特許拒絶査定不服審判
2022-015078
広角光干渉断層撮影法のためのシステム及び方法
- 審判番号
- 2022-015078
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-529498
- 請求日
- 2022年09月22日
- 審決日
- 2023年07月31日
- 公報発行日
- 2024年01月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アルコン インコーポレイティド
- 【請求人代理人】青木 篤
- 【請求人代理人】三橋 真二
- 【請求人代理人】鶴田 準一
- 【請求人代理人】南山 知広
- 【請求人代理人】渡辺 陽一
- 【請求人代理人】胡田 尚則
- 審判長/審判官
- 審判長 石井 哲
- 審判官 樋口 宗彦
- 審判官 松本 隆彦
- 分類
- P18 .113-Z (G01N) / P18 .121-Z (G01N) / P18 .575-Z (G01N) / P18 .572-Z (G01N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-529498「広角光干渉断層撮影法のためのシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年6月28日国際公開、WO2018/116128、令和2年1月23日国内公表、特表2020-502501〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1.手続の経緯
本願は、平成29年12月18日(パリ条約による優先権主張 2016年12月20日(以下「優先日」という。)、米国)を国際出願日とする国際出願であり、令和3年9月27日付けで拒絶理由が通知され、令和4年1月4日に意見書及び手続補正書(この補正書による補正を以下「審査時補正」という。)が提出され、同年5月17日付けで拒絶査定がなされ、同年9月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書(以下「本件補正書」といい、これによる補正を「本件補正」という。)の提出がなされ、令和5年1月17日には請求人より上申書が提出されたものである。
第2.本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 本件補正について
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1~15に対する実質的補正を含む補正であり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、審査時補正により補正された下記(1)のもの(以下「査定時請求項1」という。)から、下記(2)のもの(以下「審判請求時請求項1」という。)へと補正された。ここで、各構成単位冒頭の「pA」などは当審で付した分説番号であり、以下該各構成単位について該分説番号を用いて「構成pA」などという。以下、引用発明等についても同様。
(1)審査時補正により補正された請求項1(査定時請求項1)
「pA 光干渉断層撮影(OCT)システムであって、
pB OCTビームを生成するように構成された光源、
pC ビームスプリッタであって、
pC1 前記OCTビームを参照ビームとイメージングビームとに分割することと、
pC2 前記参照ビームを参照リフレクタに向かって案内することと、
pC3 前記イメージングビームをスキャナに向かって案内することと
を行うように構成されたビームスプリッタ、
pD 前記参照リフレクタを移動させて前記参照ビームの長さを調整するように構成されたリニアアクチュエータ、
pE 前記イメージングビームを複数の走査角度で標的表面に走査するように構成された前記スキャナであって、前記スキャナ及び標的表面は、前記走査角度の各々で変化するサンプル距離だけ分離される、前記スキャナ、
pF プロセッサと、メモリに記憶された命令とを含むOCTコントローラであって、前記命令は、
pF1 前記スキャナに、第一の走査速度において前記走査角度の各々で前記イメージングビームを走査させることと、
pF2 前記アクチュエータに、前記走査中に前記走査速度と同調的に前記参照ビームの前記長さを調整させて、前記走査角度の各々でのサンプル距離の前記変化を相殺することと
を行うための信号を前記OCTコントローラに生成させるように前記プロセッサによって実行可能である、OCTコントローラを含み、
pG 走査パターン内のすべての走査角度について、標的深さでの参照ビームの経路長さとイメージングビームの経路長さの間の光路差|OPD|≦公差値TdXとなるようにする信号を生成する、
pI 光干渉断層撮影(OCT)システム。」
(2)本件補正により補正された請求項1(審判請求時請求項1)
下線は補正箇所を示す。
「A 光干渉断層撮影(OCT)システムであって、
B OCTビームを生成するように構成された光源、
C ビームスプリッタであって、
C1 前記OCTビームを参照ビームとイメージングビームとに分割することと、
C2 前記参照ビームを参照リフレクタに向かって案内することと、
C3 前記イメージングビームをスキャナに向かって案内することと を行うように構成されたビームスプリッタ、
D 前記参照リフレクタを移動させて前記参照ビームの長さを調整するように構成されたリニアアクチュエータ、
E 前記イメージングビームを複数の走査角度で標的表面に走査するように構成された前記スキャナであって、前記スキャナ及び標的表面は、前記走査角度の各々で変化するサンプル距離だけ分離される、前記スキャナ、
F プロセッサと、メモリに記憶された命令とを含むOCTコントローラであって、前記命令は、
F1 前記スキャナに、第一の走査速度において前記走査角度の各々で前記イメージングビームを走査させることと、
F2 前記アクチュエータに、前記走査中に前記走査速度と同調的に前記参照ビームの前記長さを調整させて、前記走査角度の各々でのサンプル距離の前記変化を相殺することと
を行うための信号を前記OCTコントローラに生成させるように前記プロセッサによって実行可能である、OCTコントローラを含み、
G 走査パターン内のすべての走査角度について、標的深さでの参照ビームの経路長さとイメージングビームの経路長さの間の光路差|OPD|≦公差値TdXとなるようにする信号を生成し、
H 前記走査内の前記標的深さの変化を考慮するか又はそれをマッチさせるように、前記参照リフレクタの位置を変更しかつ前記参照ビームの経路長さを調整することができる、
I 光干渉断層撮影(OCT)システム。」
2 補正の適否
(1)本件補正
本件補正は,特許請求の範囲について、以下に挙げる補正事項を含むものである。
ア 補正事項1
請求項1において、構成Hに該当する「前記走査内の前記標的深さの変化を考慮するか又はそれをマッチさせるように、前記参照リフレクタの位置を変更しかつ前記参照ビームの経路長さを調整することができる」との特定事項を付加し、それに伴い構成pGの末尾を「・・・生成する、」から「・・・生成し、」へと変更する補正。
(2)補正事項の検討
補正事項1は、査定時請求項1の構成pDにおける発明特定事項である、「リニアアクチュエータ」の「前記参照リフレクタを移動させて前記参照ビームの長さを調整する」との機能について、それが「前記走査内の前記標的深さの変化を考慮するか又はそれをマッチさせるように」するものであることを限定するものであるから、査定時請求項1の発明特定事項を限定する補正であると認められる。
また、補正事項1に係る特定事項は、願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書及び図面(総称して以下「当初明細書等」という。また、個々に「当初明細書」、「当初図面」などという。)の【0027】等に記載された事項であるから、当該補正は、当初明細書等の記載の範囲内においてしたものである。
また、当該補正前後の発明の産業上の利用可能性及び解決しようとする課題は同一である。
以上のとおりであるから、本件補正は特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第17条の2第3項の規定に違反しない。
(3)本件補正による他の補正について
