特許拒絶査定不服審判
2023-009346
半固体電極を有する電気化学セルおよびその製造方法
- 審判番号
- 2023-009346
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-092052外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年06月07日
- 審決日
- 2024年05月09日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】24エム・テクノロジーズ・インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】稲葉 良幸
- 【請求人代理人】大貫 敏史
- 【請求人代理人】江口 昭彦
- 【請求人代理人】内藤 和彦
- 分類
- P18 .121-Z (H01M) / P18 .575-Z (H01M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021- 92052「半固体電極を有する電気化学セルおよびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 9月24日出願公開、特開2021-144947〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2015年11月4日(パリ条約による優先権主張2014年11月5日 米国)を国際出願日とする出願である特願2017-517309号の一部を令和3年6月1日に新たな特許出願としたものあって、その手続の概略は以下のとおりである。
令和 4年 3月24日付け:拒絶理由通知
令和 4年 9月26日 :意見書、手続補正書の提出
令和 5年 2月 2日付け:拒絶査定
令和 5年 6月 7日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和5年6月7日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年6月7日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正による特許請求の範囲の記載
本件補正による特許請求の範囲の請求項1(以下「本件補正発明」という。)の記載は、次のとおりである(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
第1の表面および第2の表面を有する第1の集電体であって、前記第1の集電体の前記第1の表面には固定された半固体カソードが配置され、前記第1の集電体の前記第2の表面には被覆がない、第1の集電体と、
前記第1の集電体から延在する第1のタブと、
第1の表面および第2の表面を有する第2の集電体であって、前記第2の集電体の前記第1の表面には固定された半固体カソードが配置され、前記第2の集電体の前記第2の表面には被覆がない、第2の集電体と、
前記第2の集電体から延在する第2のタブであって、前記第1のタブ及び前記第2のタブは正のベイルにまとめて結合された、第2のタブと、
第1の表面および第2の表面を有する第3の集電体であって、前記第3の集電体の前記第1の表面には固定された半固体アノードが配置され、前記第3の集電体の前記第2の表面には被覆がない、第3の集電体と、
前記第3の集電体の前記固定された半固体アノードと前記第1の集電体の前記固定された半固体カソードとの間に配置され、液体電解質が注入された多孔性のポリマー膜を含む第1のセパレータと、
前記第1の集電体の前記第2の表面と前記第2の集電体の前記第2の表面との間に配置されたスペーサと、
を含む電気化学セルスタック。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、令和4年9月26日にされた手続補正により補正された次のとおりである。
「【請求項1】
第1の表面および第2の表面を有する第1の集電体であって、前記第1の集電体の前記第1の表面には固定された半固体カソードが配置され、前記第1の集電体の前記第2の表面には被覆がない、第1の集電体と、
第1の表面および第2の表面を有する第2の集電体であって、前記第2の集電体の前記第1の表面には固定された半固体カソードが配置され、前記第2の集電体の前記第2の表面には被覆がない、第2の集電体と、
第1の表面および第2の表面を有する第3の集電体であって、前記第3の集電体の前記第1の表面には固定された半固体アノードが配置され、前記第3の集電体の前記第2の表面には被覆がない、第3の集電体と、
前記第3の集電体の前記固定された半固体アノードと前記第1の集電体の前記固定された半固体カソードとの間に配置された第1のセパレータと、
前記第1の集電体の前記第2の表面と前記第2の集電体の前記第2の表面との間に配置されたスペーサと、
を含む電気化学セルスタック。」
2 補正の適否
本件補正は、
ア 本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第1の集電体」と「第2の集電体」とを含む「電気化学セルスタック」について、「前記第1の集電体から延在する第1のタブ」と「前記第2の集電体から延在する第2のタブであって、前記第1のタブ及び前記第2のタブは正のベイルにまとめて結合された、第2のタブ」とを含むことの限定を付加し、
イ 本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第1のセパレータ」について、「液体電解質が注入された多孔性のポリマー膜を含む」ことの限定を付加するものである。
上記補正アおよびイは、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記「1(1)」に記載したとおりのものである。
(2)引用文献及びその記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由に引用された、国際公開第2014/150210号(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の記載がある。(なお、日本語ファミリーの文献である特表2016-511521号公報の記載を当審の仮訳として併記する。下線は当審で付与した。以下同様。)
