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特許拒絶査定不服審判

2023-009047

オミデネパグの組合せ

審判番号
2023-009047
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-560555外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年06月02日
審決日
2025年03月19日
公報発行日
2025年05月30日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (A61K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2019-560555「オミデネパグの組合せ」拒絶査定不服審判事件〔令和元年6月27日国際公開、WO2019/124487〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2018年(平成30年)12月20日(優先権主張:2017年12月21日、2018年9月26日、いずれも(JP)日本国)を国際出願日とする特許出願であり、その主な手続の経緯は、次のとおりである。 令和4年11月30日付け 拒絶理由通知書 令和5年 2月 2日 意見書の提出 同年 2月27日付け 拒絶査定 同年 6月 2日 審判請求書の提出 令和6年10月 2日付け 拒絶理由通知書及び審尋 同年12月 3日 意見書及び回答書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1~8に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩と、リパスジル、Netarsudil及びこれらの塩からなる群より選択される1又は複数のRhoキナーゼ阻害剤が組み合わされて投与されることを特徴とする緑内障若しくは高眼圧症の予防又は治療剤。」 第3 当審において通知した拒絶の理由 令和6年10月2日付けで当審において通知した拒絶の理由のうち、本願発明(請求項1に係る発明に対応)についての理由の要旨は、次のとおりである。 本願発明は、優先日前に日本国内又は外国において頒布された引用文献1、2に記載された発明に基いて、優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献一覧> 1.特開2014-31369号公報 2.ADMET & DMPK,4(4), 2016年,pp.280-301,doi: 10.5599/admet.4.4.331 3.ファルマシア、Vol.51、No.3、2015、p240-241(技術常識を示す文献) 4.処方情報「rhopressa(netarsudil眼科溶液)0.02%」、2019年3月改訂、https://alcon.widen.net/view/pdf/qzk8dryvew/2301P60-US-RHO-2300002-Rhopressa-Promotional-PI_hr (技術常識を示す文献) 第4 引用文献及び参考文献の記載 1 引用文献1 引用文献1には、以下の事項が記載されている。なお、原文にない下線は強調のために合議体が付したものである。(以下、同様。) (摘記1a)「【請求項1】 (6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピルと1または複数種の他の緑内障若しくは高眼圧症の予防または治療薬(ただしタフルプロストを除く)とを組み合わせた緑内障若しくは高眼圧症の予防または治療剤。 ・・・ 【請求項3】 他の緑内障若しくは高眼圧症の予防または治療薬が、非選択性交感神経作動薬、α2受容体作動薬、α1受容体遮断薬、β受容体遮断薬、副交感神経作動薬、炭酸脱水酵素阻害剤、プロスタグランジン類及びRhoキナーゼ阻害剤からなる群より選択される1または複数種の予防または治療剤である、請求項1または2に記載の予防若しくは治療剤又は眼圧下降剤。 ・・・ 【請求項11】 Rhoキナーゼ阻害剤が(R)-トランス-N-(ピリジン-4-イル)-4-(1-アミノエチル)シクロヘキサンカルボキサミド、(R)-(+)-N-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)-4-(1-アミノエチル)ベンズアミド、1-(5-イソキノリンスルホニル)ホモピペラジンまたは1-(5-イソキノリンスルホニル)-2-メチルピペラジンである請求項3~10のいずれかに記載の予防若しくは治療剤又は眼圧下降剤。」(特許請求の範囲) (摘記1b)「【技術分野】 【0001】 本発明は(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピルと他の緑内障若しくは高眼圧症の予防または治療薬とを組み合わせた緑内障若しくは高眼圧症の予防または治療剤、または眼圧下降剤に関するものである。 ・・・ 【0004】 ところで、緑内障を治療する目的で眼圧下降作用を有する薬剤を組み合わせて使用することが複数報告されている。例えば、特許第2726672号公報(特許文献2)には、交感神経遮断薬とプロスタグランジン類の組み合わせの投与が報告されている。また、国際公開第2002/38158号(特許文献3)には、眼圧下降作用を有する薬剤をいくつか組み合わせて眼に投与することによる緑内障の治療方法が開示されている。さらに、国際公開第2004/019951号(特許文献4)には、Rhoキナーゼ阻害剤とプロスタグランジン類の組み合わせの投与が、国際公開第2004/045644号(特許文献5)にはRhoキナーゼ阻害剤およびβ受容体遮断薬の組み合わせの投与が報告されている。」(【0001】~【0004】) (摘記1c)「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 緑内障若しくは高眼圧症の予防または治療剤として有用な、緑内障若しくは高眼圧症の予防または治療薬の組み合わせを見出すことは非常に興味のある課題である。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明者らは、緑内障若しくは高眼圧症の予防または治療剤との組み合わせによる効果を鋭意研究した結果、(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピルと他の緑内障若しくは高眼圧症の予防または治療剤とを組み合わせることで各薬剤の単独使用時と比較して眼圧下降作用が増強することを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下に関する。 【0009】 (1)(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピルと1または複数種の他の緑内障若しくは高眼圧症の予防または治療薬(ただしタフルプロストを除く)とを組み合わせた緑内障若しくは高眼圧症の予防または治療剤。 ・・・ 【0011】 (3)他の緑内障若しくは高眼圧症の予防または治療薬(ただしタフルプロストを除く)が、非選択性交感神経作動薬、α2受容体作動薬、α1受容体遮断薬、β受容体遮断薬、副交感神経作動薬、炭酸脱水酵素阻害剤、プロスタグランジン類及びRhoキナーゼ阻害剤からなる群より選択される1または複数種の予防または治療剤である、上記(1)または(2)に記載の予防若しくは治療剤又は眼圧下降剤。 ・・・ 【0019】 (11)Rhoキナーゼ阻害剤が(R)-トランス-N-(ピリジン-4-イル)-4-(1-アミノエチル)シクロヘキサンカルボキサミド、(R)-(+)-N-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)-4-(1-アミノエチル)ベンズアミド、1-(5-イソキノリンスルホニル)ホモピペラジンまたは1-(5-イソキノリンスルホニル)-2-メチルピペラジンである上記(3)~(10)のいずれかに記載の予防若しくは治療剤又は眼圧下降剤。 