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特許拒絶査定不服審判

2023-003296

超高密度波長ビーム結合レーザシステム

審判番号
2023-003296
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-568155外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年02月27日
審決日
2024年06月20日
公報発行日
2024年11月29日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (H01S)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-568155「超高密度波長ビーム結合レーザシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年12月20日国際公開、WO2018/231884、令和 2年 8月 6日国内公表、特表2020-523793〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 1 手続の経緯 本願は、2018年(平成30年)6月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年6月13日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和3年 5月18日 :手続補正書の提出 令和4年 1月27日付け:拒絶理由通知書 同年 8月 1日 :意見書、手続補正書の提出 同年10月18日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同月25日 :原査定の謄本の送達) 令和5年 2月27日 :審判請求書、手続補正書の提出 2 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和5年2月27日に提出された手続補正書による補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1の記載は、次のとおりのものである。 <本願発明> 「a.各々が0.25W以上の出力を有する複数のレーザダイオードであって、それぞれレーザビーム経路に沿ってレーザビームを提供するように構成される複数のレーザダイオードと; b.該複数のレーザダイオードのそれぞれによって共有される共通の外部キャビティと; c.該複数のレーザダイオードのそれぞれから平行ビームを生成するための該レーザビーム経路内のコリメーティング光学手段と; d.該共通の外部キャビティ内で該レーザビーム経路内のビーム結合光学手段であって、各レーザダイオードの対する1つのバンドエッジを有し、それにより各レーザダイオードの波長を決定し、該複数のレーザダイオードからの各レーザビーム経路を同一直線上に位置合わせし、空間で重なり合うようにすることにより、1つの複合出力レーザビームを提供するビーム結合光学手段と、 を有し、 e.該複合出力レーザビームの、合成パワーを開口面積発散角積で除算した空間輝度が、該複数のレーザダイオード内の任意の単一レーザダイオードのレーザビームの輝度よりも大きくなるようにしたレーザシステム。」 3 原査定の拒絶の理由 本願発明は、令和5年2月27日に提出された手続補正書による補正前の請求項1に係る発明に対応するものであるところ、当該補正前の請求項1に係る発明に対する原査定の拒絶の理由は、以下の内容を含むものである。 当該補正前の請求項1に係る発明は、その優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である引用文献1に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:米国特許第6876679号明細書 4 引用文献1に記載された事項及び引用発明 (1)引用文献1に記載された事項 ア 原査定で引用された引用文献1には、次の記載がある。翻訳は当審によるもので、下線は当審が付したものである。 (ア)「Another type of high power laser is referred to as an incoherently beam combined (IBC) laser. An example of a known IBC laser is described in U.S. Pat. No. 6,208,679. Known IBC lasers utilize a dispersive external cavity and various optics to selectively provide feedback to emitters of a unitary emitter array. The selective feedback causes emitters of the unitary emitter to laser across a relatively broad, although limited, spectrum. Additionally, the dispersive external cavity and optics multiplex output beams from emitters of the unitary emitter array.」(2欄33~43行) (日本語訳: 別のタイプの高出力レーザーは、インコヒーレントビーム結合(IBC)レーザと呼ばれている。公知のIBCレーザの一例は、米国特許第6,208,679号に記載されている。