「[0049] ・・・In some embodiments the separator 130 is a porous polymer membrane infused with a liquid electrolyte that allows for the shuttling of ions between the cathode 140 and anode 150 electroactive materials, while preventing the transfer of electrons. 」
「[00123] As described herein, increasing the thickness of the cathode and/or increasing the active material loading in the cathode are two ways that the benefits of a high capacity anode can be utilized. While these are not viable options with conventional cathodes for the reasons described above, various embodiments of semi-solid cathodes described herein can be made thicker than the maximum thickness of 200 μm achievable with conventional cathodes and with loading densities that can be up to 5 times higher than conventional cathodes. FIG. 4 shows a schematic illustration of an electrochemical cell 400 that includes a positive current collector 410, a negative current collector 420, and a separator 430 disposed between the positive current collector 410 and the negative current collector 420. Both the positive current collector 410 and the negative current collector 420 have a thickness t11 and the separator 430 has a thickness t12. A semi-solid cathode 440 having a thickness t13 is disposed between the positive current collector 410 and the separator 430, and a high capacity anode 450 having a thickness t14 is disposed between the negative current collector 420 and the separator 430.
[00124] The anode 450 is a high capacity anode that can be formed using conventional methods as described before with reference to FIG. 2 or any other conventional method. In some embodiments, the anode 450 can be a stationary semi-solid or a flowable semi-solid anode as described herein. The cathode 440 is a semi-solid cathode that can be a stationary semi-solid cathode or a flowable semi-solid cathode as described herein. In some embodiments, the semi-solid cathode is substantially free from binders that are typically used in conventional calendered electrodes. In contrast to conventional cathodes, e.g., the cathodes 240 and 340, the semi-solid cathode 440 can be made thicker than 200 μm such as, for example, thicker than 250 μm, 300 μm, 350 μm, 400 μm, 450 μm, 500 μm, 600 μm, 700 μm, 800 μm, 900 μm, 1,000 μm, or 1,500 μm , and up to 2,000 μm or more as described herein. In some embodiment, the cathode can be at least about two times, three times, four times, five times, or even six times the thickness of the anode. The semi-solid cathode 440 can also formulated to have up to five times the loading density of conventional cathodes. The thicker cathode 440 and higher loading densities can be achieved with the semi-solid cathode 440 without the negative consequences associated with thicker conventional electrodes.
