2022-800089
準安定粒子を含有する複合材料及び樹脂組成物
- 審判番号
- 2022-800089
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2018-510092外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6944440
- 請求日
- 2022年11月22日
- 審決日
- 2023年09月15日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ポリプラ・エボニック 株式会社
- 【請求人代理人】長谷川 芳樹
- 【請求人代理人】清水 義憲
- 【請求人代理人】吉住 和之
- 【請求人代理人】田中 政輝
- 【被請求人】サイテック インダストリーズ インコーポレイテッド
- 【被請求人代理人】園田・小林弁理士法人
- 分類
- P1123.113-Y (B29B) / P1123.121-Y (B29B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 17項目
第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨
1 請求の趣旨
次を結論とする審決を求める。
(1)特許第6944440号の請求項1~9、11~30に係る発明についての特許を無効とする。
(2)審判費用は、被請求人の負担とする。
2 答弁の趣旨
次を結論とする審決を求める。
(1)本件審判の請求は成り立たない。
(2)審判費用は請求人の負担とする。
第2 手続の経緯
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1 本件審判請求がされるまでの経緯
特許第6944440号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし30に係る特許についての出願は、2016年(平成28年)8月24日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2015年8月24日、米国(US))を国際出願日とする出願であって、令和3年9月14日に特許権の設定登録がされたものである。
2 本件審判請求における主な手続の経緯
本件審判請求における主な手続の経緯は以下のとおりである。
同年 6月26日 :口頭審理陳述要領書提出(請求人)
同年 6月26日 :口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
同年 7月11日 :第1回口頭審理
同年 7月25日 :上申書提出(被請求人)
同年 7月27日 :上申書提出(請求人)
第3 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし9及び11ないし30に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし9及び11ないし30に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】硬化性熱硬化マトリックス樹脂で含浸された又はそれが注入された強化繊維の2つ以上の層;強化繊維の隣接する層間に配置された準安定熱可塑性粒子を含む繊維強化高分子複合材料であって、準安定熱可塑性粒子が、粒子が結晶化温度Tcまで加熱されると結晶化を起こす非晶質ポリマーフラクションを有する半結晶性熱可塑性材料の粒子であり、硬化性熱硬化マトリックス樹脂が硬化温度Tcureを有し、且つTcがTcureより低い、繊維強化高分子複合材料。続きを表示(全23行)【請求項2】窒素雰囲気下において10℃/分で50℃~250℃の温度範囲まで加熱すると、準安定熱可塑性粒子が、示差走査熱量分析(DSC)によって決定される発熱ピーク後に吸熱ピークを示す、請求項1に記載の複合材料。【請求項3】準安定熱可塑性粒子が、示差走査熱量分析(DSC)によって決定されるゼロより大きい融解エンタルピー(ΔHm)とゼロより大きい結晶化エンタルピー(ΔHc)とによって同時に特徴付けられ、ΔHm及びΔHcが、DSCサーモグラム中に存在する融解ピーク及び結晶化ピーク下の面積をそれぞれ積分することによって決定される、請求項1に記載の複合材料。【請求項4】硬化性熱硬化マトリックス樹脂で含浸された又はそれが注入された強化繊維の2つ以上の層;強化繊維の隣接する層間に配置された準安定熱可塑性粒子を含む繊維強化高分子複合材料であって、準安定熱可塑性粒子が半結晶性熱可塑性材料の粒子であり、準安定熱可塑性粒子が周囲温度(20℃~25℃)で化学的に安定な状態であるが、粒子が結晶化温度Tcまで加熱されると熱力学的に不安定になり低温結晶化を起こし、硬化性熱硬化マトリックス樹脂が硬化温度Tcureを有し、且つTcがTcureより低い、繊維強化高分子複合材料。【請求項5】硬化性熱硬化マトリックス樹脂が硬化温度Tcureを有し、及び準安定熱可塑性粒子が、Tcureより高い融解温度(Tm)を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の複合材料。【請求項6】Tcが50℃より高く、及びTcureが100℃~250℃の範囲である、請求項1~5のいずれか一項に記載の複合材料。【請求項7】Tcが80℃より高く、及びTcureが170℃~190℃の範囲である、請求項1~5のいずれか一項に記載の複合材料。【請求項8】Tcが100℃~200℃の範囲である、請求項1~5のいずれか一項に記載の複合材料。【請求項9】準安定熱可塑性粒子がポリアミドの粒子である、請求項1~8のいずれか一項に記載の複合材料。」
「【請求項11】準安定熱可塑性粒子が、複合材料中の総樹脂含有量を基準として2.5重量%~30重量%の量で存在する、請求項1~10のいずれか一項に記載の複合材料。【請求項12】他のポリマー粒子又は無機粒子を更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の複合材料。続きを表示(全51行)【請求項13】強化繊維の隣接する層間の領域が、Tcure未満の融解温度を有するポリマー粒子を全く含まない、請求項1~12のいずれか一項に記載の複合材料。【請求項14】強化繊維が連続的な一方向に配向された繊維である、請求項1~13のいずれか一項に記載の複合材料。【請求項15】強化繊維が織布又は多軸生地の形態である、請求項1~13のいずれか一項に記載の複合材料。【請求項16】強化繊維が炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1~15のいずれか一項に記載の複合材料。【請求項17】樹脂成分が、エポキシ樹脂、ビスマレイミド、ビニルエステル樹脂、シアネートエステル樹脂、フェノール樹脂、ベンズオキサジン、ホルムアルデヒド縮合樹脂、不飽和ポリエステル、アクリル、及びこれらの組み合わせから選択される1種以上の硬化性熱硬化マトリックス樹脂を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の複合材料。【請求項18】樹脂成分が1種以上のエポキシ樹脂を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の複合材料。【請求項19】1種以上の硬化性熱硬化マトリックス樹脂;準安定熱可塑性粒子;及び任意選択的に、硬化性熱硬化マトリックス樹脂のための硬化剤を含む硬化性樹脂組成物であって、準安定熱可塑性粒子が、粒子が結晶化温度Tcまで加熱されると結晶化を起こす非晶質ポリマーフラクションを有する半結晶性熱可塑性材料の粒子であり、硬化性熱硬化マトリックス樹脂が硬化温度Tcureを有し、且つTcがTcureより低い、硬化性樹脂組成物。【請求項20】1種以上の硬化性熱硬化マトリックス樹脂;準安定熱可塑性粒子;及び任意選択的に、硬化性熱硬化マトリックス樹脂のための硬化剤を含む硬化性樹脂組成物であって、準安定熱可塑性粒子が、周囲温度(20℃~25℃)で化学的に安定な状態であるが、結晶化温度Tcまで加熱すると熱力学的に不安定になり低温結晶化を起こす半結晶性熱可塑性材料の粒子であり、硬化性熱硬化マトリックス樹脂が硬化温度Tcureを有し、且つTcがTcureより低い、硬化性樹脂組成物。【請求項21】樹脂成分が、エポキシ樹脂、ビスマレイミド、ビニルエステル樹脂、シアネートエステル樹脂、フェノール樹脂、ベンズオキサジン、ホルムアルデヒド縮合樹脂、不飽和ポリエステル、アクリル、及びこれらの組み合わせから選択される1種以上の硬化性熱硬化マトリックス樹脂を含む、請求項19又は20に記載の硬化性樹脂組成物。【請求項22】樹脂成分が1種以上のエポキシ樹脂を含む、請求項19~21のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。【請求項23】アミン硬化剤を含む、請求項22に記載の硬化性樹脂組成物。【請求項24】準安定熱可塑性粒子がポリアミドの粒子である、請求項19~23のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。【請求項25】準安定熱可塑性粒子が、樹脂組成物の総重量を基準として2.5重量%~30重量%の量で存在する、請求項19~24のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。【請求項26】Tcが約50℃より高く、及びTcureが100℃~250℃の範囲内である、請求項19~25の何れか一項に記載の硬化性樹脂組成物。【請求項27】硬化性熱硬化マトリックス樹脂で含浸された強化繊維の2つ以上の層と、強化繊維の隣接する層間に配置された準安定熱可塑性粒子とを含む複合積層体を形成することであって、準安定熱可塑性粒子が、結晶化温度Tcで結晶化可能な非晶質ポリマーフラクションを有する半結晶性熱可塑性材料の粒子である、形成すること;及び複合積層体を硬化温度Tcureで硬化させることを含む、複合構造体を製造する方法であって、硬化温度Tcureまでの昇温中、準安定熱可塑性粒子が、Tcureより低い結晶化温度Tcで結晶化を起こした、方法。【請求項28】液体樹脂を浸透させることが可能な複数の繊維質層と、隣接する繊維質層間に配置された準安定熱可塑性粒子とを含むプリフォームを形成することであって、準安定熱可塑性粒子が、結晶化温度Tcで結晶化可能な非晶質ポリマーフラクションを有する半結晶性熱可塑性材料の粒子である、形成すること;プリフォームに、1種以上の硬化性熱硬化マトリックス樹脂を含む硬化性液体樹脂を注入すること;及び樹脂が注入されたプリフォームを硬化温度Tcureで硬化させることを含む、複合構造体を製造する方法であって、硬化温度Tcureまでの昇温中、準安定熱可塑性粒子が、Tcureより低い結晶化温度Tcで結晶化を起こした、方法。【請求項29】Tcが約50℃より高く、及びTcureが100℃~250℃の範囲内である、請求項27又は28に記載の方法。【請求項30】準安定熱可塑性粒子が、Tcureより高い融解温度(Tm)を有する、請求項27~29のいずれか一項に記載の方法。」
第4 請求人の主張の概要及び証拠方法
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1 請求人の主張の概要
請求人は、「特許第6944440号の特許請求の範囲の請求項1ないし9及び11ないし30に記載された発明についての特許を無効とする、審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由として、おおむね次の無効理由を主張している。
(1) 無効理由1(甲第1号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1ないし9、11、13、15ないし27、29及び30に係る発明は、下記の甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない発明であるから、それらの特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。
(2) 無効理由2(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし9及び11ないし30に係る発明は、下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、それらの特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。
2 証拠方法
請求人は、下記甲第1ないし18号証を証拠方法として提出した。
(以下、順に「甲1」のようにいう。)
第5 被請求人の主張の概要及び証拠方法
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1 被請求人の主張の概要
被請求人は、「本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、その理由として、請求人が主張する上記無効理由1ないし2はいずれも理由がない旨主張している。
2 証拠方法
被請求人は、下記乙第1ないし2号証(枝番等を含む)を証拠方法として提出した。
(以下、順に「乙1」のようにいう。)
第6 当審の判断
当審は、無効理由1及び2について検討した結果、以下のとおり、いずれの理由によっても本件特許を無効とすることはできないものと判断する。
1 主な証拠に記載された事項等
(1) 甲1の記載等
ア 甲1の記載事項
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本件特許の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1には、「繊維強化樹脂およびその製造方法並びに成形品」に関し、次の記載がある。
・「[請求項1] 強化繊維(A)、樹脂粒子(B)およびマトリックス樹脂(C)を含む組成物であって、強化繊維(A)が炭素繊維を含み、かつ樹脂粒子(B)が平均粒子径12~70μmを有する球状の樹脂粒子である組成物。」(請求の範囲)
・「技術分野
[0001] 本発明は、強化繊維を含む樹脂組成物、その製造方法および前記樹脂組成物で形成された成形品(又は繊維強化複合材料)に関する。
背景技術
[0002] 炭素繊維(カーボン繊維)およびマトリックス樹脂を含む炭素繊維強化複合材料(CFRP)は、強度、剛性などに優れ、各種用途(例えば、航空機の一次構造部材、自動車用部材、風車の羽根、各種電子機器の筐体など)において使用されている。こうした用途において特に重要な物性としては、主に物理的強度、例えば、衝撃強度、弾性率、曲げ強度、層間靭性等が挙げられる。
[0003] このような物性を改善するため、従来から、CFRPには、マトリックス樹脂(例えば、エポキシ樹脂成分)と炭素繊維の他に、各種フィラーを添加する工夫がなされてきた。
[0004] 代表的なフィラーのひとつに、シリカに代表される無機化合物粒子がある。こうしたフィラーは、それ自体、弾性率が高く、CFRPの弾性率や曲げ強度を向上させるには好適である。しかし、その一方で、マトリックス樹脂との界面における親和性が必ずしも良いとはいえず、結果として衝撃強度や層間靭性などの物性の低下を招いていた。
[0005] また、衝撃強度を改善するため、ゴム状の軟質材料を添加する方法も知られている。しかし、このような軟質材料では、シリカ等とは逆に弾性率や曲げ強度が下がってしまうという問題があった。
[0006] 一方、無機化合物とゴム状の軟質物質の中間的な材料として、熱可塑性樹脂の粉体を添加する方法も開発されつつある。
[0007] 例えば、特開2012-211310号公報(特許文献1)には、マトリックス樹脂、特定の脂環族ポリアミド樹脂を含む樹脂粒子、及び該樹脂粒子より平均粒径が大きい導電性粒子を含有する樹脂層と、前記樹脂層の両主面上にそれぞれ設けられた、炭素繊維を含有する炭素繊維層とを備え、前記樹脂層の平均厚さと前記樹脂粒子の平均粒径との差が12μm以下である、炭素繊維強化複合材料が開示されている。
[0008] この文献の複合材料では、樹脂層の厚みのばらつきに伴う層間靱性の低下を抑えるため、樹脂層における平均厚さと樹脂粒子の平均粒径との差を12μm以下にまで小さくしている。そして、このように差を小さくするためには、樹脂層における樹脂粒子の割合を必然的に大きくする必要がある。例えば、この文献では、樹脂層における樹脂粒子の割合は20~70体積%であるのが好ましいとされており、具体的な実施例では、いずれも、熱硬化性樹脂組成物155重量部に対して15重量部の割合で樹脂粒子を使用している。
[0009] しかし、このように、樹脂粒子の配合割合が大きくなると、物性低下を生じさせやすくなる。また、マトリックス樹脂と樹脂粒子との混合物の粘度(チクソトロピー性)が高くなるなどにより、炭素繊維との複合化における作業性が低下しやすく、複合化そのものが困難になる場合もある。
先行技術文献
特許文献
[0010]特許文献1:特開2012-211310号公報(特許請求の範囲、[0013]、[0121]、実施例)
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0011] 本発明の目的は、強化繊維(特に炭素繊維)による補強効果を効率よく得ることができる樹脂組成物、その製造方法、および前記樹脂組成物の成形品を提供することにある。
[0012] 本発明の他の目的は、樹脂粒子の添加量が少なくても、強化繊維による補強性能を有効に発揮できる樹脂組成物、その製造方法、および前記樹脂組成物の成形品を提供することにある。
[0013] 本発明のさらに他の目的は、層間靱性に加えて、強化繊維で形成された繊維集合体内部での靱性も向上できる樹脂組成物、その製造方法、および前記樹脂組成物の成形品を提供することにある。
課題を解決するための手段
[0014] 前記の通り、樹脂粒子により十分な層間靱性の向上効果を得るには、樹脂層の厚みと樹脂粒子の大きさ(平均径)との差を小さくする(さらには、マトリックス樹脂における樹脂粒子の割合を比較的大きくする)必要があるものと考えられており、従来、樹脂粒子の形状や粒径そのものが、強化繊維による補強性能にどのような影響を与えるかについての検討がなされていないのが現状である。
[0015] なお、特許文献1では、樹脂粒子の製造方法として各種方法が記載され、好ましい方法として、化学的粉砕法を挙げ、実施例でも化学的粉砕法で合成した樹脂粒子を使用している。そして、化学的粉砕法では、後述のように、比較的丸みを帯びるものの、その表面に凹凸がみられる形状(いわゆるじゃがいも状又はポテト状)の粒子が得られ、真球状の粒子を得ることはできない。また、特許文献1では、種々のポリアミド樹脂粒子を使用しているが、粒子における平均粒径および形状を組み合わせて選択するという認識は全くない。
[0016] このような中、本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、マトリックス樹脂および補強繊維を含む組成物に添加する樹脂粒子として、特定の形状(すなわち、球状)と特定の平均粒子径とを組み合わせて有する特定の樹脂粒子を選択することにより、強化繊維による補強機能(例えば、層間靱性の向上効果)を有効に発現できること、特に、樹脂粒子の添加割合を比較的小さくしても、十分な補強機能が得られることを見出し、本発明を完成した。
[0017] すなわち、本発明の組成物(繊維強化複合材料用組成物)は、強化繊維(A)、樹脂粒子(B)およびマトリックス樹脂(C)を含む組成物であって、樹脂粒子(B)が平均粒子径12~70μmを有する球状の樹脂粒子の組成物である。また、樹脂粒子(B)の平均粒子径は、15~60μm程度であってもよい。さらに、樹脂粒子(B)の平均粒子径は、強化繊維(A)の平均繊維径の1~10倍程度であってもよい。
[0018] また、本発明の組成物は、強化繊維(A)、樹脂粒子(B)およびマトリックス樹脂(C)を含む組成物であって、樹脂粒子(B)が、前記強化繊維(A)の平均繊維径よりも小さい粒径を有する球状の樹脂小粒子又は樹脂微小粒子(B1)と、前記強化繊維(A)の平均繊維径以上の粒径を有する球状の樹脂大粒子又は樹脂粗大粒子(B2)とを含んでいてもよい。前記樹脂小粒子(B1)は、粒度分布が1~5μmの樹脂小粒子(B1a)を含んでいてもよい。前記樹脂大粒子(B2)は、粒度分布10~30μmの樹脂大粒子(B2a)を含んでいてもよい。前記樹脂小粒子(B1a)と前記樹脂大粒子(B2a)との重量割合は、前者/後者=5/95~50/50程度であってもよい。前記樹脂小粒子(B1a)及び樹脂大粒子(B2a)の総量は、樹脂粒子(B)全体に対して50重量%以上であってもよい。この組成物において、70μmを超える粒径を有する樹脂粒子の割合は、樹脂粒子(B)全体に対して20重量%以下であってもよい。
[0019] このような組成物において、強化繊維(A)は、代表的には、炭素繊維を含んでいてもよい。また、樹脂粒子(B)(樹脂小粒子(B1)及び樹脂大粒子(B2))はポリアミド樹脂粒子(又は樹脂粒子(B)を構成する樹脂がポリアミド樹脂)であってもよい。特に、樹脂粒子(B)(樹脂小粒子(B1)及び樹脂大粒子(B2))は、脂環族ポリアミド樹脂粒子であってもよい。
[0020] 本発明の組成物において、樹脂粒子(B)の割合は、比較的少なくてもよく、例えば、樹脂粒子(B)およびマトリックス樹脂(C)の総量に対して15重量%以下であってもよい。また、マトリックス樹脂(C)は、熱硬化性樹脂成分であってもよい。
[0021] 代表的な組成物では、樹脂粒子(B)が平均粒子径20~40μmの真球状ポリアミド樹脂粒子であり、樹脂粒子(B)の平均粒子径が強化繊維(A)の平均繊維径の2~6倍であり、樹脂粒子(B)の割合が、樹脂粒子(B)およびマトリックス樹脂(C)の総量に対して1~5重量%であり、マトリックス樹脂(C)がエポキシ樹脂成分であってもよい。また、樹脂小粒子(B1)が平均粒子径1~5μmの真球状ポリアミド樹脂粒子であり、樹脂大粒子(B2)が平均粒子径10~30μmの真球状ポリアミド樹脂粒子であり、樹脂大粒子(B2)の平均粒子径が強化繊維(A)の平均繊維径の2~6倍であり、樹脂粒子(B)の割合が、樹脂粒子(B)およびマトリックス樹脂(C)の総量に対して3~15重量%であり、マトリックス樹脂(C)がエポキシ樹脂であってもよい。
[0022] 本発明には、強化繊維(A)に、樹脂粒子(B)およびマトリックス樹脂(C)を含む混合物を含浸させ、前記組成物を製造する方法も含まれる。
[0023] また、本発明には、組成物で形成された成形品(繊維強化複合材料、炭素繊維強化複合材料)も含まれる。このような成形品は、マトリックス樹脂(C)が熱硬化性樹脂成分であるとき、前記組成物の硬化処理品であってもよい。
[0024] 成形品において、樹脂粒子(B)は、強化繊維(A)の近傍に偏在していてもよい。特に、樹脂粒子(B)が樹脂小粒子(B1)と樹脂大粒子(B2)とを含み、かつ強化繊維(A)が繊維集合体を形成する場合、前記樹脂小粒子(B1)が前記繊維集合体内部の繊維間に偏在し、かつ前記樹脂大粒子(B2)が前記繊維集合体の表面とマトリックス樹脂との界面近傍に偏在していてもよい。このような形態で樹脂粒子(B)を含むことにより、強化繊維による補強機能を効率よく発揮させることができる。
[0025] 本発明では、樹脂粒子の中でも、特に、特定の形状および粒径を有する樹脂粒子(すなわち、樹脂粒子(B))を使用することにより、強化繊維による補強機能を向上又は改善できる。すなわち、このような特定の樹脂粒子は、強化繊維による補強機能を向上又は改善するための添加剤として機能する。
