特許無効審判
2021-800029
LED照明装置
- 審判番号
- 2021-800029
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2017-029824
- 登録番号
- 6149176
- 請求日
- 2021年03月31日
- 審決日
- 2023年01月10日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】パナソニック 株式会社
- 【請求人代理人】新居 広守
- 【請求人代理人】道坂 伸一
- 【請求人代理人】小松 陽一郎
- 【請求人代理人】原 悠介
- 【請求人代理人】千葉 あすか
- 【請求人代理人】大山 丈二
- 【被請求人】アイリスオーヤマ 株式会社
- 【被請求人代理人】山田 威一郎
- 【被請求人代理人】松本 響子
- 【被請求人代理人】臼井 尚
- 【被請求人代理人】吉田 稔
- 【被請求人代理人】田中 達也
- 【被請求人代理人】鈴木 泰光
- 【被請求人代理人】鈴木 伸太郎
- 【被請求人代理人】小淵 景太
- 【被請求人代理人】齊藤 智和
- 審判長/審判官
- 審判長 筑波 茂樹
- 審判官 八木 誠
- 審判官 出口 昌哉
- 分類
- P1113.113-YAA(F21S) / P1113.121-YAA(F21S) / P1113.03 -YAA(F21S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第134条の2第9項、特許法第134条の2第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項、特許法第29条第1項、特許法第123条第1項第2号、特許法第36条第5項、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第6149176号発明「LED照明装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第6149176号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許第6149176号(以下、「本件特許」という。)に係る特許出願は、平成23年5月17日(優先権主張平成22年6月17日、同年6月29日、同年9月14日)に出願した特願2011-110601号の一部を、平成27年12月15日に新たな特許出願とした特願2015-243902号の一部を更に、平成28年11月21日に新たな特許出願とした特願2016-225943号の一部をまた更に、平成29年2月21日に新たな特許出願としたものであって、平成29年5月26日にその特許権が設定登録された。
そして、本件無効審判請求に係る手続の経緯は、以下のとおりである。
令和3年 3月31日 審判請求書
同年 9月 6日 被請求人より審判事件答弁書
同年12月22日付け 審理事項通知書
令和4年 1月21日 被請求人より口頭審理陳述要領書
同年 1月25日 請求人より口頭審理陳述要領書・手続補正書
同年 2月 1日付け 審理事項通知書
同年 2月 8日 被請求人より口頭審理陳述要領書(2)
同年 2月15日 口頭審理
同年 2月22日 請求人より上申書
同年 3月30日付け 審決の予告
同年 5月13日 被請求人より訂正請求書・上申書
同年 7月20日 請求人より審判事件弁駁書
第2 本件訂正
1 訂正の内容
被請求人が求める訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲を、令和4年5月13日の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求めるものであり、その訂正事項は以下の(1)~(5)のとおりである(なお、下線部は訂正箇所である。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1における
「前記基板および前記ベース部の前記底面部を覆う長尺状の透光カバーと、平面視において前記透光カバーの短手方向両側に位置し」
との記載を
「前記基板および前記ベース部の前記底面部を覆う長尺状の拡散カバーと、平面視において前記拡散カバーの短手方向両側に位置し」
に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2乃至6も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3における
「前記透光カバーは樹脂製である、」
との記載を
「前記拡散カバーは樹脂製である、」
に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4乃至6も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4における
「前記透光カバーは、前記長手方向視において断面円弧状である、」
との記載を
「前記拡散カバーは、前記長手方向視において断面円弧状である、」
に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5及び6も同様に訂正する)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5における
「前記透光カバーの中央部は、その他の領域よりも光透過率が小さい、」
との記載を
「前記拡散カバーの中央部は、その他の領域よりも光透過率が小さい、」
に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項6も同様に訂正する)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6における
「前記透光カバーの両端を封鎖する透光性のエンドキャップを備える、」
との記載を
「前記拡散カバーの両端を封鎖する透光性のエンドキャップを備える、」
に訂正する。
(6)一群の請求項
本件訂正は、一群の請求項〔1~6〕に対して請求されたものである。
2 本件訂正の適否
(1)訂正の目的
訂正事項1~5(上記1(1)~(5)参照。)による訂正は、それぞれ、訂正前の請求項1、3~6の「透光カバー」を、「拡散カバー」にするものであり、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)の【0009】等の記載によれば、拡散カバーは、光を透過させつつ拡散するものであって、透光カバーに対して、「拡散する」という事項を限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の滅縮を目的とするものである。
(2)本件明細書等に記載した事項の範囲内でした訂正であること
訂正事項1~5による「拡散カバー」との事項は、本件明細書等の「上記複数のLEDモジュールからの光を透過させつつ拡散させる拡散カバー」(【0009】)との記載に基づくものであるから、訂正事項1~5による訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内でしたものであると認められ、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1~5による訂正は、訂正前の請求項1、3~6の「透光カバー」を、「拡散カバー」に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項1~5による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(4)独立特許要件
