特許拒絶査定不服審判
2023-009260
装置、方法、プログラム、樹脂組成物の製造方法、ポリイミドフィルムの製造方法、ディスプレイの製造方法、積層体の製造方法、および、フレキシブルデバイスの製造方法
- 審判番号
- 2023-009260
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-117553外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年06月06日
- 審決日
- 2025年06月30日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】旭化成株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WZ (C08G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-117553「装置、方法、プログラム、樹脂組成物の製造方法、ポリイミドフィルムの製造方法、ディスプレイの製造方法、積層体の製造方法、および、フレキシブルデバイスの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 1月14日出願公開、特開2021- 4287〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和1年6月25日に出願された特願2019-117553号であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和 4年12月16日付け:拒絶理由通知
令和 5年 2月 7日 :意見書及び手続補正書の提出
同年 3月 1日付け:拒絶査定
同年 6月 6日 :審判請求書及び手続補正書の提出
同年 8月31日付け:前置報告
同年11月 6日 :上申書の提出
令和 7年 3月13日付け:拒絶理由通知
同年 5月 8日 :意見書及び手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~21に係る発明は、令和7年5月8日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~21に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「ポリイミド樹脂膜を生成し得る樹脂組成物に含まれる化合物の名称または構造式を示す組成データを取得する組成取得部と、
前記樹脂組成物の特性または前記ポリイミド樹脂膜の特性を示す特性データを取得する特性取得部と、
取得された前記組成データおよび前記特性データを含む学習データを用いて、目標とする前記樹脂組成物または前記ポリイミド樹脂膜の特性を示す目標特性データを入力したことに応じて、取得された何れかの前記組成データで示され前記樹脂組成物に含まれ得る化合物から選択される化合物であって、推奨する前記樹脂組成物に含まれる化合物の構造式を示す推奨組成データを出力するモデルの学習処理を実行する学習処理部と、
を備える装置。」
第3 本願発明の技術的意義に関する本願明細書の記載概要
本願発明は、組成データと特性データを学習データとして学習処理を行い、目標特性データを入力し、推奨組成データを出力させることにより、熟練した作業者による試行錯誤を必要とせずに目標特性の樹脂組成物の組成を得るものであると解される(【0029】)。
樹脂組成物を構成する化合物とその配合量が、樹脂組成物の特性及びそれを硬化させて得られる樹脂膜の特性に影響することは技術常識である。
そして、熟練した作業者が行う試行錯誤は、やみくもに成分及び配合の変更を試すのではなく、既知の樹脂組成物と当該樹脂組成物が示す特性を参考にして、成分及び配合を調節し、目標特性を示す組成を得ることであると解される(例として、第5の5(4)を参照)。
そうすると、本願発明は、上記熟練した作業者が行う試行錯誤を機械学習に置き換えたものであるといえる。
また、本願明細書には、組成データと特性データを提供して機械学習させることが記載されるのみであり、どれくらい多くの組成データと特性データを提供し、樹脂組成物が示す種々の特性から、特性データをどのように提供することにより、どの程度の精度及び確率で目標特性が得られるのかについて、記載も示唆もない。
第4 当審が通知した拒絶理由の概要
当審が令和7年3月13日付け拒絶理由通知書で通知した理由1は、概略以下のとおりである。
(進歩性)この出願の請求項1~21に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献5に記載された発明及び引用文献2、6に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献5:先端素材産業のイノベーションについて,JSR株式会社,2017年4月27日,@産業構造審議会 新産業構造部会,https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shinsangyo_kozo/pdf/016_05_00.pdf
