特許拒絶査定不服審判
2023-000411
深度検知のためのプログラム可能回折光学素子を有するカメラアセンブリ
- 審判番号
- 2023-000411
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-505267
- 請求日
- 2023年01月11日
- 審決日
- 2023年11月30日
- 公報発行日
- 2024年05月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】メタ プラットフォームズ テクノロジーズ, リミテッド ライアビリティ カンパニー
- 【請求人代理人】弁理士法人World IP
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 佐藤 久則
- 審判官 田邉 英治
- 分類
- P18 .121-Z (G01B) / P18 .575-Z (G01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第29条、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-505267「深度検知のためのプログラム可能回折光学素子を有するカメラアセンブリ」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 2月21日国際公開、WO2019/036215、令和 2年10月29日国内公表、特表2020-530900〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)8月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年8月14日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。なお、以下2017年8月14日を「優先日」という。
令和 2年 3月27日 :翻訳文の提出
令和 4年 2月22日付け:拒絶理由通知書
同年 5月30日 :意見書、手続補正書の提出
同年 9月 6日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月13日 :原査定の謄本の送達)
令和 5年 1月11日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和5年1月11日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年1月11日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和5年1月11日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について補正をするものである。本件補正前(令和4年5月30日にされた手続補正後をいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1及び本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、それぞれ次の(1)及び(2)に示すとおりである。なお、下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の請求項1
「 深度カメラアセンブリ(DCA)であって、
放射指令に従って、構造光パターンで局所エリアを照らすように構成された構造光発生器であって、
光学ビームを放射するように構成された照明光源、
前記光学ビームから回折スキャンビームを、前記放射指令に部分的に基づいて生成するプログラム可能回折光学素子(PDOE)であって、前記光学ビームの回折を動的に調節して種々のパターンの前記回折スキャンビームを生成する動的回折格子として機能する、プログラム可能回折光学素子(PDOE)、および
前記回折スキャンビームを前記構造光パターンとして前記局所エリアに投影するように構成された投影アセンブリであって、前記構造光パターンが、前記PDOEに基づいて動的に調節可能である、投影アセンブリ
を備える、構造光発生器と、
前記局所エリア内の1つまたは複数のオブジェクトから反射した前記構造光パターンの少なくとも一部の1つまたは複数のイメージをキャプチャするように構成されたイメージデバイスと、
コントローラであって、
前記放射指令を生成すること、
前記構造光発生器に前記放射指令を提供すること、および
キャプチャした前記1つまたは複数のイメージに部分的に基づいて、前記1つまたは複数のオブジェクトの深度情報を決定すること
を行うように構成されたコントローラと
を備える、深度カメラアセンブリ(DCA)。」
(2) 本件補正後の請求項1
「 深度カメラアセンブリ(DCA)であって、
放射指令に従って、構造光パターンで局所エリアを照らすように構成された構造光発生器であって、
光学ビームを放射するように構成された照明光源、
前記光学ビームから回折スキャンビームを、前記放射指令に部分的に基づいて生成するプログラム可能回折光学素子(PDOE)であって、前記光学ビームの回折角を動的に調節して、複数の時刻にわたり種々のパターンの前記回折スキャンビームを生成する動的回折格子として機能する、プログラム可能回折光学素子(PDOE)、および
前記回折スキャンビームを、前記PDOEにおける前記回折角に基づいて動的に調節可能な前記構造光パターンとして前記局所エリアに投影するように構成された投影アセンブリ
