特許異議申立
2022-701258
二軸配向ポリエステルフィルム及びその製造方法
- 審判番号
- 2022-701258
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-555961
- 登録番号
- 7103430
- 請求日
- 2022年12月16日
- 審決日
- 2023年04月25日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】東洋紡株式会社
- 【異議申立人】加藤 真弥
- 審判長/審判官
- 審判長 磯貝 香苗
- 審判官 平塚 政宏
- 審判官 植前 充司
- 分類
- P1651.121-Y (C08J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7103430号発明「二軸配向ポリエステルフィルム及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7103430号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7103430号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし4についての出願は、2019年(令和1年)10月25日(優先権主張 平成30年11月7日)を国際出願日とする出願であって、令和4年7月11日にその特許権の設定登録(請求項の数4)がされ、同年同月20日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年12月16日に特許異議申立人 加藤 真弥(以下、「特許異議申立人」という。)より特許異議の申立て(対象となる請求項:請求項1ないし4)がされたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし4に係る発明(以下、これらの発明を順に「本件特許発明1」、「本件特許発明2」などという場合があり、また、これらをまとめて「本件特許発明」という場合がある。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
第1の無機粒子を7000質量ppm以上22000質量ppm以下含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂と、第2の無機粒子を0~50質量ppm含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂とを混合させ、無機粒子を500~1500質量ppm含有するようにした第1のポリエステル樹脂組成物、第2のポリエステル樹脂組成物、第3のポリエステル樹脂組成物層を、それぞれ溶融させ、第1のポリエステル樹脂組成物からなる層/第2のポリエステル樹脂組成物からなる層/第3のポリエステル樹脂組成物からなる層の構成となるように、ダイスを介して共押出しし未延伸シートを得る工程、前記未延伸シートを二軸延伸し二軸延伸フィルムを得る工程、前記二軸延伸フィルムを、200℃以上250℃以下の温度で熱固定した後に、200度以下に温度を低下させながら、幅方向に2~10%の弛緩を与える工程を含む、包装用二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記未延伸シートを二軸延伸し二軸延伸ポリエステルフィルムを得る工程が、前記未延伸シートを縦方向に2段階で延伸した後に、横延伸をして包装用二軸延伸ポリエステルフィルムを得る工程である、請求項1に記載の二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記第1の無機粒子及び第2の無機粒子がシリカ粒子である請求項1又は2に記載の包装用二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記シリカ粒子の細孔容積が0.6~2.0ml/gである請求項3に記載の包装用二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。」
第3 特許異議申立理由の概要
特許異議申立人が申し立てた請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。
1 申立理由(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 証拠方法
・甲第1号証:特開2016-814号公報
・甲第2号証:特開2015-174356号公報
・甲第3号証:三石幸夫、「ポリエステル・フィルムの製造について」、繊維学会誌、第31巻、第2号、1975年、第20頁ないし第25頁
・甲第4号証:山田敏郎、「フィルムの成形加工」、繊維機械学会誌、第55巻、第12号、2002年、第464頁ないし第470頁