引用文献2:特開2018-048307号公報
引用文献6:後藤 俊、荒川 正幹、船津 公人,ポリマー設計のための物性推算法と逆解析手法の開発,Journal of Computer Aided Chemistry,2009,Vol.10,p.30-37,https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcac/10/0/10_0_30/_pdf
第5 当審の判断
当合議体は、以下に述べるとおり、本願発明は、上記理由1により、特許を受けることができないと判断する。
以下にその理由を述べる。
1 引用文献5に記載された事項及び引用文献5に記載された発明
(1)引用文献5に記載された事項
引用文献5には、次の事項が記載されている。
(摘記ア)
「
[図:0001426216000001.jpg]
」(第6頁)
(摘記イ)
「
[図:0001426216000002.jpg]
」(第10頁)
(摘記ウ)
「
[図:0001426216000003.jpg]
」(第12頁)
(2)引用文献5に記載された発明
一般に、機械学習の利用は、収集されたデータを学習させて学習済みモデルを生成し、受け付けた未知のデータを学習済みモデルに入力すると、入力されたデータに対する正解が出力される、という流れで行われることは、本願出願時の技術常識である。
この技術常識を踏まえて、引用文献5の摘記ウのフロー図を見ると、
レジスト材料の開発に際して、
配合データ、評価結果、諸物性値が挙げられる構造化情報を収集し、
収集した構造化情報を基礎学習させてモデルを生成し、
膜厚、基板、用途、パターンサイズ、重要特性が挙げられる顧客要求を受け付け、
受け付けた顧客要求をモデルに入力すると、
入力された顧客要求に応じて材料設計された配合データが出力される、
というフローを読み取ることができる。
そして、フローにおける各段階は装置により実現されるのが一般的であるから、引用文献5には、摘記ウのフロー図に着目して、以下の発明が記載されていると認められる。
「レジスト材料の開発のために、
配合データ、評価結果及び諸物性値からなる構造化情報を収集する構造化情報収集部と、
収集された構造化情報を基礎学習させてモデルを生成する基礎学習部と、
膜厚、パターンサイズ及び重要特性を含む顧客要求を受け付ける顧客要求受付部と、
受け付けた顧客要求をモデルに入力する顧客要求入力部と、
入力された顧客要求に応じて材料設計された配合データを出力する配合データ出力部と、
を有する装置。」(以下、「引5装置発明」という。)
2 引用文献2に記載された事項
引用文献2には、次の事項が記載されている。
(摘記エ)
「【請求項1】
ジアミン成分と酸二無水物成分とを重合させて得られるポリイミド前駆体、および溶媒を含む、低温ポリシリコンTFT素子の基板用の樹脂組成物であって、
前記ポリイミド前駆体は、
(a)下記一般式(1):
【化1】
[図:0001426216000004.jpg]
で示される構造を含む、ことを特徴とする低温ポリシリコンTFT素子の基板用の樹脂組成物。
・・・
【請求項26】
支持体の表面上に、請求項1から25のいずれか1項に記載の樹脂組成物を塗布する工程と、
前記樹脂組成物からポリイミド樹脂膜を形成する工程と、
前記ポリイミド樹脂膜を前記支持体から剥離する工程と、
を含むことを特徴とする、樹脂フィルムの製造方法。
・・・」
(摘記オ)
「【0003】
ポリイミド樹脂は、不溶、不融の超耐熱性樹脂であり、耐熱酸化性、耐熱特性、耐放射線性、耐低温性、耐薬品性等に優れた特性を有している。このため、ポリイミド樹脂は、電子材料を含む広範囲な分野で用いられている。電子材料分野におけるポリイミド樹脂の適用例としては、例えば、絶縁コーティング剤、絶縁膜、半導体の保護膜、TFT-LCDの電極保護膜等を挙げることができる。最近は、ディスプレイ材料の分野で従来使用されていたガラス基板に代わり、その軽さ、柔軟性を利用した無色透明フレキシブル基板としての採用が検討されている。」
(摘記カ)
「【0017】
[ポリイミド前駆体]
本実施の形態におけるポリイミド前駆体は、
(a)下記一般式(1):
【化6】
[図:0001426216000005.jpg]
で示されるポリイミド前駆体である。
本実施の形態にかかる一般式(1)に用いられる酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物(以下PMDAとも記す)を例示することができる。
本実施の形態にかかる一般式(1)に用いられるジアミンとしては、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、を例示することができる。
・・・
【0021】