既知のIBCレーザは、分散型外部共振器と様々な光学系を利用し、単一エミッタアレイのエミッタに選択的にフィードバックを与える。この選択的フィードバックにより、限定されたスペクトルではあるが、比較的広い範囲にわたって、単一エミッタのエミッタがレーザーを発振する。さらに、分散型外部共振器と光学系は、単一エミッターアレイのエミッターからの出力ビームを多重化する。 (イ)「Embodiments of the present invention may provide several advantages. Specifically, embodiments of the present invention generate a high power, multi-wavelength output beam. Moreover, each cell may be manufactured separately using the same tooling and assembly process. The components of the cells may advantageously be interchangeable. Moreover, the cell size is advantageously selected in a manner to place the cells in an individual butterfly package to be fiber coupled using a focusing lens. Accordingly, embodiments of the present invention enable a high power multiple wavelength beam to be generated from a relatively small device at a low cost. Embodiments of the present invention may be utilized for any number of applications such as providing a pump for Erbium-Doped Fiber Amplifiers (EDFAs) or Raman gain amplifiers.」(3欄8~21行) (日本語訳: 本発明の実施形態は、いくつかの利点を提供し得る。具体的には、本発明の実施形態は、高出力の多波長出力ビームを生成する。さらに、各セルは、同じ工具と組立工程を用いて別々に製造することができる。セルの構成要素は、有利には交換可能である。さらに、セルサイズは、集光レンズを使用してファイバー結合される個々のバタフライパッケージにセルを配置する方法で有利に選択される。従って、本発明の実施形態により、比較的小型の装置から高出力の多波長ビームを低コストで発生させることができる。本発明の実施形態は、エルビウム添加光ファイバ増幅器(EDFA)又はラマン利得増幅器にポンプを提供するなど、多くの用途に利用することができる。) (ウ)「The present invention is directed to systems and methods for multiplexing the output beams of a plurality of laser diode cells. As depicted in FIG. 1, each cell 101 comprises a number of components mounted on substrate 106 including laser diode 102. Laser diode 102 may comprise any suitable semiconductor or other lasing material including but not limited to GaAlAs, GaAs, InP, InGaAs, InGaAsP, AlGalnAs, and/or the like. Additionally, laser diode 102 may be implemented utilizing any number of designs such as edge emitters, vertical cavity surface emitting lasers (VCSELs), and grating surface emitting lasers.」(4欄28~38行) (日本語訳: 本発明は、複数のレーザダイオードセルの出力ビームを多重化するシステム及び方法に向けられている。図1に示すように、各セル101は、レーザダイオード102を含む基板106上に取り付けられた多数の構成要素からなる。レーザダイオード102は、GaAlAs、GaAs、InP、InGaAs、InGaAsP、AlGalnAs、及び/又はこれらに限定されないが、これらを含む任意の適切な半導体又は他の発光材料から構成されてもよい。さらに、レーザダイオード102は、端面発光、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)、およびグレーティング面発光レーザなどの任意の数の設計を利用して実装することができる。) (エ)「FIG. 9A depicts a plurality of plates 901-904 that may be utilized to fabricate component for use in an IBC laser according to embodiments of the present invention. Each of plates 901-904 are coated with a thin dielectric film or films (shown as films 911-914). The