・甲第5号証:特開2001-18344号公報
・甲第6号証:石原英昭、「紡糸・フィルム成形の基礎 第3回」、成形加工、第23巻、第7号、2011年、第430頁ないし第440頁
・甲第7号証:特開平7-186335号公報
第4 当審の判断
以下のとおり、当審は、特許異議申立理由は、その理由がないものと判断する。
1 主な証拠の記載事項等
(1) 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、「耐加水分解性ポリエステルフィルム」に関し、次の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物中ヒンダードフェノール構造単位を0.03~6.7当量/トン含み、フィルムを構成するポリエステルの酸価が25当量/トン未満、固有粘度が0.64dL/gを越え0.90dL/g以下、フィルムの見かけ比重が0.7~1.3であり、
前記ポリエステルは、Sb原子として70ppm以上400ppm以下のアンチモン化合物及び/又はGe原子として30ppm以上200ppm以下のゲルマニウム化合物を触媒として重合されたものである、
耐加水分解性ポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記フィルムが白色微粒子を5~20質量%含有することを特徴とする請求項1記載の耐加水分解性ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記フィルムが白色微粒子を含有するポリエステル層からなるスキン層と、ポリエステルに非相溶の熱可塑性樹脂に由来する空洞を多数含有するポリエステル層からなるコア層の3層構成を有することを特徴とする請求項1または2に記載の耐加水分解性ポリエステルフィルム。
【請求項4】
ポリエステルが酸成分として、テレフタル酸またはナフタレンジカルボン酸の少なくともいずれかを含みテレフタル酸またはナフタレンジカルボン酸の合計量が全酸成分に対して90モル%以上であり、かつ、グリコール成分としてエチレングリコールおよびジエチレングリコールを含みエチレングリコールおよびジエチレングリコールの合計量が全クリコール成分に対して90モル%以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の耐加水分解性ポリエステルフィルム。
【請求項5】
ポリエステル樹脂組成物中にはOH基及びカルボキシル基以外にこれら(OH基もしくはカルボキシル基)と反応する置換基を持つ化合物は実質含まれないことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の耐加水分解性ポリエステルフィルム。
【請求項6】
ポリエステル樹脂組成物中にはポリエステルが90質量%を越えて含有されていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の耐加水分解性ポリエステルフィルム。
【請求項7】
前記ポリエステルは、触媒としてアンチモン化合物に加え、カルシウム化合物、リチウム化合物及びリン化合物を触媒として重合されたものであることを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の耐加水分解性ポリエステルフィルム。
【請求項8】
太陽電池バックシート用、太陽電池フロントシート用、電気絶縁用のうちいずれか1種であることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の耐加水分解性ポリエステルフィルム。
【請求項9】
請求項1~7のいずれかに記載のポリエステルフィルムが受光面または受光面とは反対側の少なくともいずれかに積層されていることを特徴とする太陽電池。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、耐加水分解性ポリエステルフィルムに関する。更に詳しくは、太陽電池バックシート用やモーター絶縁用、コンデンサー用などの電気絶縁用の耐候性ポリエステルフィルムに関する。特には太陽電池バックシートに好適に用いられる耐加水分解性ポリエステルフィルムである。」
「【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムは、機械的特性、及び化学的特性に優れており、包装用、磁気テープ用、電子部品用、電気絶縁用、保護シート用など等の広範な分野において使用されている。特に、太陽電池場バックシート用途やモーター絶縁用途、コンデンサー用途では、長期間にわたり過酷な使用環境に曝されるので、より高度な耐久性が求められる。しかしながら、ポリエステルフィルムを高温高湿度環境で使用すると、分子鎖中のエステル結合部位の加水分解が起こり、機械的特性が劣化するという課題がある。そこで、ポリエステルフィルムの耐加水分解性能の向上について種々の検討がなされている。」