本件においては、訂正前の全ての請求項1~6について無効審判の請求がされているので、訂正前の請求項1~4に係る訂正事項1~訂正事項5に関して、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
(5)請求人の主張について
請求人は、平成21年(行ケ)第10065号の判決と平成14年(行ケ)第188号の判決を提示した上で、本件訂正は分割要件違反を回避するためのものであるところ、そのような訂正は認められないから、本件訂正は不適法である旨主張する(口頭審理陳述要領書第14ページ10行~17ページ24行及び令和4年2月22日の上申書4ページ1行~5ページ21行、令和4年7月20日の審判事件弁駁書5ページ15行~12ページ20行参照。)。
確かに、いったん特許となった発明については、その対象を確定して権利の安定を保証する趣旨から、訂正は、むやみに許容すべきではない。他方、明細書等に瑕疵が存在する場合、その瑕疵を是正して無効理由や取消理由を除去することができるようにしなければ、特許権者に酷であり発明を適切に保護することができない。上記の相反する要請の調和の観点から、特許法においては、第三者への影響を極力少なくする等のために、複数の訂正の要件が設定され、全ての要件を満たす限りにおいて、その訂正が認められることが規定されているところ、特許法では、訂正について、分割出願についての特段の規定はなく、分割要件違反を含んだ、設定登録された特許について、一切の訂正を認めないとする合理的な理由があるとも認められないから、分割要件違反を含んだ、設定登録された特許について、全ての訂正の要件を満たす限りにおいて、その訂正は認められると解するのが相当である。
そして、上記(1)~(4)で説示したとおり、本件訂正の訂正事項1~5についての訂正要件は満たすと認められるところ、請求人の上記主張は、訂正要件に基づくものではないから、当を得たものとはいえず、採用することはできない。
(6)小括
以上によれば、訂正事項1~5による訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定することを目的とするものであり、同法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、本件訂正は適法であるから、これを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~6に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明6」といい、「本件発明1~6」を総称して「本件発明」ともいう。)は、特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される、以下のとおりのものであると認められる。
「【請求項1】
複数のLED発光部と、
前記複数のLED発光部が長手方向に沿って配列された長尺状の基板と、
断面コの字形状であり、前記コの字形状の底面部の外側に前記基板が設けられたベース部と、
前記基板および前記ベース部の前記底面部を覆う長尺状の拡散カバーと、
平面視において前記透光カバーの短手方向両側に位置し且つ前記長手方向視において前記基板に対して傾いた2つの傾斜部、当該2つの傾斜部の内側に位置する底板部、および前記底板部の前記短手方向両端から起立する2つの壁部、を有する長尺状のウイング部と、を備え、
前記底板部および前記2つの壁部は、前記長手方向視において前記基板が固定された前記ベース部を収容するための凹部を構成している、LED照明装置。
【請求項2】
前記ベース部の前記底面部と前記ウイング部の前記底板部との間に配置された電力変換部を備える、請求項1に記載のLED照明装置。
【請求項3】
前記ベース部は金属製であり、前記拡散カバーは樹脂製である、請求項1または2に記載のLED照明装置。
【請求項4】
前記拡散カバーは、前記長手方向視において断面円弧状である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のLED照明装置。
【請求項5】
前記拡散カバーの中央部は、その他の領域よりも光透過率が小さい、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のLED照明装置。
【請求項6】
前記拡散カバーの両端を封鎖する透光性のエンドキャップを備える、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のLED照明装置。」
第4 請求人の主張の概要及び証拠方法
1 主張の概要
請求人は、「特許第6149176号の特許請求の範囲の請求項1ないし6に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求める。
(1)無効理由
請求人は、審判請求書に添付して甲第1~10号証を提出し、以下の無効理由(令和4年2月15日の第1回口頭審理調書を参照。)を主張する。
[無効理由]
本件特許に係る出願(特願2017-29824号、以下、「本件特許出願」又は「曾孫出願」という。)、その分割対象となった出願(特願2016-225943号、「孫出願」という。)、及び、更にその分割対象となった出願(特願2015-243902号、「子出願」という。)は、いずれも分割要件違反を有する不適法な分割出願であり、本件特許出願において、出願日は、遡及を認めることはできず、現実の出願日である平成29年2月21日であるか、少なくとも孫出願の現実の出願日である平成28年11月21日又は子出願の現実の出願日である平成27年12月15日である。
よって、本件特許の請求項1~6に係る発明は、曾孫出願である本件特許出願の親出願(特願2011-110601号)の公開公報である甲第1号証に記載された発明である、又は、少なくとも、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項又は第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(2)分割要件違反
請求人が主張する分割要件違反の概要は、子出願の特許請求の範囲の請求項1~7に係る発明(特に、請求項1に係る発明)について、下記ア(ア)、(イ)のとおりであり(口頭審理陳述要領書4ページ27行~5ページ3行参照。)、孫出願の特許請求の範囲の請求項1~4に係る発明(特に、請求項1に係る発明)について、下記イ(ア)、(イ)のとおりであり(口頭審理陳述要領書5ページ4~18行参照。)、本件特許出願の特許請求の範囲の請求項1~6に係る発明(特に、請求項1に係る発明)について、下記ウのとおりである(口頭審理陳述要領書5ページ19~25行参照。)。
ア 子出願について
(ア)「光を通過させるエンドキャップ」について
親出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「親出願の当初明細書等」という。)から、「光を透過させる」ことだけでなく、「光を拡散させる」ことも「エンドキャップ」に必須・不可欠な事項であり、「エンドキャップ」において、「光を拡散させる」という事項がないことは、新たな技術的事項(以下、「新規事項」という。)を導入する(以下、「追加する」という。)ものであり、分割要件違反である。
(イ)「ウイング部」について
ウイング部が「側部」を有することや、「側部」が「電力変換部の少なくとも一部を覆う」ことは、新規事項を追加するものであり、分割要件違反である。
