特許拒絶査定不服審判
2023-021113
煙突傾斜検出装置、煙突傾斜検出方法、煙突傾斜検出システムおよび煙突傾斜検出プログラム
- 審判番号
- 2023-021113
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-508730
- 請求日
- 2023年12月12日
- 審決日
- 2025年03月26日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】日本電気株式会社
- 【請求人代理人】浜野 絢子
- 【請求人代理人】北嶋 啓至
- 審判長/審判官
- 審判長 道祖土 新吾
- 審判官 喜々津 徳胤
- 審判官 小島 寛史
- 分類
- P18 .121-Z (G01B) / P18 .575-Z (G01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-508730「煙突傾斜検出装置、煙突傾斜検出方法、煙突傾斜検出システムおよび煙突傾斜検出プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和3年9月23日国際公開、WO2021/187613〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2021年(令和3年)3月18日を国際出願日とする日本語特許出願であって(優先権主張 令和2年3月18日)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。なお、令和2年3月18日を以下「優先日」という。
令和4年 8月 8日 :手続補正書、上申書の提出
令和5年 5月23日付け:拒絶理由通知書
同年 7月27日 :意見書、手続補正書の提出
同年 8月31日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年 9月12日 :原査定の謄本の送達)
同年12月12日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和5年12月12日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年12月12日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和5年12月12日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正をするものであり、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和5年7月27日にされた手続補正後のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載は、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正された。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前
「【請求項1】
煙突に照射されるレーザ光が前記煙突によって反射された光であるレーザ反射光により得られる点群に基づいて、前記煙突の2次元または3次元の形状に関する情報である煙突形状情報を生成する情報生成手段と、
前記情報生成手段により生成された前記煙突形状情報に基づいて、前記煙突の傾斜を検出する傾斜検出手段と、
を備える煙突傾斜検出装置。」
(2) 本件補正後
「【請求項1】
煙突に照射されるレーザ光が前記煙突によって反射された光であるレーザ反射光により得られる点群に基づいて、前記煙突の2次元または3次元の形状に関する情報である煙突形状情報を生成する情報生成手段と、
前記情報生成手段により生成された前記煙突形状情報と過去の前記煙突の2次元または3次元の形状に関する情報である煙突基準情報とに基づいて、経年による前記煙突の相対的傾斜を検出する傾斜検出手段と、
を備える煙突傾斜検出装置。」
2 補正の目的
(1) 本件補正のうち請求項1についてする補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項について、次のア及びイの限定をするものである。
ア 「傾斜検出手段」について、「前記情報生成手段により生成された前記煙突形状情報に基づいて」検出するものであったのを、「前記情報生成手段により生成された前記煙突形状情報と過去の前記煙突の2次元または3次元の形状に関する情報である煙突基準情報とに基づいて」検出するものに限定すること。
イ 「傾斜検出手段」が「検出する」対象である「前記煙突の傾斜」について、「経年による前記煙突の相対的傾斜」に限定すること。
(2) そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
(3) したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
3 独立特許要件の判断
本件補正は、前記2のとおり、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
(1) 本件補正発明
ア 本件補正発明の認定と分説
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
ここで、検討の便宜上、本件補正発明の構成を次のとおり構成Xと構成Aから構成Bまでに分説する。また、参考図として、本願の【図14】に部材名を記入したものを掲載する。
<本件補正発明の分説>
A 煙突に照射されるレーザ光が前記煙突によって反射された光であるレーザ反射光により得られる点群に基づいて、前記煙突の2次元または3次元の形状に関する情報である煙突形状情報を生成する情報生成手段と、
B 前記情報生成手段により生成された前記煙突形状情報と過去の前記煙突の2次元または3次元の形状に関する情報である煙突基準情報とに基づいて、経年による前記煙突の相対的傾斜を検出する傾斜検出手段と、
X を備える煙突傾斜検出装置。
<参考図>
【図14】
[図:0001423082000001.jpg]
イ 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願発明の技術上の意義の概略を理解するために、本願の願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。なお、下線は当合議体による。
「【背景技術】
【0002】
特許文献1には、腐食やへこみや表面の欠陥の有無を検出する腐食走査システムが、開示されている。
【0003】
この腐食走査システムは、位置決めアームと、レーザ装置と、コンピュータ読み取り可能手段とを備えている。レーザ装置は、位置決めアームの先端部に取り付けられている。位置決めアームは、先端部に取り付けられたレーザ装置を3次元に移動させることができる。レーザ装置は、位置決めアームの移動によって、煙突等の対象物の表面の近傍に配置される。レーザ装置は、表面の領域にレーザ光を当て、そのレーザ反射光を検知することによって、表面状態データを取得する。コンピュータ読み取り可能手段は、レーザ装置により取得された表面状態データをレーザ装置から受け取り、これらのデータを処理して、測定表面の領域上の腐食に関するデータを生成する。ここでは、コンピュータ読み取り可能手段は、基準データとの比較で閾値以上のずれがある部分を腐食部分としてみなす。
【0004】
このように、特許文献1に記載の発明では、煙突等の表面の腐食を検出することができる。
…(中略…)
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、煙突等の表面の腐食を検出することができるが、煙突の傾斜を把握できないという問題があった。
【0008】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、煙突の傾斜を検出することができる煙突傾斜検出装置等を提供することにある。」
「【0063】