「【0007】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、フィルム成型時の酸価の上昇が抑えられ、低酸価の耐加水分解性ポリエステルフィルムを得ることができ、これを太陽電池のバックシートに用いた場合には従来にはない優れた耐候性を達成することができる、耐加水分解性に優れたポリエステルフィルムを提供することにある。」
「【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは高耐加水分解性のフィルムを鋭意検討し、以下のことを明らかにした。
従来技術のように、樹脂原料の段階で酸価を低くしても、フィルム製膜時の押出機内でかかる熱履歴により、ポリエステルの分解が進行し、酸価が僅かに増加する。特に、この傾向は分子量が大きく高い固有粘度を有する樹脂原料に顕著である。溶融押出時に生じる酸価の上昇は僅かであっても、ポリエステル主鎖の分解は酸が触媒となるため、係る触媒作用により自己増殖的に分解が進行する。そのため、結果として長期間の使用において耐候性の低下をもたらす。このように、樹脂原料の溶融成型時に生じる僅かな酸価の上昇が長期の耐久性に大きな影響を与えることが分かった。
【0009】
そこで、樹脂原料の押出機内での酸価の上昇を抑制すべく、鋭意検討を行なった結果、従来適用されていた量と比して極めて僅かな量のヒンダードフェノール化合物を添加することで、酸価の上昇を抑制し、結果として長期の耐久性が顕著に向上するという、予想外の結果を得た。ここで効果の見られるヒンダードフェノール化合物の添加量はエンジニアリングプラスチックなどで用いられるような大量(数千ppm以上)でなくても、数百ppm以下の少量でも大きな効果を発揮する。」
「【0010】
本発明は、ヒンダードフェノール化合物の新たな効果を見出したことに基づく。すなわち、本発明は、フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物中ヒンダードフェノール構造単位を0.03~6.7当量/トン含み、フィルムを構成するポリエステルの酸価が25当量/トン未満、固有粘度が0.64dL/gを越え0.90dL/g以下、フィルムの見かけ比重が0.7~1.3であることを特徴とするポリエステルフィルムである。
【0011】
上記において、前記フィルムが白色微粒子を5~20質量%含有することが好ましい。
【0012】
上記において、前記フィルムが白色微粒子を含有するポリエステル層からなるスキン層と、ポリエステルに非相溶の熱可塑性樹脂に由来する空洞を多数含有するポリエステル層からなるコア層の3層構成を有することが好ましい。」
「【発明の効果】
【0021】
本発明の耐加水分解性ポリエステルフィルムは、実質的にポリエステル樹脂から構成されていながら、良好な耐加水分解性能を有する。そのため、太陽電池バックシート用途や電気絶縁用途など耐久性が求められる用途に好適に用いることができる。」
「【0023】
本発明では、フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物中にヒンダードフェノール構造を含有する。」
「【0066】
3.フィルム樹脂組成物
フィルムを構成するフィルム樹脂組成物としては他に、紫外線吸収剤、滑材としての有機、無機粒子、酸化チタンや硫酸バリウム、カーボンブラックなどの白色、黒色顔料などを添加しても良い。
【0067】
特にフィルムの滑材として粒子を添加することは、内部粒子を生成させない触媒系では好ましい形態である。粒子としては架橋ポリビニルベンゼン、アクリル、架橋ポリスチレン、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、フッ素樹脂などの有機高分子からなる粒子、コロイダルシリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カーボンブラック、ゼオライトなどの無機粒子が挙げられる。粒子の平均粒径はコールターカウンター法で0.05~5μmであることが好ましい。また、添加量は0.01~2質量%であることが好ましい。
【0068】
これら粒子や顔料も重縮合工程中に添加してもよいし、マスターバッチとして製膜時に添加してもよいが、高耐候性を求める場合には重縮合工程中で添加することが好ましい。」
「【0069】
4,フィルムの製造
本発明のフィルムは、未延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムのいずれであっても良いが、耐久性および機械的強度の点から特には二軸延伸フィルムであることが好ましい。
・・・
【0074】
フィルム化工程においては、前記の溶融した樹脂をT-ダイスより冷却回転ロール上に押し出してシート状に成型し、未延伸フィルムを作成する。この際、例えば特公平6-39521号公報、特公平6-45175号公報に記載の技術を適用することにより、高速製膜性が可能となる。また、複数の押出し機を用い、コア層、スキン層に各種機能を分担させ、共押出し法により積層フィルムとしても良い。