本実施の形態におけるポリイミド前駆体には、伸度、強度、応力、及び黄色度等を損なわない範囲で、ピロメリット酸二無水物の他に、他の酸二無水物を用いることができる。
このような酸二無水物として、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-シクロヘキセン-1,2ジカルボン酸無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’―ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、メチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,1-エチリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、2,2-プロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,2-エチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-トリメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,4-テトラメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,5-ペンタメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、p-フェニレンビス(トリメリテート酸無水物)、チオ-4,4’-ジフタル酸二無水物、スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,3-ビス[2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン二無水物、1,4-ビス[2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン二無水物、ビス[3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、2,2-ビス[3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジメチルシラン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等を例示することができる。
・・・
【0023】
本実施の形態におけるポリイミド前駆体には、伸度、強度、応力、及び黄色度等を損なわない範囲で、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、の他に、他のジアミンを用いることができる。
その他のジアミンとしては、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノビフェニル、3,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、9,10-ビス(4-アミノフェニル)アントラセン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(3-アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼン、等を挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することが好ましい。
・・・
【0031】
実施の態様におけるポリイミド前駆体は、その性能を損なわない範囲で、上述のテトラカルボン酸二無水物に加えてジカルボン酸を使用することにより、ポリアミドイミド前駆体としてもよい。このような前駆体を使用することにより、得られるフィルムにおいて、機械伸度の向上、ガラス転移温度の向上、黄色度の低減等の諸性能を調整することができる。そのようなジカルボン酸として、芳香環を有するジカルボン酸及び脂環式ジカルボン酸が挙げられる。特に炭素数が8~36の芳香族ジカルボン酸、及び炭素数が6~34の脂環式ジカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1つの化合物であることが好ましい。ここでいう炭素数には、カルボキシル基に含まれる炭素の数も含む。
これらのうち、芳香環を有するジカルボン酸が好ましい。
【0032】