また、本発明の第1の実施の形態における煙突傾斜検出システム1000において、傾斜検出部15は、情報生成部13により生成された煙突形状情報と、煙突基準情報とに基づいて、煙突500の傾斜を検出してもよい。ここで、煙突基準情報とは、煙突の形状に関する基準情報である。たとえば、煙突基準情報が、β1であったとする。また、情報生成部13により生成される煙突形状情報が、β2であったとする。この場合において、傾斜検出部15は、情報生成部13により生成される煙突形状情報β2から、煙突基準情報β1を減算して、(β2-β1)を煙突500の傾斜として求めることができる。
【0064】
これにより、煙突傾斜検出システム1000は、煙突形状情報の変化を検出することができる。すなわち、煙突傾斜検出システム1000は、煙突形状情報が煙突基準情報からどの位変化したかを検出することができる。より具体的には、上記の例では、煙突傾斜検出システム1000は、煙突基準情報に対して、煙突500が(β2-β1)の角度だけ傾いたことを認識できる。たとえば、煙突基準情報が、煙突500を最初に設置したときの煙突500の形状に関する基準情報であった場合、煙突傾斜検出システム1000は、煙突500を設置したときから、煙突500が(β2-β1)の角度だけ傾いたことを認識できる。」
(2) 各引用文献に記載された事項及び引用発明の認定等
ア 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
(ア) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、優先日前に発行された文献である特開2013-217807号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(なお、当合議体により、後記(ウ)の引用発明の認定に直接用いる記載等に下線を付した。)。
a 【0001】~【0015】
「【技術分野】
【0001】
本発明は、立体物体を測量するための光学装置及びそれを用いた計測方法に関する。特に、外周面が円筒又は複雑な形状をする立体物体構造物を測量するための光学装置及びそれを用いた計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
測距装置は、レーザ光線を被測定物へ照射して、被測定物で反射したその反射光を受信することで、被測定物までの距離を測定している。トータルステーションに代表される光学測距装置は、被測定箇所に反射板をおいて測距する自動測定が進んでいる。被測定物への角度を指定すると、測距装置は、被測定物に焦点を自動的に合わせて、自動測距する。近年は、距離を測る光波測距儀と角度を測るセオドライトを組み合わせて同時測量できるトータルステーションをはじめ、反射板を用いないで測距するノンプリズム測定法が利用されるようになっている。一般的に、電柱は、木材又はコンクリート製で外周面が円筒である。
【0003】
この電柱を、測量装置で測定しようとすると、円筒のための測距装置は、焦点を電柱に自動的に合わせることができない。言い換えると、電柱は、反射板を用いて手動測定が余儀なくされていた。また、同様に円筒外周の建造物としては、焼却炉等の煙突であり、安全確保のためにその傾きを詳細に管理することが望まれている。また、橋梁等の大型の建造物にも、橋脚をはじめ、外周面が円、楕円の形状の構造物が数多くある。手動測定になると、反射板を、電柱や煙突の被測定箇所に設置することが時間と手間がかかる作業で、測量コストがかかる。
【0004】
その中で、特許文献1には、円筒外周の電柱や円柱等が計測できる光学装置が開示されている。光学装置は、望遠鏡に投影板を備えている。投影板は、望遠鏡の中心軸を中心として円周方向に連続又はほぼ連続した複数の円を含む参照スケール、または、少なくとも望遠鏡の中心軸を中心とする複数の円弧を中心軸線に対して左右対称に配置した参照スケールが設けてある。
…(中略)…
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電柱、煙突などの曲げ歪を正確に計測することが求められている。特許文献1に開示された光学装置は、投影板が新たに必要である。その中で、従来の測距装置を用い、低コストで、円柱や煙突等の円筒外周の物体の測定ができる装置や測定方法が望まれている。同様に、建造物の角など複雑な形状の構造物の測量も求められている。
【0007】
本発明は上述のような技術背景のもとになされたものであり、下記の目的を達成する。
本発明の目的は、電柱や煙突等の円筒構造物の傾き、曲がり具合等の状態を適正に測量できる光学装置及びそれを用いた計測方法を提供する。
本発明の他の目的は、建造物等の構造物の角等の複雑な形状をする部分を適正に測量できる光学装置及びそれを用いた計測方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記目的を達成するため、次の手段を採る。
本発明の光学装置は、距離を測る光波測距儀と角度を測るセオドライトを組み合わせたて同時測量できる光学装置において、前記光学装置の本体と、前記本体を操作した利用者が測定対象物に視準を合わせた測角角度を決定する角度決定手段と、前記角度決定手段で決定された前記測角角度を示す測角角度データを記憶する記憶手段と、前記記憶手段で記憶された1以上の前記測角角度データを、角度決定アルゴリズムに従って信号処理して、自動旋回角度データを出力する計算手段と、前記自動旋回角度データが示す自動旋回角度に前記本体を自動旋回させて前記自動旋回角度に視準を合わせ、該視準された測定対象点までの距離を自動測距して測定対象点距離データを出力する自動測定手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の光学装置は、前記測定対象点から所定角度、又は、所定角度及び/若しくは所定距離の位置にある前記測定対象物の他の測定対象点に、前記本体を自動旋回させる前記自動旋回手段と、前記他の測定対象点までの距離を前記自動測定手段で自動測距し、該距離を前記測定対象点距離データと比較して、前記測定対象物の変位量を計算する変位計算手段とを備えたことを特徴とする。
…(中略)…
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、次の効果が奏される。本発明の光学装置及びそれを用いた計測方法によると、電柱や煙突等の円筒外周の構造物の状態を正確に計測できるようになった。また、追加的な特別な部品を必要とせず、従来の測距装置をそのまま利用できるという利点がある。」
b 【0017】~【0026】、【図1】
「【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する前に、添付図面を参照しながら、光学装置を用いて路面の変位量を測定する技術の概要を簡単に説明する。本実施の形態では、円筒構造物とは、円筒の外周面を有する構造物をいう。具体的には、例えば、電柱、煙突、円柱を含むものである。この円柱は、建造物の円柱構造物を意味するが、これに限定されない。また、円筒構造物は、同一の外径を有する円筒以外に、円錐形、円錐台形状、局所的に円錐台形状若しくは円筒形の構造物を含む。
【0018】
更に、円筒構造物は、瓢箪形等のような外径が異なる半径の構造を含むことができる。更に、円筒構造物は、電柱のように、鉛直方向にだけ設置又は建設されている必要はなく、斜め又は水平方向に向けられている場合も対象とする。
〔光学装置による計測の概要〕
図1は、光学装置で被測定物を測定する計測の概要を図示している。本実施の形態では、光学装置としては、汎用の測量装置、特に、反射板を用いないで測距を行うレーザ測量装置1を例に説明する。」
「【図1】
[図:0001423082000002.jpg]
」
「【0019】
反射板を用いないレーザ測量装置1としては、例えば、距離を測る光波測距儀と角度を測るセオドライトを組み合わせて、同時測量できる光学装置であるノンプリズムトータルステーションが代表的なものであり、測量業界で利用されている。本発明は、このような汎用の光学装置、レーザ測量装置をそのまま利用し、円筒構造物等の測量行う。レーザ測量装置1は、レーザ光線を被測定物に照射して、その反射光を受信し、レーザ測量装置1から被測定物までの距離を計算して求めるものである。本実施の形態では、被測定物として電柱2を例に説明する。