[0026] そのため、本発明は、強化繊維(A)[特に、炭素繊維を含む強化繊維(A)]、およびマトリックス樹脂(C)を含む組成物に添加し、強化繊維(A)の補強効果(強度向上効果)を向上又は改善(又は促進)するための添加剤であって、平均粒子径12~70μmを有する球状の樹脂粒子(B)で構成された添加剤も含む。また、本発明は、炭素繊維を含む強化繊維(A)、およびマトリックス樹脂(C)を含む組成物に添加し、強化繊維(A)の補強効果を向上又は改善するための添加剤であって、前記強化繊維(A)の平均繊維径よりも小さい粒径を有する球状の樹脂小粒子(B1)と、前記強化繊維(A)の平均繊維径以上の粒径を有する球状の樹脂大粒子(B2)とを組み合わせた添加剤も含む。
発明の効果
[0027] 本発明では、特定の形状および粒子径を有する特定の樹脂粒子を用いることにより、強化繊維(特に炭素繊維)による補強効果(例えば、層間靱性の向上効果など)を効率よく得ることができる。
[0028] 特に、本発明では、樹脂粒子の添加量が少なくても、強化繊維による補強性能を有効に発揮できる。換言すれば、十分な補強性能を少量の樹脂粒子により実現できる。また、樹脂粒子の添加量を低減できることで、マトリックス樹脂および樹脂粒子を含む組成物(又は混合物)における粘度上昇を抑えやすく、作業性を向上させやすい。さらに、樹脂粒子の添加量を少なくすることにより、異種材料の界面を小さくできるため、物性(例えば、繰り返し疲労耐性、長期クリープなど)における低下を効率よく抑制できる。
[0029] さらに、樹脂粒子自体の割合を低減できるため、成形品(繊維強化複合材料)において、マトリックス樹脂(および強化繊維)由来の特性又は物性を保持しやすい。そのため、本発明では、強化繊維による十分な補強効果を発現しつつ、マトリックス樹脂(および強化繊維)由来の特性を損なうことがない。
[0030] しかも、本発明では、意外なことに、一般的な樹脂粒子を用いた場合に比べて、強化繊維による補強効果自体をより一層向上できる場合がある。このような補強効果の向上は、添加量がより少量である場合にも実現できるため、極めて有用である。
[0031] なお、強化繊維による補強性能を有効に発現できる理由は定かではないが、特定の樹脂粒子を使用することにより、意外にも、マトリックス樹脂中において樹脂粒子を強化繊維の近傍に偏在させやすくなることもその一因であると思われる。すなわち、層間靱性などの向上効果は、マトリックス樹脂中に分散している樹脂粒子の中でも、主に強化繊維付近に存在する樹脂粒子によりもたらされる可能性がある。そのため、樹脂粒子を強化繊維近傍に偏在させることで、少ない添加量でも十分な補強機能を実現できるものと考えられる。
[0032] さらに、樹脂小粒子(B1)と樹脂大粒子(B2)とを組み合わせることにより、強化繊維が繊維集合体を形成する場合、前記樹脂小粒子(B1)が前記繊維集合体内部の繊維間に偏在し、かつ前記樹脂大粒子(B2)が前記繊維集合体の表面とマトリックス樹脂との界面近傍に偏在できるためか、層間靱性に加えて、前記繊維集合体内部での靱性も向上できる。
発明を実施するための形態
[0033] [組成物]
本発明の組成物は、強化繊維(強化繊維(A)などということがある)、樹脂粒子(樹脂粒子(B)などということがある)およびマトリックス樹脂(マトリックスを形成する樹脂)成分(マトリックス樹脂(C)などということがある)を含む。そして、本発明では、前記樹脂粒子として、特定の樹脂粒子を少なくとも含む樹脂粒子を使用することに特徴がある。
[0034] なお、このような組成物は、後述のように、繊維強化複合材料(又は繊維強化樹脂)を得るための組成物として用いることができるため、繊維強化複合材料用組成物(又は繊維強化樹脂用組成物)ということもできる。
[0035] 以下、各成分について詳述する。
[0036] (強化繊維)
強化繊維(補強繊維、繊維状強化材、繊維状フィラー、繊維状充填剤)は、マトリックス樹脂を補強(又は強化)する成分として用いることができる。
[0037] 強化繊維は、非炭素繊維で構成してもよいが、通常、炭素繊維を含む場合が多い。
[0038] 炭素繊維(カーボン繊維)としては、特に限定されず、ピッチ系繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維などのいずれであってもよい。
[0039] 非炭素繊維としては、無機繊維(例えば、ガラス繊維、ホウ素繊維、アルミノケイ酸繊維、酸化アルミニウム繊維、炭化ケイ素繊維、金属繊維、チタン酸カリウム繊維など)、有機繊維{例えば、ポリエステル繊維[例えば、芳香族ポリエステル繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維などのポリアルキレンアリレート繊維)など]、ポリアミド繊維[例えば、芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維など)など]、再生繊維(レーヨンなど)など}が挙げられる。
[0040] 強化繊維は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
[0041] なお、炭素繊維と非炭素繊維(例えば、ガラス繊維、有機繊維など)とを組み合わせる場合、強化繊維全体に対する炭素繊維の割合は、例えば、30体積%以上、好ましくは50体積%以上、さらに好ましくは70体積%以上(特に90体積%以上)であってもよい。
[0042] なお、強化繊維は、表面処理されていてもよい。
[0043] 強化繊維の平均径は、その種類にもよるが、0.5~1000μm(例えば、1~500μm)程度の範囲から選択でき、例えば、1~300μm(例えば、2~100μm)、好ましくは3~70μm、さらに好ましくは5~50μm(例えば、5~30μm)程度であってもよい。
[0044] 特に、炭素繊維(又は炭素繊維を含む強化繊維)の平均径(平均繊維径)は、例えば、1~100μm(例えば、1.5~70μm)、好ましくは2~50μm(例えば、2.5~40μm)、さらに好ましくは3~30μm、特に5~20μm(例えば、6~15μm)程度であってもよく、通常5~15μm(例えば、7~10μm)程度であってもよい。
[0045] なお、本発明では、繊維径は、慣用の方法で測定でき、例えば、電子顕微鏡を用いて10本以上の繊維径を測定し、平均値を算出することにより求めることができる。
[0046] 強化繊維は、短繊維、長繊維のいずれであってもよいが、特に長繊維であってもよい。長繊維は、連続繊維、不連続繊維のいずれであってもよく、連続繊維と不連続繊維とを組み合わせてもよい。
[0047] 強化繊維は、布帛(又は布)の形態であってもよい。布帛(繊維集合体)としては、例えば、織布(織物)、不織布、編布(編物)などが挙げられる。また、強化繊維は、後述のように、同方向(又は一方向)に揃えた(並べられた)態様で、樹脂粒子およびマトリックス樹脂とともに、組成物中に含まれていてもよい。
[0048] 布の組織は、布の種類に応じて適宜選択できる。例えば、織布の組織(織物組織)としては、平織、綾織、朱子織などが挙げられるが、特に限定されない。また、編布の組織(編物組織)としては、経編(例えば、トリコットなど)、緯編(例えば、平編、鹿の子編など)などが挙げられる。
[0049] (樹脂粒子)
樹脂粒子(樹脂粒子(B))を構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよいが、通常、熱可塑性樹脂であってもよい。
[0050] 熱可塑性樹脂としては、強化繊維の補強効果を向上(又は補助)できる樹脂であれば特に限定されず、例えば、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル樹脂など)、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
[0051] これらの中でも、特に、ポリアミド樹脂が好ましい。そのため、樹脂は、少なくともポリアミド樹脂で構成してもよい。なお、ポリアミド樹脂で構成された樹脂粒子は、特に、マトリックス樹脂としてのエポキシ樹脂との組み合わせにおいて、特に有効に補強効果を発揮しやすい。
[0052] ポリアミド樹脂としては、特に限定されず、例えば、脂肪族ポリアミド樹脂、脂環族ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂などが挙げられる。ポリアミド樹脂は、ホモポリアミド又はコポリアミドであってもよい。
[0053] 脂肪族ポリアミド樹脂のうち、ホモポリアミドとしては、脂肪族ジアミン成分[アルカンジアミン(例えば、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ドデカンジアミンなどのC4-16アルキレンジアミン、好ましくはC6-14アルキレンジアミン、さらに好ましくはC6-12アルキレンジアミン)など]と、脂肪族ジカルボン酸成分[例えば、アルカンジカルボン酸(例えば、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などのC4-20アルカンジカルボン酸、好ましくはC5-18アルカンジカルボン酸、さらに好ましくはC6-16アルカンジカルボン酸)など]とのホモ又はコポリアミド、ラクタム[ε-カプロラクタム、ω-ラウロラクタムなどの炭素数4~20(好ましくは炭素数4~16)程度のラクタムなど]又はアミノカルボン酸(例えば、ω-アミノウンデカン酸などのC4-20アミノカルボン酸、好ましくはC4-16アミノカルボン酸、さらに好ましくはC6-14アミノカルボン酸など)のホモ又はコポリアミド、脂肪族ジアミン成分と、脂肪族ジカルボン酸成分と、ラクタム又はアミノカルボン酸とのコポリアミドなどが含まれる。
[0054] 具体的な脂肪族ポリアミド樹脂としては、例えば、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド613、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド611、ポリアミド612、ポリアミド66/11、ポリアミド66/12、ポリアミド6/12/612などが挙げられる。
[0055] 脂環族ポリアミド樹脂としては、少なくとも脂環族ジアミン成分及び脂環族ジカルボン酸成分から選択された少なくとも一種を構成成分とするホモポリアミド又はコポリアミドなどが挙げられ、例えば、ジアミン成分及びジカルボン酸成分のうち、少なくとも一部の成分として脂環族ジアミン及び/又は脂環族ジカルボン酸を用いることにより得られる脂環族ポリアミドなどが使用できる。特に、ジアミン成分及びジカルボン酸成分として、脂環族ジアミン成分及び/又は脂環族ジカルボン酸成分と共に、前記例示の脂肪族ジアミン成分及び/又は脂肪族ジカルボン酸成分を併用するのが好ましい。このような脂環族ポリアミド樹脂は、透明性が高く、いわゆる透明ポリアミドとして知られている。
[0056] 脂環族ジアミン成分としては、ジアミノシクロヘキサンなどのジアミノシクロアルカン(ジアミノC5-10シクロアルカンなど);ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4’-アミノシクロヘキシル)プロパンなどのビス(アミノシクロアルキル)アルカン[ビス(アミノC5-8シクロアルキル)C1-3アルカンなど];水添キシリレンジアミンなどが挙げられる。脂環族ジアミン成分は、アルキル基(メチル基、エチル基などのC1-6アルキル基、好ましくはC1-4アルキル基、さらに好ましくはC1-2アルキル基)などの置換基を有していてもよい。また、脂環族ジカルボン酸としては、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸などのシクロアルカンジカルボン酸(C5-10シクロアルカン-ジカルボン酸など)などが挙げられる。
[0057] 代表的な脂環族ポリアミド樹脂としては、例えば、脂環族ジアミン成分[例えば、ビス(アミノシクロヘキシル)アルカンなど]と脂肪族ジカルボン酸成分[例えば、アルカンジカルボン酸(例えば、C4-20アルカンジカルボン酸成分など)など]との縮合物などが挙げられる。
[0058] 芳香族ポリアミド樹脂には、脂肪族ポリアミド樹脂において、脂肪族ジアミン成分及び脂肪族ジカルボン酸成分のうち少なくとも一方の成分が芳香族成分であるポリアミド、例えば、ジアミン成分が芳香族ジアミン成分であるポリアミド[例えば、芳香族ジアミン(メタキシリレンジアミンなど)と脂肪族ジカルボン酸との縮合物(例えば、MXD-6など)など]、ジカルボン酸成分が芳香族成分であるポリアミド[例えば、脂肪族ジアミン(トリメチルヘキサメチレンジアミンなど)と芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸など)との縮合物など]などが含まれる。また、芳香族ポリアミド樹脂は、ジアミン成分及びジカルボン酸成分が芳香族成分であるポリアミド[ポリ(m-フェニレンイソフタルアミド)など]の全芳香族ポリアミド(アラミド)であってもよい。
[0059] ポリアミド樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
[0060] 本発明では、前記特許文献1のように、特定の脂環族ポリアミド樹脂に限らず、汎用のポリアミド樹脂で構成された樹脂粒子であっても、有効に補強繊維の補強性能を高めることができる。なかでも、強化繊維(A)の近傍に樹脂粒子(B)を偏在させ易い点から、脂環族ポリアミド樹脂が特に好ましく、特に相分離現象の利用などにより作製された真球状の脂環族ポリアミド樹脂が特に好ましい。
[0061] ポリアミド樹脂の数平均分子量は、例えば、8000~200000、好ましくは9000~150000、さらに好ましくは10000~100000程度であってもよい。なお、数平均分子量は、ポリスチレンなどを標準物質とし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーなどにより測定できる。
[0062] ポリアミド樹脂が融点を有する場合、融点は、特に制限されないが、比較的高温の融点を有するポリアミド樹脂を好適に使用してもよい。このようなポリアミド樹脂は、組成物や成形品の製造において、球状を高いレベルで維持しやすいためか、強化繊維による補強効果を効率よく得やすい。このようなポリアミド樹脂(脂肪族ポリアミド樹脂、脂環族ポリアミド樹脂など)の融点は、例えば、150℃以上(例えば、155~350℃)、好ましくは160℃以上(例えば、165~300℃)、さらに好ましくは170℃以上(例えば、175~270℃)であってもよい。また、ポリアミド樹脂の融点(又は軟化点)は、組成物の成形温度[例えば、マトリックス樹脂としての硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂)の硬化温度など]以上(又は組成物の成形温度よりも高い温度)であってもよい。
[0063] なお、芳香族ポリアミド樹脂には、融点がない(非晶質である)場合があるが、溶融温度が高く、球状を維持しやすいため、上記のような融点範囲のポリアミド樹脂とともに、好適に使用することができる。
[0064] 樹脂粒子(B)の形状は、球状である。球状としては、真球状および真球状に準ずる形状[例えば、表面が滑らかで(又は表面に凹凸がなく)、かつ長径が短径よりもやや大きい(例えば、長径/短径=1.3/1~1/1、好ましくは1.2/1~1/1、さらに好ましくは1.1/1~1/1程度である)形状]などが挙げられる。中でも、真球状が好ましい。
[0065] なお、樹脂粒子の形状としては、不定形状、ジャガイモ状、球状などが知られているが、このような形状は、通常、粒子の製造方法に応じて決定される場合が多い。
[0066] 代表的な粒子の製造方法として、(1)冷凍粉砕法(例えば、樹脂を液体窒素などで冷却、脆化させた上で、物理的な力によって粉砕又は破砕し粉体化する方法など)、(2)化学粉砕法(例えば、樹脂を溶媒に溶解した後、貧溶媒に投下して析出させる方法など)、(3)重合法(例えば、懸濁重合やエマルジョン重合などにより粒子化しつつ重合する方法)、(4)強制乳化法{例えば、樹脂に対して非相溶な材料[例えば、水溶性高分子(ポリエチレングリコールなど)、糖類(多糖類、オリゴ糖など)などの水溶性材料]と樹脂とを溶融混練し、非相溶な材料(水溶性高分子)中に樹脂粒子が分散した分散体を得た後、この分散体から非相溶な材料を取り除く方法など}、(5)レーザー法(レーザーで瞬間的に溶融させ繊維状の樹脂を、減圧槽などとの組み合わせにより空中を飛翔させて、樹脂粒子を得る方法)などが知られている。
[0067] これらのうち、(3)重合法、(4)強制乳化法、(5)レーザー法などの界面張力を利用した方法により、球状粒子が得られる。そのため、樹脂粒子(B)は、特に、界面張力を利用した方法(例えば、(3)重合法、(4)強制乳化法、(5)レーザー法など)により製造された樹脂粒子であってもよい。
[0068] なお、(1)冷凍粉砕法では、破砕により破断面が形成されるため、球状とはなりえず、また、特許文献1において好ましいとされる(2)化学粉砕法では、冷凍粉砕法のように破断面はできず、表面は比較的丸みを帯びた形状となるものの、表面に凹凸ができ(いわゆるじゃがいも状又はポテト状となり)、同じく球状とはならない。
[0069] さらに、真球状の樹脂粒子において、表面が平滑な真球状の樹脂粒子が特に好ましい。例えば、平均粒子径が21μmである表面平滑な真球状粒子の場合、BET法による比表面積が0.2~0.4m2/g程度であるのに対して、表面平滑性の低いポテト状粒子の場合、BET比表面積は1.5~3m2/g程度である。好ましいBET比表面積は、粒子径に応じて選択できるが、例えば、0.05~2m2/g、好ましくは0.1~1m2/g程度である。
[0070] 樹脂粒子(B)の平均粒子径(平均粒径)は、12μm以上(例えば、13~85μm)の範囲から選択でき、例えば、14μm以上(例えば、15~80μm)、好ましくは16μm以上(例えば、17~75μm)、さらに好ましくは18μm以上(例えば、19~70μm)、特に20μm以上(例えば、21~60μm)であってもよく、通常12~70μm(例えば、15~60μm、好ましくは18~50μm、さらに好ましくは20~45μm、特に20~40μm、特に好ましくは20~30μm)程度であってもよい。なお、本発明では、平均粒子径は、個数平均一次粒子径で表され、JIS R9301-2-2に準拠して、レーザー回折散乱法などにより測定できる。
[0071] なお、上記範囲は平均粒子径であるが、上記粒径範囲の粒子径を有する樹脂粒子が効率よい補強効果に主に寄与するようである。そのため、樹脂粒子(B)は、上記粒径範囲(例えば、粒子径15~60μmの樹脂粒子など)を、全体に対して50%以上(例えば、60%以上)、好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、特に90%以上含む樹脂粒子であってもよい。
[0072] また、樹脂粒子(B)の平均粒子径は、強化繊維(A)の平均径に応じて選択することもでき、例えば、強化繊維(A)の平均径(平均繊維径)の0.5~15倍(例えば、0.7~12倍)、好ましくは1~10倍(例えば、1.5~8倍)、さらに好ましくは1.8~7倍(例えば、2~6倍)程度であってもよく、通常1.5~15倍(例えば、2~10倍)程度であってもよい。このような粒径の樹脂粒子を使用することで、強化繊維近傍に樹脂粒子を偏在させやすく、強化繊維による補強効果を効率よく高めやすい。
[0073] 本発明では、特に、樹脂粒子(B)は、強化繊維(A)の平均繊維径よりも小さい粒径を有する球状の樹脂小粒子又は径小樹脂粒子(B1)と、前記強化繊維(A)の平均繊維径以上の粒径を有する球状の樹脂大粒子又は径大樹脂粒子(B2)とを含むのが好ましい。
[0074] 樹脂小粒子(B1)の粒度分布(粒度又は粒径範囲)は、強化繊維(A)の平均繊維径よりも小さい範囲で分布していればよいが、強化繊維(A)の平均繊維径をD(μm)とするとき、粒径D-5~D-1μm程度の範囲から選択できる。具体的な粒度分布は、強化繊維の繊維径に応じて選択できるが、例えば、5μm以下(例えば、1~5μm)、好ましくは2~4μm、さらに好ましくは1~3μm程度であってもよい。本発明では、樹脂小微粒子(B1)は、1~5μmの粒度分布を有する樹脂大粒子(B1a)を含むのが特に好ましい。なお、本発明では、粒度分布も、レーザー回折散乱法などにより測定できる。
[0075] 樹脂小粒子(B1)の平均粒子径も前記粒度分布と同一の範囲から選択でき、例えば、5μm以下、好ましくは1~5μm(例えば、2~4μm)、さらに好ましくは1~3μm程度である。また、樹脂小粒子(B1)の平均粒子径は、強化繊維(A)の平均繊維径の0.05~0.9倍、好ましくは0.1~0.8倍、さらに好ましくは0.15~0.6倍(特に0.2~0.5倍)程度であってもよい。平均粒子径が大きすぎると、繊維間に樹脂小粒子が侵入できないためか、強化繊維の補強効果が低下する虞があり、平均粒子径が小さすぎても、凝集し易く、均一に分布させるのが困難なためか、強化繊維の補強効果が低下する虞がある。
[0076] 樹脂大粒子(B2)の粒度分布(粒度又は粒径範囲)は、強化繊維(A)の平均繊維径以上の範囲で分布していればよいが、強化繊維(A)の平均繊維径をD(μm)とするとき、粒径D~D+30μm(特にD+1~D+20μm)程度の範囲からできる。具体的な粒度分布は、強化繊維の繊維径に応じて選択できるが、例えば、10μm以上(例えば、10~70μm)、好ましくは10~50μm(例えば、12~40μm)、さらに好ましくは10~30μm(特に12~25μm)程度であってもよい。本発明では、樹脂大微粒子(B2)は、10~30μmの粒度分布を有する樹脂大粒子(B2a)を含むのが特に好ましい。
[0077] 樹脂大粒子(B2)の平均粒子径も前記粒度分布と同一の範囲から選択でき、例えば、10μm以上(例えば、10~70μm)、好ましくは10~50μm(例えば、12~40μm)、さらに好ましくは10~30μm(特に12~25μm)程度である。また、樹脂大粒子(B2)の平均粒子径は、強化繊維(A)の平均繊維径の1~10倍、好ましくは1.5~8倍、さらに好ましくは2~6倍(特に2.5~5倍)程度であってもよい。平均粒子径が大きすぎると、強化繊維の近傍(強化繊維が布帛を形成する場合、布帛の表面とマトリックス樹脂との界面近傍)に樹脂大粒子を偏在させるのが困難となる虞があり、平均粒子径が小さすぎても、強化繊維の近傍に樹脂大粒子を偏在させるのが困難となる虞がある。
[0078] 前記樹脂小粒子(B1a)と前記樹脂大粒子(B2a)との重量割合は、例えば、前者/後者=5/95~50/50、好ましくは10/90~40/60、さらに好ましくは15/85~30/70(特に20/80~25/75)程度である。樹脂小粒子(B1a)の割合が少なすぎると、強化繊維が布帛を形成する場合、繊維間で亀裂が発生し易くなり、逆に多すぎると、布帛とマトリックス樹脂との界面で剥離(亀裂)が発生し易くなる虞がある。
[0079] 前記樹脂小粒子(B1a)及び樹脂大粒子(B2a)の総量は、樹脂粒子(B)全体に対して50重量%以上であってもよく、例えば、50~100重量%、好ましくは60~95重量%、さらに好ましくは70~90重量%(特に75~85重量%)程度である。両粒子の総量が少なすぎると、強化繊維の補強効果が低下する虞がある。