・・・
【0076】
例えば、二軸配向ポリエステルフィルムを製造する場合、縦方向または横方向に一軸延伸を行い、次いで直交方向に延伸する逐次二軸延伸方法、縦方向及び横方向に同時に延伸する同時二軸延伸する方法、さらに同時二軸延伸する際の駆動方法としてリニアモーターを用いる方法を採用することができる。
【0077】
さらに、延伸終了後、フィルムの熱収縮率を低減させるために、熱固定工程において(融点-50℃)~融点未満の温度で30秒以内、好ましくは10秒以内で熱固定処理を行い、0.5~10%の縦弛緩処理、横弛緩処理などを施すことが好ましい。」
「【0117】
参考例1~3
テレフタル酸とエチレングリコールの混合物中に酢酸マグネシウム四水塩をポリエステル中にMg原子として120ppmとなるように加え、常圧にて温度255℃で反応させた。その後Sb原子としてポリエステル中に250ppmとなるような量の三酸化アンチモンおよびCo原子としてポリエステル中に30ppmとなるような量の酢酸コバルト四水塩P原子としてポリエステル中に150ppmとなるような量のトリメチルホスフェートを加えさらに温度260℃で反応させた。
【0118】
引き続いて、反応生成物を重縮合反応層に移し、表に示した量のヒンダードフェノール化合物(イルガノックス1330)、平均粒径1.0μmのシリカ粒子をポリエステル中に800ppmとなるように添加した後、次いで加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧して133Pa(1mmHg)の減圧下、290℃で常法により重合し、IV0.60dL/gのチップを得た。引き続いて回転型真空重合装置を用い、67Pa(0.5mmHg)の減圧下、220℃で固重縮合を行ない、固有粘度0.76dL/g、酸価5当量/トンの樹脂組成物を得た。環状三量体(CT)含有量は0.29質量%であった。
【0119】
得られたポリエステル樹脂組成物のチップを水分率17ppmまで乾燥させて押し出し機に供給し、押出機熔融部、混練り部、ポリマー管、ギアポンプ、フィルターまでの樹脂最高温度は290℃、その後のポリマー管では285℃とし、ダイスよりシート状にして押し出した。これらのポリマーは、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度20μm粒子95%カット)を用いて濾過した。また、フラットダイは樹脂温度が285℃になるようにした。押し出した樹脂を表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。
【0120】
次に、この未延伸フィルムを加熱されたロール群及び赤外線ヒータで100℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に3.3倍延伸して一軸配向PETフィルムを得た。引き続いて、テンターで、130℃で幅方向に4.0倍に延伸を行った後、熱固定を235℃で行い、さらに200℃で幅方向に弛緩処理を行い、厚さ50μmの二軸配向PETフィルムを得た。
結果を表1に示した。
【0121】
【表1】
[図:0001397223000001.jpg]
」
「【0146】
実施例22
(微粒子含有マスターバッチの作製)
参考例2で用いた固相重合ポリエステルの樹脂組成物チップを水分率17ppmまで乾燥させたもの50質量%に、平均粒径0.3μm(電顕法)のルチル型二酸化チタン50質量%を混合したものをベント式2軸押し出し機に供給して、混練りして脱気しながら275℃で押出し、ルチル型二酸化チタン微粒子含有マスターバッチ(MB-I)を調製した。
【0147】
(空洞形成剤の調製)
原料として、メルトフローレート1.5のポリスチレン(日本ポリスチ社製、G797N)20質量%、メルトフローレート3.0の気相法重合ポリプロピレン(出光石油化学製、F300SP)20質量%、及びメルトフローレート180のポリメチルペンテン(三井化学製:TPX DX-820)60質量%ペレット混合し、2軸押し出し機に供給して十分に混練りし、空洞形成剤を調製した(MB-II)。
【0148】
参考例2で用いた固相重合ポリエステルの樹脂組成物チップ:MB-I:MB-IIを80:12:8(質量%)となるよう混合し、水分率18ppmまで乾燥した原料を押出機に投入し、280℃で混合、溶融し、T-ダイを用いて30℃に調節された冷却ドラム上に押し出し未延伸シートを作成した。得られた未延伸シートを、加熱ロールを用いて70℃に均一加熱し、90℃で3.3倍ロール延伸を行った。得られた1軸延伸フィルムをテンターに導き、140℃に加熱して3.7倍に横延伸し、幅固定して220℃で5秒間の熱処理を施し、更に220℃で幅方向に4%緩和させることにより、厚み188μm空洞含有白色フィルムを得た。
【0149】
実施例23