を備える、構造光発生器と、
前記局所エリア内の1つまたは複数のオブジェクトから反射した前記構造光パターンの少なくとも一部の1つまたは複数のイメージをキャプチャするように構成されたイメージデバイスと、
コントローラであって、
前記放射指令を生成すること、
前記構造光発生器に前記放射指令を提供すること、および
キャプチャした前記1つまたは複数のイメージに部分的に基づいて、前記1つまたは複数のオブジェクトの深度情報を決定すること
を行うように構成されたコントローラと
を備える、深度カメラアセンブリ(DCA)。」
2 本件補正の適否
(1) 本件補正の目的
ア 本件補正のうち、特許請求の範囲の請求項1についての補正は、プログラム可能回折光学素子(PDOE)が光学ビームの回折を動的に調節する態様が、PDOEにおける回折角に基づくものであり、種々のパターンの回折スキャンビームを生成することが複数の時刻にわたるものであることを限定するものである。
イ そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は、同一である。
ウ したがって、本件補正のうちの請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(2) 独立特許要件について
本件補正のうち請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討を行う。
ア 本件補正発明
本件補正発明は、本件補正後の請求項1に記載した事項(前記1(2)参照)により特定されるとおりのものであると認める。
イ 引用文献1及び引用発明等の認定
(ア) 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された特表2016-540189号公報(以下「引用文献1」という。)は、優先日前に発行されたものであって、以下の記載がある。下線は、当合議体において付したものであり、引用発明の認定に直接用いるところに付した。
a 特許請求の範囲
「【請求項1】
構造化光パターンを生成するための装置であって、
パターン状の光を三次元空間内に投影するように構成されるレーザアレイと、
複数の光学素子であって、個々の光学素子がセルを画定し、前記セルが、前記レーザアレイの個々の部分集合と整列され、各セルの前記光学素子が、前記個々の部分集合から前記光学素子を通過する光に対して個々に変調を加えて前記構造化光パターンの区別可能な部分を提供する、前記複数の光学素子とを備える、装置。
【請求項2】
光変調が、回折変調、屈折変調、及び回折変調と屈折変調との組合せからなる群のうちの一つの要素である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
個々のセルを構成する前記光学素子及び前記レーザアレイの前記部分集合が単一の成形体から構築される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記セルの幅が1mm以下である、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記光学素子の幅が1mm以下である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記変調を変更するように前記セルが個々に制御可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
少なくとも1つの捕捉フレームを受け取って解析することに基づいて前記構造化光パターンの変更をもたらすように前記セルが動的に制御可能であり、フレームは二次元レイアウト内の複数の画素を含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記セルが前記構造化光パターン内の位置決めに関して、及び前記光に適用される形状に関して更に制御可能である、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
動的制御が、シーンの一部に前記構造化光パターンの高い分解能を適用して、前記シーンの他の部分に前記構造化光パターンの低い分解能を適用するように構成可能である、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記構造化光パターンの動的変更が、前記構造化光パターンの向きの変更を含む、請求項7に記載の装置。
【請求項11】
前記構造化光パターンの動的変更がセルに関する変更を含む、請求項7に記載の装置。
【請求項12】
前記変更が、強度の変更、偏光の変更、フィルタリングパラメータの変更、及び焦点の変更を含む群のうちの一つの要素である、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記部分集合が、個々のレーザ、レーザの対、レーザの三つ組、異なる大きさのレーザの組合せ、及び動的に変化するレーザの組合せからなる群のうちの一つの要素を含む、請求項1~12の何れか一項に記載の装置。
【請求項14】
個々の部分集合から投影される光がタイル化されるか、又は重複される、請求項1~13の何れか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記レーザアレイがVCSELレーザアレイを含む、請求項1~14の何れか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記レーザアレイがレーザバーを含む、請求項1~15の何れか一項に記載の装置。
