特許拒絶査定不服審判
2023-009218
シート状物の欠陥検査装置,欠陥検査プログラム及びシート状物の製造方法
- 審判番号
- 2023-009218
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-199144
- 請求日
- 2023年06月06日
- 審決日
- 2024年04月15日
- 公報発行日
- 2024年07月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】王子ホールディングス株式会社
- 【請求人代理人】廣瀬 隆行
- 【請求人代理人】関 大祐
- 審判長/審判官
- 審判長 三崎 仁
- 審判官 渡戸 正義
- 審判官 櫃本 研太郎
- 分類
- P18 .121-Z (G01N) / P18 .113-Z (G01N) / P18 .572-Z (G01N) / P18 .575-Z (G01N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-199144「シート状物の欠陥検査装置,欠陥検査プログラム及びシート状物の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 5月 6日出願公開、特開2021- 71419〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年10月31日の出願であって、令和4年10月31日付けで拒絶理由が通知され、同年12月23日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和5年3月29日付けで拒絶査定(原査定)がされた(謄本の送達日:同年4月5日)ところ、同年6月6日に拒絶査定不服審判の請求がされ、それと同時に手続補正がされたものである。
第2 令和5年6月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年6月6日にされた手続補正(以下「本件補正」ということがある。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線は、補正箇所を示す。)
「【請求項1】
一定方向に向かって搬送されているシート状物の欠陥検査装置であって,
シート状物の撮影画像を解析して前記シート状物の欠陥を検出する欠陥検出部と,
ある撮影装置によって連続的に撮影された複数の前記撮影画像中における前記シート状物の前記欠陥の個数を計測するカウント部と,
前記欠陥の個数が所定の閾値を超えたか否かを判定する判定部と,を備える
欠陥検査装置。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和4年12月23日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
シート状物の欠陥検査装置であって,
シート状物の撮影画像を解析して前記シート状物の欠陥を検出する欠陥検出部と,
連続的に撮影された複数の前記撮影画像中における前記シート状物の単位面積当たりの前記欠陥の個数を計測するカウント部と,
前記欠陥の個数が所定の閾値を超えたか否かを判定する判定部と,を備える
欠陥検査装置。」
2 補正の適否
(1)本件補正のうち、請求項1に係る補正は、以下のアないしウの補正を含む。
ア 本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「シート状物」について、「一定方向に向かって搬送されている」との限定を付加する。
イ 本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「連続的に撮影された複数の前記撮影画像」について、「ある撮影装置によって」撮影されたものとの限定を付加する。
ウ 本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「カウント部」が「計測する」「複数の前記撮影画像中における前記シート状物の単位面積当たりの前記欠陥の個数」について、「単位面積当たりの」との特定を削除し、「複数の前記撮影画像中における前記シート状物の前記欠陥の個数」とする。
(2)そこで、請求項1に係る補正の目的について検討する。