具体的には、例えばイソフタル酸、テレフタル酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、3,4’-ビフェニルジカルボン酸、3,3’-ビフェニルジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-スルホニルビス安息香酸、3,4’-スルホニルビス安息香酸、3,3’-スルホニルビス安息香酸、4,4’-オキシビス安息香酸、3,4’-オキシビス安息香酸、3,3’-オキシビス安息香酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)プロパン、2,2’-ジメチル-4,4’-ビフェニルジカルボン酸、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニルジカルボン酸、2,2’-ジメチル-3,3’-ビフェニルジカルボン酸、9,9-ビス(4-(4-カルボキシフェノキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(3-カルボキシフェノキシ)フェニル)フルオレン、4,4’-ビス(4-カルボキシフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-カルボキシフェノキシ)ビフェニル、3,4’-ビス(4-カルボキシフェノキシ)ビフェニル、3,4’-ビス(3-カルボキシフェノキシ)ビフェニル、3,3’-ビス(4-カルボキシフェノキシ)ビフェニル、3,3’-ビス(3―カルボキシフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-p-ターフェニル、4,4’-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-m-ターフェニル、3,4’-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-p-ターフェニル、3,3’-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-p-ターフェニル、3,4’-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-m-ターフェニル、3,3’-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-m-ターフェニル、4,4’-ビス(3-カルボキシフェノキシ)-p-ターフェニル、4,4’-ビス(3-カルボキシフェノキシ)-m-ターフェニル、3,4’-ビス(3-カルボキシフェノキシ)-p-ターフェニル、3,3’-ビス(3-カルボキシフェノキシ)-p-ターフェニル、3,4’-ビス(3-カルボキシフェノキシ)-m-ターフェニル、3,3’-ビス(3-カルボキシフェノキシ)-m-ターフェニル、1,1-シクロブタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’-ベンゾフェノンジカルボン酸、1,3-フェニレン二酢酸、1,4-フェニレン二酢酸等;及び国際公開第2005/068535号パンフレットに記載の5-アミノイソフタル酸誘導体等が挙げられる。これらジカルボン酸をポリマーに実際に共重合させる場合には、塩化チオニル等から誘導される酸クロリド体、活性エステル体等の形で使用してもよい。
【0033】
[ポリイミド前駆体の製造]
本発明のポリイミド前駆体(ポリアミド酸)は、ピロメリット酸二無水物と、前述の一般式(1)で表される構造単位に用いられるジアミン(例えば4,4’-ジアミノジフェニルスルホン)とを、重縮合反応させることにより、合成することができる。この反応は、適当な溶媒中で行うことが好ましい。具体的には、例えば、溶媒に所定量の4,4’-DASを溶解させた後、得られたジアミン溶液に、ピロメリット酸二無水物を所定量添加し、撹拌する方法が挙げられる。
・・・
【実施例】
【0090】
以下、本発明について、実施例に基づき更に詳述するが、これらは説明のために記述されるものであって、本発明の範囲が下記実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例における各種評価は次のとおりに行った。
・・・
【0101】
[実施例1]
オイルバスを備えた撹拌棒付き3Lセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながらNMP2(1065g)を加え、ジアミンとして4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(248.3g)を撹拌しながら加え、続いて酸二無水物としてPMDA(218.12g)を加えて室温で30分撹拌した。これを80℃に昇温し、3時間撹拌した後、オイルバスを外して室温に戻し、透明なポリアミド酸のNMP溶液(以下、ワニスとも記す)を得た(ワニスP-2)。ここでの組成及び得られたポリアミド酸の重量平均分子量(Mw)をそれぞれ表1に示す。また、430℃キュアしたフィルムの試験結果を表2に示す。
・・・」
3 引用文献6に記載された事項
引用文献6には、次の事項が記載されている。
(摘記キ)
