特許拒絶査定不服審判
2023-007283
遊技機
- 審判番号
- 2023-007283
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-166608
- 請求日
- 2023年05月02日
- 審決日
- 2024年03月26日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社サンセイアールアンドディ
- 【請求人代理人】弁理士法人上野特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 長崎 洋一
- 審判官 北川 創
- 審判官 長井 真一
- 分類
- P18 .561-Z (A63F) / P18 .575-Z (A63F) / P18 .113-Z (A63F) / P18 .121-Z (A63F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-166608「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 3月12日出願公開、特開2020- 36848〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2018-166608号(以下「本件出願」という。)は、平成30年9月6日を出願日とする特許出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和3年 9月 3日提出:手続補正書
令和4年 6月 3日付け:拒絶理由通知書
令和4年 8月 2日提出:意見書
令和4年 8月 2日提出:手続補正書
令和4年11月16日付け:拒絶理由通知書
令和4年12月28日提出:意見書
令和4年12月28日提出:手続補正書
令和5年 4月 5日付け:補正の却下の決定
令和5年 4月 5日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。送達日:令和5年4月11日)
令和5年 5月 2日提出:審判請求書
令和5年 5月 2日提出:手続補正書
第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年5月2日にした手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
第1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の全文について補正をするものであって、以下の1に示す本件補正前の(令和4年8月2日に提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1~3を、以下の2に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1~3へと補正するものである(下線は補正箇所を示す。)。
1 本件補正前の特許請求の範囲
「 【請求項1】
表示領域を有する表示装置と、
前記表示領域に背景画像および当該背景画像の手前に重ねて表示される特定画像を含む基準画像が表示された第一状態から、当該基準画像が前記表示領域に対して変位したかのように表示された状態であって前記第一状態における前記背景画像の外縁に相当する部分が枠画像として表示された第二状態に変化する画像変位演出を実行する演出実行手段と、
を備え、
前記画像変位演出は、前記第一状態における前記特定画像と前記背景画像の相対的な関係が、前記第二状態における前記特定画像と前記背景画像の相対的な関係と異なるものとなる演出であることを特徴とする遊技機。
ただし、前記画像変位演出において、前記表示領域における前記特定画像が表示される範囲は一定ではないものとする。
【請求項2】
前記第二状態においては、前記特定画像の少なくとも一部が前記枠画像よりも外側に飛び出て表示されることを特徴とする請求項1に記載の遊技機。
【請求項3】
前記特定画像は、当否判定結果を示す識別図柄であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の遊技機。」
(以下、本件補正前の請求項1~3に係る発明をそれぞれ本願発明1~3という。)
2 本件補正後の特許請求の範囲
「 【請求項1】
表示領域を有する表示装置と、
前記表示領域に背景画像および当該背景画像の手前に重ねて表示される特定画像を含む基準画像が表示された第一状態から、当該基準画像が前記表示領域に対して変位したかのように表示された状態であって前記第一状態における前記背景画像の外縁に相当する部分が枠画像として表示された第二状態に変化する画像変位演出を実行する演出実行手段と、
を備え、
前記画像変位演出は、前記第一状態から前記第二状態に変化することを契機として前記第一状態における前記特定画像と前記背景画像の相対的な関係が、前記第二状態における前記特定画像と前記背景画像の相対的な関係と異なるものとなる演出であることを特徴とする遊技機。
ただし、前記画像変位演出において、前記表示領域における前記特定画像が表示される範囲は一定ではないものとする。
【請求項2】
前記第二状態においては、前記特定画像の一部が前記背景画像に重なったまま他の一部が前記枠画像よりも外側に飛び出て表示されることを特徴とする請求項1に記載の遊技機。
【請求項3】
前記特定画像は、当否判定結果を示す識別図柄であり、前記第二状態においては、前記識別図柄は変動表示された状態にあることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の遊技機。」
(以下、本件補正後の請求項1~3に係る発明をそれぞれ本願補正発明1~3という。)
第2 補正の適否
1 本件補正