【0020】 尚、上記(1)から(11)の各構成は、任意に1以上を選択して組み合わせることができる。」(【0007】~【0020】) (摘記1d)「【発明の効果】 【0022】 (6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピルと他の緑内障若しくは高眼圧症の予防または治療薬とを組み合わせて眼に投与することで、眼圧下降作用が増強する。したがって、本発明は緑内障若しくは高眼圧症の予防または治療剤、眼圧下降剤として有用である。」(【0022】) (摘記1e)「【0023】 本発明は、下記式(1)で示される(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピル(以下、本化合物ともいう)と1または複数種の他の緑内障若しくは高眼圧症の予防または治療薬とを組み合わせた緑内障若しくは高眼圧症の予防または治療剤、眼圧下降剤であり、お互いにその作用を補完および/または増強するものである。 【0024】 【化1】 [図:0001421793000001.jpg] 」(【0023】~【0024】) (摘記1f)「【0026】 本発明は、本化合物と他の緑内障若しくは高眼圧症の予防または治療薬とを組み合わせて緑内障若しくは高眼圧症を予防または治療するところに特徴がある。」(【0026】) (摘記1g)「【0031】 本発明におけるRhoキナーゼ阻害剤とは、Rhoの活性化に伴い活性化されるセリン/スレオニンキナーゼを阻害する化合物を意味する。例えば、ROKα(ROCK-II)、p160ROCK(ROKβ、ROCK-I)およびその他のセリン/スレオニンキナーゼ活性を有するタンパク質を阻害する化合物が挙げられる。Rhoキナーゼ阻害剤の具体例としては、・・・や国際公開第97/23222号、Nature, 389, 990-994(1997)に開示されている1-(5-イソキノリンスルホニル)ホモピペラジン、1-(5-イソキノリンスルホニル)-2-メチルピペラジンなどのRhoキナーゼ阻害剤が、・・・が例示される。中でも特に、(R)-トランス-N-(ピリジン-4-イル)-4-(1-アミノエチル)シクロヘキサンカルボキサミド、(R)-(+)-N-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)-4-(1-アミノエチル)ベンズアミド、1-(5-イソキノリンスルホニル)ホモピペラジンまたは1-(5-イソキノリンスルホニル)-2-メチルピペラジンが好ましい。」(【0031】) (摘記1h)「【0036】 投与形態としては、本化合物と他の緑内障若しくは高眼圧症の予防または治療薬とを別々に処方した複数の製剤とした形態で投与(併用投与)してもよく、また、それぞれの成分を配合した1つの製剤とした形態(合剤)で投与してもよい。合剤である場合が好ましい。さらに、本化合物と複数種の他の緑内障若しくは高眼圧症の予防または治療薬とを組み合わせる場合には、それぞれの成分を併用投与してもよく、本化合物と他の緑内障若しくは高眼圧症の予防または治療薬のうち任意の成分を配合した合剤と残りの成分とを併用投与してもよく、すべての成分を配合した合剤としてもよい。」(【0036】) (摘記1i)「【0076】 [薬理試験] [実施例1] 本化合物とβ受容体遮断薬との組み合わせの有用性を調べるため、実験動物(正常眼圧ウサギ)に本化合物とチモロールを併用投与したときの眼圧下降効果を検討した。 ・・・ 【0083】 (投与方法および測定方法) 〔1〕本化合物とチモロールとの併用投与 (1)0.4%塩酸オキシブプロカイン点眼液(商品名:ベノキシール(登録商標)点眼液0.4%)を実験動物の両眼に一滴点眼し局所麻酔をした。 【0084】 (2)被験化合物溶液投与直前に眼圧を測定し、初期眼圧とした。 【0085】 (3)本化合物溶液を実験動物の片眼に点眼した(対側眼は無処置)。少し時間をおいてチモロール溶液を同一眼に点眼した。 【0086】 (4)本化合物溶液点眼後2時間、4時間および6時間に0.4%塩酸オキシブプロカイン点眼液を一滴ずつ眼圧測定眼に点眼し局所麻酔後、眼圧を測定した。また、眼圧は各3回測定し、その平均値を結果に示す。 【0087】 〔2〕本化合物の単独投与 チモロール溶液を生理食塩水に代え、他は上記併用投与試験と同じ方法で試験をした。 【0088】 〔3〕チモロールの単独投与 本化合物溶液を基剤に代え、他は上記併用投与試験と同じ方法で試験をした。 【0089】 〔4〕コントロール 本化合物溶液を基剤に、チモロール溶液を生理食塩水に代え、他は上記併用投与試験と同じ方法で試験をした。 【0090】 (結果および考察) 各投与群の点眼後4時間の眼圧下降幅(対コントロール群平均値)を表1に示す。眼圧下降幅(対コントロール群平均値)は、コントロール群の初期眼圧値からの眼圧値変動幅(ΔIOP)の平均値と各個体のΔIOPの差を各群ともに6羽の平均値で示す。 【0091】 【表1】 [図:0001421793000002.jpg] 【0092】 表1から明らかなように、本化合物とチモロールの併用投与群の点眼後4時間の眼圧下降幅(対コントロール群平均値)は、薬剤単独投与群、すなわち、本化合物投与群およびチモロール投与群の点眼後4時間の眼圧下降幅(対コントロール群平均値)よりも大きく、かつ、各薬剤単独投与によりひきおこされる点眼後4時間の眼圧下降幅(対コントロール群平均値)を合算した和よりも大きくなり、本化合物とチモロールの併用効果は相乗的なものであった。 【0093】 以上から、本化合物とβ受容体遮断薬を組み合わせることにより、相乗的な眼圧下降効果が得られることがわかった。 【0094】 [実施例2] 本化合物とプロスタグランジン類との組み合わせの有用性を調べるため、実験動物(正常眼圧サル)に本化合物とラタノプロストを併用投与したときの眼圧下降効果を検討した。 ・・・ 【0101】 (投与方法および測定方法) 〔1〕本化合物とラタノプロストとの併用投与 (1)0.4%塩酸オキシブプロカイン点眼液(商品名:ベノキシール(登録商標)点眼液0.4%)を実験動物の両眼に一滴点眼し局所麻酔をした。 【0102】 (2)被験化合物溶液投与直前に眼圧を測定し、初期眼圧とした。 【0103】 (3)本化合物溶液を実験動物の片眼に点眼した(対側眼は無処置)。少し時間をおいてラタノプロスト溶液を同一眼に点眼した。 【0104】 (4)本化合物溶液点眼後2時間、4時間、6時間および8時間に0.4%塩酸オキシブプロカイン点眼液を一滴ずつ眼圧測定眼に点眼し局所麻酔後、眼圧を測定した。また、眼圧は各3回測定し、その平均値を結果に示す。 【0105】 〔2〕本化合物の単独投与 ラタノプロスト溶液を生理食塩水に代え、他は上記併用投与試験と同じ方法で試験をした。 【0106】 〔3〕ラタノプロストの単独投与 本化合物溶液を基剤に代え、他は上記併用投与試験と同じ方法で試験をした。 【0107】 〔4〕コントロール 本化合物溶液を基剤に、ラタノプロスト溶液を生理食塩水に代え、他は上記併用投与試験と同じ方法で試験をした。 【0108】 (結果および考察) 各投与群の点眼後8時間の眼圧下降幅(対コントロール群平均値)を表2に示す。眼圧下降幅(対コントロール群平均値)は、コントロール群の初期眼圧値からの眼圧値変動幅(ΔIOP)の平均値と各個体のΔIOPの差を各群6頭の平均値で示す。 【0109】 【表2】 [図:0001421793000003.jpg] 【0110】 表2から明らかなように、本化合物とラタノプロストの併用投与群の点眼後8時間の眼圧下降幅(対コントロール群平均値)は、薬剤単独投与群、すなわち、本化合物投与群およびラタノプロスト投与群の点眼後8時間の眼圧下降幅(対コントロール群平均値)よりも大きくかつ、各薬剤単独投与によりひき起こされる点眼後8時間の眼圧下降幅(対コントロール群平均値)を合算した和よりも大きくなり、本化合物とラタノプロストの併用効果は相乗的なものであった。 【0111】 以上から、本化合物とプロスタグランジン類を組み合わせることにより、相乗的な眼圧下降効果が得られることがわかった。 