特許異議申立
2022-701286
ヘテロファジックプロピレン重合材料及びプロピレン系樹脂組成物
- 審判番号
- 2022-701286
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-506002
- 登録番号
- 7088165
- 請求日
- 2022年12月21日
- 審決日
- 2023年03月31日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】住友化学株式会社
- 【権利者代理人】中山 亨
- 【権利者代理人】坂元 徹
- 【異議申立人】藤江 桂子
- 審判長/審判官
- 審判長 杉江 渉
- 審判官 小出 直也
- 審判官 海老原 えい子
- 分類
- P1651.113-Y (C08F) / P1651.121-Y (C08F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7088165号発明「ヘテロファジックプロピレン重合材料及びプロピレン系樹脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7088165号の請求項1~9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯等について
1 手続の経緯について
本件特許第7088165号に係る出願(請求項の数9。以下「本件特許」という。)は、平成30年3月12日を国際出願日(優先件主張:平成29年3月14日、日本国)とする出願(特願2019-506002号)であって、令和4年6月13日に特許権の設定登録がされ、同年6月21日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、令和4年12月21日に、請求項1~9に係る特許に対して、特許異議申立人藤江 桂子(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
2 証拠方法
申立人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。
甲第1号証 特開2007-284668号公報
甲第2号証 特開2011-195661号公報
参考資料1 特表2015-537089号公報
参考資料2 特開2003-268173号公報
参考資料3 社団法人日本分析化学会高分子分析研究懇談会編「新版高分子分析ハンドブック」、初版、1995年1月12日
参考資料4 特開2016-19969号公報
参考資料5 JOURNAL OF APPLIED POLYMER SCIENCE,Vol.14,p.1651-1653,1970年
(参考資料5の翻訳文として、参考資料5の2)
(以下、甲第1号証及び甲第2号証を、それぞれ「甲1」及び「甲2」という。)
第2 本件発明
特許第7088165号の請求項1~9の特許に係る発明は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、請求項1~9の特許に係る発明をそれぞれ、「本件発明1」~「本件発明9」といい、これらをまとめて、「本件発明」という。また、本件特許の願書に添付した明細書を、図面を含めて、「本件明細書」という。)
【請求項1】
下記成分(I-1)または下記成分(I-2)と、下記成分(II)とを含み、下記要件(i)~(v)を満たすヘテロファジックプロピレン重合材料、
下記成分(A)、
下記成分(B)、及び
下記成分(C)を含有するプロピレン系樹脂組成物であって、
ヘテロファジックプロピレン重合材料、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)の合計量100重量%に対して、
前記ヘテロファジックプロピレン重合材料の含有量が1~10重量%であり、成分(A)の含有量が30~97重量%であり、成分(B)の含有量が1~30重量%であり、成分(C)の含有量が1~30重量%であるプロピレン系樹脂組成物。
(i)ヘテロファジックプロピレン重合材料のキシレン可溶成分の含有量が、20重量%以上である(但し、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を100重量%とする)。
(ii)ヘテロファジックプロピレン重合材料のキシレン可溶成分の極限粘度[η]CXSが、5dL/g以上である。
(iii)温度230℃、荷重2.16kgfの条件で測定される、成分(I-1)または成分(I-2)のメルトフローレートが70g/10分以上である。
(iv)温度230℃、荷重2.16kgfの条件で測定される、ヘテロファジックプロピレン重合材料のメルトフローレートが5g/10分以上である。
(v)下記ゲル数測定用シート中に存在する直径100μm以上のゲルの数が、シートの面積100cm2当たり1000個以下である。
ゲル数測定用シート:ヘテロファジックプロピレン重合材料100重量部に対して、中和剤を0.05重量部、および酸化防止剤を0.2重量部混合し、得られた混合物を100メッシュのスクリーンパックを設置した40mm造粒機を用い、設定温度280℃、押出量10kg/hrで溶融押出を行いペレット化した後、スクリュー直径20mmの単軸押出機により、樹脂温度230℃で、得られたペレットをシート状に溶融押出し、溶融押出されたシート状物を、30℃の冷却水を通水した冷却ロールにより冷却して、厚さ50μmに成形されたシート。
成分(I-1):プロピレン単独重合体
成分(I-2):プロピレンに由来する単量体単位と、エチレンおよび炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位とを含む共重合体成分であって、
エチレンおよび炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位の含有量が0.01重量%以上20重量%未満である(但し、成分(I-2)の全重量を100重量%とする)プロピレン共重合体成分。
成分(II):エチレンに由来する単量体単位と、プロピレンおよび炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位とを含む共重合体成分であって、
エチレンに由来する単量体単位の含有量が20重量%以上80重量%以下である(但し、成分(II)の全重量を100重量%とする)
エチレン-α-オレフィン共重合体成分。
成分(A):プロピレン単独重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体、およびヘテロファジックプロピレン重合材料からなる群より選ばれる少なくとも一種であるプロピレン系重合体(但し、成分(A)としてのヘテロファジックプロピレン重合材料は、以下に定義される重合体(X)を除く。
重合体(X):成分(I-1)または成分(I-2)と、成分(II)とを含み、下記要件(i)~(v)を満たすヘテロファジックプロピレン重合材料。
(i)ヘテロファジックプロピレン重合材料のキシレン可溶成分の含有量が、20重量%以上である(但し、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を100重量%とする)。
(ii)ヘテロファジックプロピレン重合材料のキシレン可溶成分の極限粘度[η]CXSが、5dL/g以上である。
(iii)成分(I-1)または成分(I-2)のMFRが70g/10分以上である。
(iv)ヘテロファジックプロピレン重合材料のMFRが5g/10分以上である。
(v)ヘテロファジックプロピレン重合材料から得られる下記ゲル数測定用シート中に存在する100μm以上の大きさのゲルの数が、シートの面積100cm2当たり1000個以下である。
ゲル数測定用シート:ヘテロファジックプロピレン重合材料100重量部に対して、中和剤を0.05重量部、および酸化防止剤を0.2重量部混合し、得られた混合物を100メッシュのスクリーンパックを設置した40mm造粒機を用い、設定温度280℃、押出量10kg/hrで溶融押出を行いペレット化した後、スクリュー直径20mmの単軸押出機により、樹脂温度230℃で、得られたペレットをシート状に溶融押出し、溶融押出されたシート状物を、30℃の冷却水を通水した冷却ロールにより冷却して、厚さ50μmに成形されたシート。)
成分(B):オレフィン系エラストマー
成分(C):無機充填剤
【請求項2】
ヘテロファジックプロピレン重合材料のフタル酸エステルの含有量が10ppm以下である請求項1に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項3】
成分(B)がエチレン-プロピレン共重合エラストマー、エチレン-1-ブテン共重合エラストマー、エチレン-1-ヘキセン共重合エラストマー、およびエチレン-1-オクテン共重合エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも一種のオレフィン系エラストマーである請求項1または2に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項4】
成分(B)がエチレン-1-オクテン共重合エラストマーを含む、請求項3に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項5】
ヘテロファジックプロピレン重合材料のキシレン不溶成分の極限粘度[η]CXISが0.8dL/g以上3.0dL/g以下である請求項1~4のいずれか一項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項6】
ヘテロファジックプロピレン重合材料のキシレン可溶成分中のエチレンおよび炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンに由来する単量体単位の含有量が10重量%以上75重量%以下である(但し、キシレン可溶成分の全重量を100重量%とする)請求項1~5のいずれか一項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項7】
ヘテロファジックプロピレン重合材料の極限粘度[η]wholeが1dL/g以上10dL/g以下である請求項1~6のいずれか一項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項8】
ヘテロファジックプロピレン重合材料に含有される成分(I)の含有量が50重量%以上80重量%以下である(但し、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を100重量%とする)請求項1~7のいずれか一項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項9】
成分(C)が、タルク、マイカ、モンモリロナイト、ワラストナイト、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸カリウム、塩基性硫酸マグネシウム、ガラス繊維、炭素繊維、およびアラミド繊維からなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項1~8のいずれか一項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
第3 申立理由の概要
特許異議申立書(以下「申立書」という。)の申立理由は、以下のとおりである。
1 本件発明1及び3~9は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であって、特許法29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 本件発明1及び3~9は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
3 本件発明2は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
第4 本件明細書及び甲号証の記載
1 本件明細書の記載
「【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘテロファジックプロピレン重合材料及びプロピレン系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂は、自動車部材として使用されている。バンパー、インスツルメントパネルなどの自動車部材用の大型射出成形体に、「フローマーク」と呼ばれる外観不良が生じることがある。フローマークとは、射出成形体の表面に縞模様が現れる成形不良現象である。例えば、特許文献1には、高分子量のエチレン-プロピレン共重合体を含むヘテロファジックプロピレン重合材料をプロピレン系材料に添加することにより、フローマークの発生を抑制できることが記載されている。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記ヘテロファジックプロピレン重合材料を含有する樹脂組成物からなる成形体には、ゲルと呼ばれる重合体凝集物が発生しやすいという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、プロピレン系樹脂へ添加することによって、プロピレン系樹脂射出成形体上にフローマークが発生する面積を減少させることができ、且つ得られる成形体における発生するゲル数を減少させることが可能なヘテロファジックプロピレン重合材料を提供することにある。
・・・
【発明の効果】
【0007】
本発明のヘテロファジックプロピレン重合材料が、プロピレン系樹脂に含まれることによって、プロピレン系樹脂射出成形体上にフローマークが発生する面積を減少させることができ、プロピレン系樹脂組成物を含む成形体における発生するゲル数を減少させることができる。
・・・
【0010】
<ヘテロファジックプロピレン重合材料>
本発明のヘテロファジックプロピレン重合材料は、成分(I-1)または成分(I-2)と、成分(II)とを含むヘテロファジックプロピレン重合材料である。成分(I-1)と成分(I-2)を併せて「成分(I)」と称する。
【0011】
成分(I-1)は、プロピレンに由来する単量体単位のみからなる単独重合体成分である。
【0012】
成分(I-2)は、プロピレンに由来する単量体単位と、エチレンおよび炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位とを含む共重合体成分である。
・・・
【0014】
成分(II)は、エチレンに由来する単量体単位と、プロピレンおよび炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位とを含む共重合体成分である。
・・・
【0023】
本発明のヘテロファジックプロピレン重合材料は、要件(i)~(v)を満たすヘテロファジックプロピレン重合材料である。
【0024】
<要件(i)>
ヘテロファジックプロピレン重合材料のキシレン可溶成分の含有量が、20重量%以上である。(但し、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を100重量%とする)。より少ない添加量でフローマークが発生する面積を減少させる効果を高めるために、前記キシレン可溶成分は、好ましくは22重量%以上45重量%以下である。
本明細書において、「キシレン可溶成分」は、溶媒をp-キシレンとし、ISO 16152に準拠して得られる25℃ キシレン可溶成分である。