本件補正による特許請求の範囲の請求項1についての補正は、発明を特定するために必要な事項である「画像変位演出」が「前記第一状態における前記特定画像と前記背景画像の相対的な関係が、前記第二状態における前記特定画像と前記背景画像の相対的な関係と異なるものとなる」ことについて、「前記第一状態から前記第二状態に変化することを契機として」という限定を加えるものである。
2 補正目的
上記1の本件補正により、請求項1に係る発明において、「前記画像変位演出」において「前記第一状態における前記特定画像と前記背景画像の相対的な関係が、前記第二状態における前記特定画像と前記背景画像の相対的な関係と異なるものとなる」のが、本件補正前には、「前記第一状態から前記第二状態に変化する」前からであるものも含まれていたところ、本件補正後には、「前記第一状態から前記第二状態に変化することを契機として」である(以下「本件補正事項」という。)ものに限定され、「前記第一状態から前記第二状態に変化する」前であるものが除外された。
そして、本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
3 新規事項
本願の願書に最初に添付した明細書及び図面には、以下の事項が記載されている(下線は合議体が付した。)。
「【0017】
第一画像変位演出の基本的態様は、表示装置10の表示領域11に基準画像20が表示された第一状態(図3(a)に示す状態)から、表示領域11に対して当該基準画像20がずれたかのように表示された第二状態(図3(b)に示す状態)に変位するというものである。基準画像20は、第一状態にて表示領域11に表示される画像である。本実施形態では、第一状態にて表示領域11の全体に表示される画像が基準画像20として設定される。ただし、第一状態にて表示領域11に表示される画像の一部のみが基準画像20として変位する構成としてもよい。基準画像20は静止画および動画のいずれであってよいが、第一状態から第二状態にかけて基準画像20が表す画像の内容は遊技者から同一視できる態様に維持される(ただし、後述するように、識別図柄70を表す部分は除く)。
…
【0019】
また、第一画像変位演出の第二状態においては、基準画像20の外縁に沿う枠画像30が表示される(図3(b)参照)。当該枠画像30は、第一状態における表示領域11の外縁に相当する部分であることを示すものである。本実施形態では、第一状態において枠画像30は表示されない。つまり、第一画像変位演出は、基準画像20が表示領域11に対してずれたかのように表示される演出であるから、当該ずれを表現するために、第二状態にて枠画像30を表示する。遊技者は、第一状態における表示領域11の外縁が、第二状態にて枠画像30として表示される箇所までずれてしまったかのような印象を受ける。表示領域11は、大まかにみて略方形状を呈するものであるから、本実施形態のように基準画像20が三次元的に変位する第一画像変位演出であれば、第二状態における枠画像30は三次元的な表現で方形状を呈するように見える態様(平面視で略平行四辺形状)とされる。本実施形態では、第一状態から第二状態にかけて、枠画像30は表示領域11の外縁から次第に離れていくように形状変化し、最終的に図示されるような態様に行き着く。なお、枠画像30が全く表示されない構成としてもよい。このような構成である場合における、表示領域11に対してずれたかのように表示される画像(本実施形態では後述する背景画像22)と、それ以外の部分の境界も「枠画像30」に含まれるものとする。
【0020】
基準画像20には識別図柄70が含まれる。具体的には、基準画像20は、少なくとも識別図柄70およびその背景として表示される背景画像22を含む(図3(a)参照)。識別図柄70を表示する画像レイヤと背景画像22を表示する画像レイヤを別のレイヤとし、前者のレイヤが後者のレイヤよりも手前に設定された構成とすれば、識別図柄70の背景として背景画像22が表示された態様を構築することができる。以下、基準画像20における識別図柄70(三つの識別図柄70)を表した部分を特定画像21と称する。第一状態から第二状態に推移したとき、少なくとも背景画像22に相当する部分が表示領域11に対して三次元的に変位したかのような表示がなされるとともに、当該背景画像22の周囲に枠画像30が表示されることになる。このような変化が生じることで、遊技者は、第一状態にて表示されていた画像があたかも表示領域11に対してずれたかのような印象を受けることになる。
【0021】
ここで、第二状態においては、特定画像21と枠画像30の相対的な関係が、第一状態における特定画像21と表示領域11の外縁との相対的な関係と異なるものとなる。つまり、第一状態において表示される特定画像21を含めた基準画像20全体をそのまま表示領域11に対して変位させたと仮定した場合における第二状態での表示態様(仮想表示態様)とは異なるように見える特定画像21と枠画像30の相対的な関係とされるということである。
【0022】
第一状態では、特定画像21は表示領域11内に収まった状態にある(図3(a)参照)。つまり、特定画像21の全体が、表示領域11の外縁よりも内側に位置した状態にある。一方、第一状態から第二状態に推移し、表示領域11内に第一状態における表示領域11の外縁に相当する部分である枠画像30が表示された状態においては、本実施形態では特定画像21の一部が枠画像30からはみ出るように表示される(図3(b)参照)。つまり、第一状態から第二状態に推移することで、背景画像22が表示領域11に対して三次元的に変位したかのような態様を示すために枠画像30が表示されるところ、当該枠画像30と特定画像21(識別図柄70)の相対的な位置関係を維持せず、特定画像21が枠画像30からはみ出た状態とされる。第二状態における枠画像30の外側の領域は、表示領域11に対して基準画像20が変位することによって生じた領域(以下、外側領域11sと称することもある)であるところ、当該外側領域11sに特定画像21の一部が表示されるような態様とされる。
