-1-{[4-(4-トリフルオロメチルベンジル)-4H-チエノ[3,2-b]ピロール-3-カルボニル]アミノ}エチル)安息香酸; 4-(1-{[2-フルオロ-6-(4-トリフルオロメチルベンジル)ピロロ[1,2-a]ピリミジン-4-カルボニル]アミノ}シクロプロピル)安息香酸; 4-(1-{[3-フルオロ-7-(4-トリフルオロメチルベンジル)ピロロ[1,2-c]ピリミジン-1-カルボニル]アミノ}シクロプロピル)安息香酸; 7-フルオロ-5-(4-トリフルオロメチルベンジル)-インドリジン-3-カルボン酸(1-フェニルシクロプロピル)アミド;および 7-フルオロ-5-(4-トリフルオロメチルベンジル)-イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-カルボン酸(1-フェニルシクロプロピル)アミドである、請求項1に記載の医薬的に許容される塩。」 3 補正の目的 上記補正は、補正前の請求項17について、式Iの化合物を4-(1-{[2-メチル-4-(4-トリフルオロメチル-ベンジル)-4H-チエノ[3,2-b]ピロール-3-カルボニル]アミノ}シクロプロピル)安息香酸;または4-(1-{[4-(4-トリフルオロメチル-ベンジル)-4H-チエノ[3,2-b]ピロール-3-カルボニル]-アミノ}-シクロプロピル)-安息香酸に限定し、かつ当該化合物とトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとの間で形成される医薬的に許容される塩に限定するものであって、補正前の請求項17に記載された発明と補正後の請求項17に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 4 独立特許要件についての判断 本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 ア 引用文献1 原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である、特表2012-500211号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。(なお、下線は当審合議体が付したものであり、以下、同様とする。) (1a) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 式I [図:0001438677000004.jpg] [式中:・・・である] の化合物、またはその医薬的に許容される塩。 ・・・ 【請求項29】 式Iの化合物、またはその医薬的に許容される塩を、1つ以上の生理的に許容される担体または賦形剤と混合して含む、医薬組成物。 ・・・ 【請求項31】 EP4受容体でのPGE2の作用によって媒介される状態の治療用の薬剤の製造のための、請求項1記載の化合物の使用。」 (1b) 「【0007】 本発明は、プロスタグランジンE2媒介疾患を治療するための新規の化合物および方法、ならびにその医薬組成物に関する。本発明の化合物は、NSAIDおよびオピエートと構造的に異なっており、E型プロスタグランジンの疼痛および炎症効果のアンタゴニストである。特に、本発明は、PGE2受容体のEP4サブタイプのアンタゴニストである新規の化合物に関する。」 (1c) 「【0053】 塩 用語「医薬的に許容される塩」は、無機または有機塩基および無機または有機酸を含む医薬的に許容される無毒性塩基または酸から製造される塩を指す。無機塩基に由来する塩は、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、第二マンガン塩、第一マンガン、カリウム、ナトリウム、および亜鉛などを含む。特に好ましいのは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、およびナトリウム塩である。医薬的に許容される有機無毒性塩基に由来する塩は、第1級、第2級、および第3級アミン、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環式アミン、および塩基性イオン交換樹脂、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチル-モルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、ならびにトロメタミンなどの塩を含む。」 (1d) 「【0108】 生物学的活性を決定するためのアッセイ 式Iの化合物は、インビトロおよびインビボでのそれらのプロスタノイドアンタゴニストまたはアゴニスト活性、ならびにそれらの選択性を決定するために、下記のアッセイを用いて試験することができる。