【請求項17】
コンピュータ、ラップトップコンピュータ、移動通信装置、タブレット装置、ゲーム機、及び動き捕捉装置からなる群のうちの何れかの要素に組み込まれる、請求項1~16の何れか一項に記載の装置。
【請求項18】
使用時に三次元シーンを追跡するためのものである、請求項1~17の何れか一項に記載の装置。
(後略)」
b 段落【0001】~【0015】
「【技術分野】
【0001】
本発明は、構造化光を用いた三次元深度マッピングに関し、排他的ではないがより詳細には、コンピュータ等の装置に入力を与えるために追跡を行うシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ又は他の計算装置に入力を与えるための追跡は、コンピュータマウス等のユビキタステクノロジを含む。コンピュータの前の三次元被写界内でスタイラス及び指を追跡することも利用可能であり、追跡には視覚映像化、IR映像化、超音波等の様々な追跡技術を使用する。「追跡」という用語は、対象の位置及び動きをたどることを指すことができ、位置又は動きを算出するために追跡コンピュータにおいて受け取られる入力を処理することを含む。従って、コンピュータマウスの場合、追跡は動きを算出するためにマウスの出力を処理することを含み得る。視覚的にたどられる対象の場合、追跡という用語は、対象を捕捉する連続フレームの画像処理を含み得る。
【0003】
画像化の1つの方法は、シーンを閲覧し、処理するために単純にカメラを使用する。カメラは、シーン内に配置される特定の印をたどることができ、又は画像化システムが指等の明確に認識可能な特徴を探すことができる。
【0004】
そのような視覚的画像化の難点は、三次元領域が十分に照らされているという必要条件を含む。更に、追跡可能な唯一の特徴は事前に認識される特徴であり、特徴認識と組み合わせた動作追跡が正確な結果を与えない場合がある。
【0005】
上記の問題を克服するために、構造化光を用いた追跡が導入された。追跡を行う空間上に知られている画素パターンを投影する。そのパターンが衝突面上でどのように変形するのかにより、シーン内の対象の深度及び面情報を視覚システムが計算することができる。使用される典型的なパターンはグリッド又は水平バーである。様々な装置が、ジェスチャ認識及び3D深度マッピングを使用できるようにするために構造化光パターンを使用する。構造化光パターン送信機は、レーザ発光体及び回折光学素子(DOE:diffractive optical element)を含む。
【0006】
三次元形状の面上に狭帯域の光を投影することは、投光器の照明の線よりも他のパースペクティブ(perspectives)から歪んで見える照明の線が生成され、表面形状の正確な幾何学的再現に使用され得る。
【0007】
より速く、より汎用性のある方法は、多くのストライプ又は任意の縞からなるパターンを一度に投影することであり、それにより多数のサンプルを同時に取得できるようになる。異なる視点から見ると、対象の表面形状によりパターンが幾何学的に歪んで見える。
【0008】
構造化光投影の他の多くの改変形態があり得るが、平行ストライプのパターンが広く使われている。ストライプの位置を変えることにより、対象の面に関する如何なる細部の3D座標も正確に取得できるようになる。
・・・(中略)・・・
【0012】
面発光レーザ、即ちVCSELは、ウェハから個々のチップを切り出すことによって形成される面から発光する従来の端面発光半導体レーザとは対照的に、レーザビームの発光が上面から垂直である半導体レーザダイオードの一種である。
【0013】
端面発光レーザとは対照的に、VCSELを作る幾つかの利点がある。端面発光体は製造工程が終わるまで検査することができない。端面発光体が接触不良又は低質の材料成長によって適切に機能しない場合、製造時間及び処理材料が無駄になる。VCSELであれば、材料品質及び処理上の問題がないかどうかを工程にわたる幾つかの段階で検査することができる。例えばエッチング中に誘電材料からバイアスが完全に除去されていない場合、一時的な検査工程を使用して一番上の金属層が最初の金属層と接触していないことを判定することができる。加えて、VCSELはビームをレーザの活性領域に対して垂直に放つため、76.2mm(3インチ)のガリウムヒ素ウェハ上で何万ものVCSELを同時に処理することができる。更に、VCSELの製造工程にはより多くの労力及び材料を要するが、歩留まりをより予測できる結果に管理することができる。
【0014】
構造化光システムにVCSELレーザアレイを使用することには著しい利点があり、それはかかるアレイを使用することで構造化光送信機を小さくできるからである。このように小さくすることは、携帯電話又はウェアラブルデバイス等の大きさの制約がある装置の中に送信機を埋め込むのにとりわけ重要である。
【0015】
しかし、上記の利点にもかかわらず、VCSELアレイは幾つかの理由から構造化光走査システムに現在使用されていない。多くの回折パターンは、高分解能の追跡に必要な高密度のパターンを作り出すためにコヒーレントなガウシアン形状のビームを必要とする。VCSELアレイは、隣同士に位置し、通常それらの間に重複がある複数の個々のガウスビームを提供するに過ぎない。複数の点及びそれらの間の重複は、光パターン内の高密度領域における検出性能を低下させ、既定のガウスビームを必要とする様々な回折設計技法の使用を制限する。かかる設計は、トップハット設計、ホモジニアスラインジェネレータ(Homogeneous line generator)、及び他の複雑な高性能構造を含む。」