【0023】
なお、本実施形態では、第一画像変位演出を通じて(第一状態から第二状態に変化しても)、識別図柄70が変動した状態が維持される。少なくとも第一画像変位演出が実行されるときにおける識別図柄70の変動態様は、各識別図柄群70gを構成する識別図柄70が所定位置で回転しつつ、一回転する度に識別図柄70の種類が変化するような態様とされる。このような識別図柄70が特定画像21として、第二状態においては枠画像30からはみ出た状態で変動する(回転する)ように表示されるものである(図3(b)参照)。本実施形態では、左の識別図柄70(左識別図柄群70gL)と右の識別図柄70(右の識別図柄群70gR)の一部が枠画像30からはみ出た状態となる。
【0024】
本実施形態では、第一状態における表示領域11の外縁に対する相対的な特定画像21の大きさよりも、第二状態における枠画像30に対する相対的な特定画像21の大きさの方が大きくなるように設定されることで、前記第二状態において前記特定画像21の少なくとも一部が枠画像30からはみ出るように表示される。換言すれば、第一状態における表示領域11の外縁が第二状態における枠画像30として変化する量に比して、第一状態から第二状態にかけての特定画像21が変化する量は小さいがゆえに、第二状態にて特定画像21の一部が枠画像30からはみ出た状態となるといえる。」
「【図3】
[図:0001410978000001.jpg]
」
【0019】の「第一状態から第二状態にかけて、枠画像30は表示領域11の外縁から次第に離れていくように形状変化し、最終的に図示されるような態様に行き着く」との記載は、第二状態が図3(b)に示す状態であることから(【0017】)、「第一状態から第二状態にかけて、枠画像30は表示領域11の外縁から次第に離れていくように形状変化し、最終的に図3(b)に図示されるような態様に行き着く」ことを意味することは明らかである。
そうすると、本願の願書に最初に添付した明細書及び図面には、以下の事項(以下「本願明細書等記載事項」という。)が記載されている。
「第一画像変位演出は、表示装置10の表示領域11に基準画像20が表示された第一状態(図3(a)に示す状態)から、表示領域11に対して当該基準画像20がずれたかのように表示された第二状態(図3(b)に示す状態)に変位するものであり、第一状態から第二状態にかけて基準画像20が表す画像の内容は遊技者から同一視できる態様に維持され(ただし、識別図柄70を表す部分は除く)(【0017】)、
第一状態から第二状態にかけて、枠画像30は表示領域11の外縁から次第に離れていくように形状変化し、最終的に図3(b)に図示されるような態様に行き着き(【0019】)、
第二状態においては、特定画像21と枠画像30の相対的な関係が、第一状態における特定画像21と表示領域11の外縁との相対的な関係と異なるものとなり(【0021】)、
第一状態では、特定画像21は表示領域11内に収まった状態にあり(図3(a)参照)、第一状態から第二状態に推移し、表示領域11内に第一状態における表示領域11の外縁に相当する部分である枠画像30が表示された状態においては、特定画像21の一部が枠画像30からはみ出るように表示され(図3(b)参照)(【0022】)、
第一画像変位演出を通じて(第一状態から第二状態に変化しても)、識別図柄70が変動した状態が維持され、少なくとも第一画像変位演出が実行されるときにおける識別図柄70の変動態様は、各識別図柄群70gを構成する識別図柄70が所定位置で回転しつつ、一回転する度に識別図柄70の種類が変化するような態様とされ(【0023】)、
第一状態における表示領域11の外縁が第二状態における枠画像30として変化する量に比して、第一状態から第二状態にかけての特定画像21が変化する量は小さいがゆえに、第二状態にて特定画像21の一部が枠画像30からはみ出た状態となる(【0024】)こと。」
本願明細書等記載事項によれば、「第二状態」とは、「表示領域11に対して当該基準画像20がずれたかのように表示された」「図3(b)に示す状態」であると認められる。
請求人も主張するように、「契機」とは、「きっかけ」を意味することを踏まえれば、本件補正事項のように、「前記第一状態から前記第二状態に変化することを契機として前記第一状態における前記特定画像と前記背景画像の相対的な関係が、前記第二状態における前記特定画像と前記背景画像の相対的な関係と異なるものとなる」には、「図3(b)に示す状態」である第二状態となる直前まで、「第一状態における特定画像(識別図柄70)と背景画像の相対的な関係」が維持され、「図3(b)に示す状態」である第二状態となる時点で、特定画像(識別図柄70)と背景画像の相対的な関係が、瞬時に不連続な変化をして、図3(b)に示す状態となる必要があるが、本願明細書等記載事項によれば、枠画像30は、「表示領域11の外縁から次第に離れていくように形状変化し、最終的に図3(b)に図示されるような態様に行き着」くものであるから、不連続な変化をするものではなく、特定画像21(識別図柄70)も、「少なくとも第一画像変位演出が実行されるときにおける識別図柄70の変動態様は、各識別図柄群70gを構成する識別図柄70が所定位置で回転しつつ、一回転する度に識別図柄70の種類が変化するような態様とされ」、「第一状態における表示領域11の外縁が第二状態における枠画像30として変化する量に比して、第一状態から第二状態にかけて」「変化する量は小さい」ことが記載されているのみで、不連続な移動や変化をすることは記載も示唆もされていないことから、特定画像(識別図柄70)と背景画像の相対的な関係が、瞬時に不連続な変化をして、図3(b)に示す状態となることは、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「出願当初明細書等」という。)には、記載も示唆もされていない。