「現在、ポリマーは多種多様な製品の材料として幅広い用途で利用されている。ポリマーの開発においては、それぞれの用途に応じた設計を行うことが必要であるが、用途によって要求される物性は異なるため、効率的なポリマー設計の手法が求められている。そこで本研究では、物性推算モデルの構築とその逆解析により、要求される物性を実現するポリマーを設計するための方法を提案した。単重合ポリマーデータに対して、原子団寄与法とRDF記述子を用いて予測的な物性推算モデルを構築した。また、ランダム共重合ポリエステルデータに対して、組成や原子団寄与法による物性推算モデルを構築し、モデルの逆解析を通じて複数物性の同時最適化を行った。さらに、既存モノマーの組成検討だけではなく、新規モノマーの構造生成によるポリマー設計手法の提案を行った。いずれの解析においても良好な結果が得られ、情報化学的手法によるポリマー設計の可能性が示された。」(第30頁)
(摘記ク)
「コンピュータの能力向上により大量のデータを迅速に処理できるようになり、情報科学を化学の問題解決に応用するケモインフォマティックスが発展してきた[1]。その対象は材料、薬物、触媒の設計から反応経路の設計など多岐にわたり、構造活性相関、構造解析、反応予測などにおいてその有用性が示されている。ケモインフォマティックス手法を取り入れることにより、化学製品の開発過程での試行錯誤的な実験によるロスが減少し、開発の効率化が可能になると期待される。
化学製品の中でもポリマーは多種多様な製品の材料として幅広い用途で利用されており、その用途によって要求される物性が異なる。そのため個々のポリマー合成において、適切な原料・反応条件・加工法を選定しなければならない。しかしながら、これらは互いに独立に制御できるわけではなく、考慮すべきパラメータも多岐にわたるため、長年の経験を積んだ現場の職人の勘に頼ることが多い。このような状況では、知識の継承を行うことが難しく、また職人がいつも正しい判断を下せるのかという問題もある。・・・
本研究では、この方法論を複数のモノマーから合成される共重合ポリエステルの設計へ応用することを目的とした。共重合ポリエステルは、トレードオフの関係にある複数の目的物性を持つ高機能材料開発において用いられることが多い。ポリマー物性はモノマー構造のみならず重合度やその分布にも左右されるが、1つの材料開発において、ふつうは反応条件や触媒により重合度が制御されるため、実用的にはモノマー構造のみを考えれば十分であると言える。そこで本研究では、まず単重合ポリマーデータを用いて適切な記述子や解析法を検討し、次に共重合ポリエステルデータを用いて物性推算モデル構築と逆解析による設計を行った。」(第31頁の緒言)
(摘記ケ)
「本研究で提案する組成探索と新規モノマー構造生成の概略をFigure 1に示す。実験データから物性予測モデルを構築し、モデルの逆解析により、要求される物性を示すような記述子の組を探索し、ポリマー構造を設計する。原料として既存のモノマーのみを用いる場合は、組成を表す記述子によるモデルを構築し、構築されたモデルを用いて要求物性を示すような組成候補を探索する。既存モノマーの組み合わせを検討するだけでは要求を満たすことが困難な場合は、部分構造を直接表現する記述子を用いてモデルを構築し、構築されたモデルを用いて要求物性を示すような部分構造の組み合わせを探索する。これらの部分構造を用いた構造生成によって、新規なモノマー構造候補を得ることが可能である。
[図:0001426216000006.jpg]
」(第31頁の手法)
(摘記コ)
「・・・そこで、組成探索ではなく、新規モノマー候補構造の生成によるポリマーの設計を行った。
・・・
構造生成
・・・
逆解析の結果、合計で17,280個の候補が得られた。これらの候補について酸成分、グリコール成分別の原子団寄与法モデルを用いて物性値の予測を行った結果、図に示す通り、トレーニングデータの周辺に広く分布していることが確認された。この中で目標とする範囲内に位置するものは173個であった。
これらのフラグメント数を用いて構造生成アルゴリズム[8]によりモノマー分子の組み立てを行った結果、酸成分について27個、グリコール成分について8個の候補構造が得られた。これら新規モノマーと既存のモノマーとを組み合わせてポリマーの設計を行うことで、これまでに実現できなかった物性バランスを持つ高機能ポリマーが得られることが期待される。」(第35頁~第36頁)
(摘記サ)
「・・・従来、ポリマーの設計プロセスは化学者の経験によるところが大きかったが、本手法を用いることにより、過去に蓄積された実験データから得られる知識を有効に利用することが可能となる。」(第36頁の結言)
4 対比
本願発明と引5装置発明とを対比する。
引5装置発明の「レジスト」は、膜に関する樹脂材料であるから、本願発明の「ポリイミド樹脂膜」と、「膜」である限りにおいて一致する。
引5装置発明の「配合データ」「からなる構造化情報」は、本願発明の「組成データ」に相当するから、引5装置発明の「配合データ」「からなる構造化情報を収集する構造化情報収集部」は、本願発明の「ポリイミド樹脂膜を生成し得る樹脂組成物に含まれる化合物の名称または構造式を示す組成データを取得する組成取得部」と、「組成データを取得する組成取得部」である限りにおいて一致する。
