特許拒絶査定不服審判
2023-005764
遊技機
- 審判番号
- 2023-005764
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-196439外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年04月10日
- 審決日
- 2024年03月04日
- 公報発行日
- 2024年05月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社エンターライズ
- 【請求人代理人】松谷 道子
- 【請求人代理人】徳山 英浩
- 【請求人代理人】岩木 宣憲
- 分類
- P18 .575-Z (A63F) / P18 .121-Z (A63F) / P18 .113-Z (A63F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第5項第4号、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第5項第1号、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-196439「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 6月14日出願公開、特開2023- 82575〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和3年12月2日の出願であって、令和4年8月18日付けで拒絶の理由が通知され、同年10月21日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年12月5日付け(送達日:令和5年1月10日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、それに対して、令和5年4月10日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、同年9月7日に上申書が提出されたものである。
第2 本件補正について
1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲についてする補正を含むものであって、令和5年4月10日提出の手続補正書によって、本件補正前の令和4年10月21日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1~12のうち、請求項5について「前記第2終了条件に、所定の遊技に関する条件が充足され、かつ、所定の前記差数に関する条件が充足されることが含まれ、前記所定の遊技に関する条件には、・・・場合の少なくともいずれかが含まれる、」を「前記第2終了条件に、所定の遊技に関する条件が充足され、かつ、所定の前記差数に関する条件が充足されることが含まれ、前記第2終了条件には、・・・場合の少なくともいずれかが含まれる、」(以下「補正事項1」という。)に補正し、請求項8について「前記第2終了条件に、前記特別役の入賞が持ち越しされていないことが含まれる」を「前記第2終了条件に、前記特別役に当せんしておらず前記特別役の入賞が持ち越しされていないことが含まれる」(以下「補正事項2」という。)に補正し、請求項9について「前記設定値が設定された場合」を「前記設定値が設定されたとき」(以下「補正事項3」という。)に補正し、請求項11を削除(以下「補正事項4」という。)し、これに伴い請求項12を繰り上げて請求項11とすることを含む補正である(なお、下線は、補正箇所を明示するために合議体にて付した。)。
2 補正の適否について
(1)補正事項1について
補正事項1は、請求項5に「所定の遊技に関する条件」として記載された複数の条件が、「所定の遊技に関する条件」としてではなく、「第2終了条件」として記載されたものであることを明瞭にするものであるから、特許法第17条の2第5項第4号に掲げる不明瞭な記載の釈明を目的とするものに該当する。
補正事項1は、願書に最初に添付した明細書(以下「本願明細書」という。)の【0055】の記載に基づくものであり、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
(2)補正事項2について
補正事項2は、上記1に示した請求項8に記載された「第2終了条件」について、補正前に「前記特別役の入賞が持ち越しされていないことが含まれる」とあったものを「前記特別役に当せんしておらず前記特別役の入賞が持ち越しされていないことが含まれる」と限定するものであって、補正前の請求項8に記載された発明と補正後の請求項8に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
補正事項2は、本願明細書の【0026】~【0028】、【0055】の記載に基づくものであり、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
(3)補正事項3について
補正事項3は、上記1に示した請求項9に記載された「設定値が設定された場合」について、その時点での「差数に基づいて、有利区間の終了を制御可能」であることを意味することを明瞭にするものであるから、特許法第17条の2第5項第4号に掲げる不明瞭な記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、補正事項3は、本願明細書の【0055】、【0105】の記載に基づくものであり、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
(4)補正事項4について
補正事項4は、請求項11を削除するものであるから、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当し、新たな技術的事項を導入しないものであることは明らかであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
(5)小括
上記(1)~(4)の検討内容からみて、請求項5、8,9、11に係る本件補正は適法になされたものである。
第3 本願発明について
本件補正は上記のとおり適法であるので、本願の請求項1~請求項11に係る発明のうち、請求項1、4、10に係る発明(以下「本願発明1、4、10」という。)は、令和5年4月10日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1、4、10に記載された事項により特定される次のとおりのものである(記号A~Eは、本願発明1、4、10の分説に対応させて合議体にて付した。)。
