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特許異議申立

2022-701322

飲料、飲料の製造方法並びに飲料のフローラルな香り及び柑橘的な香りを改善する方法。

審判番号
2022-701322
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-098176
登録番号
7096646
請求日
2022年12月28日
審決日
2023年03月13日
公報発行日
2023年05月26日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】サッポロビール株式会社
  • 【権利者代理人】長谷川 芳樹
  • 【権利者代理人】清水 義憲
  • 【権利者代理人】坂西 俊明
  • 【権利者代理人】福島 直樹
  • 【権利者代理人】和田 雄二
  • 【権利者代理人】吉住 和之
  • 【異議申立人】竹口 美穂
  • 【異議申立人】芦田 桂
審判長/審判官
  • 審判長 磯貝 香苗
  • 審判官 加藤 友也
  • 審判官 三上 晶子
分類
P1651.113-Y (A23L) / P1651.121-Y (A23L) / P1651.16 -Y (A23L) / P1651.537-Y (A23L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法113条2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条の2、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7096646号発明「飲料、飲料の製造方法並びに飲料のフローラルな香り及び柑橘的な香りを改善する方法。」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7096646号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7096646号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、平成29年5月17日を出願日とする出願であって、令和4年6月28日にその特許権の設定登録(請求項の数7)がされ、同年7月6日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年12月28日に特許異議申立人 竹口 美穂(以下、「特許異議申立人A」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし7)がされ、令和5年1月6日に特許異議申立人 芦田 桂(以下、「特許異議申立人B」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし7)がされたものである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1ないし7に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 ゲラニルアセテートと、β‐カリオフィレンと、ヌートカトンと、を含有し、 ゲラニルアセテートの含有量が1.5μg/L以上であり、 β‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg/L以下であり、 ヌートカトンの含有量が3.0μg/L以上10.0μg/L以下である、飲料(但し、Jinchen果汁を含有する飲料を除く。)。 【請求項2】 炭酸飲料である、請求項1に記載の飲料。 【請求項3】 アルコール飲料である、請求項1又は2に記載の飲料。 【請求項4】 ビールテイスト飲料である、請求項1~3のいずれか一項に記載の飲料。 【請求項5】 麦芽使用比率が50質量%以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の飲料。 【請求項6】 飲料中のゲラニルアセテートの含有量が1.5μg/L以上となり、飲料中のβ‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg/L以下となり、ヌートカトンの含有量が3.0μg/L以上10.0μg/L以下となるように調整することを含む、飲料(但し、Jinchen果汁を含有する飲料を除く。)の製造方法。 【請求項7】 飲料中のゲラニルアセテートの含有量が1.5μg/L以上となり、飲料中のβ‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg/L以下となり、ヌートカトンの含有量が3.0μg/L以上10.0μg/L以下となるように調整することを含む、飲料(但し、Jinchen果汁を含有する飲料を除く。)のフローラルな香り及び柑橘的な香りを改善する方法。」 第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 1 特許異議申立人Aが提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 令和4年12月28日に特許異議申立人Aが提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書A」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 (1)申立理由A1(甲第A1号証に基づく進歩性) 本件特許発明1ないし7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)申立理由A2(甲第A6号証に基づく進歩性) 本件特許発明1ないし7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A6号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (3)申立理由A3(甲第A9号証に基づく進歩性) 本件特許発明1ないし7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A9号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (4)申立理由A4(甲第A7号証に基づく進歩性) 本件特許発明1ないし7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A7号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (5)申立理由A5(甲第A10号証に係る特許出願に基づく拡大先願) 本件特許発明1ないし4及び6は、本件特許の出願の日前を出願日とする特許出願であって、本件特許の出願後に出願公開がされた下記の甲第A10号証に係る特許出願(特願2016-135638号)の願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者がその出願の日前を出願日とする特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、本件特許の出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4及び6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (6)申立理由A6(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ア 本件特許明細書に記載された評価試験は、客観的に正確に評価したものではない。 イ ゲラニルアセテートの含有量が1.5μg/L以上の全範囲にわたる場合にも本件特許発明の課題を解決できるとは認識できない。 ウ 本件特許明細書に記載の含有量オーダーで実際に香りを評価できるのか不明である。 エ 本件特許明細書の実施例で効果を確認しているのは、限られた飲料のみである。 (7)申立理由A7(明確性要件) 本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ・ゲラニルアセテートの含有量の上限値が特定されていないため、発明の範囲が不明確である。 (8)証拠方法 甲第A1号証:特開2016-116493号公報 甲第A2号証:楊 栄華、外4名、“香酸柑橘類の果皮精油の匂い特性の比較”、日本食品工業学会誌、1992年1月、第39巻、第1号、p.16-24 甲第A3号証:特開2016-36319号公報 甲第A4号証:特開2015-84751号公報 甲第A5号証:沢村正義、“カンキツ類のフレーバー”、化学と生物、1994年、第32巻、第2号、p.114-119 甲第A6号証:特開2005-312302号公報 甲第A7号証:特開2012-29638号公報 甲第A8号証:Val E.Peacock、外1名、“Chemistry of Hop Aroma in Beer”、Journal of the American Society of Brewing Chemists、1981年、第39巻、第4刷、p.136-141 甲第A9号証:特開2006-180839号公報 甲第A10号証:特開2017-176163号公報 甲第A11号証:代永道裕、“悪臭の発生原理と測定法”(p.1-14)、[online]、2006年11月14日、九沖農研(九州沖縄農業研究センター)、[令和4年12月13日検索]、インターネット<URL:https://www.naro.go.jp/training/files/2006-20material.pdf> 証拠の表記は、特許異議申立書Aの記載におおむね従った。以下、順に「甲A1」のようにいう。 2 特許異議申立人Bが提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 令和5年1月6日に特許異議申立人Bが提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書B」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 (1)申立理由B1(甲第B1号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1、2、6及び7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1ないし7は、甲第B1号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)申立理由B2(甲第B3号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1、2、6及び7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1ないし7は、甲第B3号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (3)申立理由B3(甲第B4号証に基づく進歩性) 本件特許発明1ないし7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B4号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (4)証拠方法 甲第B1号証:特開2014-176323号公報 甲第B2号証:Phytochemical Analysis(2009),20(5),402-407、2009年7月16日、John Wiley&Sons,Ltd. 甲第B3号証:特開2010-213593号公報 甲第B4号証:特開2012-29642号公報 甲第B5号証:News Release、2015年2月23日、ハウス食品グループ本社株式会社 甲第B6号証:2010 果汁関係資料、平成22年11月25日、社団法人 日本果汁協会 甲第B7号証:特開2011-167171号公報 甲第B8号証:Flavor Ingredients SIXTH EDITION、2010年、CRC Press 証拠の表記は、特許異議申立書Bの記載におおむね従った。以下、順に「甲B1」のようにいう。 第4 当審の判断 1 主な証拠に記載された事項等 (1)甲A1に記載された事項等 ア 甲A1に記載された事項 甲A1には、「レモン果汁含有飲料」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものと予め付されたものである。他の文献についても同様。 ・「【請求項1】 (a)リナロール、ノナナール、及びデカナールからなる群から選択される1種以上の香気成分を含有し、 (b)サフロール、メチルオイゲノール、及びミリスチシンからなる群から選択されるフェニルプロペン類物質のうちの少なくとも1種を1ppb以上含有し、 果汁率が1%以上30%以下である、レモン果汁含有飲料。 ・・・(略)・・・ 【請求項3】 さらにヌートカトンを含有する、請求項1または2に記載の飲料。」 ・「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 柑橘類果実の中でも、レモンは、そのままで食することができないほどの強い酸味を有する果実であり、レモン果汁そのものを飲用することはできないから、レモンテイスト飲料を製造するに際しては、通常、レモン果汁のみではなく、レモン香料やレモンフレーバーを飲料に添加することにより、レモン果実の香味を再現することになる。