ヘテロファジックプロピレン重合材料のキシレン可溶成分の含有量は、成分(II)を重合する際の重合温度、重合圧力、または滞留時間を調整することにより制御することができる。重合温度は、50~100℃とすることが好ましい。重合圧力は、常圧~3MPaGとすることが好ましい。滞留時間は、0.5~5時間とすることが好ましい。
【0025】
<要件(ii)>
ヘテロファジックプロピレン重合材料のキシレン可溶成分の極限粘度[η]CXSは、好ましくは5dL/g以上20dL/g以下であり、より好ましくは5dL/g以上15dL/g以下であり、さらに好ましくは5L/g以上12dL/g以下である。
本発明における極限粘度は、温度135℃、テトラリン中で測定される極限粘度であり、「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491項に記載の計算方法により求められる。すなわち、還元粘度を濃度に対してプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法によって求められる粘度である。還元粘度は、温度135℃、テトラリン溶媒の条件で、ウベロ-デ型粘度計により、濃度0.1g/dL、0.2g/dL、および、0.5g/dLの3点を測定する。
ヘテロファジックプロピレン重合材料のキシレン可溶成分の極限粘度[η]CXSは、成分(II)を重合する際の重合槽の気相部の水素濃度を調整することによって制御することができる。重合槽の気相部の水素濃度は、例えば0.0~0.4mol%とすることが好ましく、0.0~0.1mol%であることがより好ましい(ただし、エチレンとα-オレフィンと水素との合計量を100mol%とする)。
【0026】
<要件(iii)>
成分(I-1)または成分(I-2)のMFRが70g/10分以上である。
成分(I-1)または成分(I-2)のMFRは、好ましくは70g/10分以上1000g/10分以下であり、より好ましくは100g/10分以上500g/10分以下であり、さらに好ましくは120g/10分以上300g/10分以下である 成分(I-1)または成分(I-2)のMFRは、成分(I-1)または成分(I-2)を重合する際の重合槽の気相部の水素濃度を調整することにより制御することができる。重合槽の気相部の水素濃度は、例えば1~30mol%とすることが好ましく、3~30mol%であることがより好ましい(ただし、プロピレンと水素との合計量を100mol%とする)。
【0027】
<要件(iv)>
ヘテロファジックプロピレン重合材料のMFRは、好ましくは5g/10分以上50g/10分以下であり、より好ましくは5g/10分以上25g/50分以下であり、さらに好ましくは5g/10分以上20g/10分以下である。
ヘテロファジックプロピレン重合材料のMFRは、成分(I-1)または成分(I-2)を重合する際の重合槽の気相部の水素濃度、または成分(II)を重合する際の重合温度、重合圧力、滞留時間、または重合槽の気相部の水素濃度を調整することにより制御することができる。成分(I-1)または成分(I-2)を重合する際の重合槽の気相部の水素濃度、および成分(II)を重合する際の重合温度、重合圧力、滞留時間、重合槽の気相部の水素濃度は、それぞれ、要件(i)~(iii)で示した範囲の値とすることが好ましい。
【0028】
<要件(v)>
ヘテロファジックプロピレン重合材料を含む下記ゲル数測定用シート中に存在する直径100μm以上のゲルの数が、シートの面積100cm2当たり1000個以下である。
ゲル数測定用シート:ヘテロファジックプロピレン重合材料100重量部に対して、中和剤を0.05重量部、酸化防止剤を0.2重量部混合し、得られた混合物を100メッシュのスクリーンパックが設置された40mm造粒機を用い、設定温度280℃、押出量10kg/hrで溶融押出を行いペレット化する。スクリュー直径20mmの単軸押出機により、樹脂温度230℃で、得られたペレットをシート状に溶融押出し、溶融押出されたシート状物を、30℃の冷却水を通水した冷却ロールにより冷却して、厚さ50μmに成形されたシート。
ゲル数測定用シートの成形に用いられるペレットとしては、例えば、下記が挙げられる。ヘテロファジックプロピレン重合材料100重量部に対して、ステアリン酸カルシウム(日本油脂株式会社製)を0.05重量部、3,9-ビス[2-{3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(スミライザー(登録商標)GA80、住友化学株式会社製)を0.1重量部、2,4,8,10-テトラ-tert-ブチル-6-[3-(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f] [1,3,2]ジオキサホスフェピン(スミライザー(登録商標)GP、住友化学株式会社製)を0.1重量部混合する。得られた混合物を、100メッシュのスクリーンパックを設置した田辺プラスチックス機械株式会社製40mm造粒機を用い、設定温度280℃、押出量10kg/hrで溶融押出を行ってペレット化したペレットが挙げられる。
シートの面積100cm2当たりのゲルの数は、好ましくは0個以上1000個以下、より好ましくは0個以上750個以下である。
要件(v)において、ゲルの数は、下記の方法により測定される。
シートの表面を、EPSON社製スキャナーGT-X970により観察し、シート表面の画像を得る。得られる画像を900dpi、8bitの条件でコンピューターに取り込み、閾値が120以上の部分を白、閾値が120未満の部分を黒とする2値化処理を行う。2値化処理は、旭エンジニアリング社製画像解析ソフト“A像君”を使用する。白部分がゲルである。ゲルの形状は不定形であるので、円相当径をゲルの大きさとする。シートの面積100cm2当たりの円相当径(直径)100μm以上であるゲルの数を求める。
要件(v)は、成分(I-1)または成分(I-2)を、後述の多段重合方法により重合することにより満足させることができる。多段重合方法における反応領域の数は、成分(I)の重合では6~10が好ましい。
・・・
【0034】
<ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法>
本発明のヘテロファジックプロピレン重合材料が、成分(I-1)と成分(II)とを含むヘテロファジックプロピレン重合材料である場合、該ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法としては、以下の方法が挙げられる。
<製造方法1>
下記工程(1-1)と下記工程(1-2)とを含むヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法。
工程(1-1):プロピレン重合触媒の存在下、多段重合方法により、プロピレンを単独重合して、成分(I-1)を得る工程。
工程(1-2):前記成分(I-1)の存在下、多段重合方法により、プロピレンおよび炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンと、エチレンとを共重合して、成分(I-1)と成分(II)とを含むヘテロファジックプロピレン重合材料を得る工程。
<製造方法2>
下記工程(2-1)と下記工程(2-2)とを含むヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法。
工程(2-1):プロピレン重合触媒の存在下、多段重合方法により、プロピレンおよび炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンと、エチレンとを共重合して、成分(II)を得る工程。
工程(2-2):前記成分(II)の存在下、多段重合方法により、プロピレンを単独重合して、成分(I-1)と成分(II)とを含むヘテロファジックプロピレン重合材料を得る工程。
【0035】
本発明のヘテロファジックプロピレン重合材料が、成分(I-2)と成分(II)とを含むヘテロファジックプロピレン重合材料である場合、該ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法としては、以下の方法が挙げられる。
<製造方法3>
下記工程(3-1)と下記工程(3-2)とを含むヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法。
工程(3-1):プロピレン重合触媒の存在下、多段重合方法により、エチレンおよび炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンと、プロピレンとを共重合して、成分(I-2)を得る工程。
工程(3-2):前記成分(I-2)の存在下、多段重合方法により、プロピレンおよび炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンと、エチレンとを共重合して、成分(I-2)と成分(II)とを含むヘテロファジックプロピレン重合材料を得る工程。
<製造方法4>
下記工程(4-1)と下記工程(4-2)とを含むヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法。
工程(4-1):プロピレン重合触媒の存在下、多段重合方法により、プロピレンおよび炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンと、エチレンとを共重合して、成分(II)を得る工程。
工程(4-2):前記成分(II)の存在下、多段重合方法により、エチレンおよび炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンと、プロピレンとを共重合して、成分(I-2)と成分(II)とを含むヘテロファジックプロピレン重合材料を得る工程。
【0036】
多段重合方法とは、直列に接続された複数の反応領域において、重合触媒の存在下、モノマーを重合する重合方法であって、下記工程a~工程cを含む重合方法である。
工程a:最上流の第1の反応領域へ、重合触媒とモノマーとを供給し、該モノマーを重合することにより、重合体を得る工程。
工程b:第1の反応領域で得られた重合体を、第1の反応領域に接続された第2の反応領域へ移送する工程
工程c:前記第2の反応領域へモノマーを供給し、前記第1の反応領域で得られた重合体の存在下、モノマーを重合することにより、重合体を得る工程
直列に接続された反応領域の数が3以上の場合、第3の反応領域以降の反応領域においても、前記工程bおよび前記工程cに相当する工程を行う。
多段重合は、
1つの反応器中に1つの反応領域を有する反応器が直列に複数接続されたシステム中で行う場合と、
1つの反応器中に複数の反応領域を有する反応器中で行う場合と、
1つの反応器中に1つの反応領域を有する反応器と、1つの反応器中に複数の反応領域を有する反応器とが接続されたシステム中で行う場合
とが挙げられる。
1つの反応器中に複数の反応領域を有する反応器としては、多段噴流層型反応器が挙げられる。
前記工程(1-1)、前記工程(2-2)、前記工程(3-1)または前記工程(4-2)では、多段重合方法の反応領域の数は、6~10が好ましい。前記工程(1-2)、前記工程(2-1)、前記工程(3-2)または前記工程(4-1)では、多段重合方法の反応領域の数は、2~5が好ましい。
・・・
【0057】
本発明のヘテロファジックプロピレン重合材料は、ポリプロピレン改質材として使用できる。
本明細書において、「ポリプロピレン改質材」とは、ポリプロピレンを含む成形体の外観を改良する材を意味する。例えば、ポリプロピレン改質材である本発明のヘテロファジックプロピレン重合材料を含むポリプロピレンを含む成形体の外観は、ポリプロピレン改質材を含まないポリプロピレンを含む成形体の外観より優れる。
ポリプロピレン改質材は、ポリプロピレンを含む成形体の外観を改良する効果を損ねない限り、耐熱安定剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、中和剤、結晶核剤、滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、難燃剤、石油樹脂、発泡剤、発泡助剤等の添加剤を含有していてもよい。
・・・
【0058】
<プロピレン系樹脂組成物>
本発明は、前記ヘテロファジックプロピレン重合材料、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)を含有するプロピレン系樹脂組成物であって、
ヘテロファジックプロピレン重合材料、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)の合計量100重量%に対して、
ヘテロファジックプロピレン重合材料の含有量が1~10重量%であり、成分(A)の含有量が30~97重量%であり、成分(B)の含有量が1~30重量%であり、成分(C)の含有量が1~30重量%であるプロピレン系樹脂組成物を提供する。
・・・
【0060】
<成分(A)>
成分(A)とは、プロピレンに基づく単量体単位を有する重合体であって、重合体の全重量100重量%に対して、プロピレンに基づく単量体単位の含有量が50重量%以上である重合体である。
成分(A)としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体、およびヘテロファジックプロピレン重合材料が挙げられる。
但し、成分(A)としてのヘテロファジックプロピレン重合材料は、以下に定義される重合体(X)を除く。
重合体(X):成分(I-1)または成分(I-2)と、成分(II)とを含み、下記要件(i)~(v)を満たすヘテロファジックプロピレン重合材料。
(i)ヘテロファジックプロピレン重合材料のキシレン可溶成分の含有量が、20重量%以上である(但し、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を100重量%とする)。
(ii)ヘテロファジックプロピレン重合材料のキシレン可溶成分の極限粘度[η]CXSが、5dL/g以上である。
(iii)成分(I-1)または成分(I-2)のMFRが70g/10分以上である。
(iv)ヘテロファジックプロピレン重合材料のMFRが5g/10分以上である。
(v)ヘテロファジックプロピレン重合材料から得られる下記ゲル数測定用シート中に存在する100μm以上の大きさのゲルの数が、シートの面積100cm2当たり1000個以下である。
ゲル数測定用シート:ヘテロファジックプロピレン重合材料100重量部に対して、中和剤を0.05重量部、および酸化防止剤を0.2重量部混合し、得られた混合物を100メッシュのスクリーンパックを設置した40mm造粒機を用い、設定温度280℃、押出量10kg/hrで溶融押出を行いペレット化した後、スクリュー直径20mmの単軸押出機により、樹脂温度230℃で、得られたペレットをシート状に溶融押出し、溶融押出されたシート状物を、30℃の冷却水を通水した冷却ロールにより冷却して、厚さ50μmに成形されたシート。
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、成分(A)を1種のみ含有してもよく、2種以上含有してもよい。成分(A)は、好ましくは、プロピレン単独重合体、または、ヘテロファジックプロピレン重合材料である。
【0061】
<成分(B)>