[00125] The ability to substantially increase the thickness t13 of the semi-solid cathode 440 eliminates the restriction on the thickness t14 of the high capacity anode 450 that is imposed by the limitations of the conventional cathodes, e.g., cathode 250 and 350. The anode 450 can therefore be made thicker to match the capacity of the thicker cathode 450, For example, the anode 450 can have a thickness t14 of about 70 μm to about 200 μm using conventional coating/calendering manufacturing methods or upwards of 600 μm or even higher if a semisolid anode is used as describe herein,
[00126] Therefore, the semi-solid cathode 440 and high capacity anode 450 of the electrochemical cell 400 formed using formulations and methodologies described herein can allow the maximum capacity offered by the high capacity materials of the anode 450 to be utilized in an electrochemical cell with fewer stacks. In some embodiments, the semi-solid cathode 440 and high capacity anode 450 can be used to make a single electrochemical cell 400 without any stacking. Because stacking is not needed or the number of stacks in a battery using the semi-solid cathode 440 is substantially less than the number of stacks needed in a high capacity anode and conventional cathode battery, for example electrochemical cell 300, or a conventional anode, conventional cathode battery, for example, electrochemical cell 200, the ratio of active materials to inactive materials in a cell stack formed from electrochemical cell 400, is substantially higher than that of the electrochemical cells 200 and 300. Thus, most of the volume of the assembled battery is occupied by active charge storing materials, which leads to increased overall charge capacity and energy density of the battery. For example, as shown in FIG. 4, the thickness t11 of the current collectors 410 and 420 is the same as current collectors 310 and 320 (i.e., 20 μm each), and the thickness t12 of the separator 430 is the same as the separator 330 (i.e., 20 μm ), which represents the total inactive material thickness of 60 μm. If the thickness t13 of the semi-solid cathode 440 is 500 μm and the thickness t14 of the high capacity anode 450 is 150 μm, the total active material thickness is 650 μm. Therefore, approximately 8.4% of the total thickness of the electrochemical cell 400 is occupied by inactive material, which does not contribute to the energy density and charge capacity of the battery. Since the percentage of inactive materials in the electrochemical cell 