[0080] 前記樹脂粒子(B)は、強化繊維の界面近傍に偏在させ易い点から、70μmを超える粒径を有する樹脂粒子の割合が少ないのが好ましい。70μmを超える粒径を有する樹脂粒子の割合は、樹脂粒子(B)全体に対して20重量%以下であってもよく、好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下であってもよい。このような大粒径の樹脂粒子の割合が多くなると、強化繊維の近傍に偏在する樹脂粒子の割合が少なくなり、強化繊維の補強効果が低下する虞がある。
[0081] (マトリックス樹脂)
マトリックス樹脂は、補強繊維(A)(さらには樹脂粒子(B))のマトリックスとなる樹脂成分であり、用途や所望の特性に応じて、適宜選択できる。
[0082] このようなマトリックス樹脂は、少なくとも樹脂(樹脂成分)で構成できる。樹脂としては、用途や所望の特性又は物性に応じて選択でき、熱可塑性樹脂[例えば、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリプロピレンなど)、ポリアミド樹脂(前記例示のポリアミド樹脂など)、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル樹脂など)、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂など]、熱硬化性樹脂(熱又は光硬化性樹脂)のいずれであってもよい。樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
[0083] 特に、本発明では、強度や熱的特性などの観点から、樹脂粒子(B)との組み合わせにおいて、熱硬化性樹脂を好適に使用できる。そのため、樹脂は、少なくとも熱硬化性樹脂で構成してもよい。
[0084] 熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アニリン樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
[0085] 熱硬化性樹脂の中でも、特に、エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂としては、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾール、ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジル-4-グリシジルオキシアニリンなど)、グリシジルエステル型エポキシ樹脂[例えば、ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸などの芳香族ジカルボン酸又はその水添物)のジグリシジルエステルなど]、アルケンオキシド類(例えば、ビニルシクロヘキセンジオキサイドなど)、トリグリシジルイソシアヌレートなどが挙げられる。
[0086] グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂などのビスフェノール類又はそのアルキレンオキシド付加体とエピクロロヒドリンとの反応物)、フェノール型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格含有フェノールノボラック樹脂、キシリレン骨格含有フェノールノボラック樹脂など)、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するグリシジルエーテル[例えば、1,5-ジ(グリシジルオキシ)ナフタレンなどのジ(グリシジルオキシ)ナフタレン、ビス[2,7-ジ(グリシジルオキシ)ナフチル]メタンなど]などの芳香族骨格を有するエポキシ樹脂(ポリグリシジルエーテル);アルカンジオールジグリシジルエーテル(例えば、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルなどのC2-10アルカンジオールジグリシジルエーテル)、ポリアルカンジオールジグリシジルエーテル(例えば、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルなどのポリC2-4アルカンジオージグリシジルエーテル)、アルカントリ乃至ヘキサオールのジ乃至ヘキサグリシジルエーテル(例えば、トリメチロールプロパンジ又はトリグリシジルエーテル、グリセリンジ又はトリグリシジルエーテルなどのC3-10アルカントリ又はテトラオールのジ又はトリグリシジルエーテル)などの脂肪族骨格を有するエポキシ樹脂(ポリグリシジルエーテル)などが挙げられる。
[0087] なお、ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加体において、ビスフェノール類のヒドロキシル基1モルに対するアルキレンオキシドの付加モル数は、例えば、1モル以上(例えば、1~20モル)、好ましくは1~15モル、さらに好ましくは1~10モル程度であってもよい。
[0088] エポキシ樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせもよい。
[0089] これらのエポキシ樹脂のうち、強度などの点で、芳香族骨格を有するエポキシ樹脂、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂などが好ましい。そのため、エポキシ樹脂は、芳香族骨格を有するエポキシ樹脂で少なくとも構成してもよく、芳香族骨格を有するエポキシエポキシ樹脂と他のエポキシ樹脂(例えば、脂肪族骨格を有するエポキシ樹脂など)とを組み合わせてもよい。
[0090] なお、エポキシ樹脂は、単官能性のエポキシ化合物(又は希釈剤)[例えば、モノグリシジルエーテル[例えば、アルキルグリシジルエーテル(例えば、2-エチルへキシルグリシジルエーテルなど)アルケニルグリシジルエーテル(例えば、アリルグリシジルエーテルなど)、アリールグリシジルエーテル(例えば、フェニルグリシジルエーテルなど)、アルケンオキサイド(例えば、オクチレンオキサイド、スチレンオキサイドなど)など]と組み合わせてエポキシ樹脂を構成してもよい。なお、エポキシ樹脂と単官能性のエポキシ化合物とを組み合わせる場合、これらの割合は、前者/後者(重量比)=例えば、99/1~50/50、好ましくは97/3~60/40、さらに好ましくは95/5~70/30程度であってもよい。
[0091] エポキシ樹脂(又はエポキシ樹脂および単官能性のエポキシ化合物との組成物)は、常温(例えば、20~30℃程度)において、固体状であってもよく、液体状であってもよい。なお、液体状のエポキシ樹脂の粘度(25℃)は、例えば、50~50000mPa・s、好ましくは100~40000mPa・s(例えば、200~35000mPa・s)、さらに好ましくは300~30000mPa・s(例えば、500~25000mPa・s)程度であってもよく、1000mPa・s以上(例えば、2000~50000mPa・s、好ましくは3000~30000mPa・s、さらに好ましくは5000~25000mPa・s)であってもよい。
[0092] 樹脂が熱硬化性樹脂である場合、マトリックス樹脂は、硬化剤や硬化促進剤を含んでいてもよい。すなわち、マトリックス樹脂は、樹脂(熱硬化性樹脂)と、この樹脂に対する硬化剤や硬化促進剤とで構成してもよい。
[0093] 硬化剤としては、樹脂の種類に応じて適宜選択でき、例えば、樹脂がエポキシ樹脂である場合の硬化剤としては、例えば、アミン系硬化剤、フェノール樹脂系硬化剤(例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂など)、酸無水物系硬化剤[例えば、脂肪族ジカルボン酸無水物(ドデセニル無水コハク酸など)、脂環族ジカルボン酸無水物(テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸など)、芳香族ジカルボン酸無水物(無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物など)など]、ポリメルカプタン系硬化剤、潜在性硬化剤(三フッ化ホウ素-アミン錯体、ジシアンジアミド、カルボン酸ヒドラジドなど)などが挙げられる。
[0094] アミン系硬化剤としては、例えば、芳香族アミン系硬化剤[例えば、ポリアミノアレーン(例えば、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミンなどのジアミノアレーン)、ポリアミノ-アルキルアレーン(例えば、ジエチルトルエンジアミンなどのジアミノ-アルキルアレーン)、ポリ(アミノアルキル)アレーン(例えば、キシリレンジアミンなどのジ(アミノアルキル)アレーン)、ポリ(アミノアリール)アルカン(例えば、ジアミノジフェニルメタンなどのジ(アミノアリール)アルカン)、ポリ(アミノ-アルキルアリール)アルカン(例えば、4,4’-メチレンビス(2-エチル-6-メチルアニリン)などのジ(アミノ-アルキルアリール)アルカン)、ビス(アミノアリールアルキル)アレーン(例えば、1,3-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル)]ベンゼン、1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル)]ベンゼンなど)、ジ(アミノアリール)エーテル(例えば、ジアミノジフェニルエーテルなど)、ジ(アミノアリールオキシ)アレーン(例えば、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼンなど)、ジ(アミノアリール)スルホン(例えば、ジアミノジフェニルスルホンなど)など]、脂肪族アミン系硬化剤(例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミンなど)、脂環族アミン系硬化剤(例えば、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、ノルボルナンジアミンなど)、イミダゾール類(例えば、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-へプタデシルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾールなどのアルキルイミダゾール;2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールなどのアリールイミダゾール)又はその塩(例えば、ギ酸塩、フェノール塩、フェノールノボラック塩、炭酸塩など)などが挙げられる。
[0095] 硬化剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。なお、硬化剤は、硬化促進剤として作用する場合もある。
[0096] これらのうち、特にアミン系硬化剤(例えば、芳香族アミン系硬化剤)を好適に使用してもよい。
[0097] 硬化剤の割合は、エポキシ樹脂の種類(エポキシ当量など)や硬化剤の種類などに応じて適宜選択できるが、例えば、エポキシ樹脂100重量部に対して、0.1~300重量部、好ましくは1~250重量部、さらに好ましくは3~200重量部(例えば、4~150重量部)、特に5~100重量部程度であってもよい。
[0098] 硬化促進剤もまた、樹脂の種類に応じて適宜選択でき、例えば、樹脂がエポキシ樹脂である場合の硬化促進剤としては、例えば、ホスフィン類(例えば、エチルホスフィン、プロピルホスフィン、トリアルキルホスフィン、フェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンなど)、アミン類(例えば、トリエチルアミン、ピペリジン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリエチレンジアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N-ジメチルピペラジンなどの第2~3級アミン類又はその塩など)などが挙げられる。硬化促進剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
[0099] 硬化促進剤の割合は、硬化剤の種類などに応じて適宜選択できるが、例えば、エポキシ樹脂100重量部に対して、0.01~100重量部、好ましくは0.05~50重量部、さらに好ましくは1~30重量部程度であってもよい。
[0100] 本発明の組成物(又は後述の成形品)において、樹脂粒子(B)およびマトリックス樹脂(C)(硬化剤や硬化促進剤を含む場合には、樹脂との総量)の総量に対する、樹脂粒子(B)の割合は、50重量%以下(例えば、0.1~40重量%程度)の範囲から選択でき、例えば、30重量%以下(例えば、0.5~25重量%)、好ましくは20重量%以下(例えば、1~18重量%)、さらに好ましくは15重量%以下(例えば、2~12重量%)程度であってもよく、10重量%以下(例えば、0.5~8重量%、好ましくは1~5重量%)であってもよい。
[0101] 特に、樹脂粒子(B)が樹脂小粒子(B1)と樹脂大粒子(B2)とを含む場合、樹脂粒子(B)の割合は、樹脂粒子(B)およびマトリックス樹脂(C)の総量に対して、20重量%以下(例えば、1~20重量%)、好ましくは17重量%以下(例えば、2~17重量%)、さらに好ましくは15重量%以下(例えば、3~15重量%)であってもよい。
[0102] また、本発明の組成物(又は後述の成形品)において、樹脂粒子(B)およびマトリックス樹脂(C)(硬化剤や硬化促進剤を含む場合には、樹脂との総量)の総量に対する、樹脂粒子(B)の割合は、30体積%以下(例えば、0.01~25体積%程度)の範囲から選択でき、例えば、20体積%以下(例えば、0.1~15体積%)、好ましくは10体積%以下(例えば、0.3~8体積%)、さらに好ましくは5体積%以下(例えば、0.5~3体積%)程度であってもよい。
[0103] 本発明では、樹脂粒子(B)の割合が小さくても、強化繊維による補強効果を十分に得ることができる。
[0104] なお、本発明の組成物(又は後述の成形品)において、樹脂粒子(B)およびマトリックス樹脂(C)の総量の割合は、強化繊維(A)100重量部に対して、例えば、1~70重量部、好ましくは2~50重量部、さらに好ましくは3~30重量部程度であってもよい。
[0105] なお、本発明の組成物は、本発明の効果を害しない範囲であれば、必要に応じて、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、用途などに応じて適宜選択できるが、例えば、安定剤、充填剤(非繊維状充填剤)、着色剤、分散剤、防腐剤、抗酸化剤、消泡剤などが挙げられる。これらの他の成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
[0106] なお、本発明の組成物は、前記特許文献1のように、導電性粒子を含んでいてもよく、通常、導電性粒子を含んでいなくてもよい。
[0107] (組成物の形態および製造方法)
本発明の組成物の形態は、強化繊維(A)、樹脂粒子(B)およびマトリックス樹脂(C)(さらには必要に応じて他の成分、以下同じ)を含んでいればよく、通常、強化繊維(A)に、樹脂粒子(B)およびマトリックス樹脂(C)を含む混合物(又は樹脂粒子(B)を含むマトリックス樹脂(C))が含浸(付着)した形態であってもよい。このような形態は、強化繊維(A)および樹脂粒子(B)が、マトリックス樹脂(C)中に分散した形態ということもできる。
[0108] また、このような組成物は、プリプレグ(成形用中間材料)であってもよい。例えば、マトリックス樹脂(C)が熱硬化性樹脂成分[例えば、エポキシ樹脂成分(エポキシ樹脂と硬化剤との組成物など)]である場合、組成物は、半硬化状であってもよい。
[0109] 具体的な形態としては、強化繊維(A)の形状などに応じて選択でき、例えば、(i)同方向(又は一方向)に揃えた複数の強化繊維(A)に、前記混合物が含浸した形態、(ii)布状の強化繊維(A)に前記混合物が含浸した形態などが挙げられる。なお、(i)の形態の組成物のうち、プリプレグとしては、UDプリプレグなどとして、(ii)の形態の組成物のうち、プリプレグとしては、クロスプリプレグなどとして知られている。
[0110] このような組成物は、前記の通り、強化繊維(A)、樹脂粒子(B)およびマトリックス樹脂(C)を混合することで製造でき、通常、強化繊維(A)に、樹脂粒子(B)およびマトリックス樹脂(C)を含む混合物を含浸(又は付着)させることで製造できる。
[0111] 樹脂粒子(B)が樹脂小粒子(B1)と樹脂大粒子(B2)とを含む場合、樹脂小粒子(B1)を含む粒子群と、樹脂大粒子(B2)を含む粒子群とを混合してもよい。
[0112] 具体的な含浸方法としては、(a)強化繊維(A)に液状の混合物を含浸させる方法、(b)混合物で形成されたシート状物と強化繊維(A)とを加圧下で接触させる方法などが挙げられる。
[0113] 方法(a)において、液状の混合物は、液状(常温で液状)のマトリックス樹脂(C)を用いてもよく、適当な溶媒(樹脂粒子(B)に対する貧溶媒)を用いて得てもよい。また、マトリックス樹脂(C)を溶融させることで、液状の混合物を得ることもできる。
[0114] [成形品]
本発明には、前記組成物の成形品(前記組成物で形成された成形品)も含まれる。このような成形品は、強化繊維(A)と、この強化繊維(A)を分散させるマトリックス樹脂(C)とを含んでいるため、複合材料[繊維強化複合材料(特に炭素繊維複合材料)]ということもできる。
[0115] 成形品の製造方法(成形方法)としては、前記組成物の形態や構成成分の種類などに応じて選択できる。例えば、マトリックス樹脂(C)が熱硬化性樹脂成分である場合には、前記組成物(詳細には、所望の成形品の形状に形成した前記組成物)を、硬化処理することで、成形品を得ることができる。すなわち、このような成形品は、マトリックス樹脂(C)が熱硬化性樹脂成分であり、前記組成物の硬化処理品ということができる。また、熱硬化性樹脂成分が、未硬化であるか、半硬化であるかなどに応じて、成形法を選択することもできる。成形品の形状は、一次元的形状(棒状など)、二次元的形状(シート状など)、三次元的形状のいずれであってもよい。
[0116] 具体的な成形方法としては、ハンドレイアップ成形法、SMC(シートモールディングコンパウンド)プレス成形法、RIMP(レジンインフュージョン)成形法、プリプレグプレス成形法、プリプレグオートクレーブ法、ワインディング法(フィラメントワインディング法、ピンワインディング成形法など)、引抜成形法、BMC(バルクモールディングコンパウンド)成形法などが挙げられる。
[0117] 以上のようにして、成形品が得られる。このような本発明の成形品(又は組成物)では、樹脂粒子(B)により、強化繊維(A)による補強機能(例えば、層間靱性など)を高めることができる。特に、本発明では、特定の形状および粒径を有する樹脂粒子(B)により、効率よく強化繊維(A)を補強できるようであり、樹脂粒子(B)の割合が比較的小さくても、十分な補強機能を実現できる。
[0118] この理由は定かではないが、本発明の成形品(又は組成物)では、樹脂粒子(B)が、成形品(又は組成物)に、マトリックス樹脂(C)中に均一に分散する形態で含まれるのではなく、マトリックス樹脂(C)の中でも、特に、強化繊維(A)の近傍(付近)に偏在して含まれていることもその一因であるものと考えられる。
[0119] 特に、樹脂小粒子(B1)及び樹脂大粒子(B2)を含む組成物では、樹脂小粒子(B1)と樹脂大粒子(B2)とが、それぞれ、異なる領域で強化繊維(A)の近傍に偏在することにより、補強機能をさらに向上していると推定できる。すなわち、炭素繊維及びエポキシ樹脂などの硬化樹脂を含む一般的なCFRPでは、未硬化の硬化樹脂(液体)の上に束状の炭素繊維で形成された織物を載置し、織物に硬化樹脂が浸透すると、硬化樹脂が浸透した織物の上にさらに硬化樹脂を塗布して織物を載置することを繰り返した後、加熱して硬化することにより製造される。得られたCFRPは、硬化樹脂で形成された層と、硬化樹脂を含む織物で形成された層とが交互に繰り返す構造を有している。樹脂大粒子(B2)は、硬化樹脂層と織布との界面近傍に偏在して硬化樹脂層と織物との間の亀裂を抑制するとともに、樹脂小粒子(B1)は、織物内部の繊維間に侵入して繊維間の亀裂(詳しくは、束状繊維の繊維間に侵入して亀裂を発生した後、交差する繊維束間に侵入して亀裂を発生すること)を抑制していると推定できる。
実施例
[0120] 以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例で用いた成分および実施例での各強度の測定方法は以下の通りである。
[0121] [樹脂粒子]
脂肪族ポリアミド粒子(A1):ポリアミド12の真球状粒子、平均粒子径25μm(粒子径12~70μm(特に15~60μm)の粒子の割合が90%以上、JIS R9301-2-2に準拠したレーザー回折散乱法((株)堀場製作所製「LA-920」)による測定値、他も同じ)、ポリアミド12(ダイセル・エボニック(株)製、「ベスタミドL1500」、融点178℃)および非相溶な材料として熱溶融性糖類を用い、溶融混練して強制乳化し、前記糖類を溶出して調製
脂肪族ポリアミド粒子(A2):ダイセル・エボニック(株)製「ベストジント2070」、ポリアミド12のジャガイモ状粒子(化学粉砕品)、平均粒子径8μm
脂肪族ポリアミド粒子(A3):ポリアミド12の真球状粒子、平均粒子径19μm、ポリアミド12(ダイセル・エボニック(株)製、「ダイアミドL1600」)および非相溶な材料としてソルビトールを用い、溶融混練して強制乳化し、ソルビトールを溶出して調製。粒度分布:1~5μmの粒子3.5重量%、10~30μmの粒子88.1重量%、70μm以上の粒子1重量%未満
脂肪族ポリアミド粒子(A4):ポリアミド12の真球状粒子、平均粒子径52μm、ポリアミド12(ダイセル・エボニック(株)製、「ダイアミドL1901」)および非相溶な材料としてソルビトールを用い、溶融混練して強制乳化し、ソルビトールを溶出して調製。粒度分布:1~5μmの粒子1.3重量%、10~30μmの粒子11.3重量%、70μm以上の粒子39.8重量%。
[0122] 脂環族ポリアミド粒子(B1):脂環族ポリアミドの真球状粒子、平均粒子径23μm(粒子径12~70μm(特に15~60μm)の粒子の割合が90%以上)、脂環族ポリアミド(ダイセル・エボニック(株)製、「トロガミドCX7323」、融点247℃)および非相溶な材料としてポリエチレングリコールを用い、溶融混練して強制乳化し、ポリエチレングリコールを溶出して調製。粒度分布:1~5μmの粒子3.1重量%、10~30μmの粒子85.3重量%、70μm以上の粒子1重量%未満
脂環族ポリアミド粒子(B2):脂環族ポリアミドの真球状粒子、平均粒子径36μm(粒子径12~70μm(特に15~60μm)の粒子の割合が90%以上)、脂環族ポリアミド(ダイセル・エボニック(株)製、「トロガミドCX7323」、融点247℃)および非相溶な材料としてポリエチレングリコールを用い、溶融混練して強制乳化し、ポリエチレングリコールを溶出して調製
脂環族ポリアミド粒子(B3):脂環族ポリアミドの不定形粒子、平均粒子径34μm、脂環族ポリアミド(ダイセル・エボニック(株)製、「トロガミドCX7323」、融点247℃)を冷凍粉砕して製造したもの
脂環族ポリアミド粒子(B4):脂環族ポリアミドの真球状粒子、平均粒子径11μm、脂環族ポリアミド(ダイセル・エボニック(株)製、「トロガミドCX7323」、融点247℃)および非相溶な材料としてポリエチレングリコールを用いた強制乳化法により製造したもの