しかしながら、少ないレモン果汁に従来のレモン香料やレモンフレーバーを加えたのみの場合には、フレッシュさや力強い香味が少ない、いわゆる「本物のレモンらしさ」に欠ける飲料になってしまうという問題があった。本発明は、果汁の含有率が少ないにもかかわらず、レモン果実らしい爽やかさや、レモン果皮を剥いたときのようなフレッシュな香気が感じられる、本格的なレモンらしさを有する飲料を製造することを目的とする。」 ・「【0022】 (ヌートカトン) 上記の香気成分に加えて、飲料中にヌートカトンが含まれていると、飲料のフレッシュなレモンらしさが向上するので好ましい。したがって、飲料がさらにヌートカトンを含有することは、本発明の好ましい態様の1つである。ヌートカトンは、分子式C15H22Oで表されるセスキテルペンケトンの1種であり、グレープフルーツに特徴的な香気成分である。ヌートカトンの飲料中の含有量は、1~200ppbが好ましく、20~200ppbがさらに好ましい。グレープフルーツに特徴的なヌートカトンによりフレッシュなレモンらしさが向上する理由は明らかではないが、本発明者らは、グレープフルーツを想起させる香気成分が適量範囲で飲料中に含まれると、グレープフルーツ果実にあるような柑橘の爽やかさや果皮感が飲料に付与され、結果として、飲料全体の柑橘らしさやフレッシュさが向上し、また、グレープフルーツ果皮に似たレモンの果皮感が想起されるようになり、レモンらしさが向上したものと推測している。ヌートカトンは、市販の香料の一部として飲料中に配合されてもよいし、飲料中の果汁由来のものであってもよい。」 イ 甲A1に記載された発明 甲A1に記載された事項を、特に【請求項1】、【請求項3】及び【0022】に関して整理すると、甲A1には次の発明(以下、「甲A1飲料発明」及び「甲A1製造方法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲A1飲料発明> 「ヌートカトンの飲料中の含有量が1~200ppbであるレモン果汁含有飲料。」 <甲A1製造方法発明> 「ヌートカトンの飲料中の含有量が1~200ppbであるレモン果汁含有飲料の製造方法。」 (2)甲A6に記載された事項等 ア 甲A6に記載された事項 甲A6には、「果汁を利用した発泡酒及びその製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【請求項1】 (1)麦芽を含む仕込液Aを糖化して麦汁を調製する工程と、 (2)果汁を含む仕込液Bを調製する工程と、 (3)仕込液Aと仕込液Bを混合する工程と、 (4)前記混合液に酵母を添加し、8℃以下で発酵させる工程とを含むことを特徴とする 発酵麦芽飲料の製造方法。 ・・・(略)・・・ 【請求項6】 果汁がりんご、ラズベリー、みかん、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、桃、イチゴ、メロン、スイカ、ぶどう、梨、洋梨、柘榴、ブルーベリー、クランベリー、パイナップル、バナナ、ライチ、キウイ、さくらんぼ及びその混合物からなる群から選ばれる、請求項1~5のいずれか1項記載の方法。」 ・「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 従って、本発明は、麦芽に由来するビールらしい香味を失わず、果汁由来の香味と調和した発酵麦芽飲料の製造方法を提供することを目的とする。」 ・「【0009】 本発明の発泡酒あるいは発酵麦芽飲料の製造方法について図1を参照して説明する。 本発明においては、麦芽を原料として含む仕込液Aと、果汁を含む仕込液Bとを分けて仕込を行う。 麦芽を含む仕込液Aは、主原料である麦芽の粉砕物に温水を加えて混合して液化を行い、マイシェを作る。この操作は、所定温度、通常は35~50℃で、所定時間、通常は20~90分間程度混合する。次に、このマイシェを仕込槽中において所定温度、通常は60~68℃で所定時間、通常は30~90分間程度保持して麦芽中に含まれる酵素あるいは添加した酵素の作用による糖化を行う。糖化終了後、加温して所定温度、通常は70~78℃で所定時間、通常は5~10分間保持することで、麦芽中に含まれる酵素あるいは添加した酵素の失活を行う。その後、麦汁濾過槽で濾過を行って濾液としての透明な麦汁を得る。仕込液Aには、麦芽以外の副原料、例えば液糖や澱粉質を用いてもよい。但し、澱粉質を用いる場合には、別途熱水により澱粉質をα化(糊化)したものを上記の60~68℃にて保持しているマイシェに加えて糖化する必要がある。 【0010】 次いで、この麦汁を煮沸釜に移し、ホップを加えて煮沸する。煮沸終了20分前以降、好ましくは10分前以降で発酵終了前に、果汁を含む仕込液Bを仕込液Aと混合する。上記タイミングで仕込液Bを加えることで、加熱による果汁の劣化を防ぐと共に、酵母が果汁成分を代謝することによる調和した香味が実現できる。仕込液Bには、果汁の他、液糖等他の原料を加えてもよい。仕込液Aと仕込液Bは、200:1~1:2の量で混合するのが好ましく、より好ましくは100:1~1:1である。果汁の使用量は果実の種類により異なるが、完成した麦芽発酵飲料の酸度が0.1~1.0%の範囲に入る量の果汁を使用したものの香味が優れている。 煮沸した混合麦汁をワールプールと称する槽に入れて、沈殿により生じた蛋白質等の粕を除去し、ついでプレートクーラーにより適切な発酵温度、通常は4~10℃まで冷却してから発酵タンクに移す。 発酵タンクに移した麦汁に酵母を加えて発酵を行う。麦汁に加える酵母の量は麦汁1ml当たり5×106~50×106cellsであるのが好ましく、より好ましくは10×106~30×106cellsである。また、発酵温度は8℃以下が好ましく、より好ましくは4~8℃である。発酵温度を上記範囲とすることで、硫化水素をはじめとする発泡主特有の不快臭(発泡酒臭)の生成を抑制し、かつビール由来の香気成分生成を抑制することができる。また、上記範囲の量の酵母を加えることで、効率よく発酵を行うことができる。 次いで、得られた発酵液を熟成(後発酵)させた後、濾過により酵母及び蛋白質を除去して目的の発酵麦芽飲料を得る。 本発明の製造方法において、使用する果汁としては、りんごやラズベリーの他に、みかん、オレンジ、レモン、グレープフルーツ等の柑橘類、桃、イチゴ、メロン、スイカ、ぶどう、梨、洋梨、柘榴、ブルーベリー、クランベリー、パイナップル、バナナ、ライチ、キウイ、さくらんぼ等果汁として利用できるものであればどのようなものでも使用することができる。果汁の量は、所望の発酵麦芽飲料に応じて適宜定めることができるが、一般的には果汁の重量(Brix60%換算)が麦芽重量100に対して5~500であり、好ましくは10~300である。これは用いる果汁の酸度によって異なり、最終製品の酸度が0.1~1.0%となるように調整するのが望ましい。」 イ 甲A6に記載された発明 甲A6に記載された事項を、特に【請求項1】及び【0010】に関して整理すると、甲A6には次の発明(以下、「甲A6飲料発明」及び「甲A6製造方法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲A6飲料発明> 「果汁と、ホップを含有する発酵麦芽飲料。」 <甲A6製造方法発明> 「果汁と、ホップを含有する発酵麦芽飲料の製造方法。」 なお、特許異議申立人Aは、「果汁」を「レモンやグレープフルーツ等の柑橘類の果汁」に特定して、甲6に記載された発明を認定している(特許異議申立書Aの第25及び27ページ)が、甲6の【請求項6】及び【0010】に「レモンやグレープフルーツ等の柑橘類」は、他の多くの果実と共に例示されているだけであるから、「果汁」を「レモンやグレープフルーツ等の柑橘類の果汁」に特定して、甲6に記載された発明を認定することはできない。 (3)甲A9に記載された事項等 ア 甲A9に記載された事項 甲A9には、「発泡アルコール飲料の製造方法及び当該方法で製造された発泡アルコール飲料」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【請求項1】 大麦、小麦及び麦芽を使用することなく、炭素源を含有するシロップ、窒素源、ホップ、色素、起泡・泡品質を改善する原材料及び水を原料として発酵前液を製造し、該発酵前液を酵母の使用によって発酵させることによる大麦、小麦及び麦芽を使用しない発泡アルコール飲料の製造方法において、果汁を原材料の一部として使用することを特徴とする発泡アルコール飲料の製造方法。 ・・・(略)・・・ 【請求項3】 前記果汁は、白ブドウ脱酸果汁、リンゴ脱酸果汁、リンゴ果汁、グレープフルーツ果汁及びドライプルーン果汁並びにそれらの加工品であることを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡アルコール飲料の製造方法。」 ・「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明は、上記した大麦、小麦及び麦芽を一切使用しない発泡アルコール飲料において、香味や製造工程における発酵性等を改善すると共に新たな香味をも備えた発泡アルコール飲料を提供するものであり、原材料の一部に果汁を用い、当該発泡アルコール飲料の持つすっきりとした飲み易さはそのままに基本的にはビール・発泡酒の香味に似た果実臭の目立たない独特の香味を有する発泡アルコール飲料を提供することを目的とする。」 ・「【0072】 (実施例4) 実施例4は、上記ビール様発泡アルコール飲料の製造方法において、ホップ、色素、及び起泡・泡品質を改善する原材料を除いて、香味のバランスを改善するとともに優れた発酵性をも改善する果汁を原材料の一部としてその製造工程にグレープフルーツ果汁(日進通商)を使用することにより本発明を適用した例で、以下の手順で実施した。」 イ 甲A9に記載された発明 甲A9に記載された事項を、特に【請求項1】、【請求項3】及び【0072】に関して整理すると、甲A9には次の発明(以下、「甲A9飲料発明」及び「甲A9製造方法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲A9飲料発明> 「グレープフルーツ果汁と、ホップを含有する発泡アルコール飲料。」 <甲A9製造方法発明> 「グレープフルーツ果汁と、ホップを含有する発泡アルコール飲料の製造方法。」 (4)甲A7に記載された事項等 ア 甲A7に記載された事項 甲A7には、「リンゴ様、グレープフルーツ様の香りを伴ったフルーツ様の香気が付与されたビールテイスト飲料およびその製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明は、リンゴ様、グレープフルーツ様の香りを伴ったフルーツ様の香気が感じられるビールテイスト飲料とその製造方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明者らは、飲料中の特定成分の含有量を所定の範囲に制御することにより、フルーツ様、具体的には、リンゴ様、グレープフルーツ様の香りを伴ったフルーツ様の香気の香気が感じられるビールテイスト飲料を製造できることを見出した。」 ・「【0051】 実施例1:醸造例 (a)醸造方法 評価に用いた貯酒サンプルは1.5Lスケールの装置を用いて作成した。仕込麦汁13.5度に調整した仕込麦汁(仕込時の麦芽使用比率67%,副原料(米・コーングリッツ・コーンスターチ)使用比率33%)を醸造試験に用いた。醸造試験では仕込麦汁を煮沸し、煮沸中あるいは煮沸後静置時に所定量のタウラス種ホップ(入手先:Hopsteiner社)を添加した(後記表2の試験区A、B、C、D、E、F)。具体的には、煮沸強度が一定で、かつ、60分間で蒸発率が10%となるように調節しながら、電気ヒーターで仕込麦汁を加温煮沸した。煮沸終了後、蒸発量と同量の水をサンプルに追加した上で、95℃で60分間、麦汁を静置させた。ろ紙ろ過後、氷水で麦汁を冷却させた麦汁にビール酵母を添加し、1週間主発酵、4日間後発酵を行なったサンプルを試飲用貯酒サンプルとした。 ・・・(略)・・・ 【0057】 なお、試験区C、D、E、およびFの飲料は、ホップに由来するリンゴ様、グレープフルーツ様の香りを伴ったフルーツ様の香気が強調され、かつビールテイスト飲料の持つ甘いエステルの香りと調和した新たな香気を有するビール飲料であることが確認された。」 ・「【0073】 試験例3:ホップ成分の分析 実施例1で使用したタウラス種ホップの成分分析を行った。具体的には、タウラス種ホップの精油成分をエタノール濃度の異なる水溶液で分画抽出し、試験醸造を行い、本発明が目的とする香気が得られる画分を同定した。そして、その画分含まれる成分を試験例1の手順に従ってGC/MSのスキャンモードで分析した。その結果タウラス種ホップに含まれる成分のうち本発明が目的とする香気を生じさせる分画は表8に示した成分から構成されていることが判明した。 表8:本発明が目的とする香気を得るための精油画分に含まれる成分 ・・・(略)・・・ ・カリオフィレン(caryophyllene)」 イ 甲A7に記載された発明 甲A7に記載された事項を、特に【0051】、【0057】及び【0073】に関して整理すると、甲A7には次の発明(以下、「甲A7飲料発明」及び「甲A7製造方法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲A7飲料発明> 「ホップに由来するリンゴ様、グレープフルーツ様の香りを伴ったフルーツ様の香気が強調され、カリオフィレンが含まれるタウラス種ホップを含有したビール飲料。」 <甲A7製造方法発明> 「ホップに由来するリンゴ様、グレープフルーツ様の香りを伴ったフルーツ様の香気が強調され、カリオフィレンが含まれるタウラス種ホップを含有したビール飲料の製造方法。」 (5)甲A10に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項等 ア 甲A10に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項 甲A10に係る特許出願(特願2016-135638号)の願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下、「甲A10先願明細書等」という。)には、「イソブタノール及び/またはイソアミルアルコール含有飲料」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【請求項1】 (A)イソブタノール及び/またはイソアミルアルコール、ならびに (B)リモネン及び/またはヌートカトン を含む容器詰め飲料であって、 イソブタノールの含有量とイソアミルアルコールの含有量の合計が、60~1000ppmであり、 以下のi)、ii)のいずれか、または両方を満たす容器詰め飲料: i)リモネンを含有する場合はリモネンの含有量が0.25~1.60ppmであり、かつイソブタノール含有量とイソアミルアルコール含有量の合計の、リモネン含有量に対する比率が30~1000、 ii)ヌートカトンを含有する場合はヌートカトンの含有量が0.05~1.60ppmであり、かつイソブタノール含有量とイソアミルアルコール含有量の合計の、ヌートカトン含有量に対する比率が100~2500。」 ・「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 イソブタノールやイソアミルアルコールといったフーゼル油は油っぽいような刺激のある臭いを呈するものの、特許文献1に記載の方法のように、フーゼル油を除去すると、それぞれの飲料に特徴的な奥深い香りや複雑な風味といった飲料の個性が失われることがある。」 イ 甲A10先願明細書等に記載された発明 甲A10先願明細書等に記載された事項を、特に【請求項1】に関して整理すると、甲A10先願明細書等には次の発明(以下、「甲A10先願飲料発明」及び「甲A10先願製造方法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲A10先願飲料発明> 「ヌートカトンの含有量が0.05~1.60ppmである容器詰め飲料。」 <甲A10先願製造方法発明> 「ヌートカトンの含有量が0.05~1.60ppmである容器詰め飲料の製造方法。」 (6)甲B1に記載された事項等 ア 甲B1に記載された事項 甲B1には、「果汁含有飲料及びその製造方法、並びに果汁含有飲料の爽快感向上方法及び後味感改善方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【発明が解決しようとする課題】 【0011】 本願発明が解決する課題は、柑橘系果実に由来の果汁を含有する果汁含有飲料において、希少糖の一種である、D-プシコースを添加することにより、甘み成分の官能ピークが調整されることによって、口中内で長時間まとわりつきが改善されるとともに、飲用時の爽快感を向上させることが可能な果汁含有飲料及びその製造方法、並びに果汁含有飲料の爽快感向上方法及び後味感改善方法を提供することにある。」 ・「【0029】 以下、果汁としてオレンジ果汁を含有した容器詰飲料である場合を例として、本願発明の実施例を詳説するが、下記の実施例等に何ら限定されるものでなく、本願発明の技術的範囲を逸脱しない限りにおいて適宜形態を変更することができる。 【0030】 (容器詰飲料の製造) 本実施例に用いるオレンジ果汁含有容器詰飲料の製造方法について詳述する。 (1)オレンジ果汁飲料の調製 オレンジ混濁果汁、果糖ぶどう糖液糖(フジフラクトH-100、日本食品化工(株)製)、及び希少糖シロップ(レアシュガースイート/松谷化学工業(株)社製)、若しくはD-プシコース精製物(和光純薬(株)、Lot.CDR4285)を使用し、以下の手順で、オレンジ果汁飲料調製した。 なお、オレンジ果汁の調整にあたっては、上記の混濁果汁の他、Bx(ブリックス)、カロテノイド含有量等を調整するため、市販の濃縮果汁、透明果汁等を適宜選択することができる。 【0031】 オレンジ果汁1、5、12、30、及び50%を含有する溶液を、40meshで濾過し、濾過後の果汁含有液に、糖質として果糖ぶどう糖液糖、前記希少糖シロップを添加し、調製した試料を準備した。 また、オレンジ果汁5、12、30%を含有する溶液を濾過することなく、糖質として果糖ぶどう糖液糖、希少糖シロップを添加し、調製した試料を準備した。 更に、40meshで濾過後の1、5、12、30%果汁液については、前記希少糖シロップの代わりにD-プシコース精製物を糖質として所定量添加し、90gに調製した試料をそれぞれ実施例1、実施例10、実施例13、及び比較例7とし、これら試料は、5等分し、5人のパネラーにより、後述の他の試料と共に官能試験に供した。 【0032】 前記工程で調製したD-プシコース精製物を使用していない各試料を、98℃で40秒間加熱殺菌した後に、PETボトルに充填し、巻き締め後、容器ごと5℃まで冷却を行った。 また、濾過を行わなかったオレンジ果汁12、30%の試料については、加熱殺菌、冷却工程後、炭酸ガスボリュームが2.4となるようカーボネーションを行って、PETボトルに充填を行った。その後、65℃10分で後殺菌を行い、炭酸飲料として調製した(実施例3、実施例4、及び比較例2)。 また、上記試料から、同一果汁濃度のサンプルは甘味度が同等になるよう考慮して、それぞれの糖質の使用量を調整して13種のサンプルを製造し、更に必要に応じて適宜混合することでその他の実施例試料、比較例試料を得た(実施例2、実施例5~9、実施例11~12、比較例1、及び比較例3~6)。 以上により、最終的に表1に示すとおり、夫々異なる成分組成の実施例1~実施例13及び比較例1~比較例7を得た。夫々の試料ついての成分分析結果を表1に示す。 なお、表1中において、果汁由来のプシコースとは、原料に用いたオレンジ混濁果汁に含有されるプシコース量を、後述の定量方法によって分析・測定した結果を示している。 本実施例においては、果汁由来のプシコースは特に検出されなかった(表1)。 【0033】 【表1】 [図:0001397232000001.jpg] 」 イ 甲B1に記載された発明 甲B1に記載された事項を、特に実施例2に関して整理すると、甲B1には次の発明(以下、「甲B1飲料発明」及び「甲B1製造方法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲B1飲料発明> 「オレンジ果汁を5%含有するオレンジ果汁含有容器詰飲料。」 <甲B1製造方法発明> 「オレンジ果汁を5%含有するオレンジ果汁含有容器詰飲料の製造方法。」 (7)甲B3に記載された事項等 ア 甲B3に記載された事項 甲B3には、「野菜汁及び果汁入り炭酸飲料、野菜汁及び果汁入り容器詰炭酸飲料、野菜汁及び果汁入り炭酸飲料の製造方法、並びに野菜汁及び果汁入り炭酸飲料における沈殿抑制方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明は、野菜汁及び果汁を含有しつつ、野菜や果実中の固形物(例えば、食物繊維等の不溶性成分等)の凝集・沈殿による見栄えの悪さを改善することのできる野菜汁及び果汁入り炭酸飲料、当該炭酸飲料を容器に充填してなる野菜汁及び果汁入り容器詰炭酸飲料、当該炭酸飲料の製造方法、並びに当該炭酸飲料における沈殿抑制方法を提供することを目的とする。」 ・「【0027】 本実施形態に係る炭酸飲料において、オレンジ果汁の含有量は、オレンジストレート果汁(オレンジの果実からの搾汁液)に換算して、炭酸飲料全量に対して5~11質量%であって、パプリカ色素の含有量は、炭酸飲料全量に対して0.04~0.08質量%である。好ましくは、オレンジ果汁の含有量が6~8質量%であって、パプリカ色素の含有量が0.04~0.06質量%である。」 ・「【0039】 〔試験例1〕 搾汁液換算で炭酸飲料全量に対して6.3質量%のニンジン混濁汁、搾汁液換算で飲料全量に対して14.4質量%のニンジン透明汁、オレンジ果汁、パプリカ色素、甘味料、香料及び水を飲料原料として用い、飲料原液を調製した。なお、オレンジ果汁のストレート果汁換算での炭酸飲料全量に対する配合率、パプリカ色素の炭酸飲料全量に対する配合率、炭酸飲料全量に対する固形物の配合率を表1に示す。また、甘味料及び香料の配合量は、得られる炭酸飲料の呈味等を考慮して適宜調整した。 【0040】 なお、固形物量の測定は、下記のようにして行った。 試料を10.00g取り、3000rpm、10分間の条件で遠心分離した。試料の上清を取り出し、残った沈殿物を、予め重量を測定しておいた濾紙上にあけた。その後、濾紙を乾燥させてから濾紙と沈殿物との合計重量を測定し、測定結果から濾紙の重量を減算し、固形物量とした。 【0041】 得られた飲料原液にレモン透明果汁を添加して、pH3.8に調整した後、加熱殺菌し、透明容器に充填して10℃以下に冷却し、炭酸ガスを封入して、ガスボリュームを2.5に調整した野菜汁及び果汁入り炭酸飲料を製造した(試料1~9)。 【0042】 【表1】 [図:0001397232000002.jpg] 」 イ 甲B3に記載された発明 甲B3に記載された事項を、特に【0006】及び【0027】に関して整理すると、甲B3には次の発明(以下、「甲B3飲料発明」及び「甲B3製造方法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲B3飲料発明> 「オレンジ果汁の含有量が6~8質量%である野菜汁及び果汁入り炭酸飲料。」 <甲B3製造方法発明> 「オレンジ果汁の含有量が6~8質量%である野菜汁及び果汁入り炭酸飲料の製造方法。」 (8)甲B4に記載された事項等 ア 甲B4に記載された事項 甲B4には、「みかん様の香りを伴ったフルーツ様の香気が付与されたビールテイスト飲料およびその製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明は、みかん様の香りを伴ったフルーツ様の香気が感じられるビールテイスト飲料とその製造方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明者らは、飲料中の特定成分の含有量を所定の範囲に制御することにより、フルーツ様の香気、具体的には、みかん様の香りを伴ったフルーツ様の香気が感じられるビールテイスト飲料を製造できることを見出した。」 イ 甲B4に記載された発明 甲B4に記載された事項を、特に【0007】に関して整理すると、甲B4には次の発明(以下、「甲B4飲料発明」及び「甲B4製造方法発明」という。という。)が記載されていると認める。 <甲B4飲料発明> 「飲料中の特定成分の含有量を所定の範囲に制御することにより、みかん様の香りを伴ったフルーツ様の香気が感じられるビールテイスト飲料。」 <甲B4製造方法発明> 「飲料中の特定成分の含有量を所定の範囲に制御することにより、みかん様の香りを伴ったフルーツ様の香気が感じられるビールテイスト飲料の製造方法。」 2 申立理由1(甲A1に基づく進歩性)について (1)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲A1飲料発明を対比する。 両者は次の点で一致する。 <一致点> 「ヌートカトンと、を含有する飲料。」 そして、両者は次の点で一応相違する。 <相違点A1-1a> 本件特許発明1においては、「ゲラニルアセテートと、」「を含有し」、「ゲラニルアセテートの含有量が1.5μg/L以上であり」と特定されているのに対し、甲A1飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A1-1b> 本件特許発明1においては、「β‐カリオフィレンと、」「を含有し」、「β‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg/L以下であり」と特定されているのに対し、甲A1飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A1-1c> 本件特許発明1においては、「ヌートカトンの含有量が3.0μg/L以上10.0μg/L以下である」と特定されているのに対し、甲A1飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A1-1d> 本件特許発明1においては、「(但し、Jinchen果汁を含有する飲料を除く。)」と特定されているのに対し、甲A1飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点A1-1bについて検討する。 甲A1には、甲A1飲料発明が、「β‐カリオフィレンと、」「を含有」することは記載されていないし、その含有量も当然記載されていない。 また、他の証拠にも、甲A1飲料発明が、「β‐カリオフィレンと、」「を含有し」、「β‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg/L以下であ」ることは記載されていない。 さらに、甲A1及び他の証拠に、甲A1飲料発明において、「β‐カリオフィレンと、」「を含有し」、「β‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg/L以下であ」るという発明特定事項を採用する動機付けとなる記載もない。 