【0020】
図1の矢印で図示したように、レーザ測量装置1は、レーザ光線を、被測定物の所定の箇所に、照射する。レーザ測量装置1は、レーザ光を発光し、反射光を受光するレーザ光発振受信部7を有する。レーザ光発振受信部7は、レーザ光を被測定物へ視準する視準機能を備えている。また、レーザ測量装置1は、レーザ測量装置1から反射点までの距離を計算して、この距離に関する距離データを出力する計算手段(図示せず。)を有する。
【0021】
計算手段は、レーザ測量装置1で測定した以上の測角角度とその測定距離から、新しい測角角度を計算する測角角度計算手段を兼ねる。また、レーザ測量装置1は、計算手段に計算結果、計算手段の計算に必要なデータを格納するためのメモリ手段(図示せず。)を有する。レーザ測量装置1は、レーザ測量装置1を鉛直方向の上下、及び左右旋回させてレーザ照射方向を設定するモータドライブ機構(図示せず。)と、前記計算手段からなる本体8を有する。
【0022】
レーザ測量装置1は、このモータドライブ機構を用いて、レーザ光発振受信部のレーザ光の照射角度を指定された水平角・高度角に設定する角度設定機能(図示せず。)を有する。レーザ測量装置1は、本体8と支持脚6を有し、支持脚6は、地面や道路脇等の被測定部の近傍に設置されて、本体8を支持固定するためのものである。レーザ測量装置1は、通信手段3と接続されており、レーザ測量装置1の計算手段で計算した結果及び/又はレーザ照射方向等を示す出力データを、他の電子計算機4へ送信する。
【0023】
電子計算機4は、この出力データを、レーザ測量装置1の通信手段3とデータ通信している電子計算機4の通信手段5を介して受信する。通信手段5は、電子計算機4に無線又は有線の接続手段で接続される。図1に示す被測定物の例は、外周が円筒の電柱2である。レーザ測量装置1は、電柱2で反射した反射光を、レーザ光発振受信部7で受信する。図1に示したレーザ測量装置1の通信手段3は、光学装置1に接続された機器であるが、レーザ測量装置1に内蔵されたものであっても良い。
【0024】
通信手段3と通信手段5との通信は、無線通信、有線通信等の任意の既知の通信方式を採用することができる。図1の中では、無線通信している様子を概念的に図示しているが、現場の要求等を考慮し、無線通信方式と有線通信方式のどちらも利用できる。光学装置1から出力された距離データと照射角度データは、レーザ測量装置1に接続された通信手段3により、電子計算機4へ送信される。
【0025】
電子計算機4は、レーザ測量装置1とデータ通信している通信手段5で距離データと照射角度データ等のデータを受信して、電子計算機4のメモリ(図示せず。)に格納する。電子計算機4は、蓄積された複数の距離データ、照射角度データ等のデータを用いて、電柱2の照射箇所の経時的な変位量を計算する。このようにして、レーザ測量装置1で検出した距離の変化に基づいて電柱2の変位量を把握することができる。
【0026】
これらの、経時的な変位量は、電子計算機4のメモリに、時系列データとして蓄積され、また、蓄積された時系列データを統計処理することで、電柱2の傾き等の変位量を計算しその変位の特性を判断する。電子計算機4のメモリは、電子計算機4の内蔵又は外付けの補助記憶装置、例えば、ハードディスク、揮発性メモリ等である。本発明は、レーザ測量装置1の発明を要旨とするものではく、かつこの構造、機能は公知技術であるので、レーザ測量装置1の詳細な機能、構造の説明、測定原理の説明は省略する。」
c 【0027】~【0032】、【図2】~【図3】
「【0027】
〔電柱の測量〕
以下、電柱2を例に、本発明の測量方法を説明する。まずは、電柱2までの距離を測距する方法を、図1、図2及び図3を参照しながら説明する。図1は、本発明の測量方法の概要を図示した概念図である。図2には、レーザ測量装置1の視準を電柱2に合わせる方法の概要を図示している。図3は、電柱2までの距離を測距する手順を示しているフローチャートである。」
「【図2】
[図:0001423082000003.jpg]
【図3】
[図:0001423082000004.jpg]
」
「【0028】
レーザ測量装置1によって電柱2までの距離測距を開始すると、まず、レーザ測量装置1が設置される(図3のステップ10,11を参照。以下、同様。)。このとき、レーザ測量装置1を操作して測量を行っている利用者は、レーザ測量装置1を整準し、レーザ測量装置1の望遠鏡の視準軸を電柱2に向けて調整し、これで測量が開始できる。利用者は、レーザ測量装置1の望遠鏡で電柱2を見ながら、図1の矢印aと矢印bで示したように、電柱2の左右の端に続けて視準を合わせ、電柱2の左右端の角度を測定する(ステップ12~14)。
【0029】
この角度の測定が終わると、光学装置1は、電柱2の左右端の角度の中心角度を、図1の矢印cで示したように、自動的に計算して、この中心角度の測定対象点までの距離を自動測定する(ステップ15~17)。詳しくは、この視準の合わせ方は、図2に図示している。この例では、まず、参照番号Aで示すように、電柱2の左側の端に、レーザ測量装置1の望遠鏡の焦点を示す十字マークを合わせて、視準合わせをする(ステップ12)。この視準が決定するには、手動測定なので、レーザ測量装置1にある角度決定ボタン(図示せず。)等の決定手段を利用者が押す。
【0030】
角度決定ボタンが押されると、レーザ測量装置1の角度決定手段は、この測定角度である第1角度を記憶する(ステップ12)。第1角度の決定後、レーザ測量装置1の望遠鏡を水平に回転させる(ステップ13)。そして、参照番号Bで示すように、レーザ測量装置1は視準を電柱2の右側の端に合わせる(ステップ14)。この視準が決定すると、利用者は、レーザ測量装置1にある角度決定ボタン等の決定手段を押す。レーザ測量装置1の水平回転は、レーザ測量装置1の本体8の鉛直線を中心として、水平に旋回させるものである。
【0031】
すると、レーザ測量装置1の角度決定手段は、この測定角度である第2角度を記憶する(ステップ14)。その後、レーザ測量装置1は、その記憶手段に記憶されている第1角度と第2角度を示す角度データから、第1角度と第2角度の中心角度で第3角度を自動的に、計算して求める(ステップ15)。この第3角度への照射方向を、図1の中で、矢印cで図示している。第3角度が計算されると、レーザ測量装置1は、この第3角度へ、その望遠鏡を自動回転させる(ステップ16)。
【0032】
この第3角度にある測定対象点は、図2の中で、点Cで、図示している。レーザ測量装置1は、この測定対象点へ、レーザ光を照射し、その反射光を測定して、この測定対象点までの距離を測定する(ステップ17)。点Cは、レーザ測量装置1側からみると、点Aと点Bの間に位置する。レーザ測量装置1は、点Cまでの距離が測距し終わると、電柱2の半径等を計算し、その計算結果を出力する(ステップ18、19)。(後略)」
d 【0036】~【0040】、【図5】~【図6】
「【0036】
図5は、電柱2の傾きを測定する方法を説明するための概要図である。図6は、電柱2の傾きを測定する手順を示したフローチャートである。まず、測定が開始すると、レーザ測量装置1を設置し(ステップ30、31)、水平面の測定を行う(ステップ32)。この水平面の測定は、図5の中では、点A、B、Cでその測定位置を図示しており、上述の通り、図2と図3に示した通りの測定である。この水平面の測定の結果である、第1角度、第2角度、第3角度、電柱2の点Cまでの距離sをレーザ測量装置1が記憶する(ステップ32)。」
「【図5】
[図:0001423082000005.jpg]
【図6】
[図:0001423082000006.jpg]
」
「【0037】
水平面の測定が終了すると、レーザ測量装置1は、測角方向を点Dの方向に変更する(ステップ33)。点Dは、本例では、水平面より上側に位置する。利用者は、レーザ測量装置1を手動で微調整して、点Dの付近に、電柱2の左端に視準を合わせる。この視準が決定すると、レーザ測量装置1にある角度決定ボタン(図示せず。)等の決定手段を利用者が押す。角度決定ボタンが押されると、レーザ測量装置1の角度決定手段は、この測定角度である第4角度を記憶する(ステップ34)。