また、本件補正により請求項10・15に対しても上記補正事項1と同様の補正がなされているが、上記(2)と同様の理由により、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものであって、特許法第17条の2第3項の規定に違反しない。
(4)独立特許要件について
上記(2)のとおり審判請求時請求項1についての本件補正は特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものであるから、該審判請求時請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下の3においてさらに検討する。
3 本件補正発明の独立特許要件についての検討
(1)本件補正発明について
審判請求時請求項1は上記1(2)に記載したとおりのものであり、以下、該審判請求時請求項1に係る発明を「本件補正発明」という。
(2)引用文献1に記載された事項
ア 引用文献1の記載
原査定の拒絶理由において提示された、本願の優先日前に公知となった特開2015-102537号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審にて付加した。以下同様。)。
「【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限られない。
【0012】
(実施形態1)
(光干渉断層計)
本実施形態に係る光干渉断層計(OCT)は光源部101と、光を被検体側の参照光路とに分岐するファイバカップラ(干渉部)102と、光検出部としての差動検出器120と、情報取得部130と、を少なくとも有する構成である。また、本実施形態に係るOCTは、図1に示すように偏光を制御するための偏波コントローラ103、105を有していていもよい。
【0013】
本実施形態に係るOCTは光源部101から出射された光Lがファイバカップラ102で照射光LAと参照光LBに分波される。照射光LAはコリメータレンズ141で平行光となり、走査ラー108で反射され、集光レンズ142を経て、物体(被検体)107に照射される。被検体107に照射されて反射した光LA’はカップラ102を経由して、カップラ104に入射する。一方、参照光LBは、コリメータレンズ143、ミラー145、146、集光レンズ144を経て光LB’としてカップラ104に入射する。
・・・
【0017】
広画角な眼底の断層像を取得する場合、例えば照射光が赤道部付近で反射した光と眼軸上付近で反射した光とでは、光路長が異なる。そこで、照射光の光路もしくは参照光の光路の光路長を変化できる制御部(光路長変化部)113を用いて、眼底へ入射する光の位置の走査により生じる光路長変化量と同量の光路長だけ補償するように調整する。それによって、光路長差を生じさせないOCTとなる。
・・・
【0019】
例えば、眼球が直径24mmの球体と仮定すると、眼球の赤道を越える範囲として200度(眼球の中心角)の走査範囲では、瞳孔中心から後極までの距離、及び200度の端部までの距離では、8.5mm程度、距離差が生じる。
【0020】
なお、眼球の中心角の200度は、走査角度で考えると100度である。
・・・
【0025】
ここで、患者がじっと固視できる時間には限界があり、1回の撮像でせいぜい2秒が限界と言われている。そのため、SS-OCTで用いる光源は、この2秒の間に広範囲での断層像を取得するために非常に短時間での広帯域な波長変化をさせることができるものである必要がある。通常、患者がじっと固視できる時間と言われる2秒の間に広範囲で撮像を行うために、高速な撮像スピード(A-scanレート、B-scanレート、C-scanレート)が必要となる。SS-OCTは時間的に変化する光周波数に応じた強度信号を取得するために、高速に信号をサンプリングできるAD変換器が必要となる。しかしながら、眼底断層像で求められる奥行き分解能と、広範囲で眼底を撮像するために必要な長い撮像レンジを両立することは、AD変換器の速度を固定した場合トレードオフの関係となる。
・・・
【0029】
また、奥行き撮像レンジとして、眼球の広範囲を撮像するために11.5mmとする。1000×1000の画素で2次元走査を行うことを考え、2秒で1フレームの画像を取得することを考えると、1点あたり2μsecの時間で断層像を取得する必要がある。
・・・
【0035】
光路長差を調整した後、眼球に入射する光を2次元的に走査、すなわちB-scanする。B-scanは図2(a)のように、スキャン角度を変えることで行う。図2(b)に、スキャン角度を変えていったときの照射光の光路長変化量、すなわち眼球の直径との差分を光路長変化量としたときの、スキャン角度との関係を示している。
・・・
【0039】
なお、B-scanのスキャンスピード、及び、B-scan位置と光路長変化量の関係が予めわかっている場合、B-scanに同期して光路長変化部106を動かすことで、初期光路長差を維持したままスキャン領域全面に渡って断層像を取得することができる。
【0040】
例えばB-scan角度の時間依存性があり、眼底を走査する際に生じる光路長変化量とB-scan角度との対応関係がわかっていれば、光路長変化量の時間依存性を例えば演算部110にて演算できる。この演算した値を用いて、走査ミラー駆動部112の行うB-scanに同期して光路長変化部113を駆動すれば、初期光路長差を維持することができる。
・・・
【0044】
(制御部)
本実施形態における制御部は、物体(被検体)に関する情報に基づいて、参照光の光路長または照射項の光路長の少なくともいずれか一方を制御するものであれば特に限定されない。また、本実施形態における制御部は、参照光の光路長と前記照射光の光路長とが等しくなるように制御することが好ましいが、干渉スペクトルの波と波の間隔が大きくずれない程度に、光路長が若干ずれていてもよい。また、本実施形態における制御部は参照部106の光路長を変化させることが好ましく、例えば、参照ミラー145、146の少なくともいずれか一方の位置を制御することができる。なお、参照部106が図1とは異なり、参照ミラーに反射させ、戻った光と照射光とを干渉させる構成であっても同様に、参照ミラーの位置を制御して参照光の光路長を変えることができる。参照光の光路中に電気光学結晶が設けられている場合、制御部は電気光学結晶に印加する電圧を制御し、屈折率を変化させ、参照光の光路長を変化させることができる。
【0045】
また、参照光の光路中に配置されるディレイラインや、照射光の光路中にディレイラインを設けることによって信号光の光路長を変化させても良い。また、タイムドメインOCTで用いられていた高速に参照光光路長を変化させる手段であるRSOD(Rapid-Scaning Optical Delay)を用いてもよい(非特許文献1)。さらに別方法として、テレセントリックfθレンズを用いたスキャン光学系を用いても良い。fθレンズとガルバノミラーの様なビームの入射角度を変化させる機構を用いることで、ミラーからfθレンズに入射するまでの光路長が入射角度によって変化するため光路長を変化するための手段として用いることができる。
【0046】
これらの方法に限らず、光路長を変化させる機構であれば他のどのような方法を用いても良い。
・・・
【0048】
例えば、眼球の大きさに個人差が多少あったとしても大きな差ではないとし、眼底形状データをテーブルとして記憶部109に記憶させておき、そのデータに基づいて光路長変化量を制御することができる。具体的には、記憶させておいた眼底形状データを、演算部110で、光路長を変化させる量を決定しても良い。
・・・
【0060】
上記記憶部に記憶された眼底形状データのテーブル、もしくは形状測定部で取得した眼底形状データに基づいて、走査ミラー駆動部112と制御部113を同期部111を用いて同期させる。それによって、走査ミラーと制御部が同期することで、参照光の光路長と参照光の光路長との光路長差を補正することができる。
・・・
【0063】
