特許拒絶査定不服審判
2021-015386
発光装置
- 審判番号
- 2021-015386
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-017263外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年11月10日
- 審決日
- 2023年02月13日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】シャープ株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
- 分類
- P18 .121-WZ (H01S)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020- 17263「発光装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 8月31日出願公開、特開2020-136671〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年) 2月 4日(パリ条約による優先権主張外国受理2019年 2月21日(以下「優先日」という。)、米国)の出願であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和3年 1月27日付け:拒絶理由通知書
令和3年 4月 5日 :意見書、手続補正書
令和3年 4月15日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
令和3年 6月16日 :意見書、手続補正書
令和3年 8月 5日付け:拒絶査定
令和3年11月10日 :審判請求、手続補正書
令和4年10月17日付け:拒絶理由通知書
令和4年12月16日 :意見書、手続補正書(以下、この手続補正書に
よる手続補正を「本件補正」という。)
2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1~16に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項14に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項14】
1又は複数の半導体発光素子を含む半導体光源装置と、
1又は複数種類の蛍光体を含み、上記半導体光源装置からの照射光の波長を変換する波長変換部材と、
上記半導体光源装置と上記波長変換部材との間に配置され、上記半導体光源装置からの照射光を集光させる集光レンズと、
出射開口と、内径部に複数の支持部が設けられている筒状のホルダと、
を備え、
上記波長変換部材は、上記支持部の1つである波長変換部材支持部に支持され、上記筒状のホルダの上記出射開口の上記集光レンズ側に取り付けられる
ことを特徴とする発光装置。」
3 当審が通知した拒絶の理由
当審が通知した令和4年10月17日付け拒絶理由通知書に係る拒絶理由は、次の内容を含むものである。
本件補正前の請求項1~3に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、下記の頒布された引用文献1に記載された発明、又は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2013-120735号公報
引用文献2:国際公開第2013/175773号(周知技術を示す文献)
引用文献3:特開2008-153617号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4:特開2008-10518号公報(周知技術を示す文献)
4 引用文献の記載及び引用発明
(1)引用文献1の記載
本願の優先日前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2013-120735号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。(下線は当審で付した。以下同じ。)。
ア
「【0039】
[実施形態1]
本発明に係る実施形態1について、図1~図3を参照して以下に説明する。
【0040】
図1は、本実施形態に係る光源装置の構成を示す光軸方向に沿った断面図である。
【0041】
〔光源装置の構成〕
図1に示すように、光源装置1は、ハウジング2と、半導体レーザ3と、集光レンズ4と、蛍光部5とを備えている。
【0042】
〈ハウジングの構成〉