実証したプロスタグランジン受容体活性は、DP、EP1 、EP2、EP3、EP4、FP、IPおよびTPである。 【0109】実施例A.ヒト胎児腎臓(HEK)293(ebna)細胞株におけるプロスタノイド受容体の安定発現 ・・・ 【0110】 実施例B.プロスタノイド受容体結合アッセイ ・・・ [図:0001438677000005.jpg] 」 (1e) 「【0132】 実施例1 ・・・ 【0141】 ステップ8 (S)-4-(1-{[2-メチル-4-(4-トリフルオロメチル-ベンジル)-4H-チエノ[3,2-b]ピロール-3-カルボニル]-アミノ}-エチル)-安息香酸 【化47】 [図:0001438677000006.jpg] 0.043gの2-メチル-4-(4-トリフルオロメチル-ベンジル)-4H-チエノ[3,2-b]ピロール-3-カルボン酸、0.060gの(S)-4-(1-アミノ-エチル)-安息香酸メチルエステル、0.040gのHOBT水和物、0.054gのエチル-ジメチルアミノプロピル-カルボジイミド塩酸塩(EDCl)および0.060mlのN-メチルモルホリンの、2mlのDMF中の混合物を、室温で18時間攪拌した。次いで反応を1mlの水および2mlの飽和NaHCO3溶液でクエンチした。生じた混合物を15mlのEtOAcで抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥し、濾過し、濃縮し、粗メチルエステルを得、2mlのTHF、2mLのMeOHおよび0.5mLの水に溶解し、0.5mLの1M LiOH溶液で処理した。室温で24時間攪拌後、反応混合物を減圧濃縮し、THFおよびMeOHを除去した。残渣を2mLの水で希釈し、勢いよく攪拌しながら0.3mLのAcOHで処理した。2時間攪拌後、固体を濾過によって収集し、風乾し、0.029gの表題化合物を白色粉末として得た。 1H NMR(500MHz,アセトン-d6):δ7.99(d,2H),7.82(d,1H),7.54(d,2H),7.52(d,2H),7.16(d,2H),7.10(d,2H),6.40(d,1H),5.50(s,2H),5.24(五重線,1H),2.54(s,3H),1.52(d,3H)。」 (1f) 「【0151】 実施例3 4-(1-{[2-メチル-4-(4-トリフルオロメチル-ベンジル)-4H-チエノ[3,2-b]ピロール-3-カルボニル]-アミノ}-シクロプロピル)-安息香酸 【化57】 [図:0001438677000007.jpg] 0.3gの2-メチル-4-(4-トリフルオロメチル-ベンジル)-4H-チエノ[3,2-b]ピロール-3-カルボン酸、0.25gの4-(1-アミノ-シクロプロピル)-安息香酸メチルエステル、0.5gのHATUおよび0.25mlのPr2NEtの、8mlのDMF中の混合物を、室温で16時間攪拌した。次いで、反応を30mlの水で希釈し、100mlのEtOAcで抽出した。有機層を50mlの水および50mlの食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。抽出物を濾過し、濃縮し、粗メチルエステルを得、20mlの1:1のTHF/MeOHに溶解し、10mlの0.5M LiOH水溶液で処理した。室温で15時間攪拌後、1mlのAcOHを加え、反応混合物を75mlのEtOAcで抽出した。有機層を50mlの食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。抽出物を濾過し、濃縮し、0.25gの表題化合物を淡褐色固体として得た。 1H NMR(500MHz,アセトン-d6):δ11.12(bs,1H),8.17(s,1H),7.85(d,2H),7.57(d,2H),7.35(d,2H),7.11(d,2H),7.05(d,1H),6.42(d,1H),5.58(s,2H),2.62(s,3H),1.31(m,2H),1.20(m,2H)。 【0152】 実施例4 4-(1-{[4-(4-トリフルオロメチル-ベンジル)-4H-チエノ[3,2-b]ピロール-3-カルボニル]-アミノ}-シクロプロピル)-安息香酸 【化58】 [図:0001438677000008.jpg] 0.33gの4-(4-トリフルオロメチル-ベンジル)-4H-チエノ[3,2-b]ピロール-3-カルボン酸、0.23gの4-(1-アミノ-シクロプロピル)-安息香酸メチルエステル、0.5gのHATUおよび0.25mlのPr2NEtの、8mlのDMF中の混合物を、室温で16時間攪拌した。次いで、反応を30mlの水で希釈し、100mlのEtOAcで抽出した。有機層を50mlの水および50mlの食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。抽出物を濾過し、濃縮し、粗メチルエステルを得、20mlの1:1のTHF/MeOHに溶解し、10mlの0.5N LiOH水溶液で処理した。