このようなスキャン方式で2次元走査を行うと、走査中に行う光路長変化部による光路長変化を、時間的に緩やかにすることができ光路長変化部への負担が軽減する。例えば、参照ミラー145、146の位置を制御することで参照光の光路長を変化させる場合は、参照ミラーを動かすスピードを緩やかにすることができる。具体的には、スキャン角度が100度の画角の断層像を取得する場合、光路長変化量が11.5mmとなるが2secで取得する場合、5.75mm/secのスピードで参照ミラーを動かせばよい。ラスタースキャンの場合、C-scan数が1000ラインある場合、2msecでB-scanの1ライン取得する必要があり、11.5mmの光路長変化量を1msecで動かす必要が生じ、11.5m/secのスピードが必要となる。
・・・
【0071】
広範囲で眼底を撮像する際に生じる大きな光路長差は、眼底に入射させる光のスポット径も大きく変化させる。眼底に入射させる光は、走査ミラー108などの光学系により眼底に光をスポット的に照明する。このスポット径がOCTの横方向分解能、すなわち奥行き分解能と垂直な平面方向の分解能を決める。大きな光路長差が生じることは、瞳孔中心から眼底までの距離が変化していることと同じで、眼底に光を当てる光学系の焦点から眼底の位置が大きくずれることになり、集光スポットがぼやけてしまい、横方向分解能を劣化させてしまう。そこで、照射位置の変化に伴う光路長変化に応じて、光学系も駆動し焦点を眼底に合わせ続けることが望ましい。例えば図1において不図示の焦点調整部によって集光ミラー142の焦点位置を調整し、これにより、広範囲の眼底撮像においても横方向分解能の劣化を抑制することができる。
・・・
【0073】
本実施形態における光源部101として例えば、面発光レーザー、回折格子やプリズム等を用いた外部共振器型の波長掃引光源、共振器長可変のファブリペローチューナブルフィルタを用いる各種外部共振器型光源をもちいることができる。あるいは、サンプルドグレーティングを用いて波長を変化させるSSG-DBRや波長可変のMEMS-VCSELなどを用いることもできる。また、ファイバレーザーを用いることもできる。ファイバレーザーとしては、分散チューニング方式でもよく、フーリエドメインモードロック方式であってもよい。
【0074】
回折格子やプリズム等を用いた外部共振器型の波長掃引光源としては、共振器に回折格子を設けて光を分光させ、ポリゴンミラーや、回転する円盤上にストライプ状の反射ミラーを設けたものを用いて出射させる波長を連続的に変え波長掃引光源などが挙げられる。
・・・
【0082】
干渉部としてのファイバカップラ504は、光源部501の出射する波長帯域でシングルモードのもので構成し、3dBカップラで構成されている。ファイバカップラ502で分岐された一方の光は検体測定部へと接続されている。検体測定部は、検査光光路用ファイバ520、照射集光光学系、走査ミラー508により構成され、検査光光路用ファイバ520を通してファイバカップラ502に接続されている。走査ミラー508は、走査ミラー駆動部512によって駆動される。
【0083】
ファイバカップラ502で分岐されたもう一方の光は、参照光光路へと接続されている。参照光光路は、参照光光路用光ファイバ523と参照光路長調整部と両者をつなぐ光学系から形成されており、参照光光路用光ファイバ523を通してファイバカップラ502に接続されている。
・・・
【0085】
・・・ここで、演算部515は、パーソナルコンピュータ等で構成することができ、表示部516は、パーソナルコンピュータの表示画面等で構成できる。
【0086】
本実施例において参照光路調整部506は、走査ミラー駆動部512と同期をとるための同期部511と、標準的な人間の眼球形状をデータテーブルとして有している記憶部を有する。さらに、眼底形状とそれに応じて必要な光路長を演算する演算510と、参照光の光路長を変化させる制御部としての光路長変化部513とを有する。
・・・
【0089】
演算部510では、同期部511から得られた同期のタイミングに関する情報により、走査ミラー508で照射している眼底の位置を読み取る。同時に、記憶部509に記憶された眼底形状データから、その眼底位置での初期光路長差からの光路長変化量を計算し、必要な光路長調整量に関する情報を制御部としての光路長変化部513に送る。送られた情報に基づいて、参照光の光路長を変化させる。本実施例では、光路長変化機構として、非特許文献1に記載のRSODを用いている。光路長変化機構であるRSODは、ピッチpの回折格子530、焦点距離fのレンズ531、高速なガルバノミラー532からなっており、参照光路用光ファイバから出射した光は、レンズを通して回折格子に角度θで入射される。この光は、レンズを通してガルバノミラーで反射され参照光路用光ファイバに戻る。眼底をスキャンする間に生じる光路長変化量に応じて、ガルバノミラーによりミラーの傾きSを変化させることによって、光路長を変化させることができる。
・・・
【0093】
眼底形状データテーブルでは、例えば、直径25mmの球状の眼底形状として実際に測定を行う被検体の眼球直径が23mmであったとする。眼底形状データテーブルに合わせて光路長変化機構をどうさせた場合、実際の被検体を測定する際に生じる最大光路長変化は、眼球の中心角200度の範囲を撮像する場合約2mmとなる。波長掃引光源の波長変化の繰り返し周波数が300kHzの速度であり90nmの波長掃引幅を有している。更に、眼底組織を観察するために必要な撮像レンジを2mmとする。
【0094】
この様な前提条件を設けると、SS-OCTシステムでは4mm以上の撮像レンジを有していれば良く、その光周波数分解能はおおよそ37.5GHzとなり、1020nm~1110nmの波長範囲である光周波数差はおおよそ23.4THzである。そのため、必要最低限のサンプリング数は、625点となる。そのためAD変換器に求められる必要最低限のサンプリング速度は、187.5MHzとなる。512×512のA-scan数で3次元断層像を撮像する場合、0.9sec前後で断層像の取得が可能となる。
【0095】
それに対して、本発明を用いない場合は最大光路長変化量は約22.2mmとなり、同様な断層像を取得するためには、AD変換器のサンプリング速度は約1GHzとなってしまう。
・・・
[図:0001405413000001.jpg]
」
イ 引用文献1からの看取・認定事項
(ア)図1からは、【0012】・【0013】の記載事項を合わせ読めば、「光源部101からの光Lはファイバカップラ102に入射して照射光LAと参照光LBとに分波され、照射光LAはファイバカップラ102から光ファイバ、採否任意の偏波コントローラ103、光ファイバを順に経てコリメータレンズ141を介して走査ミラー108に照射され、該走査ミラー108で反射されて集光レンズ142を経て眼球である被検体107に照射され、参照光LBはファイバーカップラ102から光ファイバ、採否任意の偏波コントローラ106、光ファイバを順に経て参照部106に入射する」こと(以下「図1看取事項」という。)を読み取ることができる。
(イ)また、上記図1看取事項に対し、【0044】には、
「参照部106が図1とは異なり、参照ミラーに反射させ、戻った光と照射光とを干渉させる構成であっても同様に、参照ミラーの位置を制御して参照光の光路長を変えることができる。」
との記載がある。
これは、「参照部106が図1とは異なり」なる書き出しからみて、図1看取事項が対象とする図1に記載された光学系のうち、「参照部106」の構成を変更した態様について説明したものと理解される。
よって、該記載及び上記図1看取事項から、
「光源部101からの光Lはファイバカップラ102に入射して照射光LAと参照光LBとに分波され、照射光LAはファイバカップラ102から光ファイバ、採否任意の偏波コントローラ103、光ファイバを順に経てコリメータレンズ141を通過し、走査ミラー108で反射されて集光レンズ142を経て眼球である被検体107に照射され、参照光LBはファイバーカップラ102から光ファイバ、採否任意の偏波コントローラ106、光ファイバを順に経て参照部106に入射し、該入射した参照光LBは参照部内で参照ミラーに反射されて戻され、該戻された参照光と照射光とを干渉させる」こと(以下「段落44認定事項」という。)が記載されていると認められる。
ウ 引用文献1に記載された発明
上記ア・イから、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。ここで、各構成単位末尾括弧内には、主たる認定根拠となる引用文献1の記載箇所や認定事項を示す。
「a 光干渉断層計(OCT)であって、(【0012】)