c 段落【0046】、【0047】
「【0046】
VCSELレーザマトリクスとセルベースのDOEとを適切に整列させることにより、全アレイの隣接ガウスビーム形状が単一光源のパースペクティブとして回避されるため、如何なるパターンも実現可能であり得る。
【0047】
別の実施形態では、動的光パターンが提示される。適切な位置においてDOEに様々な電流を加えることにより、各セルを出力強度の点で個々に制御することができ、従って構造化光パターン内の様々な特徴も制御することができる。」
d 段落【0049】~【0055】、【図1】
「【0049】
次に図1を参照し、図1は本実施形態によるパターン光を用いた三次元追跡用の装置の基本構成を示す単純化した概略図である。この図面及び他の図面では、点線及び断線は文脈によって与えられる概念上及び構造上の線を表し、必ずしも個々の実施形態で目に見える物理的な線ではないことを理解すべきである。
【0050】
図1の構成では、発光アレイ、例えばVCSELアレイ10とすることができるレーザアレイが、レーザマトリクス12.1.1...12.n.nを含む。光学素子14が、個々のレーザからの光を変調するよう個々のセルが位置するようにレーザの外部に整列されるセル16.1.1...16.n.nを構成する。各レーザは、例えば回折光学素子の分離セルを有し、各分離セルは異なる回折パターンを有する。セル16の拡大表示18は、独自の回折パターンをそれぞれ有する4つの回折素子を示す。従って、回折光学素子はセルごとに1つ、複数の個々の設計を有し、各設計は1つのVCSELレーザの光を回折する。
【0051】
この設定は、レーザアレイから構造化光パターンを発生させることができ、かかる光パターンは、三次元空間内の対象及びシーンの一部を追跡するために三次元空間内に投影される。構造化光パターンは、パーズされて(parsed)コンピュータに深度情報を与えることができる任意の適切なパターンとすることができ、ストライプ、グリッド、及び/又はドット領域を含むパターンを含む。
【0052】
セルは、レーザアレイの部分集合と整列され、各セルは通過する光に回折変調を個々に施し、それにより各部分集合は構造化光パターンの区別可能な部分をもたらす。
セル16.1.1...16.n.nは、回折変調を変更するように個々に制御可能である。従って、パターンの様々な部分が異なるようにすることができ、様々な状況で又はシーンの様々な部分で異なる構造化光パターンを使用することができる。
【0053】
セルは更に、構造化光パターンへの変化をもたらすために動的に制御することができる。従ってパターンは、関心があると見なされるシーンの部分内の分解能を高めるように変化することができ、且つ/又は関心がないと見なされる前述のシーンの部分内の分解能を落とすことができる。或いは、特定の光源がシーンの特定の部分に到達していることを示し、それにより三角測量及び深度推定の更なる手がかりを与えるためにパターンの特定の部分を瞬間的に変えることができる。典型的には強度を変える。つまり変更が、セルに影響を及ぼすレーザアレイの強度を制御することに基づく。代替策として、偏光、フィルタリングパラメータ、焦点距離、又は当業者に明らかな光の他の任意の特徴を変えることができる。
【0054】
強度はパターンの一部又は全体にわたって変えることができる。例えば、シーンの一部を入射光によって明るく照らすことができ、シーンの他の部分を暗く照らすことができる。明るく照らす部分に強い光の狙いを定め、暗く照らす部分に弱い光の狙いを定め、それにより節電することができる。
【0055】
或いは、以下でより詳細に説明するように、概して追跡及び深度推定のためのシーンの異なるビューを与えるために、パターンの密度を変えることができ、又はパターンの向きを変えることができる。向きに関して、シーンの特徴が所与の向きでより効果的に照らされる場合がある。例えば細長い特徴は、その縦方向に垂直なストライプによって最も効果的に照らされ得る。時間が経つにつれて特徴の向きが変わると、ストライプの方向を更新することができる。特定の特徴をより正確に追跡できるようにするために、又は細かい特徴がビューに入るとき、密度も経時的に変えることができる。」
「【図1】
[図:0001409781000001.jpg]
」
e 段落【0065】、【図6】
「【0065】
次に図6を参照し、図6は、本発明の実施形態による追跡用の例示的システムを示す単純化した概略図である。VCSELアレイ60がレーザ光を作り出し、3Dボリューム64内に照らされるパターンを形成するようにそのレーザ光が光学素子62によって変調される。カメラ66が3Dボリュームをモニタし、プロセッサ68によって解析される画像フレームを作り出す。以下でより詳細に説明するように、プロセッサ68は、追跡すること、及び追跡を改善するために光変調を修正することの両方を行う。プロセッサは、モバイル装置のプロセッサ等、外部のプロセッサとすることができる。カメラは、デジタルカメラ又は例えば相補型金属酸化膜シリコン(CMOS:complementary metal oxide silicon)アレイに基づき得る任意の画像センサとすることができる。フレームが解析されるとプロセッサがレーザをしかるべく制御するように、プロセッサはカメラ及びレーザの両方に接続することができる。」
「【図6】
[図:0001409781000002.jpg]
