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特許拒絶査定不服審判

2023-003831

変換装置及び変換方法

審判番号
2023-003831
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-209572
請求日
2023年03月06日
審決日
2024年08月19日
公報発行日
2024年11月29日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】京セラ株式会社
  • 【請求人代理人】TRY国際弁理士法人
審判長/審判官
  • 審判長 三崎 仁
  • 審判官 樋口 宗彦
  • 審判官 渡▲辺▼ 純也
分類
P18 .121-WZ (G01J) / P18 .113-WZ (G01J) / P18 .575-WZ (G01J) / P18 .57 -WZ (G01J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-209572「変換装置及び変換方法」拒絶査定不服審判事件〔令和5年7月5日出願公開、特開2023-94221〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1.手続の経緯 本件出願は、令和3年12月23日に出願された特許出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。 令和4年 9月 1日付け:拒絶理由通知 同年 10月28日 :意見書・手続補正書提出 同年 12月 1日付け:拒絶査定 令和5年 3月 6日 :審判請求 同日 :手続補正書提出 同年 10月23日付け:拒絶理由通知 同年 12月25日 :意見書・手続補正書提出 (この手続補正書による補正を以下「補正1」という。) 令和6年 2月28日付け:拒絶理由通知(最後の拒絶理由) (以下「当審最後拒理」という。) 同年 5月 7日 :意見書・手続補正書提出 (この手続補正書による補正を以下「補正2」という。) 第2.補正2についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 補正2を却下する。 [理由] 1 補正2について 補正2は、特許請求の範囲の請求項1~4の記載を含む補正であり、補正2により、特許請求の範囲の請求項1は、補正1により補正された下記(1)アのものから、下記(2)のものへと補正された。 ここで、各構成単位冒頭の「pA1」などは当審で付した分説番号であり、以下該各構成単位について該分説番号を用いて「構成pA1」などという。以下、引用発明等についても同様である。 (1)補正1により補正された特許請求の範囲 補正1により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は以下のとおりである。当該請求項1に係る発明を以下「補正1発明」という。 ア 請求項1の記載 「【請求項1】 pA1 表示部、 pA2 可視光を少なくとも含む光に応じて発電する太陽電池セル及び pA3 前記太陽電池セルの発電電力を蓄積する二次電池を備える pA4 ウェアラブル端末に内蔵される変換装置であって、 pB 前記発電電力の値として発電電流値を測定する電流センサと、 pC 2以上の所望波長帯に対応する所定変換係数に基づいて前記発電電流値を前記2以上の所望波長帯の光の強度に変換する制御部と、を備え、 pD 前記2以上の所望波長帯は、前記太陽電池セルの発電に寄与する光の波長帯の一部である第1所望波長帯と、前記第1所望波長帯と異なり、前記太陽電池セルの発電に寄与する光の波長帯の一部である第2所望波長帯と、を含み、 pE 前記所定変換係数は、前記第1所望波長帯に対応する第1所定変換係数及び前記第2所望波長帯に対応する第2所定変換係数を含み、 pF1 前記制御部は、前記第1所定変換係数に基づいて、前記発電電流値を前記第1所望波長帯の光の強度に変換し、前記第2所定変換係数に基づいて、前記発電電流値を前記第2所望波長帯の光の強度に変換し、 pF2 前記第1所望波長帯及び前記第2所望波長帯は、前記太陽電池セルの発電に寄与する光の波長帯のうち、前記可視光の波長帯の一部を少なくとも含む、 pG 変換装置。」 イ 請求項2~5の記載 「 【請求項2】 前記第2所望波長帯は、400-600nmの波長帯を含む、請求項1に記載の変換装置。 【請求項3】 前記所定変換係数は、前記発電電流値を前記2以上の所望波長帯の光の強度に変換する時期毎に異なる、請求項1又は2に記載の変換装置。 【請求項4】 前記所定変換係数は、前記発電電流値を前記2以上の所望波長帯の光の強度に変換する地域毎に異なる、請求項1-3のいずれか一項に記載の変換装置。 【請求項5】 表示部、可視光を少なくとも含む光に応じて発電する太陽電池セル及び前記太陽電池セルの発電電力を蓄積する二次電池を備えるウェアラブル端末に内蔵される変換装置の変換方法であって、 前記発電電力の値として発電電流値を測定するステップAと、 2以上の所望波長帯に対応する所定変換係数に基づいて前記発電電流値を前記2以上の所望波長帯の光の強度に変換するステップBと、を備え、 前記2以上の所望波長帯は、前記太陽電池セルの発電に寄与する光の波長帯の一部である第1所望波長帯と、前記第1所望波長帯と異なり、前記太陽電池セルの発電に寄与する光の波長帯の一部である第2所望波長帯と、を含み、 前記所定変換係数は、前記第1所望波長帯に対応する第1所定変換係数及び前記第2所望波長帯に対応する第2所定変換係数を含み、 前記ステップBは、前記第1所定変換係数に基づいて、前記発電電流値を前記第1所望波長帯の光の強度に変換し、前記第2所定変換係数に基づいて、前記発電電流値を前記第2所望波長帯の光の強度に変換するステップを含み、 前記第1所望波長帯及び前記第2所望波長帯は、前記太陽電池セルの発電に寄与する光の波長帯のうち、前記可視光の波長帯の一部を少なくとも含む、変換方法。」 (2)補正2により補正された特許請求の範囲の請求項1 補正2により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は以下のとおりである。下線は、補正箇所を表すため当審で付した。また、当該請求項1に係る発明を以下「補正2発明」という。 