【0038】
第4角度の決定後、レーザ測量装置1の望遠鏡を水平に回転させ(ステップ35)、電柱2の右端に、レーザ測量装置1を移動させて、手動で微調整して測角する。そして、参照番号Eで示すように、視準を電柱2の右側の端に合わせる。この視準が決定すると、利用者は、レーザ測量装置1にある角度決定ボタン等の決定手段を押す。角度決定ボタンが押されると、レーザ測量装置1の角度決定手段は、この測定角度である第5角度を記憶する(ステップ36)。
【0039】
点Dと点Eの測定角度の第4角度と第5角度によっては、電柱2が傾いているかがおおむね把握できる。つまり、点Dと点Eの測定角度(第4角度と第5角度)が点Aと点Bの測定角度(第1角度と第2角度)を比較して、電柱2が測距方向に対して横に傾いているかが把握できるが、測距方向に傾いているかはこの時点で把握できない。その後、レーザ測量装置1は、点Dと点Eの測定角度から、その中心測角角度である第6角度を自動的に、計算して求め求める(ステップ37)。
【0040】
レーザ測量装置1は、この第6角度へ、その望遠鏡を自動回転させる(ステップ38)。その測角方向にある測定対象点までの距離を求める(ステップ39)。この測定対象点は、図5の中に、点Fで図示されている。その後、第6角度とその点までの距離を、点Cと比較して、電柱2の傾きを計算する(ステップ40)。最後は、計算結果を出力手段によって出力する(ステップ41、42)。本例では、電柱2が円筒であり、点A、B、Cと、点D,E、Fで示される断面積が同じ半径の円である。」
(イ) 引用文献1の記載から読み取れる事項
a 引用文献1の【0022】には、「レーザ測量装置1は、通信手段3と接続されており、レーザ測量装置1の計算手段で計算した結果及び/又はレーザ照射方向等を示す出力データを、他の電子計算機4へ送信する。」と記載されている。
また、同【0025】には、「電子計算機4は、レーザ測量装置1とデータ通信している通信手段5で距離データと照射角度データ等のデータを受信して、電子計算機4のメモリ(図示せず。)に格納する。電子計算機4は、蓄積された複数の距離データ、照射角度データ等のデータを用いて、電柱2の照射箇所の経時的な変位量を計算する。」と記載され、同【0026】には、「これらの、経時的な変位量は、電子計算機4のメモリに、時系列データとして蓄積され、また、蓄積された時系列データを統計処理することで、電柱2の傾き等の変位量を計算しその変位の特性を判断する。」と記載されている。
これらの記載から、引用文献1には、「レーザ測量装置1」と「電子計算機4」により電柱2の傾きを検出することが記載されているといえる。
b また、引用文献1の【0019】には、「本実施の形態では、被測定物として電柱2を例に説明する。」と記載されているところ、同【0007】には、「本発明の目的は、電柱や煙突等の円筒構造物の傾き、曲がり具合等の状態を適正に測量できる光学装置及びそれを用いた計測方法を提供する。」と記載され、同【0017】には、「本実施の形態では、円筒構造物とは、円筒の外周面を有する構造物をいう。具体的には、例えば、電柱、煙突、円柱を含むものである。」と記載されている(下線は当合議体による。)。
そうすると、引用文献1には、その実施の形態において、被測定物として電柱2を例としたものが記載されているが、被測定部として電柱2を煙突に置き換えたものも実質的に開示されているものと認められる。
c したがって、前記a及びbから、引用文献1には、「レーザ測量装置1及び電子計算機4を有し、被測定物が煙突である煙突傾き検出装置」の発明が記載されているものと認められる(以下「認定事項1」という。)。
(ウ) 引用発明の認定
前記(イ)において認定した事項及び前記(ア)に摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所等を括弧内に示した。
<引用発明>
「レーザ測量装置1及び電子計算機4を有し、被測定物が煙突である煙突傾き検出装置であって、(認定事項1)
レーザ測量装置1は、レーザ光線を、被測定物の所定の箇所に、照射するものであり、レーザ光を発光し、反射光を受光するレーザ光発振受信部7を有し、レーザ光発振受信部7は、レーザ光を被測定物へ視準する視準機能を備えており、(【0020】)
レーザ測量装置1は、レーザ測量装置1から反射点までの距離を計算して、この距離に関する距離データを出力する計算手段を有し、計算手段は、レーザ測量装置1で測定した測角角度とその測定距離から、新しい測角角度を計算する測角角度計算手段を兼ねており、(【0020】、【0021】)
レーザ測量装置1は、通信手段3と接続されており、レーザ測量装置1の計算手段で計算した結果及び/又はレーザ照射方向等を示す出力データを、他の電子計算機4へ送信するものであり、(【0022】)
電子計算機4は、レーザ測量装置1とデータ通信している通信手段5で距離データと照射角度データ等のデータを受信して、電子計算機4のメモリに格納し、蓄積された複数の距離データ、照射角度データ等のデータを用いて、煙突の照射箇所の経時的な変位量を計算するものであり、(【0025】、認定事項1)
これらの、経時的な変位量は、電子計算機4のメモリに、時系列データとして蓄積され、また、蓄積された時系列データを統計処理することで、煙突の傾き等の変位量を計算しその変位の特性を判断する、(【0026】、認定事項1)
煙突傾き検出装置。」
イ 引用文献2、3及び5の記載事項及び周知技術1の認定
(ア) 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、優先日前に発行された文献である特開2011-181028号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。
a 【0001】
「【0001】
本発明は、地上物の表面の点群に基づいて柱状の3次元モデルを生成する3次元モデル生成装置に関するものである。」
b 【0012】~【0015】、【図2】~【図3】
「【0012】
図2は、計測車両の一例を示す図である。計測車両2は、ベース車両25にレーザレンジファインダ21および計測装置22が搭載された構成となっている。」
「【図2】
[図:0001423082000007.jpg]
」
「【0013】
レーザレンジファインダ21は、近赤外線のパルスレーザ211を、当該レーザレンジファインダ21の1つの軸を基準にして回転させながら外方に向けて照射するとともに地上物の表面で反射したパルスレーザ211の反射光を図示しない受光部で受光する。そして、照射した方向を計測するとともに、パルスレーザ211が照射されてから受光するまでの伝播時間によりパルスレーザ211の反射点までの距離を位相比較法等により算出する光波測距儀である。レーザレンジファインダ21により、当該レーザレンジファインダ21の位置を基準にしたパルスレーザ211の反射点の軌跡が描くレーザ計測点画像が得られる。レーザ計測点画像の各点を構成する画素データには、反射点までの距離に関するレーザ距離情報、反射光を受光した方位に関するレーザ方位情報、パルスレーザ211の反射強度およびパルスレーザ211の反射時の時刻を示すレーザ計測時刻情報が含まれている。
【0014】
計測装置22は、GPS受信器221、慣性計測装置(IMU:Inertial
Measurement Unit)222、計算部223、車載記憶部224を備えている。慣性計測装置222は、図示しない加速度センサおよびジャイロセンサを備えており、計測車両2の移動軌跡データを求めるものである。移動軌跡データには、一定間隔で地上物の表面を計測したときの計測装置22の位置に関する計測位置情報および計測したときの時刻に関する慣性計測時刻情報が含まれている。計測位置情報は、GPS受信器221が出力するGPS位置情報および記憶部12に記憶されている地図データを用いてマップマッチングを行なうことにより、より正確な計測位置情報に補正される。計測車両2が走行に用いる地図データは、計測装置22が3次元モデル生成装置1と通信することにより取得される。計測装置22は、レーザ計測点画像と移動軌跡データとを、レーザ計測時刻情報および慣性計測時刻情報の時間的な同期により関連させ、レーザ計測点画像の各点を3次元座標上に結びつけるとともに、レーザレンジファインダ21の校正情報を用いてレーザで測位した各反射点の3次元座標を補正し、地上物の表面の点群の位置の座標情報をより正確に算出する。