仮に、本件補正発明1の「第二状態」とは、「表示領域11に対して当該基準画像20がずれたかのように表示された」図3(b)に示す状態(瞬間の状態)だけでなく、図3(b)に示す状態より前の表示領域11に対して当該基準画像20がずれたかのように表示され始めた時点の状態も「第二状態」に含まれると解したとしても、請求項1の「前記第一状態から前記第二状態に変化することを契機として」との記載が、(「前記第一状態から前記第二状態に変化した後に」ということを意味するのではなく)「前記第一状態から前記第二状態に変化するのと同時に」ということを意味するのであれば、「前記第一状態から前記第二状態に変化する」のと同時に、「前記第一状態における前記特定画像と前記背景画像の相対的な関係が、前記第二状態における前記特定画像と前記背景画像の相対的な関係と異なるものとなる」(図3(a)に示される状態から、表示領域11に対して当該基準画像20がずれたかのように表示され始めるのと同時に、特定画像21と枠画像30の相対的な関係が、第一状態における特定画像21と表示領域11の外縁との相対的な関係と異なるものとなる)との事項は、出願当初明細書等には記載も示唆もされていない。
したがって、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえず、新規事項を追加するものである。
4 独立特許要件
(1) 独立特許要件の検討の前提
上記3において検討したように、本件補正は、新規事項を追加するものと認められるところ、ここでは、仮に、本件補正発明1の「第二状態」とは、「表示領域11に対して当該基準画像20がずれたかのように表示された」図3(b)に示す状態(瞬間の状態)だけでなく、図3(b)に示す状態より前の表示領域11に対して当該基準画像20がずれたかのように表示され始めた時点の状態も「第二状態」に含まれ、かつ、請求項1の「前記第一状態から前記第二状態に変化することを契機として」との記載が、(「前記第一状態から前記第二状態に変化するのと同時に」ということを意味するのではなく)「前記第一状態から前記第二状態に変化した後に」ということを意味すると解し、本件補正は、新規事項を追加するものではないとした場合について検討する。
上記第2の2のとおり、本件補正による特許請求の範囲の請求項1についての補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正であるから、本願補正発明1が特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。
(2) 本願補正発明
本願補正発明1を再掲すると、以下のとおりのものである(符号A等は、分説のために合議体が付したものである。)。
(本願補正発明1)
「【請求項1】
A 表示領域を有する表示装置と、
B 前記表示領域に背景画像および当該背景画像の手前に重ねて表示される特定画像を含む基準画像が表示された第一状態から、当該基準画像が前記表示領域に対して変位したかのように表示された状態であって前記第一状態における前記背景画像の外縁に相当する部分が枠画像として表示された第二状態に変化する画像変位演出を実行する演出実行手段と、
を備え、
C 前記画像変位演出は、前記第一状態から前記第二状態に変化することを契機として前記第一状態における前記特定画像と前記背景画像の相対的な関係が、前記第二状態における前記特定画像と前記背景画像の相対的な関係と異なるものとなる演出である
D ことを特徴とする遊技機。
E ただし、前記画像変位演出において、前記表示領域における前記特定画像が表示される範囲は一定ではないものとする。」
(3) 引用文献の記載、引用発明
ア 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用され、本願出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2015-213605号公報(平成27年12月3日出願公開。以下「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は合議体が付した。以下同様。)。
「【0013】
以下、パチンコ遊技機に具体化した一実施形態を図1~図6にしたがって説明する。
図1に示すように、遊技機としてのパチンコ遊技機10には、遊技盤YBが備えられている。パチンコ遊技機10の前面側には、遊技盤YBへ遊技球を発射させるときに遊技者によって操作される発射ハンドルHDが配設されている。遊技盤YBの中央には、画像表示部GHを有する演出表示装置11が配設されている。演出表示装置11の画像表示部GHは、例えば液晶ディスプレイ型の表示部である。」
「【0028】
次に、本実施形態のパチンコ遊技機10の電気的構成について説明する。
図2に示すように、パチンコ遊技機10には、主制御手段としての主制御基板30が搭載されている。主制御基板30は、パチンコ遊技機10における遊技などに関する処理を実行するとともに、該処理の結果に応じて各種の制御信号(制御コマンド)を出力する。また、パチンコ遊技機10には、副制御手段としての副制御基板31が搭載されている。副制御基板31は、主制御基板30が出力した制御信号(制御コマンド)に基づき遊技演出の実行などに関する処理を実行する。即ち、副制御基板31は、演出表示装置11の表示態様(図柄、背景、文字などの表示画像など)、装飾ランプLaの発光態様、及びスピーカSpの音声出力態様を制御する。」
「【0055】
図3(a)は、飾り図柄変動ゲームが実行されている時の画像表示部GHの表示内容の一例を示す。飾り図柄変動ゲーム中は、画像表示部GHの領域に3列の図柄列ZL,ZC,ZRが画像表示されているとともに、各図柄列ZL,ZC,ZRの背面には背景画像G1が画像表示されている。この背景画像G1は、リーチ演出を行っていない時やリーチ演出を行っている時など、飾り図柄変動ゲームの進行に合わせて様々な画像に切り替えられる。また、飾り図柄変動ゲーム中の画像表示部GHの領域には、保留画像40が表示されている。この保留画像40は、特別図柄保留数の増減に合わせて切り替えられる。」