「【請求項1】 A1 表示部、 A2 可視光を少なくとも含む光に応じて発電する太陽電池セル及び A3 前記太陽電池セルの発電電力を蓄積する二次電池を備える A4 ウェアラブル端末に内蔵される変換装置であって、 B 前記発電電力の値として発電電流値を測定する電流センサと、 C 2以上の所望波長帯に対応する所定変換係数に基づいて前記発電電流値を前記2以上の所望波長帯の光の強度に変換する制御部と、を備え、 D 前記2以上の所望波長帯は、前記太陽電池セルの発電に寄与する光の波長帯の一部である第1所望波長帯と、前記第1所望波長帯と異なり、前記太陽電池セルの発電に寄与する光の波長帯の一部である第2所望波長帯と、を含み、 E 前記所定変換係数は、前記第1所望波長帯に対応する第1所定変換係数及び前記第2所望波長帯に対応する第2所定変換係数を含み、 F1 前記制御部は、前記第1所定変換係数に基づいて、前記発電電流値を前記第1所望波長帯の光の強度に変換し、前記第2所定変換係数に基づいて、前記発電電流値を前記第2所望波長帯の光の強度に変換し、 F21 前記第1所望波長帯は、前記太陽電池セルの発電に寄与する光の波長帯のうち、前記可視光の波長帯の一部を少なくとも含み、350-500nmの波長帯であり、 F22 前記第2所望波長帯は、前記太陽電池セルの発電に寄与する光の波長帯のうち、前記可視光の波長帯の一部を少なくとも含み、400-600nmの波長帯である、 G 変換装置。」 2 補正2の適否について 補正2は、補正2前の構成pF2における特定事項である「第1所望波長帯」・「第2所望波長帯」について、それぞれ「350-500nmの波長帯であ」る、「400-600nmの波長帯である」との限定事項(それぞれ以下「F21付加事項」、「F22付加事項」という。)を付加するものである。 (1)補正2が新規事項を追加するものであるか ア 明細書の記載 本件出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲、及び図面(以下、それぞれ「当初明細書」、「当初特許請求の範囲」、「当初図面」といい、これらを総称して「当初明細書等」という。)において、F21付加事項・F22付加事項の各所望波長帯及びそれらのウェアラブル端末への実装形態について言及した記載は、次のとおりである。 (ア)記載1 「【0024】 実施形態では、制御部330は、所定変換係数に基づいて発電電力の値(実施形態では、電流値[mA])を所望波長帯の光の強度に変換する制御部を構成する。所定変換係数は、発電電力の値を所望波長帯の光の強度に変換するための係数であり、発電電力の値と所望波長帯の光の強度との相関関係に基づいて特定可能である。所定変換係数の詳細については後述する。 ・・・ 【0026】 実施形態では、紫外線などの不可視光が所望波長帯として用いられるが、可視光のみが所望波長帯として用いられる場合には、光の強度は、光束[lm]、光量[lm・s]、照度[lx]、光度[cd]、輝度[cd/m2]などであってもよい。 【0027】 (波長) 以下において、実施形態に係る波長について説明する。ここでは、PVセル120の発電に寄与する光の波長帯が350nm-1,100nmであるケースについて例示する。 【0028】 図3に示すように、350nm-1,100nmの波長帯において、日射強度は波長帯毎に異なる。日射強度の単位は、[kW/m2]で表されてもよく、[MJ/m2]で表されてもよい。なお、図3に示す日射強度の分布は一例に過ぎず、太陽の高さなどの要因によって日射強度の分布は異なっていてもよい。 【0029】 ここで、PVセル120の発電電力は、350nm-1,100nmの全波長帯について得られる値であるため、PVセル120の発電電力を所望波長帯の光の強度を変換する場合には、所望波長帯毎に異なる所定変換係数を用いることが好ましい。例えば、所望波長帯が350-500nmであるケースで用いる所定変換係数は、所望波長帯が400-600nmであるケースで用いる所定変換係数と異なることが好ましい。」 (イ)記載2 「【0053】 [実験] 以下において、実験について説明する。実験では、PVセル120の発電に寄与する波長帯(350-1,100nm)とその一部の波長帯との相関関係について確認した。 【0054】 第1に、全波長帯(350-1,100nm)の光の強度を測定可能であり、全波長帯の一部の波長帯の光の強度を測定可能である光センサを準備した。第2に、全波長帯(350-1,100nm)の光の強度を光センサによって測定し、全波長帯の一部である第1波長帯(350-500nm)の光の強度を光センサによって測定し、全波長帯の一部である第2波長帯(400-600nm)の光の強度を光センサによって測定した。第3に、全波長帯の光の強度と第1波長帯の光の強度との相関関係を計算し、全波長帯の光の強度と第2波長帯の光の強度との相関関係を計算した。 【0055】 全波長帯の光の強度と第1波長帯の光の強度との相関関係については、図7に示す通りである。図7に示すように、相関関係を表す決定係数(R2)が極めて高い値となることが明らかとなった。同様に、全波長帯の光の強度と第2波長帯の光の強度との相関関係については、図8に示す通りである。図8に示すように、相関関係を表す決定係数(R2)が極めて高い値となることが明らかとなった。 【0056】 ここで、図7において、「傾き」は、全波長帯の光の強度に対する第1波長帯の光の強度の相関関係を表す係数である。同様に、図8において、「傾き」は、全波長帯の光の強度に対する第2波長帯の光の強度の相関関係を表す係数である。PVセル120の変換損失などの影響を受けるものの、全波長帯の光の強度は、PVセル120の発電電力を表す指標として用いることが可能である。すなわち、図7及び図8に示す「傾き」は、上述した所定変換係数と同等であると考えてもよい。このような前提下において、以下に示す知見が得られた。 【0057】 第1に、全波長帯の光の強度に対する第1波長帯の光の強度の相関関係を表す傾きは、全波長帯の光の強度に対する第2波長帯の光の強度の相関関係を表す傾きと異なることが明らかになった。すなわち、所定変換係数は、所望波長帯毎に異なることが好ましいことが明らかになった。」 イ 新規事項について (ア)記載1について 上記記載1は【0024】冒頭の「実施形態では」なる記載から、補正2発明の実施形態として記載されたものと認められる。