400 is approximately half the percentage of inactive materials in the electrochemical cell 200 (16%) and approximately one-third the percentage of inactive materials in the electrochemical cell 300 (23%), and because the full utilization of the high capacity anode 450 and higher loading density of the semi-solid cathode 440, the electrochemical cell 400 has a much higher energy density than the other electrochemical cells 200 and 300.」
(当審の仮訳:
「[0049]
・・・いくつかの実施形態では、セパレータ130は、電子の移動を妨げながら、正極140と負極150の電気活性物質間のイオンの往復輸送を可能にする液体電解質が注入された多孔質高分子膜である。」
「[00123] 本明細書に記載されているように、正極の厚さを増加すること及び/又は正極内の活物質の投入量を増加することは、大容量負極の恩恵を利用できる2つの方法である。これらは上記の理由により従来の正極では実現可能なオプションではないが、本明細書に記載されている半固体正極の様々な実施形態は従来の正極で達成可能な200μmという最大厚さより厚くすることができ、投入密度は従来の正極より5倍まで高くすることができる。図4は、正の集電体410と、負の集電体420と、正の集電体410と負の集電体420との間に配置されたセパレータ430とを含む、電気化学セル400の概略図を示している。正の集電体410及び負の集電体420はどちらも厚さt11を有し、セパレータ430は厚さt12を有する。厚さt13を有する半固体正極440は正の集電体410とセパレータ430との間に配置され、厚さt14を有する大容量負極450は負の集電体420とセパレータ430との間に配置されている。
[00124] 負極450は、図2に関連して前述した従来の方法又は任意のその他の従来の方法を使用して形成できる大容量負極である。いくつかの実施形態では、負極450は、本明細書に記載されているように静止半固体又は流動可能な半固体負極にすることができる。正極440は、本明細書に記載されているように静止半固体正極又は流動可能な半固体正極にできる半固体正極である。いくつかの実施形態では、半固体正極は、従来のカレンダー加工した電極で典型的に使用されている結合剤を実質的に含まない。従来の正極、例えば、正極240及び340とは対照的に、半固体正極440は、本明細書に記載されているように、例えば、250μm、300μm、350μm、400μm、450μm、500μm、600μm、700μm、800μm、900μm、1000μm、又は1500μmより厚く、2000μm以上までなど、200μmより厚くすることができる。実施形態によっては、正極は負極の厚さの少なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍、又は6倍にさえすることができる。また、半固体正極440は、従来の正極の投入密度の5倍まで有するように配合することもできる。より厚い従来の電極に関連するマイナスの結果をもたらさずに、より厚い正極440とより大きい投入密度を半固体正極440で達成することができる。
[00125] 半固体正極440の厚さt13を実質的に増加できることにより、従来の正極、例えば、正極250及び350の制限事項によって課せられた大容量負極450の厚さt14に対する制約が解消される。従って、負極450は、より厚い正極450の容量と整合するようにより厚くすることができる。例えば、負極450は、従来の被覆/カレンダー製造方法を使用して約70μm~約200μm或いは本明細書に記載されているように半固体負極が使用される場合は600μm以上の厚さt14を有することができる。
[00126] 従って、本明細書に記載されている配合及び方法を使用して形成された電気化学セル400の半固体正極440及び大容量負極450により、負極450の大容量物質によって提供される最大容量をより少ないスタックの電気化学セルで使用することができる。いくつかの実施形態では、半固体正極440及び大容量負極450は、積層なしの単一電気化学セル400を作成するために使用することができる。積層が不要であるか又は半固体正極440を使用する電池内のスタック数が大容量負極と従来の正極の電池、例えば、電気化学セル300、或いは従来の負極と従来の正極の電池、例えば、電気化学セル200において必要なスタック数よりかなり少ないので、電気化学セル400から形成されたセル・スタック内の不活性物質に対する活物質の割合は電気化学セル200及び300のものよりかなり高くなる。従って、組み立てられた電池の体積のほとんどは活性電荷蓄積物質によって占有され、それにより電池の全体的な電荷容量及びエネルギー密度が増加する。例えば、図4に示されているように、集電体410及び420の厚さt11は集電体310及び320と同じ(即ち、それぞれ20μm)であり、セパレータ430の厚さt12はセパレータ330と同じ(即ち、20μm)であり、これは60μmという不活性物質の全厚を表している。半固体正極440の厚さt13が500μmであり、大容量負極450の厚さt14が150μmである場合、活物質の全厚は650μmになる。従って、電気化学セル400の全厚のほぼ8.4%は、電池のエネルギー密度及び電荷容量に貢献しない不活性物質によって占有される。電気化学セル400内の不活性物質の割合は電気化学セル200内の不活性物質の割合(16%)のほぼ半分であり、電気化学セル300内の不活性物質の割合(23%)のほぼ1/3であるので、大容量負極450の完全利用並びに半固体正極440のより高い投入密度のために、電気化学セル400は他の電気化学セル200及び300よりかなり高いエネルギー密度を有する。)」