【0015】
図3は、計測車両が道路付近の地上物を計測する例を示す図である。図3に示すように、計測装置22は、計測車両2により整備対象とする道路RDを走行してレーザ計測点画像の各点を構成する画素データおよび計測車両2の移動軌跡データを収集する。パルスレーザ211は図3の矢印の方向に回転して照射される。しかる後に、計測装置22は、計算部223により画素データおよび移動軌跡データに基づいて算出した地上物の表面の点群の位置の座標情報およびパルスレーザ211の反射強度を車載記憶部224に記憶し、点群データとして蓄積する。」
「【図3】
[図:0001423082000008.jpg]
」
c 【0032】
「【0032】
また、上述した実施例においては、生成された3次元モデルは3次元空間を画面に表示して案内するナビゲーション装置に使用されているが、このような形態に限定するものではない。例えば、道路付近の電柱が設置されているエリアの点群から3次元モデルを生成し、生成された電柱の3次元モデルについて現実に設置されている電柱に対する傾きを計算して算出された傾きが所定の閾値を超えている場合には電柱の設置状態が異常であると判定する、という形態も可能である。また、これ以外の地上物について設置状態を分析する手段に利用することも可能である。」
(イ) 引用文献3に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、優先日前に発行された文献である特開2015-78849号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。
なお、引用文献3の摘記事項は、周知技術1の認定に用いるほか、後記ウにおいて、周知技術2の認定にも用いる(特に後記cの摘記事項)。
a 【0010】~【0014】、【図1】
「【0010】
図1は、本発明の設備状態検出方法を実施する装置の概要を示すもので、本装置は車両に搭載された3次元レーザースキャナ1、カメラ2、GPS3、IMU4およびオドメーター5とともに、3次元点群データ解析装置10、3次元点群データベース(DB)20、2次元設備データベース(DB)30、3次元設備検出装置40、3次元設備状態検出装置50、3次元設備状態判定装置60とからなり、車両の走行中に3次元レーザースキャナ1、カメラ2、GPS3、IMU4およびオドメーター5により周囲の3次元測量を行い、これらのデータを基に3次元点群データ解析装置10により電柱6、ケーブル7、クロージャ8等の設備を含む屋外構造物の表面上の点の3次元(XYZ)座標を3次元点群データとして取得している。」
「【図1】
[図:0001423082000009.jpg]
」
「【0011】
図2は、本発明による設備状態検出/判定の概要を示すものである。」
「【図2】
[図:0001423082000010.jpg]
」
「【0012】
3次元レーザースキャナ1、カメラ2、GPS3、IMU4およびオドメーター5からはそれぞれ、屋外構造物までの3次元距離データ、画像データ、車両の3次元座標データ、車両の加速度データおよび車両の走行距離データが得られ、これらは3次元点群データ解析装置10に入力される。3次元点群データ解析装置10は、前述した各データを解析して、屋外構造物の表面上の点に対応する3次元点群データを得る。なお、ここまでの構成は、背景技術で述べた3Dマッピングシステムそのものである。
【0013】
3次元点群DB20は、3次元点群データ解析装置10で得られた3次元点群データを全て格納する。2次元設備DB30は、管理対象設備、ここでは電柱、ケーブル、クロージャについての設備管理データを格納(記憶)した、既存の設備管理データベースである。なお、設備管理データとしてはそれぞれの設備を一意に識別可能な識別子の他、当該設備の設置位置の座標値または当該設備の属性情報または当該設備に関連する他の設備に関する情報、例えば電柱についてはその物理的(地理的)な位置座標を示すXY座標、仕様(高さ、外形等)等があり、また、ケーブルについてはその布設数、型番があり、また、クロージャについては当該クロージャが設置されている電柱(の識別子)、電柱への設置位置(右、左、中央のいずれか)、型番、当該クロージャが接続しているケーブル(の識別子)がある。
【0014】
3次元設備検出装置40は、3次元点群DB20および2次元設備DB30を用いて、後述するように管理対象の各設備に対応する3次元オブジェクトのCADデータ(以下、3次元設備データと呼ぶ。)を検出する。3次元設備状態検出装置50は、前記検出した各設備の3次元設備データから、後述するように当該各設備の状態、例えば電柱傾斜角、ケーブル地上高等を検出する。3次元設備状態判定装置60は、前記検出した各設備の状態から、当該各設備の実際の状態が所定の範囲内にあるか否か等を判定する。」
b 【0038】~【0040】、【図15】~【図16】
「【0038】
図15は、3次元設備状態検出装置50による電柱傾斜角の検出処理アルゴリズムを、また、図16は、電柱傾斜角の検出処理の仕組みを示すもので、以下、詳細に説明する。」
「【図15】
[図:0001423082000011.jpg]
【図16】
[図:0001423082000012.jpg]
」
「【0039】
まず、3次元設備状態検出装置50は、前記検出し記憶した電柱の3次元設備データから、任意の電柱の3次元設備データを取り出す(s41)。次に、3次元設備状態検出装置50は、前記取り出した電柱の3次元設備データに基づき、図16に示すように電柱の最上点Aから地面へ降ろした垂線と地面との交点Bを算出し(s42)、電柱の最下点Cと点A、点Bで構成される直角三角形から当該電柱の傾斜角度αを算出する(s43)。
【0040】
次に、3次元設備状態検出装置50は、電柱の最下点から伸ばした垂線と電柱がなす角度(90°-α)を「電柱の傾斜角」と定義して算出する(s44)。最後に、3次元設備状態検出装置50は、二次元設備DB30中の当該電柱の設備管理データに前記「電柱の傾斜角」およびその計測年月日を追加する(s45)。これらを全ての電柱の3次元設備データに対して繰り返す。」
c 【0045】~【0049】、【図19】
「【0045】
図19は、3次元設備状態判定装置60による電柱傾斜角の判定処理アルゴリズムを示すもので、以下、詳細に説明する。」
「【図19】
[図:0001423082000013.jpg]
」
「【0046】
まず、3次元設備状態判定装置60は、前述した如くして電柱傾斜角を算出し、その値を「傾斜角1」と定義して記憶する(s61)。次に、3次元設備状態判定装置60は、経時変化を調べるために、前記同様に2回目の電柱傾斜角を算出し、その値を「傾斜角2」と定義して記憶し、以後同様に、N回目に算出した電柱傾斜角を「傾斜角N」と定義して記憶する(s62)。
【0047】
次に、3次元設備状態判定装置60は、傾斜角Nが所定の基準値以上かどうかを調べ(s63)、基準値以上であれば、「不安全設備」と定義し、電柱補強などの保守を実施する(s64)。
【0048】
一方、基準値未満であれば、3次元設備状態判定装置60は、傾斜角Nと傾斜角N-1との差が所定の閾値以上かどうかを調べ(s65)、閾値以上であれば、「不安全設備・予備軍」と定義し、要監視設備として2次元設備DB30に登録する(s66)。
【0049】
上記基準値未満でかつ閾値未満であれば、「安全設備」と定義し、定期的な監視設備として2次元設備DB30に登録する(s67)。」
(ウ) 引用文献5に記載された事項
当審において新たに引用する、優先日前に発行された文献である中国特許出願公開第107388992号明細書(以下「引用文献5」という。)には、次の記載がある。括弧内に当合議体の作成した日本語訳を示した。
「
[図:0001423082000014.jpg]
」
(技術分野