室温で15時間攪拌後、1mlのAcOHを加え、反応混合物を75mlのEtOAcで抽出した。有機層を50mlの食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。抽出物 を濾過し、濃縮し、0.22gの表題化合物を淡褐色固体として得た。 1H NMR(500MHz,アセトン-d6):δ11.03(bs,1H),8.49(s,1H),7.40(d,2H),7.83(s,1H),7.57(d,2H),7.32(d,2H),7.23(d,1H),7.19(d,2H),6.51(d,1H),5.35(s,2H),1.35(m,2H),1.32(m,2H)。」 イ 引用文献3 (ア)同じく原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物であり、創薬化学に関する一般的な文献でもある、「WERMUTH, C.G.編,最新 創薬化学 下巻,株式会社テクノミック,1999年,pp. 347-365」(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。 (3a) (348頁第2~3段落) 「 [図:0001438677000009.jpg] 」 (3b)(348頁第4段落) 「 [図:0001438677000010.jpg] 」 (3c)(349頁表34.1) 「 [図:0001438677000011.jpg] 」 (3d)(359頁第2段落~361頁第1段落) 「 [図:0001438677000012.jpg] ・・・ [図:0001438677000013.jpg] [図:0001438677000014.jpg] 」 ウ 引用文献5 当審合議体が新たに引用する、本願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、「Chemical Bookウェブサイト、「トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン」、Copyright 2017、[online]、[令和8年3月6日検索]、インターネットURL:https://www.chemicalbook.com/ChemicalProductProperty_JP_CB8336488.htm」(以下「引用文献5」という。)には、以下の記載がある。 (5a) 「化学名:トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン 別名:トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン;トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン [電気泳動用];2-(ヒドロキシメチル)-2-アミノプロパン-1,3-ジオール;アミノトリメチロールメタン;ツトフシントリス;アミノメチリジントリス(メタノール);トリスアミン;2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール;トリス(ヒドロキシメチル)(アミノ)メタン;トリスアミノ;サムセット;トロメタモール;[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]アミン;トリス(ヒドロキシメチルアミノ)メタン;タラトロール;2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール;トリサミン;(アミノメチリジン)トリス(メタノール);ペハノルム;アミノメタントリイルトリスメタノール 英語名:Tris(hydroxymethyl)aminomethane 英語別名:TRIS;TROMETHAMINE;TROMETAMOL;TRIS(HYDROXYMETHYL)AMINOMETHANE;2-AMINO-2-(HYDROXYMETHYL)PROPANE-1,3-DIOL;TRIS BUFFER;TRIZMA BASE;Trizma;TRIS AMINO;THAM」 (3)引用文献1に記載の発明 引用文献1には、PGE2受容体のEP4サブタイプのアンタゴニストである新規の化合物である、式Iの化合物又はその医薬的に許容される塩が記載されており(摘記(1a)及び(1b))、当該化合物の具体例として、「4-(1-{[2-メチル-4-(4-トリフルオロメチル-ベンジル)-4H-チエノ[3,2-b]ピロール-3-カルボニル]-アミノ}-シクロプロピル)-安息香酸」(摘記(1f)の実施例3)及び「4-(1-{[4-(4-トリフルオロメチル-ベンジル)-4H-チエノ[3,2-b]ピロール-3-カルボニル]-アミノ}-シクロプロピル)-安息香酸」(摘記(1f)の実施例4)の化合物が生物学的活性を決定するためのアッセイの結果(摘記(1d))とともに記載されている。 