」
f 段落【0066】、【0067】、【図7】、【図8】、【図11】
「【0066】
次に図7を参照し、図7は、投影パターンを形成するためにレーザアレイ72を使用する単一の光学セル若しくは下位光学セル70又は図1に示す18等の幾つかのセルからのレーザ光を変調するのに使用可能な、光学素子の様々な光機能である様々な操作を示す単純化した概略図である。或る特定のセルが、ビームの位置を修正することを可能にすることができ(76)、又はビームの位相を修正することができ(78)、焦点を修正することができ(80)、ビームの形状を修正することができ(82)、ビームの強度を修正することができ(84)、若しくはビームの偏光を修正することができる(86)。上記に挙げたものは網羅的な一覧ではなく、他の修正形態が当業者に明らかになる。加えて、光機能は単一の光学素子によって、又は図11に示すように複数の光学素子によって使用されても良く、焦点や形状等の複数の機能がセル要素に組み込まれる。
【0067】
次に図8を参照し、図8は、光ビームの向きを変える光学素子90を示す。装置本体から現れる特徴92が光ビームの向きの変化を引き起こし、特徴92は構造にもよるが、屈折、回折、又は屈折と回折との組合せにより得る。図示の例では、歯のような形が下方に傾斜する上面と水平の下面とを有する鋸歯状の構成が光を下方に曲げる。」
「【図7】
[図:0001409781000003.jpg]
」
「【図8】
[図:0001409781000004.jpg]
」
「【図11】
[図:0001409781000005.jpg]
」
g 段落【0072】、【0073】、【図15】
「【0072】
図13から図17は、追跡を改善するために光パターンに加えることができる様々な変更を示す。図13は、ストライプの向きを前の図面と同様に水平から垂直に変えることを示す。図14は、視野を狭めることを示す。狭めることは、例えば関心がある特徴が指である場合に有用であり得る。指が見つかると、指に集中するために視野を狭めることができる。
【0073】
図15は、ストライプの密度を高めることを示す。図16は、純粋なストライプから断線に形状を変えることを示す。図17は強度を変えることを示す。第1の画像内の低強度の線が、第2の画像内の高強度の線に変わり、その逆も同様である。低密度の線と高密度の線とを適切に選択することは、深度次元内で対象を追跡するために使用することができる。」
「【図15】
[図:0001409781000006.jpg]
」
(イ) 図6から読み取れる事項の認定
引用文献1において、明細書の段落【0065】の記載を踏まえて図6を参照すると、以下の事項(以下「図6からの認定事項」という。)が読み取れる。
「追跡用のシステムは、VCSELアレイ60、光学素子62、カメラ66及びプロセッサ68を備えること。」
(ウ) 引用発明の認定
前記(ア)において摘記した事項及び前記(イ)の図6からの認定事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「追跡用のシステムであって、(【0065】)
構造化光を用いた追跡であり、追跡を行う空間上に知られている画素パターンを投影し、そのパターンが衝突面上でどのように変形するのかにより、シーン内の対象の深度及び面情報を視覚システムが計算するものであり、(【0005】)
構造化光パターンを生成するための装置であって、
パターン状の光を三次元空間内に投影するように構成されるレーザアレイと、
複数の光学素子であって、個々の光学素子がセルを画定し、前記セルが、前記レーザアレイの個々の部分集合と整列され、各セルの前記光学素子が、前記個々の部分集合から前記光学素子を通過する光に対して個々に変調を加えて前記構造化光パターンの区別可能な部分を提供する、前記複数の光学素子とを備える、装置を含み、(【請求項1】)
VCSELアレイ60、光学素子62、カメラ66及びプロセッサ68を備え、(「図6からの認定事項」)
VCSELアレイ60がレーザ光を作り出し、
3Dボリューム64内に照らされるパターンを形成するようにそのレーザ光が光学素子62によって変調され、
カメラ66が3Dボリュームをモニタし、プロセッサ68によって解析される画像フレームを作り出し、
プロセッサ68は、追跡すること、及び追跡を改善するために光変調を修正することの両方を行い、
フレームが解析されるとプロセッサがレーザをしかるべく制御するように、プロセッサはカメラ及びレーザの両方に接続されており、(【0065】)
レーザアレイが、レーザマトリクス12.1.1...12.n.nを含み、
光学素子が、個々のレーザからの光を変調するよう個々のセルが位置するようにレーザの外部に整列されるセル16.1.1...16.n.nを構成し、
各レーザは、回折光学素子の分離セルを有し、
回折光学素子はセルごとに1つ、複数の個々の設計を有し、各設計は1つのVCSELレーザの光を回折し、(【0050】)
この設定は、レーザアレイから構造化光パターンを発生させることができ、かかる光パターンは、三次元空間内の対象及びシーンの一部を追跡するために三次元空間内に投影され、(【0051】)
セル16.1.1...16.n.nは、回折変調を変更するように個々に制御可能であり、(【0052】)
セルは更に、構造化光パターンへの変化をもたらすために動的に制御することができる、(【0053】)
システム。」
ウ 対比
(ア) 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