「【0071】
図5(a)は、画像表示部GHにおいて、飾り図柄変動ゲームが行われている状態である。このときの画像表示部GHは通常表示領域Hとされており、通常表示内容である飾り図柄変動ゲームや、保留画像40が画像表示されている。また、各図柄列ZR,ZC,ZLの背面には、背景画像G1が画像表示されている。この状態において遊技者の視認対象は、画像表示部GHのほぼ全体に画像表示されている飾り図柄変動ゲームを含む通常表示内容である。
【0072】
そして、図5(b)に示すように、特定条件が成立すると、画像表示部GHでは、飾り図柄変動ゲームが画像表示されていた通常表示領域Hが捲られるような演出表示が画像表示される。このとき、画像表示部GHでは、通常表示領域Hに相当する画像の表示領域において飾り図柄変動ゲームや背景画像G1、あるいは保留画像40が継続して画像表示されている。つまり、この状態において飾り図柄変動ゲームは進行している。例えば、図5(a)の状態では全ての図柄列ZR,ZC,ZLが変動中であったが、図5(b)の状態では図柄列ZRの変動が停止して飾り図柄(「7」を付した図柄)が一旦停止表示されている。
【0073】
その後、図5(c)に示すように、画像表示部GHには、通常表示領域Hの形状が変化した第1の表示領域H1と、通常表示領域Hの形状の変化に伴って第2の表示領域H2と、が出現する。図5(c)の状態において第1の表示領域H1は、図5(a)の状態における通常表示領域Hの表示面積が縮小した形状であり、第1の表示領域H1を除くその他の領域が第2の表示領域H2として出現している。画像表示部GHにおいて斜線を付した領域が「第2の表示領域H2」である。
【0074】
そして、第1の表示領域H1では、飾り図柄変動ゲームや背景画像G1、あるいは保留画像40が継続して画像表示されており、飾り図柄変動ゲームは進行している。例えば、図5(b)の状態では図柄列ZC,ZLが変動中であったが、図5(c)の状態では図柄列ZLの変動が停止して飾り図柄(「6」を付した図柄)が一旦停止表示されている。この具体例では、図柄列ZLと図柄列ZRに異なる飾り図柄が一旦停止表示されているので、遊技者は第1の表示領域H1の表示内容からリーチにならないことを認識し得る。
【0075】
その一方で、特定条件の成立によって第2の表示領域H2には、特定表示内容が画像表示される。特定表示内容は、第1の表示領域H1で進行している飾り図柄変動ゲームの結果に関与しない内容で構成されている。例えば、特定表示内容は、飾り図柄変動ゲームが画像表示されている第1の表示領域H1を乗っ取ったことで優越感に浸るキャラクタが登場している内容である。
【0076】
図6(a)は、画像表示部GHにおいて第1の表示領域H1がその形状を変化させながら動いている様子を示す。この実施形態において第1の表示領域H1は、縮小と拡大を繰り返す形状の変化や、左右方向へ揺動する位置の変化を行う。このように第1の表示領域H1に変化が生じていても、第1の表示領域H1では、飾り図柄変動ゲームや背景画像G1、あるいは保留画像40が継続して画像表示されており、飾り図柄変動ゲームは進行している。
【0077】
その後、図6(b)に示すように、第1の表示領域H1では、飾り図柄変動ゲームに対応する特別図柄変動ゲームの変動時間が到来することによって飾り図柄変動ゲームが終了する。飾り図柄変動ゲームでは、その終了に伴って飾り図柄による図柄組み合わせが導出される。このため、第1の表示領域H1で飾り図柄変動ゲームが行われている場合、その飾り図柄変動ゲームでも飾り図柄による図柄組み合わせが導出される。このとき、この実施形態において第1の表示領域H1の飾り図柄変動ゲームで導出される飾り図柄の図柄組み合わせ(図中の[756])は、図6(b)に示すように第2の表示領域H2へ移動表示される。飾り図柄の図柄組み合わせが移動表示された後の第1の表示領域H1には、背景画像G1や保留画像40が画像表示されている。この飾り図柄の図柄組み合わせの移動表示は、第1の表示領域H1が形状変化や位置変化を伴うことから、図柄の視認性を低下させない効果を生じ得させる。つまり、当り抽選の抽選結果を飾り図柄変動ゲームを通じて遊技者に確実に把握させている。」
「【図5】
[図:0001410978000002.jpg]
」
「【図6】
[図:0001410978000003.jpg]
」
イ 認定事項
図5(c)、図6(a)(b)には、第1の表示領域H1は、その輪郭が認識できるように表示されることがみてとれる(以下「認定事項1」という。)。
ウ 引用発明
上記ア、イによれば、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている(符号a等は、合議体が本願補正発明1の符号A等に概ね対応させて付したものである。)。
(引用発明)
「a 画像表示部GHを有する演出表示装置11が配設され(【0013】)、
bce 演出表示装置11の表示態様(図柄、背景、文字などの表示画像など)を制御する副制御基板31を備え(【0028】)、