【0112】 [実施例3] 本化合物とα2受容体作動薬との組み合わせの有用性を調べるため、実験動物(正常眼圧サル)に本化合物とブリモニジンを併用投与したときの眼圧下降効果を検討した。 ・・・ 【0119】 (投与方法および測定方法) 〔1〕本化合物とブリモニジンとの併用投与 (1)0.4%塩酸オキシブプロカイン点眼液(商品名:ベノキシール(登録商標)点眼液0.4%)を実験動物の両眼に一滴点眼し局所麻酔をした。 【0120】 (2)被験化合物溶液投与直前に眼圧を測定し、初期眼圧とした。 【0121】 (3)本化合物溶液を実験動物の片眼に点眼した(対側眼は無処置)。少し時間をおいてブリモニジン溶液を同一眼に点眼した。 【0122】 (4)本化合物溶液点眼後2時間、4時間、6時間および8時間に0.4%塩酸オキシブプロカイン点眼液を一滴ずつ眼圧測定眼に点眼し局所麻酔後、眼圧を測定した。また、眼圧は各3回測定し、その平均値を結果に示す。 【0123】 〔2〕本化合物の単独投与 ブリモニジン溶液を生理食塩水に代え、他は上記併用投与試験と同じ方法で試験をした。 【0124】 〔3〕ブリモニジンの単独投与 本化合物溶液を基剤に代え、他は上記併用投与試験と同じ方法で試験をした。 【0125】 〔4〕コントロール 本化合物溶液を基剤に、ブリモニジン溶液を生理食塩水に代え、他は上記併用投与試験と同じ方法で試験をした。 【0126】 (結果および考察) 各投与群の点眼後2時間の眼圧下降幅(対コントロール群平均値)を表3に示す。眼圧下降幅(対コントロール群平均値)は、コントロール群の初期眼圧値からの眼圧値変動幅(ΔIOP)の平均値と各個体のΔIOPの差を各群6頭の平均値で示す。 【0127】 【表3】 [図:0001421793000004.jpg] 【0128】 表3から明らかなように、本化合物とブリモニジンの併用投与群の点眼後2時間の眼圧下降幅(対コントロール群平均値)は、薬剤単独投与群、すなわち、本化合物投与群およびブリモニジン投与群の点眼後2時間の眼圧下降幅(対コントロール群平均値)よりも大きくかつ、各薬剤単独投与によりひきおこされる点眼後2時間の眼圧下降幅(対コントロール群平均値)を合算した和よりも大きくなり、本化合物とブリモニジンの併用効果は相乗的なものであった。 【0129】 以上から、本化合物とα2受容体作動薬を組み合わせることにより、相乗的な眼圧下降効果が得られることがわかった。 【0130】 [実施例4] 本化合物と炭酸脱水酵素阻害剤との組み合わせの有用性を調べるため、実験動物(正常眼圧サル)に本化合物とブリンゾラミドを併用投与したときの眼圧下降効果を検討した。 ・・・ 【0137】 (投与方法および測定方法) 〔1〕本化合物とブリンゾラミドとの併用投与 (1)0.4%塩酸オキシブプロカイン点眼液(商品名:ベノキシール(登録商標)点眼液0.4%)を実験動物の両眼に一滴点眼し局所麻酔をした。 【0138】 (2)被験化合物溶液投与直前に眼圧を測定し、初期眼圧とした。 【0139】 (3)本化合物溶液を実験動物の片眼に点眼した(対側眼は無処置)。少し時間をおいてブリンゾラミド懸濁液を同一眼に点眼した。 【0140】 (4)本化合物溶液点眼後2時間、4時間、6時間および8時間に0.4%塩酸オキシブプロカイン点眼液を一滴ずつ眼圧測定眼に点眼し局所麻酔後、眼圧を測定した。また、眼圧は各3回測定し、その平均値を結果に示す。 【0141】 〔2〕本化合物の単独投与 ブリンゾラミド懸濁液を生理食塩水に代え、他は上記併用投与試験と同じ方法で試験をした。 【0142】 〔3〕ブリンゾラミドの単独投与 本化合物溶液を基剤に代え、他は上記併用投与試験と同じ方法で試験をした。 【0143】 〔4〕コントロール 本化合物溶液を基剤に、ブリンゾラミド溶液を生理食塩水に代え、他は上記併用投与試験と同じ方法で試験をした。 【0144】 (結果および考察) 各投与群の点眼後4時間の眼圧下降幅(対コントロール群平均値)を表4に示す。眼圧下降幅(対コントロール群平均値)は、コントロール群の初期眼圧値からの眼圧値変動幅(ΔIOP)の平均値と各個体のΔIOPの差を各群5もしくは6頭の平均値で示す。 【0145】 【表4】 [図:0001421793000005.jpg] 【0146】 表4から明らかなように、本化合物とブリンゾラミドの併用投与群の点眼後4時間の眼圧下降幅(対コントロール群平均値)は、薬剤単独投与群、すなわち、本化合物投与群およびブリンゾラミド投与群の点眼後4時間の眼圧下降幅(対コントロール群平均値)よりも大きかった。 【0147】 以上から、本化合物と炭酸脱水酵素阻害剤を組み合わせることにより、強力な眼圧下降効果が得られることが分かった。」(【0076】~【0147】) 2 引用文献2 引用文献2には、以下の事項が記載されている。なお、引用文献2は外国語で記載された文献のため、表を除いて当審による日本語訳で示す。 (摘記2a)「眼疾患におけるROCK阻害剤」(280頁「標題」) (摘記2b)「Rhoキナーゼ(ROCK)はアクチン細胞骨格の再編成に重要な役割を果たしており、平滑筋の収縮から神経突起の伸展まで、細胞運動の幅広い側面に関与している。最初に市販されたROCK阻害剤であるファスジルは、1995年以来、日本で脳血管痙攣の治療に安全に使用されてきた。その後数十年にわたり、ROCK阻害剤は、中枢神経系障害から心血管疾患まで、多くの病態に潜在的な治療薬または基礎となる(病態)メカニズムの理解を助ける実験ツールとして適用されてきた。2014年には、ファスジル誘導体のリパスジルについて緑内障及び高眼圧症の臨床使用が承認された。ROCKキナーゼは眼組織に広く発現しているため、角膜機能障害、緑内障、白内障、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性、網膜剥離など、多くの眼疾患の病理に関係していると考えられている。本論文は、眼疾患分野におけるROCK阻害剤の最新の状況と応用について概要を説明することを目的とする。」(280頁「要約」) (摘記2c)「 [図:0001421793000006.jpg] 」(281頁「表1」) (摘記2d)「構造の小さな変更は顕著な変化をもたらす。例えば、ファスジル誘導体リパスジルは、無細胞アッセイでROCKIに対する有効濃度の50%(IC50(Ki)=0.051μM)[6]で、同じ有効濃度のY27632(IC50(Ki)=0.14μM)やファスジル(IC50(Ki)=0.33μM)[5]などの他のROCK阻害剤よりも少なくとも2~6倍高い結合親和性を示す。・・・ファスジル由来のリパスジルは、局所点眼薬として安全かつ安定であることが証明されており、前述のように、緑内障の治療薬として承認されている[2]。」(282頁1~16行) (摘記2e)「ROCK阻害剤の臨床応用の現状 リパスジルは日本では緑内障及び高眼圧症の第二選択薬として販売されていることから[2]、抗緑内障薬をベースとするROCK阻害剤の最近の臨床試験は有望である可能性がある。」(288頁13~16行) (摘記2f)「他のROCK阻害剤を使用した進行中の臨床試験の中で最も有望なのは、Aerie Pharmaceuticals[13]によって開発されたAR13324(netarsudil又はロプレッサとしても知られる)である。AR13324は、いわゆるデュアルアクション薬である。ROCK阻害剤部分は線維柱帯を通る流出を増加させることによってIOPを低下させ、ノルエピネフリントランスポーター(NET)阻害剤は房水の産生を減少させる。動物モデルから、1日1回の0.04%AR13324のIOP低下効果は有効であると認定された[60、46]。しかし、最初のヒト研究では、0.02%濃度のAR13324が最も強力であると思われ、IOP低下の観点から最良の用量反応曲線を生み出した[61]。18人の健康なボランティアが、薬剤の眼及び全身の安全性を評価するための第I相臨床試験に参加した。1日1回の0.02%AR13324塗布を8日間行ったが、全身的な副作用はなかった。さらに、治療終了後24時間以上眼圧下降作用が維持されたというユニークな結果となった。」(289頁15~25行) 3 引用文献3 引用文献3には、以下の事項が記載されている。 (摘記3a)「グラナテック点眼液0.4%(以下本剤)は,興和株式会社によって日本で開発された,世界初のROCK阻害点眼剤である. ・・・ 本剤の有効成分であるリパスジル塩酸塩水和物は,ROCKに対して選択的な阻害作用を有する化合物である. ・・・ [図:0001421793000007.jpg] 」(240頁左欄16行~最下行) (摘記3b)「臨床成績 ・・・ 長期試験(52週間)においても,単独点眼およびPG関連薬,β遮断薬,配合剤(PG関連薬+β遮断薬)への追加点眼において安定した眼圧下降作用が認められた.」(240頁右欄1行~12行) 4 引用文献4 引用文献4には、以下の事項が記載されている。なお、引用文献4は外国語で記載された文献のため、当審による日本語訳で示す。 (摘記4a)「rhopressa(netarsudil眼科溶液)0.02%」(1頁左上標題) (摘記4b)「11. 説明 Netarsudilは、Rhoキナーゼ阻害剤である。化学名は、(S)-4-(3-アミノ-1-(イソキノリン-6-イルアミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)ベンジル 2,4-ジメチルベンゾエート ジメシレートである。・・・化学構造は、 [図:0001421793000008.jpg] である。・・・」(1頁右欄「11.説明」の項) 5 参考文献1 令和6年12月3日に提出された回答書(以下、単に「回答書」という。)において提示され、本願優先日前に頒布された刊行物である参考文献1(PLoS One. 2016 Jul 6;11(7))には、以下の事項が記載されている。なお、参考文献1は外国語で記載された文献のため、図面を除き当審による日本語訳で示す。 (摘記5a)「要約 目的 眼圧(IOP)低下効果、眼薬物動態、眼表面毒性を測定し、固定用量タフルプロスト/チモロール配合剤(Taf/T-FDC)と固定用量ラタノプロスト/チモロール配合剤(Lat/T-FDC)の安全性と有効性を比較する。 方法 Taf/T-FDC及びLat/T-FDCの眼圧正常サルにおけるIOP低下効果を、試験Aでは点眼後4及び8時間、試験Bでは点眼後12、14、16、18時間、試験Cでは点眼後24、26、28、30時間で評価した。眼への薬物浸透は、Sprague DawleyラットにTaf/T-FDC又はLat/T-FDCを1回点眼した後、液体クロマトグラフィーとタンデム質量分析法を組み合わせて、チモロール、タフルプロスト酸(タフルプロストの活性代謝形態)、ラタノプロスト酸(ラタノプロストの活性代謝形態)の濃度を測定することで評価した。SV40形質転換ヒト角膜上皮細胞をTaf/T-FDC又はLat/T-FDCに1~30分間曝露した後の細胞毒性を、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウムアッセイを使用して分析した。各FDCの未希釈溶液と10倍希釈溶液を評価した。 結果 Taf/T-FDCの眼圧降下効果は、点眼後4~8時間ではLat/T-FDCとほぼ同等であった。Taf/T-FDCとLat/T-FDCの眼圧降下効果のピークは点眼後8時間で観察され、両者に差はなかった。両者の差は点眼後24~30時間で観察され、点眼後24~30時間ではTaf/T-FDCがLat/T-FDCよりも有意に高い眼圧降下効果を示した。Taf/T-FDCの眼圧降下効果は点眼後30時間まで持続したが、Lat/T-FDCは点眼後28時間でその効果はほぼ消失した。」(1/13頁~2/13頁「要約」) (摘記5b)「 [図:0001421793000009.jpg] 図2.正常眼圧サルにおけるTaf/T-FDC及びLat/T-FDCの局所点眼による眼圧(IOP)への影響。生理食塩水(20μL)、Taf/T-FDC(20μL)、又はLat/T-FDC(20μL)を右眼に局所点眼し、左眼は未処置のままとした。IOPは空気圧式眼圧計を使用して測定した。IOPの変化は、0時間時点の点眼前IOP値との差として計算した。・・・」(6/13頁「図2」) 6 参考文献2 回答書において提示された参考文献2(Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 2018 Jan;59(1):145-153)には、以下の事項が記載されている。なお、参考文献2は外国語で記載された文献のため、図面を除き当審による日本語訳で示す。また、参考文献2は、本願優先日前に頒布された刊行物ではない。 (摘記6a)「目的 本研究の目的は、プロスタグランジンF受容体(FP)作動薬などの他のプロスタノイド受容体作動薬よりも優れた眼圧(IOP)制御と副作用の少ない新しい眼圧(IOP)低下剤として開発された化合物であるオミデネパグイソプロピル(OMDI)の薬理学的特性を調査することである。」(145頁「目的」) (摘記6b)「 [図:0001421793000010.jpg] 図3.ウサギにおけるOMDI投与後のIOP変化 0.001%、0.01%、0.03%のOMDI、又は溶媒を、正常眼圧のウサギの片方の目に局所投与した。薬剤投与後のIOP変化をベースライン値と比較した。データは6つの目の平均6SEを表す。・・・」(149頁「図3」) 7 参考文献3 回答書において提示され、本願優先日前に頒布された刊行物である参考文献3(J. Ocul. Pharmacol. Ther. 2015 Nov;31(9):518-524)には、以下の事項が記載されている。なお、参考文献3は外国語で記載された文献のため、図面を除き当審による日本語訳で示す。 (摘記7a)「要約 目的:緑内障に対する0.0015%タフルプロストと0.5%チモロールの固定用量配合剤(TT-FDC)の有用性を評価するために、TT-FDCの眼圧降下作用及び房水中のタフルプロストとチモロールの濃度を適切な投与間隔の有無における0.0015%タフルプロストと0.5%チモロールの同時投与の場合と比較する。」 (摘記7b)「 [図:0001421793000011.jpg] 図1. 正常眼圧サルにおけるチモロール、タフルプロスト、0.0015%タフルプロストと0.5%チモロールの固定用量配合剤(TT-FDC)の局所投与による眼圧低下効果(IOP)の比較。・・・IOPの変化は、点眼前0時間時点でのIOP値との差により算出。・・・」(520頁「図1」) 8 参考文献4 本願優先日前の技術常識を示す文献である参考文献4(特表2017-534658号公報)には、以下の事項が記載されている。 (摘記8a)「【技術分野】 【0001】 本発明は、一酸化窒素放出性イソマンニド誘導体とプロスタグランジンF2α類似体とを含む組成物に関する。より具体的には、本発明は、緑内障に又は他の眼疾患に関連する眼内圧を低下させるための組成物を開示する。」(【0001】) (摘記8b)「【発明が解決しようとする課題】 【0012】 予期しないことに、一酸化窒素放出性イソマンニド誘導体とプロスタグランジンF2α類似体とを組み合わせての投与は、同じ用量で2つの化合物の両方を別々に投与するのに対して、より強力な眼内圧の低下及びより長時間の眼内圧低下を発揮することが見出された。」(【0012】) (摘記8c)「【実施例】 【0061】 実施例1 正常眼圧のNew Zealand White(NZW)ウサギにおける眼内圧(IOP)低下活性 化合物(12)(0.1%)とトラボプロスト(0.004%)との組み合わせの眼内圧(IOP)低下活性を正常眼圧のウサギで評価した。 体重1.8~2.0Kgの成体NZWウサギ(オス)を実験に使用した。 局所適用前(基準)及びその後の様々な時点(30、60、120、180、240及び300分)において、ニューマトノメーター30クラシック(pneumatonometer 30 CLASSIC)(商標)を用いてIOPを測定した。化合物(12)(0.1%)又はビヒクル(上記と同じ)投与の5分前に、トラボプロスト(0.004%)又はビヒクル(PBS(pH6.0)中に5%クレモフォールEL;0.3% DMSO;0.2mg/ml BAC)を結膜ポケットに点眼剤として局所投与した。