特許拒絶査定不服審判
2019-011616
赤外線センサ付きサーモウェル
- 審判番号
- 2019-011616
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-567613
- 請求日
- 2019年09月04日
- 審決日
- 2020年06月08日
- 公報発行日
- 2020年12月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ローズマウント インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】特許業務法人 津国
- 審判長/審判官
- 審判長 福島 浩司
- 審判官 伊藤 幸仙
- 審判官 渡戸 正義
- 分類
- P18 .113-Z (G01J) / P18 .121-Z (G01J) / P18 .575-Z (G01J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第6項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2017-567613「赤外線センサ付きサーモウェル」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 1月 5日国際公開、WO2017/003648、平成30年 8月 2日国内公表、特表2018-521320〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
本件出願(以下「本願」と記す。)は、2016年6月7日(パリ条約による優先権主張 2015年6月30日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成30年11月22日付けで拒絶理由が通知され、平成31年3月6日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年4月12日付けで拒絶査定されたところ、令和元年9月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに同時に手続補正がなされ、令和2年3月27日に上申書が提出されたものである。
2 令和元年9月4日付けの手続補正についての補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
令和元年9月4日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
〔理由〕
(1)補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであって、その補正内容は、特許請求の範囲について、【請求項1】を
「【請求項1】
プロセス流体の温度を測定するためのサーモウェルアセンブリであって、
近位端及び遠位端並びにその間に延在している1の穴を有し、且つプロセス流体内に延在するように構成された細長いサーモウェルであって、前記プロセス流体を搬送するプロセス容器に取り付けるように構成された細長いサーモウェル、
前記細長いサーモウェルの前記近位端に、前記サーモウェルの前記遠位端のスポット領域から前記穴を通した赤外線放射と、前記サーモウェルの前記穴の内側壁からの赤外線放射とを、前記穴と前記近位端のスポット領域を通して検出し、前記各赤外線放射に対応させて前記プロセス流体の温度に相関するセンサ出力を提供するように構成され、前記細長いサーモウェルにより前記プロセス流体からシールされた前記赤外線センサであり、前記各スポット領域が、前記赤外線センサから前記サーモウェルの前記遠位端に向けて前記穴に沿って半径方向に拡大する円錐の整列された断面領域であり、前記円錐の軸に沿う方向に前記各スポット領域の整列された断面領域の直径が前記サーモウェルの前記穴の側壁を超えて拡大している赤外線センサ、及び
前記赤外線センサによって受信される前記各赤外線放射の量から、前記穴の内側壁からの赤外線放射の量をプランクの法則に従いプロセス流体の温度と相関させて低減させるプロセッサと、
を備えた、
上記サーモウェルアセンブリ。」
と補正し、【請求項12】を
「【請求項12】
プロセス流体の温度を測定するためのサーモウェルアセンブリであって、
近位端及び遠位端並びにその間に延在している1の穴を有し、且つプロセス流体内に延在するように構成された細長いサーモウェルであって、前記プロセス流体を搬送するプロセス容器に取り付けるように構成された細長いサーモウェル、
前記細長いサーモウェルの前記近位端に、前記サーモウェルの前記遠位端のスポット領域から前記穴を通した赤外線放射と、前記サーモウェルの前記穴の内側壁からの赤外線放射とを、前記穴と前記近位端のスポット領域を通して検出し、前記各赤外線放射に対応させて前記プロセス流体の温度に相関するセンサ出力を提供するように構成され、前記細長いサーモウェルにより前記プロセス流体からシールされた前記赤外線センサであり、前記各スポット領域が、前記赤外線センサから前記サーモウェルの前記遠位端に向けて前記穴に沿って半径方向に拡大する円錐の整列された断面領域であり、前記円錐の軸に沿う方向に前記各スポット領域の整列された断面領域の直径が前記サーモウェルの前記穴の側壁を超えて拡大している赤外線センサ、及び
前記赤外線センサによって受信される前記各赤外線放射の量から、前記細長いサーモウェルの前記遠位端のスポット領域から検出される赤外線放射の量を増加させるように構成された集束機構と、
を備えた、
上記サーモウェルアセンブリ。」
と補正するものである。
(2)本件補正の目的