それゆえ、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。 [引用発明] 「4-(1-{[2-メチル-4-(4-トリフルオロメチル-ベンジル)-4H-チエノ[3,2-b]ピロール-3-カルボニル]-アミノ}-シクロプロピル)-安息香酸又は 「4-(1-{[4-(4-トリフルオロメチル-ベンジル)-4H-チエノ[3,2-b]ピロール-3-カルボニル]-アミノ}-シクロプロピル)-安息香酸」 (4)引用発明との対比 ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「4-(1-{[2-メチル-4-(4-トリフルオロメチル-ベンジル)-4H-チエノ[3,2-b]ピロール-3-カルボニル]-アミノ}-シクロプロピル)-安息香酸又は 「4-(1-{[4-(4-トリフルオロメチル-ベンジル)-4H-チエノ[3,2-b]ピロール-3-カルボニル]-アミノ}-シクロプロピル)-安息香酸」は、 本件補正発明の「4-(1-{[2-メチル-4-(4-トリフルオロメチル-ベンジル)-4H-チエノ[3,2-b]ピロール-3-カルボニル]アミノ}シクロプロピル)安息香酸;または4-(1-{[4-(4-トリフルオロメチル-ベンジル)-4H-チエノ[3,2-b]ピロール-3-カルボニル]-アミノ}-シクロプロピル)-安息香酸」に相当する。 したがって、本件補正発明と引用発明の一致点と相違点は、以下のとおりである。 [一致点] 「4-(1-{[2-メチル-4-(4-トリフルオロメチル-ベンジル)-4H-チエノ[3,2-b]ピロール-3-カルボニル]アミノ}シクロプロピル)安息香酸;または4-(1-{[4-(4-トリフルオロメチル-ベンジル)-4H-チエノ[3,2-b]ピロール-3-カルボニル]-アミノ}-シクロプロピル)-安息香酸」 (以下、上記「4-(1-{[2-メチル-4-(4-トリフルオロメチル-ベンジル)-4H-チエノ[3,2-b]ピロール-3-カルボニル]アミノ}シクロプロピル)安息香酸」を「C003化合物」、また上記「4-(1-{[4-(4-トリフルオロメチル-ベンジル)-4H-チエノ[3,2-b]ピロール-3-カルボニル]-アミノ}-シクロプロピル)-安息香酸」を「C002化合物」という。) [相違点] 本件補正発明がC003化合物又はC002化合物と「トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとの間で形成される医薬的に許容される塩」であるのに対し、引用発明はC003化合物又はC002化合物である点。 (5)判断 ア 以下、相違点について検討する。 (ア)本件補正発明は、「EP受容体によって媒介される癌および炎症性疾患または症状」などの治療のための化合物の医学的に許容される塩の提供に係るものであるところ(本願明細書の【0005】)、医薬品候補化合物の設計に係る技術分野においては、次の事項は、当業者にとって周知である。 すなわち、投与剤形の設計に先立ち薬物を最適な塩として選定しておくことの重要性が認識されていること、医薬品候補化合物が水溶性であることはさまざまな理由から好まれ、経口剤の生物学的利用率が薬物の溶解速度に支配され、また溶解速度は薬物の水に対する溶解度に依存している可能性があるので、複数の塩を検討した中で最も水溶性の高い塩を医薬品候補として選択すべきこと、さらに、与えられた水溶性塩が評価されなければならないその他多くの基準があり、これらの基準及び最適な塩を迅速に選定するための戦略の系統的活用については、Morrisら及びGouldらにより発表され、Morrisらが新規なHMG-CoA還元酵素阻害薬(HMG-CoA reductase inhibitor)の最適な塩を選択するための主な基準には、以下の4つがあることを指摘したこと (1)吸湿性が低いこと (2)さまざまな保存条件のもと、結晶形が完全に保持されること (3)水に対する十分な溶解度があること (4)化学的に安定であること は、いずれも当業者に周知の事項である(必要であれば、摘記(3a)及び(3d)等参照。))。 (イ)また、米国食品医薬品局(Food and Drug Administration; FDA)により安全性と有効性に基づき承認され、1994年1月31日時点において市場で処方されている医薬品の塩として、カチオン類ではトロメタミンを含む10種類が挙げられることも、当業者に周知の事項である(必要ならば摘記(3b)及び(3c)等参照。)。