したがって、甲A1飲料発明において、相違点A1-1bに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は、「フローラルな香り及び柑橘的な香りに優れると共に、後味がより一層優れたものとなる」(本件特許の発明の詳細な説明の【0006】)という甲A1飲料発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することのできる範囲を超えた顕著な効果を奏するものである。 なお、特許異議申立人Aは、甲A2を参照して、レモン果汁には通常、β‐カリオフィレンが含まれており、β‐カリオフィレンの含有量を調整して、本件特許発明1で特定されるβ‐カリオフィレンの含有量の数値範囲内にすることは、当業者が適宜なし得る数値範囲の好適化又は最適化に過ぎない旨主張する(特許異議申立書Aの第22ページ)。 そこで、検討する。 甲A2には、レモンの果皮にβ‐カリオフィレンが含まれていることが記載されているにとどまり、レモン果汁にβ‐カリオフィレンが含まれていることは記載されていないし、甲A2を含めいずれの証拠にも、β‐カリオフィレンに着目し、その含有量を調整することは記載されていないから、甲A1飲料発明において、β‐カリオフィレンを含有するようにした上でその含有量を調整して、本件特許発明1で特定されるβ‐カリオフィレンの含有量の数値範囲内にすることが、当業者が適宜なし得る数値範囲の好適化又は最適化に過ぎないとはいえない。 したがって、特許異議申立人Aの上記主張は採用できない。 ウ まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲A1飲料発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)本件特許発明2ないし5について 本件特許発明2ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲A1飲料発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明6について ア 対比 本件特許発明6と甲A1製造方法発明を対比する。 両者は次の点で一致する。 <一致点> 「ヌートカトンを含有するように調整する飲料の製造方法。」 そして、両者は次の点で一応相違する。 <相違点A1-6a> 本件特許発明6においては、「飲料中のゲラニルアセテートの含有量が1.5μg/L以上」「となるように調整する」と特定されているのに対し、甲A1製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A1-6b> 本件特許発明6においては、「飲料中のβ‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg/L以下」「となるように調整する」と特定されているのに対し、甲A1製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A1-6c> 本件特許発明6においては、「ヌートカトンの含有量が3.0μg/L以上10.0μg/L以下となるように調整する」と特定されているのに対し、甲A1製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A1-6d> 本件特許発明6においては、「(但し、Jinchen果汁を含有する飲料を除く。)」と特定されているのに対し、甲A1製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点A1-6bについて検討する。 相違点A1-6bは、相違点A1-1bと実質的に同じであるから、その判断も同じである。すなわち、甲A1製造方法発明において、相違点A1-6bに係る本件特許発明6の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明6は、「フローラルな香り及び柑橘的な香りに優れると共に、後味がより一層優れたものとなる」という甲A1製造方法発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することのできる範囲を超えた顕著な効果を奏するものである。 ウ まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明6は甲A1製造方法発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件特許発明7について 甲A1には、「フローラルな香り」を「改善する」という技術的思想は記載されていないので、甲A1に記載された事項からは、本件特許発明7の「フローラルな香り及び柑橘的な香りを改善する方法」に対応する発明を認定することはできない。 したがって、本件特許発明7は甲A1に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)申立理由A1についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし7は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由A1によっては取り消すことはできない。 3 申立理由A2(甲A6に基づく進歩性)について (1)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲A6飲料発明を対比する。 両者は次の点で一致する。 <一致点> 「飲料。」 そして、両者は次の点で一応相違する。 <相違点A6-1a> 本件特許発明1においては、「ゲラニルアセテートと、」「を含有し」、「ゲラニルアセテートの含有量が1.5μg/L以上であり」と特定されているのに対し、甲A6飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A6-1b> 本件特許発明1においては、「β‐カリオフィレンと、」「を含有し」、「β‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg/L以下であり」と特定されているのに対し、甲A6飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A6-1c> 本件特許発明1においては、「ヌートカトンと、を含有し」、「ヌートカトンの含有量が3.0μg/L以上10.0μg/L以下である」と特定されているのに対し、甲A6飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A6-1d> 本件特許発明1においては、「(但し、Jinchen果汁を含有する飲料を除く。)」と特定されているのに対し、甲A6飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点A6-1bについて検討する。 甲A6には、甲A6飲料発明が、「β‐カリオフィレンと、」「を含有」することは記載されていないし、その含有量も当然記載されていない。 また、他の証拠にも、甲A6飲料発明が、「β‐カリオフィレンと、」「を含有し」、「β‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg/L以下であ」ることは記載されていない。 さらに、甲A6及び他の証拠に、甲A6飲料発明において、「β‐カリオフィレンと、」「を含有し」、「β‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg/L以下であ」るという発明特定事項を採用する動機付けとなる記載もない。 したがって、甲A6飲料発明において、相違点A6-1bに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は、「フローラルな香り及び柑橘的な香りに優れると共に、後味がより一層優れたものとなる」という甲A6飲料発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することのできる範囲を超えた顕著な効果を奏するものである。 なお、特許異議申立人Aは、甲A2を参照して、レモンやグレープフルーツ等の柑橘類の果汁には通常、β‐カリオフィレンが含まれており、β‐カリオフィレンの含有量を調整して、本件特許発明1で特定されるβ‐カリオフィレンの含有量の数値範囲内にすることは、当業者が適宜なし得る数値範囲の好適化又は最適化に過ぎない旨主張する(特許異議申立書Aの第26ページ)。 そこで、検討するに、上記2(1)イのなお書きで示したのと同様であり、また、そもそも、甲A6飲料発明における「果汁」は、レモンやグレープフルーツ等の柑橘類の果汁に特定されていないことから、甲A6飲料発明において、β‐カリオフィレンを含有するようにした上でその含有量を調整して、本件特許発明1で特定されるβ‐カリオフィレン含有量の数値範囲内にすることが、当業者が適宜なし得る数値範囲の好適化又は最適化に過ぎないとはいえない。 したがって、特許異議申立人Aの上記主張は採用できない。 ウ まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲A6飲料発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)本件特許発明2ないし5について 本件特許発明2ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲A6飲料発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明6について ア 対比 本件特許発明6と甲A6製造方法発明を対比する。 両者は次の点で一致する。 <一致点> 「飲料の製造方法。」 そして、両者は次の点で一応相違する。 <相違点A6-6a> 本件特許発明6においては、「飲料中のゲラニルアセテートの含有量が1.5μg/L以上」「となるように調整する」と特定されているのに対し、甲A6製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A6-6b> 本件特許発明6においては、「飲料中のβ‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg/L以下」「となるように調整する」と特定されているのに対し、甲A6製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A6-6c> 本件特許発明6においては、「ヌートカトンの含有量が3.0μg/L以上10.0μg/L以下となるように調整する」と特定されているのに対し、甲A6製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A6-6d> 本件特許発明6においては、「(但し、Jinchen果汁を含有する飲料を除く。)」と特定されているのに対し、甲A6製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点A6-6bについて検討する。 相違点A6-6bは、相違点A6-1bと実質的に同じであるから、その判断も同じである。すなわち、甲A6製造方法発明において、相違点A6-6bに係る本件特許発明6の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明6は、「フローラルな香り及び柑橘的な香りに優れると共に、後味がより一層優れたものとなる」という甲A6製造方法発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することのできる範囲を超えた顕著な効果を奏するものである。 ウ まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明6は甲A6製造方法発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件特許発明7について 甲A6には、「フローラルな香り及び柑橘的な香り」を「改善する」という技術的思想は記載されていないので、甲A6に記載された事項からは、本件特許発明7の「フローラルな香り及び柑橘的な香りを改善する方法」に対応する発明を認定することはできない。 したがって、本件特許発明7は甲A6に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)申立理由A2についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし7は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由A2によっては取り消すことはできない。 4 申立理由A3(甲A9に基づく進歩性)について (1)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲A9飲料発明を対比する。 両者は次の点で一致する。 <一致点> 「飲料。」 そして、両者は次の点で一応相違する。 <相違点A9-1a> 本件特許発明1においては、「ゲラニルアセテートと、」「を含有し」、「ゲラニルアセテートの含有量が1.5μg/L以上であり」と特定されているのに対し、甲A9飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A9-1b> 本件特許発明1においては、「β‐カリオフィレンと、」「を含有し」、「β‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg/L以下であり」と特定されているのに対し、甲A9飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A9-1c> 本件特許発明1においては、「ヌートカトンと、を含有し」、「ヌートカトンの含有量が3.0μg/L以上10.0μg/L以下である」と特定されているのに対し、甲A9飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A9-1d> 本件特許発明1においては、「(但し、Jinchen果汁を含有する飲料を除く。)」と特定されているのに対し、甲A9飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点A9-1bについて検討する。 甲A9には、甲A9飲料発明が、「β‐カリオフィレンと、」「を含有」することは記載されていないし、その含有量も当然記載されていない。 また、他の証拠にも、甲A9飲料発明が、「β‐カリオフィレンと、」「を含有し」、「β‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg/L以下であ」ることは記載されていない。 さらに、甲A9及び他の証拠に、甲A9飲料発明において、「β‐カリオフィレンと、」「を含有し」、「β‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg/L以下であ」るという発明特定事項を採用する動機付けとなる記載もない。 したがって、甲A9飲料発明において、相違点A9-1bに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は、「フローラルな香り及び柑橘的な香りに優れると共に、後味がより一層優れたものとなる」という甲A9飲料発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することのできる範囲を超えた顕著な効果を奏するものである。 なお、特許異議申立人Aは、甲A5を参照して、グレープフルーツ果汁には通常、β‐カリオフィレンが含まれており、β‐カリオフィレンの含有量を調整して、本件特許発明1で特定されるβ‐カリオフィレンの含有量の数値範囲内にすることは、当業者が適宜なし得る数値範囲の好適化又は最適化に過ぎない旨主張する(特許異議申立書Aの第30ページ)。 そこで、検討するに、甲A5を含めいずれの証拠にも、β‐カリオフィレンに着目し、その含有量を調整することは記載されていないから、甲A9飲料発明において、β‐カリオフィレンを含有するようにした上でその含有量を調整して、本件特許発明1で特定されるβ‐カリオフィレンの含有量の数値範囲内にすることが、当業者が適宜なし得る数値範囲の好適化又は最適化に過ぎないとはいえない。 したがって、特許異議申立人Aの上記主張は採用できない。 ウ まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲A9飲料発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)本件特許発明2ないし5について 本件特許発明2ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲A9飲料発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明6について ア 対比 本件特許発明6と甲A9製造方法発明を対比する。 両者は次の点で一致する。 <一致点> 「飲料の製造方法。」 そして、両者は次の点で一応相違する。 <相違点A9-6a> 本件特許発明6においては、「飲料中のゲラニルアセテートの含有量が1.5μg/L以上」「となるように調整する」と特定されているのに対し、甲A9製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A9-6b> 本件特許発明6においては、「飲料中のβ‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg/L以下」「となるように調整する」と特定されているのに対し、甲A9製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A9-6c> 本件特許発明6においては、「ヌートカトンの含有量が3.0μg/L以上10.0μg/L以下となるように調整する」と特定されているのに対し、甲A9製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A9-6d> 本件特許発明6においては、「(但し、Jinchen果汁を含有する飲料を除く。)」と特定されているのに対し、甲A9製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点A9-6bについて検討する。 相違点A9-6bは、相違点A9-1bと実質的に同じであるから、その判断も同じである。すなわち、甲A9製造方法発明において、相違点A9-6bに係る本件特許発明6の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明6は、「フローラルな香り及び柑橘的な香りに優れると共に、後味がより一層優れたものとなる」という甲A9製造方法発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することのできる範囲を超えた顕著な効果を奏するものである。 ウ まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明6は甲A9製造方法発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件特許発明7について 甲A9には、「フローラルな香り及び柑橘的な香り」を「改善する」という技術的思想は記載されていないので、甲A9に記載された事項からは、本件特許発明7の「フローラルな香り及び柑橘的な香りを改善する方法」に対応する発明を認定することはできない。 したがって、本件特許発明7は甲A9に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)申立理由A3についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし7は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由A3によっては取り消すことはできない。 5 申立理由A4(甲A7に基づく進歩性)について (1)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲A7飲料発明を対比する。 甲A7飲料発明における「カリオフィレン」は「β‐カリオフィレン」のことであるから、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「β‐カリオフィレンと、を含有する飲料。」 そして、両者は次の点で一応相違する。 <相違点A7-1a> 本件特許発明1においては、「ゲラニルアセテートと、」「を含有し」、「ゲラニルアセテートの含有量が1.5μg/L以上であり」と特定されているのに対し、甲A7飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A7-1b> 本件特許発明1においては、「β‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg/L以下であり」と特定されているのに対し、甲A7飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A7-1c> 本件特許発明1においては、「ヌートカトンと、を含有し」、「ヌートカトンの含有量が3.0μg/L以上10.0μg/L以下である」と特定されているのに対し、甲A7飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A7-1d> 本件特許発明1においては、「(但し、Jinchen果汁を含有する飲料を除く。)」と特定されているのに対し、甲A7飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点A7-1bについて検討する。 甲A7には、甲A7飲料発明が、「β‐カリオフィレン」を成分として含有することは記載されているものの、その含有量は記載されていない。 また、他の証拠にも、甲A7飲料発明において、「β‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg/L以下であ」ることは記載されていない。 さらに、甲A7及び他の証拠に、甲A7飲料発明において、「β‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg/L以下であ」るという発明特定事項を採用する動機付けとなる記載もない。 したがって、甲A7飲料発明において、相違点A7-1bに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は、「フローラルな香り及び柑橘的な香りに優れると共に、後味がより一層優れたものとなる」という甲A7飲料発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することのできる範囲を超えた顕著な効果を奏するものである。 なお、特許異議申立人Aは、β‐カリオフィレンの含有量を調整して、本件特許発明1で特定されるβ‐カリオフィレンの含有量の数値範囲内にすることは、当業者が適宜なし得る数値範囲の好適化又は最適化に過ぎない旨主張する(特許異議申立書Aの第34ページ)。 そこで、検討する。 いずれの証拠にも、β‐カリオフィレンに着目し、その含有量を調整することは記載されていないから、甲A7飲料発明において、β‐カリオフィレンの含有量を調整して、本件特許発明1で特定されるβ‐カリオフィレンの含有量の数値範囲内にすることが、当業者が適宜なし得る数値範囲の好適化又は最適化に過ぎないとは認められない。 したがって、特許異議申立人Aの上記主張は採用できない。 ウ まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲A7飲料発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)本件特許発明2ないし5について 本件特許発明2ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲A7飲料発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明6について ア 対比 本件特許発明6と甲A7製造方法発明を対比する。 甲A7製造方法発明における「カリオフィレン」は「β‐カリオフィレン」のことであるから、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「β‐カリオフィレンを含有するように調整する飲料の製造方法。」 そして、両者は次の点で一応相違する。 <相違点A7-6a> 本件特許発明6においては、「飲料中のゲラニルアセテートの含有量が1.5μg/L以上」「となるように調整する」と特定されているのに対し、甲A7製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A7-6b> 本件特許発明6においては、「飲料中のβ‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg/L以下」「となるように調整する」と特定されているのに対し、甲A7製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A7-6c> 本件特許発明6においては、「ヌートカトンの含有量が3.0μg/L以上10.0μg/L以下となるように調整する」と特定されているのに対し、甲A7製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A7-6d> 本件特許発明6においては、「(但し、Jinchen果汁を含有する飲料を除く。)」と特定されているのに対し、甲A7製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点A7-6bについて検討する。 相違点A7-6bは、相違点A7-1bと実質的に同じであるから、その判断も同じである。すなわち、甲A7製造方法発明において、相違点A7-6bに係る本件特許発明6の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明6は、「フローラルな香り及び柑橘的な香りに優れると共に、後味がより一層優れたものとなる」という甲A7製造方法発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することのできる範囲を超えた顕著な効果を奏するものである。 ウ まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明6は甲A7製造方法発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件特許発明7について 甲A7には、「フローラルな香り及び柑橘的な香り」を「改善する」という技術的思想は記載されていないので、甲A7に記載された事項からは、本件特許発明7の「フローラルな香り及び柑橘的な香りを改善する方法」に対応する発明を認定することはできない。 