特許異議申立
2022-701315
ナノ物質含有組成物
- 審判番号
- 2022-701315
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-512546
- 登録番号
- 7092118
- 請求日
- 2022年12月28日
- 審決日
- 2024年03月29日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社大阪ソーダ
- 【権利者代理人】田中 順也
- 【権利者代理人】水谷 馨也
- 【異議申立人】安藤 宏
- 審判長/審判官
- 審判長 近野 光知
- 審判官 大畑 通隆
- 審判官 小出 直也
- 分類
- P1652.121-YAA(C08L) / P1652.537-YAA(C08L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第113条第4号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8第1項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7092118号発明「ナノ物質含有組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7092118号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。
特許第7092118号の請求項1、6及び7に係る特許を維持する。
特許第7092118号の請求項2-4に係る特許についての特許異議申立てを却下する。
理由
理 由
第1 主な手続の経緯
特許第7092118号(以下、「本件特許」という。)は、平成30年4月11日の国際出願日(優先権主張:平成29年4月11日、平成29年4月11日 平成29年4月11日 いずれも日本国(JP))にされたものとみなされる特許出願(特願2019-512546号)に対してされたものであって、令和4年6月20日に特許権の設定登録(請求項の数:7)がなされ、同年同月28日にその特許掲載公報が発行された。
その後、令和4年12月28日に、特許異議申立人である安藤 宏(以下、「申立人」という。)により、本件特許の請求項1~4、6及び7に係る特許に対して、特許異議の申立てがされた。
本件特許異議の申立て以降の経緯は、次のとおりである。
令和5年 4月11日付け:取消理由通知
同年 6月12日 :訂正請求書、意見書(特許権者)
同年 6月27日付け:通知書(申立人宛て)
本通知書に対して、申立人からの応答はなかった。
令和5年 9月25日付け:訂正拒絶理由通知
同年10月27日 :意見書(特許権者)
同年12月28日付け:取消理由通知(決定の予告)
令和6年 3月11日 :訂正請求書、意見書(特許権者)
令和5年6月12日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
また、既に申立人に対して、令和5年6月27日付けで意見書を提出する機会を設け、かつ令和6年3月11日にされた訂正請求による訂正は、下記「第2 訂正の適否について」にあるように、該訂正請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、事件において提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると当審が判断したため、特許法第120条の5第5項ただし書における特別の事情と認め、同項の通知を行っていない。
第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
特許権者により、令和6年3月11日になされた訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の訂正事項1~8のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及びゴムからなる群より選択される少なくとも1種である成分(a)と、」と記載されているのを、
「熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である成分(a)と、」に訂正する。
また、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6及び7も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「(i)前記成分(a)が熱可塑性樹脂である場合、前記成分(a)100質量部に対して、前記反応性官能基を有する化合物(b)は0.5~8質量部であり、前記ナノ物質(c)は0.005~0.1質量部であり、
(ii)前記成分(a)が熱硬化性樹脂である場合、前記成分(a)100質量部に対して、前記反応性官能基を有する化合物(b)は80~100質量部であり、前記ナノ物質(c)は0.001~0.1質量部であり、
(iii)前記成分(a)がゴムである場合、前記成分(a)100質量部に対して、前記反応性官能基を有する化合物(b)は0.5~10質量部であり、前記ナノ物質(c)は0.005~0.1質量部であるナノ物質含有組成物。」と記載されているのを、
「(i)前記成分(a)が熱可塑性樹脂である場合、前記成分(a)100質量部に対して、前記反応性官能基を有する化合物(b)は0.5~8質量部であり、前記ナノ物質(c)は0.005~0.1質量部であり、前記反応性官能基を有する化合物(b)は、イソフタル酸ジアリルであり、前記ナノ物質(c)は、カーボンナノチューブであり、