引5装置発明の「評価結果及び諸物性値からなる構造化情報」は、本願発明の「特性データ」に相当するから、引5装置発明の「評価結果及び諸物性値からなる構造化情報を収集する構造化情報収集部」は、本願発明の「前記樹脂組成物の特性または前記ポリイミド樹脂膜の特性を示す特性データを取得する特性取得部」と、「特性データを取得する特性取得部」である限りにおいて一致する。
引5装置発明の「収集された構造化情報を基礎学習させてモデルを生成する基礎学習部」は、当該モデルが、受け付けた顧客要求を入力すると、入力された顧客要求に応じて、材料設計された配合データを出力するところ、引5装置発明の「顧客要求」は、本願発明の「目標とする」「特性を示す目標特性データ」に相当し、引5装置発明の「材料設計された配合データ」は、本願発明の「推奨組成データ」に相当することも踏まえると、本願発明の「取得された前記組成データおよび前記特性データを含む学習データを用いて、目標とする前記樹脂組成物または前記ポリイミド樹脂膜の特性を示す目標特性データを入力したことに応じて、取得された何れかの前記組成データで示され前記樹脂組成物に含まれ得る化合物から選択される化合物であって、推奨する前記樹脂組成物に含まれる化合物の構造式を示す推奨組成データを出力するモデルの学習処理を実行する学習処理部」と、「取得された前記組成データおよび前記特性データを含む学習データを用いて、目標とする」「特性を示す目標特性データを入力したことに応じて、」「推奨組成データを出力するモデルの学習処理を実行する学習処理部」である限りにおいて一致する。
そうすると、本願発明と引5装置発明とは、
「膜の組成データを取得する組成取得部と、
膜の特性データを取得する特性取得部と、
取得された前記組成データおよび前記特性データを含む学習データを用いて、目標とする特性を示す目標特性データを入力したことに応じて、推奨組成データを出力するモデルの学習処理を実行する学習処理部と、
を備える装置。」の点で一致し、次の点で相違する。
<相違点1>
「組成取得部」における「膜の組成データ」が、本願発明では、「ポリイミド樹脂膜を生成し得る樹脂組成物に含まれる化合物」に係るデータであるのに対し、引5装置発明では、そのようなものであるか不明である点
<相違点2>
「特性取得部」における「膜の特性データ」及び「モデル」に入力される「目標特性データ」が、本願発明では、それぞれ「前記樹脂組成物の特性または前記ポリイミド樹脂膜の特性を示す」データであり、「前記樹脂組成物または前記ポリイミド樹脂膜の特性を示す」データであるのに対し、引5装置発明では、そのようなものであるか不明である点
<相違点3>
「組成取得部」における「組成データ」が、本願発明では、「樹脂組成物に含まれる化合物の名称または構造式を示す」データであるのに対し、引5装置発明は、そのようなものであるか不明である点
<相違点4>
「推奨組成データ」が、本願発明では、「取得された何れかの前記組成データで示され前記樹脂組成物に含まれ得る化合物から選択される化合物であって、推奨する前記樹脂組成物に含まれる化合物の構造式を示す」データであるのに対し、引5装置発明では、そのようなものであるか不明である点
5 検討
(1)相違点1及び相違点2について
上記相違点1及び相違点2は、ともに推奨組成データを取得するための膜に関するデータ(樹脂の種類、樹脂組成物に含まれる化合物、及び、膜の特性)に関するものであるから、併せて検討する。なお、相違点3は、相違点1と、「樹脂組成物に含まれる化合物」に関する点において一部重複するものの、相違点1は、「膜」を構成する成分に関するものであり、相違点3は、化合物の「名称または構造式」を示すことの特定に関するものであるから、分けて検討する。
まず、引5装置発明は、レジストに関するものであるが、摘記ア~ウの記載から、膜の材料開発一般に適用可能なことは当業者が理解することである。
そして、引用文献2には、ポリイミド樹脂膜を生成する樹脂組成物の製造技術が開示されており(摘記エ、カ)、引用文献2に記載されているように、ポリイミド樹脂を構成する成分(樹脂組成物に含まれる化合物)として酸二無水物やジアミン、ジカルボン酸が知られており(摘記カ)、また、ポリイミド樹脂は、電子材料を含む広範囲な分野で用いられ、電子材料分野におけるポリイミド樹脂の適用例としては、例えば、半導体の保護膜等を挙げることができることも記載されている(摘記オ)。
そうすると、引5装置発明の膜を、膜の構成材料として周知のポリイミド樹脂からなる膜とし、組成データをポリイミド樹脂膜を生成する樹脂組成物に含まれる化合物に係るものとすることや、特性データや目標特性データを当該樹脂組成物の特性又は当該ポリイミド樹脂膜の特性を示すものとすることは、当業者が適宜なし得ることである。
(2)相違点3について
上記相違点3は、取得するデータが化合物の「名称または構造式」を示すことを特定するものであるので、以下検討する。