[0001] 本発明は、建築物の変形測定の技術分野に属し、具体的には三次元レーザ走査に基づく高層タワー筒の垂直度の検出方法に関する。)
「
[図:0001423082000015.jpg]
」
(背景技術
[0002] 建築物の変形測定は、建築物及びその地盤に対して水平変位、沈降、傾斜、撓み、亀裂等の監視作業を行う。特に風力発電タワー、熱冷却タワー筒、貯水塔、煙突等の多くは高層円柱形建築物に属し、高さが比較的高く(60mより大きい)、横断面が相対的に小さいという特徴を有する。このような高層タワー筒は、長期運転中に自身の重力、自然風力、地震等の外力負荷を繰り返し受けて、タワー筒が傾斜し又は部分的に湾曲する可能性があり、タワー筒の傾倒又は崩壊を引き起こしやすい。
[0003] マッピング新技術が日増しに成熟した今日では、新規な監視手段は大幅な発展を遂げているが、高層タワー筒建築物又は超高層タワー筒の垂直度の検出手段は、依然としてトータルステーション又はセオドライトを採用しており、このような一般的な従来の作業方法は高層タワー筒に対して目標点(プリズム)を配置することができないために、外部作業実施の難度が大きく、測定精度の制御が困難であり、その作業方式は時間と労力がかかり、目標データの精度が低く、且つデータの限界性が大きい。)
「
[図:0001423082000016.jpg]
」
(発明の開示
[0004] 本発明の目的は、高層タワー筒の垂直度について、従来の検出に存在する実施操作が難しく、精度が制御しにくく、時間と労力がかかり、目標データの精度が低く、データの限界性が大きいという問題を解決することである。
[0005] このため、本発明は三次元レーザ走査に基づく高層タワー筒の垂直度検出方法を提供し、以下のステップを含む:
ステップ1) 点群データを取得する:固定フレームに三次元レーザスキャナを架設し、タワー筒の垂直投影の1/3円環セグメント筒体の点群データを取得する;
ステップ2) TINモデルを構築する:ステップ1)で得られた点群データを前処理し、タワー筒の1/3円環筒体TINモデルを構築する;
ステップ3) タワー筒断面を抽出する:ステップ2)で得られたTINモデルからタワー筒の2つの水平等高断面を選択する;
ステップ4) タワー筒断面の中心座標を計算する:それぞれステップ3)のタワー筒の等高断面において同一直線状にない任意の3つの点を選択し、各タワー筒の等高断面における3つの点は1つの唯一の円形平面を確定し、2つの円形タワー筒の等高断面の中心座標を計算する;
ステップ5) 垂直度の計算:ステップ4)で得られた2つの中心座標により、タワー筒の傾斜率及び傾斜方向を計算する。)
「
[図:0001423082000017.jpg]
」
([0011] 本発明の有益な効果:本発明が提供するこのような三次元レーザ走査に基づく高層タワー筒の垂直度検出方法は、三次元レーザスキャナを利用して高層タワー筒表面の高密度の三次元点群を一回で迅速に取得することができ、点群の取得が容易で、精度が高く、速度が速く、一回で取得した点群の複数種類の使用を実現し、すなわちタワー筒の任意の高さ断面の点群データを抽出することができ、高層タワー筒の高さの異なる断面幾何中心を算出し、タワー筒の垂直度を検出する目的を達成する。)
「(図1)
[図:0001423082000018.jpg]
」
(エ) 周知技術1の認定
前記(ア)~(ウ)に示した引用文献2、3及び5の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は、優先日前に当業者にとって周知の技術(以下「周知技術1」という。)であったと認められる。
ここで、引用文献3に記載された「三次元レーザースキャナ」及び引用文献5に記載された「三次元レーザスキャナ」が、レーザ光を照射するとともに、対象物において反射したレーザ光を受光するものであることは、当業者にとって明らかである。
<周知技術1>
「レーザ反射光により得られる点群に基づいて、円筒状構造物の傾斜度を計算すること。」
ウ 引用文献6及び7の記載事項及び周知技術2の認定
(ア) 引用文献6に記載された事項
当審において新たに引用する、優先日前に発行された文献である国際公開第2019/059091号(以下「引用文献6」という。)には、次の記載がある。
a [0012]~[0017]、[図1]
「[0012] 次に、本発明を実施するための形態を、図面を参照して具体的に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る電柱管理システム1が実際に用いられる際の形態を示す図である。ここで、この電柱管理システム1は、図8の構成と同様に、移動体(車両)Aに搭載されて路上を移動可能な部分である携帯端末10と、携帯端末10とは離間して配置されネットワーク(無線通信)を介して接続されたサーバシステム50とを具備する。ここで、測定の対象となる構造物(対象物)は、例えば電柱とされる。」
「[図1]
[図:0001423082000019.jpg]
」
「[0016] 更に、この携帯端末10には、レーザー光を発して対象物に照射すると共にその反射光を受光して対象物までの距離を認識するレーザー測距部(測距手段)18、移動体Mの走行距離を認識するオドメータ19が用いられる。CPU16は、これらを用いて、対象物までの距離、あるいはより厳密には、対象物上の各点までの距離を認識することができ、この情報も、サーバシステム50側に送信することができる。
[0017] ここで、特許文献1に記載の状態変化管理システム100とは異なり、この電柱管理システム1においては、対象物が電柱に限定され、この電柱の形態的な特徴に基づき、CPU16が、取得された撮像データ中における対象物を自動的に認識する。この際、撮像データ中に複数の電柱が存在しても、各電柱を認識することができ、この認識の際には、ユーザの操作が不要である。その後、認識された電柱の傾きあるいはその経時変化が認識され、傾き量やその経時変化に応じて、異常の有無が判定される。」
b [0028]~[0031]、[図6]
「[0028] その後、CPU16は、認識された電柱の状態を認識する(S6)。この認識も、撮像データやレーザー測距部18によるこの構造物の表面の各点までの距離の測定結果を用いて行われる。ここで測定される項目としては、まず、電柱の傾斜(地面からの傾斜角)がある。図6は、撮像データにおいてこの測定をする状況を模式的に示す図である。ここでは、地面Gと認識された部分でありかつ電柱Pと交差する部分を含む水平方向の領域における電柱Pを挟んだ2点(A、B)が設定される。一方、電柱Pの断面の中心上にあり地面Gと認識された部分と垂直な方向において離間した2点(C、D)が設定される。線分ABと線分CDとの間のなす角度θの90°からの偏差が、この電柱Pの傾斜角であると認識される。」
「[図6]
[図:0001423082000020.jpg]
」
「[0029] 次に、CPU16は、この結果に基づき、この電柱に異常があるか否かを判定する(S7)。この際、この傾斜角が、ある閾値よりも大きかった場合に、この電柱に異常があると認識することができる。
[0030] あるいは、上記のように、CPU16は、電柱が認識された場合にはその位置を認識する(S27)ため、異なる時点で認識された電柱において、この位置情報が同一である電柱は、同一の電柱であると推定される。地形によっては、実際には電柱に異常がない場合においても、撮像データにおいて線分ABと線分CDとの間のなす角度が90°とはならない場合もあるが、上記の構成においては、記憶部52を参照し、過去に認識された電柱と新たに認識された電柱との間の対応関係を認識することができるため、この場合には、過去に同様にして算出されたこの角度とこのようにして新たに算出された角度とを比較し、この差がある閾値よりも大きかった(変化が大きかった)場合に、この電柱に異常が発生したと認識することができる。