当該記載1は、「所望波長帯」なる記載や、「所望波長帯が350-500nmであるケース」、「所望波長帯が400-600nmであるケース」なる構成F21・F22の「第1所望波長帯」・「第2所望波長帯」とそれぞれ合致する数値限定された波長帯を個別の「ケース」とする記載は含むものの、前記両「所望波長帯」について「第1」・「第2」などと序数を付す記載は含まないことによっても裏付けられるとおり、所望波長帯を一つの実施形態(一つのウェアラブル端末)において複数設定することについてはそもそも明示的でない。 そして、波長帯が相互に大きく重複する前記両「ケース」の両数値限定された「所望波長帯」を一つの実施形態において同時に設定する態様については記載も示唆も含まれない。 【0029】には「所望波長帯が350-500nmであるケースで用いる所定変換係数は、所望波長帯が400-600nmであるケースで用いる所定変換係数と異なることが好ましい。」なる記載があるが、単に個別の「ケース」について対比的に記載したのみであって、該両「ケース」を一つの実施形態において共に(例えば切り替え可能に)設定することを前提とする記載であるとは解されない。 (イ)記載2について 記載2は、【0053】冒頭の「[実験]」なる記載、及び【0057】末尾の「すなわち、所定変換係数は、所望波長帯毎に異なることが好ましいことが明らかになった」なる記載をもとにすれば、PVセル120の発電に寄与する全波長帯の光の強度と個別の波長帯の光の強度との相関関係に基づく「所定変換係数」が、個別の波長帯ごとに相違することを示すための実験内容とその結果を述べたものであると解するのが妥当であり、構成F21・F22の「第1所望波長帯」・「第2所望波長帯」とそれぞれ合致する数値限定された波長帯が実験例として共に示されているものの、ウェアラブル端末において該両波長帯を共に(例えば切り替え可能に、または同時に)設定することを前提とする記載であると理解することはできない。 ウ 小括 上記ア・イのとおりであるから、補正1発明について、補正2により「F21付加事項」・「F22付加事項」を付加したことは、ウェアラブル端末に内蔵される変換装置(構成A4)が備える「2以上の所望波長帯に対応する所定変換係数に基づいて前記発電電流値を前記2以上の所望波長帯の光の強度に変換する制御部」(構成C)が、前記「2以上の所望波長帯」として、「350-500nmの波長帯であ」る「第1所望波長帯」及び「400-600nmの波長帯である」「第2所望波長帯」という、大部分の波長が相互に重複する2つの特定の(数値限定された)所望波長帯を共に含むという、新たな技術事項を当初明細書等の記載に対し加入することにあたるといえる。 よって、補正2は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでなく、また、これらすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであり、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。 したがって、補正2は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 (2)補正の目的について ア 補正2は上記(1)のとおり特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるところ、加えて、補正の目的についても検討することとする。 イ 補正2の内容は上記2の柱書において説示したとおりであり、補正2前の請求項1に記載された特定事項である「第1所望波長帯」・「第2所望波長帯」について、それぞれF21・F22付加事項に係る具体的な波長範囲を限定するものである。 よって、補正2は、補正2前の請求項1の発明特定事項を限定する補正を含むものと認められる。 ウ 補正2発明の技術分野は、本件明細書【0002】~【0003】の記載によれば、太陽光の強度を測定する技術の分野であるといえ、その解決しようとする課題は、同【0006】の記載によれば、太陽電池装置の利用によって、光の強度を測定するセンサを省略して、部品点数の削減、省スペース化などを図ること、を少なくとも含むといえる。 エ 本件明細書等において、前記第1・第2所望波長帯に対し、F21・F22各付加事項に係る、相互に大部分が重複するような上記2つの具体的な波長帯を設定することの技術的な意義やその目的・作用効果については、本件明細書等に記載も示唆もないが、補正2の前後において請求項1に係る発明は、太陽光で発電することができる太陽電池セルを備える点で共通するから、該補正の前後において、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である場合を少なくとも含むといえる。 よって、当審補正2は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 オ そこで、補正2後の特許請求の範囲の請求項1~4に係る発明は、その請求項1~4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうち請求項1に係る補正2発明が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下においてさらに検討する。 3 当審補正2発明の独立特許要件についての検討 3-1 サポート要件について (1)上記2(1)で説示したとおり、補正2により、補正1発明に対し、 ≪ウェアラブル端末に内蔵される変換装置(構成A4)が備える「2以上の所望波長帯に対応する所定変換係数に基づいて前記発電電流値を前記2以上の所望波長帯の光の強度に変換する制御部」(構成C)が、前記「2以上の所望波長帯」として、「350-500nmの波長帯であ」る「第1所望波長帯」及び「400-600nmの波長帯である」「第2所望波長帯」という、大部分の波長が相互に重複する2つの特定の(数値限定された)所望波長帯を共に含む≫ という新たな技術事項を加入するものである。 (2)仮に、該加入した技術事項が、前記数値限定された2つの所望波長帯が個別には当初明細書等に記載されることなどから、当初明細書等に記載した事項を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものである、とまでいえないとしても、該技術事項やその技術的意義が、発明の詳細な説明中に記載も示唆もされていないことは明らかである。 (3)また、二次電池を用いたウェアラブル端末において省電力性が普遍的な課題であること、及び、デジタル処理回路において計算項目が増加すればその分消費電力が増加すること、がいずれも技術常識であるところ、350~600nmの波長幅においてそのうち100nm(400~500nm)が重複するような2つの波長帯を同時に設定し、二次電池充電用の太陽電池の出力電流を該2つの波長帯の光の強度に同時に変換し表示する態様を少なくとも含む補正2発明は、省電力性というウェアラブル端末の前記普遍的な課題の解決に逆行するものであるといえる。 この点において、補正2発明は、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず(該解決に反し)、該課題を解決できることを当業者が認識できるものでもないことから、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することになるものであるともいえる。 (4)上記(2)・(3)のとおりであるから、補正2により補正された補正2発明を含む本件出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 よって、補正2は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 3-2 進歩性について (1)補正2発明について 上記1(2)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献に記載された事項 [引用文献等一覧] 引用文献1:特開平1-262427号公報 引用文献2:特開2005-308648号公報 引用文献3:特開2012-13676号公報 引用文献4:特開昭60-114726号公報 引用文献5:「波長別天空日射量の簡易測定法の開発」、日本建築学会環境系論文集、第82巻、第735号、2017年5月、p443-451 引用文献6:「任意地点の日射スペクトルの推定のための全天日射強度を用いた簡易モデル」、太陽エネルギー、Vol.42、No.3、2016年、p37-43 (2-1)引用文献4に記載された事項 当審最後拒理において提示された、本件出願の出願日前に公知となった引用文献4には、次の事項が記載されている。 ア 引用文献4に記載された事項 引用文献4には次の記載がある。下線は、引用発明4の認定にあたり特に根拠とした記載箇所に対し当審にて付与したものである。以下、他の引用文献についても同様。 ・1頁左欄 [図:0001415855000001.jpg] (以下略) ・2頁左上欄 (冒頭略) [図:0001415855000002.jpg] ・2頁右上欄 [図:0001415855000003.jpg] ・2頁左下欄 [図:0001415855000004.jpg] [図:0001415855000005.jpg] ・2頁右下欄 [図:0001415855000006.jpg] ・3頁左上欄 [図:0001415855000007.jpg] ・3頁右上欄 [図:0001415855000008.jpg] ・3頁左下欄 [図:0001415855000009.jpg] ・4頁左上欄 [図:0001415855000010.jpg] ・4頁左下欄 [図:0001415855000011.jpg] ・第3図 [図:0001415855000012.jpg] ・第6図 [図:0001415855000013.jpg] イ 引用文献4に記載された発明 上記アから、引用文献4には次の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。ここで、各構成単位末尾括弧内には、主たる認定根拠となる引用文献4の記載箇所や認定事項を示す。以下同様。 「4a1 受光した光の強度を、例えばmw/cm2のような単位でデジタル表示する光強度表示部(2)、受光を開始した時刻以後の受光した光のエネルギー(受光量)を例えばJ/cm2のような単位でデジタル表示する受光量表示部(3)、(2頁右上~右下欄・4頁左下欄) 4a2 太陽直射の状態で10000lx以上の入射光強度となる日射量としての太陽光の強度及び受光量を測定するための、結晶質シリコン太陽電池または非晶質シリコン太陽電池からなる太陽電池(1,20)、(2頁右上欄・4頁左下欄) 4a31 太陽電池によって発電された電力を蓄える蓄電池(39)、(4頁左上欄、第6図) 4a32 太陽電池が出力する電流を検出し照度に変換するA-D変換器(回路)(26,27)、(3頁左上~左下欄) 4a33 A-D変換器(回路)(26,27)によって求められた電流の和を求め入射光強度を検知する制御回路(28)、を備え、(3頁右上~左下欄) 4a4 掌に乗る程度の大きさで重さ数百グラムの、軽量で携帯に便利な光量計に内蔵される回路。(2頁右下欄・4頁左下欄・第3図)」 (2-2)引用文献1に記載された事項 当審最後拒理において提示された、本件出願の出願日前に公知となった引用文献1には、次の事項が記載されている。 ア 引用文献1に記載された事項 引用文献1には次の記載がある。 ・1頁右欄 ・・・ [図:0001415855000014.jpg] ・3頁左上欄 [図:0001415855000015.jpg] ・3頁右上欄 [図:0001415855000016.jpg] ・3頁左下欄 ・・・ [図:0001415855000017.jpg] ・3頁右下欄 [図:0001415855000018.jpg] ・4頁左上欄 [図:0001415855000019.jpg] ・4頁右上欄 [図:0001415855000020.jpg] ・4頁左下欄 [図:0001415855000021.jpg] ・4頁右下欄 [図:0001415855000022.jpg] ・5頁右上欄 [図:0001415855000023.jpg] ・5頁左下欄 [図:0001415855000024.jpg] ・第1図 [図:0001415855000025.jpg] ・第6図 [図:0001415855000026.jpg] イ 引用文献1に記載された技術事項 上記アから、引用文献1には次の技術事項(以下「技術事項1」という。)が記載されていると認められる。 「a 腕時計式、又は。