したがって、本件特許発明7は甲A7に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)申立理由A4についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし7は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由A4によっては取り消すことはできない。 6 申立理由A5(甲A10に係る特許出願に基づく拡大先願)について (1)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲A10先願飲料発明を対比する。 両者は次の点で一致する。 <一致点> 「ヌートカトンと、を含有する飲料。」 そして、両者は次の点で一応相違する。 <相違点A10-1a> 本件特許発明1においては、「ゲラニルアセテートと、」「を含有し」、「ゲラニルアセテートの含有量が1.5μg/L以上であり」と特定されているのに対し、甲A10先願飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A10-1b> 本件特許発明1においては、「β‐カリオフィレンと、」「を含有し」、「β‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg/L以下であり」と特定されているのに対し、甲A10先願飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A10-1c> 本件特許発明1においては、「ヌートカトンの含有量が3.0μg/L以上10.0μg/L以下である」と特定されているのに対し、甲A10先願飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A10-1d> 本件特許発明1においては、「(但し、Jinchen果汁を含有する飲料を除く。)」と特定されているのに対し、甲A10先願飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点A10-1bについて検討する。 甲A10には、甲A10先願飲料発明が、「β‐カリオフィレンと、」「を含有」することは記載されていないし、その含有量も当然記載されていない。 また、他の証拠にも、甲A10先願飲料発明が、「β‐カリオフィレンと、」「を含有し」、「β‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg/L以下であ」ることは記載されていない。 したがって、相違点A10-1bは実質的な相違点である。 そして、甲A10先願飲料発明において、「β‐カリオフィレンと」、「を含有し」、「β‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg/L以下であ」るとすることが、課題解決のための具体化手段における微差であるともいえない。 なお、特許異議申立人Aは、β‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg/L以下であるか否かの違いによって、奏される効果に著しい差があるとは認識できないから、β‐カリオフィレンの含有量の違いは課題解決のための具体化手段における単なる微差に過ぎない旨主張する(特許異議申立書Aの第38ページ)。 そこで、検討する。 「課題解決のための具体化手段における微差」であるかどうかの判断は、その差が、周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないかどうかで判断されるものであり、奏される効果に著しい差があると認識できるかどうかで判断されるものではない。 したがって、特許異議申立人Aの上記主張は採用できない。 ウ まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲A10先願飲料発明と同一であるとはいえない。 (2)本件特許発明2ないし4について 本件特許発明2ないし4は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲A10先願飲料発明と同一であるとはいえない。 (3)本件特許発明6について ア 対比 本件特許発明6と甲A10先願製造方法発明を対比する。 両者は次の点で一致する。 <一致点> 「ヌートカトンを含有するように調整する飲料の製造方法。」 そして、両者は次の点で一応相違する。 <相違点A10-6a> 本件特許発明6においては、「飲料中のゲラニルアセテートの含有量が1.5μg/L以上」「となるように調整する」と特定されているのに対し、甲A10先願製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A10-6b> 本件特許発明6においては、「飲料中のβ‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg/L以下」「となるように調整する」と特定されているのに対し、甲A10先願製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A10-6c> 本件特許発明6においては、「ヌートカトンの含有量が3.0μg/L以上10.0μg/L以下となるように調整する」と特定されているのに対し、甲A10先願製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点A10-6d> 本件特許発明6においては、「(但し、Jinchen果汁を含有する飲料を除く。)」と特定されているのに対し、甲A10先願製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点A10-6bについて検討する。 相違点A10-6bは、相違点A10-1bと実質的に同じであるから、その判断も同じである。すなわち、相違点A10-6bは実質的な相違点であるし、甲A10先願製造方法発明において、相違点A10-6bに係る発明特定事項とすることは課題解決のための具体化手段における微差であるともいえない。 ウ まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明6は甲A10先願製造方法発明と同一であるとはいえない。 (4)申立理由A5についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし4及び6は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし4及び6に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由A5によっては取り消すことはできない。 7 申立理由A6(サポート要件)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 そこで、検討する。 (2)特許請求の範囲の記載 特許請求の範囲の記載は上記第2のとおりである。 (3)サポート要件の判断 本件特許の発明の詳細な説明の【0001】ないし【0004】によると、本件特許発明1ないし5の解決しようとする課題は「フローラルな香り及び柑橘的な香りに優れる飲料を提供すること」であり、本件特許発明6の解決しようとする課題は「フローラルな香り及び柑橘的な香りに優れる飲料の製造方法を提供すること」であり、本件特許発明7の解決しようとする課題は「飲料のフローラルな香り及び柑橘的な香りを改善する方法を提供すること」である(以下、総称して「発明の課題」という。)。 そして、本件特許の発明の詳細な説明の【0005】ないし【0010】には、本件特許発明1ないし7に対応する記載がある。 また、本件特許の発明の詳細な説明の【0015】には「ゲラニルアセテートの含有量は、飲料全量基準で、1.5μg/L以上であればよく、好ましくは1.6μg/L以上であり、より好ましくは、2.0μg/L以上である。ゲラニルアセテートの含有量は、飲料全量基準で、1000.0μg/L以下、500.0μg/L以下、100.0μg/L以下、50.0μg/L以下、又は20μg/L以下であってもよい。ゲラニルアセテートの含有量が上述の範囲内であれば、フローラルな香り及び柑橘的な香りがより一層優れたものとなる。」と記載され、【0019】には「β‐カリオフィレンの含有量は、飲料全量基準で、0.2μg/L以上であればよく、好ましくは0.5μg/L以上であり、より好ましくは、0.8μg/L以上であり、更に好ましくは1.0μg/L以上であり、更により好ましくは、1.5μg/L以上である。β‐カリオフィレンの含有量は、飲料全量基準で、20.0μg/L以下、15.0μg/L以下、10.0μg/L以下、7.0μg/L以下、5.0μg/L以下、4.0μg/L以下、3.0μg/L以下、2.0μg/L以下、0.7μg/L以下、又は0.6μg/L以下であってもよい。β‐カリオフィレンの含有量が上述の範囲内であれば、フローラルな香り及び柑橘的な香りがより一層優れたものとなる。」と記載され、【0023】には「ヌートカトンの含有量は、飲料全量基準で、3.0μg/L以上であることが好ましく、5.0μg/L以上、8.0μg/L以上、10.0μg/L以上、15.0μg/L以上、又は20.0μg/L以上であってもよい。ヌートカトンの含有量は、飲料全量基準で、100.0μg/L以下、30.0μg/L以下、20.0μg/L以下、15.0μg/L以下、10.0μg/L以下、又は8.0μg/L以下であってもよい。上記飲料がヌートカトンを上述の含有量の範囲内で含む場合、フローラルな香り及び柑橘的な香りに優れると共に、後味がより一層優れたものとなる。ここで、後味とは、グレープフルーツ様で雑味のない後味を意味する。」と記載され、【0049】ないし【0070】において、「ゲラニルアセテートの含有量が1.5μg/L以上」及び「β‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg」の条件を満たすサンプル1-3ないし1-6、2-2ないし2-4、3-2ないし3-4、4-1ないし4-3及び5-1が、上記条件を満たさないサンプル1-1、1-2、2-1及び3-1と比べて、フローラルな香り及び柑橘的な香りに優れていることを確認している。 そうすると、当業者は、「ゲラニルアセテートの含有量が1.5μg/L以上」及び「β‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg」の条件を満たす「飲料」、「ゲラニルアセテートの含有量が1.5μg/L以上」及び「β‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg」の条件を満たすように「調整する」「飲料」の「製造方法」並びに「飲料中」の「ゲラニルアセテートの含有量が1.5μg/L以上」及び「β‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg」となるように「調整する方法」は、発明の課題を解決できると認識できる。 そして、本件特許発明1ないし7は、上記発明の課題を解決できると認識できる「飲料」、「飲料」の「製造方法」又は「調整する方法」をさらに限定したものである。 したがって、本件特許発明1ないし7は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 よって、本件特許発明1ないし7に関して、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。 (4)特許異議申立人の主張について 特許異議申立人の上記第3 1(6)の主張について検討するに、以下のとおり、いずれも採用できない。 ア 第3 1(6)アについて 上記(3)のとおり、本件特許発明1ないし7に関して、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合するといえる。 なお、本件特許の発明の詳細な説明に記載された「サンプル5-1」の「フローラルな香り」の官能評価結果の数値(「3.7」)が誤りであったとしても、それ以外の数値に誤りはない(例えば、「サンプル3-2」及び「サンプル3-3」の「2.8」は「2.75」を四捨五入した値であり、「サンプル4-2」の「4.3」は「4.25」を四捨五入した値であると考えられる。)から、本件特許の発明の詳細な説明に記載された評価試験が、「フローラルな香り」、「柑橘的な香り」及び「後味」といった香味を正確に評価したものではないとはいえない。 したがって、第3 1(6)アの主張は、上記(3)のサポート要件の判断を左右するものではなく、採用できない。 イ 第3 1(6)イについて 本件特許の発明の詳細な説明の記載からみて、ゲラニルアセテートの含有量が1.5μg/Lを大きく超えた場合でも、程度の差はあれ、多少は発明の課題を解決できると当業者は認識できるし、ゲラニルアセテートの含有量が1.5μg/Lを大きく超えた場合に、発明の課題が解決できないことを示す証拠が提示されている訳でもない。 したがって、第3 1(6)イの主張は、上記(3)のサポート要件の判断を左右するものではなく、採用できない。 ウ 第3 1(6)ウについて 本件特許の発明の詳細な説明には、「μg/L」の含有量オーダーで、実際に香りを評価しているサンプルが示されている。 