b OCT装置を用いて眼底の断層像を得るために、眼底をスポット的に照明する、共振器に回折格子を設けて光を分光させ、ポリゴンミラーや、回転する円盤上にストライプ状の反射ミラーを設けた外部共振器型の波長掃引光源、面発光レーザー、ファイバレーザーなどからなる光源部と、(【0012】・【0034】・【0071】・【0073】・【0074】)
c 第1のファイバカップラであって、(【0013】)
c1 光源部から光照射用の光ファイバを介して接続され、光源部から出射された光Lを参照光LBと照射光LAとに分波することと、(【0013】・【0082】・【0083】、【図1】、図1看取事項)
c2 参照光LBは、
第1のファイバカップラから第1の光ファイバを介して2枚の参照ミラーを備える参照部に入射させ、該参照部から、前記第1の光ファイバとは異なる第2の光ファイバを介して参照光LB’として、前記第1のファイバーカップラとは異なる第2のファイバーカップラに入射して、照射光LAが眼球の眼底で反射し第1のファイバーカップラを経た照射光LA’と干渉するか、または、(【0013】、【図1】、図1看取事項)
第1のファイバーカップラから第1の光ファイバを介して参照部に入射させ、該参照部の参照ミラーに反射させて戻され、該戻された参照光と照射光とを干渉させるものであり、(【0044】、【図1】、図1看取事項、段落44認定事項)
c3 照射光LAは光ファイバを経てコリメートレンズを介して平行光となって走査ミラーに照射され、さらに該走査ミラーで反射され、集光レンズを経て被検体である眼球に照射される、第1のファイバカップラと、を備え、(【0013】・【0035】、図1看取事項)
d 前記参照部の参照ミラーに参照光LBを反射させ、戻された光を照射光と干渉させる場合の参照ミラーは、該参照ミラーの位置を制御して参照光LBの光路長を変えることができるものであり、(【0044】)
e 前記走査ミラーは、眼球に入る光を2次元的に走査、すなわちB-scanするものであって、
瞳孔を通して光を眼球に入射し、瞳孔中心をスキャン中心として眼底の後極から眼球の赤道を越える範囲までスキャンすると、瞳孔中心から眼底部までの距離(光路長)が大きく変化するものであり、(【0035】)
f また、参照部の参照ミラーの位置を制御する制御部(光路長変化部)と、(【0017】・【0044】)
f1 走査ミラーを駆動して例えば走査角度100°について2秒で1点あたり2μ秒、1000×1000画素で前記B-scanを行わせる走査ミラー駆動部と、(【0020】・【0025】・【0029】・【0040】・【0063】)
f2 参照部の参照ミラーの位置を制御する制御部(光路長変化部)と、(【0017】・【0044】)
f3 走査ミラー駆動部と制御部(光路長変化部)とを同期させる同期部と、(【0060】)
f4 標準的な人間の眼底形状のデータを眼底形状データテーブルとして記憶する記憶部と、(【0048】・【0086】・【0093】)
f5 前記B-scanのスキャンスピードが予め分かっている場合、該B-scanの角度に時間依存性から、眼底を走査する際に生じる光路長変化量と前記B-scanとの対応関係に基づいて、光路長変化量の時間依存性を演算する演算部であって、パーソナルコンピュータで構成される演算部、とを備え、(【0039】・【0040】・【0085】)
f6 前記演算部は、同期部から得られた同期のタイミングに関する情報により、走査ミラーで照射している眼底の位置を読み取り、同時に、記憶部に記憶された眼底形状データから、その眼底位置での初期光路調査からに光路長変化量を計算し、必要な光路長調整量に関する情報を制御部(光路長変化部)に送り、該情報に基づいて制御部(光路長変化部)が参照光の光路長を変化させるものであり、(【0040】・【0089】)
g1 例えば、直径25mmの球状の眼底形状として実際に測定を行う被検体の眼球直径が23mmであったとすると、眼底形状データテーブルに合わせて光路長変化機構を動作させた場合、実際の被検体を測定する際に生じる最大光路長変化は、眼球の中心角200度の範囲を撮像する場合約2mmとなるものであり、(【0093】)
g2 このような前提条件を設けると、OCTシステムでは4mm以上の撮像レンジを有していれば良いことになるのであり、(【0094】)
h1 上記参照光の光路長を変化させない場合には最大光路長変化量が22.2mmになるところ、上記のとおり参照光の光路長を変化させることで、最大光路長変化量が2mmとなるものであり、(【0093】・【0095】)
h2 さらに、眼底形状テーブルを予め用意する替わりに、OCTやSLOにより眼底形状を測定し、実際に取得した被検体の眼底形状データを取得するようにすることもできる、(【0098】~【0111】・【0112】~【0117】)
i 光干渉断層計(OCT)。(【0012】)」
(3)本件補正発明と引用発明との対比
ア 構成a・iの「光干渉断層計(OCT)」は構成A・Iの「光干渉断層撮影(OCT)システム」に相当する。
イ(ア)構成bの「OCT装置を用いて眼底の断層像を得るために、眼底をスポット的に照明する、共振器に回折格子を設けて光を分光させ、ポリゴンミラーや、回転する円盤上にストライプ状の反射ミラーを設けた外部共振器型の波長掃引光源、面発光レーザー、ファイバレーザーなどからなる光源部」は、構成Bの「光源」に相当する。
(イ)また、構成bの前記「光源部」は「OCT装置を用いて眼底の断層像を得るために、眼底をスポット的に照明する」ものである点で、構成Bの「OCTビームを生成するように構成された光源」に相当するものであるといえる。
(ウ)ここで、構成Bの「OCTビーム」について検討を加える。
a.まず、光学分野における「ビーム」の一般的な字義は、「粒子又は電磁波の細い流れ」、「光束」、「方向性の強い光線」である(広辞苑、デジタル大辞泉、照明大辞典)。
b.また、本願の明細書【0019】には、
「動作中、光源102は、ビームスプリッタ104に向けられた低コヒーレンス光ビームを発し、ビームスプリッタ104は、この光を、参照アーム(これは、光ファイバを含む任意の適当な送信及び集光光学系を含み得る)を通じてリフレクタ108に向かって案内される参照ビーム106と、イメージングアーム(これも、同様に、光ファイバを含む任意の適当な送信及び集光光学系を含み得る)を通じてスキャナ120に向かって案内されるイメージングビーム110とに分割する。」
なる記載があり、該記載では、「参照ビーム」及び「イメージングビーム」なる各「ビーム」について、光ファイバを通じ案内される伝送形態が含まれることが明示されている。
c.上記b.から、本件補正発明における「ビーム」には、光ファイバを通じて伝送される光束も含まれるものと理解され、この理解は、上記a.に挙げた「ビーム」の字義とも矛盾しない。
d.以上、a.~c.のとおりであるから、本件補正発明における「ビーム」なる用語の意味内容に注目しても、上記(イ)の相当関係の認定と矛盾しない。また、以下、本件補正発明の別の構成における「ビーム」の解釈や相当性については本項のとおりである。
ウ(ア)構成Cの「ビームスプリッタ」なる光学デバイスは、「光分岐器」とも称される周知の光学デバイスであって、光束の分岐を担う素子としては、プリズムや半透鏡を用いるもの、2本の光ファイバを溶かして融合させたファイバーカップラである「溶融型光カプラ」を用いるもの、シリコン基板上にガラス導波路を形成したPLC(平面光波回路)を用いるもの、及びWDM光カプラを用いるものなどが含まれる、というのが技術常識である。
この技術常識は、例えばファイバーカップラを光束の合成・分波素子として用いた2×2(双方向2入力2出力)のデバイスが、本願優先日以前から一般に「ファイバービームスプリッタ-」や「ファイバー光コンバイナ/スプリッタ」と称して流通していることによっても一部裏付けられる。
前記技術常識に照らせば、構成cの「第1のファイバカップラ」における「ファイバカップラ」は、ビームスプリッタと総称される光学素子に含まれる素子であるといえるから、構成cの「第1のファイバカップラ」は、構成Cの「ビームスプリッタ」に相当するといえる。
(イ)構成c1の「参照光LB」、「照射光LA」、「光源部から出射された光L」、「分波」はそれぞれ、構成C1の「参照ビーム」、「イメージングビーム」、「OCTビーム」、「分割」に相当する。