オレフィン系エラストマーとは、炭素原子数3~20のα-オレフィンに由来する単量体単位と、エチレンに由来する単量体単位とを有する重合体である。オレフィン系エラストマー中のエチレンに由来する単量体単位の含有量は、10~85重量%であることが好ましい(但し、成分(B)の全重量を100重量%とする)。炭素原子数3~20のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、2-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、および1-ドデセン等が挙げられ、好ましくはプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、または1-オクテンである。
【0062】
上記のオレフィン系エラストマーとしては、エチレン-プロピレン共重合エラストマー、エチレン-1-ブテン共重合エラストマー、エチレン-1-ヘキセン共重合エラストマー、およびエチレン-1-オクテン共重合エラストマー等が挙げられる。オレフィン系エラストマーについては、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。好ましくは、エチレン-1-ブテン共重合エラストマー、またはエチレン-1-オクテン共重合エラストマーである。
【0063】
<成分(C)>
成分(C)としては、例えば、タルク、マイカ、モンモリロナイト、ワラストナイト、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸カリウム、塩基性硫酸マグネシウム、ガラス繊維、炭素繊維、およびアラミド繊維が挙げられ、好ましくは、タルクである。本発明のプロピレン系樹脂組成物は、成分(C)を1種のみ含有してもよく、2種以上含有してもよい。
・・・
【実施例】
【0068】
実施例および比較例における各項目の測定値は、下記の方法で測定した。
【0069】
(1)極限粘度([η]、単位:dL/g)
ヘテロファジックプロピレン重合材料の全体の極限粘度([η]whole)、および、ヘテロファジックプロピレン重合材料のキシレン可溶成分の極限粘度([η]CXS)
ウベロ-デ型粘度計により、濃度0.1g/dL、0.2g/dL、および、0.5g/dLの3点について、ヘテロファジックプロピレン重合材料およびヘテロファジックプロピレン重合材料のキシレン可溶成分の還元粘度をそれぞれ測定した。極限粘度は、参考文献「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491項に記載の計算方法、すなわち、還元粘度を濃度に対してプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法によって求めた。テトラリンを溶媒として用いて、温度135℃で測定を行った。
【0070】
(2)キシレン可溶成分(CXS、単位:重量%)
溶媒をp-キシレンとし、ISO 16152に準拠して、25℃ キシレン可溶成分を得た。
【0071】
(3)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
MFRは、JIS K7210のA法に規定された方法に従い、温度230℃、荷重は2.16kgfの条件で測定した。
【0072】
(4)ゲル数測定用シートの製造
ゲル数測定用シートは、次の方法に従って作製した。スクリュー直径20mmの単軸押出機(田辺プラスチック機械株式会社製VS20-14型)により、樹脂温度230℃で、材料をシート状に溶融押出し、溶融押出されたシート状物を、30℃の冷却水を通水した冷却ロールにより冷却して、厚さ50μmのシートを作製した。
【0073】
(5)ヘテロファジックプロピレン重合材料シートのゲル数(単位:個/100cm2)
ヘテロファジックプロピレン重合材料を、前記(4)の方法により成形し、作製したシートの表面を、EPSON社製スキャナーGT-X970により観察し、シート表面の画像を得る。得られたシート表面の画像を900dpi、8bitの条件でコンピューターに取り込み、閾値が120以上の部分を白、閾値が120未満の部分を黒とする2値化処理を行った。2値化処理は、旭エンジニアリング社製画像解析ソフト“A像君”を用いた。白部分をゲルとした。ゲルの形状は不定形であるので、円相当径をゲルの大きさとした。シート100cm2当たりの直径100μm以上であるゲルの数を求めた。
【0074】
(6)プロピレン系樹脂組成物シートのゲル数(単位:個/100cm2)
プロピレン系樹脂組成物を、前記(4)の方法により成形し、作製したシートの表面を目視により観察し、100cm2当たりの直径200μm以上であるゲルの数を求めた。
【0075】
(7)フローマーク発生開始位置の評価用射出成形体の製造
フローマーク発生開始位置の評価用試験片である射出成形体は、次の方法に従って作製した。射出成形機として、住友重機械工業株式会社製 SE180D 型締力180トン、金型として、キャビティサイズ100mm×400mm×3.0mm(厚さ)、1点ゲートを用いて、成形温度220℃、金型温度50℃、射出時間15sec、冷却時間30secで射出成形を実施した。
【0076】
(8)フローマーク発生開始位置
前記(7)の方法で作製した射出成形体のフローマークの発生開始位置を、目視により観察した。図1に示すように、ゲート端面1からフローマーク2が発生し始める位置までの距離(単位:mm)を測定した。なお、図中の矢印方向は、金型への射出方向を示している。ゲート端面1からフローマーク2が発生し始める位置までの距離が長いほど、前記射出成形体中のフローマークが発生する面積が少なく、外観が良好である。
【0077】
〔参考例:固体触媒成分の製造〕
工程(1-1A):撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた100mLのフラスコ内を窒素で置換した。その後、該フラスコに、トルエン36.0mL、四塩化チタン22.5mLを投入し、撹拌した。フラスコ内の温度を0℃とした後、マグネシウムエトキシド1.88gを30分おきに4回投入した後、1.5時間撹拌した。次いで、2-エトキシメチル-3,3-ジメチルブタン酸エチル0.60mLをフラスコ内に投入した後でフラスコ内の温度を10℃に昇温した。その後、同温度で2時間撹拌し、トルエン9.8mLを投入した。次いで、フラスコ内の温度を1.2K/分の速度で昇温し、60℃の時点でフラスコ内に2-エトキシメチル-3,3-ジメチルブタン酸エチル3.15mLを投入し、110℃まで昇温した。同温度で3時間、フラスコ内に投入した成分を撹拌した。得られた混合物を固液分離して固体を得た。該固体を100℃にてトルエン56.3mLで3回洗浄した。
工程(1-1B):洗浄後の固体にトルエン38.3mLを投入し、スラリーを形成した。該スラリーに四塩化チタン15.0mL、2-エトキシメチル-3,3-ジメチルブタン酸エチル0.75mLを投入して混合物を形成し、110℃で1時間混合物を攪拌した。その後、攪拌した混合物を固液分離し、該固体を60℃にてトルエン56.3mLで3回洗浄し、さらに室温にてヘキサン56.3mLで3回洗浄し、洗浄後の固体を減圧乾燥して固体触媒成分を得た。
この固体触媒成分について、チタン原子含有量は2.53重量%であり、エトキシ基含有量は0.44重量%であり、内部電子供与体含有量は13.7重量%であった。また、レーザ回折・散乱法による中心粒径は59.5μmであり、体積基準の粒子径分布において10μm以下である成分の累積百分率は5.3%であった。X線光電子分光法により得られる酸素原子の1s軌道に帰属されるピークを波形分離して得られるピーク成分のうち、結合エネルギーが532eV以上534eV以下の範囲にピークトップを有するピーク成分の面積(F)に対する、結合エネルギーが529eV以上532eV未満の範囲にピークトップを有するピーク成分の面積(G)の比(G/F)は0.176であった。水銀圧入法により測定される全細孔容積は1.434mL/gであり、細孔半径2~50nmの範囲の細孔容積は0.283mL/gであった。
【0078】
〔実施例1:ヘテロファジックプロピレン重合材料(BCPP-1)の製造〕
(1-1a)予備重合
内容積3Lの撹拌機付きSUS製オートクレーブに、充分に脱水および脱気処理したn-ヘキサン0.8L、トリエチルアルミニウム(以下、「TEA」と称する。)20ミリモル、tert-ブチル-n-プロピルジメトキシシラン0.4ミリモルを添加した。その中に参考例で製造した固体触媒成分8.1gを添加し、オートクレーブ内の温度を約10℃に保ちながらプロピレン8.1gを約30分かけて連続的に供給して予備重合を行った。その後、予備重合スラリーを内容積260Lの攪拌機付きSUS316L製オートクレーブに移送し、液状ブタン135gを加えて、予備重合触媒成分のスラリーとした。
【0079】
(1-1b)本重合
スラリー重合リアクターと、多段気相重合リアクターと、2つの噴流層型リアクターとが全て直列に接続された装置において、下記重合工程Iおよび下記重合工程IIにおいて成分(I)を製造し、生成ポリマーを失活することなく下流のリアクターに移送し、下記重合工程III-1および下記重合工程III-2において成分(II)を製造した。
【0080】
[重合工程I(スラリー重合リアクターによるプロピレン単独重合)]
攪拌機付きSUS304製ベッセルタイプのスラリー重合リアクターを用いて、プロピレン単独重合を行った。すなわち、プロピレン、水素、TEA、tert-ブチル-n-プロピルジメトキシシランおよび(1-1a)で製造した予備重合触媒成分のスラリーをスラリー重合リアクターに連続的に供給し、重合反応を行い、ポリプロピレン粒子および液状プロピレンを含むスラリーを得た。反応条件は以下の通りとした。
【0081】
重合温度:55℃、
攪拌速度:150rpm、
リアクターの液レベル:18L、
プロピレンの供給量:11kg/時間、
水素の供給量:39.9NL/時間、
TEAの供給量:24.3ミリモル/時間、
tert-ブチル-n-プロピルジメトキシシランの供給量:1.21ミリモル/時間、
予備重合触媒成分のスラリーの供給量(固体触媒成分換算):0.51g/時間、
重合圧力:3.10MPa(ゲージ圧)。
【0082】
[重合工程II(多段気相重合リアクターによるプロピレン単独重合(気相重合))]
鉛直方向に6段の反応領域を有し、その内最上段が流動層であり、残りの5段が噴流層である多段気相重合リアクターを準備した。
【0083】
前記スラリー重合リアクターから上記多段気相重合リアクターの最上段である流動層に、ポリプロピレン粒子および液状プロピレンを含むスラリーを失活させることなく連続供給した。
【0084】
多段気相重合リアクター内でのポリプロピレン粒子の段間移送は、ダブル弁方式により行った。この移送手段は、上段の反応領域と下段の反応領域を1インチサイズの配管で接続し、配管に二つの開閉弁を設け、下側の弁を閉じた状態で上側の弁を開け、上段の反応領域から弁の間にポリプロピレン粒子を溜め込み、その後、上側の弁を閉じた後に下側の弁を開けることで下段の反応領域にポリプロピレン粒子を移送するものである。
【0085】
上記構成の多段気相重合リアクターの下部からプロピレンおよび水素を連続的に供給した。これにより、各反応領域にそれぞれ流動層または噴流層を形成させ、ガス組成および圧力を一定に保つようプロピレンと水素の供給量をコントロールし、過剰ガスをパージしながらプロピレン単独重合をさらに行った。反応条件は以下の通りとした。
【0086】
重合温度:70℃、
重合圧力:1.80MPa(ゲージ圧)
【0087】
当該リアクターにおいて、リアクター内ガスの濃度比は、(水素/(水素+プロピレン))が11.3モル%であった。
【0088】
[重合工程III-1(噴流層型リアクター(1)によるプロピレン-エチレン共重合(気相重合))]
前記多段気相重合リアクターから排出されるポリプロピレン粒子を噴流層型リアクターに連続的に供給した。重合工程III-1の噴流層型リアクターは鉛直方向に2段の噴流層の反応領域を有しており、前記多段気相重合リアクターから噴流層型リアクター(1)へのポリプロピレン粒子の移送手段は、上記のダブル弁方式で行った。
【0089】
上記構成の噴流層型リアクターにプロピレン、エチレンおよび水素を連続的に供給し、ガス組成および圧力を一定に保つようにガス供給量の調整および過剰ガスをパージしながら、ポリプロピレン粒子の存在下、プロピレンとエチレンとの共重合を行った。反応条件は以下の通りとした。
【0090】
重合温度:70℃、
重合圧力:1.77MPa(ゲージ圧)
【0091】
リアクター内ガスの濃度比は、エチレン/(水素+プロピレン+エチレン)が20.3モル%であり、水素/(水素+プロピレン+エチレン)が0.07モル%であった。
【0092】
[重合工程III-2(噴流層型リアクター(2)によるプロピレン-エチレン共重合(気相重合))]
重合工程III-1の噴流層型リアクター(1)から排出されるポリプロピレン粒子をさらに下流の噴流層型リアクター(2)に連続的に供給した。重合工程III-2の噴流層型リアクター(2)は、鉛直方向に1段の噴流層の反応領域を有しており、重合工程III-1の噴流層型リアクター(1)から重合工程III-2の噴流層型リアクター(2)へのポリプロピレン粒子の移送手段は、ダブル弁方式で行った。
【0093】
以下の条件以外は、上記重合工程III-1と同様の方法でプロピレンとエチレンとの共重合を行い、ヘテロファジックプロピレン重合材料を得た。
【0094】
重合温度:70℃、
重合圧力:1.74MPa(ゲージ圧)
【0095】
当該リアクターにおいてはリアクター内ガスの濃度比は、エチレン/(水素+プロピレン+エチレン)が21.3モル%であり、水素/(水素+プロピレン+エチレン)が0.01モル%であった。
【0096】
得られたヘテロファジックプロピレン重合材料中の成分(II)の含有量(X)は、成分(I)とヘテロファジックプロピレン重合材料全体の結晶融解熱量をそれぞれ測定し、次式を用いて計算により求めた。結晶融解熱量は、示差走査型熱分析(DSC)により測定した。
X=1-(ΔHf)T/(ΔHf)P
(ΔHf)T:ヘテロファジックプロピレン重合材料全体の融解熱量(単位:J/g)
(ΔHf)P:成分(I)の融解熱量(単位:J/g)
【0097】
〔実施例2、3:ヘテロファジックプロピレン重合材料(BCPP-2)及び(BCPP-3)の製造〕
実施例2ならびに実施例3については、表1に示す値以外は実施例1と同様の方法で製造した。
【0098】
【表1】
[図:0001397225000001.jpg]
【0099】
〔製造例1:ヘテロファジックプロピレン重合材料(BCPP-4)の製造〕
BCPP-4は、成分(I)と、成分(II)とからなり、多段重合により得られた重合材料である。
特開2004-182981号公報の実施例1記載の方法によって得られる重合触媒を用いて、液相反応器と気相反応器3槽とを直列に配置した装置において、下記重合工程Iおよび下記重合工程IIにおいて成分(I)を製造し、生成ポリマーを失活することなく後段に移送し、下記重合工程IIIにおいて成分(II)を製造した。
【0100】
(1)重合工程I
プロピレンで十分置換されたSUS製液相重合反応器に、TEAおよびシクロヘキシルエチルジメトキシシランを供給した。該反応器の内温を65~75℃に調整し、該反応器の内圧(ゲージ圧力)をプロピレンおよび水素で4.5MPaに調整、特開2004-182981号公報の実施例1に記載された方法で合成した固体触媒成分を該反応器に連続供給して、液相中でプロピレンを単独重合させた。生成したプロピレン単独重合体を、後続の3槽で構成される気相重合反応器の第一槽へ連続的に移送した。
【0101】
(2)重合工程II
気相重合反応器の第一槽の重合温度:80℃および重合圧力(ゲージ圧力):2.1MPaを一定に保つようにプロピレンを連続的に供給し、気相部の水素濃度を一定に保つように水素を供給しつつ、前記のループ型液相重合反応器から連続的に移送されたプロピレン単独重合体の存在下、気相中でプロピレンを単独重合させた。第一槽中のプロピレン単独重合体成分を、次の第二槽へ断続的に移送した。