「【請求項1】
A 遊技区間が有利区間でありかつ複数の終了条件のいずれか1つが満たされた場合に、前記有利区間を通常区間に移行させ、
B 前記有利区間への移行時を基準として、前記有利区間における遊技媒体の払い出し数および遊技媒体の投入数の差数を計測する制御装置を備える遊技機であって、
C 前記複数の終了条件が、
C1 前記差数がゼロを超えた場合に充足可能な少なくとも1つの第1終了条件と、
C2 前記第1終了条件とは異なる少なくとも1つの第2終了条件とを含み、
D1 前記制御装置が、ゼロを基準として前記差数を報知または示唆可能に構成されている、
E 遊技機。」
「【請求項4】
A 遊技区間が有利区間でありかつ複数の終了条件のいずれか1つが満たされた場合に、前記有利区間を通常区間に移行させ、
B 前記有利区間への移行時を基準として、前記有利区間における遊技媒体の払い出し数および遊技媒体の投入数の差数を計測する制御装置を備える遊技機であって、
C 前記複数の終了条件が、
C1 前記差数がゼロを超えた場合に充足可能な少なくとも1つの第1終了条件と、
C2 前記第1終了条件とは異なる少なくとも1つの第2終了条件と
を含み、
D2 遊技に対する有利度合いが異なる複数の設定値を有し、
D3 前記第2終了条件に、前記設定値が設定されることが含まれる、
E 遊技機。」
「【請求項10】
A 遊技区間が有利区間でありかつ複数の終了条件のいずれか1つが満たされた場合に、前記有利区間を通常区間に移行させ、
B 前記有利区間への移行時を基準として、前記有利区間における遊技媒体の払い出し数および遊技媒体の投入数の差数を計測する制御装置を備える遊技機であって、
C 前記複数の終了条件が、
C1 前記差数がゼロを超えた場合に充足可能な少なくとも1つの第1終了条件と、
C2 前記第1終了条件とは異なる少なくとも1つの第2終了条件と
を含み、
D4 前記制御装置は、ATを除く一般遊技中の所定の遊技状況、または、RTに応じて前記有利区間の終了を制御可能に構成されている、
E 遊技機。」
第4 原査定の拒絶の理由(令和4年12月5日付け)
原査定の拒絶の理由は、概略、次のとおりである。
「理由2(新規性)
本願発明10は、同年8月18日付け拒絶理由通知に示した理由2にて引用した、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由3(進歩性)
本願発明1、4、10は、同年8月18日付け拒絶理由通知に示した理由3にて引用した、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1、2に記載された発明に基づいて、依然として当業者が容易にその発明をすることができたものである。
<引用文献等一覧>
引用文献1.特開2019-202081号公報
引用文献2.特開2019-126680号公報 」
第5 引用文献
(1)引用文献1の記載及び引用発明
ア 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1(特開2019-202081号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は合議体にて付した。以下同じ。)。
(ア)
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記例示等した遊技機においては遊技の興趣向上を図る必要があり、この点について、未だ改良の余地がある。
【0006】
本発明は上記例示した事情等に鑑みてなされたものであり、遊技の興趣向上を図ることが可能な遊技機を提供することを目的とするものである。」
(イ)
「【0062】
次に、本スロットマシン10の電気的構成について、図12及び図13のブロック図に基づいて説明する。
【0063】
主制御装置101には、演算処理手段であるCPU102を中心とするマイクロコンピュータが搭載されている。CPU102には、電源装置91の他に、所定周波数の矩形波を出力するクロック回路103や、入出力ポート104などが内部バスを介して接続されている。かかる主制御装置101は、スロットマシン10に内蔵されるメイン基盤としての機能を果たすものである。」
(ウ)
「【0100】
ここで、当選確率の設定に関する処理について補足説明する。
【0101】
当選確率の設定処理は、電源投入時に主制御装置101にて起動されるメイン処理にて実行される。より詳しくは、当選確率の設定処理は、設定キー挿入孔に設定キーが挿入されてON操作されていることを設定キー検出センサ73aにて検出している状態で、電源投入された場合に、初期化処理の後に起動される。当選確率の設定処理では、所定の操作として、スタートレバー41の操作毎に設定値を1ずつ更新し、例えば、スタートレバー41が1回操作される度に、「設定1」→「設定2」→「設定3」→「設定4」→「設定5」→「設定6」→「設定1」となるように設定値を更新する。なお、各設定値は、例えばクレジット表示部60にて表示され、上記設定値の更新毎にその表示も更新される。そして、設定キー検出センサ73aがOFF操作されたことに基づいて、その時点での設定値を今回の設定値とし、当選確率の設定処理を終了する。当選確率の設定処理の終了に基づいて、クレジット表示部60の表示も終了する。当選確率の設定処理で設定された設定値は、次の当選確率の設定処理が起動されるまで、RAM106に記憶保持される。ステップS302では、この記憶されている設定値に基づいて、抽選テーブルを選択する処理を行うこととなる。」
(エ)
「【0205】
アタックモードとは、押し順ベル当選時と、押し順リプレイ当選時と、のいずれにおいてもストップスイッチ42~44の操作順序が報知される表示モードである。アタックモードは、VBモードへの移行確率が異なる第1アタックモード~第4アタックモードの4つのアタックモードによって構成されており、いずれのアタックモードであっても、通常モードと比してVBモードへの移行確率が高くなっている。VBモードへの移行抽選に当選した場合には、アタックモードからVBモードに移行する。VBモードへの移行抽選に当選することなく所定回数(例えば50回等)のゲームが行われた場合には、アタックモードから通常モードに移行する。
・・・
【0211】
上記のように、通常モードとチャレンジモードとで比較すると、アタックモードへの移行抽選に当選する確率が通常モードよりもチャレンジモードの方が高くなるように設定されている。したがって、チャレンジモードはアタックモードへの移行を期待させる所謂チャンスゾーンとも称される。」
(オ)
「【1331】