眼を様々な処置群に無作為に割り当てた。眼圧測定の各セットの直前に、0.4%オキシブプロカイン塩酸塩(Novesine、Sandoz)1滴を各眼に滴下した。 当該組み合わせの、化合物(12)の、及びトラボプロストの、眼圧降下作用を、ビヒクルに対する、及び基準でのIOPに対する、IOP変化(局所投与後30、60、120及び300分)として表す表に、結果を報告する(平均±標準誤差)。 化合物(12)(0.1%)又はトラボプロスト(0.004%)のいずれかの単独投与と比較して、化合物(12)(0.1%)とトラボプロスト(0.004%)との組み合わせは、IOP低下活性の増加をもたらす。更に、組み合わせの効果は、化合物(12)(0.1%)単独又はトラボプロスト(0.004%)単独のいずれよりも著しく長く持続する。 上述の結果より、式(I)で示される一酸化窒素放出性イソマンニド誘導体とプロスタグランジンF2α類似体とを組み合わせることにより、眼内圧低下作用の増強と眼内圧低下作用時間の改善が得られ得ることが判明した。眼内圧低下作用は、特により長時間の場合に、単なる相加よりも強力である。 【0062】 【表1】 [図:0001421793000012.jpg] 」(【0061】~【0062】) 第5 当審の判断 1 引用文献1に記載された発明 引用文献1には、「(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピルと1または複数種の他の緑内障若しくは高眼圧症の予防または治療薬(ただしタフルプロストを除く)とを組み合わせた緑内障若しくは高眼圧症の予防または治療剤」が記載され、上記「他の緑内障若しくは高眼圧症の予防または治療薬」が、「非選択性交感神経作動薬、α2受容体作動薬、α1受容体遮断薬、β受容体遮断薬、副交感神経作動薬、炭酸脱水酵素阻害剤、プロスタグランジン類及びRhoキナーゼ阻害剤からなる群より選択される1または複数種の予防または治療剤である」ものが記載されている(摘記1aの【請求項1】及び【請求項3】)。 そうすると、引用文献1には、以下の発明が記載されているといえる(以下「引用発明」という。)。 <引用発明> 「(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピルと1または複数種の非選択性交感神経作動薬、α2受容体作動薬、α1受容体遮断薬、β受容体遮断薬、副交感神経作動薬、炭酸脱水酵素阻害剤、プロスタグランジン類及びRhoキナーゼ阻害剤からなる群より選択され る他の緑内障若しくは高眼圧症の予防または治療薬(ただしタフルプロストを除く)とを組み合わせた緑内障若しくは高眼圧症の予防または治療剤。」 2 本願発明と引用発明の対比 (1)本願発明と引用発明は、「緑内障若しくは高眼圧症の予防又は治療剤」である点で一致する。 (2)本願発明の「オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩」について、本願明細書の【0025】には、好ましくはオミデネパグのイソプロピルエステルが挙げられると記載され、オミデネパグのイソプロピルエステルは、「(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピル」ともいうと記載されている。 すなわち、引用発明の「(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピル」は、「オミデネパグのイソプロピルエステル」であり、本願発明における「オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩」に相当する。 (3)本願明細書の【0034】、【0042】には、「リパスジル」と「Netarsudil」は、いずれも緑内障及び高眼圧症の治療薬として販売されていると記載されているから、本願発明の「リパスジル、Netarsudil及びこれらの塩からなる群より選択される1又は複数のRhoキナーゼ阻害剤」は、「緑内障及び高眼圧症の治療薬」である。 そうすると、引用発明の「1または複数種の非選択性交感神経作動薬、α2受容体作動薬、α1受容体遮断薬、β受容体遮断薬、副交感神経作動薬、炭酸脱水酵素阻害剤、プロスタグランジン類及びRhoキナーゼ阻害剤からなる群より選択される他の緑内障若しくは高眼圧症の予防または治療薬(ただしタフルプロストを除く)とを組み合わせた」ものは、本願発明の「リパスジル、Netarsudil及びこれらの塩からなる群より選択される1又は複数のRhoキナーゼ阻害剤が組み合わせて投与される」ものとは、「他の緑内障若しくは高眼圧症の治療薬が組み合わせて投与される」ものである限りにおいて一致する。 (4)以上によれば、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩と、他の緑内障若しくは高眼圧症の治療薬が組み合わされて投与されることを特徴とする緑内障若しくは高眼圧症の予防又は治療剤。」 <相違点> 組み合わせて投与される他の緑内障若しくは高眼圧症の治療薬が、本願発明は、「リパスジル、Netarsudil及びこれらの塩からなる群より選択される1又は複数のRhoキナーゼ阻害剤」であるのに対し、引用発明は、「1または複数種の非選択性交感神経作動薬、α2受容体作動薬、α1受容体遮断薬、β受容体遮断薬、副交感神経作動薬、炭酸脱水酵素阻害剤、プロスタグランジン類及びRhoキナーゼ阻害剤からなる群より選択される他の緑内障若しくは高眼圧症の予防または治療薬(ただしタフルプロストを除く)」である点。 3 相違点の判断 (1)引用文献1には、オミデネパグと「組み合わせて投与される他の緑内障若しくは高眼圧症の治療薬」として、Rhoキナーゼ阻害剤が記載され、中でも特に好ましいRhoキナーゼ阻害剤の一つとして「1-(5-イソキノリンスルホニル)ホモピペラジン」が記載されている(摘記1aの請求項11、摘記1g)。この「1-(5-イソキノリンスルホニル)ホモピペラジン」は、引用文献2の表1(摘記2c)の一番上に記載された化学構造式と名称からみて、ファスジル(Fasudil)である。 したがって、引用文献1には、「組み合わせて投与される他の緑内障若しくは高眼圧症の治療薬」のRhoキナーゼ阻害剤としてファスジルが記載されているといえる。 (2)一方、引用文献2には、本願優先日前の眼疾患におけるROCK阻害剤の概要が記載され(摘記2a、2b)、最初に市販されたRhoキナーゼ(ROCK)阻害剤はファスジルであるが、その後、ファスジルの誘導体であるリパスジルが緑内障及び高眼圧症の治療薬として承認されていること(摘記2b)、リパスジルは、ファスジル等の他のRhoキナーゼ阻害剤よりも少なくとも2~6倍高い結合親和性を示し、緑内障や高眼圧症の第二選択薬として販売されていることが記載されている(摘記2d、2e、摘記2cの表1における上から2番目の化合物)。 また、引用文献2には、他のROCK阻害剤の中で最も有望なのはnetarsudil(AR13324又はロプレッサとしても知られる)であること、netarsudilは、治療終了後24時間以上眼圧下降作用が維持されることが記載されている(摘記2f、摘記2cの表1における上から5番目の化合物)。上記netarsudilは、別名AR13324であるところ(摘記2f)、AR13324は緑内障の臨床試験のフェーズIIIであることも記載されている(摘記2cの表1における5番目の化合物)。そして、netarsudilがNetarsudilと同義であることは明らかである。 以上によれば、引用文献2の記載からは、ファスジルは最初に市販されたRhoキナーゼ阻害剤であるが、本願優先日前には、ファスジルの誘導体であるリパスジルが、緑内障や高眼圧症の第二選択薬として既に販売されており、Netarsudilは、他のRhoキナーゼ阻害剤の中で最も有望であり、緑内障の臨床試験がフェーズIIIまで進行し、眼圧下降作用が24時間以上維持される治療薬であることが理解できる。 (3)上記(1)、(2)を踏まえて、相違点について検討する。 