イ 孫出願について
(ア)「エンドキャップ」の削除
親出願の当初明細書等の背景技術(【0004】)等を勘案すると、「エンドキャップ」は必須・不可欠の事項であるから、孫出願の請求項1に係る発明)において、「エンドキャップ」がないことは新規事項を追加するものであり、分割要件違反である。
(イ)「透光カバー」について
親出願の当初明細書等には、「透光カバー」という記載は存在せず、LEDを覆うカバーとしては、「拡散カバー12は・・・LEDモジュール2からの光を拡散しつつ透過する。・・・」(【0056】)等と記載され、輝度の均一化という課題を解決するためには、カバーにおける光透過性及び光拡散性は、いずれも必須・不可欠な構成であるところ、「透光カバー」とすることは、必須・不可欠な構成とされていたカバーについての「光拡散性」を削除するとともに、「透過」を「透明」に上位概念化するものであるから、新規事項を追加するものであり、分割要件違反である。
ウ 本件特許出願(曾孫出願)について
(ア)「エンドキャップ」の削除
上記イ(ア)と同様。
(イ)「電力変換部」の削除
本件発明1は、孫出願の請求項1に係る発明から、「電力変換部」を削除したものであり、孫出願の請求項1に係る発明の発明特定事項を削除することによって、新規事項を追加するものであるから、分割要件違反である。
2 請求人が提出した証拠
審判請求書に添付して提出された各甲号証(以下「甲○」と略記する。)は次のものである。
甲1:特開2012-84504号公報
甲2:特許第6114810号公報
甲3:明細書(特願2011-110601号)
甲4:特許第6099803号公報
甲5:特許請求の範囲(特願2015-243902号)
甲6:特願2015-243902号の平成28年9月27日付けの拒絶理由通知書
甲7:特願2015-243902号の平成29年2月3日の意見書
甲8:特願2015-243902号の平成29年2月3日の手続補正書
甲9:「LEDベース照明/直付型シームレスタイプ」のパンフレット、ローム株式会社、2009年(平成21年)2月24日
甲10:「LEDベース照明」のパンフレット、ローム株式会社、2009年(平成21年)7月10日
第5 被請求人の主張の概要及び証拠方法
1 主張の概要
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求める。
(1)無効理由について
子出願、孫出願及び本件特許出願(曾孫出願)には分割要件違反はなく、適法な分割出願であるから、分割要件違反を前提とした請求人の主張する無効理由には理由がない旨主張する。
(2)分割要件違反について
請求人が主張する分割要件違反に対する被請求人の主張は、子出願については、下記ア(ア)、(イ)のとおりであり(審判事件答弁書9ページ14行~10ページ1行及び13ページ13行~23ページ17行、並びに、令和4年5月13日の上申書3ページ23~30行参照。)、孫出願については、下記イ(ア)、(イ)のとおりであり(審判事件答弁書23ページ25行~27ページ28行及び令和4年5月13日の上申書3ページ31行~4ページ4行参照。)、本件特許出願については、下記ウ(ア)、(イ)のとおりである(審判事件答弁書30ページ10行~31ページ5行及び31ページ6行~32ページ9行参照)。
ア 子出願について
(ア)「光を通過させるエンドキャップ」について
「エンドキャップ」について、子出願に係る無効事件(無効2021-800027号)で請求した訂正(以下、「子出願訂正」という。)により、「光を透過させつつ拡散させるエンドキャップ」と訂正したので、請求人の主張する分割要件違反は解消した。
(イ)「ウイング部」について
請求項1の「前記側部により前記電力変換部の少なくとも一部を覆って形成されたウイング部と、を有することを特徴とする」との構成は、そのうちの「前記側部により前記電力変換部の」「一部を覆って形成されたウイング部と、を有することを特徴とする」は、親出願の当初明細書等の【0114】~【0116】、【0118】、【0119】、【0124】及び図31に開示された構成であり、「少なくとも」は子出願訂正により削除されたから、新規事項を追加するものではなく、分割要件違反ではない。
イ 孫出願について
(ア)「エンドキャップ」の削除
孫出願の請求項1に係る発明は、親出願の当初明細書等の図29、31及び32、並びに、【0109】、【0110】、【0116】、【0119】、【0122】~【0124】に記載されたものであり、これら記載にはエンドキャップに係る記載はなく、エンドキャップは必須・不可欠なものではないことから、エンドキャップを構成要件に含まないことは新規事項を追加するものではなく、分割要件違反ではない。
(イ)「透光カバー」について
「透光カバー」について、孫出願に係る無効事件(無効2021-800026号)で請求した訂正(以下、「孫出願訂正」という。)により、「拡散カバー」と訂正したので、請求人の主張する分割要件違反は解消した。
ウ 本件特許出願(曾孫出願)について
(ア)「エンドキャップ」の削除
上記イ(ア)と同様。
(イ)「電力変換部」の削除
本件発明1において、電力変換部は、必須・不可欠のものではないことから、電力変換部を構成要件に含まないことは新規事項を追加するものではなく、分割要件違反ではない。
2 被請求人が提出した証拠
審判事件答弁書及び上申書に添付された各乙号証は次のものである(以下「乙○」と略記する。)。
乙1:子出願に係る無効2021-800027号事件における令和3年9月6日の訂正請求書
乙2:広辞苑第7版、新村出編集、岩波書店株式会社、373ページ、「おおう」という用語、2018年(平成30年)1月12日発行
乙3:特願2015-243902号の平成29年1月30日の応対記録
乙4:特願2016-225943号の平成28年11月21日の上申書
乙5:特願2017-29824号の平成29年2月21日の上申書
乙6:子出願に係る無効2021-800027号事件における令和4年5月13日の訂正請求書
乙7:孫出願に係る無効2021-800026号事件における令和4年5月13日の訂正請求書
第6 当審の判断
無効理由について、以下検討する。
1 分割要件違反について
(1)子出願について
ア 子出願訂正について
(ア)子出願訂正の内容
被請求人が求める子出願訂正は、子出願の願書に添付した特許請求の範囲を、令和4年5月13日の訂正請求書(乙6)に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正事項は以下のa、bのとおりである(なお、下線部は訂正箇所である。)。
a 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1における
「前記基板の前記第2の面と傾斜角をなす第3の面を備えるとともに前記長手方向と垂直である短手方向に離間し且つ前記長手方向に延びる二辺に沿って各々が延びる一対の側部を備え、前記側部により前記電力変換部の少なくとも一部を覆って形成されたウイング部と」
との記載を
「前記基板の前記第2の面と傾斜角をなす第3の面を備えるとともに前記長手方向と垂直である短手方向に離間し且つ前記長手方向に延びる二辺に沿って各々が延びる一対の側部を備え、前記側部により前記電力変換部の一部を覆って形成されたウイング部と」
に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2乃至7も同様に訂正する)。