そして、トロメタミンがトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの別名であることも、当業者に周知の事項である(必要ならば(摘記(5a))等参照。) (ウ)加えて、上記(ア)の吸湿性の問題について、ナトリウム塩においては過剰の湿気を取り込む現象が頻繁に起きて問題となり、過去の事例では候補化合物のナトリウム塩を含めて、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩及び亜鉛塩なども吸湿性又は湿気のために結晶構造が変化するため開発原体としなかったこと、さらに過去の事例で、tris(hydroxylmethyl)amino-methane (THAM)塩(すなわちトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)が、多くの鎮痛剤/抗炎症薬において吸湿性のため生じる問題に関してナトリウム塩よりも一般に優れており、THAM塩をもっと使用することが提唱されていることも、当業者に周知の事項である(必要ならば摘記(3d)等参照。)。 (エ)ここで、引用文献1には、引用発明の「医薬的に許容される塩」について、具体的に無機塩基に由来する塩として無機及び有機の塩基が列挙されるところ(摘記(1c))、それらのイオン化形態であるカチオン類について、FDAの承認を受けたものとして記載されているのは、「Benzathine」(すなわち引用文献1のN,N’-ジベンジルエチレンジアミン)、「Potassium」(同カリウム)、「Calcium」(同カルシウム)、「Sodium」(同ナトリウム)、「Meglumine」(同メチルグルカミン)、「Tromethamine」(同トロメタミン)、及び「Zinc」(同亜鉛)の7種類である。 (オ)とすれば、上記(ア)で述べたとおり、一般的に、医薬化合物において吸湿性が低い、あるいは水への溶解性が優れた塩を探索する動機があり、かつ、引用発明の「医薬的に許容される塩」として、引用文献1には具体的な候補も列挙されているところ(摘記(1c))、その中から、FDAにより安全性と有効性に基づき承認され、市場で処方されている上記(エ)に記載したものに焦点を当て、さらに上記(ウ)で示した過去の事例も考慮に入れ、引用発明の「医薬的に許容される塩」として、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)の塩を作成し、その吸湿性や水への溶解性等を確認することは、上記の事実に基づけば自然な選択であり、当業者が容易になし得たことである。 (カ)本件補正発明の効果について検討するに、本願明細書の【0123】には、本件補正発明のC003化合物、すなわち本願明細書の実施例2で作成した「C0003」の遊離酸について、 「XRPDの結果は、結晶性固体およびアモルファス固体の混合物としての化合物を示し、これはPLM結果と一致した。TGAの結果は、遊離塩基が室温(RT)から120℃までに0.9%の明らかな重量減少を示したことを示す。DVSは、遊離塩基が80%RHで3.175%の水分を含む吸湿性であることを示した。」 ことが記載されている。 他方、本願明細書の実施例17~20及び22~26には、C003化合物のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)塩について、さまざま溶媒から白色固体又は結晶として、8つの形態を得たことが記載されているものの、その吸湿性等の性質については、いずれの形態についても、何ら記載されていない。 さらに、本件補正発明のもう一つの化合物であるC002化合物、すなわち実施例1で作成した「C0002」の化合物についても、実施例5において、白色固体として1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)-メチルアミン塩(すなわちトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)塩)を得たことが記載されているが、その吸湿性、水への溶解性その他の性質については、何ら記載されていない。 (ク)したがって、本件補正発明の効果について、引用発明、引用文献1に記載された事項及び周知技術から予測される効果を超える効果は認められず、格別顕著なものということはできない。 イ 審判請求人の主張 審判請求人は進歩性について、令和5年11月10日の意見書において以下の(ア)~(エ)の主張を行い、令和6年5月9日の審判請求書において、さらに以下の(オ)の主張を行っている。 (ア)「引用文献1は、式Iの化合物の遊離酸形態を教示しているにすぎません。引用文献1には、塩が列挙された長いリストが記載されてはいますが、引用文献1には、補正後の特許請求の範囲に記載されているいずれかの特定の塩を選択するためのいかなる理論的根拠も示されていないばかりか、多数の選択肢全体からいずれかの特定の塩形態を選択するように当業者を導くものでも促すものでもありません。