本件補正のうち、請求項12についての補正は、請求項12に記載した発明を特定するために必要な事項である、「プロセス温度」を「プロセス流体の温度」に限定し、赤外線センサを「前記細長いサーモウェルの前記近位端に、前記遠位端から前記サーモウェルの穴を通る赤外線放射を検出し、それに応答してプロセス温度に関連するセンサ出力を提供するように構成された赤外線センサであって、前記細長いサーモウェルにより前記プロセス流体からシールされた前記赤外線センサであり、スポットからの前記赤外線放射を前記近位端で受け、前記スポットが、前記赤外線センサと整列された円錐の断面であり、前記円錐の軸に沿う方向で前記サーモウェルの前記遠位端に向かう方向に向けて半径方向に拡大し、前記スポットの直径が前記穴の側壁を超えて拡大する赤外線センサ」から「前記細長いサーモウェルの前記近位端に、前記サーモウェルの前記遠位端のスポット領域から前記穴を通した赤外線放射と、前記サーモウェルの前記穴の内側壁からの赤外線放射とを、前記穴と前記近位端のスポット領域を通して検出し、前記各赤外線放射に対応させて前記プロセス流体の温度に相関するセンサ出力を提供するように構成され、前記細長いサーモウェルにより前記プロセス流体からシールされた前記赤外線センサであり、前記各スポット領域が、前記赤外線センサから前記サーモウェルの前記遠位端に向けて前記穴に沿って半径方向に拡大する円錐の整列された断面領域であり、前記円錐の軸に沿う方向に前記各スポット領域の整列された断面領域の直径が前記サーモウェルの前記穴の側壁を超えて拡大している赤外線センサ」に限定し、集束機構を「前記赤外線センサによって受信される前記穴の内側壁からの赤外線放射の量を減少させるように構成され、及び/又は前記細長いサーモウェルの前記遠位端から受け取られる放射の量を増加させるように構成された集束機構」から「前記赤外線センサによって受信される前記各赤外線放射の量から、前記細長いサーモウェルの前記遠位端のスポット領域から検出される赤外線放射の量を増加させるように構成された集束機構」に限定するものであって、特許法第17条の2第5項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(3)独立特許要件について
本件補正後の前記請求項12に記載された発明(以下「本願補正発明12」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。
ア 本願補正発明
本願補正発明12は、前記「2(1)」に記載したとおりのものである。
イ 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前である2014年(平成26年)2月6日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった「国際公開第2014/021140号」(以下「引用例」という。)には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。
(ア)「[0001]
本発明は、熱源の温度を検出する接触型赤外線温度センサ、この接触型赤外線温度センサを用いる熱機器及び排気システムに関する。」
(イ)「[0008]
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、赤外線温度検出手段を熱源から離間して配設でき、熱劣化を抑制して信頼性を確保することができるとともに製造コストを低減することが可能な接触型赤外線温度センサ、この接触型赤外線温度センサを用いる熱機器及び排気ガス再循環システムを提供することを目的とする。」
(ウ)「[0023]
以下、本発明の第1の実施形態に係る接触型赤外線温度センサについて図1及び図2を参照して説明する。図1は、接触型赤外線温度センサを示す斜視図であり、図2は、接触型赤外線温度センサがエンジンの排気管に取付けられた概略の断面を示している。
[0024]
接触型赤外線温度センサ1は、赤外線エネルギーを熱として吸収してそれによる温度上昇を利用して出力するものであり、筒状部材2と、光学手段3と、赤外線温度検出手段4と、保持体5とを備えている。
[0025]
筒状部材2は、耐熱性を有する金属製であり、例えば、ステンレス鋼から作られていて、一端を閉塞部21とし他端を開口部22とする有底円筒状に形成されている。この筒状部材2は、板材をプレス加工又は線材を冷間鍛造加工すること等によって形成される。
[0026]
筒状部材2の一部、すなわち、閉塞部21側には感温部23が形成されている。この感温部23は、熱源に直接的に接触して受熱可能である。詳しくは、感温部23は、閉塞部21側に形成された薄肉部であり、円筒部の肉厚寸法t1が0.4mm程度であるのに対し、薄肉部の肉厚寸法t2は0.2mm以下の約1/2以下に設定されている。
[0027]
なお、筒状部材2における感温部23としての薄肉部は、円筒部と一体的に形成されていてもよいし、別体に形成されていてもよい。別体に形成される場合には、薄肉に形成された分離された部材を円筒部の一端に溶接又はロウ付け等によって接合することができる。」
(エ)「[0032]
赤外線温度検出手段4は、赤外線を検知するセンシング素子としてのサーモパイル素子41と、温度補償用のセンシング素子としてのサーミスタ素子42と、これらセンシング素子を収容する外囲器としてのパッケージ43とを備えている。このような赤外線温度検出手段4は、前記感温部23と対向するとともに離間して筒状部材2の開口部22側に配設されている。
[0033]
サーモパイル素子41は、基板上に形成された多数の熱電対から構成されており、赤外線を受光することによって生じる起電力を出力電圧として出力する。また、サーミスタ素子42は、基板上に実装され、温度の変化によって抵抗値が変化するものであり、その抵抗値の変化により周囲温度を検出する。」
(オ)「[0037]
保持体5は、熱伝導性が良好な金属材料、例えば、アルミニウム合金、ステンレス鋼や黄銅等の材料から略円筒状に形成されており、外周面に雄ねじ部51を有し、端部にフランジ部52を有している。また、保持体5の内周側には部品取付部が形成されており、この部品取付部に前述の筒状部材2、光学手段3及び赤外線温度検出手段4が嵌合するように取付けられ固着されている。
[0038]
また、保持体5のフランジ52側からは、赤外線温度検出手段4を絶縁的に保持する絶縁部材53が取付けられている。さらに、この絶縁部材53を貫通して突出されるリード端子46には、図示しないリード線が接続されて導出されるようになっており、これら導出されるリード線は金属パイプや保護チューブに被覆されて保護されるようになっている。」
(カ)「[0039]
このように構成される接触型赤外線温度センサ1は、エンジンから排出される排気ガスGが通過する排気通路としての排気管Ep等のねじ穴に保持体5の雄ねじ部51がねじ込まれて装着される。この場合、筒状部材2の感温部23は、高温の排気ガスG中にさらされ、排気ガスGの熱を受熱するようになる。」