<第7の実施形態>
本実施形態では、有利区間の強制終了条件を変更する。既に説明した通り、上記各実施形態では、有利区間中に実行されたゲーム数が上限ゲーム数(1500ゲーム)に達したことに基づいて、アタックモード等の残りゲーム数に関わらず有利区間を強制的に終了する構成(区間表示第2処理)とした。これに対して、本実施形態では、上記の上限ゲーム数の第1の強制終了条件に加えて、有利区間中のメダル増減数(メダル払出数とメダル使用数との差枚数)が上限増加数(上限枚数、2400枚)に達したことを第2の強制終了条件とする。
・・・
【1333】
図213では、第1の強制終了条件にて有利区間が終了する様子を示している。ta1のタイミングにて例えばチャレンジモードに当選することで有利区間が開始され、ta2のタイミングにてチャレンジモードへ移行したとする。既に説明したとおり、チャレンジモードへの移行抽選に当選し、チャレンジモードへ移行した場合であっても、本スロットマシン10では押し順報知は発生しにくく、ゲームを進行するにつれて持ちメダルは減少する。当該チャレンジモード中にアタックモード当選し、ta3のタイミングにて、アタックモードへの移行が生じると、押し順報知が発生し得るようになり、持ちメダルも増加するようになる。その後、例えば、ta4にてVBモードへの移行が生じ、ta5にてアタックモードへ復帰する等して、ta6のタイミングにて有利区間の消化ゲーム数が上限ゲーム数である1500ゲームに達すると、当該有利区間は強制的に終了する。この例では、ta6のタイミングにおいて有利区間中のメダル増減数は上限増加数(2400枚)に達していないものの、上記の上限ゲーム数である第1の強制終了条件が成立しているので、当該有利区間はアタックモード等の残りゲーム数に関わらず強制的に終了する。
【1334】
図214では、第2の強制終了条件にて有利区間が終了する様子を示している。tb1のタイミングにて例えばチャレンジモードに当選することで有利区間が開始され、tb2のタイミングにてチャレンジモードへ移行したとする。そして、上記ta3と同様に、tb3のタイミングで押し順報知が発生し得るアタックモードへ移行することで、持ちメダルの増加が見込めるようになる。」
(カ)
「【図213】
[図:0001409906000001.jpg]
」
(キ)
「【図214】
[図:0001409906000002.jpg]
」
(ク)
「【1336】
図214の例では、tb4~tb5のタイミングと、tb6~tb7のタイミングがボーナス状態として有利区間が消化されたことを示している。tb7にてボーナス状態が終了した後、tb8のタイミングにて有利区間中のメダル払出数が上限増加数である2400枚に達すると、当該有利区間は強制的に終了する。この例では、tb8のタイミングにおいて有利区間中の消化ゲーム数は上限数(1500ゲーム、tb9)に達していないものの、上記の上限増加数である第2の強制終了条件が成立しているので、当該有利区間はアタックモード等の残りゲーム数に関わらず強制的に終了する。」
(ケ)
「【1344】
図217は、本実施形態における区間表示第2処理を示すフローチャートである。
【1345】
ステップS13001では、有利区間中であるか否かを判定する。ここで、本実施形態では、有利区間に移行した後であっても、区間表示器としての第8表示用セグメントN8が点灯表示していない場合もある。この構成については後に詳細に説明するが、既に説明した通り、区間表示第1処理においては、チャレンジモード当選フラグやアタックモード当選フラグがセットされることにより有利区間のゲーム数のカウント(有利区間ゲーム数AGの加算)を開始する構成としている。そこで、本実施形態では、ステップS13001にて、区間表示器の表示の有無ではなく有利区間ゲーム数AGを把握して、当該有利区間ゲーム数AGが1以上である場合に有利区間中であると判定し、有利区間ゲーム数AGが0である場合に有利区間ではないと判定する。
【1346】
ステップS13002では有利区間ゲーム数AGの加算処理を実行する。そして、ステップS13003にて各種カウンタエリア106eに設けられた有利区間増減枚数ZMの更新処理を実行する。有利区間増減枚数ZMは、有利区間中のメダルの増減枚数(有利区間中の各ゲームでベットされた枚数と払い出された枚数との差枚数)をCPU102が把握するためのカウンタであり、ステップS13003では、今回のゲームの入賞結果(直前の入賞結果対応処理や払出判定処理)に基づいて、今回のゲームのメダル増減数(今回のゲームのメダル払出数-今回のゲームのベット数)を把握し、そのメダル増減数を有利区間増減枚数ZMに加算する処理を行う。例えば、今回のゲームが3ベットゲームであり9枚のメダル払出が行われた場合、メダル増減数は+6であり、ステップS13003では有利区間増減枚数ZMに+6を加算する処理を行う。また、今回のゲームが3ベットゲームでありメダル払出が行われなかった場合、メダル増減数は-3であり、ステップS13003では有利区間増減枚数ZMに-3を加算する処理を行う。」
(コ)
「【1353】
区間表示第2処理では、ステップS13005にて残枚数管理処理を実行した後は、ステップS13006にて上記有利区間ゲーム数AGが上限ゲーム数である1500に達したか否か、又は有利区間増減枚数ZMが上限増加数である2400以上となったか否かを判定する。これらいずれかの強制終了条件が成立している場合には、ステップS13007に進み、有利区間の終了用の処理を実行する。
・・・
【1355】
また、ステップS13006にていずれの強制終了条件も成立していないと判定した場合であっても、ステップS13010やステップS13011にて通常終了条件が成立したと判定した場合(チャレンジモード当選フラグやアタックモード当選フラグ、チャレンジモードフラグやアタックモードフラグがいずれもセットされていない場合)、ステップS13007に進み、有利区間の終了用の処理を行う。通常終了条件が成立した場合の処理も、上述の処理と同様である。」
(サ)
「【1707】
(11)区間表示器の表示終了態様テーブルは上記のものに限定されない。例えば、終了時の有利区間の内容だけでなく、終了時の消化ゲーム数(有利区間ゲーム数AGの値)をパラメータとして含む構成としてもよいし、終了時の時間をパラメータとして含む構成としてもよいし、有利区間の開始時の時間をパラメータとして含む構成としてもよいし、有利区間の消化に要した時間の長さをパラメータとして含む構成としてもよく、これらパラメータに基づいて、表示終了態様が異なるようにするとよい。例えば、終了時の消化ゲーム数をパラメータに含む構成の場合、消化ゲーム数が多いほど(有利区間中に得られた特典が多かったであろうほど)遊技者にとって有益な情報が提供され得るような表示終了態様テーブルとしてもよいし、消化ゲーム数が少ないほど(有利区間中に得られた特典が少なかったであろう程)遊技者にとって有益な情報が提供され得るような表示終了態様テーブルとしてもよい。」