図4
[図:0001414800000001.jpg]
(イ)上記記載から、引用文献1には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
a [00126]の記載によれば、半固体正極440を含む電気化学セル400をスタック(積層)して使用し、セル・スタックを形成できることが記載されている。
b [00123]の記載によれば、電気化学セル400は、正の集電体410と、負の集電体420と、正の集電体410と負の集電体420との間に配置されたセパレータ430とを含み、半固体正極440は正の集電体410とセパレータ430との間に配置され、負極450は負の集電体420とセパレータ430との間に配置されている。
また、[00124]の記載によれば、負極450は、静止半固体負極にすることができ、正極440は、静止半固体正極にすることができる。
してみると、電気化学セル400は、正の集電体410、静止半固体正極440、セパレータ430、静止半固体負極450、負の集電体420の順に積層されたものである。
c 図4より、正の集電体410のセパレータ430と反対側の面は被覆されておらず、負の集電体420のセパレータ430と反対側の面は被覆されていないことが見てとれる。
(ウ)上記技術事項及び図面を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「電気化学セルをスタック(積層)したセル・スタックにおいて、
電気化学セルは、正の集電体、静止半固体正極、セパレータ、静止半固体負極、負の集電体の順に積層され、
正の集電体のセパレータと反対側の面は被覆されておらず、
負の集電体のセパレータと反対側の面は被覆されていない
セル・スタック。」
イ 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2004-158222号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0027】
図1は本発明の多層積層電池の直列接続n層セルの第1実施例20を示す。(a)は断面図、(b)は平面図を示す。ここで、9は基板であり、その上に第1層の電池セルとして先ずタブ20aのある正極集電体層4を積層する。次に、順次、正極活物質層1、固体電解質3、負極活物質層2、集電体層6を積層して第1層セルとする。次に、その集電体層6を正極・負極兼用集電体層6として、その上へ第1層セルと同様に順次層1、3、2、6を積層して第2層セルとする。以上の積層をセルn段繰り返し第n層セルではタブ20bのある負極集電体層5を最上層とした積層構造となる。」
「【0040】
図4は本発明の多層積層電池の直列接続第2実施例50を示す。第1層セルから第n層セルまでの各電池セルはそれぞれ同一の積層順序構造として、n段重ね多層積層電池を構成するに際して、個々の電池セル間にそれぞれ電気的に絶縁する絶縁体層7を備えているのが特徴である。但し図4の場合は最上部には絶縁体層7はない。」
図4
[図:0001414800000002.jpg]
ウ 引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平10-27602号公報(以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
「【0014】この様な正極1と負極2とセパレータ3を2枚ずつ用いて図1のような極群を組み立てるには、図2のように、2枚の負極2を切欠部2c同士と端子部2同士が重なるように集電体2a同士を重なり合わせて積層し、負極2の合剤層2bと正極1の合剤層1bとがセパレータ3を介して重なるように積層する。この状態では、上下の正極1の端子部1dが図3のように分離した状態なので、矢印方向に力を加え、図4のように端子部1d同士を接触させ、スポット溶接する。負極2の端子部2dも同様にスポット溶接して並列接続する。その後、この極群を電槽(図示せず)内へ収納し、例えば6フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )のプロピレンカーボネイト(PC)溶液からなる電解液を注入し、開口部を封止して本発明の積層形電池を完成する。
【0015】なお、図5に示すように、金属片から成るリード端子4を端子部1d,2dの溶着と同時に溶着して端子とすることも可能である。また、本実施例では、正極と負極をそれぞれ2枚ずつ用いた極群を示したが、このような極群を2組、3組、・・・と積み重ねて高容量の電池を組み立てることができる。電極の端子の位置および形状には、前記の例の他に図6の(イ)~(ホ)に示したような実施例等も可能である。図6において、5は電極、5aは切欠部、5bは端子部を示す。」
図2
[図:0001414800000003.jpg]
エ 引用文献4
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2002-359006号公報(以下、「引用文献4」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
「【0040】本発明においては袋状のスパーサーの中に正極及び/又は負極が入っていることを必須とするが、正極又は負極の一方のみが袋状スペーサーに入っていればよい。積層方法の具体例としては、集電体の片面にのみ正極材層を有する正極と、集電体の片面にのみ負極材層を有する負極を用い、正極/スペーサー/負極/負極/スペーサー/正極の順で積層し、2枚の負極は集電体側を対向させて積層(集電体側を背中合わせにして積層:図1、図2参照)することが挙げられる。この2枚のスペーサーを熱融着により袋状することにより1つの電池セルを作成することができる。熱融着は、電池の形状が四角形である場合、通常4辺とも熱融着するが、3辺だけでもよい。また、必ずしも完全に密封するように熱融着する必要はなく、破線状に熱融着してもよい。なお、外装材により電池要素を包み、脱機密封する場合もあるので、その際は袋状スペーサー内の気体も脱気できるように、完全に密封されないように熱融着されている方が好ましい。」