(キ)「[0051]
次に、本発明の第2の実施形態に係る接触型赤外線温度センサについて図3及び図4を参照して説明する。図3は、接触型赤外線温度センサ(実施例1)の断面を示し、図4は、接触型赤外線温度センサ(実施例2)の断面を示している。
なお、以下の各実施形態において、第1の実施形態と同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
本実施形態は、第1の実施形態とは筒状部材2における感温部23である薄肉部の形状が異なっている。」
(ク)「[0054]
次に、本発明の第3の実施形態に係る接触型赤外線温度センサについて図5乃至図7を参照して説明する。図5は、接触型赤外線温度センサ(実施例1)の断面を示し、図6は、接触型赤外線温度センサ(実施例2)の断面を示し、図7は、接触型赤外線温度センサ(実施例3)の断面を示している。
[0055]
本実施形態においては、レンズ部材等の光学手段3が光学機能部33として作用し、感温部23から放射される赤外線を集光し、赤外線温度検出手段4へ導くように機能する。
[0056]
(実施例1)図5に示すように、光学機能部33として作用するレンズ部材3Lが筒状部材2の開口部22側であって、赤外線温度検出手段4におけるキャップ44に形成された窓口48に対向して配設されている。
[0057]
このような構成によれば、感温部23から放射される赤外線は、レンズ部材3Lによって集光され、赤外線温度検出手段4へ導かれる。具体的には、レンズ部材3Lから窓口48を通過してサーモパイル素子41に集光されて受光される。」
(ケ)[図5]
(コ)[0051]及び[0025]の記載からして図5には、「筒状部材2の一端の閉塞部21と他端の開口部22との間の空間」及び「保持体5の内周側にある筒状部材2と赤外線温度検出手段4に挟まれた空間」が図示されていると認められる。
(サ)[0037]の記載からして図5には、「筒状部材2と保持体5が固着されたものは、一端に閉塞部21があり、他端に赤外線温度検出手段4が嵌合する部品取付部がある」ことが図示されていると認められる。
(シ)[0051]及び[0037]乃至[0039]の記載からして図5の「赤外線温度検出手段4は筒状部材2と保持体5により、直接高温の排気ガスGにさらされない」ことが理解できる。
(ス)[0032]、[0051]及び[0055]乃至[0057]の記載と図5より、「赤外線温度検出手段4の、赤外線を検知するセンシング素子としてのサーモパイル素子41は、感温部23から放射される赤外線を窓口48を通過して検知するよう、感温部23,窓口48,サーモパイル素子41が一直線上に並ぶように配置されている」ことが図示されていると認められる。ここでサーモパイル素子41と窓口48と筒状部材2の位置関係より「サーモパイル素子41を始点とし窓口48を通過する直線は感温部23以外にも筒状部材2の一端の閉塞部21と他端の開口部22との間の空間を形成する内周壁面に到達する」ことが理解できる。
上記引用例の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「熱機器及び排気ガス再循環システムに用いられる接触型赤外線温度センサにおいて、接触型赤外線温度センサ1は、赤外線エネルギーを熱として吸収してそれによる温度上昇を利用して出力するものであり、筒状部材2と、光学手段3と、赤外線温度検出手段4と、保持体5とを備えており、
筒状部材2は、耐熱性を有する金属製であり、一端を閉塞部21とし他端を開口部22とする有底円筒状に形成されており、筒状部材2の一端の閉塞部21と他端の開口部22との間の空間があり、筒状部材2の一部、すなわち、閉塞部21側には感温部23が形成されており、この感温部23は、熱源に直接的に接触して受熱可能であり、感温部23は、閉塞部21側に形成された薄肉部であり円筒部と一体的に形成されており、
赤外線温度検出手段4は、赤外線を検知するセンシング素子としてのサーモパイル素子41と、温度補償用のセンシング素子としてのサーミスタ素子42と、これらセンシング素子を収容する外囲器としてのパッケージ43とを備えており、赤外線温度検出手段4は、前記感温部23と対向するとともに離間して筒状部材2の開口部22側に配設されており、サーモパイル素子41は、基板上に形成された多数の熱電対から構成されており、赤外線を受光することによって生じる起電力を出力電圧として出力するものであり、またサーモパイル素子41は、感温部23から放射される赤外線を窓口48を通過して検知するよう、感温部23,窓口48,サーモパイル素子41が一直線上に並ぶように配置されており、サーモパイル素子41を始点とし窓口48を通過する直線は感温部23以外にも筒状部材2の一端の閉塞部21と他端の開口部22との間の空間を形成する内周壁面に到達するものであり、
光学手段3は、光学機能部33として作用するレンズ部材3Lであり、筒状部材2の開口部22側であって、赤外線温度検出手段4におけるキャップ44に形成された窓口48に対向して配設されており、感温部23から放射される赤外線は、レンズ部材3Lによって集光され、赤外線温度検出手段4の窓口48を通過してサーモパイル素子41に集光されて受光されるものであり、
保持体5は、熱伝導性が良好な金属材料から略円筒状に形成されており、外周面に雄ねじ部51を有し、端部にフランジ部52を有しており、保持体5の内周側には部品取付部が形成されており、この部品取付部に前述の筒状部材2及び赤外線温度検出手段4が嵌合するように取付けられ固着されており、
筒状部材2と保持体5が固着されたものは、一端に閉塞部21があり、他端に赤外線温度検出手段4が嵌合する部品取付部があり、保持体5の内周側には筒状部材2と赤外線温度検出手段4に挟まれた空間があり
接触型赤外線温度センサ1は、エンジンから排出される排気ガスGが通過する排気通路としての排気管Ep等のねじ穴に保持体5の雄ねじ部51がねじ込まれて装着され、筒状部材2の感温部23は、高温の排気ガスG中にさらされ、排気ガスGの熱を受熱するようになるものであり、赤外線温度検出手段4は筒状部材2と保持体5により、直接高温の排気ガスGにさらされない、
接触型赤外線温度センサ1。」
ウ 対比
本願補正発明12を、引用発明と比較する。