(ii)前記成分(a)が熱硬化性樹脂である場合、前記成分(a)100質量部に対して、前記反応性官能基を有する化合物(b)は80~100質量部であり、前記ナノ物質(c)は0.001~0.1質量部であり、前記反応性官能基を有る化合物(b)は、イソフタル酸ジアリルであり、前記ナノ物質(c)は、カーボンナノチューブであるナノ物質含有組成物。」に訂正する。
また、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6及び7も同様に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1~5いずれかに記載のナノ物質含有組成物の硬化物。」と記載されているのを、「請求項1に記載のナノ物質含有組成物の硬化物。」に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1~5いずれかに記載のナノ物質含有組成物から作製される成形体。」と記載されているのを、「請求項1に記載のナノ物質含有組成物から作製される成形体。」に訂正する。
(9)一群の請求項について
本件訂正請求は、訂正前の請求項1~7について、請求項2~7は、それぞれ請求項1を、直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1~2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~7に対応する訂正後の請求項1~7は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(10)独立特許要件について
訂正前の請求項5は、特許異議の申立てがされない一方、上記訂正事項6によって削除され、その対象がなくなったため、訂正後の請求項5に係る発明に係る特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件については検討しない。
2 訂正の適否についての検討
(1)訂正事項1に係る請求項1等の訂正について
訂正事項1に係る請求項1の訂正は、「熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及びゴムからなる群より選択される少なくとも1種である成分(a)と、」を、「熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である成分(a)と、」と訂正することにより、成分(a)の選択肢からゴムを削除するものであるから、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるとともに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(2)訂正事項2に係る請求項1等の訂正について
訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項1における反応性官能基を有する化合物(b)をイソフタル酸ジアリルに限定し、ナノ物質(c)をカーボンナノチュープに限定し、さらに、前記訂正事項1に伴い、成分(a)がゴムである場合の記載を削除するものであるから、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるとともに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(3) 訂正事項3~6に係る請求項5等の訂正について
訂正事項3~6は、請求項2~5を削除するというものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3~6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものには該当しない。
(4)訂正事項7及び8に係る請求項6及び7等の訂正について
訂正事項7及び8は、訂正前の請求項2~5の削除に伴い、請求項6又は7が引用する請求項を、請求項1のみに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項7及び8は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものには該当しない。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で読み替えて準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は認められるので、本件特許の請求項1~7に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明7」といい、これらを総称して「本件発明」ともいう。また、本件特許の明細書を「本件明細書」という。)は、令和6年3月11日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される、以下に記載のとおりのものである。
「【請求項1】
熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である成分(a)と、
反応性官能基を有する化合物(b)(但し、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及びゴムを除く。)と、
ナノ物質(c)と、
を含有し、
(i) 前記成分(a)が熱可塑性樹脂である場合、前記成分(a)100質量部に対して、前記反応性官能基を有する化合物(b)は0.5~8質量部であり、前記ナノ物質(c)は0.005~0.1質量部であり、前記反応性官能基を有する化合物(b)は、イソフタル酸ジアリルであり、前記ナノ物質(c)は、カーボンナノチューブであり、