reflectivity of each of films 911-914 as a function of wavelength is shown in FIG. 9B (as reflectivity responses 921-924). As shown by the reflectivity responses in FIG. 9B, each of films 911-914 are highly reflective for wavelengths longer than a respective predetermined wavelength. The plurality of plates 901-904 may be diced or suitable cut along axes 951-955. Axes 951-955 may be advantageously oriented at a forty-five degree angle with respect to plates 901-904. By cutting plates 901-904 in this manner, a plurality of optical components (960-1 through 9604 as shown in FIG. 9A) may be fabricated. An additional cut may be applied to each of optical components 960-1 through 960-4. As shown in FIG. 10, optical component 960 may be cut along axis 1051. After the additional cuts are made, additional coatings may be applied. As shown in FIG. 11, optical component 960 may be coated to provide broadband partial reflector 1151. Also, optical component 960 may be coated to provide broadband reflector 1152.」(9欄22~44行) (日本語訳: 図9Aは、本発明の実施形態によるIBCレーザで使用するためのコンポーネントを製造するために利用され得る複数のプレート901~904を示す。プレート901~904の各々は、薄い誘電体フィルム(フィルム911~914として示される)で被覆される。波長の関数としてのフィルム911~914の各々の反射率が、図9Bに示されている(反射率応答921~924として)。図9Bの反射率応答によって示されるように、フィルム911~914の各々は、それぞれの所定の波長よりも長い波長に対して高い反射率を有する。複数の板901~904は、軸951~955に沿ってダイシングまたは適当な切断がなされてもよい。軸951~955は、プレート901~904に対して有利には45度の角度で配向され得る。このようにプレート901~904を切断することにより、複数の光学部品(図9Aに示される960-1~960-4)を作製することができる。 光学部品960-1~960-4の各々に追加のカットが適用されてもよい。図10に示すように、光学部品960は軸1051に沿って切断されてもよい。追加のカットが行われた後、追加のコーティングが施されてもよい。図11に示すように、光学部品960は、広帯域部分反射鏡1151を提供するようにコーティングされてもよい。また、光学部品960は、広帯域反射鏡1152を提供するためにコーティングされてもよい。) (オ)「At this point, optical component 960 is suitable for implementation of an IBC laser according to embodiments of the present invention. FIG. 12 depicts IBC laser 1200 that includes optical component 960 according to embodiments of the present invention. IBC laser 1200 comprises integrated emitter array 1205 which provides its output beams to micro-lens array 1201 to collimate the output beams. Each respective emitter beam is reflected by one of films 911 through 914 thereby multiplexing the beams. Additionally, the external cavity of IBC laser 1200 is completed by partial reflector 1151 which provides feedback to each of emitters 901-1 through 901-4. Also, it shall be appreciated that the respective wavelength of the feedback provided to each of emitters 901-1 through 901-4 is determined by the reflectivity of surfaces 911 through 914. The portion of the optical power that is not reflected by partial reflector 1151 may be coupled into fiber 1204 by fiber coupling lens 1203.」