(ア)引用発明の「熱機器及び排気ガス再循環システム」は、「産業プロセス」において使用する機器であるといえるから、引用発明における「熱機器及び排気ガス再循環システム」の「エンジンから排出される排気ガスG」は、本願補正発明12における「プロセス流体」に相当する。
(イ)引用発明における「筒状部材2と保持体5が固着されたもの」の「筒状部材2」の「感温部23」は、「筒状部材2の」「保持体5」とは反対側の「一端の閉塞部21」に「形成され」たものであるから、本願補正発明12における「遠位端」に相当する。
(ウ)引用発明の「赤外線温度検出手段4」は、「感温部23と対向するとともに離間して筒状部材2の開口部22側に配設されており」、「筒状部材2と保持体5が固着されたもの」の「保持体5の内周側」にある「赤外線温度検出手段4が嵌合する部品取付部」に「嵌合するように取付けられ固着され」ることから、引用発明における「筒状部材2と保持体5が固着されたもの」の「保持体5の内周側」にある「赤外線温度検出手段4が嵌合する部品取付部」は、本願補正発明12における「近位端」に相当する。
(エ)引用発明における「筒状部材2」の「一端の閉塞部21と他端の開口部22との間の空間」及び「保持体5の内周側」にある「筒状部材2と赤外線温度検出手段4に挟まれた空間」は、併せて本願補正発明12における「近位端及び遠位端」の「間に延在している1つの穴」に相当する。
(オ)引用発明の「筒状部材2」は、「一端を閉塞部21とし他端を開口部22とする有底円筒状に形成されており、筒状部材2の一端の閉塞部21と他端の開口部22との間の空間があり」、この「空間」は「保持体5の内周側」にある「筒状部材2と赤外線温度検出手段4に挟まれた空間」と連なっており、「筒状部材2の一部、すなわち、閉塞部21側には感温部23が形成されており、この感温部23は、熱源に直接的に接触して受熱可能であり」、「筒状部材2の感温部23は、高温の排気ガスG中にさらされ、排気ガスGの熱を受熱するようになるものであ」ることから、引用発明における「筒状部材2と保持体5が固着されたもの」は、本願補正発明12における「近位端及び遠位端並びにその間に延在している1の穴を有し、且つプロセス流体内に延在するように構成された細長いサーモウェル」に相当する。
(カ)引用発明における「エンジンから排出される排気ガスGが通過する排気通路としての排気管Ep」は、本願補正発明12の「プロセス流体を搬送するプロセス容器」と、「プロセス流体が存在する構造物」である点で共通する。
(キ)引用発明の「接触型赤外線温度センサ1」は、「筒状部材2と、光学手段3と、赤外線温度検出手段4と、保持体5とを備えており」、「エンジンから排出される排気ガスGが通過する排気通路としての排気管Ep等のねじ穴に保持体5の雄ねじ部51がねじ込まれて装着され、筒状部材2の感温部23は、高温の排気ガスG中にさらされ、排気ガスGの熱を受熱するようになるものであ」ることから、引用発明における「筒状部材2と保持体5が固着されたもの」は、本願補正発明12における「プロセス流体を搬送するプロセス容器に取り付けるように構成された細長いサーモウェル」に相当する。
(ク)引用発明の「赤外線温度検出手段4」は、「感温部23と対向するとともに離間して筒状部材2の開口部22側に配設されており」、「筒状部材2と保持体5が固着されたもの」の「保持体5の内周側」にある「赤外線温度検出手段4が嵌合する部品取付部」に「嵌合するように取付けられ固着され」ることから、
引用発明における「赤外線温度検出手段4」は、本願補正発明12における「前記細長いサーモウェルの前記近位端」にある「赤外線センサ」に相当する。
(ケ)引用発明における「感温部23から放射される赤外線」は、「感温部23と対向するとともに離間して筒状部材2の開口部22側に配設されて」いる「赤外線温度検出手段4」で検出されうることから、本願補正発明12における「サーモウェルの前記遠位端のスポット領域から前記穴を通した赤外線放射」に相当する。
(コ)引用発明における「赤外線温度検出手段4」は、「赤外線温度検出手段4の窓口48を通過して」来た赤外線を「サーモパイル素子41」で受光していることから、引用発明における「窓口48」の開口部は、本願補正発明12における「近位端のスポット領域」に相当する。
(サ)引用発明における「赤外線温度検出手段4の、赤外線を検知するセンシング素子としてのサーモパイル素子41」は、「感温部23から放射される赤外線を窓口48を通過して検知するよう、感温部23,窓口48,サーモパイル素子41が一直線上に並ぶように配置されている」。ここで、引用発明における「赤外線温度検出手段4」の「サーモパイル素子41」の受ける赤外線が発せられる領域は、サーモパイル素子41が向く方向に対し、円錐形状に広がる領域であること及び「サーモパイル素子41」の赤外線を受ける受光領域は点ではなく有限の大きさを持つ領域であることは、当業者にとって常識的事項であり、「サーモパイル素子41を始点とし窓口48を通過する直線は感温部23以外にも筒状部材2の一端の閉塞部21と他端の開口部22との間の空間を形成する内周壁面に到達する」こと及び「窓口48に対向して配設され」た「レンズ部材3L」はレンズ部材3Lに入射する赤外線を集光して「窓口48を通過してサーモパイル素子41に集光」することから、サーモパイル素子41に入射する赤外線は、感温部23からの赤外線以外にも、筒状部材2の一端の閉塞部21と他端の開口部22との間の空間を形成する内周壁面からの赤外線や保持体5の内周側の筒状部材2と赤外線温度検出手段4に挟まれた空間からの赤外線も存在すると認められる。すなわち、引用発明における「赤外線温度検出手段4」の「サーモパイル素子41」が、感温部23からの赤外線と、筒状部材2の一端の閉塞部21と他端の開口部22との間の空間を形成する内周壁面からの赤外線と保持体5の内周側の筒状部材2と赤外線温度検出手段4に挟まれた空間からの赤外線とを測定することは、本願補正発明12における「赤外線センサ」の「前記サーモウェルの前記遠位端のスポット領域から前記穴を通した赤外線放射と、前記サーモウェルの前記穴の内側壁からの赤外線放射とを、前記穴と前記近位端のスポット領域を通して検出」することに相当する。
(シ)引用発明における「赤外線温度検出手段4」の「サーモパイル素子41は、基板上に形成された多数の熱電対から構成されており、赤外線を受光することによって生じる起電力を出力電圧として出力するものであ」ることは、本願補正発明12における「赤外線センサ」の「赤外線放射に対応させて」「温度に相関するセンサ出力を提供するように構成され」ることに相当する。