(シ)
「【1855】
(132)上限ゲーム数と上限増加数といった複数の強制終了条件を設け、いずれかの強制終了条件が成立することで、他方の強制終了条件が成立していなくても有利区間を強制終了する構成としたが、いずれもの強制終了条件が成立するのを待ってから強制終了する構成としてもよい。」
(ス)
「【2892】
<特徴GI群>
特徴GI1.遊技状態として、遊技媒体の獲得期待度が相対的に高低となる低期待状態(通常区間)と高期待状態(有利区間)とが設定されており、
前記高期待状態の実行数を把握する把握手段(有利区間ゲーム数AG)と、
前記把握手段により把握される実行数が予め定められた上限数(1500)となったことに基づいて、当該高期待状態を終了して前記低期待状態へと移行させる特定終了手段(主制御装置101による区間表示第2処理において、強制終了条件が成立することにより有利区間を終了させる処理を実行する機能)と、
を備える遊技機であって、・・・」
(セ)
「【2955】
なお、以上詳述した特徴AA群乃至特徴GK群の各構成に対して、他の特徴AA群乃至特徴GK群の各構成にて示した技術的思想をそれぞれ個別に適用することも可能であるし、それぞれの技術的思想を組合せて適用することも可能である。各技術的思想を組み合わせて適用する場合、特徴群を跨いで組み合わせることも可能である。」
イ 引用発明
上記アの記載事項からみて、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「a、b、c、c1、c2
演算処理手段であるCPU102を中心とするマイクロコンピュータが搭載されている主制御装置101を備えたスロットマシン10において(【0062】、【0063】)、
主制御装置101のCPU102は、
区間表示器についての区間表示第1処理において、チャレンジモード当選フラグやアタックモード当選フラグがセットされることにより有利区間のゲーム数のカウント(有利区間ゲーム数AGの加算)を開始し(【1345】)、
区間表示器についての区間表示第2処理において、
例えばチャレンジモードに当選することで有利区間が開始された後、有利区間増減枚数ZMカウンタにより、有利区間中のメダル増減枚数(有利区間中の各ゲームで払い出された枚数とベットされた枚数との差枚数)を把握し、
当該チャレンジモード中にアタックモード当選し、アタックモードへの移行が生じ、
今回のゲームの入賞結果(直前の入賞結果対応処理や払出判定処理)に基づいて、今回のゲームのメダル増減数(今回のゲームのメダル払出数-今回のゲームのベット数)を把握し、そのメダル増減数を有利区間増減枚数ZMに加算する処理を行い(【1333】、【1334】、【1344】~【1346】)、
有利区間中に実行されたゲーム数が上限ゲーム数(1500ゲーム)に達することで第1の強制終了条件が成立するか、有利区間中のメダル増減枚数(メダル払出数とメダル使用数との差枚数)が上限枚数(2400枚)に達することで第2の強制終了条件が成立すると、アタックモード等の残りゲーム数に関わらず有利区間を強制的に終了させて、遊技状態を高期待状態である有利区間から、低期待状態である通常区間へと移行させ(【1331】、【1333】、【1336】、【2892】)、
d1´
区間表示器の表示終了態様テーブルに終了時の有利区間の内容をパラメータとして含む構成であり(【1707】)、
d2
設定値を「設定1」~「設定6」のいずれかに更新し(【0101】)、
d4
アタックモードとは、押し順ベル当選時と、押し順リプレイ当選時と、のいずれにおいてもストップスイッチ42~44の操作順序が報知される表示モードであり(【0205】)、
チャレンジモードはアタックモードへの移行を期待させる所謂チャンスゾーンとも称され(【0211】)、
通常終了条件が成立したと判定した場合(チャレンジモード当選フラグやアタックモード当選フラグ、チャレンジモードフラグやアタックモードフラグがいずれもセットされていない場合)、有利区間の終了用の処理を行う(【1355】)、
e スロットマシン10。」
(2)引用文献2の記載及び引用文献2記載の技術事項
ア 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2(特開2019-126680号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の遊技機においては、メダルの払い出し枚数は液晶画面に表示されていたが、メダル差数については表示されていなかった。そのため、遊技者はあとどれくらいのゲーム数を消化すると有利区間が終了するか判断できないという問題があった。
【0012】
[実施形態]
以下に、本発明の遊技機の実施形態としてのスロットマシンを説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で本発明の実施形態を適宜変更することができる。」
(イ)
「【0093】
また、媒体管理部614は、有利区間において、メダルの払い出し枚数からメダルのベット枚数を差し引いた枚数の累積値であるメダルの差枚数、および、差枚数の最大値と最小値との差であるメダル差数を算出する。
【0094】
図7は、差枚数およびメダル差数の算出例である。なお、図7の例では、300ゲーム目で遊技区間が有利区間に移行し、メダル差数の表示が開始されている。また、1100ゲーム目で有利区間が終了している。」
(ウ)
「【図7】
[図:0001409906000003.jpg]
」
(エ)
「【0095】
図7のとおり、差枚数は300ゲーム目で最小値となっている。その後、遊技状態がARTなどに移行し、メダルの獲得枚数が増えていき、差枚数は1100ゲーム目で最大値となっている。これに基づいて、媒体管理部614は有利区間に移行したゲーム以降のメダル差数を算出する。この例では、有利区間に移行したゲームから有利区間が終了するまでの期間のメダル差数は1500枚である。
【0096】
これらの差枚数の情報およびメダル差数の情報は、遊技区間が有利区間のときに液晶画面3に送信される。これにより、液晶画面3にて有利区間中の差枚数およびメダル差数が表示される。」
(オ)
「【0099】
<区間制御部616の説明>
区間制御部616は、所定の処理を行うことができる有利区間と、所定の処理を行うことができない通常区間と、を含む遊技区間のうちのいずれかの遊技区間で遊技進行を実行する。