ハウジング2は、半導体レーザ3、集光レンズ4および蛍光部5を保持する保持部材であり、本体部21、半導体レーザ保持部22、レンズ保持部23および放射開口部24によって構成されている。
【0043】
本体部21は、筒状に形成されている外装部である。この本体部21は、外光の入射を遮断するとともに、蛍光部5(後述する透明部材51)で反射される半導体レーザ3からの一部のレーザ光の外部への放射を遮断する。
【0044】
半導体レーザ保持部22は、半導体レーザ3を保持する部分であり、本体部21の一方の端部に設けられている。この半導体レーザ保持部22は、半導体レーザ3の配置スペースを確保するための開口22aを有している。
【0045】
レンズ保持部23は、集光レンズ4を保持する部分であり、本体部21の中間位置に設けられている。
【0046】
放射開口部24は、蛍光部5を保持する部分であり、外部に可視光を放射する蛍光部5へ励起光を入射させるための開口24aを有している。この放射開口部24は、本体部21の他方の端部に設けられている。」
「【0047】
〈半導体レーザの構成〉
半導体レーザ3は、ステム31、キャップ32、ガラス窓33、LD(Laser Diode)チップ34~36、複数のリードピン37およびヒートシンク38を有している。この半導体レーザ3は、TO-CANタイプのパッケージ構造によって形成されている。
・・・(略)・・・
【0050】
ヒートシンク38には、LDチップ34~36(半導体レーザチップ)がハイブリッドまたはモノリシックの形態で実装されている。これらのLDチップ34~36は、それぞれ、後述する緑発光蛍光体52、赤発光蛍光体53、青発光蛍光体54に照射するためのレーザ光を発生するように、独立して発光制御される。各LDチップ34~36の発振波長は、それぞれ励起する緑発光蛍光体52、赤発光蛍光体53、青発光蛍光体54の発光波長より短波長である。」。
「【0054】
〈蛍光部の構成〉
蛍光部5は、レーザ光によって励起されて蛍光光を発生する部分であり、透明部材51、緑発光蛍光体52、赤発光蛍光体53および青発光蛍光体54を有している。
【0055】
透明部材51は、樹脂、ガラスなどの透明材料によって形成される透光性基材である。この透明部材51は、一方の表面(図では内側表面)における外周端縁で、放射開口部24における開口24aの周辺に固着されている。
【0056】
また、透明部材51の他方の表面(図では外側表面)に蛍光体としての緑発光蛍光体52、赤発光蛍光体53および青発光蛍光体54が設けられている。緑発光蛍光体52、赤発光蛍光体53および青発光蛍光体54は、互いに分離されて配置され、それぞれ封止材に分散されることによって透明部材51上に蛍光層を形成している。」
イ
「【0106】
[実施形態3]
本発明に係る実施形態3について、図5を参照して以下に説明する。
【0107】
なお、本実施形態において、実施形態1,2における構成要素と同等の機能を有する構成要素については、適宜、同一の符号を付記して、その説明を省略する。
【0108】
図5は、本実施形態に係る光源装置の構成を示す光軸方向に沿った断面図である。
【0109】
〔光源装置の構成〕
図5に示すように、光源装置12は、前述の光源装置11と同様、半導体レーザ3と、集光レンズ4と、蛍光部6とを備えているが、ハウジング2に代えてハウジング7を備えている。また、光源装置12は励起光反射部8を備えている。
・・・(略)・・・
【0130】
〈気密性の向上〉
一般に、蛍光体は、空気中の水分や不純物によって蛍光光への変換効率が低下するなどの劣化が発生する場合がある。このため、蛍光体を密閉封止して、空気中の水分や不純物による劣化を防ぐことが望ましい。
【0131】
そこで、光源装置12では、光取り出し部となるハウジング7の端部側を励起光反射部8の透明部材81により全面を塞いでいる。これにより、光取り出し部からの水分や不純物の浸入が回避されるので、蛍光部6における蛍光体62~64の劣化を防止することができる。」
「【0142】
〈波長選択ミラーの構成〉
波長選択ミラー10(光学素子)は、集光レンズ4によって集光される半導体レーザ3からの励起光(波長405nm)を蛍光部9へ向けて反射するとともに、蛍光部9から放射される蛍光光(可視光)を透過させるミラーである。図6においては、波長選択ミラー10が励起光をほぼ直角に反射する構成が示されているが、波長選択ミラー10が励起光を反射する角度については直角に限定されず、鋭角であっても鈍角であってもよい。」
ウ
図1、5は、次のとおりである。
「【図1】
[図:0001396709000001.jpg]
【図5】
[図:0001396709000002.jpg]
」