ア 上記(1)ア及びイの補正は、それぞれ本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「シート状物」及び「連続的に撮影された複数の前記撮影画像」について、上記(1)ア及びイのとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ(ア)上記(1)ウの補正は、本件補正前は、カウント部が計測する欠陥の個数が、「連続的に撮影された複数の前記撮影画像中における前記シート状物の単位面積当たりの前記欠陥の個数」であり、判定部が所定の閾値を超えたか否かを判定する対象が、当該「単位面積当たりの前記欠陥の個数」であったものから、「単位面積当たりの」との記載を削除することにより、カウント部が計測する欠陥の個数を、「連続的に撮影された複数の前記撮影画像中における前記シート状物の前記欠陥の個数」と、「連続的に撮影された複数の前記撮影画像中における」総数に変更し、判定部が所定の閾値を超えたか否かを判定する対象についても、当該総数に変更するものである。
(イ)ここで、欠陥の総数に基づく判定が、単位面積当たりの欠陥数に基づく判定の下位概念に相当するとは認められないから、上記(1)ウの補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとはいえない。
(ウ)また、原査定において、「「連続的に撮影された複数の撮影画像中」という文言からは動画撮影であるか、例えば搬送されている対象に対して連続的に撮影した画像なのか判別することができず、また、「連続的に撮影された複数の撮影画像中における単位面積」という文言から、単位面積が連続的に撮影された複数の撮影画像のことを意味していると解釈することはできない。つまり、「連続的に撮影された複数の撮影画像中における単位面積」という文言の解釈の中には、搬送された対象を連続的に撮像し、単位面積が複数の撮影画像ではなく単一の撮影画像である発明も含まれうる。」との判断が示されているが、当該判断は、補正前の請求項1に係る発明の技術的範囲に係るものであって、補正前の請求項1の記載が不明瞭であることを指摘するものではない。
そして、補正前の請求項1の記載に不明瞭な事項があるとは認められないから、上記(1)ウの補正は、同項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当するとはいえない。
(エ)さらに、本件補正前の請求項1の記載に誤記と認められる記載はないので、上記(1)ウの補正は、同項第3号に掲げる誤記の訂正を目的とするものに該当するとはいえない。
そして、上記(1)ウの補正が、同項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当しないことは、明らかである。
(オ)a 請求人は、審判請求書の第3.の「2.補正の適法性について」において、「補正前の請求項1では,「連続的に撮影された複数の前記撮影画像中における前記シート状物の単位面積当たりの前記欠陥の個数を計測するカウント部」とあったものを,補正後の請求項1では,「ある撮影装置によって連続的に撮影された複数の前記撮影画像中における前記シート状物の前記欠陥の個数を計測するカウント部」と補正した。つまり,補正前の請求項1から「単位面積当たりの」との文言を削除した。この点は,例えば,本願明細書の段落0039における「例えば,カウント部221dは,一枚の撮影画像中における欠陥の数を計測することとしてもよいし,連続的に撮影された複数の撮影画像中における欠陥の数を計測することとしてもよい。また,一枚又は複数枚の撮影画像中の一定の面積内の欠陥の数を計測することとしてもよい。」との記載を根拠としている。・・・請求項1の補正は,特許請求の範囲を限定的に減縮することを目的とした補正であるといえる。特に,補正後の請求項1では,前述した通り補正前の請求項1における「単位面積当たりの」との文言を削除した。原査定でも指摘されていたとおり,補正前の「連続的に撮影された複数の撮影画像中における単位面積」という文言の解釈の中には,搬送された対象を連続的に撮像し,単位面積を数の撮影画像ではなく単一の撮影画像とし,一枚の撮影画像の中から欠陥の個数を計測するという発明も含まれうるとも考えられたところ,上記の通り「単位面積当たりの」との文言を削除したことによって,搬送された対象を連続的に撮像して,複数の撮影画像の中から欠陥の個数を計測するという発明に限定された。従って,請求項1の補正は,特許請求の範囲を限定的に減縮するものであるといえる。」(下線は請求人による。)と主張する。