よって、構成c1は、構成C1に相当する構成を備えるといえる。
(ウ)構成c2の「参照部の参照ミラー」は構成C2の「参照リフレクタ」に相当する。
そして、構成c2の「参照光LBは・・・第1のファイバーカップラから、参照部に入射され、該参照部の参照ミラーに反射させ」ることは、構成C2の「前記参照ビームを参照リフレクタに向かって案内すること」に相当する。
(エ)構成c3の「操作ミラー」は構成C3の「スキャナ」に相当する。
また、構成c・c1で「第1のファイバカップラ」により「光源部から出射された光L」を「分波」して生成された「照射光LA」が構成c3において「光ファイバを経てコリメートレンズを介して平行光となって走査ミラーに照射され」ることは、構成C3の「前記イメージングビームをスキャナに向かって案内すること」に相当する。
(オ)以上(ア)~(エ)のとおりであるから、引用発明は、本件補正発明の構成C~C3に相当する構成を備えるといえる。
エ(ア)構成dにおける「前記、参照部の参照ミラーに参照光LBを反射させ、戻された光を照射光と干渉させる場合の参照ミラー」は構成Dの「参照リフレクタ」に相当し、該「参照ミラー」に反射した参照光LBが「戻され」る、すなわち参照光LBを180°折り返す機能を持つ「ミラー」なのであるから、この機能を実現することができる最も単純な該「ミラー」としては、技術常識や、一般的なマイケルソン干渉計の光学系の構成に照らし、参照光LBに対し垂直な反射面を備える平面鏡が想定される。一方、該平面鏡以外の「ミラー」と称され得る光学素子で「参照光LBを180°折り返す」という機能を果たし得るものは、周知技術に訊ねても直ちに想起されない。例えば再帰反射鏡では一般に、入射光路と反射光路とは一致しないから、「参照光LBが「戻され」る、すなわち参照光LBを180°折り返す」との機能を文字どおり果たすものとはいえない。
よって、構成dの「参照ミラー」には、これを参照光LBに対し垂直な反射面を備える平面鏡で構成する態様が少なくとも含まれるといえる。
(イ)上記(ア)の認定を前提とすると、構成dの「該参照ミラーの位置を制御して参照光LBの光路長を変えることができる」との機能は、「参照ミラー」を、その反射面を参照光LBに対し垂直に保ったまま参照光LBの光軸に沿って進退させることによって実現できることが、光学分野の技術常識及び一般的なマイケルソン干渉計の光学系の構成に照らし、当業者にとって明らかである。
(ウ)以上(ア)~(イ)のとおりであるから、構成dの「参照部の参照ミラーに参照光LBを反射させ、戻された光を照射光と干渉させる場合の参照ミラーは、該参照ミラーの位置を制御して参照光LBの光路長を変えることができる」ことは、構成Dの「前記参照リフレクタを移動させて前記参照ビームの長さを調整するように構成され」ることに相当する。
また、上記(イ)のとおりであるから、引用発明が「「参照ミラー」を、その反射面を参照光LBに対し垂直に保ったまま参照光LBの光軸に沿って進退させる」ための機構や動力源を暗に備えることが自明であり、該「光軸に沿って進退」する動作は、一直線上での往復運動に外ならない。一方、構成Dの「リニアアクチュエータ」とは、一直線上での一次元運動を生起させる動力源を意味する用語である。そして、構成dが暗に備える前記「「参照ミラー」を、その反射面を参照光LBに対し垂直に保ったまま参照光LBの光軸に沿って進退させる」ための動力源は、構成Dの「参照リフレクタを移動させて前記参照ビームの長さを調整するように構成されたリニアアクチュエータ」に相当する。
オ(ア)構成eで、「走査ミラー」が「眼球に入る光を2次元的に走査、すなわちB-scanする」こと、及び「瞳孔を通して光を眼球に入射し、瞳孔中心をスキャン中心として眼底の後極から眼球の赤道を越える範囲までスキャン」することは、構成Eの、「前記スキャナ」が「前記イメージングビームを複数の走査角度で標的表面に走査するように構成され」ることに相当する。
(イ)また、構成eの「眼底部」は構成Eの「標的表面」に相当する。
(ウ)構成eにおいて「前記走査ミラーは、眼球に入る光を2次元的に走査、すなわちB-scanするものであって、瞳孔を通して光を眼球に入射し、瞳孔中心をスキャン中心として眼底の後極から眼球の赤道を越える範囲までスキャンする」のであるから、「走査ミラー」で反射された光は瞳孔を通り「眼底」をスキャン、すなわち照射する。そうすると、構成eにおける「瞳孔中心をスキャン中心として眼底の後極から眼球の赤道を越える範囲までスキャンすると、瞳孔中心から眼底部までの距離(光路長)が大きく変化する」ことは、該スキャンにより「走査ミラー」と「眼底」との「距離(光路長)が大きく変化する」ことにほかならない。よって、構成eの「瞳孔を通して光を眼球に入射し、瞳孔中心をスキャン中心として眼底の後極から眼球の赤道を越える範囲までスキャンすると、瞳孔中心から眼底部までの距離(光路長)が大きく変化する」ことは、構成Eの「前記スキャナ及び標的表面は、前記走査角度の各々で変化するサンプル距離だけ分離される」ことに相当するといえる。
カ(ア)構成f1の「走査ミラーを駆動して例えば走査角度100°について2秒で1点あたり2μ秒、1000×1000画素で前記B-scanを行わせる」ことにおける、「走査角度100°」内の「1000×1000画素」は、構成F1の「走査角度の各々」に相当する。
(イ)また、構成f1で、「1000×1000画素」に対し各「1点あたり2μ秒」、全体で「2秒」にてB-scanすることは、全画素に対し均等な時間間隔すなわち速度で順次移動しているといえるから、構成f1における、前記B-scanにおける前記画素間の移動の速度、すなわち、構成f5の「B-scanのスキャンスピード」が、構成F1の「第一の走査速度」に相当するといえる。
(ウ)以上(ア)・(イ)から、構成f1の「走査ミラーを駆動して例えば走査角度100°について2秒で1点あたり2μ秒、1000×1000画素で前記B-scanを行わせる」ことは、構成F1の「前記スキャナに、第一の走査速度において前記走査角度の各々で前記イメージングビームを走査させる」ことに相当する。
キ(ア)構成f3・f5~f6には、「演算部」による、「前記B-scanのスキャンスピードが予め分かっている場合、該B-scanの角度に時間依存性から、眼底を走査する際に生じる光路長変化量と前記B-scanとの対応関係に基づいて、光路長変化量の時間依存性を演算」し、「走査ミラー駆動部と制御部(光路長変化部)とを同期させる」「同期部から得られた同期のタイミングに関する情報により、走査ミラーで照射している眼底の位置を読み取り、同時に、記憶部に記憶された眼底形状データから、その眼底位置での初期光路調査からに光路長変化量を計算し、必要な光路長調整量に関する情報を制御部(光路長変化部)に送り、該情報に基づいて制御部(光路長変化部)が参照光の光路長を変化させる」との動作が特定される。
(イ)上記(ア)の動作は、該動作がなされなければ、構成h1によれば「上記参照光の光路長を変化させない場合には最大光路長変化量が22.2mmになる」ところ、前記動作により、構成g1によれば、「例えば、直径25mmの球状の眼底形状として実際に測定を行う被検体の眼球直径が23mmであったとすると、眼底形状データテーブルに合わせて光路長変化機構を動作させた場合、実際の被検体を測定する際に生じる最大光路長変化は、眼球の中心角200度の範囲を撮像する場合約2mmとな」るものであると理解される。
そうすると、眼底と走査ミラーとの距離が走査ミラーによる走査によって22.2mm変化するはずのところ、「光路長変化機構」により該変化を2mmに減少、すなわち相殺するものといえる。
(エ)よって、構成f5~f6に係る上記(ア)の動作は、構成F2の「前記走査中に前記走査速度と同調的に前記参照ビームの前記長さを調整させて、前記走査角度の各々でのサンプル距離の前記変化を相殺する」との動作に相当するといえる。
ク(ア)構成f1によれば、「走査ミラー」を駆動する主体は「走査ミラー駆動部」であり、構成f3によれば「走査ミラー駆動部と制御部(光路長変化部)と」は「同期部」により同期させられている。