気相重合反応器の第二槽の重合温度:80℃および重合圧力(ゲージ圧力):1.7MPaを一定に保つようにプロピレンを連続的に供給し、気相部の水素濃度を一定に保つように水素を供給しつつ、第一槽から断続的に移送されたプロピレン単独重合体成分の存在下、気相中でプロピレンを単独重合させて、実質上、第一槽から移送されたプロピレン単独重合体成分と、第二槽で生成したプロピレン単独重合体成分とを含む成分(I)を製造した。第二槽からサンプリングした成分(I)のメルトフローレートは250g/分であった。この成分(I)の全量を、次の第三槽へ断続的に移送した。
【0102】
(1)重合工程III
気相重合反応器の第三槽の重合温度:70℃および重合圧力(ゲージ圧力)を一定に保つようにプロピレンを連続的に供給し、気相部の水素濃度とエチレン濃度とを一定に保つように水素とエチレンとを供給しながら、第二槽から断続的に移送された重合体成分(I)の存在下、気相中でプロピレンとエチレンとを共重合して、成分(II)を生成させた。
第三槽中の粉末状の重合体成分を連続的に失活槽へ導き、水で触媒成分の失活処理を行った後、80℃の窒素により乾燥して、実質上、成分(I)と成分(II)とを含む、ヘテロファジック重合材料(BCPP-4))を得た。
【0103】
ヘテロファジックプロピレン重合材料(BCPP-5)は、LyondellBasell社製のX1956Aである。
【0104】
各ヘテロファジックプロピレン重合材料100重量部に対して、ステアリン酸カルシウム(日本油脂製)を0.05重量部、3,9-ビス[2-{3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(GA80、住友化学製)を0.1重量部、2,4,8,10-テトラ-tert-ブチル-6-[3-(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f] [1,3,2]ジオキサホスフェピン(スミライザーGP、住友化学製)を0.1重量部混合した後、100メッシュのスクリーンパックを設置した田辺プラスチックス機械製40mm造粒機を用い、設定温度280℃、押出量10kg/hrで溶融押出を行ってペレット化した。得られたヘテロファジックプロピレン重合材料のペレットの物性、およびヘテロファジックプロピレン重合材料から得られるシート中のゲル数の評価結果を表2示す。
【0105】
【表2】
[図:0001397225000002.jpg]
【0106】
(ポリプロピレン改質材)
各ヘテロファジックプロピレン重合材料100重量部に対して、ステアリン酸カルシウム(日本油脂製)を0.05重量部、3,9-ビス[2-{3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(GA80、住友化学製)を0.1重量部、2,4,8,10-テトラ-tert-ブチル-6-[3-(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f] [1,3,2]ジオキサホスフェピン(スミライザーGP、住友化学製)を0.1重量部混合した。その後、得られた混合物を100メッシュのスクリーンパックを設置した田辺プラスチックス機械製40mm造粒機を用い、設定温度280℃、押出量10kg/hrで溶融押出を行うことにより、ペレット状のポリプロピレン改質材を得た。得られたポリプロピレン改質材の物性、およびポリプロピレン改質材から得られるシート中のゲル数の評価結果を表3に示す。
【0107】
[図:0001397225000003.jpg]
【0108】
(1)プロピレン系重合体(A-1)
下記の物性を有するプロピレン単独重合体。
極限粘度0.82dl/g
【0109】
(2)プロピレン系重合体(A-2)
下記の物性を有するプロピレン単独重合体。
極限粘度0.51dl/g
【0110】
(3)プロピレン系重合体(A-3)
下記の物性を有する(プロピレン)-(エチレン-プロピレン)ヘテロファジック重合材料。
極限粘度(プロピレン単独重合体成分)0.97dl/g
極限粘度(エチレンープロピレン共重合体成分)2.24dl/g
エチレンープロピレン共重合体中のエチレン含量49重量%
エチレンープロピレン共重合体成分含量15重量%
【0111】
(4)オレフィン系エラストマー(B-1)
下記の物性を有するエチレン-1-オクテンランダム共重合体。
密度 0.857g/cm3
MFR(温度230℃、荷重2.16kgで測定)1.0g/10分
【0112】
(5)オレフィン系エラストマー(B-2)
下記の物性を有するエチレン-1-オクテンランダム共重合体。
密度0.863g/cm3
MFR(温度230℃、荷重2.16kgで測定)0.5g/10分
【0113】
(6)無機充填剤(C-1)
体積平均粒子径5μmのタルク
【0114】
(実施例-4)
BCPP-1を4.0重量%、プロピレン系重合体である成分(A-1)を8.0重量%、プロピレン系重合体である成分(A-2)を11.0重量%、プロピレン系重合体である成分(A-3)を33.5重量%、オレフィン系エラストマー(B-1)を17.5重量%、オレフィン系エラストマー(B-2)を5.0重量%、無機充填材(C)を21.0重量%の組成割合で配合し、タンブラーで均一に予備混合した後、二軸混練押出機(株式会社日本製鋼所製TEX44SS-30BW-2V型)を用いて、押し出し量50kg/hr、230℃、スクリュー回転数を350rpmで混練押出して、プロピレン系樹脂組成物を製造した。得られたプロピレン系樹脂組成物のMFR、射出成形体上のフローマーク発生開始位置、および押出シートの外観の評価結果を表4に示す。
【0115】
(実施例-5、6)
BCPP-1の代わりに、BCPP-2(実施例5)またはBCPP-3(実施例6)を用いたこと以外は実施例4と同様の操作を行い、プロピレン系樹脂組成物を得た。得られたプロピレン系樹脂組成物のMFR、射出成形体上のフローマーク発生開始位置、および押出シートの外観の評価結果を表4に示す。
【0116】
(比較例-1、2)
BCPP-1の代わりに、BCPP-4(比較例1)またはBCPP-5(比較例2)を用いて実施例4と同様の操作を行い、表3に示す組成のプロピレン系樹脂組成物を得た。得られたプロピレン系樹脂組成物のMFR、射出成形体上のフローマーク発生開始位置、および押出シートの外観の評価結果を表4に示す。
【0117】
(比較例-3)
ヘテロファジック重合材料を用いなかった以外は、実施例4と同様の操作を行い、表3に示す組成のプロピレン系樹脂組成物を得た。得られたプロピレン系樹脂組成物のMFR、射出成形体上のフローマーク発生開始位置、および押出シートの外観の評価結果を表4に示す。
【0118】
【表4】
[図:0001397225000004.jpg]
・・・
【符号の説明】
【0121】
1 ゲート端面
2 フローマーク発生開始位置
[図:0001397225000005.jpg]
」
2 甲号証の記載
(1)甲1
ア
「【請求項1】
下記(A)成分及び(B)成分からなることを特徴とする成形性改質剤。
(A)成分:結晶性プロピレン単独重合体部分(A1)80~98重量%とプロピレン・エチレンランダム共重合体部分(A2)2~20重量%からなり、下記(a-1)~(a-4)の要件を満たすプロピレン系ブロック共重合体
(a-1)結晶性プロピレン単独重合体部分(A1)のメルトフローレート(JIS K7210、温度230℃、荷重21.18N)が300g/10分以上
(a-2)プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(A2)のエチレン含量が10~70重量%
(a-3)プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(A2)の固有粘度[η]copolyが6.5dl/g以上
(a-4)プロピレン系ブロック共重合体(A)全体のメルトフローレート(MFRA)が40g/10分以上
(B)成分:結晶性プロピレン重合体部分(B1)20~79重量%とプロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B2)21~80重量%とからなり、下記(b-1)~(b-4)の要件を満たすプロピレン系ブロック共重合体
(b-1)結晶性プロピレン単独重合体部分(B1)のメルトフローレート(JIS K7210、温度230℃、荷重21.18N)が20g/10分以上
(b-2)プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B2)のエチレン含量が20~70重量%
(b-3)プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B2)の固有粘度[η]copolyが2.5~9.0dl/g
(b-4)プロピレン系ブロック共重合体(B)の全体のメルトフローレート(MFRB)が0.1~50g/10分
【請求項2】
(A)成分と(B)成分の比率((A)成分/(B)成分)は19/1~1/19(重量比)であることを特徴とする請求項1に記載の成形性改質剤。
・・・
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の成形性改質剤2~30重量部と、ポリプロピレン系樹脂被改質材料100重量部とを含むことを特徴とする成形品外観に優れるポリプロピレン系樹脂組成物。
・・・
【請求項8】
ポリプロピレン系樹脂被改質材料は、
(C)オルトジクロルベンゼンで抽出されるゴム含量が15重量%以上であるプロピレン-エチレンブロック共重合体40~98重量%、
(D)無機充填剤1~40重量%、及び
(E)エチレン系エラストマー又はスチレン系エラストマー1~20重量%
を含有するポリプロピレン樹脂組成物であることを特徴とする請求項4に記載の成形品外観に優れるポリプロピレン系樹脂組成物。」
イ
「【0001】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂用成形性改質剤、及びこの成形性改質剤を含んでなるポリプロピレン系樹脂組成物に関し、更に詳しくは、フローマーク、ボイドの発生を抑制し、成形品の外観を改質する成形性改質剤、及びこの成形性改質剤を含んでなる、射出成形時の成形加工性が良好で、成形時のフローマーク特性、成形時のボイド特性にも優れ、自動車外装部品等の射出成形品に好適なポリプロピレン系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂は、軽量でリサイクル性にも優れることから、自動車用部品への需要が高まっている。具体的には、結晶性ポリプロピレン樹脂に、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン共重合体等のエチレン系熱可塑性エラストマー成分と、タルク等の無機充填剤を配合したポリプロピレン樹脂組成物が使用されており、ポリプロピレン樹脂や各種エラストマー成分、無機充填剤を目的に応じて、適宜選択することによって、成形性、機械物性、外観などを向上させることが提案されている。
【0003】
最近は、軽量化された車部品を、より効率よく生産するため、より薄肉な成形品を、より短い成形時間で成形が可能なポリプロピレン系樹脂組成物が要望されている。しかしながら、このような製品を成形しようとすると、フローマーク(成形品の表面外観に現れる虎縞(トラシマ)状の模様)等の成形外観不良が発生しやすいという問題が生じ、とりわけ、無塗装部分が外部に露出するデザインのバンパー等の部品では、商品としての意匠性を損なうといった課題があった。また、生産サイクルを向上することは、射出成形時の保圧時間を短縮する事をも意味しており、こういったケースでは、ボイドに基づくリンプル状の成形不良を生ずるといった問題があった。
【0004】
このようなフローマークの改良技術としては、例えば、特許文献1、特許文献2あるいは特許文献3に開示されている技術が挙げられる。
・・・
【0005】
・・・
しかしながら、これらの技術を用いると、流動性は良好であるものの、耐衝撃性を補うために、高価なエチレン系熱可塑性エラストマーの使用量を増やさねばならず、未だ改良すべき点がある。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記公知技術およびその問題点を解決し、バンパー等の大型成形部品を高品質で効率よく製造するために、フローマークの発生を起こしにくいプロピレン系ブロック共重合体、及びエラストマー含量が高い樹脂成分に、高性能な第3成分として少量配合することで、被改質材の物性の変化が小さく、かつフローマーク、ボイド等の成形加工特性を改良することができるポリプロピレン系樹脂用成形性改質剤を提供し、高価なエチレン系エラストマーの使用量をも削減することにある。
さらに、該成形性改質剤を用いて、バンパー、ロッカーモール、サイドモール、オーバーフェンダーをはじめとする自動車外装部品に好適な、良好な外観を発現し、成形加工性に優れた、ポリプロピレン系樹脂組成物を提供することにある。」
ウ
「【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、高流動性の結晶性プロピレン重合体部分と、高分子量のプロピレン・エチレンランダム共重合体部分を併せ持った分子量分布の広いプロピレン系ブロック共重合体((A)成分)と高分子量のプロピレン・エチレンランダム共重合体部分の含有量が多いプロピレン系ブロック共重合体((B)成分)との組み合わせによって、汎用的な樹脂成分に第3成分として少量配合することで上記課題を解決できる成形性改質剤の役割を果たすことを見出し本発明に至った。
・・・
【発明の効果】
【0020】
本発明の成形性改質剤は、少量の添加で、物性、成形性を損なうことなくポリプロピレン樹脂組成物の成形外観を改良することが出来る成形品外観改質剤として用いることができる。また、該ポリプロピレン系樹脂用成形性改質剤を配合したポリプロピレン系樹脂組成物は、成形加工性、フローマーク特性に優れ、特に、自動車外装用部品等の大型の射出成形品用材料として好適である。また、ハイサイクル成形時におけるリンプル状の外観不良にも対応できる。
・・・
【0021】
本発明は、結晶性プロピレン重合体部分(A1)とプロピレン・エチレンランダム共重合体部分(A2)とからなり、特定の物性値を有するプロピレン系ブロック共重合体(A)、及び、結晶性プロピレン重合体部分(B1)とプロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B2)とからなり、特定の物性値を有するプロピレン系ブロック共重合体(B)からなる成形性改質剤、該成形性改質剤を用いたポリプロピレン系樹脂組成物である。汎用的な樹脂成分に第3成分として少量配合することで成形品外観を改質できるポリプロピレン系樹脂の成形性改質剤は、高流動性の結晶性プロピレン重合体部分と、高分子量のプロピレン・エチレンランダム共重合体部分(ゴム成分)を併せ持った分子量分布の広いプロピレン系ブロック共重合体が有効である。ゴム成分の量を増やすと、被改質材料の種類にもよるが、外観改良効果が更に向上、また添加時に物性、成形性を損なわないなどの利点がある。以下に詳細に説明する。
【0022】
[I]成形性改質剤
本発明において成形性改質剤とは、後述するポリプロピレン系樹脂被改質材料からなる成形品に生じる成形不良を、ポリプロピレン系樹脂被改質材料に配合することによって、低減又は解消しうる樹脂材料をいう。ここでいう成形不良とは主にフローマークを指す。
【0023】
(A)成分