(ス)引用発明における「赤外線温度検出手段4」は、「感温部23と対向するとともに離間して筒状部材2の開口部22側に配設されており」「筒状部材2と保持体5により、直接高温の排気ガスGにさらされない」ことから、本願補正発明12における「赤外線センサ」の「細長いサーモウェルにより前記プロセス流体からシールされた」状態を有している。
(セ)引用発明における「レンズ部材3L」は、「筒状部材2の開口部22側であって、赤外線温度検出手段4におけるキャップ44に形成された窓口48に対向して配設されており、感温部23から放射される赤外線は、レンズ部材3Lによって集光され、赤外線温度検出手段4の窓口48を通過してサーモパイル素子41に集光されて受光されるものであ」ることから、レンズ部材3Lがない場合と比較してサーモパイル素子41が受光する感温部23から放射される赤外線の量が増えることは明らかであり、本願補正発明12における「細長いサーモウェルの」「遠位端のスポット領域から検出される赤外線放射の量を増加させるように構成された集束機構」に相当する。
(ソ)引用発明における「接触型赤外線温度センサ1」は、「筒状部材2と、光学手段3と、赤外線温度検出手段4と、保持体5とを備えており」、「エンジンから排出される排気ガスGが通過する排気通路としての排気管Ep等のねじ穴に保持体5の雄ねじ部51がねじ込まれて装着され、筒状部材2の感温部23は、高温の排気ガスG中にさらされ、排気ガスGの熱を受熱するようになるものであ」ることから、本願補正発明12における「細長いサーモウェル」「赤外線センサ、及び」「集束機構と、を備えた」「プロセス流体の温度を測定するためのサーモウェルアセンブリ」に相当する。
すると、本願補正発明12と、引用発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
「プロセス流体の温度を測定するためのサーモウェルアセンブリであって、
近位端及び遠位端並びにその間に延在している1の穴を有し、且つプロセス流体内に延在するように構成された細長いサーモウェルであって、前記プロセス流体が存在する構造物に取り付けるように構成された細長いサーモウェル、
前記細長いサーモウェルの前記近位端に、前記サーモウェルの前記遠位端のスポット領域から前記穴を通した赤外線放射と、前記サーモウェルの前記穴の内側壁からの赤外線放射とを、前記穴と前記近位端のスポット領域を通して検出し、前記各赤外線放射に対応させて前記プロセス流体の温度に相関するセンサ出力を提供するように構成され、前記細長いサーモウェルにより前記プロセス流体からシールされた前記赤外線センサ、及び
前記赤外線センサによって受信される前記各赤外線放射の量から、前記細長いサーモウェルの前記遠位端のスポット領域から検出される赤外線放射の量を増加させるように構成された集束機構と、
を備えた、
上記サーモウェルアセンブリ。」
一方で、両者は、次の点で相違する。
<相違点1>
プロセス流体が存在する構造物が、本願発明1では「プロセス流体を搬送するプロセス容器」であるのに対し、引用発明では「エンジンから排出される排気ガスGが通過する排気通路としての排気管Ep」である点。
<相違点2>
本願補正発明12では、「赤外線センサ」は、「前記各スポット領域が、前記赤外線センサから前記サーモウェルの前記遠位端に向けて前記穴に沿って半径方向に拡大する円錐の整列された断面領域であり、前記円錐の軸に沿う方向に前記各スポット領域の整列された断面領域の直径が前記サーモウェルの前記穴の側壁を超えて拡大している」ものであるのに対し、引用発明における「赤外線温度検出手段4」は、そのような構成を備えているのか明示がない点。
エ 判断
前記「ウ」で記載した各相違点について判断する。
(ア)相違点1について
a 本願補正発明12における「プロセス流体を搬送するプロセス容器」につき、本願の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
(a)「【0002】
産業プロセスのセンサおよび送信機は、導管を通って流れる又は容器内に含まれる流体の様々な特性を感知するために用いられる。送信機は、差圧、ライン圧、温度、pHなどのプロセスパラメータを感知する。」
(b)「【0007】
【図1】プロセス容器に結合されたサーモウェルアセンブリを含み且つプロセス制御室と通信する温度送信機を示す斜視図である。
【図2】図1のサーモウェルアセンブリの正面図である。
【図3】図2のサーモウェルから赤外線放射を受ける赤外線センサを示す温度センサ、及びプロセス温度への出力を提供する関連回路を示す概略図である。
【図4】赤外線センサの距離に対するスポットサイズを示す図である。
【図5】図2のサーモウェルの側面断面図であり、図4に示されたスポットサイズによる温度測定に導入された誤差の原因を示している。
【図6】サーモウェルの穴の内壁上のコーティングを含むサーモウェルの側面断面図である。
【図7】サーモウェルの穴を通って延在する管を示すサーモウェルの側面断面図である。
【図8】赤外線センサに近接する導波管又は集束機構を示すサーモウェルの近位端の側面断面図である。」
(c)「【0008】
図1は、プロセス制御システム10を示す簡略図であり、このシステムは、2以上の有線ケーブル、光ファイバケーブル、又は無線リンクでありうる伝送ループ16を用いて接続された送信器(又はセンサ)12及び制御室装置14を含む。本実施態様において、送信機12は温度を測定する。送信機12は、プロセス配管18上に取り付けられたサーモウェルアセンブリ20を含み、配管18内のプロセス流体の測定温度を表すループ16上の出力を提供する。送信機12は、温度送信機であってもよく、センサハウジング内に配置されてもよく、制御室装置14と直接的に又は別の送信機を介して通信する検知装置であってもよい。」
(d)「【0010】
図2は、図1に示された送信機12に結合されたサーモウェル20の正面透視図である。サーモウェル20は、フランジ22上に搭載され、プロセス配管18内に延在し、その遠位端がシールされた中空管を含む。サーモウェル20は、金属、プラスチック、セラミック、複合材、及びこれらの組み合わせを含む任意の適切な材料で形成されうる。」
(e)「【0012】