(ii) 前記成分(a)が熱硬化性樹脂である場合、前記成分(a)100質量部に対して、前記反応性官能基を有する化合物(b)は80~100質量部であり、前記ナノ物質(c)は0.001~0.1質量部であり、前記反応性官能基を有する化合物(b)は、イソフタル酸ジアリルであり、前記ナノ物質(c)は、カーボンナノチューブであるナノ物質含有組成物。
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】
請求項1に記載のナノ物質含有組成物の硬化物。
【請求項7】
請求項1に記載のナノ物質含有組成物から作製される成形体。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由
申立人が提出した特許異議申立書(以下、「申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は、次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証を主引用例とする進歩性)
本件発明1~4、6~7は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 申立理由2(甲第2号証を主引用例とする進歩性)
本件発明1~4、6~7は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
3 申立理由3(甲第3号証を主引用例とする進歩性)
本件発明1~4、6~7は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
4 証拠方法
申立人は、証拠として、以下の文献等を提出する。文献の表記は、特許異議申立書の記載に基づく。以下、甲各号証の番号に応じて、甲第1号証を「甲1」などという。
(1)甲第1号証:特開2013-14699号公報
(2)甲第2号証:国際公開第2014/097626号
(3)甲第3号証:国際公開第2013/047796号
(4)甲第4号証:特開2014-125614号公報
(5)甲第5号証:特開2014-189578号公報
(6)甲第6号証:"Chemical Book"、イソシアヌル酸トリアリル、[online]、[令和4年12月25日検索]<URL:https://www.chemicalbook.com/ChemicalProductProperty_JP_CB2213824.htm>
(7)甲第7号証:"Sigma-Aldrich エチレングリコールジメタクリル酸"、[online]、[令和4年12月25日検索]<URL:https://www.merckmillipore.com/JP/ja/product/Ethylene-glycol-dimethacrylate,MDA_CHEM-818847>
(8)甲第8号証:"Sigma-Aldrich メタクリル酸亜鉛"、[online]、[令和4年12月25日検索]<URL:https://www.sigmaaldrich.com/JP/ja/product/aldrich/437980>
(9)甲第9号証:"Chemical Book"、トリメチロールプロパントリメタクリラート、[online]、[令和4年12月25日検索]<URL:https://www.chemicalbook.com/ChemicalProductProperty_JP_CB3404535.htm>
(10)甲第10号証:東京化成工業株式会社、"製品コード:D0958ジビニルベンゼン(m-, p-混合物)"、[online]、[令和4年12月25日検索]<URL:https://www.tcichemicals.com/JP/ja/p/D0958>
(11)甲第11号証:富士フィルム和光純薬株式会社、"二メタクリル酸エチレン"、[online]、[令和4年12月25日検索]<URL:https://labchem-wako.fujifilm.com/jp/product/detail/W01W0105-0424.html>
第5 令和5年12月28日付け取消理由(決定の予告)の概要
本件特許の本件訂正前の請求項1~4、6及び7に係る特許に対して、当審が令和5年12月28日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
1 取消理由A(明確性)
本件特許の訂正前の請求項1~4、6及び7についての特許は、以下の理由で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
本件特許の訂正前の請求項1及び2の記載において、「反応性官能基を有する化合物」は、本件発明1及び2において、その配合量が特定された「反応性官能基を有する化合物(b)」のみに該当するとして判断すべきか、あるいは、「成分(a)」、「反応性官能基を有する化合物(b)」、「ナノ物質(c)」以外の「他の成分」にも存在するとして判断すべきか、本件明細書をみても、その判断基準は明らかでないため、請求項1及び2、並びにこれらの請求項を直接又は間接的に引用しつつも、「反応性官能基を有する化合物(b)」の「反応性官能基」を更に特定しない請求項3、4、6及び7の記載は不明確である。
2 取消理由B(進歩性)
本件特許の訂正前の以下の請求項についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(1)取消理由B1
・請求項:1~4、6~7
・引用文献等:甲1、4~5
(2)取消理由B2
・請求項:1~4、6~7
・引用文献等:甲2、4~11
(3)取消理由B3
・請求項:1~4、6~7
・引用文献等:甲3、2、4~11
3 取消理由C(サポート要件)
本件特許の訂正前の請求項1~4、6及び7についての特許は、以下の理由で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