b 請求人の上記主張について検討するに、上記(ア)及び(イ)で説示したように、「単位面積当たりの」との記載を削除することにより、カウント部が計測する欠陥の個数及び判定部が判定する欠陥の個数が、単位面積当たりの欠陥数から欠陥の総数に変更されることになるから、「単位面積当たりの」との記載を削除する補正は、いわゆる限定的減縮を目的とするものとはいえない。
したがって、請求人の上記主張は採用することができない。
ウ 以上のとおり、上記(1)ウの補正は、特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しないから、同法第17条の2第5項の規定に違反する。
(3)独立特許要件について
上記(2)アで示したとおり、上記(1)ア及びイの補正は、それぞれ特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、以下では、仮に、上記(1)ウの補正が特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たすものとして、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について検討する。
ア 本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
イ 引用文献の記載事項
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2012-167975号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある(下線は当審において付加した。)。
(引1-ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、欠陥検査方法および欠陥検査装置に関し、詳しくは液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等の表示装置に用いられる各種光学フィルムやディスプレイ用フィルターの欠陥検査方法および欠陥検査装置に関する。」
(引1-イ)「【0018】
従って本発明の目的は、欠陥の種類を正確に判別することができる欠陥検査方法および欠陥検査装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、ロール状製品の欠陥の種類を正確に判別し、合否判定を行う自動欠陥検査方法および自動欠陥検査装置を提供することにある。」
(引1-ウ)「【0030】
図1において、被検査体であるロール状製品1が巻き出し部2から巻き出されて巻きと取り部3(当審注:「巻きと取り部3」は「巻き取り部3」の誤記と認める。)で巻き取られるまでの搬送経路に、ロール状製品1を撮像して画像データを生成するための撮像部である第1撮像部10、第2撮像部20、第3撮像部30および第4撮像部40が配置されている。上記の4つの撮像部は、ロール状製品1に光を照射するための照明部(符号11、21、31、41)と受光部(符号12、22、32、42)がそれぞれ配置されている。
【0031】
第1撮像部10は正反射画像データ、第2撮像部20は屈折透過画像、第3撮像部30は直接透過画像データ、第4撮像部40は散乱透過画像データを得るための撮像装置である。
【0032】
第1~第4の撮像部で撮像された画像データは、画像データ処理部50に送られて画像処理が施されて欠陥種類が判別され、さらに欠陥種類毎に合否判定がなされる。画像データ処理部50で作成された欠陥データ(例えば、欠陥の座標位置、欠陥の種類、欠陥レベル等)は保存されるのと併せて表示部60に送られる。表示部60では欠陥データに基づいてロール状製品1に欠陥位置を表示する。上記の欠陥データの保存およびロール状製品への表示は、どちらか一方のみの実施であってもよい。
【0033】
本発明の欠陥検査方法および欠陥検査装置は、ロール状製品を連続搬送させながら連続的にかつ自動的に行うことが好ましく、さらに、上記のように合否判定機能を有していることが好ましい。
【0034】
以下、本発明の欠陥検査装置を構成する主要部について詳細に説明する。
【0035】
巻き出し部2は、コアに巻き付けられたロール状製品1を一定速度で巻出す装置である。このため、巻き取り部3と合わせて搬送速度を一定に保ち、かつロール状製品1の搬送方向長さにおける検出欠陥位置の座標を確定させるために、巻き出し長さを測定する機構を備える。