プランクの法則によれば、サーモウェル20を通過する穴の内壁は、壁の温度に関連する放射を放出する。赤外線センサ24は、プランクの法則に従って放出された放射を感知し、それに応答してセンサ出力を提供するように配設される。センサ出力は、サーモウェル20の温度と相関させられることができ、プロセス配管18内に搬送されるプロセス流体の温度の間接的な測定値を提供しうる。赤外線センサ24は、サーモウェル20の穴に沿ってセンサに焦点を合わせるように構成される光学系を含みうる。」
b 前記「(a)」ないし「(e)」の記載から、本願補正発明12における「プロセス流体を搬送するプロセス容器」は、図1のプロセス容器すなわち「プロセス配管18」を一例として説明されており、他にプロセス容器に当たるものを用いた実施例の記載は見当たらない。
c また、本願の国際出願であるPCT/US2016/036140号の出願時の明細書を参酌するに、プロセス容器に当たるものは段落[0002]に「vessel」と、段落[0007]に「a process vessel」と記載され、プロセス配管18は段落[0017]および[0019]に「process piping 18」と記載されている。vesselは、「1.容器 2.船 3.管 4.人」という意味がある(ジーニアス英和辞典第3版 大修館書店 2001年 参照。)。
d 以上のことから、本願補正発明12における「プロセス流体を搬送するプロセス容器」は、本願の発明の詳細な説明には具体的な実施例はなく、プロセス配管18の実施例をもちいて説明されるように、内部にプロセス流体を備えたことを特徴とする容器であると認められる。
e 一方、引用発明における「エンジンから排出される排気ガスGが通過する排気通路としての排気管Ep」は、前記「ウ(ア)」で検討したとおり「エンジンから排出される排気ガスG」が、本願補正発明12における「プロセス流体」に相当することから、プロセス流体が通過する排気通路としての排気管となり、本願の発明の詳細な説明で述べられている内部に搬送するプロセス流体を備えたことを特徴とする「プロセス配管18」と同等のものであると認められる。
f 前記「d」「e」より、本願補正発明12における「プロセス流体を搬送するプロセス容器」と引用発明における「エンジンから排出される排気ガスGが通過する排気通路としての排気管Ep」は、内部にプロセス流体を備える点で共通の特徴を有しており、両者の差異はその形状に過ぎない。また本願補正発明12におけるサーモウェルアセンブリが取り付けられる対象として、前記形状の差異が見受けられるとしても、その形状の差異が本願補正発明12におけるサーモウェルアセンブリの機能や作用効果を左右するものではない。
g 以上のことから、前記「ウ」で記載した相違点1は、実質的な相違点でない。
(イ)相違点2について
a 引用発明における「赤外線温度検出手段4」の「サーモパイル素子41」の受ける赤外線が発せられる領域は、サーモパイル素子41が向く方向に対し、円錐形状に広がる領域であることは、当業者にとって常識的事項である。また、引用発明の感温部23が本願補正発明12における遠位端に相当することから、引用発明における本願補正発明12の遠位端のスポット領域に相当する領域は感温部23を含む領域であると認められ、さらに前記「ウ(コ)」での検討より、引用発明の窓口48の開口部が本願補正発明12における近位端のスポット領域に相当する。そして、引用発明の窓口48の開口部の大きさ及び形状は規定されていないが、サーモパイル素子41である程度の赤外線を受光するようその開口部の大きさ及び形状が設計されることは当業者にとって常識的事項であるから、引用発明における「サーモパイル素子41」が「感温部23,窓口48,サーモパイル素子41が一直線上に並ぶように配置されて」いることは、本願補正発明12における「各スポット領域が、」「サーモウェルの」「遠位端に向けて」「穴に沿って半径方向に拡大する円錐の整列された断面領域であり、前記円錐の軸に沿う方向に前記各スポット領域の整列された断面領域の直径が前記サーモウェルの前記穴の側壁を超えて拡大している」を満たす蓋然性が高い。
b そして、引用発明の「赤外線温度検出手段4」は、「サーモパイル素子41」を備え、そのサーモパイル素子41が前記「a」の性質を備えていることから、引用発明における「赤外線温度検出手段4」は、本願補正発明12における「前記各スポット領域が、前記赤外線センサから前記サーモウェルの前記遠位端に向けて前記穴に沿って半径方向に拡大する円錐の整列された断面領域であり、前記円錐の軸に沿う方向に前記各スポット領域の整列された断面領域の直径が前記サーモウェルの前記穴の側壁を超えて拡大している赤外線センサ」に相当する蓋然性が高い。
c 前記「a」「b」より、前記「ウ」で記載した相違点2は、実質的な相違点でない。
(ウ)前記「(ア)」「(イ)」での検討のとおり、相違点1及び相違点2は実質的な相違点でない。ゆえに、本願補正発明12は引用発明である。
仮に、それら発明間に相違点があったとしても微差にすぎず、その微差に当たる発明特定事項を導き出すことは当業者ならば容易になしえたことである。
オ 小括
したがって、本願補正発明12は、引用発明である、又は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
3 本願発明について
(1)本願発明12
令和元年9月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至21に係る発明は、平成31年3月6日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至21に記載されたとおりのものであるところ、請求項12に係る発明(以下「本願発明12」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項12】
プロセス温度を測定するためのサーモウェルアセンブリであって、
近位端及び遠位端並びにその間に延在している1の穴を有し、且つプロセス流体内に延在するように構成された細長いサーモウェルであって、前記プロセス流体を搬送するプロセス容器に取り付けるように構成された細長いサーモウェルと、