本発明の(A)成分は、結晶性プロピレン単独重合体部分(A1)とプロピレン・エチレンランダム共重合体部分(A2)からなり、下記(a-1)~(a-4)の要件を満たすプロピレン系ブロック共重合体である。
(A)成分中の結晶性プロピレン単独重合体部分(A1)の全体に占める割合は、80~98重量%、好ましくは82~97重量%、更に好ましくは85~95重量%であり、プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(A2)の全体に占める割合は、2~20重量%、好ましくは3~18重量%、更に好ましくは5~15重量%である。(A2)の占める割合が2重量%未満であると、フローマーク外観の改良効果が乏しく、逆に20重量%を超える場合は、ゲルが発生しやすくなり、外観に悪影響を及ぼすため好ましくない。
・・・
【0028】
(B)成分
本発明の(B)成分は、結晶性プロピレン重合体部分(B1)とプロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B2)とからなり、下記(b-1)~(b-4)の要件を満たすプロピレン系ブロック共重合体である。
結晶性プロピレン重合体部分(B1)の全体に占める割合は、20~79重量%、好ましくは30~70重量%、更に好ましくは40~60重量%であり、プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B2)の全体に占める割合は、21~80重量%、好ましくは30~70重量%、更に好ましくは40~60重量%である。(B1)の占める割合が20重量%未満であると、成形品外観改質剤としての効果が減少するため添加量を多くする必要があり、その際は物性、成形性の低下が起きる。逆に79重量%を超える場合は、共重合体そのものを、あるいは改質剤として添加したものを射出成形した際に被改質材料中に均一に分散しなく外観を損ねるので好ましくない。
ここで、プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(ゴム成分)の割合は、後述の方法によって測定する値である。
【0029】
(b-1)結晶性プロピレン単独重合体部分(B1)のMFR
結晶性プロピレン単独重合体部分(B1)のMFR(温度230℃、荷重21.18N)は、20g/10分以上、好ましくは20~300g/10分、更に好ましくは60~200g/10分である。MFRが20g/10分未満であると、流れ性が低下するので好ましくない。
結晶性ポリプロピレン重合体部分のMFRは、プロピレン単独重合体部分の重合(ただし、結晶性を失わない程度にごく少量、例えば0.5重量%以下のコモノマーを共重合させてもよい)を終えた時のMFRである。プロピレン単独重合体は、単段で重合されたものでもよく、多段で重合されたものでもよい。多段重合を行う場合には、最終の重合槽から取り出される結晶性ポリプロピレン重合体部分のMFRである。MFRを調整するためには、重合時に水素を添加し分子量を制御し調整することができる。
ここで、MFRは、前述の述べた通りのものである。
【0030】
(b-2)プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B2)のエチレン含量
プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B2)のエチレン含量は、20~70重量%であり、好ましくは26~60重量%であり、特に好ましくは30~50重量%である。(B2)のエチレン含量が20重量%未満であると、ボイドに基づく外観不良が発生しやすくなり、かつ成形品外観改質剤としての効果が低く(フローマーク外観が改良されず)、一方、70重量%を超えると、共重合体そのものを、あるいは成形品外観改質剤として添加したものを射出成形した際に改質剤成分が被改質材中に均一に分散しない傾向があるので好ましくない。
ここで、プロピレン・エチレンランダム共重合体部分中のエチレン含量は、後述する方法にて測定する値である。
【0031】
(b-3)プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B2)の固有粘度[η]copoly
プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B2)の固有粘度[η]copolyは、2.5~9.0dl/gであり、好ましくは4.1~6.5dl/gであり、特に好ましくは4.5~6.0dl/gである。[η]copolyが2.5dl/g未満であると、改質剤として添加したものを射出成形した際のフローマーク外観が劣り、また9.0dl/gを超えると、プロピレン系ブロック共重合体全体のMFRの低下を伴い、射出成形した際に樹脂組成物の成形加工性が劣るという不都合が生じる。
ここで、プロピレン・エチレンランダム共重合体部分の固有粘度[η]copolyは、後述する方法にて測定する値である。
【0032】
(b-4)プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)の(MFRB)
プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)のメルトフローレート(MFRB)は、0.1~50g/10分であり、好ましくは0.2~40g/10分、更に好ましくは2.1~40g/10分である。(MFRB)が0.1g/10分未満では、射出成形の際に樹脂組成物としての成形加工性が劣り、また40g/10分を超えると、フローマーク外観の改良が不十分となる。
ここで、MFRは、JIS K7210に準拠して、温度230℃、荷重21.18Nで測定する値である。
・・・
【0044】
(6)プロピレン・エチレンランダム共重合体部分のエチレン含有量
本発明におけるプロピレン系ブロック共重合体におけるプロピレン・エチレンランダム共重合体部分のエチレン含有量は、上述で説明した値を用い、次式から求められる。
プロピレン・エチレンランダム共重合体部分のエチレン含有量(重量%)=(W40×A40+W100×A100)/Wc
但し、Wcは先に求めたプロピレン・エチレンランダム共重合体部分の比率(重量%)である。
【0045】
(7)固有粘度の測定
本発明におけるプロピレン系ブロック共重合体における結晶性プロピレン重合体部分とプロピレン・エチレンランダム共重合体部分の固有粘度[η]homo、[η]copolyは、ウベローデ型粘度計を用いてデカリンを溶媒として温度135℃で測定する。
まず、結晶性プロピレン重合体部分の重合終了後、一部を重合槽よりサンプリングし、固有粘度[η]homoを測定する。次に、結晶性プロピレン重合体部分を重合した後、プロピレン・エチレンランダム共重合体を重合して得られた最終重合物(F)の固有粘度[η]Fを測定する。[η]copolyは、以下の関係から求める。
[η]F=(100-Wc)/100×[η]homo+Wc/100×[η]copoly
【0046】
3.プロピレン系ブロック共重合体の製造方法
本発明の成形性改質剤として用いるプロピレン系ブロック共重合体の(A)成分、(B)成分とも、結晶性プロピレン重合体部分とプロピレン・エチレンランダム共重合体部分との反応混合物である。これは、結晶性プロピレン重合体部分であるプロピレン単独重合部分の重合(前段)と、この後に続く、プロピレン・エチレンランダム共重合部分の重合(後段)の製造工程により得られる。
結晶性プロピレン重合体は、1段又は2段以上(各段の反応条件は同一又は異なる)の重合工程で製造され、プロピレン・エチレンランダム共重合体部分も1段又は2段以上(各段の反応条件は同一又は異なる)の重合工程で製造される。従って、本発明のプロピレン系ブロック共重合体の全製造工程は、少なくとも2段の逐次の多段重合工程となる。
【0047】
上記重合に用いられる触媒としては、特に限定されるものではなく、有機アルミニウム化合物成分と、チタン原子、マグネシウム原子、ハロゲン原子及び電子供与性化合物を必須とする固体成分とを組合わせた、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒等公知の触媒をいずれも使用できる。ゴム成分の固有粘度が高い方が改質剤として添加した際成形外観改良効果が高いため、一般的に重合時連鎖移動の少ないチーグラー・ナッタ触媒の方がより好ましい。
・・・
【0054】
さらに、スラリー、気相、バルク重合に関わらず、上記少なくとも2段の逐次の多段重合工程により製造される組成物の粉体粒子に流動性を付与する目的で、また本共重合体のゴムの分散不良であるゲル発生を防止する目的で、前段重合工程での重合後、後段重合工程での重合開始前又は重合途中に、活性水素含有化合物を、触媒の有機アルミニウム化合物に対して0.2~2倍モルの範囲で添加することが好ましい。
ここで、活性水素含有化合物としては、例えば、水、アルコール類、フェノール類、アルデヒド類、カルボン酸類、酸アミド類、アンモニア、アミン類等が挙げられる。
・・・
【0057】
[II]ポリプロピレン系樹脂組成物
本発明の成形品外観に優れるポリプロピレン系樹脂組成物は、上記の成形性改質剤であるプロピレン系ブロック共重合体を、汎用的なポリプロピレン系樹脂被改質材料に第3成分として配合することにより得られるポリプロピレン系樹脂組成物であって、主にフローマーク、ボイド特性に代表される成形品外観等が改良されかつ、その際の物性変化が少ないポリプロピレン系樹脂組成物である。
【0058】
本発明の成形品外観に優れるポリプロピレン系樹脂組成物においては、上記成分(A)及び成分(B)からなる成形性改質剤を、ポリプロピレン系樹脂被改質材料に対し、2~30重量部を、好ましくは2~25重量部を、より好ましくは3~18重量部を配合して用いる。とりわけ、該成形性改質剤を別添加して使用するケースは、物性を維持したまま成形外観をコントロールすることが必須なため添加前後での物性の変化率が小さいことが求められるので、30重量部を超える場合は、添加前後での物性の変化率が±25%以上となるので好ましくない。
【0059】
ポリプロピレン系樹脂被改質材としては、(C)プロピレン-エチレンブロック共重合体が好ましく、さらに必要に応じて、(D)無機充填剤、及び/又は(E)エチレン系エラストマー又はスチレン系エラストマーを含有するポリプロピレン樹脂組成物を挙げることができる。以下、本発明の成形品外観に優れるポリプロピレン系樹脂組成物を構成する各成分を詳細に説明する。
【0060】
1.成形品外観に優れるポリプロピレン系樹脂組成物の各成分
(1)成形性改質剤
本発明の成形品外観に優れるポリプロピレン系樹脂組成物に用いられる成形性改質剤は、上述の(A)成分と(B)成分からなるプロピレン系ブロック共重合体の混合物である。
【0061】
(2)ポリプロピレン系樹脂被改質材料
(C)成分:プロピレン-エチレンブロック共重合体
本発明の成形品外観に優れるポリプロピレン系樹脂組成物に用いるプロピレン-エチレンブロック共重合体(C)としては、結晶性ポリプロピレン重合体部(C1)とエチレン・プロピレンランダム共重合体部(C2)とを含有するブロック共重合体が好ましい。
結晶性ポリプロピレン重合体部(C1)は、通常プロピレンの単独重合、場合によってはプロピレンに少量の他のα-オレフィンを共重合することによって得られる結晶性の重合体であり、その密度は高いことが好ましい。(C1)の結晶性は、アイソタクチック指数(沸騰n-ヘプタン抽出による不溶分)として、通常90%以上、好ましくは95~100%である。結晶性が小さいと(C)成分の機械的強度、特に曲げ弾性率に劣るものとなる。一方、エチレン・プロピレンランダム共重合体部(C2)は、プロピレンとエチレンとのランダム共重合によって得られるゴム状成分である。
【0062】
また、上記(C1)の占める割合は、通常全重合量の50~85重量%、好ましくは60~82重量%、更に好ましくは70~81重量%であり、(C2)の占める割合は、通常全重合量の15~50重量%、好ましくは18~40重量%、更に好ましくは19~37重量%となるように調整される。
(C1)は、前述のように、オルトジクロルベンゼンによる抽出において、100℃以下で溶出しないが、(C2)は、容易に溶出する。従って、製造後の重合体に対しては、上記したオルトジクロルベンゼンによる抽出分析によりプロピレン-エチレンブロック共重合体(C)の組成を判定することができる。
なお、本発明で用いるポリプロピレン系樹脂被改質材料(C)のオルトジクロルベンゼンで抽出されるゴム含量は、10重量%以上が好ましく、より好ましくは15重量%である。
・・・
【0065】
(D)成分:無機充填剤
本発明の成形品外観に優れるポリプロピレン系樹脂組成物においては、必要に応じて、無機充填剤(D)を配合することができる。(D)成分は、ポリプロピレン系樹脂組成物の曲げ弾性率を向上させ、線膨張係数を低下させるために使用する。
本発明で用いることのできる無機充填剤(D)としては、組成、形状等は特に限定されない。ポリマー用充填剤として市販されているものはいずれも使用できる。
具体的には、タルク、マイカ、モンモリロナイト等の板状無機充填剤、短繊維ガラス繊維、長繊維ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、ゾノライト等の繊維状無機充填剤、チタン酸カリウム、マグネシウムオキシサルフェート、窒化珪素ホウ酸アルミニウム、塩基性硫酸マグネシウム、酸化亜鉛、ワラストナイト、炭酸カルシウム等の針状(ウィスカー)無機充填剤、沈降性炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の粒状無機充填剤、ガラスバルーンのようなバルン状無機充填剤が例示される。その中でも、物性・コスト面のバランスより、タルクが特に好ましい。
【0066】
タルクは、重合体との接着性或いは分散性を向上させる目的で、各種の有機チタネート系カップリング剤、有機シランカップリング剤、不飽和カルボン酸、又はその無水物をグラフトした変性ポリオレフィン、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル等によって表面処理したものを用いてもよい。
【0067】
(E)成分:エチレン系エラストマー又はスチレン系エラストマー
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物においては、必要に応じて、エチレン系エラストマー又はスチレン系エラストマー(E)を配合することができる。エチレン系エラストマー又はスチレン系エラストマー(E)の具体例としては、例えば、エチレン・プロピレン共重合エラストマー(EPR)、エチレン・ブテン共重合エラストマー(EBR)、エチレン・ヘキセン共重合エラストマー(EHR)、エチレン・オクテン共重合エラストマー(EOR)等のエチレン・α-オレフィン共重合体エラストマー;エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン共重合体エラストマー、エチレン・プロピレン・ブタジエン共重合体エラストマー、エチレン・プロピレン・イソプレン共重合体エラストマー等のエチレン・α-オレフィン・ジエン三元共重合体エラストマー(EPDM);スチレン・ブタジエン・スチレントリブロック体(SBS)、スチレン・イソプレン・スチレントリブロック体(SIS)、スチレン・ブタジエン・スチレントリブロック体の水素添加物(SEBS)、スチレン・イソプレン・スチレントリブロック体の水素添加物(SEPS)等のスチレン系エラストマー等が使用できる。」
エ
「【実施例】
【0080】
・・・
【0081】
1.物性測定法
(1)メルトフローレート(MFR):ASTM-D1238に準拠し、2.16kg荷重にて230℃の温度で測定し下記基準で判定した。