(イ)また、構成f5・f6によれば、「演算部」では、「前記B-scanのスキャンスピードが予め分かっている場合、該B-scanの角度に時間依存性から、眼底を走査する際に生じる光路長変化量と前記B-scanとの対応関係に基づいて、光路長変化量の時間依存性を演算」でき、「同期部から得られた同期のタイミングに関する情報により、走査ミラーで照射している眼底の位置を読み取り、同時に、記憶部に記憶された眼底形状データから、その眼底位置での初期光路調査からに光路長変化量を計算し、必要な光路長調整量に関する情報を制御部(光路長変化部)に送り、該情報に基づいて制御部(光路長変化部)が参照光の光路長を変化させる」ことができるものである。
そうすると、制御部による参照ミラーの位置制御は、「同期部」からの「同期のタイミングに関する情報」及び「演算部」による「必要な光路長調整量に関する情報」に基づいて駆動されているといえる。
(ウ)以上から、「走査ミラー駆動部」及び「制御部」は、「演算部」と「同期部」との協働により、同期して動作させられているといえる。
よって、引用発明の「演算部」及び「同期部」を合わせたもの、又は「演算部」・「同期部」・「走査ミラー駆動部」・「制御部(光路長変化部)」を合わせたものが、スキャナとリニアアクチュエータとに構成F1・F2の制御を行う構成Fの「OCTコントローラ」に機能上相当するといえる。
(エ)また、構成f6の「同期部から得られた同期のタイミングに関する情報により、走査ミラーで照射している眼底の位置を読み取り、同時に、記憶部に記憶された眼底形状データから、その眼底位置での初期光路調査からに光路長変化量を計算」することによる「必要な光路長調整量に関する情報」は、構成F2の「前記アクチュエータに、前記走査中に前記走査速度と同調的に前記参照ビームの前記長さを調整させて、前記走査角度の各々でのサンプル距離の前記変化を相殺することとを行うための信号」に相当する。
ケ(ア)構成g1の「直径25mmの球状の眼底形状として実際に測定を行う被検体の眼球直径が23mmであったとすると、眼底形状データテーブルに合わせて光路長変化機構を動作させた場合、実際の被検体を測定する際に生じる」「光路長変化」は、構成Gの「走査パターン内のすべての走査角度について、標的深さでの参照ビームの経路長さとイメージングビームの経路長さの間の光路差|OPD|」に相当する。
(イ)構成g1において、「例えば、直径25mmの球状の眼底形状として実際に測定を行う被検体の眼球直径が23mmであったとすると、眼底形状データテーブルに合わせて光路長変化機構を動作させた場合、実際の被検体を測定する際に生じる最大光路長変化は、眼球の中心角200度の範囲を撮像する場合約2mmとな」ることは、これを前提として構成g2で「OCTシステムでは4mm以上の撮像レンジを有していれば良いことになる」と、OCTシステムの設計値が定まる関係にあるから、逆にいえば、OCTシステムの設計値からみて、最大光路長変化」が「約2mm」であるように制御されることが期待すなわち許容されているといえる。
公差とは許容される誤差の意味であるから、そうすると、構成g1で「例えば、直径25mmの球状の眼底形状として実際に測定を行う被検体の眼球直径が23mmであったとすると、眼底形状データテーブルに合わせて光路長変化機構を動作させた場合、実際の被検体を測定する際に生じる最大光路長変化は、眼球の中心角200度の範囲を撮像する場合約2mmとなる」ように、眼底形状として「25mmの球状」を用いることについて、「2mm」は構成Gの「公差値Td」に相当し、「例えば、直径25mmの球状の眼底形状として実際に測定を行う被検体の眼球直径が23mmであったとすると、眼底形状データテーブルに合わせて光路長変化機構を動作させた場合、実際の被検体を測定する際に生じる最大光路長変化は、眼球の中心角200度の範囲を撮像する場合約2mmとなる」ことは、構成Gの「走査パターン内のすべての走査角度について、標的深さでの参照ビームの経路長さとイメージングビームの経路長さの間の光路差|OPD|≦公差値TdXとなるようにする」ことに相当する。
(ウ)また、構成g1は、冒頭で「例えば」とされるとおり、構成f6の制御の一具体例と位置づけられる。よって、上記ク(エ)で説示したとおり、構成g1の具体例も、「OCTコントローラ」が「制御部」を構成f6にいう「前記走査角度の各々でのサンプル距離の前記変化を相殺することとを行うための信号」によって制御することによって実現されるといえるから、構成g1は、構成Gの(OCTコントローラが)「走査パターン内のすべての走査角度について、標的深さでの参照ビームの経路長さとイメージングビームの経路長さの間の光路差|OPD|≦公差値TdXとなるようにする信号を生成」するとの構成に相当する構成を含むといえる。
コ(ア)構成h1の「最大光路長変化」は、上記オ(イ)の説示事項も参照すれば、構成Hの「前記走査内の前記標的深さの変化」に相当する。
(イ)また、構成h1で、「上記参照光の光路長を変化させない場合には最大光路長変化量が22.2mmになるところ、上記のとおり参照光の光路長を変化させることで、最大光路長変化量が2mmとなる」ことは、最大光路長変化量が22.2mmよりも2mmの方が、(眼底のB-scanが)より眼底形状に適合、すなわちマッチしているといえる。
(ウ)また、構成h1の「上記のとおり」とは構成g1の「例えば、直径25mmの球状の眼底形状として実際に測定を行う被検体の眼球直径が23mmであったとすると、眼底形状データテーブルに合わせて光路長変化機構を動作させた場合、実際の被検体を測定する際に生じる最大光路長変化は、眼球の中心角200度の範囲を撮像する場合約2mmとなる」との一具体例を指すものであり、該一具体例における「25mmの球状」なる眼底形状(設定値)の選択は、走査に伴う眼底部までの距離(構成e)の変化を想定してのものであるといえるから、この点で構成g1は構成1Hの「前記走査内の前記標的深さの変化を考慮する・・・ように、前記参照リフレクタの位置を変更しかつ前記参照ビームの経路長さを調整する」ことに相当する構成を含むといえる。
(エ)また、構成h2の「眼底形状テーブルを予め用意する替わりに、OCTやSLOにより眼底形状を測定し、実際に取得した被検体の眼底形状データを取得するようにすることもできる」こと、すなわち、眼底形状の個体差や時間変化に適合させるべく眼底形状の事前のまたは即時的な実測値を「眼底形状データ」として構成f6の参照光の光路長変化を行うことも、構成Hの「前記走査内の前記標的深さの変化を考慮するか又はそれをマッチさせるように、前記参照リフレクタの位置を変更しかつ前記参照ビームの経路長さを調整すること」に相当するといえる。
(4)一致点・相違点
上記(3)によれば、本件補正発明と引用発明とは、下記アの点で一致し、下記イの点で相違する。
ア 一致点
「A 光干渉断層撮影(OCT)システムであって、
B OCTビームを生成するように構成された光源、
C ビームスプリッタであって、
C1 前記OCTビームを参照ビームとイメージングビームとに分割することと、
C2 前記参照ビームを参照リフレクタに向かって案内することと、
C3 前記イメージングビームをスキャナに向かって案内することと を行うように構成されたビームスプリッタ、
D 前記参照リフレクタを移動させて前記参照ビームの長さを調整するように構成されたリニアアクチュエータ、
E 前記イメージングビームを複数の走査角度で標的表面に走査するように構成された前記スキャナであって、前記スキャナ及び標的表面は、前記走査角度の各々で変化するサンプル距離だけ分離される、前記スキャナ、
F’ OCTコントローラであって、
F1 前記スキャナに、第一の走査速度において前記走査角度の各々で前記イメージングビームを走査させることと、
F2’ 前記アクチュエータに、前記走査中に前記走査速度と同調的に前記参照ビームの前記長さを調整させて、前記走査角度の各々でのサンプル距離の前記変化を相殺することとを行う、OCTコントローラを含み、
G 走査パターン内のすべての走査角度について、標的深さでの参照ビームの経路長さとイメージングビームの経路長さの間の光路差|OPD|≦公差値TdXとなるようにする信号を生成し、
H 前記走査内の前記標的深さの変化を考慮するか又はそれをマッチさせるように、前記参照リフレクタの位置を変更しかつ前記参照ビームの経路長さを調整することができる、
I 光干渉断層撮影(OCT)システム。」
イ 相違点1(構成F~F2)