脂環族ポリアミド粒子(B5):脂環族ポリアミドの真球状粒子、平均粒子径89μm、脂環族ポリアミド(ダイセル・エボニック(株)製、「トロガミドCX7323」、融点247℃)および非相溶な材料としてポリエチレングリコールを用い、溶融混練して強制乳化し、ポリエチレングリコールを溶出して調製
脂環族ポリアミド粒子(B6):脂環族ポリアミドの真球状粒子、平均粒子径5.1μm、脂環族ポリアミド(ダイセル・エボニック(株)製、「トロガミドCX7323」、融点247℃)および非相溶な材料としてポリエチレングリコールを用い、溶融混練して強制乳化し、ポリエチレングリコールを溶出して調製。粒度分布:1~5μmの粒子49.5重量%、10~30μmの粒子2.5重量%、70μm以上の粒子1重量%未満。
[0123] 芳香族ポリアミド粒子(C1):芳香族ポリアミドの真球状粒子、平均粒子径28μm(粒子径12~70μm(特に15~60μm)の粒子の割合が90%以上)、芳香族ポリアミド(ダイセル・エボニック(株)製、「トロガミドT5000」、非晶質、175℃において非溶融)および非相溶な材料としてポリエチレングリコールを用い、溶融混練して強制乳化し、ポリエチレングリコールを溶出して調製
芳香族ポリアミド粒子(C2):芳香族ポリアミドの不定形粒子、平均粒子径31μm、芳香族ポリアミド(ダイセル・エボニック(株)製「トロガミドT5000」、非晶質、175℃において非溶融)を冷凍粉砕して調製。
[0124] [層間剪断強度]
予亀裂を導入するため、後述する織物の6層目と7層目との間に、厚み25μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製「カプトン」)を挿入し、この積層物[織物12層、ポリイミドフィルム1層(織物の6層目と7層目との間に積層)の13層の積層物]を硬化させた。硬化後の積層物を、経糸方向が長手方向になるよう、長さ140mm、幅25mmに切り出し、試験片を得た。
[0125] そして、この試験片について、層間剪断強度を測定した。なお、測定には、3点曲げ試験用の治具(テンシロン万能試験機、「RTC-1350A」)を用い(長さ方向20mm、70mm、120mmの3点)、試験速度は0.5mm/分とした。
[0126] [曲げ強度]
硬化後の積層物を、経糸方向が長手方向になるよう、長さ80mm、幅15mmに切り出し、試験片を得た。そして、この試験片について、3点曲げ試験用の治具(テンシロン万能試験機、「RTC-1350A」)を用いて、3点曲げ試験(長さ方向20mm、40mm、60mmの3点)を行い、曲げ強度を測定した。なお、測定において、スパン間は60mmとし、試験速度は1mm/分とした。
[0127] (実施例1~4および比較例1~5)
マトリックス樹脂[エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、「jER828」)に対して、アミン系硬化剤(三菱化学(株)製、「jERキュアW」)を加えたもの]に対して、表1に示す割合(3重量%、5重量%、7重量%、又は9重量%)で樹脂粒子を添加し、ホットスターラーを用いて、100℃、600rpmの条件で24時間攪拌した。その後、さらに、真空容器中で1時間放置することで脱泡し、樹脂粒子を含むマトリックス樹脂を得た。
[0128] そして、ハンドレイアップ法により、炭素繊維(TC-33,HONLU TECHNOLOGY CO.LTD、平均繊維径約7μm)を用いて作製した織物(平織)を、得られた樹脂粒子を含むマトリックス樹脂に積層しつつ含浸し、積層物を得た。
[0129] 積層物は、それぞれの割合について、2種類、すなわち、織物を12層積層した積層物と、織物12層およびポリイミドフィルム1層の合計13層を積層した積層物とを作製した。
[0130] 各積層物を、約8MPaの圧力を負荷した状態で恒温槽に入れ、100℃で2時間および175℃で4時間放置し、硬化処理を行った。なお、得られた硬化物の厚みは、約2.8μmであった。
[0131] 得られた硬化物(硬化後の積層物)について、層間剪断強度、曲げ強度を測定した。
[0132] また、得られた硬化物について、マトリックス樹脂中の樹脂粒子の存在位置(分散形態)を観察した。なお、存在位置は、曲げ強度の測定に使用した試験片をエポキシ樹脂で包埋し、断面を研磨した後、光学顕微鏡で観察することにより行い、積層物(又は繊維)との界面近傍(エポキシ樹脂層と織物表面との界面近傍)に偏在している場合には「界面近傍」、偏在が見られず、マトリックス樹脂中に均一に分散しているものを「均一」とした。
[0133] 結果を表1に示す。なお、表1には、比較のため、樹脂粒子を用いなかった(又は樹脂粒子の割合が0重量%である)こと以外は、上記と同様にして作製した硬化物についての結果も合わせて示す。
[0134]
[表1]
[図:0001407425000001.jpg]
[0135] 表1の結果から明らかなように、実施例では、樹脂粒子の重量割合が最も小さい3重量%において、層間剥離強度および曲げ強度が大きくなるのに対して、比較例では7重量%のとき、これらの強度が最も大きくなった。すなわち、比較例では実施例に比べると、十分な強度を得るために多量の樹脂粒子を要することがわかった。しかも、実施例では、比較例よりも樹脂粒子が少量であるにもかかわらず、意外なことに、最大となる強度(特に層間剥離強度)が比較例に比べて大きくなった。
[0136] 特に、実施例1と比較例1の結果や、実施例2又は3と比較例3及び比較例4の結果から、平均粒径が本発明の範囲外であると、粒子の形状がジャガイモ状および不定形状である場合のみならず、真球状の場合でも、最大となる強度を含め、強度(特に層間剥離強度)が小さくなった。
[0137] また、実施例2又は3と比較例2の結果や、実施例4と比較例5の結果から、粒子が不定形であると、平均粒径を実施例と同様としても、同様に、最大となる強度を含めた強度(特に層間剥離強度)が小さくなった。
[0138] (実施例5~9、参考例1および比較例6~7)
マトリックス樹脂[エポキシ樹脂(jER828)に対して、アミン系硬化剤(jERキュアW)を加えたもの]に対して、表2に示す組成で合計割合(3重量%、5重量%、10重量%、15重量%、又は20重量%)で樹脂粒子を添加し、ホットスターラーを用いて、100℃、600rpmの条件で24時間攪拌した。その後、さらに、真空容器中で1時間放置することで脱泡し、樹脂粒子を含むマトリックス樹脂を得た。
[0139] そして、ハンドレイアップ法により、炭素繊維(TC-33)を用いて作製した織物(平織)を、得られた樹脂粒子を含むマトリックス樹脂に積層しつつ含浸し、織物を12層積層した積層物を得た。
[0140] 各積層物を、約8MPaの圧力を負荷した状態で恒温槽に入れ、100℃で2時間および175℃で4時間放置し、硬化処理を行った。なお、得られた硬化物の厚みは、約2.8μmであった。
[0141] 得られた硬化物(硬化後の積層物)について、曲げ強度を測定した。
[0142] 結果を表2に示す。なお、表2にも、比較のため、樹脂粒子を用いなかったこと以外は、上記と同様にして作製した硬化物についての結果も合わせて示す。
[0143]
[表2]
[図:0001407425000002.jpg]
[0144] 表2の結果から明らかなように、実施例では、曲げ強度が高かった。特に、樹脂小粒子と樹脂大粒子とを組み合わせた実施例5及び7~9では、樹脂粒子の重量割合が15重量%まで曲げ強度が向上した。一方、樹脂大粒子のみを使用した実施例6では、5重量%を超えると、曲げ強度が低下した。
産業上の利用可能性
[0145] 本発明の組成物は、繊維強化複合材料用の組成物として利用できる。このような複合材料は、種々の分野における構造部材(構造材料)、例えば、乗り物(例えば、飛行機、ヘリコプター、ロケット、自動車、バイク、自転車、電車、船、車いすなど)、人工衛星、風車、スポーツ用品(ゴルフのシャフト、テニスラケット)、筐体(ノートパソコンの筐体など)、医療分野の成形品(人工骨など)、ICトレイ、つり竿、橋脚などに適用できる。」
イ 甲1に記載された発明
甲1の記載を、特に実施例1に関して整理すると、甲1には次の発明が記載されていると認める。
「強化繊維(A)、樹脂粒子(B)3重量%、5重量%、7重量%又は9重量%およびマトリックス樹脂(C)を含むプレプリグであって、強化繊維(A)が炭素繊維(TC-33,HONLU TECHNOLOGY CO,LTD、平均繊維径約7μm)であり、かつ樹脂粒子(B)が脂肪族ポリアミド粒子(A1)であり、マトリックス樹脂(C)がエポキシ樹脂(三菱化学(株)製、「jER828」)に対して、アミン系硬化剤(三菱化学(株)製、「jERキュアW」)を加えたものであり、炭素繊維を用いて作製した織物(平織)を樹脂粒子(B)を含むマトリックス樹脂(C)に積層しつつ含浸し織物12層を積層した積層物又は織物12層およびポリイミドフィルム1層の合計13層を積層した積層物である、100℃で2時間および175℃で4時間硬化処理されるプレプリグ。」(以下、甲1実施例1発明A」という。)
「樹脂粒子(B)3重量%、5重量%、7重量%又は9重量%およびマトリックス樹脂(C)を含み、樹脂粒子(B)が脂肪族ポリアミド粒子(A1)であり、マトリックス樹脂(C)がエポキシ樹脂(三菱化学(株)製、「jER828」)に対して、アミン系硬化剤(三菱化学(株)製、「jERキュアW」)を加えたものである、甲1実施例1発明Aを得るための混合物。」(以下、甲1実施例1発明B」という。)
「甲1実施例1発明Aを100℃で2時間および175℃で4時間硬化処理して硬化物を得る方法。」(以下、甲1実施例1発明C」という。)
また、甲1の記載を、実施例2、3及び比較例3、4、6に関して整理すると、甲1実施例1発明AないしCと同様に、以下の発明を認定することができる。
「強化繊維(A)、樹脂粒子(B)3重量%、5重量%、7重量%又は9重量%およびマトリックス樹脂(C)を含むプレプリグであって、強化繊維(A)が炭素繊維(TC-33,HONLU TECHNOLOGY CO,LTD、平均繊維径約7μm)であり、かつ樹脂粒子(B)が脂環族ポリアミド粒子(B1)であり、マトリックス樹脂(C)がエポキシ樹脂(三菱化学(株)製、「jER828」)に対して、アミン系硬化剤(三菱化学(株)製、「jERキュアW」)を加えたものであり、炭素繊維を用いて作製した織物(平織)を樹脂粒子(B)を含むマトリックス樹脂(C)に積層しつつ含浸し織物12層を積層した積層物又は織物12層およびポリイミドフィルム1層の合計13層を積層した積層物である、100℃で2時間および175℃で4時間硬化処理されるプレプリグ。」(以下、甲1実施例2発明A」という。)
「樹脂粒子(B)3重量%、5重量%、7重量%又は9重量%およびマトリックス樹脂(C)を含み、樹脂粒子(B)が脂環族ポリアミド粒子(B1)であり、マトリックス樹脂(C)がエポキシ樹脂(三菱化学(株)製、「jER828」)に対して、アミン系硬化剤(三菱化学(株)製、「jERキュアW」)を加えたものである、甲1実施例2発明Aを得るための混合物。」(以下、甲1実施例2発明B」という。)
「甲1実施例2発明Aを100℃で2時間および175℃で4時間硬化処理して硬化物を得る方法。」(以下、甲1実施例2発明C」という。)
「強化繊維(A)、樹脂粒子(B)3重量%、5重量%、7重量%又は9重量%およびマトリックス樹脂(C)を含むプレプリグであって、強化繊維(A)が炭素繊維(TC-33,HONLU TECHNOLOGY CO,LTD、平均繊維径約7μm)であり、かつ樹脂粒子(B)が脂環族ポリアミド粒子(B2)であり、マトリックス樹脂(C)がエポキシ樹脂(三菱化学(株)製、「jER828」)に対して、アミン系硬化剤(三菱化学(株)製、「jERキュアW」)を加えたものであり、炭素繊維を用いて作製した織物(平織)を樹脂粒子(B)を含むマトリックス樹脂(C)に積層しつつ含浸し織物12層を積層した積層物又は織物12層およびポリイミドフィルム1層の合計13層を積層した積層物である、100℃で2時間および175℃で4時間硬化処理されるプレプリグ。」(以下、甲1実施例3発明A」という。)
「樹脂粒子(B)3重量%、5重量%、7重量%又は9重量%およびマトリックス樹脂(C)を含み、樹脂粒子(B)が脂環族ポリアミド粒子(B2)であり、マトリックス樹脂(C)がエポキシ樹脂(三菱化学(株)製、「jER828」)に対して、アミン系硬化剤(三菱化学(株)製、「jERキュアW」)を加えたものである、甲1実施例3発明Aを得るための混合物。」(以下、甲1実施例3発明B」という。)
「甲1実施例3発明Aを100℃で2時間および175℃で4時間硬化処理して硬化物を得る方法。」(以下、甲1実施例3発明C」という。)
「強化繊維(A)、樹脂粒子(B)3重量%、5重量%、7重量%又は9重量%およびマトリックス樹脂(C)を含むプレプリグであって、強化繊維(A)が炭素繊維(TC-33,HONLU TECHNOLOGY CO,LTD、平均繊維径約7μm)であり、かつ樹脂粒子(B)が脂環族ポリアミド粒子(B4)であり、マトリックス樹脂(C)がエポキシ樹脂(三菱化学(株)製、「jER828」)に対して、アミン系硬化剤(三菱化学(株)製、「jERキュアW」)を加えたものであり、炭素繊維を用いて作製した織物(平織)を樹脂粒子(B)を含むマトリックス樹脂(C)に積層しつつ含浸し織物12層を積層した積層物又は織物12層およびポリイミドフィルム1層の合計13層を積層した積層物である、100℃で2時間および175℃で4時間硬化処理されるプレプリグ。」(以下、甲1比較例3発明A」という。)
「樹脂粒子(B)3重量%、5重量%、7重量%又は9重量%およびマトリックス樹脂(C)を含み、樹脂粒子(B)が脂環族ポリアミド粒子(B4)であり、マトリックス樹脂(C)がエポキシ樹脂(三菱化学(株)製、「jER828」)に対して、アミン系硬化剤(三菱化学(株)製、「jERキュアW」)を加えたものである、甲1比較例3発明Aを得るための混合物。」(以下、甲1比較例3発明B」という。)
「甲1比較例3発明Aを100℃で2時間および175℃で4時間硬化処理して硬化物を得る方法。」(以下、甲1比較例3発明C」という。)
「強化繊維(A)、樹脂粒子(B)3重量%、5重量%、7重量%又は9重量%およびマトリックス樹脂(C)を含むプレプリグであって、強化繊維(A)が炭素繊維(TC-33,HONLU TECHNOLOGY CO,LTD、平均繊維径約7μm)であり、かつ樹脂粒子(B)が脂環族ポリアミド粒子(B5)であり、マトリックス樹脂(C)がエポキシ樹脂(三菱化学(株)製、「jER828」)に対して、アミン系硬化剤(三菱化学(株)製、「jERキュアW」)を加えたものであり、炭素繊維を用いて作製した織物(平織)を樹脂粒子(B)を含むマトリックス樹脂(C)に積層しつつ含浸し織物12層を積層した積層物又は織物12層およびポリイミドフィルム1層の合計13層を積層した積層物である、100℃で2時間および175℃で4時間硬化処理されるプレプリグ。」(以下、甲1比較例4発明A」という。)
「樹脂粒子(B)3重量%、5重量%、7重量%又は9重量%およびマトリックス樹脂(C)を含み、樹脂粒子(B)が脂環族ポリアミド粒子(B5)であり、マトリックス樹脂(C)がエポキシ樹脂(三菱化学(株)製、「jER828」)に対して、アミン系硬化剤(三菱化学(株)製、「jERキュアW」)を加えたものである、甲1比較例4発明Aを得るための混合物。」(以下、甲1比較例4発明B」という。)
「甲1比較例4発明Aを100℃で2時間および175℃で4時間硬化処理して硬化物を得る方法。」(以下、甲1比較例4発明C」という。)
「強化繊維(A)、樹脂粒子(B)3重量%、5重量%、7重量%又は9重量%およびマトリックス樹脂(C)を含むプレプリグであって、強化繊維(A)が炭素繊維(TC-33,HONLU TECHNOLOGY CO,LTD、平均繊維径約7μm)であり、かつ樹脂粒子(B)が脂環族ポリアミド粒子(B6)であり、マトリックス樹脂(C)がエポキシ樹脂(三菱化学(株)製、「jER828」)に対して、アミン系硬化剤(三菱化学(株)製、「jERキュアW」)を加えたものであり、炭素繊維を用いて作製した織物(平織)を樹脂粒子(B)を含むマトリックス樹脂(C)に積層しつつ含浸し織物12層を積層した積層物又は織物12層およびポリイミドフィルム1層の合計13層を積層した積層物である、100℃で2時間および175℃で4時間硬化処理されるプレプリグ。」(以下、甲1比較例6発明A」という。)
「樹脂粒子(B)3重量%、5重量%、7重量%又は9重量%およびマトリックス樹脂(C)を含み、樹脂粒子(B)が脂環族ポリアミド粒子(B6)であり、マトリックス樹脂(C)がエポキシ樹脂(三菱化学(株)製、「jER828」)に対して、アミン系硬化剤(三菱化学(株)製、「jERキュアW」)を加えたものである、甲1比較例6発明Aを得るための混合物。」(以下、甲1比較例6発明B」という。)
「甲1比較例6発明Aを100℃で2時間および175℃で4時間硬化処理して硬化物を得る方法。」(以下、甲1比較例6発明C」という。)
なお、「脂肪族ポリアミド粒子(A1)」、「脂環族ポリアミド粒子(B1)」、「脂環族ポリアミド粒子(B2)」、「脂環族ポリアミド粒子(B4)」、「脂環族ポリアミド粒子(B5)」、「脂環族ポリアミド粒子(B6)」については、甲1の[0121]及び[0122]を参照。
以下、「甲1実施例1発明A」、「甲1実施例2発明A」、「甲1実施例3発明A」、「甲1比較例3発明A」、「甲1比較例4発明A」、「甲1比較例6発明A」を総称して「甲1発明A」といい、「甲1実施例1発明B」、「甲1実施例2発明B」、「甲1実施例3発明B」、「甲1比較例3発明B」、「甲1比較例4発明B」、「甲1比較例6発明B」を総称して「甲1発明B」といい、「甲1実施例1発明C」、「甲1実施例2発明C」、「甲1実施例3発明C」、「甲1比較例3発明C」、「甲1比較例4発明C」、「甲1比較例6発明C」を総称して「甲1発明C」という。
(2) 甲2の記載事項
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本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲2には、「分散体及びそれを用いた成形体の製造方法」に関し、次の記載がある。
・「【請求項1】
樹脂成分(A)及び水溶性助剤成分(B)で構成された分散体であって、助剤成分(B)が、少なくともオリゴ糖(B1)で構成されている分散体。
【請求項2】
助剤成分(B)が、海島構造における連続相、または共連続相を形成する請求項1記載の分散体。
【請求項3】
樹脂成分(A)が熱可塑性樹脂で構成されている請求項1記載の分散体。
【請求項4】
樹脂成分(A)が、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ(チオ)エーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、セルロース誘導体、及び熱可塑性エラストマーから選択された少なくとも一種で構成されている請求項1記載の分散体。
【請求項5】
オリゴ糖(B1)が、樹脂成分(A)の熱変形温度よりも高い温度で融点又は軟化点を示すか、若しくは分解する請求項1記載の分散体。
【請求項6】
オリゴ糖(B1)が、二糖類、三糖類、四糖類、五糖類、六糖類、七糖類、八糖類、九糖類、及び十糖類から選択された少なくとも一種で構成されている請求項1記載の分散体。
【請求項7】
オリゴ糖(B1)が、少なくとも四糖類で構成されている請求項1記載の分散体。
【請求項8】
オリゴ糖(B1)が、(1)マルトテトラオース、(2)イソマルトテトラオース、(3)スタキオース、(4)セロテトラオース、(5)スコロドース、(6)リキノース、及び(7)パノースの還元末端に糖又は糖アルコールが結合したテトラオースから選択された少なくとも一種の四糖類で構成されている請求項1記載の分散体。
【請求項9】
オリゴ糖(B1)が、デンプン糖、ガラクトオリゴ糖、カップリングシュガー、フルクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖、キチンオリゴ糖及びキトサンオリゴ糖から選択された少なくとも一種で構成されている請求項1記載の分散体。
【請求項10】
オリゴ糖(B1)が四糖類を60重量%以上の割合で含有する請求項9記載の分散体。
【請求項11】
オリゴ糖(B1)の50重量%水溶液の粘度が、温度25℃でB型粘度計で測定したとき、1Pa・s以上である請求項1記載の分散体。
【請求項12】
助剤成分(B)が、さらに、オリゴ糖(B1)を可塑化するための水溶性可塑化成分(B2)を含む請求項1記載の分散体。
【請求項13】
可塑化成分(B2)の融点又は軟化点が、樹脂成分(A)の熱変形温度以下である請求項12記載の分散体。
【請求項14】
可塑化成分(B2)が、糖類及び糖アルコールから選択された少なくとも一種で構成されている請求項12記載の分散体。」
・「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂成分及び水溶性助剤成分とで構成され、樹脂成分を多孔体や粉粒体などの形態に加工するために有用な分散体(又は分散系を形成する樹脂組成物)、この分散体を用いた成形体の製造方法、及び樹脂と組み合わせて分散体を形成するための水溶性助剤に関する。」
・「【0007】
特開昭60-13816号公報には、ポリエチレングリコールと熱可塑性樹脂とを溶融撹拌した後に、水中に投入して両ポリマーを凝固させ、その後、水を用いて、ポリエチレングリコールを除去する熱可塑性樹脂粒子の製造方法が提案されている。特開昭61-9433号公報には、熱可塑性樹脂とポリエチレンオキサイドとを溶融撹拌した後に冷却させ、水を用いて、ポリエチレンオキサイドを除去する熱可塑性樹脂粒子の製造方法が開示されている。特開平9-165457号公報には、ポリビニルアルコール系樹脂、変性澱粉、ポリエチレンオキサイドなどの溶融形成可能な水溶性高分子と、熱可塑性樹脂とを混合して溶融成形物を得た後、水を用いて、成形物から水溶性高分子を除去する樹脂微粒子の製造方法が開示されている。
【0008】
しかし、これらの方法においても、樹脂と水溶性高分子との非相溶性が必要であるため、選択できる樹脂の組合せが限定されるだけでなく、得られる樹脂粒子の粒子径分布の均一性は十分ではない。さらに、これらの水溶性高分子は、水への溶解度が小さいため、溶解させるために大量の水が必要であるとともに、溶解速度が遅いため、生産性を著しく低下させる。さらにまた、このような水溶性高分子は、非天然物由来である場合が多いため、このような水溶性高分子を溶解した廃液は、環境に悪影響を及ぼす。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、糖類でありながら、樹脂成分と均一に混練可能である水溶性助剤成分(又は水溶性助剤)、およびこの水溶性助剤成分を用いた分散体(又は分散系を形成する樹脂組成物)を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、幅広い種類の樹脂成分を用いても、所定の成形体を工業的に有利に形成できる水溶性助剤成分(又は水溶性助剤)、およびこの水溶性助剤成分を用いた分散体(又は分散系を形成する樹脂組成物)を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、樹脂成分に対して助剤成分を高い割合で含有させても混練可能であり、かつ均一な相分離構造を形成できる水溶性助剤成分(又は水溶性助剤)、およびこの水溶性助剤成分を用いた分散体(又は分散系を形成する樹脂組成物)を提供することにある。
【0012】