本件発明1の課題は、「熱可塑性樹脂やゴムを含む場合には耐熱性に優れ、熱硬化性樹脂を含む場合には高い靱性を備えるナノ物質含有組成物、及びこれらを用いた成形体を提供すること」であると解されるところ、本件明細書には、この課題をどのようなメカニズムで向上させるのか記載されない一方、具体的に実験し、課題解決を確認できた「反応性官能基を有する化合物(b)」は、「イソフタル酸ジアリル」の有する2つのアリル基で架橋する例のみが示されるため、出願時の技術常識に照らしても、本件特許の請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
また、請求項1を直接又は間接的に引用しつつも、「反応性官能基を有する化合物(b)」として「イソフタル酸ジアリル」を特定しない請求項2~4、6及び7も同様である。
第6 当審の判断
当審は、以下に述べるように、上記取消理由A、B1~B3、C及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできないと判断する。
そして、本件特許の請求項2~4は、上記のとおり、本件訂正請求により削除された。これにより、請求項2~4に係る特許に対する申立人による特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
1 取消理由A(明確性)
(1)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
(2)本件発明1について
本件発明の発明特定事項は、上記第3に記載のとおり、本件訂正により、本件発明1~2の「反応性官能基を有する化合物(b)」について、「イソフタル酸ジアリル」のみに特定され、これにより、「反応性官能基を有する化合物(b)」が他の成分と明確に区別されるから請求項1の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
(3)本件発明6及び7について
本件特許の請求項1の従属項に係る本件発明6及び7についての特許は、請求項1の特定事項をすべて含み、さらに限定するものであるから、上記「(1)本件発明1について」における検討と同様のことがいえる。
よって、請求項6及び7の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
(4) 取消理由Aについてのまとめ
したがって、本件特許の請求項1、6及び7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている出願に対してされたものであるから、取消理由Aには理由がない。
2 取消理由B1及び申立理由1(進歩性)について
申立人が主張する申立理由1は、取消理由B1と同旨であるから、取消理由B1と併せて申立理由1を検討する。
(1)甲1に記載された発明
甲1の【請求項4】、【請求項6】、【0049】~【0062】に記載された事項を、実施例9に着目して整理すると、甲1には次の発明が記載されていると認める。
「6インチオープンロール(ロール温度10~30℃、ロール間隔1.0mm以下)に、100質量部(phr)のエチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)を投入して、ロールに巻き付かせ、0.1質量部(phr)のカーボンナノファイバー(DWCNT)を混合した後、第1の混練工程を行いロールから取り出し、さらに、その混合物をロール温度100℃に設定されたオープンロールに再度投入し、第2の混練工程を行って取り出し、次に、この混合物をオープンロール(ロール温度10~20℃、ロール間隔0.3mm)で薄通しを繰り返し5回行ない、薄通しして得られた無架橋のシートに有機過酸化物と2質量部(phr)の共架橋剤とを配合して混合した、混合物」の発明(以下、「甲1発明」という。)
(2) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)」は、「重合体」である限りにおいて、本件発明1の「熱可塑性樹脂」及び「熱硬化性樹脂」である「成分(a)」に相当する。
甲1発明の「共架橋剤」は、化学構造は明らかでないものの「化合物」であることは明らかであって、架橋には通常、反応性官能基が関与することは明らかであるから、本件発明1の「反応性官能基を有する化合物(b)(但し、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及びゴムを除く。)」と、「反応性官能基を有する化合物」である限りにおいて相当する。
甲1発明の「カーボンナノファイバー(DWCNT)」は、甲1の段落【0052】の記載「実施例及び比較例のカーボンナノファイバーは、平均直径が3.0nmの2層カーボンナノチューブ(表1では「DWCNT」と示した)」及び本件明細書の段落【0083】~【0084】の記載からみて、本件発明1の「ナノ物質(c)」であって、「カーボンナノチューブ」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「重合体である成分と、
反応性官能基を有する化合物(但し、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及びゴムを除く。)と、
ナノ物質と、
を含有し、
前記ナノ物質は、カーボンナノチューブであるナノ物質含有組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1は、「熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である成分(a)」を含有するのに対し、甲1発明は、「エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)」を含有する点
<相違点2>
「反応性官能基を有する化合物(b)」が、本件発明1は、「イソフタル酸ジアリル」であるのに対し、甲1発明は、「共架橋剤」である点