○:被改質材料基準材との変化率25%未満
×:被改質材料基準材より25%以上変化
(2)Izod衝撃強度:JIS-K7110に準拠して、-30℃の温度下にてノッチ付で測定し、下記基準で判定した。
○:被改質材料基準材との変化率25%未満
×:被改質材料基準材より25%以上変化
(3)曲げ弾性率:JISK-7203に準拠し、23℃において曲げ速度2mm/minで測定し下記基準で判定した。
○:被改質材料基準材との変化率25%未満
×:被改質材料基準材より25%以上変化
(4)成形品外観フローマーク発生距離:型締め圧170トンの射出成形機で、短辺に幅2mmのフィルムゲートをもつ金型を用いて、350mm×100mm×2mmtなる成形シートを、成形温度を220℃として射出成形した。フローマークの発生を目視で観察し、ゲートからフローマークが発生した部分までの距離を測定し下記基準で判定した。
○:100mm以上
×:100mm未満
(5)ボイド特性:型締め圧170トンの射出成形機で、短辺に幅2mmのフィルムゲートをもつ金型を用いて、350mm×100mm×4mmtなる成形シートを、成形温度を220℃として射出成形した。ボイドに基づくリンプル状の不良の発生を目視で観察し、下記基準で判定した。
○:15個未満
×:15個以上
【0082】
2.プロピレン系ブロック共重合体(A)成分及び(B)成分
下記の製造例1~8で製造されたプロピレン系ブロック共重合体を(A)成分の成形性改質剤(改質剤-11~18)とし、製造例9~14で製造されたプロピレン系ブロック共重合体を(B)成分の成形性改質剤(改質剤21~26)として用いた。各重合工程の反応条件、得られた結晶性プロピレン重合体並びにプロピレン・エチレンランダム共重合体のインデックスを表1及び2に示した。
【0083】
(製造例1)
(i)固体触媒成分(a)の製造
充分に窒素置換した内容積50リットルの攪拌機付槽に、脱水および脱酸素したn-ヘプタン、20リットルを導入し、次いでMgCl2を10モル、Ti(O-n-C4H9)4を20モル導入し、95℃で2時間反応させた。反応終了後、40℃に温度を下げ、次いでメチルヒドロポリシロキサン(20センチストークスのもの)を12リットル導入し、3時間反応させた。生成した固体成分をn-ヘプタンで洗浄した。
次いで、前記攪拌機付槽を用いて該槽に、上記と同様に精製したn-ヘプタンを5リットル導入し、上記で合成した固体成分をMg原子換算で3モル導入した。次いでn-ヘプタン2.5リットルにSiCl45モルを混合して30℃、30分間でフラスコへ導入し、70℃で3時間反応させた。反応終了後、n-ヘプタンで洗浄した。
次いで前記攪拌機付槽へn-ヘプタン2.5リットル導入し、フタル酸クロライド0.3モルを混合して、70℃、30分間で導入し、90℃で1時間反応させた。反応終了後、n-ヘプタンで洗浄した。次いでTiCl42リットルを導入して110℃で3時間反応させた。反応終了後、n-ヘプタンで洗浄して成分(a)を製造するための固体成分(a1)を得た。この固体成分のチタン含量は2.0重量%であった。
次いで、窒素置換した前記攪拌機付槽にn-ヘプタンを8リットル、上記で合成した固体成分(a1)を400グラム導入し、成分(a2)としてSiCl40.6リットルを導入して90℃で2時間反応させた。反応終了後、さらに成分(a3)として(CH2=CH)Si(CH3)30.54モル、成分(a4)として(t-C4H9)(CH3)Si(OCH3)20.27モルおよび成分(a5)としてAl(C2H5)31.5モルを順次導入して30℃で2時間接触させた。接触終了後、n-ヘプタンで充分に洗浄し、塩化マグネシウムを主体とする成分(a)390gを得た。このもののチタン含量は、1.8重量%であった。
・・・
【0090】
(製造例7)
(i)固体触媒成分(b)の製造
窒素置換した内容積50リットルの撹拌機付槽に脱水及び脱酸素したn-ヘプタン20リットルを導入し、次いで、塩化マグネシウム10モルとテトラブトキシチタン20モルとを導入して95℃で2時間反応させた後、温度を40℃に下げ、メチルヒドロポリシロキサン(粘度20センチストークス)12リットルを導入して更に3時間反応させた後、反応液を取り出し、生成した固体成分をn-ヘプタンで洗浄した。
引き続いて、前記撹拌機付槽を用いて該槽に脱水及び脱酸素したn-ヘプタン5リットルを導入し、次いで、上記で合成した固体成分をマグネシウム原子換算で3モル導入した。ついで、n-ヘプタン2.5リットルに、四塩化珪素5モルを混合して30℃、30分間かけて導入して、温度を70℃に上げ、3時間反応させた後、反応液を取り出し、生成した固体成分をn-ヘプタンで洗浄した。
さらに、引き続いて、前記撹拌機付槽を用いて該槽に脱水及び脱酸素したn-ヘプタン2.5リットルを導入し、フタル酸クロライド0.3モルを混合して90℃、30分間で導入し、95℃で1時間反応させた。反応終了後、n-ヘプタンで洗浄した。次いで、室温下四塩化チタン2リットルを追加し、100℃に昇温した後2時間反応した。反応終了後、n-ヘプタンで洗浄した。さらに、四塩化珪素0.6リットル、n-ヘプタン8リットルを導入し90℃で1時間反応し、n-ヘプタンで十分洗浄し、固体成分を得た。この固体成分中にはチタンが1.30重量%含まれていた。
次に、窒素置換した前記撹拌機付槽にn-ヘプタン8リットル、上記で得た固体成分を400gと、t-ブチル-メチル-ジメトキシシラン0.27モル、ビニルトリメチルシラン0.27モルを導入し、30℃で1時間接触させた。次いで15℃に冷却し、n-ヘプタンに希釈したトリエチルアルミニウム1.5モルを15℃条件下30分かけて導入、導入後30℃に昇温し2時間反応させ、反応液を取り出し、n-ヘプタンで洗浄して固体触媒成分(b)390gを得た。
得られた固体触媒成分(b)中には、チタンが1.22重量%含まれていた。
更に、n-ヘプタンを6リットル、n-ヘプタンに希釈したトリイソブチルアルミニウム1モルを15℃条件下30分かけて導入し、次いでプロピレンを20℃を越えないように制御しつつ約0.4kg/時間で1時間導入して予備重合した。その結果、固体1g当たり0.9gのプロピレンが重合したポリプロピレン含有の固体触媒成分(b)が得られた。
・・・
【0093】
(製造例9)
内容積230リットルの流動床式反応器を2個連結してなる連続反応装置を用いて重合を行った。まず第1反応器で、重合温度55℃、プロピレン分圧1.8MPa、分子量制御剤としての水素を、水素/プロピレンのモル比で0.020となるように連続的に供給するとともに、トリエチルアルミニウムを5.25g/hrで、固体触媒成分(b)として、上記記載の触媒をポリマー重合速度が12kg/hrになるように供給した。第1反応器で重合したパウダー(結晶性プロピレン重合体)は、反応器内のパウダー保有量を40kgとなるように連続的に抜き出し、第2反応器に連続的に移送した(前段重合工程)。
次に、重合温度80℃で、圧力2.0MPaになるように、プロピレンとエチレンをエチレン/プロピレンのモル比で0.50となるように連続的に供給し、更に、分子量制御剤としての水素を、水素/プロピレンのモル比で0.0008となるように連続的に供給すると共に、活性水素化合物としてエチルアルコールを、トリエチルアルミニウムに対して2.1倍モルになるように供給した。第2反応器で重合したパウダーは、反応器内のパウダー保有量を50kgとなるように連続的にベッセルに抜き出し、水分を含んだ窒素ガスを供給して反応を停止させ、プロピレン・エチレンブロック共重合体を得た(後段重合工程)。得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体を(改質剤-21)とした。
【0094】
(製造例10)
製造例9において、前段重合工程において、水素/プロピレンのモル比を0.057に変更、後段重合工程におけるエチレン/プロピレンのモル比を0.945に変更した以外は、製造例9に準じて行い、プロピレン・エチレンブロック共重合体(改質剤-22)を製造した。
【0095】
(製造例11)
製造例9において、前段重合工程において、重合温度を65℃に、水素/プロピレンのモル比を0.027に、パウダーの保有量を60Kgに変更、後段重合工程におけるエチレン/プロピレンのモル比を0.40に、パウダーの保有量を40Kgに変更した以外は、製造例9に準じて行い、プロピレン・エチレンブロック共重合体(改質剤-23)を製造した。
・・・
【0099】
【表1】
[図:0001397225000006.jpg]
【0100】
【表2】
[図:0001397225000007.jpg]
【0101】
3.成分(C)~(E)
成分(C)プロピレン-エチレンブロック共重合体として表3に示す(PP-1)~(PP-4)、成分(D)無機充填剤として表4に示す(タルク-1)、成分(E)エチレン系エラストマー又はスチレン系エラストマーとして表5に示す(エラストマー-1)~(エラストマー-4)を用いた。
なお、表3~5に示す成分(C)~(E)からなる組成物を、予め表6に示す割合で配合し、更に、酸化防止剤として、テトラキス[メチレン-3-(3’5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバガイギー社製、商品名:イルガノックス1010)0.1重量部、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト(チバガイギー社製、商品名:イルガホス168)0.05重量部を配合して、ヘンシェルミキサーで5分間混合した後、二軸混練機(神戸製鋼社製:2FCM)にて210℃の設定温度で混練造粒して被改質材料(ベース材-1)~(ベース材-9)とした。
【0102】
【表3】
[図:0001397225000008.jpg]
【0103】
【表4】
[図:0001397225000009.jpg]
【0104】
【表5】
[図:0001397225000010.jpg]
【0105】
【表6】
[図:0001397225000011.jpg]
【0106】
(実施例1)
ベース材-1(85重量%)、改質剤-11(10重量%)、及び改質剤-21(5重量%)の混合物100重量部に対して、酸化防止剤として、テトラキス[メチレン-3-(3’5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバガイギー社製、商品名:イルガノックス1010)0.1重量部、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト(チバガイギー社製、商品名:イルガホス168)0.05重量部を配合して、ヘンシェルミキサーで5分間混合した後、二軸混練機(神戸製鋼社製:KCM)にて210℃の設定温度で混練造粒することによりポリプロピレン系樹脂組成物を得た。得られたポリプロピレン系樹脂組成物について物性評価(MFR、フローマーク発生距離、曲げ弾性率、-30℃下におけるIzod衝撃強度、ボイド特性)を行った。評価結果を表7に示す。
【0107】
(実施例2~18、比較例1~19)
表1に示した改質剤と表6に示したベース材を表7及び8に示す組成の割合で配合し、実施例1と同様にして、酸化防止剤を配合して、混練造粒することによりポリプロピレン系樹脂組成物を得た。得られたポリプロピレン系樹脂組成物について物性評価(MFR、フローマーク発生距離、曲げ弾性率、-30℃下におけるIzod衝撃強度、ボイド特性)を行った。評価結果を表7及び8に示す。
【0108】
【表7】
[図:0001397225000012.jpg]
・・・
【0110】
表7及び8より明らかなように、本改質成分を利用することにより、実質的に機械物性を変化することなく成形性を改善することができる。」
(2)甲2
ア
「【請求項1】
プロピレン重合体成分を製造する工程およびプロピレン-エチレン共重合体ゴム成分を製造する工程を含む製造方法によって得られ、下記の要件[1]~[7]を同時に満たすプロピレン系ブロック共重合体(A)
[1]ASTM D1238Eに準拠し、230℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR)が、0.001dl/g以上、100g/10分以下、
[2]室温n-デカンに可溶な部分(Dsol)20重量%を超え70重量%以下と室温n-デカンに不溶な部分(Dinsol)30重量%以上80重量%未満から構成される(ただし、DsolとDinsolとの合計量は100重量%である)、
[3]Dsolの分子量分布(Mw/Mn)が7.0以上、20以下、
[4]Dsolの極限粘度[η]が4dl/gを超え、12dl/g以下、
[5]Dinsolの分子量分布(Mw/Mn)が7.0以上、20以下、かつMz/Mwが6.0以上、20以下、
[6]Dinsolのペンタド分率(mmmm)が95%以上、および
[7]Dsolにおいて、下記式(i)で定義されるCSDの値が1.0以上、2.0以下。
【数1】
[図:0001397225000013.jpg]
(式(i)中、[EE]はDsol中のエチレン連鎖のモル分率、[PP]はDsol中のプロピレン連鎖のモル分率、[PE]はプロピレン-エチレン連鎖のモル分率である。)」
イ
「【0265】
[実施例1]
内容積2リットルの高速撹拌装置(特殊機化工業製(TKホモミクサーM型))を充分窒素置換した後、この装置に精製デカン700ml、市販塩化マグネシウム10g、エタノール24.2gおよび商品名レオドールSP-S20(花王(株)製ソルビタンジステアレート)3gを入れ、この懸濁液を撹拌しながら系を昇温し、懸濁液を120℃にて800rpmで30分撹拌した。次いでこの懸濁液を、沈殿物が生じないように高速撹拌しながら、内径5mmのテフロン(登録商標)製チューブを用いて、予め-10℃に冷却された精製デカン1リットルを張り込んである2リットルのガラスフラスコ(攪拌機付)に移した。移液により生成した固体を濾過し、精製n-ヘプタンで充分洗浄することにより、塩化マグネシウム1モルに対してエタノールが2.8モル配位した固体状付加物を得た。
【0266】
この固体状付加物をデカンで懸濁状にして、マグネシウム原子に換算して23ミリモルの上記固体状付加物を、-20℃に保持した四塩化チタン100ml中に、攪拌下、導入して混合液を得た。この混合液を5時間かけて80℃に昇温し、80℃に達したところで、3,6-ジメチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジイソブチル(シス体、トランス体混合物)を、固体状付加物のマグネシウム原子1モルに対して0.085モルの割合の量で添加し、40分間で110℃まで昇温した。110℃に到達したところで更にシクロヘキサン1,2-ジカルボン酸ジイソブチル(シス体、トランス体混合物)を固体状付加物のマグネシウム原子1モルに対して0.0625モルの割合の量で添加し、温度を110℃で90分間攪拌しながら保持することによりこれらを反応させた。
【0267】
90分間の反応終了後、熱濾過にて固体部を採取し、この固体部を100mlの四塩化チタンにて再懸濁させた後、昇温して110℃に達したところで、45分間撹拌しながら保持することによりこれらを反応させた。45分間の反応終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、100℃のデカンおよびヘプタンで、洗液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで充分洗浄した。
【0268】
以上の操作によって調製した固体状チタン触媒成分(α-1)はデカン懸濁液として保存したが、この内の一部を、触媒組成を調べる目的で乾燥した。