飾り図柄変動ゲーム中は、画像表示部GHの領域に3列の図柄列ZL,ZC,ZRが画像表示されているとともに、各図柄列ZL,ZC,ZRの背面には背景画像G1が画像表示され(【0055】)、画像表示部GHにおいて、飾り図柄変動ゲームが行われている状態において、このときの画像表示部GHは通常表示領域Hとされており、通常表示内容である飾り図柄変動ゲームが画像表示され、各図柄列ZR,ZC,ZLの背面には、背景画像G1が画像表示され(【0071】)、特定条件が成立すると、画像表示部GHでは、飾り図柄変動ゲームが画像表示されていた通常表示領域Hが捲られるような演出表示が画像表示され、このとき、通常表示領域Hに相当する画像の表示領域において飾り図柄変動ゲームや背景画像G1が継続して画像表示され、この状態において飾り図柄変動ゲームは進行しており、図柄列ZRの変動が停止して飾り図柄(「7」を付した図柄)が一旦停止表示され(【0072】)、画像表示部GHには、通常表示領域Hの形状が変化した第1の表示領域H1と、通常表示領域Hの形状の変化に伴って第2の表示領域H2と、が出現し、第1の表示領域H1は、通常表示領域Hの表示面積が縮小した形状であり、第1の表示領域H1を除くその他の領域が第2の表示領域H2として出現し(【0073】)、第1の表示領域H1では、飾り図柄変動ゲームや背景画像G1が継続して画像表示されており、飾り図柄変動ゲームは進行しており、図柄列ZLの変動が停止して飾り図柄(「6」を付した図柄)が一旦停止表示され(【0074】)、その一方で、特定条件の成立によって第2の表示領域H2には、特定表示内容が画像表示され、特定表示内容は、第1の表示領域H1で進行している飾り図柄変動ゲームの結果に関与しない内容で構成され(【0075】)、画像表示部GHにおいて第1の表示領域H1がその形状を変化させながら動き、第1の表示領域H1に変化が生じていても、第1の表示領域H1では、飾り図柄変動ゲームや背景画像G1が継続して画像表示されており、飾り図柄変動ゲームは進行しており(【0076】)、その後、第1の表示領域H1では、飾り図柄変動ゲームに対応する特別図柄変動ゲームの変動時間が到来することによって飾り図柄変動ゲームが終了し、飾り図柄変動ゲームでは、その終了に伴って飾り図柄による図柄組み合わせが導出され、このため、第1の表示領域H1で飾り図柄変動ゲームが行われている場合、その飾り図柄変動ゲームでも飾り図柄による図柄組み合わせが導出され、このとき、第1の表示領域H1の飾り図柄変動ゲームで導出される飾り図柄の図柄組み合わせ([756])は、第2の表示領域H2へ移動表示され、飾り図柄の図柄組み合わせが移動表示された後の第1の表示領域H1には、背景画像G1が画像表示され(【0077】)、第1の表示領域H1は、その輪郭が認識できるように表示される(図5(c)、図6(a)(b)、認定事項1)
d パチンコ遊技機10(【0013】)。」
(4) 対比
本願補正発明1と引用発明とを対比する。
(a) 引用発明の「画像表示部GHを有する演出表示装置11」は、本願補正発明1の「表示領域を有する表示装置」に相当する。
したがって、引用発明は、本願補正発明の構成Aに相当する構成を備える。
(b) 引用発明の「背景画像G1」は、本願補正発明1の「背景画像」に相当する。
引用発明の「飾り図柄変動ゲーム中」に「画像表示されている」「図柄列ZL,ZC,ZR」は、その「背面に、背景画像G1が画像表示され」ることから、本願補正発明1の「当該背景画像の手前に重ねて表示される特定画像」に相当する。
引用発明の「通常表示領域H」に「通常表示内容である飾り図柄変動ゲームが画像表示され、各図柄列ZR,ZC,ZLの背面には、背景画像G1が画像表示され」る画像及び状態は、それぞれ本願補正発明1の「前記表示領域に背景画像および当該背景画像の手前に重ねて表示される特定画像を含む基準画像」及び「第一状態」に相当する。
引用発明において、「通常表示領域Hの形状が変化した第1の表示領域H1と、通常表示領域Hの形状の変化に伴って第2の表示領域H2と、が出現し、第1の表示領域H1は、通常表示領域Hの表示面積が縮小した形状であり、第1の表示領域H1を除くその他の領域が第2の表示領域H2として出現」することから、「通常表示領域Hの形状の変化」とともに「出現」した「第1の表示領域H1」及び「第2の表示領域H2」が表示されている状態は、本願補正発明1の「当該基準画像が前記表示領域に対して変位したかのように表示された状態」に相当する。
引用発明の「第1の表示領域H1」の「認識できるように表示される」「輪郭」は、本願明細書の【0019】に「なお、枠画像30が全く表示されない構成としてもよい。このような構成である場合における、表示領域11に対してずれたかのように表示される画像(本実施形態では後述する背景画像22)と、それ以外の部分の境界も「枠画像30」に含まれるものとする。」と記載されていることを鑑みると、本願補正発明1の「前記第一状態における前記背景画像の外縁に相当する部分」が「表示された」「枠画像」に相当する。
引用発明の「画像表示部GHには、通常表示領域Hの形状が変化した第1の表示領域H1と、通常表示領域Hの形状の変化に伴って第2の表示領域H2と、が出現し、第1の表示領域H1は、通常表示領域Hの表示面積が縮小した形状であり、第1の表示領域H1を除くその他の領域が第2の表示領域H2として出現し」て以降の状態、及び「第1の表示領域H1の飾り図柄変動ゲームで導出される飾り図柄の図柄組み合わせ([756])は、第2の表示領域H2へ移動表示され、飾り図柄の図柄組み合わせが移動表示された後の第1の表示領域H1には、背景画像G1が画像表示され、第1の表示領域H1は、その輪郭が認識できるように表示される」状態は、本願補正発明1の「当該基準画像が前記表示領域に対して変位したかのように表示された状態であって前記第一状態における前記背景画像の外縁に相当する部分が枠画像として表示された第二状態」に相当する。
引用発明の「副制御基板31」は、「演出表示装置11の表示態様(図柄、背景、文字などの表示画像など)を制御」するものであるから、上記の「第1の表示領域H1」に関する演出を実行するものであることは明らかであって、本願補正発明1の「画像変位演出を実行する演出実行手段」に相当する。
したがって、引用発明は、本願補正発明1の構成Bに相当する構成を備える。