【0100】
この有利区間は、指示機能にかかるなんらかの処理および抽せんを行うことができる区間である。指示機能にかかるなんらかの処理および抽せんとは、例えば、指示機能を発揮させる(アシストを行う)処理、CZ抽せん処理、CZ処理、AT処理、AT抽せん処理(ATの継続に関する処理を含む)、ART抽せん処理(ARTの継続に関する処理を含む)、ART処理、および所定の条件に基づく遊技状態の変更のことである。所定の条件とは、例えば、前記継続ゲーム数あるいは前記メダル差数が規定値に達した場合などである。」
(カ)
「【0116】
区間制御部616は、有利区間の継続ゲーム数が1500ゲームに到達した場合、あるいは、メダル差数が所定値(例えば2400枚)を超えた場合に有利区間を強制的に通常区間へ移行させる。」
・・・
【0118】
また、設定値制御部615によって設定値が変更された場合にも、区間制御部616は有利区間を終了させる。
・・・
【0120】
なお、本実施形態においては、遊技区間が通常区間から有利区間へ切り替わる確率は、設定値によって差が設けられている。すなわち、設定値が高いほど有利区間への移行確率は高く設定されている。」
イ 引用文献2記載の技術事項
上記アの記載事項より、引用文献2には次の技術事項(以下「引用文献2記載の技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
「a
指示機能にかかるなんらかの処理および抽せんを行うことができる有利区間と、指示機能にかかるなんらかの処理および抽せんを行うことができない通常区間と、を含む遊技区間のうちのいずれかの遊技区間で遊技進行を実行する区間制御部616を備え(【0099】、【0100】)、
区間制御部616は、有利区間の継続ゲーム数が1500ゲームに到達した場合、あるいは、メダル差数が所定値(例えば2400枚)を超えた場合に有利区間を強制的に通常区間へ移行させ(【0116】)、
b
媒体管理部614は、有利区間において、メダルの払い出し枚数からメダルのベット枚数を差し引いた枚数の累積値であるメダルの差枚数を算出し(【0093】)、
d1
媒体管理部614は、差枚数の情報を遊技区間が有利区間のときに液晶画面3に送信し、これにより、液晶画面3にて有利区間中の差枚数を表示し、差枚数は300ゲーム目で最小値となり、1100ゲーム目で最大値となっており(【0093】、【0094】~【0096】)、
d3
設定値が高いほど有利区間への移行確率は高く設定されており(【0120】)、
設定値制御部615によって設定値が変更された場合にも、区間制御部616は有利区間を終了させる(【0118】)、
e スロットマシン。」
第6 対比
1 本願発明1について
本願発明1と引用発明とを分説に従い対比する。
ア 構成Aについて
引用発明の「高期待状態である有利区間」、「低期待状態である通常区間」は、それぞれ、本願発明1の「有利区間」、「通常区間」に相当する。
そして、引用発明の「第1の強制終了条件」、及び「第2の強制終了条件」は、本願発明1の「複数の終了条件のいずれか1つ」に相当する。
また、引用発明の「演算処理手段であるCPU102を中心とするマイクロコンピュータが搭載されている主制御装置101」は、本願発明1の「制御装置」に相当する。
そうすると、引用発明の「有利区間中に」「第1の強制終了条件が成立するか、有利区間中」に「第2の強制終了条件が成立すると」「有利区間を強制的に終了させて、遊技状態を高期待状態である有利区間から、低期待状態である通常区間へと移行させ」る「主制御装置101」は、本願発明1の構成Aの「遊技区間が有利区間でありかつ複数の終了条件のいずれか1つが満たされた場合に、有利区間を通常区間に移行させ」る「制御装置」に相当する。
したがって、引用発明は、本願発明1の構成Aに相当する構成を備える。
イ 構成B、Eについて
引用発明の「例えばチャレンジモードに当選することで有利区間が開始された」ときは、本願発明1の「有利区間への移行時」に相当する。
そして、引用発明の
「有利区間中の各ゲームで払い出された枚数」、
「有利区間中の各ゲームで」「ベットされた枚数」、
「有利区間増減枚数ZMカウンタにより」「メダル増減枚数」である「差枚数を把握」することは、それぞれ、本願発明1の
「有利区間における遊技媒体の払い出し数」、
「有利区間における」「遊技媒体の投入数」、
「差数を計測する」ことに相当する。
そうすると、引用発明の「例えばチャレンジモードに当選することで有利区間が開始された後、有利区間増減枚数ZMカウンタにより、有利区間中のメダル増減枚数(有利区間中の各ゲームで払い出された枚数とベットされた枚数との差枚数)を把握」する「主制御装置101」は、本願発明1の「有利区間への移行時を基準として、有利区間における遊技媒体の払い出し数および遊技媒体の投入数の差数を計測する制御装置」に相当する。
また、引用発明の「スロットマシン10」は、本願発明1の「遊技機」に相当する。
したがって、引用発明は、本願発明1の構成B、Eに相当する構成を備える。
ウ 構成C、C1、C2について
上記アより、引用発明の「第1の強制終了条件」及び「第2の強制終了条件」は、本願発明1の「複数の終了条件」に相当する。
そして、引用発明の「有利区間中のメダル増減枚数(メダル払出数とメダル使用数との差枚数)」は、本願発明の「差数」に相当することから、引用発明の「有利区間中のメダル増減枚数(メダル払出数とメダル使用数との差枚数)が上限枚数(2400枚)に達すること」は、「2400枚」が「ゼロを超えた」値であることから、本願発明1の「差数がゼロを超えた場合」に相当する。
そうすると、引用発明の「有利区間中のメダル増減枚数が上限枚数(2400枚)に達することで」「成立可能な」「第2の強制終了条件」は、本願発明1の「差数がゼロを超えた場合に充足可能な少なくとも1つの第1終了条件」に相当する。
また、引用発明の「有利区間中に実行されたゲーム数が上限ゲーム数(1500ゲーム)に達することで」「成立可能な」「第1の強制終了条件」は、「第2の強制終了条件」とは異なる条件であるから、本願発明1の「第1終了条件とは異なる少なくとも1つの第2終了条件」に相当する。
したがって、引用発明は、本願発明1の構成C、C1、C2に相当する構成を備える。
エ 構成D1について
上記アより、引用発明の「CPU102」を有する「主制御装置101」は、本願発明1の「制御装置」に相当する。
また、引用発明において、「区間表示器」への「終了時の有利区間の内容」の表示は、構成a、b、c、c1、c2によると、「主制御装置101のCPU102」により行われるものである。