【0036】
また、巻き出し部2は、搬送されるフィルム(ロール状製品が巻き出されて搬送されている状態のものを便宜上「フィルム」と言う)1aの幅方向の位置ズレを防ぐために、フィルム1aのエッジ位置を測定し、変化に応じて巻き出し位置を調整するための機構(エッジポジションセンサー)を備える。また、巻き出し部2には、巻き取り部3と合わせて搬送されるフィルム1aにたるみが生じないようにテンションをコントロールする機構を備える。
・・・
【0039】
第1撮像部10は正反射画像データを得るための撮像装置であり、フィルム1a(被検査体)による正反射光を受光部12が受光する。照明部11からの照射角度および受光部12の受光角度はフィルム1a(被検査体)に対して30~70度の範囲が好ましく、40~50度の範囲がより好ましい。
【0040】
第2撮像部20は屈折透過画像データを得るための撮像装置であり、フィルム1a(被検査体)による屈折光を受光部22が受光する。照明部21と受光部22は、フィルム1a(被検査体)に対して垂直方向に正対し、かつ、それぞれの位置からフィルム1a(被検査体)に向け降ろした垂線とフィルム1aの交点がフィルム1aの搬送方向に沿って直線に並ぶよう配置する。交点は1~5mm離れることが好ましく、1~2mm離れることはさらに好ましい。また、屈折光のみを受光するために受光部にスリット(図示せず)を設け屈折光以外を遮光することは、より好ましい形態である。
【0041】
第3撮像部30は直接透過画像データを得るための撮像装置であり、フィルム1a(被検査体)による透過光を受光部32が受光する。照明部31と受光部32はフィルム1a(被検査体)に対して垂直方向に正対して配置する。
【0042】
第4撮像部40は散乱透過画像データを得るための撮像装置であり、フィルム1a(被検査体)による散乱光を受光部42が受光する。照明部41からの照射角度は、フィルム1a(被検査体)に直交する垂直線に対して1~10度の範囲が好ましく、3~7度の範囲がより好ましい。受光部22の受光角度は、フィルム1aに対して垂直方向である。また、散乱光のみを受光するために照明光を指向させることは、より好ましい形態である。
【0043】
第1~第4のそれぞれの撮像部は、被検査体であるフィルム1aの幅方向の全域に対応できるように配置する。・・・
【0046】
第1~第4のそれぞれの撮像部で撮像された画像データは画像データ処理部50に送られる。画像データ処理部50では以下の処理が行われる。
【0047】
(i)それぞれの撮像部から出力された画像データについて、それぞれの撮像部毎に設定された閾値に基づいて欠陥を検出し、欠陥を検出した場合は、「欠陥有り」、その欠陥のサイズパラメータ(面積、長さ、高さ等)およびその欠陥の検出座標の情報を出力する。閾値は、それぞれの画像データを構成する強度パラメータ(反射率、透過光量等)に基づいて設定することができる。なお、この段階で欠陥として検出されたものには、後述する(iv)段階において合格と判定され、製品の中に含まれていても問題のないものも含まれている。
【0048】
(ii)それぞれの画像データで検出した欠陥の検出座標をもとにして、同一の欠陥に対してそれぞれの画像データで欠陥が検出されたかどうかをまとめる。
・・・
【0050】
(iii)上記の欠陥有無の集合パターンに基づいて、予め設定された欠陥種類と集合パターンの関係に従って、欠陥の種類が判別される。
【0051】
(iv)欠陥の種類別に予め設定された合否判定基準に基づいて、欠陥の合否判定を行う。
ここでの合否判定基準には、欠陥の種類毎に、欠陥が検出された画像データのうちのどの画像データを合否判定に使用するのかと、その画像データにおける欠陥のサイズパラメータ(面積、長さ、高さ等)に基づく合否基準を予め設定しておく。
【0052】
(v)検出された欠陥の合否判定結果をアウトプットとして出力する。」
(引1-エ)「【0059】
上述した各種画像データから強度パラメータ(反射率、透過光量等)によって欠陥を検出するとともに、サイズパラメータ(面積、長さ、高さ等)によって欠陥の大きさを測定することができる。
【0060】
本発明は、上記のサイズパラメータに基づいて欠陥の合否判定処理をさせることが好ましい。本発明は、複数の画像データの組み合わせによって欠陥の種類を判別するものであるが、種類が判別された欠陥の合否判定は、欠陥の種類毎に予め設定された1つの画像データのサイズパラメータに基づいて欠陥の合否判定処理をさせることが好ましい。」