<相違点3>
本件発明1は、「(i) 前記成分(a)が熱可塑性樹脂である場合、前記成分(a)100質量部に対して、前記反応性官能基を有する化合物(b)は0.5~8質量部であり、前記ナノ物質(c)は0.005~0.1質量部」であるか、
「(ii) 前記成分(a)が熱硬化性樹脂である場合、前記成分(a)100質量部に対して、前記反応性官能基を有する化合物(b)は80~100質量部であり、前記ナノ物質(c)は0.001~0.1質量部」であるのに対し、甲1発明は、そのような特定事項を有しない点
イ 判断
上記相違点について検討する。
甲1は、その特許請求の範囲の請求項1に記載されるように、エラストマーを用いることを必須とするものである。そこで、相違点1に係る、甲1発明におけるエラストマー成分である「エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)」を「熱可塑性樹脂」や「熱硬化性樹脂」に置き換えることにつき、甲1の記載及び技術常識を参酌してもその動機付けは存在しない。
そして、本件発明1は、実施例及び比較例の記載からも、イソフタル酸ジアリルを含まない比較例に比して、熱可塑性樹脂は耐熱性、熱硬化性樹脂は曲げ強度で表される靱性を改良するという、相違点2に係る特定事項によって格別顕著な効果を奏するものである。
したがって、相違点3を論じるまでもなく、少なくとも相違点1及び2に係る本件発明1の発明特定事項を、甲1発明において採用することは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
ウ 小括
以上のとおり、本件発明1は、甲1に記載された発明を主たる引用発明として、それに基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明6及び7について
本件発明6及び7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、更に、本件発明1に記載のナノ物質含有組成物を用いて硬化物または成形体を作製したものであるから、本件発明1同様、甲1に記載された発明を主たる引用発明として、それに基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4) 取消理由B1及び申立理由1についてのまとめ
したがって、本件特許の請求項1、6及び7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、取消理由B1及び申立理由1には理由がない。
3 取消理由B2及び申立理由2(進歩性)について
申立人が主張する申立理由2は、取消理由B2と同旨であるから、取消理由B2と併せて申立理由2を検討する。
(1)甲2に記載された発明
甲2の[請求項2]、[請求項3]、[0095]~[0105]に記載された事項を、実施例2に着目して整理すると、甲2には次の発明が記載されていると認める。
「アクリロニトリル量が36.2%、ヨウ素価56のニトリルゴム100質量部に対し、平均直径(Av)が5.9nm、直径分布(3σ)が3.3nm、(3σ/Av)が0.56、BET比表面積(m2/g)が620のカーボンナノチューブ(SGCNT-2)を0.05質量部含むゴム組成物。」(以下、「甲2発明」という。)
(2) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「アクリロニトリル量が36.2%、ヨウ素価56のニトリルゴム」は、「重合体」である限りにおいて、本件発明1の「熱可塑性樹脂」及び「熱硬化性樹脂」である「成分(a)」に相当する。
また、甲2発明の「平均直径(Av)が5.9nm、直径分布(3σ)が3.3nm、(3σ/Av)が0.56、BET比表面積(m2/g)が620のカーボンナノチューブ(SGCNT-2)」は、本件明細書の段落【0083】~【0084】の記載からみて、本件発明1の「カーボンナノチューブ」である「ナノ物質(c)」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲2発明とは、
「重合体である成分と、
ナノ物質と、
を含有し、
前記ナノ物質は、カーボンナノチューブであるナノ物質含有組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点4>
本件発明1は、「熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である成分(a)」を含有するのに対し、甲1発明は、「アクリロニトリル量が36.2%、ヨウ素価56のニトリルゴム」を含有する点
<相違点5>
「反応性官能基を有する化合物(b)」が、本件発明1は、「イソフタル酸ジアリル」であるのに対し、甲2発明は、そのような特定事項を有しない点
<相違点6>
本件発明1は、「(i) 前記成分(a)が熱可塑性樹脂である場合、前記成分(a)100質量部に対して、前記反応性官能基を有する化合物(b)は0.5~8質量部であり、前記ナノ物質(c)は0.005~0.1質量部」であるか、
「(ii) 前記成分(a)が熱硬化性樹脂である場合、前記成分(a)100質量部に対して、前記反応性官能基を有する化合物(b)は80~100質量部であり、前記ナノ物質(c)は0.001~0.1質量部」であるのに対し、甲2発明は、そのような特定事項を有しない点
イ 判断
上記相違点について検討する。
甲2は、その請求の範囲の請求項1に記載されるように、「ニトリルゴム(A)」を用いることを必須とするものである。そこで、相違点4に係る甲2発明におけるニトリルゴムを「熱可塑性樹脂」や「熱硬化性樹脂」に置き換えることにつき、甲2の記載及び技術常識を参酌してもその動機付けは存在しない。