本発明の別の目的は、水で容易に溶出できるだけでなく、環境への負荷を低減できる水溶性助剤成分(又は水溶性助剤)と、樹脂成分とで構成された分散体(又は分散系を形成する樹脂組成物)を用いた成形体の製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明のさらに別の目的は、孔径や粒子径が均一な成形体を製造できる方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、少なくともオリゴ糖で構成された助剤成分を、樹脂成分と組み合わせて分散体を形成すると、糖類でありながら、樹脂と均一に混練可能であり、幅広い種類の樹脂成分を用いて、均一な成形体を製造できることを見出し、本発明を完成した。」
・「【0058】
[水溶性助剤]
水溶性助剤は、少なくともオリゴ糖(B1)で構成された水溶性助剤成分(B)で構成され、樹脂と組み合わせて分散体を形成する。さらに、オリゴ糖の熱溶融特性を調整するために、水溶性助剤は可塑化成分(B2)をさらに含むのが好ましい。
【0059】
(B1)オリゴ糖
オリゴ糖(B1)は、2~10分子の単糖類が、グリコシド結合を介して脱水縮合したホモオリゴ糖と、少なくとも2種類以上の単糖類及び/又は糖アルコールが、2~10分子グリコシド結合を介して脱水縮合したヘテロオリゴ糖とに大別される。オリゴ糖(B1)としては、例えば、二糖類~十糖類が挙げられ、通常、二糖類~六糖類のオリゴ糖が使用される。オリゴ糖は、通常、常温で固体である。なお、これらのオリゴ糖は、無水物でもよい。また、オリゴ糖において、単糖類と糖アルコールとが結合していてもよい。これらのオリゴ糖は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、オリゴ糖は複数の糖成分で構成されたオリゴ糖組成物であってもよい。このようなオリゴ糖組成物であっても単にオリゴ糖という場合がある。
・・・(略)・・・
【0076】
一般的に、前記オリゴ糖は、天然物である多糖類の誘導体あるいはそれらの還元によって製造される天然物由来の製造物であるため、環境への負荷を低減できる。
【0077】
混練により、効果的に樹脂成分と助剤成分とを分散させるためには、オリゴ糖の粘度は高いのが望ましい。具体的には、B型粘度計を用いて温度25℃で測定したとき、オリゴ糖の50重量%水溶液の粘度は、1Pa・s以上(例えば、1~500Pa・s程度)、好ましくは2Pa・s以上(例えば、2~250Pa・s、特に3~100Pa・s程度)、さらに好ましくは4Pa・s以上(例えば、4~50Pa・s程度)、特に6Pa・s以上(例えば、6~50Pa・s程度)であり、高粘度オリゴ糖を用いることが望ましい。
【0078】
また、オリゴ糖(B1)の融点又は軟化点は、樹脂成分(A)の熱変形温度(例えば、JIS K 7206で規定されるビカット軟化点)より高いのが好ましい。なお、オリゴ糖の種類[例えば、還元デンプン糖化物などのデンプン糖など]によっては、融点又は軟化点を示さず、熱分解する場合がある。このような場合、分解温度をオリゴ糖(B1)の「融点又は軟化点」としてもよい。
【0079】
オリゴ糖(B1)の融点又は軟化点と、樹脂成分(A)の熱変形温度との温度差は、例えば、1℃以上(例えば、1~80℃程度)、好ましくは10℃以上(例えば、10~70℃程度)、さらに好ましくは15℃以上(例えば、15~60℃程度)である。オリゴ糖(B1)の融点又は軟化点は、樹脂成分(A)の種類などに応じて、70~300℃の範囲で選択でき、例えば、90~290℃、好ましくは100~280℃(例えば、110~270℃)、さらに好ましくは120~260℃(例えば、130~260℃)程度であってもよい。なお、一般にオリゴ糖の無水物は、高い融点又は軟化点を示す。例えば、トレハロースの場合、二水化物の融点は97℃であるが、無水物の融点は203℃である。オリゴ糖の融点又は軟化点が樹脂成分(A)の熱変形温度より高いと、溶融混練でのオリゴ糖の急激な粘度低下を防止できるだけでなく、オリゴ糖の熱劣化も抑制できる。
【0080】
更に、本発明では、水溶性助剤成分(B)において、オリゴ糖(B1)と、オリゴ糖(B1)を可塑化するための水溶性可塑化成分(B2)とを組み合わせることにより、樹脂成分(A)との混練において、水溶性助剤成分(B)の粘度を調整できる。
【0081】
(B2)可塑化成分
可塑化成分(B2)としては、オリゴ糖(B1)が水和して水飴状態となる現象を発現できるものであればよく、例えば、糖類、糖アルコールなどが挙げられる。これらの可塑化成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0082】
(糖類)
糖類としては、オリゴ糖(B1)を有効に可塑化するために、通常、単糖類及び/又は二糖類が使用される。これらの糖類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
・・・(略)・・・
【0088】
(糖アルコール)
糖アルコール(又は水溶性多価アルコール)としては、アルジトール(グリシトール)などの鎖状糖アルコールであってもよく、イノシットなどの環式糖アルコールであってもよいが、通常は、鎖状糖アルコールが使用される。これらの糖アルコールは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0089】
鎖状糖アルコールとしては、テトリトール(トレイトール、エリスリトールなど)、ペンチトール[ペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール(アドニトール)、キシリトール、リキシトールなど]、ヘキシトール[ソルビトール、マンニトール、イジトール、グリトール、タリトール、ズルシトール(ガラクチトール)、アロズルシトール(アリトール)、アルスリトール]、ヘプチトール、オクチトール、ノニトール、デキトール、及びドデキトールなどが挙げられる。
【0090】
これらの糖アルコールのうち、エリスリトール、ペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、ズルシトール及びマンニトールが好ましい。糖アルコールは、エリスリトール、ペンタエリスリトール、キシリトールから選択された少なくとも1つの糖アルコールを含む場合が多い。
【0091】
可塑化成分(B2)は、常温(例えば、15~20℃程度)で液体(シロップ状)であってもよいが、取扱い性などの点から、通常、固体である場合が多い。助剤成分(B)をオリゴ糖(B1)と可塑化成分(B2)とで構成すると、オリゴ糖(B1)が明瞭な融点や軟化点を示さない熱分解性オリゴ糖であっても、有効に可塑化又は軟化できる。
【0092】
可塑化成分(B2)の融点又は軟化点は、通常、樹脂成分(A)の熱変形温度(例えば、JIS K 7206で規定されるビカット軟化点)以下である。なお、可塑化成分の中には、高融点(例えば200℃以上)を有するにも拘わらず、オリゴ糖と共存すると、実際の融点よりも低い温度で融解する物質が存在する。例えば、ペンタエリスリトールは、実際の融点(260℃)より低温(例えば160~180℃程度)でオリゴ糖に対する可塑化効果を発揮するとともに、自身も融解状態となる。このような高融点の可塑化成分は、単独では樹脂成分の熱変形温度において融解しないため利用できないが、オリゴ糖と組み合わせることによって有効に利用できる。なお、実際の融点より低温でオリゴ糖に対する可塑化効果を発揮する可塑化成分(例えば、ペンタエリスリトールなど)においては、オリゴ糖に対して可塑化効果を発揮する温度を、可塑化成分(B2)の「融点又は軟化点」としてもよい。
【0093】
助剤成分(B)の融点又は軟化点は、樹脂成分(A)の熱変形温度以上であってもよく、以下であってもよい。樹脂成分(A)及び助剤成分(B)は、少なくとも混練温度(又は成形加工温度)において溶融又は軟化すればよい。例えば、助剤成分(B)の融点又は軟化点と、樹脂成分(A)の熱変形温度との温度差は、0~100℃の範囲で選択してもよく、例えば、3~80℃(例えば3~55℃)、好ましくは5~60℃(例えば、5~45℃)、さらに好ましくは5~40℃(例えば、10~35℃)程度であってもよい。なお、助剤成分(B)の融点又は軟化点と、樹脂成分(A)の熱変形温度との温度差が小さい場合(例えば前記温度差が0~20℃程度である場合)、固化速度の高い助剤成分(B)(例えば、糖成分)により短時間で分散形態を固定化できるという利点がある。
【0094】
さらに、助剤成分(B)(例えば、オリゴ糖(B1)と可塑化成分(B2)とを含む助剤成分)のメルトフローレートは、例えば、樹脂成分(A)の熱変形温度(例えば、前記ビカット軟化点)より30℃高い温度でJIS K 7210で規定されるメルトフローレートを測定したとき、1以上(例えば、1~40程度)、好ましくは5以上(例えば、5~30程度)、さらに好ましくは10以上(例えば、10~20程度)であってもよい。
【0095】
助剤成分(B)において、可塑化成分(B2)の割合(重量比)は、溶融混練に伴って、可塑化成分が凝集などにより局在化せず、オリゴ糖(B1)を効率的に可塑化できる量、例えば、オリゴ糖(B1)/可塑化成分(B2)=99/1~50/50から選択でき、好ましくは95/5~60/40、さらに好ましくは90/10~70/30程度である。
【0096】
樹脂成分(A)と助剤成分(B)との相溶性は、特に制限されず、非相溶性であってもよく、相溶性であってもよい。樹脂成分と助剤成分とが相溶する場合、樹脂成分と助剤成分とが混練温度において均一な単一相を形成しても、混練後の冷却過程において、両者の表面張力と固化速度の相違により、樹脂成分と助剤成分とを相分離できる。樹脂成分と助剤成分とが相溶する場合においても、樹脂成分と助剤成分とを相分離できる理由としては、本発明の助剤成分が、低い表面張力を有するとともに、樹脂成分との混練温度においても比較的高粘度を保持でき、さらに低分子量であるために冷却時の固化速度が樹脂成分に比して極端に速いという特異な物性を有していることが挙げられる。」
・「【0106】
[成形体の製造方法]
本発明は、前記分散体から、助剤成分(B)を溶出し、樹脂成分(A)で構成された成形体(例えば、多孔体や粒子)を製造する方法も含む。
【0107】
分散体は、樹脂成分(A)と助剤成分(B)とを混練することにより調製でき、通常、混練した組成物を成形し、予備成形体を調製する場合が多い。混練は、慣用の混練機(例えば、単軸もしくは二軸スクリュー押出機、ニーダー、カレンダーロールなど)を用いて行なうことができる。混練時間は、例えば、10秒~1時間の範囲から選択してもよく、通常30秒~45分、好ましくは1~30分(例えば、1~10分)程度である。また混練に先立ち、樹脂成分および助剤成分は、予め凍結粉砕機などで粉体状に予備加工したり、ヘンシェルミキサー、タンブルミキサー、ボールミルなどで予備混練してもよい。
【0108】
成形法としては、押出成形、射出成形、ブロー成形、カレンダー成形などが挙げられ、通常、生産性や加工の容易さの点から、押出成形又は射出成形が使用される。予備成形体の形状は、特に制限されず、0次元的形状(粒状、ペレット状など)、1次元的形状(ストランド状、棒状など)、2次元的形状(板状、シート状、フィルム状など)、3次元的形状(管状、ブロック状など)などであってもよい。助剤成分の溶出性を考慮すると、ストランド状、棒状、シート状、又はフィルム状に加工することが望ましい。また、予備成形体は、成形過程において、他の基材を積層して加工してもよい。
【0109】
なお、混練温度や成形加工温度は、使用される原材料(例えば、樹脂成分及び助剤成分)に応じて適宜設定することが可能であり、例えば、90~300℃、好ましくは110~260℃、さらに好ましくは140~240℃(例えば、170~240℃)、特に170~230℃(例えば、180~220℃)程度である。助剤成分(オリゴ糖および可塑化成分)の熱分解を避けるため、混練温度や成形加工温度を230℃以下にしてもよい。
【0110】
分散系(樹脂成分と助剤成分とが分散した形態)は、混練及び/又は成形加工後、溶融物(例えば、混練物、予備成形体)を、適宜冷却することにより形成してもよい。例えば、冷却温度は、樹脂成分の熱変形温度、又は助剤成分の融点若しくは軟化点よりも少なくとも10℃程度低い温度であればよく、例えば、上記温度(樹脂成分の熱変形温度、又は助剤成分の融点若しくは軟化点)より10~100℃程度低い温度、好ましくは前記温度より15~80℃程度低い温度、さらに好ましくは前記温度より20~60℃程度低い温度であってもよい。具体的には、例えば、冷却温度は、樹脂成分又は助剤成分の種類に応じて5~150℃の範囲から選択でき、例えば、10~120℃(例えば、10~60℃)、好ましくは15~100℃(例えば、15~50℃)、さらに好ましくは20~80℃(例えば、20~40℃)程度であってもよい。冷却時間は、樹脂成分や助剤成分の種類、冷却温度等に応じて適宜設定でき、例えば、30秒~20時間の広い範囲から選択してもよく、例えば、45秒~10時間、好ましくは1分~5時間(例えば、1分~1時間)、さらに好ましくは1.5~30分程度であってもよい。冷却によって、樹脂成分と助剤成分とが相溶であっても、冷却工程において、表面張力、結晶化などの固化速度の相違などによって、分散系を形成でき、分散体を得られる。
【0111】
例えば、多孔体又は粒子を製造する場合、樹脂成分と助剤成分との相溶性、樹脂成分及び助剤成分の溶融粘度、混練条件(例えば、混練時間、混練温度など)、成形加工温度並びに冷却条件(例えば、冷却時間、冷却温度など)を調整することにより、多孔体の平均孔径又は粒子の平均粒子径を変化させることができ、空隙率が高いだけでなく、孔径均一性が非常に高い多孔体(特に連続通孔を有する多孔体)や、粒度分布幅が狭く、均一な粒子径を有する粒子を簡便に得ることができる。また、前記条件(例えば、粘度や冷却条件など)を調整することにより、目的物の形態も変化させることができ、例えば、樹脂成分と助剤成分とが同じ割合であっても、条件によって多孔体と粒子とを選択し得る。
【0112】
多孔体の平均孔径又は粒子の平均粒子径は、特に制限されず、用途に応じて0.1μm~1mm程度の範囲から選択でき、例えば、0.1~800μm(例えば0.1~500μm)、好ましくは0.1~100μm(例えば、0.5~80μm)、さらに好ましくは0.5~50μm(例えば、1~40μm)程度である。」
・「【0122】
実施例1~5及び比較例1~3
表1に示す組成の樹脂成分と助剤成分とで構成された樹脂組成物を、ブラベンダー(東洋精機(株)製、ラボプラストミル)により設定温度200℃で5分間溶融混練した後、30℃で10分間放置し、その後プレス機にて200℃、200kg/m2(約2000Pa)、3分間の条件で、厚さ1mmの板状の分散体を作製した。分散体は、200kg/m2(約2000Pa)の加圧下、30℃、3分間の条件で速やかに冷却し、その後60℃の湯水中に浸漬した。助剤成分が当初の含有量の5重量%程度に減少するまで、分散体を放置し、最終的に多孔体を作製した。なお、用いた各成分及び得られた多孔体の評価方法は以下の通りである。結果を表1に示す。」
・「【0128】
実施例6~19及び比較例4,5
表2に示す組成の樹脂成分、助剤成分を用いて、実施例1と同様の方法で分散体を作製した。得られた分散体は、速やかに30℃、200kg/m2(約2000Pa)、3分間の条件で冷却し、その後60℃の湯水中に浸漬し、樹脂粒子の懸濁溶液を得た。孔径0.45μmのポリビニリデンフルオライド製のメンブレン膜を用いて、この懸濁溶液より不溶分を分離することにより樹脂の微粒子を回収した。なお、用いた各成分や、相溶性及び得られた微粒子の評価方法は以下の通りである。結果を表2に示す。
【0129】
(樹脂成分)
助剤成分-4(オリゴ糖):デンプン糖(東和化成(株)製、還元デンプン糖化物PO-10、25℃においてB型粘度計で測定した50重量%水溶液の粘度:6.5Pa・s)
助剤成分-5(a)(可塑化成分):糖アルコール(和光純薬(株)製、ペンタエリスリトール)
助剤成分-5(b)(可塑化成分):糖アルコール(和光純薬(株)製、D(-)ソルビトール)。
・・・(略)・・・
【0134】
(樹脂粒子の数平均粒子径)
回収された樹脂微粒子を乾燥した後、走査型電子顕微鏡を用いて微粒子の形状観察を行った。また、乾燥した樹脂微粒子の適当量を純水中に再び分散させることにより懸濁液を調製し、レーザー回折型粒度分布計(島津製作所(株)製、SALD-2000J)を用いて数平均粒子径を測定した。また、樹脂微粒子の中で、無作為に抽出した100個の粒子に対して標準偏差及び変動係数を算出した。
・・・(略)・・・
【0137】
【表2】
[図:0001407425000003.jpg]
【0138】
実施例6~19では、樹脂成分と助剤成分とが、相溶系又は非相溶系のいずれにおいても、真球状の球状樹脂微粒子を得ることができた。参考のため、実施例13で得られたセルロースアセテートブチレート樹脂の球状微粒子の電子顕微鏡写真を図2に示す。
【0139】
また、助剤成分として、樹脂成分の熱変形温度で完全に可塑化しない糖アルコールであるペンタエリスリトールを用いた比較例4では、溶融混練により得られた分散体を水に浸漬して助剤成分を除去しても樹脂成分は微粒子化せず、孔径100μmを超える孔が存在するスポンジ状の塊状物が得られた。
【0140】
さらに、助剤成分として、融点が樹脂成分の熱変形温度より低い糖アルコールであるソルビトールを用いた比較例5では、溶融混練時に助剤成分の粘度が低すぎるために樹脂成分との混練を行うことができなかった。」
(3) 甲3の記載事項
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本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲3には、「熱可塑性樹脂微小球体の製法」に関し、次の記載がある。
・「本発明は、熱可塑性樹脂微小球体の製法に関するものである。
さらに詳しくは、焼結マイクロフィルター、焼結バッテリーセパレーター、流動浸漬用、静電塗装用、ゾル塗料用、ハイブリッド(ミクロ複合材料)用素材、固体潤滑剤、化粧品添加剤等の用途に供するに適した粒径0.01μm~100μmの熱可塑性樹脂微小球体の製法に関するものである。
従来、熱可塑性樹脂微小球体の製法としては、エマルジョン重合法によるラテックスの製造方法、機械的粉砕法、熱可塑性樹脂を溶剤に溶解させた後冷却する沈澱法等が知られている。
しかし、エマルジョン重合法は、粒径5μm以上の大粒径ラテックスを製造することが困難であり、冷凍凝集法、加圧凝集法等の複雑な手段を必要とする。 また、エマルジョン粒子をそのままの粒径で単離することが困難であり、凝集しやすい。 また、エマルジョン重合法では、物性改良の目的で、熱可塑性樹脂微小球体内部に充填剤、可塑剤等を添加することが困難である。
また、機械的粉砕法では、真球状の微小球体を得ることが困難であり、粒径のコントロールも困難である。
沈澱法は、長時間を要し、条件のコントロールが厳しく、粗大な塊状物ができ易く、収率もきわめて低い。
本発明は、上述した欠点の無い熱可塑性樹脂微小球体の製造方法を提供するものである。 即ち、本発明は、基材熱可塑性樹脂Aと、Aと相溶性のない成分Bを、Bが連続相でAが分散相を形成する混合比で、AとBの溶融温度以上で溶融混合し、該溶融混合物をそのまま冷却し、またはAとBの溶融温度以上で2時間以内の熱処理をした後冷却し、Aの貧溶媒でかつBの良溶媒である溶媒S中に浸漬して、該溶融混合物を崩壊せしめ、溶媒S中にBが溶解しAの粒子が分散したサスペンジョンを得て、該サスペンジョンからAの粒子を分離することを特徴とする粒径0.01μm~100μmの熱可塑性樹脂微小球体の製法である。」(第1頁左下欄下から第1行-第2頁左上欄第19行)
・「本発明において、AとBとを溶融混合する際、AとBの溶融温度以上で実施する必要がある。 そうしなければ、Aがきれいな微小球体となってB相中に分散する構造の混合物がえられない。
本発明において、溶融混合する方法は特に限定されない。例えば、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、単軸押出機、2軸押出機等によって実施できる。
本発明において、AとBの溶融混合物を冷却後そのままAの貧溶媒でかつBの良溶媒である溶媒S中に浸漬してもよい。 この場合、溶融混合物を冷却後クラッシャー等で粉砕したり、ペレタイザーでペレット化したり、押出機、ロール等でシート状に成形したものを溶媒S中に浸漬してもよい。
また、AとBの溶融混合物をAとBの溶融温度以上で、2時間以内せん断変形力の働かない状態で熱処理した後、溶媒S中に浸漬してもよい。
この場合、溶融状態で熱処理している間に、A相が更にきれいな真球状になり、また、A相同志が凝集し、粒径の大きな真球状に成長して行く。
従って、この熱処理時間のコントロールにより、粒径を容易にコントロールする事が出来る。」(第2頁右下欄下から第1行-第3頁右上欄第2行)
・「(実施例-1)
第1表に示した配合処方で、第2表に示した溶融混合条件で混練し、溶融混合物を冷却後、クラッシャーで粉砕し、第2表に示した溶媒S中に浸漬し、約30分間攪拌して、サスペンジョンを得た。このサスペンジョンをマイクロフィルターにより濾別し、第2表に示した粒径分布のシャープな6ナイロンの微小球体を得た。」(第3頁右下欄第3-10行)
・「
[図:0001407425000004.jpg]
」(第4頁左下欄)
(4) 甲6の記載事項
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甲6には、「実験成績証明書」として、おおむね次の事項が記載されている。
・「
[図:0001407425000005.jpg]
[図:0001407425000006.jpg]
[図:0001407425000007.jpg]
[図:0001407425000008.jpg]
[図:0001407425000009.jpg]
[図:0001407425000010.jpg]
[図:0001407425000011.jpg]
」(第1-7頁)
2 対比・判断
(1) 本件特許発明1について
ア 甲1実施例1発明Aとの対比・判断
(ア) 対比
本件特許発明1と甲1実施例1発明Aとを対比する。
甲1実施例1発明Aの「マトリックス樹脂(C)」は、「エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、「jER828」)」を含むものであるから、本件特許発明1の「硬化性熱硬化マトリックス樹脂」に相当する。
甲1実施例1発明Aは、「炭素繊維を用いて作製した織物(平織)を樹脂粒子(B)を含むマトリックス樹脂(C)に積層しつつ含浸し織物12層を積層した積層物又は織物12層およびポリイミドフィルム1層の合計13層を積層した積層物」であるから、本件特許発明1の「硬化性熱硬化マトリックス樹脂で含浸された又はそれが注入された強化繊維の2つ以上の層」との特定事項を満たし、甲1実施例1発明Aの「積層物」は、本件特許発明1の「繊維強化高分子複合材料」に相当する。
甲1実施例1発明Aの「脂肪族ポリアミド粒子(A1)」は、本件特許発明1の「準安定熱可塑性粒子」と、「熱可塑性粒子」との限りにおいて一致する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「硬化性熱硬化マトリックス樹脂で含浸された又はそれが注入された強化繊維の2つ以上の層;熱可塑性粒子を含む繊維強化高分子複合材料。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1-1-1>