帽子にピン又はフック止め等で取り付けられたパッチ式の紫外線センサ25に内蔵された紫外線センサ回路であって、(5頁右上~左下欄、第6図(B)) b1 紫外線センサ回路は、シリコン系の太陽電池からなる、紫外線フィルタ2を透過した紫外線に感度があり、太陽光中の全紫外線範囲にあたる波長290~400nm範囲の紫外線をモニターし、その紫外線の照度(強さ)に応じた電気信号を出力する半導体受光素子3を備えるセンサ素子1と、(3頁左上・右下欄、第1図) b2 センサ素子1の出力した電気信号を入力して増幅とA/D変換を行ってデジタル化された信号を出力する信号処理回路10と、(3頁右上欄、第1図) c 前記デジタル化された信号を入力し、この入力信号を演算によって290~400nm範囲の全紫外線量にあたる紫外線エネルギー量に変換する演算回路13と、を備え、(3頁右上欄、第1図) d1 前記演算回路13は、全紫外線量に対する紫外線A波・B波の割合が場所に関係なくほぼ一定であることに基づき、全紫外線量xから、全紫外線範囲に含まれる290~320nm範囲の紫外線B波量yを算出するxの二次近似式(y=ax2+bx+c;a=2.19×102、b=3.12、c=-1.06×102)(3)によって紫外線B波量を算出するものであり、(3頁右下欄~4頁左上欄) d2 さらに前記演算回路13は、全紫外線範囲に含まれる320~400nm範囲の紫外線A波量zをz=x-yの演算式によって算出するものであり、(4頁左下欄) e 上記xの二次近似式(3)と、z=x-yの演算式は共に、演算回路13のメモリ14に予め記憶されるものであり、(4頁左下欄) a2 紫外線センサ回路は、演算で求めた紫外線A波若しくは紫外線B波のエネルギー量、又は全紫外線量を閾値設定機構15で設定した閾値と比較し、前記各エネルギー量または全紫外線量が前記閾値を超えたとき警報信号を出力したり、ある時刻からの積算量などを表示する表示部16およびアラーム17とをさらに備える、(4頁左下~右下欄、5頁左下欄、第1図) g 紫外線センサ回路。(3~5頁、第1図)」 (2-3)引用文献3に記載された事項 当審最後拒理において引用文献3として提示された、本件出願の出願日前に公知となった引用文献3には、次の事項が記載されている。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、紫外線測定装置および紫外線計測機能付電子腕時計に関する。 ・・・ 【0006】 そこで本発明は、紫外線の強度をより正確に測定することができる紫外線測定装置および紫外線計測機能付電子腕時計を提供することを目的とする。 ・・・ 【0017】 また、本発明は、紫外線受光面に照射される紫外線の紫外線強度を測定する紫外線センサと、前記紫外線受光面と略同一の方向に配置された受光面を有し、当該受光面に照射される光の強度に基づいて当該受光面が光源方向に向いたことを検出する光検出部と、前記紫外線センサが測定した紫外線強度を示す情報を表示する表示部と、前記受光面が光源方向に向いたことを前記光検出部が検出した場合には、前記紫外線センサに紫外線強度を測定させる制御を行う制御部と、を備えたことを特徴とする紫外線測定装置である。 ・・・ 【0084】 次に、本実施形態における紫外線測定装置500の動作について説明する。図11は、本実施形態における紫外線測定装置500の動作を示したフローチャートである。 【0085】 (ステップS501)発電電圧検知部112は、ソーラー発電部111の発電量(発電電圧)を測定する。その後、ステップS502の処理に進む。なお、本実施形態では、発電量として発電電圧を用いるが、これに限らない。例えば、発電電流などソーラー発電部111の発電量に応じて変化する値であればどのような値を用いてもよい。 ・・・ [図:0001415855000027.jpg] 」 (2-4)引用文献5に記載された事項 当審最後拒理において提示され、本件出願の出願日前に公知となった引用文献5には、次の事項が記載されている。 ・443頁右欄~444頁左欄 [図:0001415855000028.jpg] [図:0001415855000029.jpg] [図:0001415855000030.jpg] [図:0001415855000031.jpg] ・・・ [図:0001415855000032.jpg] [図:0001415855000033.jpg] ・・・ [図:0001415855000034.jpg] ・・・ [図:0001415855000035.jpg] ・・・ [図:0001415855000036.jpg] [図:0001415855000037.jpg] [図:0001415855000038.jpg] [図:0001415855000039.jpg] [図:0001415855000040.jpg] 」 (2-5)引用文献6に記載された事項 当審最後拒理において提示され、本件出願の出願日前に公知となった引用文献6には、次の事項が記載されている。 「 [図:0001415855000041.jpg] [図:0001415855000042.jpg] ・・・ [図:0001415855000043.jpg] [図:0001415855000044.jpg] [図:0001415855000045.jpg] [図:0001415855000046.jpg] [図:0001415855000047.jpg] 」 (2-6)引用文献2に記載された事項 当審最後拒理において提示され、本件出願の出願日前に公知となった引用文献2には、次の事項が記載されている。 「【0011】 上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、第1の本発明の紫外線測定方法は、特定の領域に分光感度を持つ紫外線受光素子を用いた紫外線測定方法であって、基準となる太陽分光放射スペクトルにおける第1紫外線波長領域の第1積分紫外線強度と、太陽分光放射スペクトルにおける第2紫外線波長領域の第2積分紫外線強度又は太陽紫外線の分光放射スペクトルと特定の作用曲線とから求められる第3積分紫外線強度と、の比を基準強度比とし、前記紫外線受光素子を用いた太陽紫外線強度の実測値を前記基準強度比及び前記基準強度比の太陽高度補正係数に基づき補正し、第2波長領域の紫外線強度又は特定の作用曲線に関係する紫外線強度を求めることを特徴としている。 【0012】 第1の本発明の紫外線測定方法では、地上の紫外線強度の波長割合は成層圏の吸収や散乱に強く依存しており、天気や位置の高度には大きく影響されないことに基づいている。