b 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1における
「前記拡散カバーと接続されて前記長手方向と直交する短手方向に伸長し且つ前記拡散カバーの前記長手方向両端において前記拡散カバーと共に前記LED発光部を覆う前記LED発光部から発せられた光を透過させるエンドキャップと」と記載されているのを
「前記拡散カバーと接続されて前記長手方向と直交する短手方向に伸長し且つ前記拡散カバーの前記長手方向両端において前記拡散カバーと共に前記LED発光部を覆う前記LED発光部から発せられた光を透過させつつ拡散させるエンドキャップと」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2乃至7も同様に訂正する)。
c 一群の請求項
子出願訂正は、一群の請求項〔1~7〕に対して請求されたものである。
(イ)子出願訂正の適否
a 訂正事項1について
(a)訂正の目的
訂正事項1(上記(ア)a参照。)による訂正は、訂正前の請求項1の「前記側部により前記電力変換部の少なくとも一部を覆って形成されたウイング部」との事項から、「少なくとも」という語句を削除して、「前記側部により前記電力変換部の一部を覆って形成されたウイング部」との事項に限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の滅縮を目的とするものである。
(b)子出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「子出願の明細書等」という。)に記載した事項の範囲内でした訂正であること
訂正事項1による「前記側部により前記電力変換部の一部を覆って形成されたウイング部」との事項は、子出願の明細書等の請求項1の「前記側部により前記電力変換部の少なくとも一部を覆って形成されたウイング部」との事項から、「少なくとも」という語句を削除したものであるから、子出願の明細書等に記載した事項の範囲内でしたものであると認められ、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(c)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1の「前記側部により前記電力変換部の少なくとも一部を覆って形成されたウイング部」との事項を、「前記側部により前記電力変換部の一部を覆って形成されたウイング部」との事項に限定するものであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項1による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
b 訂正事項2について
(a)訂正の目的
訂正事項2(上記(ア)bを参照。)による訂正は、訂正前の請求項1の「光を透過させるエンドキャップ」との事項を「光を透過させつつ拡散させるエンドキャップ」との事項に限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の滅縮を目的とするものである。
(b)子出願の明細書等に記載した事項の範囲内でした訂正であること
訂正事項2による「光を透過させつつ拡散させるエンドキャップ」との事項は、子出願の明細書等の「上記各エンドキャップが、上記複数のLEDモジュールからの光を透過させつつ拡散させるように形成されており」(【0008】)及び「このようなエンドキャップ3は、LEDモジュール2からの光を拡散しつつ透過する。エンドキャップ3における拡散材の比率は、拡散カバー12における拡散材の比率と同程度である。」(【0060】)の記載に基づくものであるから、上記訂正事項による訂正は、子出願の明細書等に記載した事項の範囲内でしたものであり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(c)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2による訂正は、訂正前の請求項1の「光を透過させるエンドキャップ」との事項を「光を透過させつつ拡散させるエンドキャップ」との事項に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項2による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
c 小括
以上によれば、訂正事項1、2による訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定することを目的とするものであり、同法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、子出願訂正は適法である。
(ウ)子出願の発明
上記(イ)のとおり子出願訂正は認められるから、子出願訂正後の子出願の請求項1~7に係る発明(以下、それぞれ、「子出願訂正発明1」~「子出願訂正発明7」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】
第1の面と第2の面とを備えた矩形の基板と、
前記基板の前記第1の面上に長手方向に沿って配列された複数のLED発光部と、
前記基板の前記第2の面側に前記複数のLED発光部に電気的に接続されて配置された電力変換部と、
前記長手方向に伸長し且つ前記基板の前記第1の面と対向して配置されて前記複数のLED発光部を覆う拡散カバーと、
前記拡散カバーと接続されて前記長手方向と直交する短手方向に伸長し且つ前記拡散カバーの前記長手方向両端において前記拡散カバーと共に前記LED発光部を覆う前記LED発光部から発せられた光を透過させつつ拡散させるエンドキャップと、
前記基板の前記第2の面と傾斜角をなす第3の面を備えるとともに前記長手方向と垂直である短手方向に離間し且つ前記長手方向に延びる二辺に沿って各々が延びる一対の側部を備え、前記側部により前記電力変換部の一部を覆って形成されたウイング部と、
を有することを特徴とする、LED照明装置。
【請求項2】
前記ウイング部の前記一対の側部は、前記基板の前記第1の面と垂直である方向視において前記基板を挟んでいる、請求項1に記載のLED照明装置。
【請求項3】
前記複数のLED発光部は、光が出射される表面と、前記表面の外縁に接続されて前記表面と垂直方向に伸びる側面とを備え、
前記複数のLED発光部の前記側面の少なくとも一部は、前記複数のLED発光部の前記表面と平行な方向視において前記ウイング部の前記一対の側部に覆われている、請求項1または2に記載のLED照明装置。
【請求項4】
前記拡散カバーの少なくとも一部は、前記基板の前記第1の面と垂直な方向において前記側部よりも前記LED発光部から発射される光の出射方向側に突出している、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のLED照明装置。
【請求項5】
前記ウイング部の前記一対の側部の互いの距離は、前記第2の面と垂直である方向において前記LED発光部から前記電力変換部が形成された側に向かうにつれて長くなる、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のLED照明装置。
【請求項6】
前電力変換部に電気的に接続された電源配線と、前記電源配線に接続されたコネクタと、を有する、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のLED照明装置。
【請求項7】