微粒子含有マスターバッチを参考例3で得られた固相重合ポリエステルの樹脂組成物から製造し(MB-III)、固相重合ポリエステルの樹脂組成物チップとして参考例3で得られた物に変更した以外は実施例22と同様に行い、空洞含有白色フィルムを得た。
【0150】
比較例9
微粒子含有マスターバッチを参考例4~10のために製造した固相重合ポリエステルの樹脂組成物チップ(ヒンダードフェノール化合物不含有)から製造し(MB-IV)、ポリエステルの樹脂組成物とし参考例4~10のために製造した固相重合ポリエステルの樹脂組成物チップ(ヒンダードフェノール化合物不含有)に変更した以外は実施例22と同様に行い、空洞含有白色フィルムを得た。
【0151】
実施例24
参考例3で得られた固相重合ポリエステルの樹脂組成物チップ70質量%とMB-IIIを30質量%として実施例22と同様に白色フィルムを得た。
【0152】
実施例25
参考例3で得られたポリエステルの樹脂組成物チップ50質量%とMB-IIIを50質量%とを混合した(A)層の原料と、実施例23のフィルムの原料組成を(B)層の原料としてそれぞれ別々の押出機に投入し、280℃で混合、溶融し、続いてフィードブロックを用い、A層の片面にB層を溶融状態で接合した。このとき、A層とB層の吐出量比率は、ギアポンプを用いて制御した。次いでT-ダイを用いて30℃に調節された冷却ドラム上に押し出し、A/B/A層となるように未延伸シートを作成した。
【0153】
(2軸延伸フィルムの作製) 得られた未延伸シートを、加熱ロールを用いて70℃に均一加熱し、90℃で3.3倍ロール延伸を行った。得られた1軸延伸フィルムをテンターに導き、140℃に加熱して3.7倍に横延伸し、幅固定して220℃で5秒間の熱処理を施し、更に220℃で幅方向に4%緩和させることにより、厚み188μm(19/150/19)の空洞含有白色フィルムを得た。
実施例22~25の結果は表6に示した。
【0154】
【表6】
[図:0001397223000002.jpg]
」
(2) 甲第1号証に記載された発明
上記(1)の記載、特に実施例25について整理すると、甲第1号証には次の発明が記載されているものと認める。
「テレフタル酸とエチレングリコールの混合物中に酢酸マグネシウム四水塩をポリエステル中にMg原子として120ppmとなるように加え、常圧にて温度255℃で反応させ、その後Sb原子としてポリエステル中に250ppmとなるような量の三酸化アンチモンおよびCo原子としてポリエステル中に30ppmとなるような量の酢酸コバルト四水塩P原子としてポリエステル中に150ppmとなるような量のトリメチルホスフェートを加えさらに温度260℃で反応させ、引き続いて、反応生成物を重縮合反応層に移し、ポリエステル中に200ppmとなる量のヒンダードフェノール化合物(イルガノックス1330)、平均粒径1.0μmのシリカ粒子をポリエステル中に800ppmとなるように添加した後、次いで加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧して133Pa(1mmHg)の減圧下、290℃で常法により重合し得られたポリエステルの樹脂組成物チップ(以下、「参考例3樹脂組成物チップ」という。)50質量%と、
テレフタル酸とエチレングリコールの混合物中に酢酸マグネシウム四水塩をポリエステル中にMg原子として120ppmとなるように加え、常圧にて温度255℃で反応させ、その後Sb原子としてポリエステル中に250ppmとなるような量の三酸化アンチモンおよびCo原子としてポリエステル中に30ppmとなるような量の酢酸コバルト四水塩P原子としてポリエステル中に150ppmとなるような量のトリメチルホスフェートを加えさらに温度260℃で反応させ、引き続いて、反応生成物を重縮合反応層に移し、ポリエステル中に200ppmとなる量のヒンダードフェノール化合物(イルガノックス1330)、平均粒径1.0μmのシリカ粒子をポリエステル中に800ppmとなるように添加した後、次いで加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧して133Pa(1mmHg)の減圧下、290℃で常法により重合し、チップを得、得られた固相重合ポリエステルの樹脂組成物チップを水分率17ppmまで乾燥させたもの50質量%に、平均粒径0.3μm(電顕法)のルチル型二酸化チタン50質量%を混合したものをベント式2軸押し出し機に供給して、混練りして脱気しながら275℃で押出し、得られたルチル型二酸化チタン微粒子含有マスターバッチ(以下、「MB-III」という。)を50質量%、
とを混合した(A)層の原料と、