このため、紫外線受光素子による実測値に対して、別途測定された基準となる太陽分光放射スペクトルから求めた第1紫外線波長領域の第1積分紫外線強度と特定波長領域の積分紫外線強度(本発明では別途求められた太陽分光放射スペクトルから求めた第2紫外線波長領域の第2積分紫外線強度又は太陽紫外線の分光放射スペクトルと特定の作用曲線とから求められる第3積分紫外線強度)との基準強度比、及びこの基準強度比の太陽高度補正係数を掛けて、補正を行う。 【0013】 この結果、簡易に且つ簡易な構成で、天候に関わらず、実測値の中から特定の紫外線情報(第2紫外線波長領域の紫外線強度又は特定の作用曲線に関係する紫外線強度)を取得し、同時に紫外線の全量も取得することができる。さらに特定の波長領域うち、例えばUVAとUVBの紫外線強度や紫外線量を分離することもできる。 ・・・ 【0015】 第1の本発明の紫外線測定方法において、第1紫外線波長領域は、例えば紫外線全領域(例えば290nmから400nmのUVA+UVBの波長領域)、290nmから320nmのUVBの波長領域、320nmから400nmのUVAの波長領域が適用される。 【0016】 第2紫外線波長領域は、例えば第1紫外線波長領域内の波長領域が適用される。例えば、第1紫外線波長領域が290nmから400nmの全紫外線領域とした場合、第2紫外線波長領域は290nmから320nmのUVBの波長領域が適用される。 ・・・ 【0035】 以下、本発明の紫外線測定方法について詳細に説明する。地上に到達する太陽光の紫外線(太陽紫外線)は酸素の吸収のため、200nmよりも長波長となる。さらに成層圏オゾンによる吸収は360nmから200nmに亘っている。このなかで290nm以下のオゾンの吸収は強いため、地上に到達する太陽紫外線は290nmより長波長となる。290nmから320nmの紫外線はUVBと呼ばれ、320~400nmをUVAと呼ばれる。 【0036】 太陽紫外線においては、同一の日時であれば天候によらずほぼUVBとUVAの比は一定であるとの報告がある。この比は主に上空の成層圏のオゾン層でのUVBの吸収量により変化する。そのため地上の紫外線は波長範囲が狭いため散乱や反射の波長による違いは無視でき、さらに天気によって多く影響されないと考えられる。また山などの高度も対流圏内にあるため影響はしない。 【0037】 そこで、第1の本発明の紫外線測定方法では、特定の分光感度を持つ(例えば200nm~400nm)紫外線素子による太陽光強度の校正された実測値(対流圏下)に対して、太陽光スペクトルから求めた積分紫外線強度と特定波長領域における積分紫外線強度(太陽分光放射スペクトルにおける第2紫外線波長領域の第2積分紫外線強度又は太陽紫外線の分光放射スペクトルと特定の作用曲線とから求められる第3積分紫外線強度)との基準強度比を基に、この基準強度比及びこの太陽高度補正係数で補正することによって特定領域の紫外線情報を求める。つまり、例えば、特定領域における特定領域における積分紫外線強度を、太陽光スペクトルと紅斑曲線から求められた紫外線強度(紅斑紫外線強度)とした場合、測定した実測値から紅斑紫外線強度を得て、これを基に紅斑紫外線量、UV指数を求めることもできる。」 (3)補正2発明と引用発明4との対比 補正2発明と引用発明4とを対比する。 ア 構成4a1の「光強度表示部(2)」及び「受光量表示部(3)」は、構成A1の「表示部」に相当する。 イ 構成4a2の「結晶質シリコン太陽電池または非晶質シリコン太陽電池からなる太陽電池」は、「太陽直射の状態で10000lx以上の入射光強度となる日射量としての太陽光の強度及び受光量を測定するため」のものであり、「lx」なる単位は可視光の光量に係る照度の単位であること、結晶質シリコン太陽電池または非晶質シリコン太陽電池が一般に可視光により発電を行うものであること、構成4a32において、太陽電池の出力を可視光の波長範囲の光量値に係る「照度」へ変換することを目的としていること、に照らし、可視光の波長範囲を発電波長に少なくとも含むことは明らかであるから、構成A2の「可視光を少なくとも含む光に応じて発電する太陽電池セル」に相当する。 ウ 構成4a31の「太陽電池によって発電された電力を蓄える蓄電池(39)」は、構成A3の「前記太陽電池セルの発電電力を蓄積する二次電池」に相当する。 エ(ア)構成A4の「変換装置」は本願の発明の詳細な説明において、「光の強度を測定するセンサを用いなくても、光の強度を測定することを可能とする」もの(【0010】)、すなわち、発電目的のデバイスである太陽電池の出力をもとに光の強度を測定することを可能とするものとして定義される。そうすると、構成4a4の「回路」は、構成4a32・4a33によれば「太陽電池が出力する電流を検出し照度に変換するA-D変換器(回路)(26,27)」、「A-D変換器(回路)(26,27)によって求められた電流の和を求め入射光強度を検知する制御回路(28)」を含むものであるから、太陽電池の出力から照度を求めるものである点で、構成A4・Gの「変換装置」に相当する。 (イ)構成4a4の「掌に乗る程度の大きさで重さ数百グラムの、軽量で携帯に便利な光量計」は、構成A4の「ウェアラブル端末」と、可搬型端末である点で少なくとも共通する。 オ 構成4a32の「太陽電池が出力する電流を検出し照度に変換するA-D変換器(回路)(26,27)」は、構成Bの「前記発電電力の値として発電電流値を測定する電流センサ」に相当する。 カ 構成4a32の「照度」は人間の比視感度をもとに可視光である380~780nmの波長領域について定義されるものであることから、構成4a32における「太陽電池が出力する電流を検出し照度に変換する」処理において、太陽電池の出力の電流値(アナログ値)を可視光の波長範囲での光の強度である照度値(デジタル値)に変換するためには、「A-D変換器(回路)」自体による電流値の量子化処理と、該量子化により得られた「A-D変換器(回路)」のビット数分の量子化ステップ数(512ステップ、1024ステップなど)を、構成4a32の「照度」や、さらに構成4a1でデジタル表示される「mw/cm2のような単位」からなるとされる「光強度」(構成4a33の「入射光強度」)といった物理量に、そのための≪変換係数≫を用いて変換する演算(と等価な処理を行うハードウェア)が必要であることが自明である。