前記細長いサーモウェルの前記近位端に、前記遠位端から前記サーモウェルの穴を通る赤外線放射を検出し、それに応答してプロセス温度に関連するセンサ出力を提供するように構成された赤外線センサであって、前記細長いサーモウェルにより前記プロセス流体からシールされた前記赤外線センサであり、スポットからの前記赤外線放射を前記近位端で受け、前記スポットが、前記赤外線センサと整列された円錐の断面であり、前記円錐の軸に沿う方向で前記サーモウェルの前記遠位端に向かう方向に向けて半径方向に拡大し、前記スポットの直径が前記穴の側壁を超えて拡大する赤外線センサ、及び
前記赤外線センサによって受信される前記穴の内側壁からの赤外線放射の量を減少させるように構成され、及び/又は前記細長いサーモウェルの前記遠位端から受け取られる放射の量を増加させるように構成された集束機構と、
を備えた、
上記サーモウェルアセンブリ。」
(2)原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1-9、11-19、21に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また、この出願の請求項1乃至21に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の文献に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:国際公開第2014/021140号
(3)引用された電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明
原査定の拒絶の理由で引用された電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明並びにその記載事項は、前記「2(3)イ」に記載したとおりである。
(4)対比・判断
本願発明は、前記「2(3)」で検討した本願補正発明12から、「プロセス流体の温度」を「プロセス温度」に拡張し、「前記細長いサーモウェルの前記近位端に、前記サーモウェルの前記遠位端のスポット領域から前記穴を通した赤外線放射と、前記サーモウェルの前記穴の内側壁からの赤外線放射とを、前記穴と前記近位端のスポット領域を通して検出し、前記各赤外線放射に対応させて前記プロセス流体の温度に相関するセンサ出力を提供するように構成され、前記細長いサーモウェルにより前記プロセス流体からシールされた前記赤外線センサであり、前記各スポット領域が、前記赤外線センサから前記サーモウェルの前記遠位端に向けて前記穴に沿って半径方向に拡大する円錐の整列された断面領域であり、前記円錐の軸に沿う方向に前記各スポット領域の整列された断面領域の直径が前記サーモウェルの前記穴の側壁を超えて拡大している赤外線センサ」を「前記細長いサーモウェルの前記近位端に、前記遠位端から前記サーモウェルの穴を通る赤外線放射を検出し、それに応答してプロセス温度に関連するセンサ出力を提供するように構成された赤外線センサであって、前記細長いサーモウェルにより前記プロセス流体からシールされた前記赤外線センサであり、スポットからの前記赤外線放射を前記近位端で受け、前記スポットが、前記赤外線センサと整列された円錐の断面であり、前記円錐の軸に沿う方向で前記サーモウェルの前記遠位端に向かう方向に向けて半径方向に拡大し、前記スポットの直径が前記穴の側壁を超えて拡大する赤外線センサ」と拡張し、「前記赤外線センサによって受信される前記各赤外線放射の量から、前記細長いサーモウェルの前記遠位端のスポット領域から検出される赤外線放射の量を増加させるように構成された集束機構」を「前記赤外線センサによって受信される前記穴の内側壁からの赤外線放射の量を減少させるように構成され、及び/又は前記細長いサーモウェルの前記遠位端から受け取られる放射の量を増加させるように構成された集束機構」と拡張した構成としたものである。
そうすると、本願発明12の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明12が、前記「2(3)」に記載したとおり、引用発明であるか、又は引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明12も、同様の理由により、引用発明であるか、又は引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 令和2年3月27日付け上申書に記載された補正案について
請求人は、令和2年3月27日付け上申書において、さらなる補正を行う用意があることを述べている。
その用意されたさらなる補正の補正案において、令和元年9月4日付け手続補正書による補正の請求項12に対し、請求項13の内容を含ませ、さらに明細書中に記載されている技術内容で限定して新たな請求項11(以下「本願補正案発明11」という。)を提示している。
(1)本願補正案発明11について
本願補正案発明11は、前記上申書に記載された以下の通りのものである。
「<補正後の請求項11>(補正前の請求項12)
プロセス流体の温度を測定するためのサーモウェルアセンブリであって、
近位端及び遠位端並びにその間に延在している1の穴を有し、且つプロセス流体内に延在するように構成された細長いサーモウェルであって、前記プロセス流体を搬送するプロセス容器に取り付けるように構成された細長いサーモウェル、
前記細長いサーモウェルの前記近位端に、前記サーモウェルの前記遠位端のスポット領域から前記穴を通した赤外線放射と、前記サーモウェルの前記穴の内側壁からの赤外線放射とを、前記穴と前記近位端のスポット領域を通して検出し、前記各赤外線放射に対応させて前記プロセス流体の温度に相関するセンサ出力を提供するように構成され、前記細長いサーモウェルにより前記プロセス流体からシールされた前記赤外線センサであり、前記各スポット領域が、前記赤外線センサから前記サーモウェルの前記遠位端に向けて前記穴に沿って半径方向に拡大する円錐の整列された断面領域であり、前記円錐の軸に沿う方向に前記各スポット領域の整列された断面領域の直径が前記サーモウェルの前記穴の側壁を超えて拡大している赤外線センサ、
前記赤外線センサによって受信される前記各赤外線放射の量から、前記穴の内側壁からの赤外線放射の量をプランクの法則に従い減らすことで、前記プロセス流体の温度における誤差を低減させるように動作するプロセッサ、
及び