原料として、メルトフローレート1.5のポリスチレン(日本ポリスチ社製、G797N)20質量%、メルトフローレート3.0の気相法重合ポリプロピレン(出光石油化学製、F300SP)20質量%、及びメルトフローレート180のポリメチルペンテン(三井化学製:TPX DX-820)60質量%ペレット混合し、2軸押し出し機に供給して十分に混練りし、空洞形成剤(以下、「MB-II」という。)を調製し、参考例3樹脂組成物チップ、MB-III:MB-IIを80:12:8(質量%)となるよう混合し、水分率18ppmまで乾燥した原料組成を(B)層の原料として、
それぞれ別々の押出機に投入し、280℃で混合、溶融し、続いてフィードブロックを用い、A層の片面にB層を溶融状態で接合し、次いでT-ダイを用いて30℃に調節された冷却ドラム上に押し出し、A/B/A層となるように未延伸シートを作成し、
得られた未延伸シートを、加熱ロールを用いて70℃に均一加熱し、90℃で3.3倍ロール延伸を行い、得られた1軸延伸フィルムをテンターに導き、140℃に加熱して3.7倍に横延伸し、幅固定して220℃で5秒間の熱処理を施し、更に220℃で幅方向に4%緩和させることにより、厚み188μm(19/150/19)の空洞含有白色フィルムを得る、フィルムの製造方法。」(以下、「甲1発明」という。)
2 対比・判断
(1) 本件特許発明1について
・二軸延伸フィルムを得る工程について
本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「A層の片面にB層を溶融状態で接合し、次いでT-ダイを用いて30℃に調節された冷却ドラム上に押し出し、A/B/A層となるように未延伸シートを作成し、得られた未延伸シートを、加熱ロールを用いて70℃に均一加熱し、90℃で3.3倍ロール延伸を行い、得られた1軸延伸フィルムをテンターに導き、140℃に加熱して3.7倍に横延伸し、幅固定して220℃で5秒間の熱処理を施」すことは、甲1発明のA層、B層の組成からみて、本件特許発明1の「第1のポリエステル樹脂組成物からなる層/第2のポリエステル樹脂組成物からなる層/第3のポリエステル樹脂組成物からなる層の構成となるように、ダイスを介して共押出しし未延伸シートを得る工程、前記未延伸シートを二軸延伸し二軸延伸フィルムを得る工程、前記二軸延伸フィルムを、200℃以上250℃以下の温度で熱固定」すること(本件特許発明1における「第1の層」と「第3の層」が同じ組成からなる場合)に相当するとともに、甲1発明の「フィルムの製造方法」はその工程からみて、本件特許発明1の「二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法」に相当する。
さらに、甲1発明の「220℃で幅方向に4%緩和させる」工程は、本件特許発明1の「200度以下に温度を低下させながら、幅方向に2~10%の弛緩を与える工程」のうち、「幅方向に2~10%の弛緩を与える工程」の限りにおいて相当する。
・第1のポリエステル樹脂組成物について
甲1発明の「A層」を構成する材料のうち、「参考例3樹脂組成物チップ」は、平均粒径1.0μmのシリカ粒子をポリエステル中に800ppmとなるように添加したものであるから、甲1発明の「参考例3樹脂組成物チップ」は、本件特許発明1の「第1の無機粒子を7000質量ppm以上22000質量ppm以下含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂」のうち、「第1の無機粒子を含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂」の限りにおいて相当する。
そして、甲1発明の「A層」を構成する「MB-III」は、その組成からみて、本件特許発明1の「第2の無機粒子を0~50質量ppm含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂」のうち「第2の無機粒子を含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂」との限りにおいて相当する。
すると、甲1発明の「A層」を構成する材料は、本件特許発明1の「第1のポリエステル樹脂組成物」のうち、「第1の無機粒子を含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂と、第2の無機粒子を含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂とを混合させ、無機粒子を含有するようにした第1のポリエステル樹脂組成物」との限りにおいて相当する。
・第2のポリエステル樹脂組成物、第3のポリエステル樹脂組成物について
甲1発明の「B層」を構成する原料組成は、本件特許発明1の「第2のポリエステル樹脂組成物」に相当する。また、甲1発明の「A層」を構成する原料組成は、本件特許発明1の「第3のポリエステル樹脂組成物」に相当する。
以上の点をふまえると、両者は、