(9欄45~61行) (日本語訳: このとき、光学部品960は、本発明の実施形態によるIBCレーザの実装に適している。図12は、本発明の実施形態による光学部品960を含むIBCレーザ1200を示している。IBCレーザ1200は、出力ビームをコリメートするためにマイクロレンズアレイ1201にその出力ビームを提供する集積エミッタアレイ1205で構成される。それぞれのエミッタビームは、フィルム911~914のうちの1つによって反射され、それによってビームが多重化される。さらに、IBCレーザ1200の外部共振器は、エミッタ901-1~901-4のそれぞれにフィードバックを提供する部分反射鏡1151によって完成される。また、エミッタ901-1~901-4の各々に提供されるフィードバックのそれぞれの波長は、面911~914の反射率によって決定されることを理解されたい。部分反射鏡1151によって反射されない光パワーの部分は、ファイバ結合レンズ1203によってファイバ1204に結合され得る。) (カ)「図9A [図:0001415840000001.jpg] 」 「図9B [図:0001415840000002.jpg] 」 (日本語訳:反射率-波長) 「図10 [図:0001415840000003.jpg] 」 「図11 [図:0001415840000004.jpg] 」 (日本語訳:広帯域部分反射鏡1151、 広帯域AR1152) 「図12 [図:0001415840000005.jpg] 」 イ 前記アより、次の事項が認められる。 前記ア(ウ)の「本発明は、複数のレーザダイオードセルの出力ビームを多重化するシステム及び方法に向けられている」との記載や、「レーザダイオード102は、端面発光(edge emitters)、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)、およびグレーティング面発光レーザなど」との記載に含まれる「エミッタ(emitters)」との用語によれば、前記ア(オ)に記載された「エミッタ901-1~901-4」は、それぞれが「レーザダイオード」であると理解できる。 (2)引用発明 前記(1)によれば、引用文献1には、図12に記載された実施形態に係るIBCレーザ(インコヒーレントビーム結合レーザ)について、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、参考までに、引用発明の認定に用いた引用文献1の記載に係る箇所を括弧内に付してある。 <引用発明> 「高出力の多波長出力ビームを生成する、光学部品960を含むIBCレーザ(インコヒーレントビーム結合レーザ)1200であって、(前記(1)ア(ア)及び(エ)) 光学部品960は、プレート901~904より作製され、 プレート901~904の各々は、薄い誘電体フィルム(フィルム911~914)で被覆され、 フィルム911~914の各々は、それぞれの所定の波長よりも長い波長に対して高い反射率を有し、 光学部品960は、広帯域部分反射鏡1151を提供するようにコーティングされ、(前記(1)ア(ウ)) IBCレーザ1200は、出力ビームをコリメートするためにマイクロレンズアレイ1201にその出力ビームを提供する集積エミッタアレイ1205で構成され、 それぞれのエミッタビームは、フィルム911~914のうちの1つによって反射され、それによってビームが多重化され、 IBCレーザ1200の外部共振器は、エミッタ901-1~901-4のそれぞれにフィードバックを提供する部分反射鏡1151によって完成され、 エミッタ901-1~901-4の各々に提供されるフィードバックのそれぞれの波長は、面911~914の反射率によって決定され、(前記(1)ア(エ)) エミッタ901-1~901-4は、それぞれがレーザダイオードである、(前記(1)イ) IBCレーザ1200。」 5 対比・判断 (1)対比 本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりである。 ア 本願発明の「a.各々が0.25W以上の出力を有する複数のレーザダイオードであって、それぞれレーザビーム経路に沿ってレーザビームを提供するように構成される複数のレーザダイオード」との特定事項について (ア)引用発明の「エミッタ901-1~901-4」は、「それぞれがレーザダイオードである」るから、それぞれ本願発明の「レーザダイオード」に相当し、引用発明は、本願発明の「複数のレーザダイオード」を有するとの特定事項を満たしている。 (イ)引用発明の「集積エミッタアレイ1205」は、「出力ビームを提供する」ものであるところ、前記(ア)も踏まえれば、当該「出力ビーム」はレーザビームであるといえ、その経路はレーザビーム経路であるといえる。そうすると、引用発明の「エミッタ901-1~901-4」のそれぞれは、本願発明の「それぞれレーザビーム経路に沿ってレーザビームを提供するように構成される」との特定事項を満たしている。 (ウ)よって、本願発明と引用発明は、「複数のレーザダイオードであって、それぞれレーザビーム経路に沿ってレーザビームを提供するように構成される複数のレーザダイオード」を有する点で共通する。 イ 本願発明の「b.該複数のレーザダイオードのそれぞれによって共有される共通の外部キャビティ」との特定事項について 引用発明の「外部共振器」は、「エミッタ901-1~901-4のそれぞれにフィードバックを提供する部分反射鏡1151によって完成され」ており、当該「部分反射鏡1151」は、エミッタ901-1~901-4のそれぞれにフィードバックを提供するのであるから、外部共振器を構成する当該「部分反射鏡1151」は、当該エミッタ901-1~901-4に共有される共通のものといえる。 