引用文献6には、「物性推算モデルの構築とその逆解析により、要求される物性を実現するポリマーを設計するための方法を提案した」として(摘記キ)、「原料として既存のモノマーのみを用いる場合は、組成を表す記述子によるモデルを構築し、構築されたモデルを用いて要求物性を示すような組成候補を探索する」(下線は当審による。以下同様。)ことが記載され(摘記ケ)、また、「ポリマー物性はモノマー構造のみならず重合度やその分布にも左右されるが、1つの材料開発において、ふつうは反応条件や触媒により重合度が制御されるため、実用的にはモノマー構造のみを考えれば十分であると言える」ことも記載されている(摘記ク)。さらに、引用文献6には、「既存モノマーの組み合わせを検討するだけでは要求を満たすことが困難な場合は、部分構造を直接表現する記述子を用いてモデルを構築し、構築されたモデルを用いて要求物性を示すような部分構造の組み合わせを探索する。これらの部分構造を用いた構造生成によって、新規なモノマー構造候補を得ることが可能である。」と記載され(摘記ケ)、Figure 1には、
「
[図:0001426216000007.jpg]
」と、最終的に分子構造を得ることも図示され(摘記ケ)、また、新規モノマー候補構造の生成によるポリマーの設計を行い、酸成分について27個、グリコール成分について8個の候補構造が得られた旨も記載されている(摘記コ)。
ここで、引用文献6には、組成による物性推算モデルを構築し、構築されたモデルを用いて要求物性を示す組成候補を探索する手法が記載されており(摘記キ、ケ)、引用文献6記載の「組成」、「組成候補」は、既存モノマーを用いる場合の組成、組成候補であるから、当該モノマーの名称であると認められる。
また、引用文献6には、既存モノマーを用いる場合に候補を構造式で示すことは明記されていないものの、化合物の表示形式として、名称又は構造式を表示することは技術常識であるし、また、引用文献6には、ポリマーの材料開発において、モノマー構造を考えることが記載され(摘記ク)、最終的に分子構造を得ることが図示され(摘記ケ)、さらに、既存モノマーを用いる場合ではないものの新規モノマー候補構造の生成によって候補構造が得られたことも記載されている(摘記コ)。
そうすると、引5装置発明において膜の構成材料に含まれる化合物に着目し、取得する組成データとして、要求される物性を実現する材料を設計する点において技術分野が共通する引用文献6を参酌して、既存モノマーを用いる場合に、化合物の名称を示すものとし、あるいは、構造候補も示すものとすることは、当業者が容易になし得ることである。
(3)相違点4について
上記相違点4は、出力するデータが化合物の「構造式」を示すことを特定するものであるので、以下検討する。
上記(2)において述べたように、引用文献6記載の「組成」、「組成候補」は、既存モノマーを用いる場合の組成、組成候補であるから、当該モノマーの名称であると認められ、引用文献6には、既存モノマーを用いる場合に候補を構造式で示すことは明記されていないものの、化合物の表示形式として、名称又は構造式を表示することは技術常識であるし、また、引用文献6には、ポリマーの材料開発において、モノマー構造を考えることが記載され(摘記ク)、最終的に分子構造を得ることが図示され(摘記ケ)、さらに、既存モノマーを用いる場合ではないものの新規モノマー候補構造の生成によって候補構造が得られたことも記載されている(摘記コ)。
そうすると、引5装置発明において膜の構成材料に含まれる化合物に着目し、出力する推奨組成データとして、要求される物性を実現する材料を設計する点において技術分野が共通する引用文献6を参酌して、既存モノマーを用いる場合に、化合物の名称を示すものとし、名称に加えて、又は、名称に代えて、構造候補を示すものとすることは、当業者が容易になし得ることである。
(4)効果について
本願発明の効果は、本願明細書の記載から見て、「試行錯誤により組成を得るのは効率が悪い」(【0003】)という課題を解決するものといえるところ、引用文献5には、これまでの材料開発フローが開発者の勘や経験に頼っていたこと(摘記イ)やAIを活用した研究開発効率の飛躍的向上が見込まれること(摘記ア)が記載されており、また、引用文献6には、効率的なポリマー設計の手法が求められているとして、物性推算法とその逆解析により要求物性を実現するポリマー設計の手法が開発されたこと(摘記キ)、ケモインフォマティックス手法を取り入れることにより、化学製品の開発過程での試行錯誤的な実験によるロスが減少し、開発の効率化が可能になると期待され、化学製品の中でもポリマーは多種多様な製品の材料として幅広い用途で利用されており、その用途によって要求される物性が異なるため、個々のポリマー合成において、適切な原料・反応条件・加工法を選定しなければならないが、これらは互いに独立に制御できるわけではなく、考慮すべきパラメータも多岐にわたるため、長年の経験を積んだ現場の職人の勘に頼ることが多いこと(摘記ク)、従来、ポリマーの設計プロセスは化学者の経験によるところが大きかったが、引用文献6記載の手法を用いることにより、過去に蓄積された実験データから得られる知識を有効に利用することが可能となること(摘記サ)も記載されているから、上記効果は当業者の予測の範囲内のものである。