したがいまして、当業者が、多数の様々な種類の塩全体から本願の特許請求の範囲に記載されている種類の塩を選択する理由がありません。本願発明の後知恵の知識があって初めて、審査官殿が主張されているように、本願発明は容易になし得たと言い得るものです。」 (イ)「審査官殿は、本願発明は、単なる通常のスクリーニングによって実現できると主張されています。この視点では、事前の予測性の要件が考慮されていません。単にあり得る全ての塩が列挙された長いリストがあるからといって、当業者が本願発明の特定の化合物の正しい塩を同定し得たということにはなりません。この作業と労力の量は、予測可能な結果がなければ膨大なものになります。」 (ウ)「本発明は、塩形成剤として特定の塩基、すなわち、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、またはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、これらの塩の合成方法およびXRD(粉末X線回折)によるこれらの塩の特徴付けを教示しています(実施例3~26をご参照ください)。したがいまして、補正後の請求項1に係る発明は、引用文献1に対して進歩性を有するものです。」 (エ)本件発明の優れた効果の主張として、「優先権書類PCT/CN2018/077875の実施例11ならびに段落[173]および[174]には、ラット薬物動態(PK)プロファイルが示されている。結果は、化合物C003 (すなわち、 [図:0001438677000015.jpg] ) のジエチルアミン塩形態が、化合物C003の遊離酸形態と比較して、経口的利用能を改善することを示している。さらに、ジエチルアミン塩とトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩は、同等のPKプロファイルを示した。 [図:0001438677000016.jpg] [図:0001438677000017.jpg] [173]結果は、Et2NH塩が経口利用能を改善することを示す。 [図:0001438677000018.jpg] [174]結果は、これら2つの塩形態が、同等のPKパラメーターを有することを示す。」 (オ)令和6年5月9日受付の手続補足書により提出した参考文献に基づき、「適切な塩形態の選択のために、出願人は、化合物C003を含む式(I)の化合物を用いて塩スクリーニング調査を実施しました。参考文書(参考文書「Salt screening study of C003 free acid」および「Developability comparison of various salts-C003」をご覧ください)に示すように、先ず、化合物C003をX線粉体回折(XRPD)、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TGA)および偏光顕微鏡(PLM)により特徴付けて、その物理的特性をプロファイリングしました。加えて、視覚的溶解性試験を行って、塩スクリーニングのための適切な方法および溶媒を選択しました。さらに、アセトン系における塩スクリーニングのために、10種の対イオンを選択しました。 ・・・ 溶解性および安定性の評価について、以下に詳述します。 溶解性調査 手順:約3.0mgの化合物(遊離酸として計算)を各ガラスバイアル中に秤量し、次に1.5mLの培地を加えました(最終濃度は2mg/mlでした)。サンプルをマグネチックスターラー上で100rpmの速度で37℃下で攪拌し続けました。攪拌を1時間および24時間行った後、サンプル溶液0.5mLを1.5mL遠沈管に移し、12,000rpmで5分間遠心しました。上清を適切なメタノールで希釈し、HPLCで分析しました。 標準液:溶解度を定量するための標準サンプルとして、得られた遊離酸を選択しました。約10mgの遊離酸を25mlのメスフラスコに秤量し、メタノールで溶解して曲線としました。 結果:以下の表に、異なるpHにおけるC003の潜在的な塩の溶解性を示します(表のデータは、「Developability comparison of various salts C003」から引用したものです)。 [図:0001438677000019.jpg] 安定性調査 これらの潜在的塩を以下のストレス条件下で保存して、その安定性を調べました。高温:60℃で密閉し;高温高湿:40℃/75%RHで密閉しました。これらのサンプルを、開始時(0日目)、1週間後および4週間後にXRPDとHPLCにより分析しました。 結果によれば、C003遊離酸、ナトリウム塩、カリウム塩、L-アルギニン塩、L-リジン塩、トリス塩およびN-ベンジル-2-フェニルエタノールアミン塩は、いずれも60℃(密閉)および40℃/75%RH(密閉)の条件下において1週間安定していました。