前記拡散カバーの少なくとも一部は、前記基板の前記第1の面に対し湾曲している、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のLED照明装置。」
イ 「光を通過させるエンドキャップ」について
上記アで説示したとおり、子出願訂正は適法であり、子出願訂正発明1は、「エンドキャップ」について、「光を通過させつつ拡散させるエンドキャップ」との構成を有するものであるから、「エンドキャップ」について、請求人の主張する分割要件違反がないことは明らかである。
ウ 「ウイング部」について
(ア)親出願の当初明細書等の記載事項
親出願の当初明細書等(甲1参照。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は当審が付与。以下同様。)。
「【背景技術】
・・・
【0003】
このLEDランプ900は、端子94を天井などに設置されたたとえば蛍光灯用のソケットの差込口に嵌合させることにより、複数のLEDチップ92を発光させることができるように構成されている。LEDチップ92は、低消費電力であるとともに長寿命であることから、LEDランプ900を既存の蛍光灯の代替として利用すれば、コスト面および環境面において改善が期待できる。
【0004】
しかしながら、LEDランプ900は長手方向の両端に端子94が配置されているため、複数個のLEDランプ900を長手方向に沿って並ぶように繋ぎ合わせた場合、LEDランプ900同士の繋ぎ目部分を発光させることが不可能であった。このため、LEDランプ900を繋ぎ合わせて長尺の照明装置を構成する場合、長手方向に沿って発光しない暗部が断続的に並ぶことになり、見るものに煩雑な印象を与えることがあった。
【0005】
また、一列に並ぶ複数のLEDチップ92では、その列を中心として急峻な輝度分布を生じ、眩しく感じられやすい。これは、LEDチップ92の個数が多くなるほどより顕著となる。これにより、全体の光量増加と輝度の均一化とを両立させ難い面があった。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、より見栄えのよい長尺のLED照明装置と、そのようなLED照明装置を実現可能なLEDランプおよびLEDランプを収容するのに適したランプケースの提供を課題としている。また、全体の光量増加とともに輝度の均一化を図ることができるLEDモジュールおよびLED照明装置を提供することをその課題としている。」
「【課題を解決するための手段】
・・・
【0009】
本発明の第2の側面によって提供されるLEDランプは、本発明の第1の側面によって提供されるLEDランプにおいて、上記筒体は、上記第1の方向と直交する第2の方向における一方側に上記複数のLEDモジュールを搭載する搭載面を有する支持部材と、上記支持部材の上記第2の方向における一方側を覆い、上記複数のLEDモジュールからの光を透過させつつ拡散させる拡散カバーとを具備しており、上記出射面は、上記第2の方向における一方側に形成されている。」
「【0047】
このような構成では、拡散カバーにおいてLEDチップから近い部分が遠い部分よりもLEDチップからの光をより強く拡散し、より少ない光を透過させる。そのため、LEDチップから遠い部分と近い部分とで、拡散カバーを透過した後の光の強さに差が生じにくくなっている。したがって、本発明の第2の側面によれば、拡散カバーによって輝度の均一化がより一層図られ、発光時における見栄えをよりよくすることができる。」
「【0056】
拡散カバー12は、図1に示すようにx方向に延びる断面円弧状の帯状であり、たとえば、塩化水銀などの拡散材を添加された透明なポリカーボネート樹脂により形成されている。このような拡散カバー12は、LEDモジュール2からの光を拡散しつつ透過する。・・・」
「【0060】
エンドキャップ3は、拡散カバー12と同様に、たとえば、塩化水銀などの拡散材を添加された透明なポリカーボネート樹脂により形成されている。このようなエンドキャップ3は、LEDモジュール2からの光を拡散しつつ透過する。エンドキャップ3における拡散材の比率は、拡散カバー12における拡散材の比率と同程度である。」
「【0106】
たとえば、LEDモジュール2の個数および設置間隔は適宜設定可能である。上述した実施形態ではLEDモジュール2が一定間隔で配置されているが、LEDモジュール2が不規則に配置されている場合であっても、エンドキャップ3が光を透過させつつ拡散させる構成であれば本発明の効果は生じる。・・・」
「【0110】
図29に示すように、複数の発光部202は、基板201の一面に実装されており、その長手方向に沿って2つの列202A,202Bをなすように配置されている。基板201の一面を厚み方向(図29の紙面を貫く方向)に見た状態において、発光部202は、長矩形状の光出射面220を有する。全ての発光部202は、光出射面220の長辺220aが基板201の長手方向に沿うように配置されている。各列202A,202Bの発光部202どうしは、基板201の長手方向に間隔85をあけて等間隔に並んでいる。この間隔85は、光出射面220の長辺220aと同程度の寸法である。列202A,202Bどうしは、基板201の長手方向に半ピッチずれている。これにより、複数の発光部202は、千鳥配列になっている。なお、本実施形態では、間隔85が光出射面220の長辺220aと同程度であるが、この間隔85が長辺220aより長くてももちろんよい。」
「【0114】
図31に示すように、マウント203は、本体230および複数のホルダ231を備えている。本体230は、同図の紙面を貫く方向に延びる細長状であり、たとえばアルミ製である。本体230には、凹部230aが設けられている。凹部230aは、LEDモジュール511を収容するためのものである。本体230は、凹部230aを挟んで連続するような曲率とされた曲面を有している。
【0115】
本体230は、ベースプレート310およびウイング320によって構成されている。ベースプレート310は、図31の紙面を貫く方向を長手方向とし、y方向を幅方向とする細長の板状に形成されており、複数の膨出部311を備えている。ベースプレート310のy方向における両端縁は、剛性を確保するために、z方向下方に向けて折り曲げられている。複数の膨出部311は、z方向下方に突出するように形成された部分であり、図31の紙面を貫く方向に沿って互いに離間するように配列されている。各膨出部311は、ウイング部320に当接している。
【0116】
ウイング部320は、図31の紙面を貫く方向に見て全体的に傘状に形成されており、内側に底板部321、2つの壁部322、および規制部323を有している。底板部321は、ベースプレート310に対して平行である。2つの壁部322は、底板部321のy方向両端からz方向に起立している。底板部321および2つの壁部322は、LEDユニット2を収容するための凹部230aを構成している。一方側の壁部322には、弾性部材であるホルダ231が配置されており、他方側の壁部322には、規制部材323が形成されている。規制部材323は、壁部322からy方向に突出する板状であり、壁部322に対して直角である。この規制部材323は、たとえば図31の紙面を貫く方向におけるウイング部320の略全長に渡って設置される。」
「【0118】
図31に示すように、支持部材204は、複数のLEDモジュール511を支持しつつ、これに電力を供給するためのものである。複数のLEDモジュール511は、その長手方向(同図の紙面を貫く方向)に沿って並んだ状態で支持部材204に支持されている。
【0119】