OCTコントローラが、本件補正発明では、「プロセッサとメモリに記憶された命令とを含」み、該命令が構成F1の「・・・走査させること」、構成F2の「・・・前記変化を相殺すること」「を行うための信号を前記OCTコントローラに生成させるように前記プロセッサによって実行可能」なものであるのに対し、引用発明では、「プロセッサ」と「メモリに記憶された命令」を明示的に含まず、構成F1・F2に相当する動作も、「前記命令を行うための信号をOCTコントローラに生成」させることで実行されるものか不明である点。
(5)相違点1についての検討
ア(ア)引用発明(構成f1)において、走査ミラー駆動部は、「走査ミラーを駆動して例えば走査角度100°について2秒で1点あたり2μ秒、1000×1000画素で前記B-scanを行わせる」という制御を、走査ミラーに対し行う手段として特定されている。当該走査においては、OCTがSD・SSいずれかにもよるものの、各画素位置においての2μ秒静止させる間歇駆動が必要がある場合も少なくとも含まれる。
このような、動作速度が規定された、場合により間歇的なミラーの二次元(2軸)制御について、機械式時計のようにすべて機械的手段(からくり)により実現することも全く不可能ではないものの、費用対効果や設計の自由度、設定値の変更の自由度の観点から、プログラム制御により実現するというのが本願優先日時点における技術常識であるといえる。
そして、機器について前記プログラム制御する場合には、該機器(前記走査ミラー駆動部内部)またはその外部のメモリにそのための命令を記述したプログラムが記憶されている必要があること、及び、該機器(走査ミラー駆動部)が、前記命令を実行する何らかのプロセッサを備えるべきことも技術常識である。
よって、引用発明には、前記走査ミラー駆動部をプログラム制御により駆動する態様が少なくとも含まれるといえ、該態様においては、前記駆動のための命令を記述したプログラムが該走査ミラー駆動部の内部または外部のメモリーに格納されているべきことも技術常識に照らし自明である。
よって、相違点1のうち、構成F・1Fに係る、[走査ミラー駆動部に対し「前記スキャナに、第一の走査速度において前記走査角度の各々で前記イメージングビームを走査させること」「を行うための信号を前記OCTコントローラに生成させるように前記プロセッサによって実行可能」な「メモリに記憶された命令」と「プロセッサ」とを備えるようにすること]は、実質的な相違点であるとは認められない。
(イ)また、仮に前記自明であるとまでいえないとしても、≪動作速度が規定された、場合により間歇的なミラーの二次元(2軸)制御について、機械式時計のようにすべて機械的手段(からくり)により実現することも全く不可能ではないものの、費用対効果や設計の自由度、設定値の変更の自由度の観点から、プログラム制御により実現する≫ことや、≪機器について前記プログラム制御する場合には、該機器(前記走査ミラー駆動部内部)またはその外部のメモリにそのための命令を記述したプログラムが記憶されている必要があること、及び、該機器(走査ミラー駆動部)が、前記命令を実行する何らかのプロセッサを備えるべきこと≫は、前記のとおり、技術常識であるといえる程度に周知の技術であるから、引用発明において、走査ミラー駆動部に対し「前記スキャナに、第一の走査速度において前記走査角度の各々で前記イメージングビームを走査させること」「を行うための信号を前記OCTコントローラに生成させるように前記プロセッサによって実行可能」な「メモリに記憶された命令」と「プロセッサ」とを備えるようにすることは、前記周知技術に基づいて当業者が容易になし得たことである。
イ(ア)引用発明において、「前記B-scanのスキャンスピードが予め分かっている場合、該B-scanの角度に時間依存性から、眼底を走査する際に生じる光路長変化量と前記B-scanとの対応関係に基づいて、光路長変化量の時間依存性を演算」し、「同期部から得られた同期のタイミングに関する情報により、走査ミラーで照射している眼底の位置を読み取り、同時に、記憶部に記憶された眼底形状データから、その眼底位置での初期光路調査からに光路長変化量を計算し、必要な光路長調整量に関する情報を制御部(光路長変化部)に送り、該情報に基づいて制御部(光路長変化部)が参照光の光路長を変化させ」るという「制御部(光路長変化部)」に対する制御を行う「演算部」は「パーソナルコンピュータで構成される」ものである(構成f5)。ここで、パーソナルコンピュータは命令(プログラム)を記憶するメモリ、命令を実行するプロセッサを備えるということが技術常識である。よって、引用発明の前記「演算部」による前記「制御部(光路長変化部)」に対する制御」は、前記パーソナルコンピュータのメモリに記憶された命令(プログラム)を前記プロセッサが実行することで行われるものと理解できる。
よって、引用発明は、相違点1のうち構成F・F2に関連する「前記アクチュエータに、前記走査中に前記走査速度と同調的に前記参照ビームの前記長さを調整させて、前記走査角度の各々でのサンプル距離の前記変化を相殺することを行うための信号を前記OCTコントローラに生成させるように前記プロセッサによって実行可能」な「メモリに記憶された命令」と「プロセッサ」「とを含む」という構成に相当する構成を実質的に備えるといえ、相違点1のうち構成F・F2に関連する事項に関し、実質的に本件補正発明と相違しない。
(イ)また、仮に上記(ア)のとおりであるとまでいえないとしても、パーソナルコンピュータは命令(プログラム)を記憶するメモリ、命令を実行するプロセッサを備えるということは、技術常識であるといえる程度に周知の技術であるから、引用発明に該周知技術を適用し、引用発明の前記「演算部」による前記「制御部(光路長変化部)」に対する制御」を、前記パーソナルコンピュータのメモリに記憶された命令(プログラム)を前記プロセッサが実行することで行われるものとすることは、当業者が容易になし得たことである。
ウ 以上ア・イのとおりであるから、相違点1は、特に上記(3)ク(ウ)で言及したうち、≪「演算部」・「同期部」・「走査ミラー駆動部」・「制御部(光路長変化部)」を合わせたものが、スキャナとアクチュエータとに構成F1・F2の制御を行う構成Fの「OCTコントローラ」に機能上相当する≫との相当関係を前提とした場合において、実質的な相違点であるとはいえないから、本件補正発明は引用発明である。
また、仮に実質的な相違点であるとしても、引用発明において相違点1の構成とすることは、上記のとおり、技術常識であるといえる程度に周知な技術を適用することで、当業者が容易になし得たことである。
(6)構成Dについて
上記(3)において、構成dは構成Dに相当すると認定した。
仮に、引用発明において、参照部の参照ミラーが光軸方向に進退することや、そのための参照ミラー駆動手段としてのリニアアクチュエータの使用が自明であるとまでいえないとするなら、引用発明は、構成Dに特定される「リニアアクチュエータ」を明示的に備えない点で本件補正発明と相違する(以下「仮の相違点2」という。)。
しかし、半透鏡ベースのマイケルソン干渉計のみならず、2×2ファイバーカップラベースの等価な干渉計においても、参照光路において、眼底位置の深さに合わせて光軸に直交する反射面を有する参照ミラーを、リニアアクチュエータに相当する参照ミラー駆動機構により光軸方向に進退させるようにすることは、例えば本願の優先日前に公知となった文献であり、令和3年9月27日付け拒絶理由通知において先行技術文献として示した特開2011-11052号公報にも下記ア、イに摘記する記載がなされるとおり、当該技術分野において周知である。
ア 「【0016】 一方、参照光を参照ミラー31に向けて出射する光路には、参照光を出射する光ファイバ38cの端部39c、コリメータレンズ29、参照ミラー31が配置されている。参照ミラー31は、参照光の光路長を変化させるべく、参照ミラー駆動機構50により光軸方向に移動可能な構成となっている。
・・・
【0030】
制御部70は、自動光路長調整(自動OPL調整)を開始するためのトリガ信号が出力されると、駆動機構50の駆動を制御して参照ミラー31を移動させ、眼底の断層像が取得されるように参照光の光路長を調整する。
【0031】
より具体的には、制御部70は、予め設定された初期位置から参照ミラー31を移動させていき、眼底断層像が取得される位置を探索する。制御部70は、予め設定された初期位置にて断層画像を取得した後、参照ミラー31を所定のステップで移動させ、各移動位置における断層画像を順次取得していき、眼底断層像が取得される位置を探索していく。」