(引1-オ)「【0067】
本発明はさらに、欠陥レベル別に単位面積当たりの欠陥個数によって合否判定をすることが好ましい。ここで、欠陥レベルとは欠陥のサイズによって判別されるものである。例えば、特定サイズ以上の欠陥は欠陥レベルAとし、ある範囲のサイズの欠陥は欠陥レベルBとするものである。
【0068】
欠陥レベルを判別する意味は、例えば、欠陥レベルAは1個の存在で無条件に不可とするが、欠陥レベルBは単位面積当たり1個までは合格で2個以上の場合に不可とする、という合否判定のやり方に適用するためである。」
(引1-カ)「【0074】
本発明は、光透過性の機能性フィルム(各種光学フィルム)やディスプレイ用フィルター等の欠陥検査に好適である。上記の機能性フィルムやディスプレイ用フィルターには、複数種類の欠陥が存在することが多く、本発明の欠陥検査方法を用いることによって欠陥種類の判別ができるので欠陥の種類に応じて合否判定を行うことが可能となり、精度の高い欠陥検査を実現することができる。」
(引1-キ)【図1】
「
[図:0001412023000001.jpg]
」
(イ)引用文献1の記載から看取できる事項
a 上記(引1-オ)の段落【0067】の「本発明はさらに、欠陥レベル別に単位面積当たりの欠陥個数によって合否判定をすることが好ましい。ここで、欠陥レベルとは欠陥のサイズによって判別されるものである。」との記載から、「欠陥のサイズによって欠陥レベルを判別すること」、及び、「欠陥レベル別に単位面積当たりの欠陥個数によって合否判定を行うこと」が読み取れる。
b 上記(引1-オ)の段落【0068】の「欠陥レベルを判別する意味は、例えば、欠陥レベルAは1個の存在で無条件に不可とするが、欠陥レベルBは単位面積当たり1個までは合格で2個以上の場合に不可とする、という合否判定のやり方に適用するためである。」との記載から、「欠陥レベル別に合否判定の基準となる単位面積当たりの欠陥数の基準値を設定しておき、欠陥レベルごとに検出された単位面積当たりの欠陥数を基準値と比較し、検出された単位面積当たりの欠陥数が基準値を超えた場合は、不合格と判定すること」が読み取れる。
c また、段落【0067】における「合否判定」は、段落【0051】に記載された「欠陥の合否判定」を指すと解されるから、上記bで認定した「欠陥数の基準値」は、段落【0051】に記載された「合否基準」に該当するといえる。
d 上記aないしcを総合すると、引用文献1の段落【0051】、【0067】及び【0068】の記載から、「欠陥の種類毎に、欠陥のサイズによって欠陥レベルを判別し」、「欠陥の種類毎に、欠陥が検出された画像データのうちのどの画像データを合否判定に使用するのかと、その画像データにおける欠陥レベル別の単位面積当たりの欠陥数の基準値とを予め設定した合否判定基準に基づいて、欠陥の合否判定を行い」、「その際、欠陥レベルごとに検出された単位面積当たりの欠陥数を基準値と比較し、検出された単位面積当たりの欠陥数が基準値を超えた場合は、不合格と判定する」ことが読み取れる。
(ウ)引用文献1に記載された発明
上記(イ)を踏まえると、上記(引1-ア)ないし(引1-キ)の記載から、引用文献1には、
「光学フィルタであるロール状製品1を連続搬送させながら連続的にかつ自動的に欠陥検査を行う欠陥検査装置であって(【0033】【0074】)、
コアに巻き付けられたロール状製品1を一定速度で巻出す巻き出し部2と巻き取り部3とを合わせて搬送速度を一定に保ち(【0035】)、
被検査体であるロール状製品1が巻き出し部2から巻き出されて巻き取り部3で巻き取られるまでの搬送経路に、ロール状製品1を撮像して画像データを生成するための撮像部である第1撮像部10、第2撮像部20、第3撮像部30および第4撮像部40が配置されており(【0030】)、
第1撮像部10は正反射画像データを得るための撮像装置であり(【0039】)、
第2撮像部20は屈折透過画像データを得るための撮像装置であり(【0040】)、
第3撮像部30は直接透過画像データを得るための撮像装置であり(【0041】)、
第4撮像部40は散乱透過画像データを得るための撮像装置であり(【0042】)、
第1~第4のそれぞれの撮像部で撮像された画像データは画像データ処理部50に送られ(【0046】)、
画像データ処理部50は、