a 「深度カメラの装置」の発明である点について
引用発明は、シーン内の対象の深度を視覚システムが計算するものであり、カメラ66を備えるものであるから、深度カメラの装置であるといえる。
したがって、「深度カメラアセンブリ(DCA)」の発明である本件補正発明と「追跡用のシステム」である引用発明は、「深度カメラの装置」の発明である点において共通する。
b 「構造光発生器」について
(a) 「放射指令に従って、構造光パターンで局所エリアを照らす」点
引用発明における「構造化光パターンを生成するための装置」は、本件補正発明における「構造光発生器」に相当する。
ここで、引用発明における「構造化光パターンを生成するための装置」が「構造化光パターン」の「パターン状の光」を「三次元空間内に投影する」ことは、本件補正発明における「構造光発生器」が「構造光パターンで局所エリアを照らす」ことに相当する。
引用発明においては、「構造化光パターンへの変化をもたらすために動的に制御する」ものであるから、引用発明における「構造化光パターンを生成するための装置」が「放射指令に従って」「構造化光パターンを生成する」ことは明らかである。
したがって、引用発明における「構造化光パターンを生成するための装置」は、本件補正発明における「放射指令に従って、構造光パターンで局所エリアを照らすように構成された構造光発生器」に相当する。
(b) 「照明光源」を備える点
引用発明における「レーザアレイ」は、本件補正発明における「光学ビームを放射するように構成された照明光源」に相当する。
(c) 「プログラム可能回折光学素子(PDOE)」を備える点
引用発明における「回折光学素子の分離セル」は、「構造化光パターンへの変化をもたらすために動的に制御することができる」ものであるから、引用発明における「回折光学素子の分離セル」を構成する「複数の光学素子」は、本件補正発明における「放射指令に部分的に基づいて」「回折ビーム」を「生成する」「プログラム可能回折光学素子(PDOE)」に相当する。
また、引用発明において「回折光学素子の分離セル」を構成する「複数の光学素子」は、「前記光学素子を通過する光に対して個々に変調を加えて前記構造化光パターンの区別可能な部分を提供する」ものであるから、「光学素子を通過する光」(「照明光源」から「放射」された「光学ビーム」に相当する。)から回折光の「構造化光パターン」を「生成する」ものであることは、明らかである。
さらに、引用発明の「回折光学素子の分離セル」は、「構造化光パターンへの変化をもたらすために動的に制御することができる」から、引用発明における「回折光学素子の分離セル」を構成する「複数の光学素子」が「光学ビームを動的に調節して、複数の時刻にわたり種々のパターンの回折ビームを生成する動的回折格子として機能すること」は、明らかである。
以上をまとめると、引用発明における「回折光学素子の分離セル」を構成する「複数の光学素子」は、本件補正発明における「プログラム可能回折光学素子(PDOE)」と、次の点において共通する。
「前記光学ビームから回折ビームを、前記放射指令に部分的に基づいて生成するプログラム可能回折光学素子(PDOE)であって、前記光学ビームを動的に調節して、複数の時刻にわたり種々のパターンの前記回折ビームを生成する動的回折格子として機能する、プログラム可能回折光学素子(PDOE)」である点。
(d) 前記構造光パターンとして前記局所エリアに投影する点
引用発明においては、「構造化光を用いた追跡であり、追跡を行う空間上に知られている画素パターンを投影[する]」ものであるから、前記(c)も踏まえると、引用発明における「構造化光パターンを生成するための装置」と本件補正発明における「構造光発生器」は、次の点で共通する。
「回折ビームを、動的に調節可能な前記構造光パターンとして前記局所エリアに投影するように構成[されている]」点。
(e) 「構造光発生器」のまとめ
前記(a)から(d)の検討結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は次の点において一致する。
「放射指令に従って、構造光パターンで局所エリアを照らすように構成された構造光発生器であって、
光学ビームを放射するように構成された照明光源、
前記光学ビームから回折ビームを、前記放射指令に部分的に基づいて生成するプログラム可能回折光学素子(PDOE)であって、複数の時刻にわたり種々のパターンの前記回折ビームを生成する動的回折格子として機能する、プログラム可能回折光学素子(PDOE)
を備え、
回折ビームを、動的に調節可能な前記構造光パターンとして前記局所エリアに投影するように構成されている、構造光発生器」を備える点。
c 「イメージデバイス」について
引用発明における「対象」は、本件補正発明における「オブジェクト」に相当する。
そして、引用発明は、「追跡を行う空間上に知られている画素パターンを投影し、そのパターンが衝突面上でどのように変形するのかにより、シーン内の対象の深度及び面情報を視覚システムが計算するもの」であるから、引用発明における「カメラ66が3Dボリュームをモニタし」、「作り出[す]」「画像フレーム」は、本件補正発明における「前記局所エリア内の1つまたは複数のオブジェクトから反射した前記構造光パターンの少なくとも一部の1つまたは複数のイメージ」に相当する。