したがって、第3 1(6)ウの主張は、上記(3)のサポート要件の判断を左右するものではなく、採用できない。 エ 第3 1(6)エについて 本件特許の発明の詳細な説明の記載からみて、本件特許の発明の詳細な説明に記載された「炭酸水」、「市販のビールテイスト飲料」及び「醸造して得たビールテイスト飲料」において発明の課題を解決できることが確認されている以上、これら以外の飲料においても、程度の差はあれ、多少は発明の課題を解決できると当業者は認識できるし、本件特許発明1ないし7において特定される条件を満たしていても、発明の課題を解決できない飲料があることを示す証拠が提示されている訳でもない。 したがって、第3 1(6)エの主張は、上記(3)のサポート要件の判断を左右するものではなく、採用できない。 (5)申立理由A6についてのむすび したがって、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由A6によっては取り消すことはできない。 8 申立理由A7(明確性要件)について (1)明確性要件の判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 そこで、検討する。 (2)特許請求の範囲の記載 特許請求の範囲の記載は上記第2のとおりである。 (3)明確性要件の判断 本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載自体に不明確な記載はなく、本件特許の発明の詳細な説明の記載とも整合する。 したがって、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎とすれば、本件特許発明1に関して、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 また、本件特許発明2ないし7に関しても同様であり、本件特許発明2ないし7に関して、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 よって、本件特許発明1ないし7は明確である。 (4)特許異議申立人の主張について 特許異議申立人の上記第3 1(7)の主張について検討する。 本件特許の特許請求の範囲の請求項1において、「ゲラニルアセテテートの含有量」の上限が特定されていないとしても、「ゲラニルアセテテートの含有量」が本件特許の特許請求の範囲の請求項1で特定される下限値(「1.5μg/L」)以上であれば、本件特許発明1に含まれることは明らかであるから、本件特許発明1は明確である。 また、本件特許発明6及び7についても同様である。 したがって、特許異議申立人の上記第3 1(7)の主張は採用できない。 (5)申立理由A7についてのむすび したがって、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由A7によっては取り消すことはできない。 9 申立理由B1(甲B1に基づく新規性・進歩性)について (1)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲B1飲料発明を対比する。 両者は次の点で一致する。 <一致点> 「飲料。」 そして、両者は次の点で一応相違する。 <相違点B1-1a> 本件特許発明1においては、「ゲラニルアセテートと、」「を含有し」、「ゲラニルアセテートの含有量が1.5μg/L以上であり」と特定されているのに対し、甲B1飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点B1-1b> 本件特許発明1においては、「β‐カリオフィレンと、」「を含有し」、「β‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg/L以下であり」と特定されているのに対し、甲B1飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点B1-1c> 本件特許発明1においては、「ヌートカトンと、を含有し」、「ヌートカトンの含有量が3.0μg/L以上10.0μg/L以下である」と特定されているのに対し、甲B1飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点B1-1d> 本件特許発明1においては、「(但し、Jinchen果汁を含有する飲料を除く。)」と特定されているのに対し、甲B1飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点B1-1bについて検討する。 甲B1には、甲B1飲料発明が、「β‐カリオフィレンと、」「を含有」することは記載されていないし、その含有量も当然記載されていない。 また、他の証拠にも、甲B1飲料発明が、「β‐カリオフィレンと、」「を含有し」、「β‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg/L以下であ」ることは記載されていない。 したがって、相違点B1-1bは実質的な相違点である。 そして、甲B1及び他の証拠に、甲B1飲料発明において、「β‐カリオフィレンと、」「を含有し」、「β‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg/L以下であ」るという発明特定事項を採用する動機付けとなる記載もない。 したがって、甲B1飲料発明において、相違点B1-1bに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は、「フローラルな香り及び柑橘的な香りに優れると共に、後味がより一層優れたものとなる」という甲B1飲料発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することのできる範囲を超えた顕著な効果を奏するものである。 なお、特許異議申立人Bは、タロッコオレンジ果汁、モロオレンジ果汁又はサングイネッロオレンジ果汁の成分値が示されている甲B2を参照して、甲B1飲料発明において、オレンジ果汁として、これらのオレンジ果汁を用いれば、本件特許発明1で特定されるβ‐カリオフィレンの数値範囲内となる旨主張する(特許異議申立書Bの第18及び19ページ)。 そこで、検討する。 甲B1飲料発明における「オレンジ果汁」として、甲B2に記載されたタロッコオレンジ果汁、モロオレンジ果汁又はサングイネッロオレンジ果汁を採用する動機付けとなる記載は、甲B2を含めいずれの証拠にもないから、甲B1飲料発明における「オレンジ果汁」として、甲B2に記載されたタロッコオレンジ果汁、モロオレンジ果汁又はサングイネッロオレンジ果汁を用いることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 したがって、特許異議申立人Bの上記主張は採用できない。 ウ まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲B1飲料発明であるとはいえないし、甲B1飲料発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (2)本件特許発明2について 本件特許発明2は、請求項1を引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲B1飲料発明であるとはいえないし、甲B1飲料発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件特許発明3ないし5について 本件特許発明3ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲B1飲料発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件特許発明6について ア 対比 本件特許発明6と甲B1製造方法発明を対比する。 両者は次の点で一致する。 <一致点> 「飲料の製造方法。」 そして、両者は次の点で一応相違する。 <相違点B1-6a> 本件特許発明6においては、「飲料中のゲラニルアセテートの含有量が1.5μg/L以上」「となるように調整する」と特定されているのに対し、甲B1製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点B1-6b> 本件特許発明6においては、「飲料中のβ‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg/L以下」「となるように調整する」と特定されているのに対し、甲B1製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点B1-6c> 本件特許発明6においては、「ヌートカトンの含有量が3.0μg/L以上10.0μg/L以下となるように調整する」と特定されているのに対し、甲B1製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点B1-6d> 本件特許発明6においては、「(但し、Jinchen果汁を含有する飲料を除く。)」と特定されているのに対し、甲B1製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点B1-6bについて検討する。 相違点B1-6bは、相違点B1-1bと実質的に同じであるから、その判断も同じである。すなわち、相違点B1-6bは実質的な相違点であるし、甲B1製造方法発明において、相違点B1-6bに係る本件特許発明6の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明6は、「フローラルな香り及び柑橘的な香りに優れると共に、後味がより一層優れたものとなる」という甲B1製造方法発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することのできる範囲を超えた顕著な効果を奏するものである。 ウ まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明6は甲B1製造方法発明であるとはいえないし、甲B1製造方法発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (5)本件特許発明7について 甲B1には、「フローラルな香り及び柑橘的な香り」を「改善する」という技術的思想は記載されていないので、甲B1に記載された事項からは、本件特許発明7の「フローラルな香り及び柑橘的な香りを改善する方法」に対応する発明を認定することはできない。 したがって、本件特許発明7は甲B1に記載された発明であるとはいえないし、甲B1に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (6)申立理由B1についてのむすび したがって、本件特許発明1、2、6及び7は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明1ないし7は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由B1によっては取り消すことはできない。 10 申立理由B2(甲B3に基づく新規性・進歩性)について (1)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲B3飲料発明を対比する。 両者は次の点で一致する。 <一致点> 「飲料。」 そして、両者は次の点で一応相違する。 <相違点B3-1a> 本件特許発明1においては、「ゲラニルアセテートと、」「を含有し」、「ゲラニルアセテートの含有量が1.5μg/L以上であり」と特定されているのに対し、甲B3飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点B3-1b> 本件特許発明1においては、「β‐カリオフィレンと、」「を含有し」、「β‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg/L以下であり」と特定されているのに対し、甲B3飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点B3-1c> 本件特許発明1においては、「ヌートカトンと、を含有し」、「ヌートカトンの含有量が3.0μg/L以上10.0μg/L以下である」と特定されているのに対し、甲B3飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点B3-1d> 本件特許発明1においては、「(但し、Jinchen果汁を含有する飲料を除く。)」と特定されているのに対し、甲B3飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点B3-1bについて検討する。 甲B3には、甲B3飲料発明が、「β‐カリオフィレンと、」「を含有」することは記載されていないし、その含有量も当然記載されていない。 また、他の証拠にも、甲B3飲料発明が、「β‐カリオフィレンと、」「を含有し」、「β‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg/L以下であ」ることは記載されていない。 したがって、相違点B3-1bは実質的な相違点である。 そして、甲B3及び他の証拠に、甲B3飲料発明において、「β‐カリオフィレンと、」「を含有し」、「β‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg/L以下であ」るという発明特定事項を採用する動機付けとなる記載もない。 