引用文献1には、引用発明がオミデネパグを他の緑内障若しくは高眼圧症の治療薬と組み合わせることに特徴があり(摘記1f)、有用な組み合わせを見出すことは非常に興味のある課題であることが記載されている(摘記1cの【0007】)。 そうすると、引用発明の「組み合わせて投与される他の緑内障若しくは高眼圧症の治療薬」について、より有用な組み合わせを見出すことを目的として、引用文献1に記載されたファスジルの誘導体であり、本願優先日前に緑内障や高眼圧症の第二選択薬として既に販売されていたリパスジルや、他のRhoキナーゼ阻害剤の中で最も有望であり、緑内障の臨床試験がフェーズIIIまで進行し、眼圧下降作用が24時間以上維持されるNetarsudilを選択すること、すなわち、引用発明において、「組み合わせて投与される他の緑内障若しくは高眼圧症の治療薬」を「リパスジル、Netarsudil及びこれらの塩からなる群より選択される1又は複数のRhoキナーゼ阻害剤」とすることは、当業者が容易に行うことである。 4 本願発明の効果について (1)本願明細書には、本願発明の効果について以下のとおり記載されている。 「【発明の効果】 【0020】 オミデネパグとリパスジル又はNetarsudilとを組み合わせて眼に投与することで、眼圧下降作用が増強する。したがって、本発明は緑内障若しくは高眼圧症の予防又は治療剤として有用である。さらに、本発明によれば、医薬品として十分な安全性が確保される。 ・・・ 【0094】 [薬理試験] [実施例1] オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩とリパスジルとの組み合わせの有用性を調べるため、実験動物(正常眼圧サル)にオミデネパグ イソプロピルとリパスジルを併用投与したときの眼圧下降効果を検討した。 ・・・ 【0108】 (結果及び考察) 各投与群の経時的な眼圧値の変化量を図1及び表1に示す。眼圧値の変化量は、各個体の各測定時点について投与前の値(0時間)からの差を各群ともに7頭の平均値±SEMで示す。ここで、有意性はDunnett-Hsu検定により評価し、コントロール群に対する有意水準は、*:p<0.05、**:p<0.01、***:p<0.001で示し、オミデネパグ イソプロピル投与群に対する有意水準は、††:p<0.01、†††:p<0.001で示し、リパスジル投与群に対する有意水準は、♯:p<0.05、♯♯:p<0.01、♯♯♯:p<0.001で示した。 【0109】 【表1】 [図:0001421793000013.jpg] 【0110】 図1及び表1から明らかなように、オミデネパグ イソプロピルとリパスジルの併用投与群は、薬剤単独投与群、すなわち、オミデネパグ イソプロピル投与群およびリパスジル投与群よりも優れた眼圧下降作用およびその作用の持続効果を示した。全ての測定時間において、オミデネパグ イソプロピルとリパスジルの併用投与群の眼圧値の変化量は、オミデネパグ イソプロピル投与群およびリパスジル投与群の眼圧値の変化量の和よりも大きく、眼圧下降作用の相乗的な効果が確認された。 【0111】 以上から、オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩とリパスジルを組み合わせることにより、相乗的な眼圧下降作用およびその作用の持続効果が得られることがわかった。 【0112】 [実施例2] オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩とNetarsudilとの組み合わせの有用性を調べるため、実験動物(正常眼圧サル)にオミデネパグ イソプロピルとNetarsudilを併用投与したときの眼圧下降効果を検討した。 ・・・ 【0125】 (結果及び考察) 各投与群の経時的な眼圧値の変化量を図2及び表2に示す。眼圧値の変化量は、各個体の各測定時点について投与前の値(0時間)からの差を各群ともに8頭の平均値±SEMで示す。ここで、有意性はDunnett-Hsu検定により評価し、コントロール群に対する有意水準は、*:p<0.05、**:p<0.01、***:p<0.001で示し、オミデネパグ イソプロピル投与群に対する有意水準は、†:p<0.05、††:p<0.01、†††:p<0.001で示し、Netarsudil投与群に対する有意水準は、♯♯:p<0.01、♯♯♯:p<0.001で示した。 【0126】 【表2】 [図:0001421793000014.jpg] 【0127】 図2及び表2から明らかなように、オミデネパグ イソプロピルとNetarsudilの併用投与群は、薬剤単独投与群、すなわち、オミデネパグ イソプロピル投与群およびNetarsudil投与群よりも優れた眼圧下降作用およびその作用の持続効果を示した。全ての測定時間において、オミデネパグ イソプロピルとNetarsudilの併用投与群の眼圧値の変化量は、オミデネパグ イソプロピル投与群およびNetarsudil投与群の眼圧値の変化量の和よりも大きく、眼圧下降作用の相乗的な効果が確認された。 【0128】 以上から、オミデネパグ若しくはそのエステル又はそれらの塩とNetarsudilを組み合わせることにより、相乗的な眼圧下降作用およびその作用の持続効果が得られることがわかった。」 「【図1】 [図:0001421793000015.jpg] 【図2】 [図:0001421793000016.jpg] 」 (2)上記(1)によれば、本願明細書には、本願発明は、オミデネパグとリパスジル又はNetarsudilを組み合わせて投与することで、眼圧下降作用が増強するとの効果を奏するものであり(【0020】)、併用投与群の眼圧値の変化量は、単独投与群の眼圧値の変化量の和よりも大きく相乗効果を奏すると記載されている(【0110】、【0127】)。 しかしながら、引用文献1には、(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピル、すなわち、オミデネパグを他の緑内障若しくは高眼圧症の治療剤と組み合わせることで各薬剤の単独使用時と比較して眼圧下降作用が増強すると記載され(摘記1cの【0008】、1d)、オミデネパグと他の薬剤の併用群の眼圧下降幅は、薬剤単独投与群の眼圧下降幅を合算した和よりも大きく、併用効果が相乗的であったと記載されているから(摘記1iの【0092】、【0110】、【0128】)、本願発明の上記効果は、引用文献1の記載から予測し得る効果である。 (3)そこで、さらに進んで、本願明細書に記載された具体的なデータについて検討する。 本願明細書の【表1】には、オミデネパグイソプロピルとリパスジルの併用投与群と、各薬剤単独投与群の眼圧下降値が記載されている。【表1】に記載された数値は、コントロールを考慮していない数値であるが、例えば、引用文献1においても、併用投与群の眼圧下降幅と各単独投与群の眼圧下降幅の和を比較するにあたり対コントロール値を用いているように(摘記1iの【0090】~【0092】)、併用投与群の眼圧下降幅と単独投与群の眼圧下降幅の和は、対コントロール値で比較すべきである。 そうすると、例えば、2時間後は、コントロールが0.4であるから、オミデネパグイソプロピル単独投与の眼圧下降値は0.0ではなく、対コントロール値の-0.4で比較すべきである。同様に、2時間後のリパスジル単独投与の眼圧下降値は、-2.7からコントロールの0.4を除いた-3.1であり、併用投与の眼圧下降値は、-2.8からコントロールの0.4を除いた-3.2である。そして、単独投与の和は、(-0.4)+(-3.1)=-3.5である。 してみると、表1の数値によれば、2時間後の併用投与群は、-2.8であり、単独投与群の和は、0.0+(-2.7)=-2.7であって、単独投与群の和よりも併用投与群の方が眼圧下降値は大きいことになるものの(下記表A参照)、対コントロール値で比較すると、併用投与群の眼圧下降値は、-3.2であり、単独投与群の眼圧下降値の和は、-3.5であって、単独投与群の和(-3.5)よりも併用投与群(-3.2)の方が眼圧下降値は大きいということはない(下記表B参照)。 これらの数値を表にまとめると、以下のとおりとなる。 <表A> 本願明細書の【表1】の数値((1)~(4))に、単独投与群の和((5))と併用投与群と単独投与群の和の差((6))を追記。