[0031] この際、比較対象となる過去の撮像データは、記憶部52に記憶されたもののうち、撮像データを取得した際の携帯端末10の位置、姿勢が同一又は近かったものを選択して用いることができる。この点については特許文献1に記載の技術と同様である。また、このように同一の電柱に対する過去のデータと最新のデータを比較するためには、過去の撮像データと、これに対応する位置情報、姿勢情報を測定の度に記憶部52に記憶させることが好ましい。ただし、撮像データ自身は記憶させず、上記の角度のような数値化された測定結果と電柱との対応関係を識別可能な形で記憶させ、これを用いて上記の比較を行ってもよい。」
(イ) 引用文献7に記載された事項
当審において新たに引用する、優先日前に発行された文献である特開2019-86330号公報(以下「引用文献7」という。)には、次の記載がある。
a 【0001】
「【0001】
本発明はタワー構造物の変位計測システムに関し、より詳細には、鉄塔設備等のタワー構造物の接地面に対する相対変位、傾き角度及びその経時変化を簡易的に精度良く計測することが出来るタワー構造物の変位計測システムに関するものである。」
b 【0021】~【0022】、【図1】
「【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る鉄塔変位監視システム100を示す構成図である。図2は鉄塔変位監視システム100の基準座標系を示す説明図である。なお、本実施形態に係る鉄塔6は、4脚構造の4レッグスタワー型の鉄塔とする。」
「【図1】
[図:0001423082000021.jpg]
」
「【0022】
この鉄塔変位監視システム100では、鉄塔6が据え付けられた基礎土台7を基準面として、基礎土台7に平行に鉛直方向(H軸方向)に沿って仮想的に切断された複数(本実施形態では4個の)のベース断面BA、第1断面SE1、第2断面SE2、及び第3断面SE3に対し、各断面の各角部近傍に4個の計測用プリズム4がそれぞれ取り付けられている。計測用プリズム4の各座標はトータルステーション1によって計測され、計測された各座標から各断面の各中心座標C0,C1,C2,C3がそれぞれ算出され、そして最下部に位置するベース断面BAのベース中心座標C0が基準中心座標として選定され、ベース中心座標C0に対する各中心座標C1,C2,C3のN軸方向及びE軸方向の相対変位量(mm)、並びにベース中心座標C0と各中心座標C1,C2,C3を結ぶ矢線図(方向ベクトル)の鉛直方向(H軸方向)に対する傾き角度(°)についてそれぞれ算出され、これらの算出値の経時変化は監視されるように構成されている。」
(ウ) 周知技術2の認定
前記イ(イ)及び前記(ア)~(イ)に示した引用文献3、6及び7の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は、優先日前に当業者にとって周知の技術(以下「周知技術2」という。)であったと認められる。
<周知技術2>
「塔状構造物の傾斜を検出する装置において、過去に測定した傾斜度と新たに測定した傾斜度に基づいて相対的傾斜を検出することにより、経年変化を監視すること。」
(3) 本件補正発明と引用発明の対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア) 構成Xの観点(煙突傾斜検出装置)
「煙突傾斜検出装置」の発明である本件補正発明と「煙突傾き検出装置」の発明である引用発明は、「煙突傾斜検出装置」の発明である点で一致する。
(イ) 構成Aの観点(情報生成手段)
a 構成Aは、「煙突に照射されるレーザ光が前記煙突によって反射された光であるレーザ反射光により得られる点群に基づいて、前記煙突の2次元または3次元の形状に関する情報である煙突形状情報を生成する情報生成手段」を備えることである。
b 引用発明において、「被測定物」は「煙突」であるから、引用発明の「被測定物の所定の箇所に、照射」される「レーザ光線」は、本件補正発明の「煙突に照射されるレーザ光」に相当する。
また、引用発明は、「レーザ光を発光し、反射光を受光するレーザ光発振受信部7を有[する]」ものであるところ、「レーザ光発振受信部7」により「受光」される「反射光」は、本件補正発明の「レーザ光が前記煙突によって反射された光であるレーザ反射光」に相当する。
c 引用発明の「レーザ測量装置1」は、「レーザ測量装置1から反射点までの距離を計算して、この距離に関する距離データを出力する計算手段を有[する」」ものであるところ、当該距離の計算は、レーザ光を照射してから反射光を受光するまでの時間と光速から計算するものであることは自明である。
また、引用発明における「レーザ測量装置1で測定した測角角度」には、レーザ光の反射点(被測定物である煙突)までの距離を計算するために、レーザ光を照射し反射光を受光する際の受光角度(=照射角度)が含まれることは明らかである。
そうすると、引用発明の「距離データ」及び「測角角度」は、反射光により得られるデータということができる。
d 前記cを踏まえると、引用発明の「レーザ測量装置1の計算手段で計算した結果及び/又はレーザ照射方向等を示す出力データ」には、「距離データ」及び「測角角度」が含まれ、これは、引用発明における「電子計算機4」の「レーザ測量装置1とデータ通信している通信手段5」により「受信」される「距離データと照射角度データ等のデータ」と同じデータを意味することは明らかであるから、引用発明の「距離データと照射角度データ等のデータ」は、本件補正発明の「レーザ反射光により得られる点群」と、「レーザ反射光により得られるデータ」である点において共通する。
e 引用発明の「電子計算機4」は、「レーザ測量装置1とデータ通信している通信手段5で距離データと照射角度データ等のデータを受信して、電子計算機4のメモリに格納し、蓄積された複数の距離データ、照射角度データ等のデータを用いて、煙突の照射箇所の経時的な変位量を計算するものであり」、「これらの、経時的な変位量は、電子計算機4のメモリに、時系列データとして蓄積され、また、蓄積された時系列データを統計処理することで、煙突の傾き等の変位量を計算[する]」ものであるから、引用発明の「煙突の傾き等の変位量」は、「距離データと照射角度データ等のデータ」に基づいて生成(計算)されるものといえる。
そして、引用発明の「煙突の傾き」は、本件補正発明の「前記煙突の2次元または3次元の形状に関する情報である煙突形状情報」に相当する。
f 以上の検討結果を踏まえると、引用発明の「電子計算機4」は、「レーザ反射光により得られるデータ」が「点群」でない点を措くと、本件補正発明の「情報生成手段」に相当する構成を有するから、本件補正発明と引用発明は、構成Aの観点において次の(a)の点において一致し、後記(b)の点において相違する。
(a) 構成Aの観点での一致点
「煙突に照射されるレーザ光が前記煙突によって反射された光であるレーザ反射光により得られるデータに基づいて、前記煙突の2次元または3次元の形状に関する情報である煙突形状情報を生成する情報生成手段」を備える点。
(b) 構成Aの観点での相違点
「レーザ反射光により得られるデータ」について、本件補正発明においては「点群」であるのに対して、引用発明においては、距離データと照射角度データ等のデータである点。
(ウ) 構成Bの観点(傾斜検出手段)
a 構成Bは、「前記情報生成手段により生成された前記煙突形状情報と過去の前記煙突の2次元または3次元の形状に関する情報である煙突基準情報とに基づいて、経年による前記煙突の相対的傾斜を検出する傾斜検出手段」を備えることである。
b 前記(イ)eにおいて説明したとおり、引用発明の「煙突の傾き」は、本件補正発明の「前記煙突の2次元または3次元の形状に関する情報である煙突形状情報」に相当するところ、引用発明は、「煙突の傾き等の変位量を計算しその変位の特性を判断する」ものであるから、「変位の特性」は、「煙突の傾き等の変位量」に基づくものであって、「変位の特性を判断する」ことは、煙突の傾斜を検出することといえる。
そうすると、前記(イ)の対比を踏まえれば、引用発明の「煙突の傾き等の変位量を計算しその変位の特性を判断する」ことは、本件補正発明の構成Bと、「少なくとも前記情報生成手段により生成された前記煙突形状情報に基づいて、前記煙突の傾斜を検出する」点において共通する。
c 前記bの検討結果を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、構成Bの観点において次の(a)の点において一致し、後記(b)の点において相違する。