支持部材204は、ベース部241および一対のアウター部242からなる。ベース部241およびアウター部242は、たとえばアルミ製である。ベース部241は、断面コの字状であり、その底面の外側にLEDモジュール511の基板201が取り付けるための凹部410が形成されている。凹部410は、z方向上方に凹んでおり、基板201が嵌め込まれる。アウター部242は、ベース部241の略片側部分と、基板201のy方向端縁とを覆う形状とされている。」
「【0122】
図31および図32に示すように、拡散カバー205は、同図の紙面を貫く方向に延びる断面円弧状であり、LEDモジュール511からの光を拡散しつつ透過するたとえば乳白色の樹脂からなる。図31に示すように、拡散カバー205の両端縁には、係止片251,252が形成されている。一方の係止片251は、係止溝421と係合する。他方の係止片252は、係止溝422と係合する。
【0123】
図32に示すように、拡散カバー205の中央部205aは、LEDモジュール511のz方向真下を中心とし、y方向に一定幅を有する領域である。中央部205aのy方向における幅は、発光部202が千鳥配列に並ぶy方向の幅よりも長くなるように形成されている。中央部205aは、本発明の要部となる強拡散部の一例に相当する。
【0124】
電力変換部206は、たとえば商用AC100V電力をDC36Vに変換する機能を果たすものであり、支持部材204に収容されている。電力変換部206は、ケース261、電源基板262および複数の電子部品263からなる。ケース261は、断面コの字状であり、たとえば金属製である。ケース261は、電力変換部206をベース部241に固定するために用いられる。電源基板262は、ケース261に固定されており、複数の電子部品263が実装されている。複数の電子部品263は、たとえばトランスや整流器、さらには定電流制御のためのトランジスタなどである。電力変換部206からは、図示しないコネクタが延びている。このコネクタは、マウント203に取り付けられたコネクタ(図示略)と接続される。
【0125】
本実施形態においては、複数の電力変換部206が設けられており、1つの電力変換部206から複数のLEDモジュール511の発光部202に対して給電される。たとえば各LEDチップ221には、電圧が3V程度、電流が20mA程度の直流電力が供給される。」
「【0129】
すなわち、上記発光領域は、線状に集中して光るようには見えず、ある程度帯状に広がって光るように見える。そのため、複数の発光部202がそれほど眩しく感じられることはない。したがって、LEDモジュール511によれば、複数の発光部202を千鳥配列に並べることにより、全体の光量増加を図るとともに、輝度の均一化を図ることができる。
【0130】
本実施形態のLED照明装置611では、拡散カバー205の厚く形成された部分ほど光をより拡散し、光透過率が低下する。このため、拡散カバー205の中央部205aは、その他の領域よりも光透過率が小さな値となっている。たとえば、中央部205aにおける光透過率は75%程度であり、その他の領域における光透過率は85%程度である。
【0131】
拡散カバー205は、中央部205aにおいてLEDモジュール511との距離が最も小さく、中央部205aからy方向に離間するほどLEDモジュール511との距離が大きくなるように形成されている。このため、中央部205aに到達するLEDモジュール511からの光の強さは、他の領域に到達するLEDモジュール511からの光の強さよりも大きくなる。
【0132】
LED照明装置611によれば、比較的強い光が到達する中央部205aにおいて光透過率を小さくすることにより、中央部205aから出射される光とその他の領域から出射される光とが、同程度の強さとなる。このため、LED照明装置611では、点灯時に拡散カバー205から出射される光のムラが抑えられ、個々の発光部202が点々と配置されている様や列202A,202Bをなす様が視認されることを防止することができる。したがって、LED照明装置611によれば、拡散カバー205によって輝度の均一化がより一層図られ、点灯時の見栄えをよりよくすることができる。」
図29
[図:0001396762000001.jpg]
図31
[図:0001396762000002.jpg]
(イ)「ウイング部」の「側部」について
親出願の当初明細書等の【0116】及び図31の記載によれば、ウイング部は、図31において、符号320が付された部材であり、図31の紙面を貫く方向に見て全体的に傘状に形成されており、内側に底板部321、2つの壁部322、および規制部323を有する部材であると認められる。
一方、ウイング部の「側部」については、子出願訂正発明1において、「前記基板の前記第2の面と傾斜角をなす第3の面を備えるとともに前記長手方向と垂直である短手方向に離間し且つ前記長手方向に延びる二辺に沿って各々が延びる一対の側部」と特定され、前記第2の面については、「前記基板の前記第2の面側に前記複数のLED発光部に電気的に接続されて配置された電力変換部」と特定され、図31における基板201が、前記基板の具体例であり、図31における基板201の上側の面が、前記第2の面の具体例であると認められる。
そうすると、図31における「符号320が直接付されている部分」は、基板201の上側の面と傾斜角をなす面を備えており、短手方向に離間して一対であること等を勘案すると、図31における、少なくとも「符号320が直接付されている部分」を含むものが、子出願訂正発明1の「ウイング部」の「側部」の具体例であると解するのが自然である。
(ウ)「前記側部により前記電力変換部の少なくとも一部を覆って形成されたウイング部」について
上記(イ)で説示したとおり、図31における、少なくとも「符号320が直接付されている部分」を含むものは、子出願訂正発明1の「ウイング部」の「側部」の具体例であり、図31をみる限り、電力変換部206の側面の一部を覆っているといえるから、図31におけるウイング部320は、子出願訂正発明1の「前記側部により前記電力変換部の一部を覆って形成されたウイング部」の具体例であると認められる。
そうすると、子出願訂正発明1の「前記側部により前記電力変換部の一部を覆って形成されたウイング部」なる構成は、親出願の当初明細書等に記載した事項の範囲内のものであるから、上記構成について分割要件違反はないと認められる。
エ 子出願の分割要件違反についてのまとめ
したがって、上記イ、ウで説示したとおり、子出願は、親出願に対して分割要件違反を有さず、適法な分割出願であると認められる。
(2)孫出願について
ア 孫出願訂正について
(ア)孫出願訂正の内容
被請求人が求める孫出願訂正は、孫出願の願書に添付した特許請求の範囲を、令和4年5月13日の訂正請求書(乙7)に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正事項は以下のa~dのとおりである(なお、下線部は訂正箇所である。)。
a 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1における
「前記基板および前記ベース部の前記底面部を覆う長尺状の透光カバーと、前記断面コの字形状の前記ベース部の内側に固定された電力変換部と、
平面視において前記透光カバーの短手方向両側に位置し」
との記載を
「前記基板および前記ベース部の前記底面部を覆う長尺状の拡散カバーと、前記断面コの字形状の前記ベース部の内側に固定された電力変換部と、
平面視において前記拡散カバーの短手方向両側に位置し」