「【0042】上記のようにして得られた電池セル(積層セル)を必要に応じ複数積層して、形状可変性を有するフィルムからなるケースに密着収納することによって薄型電池が製造できる。形状可変性を有するフィルムからなるケースとしては、例えば高分子フィルムからなる、軽量で薄いラミネートフィルムがあげられる。ラミネートフィルムとしては金属箔と高分子フィルムのラミネート素材からなるフィルムが好適に使用できる。収納に際しては真空封入をすることが好ましい。むろん電池の機器への装着等の利便を図るため、ケースに電池を封入した後、必要ならば複数のケースを、剛性を持つ外装ケースに収納することも可能である。」
図1
[図:0001414800000004.jpg]
(3)引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「静止半固体正極」は、本件補正発明の「固定された半固体カソード」に相当する。そして、引用発明の「正の集電体」は、セパレータとの反対側の面は被覆されていないから、静止半固体正極が配置された面が本願補正発明の「第1の集電体」の「第1の表面」に相当し、他の面が「第2の表面」に相当する。
してみれば、引用発明の「正の集電体」は、本願補正発明の「第1の表面および第2の表面を有する第1の集電体であって、前記第1の集電体の前記第1の表面には固定された半固体カソードが配置され、前記第1の集電体の前記第2の表面には被覆がない、第1の集電体」に相当する。
イ 引用発明の「静止半固体負極」は、本件補正発明の「固定された半固体アノード」に相当する。そして、引用発明の「負の集電体」は、セパレータとの反対側の面は被覆されていないから、静止半固体負極が配置された面が本願補正発明の「第3の集電体」の「第1の表面」に相当し、他の面が「第2の表面」に相当する。
してみれば、引用発明の「負の集電体」は、本願補正発明の「第1の表面および第2の表面を有する第3の集電体であって、前記第3の集電体の前記第1の表面には固定された半固体アノードが配置され、前記第3の集電体の前記第2の表面には被覆がない、第3の集電体」に相当する。
ウ 引用発明は「正の集電体、静止半固体正極、セパレータ、静止半固体負極、負の集電体の順に積層され」るから、引用発明の「セパレータ」は静止半固体負極と静止半固体正極との間に配置されたものであり、本願補正発明とは「前記第3の集電体の前記固定された半固体アノードと前記第1の集電体の前記固定された半固体カソードとの間に配置された第1のセパレータ」である点で共通する。
但し、第1のセパレータが、本件補正発明は「液体電解質が注入された多孔性のポリマー膜を含む」のに対して、引用発明はそのような特定がない点で相違する。
エ 引用発明の「セル・スタック」は「電気化学セルをスタック(積層)した」ものであるから、本願補正発明の「電気化学セルスタック」に相当する。
但し、電気化学セルスタックが、本件補正発明は「第1の表面および第2の表面を有する第2の集電体であって、前記第2の集電体の前記第1の表面には固定された半固体カソードが配置され、前記第2の集電体の前記第2の表面には被覆がない、第2の集電体」と「前記第1の集電体の前記第2の表面と前記第2の集電体の前記第2の表面との間に配置されたスペーサ」とを含むのに対して、引用発明はそのような特定がない点で相違する。
また、電気化学セルスタックが、本件補正発明は「前記第1の集電体から延在する第1のタブ」と「前記第2の集電体から延在する第2のタブであって、前記第1のタブ及び前記第2のタブは正のベイルにまとめて結合された、第2のタブ」とを含むのに対して、引用発明はそのような特定がない点で相違する。
上記アないしエによれば、本件補正発明と引用発明との間には、次の一致点及び相違点があるといえる。
(一致点)
「第1の表面および第2の表面を有する第1の集電体であって、前記第1の集電体の前記第1の表面には固定された半固体カソードが配置され、前記第1の集電体の前記第2の表面には被覆がない、第1の集電体と、
第1の表面および第2の表面を有する第3の集電体であって、前記第3の集電体の前記第1の表面には固定された半固体アノードが配置され、前記第3の集電体の前記第2の表面には被覆がない、第3の集電体と、
前記第3の集電体の前記固定された半固体アノードと前記第1の集電体の前記固定された半固体カソードとの間に配置された第1のセパレータと、
を含む電気化学セルスタック。」
(相違点1)
電気化学セルスタックが、本件補正発明は「第1の表面および第2の表面を有する第2の集電体であって、前記第2の集電体の前記第1の表面には固定された半固体カソードが配置され、前記第2の集電体の前記第2の表面には被覆がない、第2の集電体」と「前記第1の集電体の前記第2の表面と前記第2の集電体の前記第2の表面との間に配置されたスペーサ」とを含むのに対して、引用発明はそのような特定がない点。
(相違点2)
電気化学セルスタックが、本件補正発明は「前記第1の集電体から延在する第1のタブ」と「前記第2の集電体から延在する第2のタブであって、前記第1のタブ及び前記第2のタブは正のベイルにまとめて結合された、第2のタブ」とを含むのに対して、引用発明はそのような特定がない点。
(相違点3)
第1のセパレータが、本件補正発明は「液体電解質が注入された多孔性のポリマー膜を含む」のに対して、引用発明はそのような特定がない点。
(4)相違点についての判断
上記相違点1について
引用発明の「セル・スタック」は、複数の電気化学セルがスタックされるものであるから、上記(3)アで、「第1の集電体」を認定した電気化学セルに隣接する電気化学セルが存在しており、その隣接する電気化学セルの「正の集電体」が、本願発明の「第2の集電体」に相当することは明らかである。そして、引用文献3(上記「(2)ウ」を参照)及び引用文献4(上記「(2)エ」を参照)、さらには特開2008-198492号公報(【0027】)、特開2010-153140号(【0154】)に例示されるように、電池において、極性の同じ集電体(正の集電体同士、又は負の集電体同士)を重ねるように積層することは周知技術であるので、引用発明の「セル・スタック」において、正の集電体同士を重ねるように、「正の集電体」に第2の正の集電体を積層することは、当業者が容易に想到し得ることである。