これらの塩をこれらの条件下で4週間保存したところ、ナトリウム塩の全相対物質(TRS)は明らかに増加し、カリウム塩、L-リジン塩およびL-アルギニン塩はわずかに増加しました。これらの塩のうち、最も安定した形態であったのは、C003-トリス塩でした。XRPD結果に基づいて、ナトリウム塩とカリウム塩は、40℃/75%RHの条件下で4週間でわずかに変化しました。以下の表は、C003の潜在的塩の安定性を示します(表のデータは、「Developability comparison of various salts C003」から引用したものです)。 [図:0001438677000020.jpg] その結果、C003-トリス塩はFeSSIF(pH6.5)への溶解性が良く、安定性も良いことが分かりました。しかし、リジン塩/アルギニン塩およびK塩は、安定性が良く、水への溶解性もかなり良いが、結晶性はあまり良くありませんでした。最終的に、C003-トリス塩が最も開発可能な塩となり、リジン塩/アルギニン塩が第2候補となり、K塩が第3候補となりました。 要約すると、出願人は、C003のトリス塩が、一般的に使用されている製薬上許容される塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アルギニン塩およびリジン塩)よりも予期せぬ優れた特性を示したことを示す裏付けとしての文書(参考文書「Salt screening study of C003 free acid」および「Developability comparison of various salts-C003」をご覧ください)を提供しています。よって、補正後の請求項1は、引用文献1に対して新規性・進歩性を有しています。」 ウ 審判請求人の主張について (ア)上記イ(ア)~(ウ)について、上記ア(ア)~(ク)で述べたとおり、一般的に、医薬化合物において吸湿性が低い、あるいは水への溶解性が優れた塩を探索する動機があり、引用発明の「医薬的に許容される塩」として、引用文献1には具体的な候補も列挙されている(摘記(1c))ところ、周知技術に基づき、その中から、FDAの承認を得ており、過去の事例から吸湿性の点でナトリウム塩よりも一般に優れており、もっと使用することが提唱されているトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)の塩を選択することについても、十分な動機付けがあるといえる。 それゆえ、上記主張は採用できない。 (イ)上記イ(エ)の主張について、審判請求人が提出した本願の優先権書類に記載されている、本件補正発明のラット薬物動態(PK)プロファイルや経口利用能に関する内容は、本願の出願当初の明細書等に何ら記載されておらず、同明細書等に基づく主張とは認められないから、当該優先権書類に記載されている内容を参酌することはできない。 仮に参酌するとしても、上記ア(ア)に記載したおとり、医薬品候補化合物が水溶性であることはさまざまな理由から好まれ、経口剤の生物学的利用率が薬物の溶解度に支配され、また溶解速度は薬物の水に対する溶解度に依存している可能性があることは周知であるから、トロメタミンが遊離酸と比較して経口利用能に優れることは当業者が予測し得る範囲内の事項である。 それゆえ、上記主張は採用できない。 (ウ)上記イ(オ)の主張についても、提出された参考文書に記載されている、本件補正発明の溶解性および安定性に関する内容は、本願の出願当初の明細書等に何ら記載されておらず、同明細書等に基づく主張とは認められないから、当該優先権書類に記載されている内容を参酌することはできない。 仮に参酌するとしても、上記ア(オ)で述べたように、安定性の観点も含めて塩を選択するのであるし、トロメタミン塩が吸湿性のため生じる問題に関して、Na塩よりも優れている過去の事例も周知であるので、トロメタミンが安定であるからといって、格別顕著な効果とまでは認められない。 それゆえ、上記主張は採用できない。 (エ)したがって、審判請求人の主張はいずれも採用できない。 エ 小括 上記ア~ウで述べたとおり、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献1に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび 以上より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本件発明について 1 本件発明 令和6年5月9日にされた手続補正は、上記のとおり却下され、また5年11月10日にされた手続補正も、令和6年1月5日付けで却下されているので、本願の請求項に係る発明は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1~24に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項17に係る発明(以下「本件発明」という。)