また、引用発明の「エミッタ901-1~901-4」のそれぞれからのビームである「それぞれのエミッタビーム」は、「フィルム911~914のうちの1つによって反射され、それによってビームが多重化され」ているから、当該「フィルム911~914」を含むとともに、「広帯域部分反射鏡1151を提供するようにコーティングされ[る]」「光学部品960」もまた、外部共振器を構成し、それぞれのエミッタ901-1~901-4に共有される共通のものといえる。 よって、引用発明の「光学部品960」は、本願発明の「該複数のレーザダイオードのそれぞれによって共有される共通の外部キャビティ」に相当するといえる。 ウ 本願発明の「c.該複数のレーザダイオードのそれぞれから平行ビームを生成するための該レーザビーム経路内のコリメーティング光学手段」との特定事項について 引用発明は、「出力ビームをコリメートするためにマイクロレンズアレイ1201にその出力ビームを提供する集積エミッタアレイ1205で構成され」ているところ、当該「集積エミッタアレイ1205」は、「エミッタ901-1~901-4」が集積されたものであるから、引用発明の「マイクロレンズアレイ1201」は、「エミッタ901-1~901-4」のそれぞれからの出力ビームを「コリメートするため」のものと理解できる。そうすると、引用発明の「マイクロレンズアレイ1201」は、本願発明の「コリメーティング光学手段」に相当し、「コリメートする」との技術事項に照らせば、当該「マイクロレンズアレイ1201」は、「エミッタ901-1~901-4」の出力ビームのそれぞれを平行ビームに変換するものと理解できる。 よって、引用発明は、本願発明に係る前記特定事項を満たしている。 エ 本願発明の「d.該共通の外部キャビティ内で該レーザビーム経路内のビーム結合光学手段であって、各レーザダイオードの対する1つのバンドエッジを有し、それにより各レーザダイオードの波長を決定し、該複数のレーザダイオードからの各レーザビーム経路を同一直線上に位置合わせし、空間で重なり合うようにすることにより、1つの複合出力レーザビームを提供するビーム結合光学手段」との特定事項について (ア)引用発明の「光学部品960」は、「複数のプレート901~904より作製され」、「プレート901~904の各々は、薄い誘電体フィルム(フィルム911~914)で被覆され」ているところ、「それぞれのエミッタビームは、フィルム911~914のうちの1つによって反射され、それによってビームが多重化され」るものであるから、当該「フィルム911~914」は、本願発明の「ビーム結合光学手段」に相当する。また、前記イで説示したように、引用発明の「光学部品960」は、外部共振器を構成し、エミッタ901-1~901-4に共有される共通のものであるから、引用発明の「光学部品960」に含まれる「フィルム911~914」は、「該共通の外部キャビティ内で該レーザビーム経路内」との前記特定事項を満たしている。 (イ)引用発明の「光学部品960」は、「フィルム911~914」を含むものであるところ、当該「フィルム911~914」は、「それぞれの所定の波長よりも長い波長に対して高い反射率を有し」ているから、それぞれの所定の波長にバンドエッジを有するものと理解できる。そして、「エミッタ901-1~901-4の各々に提供されるフィードバックのそれぞれの波長は、面911~914の反射率によって決定され」るのであるから、当該「フィードバックのそれぞれの波長」により、「エミッタ901-1~901-4」の「それぞれのエミッタビーム」の波長が決定されるものと理解できる。 よって、引用発明の「フィルム911~914」は、「各レーザダイオードの対する1つのバンドエッジを有し、それにより各レーザダイオードの波長を決定し」との前記特定事項を満たしている。 (ウ)引用発明の「それぞれのエミッタビーム」は、「フィルム911~914のうちの1つによって反射され、それによってビームが多重化され」ているところ、このことは、本願発明でいう「該複数のレーザダイオードからの各レーザビーム経路を同一直線上に位置合わせし、空間で重なり合うようにする、1つの複合出力レーザビームを提供する」ことに相当する。 よって、引用発明の「フィルム911~914」は、前記「該複数のレーザダイオードからの各レーザビーム経路を同一直線上に位置合わせし、空間で重なり合うようにすることにより、1つの複合出力レーザビームを提供する」との特定事項を満たしている。 (エ)以上より、引用発明の「フィルム911~914」は、本願発明に係る前記特定事項を満たしている。 オ 本願発明の「e.該複合出力レーザビームの、合成パワーを開口面積発散角積で除算した空間輝度が、該複数のレーザダイオード内の任意の単一レーザダイオードのレーザビームの輝度よりも大きくなるようにしたレーザシステム」との特定事項について 引用発明は、「エミッタ901-1~901-4の」「それぞれのエミッタビーム」を「フィルム911~914のうちの1つによって反射」し、「それによってビームが多重化され」るものであるが、多重化されたビームの空間輝度とそれぞれのエミッタビームの輝度の関係は明示されていない。 カ 以上によれば、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「a.複数のレーザダイオードであって、それぞれレーザビーム経路に沿ってレーザビームを提供するように構成される複数のレーザダイオードと; b.該複数のレーザダイオードのそれぞれによって共有される共通の外部キャビティと; c.該複数のレーザダイオードのそれぞれから平行ビームを生成するための該レーザビーム経路内のコリメーティング光学手段と; d.