さらに、本願明細書には、【0030】~【0051】において組成データに関する説明があり、また、【0052】~【0090】において特性データに関する説明があるものの、これらは単に化合物や特性が列挙されているに過ぎないといえ、どれくらい多くの組成データと特性データを提供し、樹脂組成物が示す種々の特性から、特性データをどのように提供することにより、どの程度の精度及び確率で目標特性が得られるのかについて本願明細書には何ら開示されていないから、本願発明によって奏される効果が格別顕著なものであるとは認められない。
また、名称や構造式を示すことに関しても、本願明細書には、【0030】において、「組成データで示される組成は、ポリイミド、ポリイミド前駆体、および、ポリイミド前駆体の材料モノマーの少なくとも一つを含む樹脂組成物を生成し得る原材料の有無であってもよいし、原材料に含まれる化合物(例えば一般名で示される原材料に含まれる具体的な化合物の名称または構造式)であってもよい」と記載されているだけであって、取得する組成データとして名称または構造式を示すことや、推奨組成データとして名称ではなく構造式を示すことの技術的意義が開示されているとはいえないから、それらによって奏される効果についても格別顕著なものであるとは認められない。
(5)審判請求人の主張について
審判請求人は令和7年5月8日提出の意見書において以下のとおり主張している。
ア 「(2)構成上の相違
いずれの引用文献にも、本願の請求項1に係る発明の下記の構成が記載されていない。本願の請求項11,20に係る発明についても同様である。
「…樹脂組成物に含まれる化合物の名称または構造式を示す組成データを取得する…
取得された前記組成データおよび前記特性データを含む学習データを用いて、…目標特性データを入力したことに応じて、取得された何れかの前記組成データで示され前記樹脂組成物に含まれ得る化合物から選択される化合物であって、推奨する前記樹脂組成物に含まれる化合物の構造式を示す推奨組成データを出力するモデルの学習処理を実行する」」(第16頁第7行~第14行)
イ 「引用発明6は、既存のモノマーを検討する場合に、既存モノマーの組成を表す記述子によってモデルを構築した後、要求物性を示すような組成候補を、モデルを用いて探索する発明(引用発明6-1とも称する)と、既存ではないモノマーを検討する場合に、部分構造を直接表現する記述子によってモデルを構築した後、要求物性を示すような部分構造の組み合わせを、モデルを用いて探索する発明(引用発明6-2とも称する)とを含む(第31頁の手法、Figure 1)。
ここで、引用発明6-1は、既存のモノマーの組成を検討するものであり、既存ではないモノマーを検討するものではないため、探索される組成候補は構造式を示すものではない。また、引用発明6-2は、化合物の部分的な構造である部分構造を表現する記述子によってモデルを構築した後、部分構造の組み合わせを探索するものであるから、樹脂組成物に含まれる化合物の名称又は構造式を示す組成データによってモデルを構築し、推奨する樹脂組成物に含まれる化合物の構造を探索するものではなく、モデルの構築に用いた何れかの組成データで示される化合物を探索するものでもない。引用文献6には、化合物そのものの名称または構造式を示す組成データを用いてモデルを構築した後、何れかの組成データで示される樹脂組成物に含まれる化合物であって、推奨する化合物そのものの構造を探索することについて、何らの記載も示唆もされていない。従って、上記のような引用発明6を、引用発明5に適用しても、本願請求項1に係る発明の構成に想到することは決して容易ではない。」(第16頁下から第8行~第17頁第10行)
上記アの点について検討すると、上記「構成上の相違」については、上記5(2)、(3)において述べたとおり、当業者が容易に想到し得るものである。
上記イの点について検討すると、審判請求人の主張は、「引用文献6には、化合物そのものの名称または構造式を示す組成データを用いてモデルを構築した後、何れかの組成データで示される樹脂組成物に含まれる化合物であって、推奨する化合物そのものの構造を探索することについて、何らの記載も示唆もされていない」というにとどまり、そのようにすることが容易でない理由については述べていない。そして、この点については、上記5(2)、(3)において述べたとおり、当業者が容易に想到し得るものである。
以上のとおりであるから、上記ア及びイの主張はいずれも採用しない。
(6)小括
したがって、本願発明は、引用文献5に記載された発明及び引用文献2、6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明、すなわち請求項1に係る発明は、引用文献5に記載された発明及び引用文献2、6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-009260