よって、引用発明4は、前記変換係数をハードウェア的またはソフトウェア的に備えるといえる。 そして、該引用発明4が備えることが自明な前記≪変換係数≫は、構成Cの「変換係数」に相当する。また、前記「照度」に係る「人間の比視感度をもとに」した「可視光である380~780nmの波長領域」は、構成Cの「所望波長帯」に相当する。 そうすると、構成4a32の「照度」及びその値をもとにする構成4a33の「入射光強度」は、構成Cの「所望波長帯の光の強度」に相当し、それらを求めるための、引用発明4が備えることが自明な前記≪変換係数≫は、構成Cの「所望波長帯に対応する所定変換係数」に相当する。 また、構成4a32の「A-D変換器(回路)(26,27)」、または、該「A-D変換器(回路)(26,27)」及び構成4a33の「制御回路(28)」は、構成Cの「制御部」に相当する。 キ 上記カで説示した、引用発明4の「照度」に係る「可視光である380~780nmの波長領域」が構成Dの「前記太陽電池セルの発電に寄与する光の波長帯の一部である第1所望波長帯」といえることは、上記カの説示内容から見て明らかである。 ク 上記キの説示を踏まえれば、上記カで説示した、引用発明4がハードウェア的またはソフトウェア的に備えることが明らかな変換係数は、構成Eの「前記第1所望波長帯に対応する第1所定変換係数」に相当するといえる。 ケ 上記カ~クの説示を踏まえれば、構成Cの「制御部」に相当する引用発明4の要素は、構成F1の「前記第1所定変換係数に基づいて、前記発電電流値を前記第1所望波長帯の光の強度に変換」するという「制御部」の機能に相当する機能を備えるといえる。 コ 上記カ~キの説示を踏まえれば、引用発明4は、構成F2の「前記第1所望波長帯・・・は、前記太陽電池セルの発電に寄与する光の波長帯のうち、前記可視光の波長帯の一部を少なくとも含む」との特定事項に相当する構成を備えるといえる。 (4)一致点・相違点 上記(3)によれば、補正2発明と引用発明4とは、下記アの点で一致し、下記イの各点で相違する。 ア 一致点 「A1 表示部、 A2 可視光を少なくとも含む光に応じて発電する太陽電池セル及び A3 前記太陽電池セルの発電電力を蓄積する二次電池を備える A4’ 可搬型端末に内蔵される変換装置であって、 B 前記発電電力の値として発電電流値を測定する電流センサと、 C’ 所望波長帯に対応する所定変換係数に基づいて前記発電電流値を前記所望波長帯の光の強度に変換する制御部と、を備え、 D’ 前記所望波長帯は、 前記太陽電池セルの発電に寄与する光の波長帯の一部である第1所望波長帯、を含み、 E’ 前記所定変換係数は、前記第1所望波長帯に対応する第1所定変換係数を含み、 F1’ 前記制御部は、前記第1所定変換係数に基づいて、前記発電電流値を前記第1所望波長帯の光の強度に変換し、 F21’ 前記第1所望波長帯は、前記太陽電池セルの発電に寄与する光の波長帯のうち、前記可視光の波長帯の一部を少なくとも含む、 G 変換装置。」 イ 相違点 (ア)相違点4-1(構成A4) 変換装置が内蔵される可搬型端末が、補正2発明では「ウェアラブル端末」であるのに対し、引用発明では「掌に乗る程度の大きさで重さ数百グラムの、軽量で携帯に便利な光量計」である点 (イ)相違点4-2(構成C~F21) 太陽電池セルの発電に寄与する光の波長帯のうち、可視光の波長帯の一部を少なくとも含む所望波長帯及びそれに対応する所定変換係数の組が、補正2発明ではそれぞれ、「350-500nmの波長帯」及びそれに対応する「第1所定変換係数」、「400-600nmの波長帯」である「第2所望波長帯」及びそれに対応する「第2変換係数」、の各組を含む2以上あるのに対し、引用発明1では、可視光の波長領域(380~780nmの波長領域)にあたると認められる一つのみである点。 (5)相違点の検討 ア 相違点4-1について 日射量を検出する機能を持つ携帯型の端末として、それを腕時計式や帽子にピン止め・フック止めする様式、ブレスレット式のようなウェアラブル(身体装着式)としたものは、引用文献1(技術事項1の構成a)・引用文献3(特に【0001】・【0006】・【図2】)の記載によっても裏付けられるとおり周知技術であり、該周知技術に倣って引用発明4の「携帯に便利」な携帯式端末をウェアラブルなものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 イ 相違点4-2について (ア)全天放射や直射太陽光等の日射光に対する広帯域における波長積分光量の測定値に、該日射光の分光光量の既知の波長帯比率に基づく係数を乗算することで按分して、前記日射光の分光光量(スペクトル強度)を推定算出する分光測定方式は、引用文献1(特に技術事項1の構成b1~e参照)、引用文献2・3・5・6(上記(2-3)~(2-6)の摘記記載参照)の記載により裏付けられるとおり、日射光のスペクトル領域において、前記分光測定方式によって全天日射計のような波長分解能のないセンサの出力値から(分光放射計を別途用いることなく)分光光量を求めたいという課題(以下「課題A」という。)の存在と共に周知な技術(以下「周知技術A」という。)であるし、特に可視光波長領域における複数の波長帯の光量を推定することに限っても、引用文献5・6の記載により裏付けられるとおり、その課題(日射光の可視光波長領域における前記課題A;以下「課題B」という。)の存在と共に周知な技術(以下「周知技術B」という。)である。 (イ)補正2発明の構成F21・F22における各波長帯の波長範囲(「350~500nm」及び「400~600nm」)の光の強度を一つの変換装置において共に変換(算出)するようにすることについて当初明細書等に開示があるかについて疑義があることは上記2(1)で説示したとおりである。 また、仮に前記開示の存在が認められるとしても、該各波長帯が個別にどのような技術的意義を持つ波長範囲であるかや、該両波長範囲の光の強度を共に求める目的や作用効果が何であるのかは、本件出願の明細書等に記載がなく定かではないことは、上記3-1で述べたとおりである。 よって、補正2発明において、前記各波長範囲についての数値限定は、特有で顕著な効果を伴うものであるとはいえない。 (ウ)また、上記(ア)における分光測定方式としては、引用文献5・6に記載されるように、5nm単位など(引用文献5)、細分化された波長(帯)ごとにスペクトル強度推定値を得る手法も周知である。