「熱可塑性粒子」について、本件特許発明1は、「強化繊維の隣接する層間に配置された」と特定するのに対し、甲1実施例1発明Aにおいては、このような特定がない点
<相違点1-1-2>
「熱可塑性粒子」について、本件特許発明1は、「粒子が結晶化温度Tcまで加熱されると結晶化を起こす非晶質ポリマーフラクションを有する半結晶性熱可塑性材料の粒子」である「準安定熱可塑性粒子」と特定するのに対し、甲1実施例1発明Aにおいては、このような特定がない点
<相違点1-1-3>
「硬化性熱硬化マトリックス樹脂」について、本件特許発明1は、「硬化温度TCUREを有し、且つTcがTcureより低い」と特定するのに対し、甲1実施例1発明Aにおいては、このような特定がない点
以下、事案に鑑み、相違点1-1-2及び相違点1-1-3について検討する。
(イ) 相違点1-1-2についての判断
a 判断
甲1には、「粒子が結晶化温度Tcまで加熱されると結晶化を起こす非晶質ポリマーフラクションを有する半結晶性熱可塑性材料の粒子」である「準安定熱可塑性粒子」について記載されていない。
さらに、本件特許の明細書の【0019】のとおり、「準安定熱可塑性粒子」は、「ゼロより大きい吸熱性の融解エンタルピー(ΔHm)とゼロより大きい発熱性の結晶化エンタルピー(ΔHc)とによって同時に特徴付けられる粒子状の熱可塑性ポリマー」を指すが、甲1には、甲1実施例1発明Aの樹脂粒子が「ゼロより大きい吸熱性の融解エンタルピー(ΔHm)」及び「ゼロより大きい発熱性の結晶化エンタルピー(ΔHc)」を有することの記載はない。
そうすると、甲1実施例1発明Aが「ゼロより大きい吸熱性の融解エンタルピー(ΔHm)とゼロより大きい発熱性の結晶化エンタルピー(ΔHc)とによって同時に特徴付けられる粒子状の熱可塑性ポリマー」との事項を満たさず、「準安定熱可塑性粒子」であるとはいえない。
したがって、相違点1-1-2は実質的な相違点である。
また、甲1及び他の証拠には、甲1実施例1発明Aの「脂肪族ポリアミド粒子(A1)」を、「粒子が結晶化温度Tcまで加熱されると結晶化を起こす非晶質ポリマーフラクションを有する半結晶性熱可塑性材料の粒子」である「準安定熱可塑性粒子」とすることは記載も示唆もされていない。
したがって、甲1実施例1発明Aにおいて、相違点1-1-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
b 請求人の主張について
請求人は、請求書及び口頭審理陳述要領書において、以下の(a)及び(b)を述べ、相違点1-1-2は実質的な相違点ではないか、仮に相違点1-1-2が実質的な相違点であったとしても、当業者が容易に想到し得たものである旨主張する。
(a)・「イで述べたとおり、本件発明1の「準安定熱可塑性粒子」は、結晶性の「非水溶性熱可塑性樹脂」(例えば、ポリアミド樹脂)」、特に脂肪族ポリアミドや脂環式ポリアミド、と水溶性のマトリックス材料との溶融混合物を押し出して、冷却及び固化を迅速に(例えば冷却温度約0℃~約35℃の空冷で)行う溶媒を用いない溶融プロセスにより製造されてもよく、そして、このプロセスにより製造された粒子は、完全且つ安定な結晶性の発現が阻止され、準安定状態に保たれる準安定性熱可塑性粒子(結晶化しきれず非晶が残り「冷結晶化した後融解」する)になるのである。
これに対し、ウで述べたとおり、脂肪族ポリアミド粒子A1は、結晶性のポリアミド12(ダイセル・エボニック(株)製、「ベスタミドL1500」)と熱溶融性糖類とを、また、脂環族ポリアミド粒子B1、B2、B4~B6は、結晶性の脂環族ポリアミド(ダイセル・エボニック(株)製、「トロガミドCX7323」)とポリエチレングリコールとを、それぞれ溶融混練し、外気温程度で冷却(急冷)して分散体を得る強制乳化法で調製されたものであるところ、当該強制乳化法は、上述した冷却及び固化を迅速に行う溶媒を用いない溶融プロセスと同じである。
そうすると、これらの粒子も本件特許発明1の「準安定熱可塑性粒子」であるといえる。」(口頭審理陳述要領書第9頁第9行-第10頁第5行)
(b)・「甲6(第2頁第16~22行)において、甲1に係る国際特許出願の発明者(六田充輝)自身が陳述しているように、脂肪族ポリアミド粒子A1、脂環族ポリアミド粒子B1、B2、B4~B6は、当該発明者が甲2に記載された実施例8の方法を踏まえて調製したものである。
さらに、以下のとおり、脂肪族ポリアミド粒子A1、脂環族ポリアミド粒子B1、B2、B4~B6は、甲2に記載された実施例8の方法に準じて調製されたと当業者には推論される。
・・・(略)・・・
甲1には、脂肪族ポリアミド粒子A1が、「ポリアミド12の真球状粒子、平均粒子径25μm」であり、「非相溶な材料として熱溶融性糖類を用い、溶融混錬して強制乳化し、前記糖類を溶出して調製」([0121])したと記載され、そして、この強制乳化法が、「樹脂に対して非相溶な材料[例えば、…、糖類(多糖類、オリゴ糖など)などの水溶性材料]と樹脂とを溶融混錬し、非相溶な材料…中に樹脂粒子が分散した分散体を得た後、この分散体から非相溶な材料を取り除く方法」として「知られている」([0066])と記載されている。
しかも、外気温程度で冷却(急冷)して当該分散体を得ていると当業者に推論されるのは、(1)ウbで述べたとおりである。
さらに、「樹脂に対して非相溶な材料…、非相溶な材料…中」という記載からみて、「非相溶な材料…中」は、「樹脂に対して非相溶な材料…中」の「樹脂に対して」を省略したものと解されるところ、ウbで述べたように、冷却及び固化されている分散体では、非相溶な材料中に固体樹脂粒子が分散しているのであるから、当業者には、「樹脂に対して非相溶な材料」は「固体樹脂に対して非相溶な固体材料」を意味すると理解される。
ここで、甲1は、株式会社ダイセルが出資していたダイセル・エボニック株式会社の国際特許出願の国際公開である。
これに対し、甲1に係る出願の優先日(2013年6月9日)当時当業者にすでに知られていた甲2に記載された実施例8の方法では、ダイアミドL1600という「ナイロン12樹脂」の粒径28μmの(【0129】【0137】)「真球状の球状樹脂粒子を得ることができた」(【0138】)とある。
そして、当該方法は、ナイロン12樹脂と水溶性助剤成分(デンプン糖(オリゴ糖)及びD(-)ソルビトール(可塑化成分))を溶融混錬した後、30℃で冷却した分散体を得、これを湯水中に浸漬して懸濁溶液とし、この懸濁溶液より樹脂粒子を回収するというものである(【0128】)。ここで、冷却した分散体は固体であり、樹脂成分と水溶性助剤成分は相分離している(【0096】【0103】【0110】)。
しかも、甲2は、株式会社ダイセルの前身であるダイセル化学工業株式会社(2011年に社名変更)の出願の公開公報である。
そうすると、甲1の記載([0066][0121][0122])に接した当業者は、脂肪族ポリアミド粒子A1がこの記載に対応する甲2に記載された実施例8の方法に準じて調製されたものであると推論する。」(口頭審理陳述要領書第12頁第8行-第13頁第21行。なお、摘記に際し下線は省略した。)
・甲2の実施例8の方法に準じて調製された脂肪族ポリアミド粒子A1がゼロより大きいΔHmとゼロより大きいΔHcとを有し、「準安定熱可塑性粒子」であることは甲6により裏付けられていること(請求書第32頁第8-12行)。
・「甲1と甲2に記載された方法は、ともに真球状で同じような大きさのポリアミド12粒子を調製する方法である点で共通し、そして、甲2に記載された方法で用いられる技術的手段の大枠は甲1にも教示されているから、イで述べた大合議判決に従えば、甲1実施例1発明Aに甲2に記載された発明を適用する動機付けがある。すなわち、甲1の内容中の示唆、甲1実施例1発明A及び甲2に記載された発明の技術分野の関連性及び作用機能の共通性がその動機付けとなる。
したがって、甲1の教示に従い、脂肪族ポリアミド粒子A1を甲2に記載された実施例8の方法に準じて調製することは、当業者が直ちに想到することである。もっとも、動機付けの有無以前に、脂肪族ポリアミド粒子A1の調製を、甲1の教示に従う甲2に記載された実施例8の方法に準じて行うことは、当業者が遮宜なし得る設計的事項の範疇にある(いわゆる単なる設計変更等である)ともいえる。
そして、脂肪族ポリアミド粒子A1を当該方法に準じて調製して使用すれば、当業者は必然的に相違点1-1-2に到達する(甲6、甲14)。」(口頭審理陳述要領書第26頁第16行-第27頁第3行。なお、摘記に際し下線は省略した。)
上記主張について以下に検討する。
・(a)について
本件特許の明細書の【0043】には、「本開示の準安定ポリマー粒子は、溶媒を用いない溶融プロセスによって製造することができ、これによって製造プロセスは完全且つ安定な結晶性の発現を阻止し」とあるが、「溶媒を用いない溶融プロセス」であっても、溶融後に再結晶化が生じれば「完全且つ安定な結晶性の発現を阻止」できるとはいえないから、「溶媒を用いない溶融プロセス」であれば必ず「完全且つ安定な結晶性の発現を阻止」でき、本件特許の明細書の【0019】に記載の、「準安定熱可塑性粒子」の定義である「ゼロより大きい吸熱性の融解エンタルピー(ΔHm)とゼロより大きい発熱性の結晶化エンタルピー(ΔHc)とによって同時に特徴付けられる粒子状の熱可塑性ポリマー」であることを満たすとまではいえない。
また、甲1の脂肪族ポリアミド粒子は、その融点以上で溶融混練して強制乳化された後、固体として得られるものであるが、甲1には脂肪族ポリアミド粒子の製造において冷却及び固化を行ったとの記載はない。そして、甲1及び他の証拠をみても、強制乳化法であれば必ず溶融混練後に急冷するとまではいえないから、甲1の脂肪族ポリアミド粒子が、強制乳化法において溶融混練後に急冷されたものであるとまではいえない。
そうすると、甲1の脂肪族ポリアミド粒子の製造方法が「結晶性の非水溶性熱可塑性樹脂と水溶性のマトリックス材料との溶融混合物の冷却及び固化を迅速に行う」工程を有するとまではいえないから、甲1の脂肪族ポリアミド粒子の製造方法が当該工程を有することを前提とした、甲1の脂肪族ポリアミド粒子が「ゼロより大きい吸熱性の融解エンタルピー(ΔHm)とゼロより大きい発熱性の結晶化エンタルピー(ΔHc)とによって同時に特徴付けられる」との条件を満たす「準安定熱可塑性粒子」である、との主張には根拠がない。
よって、請求人の主張(a)は採用できない。
・(b)について
甲1の技術分野は「強化繊維を含む樹脂組成物、その製造方法および前記樹脂組成物で形成された成形品(又は繊維強化複合材料)」([0001])であるのに対し、甲2の技術分野は「樹脂成分及び水溶性助剤成分とで構成され、樹脂成分を多孔体や粉粒体などの形態に加工するために有用な分散体(又は分散系を形成する樹脂組成物)、この分散体を用いた成形体の製造方法、及び樹脂と組み合わせて分散体を形成するための水溶性助剤」(【0001】)であり、両者の技術分野が共通するとはいえない。
また、甲1の課題は「強化繊維による補強効果を効率よく得ること」([0011])であるのに対し、甲2の課題は「糖類でありながら、幅広い種類の樹脂成分を用いても、樹脂成分に対して助剤成分を高い割合で含有させても、樹脂成分と均一に混練可能であり、所定の成形体を工業的に有利に形成でき、また、水で容易に溶出できるだけでなく、環境への負荷を低減できる水溶性助剤成分、およびこの水溶性助剤と樹脂成分とで構成された分散体(又は分散系を形成する樹脂組成物)を提供すること」及び「孔径や粒子径が均一な成形体を製造できる方法を提供すること」(【0009】-【0013】)であって、両者の課題が共通するともいえない。
加えて、甲1のポリアミド粒子の製造方法において甲2は引用されていない。
さらに、甲1実施例1発明Aの「脂肪族ポリアミド粒子(A1)」の製造方法と甲2の実施例8の製造方法について検討するに、甲1実施例1発明Aの「脂肪族ポリアミド粒子(A1)」の製造方法においては「熱溶融性糖類」が「非相溶な材料」として用いられているのに対し、甲2の実施例8において使用される助剤成分(デンプン糖(オリゴ糖)及びD(-)ソルビトール(可塑化成分))は「相溶性」の材料として用いられており、両者の助剤成分の性質は異なる。また、使用される原料のアミドが、甲1実施例1発明Aの「脂肪族ポリアミド粒子(A1)」の製造方法においては「ポリアミド12」であるのに対し、甲2の実施例8の製造方法においては「ナイロン12樹脂」であり、両者は原料のアミドの点でも相違する。してみると、甲1実施例1発明Aの「脂肪族ポリアミド粒子(A1)」の製造方法と、甲2の実施例8の製造方法は技術的に相違する。
以上で述べたとおり、甲1と甲2とは技術分野も課題も共通するとはいえず、また、甲1において甲2が引用されていないこと、及び、甲1実施例1発明Aの「脂肪族ポリアミド粒子(A1)」の製造方法と甲2の実施例8の製造方法が技術的に相違するといえることからみて、甲1及び甲2の記載に接した当業者が、甲1実施例1発明Aの「脂肪族ポリアミド粒子(A1)」が甲2の実施例8の方法に準じて調製されたと推認するものとはいえない。ゆえに、甲1実施例1発明Aの「脂肪族ポリアミド粒子(A1)」が甲2の実施例8の方法に準じて調製されたことを前提とする甲6の記載が、甲1の再現実験であるとは到底いえない。また、甲1及び甲2の記載に接した当業者が、甲1実施例1発明Aの「脂肪族ポリアミド粒子(A1)」の製造方法において甲2に記載の方法を適用する動機付けがあるとはいえないし、甲1実施例1発明Aの「脂肪族ポリアミド粒子(A1)」の製造方法において甲2に記載の方法に準じて行うことが設計的事項の範疇にあるともいえない。
以下、念のため、甲6の第3頁7(1)の「脂肪族ポリアミド粒子A1の調製」における製造条件及び製造されたポリアミド粒子について検討する。
甲6に記載の製造条件は、甲1実施例1発明Aの「脂肪族ポリアミド粒子(A1)」の製造条件とは、以下の点で相違する。
・使用される助剤が、甲6に記載の方法では「デンプン糖(オリゴ糖)及びD(-)ソルビトール(可塑化成分)」であるのに対し、甲1実施例1発明Aの「脂肪族ポリアミド粒子(A1)」の製造方法では、具体的な構造が不明な「熱溶融性糖類」であり、糖アルコールが含まれない点
・甲6に記載の方法の溶融条件、及び、溶融後の冷却等の工程を、甲1実施例1発明Aの「脂肪族ポリアミド粒子(A1)」の製造方法が有しているかが、甲1の記載からは不明である点
してみると、甲6に記載の製造方法が、甲1実施例1発明Aの「脂肪族ポリアミド粒子(A1)」の製造方法であるとはいえず、当該方法によって甲1実施例1発明Aの「脂肪族ポリアミド粒子(A1)」と同一の物が得られるとはいえない。
また、製造されたポリアミド粒子について検討するに、甲6の第3頁7(1)には、得られたポリアミド粒子の平均粒子径が開示されるにとどまり、甲6で得られたポリアミド粒子が、甲1実施例1発明Aの「脂肪族ポリアミド粒子(A1)」の物性である「粒子径12~70μm(特に15~60μm)の粒子の割合が90%以上」を満たすことや、甲1実施例1発明Aの「脂肪族ポリアミド粒子(A1)」を含有させ、甲1の実施例1の方法に準じて作製された硬化物が、実施例1と同様の層間剥離強度及び曲げ強度を示すことは、甲6に記載されていない。そうすると、甲6の第3頁7(1)に記載の方法によって製造されたポリアミド粒子が、甲1実施例1発明Aの「脂肪族ポリアミド粒子(A1)」であるということはできない。
したがって、甲1実施例1発明Aの「脂肪族ポリアミド粒子(A1)」に関し甲6を参酌することはできない。
よって、請求人の主張(b)は採用できない。
(ウ) 相違点1-1-3についての判断
a 判断
甲1及び他の証拠をみても、甲1実施例1発明Aの結晶化温度Tc及び硬化温度TCUREの値が不明であるから、甲1実施例1発明Aが「硬化温度TCUREを有し、且つTcがTcureより低い」との特定事項を満たすとはいえない。
したがって、相違点1-1-3は実質的な相違点である。
また、甲1及び他の証拠には、甲1実施例1発明Aの「硬化性熱硬化マトリックス樹脂」を、「硬化温度TCUREを有し、且つTcがTcureより低い」とすることは記載も示唆もされていない。
したがって、甲1実施例1発明Aにおいて、相違点1-1-3に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
b 請求人の主張について
請求人は、請求書及び口頭審理陳述要領書において、上記(イ)b(b)と同様の主張に基づいて甲6を参酌すれば、甲1実施例1発明Aの結晶化温度Tcは165.9℃であるとし(請求書第32頁第13-15行及び口頭審理陳述要領書第12頁第5行-第13頁第21行)、そして、甲1に「100℃で2時間および175℃で4時間放置し、硬化処理を行った」とあり、続けて「得られた硬化物」について記載されていること、及び、甲15によれば甲1で硬化剤として使用されたjERキュアWの標準硬化条件は「100℃/2hrs+175℃/4hrs」であることから、甲1実施例1発明Aにおいて硬化が完了する温度は175℃であるとし、本件特許発明1の硬化温度TCUREは、「ポリマー鎖の化学的な架橋による高分子の固化温度」であって、甲1実施例1発明Aにおいて硬化が完了する温度である175℃である旨を述べて、甲1実施例1発明Aの結晶化温度Tcは硬化温度TCUREよりも低い旨主張する(口頭審理陳述要領書第18頁第17行-第21頁第19行)。また、請求人は、甲1において100℃でjERキュアWを添加したのは攪拌開始時ではなく、それによる硬化がおよそ起こらない攪拌終了時(間際)であると推論され、攪拌開始時にjERキュアWが添加されたとする被請求人の主張は誤りである旨も主張する(口頭審理陳述要領書第21頁第20行-第22頁第3行及び上申書)。
上記主張について検討する。
まず、甲6の参酌について検討するに、上記(イ)bの「(b)について」と同様の理由により、甲1実施例1発明Aの結晶化温度Tcとして甲6を参酌することはできない。
次に、硬化温度TCUREについて検討するに、本件特許の明細書の【0017】に「本開示において、「硬化する」又は「硬化」とは、ポリマー鎖の化学的な架橋による高分子材料の固化を指す。」とあることから、「硬化温度TCURE」とは、硬化が完了する温度に限らず、硬化が生じている温度のことを意味すると解される。
そして、上記主張において、甲1の実施例において100℃でjERキュアWを添加したのは、それによる硬化がおよそ起こらない攪拌終了時(間際)である(下線は説明のために付した。)とあることから、上記主張は、100℃でjERキュアWを添加すると硬化が起こることを前提としていると解される。そうすると、甲1の実施例の「100℃で2時間および175℃で4時間放置し、硬化処理を行った」との記載において100℃で硬化が起きているということもでき、甲1実施例1発明Aにおける「硬化温度TCURE」に相当する温度が、100℃及び175℃のいずれであるのかが不明であって、請求人が主張するように、甲1実施例1発明Aの「硬化温度TCURE」が175℃であるとはいえない。
よって、請求人の主張は採用できない。
(エ) まとめ
そうすると、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1実施例1発明Aであるとはいえないし、甲1実施例1発明A並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 甲1実施例2発明Aとの対比・判断
(ア) 対比
本件特許発明1と甲1実施例2発明Aとを対比する。
甲1実施例2発明Aの「マトリックス樹脂(C)」は、「エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、「jER828」)」を含むものであるから、本件特許発明1の「硬化性熱硬化マトリックス樹脂」に相当する。
甲1実施例2発明Aは、「炭素繊維を用いて作製した織物(平織)を樹脂粒子(B)を含むマトリックス樹脂(C)に積層しつつ含浸し織物12層を積層した積層物又は織物12層およびポリイミドフィルム1層の合計13層を積層した積層物」であるから、本件特許発明1の「硬化性熱硬化マトリックス樹脂で含浸された又はそれが注入された強化繊維の2つ以上の層」との特定事項を満たし、甲1実施例2発明Aの「積層物」は、本件特許発明1の「繊維強化高分子複合材料」に相当する。
甲1実施例2発明Aの「脂環族ポリアミド粒子(B1)」は、本件特許発明1の「準安定熱可塑性粒子」と、「熱可塑性粒子」との限りにおいて一致する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「硬化性熱硬化マトリックス樹脂で含浸された又はそれが注入された強化繊維の2つ以上の層;熱可塑性粒子を含む繊維強化高分子複合材料。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点2-1-1>
「熱可塑性粒子」について、本件特許発明1は、「強化繊維の隣接する層間に配置された」と特定するのに対し、甲1実施例2発明Aにおいては、このような特定がない点
<相違点2-1-2>
「熱可塑性粒子」について、本件特許発明1は、「粒子が結晶化温度Tcまで加熱されると結晶化を起こす非晶質ポリマーフラクションを有する半結晶性熱可塑性材料の粒子」である「準安定熱可塑性粒子」と特定するのに対し、甲1実施例2発明Aにおいては、このような特定がない点
<相違点2-1-3>
「硬化性熱硬化マトリックス樹脂」について、本件特許発明1は、「硬化温度TCUREを有し、且つTcがTcureより低い」と特定するのに対し、甲1実施例2発明Aにおいては、このような特定がない点
以下、事案に鑑み、相違点2-1-2及び相違点2-1-3について検討する。
(イ) 相違点2-1-2についての判断
a 判断
甲1には、「粒子が結晶化温度Tcまで加熱されると結晶化を起こす非晶質ポリマーフラクションを有する半結晶性熱可塑性材料の粒子」である「準安定熱可塑性粒子」について記載されていない。
さらに、本件特許の明細書の【0019】のとおり、「準安定熱可塑性粒子」は、「ゼロより大きい吸熱性の融解エンタルピー(ΔHm)とゼロより大きい発熱性の結晶化エンタルピー(ΔHc)とによって同時に特徴付けられる粒子状の熱可塑性ポリマー」を指すが、甲1には、甲1実施例2発明Aの樹脂粒子が「ゼロより大きい吸熱性の融解エンタルピー(ΔHm)」及び「ゼロより大きい発熱性の結晶化エンタルピー(ΔHc)」を有することの記載はない。
そうすると、甲1実施例2発明Aが「ゼロより大きい吸熱性の融解エンタルピー(ΔHm)とゼロより大きい発熱性の結晶化エンタルピー(ΔHc)とによって同時に特徴付けられる粒子状の熱可塑性ポリマー」との事項を満たさず、「準安定熱可塑性粒子」であるとはいえない。
したがって、相違点2-1-2は実質的な相違点である。
また、甲1及び他の証拠には、甲1実施例2発明Aの「脂環族ポリアミド粒子(B1)」を、「粒子が結晶化温度Tcまで加熱されると結晶化を起こす非晶質ポリマーフラクションを有する半結晶性熱可塑性材料の粒子」である「準安定熱可塑性粒子」とすることは記載も示唆もされていない。
したがって、甲1実施例2発明Aにおいて、相違点2-1-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
b 請求人の主張について
請求人は、請求書及び口頭審理陳述要領書において、以下の(a)及び(b)を述べ、相違点2-1-2は実質的な相違点ではないか、仮に相違点2-1-2が実質的な相違点であったとしても、当業者が容易に想到し得たものである旨主張する。
(a)・上記ア(イ)b(a)と同様の点。
(b)・「甲6(第2頁第16~22行)において、甲1に係る国際特許出願の発明者(六田充輝)自身が陳述しているように、脂肪族ポリアミド粒子A1、脂環族ポリアミド粒子B1、B2、B4~B6は、当該発明者が甲2に記載された実施例8の方法を踏まえて調製したものである。