一方、本願発明1において、「制御装置が、ゼロを基準として差数を報知または示唆可能に構成されている」ことは、構成Bより、「差数」が「有利区間への移行時を基準として」「計測」されることから、「制御装置が有利区間におけるゼロを基準とする差数を報知または示唆可能に構成されている」ことと解される。
そうすると、引用発明の「主制御装置101のCPU102」により「区間表示器」への「終了時の有利区間の内容」を表示することと、本願発明1の「制御装置が、ゼロを基準として差数を報知または示唆可能に構成されている」こととは、「制御装置が、有利区間における遊技内容を報知または示唆可能に構成されている」ことで共通する。
オ 本願発明1と引用発明との一致点及び相違点
上記ア~エより、引用発明は、本願発明1の構成A~C2、Eを備えることから、本願発明1と引用発明とは、「制御装置」により「報知または示唆可能に構成されている」「有利区間における遊技内容」に関して、本願発明1が、「ゼロを基準と」する「差数」を「報知または示唆可能」(構成D1)であるのに対して、引用発明が、「終了時の有利区間の内容」を「区間表示器」に「表示」(報知)するものであるが、表示される「有利区間の遊技内容」が本願発明1のように「ゼロを基準とし」た「差数」であるか否か不明である点(以下、「相違点1」という。)で相違し、その余の点で一致する。
2 本願発明4について
本願発明4と引用発明とを分説に従い対比する。
本願発明4の構成A~C2、Eについては、上記1において検討したとおりである。
引用発明の構成d2と本願発明4の構成D2とを対比する。
引用発明の構成d2の「設定値を「設定1」~「設定6」のいずれかに更新」することは、本願発明4の構成D2の「遊技に対する有利度合いが異なる複数の設定値を有」することに相当する。
そうすると、引用発明は、本願発明4の構成A~C2、D2、Eを備えることから、本願発明4と引用発明とは、本願発明4が、「第2終了条件に、設定値が設定されることが含まれる」(構成D3)のに対して、引用発明は、そのような構成を備えない点(以下、「相違点2」という。)で相違し、その余の点で一致する。
3 本願発明10について
本願発明10と引用発明とを分説に従い対比する。
本願発明10の構成A~C2、Eについては、上記1において検討したとおりである。
引用発明の構成d4と本願発明10の構成D4とを対比する。
引用発明の「アタックモード」は、「押し順ベル当選時と、押し順リプレイ当選時と、のいずれにおいてもストップスイッチ42~44の操作順序が報知される表示モードであ」ることから、本願発明10の「AT」に相当する。
そうすると、引用発明の「チャレンジモードフラグ」が「セットされ」て「チャンスゾーン」にある遊技状況は、本願発明10の「ATを除く一般遊技中の所定の遊技状況」に相当する。
したがって、引用発明の構成d4の「通常終了条件が成立したと判定した場合(チャレンジモード当選フラグやアタックモード当選フラグ、チャレンジモードフラグやアタックモードフラグがいずれもセットされていない場合)、有利区間の終了用の処理を行」うことは、少なくとも、「チャレンジモードフラグ」がセットされている状態から、セットされていない状態に遊技状態が変化する場合に「有利区間の終了用の処理を行」うことを含むものであるから、引用発明は、本願発明10の構成D4の「制御装置は、ATを除く一般遊技中の所定の遊技状況」「に応じて有利区間の終了を制御可能に構成されている」ことに相当する構成を備える。
すると、上記1において検討したとおり、引用発明は、本願発明10の構成A~C2、D4、Eを備えることから、引用発明は、本願発明10に一致し、両者の間に相違点はない。
第7 判断
1 本願発明1について
本願発明1と引用発明との相違点1について検討するため、引用文献2記載の技術事項と本願発明1とを対比する。
引用文献2記載の技術事項の「遊技区間」、「有利区間」、「通常区間」、「区間制御部616」と「媒体管理部614」は、それぞれ、本願発明1の「遊技区間」、「有利区間」、「通常区間」、「制御装置」に対応する。
そうすると、引用文献2記載の技術事項の構成aの「有利区間の継続ゲーム数が1500ゲームに到達した場合、あるいは、メダル差数が所定値(例えば2400枚)を超えた場合に有利区間を強制的に通常区間へ移行させ」ることは、本願発明1の構成Aの「遊技区間が有利区間でありかつ複数の終了条件のいずれか1つが満たされた場合に、有利区間を通常区間に移行させ」る「制御装置」に対応する。
そして、引用文献2記載の技術事項の構成bの「有利区間において、メダルの払い出し枚数からメダルのベット枚数を差し引いた枚数の累積値であるメダルの差枚数を算出」する「媒体管理部614」は、本願発明1の構成Bの「有利区間における遊技媒体の払い出し数および遊技媒体の投入数の差数を計測する制御装置」に対応する。
このように、引用文献2記載の技術事項と本願発明1は、「遊技区間が有利区間でありかつ複数の終了条件のいずれか1つが満たされた場合に、有利区間を通常区間に移行させ、有利区間における遊技媒体の払い出し数および遊技媒体の投入数の差数を計測する制御装置」を備える点で共通するものである。
また、引用文献2記載の技術事項の構成d1の「300ゲーム目で最小値となり、1100ゲーム目で最大値となって」いる「差枚数」は、本願発明1の構成D1の「ゼロを基準と」する「差数」に対応する。
そうすると、引用文献2記載の技術事項の構成d1の「媒体管理部614は、差枚数の情報を遊技区間が有利区間のときに液晶画面3に送信し、これにより、液晶画面3にて有利区間中の差枚数を表示」することは、本願発明1の構成D1の「制御装置が、ゼロを基準として差数を報知」「可能に構成されている」ことに対応する。
したがって、引用文献2記載の技術事項は、相違点1に係る本願発明1の構成D1に対応する構成を備える。
ところで、引用文献2記載の技術事項は、「メダル差数については表示されていなかった」ため「遊技者はあとどれくらいのゲーム数を消化すると有利区間が終了するか判断できないという問題があった」ことを解決するものである(上記「第5(2)ア(ア)参照。」)。
引用発明は、構成d1´より「有利区間の内容を」「区間表示器」に表示するものであるから、引用文献2記載の技術事項と同様に、有利区間の内容を遊技者に知らせるという作用効果を奏するものである。
したがって、引用発明と引用文献2記載の技術事項とは、遊技区間の内容を遊技者に報知するという共通の課題を解決する点で共通する。
よって、引用発明の「有利区間の内容」を表示する「区間表示器」に引用文献2記載の技術事項を適用して、「有利区間において、メダルの払い出し枚数からメダルのベット枚数を差し引いた枚数の累積値であるメダルの差枚数」、すなわち、相違点1に係る「ゼロを基準として」、「差数」を「区間表示器」に表示することは、当業者が容易になし得たものである。