図1から、集光レンズは半導体レーザと蛍光部の間に配置されること、及び、レンズ保持部と放射開口部がハウジングの内側に設けられること、が見て取れる。
エ 引用文献1に記載された技術的事項
上記(1)イ及びウから、引用文献1には、次の技術的事項(以下「引用文献1に記載された技術的事項」という。)が記載されているものと認められる。(なお、参考までに、下記認定に用いた引用文献1の記載等に係る段落番号等を括弧内に付してある。以下、同じ。)
(ア)一般に、蛍光体は、空気中の水分や不純物によって蛍光光への変換効率が低下するなどの劣化が発生する場合があり、蛍光体を密閉封止して、空気中の水分や不純物による劣化を防ぐことが望ましいこと。(【0131】)
(イ)光取り出し部となるハウジングの端部側の全面を塞ぐことで水分や不純物のハウジング内部への浸入が回避され、ハウジング内部に蛍光部を設けることで蛍光部における蛍光体の劣化を防止しうること。(【0132】、図6)
オ 引用発明の認定
上記(1)ア及びウから、引用文献1には、実施形態1に係る光源装置について、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ハウジング2と、半導体レーザ3と、集光レンズ4と、蛍光部5とを備え、(【0041】)
集光レンズは、半導体レーザと蛍光部の間に配置され、(上記(1)ウ)
ハウジング2は、半導体レーザ3、集光レンズ4および蛍光部5を保持する保持部材であり、本体部21、半導体レーザ保持部22、レンズ保持部23および放射開口部24によって構成され、(【0042】)
本体部21は、筒状に形成され、(【0043】)
半導体レーザ保持部22は、半導体レーザ3を保持する部分であり、(【0044】)
レンズ保持部23は、集光レンズ4を保持する部分であり、(【0045】)
放射開口部24は、蛍光部5を保持する部分であり、(【0046】)
レンズ保持部と放射開口部がハウジングの内側に設けられ、(上記(1)ウ)
半導体レーザ3は、LDチップを有し、(【0047】)
LDチップ発振波長は、それぞれ励起する緑発光蛍光体52、赤発光蛍光体53、青発光蛍光体54の発光波長より短波長で(【0050】)、波長405nmであり、(【0142】)
蛍光部5は、レーザ光によって励起されて蛍光光を発生する部分であり、透明部材51、緑発光蛍光体52、赤発光蛍光体53および青発光蛍光体54を有し、(【0055】)
透明部材51は、一方の表面における外周端縁で、放射開口部24における開口24aの周辺に固着され、(【0056】)
透明部材51の他方の表面に蛍光体としての緑発光蛍光体52、赤発光蛍光体53および青発光蛍光体54が設けられた、(【0057】)
光源装置。(【0041】)」
(2)引用文献2
本願の優先日前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である国際公開第2013/175773号(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
ア
「【特許請求の範囲】
[請求項1] 複数の蛍光体粒子と、
前記複数の蛍光体粒子の一部の間に位置し、c軸に配向した酸化亜鉛または単結晶である酸化亜鉛によって構成された第1のマトリックスと、
前記複数の蛍光体粒子の残りの部分の間に位置し、前記酸化亜鉛よりも屈折率が小さい材料によって構成された第2のマトリックスと
を備えた波長変換素子。
・・・(略)・・・
[請求項3] 前記複数の蛍光体粒子の一部と、前記第1のマトリックスとを含む第1の蛍光体層と、
複数の蛍光体粒子の残りの部分と、前記第2のマトリックスとを含む第2の蛍光体層とを備えた請求項1または2に記載の波長変換素子。
・・・(略)・・・
[請求項6] 前記第1の蛍光体層に接する基板をさらに備える請求項3に記載の波長変換素子。」
「[0129] 図10は、実施の形態6による半導体レーザ発光装置100の断面図を示す。半導体レーザチップの内部構造、電極、接続配線などは、分かり易さのため、簡略化している。半導体レーザ発光装置100は、半導体レーザチップ110と、波長変換素子50と、半導体レーザチップ110および波長変換素子50を支えるステム101とを備える。半導体レーザチップ110はブロック102によってステム101に支持され、波長変換素子50はキャップ103を介してステム101に支持される。ステム101とブロック102は、FeもしくはCuを主に含む金属性材料からなり、金型で一体成型され、動作時に半導体レーザチップ110中に発生する熱を効率的に排熱する。キャップ103はFeとNiを主に含む金属性材料から成型され、ステム101に溶接などにより融着されている。半導体レーザチップ110は、ブロック102に実装され、ボンディングワイヤによって、半導体レーザチップ110とリード105との間の電気的な接続を行う。キャップ103には、開口部104が設けられており、その開口部104を覆うように、実施の形態1または2による波長変換素子50が設けられている。半導体レーザチップ110からの励起光は、入射面107から波長変換素子50に入射する。半導体レーザ発光装置100は、出射面108から、波長変換素子50を透過した励起光と、励起光から変換された蛍光とを合成させた光を出射する。