このようにして得られた固体状チタン触媒成分(α-1)の組成はチタン3.2質量%、マグネシウム17質量%、塩素57質量%、3,6-ジメチルシクロヘキサン1,2-ジカルボン酸ジイソブチル10.6質量%、シクロヘキサン1,2-ジカルボン酸ジイソブチル8.9質量%およびエチルアルコール残基0.6質量%であった。
【0269】
(固体状チタン触媒成分(α-1)予備重合)
次に窒素で置換した内容積200ミリリットルの攪拌機付きの三つ口フラスコに、脱水したヘキサンを加え、トリエチルアルミニウム0.75ミリモル、さらに上記の固体状チタン触媒成分(α-1)の懸濁液をチタン原子換算で0.25ミリモル投入、全量を50ミリリットルとした。これを攪拌下、20℃を維持して60分間プロピレンを所定量吸収させた。その後、残留プロピレンを窒素で置換して、ヘキサンを用いて充分洗浄を行い、予備重合触媒成分を得た(3g-PP/g-固体状チタン触媒成分)。
【0270】
(本重合)
内容積2リットルの重合器に、室温で500gのプロピレンおよび水素7.0NLを加えた後、トリエチルアルミニウムを0.5ミリモル、ジエチルアミノトリエトキシシランを0.1ミリモル、および固体状チタン触媒成分(α-1)の予備重合触媒成分をチタン原子換算で0.0035ミリモルを60℃で加え、速やかに重合器内を70℃まで昇温した。70℃で20分重合(プロピレンバルク重合)した後、降温させながらプロピレンをパージした。その後窒素置換を数回繰り返した。そして、水素0.08NLを加えた後、エチレン/(エチレン+プロピレン)=43モル%のガス比とし、全圧0.7MPaで気相重合を行った。ゴム量(Dsol)が約23%に達するまで重合した。反応終了後、少量のメタノールにて反応停止し、プロピレンをパージした。更に得られた重合体粒子を室温で一晩、減圧乾燥してプロピレン系ブロック共重合体(A-1)を得た。得られた重合体の物性は、MFR=28.4g/10分、室温n-デカン可溶な部分(Dsol)は23重量%、Dsolのエチレン含量は40モル%、Dsolの[η]は4.3dl/gであった。」
第5 当審の判断
1 甲1に記載された発明
甲1の請求項1、2、4及び8によれば、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「下記(A)成分及び(B)成分からなり、(A)成分と(B)成分の比率((A)成分/(B)成分)が19/1~1/19(重量比)である、成形性改質剤2~30重量部と、
(C)オルトジクロルベンゼンで抽出されるゴム含量が15重量%以上であるプロピレン-エチレンブロック共重合体40~98重量%、
(D)無機充填剤1~40重量%、及び
(E)エチレン系エラストマー又はスチレン系エラストマー1~20重量%
を含有するポリプロピレン樹脂組成物であるポリプロピレン系樹脂被改質材料100重量部とを含む、ポリプロピレン系樹脂組成物。
(A)成分:結晶性プロピレン単独重合体部分(A1)80~98重量%とプロピレン・エチレンランダム共重合体部分(A2)2~20重量%からなり、下記(a-1)~(a-4)の要件を満たすプロピレン系ブロック共重合体
(a-1)結晶性プロピレン単独重合体部分(A1)のメルトフローレート(JIS K7210、温度230℃、荷重21.18N)が300g/10分以上
(a-2)プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(A2)のエチレン含量が10~70重量%
(a-3)プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(A2)の固有粘度[η]copolyが6.5dl/g以上
(a-4)プロピレン系ブロック共重合体(A)全体のメルトフローレート(MFRA)が40g/10分以上
(B)成分:結晶性プロピレン重合体部分(B1)20~79重量%とプロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B2)21~80重量%とからなり、下記(b-1)~(b-4)の要件を満たすプロピレン系ブロック共重合体
(b-1)結晶性プロピレン単独重合体部分(B1)のメルトフローレート(JIS K7210、温度230℃、荷重21.18N)が20g/10分以上
(b-2)プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B2)のエチレン含量が20~70重量%
(b-3)プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B2)の固有粘度[η]copolyが2.5~9.0dl/g
(b-4)プロピレン系ブロック共重合体(B)の全体のメルトフローレート(MFRB)が0.1~50g/10分」(以下、「甲1発明」という。)
2 本件発明1について
本件発明1について、申立理由1(甲1に基づく新規性)と申立理由2(甲1に基づく進歩性)を併せて検討する。
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の(B)成分について
(ア)甲1発明の「結晶性プロピレン重合体部分(B1)」は、要件(b-1)及び甲1摘記ウの【0029】によれば、「結晶性プロピレン単独重合体(B1)」であるから、本件発明1の「成分(I-1)」と、「プロピレン単独重合体」である限りにおいて一致する。
(イ)甲1発明「プロピレン・エチレンランダム共重合体成分(B2)」は、要件(b-2)によれば、エチレン含量が20~70重量%であるから、本件発明1の「成分(II)」と、エチレンに由来する単量体単位と、プロピレンに由来する単位単量体単位とを含む共重合体成分であって、エチレンに由来する単量体単位の含有量が20重量%以上80重量%以下である(但し、成分(II)の全重量を100重量%とする)プロピレン・エチレンランダム共重合体成分である限りにおいて一致する。
(ウ)甲1発明の(B)成分は、「結晶性プロピレン重合体部分(B1)」と「プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B2)」とからなる、プロピレン系ブロック共重合体であるところ、甲1において、「プロピレン系ブロック共重合体」は、結晶性プロピレン重合体部分とプロピレン・エチレンランダム共重合体部分との反応混合物であるから(甲1摘記ウ【0046】)、ヘテロファジック(異相)であるということができる。また、当該(B)成分は、プロピレン系ブロック共重合体であるから、プロピレン重合材料である。
(エ)上記(ア)~(ウ)から、甲1発明の「(B)成分」は、本件発明1の「ヘテロファジックプロピレン重合材料」と、プロピレン単独重合体(成分(I-1))と、エチレンに由来する単量体単位と、プロピレンに由来する単量体単位とを含む共重合体成分であって、エチレンに由来する単量体単位の含有量が20重量%以上80重量%以下である(但し、成分(II)の全重量を100重量%とする)エチレン-α-オレフィン共重合体成分(成分(II))とを含む、ヘテロファジックプロピレン重合材料である限りにおいて、一致する。
イ 甲1発明の、「(C)オルトジクロルベンゼンで抽出されるゴム含量が15重量%以上であるプロピレン-エチレンブロック共重合体」(以下、「プロピレン-エチレンブロック共重合体(C)」という。)は、本件発明1の「成分(A)」と、「プロピレン系重合体」である限りにおいて、一致する。
ウ 甲1発明の「(D)無機充填剤」は、本件発明1の「成分(C):無機充填剤」に相当し、甲1発明の「(E)エチレン系エラストマー又はスチレン系エラストマー」のうちの「エチレン系エラストマー」は、本件発明1の「成分(B):オレフィン系エラストマー」に相当する。
エ 上記ア~ウに照らすと、本件発明1と甲1発明とは、
「下記成分(I-1)と、下記成分(II)とを含むヘテロファジックプロピレン重合材料、
下記成分(A)、
下記成分(B)、及び
下記成分(C)を含有するプロピレン系樹脂組成物。
成分(I-1):プロピレン単独重合体
成分(II):エチレンに由来する単量体単位と、プロピレンおよび炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位とを含む共重合体成分であって、
エチレンに由来する単量体単位の含有量が20重量%以上80重量%以下である(但し、成分(II)の全重量を100重量%とする)
エチレン-α-オレフィン共重合体成分。
成分(A):プロピレン系重合体
成分(B):オレフィン系エラストマー
成分(C):無機充填剤。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
【相違点1】
ヘテロファジックプロピレン重合材料に関し、本件発明1では、「(i)ヘテロファジックプロピレン重合材料のキシレン可溶成分の含有量が、20重量%以上である(但し、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を100重量%とする)。」のに対して、甲1発明では、(B)成分が、結晶性プロピレン重合体部分(B1)20~79重量%とプロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B2)21~80重量%とからなるものの、キシレン可溶成分の含有量についての直接の記載はない点。
【相違点2】
ヘテロファジックプロピレン重合材料に関し、本件発明1では、「(ii)ヘテロファジックプロピレン重合材料のキシレン可溶成分の極限粘度[η]CXSが、5dL/g以上であ」る(極限粘度[η]CXSは135℃、テトラリン溶媒の条件下のもの(本件明細書【0025】)のに対して、甲1発明では、(B)成分の、プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B2)の固有粘度[η]copolyが2.5~9.0dl/gである(固有粘度[η]copoly135℃、デカリン溶媒の条件下のもの(甲1摘記ウ【0045】))点。
【相違点3】
ヘテロファジックプロピレン重合材料に関し、本件発明1では、「(iii)温度230℃、荷重2.16kgfの条件で測定される、成分(I-1)または成分(I-2)のメルトフローレートが70g/10分以上である」のに対して、甲1発明では、結晶性プロピレン単独重合体部分(B1)のメルトフローレート(JIS K7210、温度230℃、荷重21.18N)が20g/10分以上である点。
【相違点4】
ヘテロファジックプロピレン重合材料に関し、本件発明1では、「(iv)温度230℃、荷重2.16kgfの条件で測定される、ヘテロファジックプロピレン重合材料のメルトフローレートが5g/10分以上である」のに対して、甲1発明では、プロピレン系ブロック共重合体(B)の全体のメルトフローレート(MFRB)が0.1~50g/10分である点。
【相違点5】
ヘテロファジックプロピレン重合材料に関し、本件発明1では、「(v)下記ゲル数測定用シート中に存在する直径100μm以上のゲルの数が、シートの面積100cm2当たり1000個以下である。
ゲル数測定用シート:ヘテロファジックプロピレン重合材料100重量部に対して、中和剤を0.05重量部、および酸化防止剤を0.2重量部混合し、得られた混合物を100メッシュのスクリーンパックを設置した40mm造粒機を用い、設定温度280℃、押出量10kg/hrで溶融押出を行いペレット化した後、スクリュー直径20mmの単軸押出機により、樹脂温度230℃で、得られたペレットをシート状に溶融押出し、溶融押出されたシート状物を、30℃の冷却水を通水した冷却ロールにより冷却して、厚さ50μmに成形されたシート。」のに対して、甲1発明では、当該ゲル数計測用シート中に存在する直径100μm以上のゲルの数は不明である点。
【相違点6】
「成分(A):プロピレン系重合体」に関し、本件発明1では、「成分(A):プロピレン単独重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体、およびヘテロファジックプロピレン重合材料からなる群より選ばれる少なくとも一種であるプロピレン系重合体(但し、成分(A)としてのヘテロファジックプロピレン重合材料は、以下に定義される重合体(X)を除く。
重合体(X):成分(I-1)または成分(I-2)と、成分(II)とを含み、下記要件(i)~(v)を満たすヘテロファジックプロピレン重合材料。
(i)ヘテロファジックプロピレン重合材料のキシレン可溶成分の含有量が、20重量%以上である(但し、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を100重量%とする)。
(ii)ヘテロファジックプロピレン重合材料のキシレン可溶成分の極限粘度[η]CXSが、5dL/g以上である。
(iii)成分(I-1)または成分(I-2)のMFRが70g/10分以上である。
(iv)ヘテロファジックプロピレン重合材料のMFRが5g/10分以上である。
(v)ヘテロファジックプロピレン重合材料から得られる下記ゲル数測定用シート中に存在する100μm以上の大きさのゲルの数が、シートの面積100cm2当たり1000個以下である。
ゲル数測定用シート:ヘテロファジックプロピレン重合材料100重量部に対して、中和剤を0.05重量部、および酸化防止剤を0.2重量部混合し、得られた混合物を100メッシュのスクリーンパックを設置した40mm造粒機を用い、設定温度280℃、押出量10kg/hrで溶融押出を行いペレット化した後、スクリュー直径20mmの単軸押出機により、樹脂温度230℃で、得られたペレットをシート状に溶融押出し、溶融押出されたシート状物を、30℃の冷却水を通水した冷却ロールにより冷却して、厚さ50μmに成形されたシート。)」であるのに対して、甲1発明のプロピレン-エチレンブロック共重合体(C)は、そのようなものであるのかが不明である点。
【相違点7】
プロピレン系樹脂組成物における各成分の含有量に関し、本件発明1では、ヘテロファジックプロピレン重合材料、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)の合計量100重量%に対して、前記ヘテロファジックプロピレン重合材料の含有量が1~10重量%であり、「成分(A):プロピレン系重合体」の含有量が30~97重量%であり、「成分(B):オレフィン系エラストマー」の含有量が1~30重量%であり、「成分(C):無機充填剤」の含有量が1~30重量%であるのに対して、甲1発明では、成形性改良剤とポリプロピレン系被改質材料とを含む全体量を基準として、プロピレン系ブロック共重合体(B成分)は、0.1~18.6%、プロピレン-エチレンブロック共重合体(C成分)は、33.3~96.1%、エチレン系エラストマー又はスチレン系エラストマー(E成分)は、0.8~19.6%、無機充填剤(D成分)は、0.8~39.2%含まれる点。
なお、甲1発明における各成分の含有量は、甲1発明では、(A)成分と(B)成分の比率((A)成分/(B)成分)が19/1~1/19(重量比)である、成形性改質剤2~30重量部に対して、(C)オルトジクロルベンゼンで抽出されるゴム含量が15重量%以上であるプロピレン-エチレンブロック共重合体40~98重量%、(D)無機充填剤1~40重量%、及び、(E)エチレン系エラストマー又はスチレン系エラストマー1~20重量%を含有するポリプロピレン樹脂組成物であるポリプロピレン系樹脂被改質材料100重量部が配合されることから算出した。
(2)判断
上記相違点について検討する。
ア 事案に鑑み、まず、相違点5について検討する。
(ア)甲1には、甲1発明のポリプロピレン系樹脂組成物に含まれる(B)成分に関し、本件発明1の要件(v)を満たすことについては記載されていないし、当該(B)成分が、当該要件(v)を満たすと解すべき合理的根拠もない。