そうすると、引用発明における「カメラ66」は、本件補正発明における「前記局所エリア内の1つまたは複数のオブジェクトから反射した前記構造光パターンの少なくとも一部の1つまたは複数のイメージをキャプチャするように構成されたイメージデバイス」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記局所エリア内の1つまたは複数のオブジェクトから反射した前記構造光パターンの少なくとも一部の1つまたは複数のイメージをキャプチャするように構成されたイメージデバイス」を備える点。
d 「コントローラ」について
引用発明においては、「フレームが解析されるとプロセッサがレーザをしかるべく制御するように、プロセッサはカメラ及びレーザの両方に接続されて」いるから、前記bにおける検討結果も踏まえると、引用発明における「プロセッサ68」は「放射指令を生成すること」及び「構造光発生器に放射指令を提供すること」を行っているといえる。
また、引用発明は「追跡を行う空間上に知られている画素パターンを投影し、そのパターンが衝突面上でどのように変形するのかにより、シーン内の対象の深度及び面情報を視覚システムが計算するものであり」、引用発明における「プロセッサ68」は、「画像フレーム」を「解析」し、「追跡すること、及び追跡を改善するために光変調を修正することの両方を行[う]」ものであるから、前記cにおける検討結果も踏まえると、引用発明における「プロセッサ68」は「キャプチャした前記1つまたは複数のイメージに部分的に基づいて、前記1つまたは複数のオブジェクトの深度情報を決定すること」を行っているといえる。
以上をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「コントローラであって、
前記放射指令を生成すること、
前記構造光発生器に前記放射指令を提供すること、および
キャプチャした前記1つまたは複数のイメージに部分的に基づいて、前記1つまたは複数のオブジェクトの深度情報を決定すること
を行うように構成されたコントローラ」
を備える点。
(イ) 一致点及び相違点
前記(ア)の対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
a 一致点
「 放射指令に従って、構造光パターンで局所エリアを照らすように構成された構造光発生器であって、
光学ビームを放射するように構成された照明光源、
前記光学ビームから回折ビームを、前記放射指令に部分的に基づいて生成するプログラム可能回折光学素子(PDOE)であって、複数の時刻にわたり種々のパターンの前記回折ビームを生成する動的回折格子として機能する、プログラム可能回折光学素子(PDOE)
を備え、
前記回折ビームを、動的に調節可能な前記構造光パターンとして前記局所エリアに投影するように構成されている、構造光発生器と、
前記局所エリア内の1つまたは複数のオブジェクトから反射した前記構造光パターンの少なくとも一部の1つまたは複数のイメージをキャプチャするように構成されたイメージデバイスと、
コントローラであって、
前記放射指令を生成すること、
前記構造光発生器に前記放射指令を提供すること、および
キャプチャした前記1つまたは複数のイメージに部分的に基づいて、前記1つまたは複数のオブジェクトの深度情報を決定すること
を行うように構成されたコントローラと
を備える、深度カメラ。」
b 相違点
(a) 相違点1
本件補正発明においては、
「構造光発生器」が「前記回折スキャンビームを」「前記局所エリアに投影するように構成された投影アセンブリ」を備え、
「プログラム可能回折光学素子(PDOE)」が、複数の時刻にわたり種々のパターンのビームを生成する動的回折格子として機能する態様が、
「前記光学ビームから回折スキャンビームを」「生成」し、「前記光学ビームの回折角を動的に調節して」「種々のパターンの前記回折スキャンビームを生成」し、その結果として前記投影アセンブリは「前記回折スキャンビームを、前記PDOEにおける前記回折角に基づいて動的に調節可能な前記構造光パターンとして前記局所エリアに投影するように構成され[ている]」のに対し、
引用発明においては、構造光発生器は、回折ビームを動的に調節可能な構造光パターンとして局所エリアに投影するように構成されているものの、投影アセンブリを備えることの特定はなく、回折光が「回折スキャンビーム」であること及び回折角を調節することは特定されていない点。
(b) 相違点2
本件補正発明が「深度カメラアセンブリ(DCA)」の発明であるのに対し、
引用発明は「深度カメラ」の発明であるものの、「アセンブリ」であることは特定されていない点。
エ 判断
(ア) 相違点1の想到容易性について
a 構造光発生器が投影アセンブリを備える点
(a) 引用文献1の明細書の段落【0066】には、次のi)からiii)の記載がある。
i) 「図7は、投影パターンを形成するためにレーザアレイ72を使用する単一の光学セル若しくは下位光学セル70又は図1に示す18等の幾つかのセルからのレーザ光を変調するのに使用可能な、光学素子の様々な光機能である様々な操作を示す単純化した概略図である。」
ii) 「或る特定のセルが、…(中略)…焦点を修正することができ(80)」
iii) 「光機能は単一の光学素子によって、又は図11に示すように複数の光学素子によって使用されても良く、焦点や形状等の複数の機能がセル要素に組み込まれる。」
(b) したがって、引用文献1には、投影するレンズの機能を「光学素子」から分離して、これとは別の「光学素子」とすることが示唆されているといえる。
(c) そして、投影レンズを投影面の直前に配置することは、最も単純な配置である。