イ 【図1】
[図:0001405413000002.jpg]
(7)審判請求書における請求人の主張について
審判請求書において請求人は、本件補正発明と引用文献1に記載された発明との相違点について、構成Hに関し
「引用例1においては、本願の補正後の請求項1に係る発明のように「前記走査内の前記標的深さの変化を考慮するか又はそれをマッチさせるように、前記参照リフレクタの位置を変更しかつ前記参照ビームの経路長さを調整することができる」点が具体的には開示も示唆もされておりません。」
と主張する。
しかし、引用発明が構成Hに相当する構成を備えることは上記(3)コで説示したとおりであるから、請求人の前記主張は採用できない。
(8)小括
以上(1)~(7)のとおりであるから、本件補正発明と引用発明との間に実質的な相違点が認められず、本件補正発明は引用発明であるから、本件補正発明は特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
また、仮に両発明が相違するとしても、本件補正発明は引用発明及び周知技術・技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
(9)上申書における補正案について
ア 令和5年1月17日に提出された上申書において請求人は本件補正後の請求項1乃至15に係る発明についてさらに補正をした補正案を示し、そのうち請求項1に対しさらに補正をした補正案は以下のとおりである。(さらなる補正箇所に下線を示す。)
「A” 眼用の光干渉断層撮影(OCT)システムであって、
B OCTビームを生成するように構成された光源、
C0 ビームスプリッタであって、
前記OCTビームを参照ビームとイメージングビームとに分割することと、
前記参照ビームを参照リフレクタに向かって案内することと、
前記イメージングビームを、眼と参照リフレクタの間に位置するスキャナに向かって案内することと を行うように構成されたビームスプリッタ、
D 前記参照リフレクタを移動させて前記参照ビームの長さを調整するように構成されたリニアアクチュエータ、
E 前記イメージングビームを複数の走査角度で標的表面に走査するように構成された前記スキャナであって、前記スキャナ及び標的表面は、前記走査角度の各々で変化するサンプル距離だけ分離される、前記スキャナ、
F プロセッサと、メモリに記憶された命令とを含むOCTコントローラであって、前記命令は、
F1 前記スキャナに、第一の走査速度において前記走査角度の各々で前記イメージングビームを走査させることと、
F2 前記アクチュエータに、前記走査中に前記走査速度と同調的に前記参照ビームの前記長さを調整させて、前記走査角度の各々でのサンプル距離の前記変化を相殺することと
を行うための信号を前記OCTコントローラに生成させるように前記プロセッサによって実行可能である、OCTコントローラを含み、
G 走査パターン内のすべての走査角度について、標的深さでの参照ビームの経路長さとイメージングビームの経路長さの間の光路差|OPD|≦公差値TdXとなるようにする信号を生成し、
H 前記走査内の前記標的深さの変化を考慮するか又はそれをマッチさせるように、前記参照リフレクタの位置を変更しかつ前記参照ビームの経路長さを調整することができる、
I” 眼用の光干渉断層撮影(OCT)システム。」
イ 構成A”・I”について
構成A”・I”において、「光干渉断層撮影(OCT)システム」を「眼用の光干渉断層撮影(OCT)システム」と限定した点は。引用発明も例えば構成c1において照射対象や測定対象として「眼球」・「眼底」が特定されるとおり眼用のものであるから、該補正案により、構成A”・I”に関し新たな相違点を構成するものではない。
ウ 構成C”について
構成C”において、「スキャナ」の位置を「眼と参照リフレクタの間」と限定する点について、以下に検討する。
(ア)本願明細書・図面の記載を参酌すると、本願の実施例に係る図4において光源102、ビームスプリッタ104、スキャナ120、眼(網膜)114は一直線上に配列され、光源からの光束は前記順に眼に達するが、参照リフレクタ202は、眼114とスキャナ120との配列に対し一直線上になく、また、参照リフレクタ202には、光源102からの光束が、ビームスプリッタ104で反射されて到達したあと反射され、再度ビームスプリッタ104を透過して検出器124 に達する光路が存在するものの、眼114とスキャナ120とビームスプリッタ104とを結ぶ光路と、ビームスプリッタ104と参照リフレクタ202とを結ぶ光路との間には、両光路を連続して通る光束が存在しない。
よって、図4及び該図に関連する実施例の記載において、光学的にみて、スキャナが参照リフレクタと眼との間に存在するということはできない。また、その他、光学的にみて、スキャナが参照リフレクタと眼との間に存在するといえる(該三者が光路で結ばれる)実施形態について言及はない。
よって、構成C”に係る補正案は、(少なくとも≪光学的にみて、スキャナが参照リフレクタと眼との間に存在する≫との意味を含む点で)サポート要件違反や新規事項の追加に該当する可能性がある。
(イ)また、上記C”に係る補正案が、単に、眼114、スキャナ120、参照リフレクタ202がこの順に光路をたどることができるように存在していることを特定するものであるとすれば、補正案どおりの補正が適法に許容されるかもしれない。
しかし、引用文献1に図1においても、眼107、走査ミラー108、参照部106は、本願の実施例と同様に、光学的には走査ミラーが眼107と参照部106との間にあるとはいえないものの、ファイバーカップラ102を介し光ファイバー及び光路によって眼107、走査ミラー108、参照部106が順に結ばれているとはいえる。
よって、構成C”に係る補正事項も、引用文献1に記載された事項の範囲内のものであるといえる。
エ 以上のとおりであるから、上申書に示された補正案を検討したとしても、上記(8)の結論が覆ることはなく、上申書の主張に基づいてさらに補正の機会を付するべき事情はない。
4 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3.本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~15に係る発明は、上記審査時補正により補正された、特許請求の範囲の請求項1~15に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2.1(1)に査定時請求項1として記載したとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由1・2の概要は、以下のとおりである。ここでの引用文献1は、上記第2.3(2)アで示した引用文献1と同じである。
(1)理由1(新規性)
本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(2)理由2(進歩性)
本願発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
3 引用文献
引用文献1に記載された事項は、上記第2.3(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明の発明特定事項から、上記第2.1(2)の下線部の構成、すなわち構成Hを省いたものである。
上記第2.3(4)で検討したとおり、本件補正発明と引用発明との間で相違点となり得るのは、本願発明と共通する構成F~F2及び構成Dに関する構成のみである。そうすると、構成Hを省くか否かに関わらず、本願発明と引用発明との間には実質的な相違点がない。また、仮に相違するとしても、両者の間では上記相違点1及び仮の相違点2を措いてほかに相違点は認められない。
したがって、本願発明は、引用発明と同一であるといえる。また、仮に相違点の存在を認めるとしても、本願発明は引用発明及び周知技術・技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
また、仮に特許法第29条第1項第3号に該当するとまでいえないとしても、本願発明は、引用発明及び周知技術・技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-015078