よって、相違点5は、実質的な相違点である。
(イ)次に、相違点5に係る事項が、当業者が容易に想到し得たものであったかについて検討する。
a 本件発明は、ヘテロファジックプロピレン重合材料を含有する樹脂組成物からなる成形体には、ゲルと呼ばれる重合体凝集物が発生しやすいという問題があったことを踏まえ、プロピレン系樹脂へ添加することによって、プロピレン系樹脂射出成形体上にフローマークが発生する面積を減少させることができ、且つ得られる成形体における発生するゲル数を減少させることが可能な、ヘテロファジックプロピレン重合材料を提供することを目的としたものである(【0004】、【0005】)。
そして、本件発明1の要件(v)に関し、本件明細書に記載された実施例からは、当該要件(v)を満足するヘテロファジックプロピレン重合材料を用いたポリプロピレン改質剤を配合したプロピレン系樹脂組成物の射出成形体(実施例4~6、比較例1)では、発生ゲル数が抑制されたのに対して、当該要件(v)を満足しないへテロファジックプロピレン重合材料を用いたポリプロピレン改質剤を配合したプロピレン系樹脂組成物の射出成形体(比較例2)では、発生ゲル数が多かったことが見てとれる。
b 一方、甲1は、フローマークの発生を起こしにくいプロピレン系ブロック共重合体、及びエラストマー含量が高い樹脂成分に、高性能な第3成分として少量配合することで、被改質剤の物性の変化が小さく、かつ、フローマーク、ボイド等の成形加工特性を改良することができるポリプロピレン系樹脂用成形性改質剤を提供すること、及び、該成形性改質剤を用いて、良好な外観を発現し、成形加工性に優れた、ポリプロピレン系樹脂組成物を提供することを課題とするものであって(甲1摘記イ【0008】)、甲1発明の(B)成分は、上記ポリプロピレン系樹脂用成形性改質剤を構成する成分である。
そして、甲1には、そのようなポリプロピレン系樹脂用成形性改質剤を配合したポリプロピレン系樹脂組成物の効果に関して、成形加工性、フローマーク特性に優れ、また、ハイサイクル成形時におけるリンプル状の外観不良にも対応できることが記載されている(甲1摘記ウ【0020】)。
しかしながら、甲1は、特定のポリプロピレン系樹脂用成形性改質剤をポリプロピレン系樹脂組成物に配合することにより、ポリプロピレン系樹脂組成物の成形加工性、フローマーク特性等を改良することを記載するにとどまり、ポリプロピレン系樹脂用成形性改質剤を構成する成分である(B)成分自体からゲル数測定用シートを形成し、当該シート中のゲルの数を一定の値以下にすることについては、記載も示唆もされていない。
してみると、甲1発明において、(B)成分について、本件発明で規定される要件(v)を満たすようにすることが動機付けられるとはいえない。
よって、相違点5に係る事項は、当業者が容易に想到し得たものではない。
イ 上記アのとおり、相違点5に係る事項は、実質的な相違点であり、また、当該相違点5に係る事項は当業者が容易に想到しうる事項ではないから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ なお、甲1発明において、(B)成分とともに成形性改質剤を形成する(A)成分も、結晶性プロピレン単独重合体部分(A1)80~98重量%とプロピレン・エチレンランダム共重合体部分(A2)2~20重量%からなるプロピレン系ブロック共重合体であり、結晶性プロピレン重合体部分とプロピレン・エチレンランダム共重合体部分との反応混合物であるから(甲1摘記ウ【0046】)、ヘテロファジック(異相)重合材料であるということができるが、当該(A)成分を、本件発明1の「ヘテロファジックプロピレン重合材料」と対比してみても、両者は、少なくとも上記相違点5に係る事項において相違し、当該相違点5は、実質的な相違点であって、当該相違点に係る事項は当業者が容易に想到しうる事項でもないから、やはり、本件発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件発明1の効果について
ここで、念のため、本件発明1の効果について検討しておく。
(ア)本件明細書の記載によれば、本件発明1は、プロピレン系樹脂組成物成形体上にフローマークが発生する面積を減少させることができるとともに、プロピレン系樹脂組成物を含む成形体における発生するゲル数を減少させることができるという効果を奏する(【0007】)。
実際、本件明細書の実施例には、本件発明1の規定を満たすヘテロファジック重合材料を用いたプロピレン系樹脂組成物は、上記効果を奏したのに対して、本件発明1の規定を満たさないヘテロファジック重合材料を用いたプロピレン系樹脂組成物は、フローマーク発生面積が大きく、または、ゲル数が多いことが記載されている(【0076】、【表4】)。
(イ)これに対して、甲1には、ア(イ)bのとおり、ポリプロピレン系樹脂用成形性改質剤を配合したポリプロピレン系樹脂組成物は、成形加工性、フローマーク特性に優れることが記載されており、このことは、甲1記載の実施例から具体的に理解することができる(甲1摘記エ【表7】)ものの、成形体のゲル数を減少させるという効果については、具体的な記載がない。
この点に関し、甲1には、成形性改質剤を(B)成分とともに形成する(A)成分に関して、当該成分の組成が所定の範囲外であるとゲルが発生しやすくなることが一応記載されているものの(甲1摘記ウ【0023】)、当該記載をみても、(A)成分の組成を所定の範囲内のものとした場合、ゲルの発生がどの程度少なくなるかについて何ら具体的に理解することはできないから、当該記載のみをもって、本件発明1の、プロピレン系樹脂組成物を含む成形体における発生するゲル数を、本件明細書に記載される程度にまで減少させることができることを予測できるとはいえない。
そうすると、本件発明1の効果は、甲1の記載から当業者が予測しうるものではない。
(3)申立人の主張について
ア 申立人は、本件発明1と甲1に記載された発明とは、相違点1(上記相違点5と実質的に同一の点であるので、以下「相違点5」という。)で一応相違するが、当該相違点は実質的な相違点ではないから、本件発明1と甲1に記載された発明との間に差異はないと主張する(特許異議申立書p47~)
申立人が、相違点5が実質的な相違点ではないとする理由は、以下のとおりである。
(ア)本件発明1の要件(v)の、厚さ50μmのシートの面積100cm2当たりのゲル数は、ヘテロファジックプロピレン重合材料の密度を0.9g/cm3と見積もると、0.45g当たりのゲルの数に該当するところ、参考資料4の、♯100スクリーンメッシュを用いて製造した比較例1及び2のプロピレン系樹脂造粒体から加工したシートにおける、100μm以上のゲルの0.45g当たりの個数は、比較例1では70.3個、比較例2では324個よりも少ないと算出される。
(イ)参考資料4において、比較例1及び比較例2が満たすべき要件は、以下の要件α~εであり、これらの要件α~εを満たすポリプロピレン系樹脂組成物(C)から♯100スクリーンメッシュを用いて製造したプロピレン系樹脂造粒体から加工したシートにおいて、直径100μm以上のゲルの0.45g当たりの数は70.3個又は324個よりも少ないと解する。
要件α「本発明に係るプロピレン(共)重合体(A)は、通常プロピレンの単独重合によって得られるプロピレン単独重合体(ホモ重合体)である」(【0015】)
要件β「プロピレン(共)重合体(A)のメルトフローレート(MFR)は、0.5~100g/10分・・・である。」(【0017】)
要件γ「本発明に係るプロピレン・エチレンランダム共重合体(B)は、通常、プロピレンとエチレンとの共重合によって得られるプロピレン・エチレンランダム共重合体である(【0018】)
要件δ「本発明に係るプロピレン・エチレンランダム共重合体(B)の固有粘度[η]copolyは、6~20dl/gであ・・・る。・・・
ここで、固有粘度は、ウベローデ型粘度計を用いて、デカリンを溶媒として温度135℃で測定して得られる値である。」(【0021】)
要件ε「本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物(C)におけるプロピレン(共)重合体(A)の含有割合は、プロピレン(共)重合体(A)とプロピレン・エチレンランダム共重合体(B)の合計100重量%に対して、プロピレン(共)重合体(A)の含有量が10~95重量%であ・・・る。一方、プロピレン・エチレンランダム共重合体(B)の含有割合は、5~90重量%であ・・・る。ここで、プロピレン(共)重合体(A)の割合とプロピレン・エチレンランダム共重合体(B)の割合との合計は、100重量%である。」(【0022】)
(ウ)甲1発明の「プロピレン系ブロック共重合体(B)」は、上記要件α~εを満たすから、甲1発明の「プロピレン系ブロック共重合体(B)」から♯100スクリーンメッシュを用いて製造したプロピレン系樹脂造粒体から加工したシートにおいて、直径100μm以上のゲルの0.45g当たりの数は70.3個又は324個よりも少ない、すなわち、厚さ50μmに成形されたシート中に存在する直径100μm以上のゲルの数がシートの面積100cm2当たり1000個以下であると解される。
(エ)よって、相違点5は、実質的な相違点ではない。
イ 上記主張について検討する。
(ア)申立人が引用する参考資料4は、特定のプロピレン(共)重合体(A)と、特定のプロピレン・エチレンランダム共重合体(B)を含むポリプロピレン系樹脂組成物(C)を、特定の金属フィルター(D)を使用して造粒することにより、フィッシュアイの発生を抑制することを開示する文献であり(【請求項1】、【0011】)、比較例1及び2には、第一段目重合工程でプロピレンを重合し(プロピレン(共)重合体(A)の重合)、第二段目重合工程でプロピレンとエチレンを重合して(プロピレン・エチレンランダム共重合体(B)の重合)得たプロピレン・エチレンブロック共重合体を、100メッシュのスクリーンを使用して造粒体を得、当該造粒体から形成したシート中のフィッシュアイの個数(大中小合計)が、比較例1では、156.3個/g、比較例2では、721.11個/gであったことが記載されている(【0054】~【0068】)。
(イ)上記(ア)によれば、参考資料4には、比較例として、申立人の主張する要件α~εを満たすプロピレン・エチレンブロック共重合体を100メッシュのスクリーンを使用して得た造粒体から形成されたシート中のフィッシュアイ個数が上記のようであったことは記載されている。
しかしながら、そもそも、参考文献4に記載された比較例1及び2のシートの形成方法と本件発明1の要件(v)のゲル数測定用シートの形成方法とが全て合致するわけではないから、仮に参考文献4の比較例1及び2のシートにおいて、直径100μm以上のゲルの数がシートの面積100cm2当たり1000個以下であるとしても、上記比較例1及び2のシートを形成するプロピレン・エチレンブロック共重合体から本件発明の要件(v)のゲル数測定用シートを形成した場合にも、上記ゲルの数が1000個以下であるとはいえない。
また、参考文献4には、上記要件α~εの要件が格別に列記されているわけではないし、ましてや、そのような要件を満たすポリプロピレン系樹脂組成物から100メッシュのスクリーンを用いて造粒体を得、これからシートを形成した場合、当該シート中のフィッシュアイの数が、比較例1又は2のものと同等になるとは記載されておらず、また、そのように解すべき合理的根拠もない。
そうすると、申立人の主張は根拠を欠くものであり、採用できない。
(ウ)a 申立人は、本件発明1と甲1に記載された発明との相違点として、相違点5のみを挙げるが、本件発明1と甲1発明との間に、相違点1~7があることは、上記(1)のとおりである。
b(a)甲1には、甲1発明のプロピレン系樹脂組成物における(B)成分の具体的態様として、「改質剤-21」~「改質剤-23」が記載されている(甲1摘記エ【表2】)。
これらの改質剤に関し、本件発明1の要件(i)~(iv)を満たすか否かについて検討すると、「改質剤-21」は要件(ii)~(iv)を満たさず、「改質剤-22」は要件(ii)、(iv)を満たさず、「改質剤-23」は要件(iii)、(iv)を満たさない。
なお、甲1の【表2】に記載された改質剤のうち、甲1発明のプロピレン系樹脂組成物における(B)成分の具体的態様ではない、「改質剤-24」~「改質剤26」についても検討すると、「改質剤-24」は、要件(i)、(ii)を満たさず、「改質剤-25」は、要件(i)、(iii)を満たさず、「改質剤-26」は、要件(iii)、(iv)を満たさない。
(b)そうすると、本件発明の、ヘテロファジックプロピレン重合材料が満たすべき要件のうちの(i)~(iv)に関し、本件発明1と甲1発明との間に、数値範囲としてそれぞれ重複する部分が多少あったとしても、実際に(i)~(iv)を全て満たす態様は一つとして記載されていないから、上記重複する部分があるからといって、ただちに、本件発明1と甲1発明との相違点は、相違点5のみであるということにはならない。
(c)なお、上記(a)に関し、要件(i)及び(ii)については、以下の前提に基づき、検討を行った。
<前提1>
参考資料1(【0016】、【0017】、【0019】、【0024】)及び参考資料2(【請求項1】、【0032】の記載に基づき、要件(i)及び(ii)に関し、甲1の「改質剤21」~「改質剤26」における、「プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(B2)」が、「キシレン可溶成分」に相当すると解した。
<前提2>
参考資料3に基づき、要件(ii)に関し、甲1の「改質剤21」~「改質剤26」における[η]copolyを1.375で除した値が、本件発明1の要件(ii)の[η]cxsであると解した。
(ウ)よって、申立人の主張は、採用することができない。
(4)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明、すなわち甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
3 本件発明2について
本件発明2に関し、申立理由3(甲1を主引例とし、甲2を副引例とする進歩性)について検討する。
本件発明2は、本件発明1において、ヘテロファジックプロピレン重合材料のフタル酸エステルの含有量が10ppm以下であることを特定したものである。
そして、上記2のとおり、本件発明1は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明2も、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、甲2の記載を併せ考えても、このことは左右されない。
よって、本件発明2は、甲1に記載された発明及び甲2の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 本件発明3~9について
本件発明3~9に関し、申立理由1(甲1に基づく新規性)と申立理由2(甲1に基づく進歩性)について検討する。
本件発明3~9は、いずれも、本件発明1を直接又は間接的に引用するものである。
そして、本件発明1が、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないことは、上記2のとおりであって、そうであれば、本件発明3~9も、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
5 まとめ
よって、申立理由1~3は、いずれも理由がない。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-701286