(i)それぞれの撮像部から出力された画像データについて、それぞれの撮像部毎に、それぞれの画像データを構成する強度パラメータ(反射率、透過光量等)に基づいて設定された閾値に基づいて欠陥を検出し、欠陥を検出した場合は、「欠陥有り」、その欠陥のサイズパラメータ(面積、長さ、高さ等)およびその欠陥の検出座標の情報を出力し(【0047】)、
(ii)それぞれの画像データで検出した欠陥の検出座標をもとにして、同一の欠陥に対してそれぞれの画像データで欠陥が検出されたかどうかをまとめ(【0048】)、
(iii)上記の欠陥有無の集合パターンに基づいて、予め設定された欠陥種類と集合パターンの関係に従って、欠陥の種類を判別し(【0050】)、
(iv)欠陥の種類毎に、欠陥のサイズによって欠陥レベルを判別し、欠陥の種類毎に欠陥が検出された画像データのうちのどの画像データを合否判定に使用するのかと、その画像データにおける欠陥レベル別の単位面積当たりの欠陥数の基準値とを予め設定した合否判定基準に基づいて、欠陥の合否判定を行い、その際、欠陥レベルごとに検出された単位面積当たりの欠陥数を基準値と比較し、検出された単位面積当たりの欠陥数が基準値を超えた場合は、不合格と判定し(【0051】【0067】【0068】、(イ))、
(v)検出された欠陥の合否判定結果をアウトプットとして出力する(【0052】)、
欠陥検査装置。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる主な記載箇所を、括弧内に段落番号等で示した。
ウ 本件補正発明と引用発明との対比
(ア)a 引用発明の「欠陥検査装置」は、本件補正発明の「欠陥検査装置」に相当する。
b 引用発明の「ロール状製品1」は、「コアに巻き付けられた」「光学フィルタ」であるから、本件補正発明の「シート状物」に相当する。
c 引用発明は、「被検査体であるロール状製品1が巻き出し部2から巻き出されて巻き取り部3で巻き取られるまでの搬送経路に、ロール状製品1を撮像して画像データを生成するための撮像部」が「配置されて」いるものであるところ、(引1-キ)の【図1】を参照するに、「巻き出し部2」と「巻き取り部3」の位置は固定されている。
d 上記aないしcを踏まえると、引用発明の「コアに巻き付けられたロール状製品1を一定速度で巻出す巻き出し部2と巻き取り部3とを合わせて搬送速度を一定に保ち」、「光学フィルタであるロール状製品1を連続搬送させながら連続的にかつ自動的に欠陥検査を行う欠陥検査装置」は、本件補正発明の「一定方向に向かって搬送されているシート状物の欠陥検査装置」に相当する。
(イ) 引用発明の「画像データ処理部50」は、「ロール状製品1を撮像して画像データを生成するための撮像部である第1撮像部10、第2撮像部20、第3撮像部30および第4撮像部40」の「それぞれの撮像部から出力された画像データについて、それぞれの撮像部毎に、それぞれの画像データを構成する強度パラメータ(反射率、透過光量等)に基づいて設定された閾値に基づいて欠陥を検出」するものであるから、本件補正発明の「シート状物の撮影画像を解析して前記シート状物の欠陥を検出する欠陥検出部」に相当する構成を備えているといえる。
(ウ)a 引用発明の「ロール状製品1を撮像して画像データを生成するための撮像部である第1撮像部10、第2撮像部20、第3撮像部30および第4撮像部40」のうち、「合否判定に使用する」「画像データ」を撮像した「撮像部」は、本件補正発明の「ある撮影装置」に相当する。
b 引用発明は「ロール状製品1を連続搬送させながら連続的にかつ自動的に欠陥検査を行う」ものであるから、引用発明の「ロール状製品1を撮像して画像データを生成するための撮像部である第1撮像部10、第2撮像部20、第3撮像部30および第4撮像部40」のそれぞれは、連続搬送されるロール状製品1を連続的に複数回撮像するといえる。
c 引用発明の「画像データ処理部50」は、「欠陥の種類毎に、欠陥が検出された画像データのうちのどの画像データを合否判定に使用するのかと、その画像データにおける欠陥レベル別の単位面積当たりの欠陥数の基準値とを予め設定した合否判定基準に基づいて、欠陥の合否判定を行い、その際、欠陥レベルごとに検出された単位面積当たりの欠陥数を基準値と比較し、検出された単位面積当たりの欠陥数が基準値を超えた場合は、不合格と判定」するものであるから、「第1~第4のそれぞれの撮像部で撮像された画像データごと」、すなわち、撮像部ごとに、また、欠陥レベル別に、「欠陥数を計数するための構成」を備えているといえる。