「第1の無機粒子を含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂と、第2の無機粒子を含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂とを混合させ、無機粒子を含有するようにした第1のポリエステル樹脂組成物、第2のポリエステル樹脂組成物、第3のポリエステル樹脂組成物層を、それぞれ溶融させ、第1のポリエステル樹脂組成物からなる層/第2のポリエステル樹脂組成物からなる層/第3のポリエステル樹脂組成物からなる層の構成となるように、ダイスを介して共押出しし未延伸シートを得る工程、前記未延伸シートを二軸延伸し二軸延伸フィルムを得る工程、前記二軸延伸フィルムを、200℃以上250℃以下の温度で熱固定した後に、幅方向に2~10%の弛緩を与える工程を含む、包装用二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。」
で一致し、次の点で相違する。
・相違点1
第1のポリエステル樹脂組成物中の無機粒子の含有割合について、本件特許発明1は「第1の無機粒子を7000質量ppm以上22000質量ppm以下含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂と、第2の無機粒子を0~50質量ppm含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂とを混合させ、無機粒子を500~1500質量ppm含有するようにした第1のポリエステル樹脂組成物」と特定されるのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。
・相違点2
二軸延伸フィルムに弛緩を与える工程に関し、本件特許発明1は「200度以下に温度を低下させながら」と特定されるのに対し、甲1発明は「220℃」である点。
・相違点3
二軸配向ポリエステルフィルムについて、本件特許発明1は「包装用」と特定されるのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。
上記相違点について検討する。
まず、相違点1について検討するに、甲1発明の「A層」を構成する「参考例3樹脂組成物チップ」及び「MB-III」は何れも「平均粒径1.0μmのシリカ粒子をポリエステル中に800ppmとなるように添加したもの」である。
これに対し、甲第1号証及び他の全ての証拠の記載をみても、甲1発明において、シリカ粒子の割合を相違点1に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものに変更する動機付けがない。
よって、甲1発明において、相違点1に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たものではない。
この点について、特許異議申立人は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明における実施例7の記載や、甲第2号証の記載をあげつつ、「無機粒子の含有量は適宜調整されることが技術常識であるから、目的等に応じて無機粒子の含有量等を本件特許発明1のように調整することは、当業者が適宜なし得る設計的事項に過ぎない」旨主張する。
しかしながら、甲第2号証は、「粘着層に平滑性を与えると同時に、ハードコート層と重ね合された場合でも、滑り性が改良されてブロッキングの発生がなく、飛散防止のための保護フィルムとして好適に用いられる基材レス両面粘着シート用離型フィルムを提供」(【0006】)するためのものであって、無機粒子は、フィルムの滑り性を得るために加えられているものであり、その目的・効果は甲1発明とは異なる。
これに対し、相違点1に係る本件特許発明1の特定事項は、当該特定事項を満たすことにより、「優れた機械物性、透明性、耐熱性を有するとともに、二次加工適正及び印刷外観に優れる二次配向ポリエステルフィルムの製造方法」を提供するとの格別の効果を奏するものである。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用しない。
上記のとおりであるから、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2) 本件特許発明2ないし4について
本件特許発明2ないし4は、本件特許発明1の全ての特定事項を有するものである。
そして、本件特許発明1は、上記(1)の検討のとおり、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明1の全ての特定事項を有するものである本件特許発明2ないし4も、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 申立理由についてのまとめ
上記2のとおりであるから、申立理由は、その理由がない。
第5 結語
以上のとおりであるから、特許異議申立人が提出した特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701258