・・・(略)・・・
[0131] 半導体レーザ発光装置100において、波長変換素子50の基板を出射面108の側に配置すれば、波長変換素子を外部にさらされないという利点がある。しかし、基板を入射面107側に、配置してもよい。」
イ
図10は、次のとおりである。
「[図10]
[図:0001396709000003.jpg]
」
図10から、波長変換素子50が、キャップ103の内側に設けられることが見て取れる。
ウ 引用文献2に記載された技術的事項
上記ア及びイから、引用文献2には、次の技術的事項(以下「引用文献2に記載された技術的事項」という。)が記載されているものと認められる。
「半導体レーザ発光装置において、([0129])
蛍光体層に接する基板を備えた波長変換素子([請求項6])をキャップの開口部を覆うように([0129])キャップの内側に設け、(上記イ)
基板を出射面の側とすることで波長変換素子を外部にさらされない利点がある([0131])こと。」
(3)引用文献3
本願の優先日前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2008-153617号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。
ア
「【実施例2】
【0066】
実施例2における半導体発光装置10bの断面図を図6に示す。この半導体発光装置10bは、実施例1の半導体発光装置10aにさらに部材を加えたものである。したがって共通する部材には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
・・・(略)・・・
【0069】
図6に示すように、キャップカバー本体の上面13aの開口領域の位置は、カバー上面13aの中央部であって、キャップ本体3の傾斜部5の開口領域と一致させる。また、カバー上面13aの内側、つまりキャップ本体3と対向する側より、透過板12が当接されることで、カバー上面13aの開口領域が閉塞される。実施例2の透過板12は、円盤状であって、例えば石英やガラスのような酸化ケイ素、サファイヤのような酸化アルミニウム等の光透過性に優れる材質からなる。さらに、透過板12の直径は光透過体9の直径よりも大きいものとする。これにより透過板12が、光透過体9上を被覆することができ、光透過体9を保護できる。
・・・(略)・・・
【0070】
また、光透過体9を傾斜部5内に設けず、透過板12内に蛍光体等の波長変換物質を混入させることも可能である。これにより、部品点数を減らすことができ、また半導体発光装置10bを小型化できる。或いは、光透過体9を傾斜部5内に備えた上、該波長変換物質とは異種の波長変換物質を透過板12内に混入させることで、複数の波長変換物質を備える半導体発光装置とできる。これにより、さらに色範囲の広い出射光を得られる。」
イ
図6は、次のとおりである。
「
[図:0001396709000004.jpg]
」
ウ 引用文献3に記載された技術的事項
上記ア及びイから、引用文献3には、次の技術的事項(以下「引用文献3に記載された技術的事項」という。)が記載されているものと認められる。
「半導体発光装置において、(【0066】)
蛍光体等の波長変換物質を混入した透過板を、(【0070】)
カバー上面の内側に当接し、カバー上面の開口領域を閉塞すること。(【0068】)」
(4)引用文献4
本願の優先日前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2008-10518号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。
ア
「【0085】
次に、本発明の蛍光発光装置の構成例について図6~図9を用いて説明する。図6は透過型の蛍光発光装置の構成例であり、図7は蛍光発光装置が備える光学帯域通過フィルタの構成例であり、図8は透過型の蛍光発光装置の他の構成例であり、図9は反射型の蛍光発光装置の構成例である。
【0086】
はじめに、透過型の蛍光発光装置の構成例について説明する。図6において、蛍光発光装置1は、気密容器10内に半導体発光素子2および蛍光体PHを備え、半導体発光素子2で発光した励起波長の光によって蛍光体PHで可視光を励起し、気密容器10内に設けた窓13を通して気密容器10の外に向けて出力する。