(c) 引用発明において、「通常表示領域H」に「通常表示内容である飾り図柄変動ゲームが画像表示され、各図柄列ZR,ZC,ZLの背面には、背景画像G1が画像表示され」る状態(第一状態)では、「飾り図柄変動ゲーム」の「各図柄列ZR,ZC,ZLの画像」(特定画像)と「背景画像G1」の相対的な関係は、重なっているのに対して、「第1の表示領域H1の飾り図柄変動ゲームで導出される飾り図柄の図柄組み合わせ([756])は、第2の表示領域H2へ移動表示され、飾り図柄の図柄組み合わせが移動表示された後の第1の表示領域H1には、背景画像G1が画像表示され、第1の表示領域H1は、その輪郭が認識できるように表示される」状態(第二状態)では、「飾り図柄変動ゲームで導出される飾り図柄の図柄組み合わせ([756])」(特定画像)と「背景画像G1」の相対的な関係は、重ならないものと認められ、この演出において、「通常表示領域H」に「通常表示内容である飾り図柄変動ゲームが画像表示され、各図柄列ZR,ZC,ZLの背面には、背景画像G1が画像表示され」る状態(第一状態)では、「飾り図柄変動ゲーム」の「各図柄列ZR,ZC,ZLの画像」(特定画像)と「背景画像G1」が重なっている相対的な関係が、「第1の表示領域H1の飾り図柄変動ゲームで導出される飾り図柄の図柄組み合わせ([756])は、第2の表示領域H2へ移動表示され、飾り図柄の図柄組み合わせが移動表示された後の第1の表示領域H1には、背景画像G1が画像表示され、第1の表示領域H1は、その輪郭が認識できるように表示される」状態(第二状態)では、「飾り図柄変動ゲームで導出される飾り図柄の図柄組み合わせ([756])」(特定画像)と「背景画像G1」が重なっていない相対的な関係と異なるものであることは、本願補正発明1の「前記画像変位演出は」、「前記第一状態における前記特定画像と前記背景画像の相対的な関係が、前記第二状態における前記特定画像と前記背景画像の相対的な関係と異なるものとなる演出である」ことに相当する。
また、引用発明において、「第1の表示領域H1では、飾り図柄変動ゲームや背景画像G1が継続して画像表示され」ることから、「飾り図柄変動ゲーム」の「各図柄列ZR,ZC,ZLの画像」(特定画像)と「背景画像G1」の相対的な関係は、「画像表示部GHには、通常表示領域Hの形状が変化した第1の表示領域H1と、通常表示領域Hの形状の変化に伴って第2の表示領域H2と、が出現し、第1の表示領域H1は、通常表示領域Hの表示面積が縮小した形状であり、第1の表示領域H1を除くその他の領域が第2の表示領域H2として出現し」た後に変化するものと認められ、このことは、本願補正発明1の「前記第一状態から前記第二状態に変化することを契機として前記第一状態における前記特定画像と前記背景画像の相対的な関係が、前記第二状態における前記特定画像と前記背景画像の相対的な関係と異なるものとなる」ことに相当する(上記(1)を参照。)。
したがって、引用発明は、本願補正発明1の構成Cに相当する構成を備える。
(d) 引用発明の「パチンコ遊技機10」は、本願補正発明1の「遊技機」に相当する。
したがって、引用発明は、本願補正発明1の構成Dに相当する構成を備える。
(e) 引用発明の「第1の表示領域H1の飾り図柄変動ゲームで導出される飾り図柄の図柄組み合わせ([756])は、第2の表示領域H2へ移動表示され」ることは、本願補正発明1の「前記画像変位演出において、前記表示領域における前記特定画像が表示される範囲は一定ではない」ことに相当する。
したがって、引用発明は、本願補正発明1の構成Eに相当する構成を備える。
(5) 当審合議体の判断
上記(4)からみて、本願補正発明1と引用発明とは相違するところがない。
また、本願補正発明1は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
(6) 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、以下の旨を主張する。
(請求人の主張1)
「4-1)取消事由1
令和4年12月28日付手続補正書と同日に提出した意見書において、出願人は、同日付手続補正書でした補正は発明の内容を実質的に限定するものではないことを記載した。
しかしながら、補正却下決定においては、何らの理由も示すことなく、「請求項1~3についての補正は限定的減縮を目的としている。」とされた。
いわゆる独立特許要件(特許法第17条の2第6項において準用する同法126条条7項)を課すことができるのは、最後の拒絶理由通知に対し行った補正の目的がいわゆる限定的減縮補正(特許法第17条の2第5項第2号)である場合に限られているところ、出願人が発明の内容を実質的に変更するものではないとしているのに、具体的な理由を記載することなく(具体的にどこが「限定」に当たるのかを記載することなく)当該補正が限定的減縮補正であると結論付け、独立特許要件を課すことは許されない。
よって、本件審査においてなされた補正却下決定は不当であり、その結果としてなされた拒絶査定は取り消されるべきものである。」
(請求人の主張2)
「4-2)取消事由2
本願発明(請求項1~3)は、「前記画像変位演出は、前記第一状態から前記第二状態に変化することを契機として前記第一状態における前記特定画像と前記背景画像の相対的な関係が、前記第二状態における前記特定画像と前記背景画像の相対的な関係と異なるものとなる演出であること」を特定する(以下、対象特定事項と称する)。
本件審査においては、本願発明と引用文献1記載の発明(引用発明)が一致するとされているのであるから、引用発明も上記対象特定事項を有すると判断されているということになる。以下、当該判断の妥当性について検討する。
引用発明において、本願発明でいう第一状態から第二状態への変化は、図5(a)の状態から図5(c)の状態への変化であると認められる。その後、図6(a)の状態を経て、図6(b)の状態に到達する。つまり、図6(b)の状態に至るよりも前の、図5(c)および図6(a)の状態も本願発明でいう第二状態であるといえる。
そして、図5(c)および図6(a)の状態は、本願発明でいう「特定画像と背景画像の相対的な位置関係」が、第一状態と異なっているとは認められない。