に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2乃至4も同様に訂正する)。
b 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2における
「前記透光カバーは樹脂製である、」
との記載を
「前記拡散カバーは樹脂製である、」
に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3及び4も同様に訂正する)。
c 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3における
「前記透光カバーは、前記長手方向視において断面円弧状である、」
との記載を
「前記拡散カバーは、前記長手方向視において断面円弧状である、」
に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4も同様に訂正する)。
d 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4における
「前記透光カバーの中央部は、その他の領域よりも光透過率が小さい、」
との記載を
「前記拡散カバーの中央部は、その他の領域よりも光透過率が小さい、」
に訂正する。
e 一群の請求項
孫出願訂正は、一群の請求項〔1~4〕に対して請求されたものである。
(イ)孫出願訂正の適否
a 訂正の目的
訂正事項1~4(上記(ア)a~d参照。)による訂正は、それぞれ、訂正前の請求項1~4の「透光カバー」を、「拡散カバー」にするものであり、孫出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「孫出願の明細書等」という。)の【0009】等の記載によれば、拡散カバーは、光を透過させつつ拡散するものであって、透光カバーに対して、「拡散する」という事項を限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の滅縮を目的とするものである。
b 孫出願の明細書等に記載した事項の範囲内でした訂正であること
訂正事項1~4による「拡散カバー」との事項は、孫出願の明細書等の「上記複数のLEDモジュールからの光を透過させつつ拡散させる拡散カバー」(【0009】)との記載に基づくものであるから、訂正事項1~4による訂正は、孫出願の明細書等に記載した事項の範囲内でしたものであると認められ、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである 。
c 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1~4による訂正は、訂正前の請求項1~4の「透光カバー」を、「拡散カバー」に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項1~4による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
d 小括
以上によれば、訂正事項1~4による訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定することを目的とするものであり、同法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、孫出願訂正は適法である。
(ウ)孫出願の発明
上記(イ)のとおり孫出願訂正は認められるから、孫出願訂正後の孫出願の請求項1~4に係る発明(以下、それぞれ、「孫出願訂正発明1」~「孫出願訂正発明4」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】
複数のLED発光部と、
前記複数のLED発光部が長手方向に沿って配列された長尺状の基板と、
断面コの字形状であり、前記コの字形状の底面部の外側に前記基板が設けられたベース部と、
前記基板および前記ベース部の前記底面部を覆う長尺状の拡散カバーと、
前記断面コの字形状の前記ベース部の内側に固定された電力変換部と、
平面視において前記拡散カバーの短手方向両側に位置し且つ前記長手方向視において前記基板に対して全体的に傾いた2つの傾斜部、当該2つの傾斜部の内側に位置する底板部、および前記底板部の前記短手方向両端から起立する2つの壁部、を有する長尺状のウイング部と、を備え、
前記底板部および前記2つの壁部は、前記長手方向視において前記基板および前記電力変換部が固定された前記ベース部を収容するための凹部を構成している、LED照明装置。
【請求項2】
前記ベース部は金属製であり、前記拡散カバーは樹脂製である、請求項1に記載のLED照明装置。
【請求項3】
前記拡散カバーは、前記長手方向視において断面円弧状である、請求項1または2に記載のLED照明装置。
【請求項4】
前記拡散カバーの中央部は、その他の領域よりも光透過率が小さい、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のLED照明装置。」
イ 「エンドキャップ」の削除
(ア)特許請求の範囲においてある構成がない場合について
特許法第36条第5項に、「第2項の特許請求の範囲は、請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。・・・」と規定され、特許請求の範囲に、発明の構成としてどの構成を含むかは、特許出願人の責任により行われることであるところ、願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載された発明、特に、複数の構成を有する発明について、出願後に、特許請求の範囲に記載する際に、単に、ある構成が特許請求の範囲に記載されていないことによって、新規事項を追加することになるとは、一般にはいえない。
ある構成が特許請求の範囲に記載されていないことによって、新規事項を追加するものであるというためには、当該ある構成が発明の対象の構成として必要不可欠の構成であるというだけでは不十分であり、(a)当初明細書等において、当該ある構成を含む、技術的にまとまりがある事項が記載されること、(b)当初明細書等の記載によって、該技術的にまとまりがある事項において、当該ある構成が必要不可欠の構成であることが認められること、及び、(c)該技術的にまとまりがある事項に基づく発明が出願後に特許請求の範囲に追加され、追加された該発明が当該ある構成を含まないこと、の3つの条件が成り立つことが少なくとも必要であると解するのが相当である。
(イ)親出願の当初明細書等について
親出願の当初明細書等には、より見栄えのよい長尺のLED照明装置の提供や、全体の光量の増加とともに輝度の均一化を図ることができるLED照明装置の提供を課題とし(【0007】参照)、LED照明装置等において、LEDモジュールからの光を通過させつつ拡散させるエンドキャップを設け(【0060】、【0106】等参照)、LEDモジュールで発光部を千鳥配列し(【0110】、図29等参照)、LEDモジュールからの光を通過させつつ拡散させる拡散カバーを設け(【0009】、【0057】、【0122】等参照)、これらによって、全体の光量増加を図るとともに、輝度の均一化を図ることができることや、輝度の均一化がより一層図られ、転倒時の見栄えがよりよくさせることができること等の効果を奏すること(【0106】、【0129】、【0132】等参照)が記載されていると認められる。
(ウ)孫出願訂正発明1の「エンドキャップ」について