また、本願発明1が奏する効果は、引用発明、引用文献2記載の技術事項から予測される効果の範囲内のものである。
一方、請求人は、令和5年4月10日付けの審判請求書において、次の主張を行う。
「引用文献2の「メダル差数」は、引用文献2の段落0093に示されているように、差枚数の最大値と最小値との差であり、差枚数は、有利区間において、メダルの払い出し枚数からメダルのベット枚数を差し引いた枚数の累積値です。つまり、引用文献2の発明では、「メダル差数」がどれだけマイナスであったとしても、遊技者は最大で2400枚しか獲得できません。
これに対して、補正後の請求項1の「差数」は、有利区間への移行時を基準とした有利区間における遊技媒体の払い出し数および遊技媒体の投入数の差数であり、例えば、「差数」がマイナス1000枚であれば、遊技者は最大で3400枚獲得できることになります。このため、本願の「差数」は遊技者の注目度が高いものであり、遊技者の遊技動機になり得るものです。このような顕著な効果は、引用文献1および2のいずれにも記載されていません。
よって、ゼロを基準として「差数」を報知または示唆可能に構成することは、設計的事項ではありません。」(3.請求項1~3の発明について)
そこで、上記請求人の主張について検討する。
前記「第6の1のウ」において検討したように、引用発明の「有利区間中のメダル増減枚数(メダル払出数とメダル使用数との差枚数)が上限枚数(2400枚)に達すること」は、本願発明1の「差数がゼロを超えた場合」に相当することから、引用発明の「メダル増減枚数」は、本願発明1の「ゼロを基準と」する「差数」に対応する。また、引用文献2記載の技術事項における構成bの「有利区間にお」ける「メダルの払い出し枚数からメダルのベット枚数を差し引いた枚数の累積値であるメダルの差枚数」も、本願発明1の「ゼロを基準と」する「差数」に対応し、これを報知可能にすることが記載されている。
さらに、本願発明1の「第1終了条件」について、明細書【0054】には「第1終了条件の一例を次に示す。
・遊技区間が有利区間に設定された以降、第1差数がゼロ以上の所定値(例えば、2400枚または上限値)に到達した場合。上限値は、ゼロ以上の任意の値である。」と記載されており、第1終了条件が、「第1差数が」「2400枚」である場合も含まれていることから、上記請求人の主張は本願発明1の記載に基づいておらず、請求人の上記主張を採用することはできない。
2 本願発明4について
本願発明4と引用発明との相違点2について検討するため、引用文献2記載の技術事項と本願発明4とを対比する。
上記1において検討したように、引用文献2記載の技術事項の「遊技区間」、「有利区間」、「通常区間」、「区間制御部616」と「媒体管理部614」は、それぞれ、本願発明4の「遊技区間」、「有利区間」、「通常区間」、「制御装置」に対応し、引用文献2記載の技術事項は、本願発明4の構成A、Bに対応する構成を備える。
そして、引用文献2記載の技術事項の構成d3の「設定値制御部615によって設定値が変更された場合にも、区間制御部616は有利区間を終了させる」ことは、本願発明4の構成D3の「第2終了条件に、設定値が設定されることが含まれる」ことに相当する。
さらに、遊技機の技術分野において、設定値の変更を有利な遊技区間の終了条件とすることは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、上記引用文献2の【0118】や、特開2021-166620号(令和3年10月21日)の【0077】や、特開2021-153833号(令和3年10月7日)の【0176】を参照のこと。以下「周知の技術事項」という。)。
また、引用発明、引用文献2記載の技術事項、及び、上記周知の技術事項において、設置値を変更することにより遊技者に対する有利度を変更し、もって、遊技者の射倖心を向上させたり、低下させることは、遊技機の技術分野における自明の課題である。
したがって、引用発明の「第1の強制終了条件」(本願発明4の「第2終了条件」に相当)に引用文献2記載の技術事項を適用して、若しくは、上記周知の技術事項を適用して、「第1の強制終了条件」(第2終了条件)に「設定値」の「設定」を含むものとし、上記相違点2に係る本願発明4の構成に到達することは当業者が容易になし得たものである。
また、本願発明4が奏する効果は、引用発明、引用文献2記載の技術事項、若しくは、上記周知の技術事項から予測される効果の範囲内のものである。
一方、請求人は、令和5年4月10日付けの審判請求書において、次の主張を行う。
「引用文献2の発明では、引用文献2の図7に示されているように、有利区間が開始されてから獲得可能なメダルは最大で1500枚です。つまり、引用文献2の発明では、例えば、差数がマイナス10000枚であった場合でも、1500枚のメダルを獲得したときに有利区間が終了し、AT等の特別遊技状態も終了します。
これに対して請求項4の発明は、有利区間への移行時を基準として差数が計測されるので、有利区間への移行後の差数によって獲得可能なメダルの枚数が異なります。例えば、差数がマイナス10000枚であった場合、最大で12400枚のメダルを獲得可能になるため、射幸心を煽りすぎるといった問題が生じる場合があります。設定値の変更を第2終了条件とすることで、このような課題を解決することができますが、引用文献2にはその発想はありません。
また、引用文献2の発明は、引用文献2の段落0006に示されているように、遊技者はあとどれくらいのゲーム数を消化すると有利区間が終了するか判断できないという問題を解決するためになされた発明であり、有利区間の終了条件そのものは、課題を解決するための手段に含まれません。つまり、引用文献2の0118に記載されているのは、設定値が変更されると有利区間が終了することのみであり、「差数がプラスかマイナスかで、遊技者にとって有利か不利かが変化するため、設定変更されてさえいれば、フラットな状態での遊技を遊技者に提供することができる」という本願の思想は引用文献2に開示されていません。」(4.請求項4の発明について)
そこで、上記請求人の主張について検討する。
請求人は、本願発明4は、有利区間への移行時を基準として差数が計測されるので、有利区間への移行後の差数によって獲得可能なメダルの枚数が異なるため、設定値の変更を第2終了条件とすることで、射幸心を煽りすぎることを抑制することができるが、引用文献2にはその発想はないという旨主張するが、設定値の変更を有利な遊技区間の終了条件とすることは、引用文献2に記載されているし、周知の技術事項であって、請求人が主張する「差数がプラスかマイナスかで、遊技者にとって有利か不利かが変化するため、設定変更されてさえいれば、フラットな状態での遊技を遊技者に提供することができる」という本願発明4の奏する効果は、引用発明に引用文献2記載の技術事項、もしくは、上記周知の技術事項を適用することにより得られる効果であるから、請求人の上記主張を採用することはできない。