(注:当審作成) [図:0001421793000017.jpg] <表B> 表Aの数値の対コントロール値。(注:当審作成) [図:0001421793000018.jpg] 本願明細書の【0110】には、全ての測定時間において、併用投与群の眼圧値の変化量が、単独投与群の眼圧値の変化量の和よりも大きく、眼圧下降作用の相乗的な効果が確認されたと記載されているが、コントロールを考慮すると、上記のとおり、2時間後の併用投与群の眼圧値の変化量は、単独投与群の眼圧値の変化量の和よりも大きいということはない。 したがって、本願発明は、全ての測定時間において、併用投与群の眼圧下降値が、単独投与群の眼圧下降値の和よりも大きいということはなく、それを以て、本願発明が、眼圧下降作用の相乗的な効果を奏するということはできない。 (4)そして、点眼後4時間後以降の併用投与群の眼圧下降値は、単独投与群の眼圧下降値の和よりも大きいものの、その差は、-0.6、-0.9、-0.1、-0.4である(表Bの(11))。 一方、コントロールの値は、0.4~-0.2であり(表Aの(1))、0.6の幅で眼圧値が変動している。治療薬を投与しないコントロールであっても0.6の幅で眼圧値が変化するのであれば、-0.6、-0.9、-0.1、-0.4程度の差は、治療薬を投与しなくとも生じ得る差にすぎず、併用投与によりもたらされる顕著な効果であると評価することはできない。 そのうえ、オミデネパグイソプロピル単独投与の値は、本願明細書の【表1】の他、【表2】にも記載されているところ、その数値は、-0.9、-2.5、-2.5、-2.3、-0.3であって、【表1】に記載された、0.0、-1.2、-0.7、-0.6、-0.1とは、-1.0以上異なる結果となっている。同じオミデネパグイソプロピルを投与しても、眼圧が-1.0以上異なることがあるのであれば、-0.6、-0.9、-0.1、-0.4程度の差によって、併用投与によりもたらされる顕著な効果であると評価することはできない。 また、対コントロール値ではなく、本願明細書の【表1】に記載された数値で検討しても、併用投与と単独投与の和との差は、-0.1、-0.5、-0.7、-0.5、-0.7であり(表Aの(6))、この程度の差によって、併用投与によりもたらされる顕著な効果であると評価することもできない。 以上によれば、オミデネパグイソプロピルとリパスジルを併用することによって、眼圧下降作用が予測し得ないほど顕著に増強されるとはいえない。 (5)次に、オミデネパグイソプロピルとNetarsudilの併用による効果について検討する。 本願明細書の【表2】には、オミデネパグイソプロピルとNetarsudilの併用投与群と、各薬剤単独投与群の眼圧下降値が記載されている。上記(3)と同様に、【表2】の数値に、単独投与群の和と併用投与群との差を追記し、【表2】に記載された数値の対コントロール値を表にまとめると以下のとおりとなる。 <表C> 本願明細書の【表2】の数値((1)~(4))に、単独投与群の和((5))と併用投与群と単独投与群の和の差((6))を追記。(注:当審作成) [図:0001421793000019.jpg] <表D> 表Cの数値の対コントロール値。(注:当審作成) [図:0001421793000020.jpg] リパスジルと同様、Netarsudilとの併用投与群も、単独投与群の眼圧下降値の和よりも眼圧下降値が大きいとしても、その差は、-0.1、-0.3、-0.4、-0.7、-0.5にすぎず(表Dの(11))、この程度の差によって、併用投与により予測し得ないほど優れた増強作用を奏すると評価することはできない。 また、対コントロール値ではなく、本願明細書の【表2】に記載された数値で検討しても、併用投与群と単独投与群の和との差は、-0.4、-0.4、-0.5、-0.8、-0.3であり(表Cの(6))、この程度の差によって、併用投与によりもたらされる顕著な効果であると評価することもできない。 したがって、オミデネパグイソプロピルとNetarsudilを併用することによって、眼圧下降作用が予測し得ないほど顕著に増強されるとはいえない。 (6)一方、引用文献1には、オミデネパグイソプロピルと他の治療薬を併用した具体例として、単独投与群の和が1.6+2.3=3.9に対して、併用投与群が6.4である例(摘記1iの【0091】【表1】)、すなわち、併用投与により単独投与群の和よりも6.4-3.9=2.5眼圧が低下した例が記載され、また、単独投与群の和が2.6+1.8=4.4に対して、併用投与群が5.3である例(摘記1iの【0127】【表3】)、すなわち、併用投与により単独投与群の和よりも5.3-4.4=0.9眼圧が低下した例が記載されている。 そうすると、引用文献1における併用投与群と単独投与群の和の差は、2.5又は0.9であって、本願発明における併用投与と単独投与の和の差(表Aの(6)、表Bの(11)、表Cの(6)、表Dの(11))よりもむしろ優れた効果を奏する例が引用文献1には記載されている。 したがって、本願発明における併用投与の効果は、引用文献1に記載された併用投与の効果より優れたものではない。 (7)以上によれば、上記(2)のとおり、引用文献1には、オミデネパグを他の緑内障若しくは高眼圧症の治療剤と組み合わせることで各薬剤の単独使用時と比較して眼圧下降作用が増強すること、併用投与群の眼圧下降幅は、単独投与群の眼圧下降幅を合算した和よりも大きく、併用効果が相乗的であったことが記載され、上記(3)のとおり、本願発明は、全ての測定時間で併用投与群の眼圧下降値が単独投与群の眼圧下降値の和よりも大きいということはできず、上記(4)、(5)のとおり、単独投与群の和よりも大きい時間があっても、その差は、治療薬を投与しなくとも(コントロール)生じ得る差や同じオミデネパグイソプロピルを投与しても生じ得る差にすぎないから、予測し得ないような顕著な効果と評価することはできず、上記(6)のとおり、引用文献1には、併用投与により、単独投与の和よりも2.5又は0.9眼圧が低下した例が記載されているから、本願発明の効果が、引用文献1に記載された効果よりも優れているということもない。 そして、引用文献2には、リパスジルは、他のROCK阻害剤よりも2~6倍高い結合親和性を示すこと(摘記2d)、Netarsudilは24時間以上眼圧下降作用が維持されることが記載され(摘記2f)、リパスジルは52週間の長期試験でも安定した眼圧下降作用が認められることも知られていたから(摘記3b)、リパスジル又はNetarsudilと併用することで、眼圧下降作用が増強され24時間以上維持されることは、当業者が予測し得る効果である。 したがって、本願発明は、引用文献1、2の記載から予測し得ないほど優れた効果を奏するものではない。 5 小括 以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 請求人の主張について 1 請求人の主張 請求人は、令和6年12月3日提出の意見書(以下、単に「意見書」という。)及び回答書において、概略以下の点を挙げて、本願発明は、引用文献1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないと主張している。 (主張1)「引用文献1には、点眼後4時間の眼圧下降効果など、点眼後の1時点における効果のみが記載され、点眼後24時間にわたり併用による相乗効果が発揮されることは記載されていない。また、引用文献1において、オミデネパグイソプロピルとチモロールなどとの具体的な相乗効果が確認されていたとしても、リパスジル又はNetarsudilとの組合せがどのような眼圧下降作用を示すかは不明である。」(意見書2頁10~16行) (主張2)「眼圧下降作用を評価する場合に対コントロール値ではなく得られた測定値(ベースラインからの変化)で評価することは、参考文献1~3に記載されるとおり通常の方法である。一つの測定点のみ(ピンポイント)での比較であればともかく、経時的な変化を追う際に、各時点のTime matchコントロールとの比較をするのは一般的ではない。その理由は、以下の(i)、(ii)のとおりである。 (i)眼圧は日内変動もあり、コントロール群も変動するので、眼圧変動パターンを捉えるうえでコントロール群の動きは重要である(そのためにコントロールを測定している)。コントロール群の動きが見えなくなる「差分を取る対コントロール値」の比較は、経時的な変化を見る場合は一般的では無い。 (ii)サルを覚醒下で眼圧測定しているが、サルは非常に繊細な動物であり、通常の日内変動に加え、ストレスによる影響もあり、コントロール群の動きを把握していないと、試験の状態が測れない。サルの状態が悪く(ストレスを受けた場合など)、例えば4時間値だけコントロール群が異常に眼圧下降/上昇など急変動していた場合、コントロール群の動きが見られないとそれを見逃す恐れがある。実施試験が適切に実施されたことを示す観点からもコントロール群との差分で比較する手法は採用していない。 また、仮に、対コントロール値を用いて比較したとしても、点眼後2時間において単独投与の和を上回らないのみであって、この立ち上がりが多少遅いことをもって本願の長期に渡る併用による相乗効果が否定されるものではない。」(意見書2頁17行~25行、回答書2頁8行~3頁8行) (主張3)「併用投与群の眼圧下降値が各単独投与群の眼圧下降値の和よりも大きい場合、たとえその差が小さくても相乗効果があると評価するのが技術常識である。 そもそも、薬物の投与量を増やしても、それと同じ割合で眼圧が下降するものではなく、例えば、参考文献2に示されているように、薬物の投与量を10倍に増やしても、眼圧が10倍下降するわけではない。また、参考文献3及び引用文献1の実施例4には、眼圧下降幅が単独投与の和に満たないことが示されている。 このように、作用機序の異なる緑内障治療薬を併用して眼圧下降作用が増強されることがあるとしても、その眼圧下降値は単独投与群の和ほどにはならないことが技術常識であり、単独投与群の和よりも大きければ、たとえその差が小さくても相乗効果があると評価される。」(意見書3頁6行~下から13行、回答書5頁8行~6頁最下行) (主張4)「引用文献2には、オミデネパグイソプロピルにも持続的な効果があることは記載も示唆もされていないから、オミデネパグイソプロピルとNetarsudilを併用した場合に、Netarsudilの効果により点眼後24時間に-0.8mmHgの眼圧下降値を示すことは予期できたとしても、それを上回る-1.4mmHgもの眼圧下降値を示すことは、当業者が予測し得るものではない。」(意見書3頁下から8行~4頁4行) 2 請求人の主張に対する判断 上記主張1~4について検討する。 (1)主張1について 引用文献1において、眼圧下降幅の具体的な数値が開示されているのは点眼後4時間後などの1時点のみであるが、点眼後2時間後、4時間後、6時間後、8時間後などの複数の時点での眼圧下降作用を測定しているから(摘記1iの【0086】、【0104】、【0122】、【0140】)、引用文献1においても、点眼後複数の時点での眼圧下降作用を確認して評価することは予定されているといえる。また、参考文献にも記載されているとおり(摘記5a、7b、8c)、緑内障の治療薬を評価するにあたり、点眼後複数の時点での眼圧下降作用を確認して評価することは通常行われていることである。 そして、上記第5の4(6)、(7)のとおり、引用文献1には、併用投与により単独投与群の和よりも2.5又は0.9眼圧が下降した例が具体的に記載され、引用文献2には、リパスジルは他のROCK阻害剤よりも2~6倍結合親和性が高いこと、Netarsudilは24時間後も眼圧下降作用が維持されることが記載されているから、引用発明における他の緑内障の治療薬としてリパスジル又はNetarsudilを用いることで、単独投与の和よりも眼圧下降作用が増強され24時間後も維持されることは、当業者の予測を超えるものではない。 したがって、上記主張1は、採用することができない。 (2)主張2について 参考文献1~3には、眼圧下降値について、対コントロール値ではなく0時間時点での点眼前の眼圧から下降した値が記載されているが、単独投与群の眼圧下降作用の和と併用投与群の眼圧下降作用を比較した例ではなく、0時間時点での点眼前の眼圧から下降した値であって、得られた測定値のままで評価した例でもないから(摘記5b、6b、7b)、参考文献1~3を考慮しても、単独投与群の眼圧下降作用の和と併用投与群の眼圧下降作用を比較するにあたり、対コントロール値ではなく得られた測定値のままで比較することが通常であると理解することはできない。 また、請求人による(i)、(ii)の説明によれば、コントロールを測定する必要があることは理解できるが、単独投与群の眼圧下降作用の和と併用投与群の眼圧下降作用を比較するにあたり、対コントロール値ではなく得られた測定値のまま比較することが通常であると理解することはできない。 加えて、参考文献4には、単独投与群と併用投与群の眼圧低下作用の経時的な変化を追う際に、ビヒクルに対する眼圧変化(IOP)、すなわち、対コントロール値を確認して評価していることが記載されているから(摘記8c)、経時的な変化を追う際に、対コントロール値で評価することが一般的ではないなどということはない。 そして、本願発明が、引用文献1の記載から予測し得ないほど優れた効果を奏するか否かを検討するにあたり、引用文献1では対コントロール値で効果を評価しているのであるから、同様に、本願発明でも対コントロール値を検討すると、全ての測定時間において、併用投与群の眼圧下降値が単独投与群の眼圧下降値の和よりも大きいとはいえないことは、上記第5の4(3)のとおりである。そして、対コントロール値ではなく、本願明細書の【表1】に記載された数値で検討したとしても、併用投与により顕著な効果がもたらされると評価できないことは、上記第5の4(4)、(5)のとおりであり、本願発明における併用投与の効果は、引用文献1に記載された併用投与の効果より優れたものではないことは、上記第5の4(6)のとおりである。 したがって、上記主張2は、採用することができない。 (3)主張3について 請求人は、意見書及び回答書において、併用投与群の眼圧下降値が各単独投与群の眼圧下降値の和よりも大きい場合、たとえその差が小さくても相乗効果があると評価するのが技術常識であると主張するが、技術常識であると理解できる客観的な根拠は何ら示されていない。 さらに、請求人は、併用投与により眼圧下降作用が増強されることがあるとしても、その眼圧下降値は単独投与群の和ほどにはならないことが技術常識であるとして、参考文献3及び引用文献1の実施例4を指摘するが、参考文献4には、併用投与により、単独投与群の和よりも眼圧が低下する例が記載されているから(摘記8c)、併用投与により単独投与群の和にはならないことが技術常識ということはなく、そして、上記第5の4(6)のとおり、そもそも引用文献1には、併用投与により、単独投与群の和よりも2.5又は0.9眼圧が低下した例が記載されているのであるから、本願発明が、引用文献1の記載から予測できないような優れた効果を奏するとはいえない。 したがって、上記主張3は、採用することができない。 (4)主張4について 請求人は、Netarsudilの効果により点眼後24時間に-0.8mmHgの眼圧下降値を示すことは予期できたとしても、オミデネパグと併用することで、それを上回る-1.4mmHgもの眼圧下降値を示すことは、当業者が予測し得るものではないと主張するが、この程度の差によって顕著な効果と評価できないことは、上記第5の4(5)のとおりであり、そもそも引用文献1には、オミデネパグを他の緑内障薬と併用することで眼圧下降作用が増強すると記載されていることは、上記第5の4(2)のとおりであるから、オミデネパグとNetarsudilを併用することによる効果は、引用文献1、2の記載から予測し得る程度のものである。 したがって、上記主張4は、採用することができない。 3 小括 よって、請求人の主張は、いずれも採用できない。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-009047

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