(d) してみれば、引用発明において、「構造光発生器」が回折ビームを「前記局所エリアに投影するように構成された投影アセンブリ」を備えるようにすることは、当業者にとっては、自明の設計変更にすぎない。
b 前記光学ビームから回折スキャンビームを生成する点
(a) 引用文献1の段落【0008】及び【0015】を参照すると、従来、ストライプの位置を変えることにより、対象の面に関する如何なる細部の3D座標も正確に取得できる、構造化光走査が、VCSELアレイでは実現できなかったことが示されている。
(b) 一方、引用文献1の段落【0046】、【0047】及び【0066】を参照すると、VCSELレーザマトリクスとセルベースのDOEとを適切に整列させることにより、如何なるパターンも実現可能であること、動的光パターンも提示できること、ビームの位置を修正することを可能にすることが示されている。
(c) よって、前記(a)及び(b)で指摘した引用文献1の記載を参酌すると、引用文献1には「VCSELレーザマトリクスとセルベースのDOEとを適切に整列させることにより、構造化光走査とすること」が示唆されている(以下「引用文献1の示唆」という。)といえ、前記光学ビームから生成されるビームを「回折スキャンビーム」とすることは、当業者にとっては自明である。
(d) そして、動的な回折光学素子による光の走査が、回折角の変化に応じて形成されることは、当業者にとって自明の事項である。
(e) したがって、引用発明において、前記光学ビームの回折角を動的に調節して、種々のパターンの回折スキャンビームを生成し、構造光発生器が光学ビームから回折スキャンビームを生成するようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(イ) 相違点2の想到容易性について
引用発明は「追跡用のシステム」であり、「VCSELアレイ60、光学素子62、カメラ66及びプロセッサ68を備え[る]」ものである。
複数の構成からなる装置を一つのアセンブリ(組み立て体)とするか、それとも、個別の装置とするかは、当業者にとっては自明の選択肢にすぎず、当業者が適宜選択できる設計上の事項にすぎない。
したがって、引用発明において、「レーザアレイ」であるVCSELアレイ60、「複数の光学素子」である光学素子62、カメラ66及びプロセッサ68を備える追跡用のシステムを、一つのアセンブリとし、もって「深度カメラアセンブリ(DCA)」とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(ウ) 総合検討
前記相違点1及び相違点2を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献1の示唆に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(エ) 請求人の主張について
請求人は審判請求書において、次の主張を行っている。
引用文献1には、PDOEにおける回折角に基づいて構造光パターンを動的に調節することができるとの構成は開示も示唆もされていない。
しかしながら、前記(ア)bに示したとおり、「構造化光走査とすること」は引用文献1に示唆されているといえ、動的な回折光学素子による光の走査が、回折角の変化に応じて形成されることは、当業者にとって自明の事項であるから、当該請求人の主張は採用することができない。
オ 独立特許要件についての判断のまとめ
前記エにおいて検討したとおり、本件補正発明は、引用発明及び引用文献1の示唆に基づいて、本願の優先日前に、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
3 補正の却下の決定の理由のむすび
以上検討のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本件発明について
1 本件発明の認定
本件補正は前記第2において示したとおり却下したから、本願の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、本件補正前の請求項1に記載された事項(前記第2の1(1)参照)により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定における本件発明についての拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
(進歩性の欠如)本件発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(下記引用文献1参照)に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
1.特表2016-540189号公報
3 引用文献に記載された発明等
引用文献1の記載事項及び引用発明の認定は、前記第2の2(2)イにおいて示したとおりである。
4 対比・判断
本件発明は、本件補正発明のうち、前記第2の2(1)アに示した限定を省いたものである。そうすると、本件発明を更に限定した本件補正発明は引用発明及び引用文献1の示唆に基づいて、本願の優先日前に、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明も、引用発明及び引用文献1の示唆に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおり、本件発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-000411