・・・(略)・・・
【0091】
また、ケーシング12の窓13部分には、光学帯域通過フィルタFA、蛍光体PH、および光学低域通過フィルタFBが設けられる。光学帯域通過フィルタFAを気密容器10の内部空間14内の半導体発光素子2側に配置し、光学低域通過フィルタFBを気密容器10の外部に向かって配置する。これによって、半導体発光素子2で発光した光は、はじめに光学帯域通過フィルタFAを通過し、光学低域通過フィルタFBを通過した光が気密容器10の外部に出光する。」
イ
図6は、次のとおりである。
「
[図:0001396709000005.jpg]
」
ウ 引用文献4に記載された技術的事項
上記ア及びイから、引用文献4には、次の技術的事項(以下「引用文献4に記載された技術的事項」という。)が記載されているものと認められる。
「蛍光発光装置において、(【0085】)
ケーシングの窓部に光学帯域通過フィルタFA、蛍光体PH、および光学低域通過フィルタFBが設けられ、(【0091】)
蛍光体は気密容器内に備えられること。(【0086】)」
5 対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)本願発明の「1又は複数の半導体発光素子を含む半導体光源装置と、」との特定事項について
引用発明1の「LDチップ」及び「半導体レーザ」は、それぞれ本願発明1の「1又は複数の半導体発光素子」及び「半導体光源装置」に相当する。
したがって、引用発明1は、上記特定事項を満たしている。
(2)本願発明の「1又は複数種類の蛍光体を含み、上記半導体光源装置からの照射光の波長を変換する波長変換部材と、」との特定事項について
ア 引用発明の「緑発光蛍光体52、赤発光蛍光体53および青発光蛍光体54」は、本願発明1の「1又は複数種類の蛍光体」に相当する。
イ 引用発明の「レーザ光によって励起されて蛍光光を発生する部分」である「蛍光部」は、本願発明の「上記半導体光源装置からの照射光の波長を変換する波長変換部材」に相当する。
ウ 上記ア及びイから、引用発明は、本願発明の上記特定事項を満たす。
(3)本願発明の「上記半導体光源装置と上記波長変換部材との間に配置され、上記半導体光源装置からの照射光を集光させる集光レンズと、」との特定事項について
引用発明の「半導体レーザと蛍光部の間に配置され」る「集光レンズ」は、本願発明1の「上記半導体光源装置と、上記波長変換部材との間に配置され、上記半導体光源装置からの照射光を集光させる集光レンズ」に相当する。
したがって、引用発明は、上記特定事項を満たしている。
(4)本願発明の「出射開口と、内径部に複数の支持部が設けられている筒状のホルダと、」との特定事項について
ア 引用発明の「筒状に形成され」た「本体部」は、本願発明の「筒状のホルダ」に相当する。
イ 引用発明の「放射開口部24における開口24a」及び「レンズ保持部と放射開口部」は、本願発明の「出射開口」及び「複数の支持部」に相当する。
ウ 引用発明の「レンズ保持部と放射開口部がハウジングの内側に設けられ」ることは、本願発明の「内径部に複数の支持部が設けられている」に相当する。
エ 上記ア~ウから、引用発明は、本願発明の上記特定事項を満たす。
(5)本願発明の「上記波長変換部材は、上記支持部の1つである波長変換部材支持部に支持され、上記筒状のホルダの上記出射開口の上記集光レンズ側に取り付けられる」との特定事項について
ア 引用発明の「光放射開口部」は、「波長変換部材支持部」に相当する。
イ 引用発明の「蛍光部5」の「透明部材51」が「放射開口部24における開口24aの周辺に固着」されることは、本願発明の「上記波長変換部材」が「上記筒状のホルダの上記出射開口」「に取り付けられる」ことに相当する。
ウ 上記ア及びイから、引用発明は、本願発明の「上記波長変換部材は、上記支持部の1つである波長変換部材支持部に支持され、上記筒状のホルダの上記出射開口」「に取り付けられる」ことで一致する。一方で、引用発明は「上記波長変換部材」を取り付ける位置について、本願発明の「上記出射開口の上記集光レンズ側」との特定事項を満たさない。
(6)本願発明の「発光装置」との特定事項について
引用発明の「光源装置」は、本願発明1の「発光装置」に相当する。
よって、引用発明は、本願発明の上記特定事項を満たしている。
(7)一致点及び相違点の認定
上記(1)~(6)よれば、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「1又は複数の半導体発光素子を含む半導体光源装置と、