そして、「第1~第4のそれぞれの撮像部で撮像された画像データ」は、上記bで示したように、それぞれの撮像部が連続的に複数回撮像して生成したものである。
d 上記aないしcを踏まえると、引用発明の「画像データ処理部50」は、本件補正発明の「ある撮影装置によって連続的に撮影された複数の前記撮影画像中における前記シート状物の前記欠陥の個数を計測するカウント部」に相当する構成を備えているといえる。
(エ)a 引用発明の「単位面積当たりの欠陥数」と、本件補正発明の「前記欠陥の個数」とは、「判定に用いる欠陥個数」の点で共通する。
b 引用発明の「基準値」は、本件補正発明の「所定の閾値」に相当する。
c 上記a及びbを踏まえると、引用発明の「欠陥レベルごとに検出された単位面積当たりの欠陥数を基準値と比較し、検出された欠陥数が基準値を超えた場合は、不合格と判定」する「画像データ処理部50」は、本件補正発明の「前記欠陥の個数が所定の閾値を超えたか否かを判定する判定部」と、「判定に用いる欠陥個数が所定の閾値を超えたか否かを判定する判定部」の点で共通する構成を備えているといえる。
エ 一致点及び相違点
そうすると、本件補正発明と引用発明とは、
「一定方向に向かって搬送されているシート状物の欠陥検査装置であって,
シート状物の撮影画像を解析して前記シート状物の欠陥を検出する欠陥検出部と,
ある撮影装置によって連続的に撮影された複数の前記撮影画像中における前記シート状物の前記欠陥の個数を計測するカウント部と,
判定に用いる欠陥個数が所定の閾値を超えたか否かを判定する判定部と,を備える
欠陥検査装置。」
の発明である点で一致し、次の点で相違する。
(相違点1)
判定に用いる欠陥個数が、本件補正発明においては、「前記欠陥の個数」と特定されていることから、「ある撮影装置によって連続的に撮影された複数の前記撮影画像中における前記シート状物の前記欠陥の個数」、すなわち、「複数の撮影画像中の欠陥の個数」であるのに対し、引用発明においては、「単位面積当たりの欠陥数」である点。
オ 判断
(ア)相違点1について
a 本件補正発明の「前記欠陥の個数が所定の閾値を超えたか否かを判定する」ことは、「複数の撮影画像中の欠陥の個数」が「所定の閾値を超えたか否かを判定する」ことであるといえるところ、言い換えれば、「複数の撮影画像の総面積当たりの欠陥の個数が所定の閾値を超えたか否かを判定する」ことである。
ここで、「複数の撮影画像の総面積当たりの欠陥の個数」は、「単位面積」を「複数の撮影画像の総面積」とする「単位面積当たりの欠陥の個数」ということができるから、詰まるところ、上記相違点1は、「単位面積」が、本件補正発明においては「複数の撮影画像の総面積」であるのに対し、引用発明においては、単位面積の具体的面積は特定されていない点、であるといえる。
b 引用発明が「検出された単位面積当たりの欠陥数を基準値と比較し、検出された単位面積当たりの欠陥数が基準値を超えた場合は、不合格と判定」するように、欠陥数を基準値と比較して合否判定をする技術において、合否判定の基準を一般化するために、基準値として単位面積当たりの許容される欠陥数を用いることは、技術常識である。
そして、当該基準値は、面積当たりの許容される欠陥数に応じて定めるべきものであり、引用発明のように「ロール状製品1を連続搬送させながら」「欠陥検査を行う」場合、例えば、複数回の撮像にわたる撮像範囲の面積当たりに1つの欠陥のみが許容される場合、当該欠陥の合否判定を適切に行えるように、単位面積及び基準値を定めることは、本件補正発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)であれば当然考慮すべきことである。
したがって、1回の撮像範囲の面積当たりの許容される欠陥数が1未満である場合などに、過剰な異常判定を避けるべく、複数回の撮像にわたる撮像範囲の欠陥数を基準値と比較して合否判定をすること、すなわち、「複数の撮影画像中の欠陥の個数」を基準値と比較して合否判定をすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
(イ)本件補正発明の奏する作用効果について
本件補正発明によってもたらされる効果は、引用文献1の記載事項から当業者が予測し得る程度を超えるものとはいえない。
(ウ)請求人の主張について