そして、本件発明1は、実施例及び比較例の記載からも、イソフタル酸ジアリルを含まない比較例に比して、熱可塑性樹脂は耐熱性、熱硬化性樹脂は曲げ強度で表される靱性を改良するという、相違点5に係る特定事項によって格別顕著な効果を奏するものである。
したがって、相違点6を論じるまでもなく、少なくとも相違点4及び5に係る本件発明1の発明特定事項を、甲2発明において採用することは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
ウ 小括
以上のとおり、本件発明1は、甲2に記載された発明を主たる引用発明として、それに基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明6及び7について
本件発明6及び7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、更に、本件発明1に記載のナノ物質含有組成物を、硬化物または成形体を作製したものであるから、本件発明1同様、甲2に記載された発明を主たる引用発明として、それに基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4) 取消理由B2及び申立理由2についてのまとめ
したがって、本件特許の請求項1、6及び7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、取消理由B2及び申立理由2には理由がない。
4 取消理由B3及び申立理由3(進歩性)について
申立人が主張する申立理由3は、取消理由B3と同旨であるから、取消理由B3と併せて申立理由3を検討する。
(1)甲3に記載された発明
甲3の[請求項14]、[0073]、[0109]~[0166]、[図22]に記載された事項を、実施例3に着目して整理すると、甲3には次の発明が記載されていると認める。
「マトリックスとしてフッ素ゴム(ダイキン工業社製、Daiel-G912)を用い、カーボンナノチューブ複合材料全体の質量を100重量%とした場合、カーボンナノチューブ含量が0.01重量%となるように、カーボンナノチューブ分散液をフッ素ゴム溶液50mlに添加し、スターラーを用い、約300rpm条件下で、室温で16時間攪拌し全量が50ml程度になるまで濃縮し、十分に混合した溶液をシャーレ等の型に流しこみ、室温で12時間乾燥させることにより、得た、カーボンナノチューブ複合材料」の発明(以下、「甲3発明」という。)
(2) 本件発明1について
ア 本件発明1と甲3発明との対比
本件発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「フッ素ゴム(ダイキン工業社製、Daiel-G912)」は、「重合体」である限りにおいて、本件発明1の「熱可塑性樹脂」及び「熱硬化性樹脂」である「成分(a)」に相当する。
甲3発明の「カーボンナノチューブ」は、本件明細書の段落【0083】~【0084】の記載からみて、本件発明1の「ナノ物質(c)」である「カーボンナノチューブ」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲3発明とは、
「重合体である成分と、
ナノ物質と、
を含有し、
前記ナノ物質は、カーボンナノチューブであるナノ物質含有組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点7>
本件発明1は、「熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である成分(a)」を含有するのに対し、甲3発明は、「フッ素ゴム(ダイキン工業社製、Daiel-G912)」を含有する点
<相違点8>
「反応性官能基を有する化合物(b)」が、本件発明1は、「イソフタル酸ジアリル」であるのに対し、甲3発明は、そのような特定事項を有しない点
<相違点9>
本件発明1は、「(i) 前記成分(a)が熱可塑性樹脂である場合、前記成分(a)100質量部に対して、前記反応性官能基を有する化合物(b)は0.5~8質量部であり、前記ナノ物質(c)は0.005~0.1質量部」であるか、
「(ii) 前記成分(a)が熱硬化性樹脂である場合、前記成分(a)100質量部に対して、前記反応性官能基を有する化合物(b)は80~100質量部であり、前記ナノ物質(c)は0.001~0.1質量部」であるのに対し、甲3発明は、そのような特定事項を有しない点
イ 判断
上記相違点について検討する。
相違点8に関し、甲3には、複数の官能基を有すると考えられる架橋剤等の成分をカーボンナノチューブ複合材料の成分として用いることについて記載されるものの「イソフタル酸ジアリル」を用いることについて記載又は示唆がなされていないし、技術常識を参酌してもその動機付けは存在しない。
そして、本件発明1は、実施例及び比較例の記載からも、イソフタル酸ジアリルを含まない比較例に比して、熱可塑性樹脂は耐熱性、熱硬化性樹脂は曲げ強度で表される靱性を改良するという格別顕著な効果を奏するものである。
したがって、相違点7及び9を論じるまでもなく、少なくとも相違点8に係る本件発明1の発明特定事項を、甲3発明において採用することは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
なお、甲3には、実施例6及び11に、マトリックスとして、本件発明1の「熱可塑性樹脂」に相当する「Polystyrene(SPJ,PSジャパン製)」や、本件発明1の「熱硬化性樹脂」に相当する「エポキシ樹脂であるアデレンカEP-4500およびアデカハードナーEH(ADEKA社製)」を用いる技術が記載されている。
しかしながら、いずれの実施例も、「反応性官能基を有する化合物(b)(但し、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及びゴムを除く。)」として、「イソフタル酸ジアリル」を含まない。