3 本願発明10について
前記「第6の3」において検討したように、引用発明は、本願発明10に一致し、両者の間に相違点はない。
したがって、本願発明10は、引用発明である。
よって、本願発明10は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
一方、請求人は、令和5年4月10日付けの審判請求書において、次の主張を行う。
「引例文献1の「有利区間」は、引例文献1の段落0439に示されているように、「押し順ベルや押し順リプレイの操作順序が報知され易くなることによって遊技者にとって有利な態様にて入賞させ易くなるナビ状態(アタックモードやスーパーアタックモード、高頻度モード)、当該ナビ状態への移行抽選に当選し易くなるチャンス状態(チャレンジモードや第1BB、高確率モード)、又はナビ状態やチャンス状態への移行抽選に当選しているもののこれらナビ状態やチャンス状態に移行していない当選状態(当選モード)を含む区間」であり、チャレンジモード当選フラグ、アタックモード当選フラグ、チャレンジモードフラグおよびアタックモードフラグのいずれかに当選している場合の遊技区間は、「有利区間」であると言えます。
つまり、引用発明において、チャレンジモード当選フラグ、アタックモード当選フラグ、チャレンジモードフラグおよびアタックモードフラグのいずれもが設定されていない場合の遊技区間は、有利区間ではなく、有利区間の終了が制御されることはありません。
また、拒絶査定で認定されているように、引例発明では、引例文献1の段落1355に示されているように、チャレンジモード当選フラグ、アタックモード当選フラグ、チャレンジモードフラグおよびアタックモードフラグのいずれもがセットされていない場合を有利区間の通常終了条件としています。
一般に、遊技状態の管理とフラグの管理とは完全に別のものであると言えます。例えば、一般的な遊技機では、AT当選フラグがセットされたから直ちにATを開始するのではなく、ATが当選していることを匂わすような演出をしばらく続けてからATを開始させるように構成されています。これは、遊技状態の管理とAT当選フラグとが別のものモノだからできることであり、当業者に一般的に知られているものです。引用文献1においても、図32に示されているように、例えば、アタックモード当選フラグがセットされた後(S808)、前兆モードが設定される(S809~S812)ように構成されています。」
そこで、上記請求人の主張について検討する。
まず、引用発明において、チャレンジモード当選フラグ、アタックモード当選フラグ、チャレンジモードフラグおよびアタックモードフラグのいずれもが設定されていない場合の遊技区間は、有利区間ではなく、有利区間の終了が制御されることはないという旨の主張について、前記「第6の3」において検討したように、引用発明の「チャレンジモードフラグ」が「セットされ」て「チャンスゾーン」にある遊技状況を、本願発明10の「ATを除く一般遊技中の所定の遊技状況」に相当させたうえで、少なくとも「チャレンジモードフラグ」がセットされている状態から、セットされていない状態に遊技状態が変化する場合を含む、引用発明の構成d4の「通常終了条件が成立したと判定した場合(チャレンジモード当選フラグやアタックモード当選フラグ、チャレンジモードフラグやアタックモードフラグがいずれもセットされていない場合)」に「有利区間の終了用の処理を行」うことを、本願発明10の構成D4の「制御装置は、ATを除く一般遊技中の所定の遊技状況」「に応じて有利区間の終了を制御可能に構成されている」ことに相当させていることから、上記請求人の主張を採用することはできない。
次に、引用発明では、チャレンジモード当選フラグ、アタックモード当選フラグ、チャレンジモードフラグおよびアタックモードフラグのいずれもがセットされていない場合を有利区間の通常終了条件としているところ、一般に、遊技状態の管理とフラグの管理とは完全に別のものであり、フラグの管理は、遊技状態の管理をしているとはいえないという旨の主張について、前記「第6の3」において検討したように、引用発明の「チャレンジモードフラグ」が「セットされ」て「チャンスゾーン」にある遊技状況を、本願発明10の「ATを除く一般遊技中の所定の遊技状況」に相当させていることから、上記請求人の主張を採用することはできない。
4 上申書における請求人の主張
請求人は、令和5年9月7日提出の上申書において、「・独立請求項1、4、6、8~10の「前記第1終了条件とは異なる少なくとも1つの第2終了条件」(構成C2)を「前記第1終了条件とは異なる少なくとも1つの第2終了条件であって、所定の遊技に関する条件が充足され、かつ、所定の前記差数に関する条件が充足されることが含まれる、第2終了条件」に変更する補正」(下線は請求人が付した。)を行う準備のある旨主張する。
そこで、本件補正発明、本願発明1、本願発明4、及び本願発明10の構成C2を上記補正案のように変更した場合について検討する。
引用文献1の【1855】には、「上限ゲーム数と上限増加数といった複数の強制終了条件を設け、・・・有利区間を強制終了する構成としたが、いずれもの強制終了条件が成立するのを待ってから強制終了する構成としてもよい。」こと、すなわち、異なる強制終了条件がいずれも成立することを有利区間の終了条件とすることが記載されているから、上記下線部の構成に相当する構成が記載されている。
したがって、引用発明において、「有利区間中に実行されたゲーム数」の「上限ゲーム数」や、「有利区間中のメダル増減枚数」の「上限枚数」にいずれも到達した場合を「第1の強制終了条件」とし、上記変更後の構成C2の構成に到達することは、当業者が適宜なし得たものである。
よって、仮に、独立請求項1、4、6、8~10の構成C2が上記のように変更されたとしても、上記において検討した本願発明1、4,10の進歩性の判断、若しくは、新規性の判断に影響を与えるものではない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、本願発明1、4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願発明10は、特許法第29条第1項3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-005764