親出願の当初明細書等及び孫出願の上申書(乙4)の記載を参照すると、孫出願訂正発明1は、主に、親出願の当初明細書等の【0109】~【0132】及び、図29、31の記載に基づくものであると認められるところ、【0109】~【0132】及び、図29、31には、「エンドキャップ」についての記載はない。
また、上記(イ)で示したように、「エンドキャップ」は、親出願の当初明細書等に記載の課題を解決するための複数の手段の1つではあるが、必要不可欠の構成であるとはいえず、上記(ア)で示した(a)~(c)の条件のうち、少なくとも(b)の条件を満たさないから、孫出願訂正発明1において、「エンドキャップ」がないことが新規事項の追加になるとは認められない。
(エ)請求人の主張について
請求人は、親出願において、「エンドキャップ」は必要不可欠の構成であるから、孫出願の請求項1に係る発明において、「エンドキャップ」がないことは新規事項を追加するものあり、分割要件違反である旨主張する(上記「第4 1(2)イ(ア)」)。
しかしながら、上記(ウ)で説示したとおり、親出願において、「エンドキャップ」は必要不可欠の構成とはいえないから、請求人の上記主張は、前提において根拠を欠くものであり、採用できない。
(オ)小括
以上によれば、孫出願訂正発明1において、「エンドキャップ」がないことは、新規事項を追加するものとはいえず、分割要件違反ではない。
ウ 「透光カバー」について
上記アで説示したとおり、孫出願訂正は適法であり、孫出願訂正発明1~4は、「透光カバー」を「拡散カバー」に訂正したものであるところ、親出願の当初明細書等の【0009】には、「上記複数のLEDモジュールからの光を透過させつつ拡散させる拡散カバー」と記載されている等、「拡散カバー」との構成は、親出願の当初明細書等に記載した事項の範囲内のものであるから、分割要件違反がないことは明らかである。
エ 孫出願の分割要件違反についてのまとめ
したがって、上記イ、ウで説示したとおり、孫出願は、親出願に対して、分割要件違反を有さず、適法な分割出願であると認められる。
(3)本件特許出願(曾孫出願)について
ア 「エンドキャップ」の削除
本件発明1において、「エンドキャップ」がないことが、新規事項を追加するものになるか否かは、孫出願訂正発明1において、「エンドキャップ」がないことが、新規事項を追加するものになるか否かであることと実質的に同じであるので、上記(2)イで説示したのと同様に、本件発明1において、「エンドキャップ」がないことが、新規事項を追加するものになるとはいえず、分割要件違反ではない。
イ 「電力変換部」の削除
(ア)孫出願の明細書等について
孫出願の願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面(甲4参照。以下、「孫出願の明細書等」という。)は、特許請求の範囲を除いて、親出願の当初明細書等と同じであることから、孫出願の明細書等にも、より見栄えのよい長尺のLED照明装置の提供や、全体の光量の増加とともに輝度の均一化を図ることができるLED照明装置の提供を課題とし(【0007】参照)、LED照明装置等において、LEDモジュールからの光を通過させつつ拡散させるエンドキャップを設け(【0060】、【0106】等参照)、LEDモジュールで発光部を千鳥配列し(【0110】、図29等参照)、LEDモジュールからの光を通過させつつ拡散させる拡散カバーを設け(【0009】、【0057】、【0122】等参照)、これらによって、全体の光量増加を図るとともに、輝度の均一化を図ることができることや、輝度の均一化がより一層図られ、転倒時の見栄えがよりよくさせることができること等の効果を奏すること(【0106】、【0129】、【0132】等参照)が記載されていると認められる。
(イ)本件発明1の「エンドキャップ」について
本件特許出願の上申書(乙5)等を参照すると、本件発明1は、孫出願訂正前の孫出願の請求項1に係る発明から、「電力変換部」に関する構成を削除したものであると認められる。
上記(2)イ(ウ)で示したのと同様に、孫出願訂正前の孫出願の請求項1に係る発明は、主に、親出願の当初明細書等の【0109】~【0132】及び図29、31の記載に基づくものであると認められるところ、本件発明1は、孫出願の明細書等の【0109】~【0132】及び図29、31の記載に基づくものであると認められ、「電力変換部」について、孫出願の明細書等の【0124】、【0125】には、「電力変換部206」として記載されている。
しかしながら、上記(ア)で示したように、「電力変換部」は、孫出願の明細書等に記載の課題を解決するための手段には含まれず、必要不可欠の構成であるとはいえず、上記(2)イ(ア)で示した条件のうち、少なくとも、(b)の条件を満たさないから、本件発明1において、「電力変換部」がないことが新規事項の追加になるとは認められない。
ウ 「透光カバー」について
上記第2で説示したとおり、本件訂正は適法であり、本件発明1、3~6は、「透光カバー」を「拡散カバー」に訂正したものであるところ、親出願の当初明細書等の【0009】には、「上記複数のLEDモジュールからの光を透過させつつ拡散させる拡散カバー」と記載されている等、「拡散カバー」との構成は、親出願の当初明細書等に記載した事項の範囲内のものであるから、分割要件違反がないことは明らかである。
エ 本件特許出願の分割要件違反についてのまとめ
したがって、上記ア~ウで説示したとおり、本件特許出願は、親出願や孫出願に対して、分割要件違反を有さず、適法な分割出願であると認められる。
(4)分割要件違反についてのまとめ
以上によれば、上記(1)~(3)に説示したとおり、子出願、孫出願及び本件特許出願には、請求人が主張する分割要件違反があるとは認められないから、本件特許出願は適法な分割出願である。
2 無効理由について
上記1で説示したとおり、本件特許出願は、適法な分割出願であり、本件特許出願の出願日は、親出願の出願日に遡及すると認められ、親出願の公開公報である甲1の公開日は、本件特許出願の出願日より後であるから、本件特許の請求項1~6に係る発明は、本件特許の出願日前に頒布された甲1に記載された発明である、又は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
そうすると、本件特許は無効にすべきであるとの無効理由は、甲1の公開日が本件特許出願の出願日より前であることが前提であるところ、上記のとおり、該前提は成り立たないから、この無効理由に理由がないことは明らかである。
なお、請求人は、令和4年7月20日の審判事件弁駁書において、「甲第1号証以外にも、公知文献である甲第9号証、甲第10号証(ローム発明)を提出している。仮に、本件訂正請求が認められ、本件特許の出願日が原出願日に遡及したとしても、その場合には、甲第1号証の主引用例としての適格性が否定されることとなるものの、上記のローム発明は原出願日よりも前の公知文献であり、これら他の引用例や設計変更論により、進歩性が否定されることとなる。」(16ページ7~12行)と主張する。
しかしながら、甲9、甲10は、審判請求書において、本件特許の請求項3に係る発明と甲1に記載された発明との間に相違点が存在した場合に、当該相違点について、当業者が容易に想到し得たものであることを示すために提示されたもの(34ページ10行~35ページ8行)であるから、請求人の上記主張は、審判請求書の記載と整合せず、当を得たものではない。
第7 むすび
以上によれば、請求人が主張する無効理由及び証拠方法によっては、本件発明1~6についての特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-800029