は、その請求項17に記載された事項により特定される、上記第2[理由]2に記載のとおりのものである。 2 原査定における拒絶の理由 原査定の拒絶の理由のうち、請求項17についての理由4は、次のとおりのものと認める。 この出願の請求項17に係る発明は、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、下記の引用文献1に記載された発明、引用文献1に記載された技術的事項及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 1.特表2012-500211号公報 2.GOULD, P. L.,Salt selection for basic drugs,International Journal of Pharmaceutics,1986年,Vol. 33,pp. 201-217, ISSN 0378-5173, 特にp.202, TABLE 1(周知技術を示す文献) 3.WERMUTH,C.G.編,最新 創薬化学 下巻,株式会社テクノミック ,1999年,pp.347-365(周知技術を示す文献) 4.BERGE, S.M. et al.,Pharmaceutical Salts,Journal of Pharma ceutical Sciences,1977年,Vol. 66, No. 1,pp. 1-19 (周知技術を示す文献) 第4 当審合議体の判断 当審合議体は、原査定の拒絶の理由のとおり、本件発明は、その優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、引用文献1に記載された発明、引用文献1に記載された技術的事項及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、進歩性を欠如しており、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、と判断する。 その理由は以下のとおりである。 1 引用文献及び引用発明 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献の記載事項及び引用文献1に記載された発明(「引用発明」)は、上記第2の[理由]4(2)及び(3)に記載したとおりである。 2 対比・判断 本件発明は4-(1-{[2-メチル-4-(4-トリフルオロメチル-ベンジル)-4H-チエノ[3,2-b]ピロール-3-カルボニル]アミノ}シクロプロピル)安息香酸;または4-(1-{[4-(4-トリフルオロメチル-ベンジル)-4H-チエノ[3,2-b]ピロール-3-カルボニル]-アミノ}-シクロプロピル)-安息香酸の医学的に許容される塩を包含するところ、4-(1-{[2-メチル-4-(4-トリフルオロメチル-ベンジル)-4H-チエノ[3,2-b]ピロール-3-カルボニル]アミノ}シクロプロピル)安息香酸;または4-(1-{[4-(4-トリフルオロメチル-ベンジル)-4H-チエノ[3,2-b]ピロール-3-カルボニル]-アミノ}-シクロプロピル)-安息香酸の化合物とトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとの間で形成される医薬的に許容される塩である本件補正発明は本件発明に包含される。 そうすると、本件発明に包含される本件補正発明が、上記第2の[理由]4(2)~(5)に記載したとおり、引用文献1に記載された発明、引用文献1に記載された事項及び周知技術から当業者が容易に発明することができたものであるから、本件発明も、引用文献1に記載された発明、引用文献1に記載された事項及び周知技術から当業者が容易に発明することができたものである。 3 小括 以上のとおり、本件発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献1に記載された事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものである。 第5 むすび 上記のとおりであって、本件発明は、本願の出願前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、引用文献1に記載された発明、引用文献1に記載された事項及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明、及び他の拒絶の理由について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-007671

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