つまり、本願発明の文言を用いれば、引用発明は、
(イ)第二状態に変化した当初(図5(c)、図6(a)の状態)は、特定画像と背景画像の相対的な位置関係が第一状態と異なるとはいえず、
(ロ)その後、特定画像と背景画像の相対的な位置関係が第一状態と異なる状態(図6(b)の状態)となる
ものであるといえる。
「契機」とは、「きっかけ」(トリガ)という意味であるから、本願発明の上記対象特定事項は、「前記第一状態における前記特定画像と前記背景画像の相対的な関係が、前記第二状態における前記特定画像と前記背景画像の相対的な関係と異なる」ようになる「きっかけ」(トリガ)が、「前記第一状態から前記第二状態に変化すること」であることを特定しているといえる。
一方、引用発明は、第一状態から第二状態に移行しても、(図6(b)の状態に至るまでの図5(c)および図6(a)の状態においては)「特定画像と背景画像の相対的な位置関係が第一状態と異なるとはいえない」のであるから、これは、第一状態から第二状態への変化を「きっかけ」(トリガ)として、「特定画像と背景画像の相対的な位置関係が第一状態と異なる」ものとなっているとはいえない。
すなわち、「特定画像と背景画像の相対的な位置関係が第一状態と異なる」ものとなる「きっかけ」(トリガ)が、「第一状態から第二状態への変化である」のであれば、既に第二状態にあるといえる図5(c)および図6(a)の状態においても「特定画像と背景画像の相対的な位置関係が第一状態と異なる」ものとなっていなければならないというべきであり、このような構成とはなっていない(図5(c)および図6(a)の状態にて「特定画像と背景画像の相対的な位置関係が第一状態と異なる」ものとなっていない)引用発明は上記対象特定事項を有するものであるとはいえない。」
請求人の主張1について検討する。令和5年4月5日付けの手続補正の却下の決定により却下された令和4年12月28日付け手続補正書は、請求項1において、上記2の本件補正事項と同一の事項を限定するものである。
そして、特許請求の範囲において、本件補正事項を限定する補正は、上記2で検討したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって、請求人の上記主張は採用することができない。
請求人の主張2について検討する。請求人の上記主張は、請求項1の「前記第一状態から前記第二状態に変化することを契機として前記第一状態における前記特定画像と前記背景画像の相対的な関係が、前記第二状態における前記特定画像と前記背景画像の相対的な関係と異なるものとなる」との事項が、表示領域11(表示領域)に対して当該基準画像20(基準画像)がずれたかのように表示され始めると同時に、「特定画像と背景画像の相対的な位置関係が第一状態と異なる」ものとなることを意味することを前提としていると認められるところ、当該事項は、上記3で検討したように、出願当初明細書等には記載されていない。
したがって、請求人の上記主張は採用することができない。
(7) 独立特許要件の判断のまとめ
本願補正発明1は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際、独立して特許を受けることができない。
また、本願補正発明1は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができない。
5 補正の適否についてのむすび
上記3で検討したとおり、本件補正は、新規事項を追加するものであって、特許法第17条の2第3項の規定に違反し、また、上記4で検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、令和4年8月2日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1の記載は上記第1の1に記載したとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、次のとおりである。
1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
●理由1、2について
・請求項1~3
・引用文献等1
<引用文献等一覧>
1.特開2015-213605号公報
3 引用文献
(1) 引用文献1の記載事項及び認定事項
引用文献1の記載事項、認定事項は、上記第2の4(3)ア、イに記載したとおりのものである。
(2) 引用発明
引用文献1に記載された引用発明は、前記第2の4(3)ウに記載したとおりのものである。
4 対比、判断
本願発明1は、前記第2で検討した本願補正発明1の「前記画像変位演出」の「前記第一状態における前記特定画像と前記背景画像の相対的な関係が、前記第二状態における前記特定画像と前記背景画像の相対的な関係と異なるものとなる」ことが、「前記第一状態から前記第二状態に変化することを契機として」であるとした限定を削除したものである。
そうすると、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものに相当する本件補正発明1が、上記第2の4で述べたとおり、引用文献1に記載された発明であり、また、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明1も、引用文献1に記載された発明であり、また、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
5 むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、本願発明1は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願発明2、3について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-007283