また、引用文献2(上記「(2)イ」を参照(「絶縁体層7」がスペーサに相当))、さらには、上記特開2008-198492号公報(【0027】(「絶縁層」がスペーサに相当))、上記特開2010-153140号(【0154】(「電解液保持基材」がスペーサに相当))に例示されるように、複数の電気化学セルの集電体をスペーサを介して積層することは周知技術であり、引用発明において、正の集電体同士を重ねるように積層する際に、「正の集電体」と第2の正の集電体との間にスペーサを配置することは適宜なし得ることに過ぎない。
したがって、引用発明に周知技術を適用し、上記相違点1に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たことである。
上記相違点2について
上記特開2010-153140号(図10)、特開2012-185913号公報(図1)に例示されるように、正及び負の集電体から延在するタブ、及び正の集電体から延在するタブをまとめて統合することは周知技術である。
引用発明の「電気化学セルをスタック(積層)したセル・スタック」においても、上記周知技術を適用し、正及び負の集電体から延在するタブを設けて、正の集電体から延在するタブをまとめて統合して、本件補正発明でいう正のベイルにすることより上記相違点2に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たことである。
上記相違点3について
引用文献1には「いくつかの実施形態では、セパレータ130は、電子の移動を妨げながら、正極140と負極150の電気活性物質間のイオンの往復輸送を可能にする液体電解質が注入された多孔質高分子膜である。」([0049])と記載されているので、引用発明において「セパレータ」を液体電解質が注入された多孔質高分子膜にすることは、当業者が容易に想到しうることである。
したがって、引用発明において、上記相違点3に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たことである。
そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
よって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)請求人の主張について
請求人は審判請求書において「固体電極及び固体電解質を用いた電気化学セルを積層させる場合、隣接する固体電極及び固体電解質の接触を促進し、イオンの移動を促進させるためには、非常に高い積層圧力が必要とされる。」「このような高い圧力を引用文献1に開示された半固体電極を用いた電気化学セルの積層に使用した場合には、電気化学セルスタックの側面から半固体電極や液体電解質が漏れ出てしまう。このため、当業者は、引用文献1に記載の技術に、引用文献2のような固体電解質及び固体電極を用いた電気化学セルの積層技術を組み合わせる動機付けを有しない。」と主に主張している。(審判請求書5頁10-18行)
しかしながら、引用文献2は、電池において、複数の電気化学セルの集電体をスペーサを介して積層することが周知技術であることを示すために引用した文献であり、また、複数の電気化学セルの集電体をスペーサを介して積層することは、固体電解質及び固体電極を用いた電気化学セルに限らず周知である(例えば、非水電解質二次電池に関する上記特開2010-153140号(【0154】(「電解液保持基材」がスペーサに相当)参照。)。
そして、固体電解質及び固体電極を用いた電気化学セルの積層技術と、複数の電気化学セルの集電体をスペーサを介して積層する技術とは、一体不可分の技術ではないことを踏まえると、引用文献1に記載の技術に、引用文献2のような固体電解質及び固体電極を用いた電気化学セルの積層技術を組み合わせる動機付けを有しないとの上記主張は当を得ないものであって採用できない。
(6)本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和4年9月26日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし30に記載された事項により特定されるものであるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2[理由]1(2)」に記載したとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
請求項1に係る発明に対する原査定の拒絶の理由の概略は次のとおりである。
この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし4に記載された周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1.国際公開第2014/150210号
2.特開2004-158222号公報(周知技術を示す文献)
3.特開平10-027602号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2002-359006号公報(周知技術を示す文献)
3 対比・判断
本願発明は、前記「第2の[理由]2」で検討した本件補正発明から、「前記第1の集電体から延在する第1のタブ」、「前記第2の集電体から延在する第2のタブであって、前記第1のタブ及び前記第2のタブは正のベイルにまとめて結合された、第2のタブ」及び「液体電解質が注入された多孔性のポリマー膜を含む」に係る限定事項(上記相違点2、3に係る事項)が削除されたものである。
そうすると、上記「第2[理由]2(3)、(4)」に記載したとおり、本件補正発明が、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、相違点2、3に係る構成が削除された本願発明も、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その他の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-009346