1又は複数種類の蛍光体を含み、上記半導体光源装置からの照射光の波長を変換する波長変換部材と、
上記半導体光源装置と上記波長変換部材との間に配置され、上記半導体光源装置からの照射光を集光させる集光レンズと、
出射開口と、内径部に複数の支持部が設けられている筒状のホルダと、
を備え、
上記波長変換部材は、上記支持部の1つである波長変換部材支持部に支持され、上記筒状のホルダの上記出射開口に取り付けられる、
発光装置。」
<相違点>
「波長変換部材」が「筒状のホルダの上記出射開口に取り付けられる」位置において、本願発明は「上記集光レンズ側」であるのに対して、引用発明はそのようになっていない点。
6 判断
上記相違点について、判断する。
(ア)判断1
引用発明は蛍光体材料がハウジングの外部に存在するものであるが、引用文献1に記載された技術的事項(ア)及び(イ)(上記4(1)エ)を踏まえると、空気中の水分や不純物によって蛍光光への変換効率が低下するなどの劣化が発生する場合があるという課題があり、その課題を解決するためには、蛍光体を密閉封止することが好ましいのは明らかである。
そうすると、引用発明において、蛍光部の透明部材を放射開口部における開口の周辺に固着する際に、蛍光体がハウジング内部に位置するように放射開口部のハウジング内側(集光レンズ側)に固着して、光取り出し部となるハウジングの端部側の全面を塞ぐことで、水分や不純物の浸入が回避されるハウジング内部に蛍光部を設けるようにする動機が当業者にはあるといえ、相違点に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得ることである。
(イ)判断2
引用文献2~4に記載された技術的事項(上記4(2)~(4)それぞれのウ)から、蛍光部を有する光源装置において、蛍光部をハウジングの開口の内側に設けることは周知技術であると認められる。
そうすると、引用発明において、当該周知技術を採用し、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得ることである。
6 本願発明の奏する作用効果について
本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献1に記載された技術や周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
7 審判請求人の主張について
審判請求人は令和4年12月16日提出の意見書において、引用文献1には、「波長変換部材は、支持部の1つである波長変換部材支持部に支持され、筒状のホルダの出射開口の集光レンズ側(下側)に取り付けられる」という技術的事項が記載されていない旨を主張しているが、前記技術的事項は、上記6(ア)又は(イ)で説示したとおり、引用発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基づいて、又は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得る事項である。
よって、上記主張は採用できない。
8 小括
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである(判断1)。
また、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである(判断2)。
9 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
10 付言
引用文献1の実施形態3及び図5(上記4(1)ア及びウ)の記載から、本体部71の内側において、蛍光体6が、放射開口部75の開口75aよりも集光レンズ側に配置されていることが見て取れる。
そうすると、引用文献1の実施形態3及び図5から認定される発明(以下「引用発明2」という。)は、蛍光体6(本願発明の「波長変換部材」に相当。)が開口71a(本願発明の「出射開口」に相当。)よりも集光レンズ側に配置している構成を備えるものとなり、当該構成は、本願発明の「上記波長変換部材は、」「上記筒状のホルダの上記出射開口の上記集光レンズ側に取り付けられる」構成(上記6の<相違点>に係る構成。)に相当する。
また、引用発明2における上記以外の構成は、上記4(1)オで認定された引用発明と同じであり、上記5で説示したとおり本願発明と一致するものである。
よって、本願発明は、引用発明2と構成上の差異がなく同一の発明であって、特許法29条1項3号に該当するものであり、特許を受けることができない。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-015386