該共通の外部キャビティ内で該レーザビーム経路内のビーム結合光学手段であって、各レーザダイオードの対する1つのバンドエッジを有し、それにより各レーザダイオードの波長を決定し、該複数のレーザダイオードからの各レーザビーム経路を同一直線上に位置合わせし、空間で重なり合うようにすることにより、1つの複合出力レーザビームを提供するビーム結合光学手段と、 を有する、レーザシステム。」 <相違点> ・相違点1 「レーザダイオード」について、本願発明は、「各々が0.25W以上の出力を有する」のに対し、引用発明は、その出力が不明である点。 ・相違点2 本願発明は、「該複合出力レーザビームの、合成パワーを開口面積発散角積で除算した空間輝度が、該複数のレーザダイオード内の任意の単一レーザダイオードのレーザビームの輝度よりも大きくなるようにした」のに対し、引用発明は、「それぞれのエミッタビーム」を「フィルム911~914のうちの1つによって反射」し、「それによってビームが多重化され」るものであるものの、多重化されたビームの空間輝度とそれぞれのエミッタビームの輝度の関係は不明である点。 (2)判断 前記相違点について検討する。 ア 相違点1について 引用発明は、「高出力の多波長出力ビームを生成する」IBCレーザであるところ、引用発明の光学部品960により多重化されたビーム(以下「IBCレーザ出力ビーム」という。)は、それぞれのエミッタビームを多重化したものであるから、当業者は、当該IBCレーザ出力ビームの出力を高出力とするための一つの手段として、それぞれのエミッタビームの出力を大きくすればよいことが挙げられることをただちに理解できる。 よって、引用発明において、高出力の多波長出力ビームを生成するために、引用発明のそれぞれのエミッタビームの出力を、相違点1に係る本願発明のごとく「0.25W以上」とすることは、当業者が容易になし得たことである。 イ 相違点2について (ア)引用発明は、「それぞれのエミッタビームは、フィルム911~914のうちの1つによって反射され、それによってビームが多重化され」、「高出力の多波長出力ビームを生成する」IBCレーザであるところ、それぞれのエミッタビームが多重化されるのであるから、IBCレーザ出力ビームの出力がそれぞれのエミッタビームの出力より大きいことは、当然かつ自明のことである。 (イ)他方、IBCレーザ出力ビームの輝度やそれぞれのエミッタビームの輝度は不明であるが、レーザビームの輝度は、レーザの出力をスポット面積にビームの立体角を掛けた値で割ったもの(すなわち、本願発明の「パワーを開口面積発散角積で除算した空間輝度」)であるから、レーザの出力が高く、かつ、またレーザビームの収束性が高いほど、すなわち、レーザビームの品質が高いほど高くなるものと理解できる。このことは、レーザビームの品質を評価する際の技術常識(BBP、M2)からみて明らかな事項といえる。 そして、引用発明は、「集積エミッタアレイ1205」からの「出力ビームをコリメートする」とともに、「それぞれのエミッタビームは、フィルム911~914のうちの1つによって反射され、それによってビームが多重化され[る]」ものであり、このことは、IBCレーザ出力ビームのスポット面積及びビームの立体角を小さくすることを志向するもの、すなわち、レーザビームの収束性が高いことを志向するものであるといえる。 (ウ)前記(ア)及び(イ)を踏まえると、引用発明において、IBCレーザ出力ビームの輝度をそれぞれのエミッタビームの輝度よりも大きくすることは、当業者が容易になし得たことといえる。 よって、相違点2は、引用発明及び技術常識に基づいて、当業者が容易になし得たことである。 (3)本願発明の効果について 前記相違点を総合的に判断しても、本願発明の作用効果は、本願発明の構成が奏するものとして、引用発明に基づいて当業者にとって予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 (4)審判請求人の主張について 審判請求人の主張について、下記のとおりであるから、前記(2)の判断を左右するものではない。 ア 審判請求人は、引用文献1には、平行ビームを生成するための光学手段について記載はなく、図面から判断できるものではない旨を主張している。しかしながら、前記(1)ウに説示のとおり、引用発明の「マイクロレンズアレイ」は、「出力ビームをコリメートするため」のもの、すなわち、出力ビームのそれぞれを平行ビームに変換するものであるから、審判請求人の前記主張は採用できない。 イ 審判請求人は、引用文献1には、各レーザダイオードの対する1つのバンドエッジを有し、それにより各レーザダイオードの波長を決定するビーム結合光学手段について、記載も示唆もなされておらず、図9Bの反射率応答921をみても、フィルム911がそのバンドエッジより大きい波長は全て反射することが示されるのみであって、「各レーザダイオードの波長を決定する」ためのものとは異なる旨を主張している。 しかしながら、前記(1)エ(イ)に説示のとおり、引用発明においても、フィルム911~914のバンドエッジによりエミッタビームの波長が決定されており、引用発明のフィルム911の反射率応答が図9Bの921のようであることは、引用発明レーザダイオードの波長を決定しないとの審判請求人の主張には根拠がないから、審判請求人の前記主張は採用できない。 ウ 審判請求人は、引用文献1には、個々のダイオードと比較して、結合されたレーザビームの輝度が増加することを開示または示唆していない旨を主張している。しかしながら、前記(2)イに説示のとおりであるから、審判請求人の前記主張は採用できない。 6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-003296

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