(a) 構成Bの観点での一致点
「少なくとも前記情報生成手段により生成された前記煙突形状情報に基づいて、前記煙突の傾斜を検出する傾斜検出手段」を備える点。
(b) 構成Bの観点での相違点
「傾斜検出手段」について、本件補正発明においては、「前記情報生成手段により生成された前記煙突形状情報」だけでなく、「過去の前記煙突の2次元または3次元の形状に関する情報である煙突基準情報」にも基づいて、「経年による前記煙突の相対的傾斜」を検出するものであるのに対して、引用発明においては、そのようなものであるか明らかでない点。
イ 一致点及び相違点
前記アの対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の(ア)に示す一致点において一致し、後記(イ)に示す相違点において相違すると認められる。
(ア) 一致点
「煙突に照射されるレーザ光が前記煙突によって反射された光であるレーザ反射光により得られるデータに基づいて、前記煙突の2次元または3次元の形状に関する情報である煙突形状情報を生成する情報生成手段と、
少なくとも前記情報生成手段により生成された前記煙突形状情報に基づいて、前記煙突の傾斜を検出する傾斜検出手段と、
を備える煙突傾斜検出装置」である点。
(イ) 相違点
a 相違点1
「レーザ反射光により得られるデータ」について、本件補正発明においては「点群」であるのに対して、引用発明においては、「距離データと照射角度データ等のデータ」である点。
b 相違点2
「傾斜検出手段」について、本件補正発明においては、「前記情報生成手段により生成された前記煙突形状情報」だけでなく、「過去の前記煙突の2次元または3次元の形状に関する情報である煙突基準情報」にも基づいて、「経年による前記煙突の相対的傾斜」を検出するものであるのに対して、引用発明においては、そのようなものであるか明らかでない点。
(4) 判断
ア 相違点1について
(ア) 前記(2)イ(エ)において周知技術1として認定したとおり、次の技術事項は、優先日前に当業者にとって周知の技術であった。
「レーザ反射光により得られる点群に基づいて、円筒状構造物の傾斜度を計算すること。」
(イ) 引用発明と周知技術1は、レーザ反射光により得られるデータに基づいて、円筒状構造物の傾斜度を計算するという点で共通するものであるから、引用発明に周知技術1を適用することにより、レーザ測量装置1に代えて点群データを取得可能な装置を導入し、点群データに基づいて煙突の傾きを検出するように構成して、相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 相違点2について
(ア) 前記(2)ウ(ウ)において周知技術2として認定したとおり、次の技術事項は、優先日前に当業者にとって周知の技術であった。
「塔状構造物の傾斜を検出する装置において、過去に測定した傾斜度と新たに測定した傾斜度に基づいて相対的傾斜を検出することにより、経年変化を監視すること。」
(イ) また、引用文献1の【0003】には、「円筒外周の建造物としては、焼却炉等の煙突であり、安全確保のためにその傾きを詳細に管理することが望まれている。」と記載されているとおり、引用発明において、煙突の安全確保のためにその傾きを詳細に管理することが必要とされていることが示唆されている。
(ウ) そうすると、煙突の安全確保のためにその傾きを詳細に管理するとの観点から、引用発明に対して周知技術2を適用して、新たに計算された煙突の傾きと過去の煙突の傾きに基づいて、経年による煙突の相対的傾斜を検出するように構成して、相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
ウ 総合評価
前記ア及びイにおいて検討したとおり、引用発明において、前記相違点1及び2に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、引用発明及び周知技術1~2に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、相違点1及び2を総合的に勘案しても、本件補正発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術1~2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ 請求人の主張について
(ア) 請求人の主張の内容
請求人は、審判請求書において、概略次の主張をしている。
本件補正発明における「前記情報生成手段により生成された前記煙突形状情報と過去の前記煙突の2次元または3次元の形状に関する情報である煙突基準情報とに基づいて、経年による前記煙突の相対的傾斜を検出する」という特徴に関しては、引用文献1~3のいずれにも開示も示唆もない。そして、本件補正発明は、例えば、上記の特徴により設置時点における煙突の情報等の煙突に関する過去の情報と現在の情報とを比較し、それによって経年による相対的傾斜を算出できるところ、本件補正発明は、引用文献1~3に記載も示唆もないこのような特徴を備えることにより、煙突の倒壊などの危険性を精度よく検出できるという効果を奏するから、引用文献1~3及びこれらの組み合わせに対して高い進歩性を備える。
(イ) 請求人の主張についての検討
前記(ア)の請求人の主張について検討する。
請求人の主張は、前記相違点2に係る主張であるところ、前記イにおいて説示したとおり、「塔状構造物の傾斜を検出する装置において、過去に測定した傾斜度と新たに測定した傾斜度に基づいて相対的傾斜を検出することにより、経年変化を監視すること。」は、優先日前に周知の技術(周知技術2)であって、周知技術2の技術事項は、原査定の拒絶の理由において引用された引用文献3にも例示されている事項である。
そうすると、引用発明に対して周知技術2を適用して、相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるから、前記(ア)の請求人の主張は、採用することができない。
(5) 独立特許要件の判断のまとめ
以上検討のとおり、本願補正発明は、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合しない。
4 本件補正の却下の決定の理由のむすび
前記3(5)のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明について
本件補正は、前記第2のとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の本願発明に対する拒絶の理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
理由2(進歩性の欠如) 本願発明は、優先日前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開2013-217807号公報(主たる引用文献)
引用文献2.特開2011-181028号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3.特開2015-78849号公報(周知技術を示す文献)
3 各引用文献に記載された事項及び引用発明の認定等
引用文献1の記載事項及び引用発明の認定は、前記第2の3(2)アにおいて示したとおりである。
また、引用文献2、3及び5~7の記載事項及び周知技術1~2の認定は、前記第2の3(2)イ及びウにおいて示したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明から、前記第2の2(1)ア及びイに示した限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、その発明特定事項の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3(4)において説示したとおり、引用発明及び周知技術1~2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-021113