また、発明の解決課題に関し、甲3には、その段落[0010]に「本発明は、上記の如き従来技術の問題点を解決し、低添加量のカーボンナノチューブで高導電性を発揮できるカーボンナノチューブ複合材料を実現することを課題とする。」と記載されるのに対して、本件発明の課題は、「熱可塑性樹脂やゴムを含む場合には耐熱性に優れ、熱硬化性樹脂を含む場合には高い靱性を備えるナノ物質含有組成物、及びこれらを用いた成形体を提供すること」(本件明細書の段落【0012】)であって両者は相違するものである。
そうすると、甲3の上記課題に照らして、マトリクス成分である熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂や、「反応性官能基を有する化合物」である「イソフタル酸ジアリル」の組み合わせを選択して、本件発明1に一致させる動機付けが存在しない。
また、甲3の段落[0077]には「本発明のカーボンナノチューブ複合材料には、上述の成分以外に、例えば、イオン導電剤(界面活性剤、アンモニウム塩、無機塩)、・・・、架橋剤、架橋促進剤、老化防止剤、・・・等を適宜用いてもよい」ことが記載されているものの、「イソフタル酸ジアリル」の採用について記載も示唆もされていない。
そして、本件発明1は、実施例及び比較例の記載からも、イソフタル酸ジアリルを含まない比較例に比して、熱可塑性樹脂は耐熱性、熱硬化性樹脂は曲げ強度で表される靱性を改良するという格別顕著な効果を奏するものである。
ウ 小括
以上のとおり、本件発明1は、甲3に記載された発明を主たる引用発明として、それに基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明6及び7について
本件発明6及び7は、本件発明3の発明特定事項を全て含み、更に、本件発明1に記載のナノ物質含有組成物を、硬化物または成形体を作製したものであるから、本件発明1同様、甲3に記載された発明を主たる引用発明として、それに基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4) 取消理由B3及び申立理由3についてのまとめ
したがって、本件特許の請求項1、6及び7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、取消理由B3及び申立理由3には理由がない。
5 取消理由C(サポート要件)
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、本願明細書の発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明が解決しようとする課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか否か、また、その記載がなくとも、当業者が出願時の技術常識に照らし、当該発明が解決しようとする課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断されるべきである。
(2)本件発明1について
ア 本件発明の課題
本件発明1を含む本件発明の解決課題は、本件明細書の段落【0012】から、「熱可塑性樹脂やゴムを含む場合には耐熱性に優れ、熱硬化性樹脂を含む場合には高い靱性を備えるナノ物質含有組成物、及びこれらを用いた成形体を提供すること」であると解される。
イ 判断
本件訂正によって、反応性官能基を有する化合物(b)が、イソフタル酸ジアリルに限定された。
そして、本件明細書の実施例において、「成分(a)」が「熱可塑性樹脂」及び「熱硬化性樹脂」のそれぞれに対して「反応性官能基を有する化合物(b)」として「イソフタル酸ジアリル 株式会社大阪ソーダ製 「DAP100モノマー」」を用いた場合に実際に本願の課題を解決することが示されている。
そうすると、本件発明1の特定事項である、成分(a)として熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を選択した場合に、反応性官能基を有する化合物(b)として所定量のイソフタル酸ジアリル、ナノ物質(c)として所定量のカーボンナノチューブを使用することによって、成分(a)として、熱可塑性樹脂を選択した場合には耐熱性に、成分(a)として、熱硬化性樹脂を選択した場合には靱性の課題が解決できることは、本件明細書の発明の詳細な説明に、当業者が認識できるように記載されているといえる。
(3)本件発明6及び7について
本件特許の請求項1の従属項に係る本件発明6及び7についての特許は、請求項1の特定事項をすべて含み、さらに限定するものであるから、上記「(1)本件発明1について」における検討と同様、本件発明の課題を解決できることを当業者が認識できる特定事項を有する。
よって、本件発明6及び7は、発明の詳細な説明に記載された発明である。
(4) 取消理由Cについてのまとめ
したがって、本件特許の請求項1、6及び7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている出願に対してされたものであるから、取消理由Cには理由がない。
第7 むすび
上記第6のとおり、本件特許の訂正後の請求項1、6及び7に係る特許は、取消理由(決定の予告)及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1、6及び7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件特許の請求項2~4は、上記のとおり、本件訂正請求により削除された。これにより、請求項2~4に係る特許に対する申立人による特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-701315