さらに、以下のとおり、脂肪族ポリアミド粒子A1、脂環族ポリアミド粒子B1、B2、B4~B6は、甲2に記載された実施例8の方法に準じて調製されたと当業者には推論される。
・・・(略)・・・
そうすると、甲1の記載([0066][0121][0122])に接した当業者は、脂肪族ポリアミド粒子A1がこの記載に対応する甲2に記載された実施例8の方法に準じて調製されたものであると推論する。
・・・(略)・・・
脂環族ポリアミド粒子B1、B2、B4~B6の調製に関し、甲1には、「非相溶な材料としてポリエチレングリコールを用い」([0122])とあるが、この記載は、脂肪族ポリアミド粒子A1の「非相溶な材料として熱溶融性糖類を用い」([0121])という記載の「熱溶融性糖類」を単に「ポリエチレングリコール」に代えたものである。
しかも、トロガミドCX7323の融点は247℃であり([0122])、溶融混錬する温度も当然それ以上となるところ、脂環族ポリアミド粒子B1、B2、B4~B6の調製に際し、非相溶な材料としてポリエチレングリコールを用いるのは、甲2の記載「助剤成分(オリゴ糖および可塑化成分)の熱分解を避けるため、混錬温度…を230℃以下」(【0109】)とも整合する。
そうすると、当業者は、脂環族ポリアミド粒子B1、B2、B4~B6は、脂肪族ポリアミド粒子A1の調製に用いる非相溶な材料である「熱溶融性糖類」を「ポリエチレングリコール」に代えて調製されたものであると理解する。」(口頭審理陳述要領書第12頁第8行-第14頁第8行。なお、摘記に際し、下線は省略した。)
・甲2の実施例8の方法に準じて調製された脂肪族ポリアミド粒子B1、B2、B4~B6がゼロより大きいΔHmとゼロより大きいΔHcとを有し、「準安定熱可塑性粒子」であることは甲6により裏付けられていること(請求書第33頁第12-16行)。
(c)・「甲1実施例2発明Aの脂環族ポリアミド粒子B1が、甲2に記載された実施例8の方法に準ずるが非相溶な材料をポリエチレングリコールに代えて調製されたと当業者に推論されるのは(2)アbで述べたとおりであるが、さらに一方で、当業者は甲3に記載された実施例1の方法に準じて調製してみようともするから、仮相違点1-2は結局当業者に容易想到である。
・・・(略)・・・
甲1と甲3に記載された方法は、ともに真球状のポリアミド粒子を調製する方法である点で共通し、そして、甲3に記載された方法で用いられる技術的手段の大枠は甲1に教示されているから、イで述べた大合議判決に従えば、甲1実施例1発明Aに甲3に記載された発明を適用する動機付けがある。すなわち、甲1の内容中の示唆、甲1実施例1発明A及び甲3に記載された発明の技術分野の関連性及び作用機能の共通性がその動機付けとなる。
したがって、甲1の教示に従い、脂環族ポリアミド粒子B1を甲3に記載された実施例1の方法に準じて調製することは、当業者が直ちに想到することである。
もっとも、動機付けの有無以前に、脂環族ポリアミド粒子B1の調製を、甲1の教示に従う甲3に記載された実施例1の方法に準じて行うことは、当業者が適宜なし得る設計的事項の範疇にある(いわゆる単なる設計変更等である)ともいえる。
そして、脂環族ポリアミド粒子B1を当該方法に準じて調製して使用すれば、当業者は必然的に相違点2-1-2に到達する(甲6、甲14)。」(口頭審理陳述要領書第27頁第8行-第28頁第18行。なお、摘記に際し、下線は省略した。)
上記主張について以下に検討する。
・(a)について
上記ア(イ)bの「(a)について」と同様の理由により、請求人の当該主張は採用できない。
・(b)について
上記ア(イ)bの「(b)について」のとおり、「甲1の記載・・・に接した当業者は、脂肪族ポリアミド粒子A1がこの記載に対応する甲2に記載された実施例8の方法に準じて調製されたものであると推論する」との主張は採用できないから、当該主張に基づいて、「当業者は、脂環族ポリアミド粒子B1、B2、B4~B6は、脂肪族ポリアミド粒子A1の調製に用いる非相溶な材料である「熱溶融性糖類」を「ポリエチレングリコール」に代えて調製されたものであると理解する」ということはできない。
以下、甲1及び甲2の記載に接した当業者が、甲1実施例2発明Aの「脂環族ポリアミド粒子(B1)」が甲2の実施例8の方法に準じて調製されたと推認するかについて、さらに検討する。
上記ア(イ)bの「(b)について」のとおり、甲1と甲2とは技術分野も課題も共通するとはいえず、また、甲1において甲2は引用されていない。
加えて、甲1実施例2発明Aの「脂環族ポリアミド粒子(B1)」の製造方法と甲2の実施例8の製造方法について検討するに、甲1実施例2発明Aの「脂環族ポリアミド粒子(B1)」の製造方法においては「ポリエチレングリコール」が「非相溶な材料」として用いられているのに対し、甲2の実施例8において使用される助剤成分(デンプン糖(オリゴ糖)及びD(-)ソルビトール(可塑化成分))は「相溶性」の材料として用いられており、両者の助剤成分は異なる。そして、甲2の実施例8、及び、【0007】ないし【0008】の記載からみて、甲2において、甲1において使用されているポリエチレングリコールは好ましくない助剤とされ、その使用が忌避されているといえるから、甲1実施例2発明Aの「脂環族ポリアミド粒子(B1)」の製造方法において、助剤成分に関して甲2の実施例8を参酌することができるとはいえない。また、使用される原料のアミドが、甲1実施例2発明Aの「脂環族ポリアミド粒子(B1)」の製造方法においては「脂環族ポリアミド」であるのに対し、甲2の実施例8の製造方法においては「ナイロン12樹脂」であり、両者は原料のアミドの点でも相違する。してみると、甲1実施例2発明Aの「脂環族ポリアミド粒子(B1)」の製造方法と、甲2の実施例8の製造方法は技術的に相違する。
以上で述べたとおり、甲1と甲2とは技術分野も課題も共通するとはいえず、また、甲1において甲2が引用されていないこと、及び、甲1実施例2発明Aの「脂環族ポリアミド粒子(B1)」の製造方法と甲2の実施例8の製造方法が技術的に相違するといえることからみて、甲1及び甲2の記載に接した当業者が、甲1実施例2発明Aの「脂環族ポリアミド粒子(B1)」が甲2の実施例8の方法に準じて調製されたと推認するものとはいえない。ゆえに、甲1実施例2発明Aの「脂環族ポリアミド粒子(B1)」が甲2の実施例8の方法に準じて調製されたことを前提とする甲6の記載が、甲1の再現実験であるとは到底いえない。
以下、念のため、甲6の第3頁7(2)の「脂環族ポリアミド粒子B1の調製」における製造条件及び製造されたポリアミド粒子について検討する。
甲6に記載の製造条件は、甲1実施例2発明Aの「脂環族ポリアミド粒子(B1)」の製造条件とは、甲6に記載の方法の溶融条件、及び、溶融後の冷却等の工程を、甲1実施例2発明Aの「脂環族ポリアミド粒子(B1)」の製造方法が有しているかが、甲1の記載からは不明である点で相違する。
してみると、甲6に記載の製造方法が、甲1実施例2発明Aの「脂環族ポリアミド粒子(B1)」の製造方法であるとはいえず、当該方法によって甲1実施例2発明Aの「脂環族ポリアミド粒子(B1)」と同一の物が得られるとはいえない。
また、製造されたポリアミド粒子について検討するに、甲6の第3頁7(2)には、得られたポリアミド粒子の平均粒子径が開示されるにとどまり、甲6で得られたポリアミド粒子が、甲1実施例2発明Aの「脂環族ポリアミド粒子(B1)」の物性である「粒子径12~70μm(特に15~60μm)の粒子の割合が90%以上」及び「粒度分布:1~5μmの粒子3.1重量%、10~30μmの粒子85.3重量%、70μm以上の粒子1重量%未満」を満たすことや、甲1実施例2発明Aの「脂環族ポリアミド粒子(B1)」を含有させ、甲1の実施例2の方法に準じて作製された硬化物が、実施例2と同様の層間剥離強度及び曲げ強度を示すことは甲6に記載されていない。そうすると、甲6の第3頁7(2)に記載の方法によって製造されたポリアミド粒子が、甲1実施例2発明Aの「脂環族ポリアミド粒子(B1)」であるということはできない。
したがって、甲1実施例2発明Aの「脂環族ポリアミド粒子(B1)」に関し甲6を参酌することはできない。
よって、請求人の主張(b)は採用できない。
・(c)について
まず、甲2の適用について検討する。
甲1と甲2とは技術分野も課題も共通するとはいえず、また、甲1において甲2が引用されていないこと、及び、甲1実施例2発明Aの「脂環族ポリアミド粒子(B1)」の製造方法と甲2の実施例8の製造方法が技術的に相違するといえることは、上記の「(b)について」で述べたとおりであるから、甲1及び甲2の記載に接した当業者が、甲1実施例2発明Aの「脂環族ポリアミド粒子(B1)」の製造方法において甲2に記載の方法を適用する動機付けがあるとはいえない。
次に、甲3の適用について検討する。なお、検討に際し、請求人の主張(c)における「甲1実施例1発明A」は「甲1実施例2発明A」と読み替えた。
甲1の技術分野は「強化繊維を含む樹脂組成物、その製造方法および前記樹脂組成物で形成された成形品(又は繊維強化複合材料)」([0001])であるのに対し、甲3の技術分野は「熱可塑性粒樹脂微小球体の製法」、さらに詳しくは「焼結マイクロフィルター、焼結バッテリーセパレーター、流動浸漬用、静電塗装用、ゾル塗料用、ハイブリッド(ミクロ複合材料)用素材、固体潤滑剤、化粧品添加剤等の用途に供するに適した粒径0.01μm~100μmの熱可塑性樹脂微小球体の製法」であり(第1頁左下欄下から第1行-右下欄第8行)、両者の技術分野が共通するとはいえない。
また、甲1の課題は「強化繊維による補強効果を効率よく得ること」([0011])であるのに対し、甲3の課題は「従来の、エマルジョン重合法、機械的粉砕法、沈澱法の欠点の無い熱可塑性樹脂微小球体の製造方法を提供すること」(第1頁右下欄第9行-第2頁左上欄第8行)であって、両者の課題が共通するともいえない。
加えて、甲1において甲3は引用されていない。
さらに、甲1実施例2発明Aの「脂環族ポリアミド粒子(B1)」の製造方法と甲3の実施例1の製造方法について検討するに、甲1実施例2発明Aの「脂環族ポリアミド粒子(B1)」の製造方法においては「ポリエチレングリコール」が助剤として用いられているのに対し、甲3の実施例1において使用される助剤は「ポリエチレンオキサイド(平均分子量10万~25万)であり、両者の助剤成分は異なる。また、使用される原料のアミドが甲1実施例2発明Aの「脂環族ポリアミド粒子(B1)」の製造方法においては「脂環族ポリアミド」であるのに対し、甲3の実施例1の製造方法においては「6ナイロン」であり、両者は原料のアミドの点でも相違する。してみると、甲1実施例2発明Aの「脂環族ポリアミド粒子(B1)」の製造方法と、甲3の実施例1の製造方法は技術的に相違する。
以上で述べたとおり、甲1と甲3とは技術分野も課題も共通するとはいえず、また、甲1において甲3が引用されていないこと、及び、甲1実施例2発明Aの「脂環族ポリアミド粒子(B1)」の製造方法と甲3の実施例1の製造方法が技術的に相違するといえることからみて、甲1及び甲3の記載に接した当業者が、甲1実施例2発明Aの「脂環族ポリアミド粒子(B1)」の製造方法において甲3に記載の方法を適用する動機付けがあるとはいえないし、甲1実施例2発明Aの「脂環族ポリアミド粒子(B1)」の製造方法において甲3に記載の方法に準じて行うことが設計的事項の範疇にあるともいえない。
なお、甲6の第3頁7(2)に記載の方法は、甲3の実施例1の記載とは溶融条件、及び、溶融後の冷却等の工程が異なるから、甲6の記載は、甲1への甲3の適用とは関係がないことを付記する。
よって、請求人の主張(c)は採用できない。
(ウ) 相違点2-1-3についての判断
a 判断
甲1及び他の証拠をみても、甲1実施例2発明Aの結晶化温度Tcの値が不明であるから、甲1実施例2発明Aが「硬化温度TCUREを有し、且つTcがTcureより低い」との特定事項を満たすとはいえない。
したがって、相違点2-1-3は実質的な相違点である。
また、甲1及び他の証拠には、甲1実施例2発明Aの「硬化性熱硬化マトリックス樹脂」を、「硬化温度TCUREを有し、且つTcがTcureより低い」とすることは記載も示唆もされていない。
したがって、甲1実施例2発明Aにおいて、相違点2-1-3に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
b 請求人の主張について
請求人は、請求書及び口頭審理陳述要領書において、上記(イ)b(b)と同様の主張に基づいて甲6を参酌すれば、甲1実施例2発明Aの結晶化温度Tcは173.8℃であるとし(請求書第33頁第17-19行及び口頭審理陳述要領書第12頁第5行-第14頁第8行)、そして、上記ア(ウ)bと同様の主張に基づき、甲1実施例2発明Aの硬化温度TCUREは175℃であるとして、甲1実施例2発明Aの結晶化温度Tcは硬化温度TCUREよりも低い旨主張する(口頭審理陳述要領書第18頁第17行-第21頁第19行)。また、請求人は、甲1において100℃でjERキュアWを添加したのは攪拌開始時ではなく、それによる硬化がおよそ起こらない攪拌終了時(間際)である旨も主張する(口頭審理陳述要領書第21頁第20行-第22頁第3行及び上申書)。
上記主張について検討する。
まず、甲6の参酌について検討するに、上記(イ)bの「(b)について」と同様の理由により、甲1実施例2発明Aの結晶化温度Tcとして甲6を参酌することはできない。
次に、硬化温度TCUREについて検討するに、上記ア(ウ)bと同様の理由により、甲1実施例2発明Aにおける「硬化温度TCURE」に相当する温度が、100℃及び175℃のいずれであるのかが不明であって、請求人が主張するように、甲1実施例2発明Aの「硬化温度TCURE」が175℃であるとはいえない。
よって、請求人の主張は採用できない。
(エ) まとめ
そうすると、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1実施例2発明Aであるとはいえないし、甲1実施例2発明A並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ 甲1実施例3発明A、甲1比較例3発明A、甲1比較例4発明A、甲1比較例6発明Aとの対比・判断
本件特許発明1と甲1実施例3発明Aとの対比、本件特許発明1と甲1比較例3発明Aとの対比、本件特許発明1と甲1比較例4発明Aとの対比、及び、本件特許発明1と甲1比較例6発明Aとの対比についても、上記イと同様の一致点及び相違点があり、その判断も上記イのとおりである。
すなわち、本件特許発明1は、甲1実施例3発明A、甲1比較例3発明A、甲1比較例4発明A、甲1比較例6発明Aであるとはいえず、甲1実施例3発明A、甲1比較例3発明A、甲1比較例4発明A、甲1比較例6発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2) 本件特許発明2ないし3について
本件特許発明2ないし3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
したがって、本件特許発明2ないし3は、本件特許発明1と同様に、甲1発明Aであるとはいえないし、甲1発明A並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3) 本件特許発明4について
ア 甲1実施例1発明Aとの対比・判断
本件特許発明4と甲1実施例1発明Aとを対比する。
甲1実施例1発明Aの「マトリックス樹脂(C)」は、「エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、「jER828」)」を含むものであるから、本件特許発明4の「硬化性熱硬化マトリックス樹脂」に相当する。
甲1実施例1発明Aは、「炭素繊維を用いて作製した織物(平織)を樹脂粒子(B)を含むマトリックス樹脂(C)に積層しつつ含浸し織物12層を積層した積層物又は織物12層およびポリイミドフィルム1層の合計13層を積層した積層物」であるから、本件特許発明4の「硬化性熱硬化マトリックス樹脂で含浸された又はそれが注入された強化繊維の2つ以上の層」との特定事項を満たし、甲1実施例1発明Aの「積層物」は、本件特許発明4の「繊維強化高分子複合材料」に相当する。
甲1実施例1発明Aの「脂肪族ポリアミド粒子(A1)」は、本件特許発明4の「準安定熱可塑性粒子」と、「熱可塑性粒子」との限りにおいて一致する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「硬化性熱硬化マトリックス樹脂で含浸された又はそれが注入された強化繊維の2つ以上の層;熱可塑性粒子を含む繊維強化高分子複合材料。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1-2-1>
「熱可塑性粒子」について、本件特許発明4は、「強化繊維の隣接する層間に配置された」と特定するのに対し、甲1実施例1発明Aにおいては、このような特定がない点
<相違点1-2-2>
「熱可塑性粒子」について、本件特許発明4は、「準安定熱可塑性粒子」であって、「半結晶性熱可塑性材料の粒子であり」及び「周囲温度(20℃~25℃)で化学的に安定な状態であるが、粒子が結晶化温度Tcまで加熱されると熱力学的に不安定になり低温結晶化を起こ」すものであると特定するのに対し、甲1実施例1発明Aにおいては、このような特定がない点
<相違点1-2-3>
「硬化性熱硬化マトリックス樹脂」について、本件特許発明4は、「硬化温度Tcureを有し、且つTcがTcureより低い」と特定するのに対し、甲1実施例1発明Aにおいては、このような特定がない点
事案に鑑み、相違点1-2-2及び相違点1-2-3について検討する。
相違点1-2-2は相違点1-1-2と実質的に同じであり、相違点1-2-3は相違点1-1-3と同じであるから、それぞれ、上記(1)ア(イ)及び上記(1)ア(ウ)と同様に判断される。
すなわち、甲1及び他の証拠には、甲1実施例1発明Aが相違点1-2-2及び相違点1-2-3に係る特定事項を有することは記載されておらず、甲1実施例1発明Aにおいて相違点1-2-2及び相違点1-2-3に係る特定事項を採用する動機付けとなる記載もない。
よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明4は、甲1実施例1発明Aであるとはいえないし、甲1実施例1発明A並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 甲1実施例2発明Aとの対比・判断
本件特許発明4と甲1実施例2発明Aとを対比する。
甲1実施例2発明Aの「マトリックス樹脂(C)」は、「エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、「jER828」)」を含むものであるから、本件特許発明4の「硬化性熱硬化マトリックス樹脂」に相当する。
甲1実施例2発明Aは、「炭素繊維を用いて作製した織物(平織)を樹脂粒子(B)を含むマトリックス樹脂(C)に積層しつつ含浸し織物12層を積層した積層物又は織物12層およびポリイミドフィルム1層の合計13層を積層した積層物」であるから、本件特許発明4の「硬化性熱硬化マトリックス樹脂で含浸された又はそれが注入された強化繊維の2つ以上の層」との特定事項を満たし、甲1実施例2発明Aの「積層物」は、本件特許発明4の「繊維強化高分子複合材料」に相当する。
甲1実施例2発明Aの「脂環族ポリアミド粒子(B1)」は、本件特許発明4の「準安定熱可塑性粒子」と、「熱可塑性粒子」との限りにおいて一致する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「硬化性熱硬化マトリックス樹脂で含浸された又はそれが注入された強化繊維の2つ以上の層;熱可塑性粒子を含む繊維強化高分子複合材料。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点2-2-1>
「熱可塑性粒子」について、本件特許発明4は、「強化繊維の隣接する層間に配置された」と特定するのに対し、甲1実施例2発明Aにおいては、このような特定がない点
<相違点2-2-2>
「熱可塑性粒子」について、本件特許発明4は、「準安定熱可塑性粒子」であって、「半結晶性熱可塑性材料の粒子であり」及び「周囲温度(20℃~25℃)で化学的に安定な状態であるが、粒子が結晶化温度Tcまで加熱されると熱力学的に不安定になり低温結晶化を起こ」すものであると特定するのに対し、甲1実施例2発明Aにおいては、このような特定がない点
<相違点2-2-3>
「硬化性熱硬化マトリックス樹脂」について、本件特許発明4は、「硬化温度Tcureを有し、且つTcがTcureより低い」と特定するのに対し、甲1実施例2発明Aにおいては、このような特定がない点
事案に鑑み、相違点2-2-2及び相違点2-2-3について検討する。
相違点2-2-2は相違点2-1-2と実質的に同じであり、相違点2-2-3は相違点2-1-3と同じであるから、それぞれ、上記(1)イ(イ)及び上記(1)イ(ウ)と同様に判断される。
すなわち、甲1及び他の証拠には、甲1実施例2発明Aが相違点2-2-2及び相違点2-2-3に係る特定事項を有することは記載されておらず、甲1実施例2発明Aにおいて相違点2-2-2及び相違点2-2-3に係る特定事項を採用する動機付けとなる記載もない。
よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明4は、甲1実施例2発明Aであるとはいえないし、甲1実施例2発明A並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ 甲1実施例3発明A、甲1比較例3発明A、甲1比較例4発明A、甲1比較例6発明Aとの対比・判断
本件特許発明4と甲1実施例3発明Aとの対比、本件特許発明4と甲1比較例3発明Aとの対比、本件特許発明4と甲1比較例4発明Aとの対比、及び、本件特許発明4と甲1比較例6発明Aとの対比についても、上記イと同様の一致点及び相違点があり、その判断も上記イのとおりである。
すなわち、本件特許発明4は、甲1実施例3発明A、甲1比較例3発明A、甲1比較例4発明A、甲1比較例6発明Aであるとはいえず、甲1実施例3発明A、甲1比較例3発明A、甲1比較例4発明A、甲1比較例6発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4) 本件特許発明5ないし9及び11ないし18について
本件特許発明5ないし9及び11ないし18は、請求項1又は4を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1又は4の発明特定事項を全て有するものである。
したがって、本件特許発明5ないし9、11、13及び15ないし18は、本件特許発明1又は本件特許発明4と同様に、甲1発明Aであるとはいえない。また、本件特許発明5ないし9及び11ないし18は、本件特許発明1又は本件特許発明4と同様に、甲1発明A並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5) 本件特許発明19について
ア 甲1実施例1発明Bとの対比・判断
本件特許発明19と甲1実施例1発明Bとを対比する。
甲1実施例1発明Bの「マトリックス樹脂(C)」は、「エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、「jER828」)」を含むものであるから、本件特許発明19の「硬化性熱硬化マトリックス樹脂」に相当し、甲1実施例1発明Bは「硬化性樹脂組成物」との特定事項を満たす。
甲1実施例1発明Bの「脂肪族ポリアミド粒子(A1)」は、本件特許発明19の「準安定熱可塑性粒子」と、「熱可塑性粒子」との限りにおいて一致する。