a 請求人は、審判請求書において、引用発明は、カメラ1台の1回分の撮影範囲を検査範囲としているため、カメラ1台分の撮影範囲を超えて点在している欠陥群を異常として検出することができないのに対し、本件補正発明は、そのような欠陥群を異常として検出することができるものであり、引用文献1は本件補正発明の技術思想を開示も示唆もするものではないから、本件補正発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない旨主張する。
b 上記aの請求人の主張について検討するに、引用文献1には、カメラ1台の1回分の撮影範囲を検査範囲とする旨の記載はなく、上記(ア)bで説示したように、複数回の撮像にわたる撮像範囲の欠陥数を基準値と比較して合否判定をすることは、当業者であれば容易に想到し得たことであるから、請求人の当該主張は採用することができない。
カ 小括
以上のとおりであるから、本件補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
また、仮に、本件補正が特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たすとして、本件補正は同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和5年6月6日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和4年12月23日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1、5及び6に係る発明は、その出願前に頒布された刊行物である下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、また、この出願の請求項1ないし6に係る発明は、その出願前に頒布された刊行物である下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開2012-167975号公報
3 引用文献の記載事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項、及び、当該記載事項から認定される引用発明は、上記第2[理由]2(3)イに記載したとおりである。
4 対比・判断
(1)本願発明は、上記第2[理由]2(3)で検討した本件補正発明から、「シート状物」に係る「一定方向に向かって搬送されている」との限定事項、及び、「連続的に撮影された複数の前記撮影画像」に係る「ある撮影装置によって」撮影されたものとの限定事項を削除するとともに、カウント部が計数するシート状物の欠陥の個数について、「単位面積当たりの」ものとの限定を付加したものである。
(2)上記(1)を踏まえて、本願発明と引用発明とを対比する。
ア 本願発明の「シート状物の欠陥検査装置」及び「欠陥検出部」については、上記第2[理由]2(3)ウ(ア)及び(イ)の対比と同じことがいえるから、引用発明は、本願発明のこれらの構成に相当する構成を備えている。
イ 本願発明の「カウント部」は、本件補正発明の「カウント部」に対して、計数するシート状物の欠陥の個数について、「単位面積当たりの」ものとの限定を付加しているが、引用発明は「検出された単位面積当たりの欠陥数が基準値を超えた場合は、不合格と判定」するものであるから、「単位面積当たりの欠陥数を計数するための構成」を備えているといえる。
そうすると、上記第2[理由]2(3)ウ(ウ)の対比を踏まえれば、引用発明は、本願発明の「連続的に撮影された複数の前記撮影画像中における前記シート状物の単位面積当たりの前記欠陥の個数を計測するカウント部」に相当する構成を備えている。
ウ 本願発明の「判定部」が判定に用いる「前記欠陥の個数」は、「シート状物の単位面積当たりの前記欠陥の個数」である。
そうすると、「欠陥レベルごとに検出された単位面積当たりの欠陥数を基準値と比較し、検出された単位面積当たりの欠陥数が基準値を超えた場合は、不合格と判定」する引用発明は、本願発明の「前記欠陥の個数が所定の閾値を超えたか否かを判定する判定部」に相当する構成を備えている。
(3)以上のとおりであるから、本願発明と引用発明との間に相違する点はなく、本願発明は引用発明である。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、同項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-009218