前記赤外線センサによって受信される前記穴の前記内側壁からの前記各赤外線放射の量が減らされるか[ら]、及び/又は、前記細長いサーモウェルの前記遠位端の[スポット領域から検出される]赤外線放射の量を増加させるように構成され[た]、前記サーモウェルの前記穴の前記内側壁上に施与された放射遮蔽体を含む集束機構と、
を備えた、
上記サーモウェルアセンブリ。」
(2)本願補正案発明11が特許を受けることができるかについて
本願補正案発明11が特許を受けることができるかについて検討する。
ア 明確性(特許法第36条第6項第2号)について
本願補正案発明11には、「前記赤外線センサによって受信される前記各赤外線放射の量から、前記穴の内側壁からの赤外線放射の量をプランクの法則に従い減らすことで、前記プロセス流体の温度における誤差を低減させるように動作するプロセッサ」という新たに導入された発明特定事項があるが、「プロセッサ」が「前記赤外線センサによって受信される前記各赤外線放射の量から、前記穴の内側壁からの赤外線放射の量をプランクの法則に従い減らすことで、前記プロセス流体の温度における誤差を低減させるように動作する」という動作自体が不明である。プランクの法則とは、「黒体から輻射(放射)される電磁波の分光放射輝度、もしくはエネルギー密度の波長分布に関する公式」として知られる法則であるが、「前記赤外線センサによって受信される前記各赤外線放射の量から、前記穴の内側壁からの赤外線放射の量をプランクの法則に従い減らす」とはどのような手法なのか、本願の発明の詳細な説明及び図面を見てもその手法を理解することができない(プロセッサとプランクの法則が関係している記載は、[0014]段落に見受けられるが、これはセンサからの信号をプランクの法則に従ってプロセス流体の温度と相関させうることが記載されているのみである。また、[0012]段落には、プランクの法則に従って穴の内壁が壁の温度に関連する放射を放出することは記載しているものの、穴の内側壁からの赤外線放射の量をプランクの法則に従い減らすことは記載されていない。)。
よって、本願補正案発明11は、前記不明な発明特定事項を含んでいるため明確でなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。ゆえに特許を受けることはできない。
イ 実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)について
前記「ア」で述べたように、本願の発明の詳細な説明には「前記赤外線センサによって受信される前記各赤外線放射の量から、前記穴の内側壁からの赤外線放射の量をプランクの法則に従い減らすことで、前記プロセス流体の温度における誤差を低減させるように動作するプロセッサ」の具体的動作及び実現方法は記載されておらず、そのため本願の発明の詳細な説明は、当業者が本願補正案発明11を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
よって、本願の発明の詳細な説明は、当業者が本願補正案発明11を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないので、本願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。ゆえに特許を受けることは出来ない。
ウ 進歩性(特許法第29条第2項)について
前記「ア」で述べたように、本願補正案発明11の「前記赤外線センサによって受信される前記各赤外線放射の量から、前記穴の内側壁からの赤外線放射の量をプランクの法則に従い減らすことで、前記プロセス流体の温度における誤差を低減させるように動作するプロセッサ」という発明特定事項は不明確であり、「2(3)イ」で認定した引用発明と対比した際の相違点としては議論しない。
(ア)引用発明との対比
本願補正案発明11と引用発明との相違点は、「2(3)イ」,「2(3)ウ」及び「2(3)エ」の議論をもとにすると、本願補正発明11の集束機構は、「細長いサーモウェルの前記遠位端の[スポット領域から検出される]赤外線放射の量を増加させるように構成され[た]、前記サーモウェルの前記穴の前記内側壁上に施与された放射遮蔽体を含む集束機構」であるのに対し、引用発明の集束機構は「前記細長いサーモウェルの前記遠位端のスポット領域から検出される赤外線放射の量を増加させるように構成された集束機構」であるが、「前記サーモウェルの前記穴の前記内側壁上に施与された放射遮蔽体を含」んでいない点である。
(イ)引用例記載の発明
引用例の[0067]及び[図10]には、以下の記載がある。
「【0067】
光学手段3としての導光管は、例えば、銅製の円筒パイプ状に形成されていて、両端に開口部31、32を有している。また、導光管の内面は、鏡面に研磨されて金メッキが施されて、反射率が高く、光学機能部33として赤外線を内面に沿って導光し導くように作用する。」
[図10]
以上の記載から、引用例には、「光学手段3としての導光管の内面を鏡面に研磨し金メッキを施して反射率を高め、赤外線を内面に沿って導光し導くようにする」発明(以下「引用例図10発明」という。)が記載されている。導光管の内面を金メッキした場合は、導光管自体の内面への赤外線は金メッキにより導光管自体へと反射されることは、当業者ならば自ずと理解されよう。
(ウ)判断
引用発明も引用例図10発明も赤外線を管状部材内で導光する点で共通の技術分野に属していることから、赤外線の導光効率を高めるために引用発明の筒状部材2の内周壁面に、前記引用例図10発明を採用することは、当業者ならば容易になし得たことである。
そして、本願補正案発明11の効果は、引用発明及び引用例図10発明から当業者が予測しうる程度のものにすぎない。
したがって、本願補正案発明11は、引用発明及び引用例図10発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることはできない。
(3)むすび
以上のことから、本願補正案発明11は、特許を受けることができる発明とは認められない。
5 むすび
以上のとおり、本願の請求項12に係る発明は、引用例に記載された発明である、又は、引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は同条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-011616