甲1実施例1発明Bの「アミン系硬化剤(三菱化学(株)製、「jERキュアW」)」は、本件特許発明19の「硬化性熱硬化マトリックス樹脂のための硬化剤」に相当する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「1種以上の硬化性熱硬化マトリックス樹脂;熱可塑性粒子;及び任意選択的に、硬化性熱硬化マトリックス樹脂のための硬化剤を含む硬化性樹脂組成物。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1-3-1>
「熱可塑性粒子」について、本件特許発明19は、「粒子が結晶化温度Tcまで加熱されると結晶化を起こす非晶質ポリマーフラクションを有する半結晶性熱可塑性材料の粒子」である「準安定熱可塑性粒子」と特定するのに対し、甲1実施例1発明Bにおいては、このような特定がない点
<相違点1-3-2>
「硬化性熱硬化マトリックス樹脂」について、本件特許発明19は、「硬化温度TCUREを有し、且つTcがTcureより低い」と特定するのに対し、甲1実施例1発明Bにおいては、このような特定がない点
相違点1-3-1及び相違点1-3-2について検討する。
相違点1-3-1は相違点1-1-2と同じであり、相違点1-3-2は相違点1-1-3と同じであるから、それぞれ、上記(1)ア(イ)及び上記(1)ア(ウ)と同様に判断される。
すなわち、甲1及び他の証拠には、甲1実施例1発明Bが相違点1-3-1及び相違点1-3-2に係る特定事項を有することは記載されておらず、甲1実施例1発明Bにおいて相違点1-3-1及び相違点1-3-2に係る特定事項を採用する動機付けとなる記載もない。
よって、本件特許発明19は、甲1実施例1発明Bであるとはいえないし、甲1実施例1発明B並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 甲1実施例2発明Bとの対比・判断
本件特許発明19と甲1実施例2発明Bとを対比する。
甲1実施例2発明Bの「マトリックス樹脂(C)」は、「エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、「jER828」)」を含むものであるから、本件特許発明19の「硬化性熱硬化マトリックス樹脂」に相当し、甲1実施例2発明Bは「硬化性樹脂組成物」との特定事項を満たす。
甲1実施例2発明Bの「脂環族ポリアミド粒子(B1)」は、本件特許発明19の「準安定熱可塑性粒子」と、「熱可塑性粒子」との限りにおいて一致する。
甲1実施例2発明Bの「アミン系硬化剤(三菱化学(株)製、「jERキュアW」)」は、本件特許発明19の「硬化性熱硬化マトリックス樹脂のための硬化剤」に相当する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「1種以上の硬化性熱硬化マトリックス樹脂;熱可塑性粒子;及び任意選択的に、硬化性熱硬化マトリックス樹脂のための硬化剤を含む硬化性樹脂組成物。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点2-3-1>
「熱可塑性粒子」について、本件特許発明19は、「粒子が結晶化温度Tcまで加熱されると結晶化を起こす非晶質ポリマーフラクションを有する半結晶性熱可塑性材料の粒子」である「準安定熱可塑性粒子」と特定するのに対し、甲1実施例2発明Bにおいては、このような特定がない点
<相違点2-3-2>
「硬化性熱硬化マトリックス樹脂」について、本件特許発明19は、「硬化温度TCUREを有し、且つTcがTcureより低い」と特定するのに対し、甲1実施例2発明Bにおいては、このような特定がない点
相違点2-3-1及び相違点2-3-2について検討する。
相違点2-3-1は相違点2-1-2と同じであり、相違点2-3-2は相違点2-1-3と同じであるから、上記(1)イ(イ)及び上記(1)イ(ウ)と同様に判断される。
すなわち、甲1及び他の証拠には、甲1実施例2発明Bが相違点2-3-1及び相違点2-3-2に係る特定事項を有することは記載されておらず、甲1実施例2発明Bにおいて相違点2-3-1及び相違点2-3-2に係る特定事項を採用する動機付けとなる記載もない。
よって、本件特許発明19は、甲1実施例2発明Bであるとはいえないし、甲1実施例2発明B並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ 甲1実施例3発明B、甲1比較例3発明B、甲1比較例4発明B、甲1比較例6発明Bとの対比・判断
本件特許発明19と甲1実施例3発明Bとの対比、本件特許発明19と甲1比較例3発明Bとの対比、本件特許発明19と甲1比較例4発明Bとの対比、及び、本件特許発明19と甲1比較例6発明Bとの対比についても、上記イと同様の一致点及び相違点があり、その判断も上記イのとおりである。
すなわち、本件特許発明19は、甲1実施例3発明B、甲1比較例3発明B、甲1比較例4発明B、甲1比較例6発明Bであるとはいえず、甲1実施例3発明B、甲1比較例3発明B、甲1比較例4発明B、甲1比較例6発明Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(6) 本件特許発明20について
ア 甲1実施例1発明Bとの対比・判断
本件特許発明20と甲1実施例1発明Bとを対比する。
甲1実施例1発明Bの「マトリックス樹脂(C)」は、「エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、「jER828」)」を含むものであるから、本件特許発明20の「硬化性熱硬化マトリックス樹脂」に相当し、甲1実施例1発明Bは「硬化性樹脂組成物」との特定事項を満たす。
甲1実施例1発明Bの「脂肪族ポリアミド粒子(A1)」は、本件特許発明20の「準安定熱可塑性粒子」と、「熱可塑性粒子」との限りにおいて一致する。
甲1実施例1発明Bの「アミン系硬化剤(三菱化学(株)製、「jERキュアW」)」は、本件特許発明20の「硬化性熱硬化マトリックス樹脂のための硬化剤」に相当する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「1種以上の硬化性熱硬化マトリックス樹脂;熱可塑性粒子;及び任意選択的に、硬化性熱硬化マトリックス樹脂のための硬化剤を含む硬化性樹脂組成物。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1-4-1>
「熱可塑性粒子」について、本件特許発明20は、「準安定熱可塑性粒子」であって、「半結晶性熱可塑性材料の粒子であり」及び「周囲温度(20℃~25℃)で化学的に安定な状態であるが、粒子が結晶化温度Tcまで加熱されると熱力学的に不安定になり低温結晶化を起こ」すものであると特定するのに対し、甲1実施例1発明Bにおいては、このような特定がない点
<相違点1-4-2>
「硬化性熱硬化マトリックス樹脂」について、本件特許発明20は、「硬化温度TCUREを有し、且つTcがTcureより低い」と特定するのに対し、甲1実施例1発明Bにおいては、このような特定がない点
相違点1-4-1及び相違点1-4-2について検討する。
相違点1-4-1は相違点1-1-2と実質的に同じであり、相違点1-4-2は相違点1-1-3と同じであるから、それぞれ、上記(1)ア(イ)及び上記(1)ア(ウ)と同様に判断される。
すなわち、甲1及び他の証拠には、甲1実施例1発明Bが相違点1-4-1及び相違点1-4-2に係る特定事項を有することは記載されておらず、甲1実施例1発明Bにおいて相違点1-4-1及び相違点1-4-2に係る特定事項を採用する動機付けとなる記載もない。
よって、本件特許発明20は、甲1実施例1発明Bであるとはいえないし、甲1実施例1発明B並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 甲1実施例2発明Bとの対比・判断
本件特許発明20と甲1実施例2発明Bとを対比する。
甲1実施例2発明Bの「マトリックス樹脂(C)」は、「エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、「jER828」)」を含むものであるから、本件特許発明20の「硬化性熱硬化マトリックス樹脂」に相当し、甲1実施例2発明Bは「硬化性樹脂組成物」との特定事項を満たす。
甲1実施例2発明Bの「脂環族ポリアミド粒子(B1)」は、本件特許発明20の「準安定熱可塑性粒子」と、「熱可塑性粒子」との限りにおいて一致する。
甲1実施例2発明Bの「アミン系硬化剤(三菱化学(株)製、「jERキュアW」)」は、本件特許発明20の「硬化性熱硬化マトリックス樹脂のための硬化剤」に相当する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「1種以上の硬化性熱硬化マトリックス樹脂;熱可塑性粒子;及び任意選択的に、硬化性熱硬化マトリックス樹脂のための硬化剤を含む硬化性樹脂組成物。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点2-4-1>
「熱可塑性粒子」について、本件特許発明20は、「準安定熱可塑性粒子」であって、「半結晶性熱可塑性材料の粒子であり」及び「周囲温度(20℃~25℃)で化学的に安定な状態であるが、粒子が結晶化温度Tcまで加熱されると熱力学的に不安定になり低温結晶化を起こ」すものであると特定するのに対し、甲1実施例2発明Bにおいては、このような特定がない点
<相違点2-4-2>
「硬化性熱硬化マトリックス樹脂」について、本件特許発明20は、「硬化温度TCUREを有し、且つTcがTcureより低い」と特定するのに対し、甲1実施例2発明Bにおいては、このような特定がない点
相違点2-4-1及び相違点2-4-2について検討する。
相違点2-4-1は相違点2-1-2と実質的に同じであり、相違点2-4-2は相違点2-1-3と同じであるから、上記(1)イ(イ)及び上記(1)イ(ウ)と同様に判断される。
すなわち、甲1及び他の証拠には、甲1実施例2発明Bが相違点2-4-1及び相違点2-4-2に係る特定事項を有することは記載されておらず、甲1実施例2発明Bにおいて相違点2-4-1及び相違点2-4-2に係る特定事項を採用する動機付けとなる記載もない。
よって、本件特許発明20は、甲1実施例2発明Bであるとはいえないし、甲1実施例2発明B並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ 甲1実施例3発明B、甲1比較例3発明B、甲1比較例4発明B、甲1比較例6発明Bとの対比・判断
本件特許発明20と甲1実施例3発明Bとの対比、本件特許発明20と甲1比較例3発明Bとの対比、本件特許発明20と甲1比較例4発明Bとの対比、及び、本件特許発明20と甲1比較例6発明Bとの対比についても、上記イと同様の一致点及び相違点があり、その判断も上記イのとおりである。
すなわち、本件特許発明20は、甲1実施例3発明B、甲1比較例3発明B、甲1比較例4発明B、甲1比較例6発明Bであるとはいえず、甲1実施例3発明B、甲1比較例3発明B、甲1比較例4発明B、甲1比較例6発明Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(7) 本件特許発明21ないし26について
本件特許発明21ないし26は、請求項19又は20を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明19又は20の発明特定事項を全て有するものである。
したがって、本件特許発明21ないし26は、本件特許発明19又は本件特許発明20と同様に、甲1発明Bであるとはいえないし、甲1発明B並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(8) 本件特許発明27について
ア 甲1実施例1発明Cとの対比・判断
本件特許発明27と甲1実施例1発明Cとを対比すると、上記(1)ア(ア)と同様に対比され、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「硬化性熱硬化マトリックス樹脂で含浸された強化繊維の2つ以上の層と、熱可塑性粒子とを含む複合積層体を形成すること;及び複合積層体を硬化させることを含む、複合構造体を製造する方法。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1-5-1>
「熱可塑性粒子」について、本件特許発明27は、「強化繊維の隣接する層間に配置された」と特定するのに対し、甲1実施例1発明Cにおいては、このような特定がない点
<相違点1-5-2>
「熱可塑性粒子」について、本件特許発明27は、「粒子が結晶化温度Tcまで加熱されると結晶化を起こす非晶質ポリマーフラクションを有する半結晶性熱可塑性材料の粒子である」「準安定熱可塑性粒子」と特定するのに対し、甲1実施例1発明Cにおいては、このような特定がない点
<相違点1-5-3>
「複合積層体を硬化させること」について、本件特許発明27は、「硬化温度Tcureで硬化させる」及び「硬化温度TCUREまでの昇温中、熱可塑性粒子が、Tcureより低い結晶化温度TCで結晶化を起こした」と特定するのに対し、甲1実施例1発明Cにおいては、このような特定がない点
事案に鑑み、相違点1-5-2及び相違点1-5-3について検討する。
相違点1-5-2は相違点1-1-2と同じであり、相違点1-5-3は相違点1-1-3と実質的に同じであるから、それぞれ、上記(1)ア(イ)及び上記(1)ア(ウ)と同様に判断される。
すなわち、甲1及び他の証拠には、甲1実施例1発明Cが相違点1-5-2及び相違点1-5-3に係る特定事項を有することは記載されておらず、甲1実施例1発明Cにおいて相違点1-5-2及び相違点1-5-3に係る特定事項を採用する動機付けとなる記載もない。
よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明27は、甲1実施例1発明Cであるとはいえないし、甲1実施例1発明C並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 甲1実施例2発明Cとの対比・判断
本件特許発明27と甲1実施例2発明Cとを対比すると、上記(1)イ(ア)と同様に対比され、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「硬化性熱硬化マトリックス樹脂で含浸された強化繊維の2つ以上の層と、熱可塑性粒子とを含む複合積層体を形成すること;及び複合積層体を硬化させることを含む、複合構造体を製造する方法。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点2-5-1>
「熱可塑性粒子」について、本件特許発明27は、「強化繊維の隣接する層間に配置された」と特定するのに対し、甲1実施例2発明Cにおいては、このような特定がない点
<相違点2-5-2>
「熱可塑性粒子」について、本件特許発明27は、「粒子が結晶化温度Tcまで加熱されると結晶化を起こす非晶質ポリマーフラクションを有する半結晶性熱可塑性材料の粒子である」「準安定熱可塑性粒子」と特定するのに対し、甲1実施例2発明Cにおいては、このような特定がない点
<相違点2-5-3>
「複合積層体を硬化させること」について、本件特許発明27は、「硬化温度Tcureで硬化させる」及び「硬化温度TCUREまでの昇温中、熱可塑性粒子が、Tcureより低い結晶化温度TCで結晶化を起こした」と特定するのに対し、甲1実施例2発明Cにおいては、このような特定がない点
事案に鑑み、相違点2-5-2及び相違点2-5-3について検討する。
相違点2-5-2は相違点2-1-2と同じであり、相違点2-5-3は相違点2-1-3と実質的に同じであるから、それぞれ、上記(1)イ(イ)及び上記(1)イ(ウ)と同様に判断される。
すなわち、甲1及び他の証拠には、甲1実施例2発明Cが相違点2-5-2及び相違点2-5-3に係る特定事項を有することは記載されておらず、甲1実施例2発明Cにおいて相違点2-5-2及び相違点2-5-3に係る特定事項を採用する動機付けとなる記載もない。
よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明27は、甲1実施例2発明Cであるとはいえないし、甲1実施例2発明C並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ 甲1実施例3発明C、甲1比較例3発明C、甲1比較例4発明C、甲1比較例6発明Cとの対比・判断
本件特許発明27と甲1実施例3発明Cとの対比、本件特許発明27と甲1比較例3発明Cとの対比、本件特許発明27と甲1比較例4発明Cとの対比、及び、本件特許発明27と甲1比較例6発明Cとの対比についても、上記イと同様の一致点及び相違点があり、その判断も上記イのとおりである。
すなわち、本件特許発明27は、甲1実施例3発明C、甲1比較例3発明C、甲1比較例4発明C、甲1比較例6発明Cであるとはいえず、甲1実施例3発明C、甲1比較例3発明C、甲1比較例4発明C、甲1比較例6発明Cに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(9) 本件特許発明28について
ア 甲1実施例1発明Cとの対比・判断
本件特許発明28と甲1実施例1発明Cとを対比すると、上記(1)ア(ア)と同様に対比され、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「液体樹脂を浸透させることが可能な複数の繊維質層と、熱可塑性粒子とを含むプリフォームを形成すること;及びプリフォームを硬化させることを含む、複合構造体を製造する方法。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1-6-1>
「熱可塑性粒子」について、本件特許発明28は、「隣接する繊維質層間に配置された」と特定するのに対し、甲1実施例1発明Cにおいては、このような特定がない点
<相違点1-6-2>
「熱可塑性粒子」について、本件特許発明28は、「結晶化温度Tcで結晶化可能な非晶質ポリマーフラクションを有する半結晶性熱可塑性材料の粒子である」「準安定熱可塑性粒子」と特定するのに対し、甲1実施例1発明Cにおいては、このような特定がない点
<相違点1-6-3>
「プリフォーム」に、「硬化性熱硬化マトリックス樹脂」を、本件特許発明28では、「注入する」のに対し、甲1実施例1発明Cにおいては、「含浸」する点
<相違点1-6-4>
「プリフォームを硬化させること」について、本件特許発明28は、「硬化温度Tcureで硬化させる」及び「硬化温度TCUREまでの昇温中、準安定熱可塑性粒子が、Tcureより低い結晶化温度TCで結晶化を起こした」と特定するのに対し、甲1実施例1発明Cにおいては、このような特定がない点
事案に鑑み、相違点1-6-2及び相違点1-6-4について検討する。
相違点1-6-2は相違点1-1-2と同じであり、相違点1-6-4は相違点1-1-3と実質的に同じであるから、それぞれ、上記(1)ア(イ)及び上記(1)ア(ウ)と同様に判断される。
すなわち、甲1及び他の証拠には、甲1実施例1発明Cにおいて相違点1-6-2及び相違点1-6-4に係る特定事項を採用する動機付けとなる記載もない。
よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明28は、甲1実施例1発明C並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 甲1実施例2発明Cとの対比・判断
本件特許発明28と甲1実施例2発明Cとを対比すると、上記(1)イ(ア)と同様に対比され、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「液体樹脂を浸透させることが可能な複数の繊維質層と、熱可塑性粒子とを含むプリフォームを形成すること;及びプリフォームを硬化させることを含む、複合構造体を製造する方法。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点2-6-1>
「熱可塑性粒子」について、本件特許発明28は、「隣接する繊維質層間に配置された」と特定するのに対し、甲1実施例2発明Cにおいては、このような特定がない点
<相違点2-6-2>
「熱可塑性粒子」について、本件特許発明28は、「結晶化温度Tcで結晶化可能な非晶質ポリマーフラクションを有する半結晶性熱可塑性材料の粒子である」「準安定熱可塑性粒子」と特定するのに対し、甲1実施例2発明Cにおいては、このような特定がない点
<相違点2-6-3>
「プリフォーム」に、「硬化性熱硬化マトリックス樹脂」を、本件特許発明28では、「注入する」のに対し、甲1実施例2発明Cにおいては、「含浸」する点
<相違点2-6-4>
「プリフォームを硬化させること」について、本件特許発明28は、「硬化温度Tcureで硬化させる」及び「硬化温度TCUREまでの昇温中、準安定熱可塑性粒子が、Tcureより低い結晶化温度TCで結晶化を起こした」と特定するのに対し、甲1実施例2発明Cにおいては、このような特定がない点
事案に鑑み、相違点2-6-2及び相違点2-6-4について検討する。
相違点2-6-2は相違点2-1-2と同じであり、相違点2-6-4は相違点2-1-3と実質的に同じであるから、それぞれ、上記(1)イ(イ)及び上記(1)イ(ウ)と同様に判断される。
すなわち、甲1及び他の証拠には、甲1実施例2発明Cにおいて相違点2-6-2及び相違点2-6-4に係る特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明28は、甲1実施例2発明C並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 甲1実施例3発明C、甲1比較例3発明C、甲1比較例4発明C、甲1比較例6発明Cとの対比・判断
本件特許発明28と甲1実施例3発明Cとの対比、本件特許発明28と甲1比較例3発明Cとの対比、本件特許発明28と甲1比較例4発明Cとの対比、及び、本件特許発明28と甲1比較例6発明Cとの対比についても、上記イと同様の一致点及び相違点があり、その判断も上記イのとおりである。
すなわち、本件特許発明28は、甲1実施例3発明C、甲1比較例3発明C、甲1比較例4発明C、甲1比較例6発明Cに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(10) 本件特許発明29ないし30について
本件特許発明29ないし30は、請求項27又は28を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明27又は28の発明特定事項を全て有するものである。
したがって、本件特許発明29ないし30は、本件特許発明27又は本件特許発明28と同様に、甲1発明Cであるとはいえないし、甲1発明C並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
第7 結語
以上のとおり、本件特許発明1ないし9及び11ないし30に関して、無効理由は理由がなく、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許発明1ないし9及び11ないし30についての特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とすべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-800089