このことから、該周知の手法により求められた前記スペクトル強度推定値を用いれば、少なくとも5nmの精度で、任意の数の任意の波長範囲の積分光強度について(推定結果の加算演算により)算出可能であることは、当業者にとって明らかであるといえる。 (エ)上記(ア)~(ウ)のとおりであるから、引用発明4において、2以上の、任意の(例えば構成F21・F22に特定されるような)波長帯について、推定スペクトル強度値(光の強度)を算出して相違点4-2の構成とすることは、周知技術に基づいて当業者が容易になし得たことである。 ウ その他の検討事項 上記(3)において、構成C~F21の特定事項のうち、1つの「所望波長帯」についての「第1所望波長帯」・「第1所定変換係数」については構成C~F2の特定事項を満たし、一致点であると認定した。 仮に、引用発明4は、太陽電池の発電に寄与する可視光の波長帯について特定の波長帯を選択的に扱わないことから、構成C~F2の構成に全く相当する要素が認められないとすれば、上記相違点4-2に代えて、構成C~F21に係る特定事項を引用発明4が備えない点が相違点(仮に「相違点4-2’」と呼ぶ。)となる。 しかし、その場合においても、上記イと同様の理由により、広帯域の波長積分光量の測定値を「太陽光の強度及び受光量」(構成4a2)として取得する引用発明4において、上記周知の課題(課題A又はB)を認識し、前記周知技術A又はBを採用して相違点4-2’の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 エ 請求人の主張について 令和6年5月7日提出の意見書における請求人の主な主張について以下に検討する。 (ア)請求人の主張 請求人は、上記意見書において次の主張(以下「主張1」という。)をする。 「発電電流値と全波長帯の光の強度との間に相関があるという本願発明の前提については、引用文献4において示唆されているものの、全波長帯(例えば、350-1,100nm)の光の強度と相関が高い2つの特定波長帯((例えば、350-500nm及び400-600nm)を選択するという本願発明の知見については開示も示唆もされておりません。また、引用文献5、6において、波長積分光量の測定値から太陽電池に入射する日射スペクトルを推定する点について開示されておりますが、日射スペクトルの中から、波長積分光量と相関が高い2つの特定波長帯を選択する点については開示されておりません。」 (イ)請求人の主張1について 相違点4-2に係る波長範囲が数値限定された2つの波長帯の選定意義について本件出願の明細書等に開示がないことは上記説示のとおりである。 また、波長積分光量から個別の波長(帯)の分光強度を、例えば5nm単位(引用文献5)など細分化された波長(帯)ごとに推定することが周知技術といえ、この推定結果から、任意の波長範囲の積分光強度値が算出可能であることが当業者にとって明らかであることは、上記説示のとおりである。 ここで、測定値である全波長積分値と、推定対象である個別の波長(帯)のスペクトル強度値との間に相関があることについては、該相関の存在を前提とする引用文献5の式(1)、引用文献6の式(1)が立式され、該各式に基づいて高精度での推定がなし得ていることから、明らかであるといえる。 また、請求人の主張1が仮に、前記2つの波長帯が他の波長帯に比べ全波長帯との相関が高いことを主張するものであるなら、本件出願の明細書等の記載に基づかない主張である。 よって、上記主張1は失当であり、採用できない。 オ 効果について 上記各相違点を総合的に勘案しても、補正2発明の奏する作用効果は、引用発明4及び引用文献1~3・5・6の記載に裏付けられる周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 カ 小括 したがって、補正2発明は、引用文献4に記載された発明び引用文献1~3・5・6の記載に裏付けられる周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (6)補正2についてのむすび よって、補正2は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3.補正1発明について 1 補正1発明 補正2は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1~5に係る発明は、補正1により補正された、特許請求の範囲の請求項1~5に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(補正1発明)は、上記第2.1(1)アに記載したとおりのものである。 2 当審最後拒理 補正1発明についての、当審最後拒理における拒絶の理由は、概略、補正1発明は、引用文献4に記載された発明及び引用文献1~3・5・6の記載により裏付けられる周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、本件出願は特許を受けることができない、というものを含むものである。 3 引用文献 引用文献4及び引用文献1~3・5・6に記載された事項は、上記第2.3-2(2)に説示したとおりのものである。 4 対比・判断 補正1発明は、補正2発明の発明特定事項から、構成F21・F22に係る「第1所望波長帯」及び「第2所望波長帯」についての波長範囲の数値限定を除いたものである。 上記第2.3-2(3)~(5)において説示したとおり、前記波長範囲の数値限定を含め、補正2発明は引用発明4及び引用文献1~3・5・6の記載に裏付けられる周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである。 よって、補正2発明から前記波長範囲の数値限定を除いた補正1発明も、上記第2.3-2(3)~(5)において説示したとおり、引用発明4及び引用文献1~3・5・6の記載に裏付けられる周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである。 第4.むすび 以上のとおり、補正1により補正された請求項1に係る補正1発明は、本件出願の出願日前に頒布された引用文献4に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-003831

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