したがって、甲B3飲料発明において、相違点B3-1bに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は、「フローラルな香り及び柑橘的な香りに優れると共に、後味がより一層優れたものとなる」という甲B3飲料発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することのできる範囲を超えた顕著な効果を奏するものである。 なお、特許異議申立人Bは、タロッコオレンジ果汁、モロオレンジ果汁又はサングイネッロオレンジ果汁の成分値が示されている甲B2を参照して、甲B3飲料発明において、オレンジ果汁として、これらのオレンジ果汁を用いれば、本件特許発明1で特定されるβ‐カリオフィレンの数値範囲内となる旨主張する(特許異議申立書Bの第21及び22ページ)。 そこで、検討するに、上記主張は、上記9(1)イのなお書きの主張と同じであるから、同様に判断される。 すなわち、特許異議申立人Bの上記主張は採用できない。 ウ まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲B3飲料発明であるとはいえないし、甲B3飲料発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (2)本件特許発明2について 本件特許発明2は、請求項1を引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲B3飲料発明であるとはいえないし、甲B3飲料発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件特許発明3ないし5について 本件特許発明3ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲B3飲料発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件特許発明6について ア 対比 本件特許発明6と甲B3製造方法発明を対比する。 両者は次の点で一致する。 <一致点> 「飲料の製造方法。」 そして、両者は次の点で一応相違する。 <相違点B3-6a> 本件特許発明6においては、「飲料中のゲラニルアセテートの含有量が1.5μg/L以上」「となるように調整する」と特定されているのに対し、甲B3製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点B3-6b> 本件特許発明6においては、「飲料中のβ‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg/L以下」「となるように調整する」と特定されているのに対し、甲B3製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点B3-6c> 本件特許発明6においては、「ヌートカトンの含有量が3.0μg/L以上10.0μg/L以下となるように調整する」と特定されているのに対し、甲B3製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点B3-6d> 本件特許発明6においては、「(但し、Jinchen果汁を含有する飲料を除く。)」と特定されているのに対し、甲B3製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点B3-6bについて検討する。 相違点B3-6bは、相違点B3-1bと実質的に同じであるから、その判断も同じである。すなわち、相違点B3-6bは実質的な相違点であるし、甲B3製造方法発明において、相違点B3-6bに係る本件特許発明6の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明6は、「フローラルな香り及び柑橘的な香りに優れると共に、後味がより一層優れたものとなる」という甲B3製造方法発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することのできる範囲を超えた顕著な効果を奏するものである。 ウ まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明6は甲B3製造方法発明であるとはいえないし、甲B3製造方法発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (5)本件特許発明7について 甲B3には、「フローラルな香り及び柑橘的な香り」を「改善する」という技術的思想は記載されていないので、甲B3に記載された事項からは、本件特許発明7の「フローラルな香り及び柑橘的な香りを改善する方法」に対応する発明を認定することはできない。 したがって、本件特許発明7は甲B3に記載された発明であるとはいえないし、甲B3に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (6)申立理由B2についてのむすび したがって、本件特許発明1、2、6及び7は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明1ないし7は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由B2によっては取り消すことはできない。 11 申立理由B3(甲B4に基づく進歩性)について (1)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲B4飲料発明を対比する。 両者は次の点で一致する。 <一致点> 「飲料。」 そして、両者は次の点で一応相違する。 <相違点B4-1a> 本件特許発明1においては、「ゲラニルアセテートと、」「を含有し」、「ゲラニルアセテートの含有量が1.5μg/L以上であり」と特定されているのに対し、甲B4飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点B4-1b> 本件特許発明1においては、「β‐カリオフィレンと、」「を含有し」、「β‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg/L以下であり」と特定されているのに対し、甲B4飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点B4-1c> 本件特許発明1においては、「ヌートカトンと、を含有し」、「ヌートカトンの含有量が3.0μg/L以上10.0μg/L以下である」と特定されているのに対し、甲B4飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点B4-1d> 本件特許発明1においては、「(但し、Jinchen果汁を含有する飲料を除く。)」と特定されているのに対し、甲B4飲料発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点B4-1bについて検討する。 甲B4には、甲B4飲料発明が、「β‐カリオフィレンと、」「を含有」することは記載されていないし、その含有量も当然記載されていない。 また、他の証拠にも、甲B4飲料発明が、「β‐カリオフィレンと、」「を含有し」、「β‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg/L以下であ」ることは記載されていない。 そして、甲B4及び他の証拠に、甲B4飲料発明において、「β‐カリオフィレンと、」「を含有し」、「β‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg/L以下であ」るという発明特定事項を採用する動機付けとなる記載もない。 したがって、甲B4飲料発明において、相違点B4-1bに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は、「フローラルな香り及び柑橘的な香りに優れると共に、後味がより一層優れたものとなる」という甲B4飲料発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することのできる範囲を超えた顕著な効果を奏するものである。 なお、特許異議申立人Bは、甲B1にオレンジ果汁を5%(wt%)含有する果汁含有飲料が記載されているから、甲B4飲料発明において、オレンジ果汁を5%(wt%)含有した場合と同様の成分組成となるように、成分を調整することは当業者が容易に想到できたことであり、さらに、甲B2を参照して、タロッコオレンジ果汁、モロオレンジ果汁又はサングイネッロオレンジ果汁の成分を、オレンジ果汁を5%(wt%)含有した場合と同様の成分組成となるように再現することも容易に想到できたことである旨主張する(特許異議申立書Bの第35ページ)。 そこで、検討する。 甲B4飲料発明は、「みかん様の香りを伴ったフルーツ様の香気が感じられるビールテイスト飲料」であって、「みかん」は明らかに「オレンジ」ではないから、甲B1に記載された事項を採用する動機付けはないし、仮に、甲B1に記載された事項を適用できたとしても、オレンジ果汁として、甲B2に記載されたタロッコオレンジ果汁、モロオレンジ果汁又はサングイネッロオレンジ果汁を採用する動機付けもない。 したがって、特許異議申立人Bの上記主張は採用できない。 ウ まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲B4飲料発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)本件特許発明2ないし5について 本件特許発明2ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲B4飲料発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明6について ア 対比 本件特許発明6と甲B4製造方法発明を対比する。 両者は次の点で一致する。 <一致点> 「飲料の製造方法。」 そして、両者は次の点で一応相違する。 <相違点B4-6a> 本件特許発明6においては、「飲料中のゲラニルアセテートの含有量が1.5μg/L以上」「となるように調整する」と特定されているのに対し、甲B4製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点B4-6b> 本件特許発明6においては、「飲料中のβ‐カリオフィレンの含有量が0.2μg/L以上20μg/L以下」「となるように調整する」と特定されているのに対し、甲B4製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点B4-6c> 本件特許発明6においては、「ヌートカトンの含有量が3.0μg/L以上10.0μg/L以下となるように調整する」と特定されているのに対し、甲B4製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点B4-6d> 本件特許発明6においては、「(但し、Jinchen果汁を含有する飲料を除く。)」と特定されているのに対し、甲B4製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点B4-6bについて検討する。 相違点B4-6bは、相違点B4-1bと実質的に同じであるから、その判断も同じである。すなわち、相違点B4-6bは実質的な相違点であるし、甲B4製造方法発明において、相違点B4-6bに係る本件特許発明6の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明6は、「フローラルな香り及び柑橘的な香りに優れると共に、後味がより一層優れたものとなる」という甲B4製造方法発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することのできる範囲を超えた顕著な効果を奏するものである。 ウ まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明6は甲B4製造方法発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件特許発明7について 甲B4には、「フローラルな香り及び柑橘的な香り」を「改善する」という技術的思想は記載されていないので、甲B4に記載された事項からは、本件特許発明7の「フローラルな香り及び柑橘的な香りを改善する方法」に対応する発明を認定することはできない。 したがって、本件特許発明7は甲B4に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)申立理由B3についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし7は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由B3によっては取り消すことはできない。 第5 結語 上記第4のとおり、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許異議申立書A及びBに記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-701322

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